JPWO2005039824A1 - マルチワイヤソー - Google Patents
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Abstract
Description
このようなワイヤを用いたシリコンインゴットの切断においては、ワイヤによるインゴットの切断の進行に伴ってスラリの温度が上昇し、ワイヤソーのローラが伸縮したりする。インゴットの加工条件が変化するためインゴットの加工精度を一定に保持することができなくなる。そのため、スラリを冷却して加工精度を確保しようとしている(例えば、特許文献2参照)。
切断代を小さくするには、ワイヤ径を小さくすればよいが、その分ワイヤの破断強度が低下するため、ワイヤに掛かる張力を小さくする必要がある。インゴットの切断は圧力転写であるラッピング作用で行われているので、ワイヤの張力を小さくすると、切断速度が遅くなり、ワイヤの変位(撓み)が大きくなる。ワイヤの変位(撓み)が大きくなると、切断方向と直交する方向におけるワイヤの変位も大きくなり、ウエハの反り、厚さむら、微小な凹凸(ソーマーク)が発生し、ウエハの品質が低下する。このようなワイヤ撓みを小さくするために、切断速度の遅延に応じてシリコンインゴットの送り速度を低下させると、切断効率を低下させることになる。ワイヤの送り速度を高めて、切断速度の遅延を補ってシリコンインゴットの送り速度を高くすると、切断界面での砥粒の分散不良に対するマージンがなくなり、張力の突発的な上昇によってワイヤの破断が発生する。したがって、高いウエハ品質を維持すると共に、シリコンインゴットの切断代や切断ピッチを小さくするためには、切断抵抗を低減することが必要である。
そこで、固定砥粒ワイヤと、遊離砥粒を含むスラリ又は濃度が2%以下のKOHアルカリ溶液とを用いてシリコンインゴットを切断する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
固定砥粒ワイヤとアルカリ溶液とを用いる従来の切断方法では、切断屑が切断界面で目詰まりを起こし、この切断屑の溶解にアルカリ溶液の一部が使用されてしまうため、アルカリ溶液の切断面への働きが低下する。また、凝集した切断屑は切断面に微小なクラックを与えることがあるが、アルカリ溶液はこのようなクラックを拡大するように選択的に働き、切断面を荒らすことになる。切断屑の排出抵抗は、切断抵抗の増大に寄与し、結果的にウエハの反り、厚さむら、微小な凹凸を発生させる。アルカリ溶液の十分な働きを得るには、ワイヤの送り速度、シリコンインゴット送り速度を大幅に低下させる必要があり、切断効率の著しい低下を招く。
そこで、砥粒および数質量%の塩基性物質を含有し、pHが12以上のスラリを加熱して切断界面に供給して、インゴットを裸のワイヤに押し付けつつ切断した結果、切断抵抗を低減することができることが分かった。特に、スラリの加熱温度としては65℃〜95℃が好ましいことが分かった。このような切断抵抗を低減する効果を得るためには、切断界面に導入されるか又は導入されたスラリ温度を所定の温度に制御することが重要である。
(1)大量のスラリを供給・循環するため、大流量・大電力のスラリ供給機構が必要であり、装置が高価になる。
(2)循環中に組成の変化(水分や砥粒の減少、液体成分の相分離)によって、インゴット切断界面に導入されるスラリ中の砥粒量の減少やスラリ粘度の変化を生じやすく、加工品質のばらつきが発生する。
(3)加工室内でのスラリの飛散が大きく、加工室の汚れが大きいため、操業後の清掃工数が大きくなる。
(4)スラリの温度管理においても、切断に寄与せずに大量に循環するスラリの温度を制御しなければならず、切断界面に導入するスラリの温度制御の応答性が劣る。また、タンク内で次々に回収されてくる大量のスラリを攪拌しても砥粒の均一分散性が悪く、不均一なままワイヤに塗布され、加工品質の低下(ウエハ厚さばらつき、ソーマーク(傷)の発生など)を招く。
また、本発明は、スラリの粘度変化やワイヤがシリコンインゴットに挿入される入口部分におけるスラリの乾燥、固化を抑制して、高い加工品質を維持し且つワイヤの破断を防止することのできるマルチワイヤソーを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、スラリの利用効率が高く、安価な装置構成であり、スラリ温度制御が容易であり、回転ローラの寿命長期化が可能であり且つ清掃・ワイヤ張り作業などの作業性がよいマルチワイヤソーを提供することを目的とする。
また、本発明によれば、湿度調節機構により加工室内の湿度を設定湿度に調節することができるので、高い加工品質を維持しつつ、ワイヤの破断を防止することができる。
さらに、本発明によれば、安価な装置構成でスラリの利用効率を高め、スラリの温度制御を容易にし、回転ローラの寿命長期化を可能とし且つ清掃・ワイヤ張り作業などの作業性を向上させることができる。
[図2]本発明の実施の形態1に係るマルチワイヤソーの部分外観図である。
[図3]本発明の実施の形態2に係るマルチワイヤソーのワイヤ加熱機構の構造を示す図である。
[図4]本発明の実施の形態3に係るマルチワイヤソーの外観図である。
[図5]本発明の実施の形態3に係るマルチワイヤソーの部分外観図である。
[図6]本発明の実施の形態3に係るマルチワイヤソーによる被加工物の切断工程を説明するための図である。
[図7]本発明の実施の形態3に係る湿度調節のフローチャートである。
[図8]本発明の実施の形態3に係るスラリ貯蔵タンク内のスラリ粘度を示すグラフである。
[図9]本発明の実施の形態4に係るマルチワイヤソーの外観図である。
[図10]本発明の実施の形態4に係るマルチワイヤソーの部分外観図である。
[図11]本発明の実施の形態4に係るマルチワイヤソーによる被加工物の切断工程を説明するための図である。
[図12]本発明の実施の形態5に係るマルチワイヤソーの部分外観図である。
[図13]本発明の実施の形態6に係るマルチワイヤソーの外観図である。
[図14]本発明の実施の形態6に係るマルチワイヤソーの部分外観図である。
[図15]本発明の実施の形態6に係るマルチワイヤソーによる被加工物の切断工程を説明するための図である。
[図16]本発明の実施の形態7に係るマルチワイヤソーの部分外観図である。
[図17]図16におけるX矢視図である。
[図18]本実施の形態8に係るマルチワイヤソーのスラリ供給機構における側壁部を説明する図である。
図1は、本発明の実施の形態1に係わるマルチワイヤソーの外観図である。図2は、実施の形態1のマルチワイヤソーの部分外観図である。
実施の形態1に係るマルチワイヤソーは、ベース1と、ベース1の上面に立設するフレーム2と、被加工物3を加工方向に移動可能なように支持する被加工物支持機構4と、被加工物3に繰り込んで被切断箇所にワイヤ5を供給するワイヤ供給機構6と、被加工物3とワイヤ5との切断界面にスラリ7を供給するスラリ供給機構8とを備えている。ベース1はマルチワイヤソーを支持する平盤から構成されている。フレーム2は、箱からなり、作業者に向かって正対する側板9が設けられている。
さらに、ワイヤ供給機構6は、ワイヤ加熱機構としてのボビン加熱ヒータ28がワイヤ繰り出しボビン22内に内蔵されている。このワイヤ加熱機構としては、他にメインローラ24の近傍に備えられ、ワイヤ5に赤外線などを照射できる赤外線ヒータまたはメインローラ24の手前でワイヤ5が温水を通過する温水槽なども適用できるが、ワイヤ5を加熱することができるものであればこれらに限定されるものではない。
このときの被加工物3として多結晶シリコンインゴット(以下、インゴットと称する。)を用いる。その外形は150mm角で長さ25mmの角柱である。このインゴットは、ガラス製のダミー10を介してステンレス製のベースプレート44上にエポキシ樹脂などからなる接着剤で固定され、ベースプレート44はステージ11に機械的に固定される。
まず、ワイヤ5をワイヤ繰り出しボビン22から繰り出し、案内プーリ25により走行案内して走行方向を変更し、メインローラ24の一番手前の溝まで繰り出す。そしてこの溝内を接しながらサブローラ27の一番手前の溝まで繰り出し、その溝内に沿ってサブローラ27を半周分反時計方向に周回させる。そこからメインローラ24の手前から2番目の溝まで繰り出し、その溝内に沿ってメインローラ24を半周分反時計方向に周回させる。これらの操作を繰り返してメインローラ24とサブローラ27との間に所望のピッチでらせん状に張られた複数のワイヤ5を設けることができる。
さらに、サブローラ27からメインローラ24の一番奥側の溝まで繰り出されたワイヤ5は案内プーリ26に案内されながらワイヤ巻き取りボビン23に巻き取られる。メインローラ24およびサブローラ27の巻きつけのワイヤピッチはインゴットの切断ピッチに等しく、また巻きつけ回数はインゴットから切り出すウエハの枚数に応じて任意に決められる。
砥粒としては、一般的に研磨材として用いられるものであればよく、例えば、炭化ケイ素、酸化セリウム、ダイヤモンド、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素を挙げることができる。また、これらを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。このような砥粒に用いることのできる化合物は市販されており、具体的には炭化ケイ素としては、商品名GC(Green Silicon Carbide)およびC(Black Silicon Carbide)((株)フジミインコーポレーテッド社製)、酸化アルミニウムとしては、商品名FO(Fujimi Optical Emery)、A(Regular Fused Alimina)、WA(White Fused Alumina)およびPWA(Platelet CalcinedAlumina)((株)フジミインコーポレーテッド社製)等が挙げられる。
砥粒の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは1μm〜60μm、より好ましくは5μm〜20μmである。また、砥粒の含有量は、特に限定されるものではないが、スラリ7全体の質量に対して、好ましくは20質量%〜50質量%である。
塩基性物質の含有量は、スラリ7中の液体成分全体の質量に対して、3.5質量%以上ないし20質量%以下である。
また、クーラントとしては、保湿剤、潤滑剤、防錆剤、粘度調整剤、例えば、ポリエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、オレイン酸等を含む切断補助混合液として一般的に用いられるものであればよい。このようなクーラントは市販されており、具体的には商品名リカマルチノール(理化商会社製)、ルナクーラント(大智化学産業社製)等が挙げられる。クーラントの含有量は、特に限定されるものではないが、スラリ7全体の質量に対して、好ましくは0質量%〜50質量%である。
Si+4H2O→Si(OH)4+2H2 (1)
このスラリ7とインゴットとの化学反応を促進させるスラリ7の温度は、65℃〜95℃の範囲であることが好ましい。スラリ7の温度が低過ぎる場合には、反応が活性化されないため切断抵抗が十分に低減されず、高過ぎる場合には、スラリ液体成分(主に水分)の蒸発によって反応に必要な水分が不足し、切断抵抗が増大してしまい好ましくない。
切断条件は、それぞれワイヤ径が0.1mm、切断代が0.13mm、切断ピッチが0.39mm、切断速度が0.35mm/分、ワイヤ走行速度が600m/分、スラリ温度が80℃であった。比較例としてスラリ温度を25℃として同様にインゴットを切断した。
その際、切断抵抗の大きさを表わす指標として、ワイヤ5のたわみ量を測定した。結果を表1に示す。切断加工時に、走行するワイヤ5とインゴットとの切断界面に切断抵抗が生じると、ワイヤ5がインゴット送り方向にたわむ。このたわみは切断抵抗の大きさに比例するので、切断加工中のワイヤたわみ量を測定することで、切断抵抗の大小を知ることができる。換言すれば、たわみが大きいということは、切断界面でのワイヤ5に切断方向(2方向)の遅れがでるということであり、所望の切断速度が得られないことになる。
次に、得られたウエハを水で洗浄し、乾燥させた後、ウエハの厚さむらを評価した。さらに、ウエハ表面のソーマークの有無を目視にて評価した。これらの結果を表1に示す。
図4は、本発明の実施の形態2に係るマルチワイヤソーのワイヤ加熱機構の外観図である。実施の形態2のマルチワイヤソーは、実施の形態1とワイヤ加熱機構が異なっていて、その他は同様であるので同様な部分の説明は省略する。
このワイヤ加熱機構は、ワイヤ繰り出しボビン22からメインローラ24の間でワイヤ5を案内する複数の案内プーリ25のうち、所望の長さワイヤ5が走行できるだけ離れた2個のプーリ25a、25bとこの2つのプーリ25a、25bの間に電圧を供給する電源42とを備えている。このプーリ25a、25bは導電性を有していて、プーリ25a、25bとワイヤ5の間で導通することができる。なお、ワイヤ繰り出しボビン22、ワイヤ巻き取りボビン23はワイヤ5を電気的に浮かすために絶縁性を有している。
このワイヤ加熱機構は、プーリ25a、25b間のワイヤ5に電流を流すことにより、ジュール熱を発生してワイヤ5を加熱することができる。
ワイヤ5の微小部分Δxがプーリ間を通過するのに必要な時間t(sec)は式(2)から求めることができる。
t=L/v=0.04[sec] (2)
さらに、プーリ間に存在するワイヤ5の質量W(g)は、ワイヤ比重をA=7.8(g/cm2)として、式(3)から求めることができる。
W=(πD2/4)・L・A=0.025[g] (3)
そこで昇温に必要な熱量Q(J)は、ワイヤ比熱をC=0.5(J/gK)として式(4)から求めることができる。
Q=ΔT・C・W=0.74[J] (4)
このときにワイヤ5に流れる電流量I(A)は、必要な熱量Qから式(5)から求めることができる。
I=(Q/Rt)1/2=1.3[A] (5)
そこでプーリ間に印加しなければならないプーリ間電圧V(V)は式(6)のようになる。
V=IR=14[V] (6)
図4は、本発明の実施の形態3に係るマルチワイヤソーの外観図であり、図5は、実施の形態3のマルチワイヤソーの部分外観図である。また、図6は、実施の形態3のマルチワイヤソーによる被加工物の切断工程を説明するための図である。
実施の形態3に係るマルチワイヤソーは、ベース1と、ベース1の上面に立設するフレーム2と、被加工物3を加工方向に移動可能なように支持する被加工物支持機構4と、被加工物3に繰り込んで被切断箇所にワイヤ5を供給するワイヤ供給機構6と、被加工物3とワイヤ5との切断界面にスラリ7を供給するスラリ供給機構8Aとを備えている。ベース1はマルチワイヤソーを支持する平盤から構成されている。フレーム2は、箱からなり、作業者に向かって正対する側板9が設けられている。
さらに、ワイヤ供給機構6は、フレーム2に対して垂直に回転支持され、外周表面に複数の溝が等間隔に形成されているメインローラ24と、メインローラ24に並行になるようにフレーム2に対して回転支持され、外周表面に複数の溝が等間隔に形成されているサブローラ27とを備えている。
このときの被加工物3として多結晶シリコンインゴット(以下、インゴットと称する。)を用いる。このインゴットは、ガラス製のダミー10を介してステンレス製のベースプレート44上にエポキシ樹脂などからなる接着剤で固定され、ベースプレート44はステージ11に機械的に固定される。
まず、ワイヤ5をワイヤ繰り出しボビン22から繰り出し、案内プーリ25により走行案内して走行方向を変更し、メインローラ24の一番手前の溝まで繰り出す。そしてこの溝内を接しながらサブローラ27の一番手前の溝まで繰り出し、その溝内に沿ってサブローラ27を半周分反時計方向に周回させる。そこからメインローラ24の手前から2番目の溝まで繰り出し、その溝内に沿ってメインローラ24を半周分反時計方向に周回させる。これらの操作を繰り返してメインローラ24とサブローラ27との間に所望のピッチでらせん状に張られた複数のワイヤ5を設けることができる。
さらに、サブローラ27からメインローラ24の一番奥側の溝まで繰り出されたワイヤ5は案内プーリ26に案内されながらワイヤ巻き取りボビン23に巻き取られる。メインローラ24およびサブローラ27の巻きつけのワイヤピッチはインゴットの切断ピッチに等しく、また巻きつけ回数はインゴットから切り出すウエハの枚数に応じて任意に決められる。
この湿度調節機構47による加工室16内の湿度調節について、図7を参照しつつ説明する。まず、マルチワイヤソーが作動中であることを確認すると、ステップ101において、制御装置51に入力された設定湿度の読み取りが行われ、ステップ102に進む。ステップ102では、湿度計50により測定された加工室16内の湿度の読み取りが行われ、ステップ103に進む。ステップ103では、測定された加工室16内の湿度が設定範囲内にあるか否かが、制御装置51よって判定される。測定された加工室16内の湿度が設定範囲内よりも低い場合は、判定が否定されてステップ104に進み、加湿装置49による加湿が開始される。一方、ステップ103において、測定された加工室16内の湿度が設定範囲内よりも高い場合は、判定が肯定されてステップ105に進み、加湿装置49による加湿が停止される。
図8から明らかなように、湿度が飽和蒸気圧に近い状態に保持された加工室16内においてインゴットの切断加工を行うと、スラリ7に含まれる水分の蒸発が抑制されるため、スラリ7の粘度は、ほぼ一定に保持される。これに対して、加湿を行わない従来のマルチワイヤソー(加工室内の湿度約70%)では、切断加工開始から2時間でスラリ7の粘度が大きく上昇した。
また、本実施の形態3に係るマルチワイヤソーでは、湿度調節機構47を加工室16内に配置したが、湿度調節機構47から加工室16内に水蒸気48を放出することができればよく、これに限定されない。例えば、湿度調節機構47を加工室16の外部に配置しておき、湿度調節機構47から配管等を介して加工室16内に水蒸気48を放出してもよい。
さらに、本実施の形態3に係る加工室16内には、加工室16内の湿度が均一になるように、強制対流用ファンなどを設けてもよい。
また、スラリ7の温度を調整するために、スラリ貯蔵タンク34の周囲を囲んで加熱するスラリ加熱用ヒータを設けてもよい。このようなスラリ加熱用ヒータとしては、スラリ7を加熱することができるものであれば限定されるものではないが、電熱線、投げ込みヒータ、リボンヒータ、温水ヒータなどを挙げることができる。
図9は、本発明の実施の形態4に係るマルチワイヤソーの外観図であり、図10は、実施の形態4のマルチワイヤソーの部分外観図である。また、図11は、実施の形態4のマルチワイヤソーによる被加工物の切断工程を説明するための図である。
実施の形態4に係るマルチワイヤソーは、ベース1と、ベース1の上面に立設するフレーム2と、被加工物3を加工方向に移動可能なように支持する被加工物支持機構4と、被加工物3に繰り込んで被切断箇所にワイヤ5を供給するワイヤ供給機構6と、被加工物3とワイヤ5との切断界面にスラリ7を供給するスラリ供給機構8Bとを備えている。ベース1はマルチワイヤソーを支持する平盤から構成されている。フレーム2は、箱からなり、作業者に向かって正対する側板9が設けられている。
さらに、ワイヤ供給機構6は、フレーム2に対して垂直に回転支持され、外周表面に複数の溝が等間隔に形成されているメインローラ24と、メインローラ24に並行になるようにフレーム2に対して回転支持され、外周表面に複数の溝が等間隔に形成されているサブローラ27とを備えている。
スラリ供給機構8Bは、ワイヤ5に供給されるスラリ7および加工室16のスラリ受皿29で回収され、スラリ回収ドレイン管46を介して戻されたスラリ7を貯蔵するスラリ貯蔵タンク34と、スラリ貯蔵タンク34からスラリ7を送出するポンプ31と、ポンプ31から送出されたスラリ7がその中を通って加工室16まで送液されるパイプ32Aと、パイプ32Aを経由して送られてきたスラリ7をワイヤ5に向けて吐出するスラリ吐出部33とを備えている。このスラリ吐出部33は、図10に示されるように、被加工物3を切断する部位の上流側に設けられたサブローラ27と被加工物3を切断する部位との間の上方であって、吐出されたスラリ7が被加工物3の側面に沿って移動するように(被加工物3を切断する部位の上流側壁面に近接して)設置されている。スラリ吐出部33によりワイヤ5にスラリ7を供給する際には、スラリ吐出部33からスラリ7を、例えばカーテン状に吐出させる。このとき、スラリ吐出部33は被加工物3の切断部位の上方にあるので、吐出されたスラリ7は被加工物3の側面に沿って流下する。スラリ7はそのまま、水分蒸発することなくワイヤ5と被加工物3との交点へ移動してワイヤ5と接触すると、ワイヤ5によって被加工物3の切断界面に運ばれる。このような切断加工において、被加工物3の側面、特に走行するワイヤ5と被加工物3との交点では、スラリ7が常に流動しているため、スラリ7の粘度は常に一定となる。
このときの被加工物3として多結晶シリコンインゴット(以下、インゴットと称する。)を用いる。このインゴットは、ガラス製のダミー10を介してステンレス製のベースプレート44上にエポキシ樹脂などからなる接着剤で固定され、ベースプレート44はステージ11に機械的に固定される。
まず、ワイヤ5をワイヤ繰り出しボビン22から繰り出し、案内プーリ25により走行案内して走行方向を変更し、メインローラ24の一番手前の溝まで繰り出す。そしてこの溝内を接しながらサブローラ27の一番手前の溝まで繰り出し、その溝内に沿ってサブローラ27を半周分反時計方向に周回させる。そこからメインローラ24の手前から2番目の溝まで繰り出し、その溝内に沿ってメインローラ24を半周分反時計方向に周回させる。これらの操作を繰り返してメインローラ24とサブローラ27との間に所望のピッチでらせん状に張られた複数のワイヤ5を設けることができる。
さらに、サブローラ27からメインローラ24の一番奥側の溝まで繰り出されたワイヤ5は案内プーリ26に案内されながらワイヤ巻き取りボビン23に巻き取られる。メインローラ24およびサブローラ27の巻きつけのワイヤピッチはインゴットの切断ピッチに等しく、また巻きつけ回数はインゴットから切り出すウエハの枚数に応じて任意に決められる。
また、スラリ吐出部33から吐出されてインゴットおよびワイヤ5から下に落下したスラリ7の残部は、スラリ受皿29で回収され、不純物(シリコンの切り屑など)と分離され、再生された後、スラリ回収ドレイン管46を介してスラリ貯蔵タンク34に戻される。
図12は、実施の形態5のマルチワイヤソーの部分外観図である。
実施の形態5に係るマルチワイヤソーでは、スラリ供給機構8Cが、被加工物3の側面に貼付されたシート部材52を備えている。他の構成は前記実施の形態4と同様に構成されている。
なお、実施の形態4および5では、被加工物3の側面に沿ってスラリ7を移動させてスラリ7を供給する構成と、ワイヤ5にスラリ7を直接塗布してスラリ7を供給する構成とを併用して、被加工物3の切断界面にスラリ7を導入してもよい。この場合、ワイヤ5に直接塗布して供給するスラリ7を主として被加工物3を切断することとし、被加工物3の側面に沿って移動するスラリ7は、ワイヤ5が被加工物3に挿入される入口部分におけるスラリ7の固化を防ぐ補助的手段とすることが好ましい。そのため、被加工物3の側面に沿って移動するスラリ7の流量は最小限とすることが好ましい。
図13は、本発明の実施の形態6に係るマルチワイヤソーの外観図であり、図14は、実施の形態6のマルチワイヤソーの部分外観図である。また、図15は、実施の形態6のマルチワイヤソーによる被加工物の切断工程を説明するための図である。
実施の形態6に係るマルチワイヤソーは、ベース1と、ベース1の上面に立設するフレーム2と、被加工物3を加工方向に移動可能なように支持する被加工物支持機構4と、被加工物3に繰り込んで被切断箇所にワイヤ5を供給するワイヤ供給機構6と、被加工物3とワイヤ5との切断界面にスラリ7を供給するスラリ供給機構8Dとを備えている。ベース1はマルチワイヤソーを支持する平盤から構成されている。フレーム2は、箱からなり、作業者に向かって正対する側板9が設けられている。
さらに、ワイヤ供給機構6は、フレーム2に対して垂直に回転支持され、外周表面に複数の溝が等間隔に形成されているメインローラ24と、メインローラ24に並行になるようにフレーム2に対して回転支持され、外周表面に複数の溝が等間隔に形成されているサブローラ27とを備えている。
スラリ供給機構8Dは、スラリ7を貯留する収容部としての液漕53と、この液漕53へワイヤ5を引き込むと共に液漕53から引き上げて被加工物3へ案内するための複数のワイヤ引き回し用ローラ54a、54b、54c、54dとを備えている。また、液漕53は、被加工物3の切断部の上流側に位置するサブローラ27と被加工物3の切断部との間に配置され、スラリ7を攪拌するための攪拌機構55を底部に有している。
このときの被加工物3として多結晶シリコンインゴット(以下、インゴットと称する。)を用いる。このインゴットは、ガラス製のダミー10を介してステンレス製のベースプレート44上にエポキシ樹脂などからなる接着剤で固定され、ベースプレート44はステージ11に機械的に固定される。
ワイヤ供給機構6を駆動させると、張力制御ローラ43によって一定の張力が維持されながら、ワイヤ5が一定方向に所定の速度で走行する。このとき、メインローラ24およびサブローラ27が、ワイヤ5の走行速度に応じた回転速度で同期回転する。加工室16内では、メインローラ24およびサブローラ27の間を走行するワイヤ5は、ワイヤ引き回し用ローラ54aを介して液槽53内に進入し、ワイヤ引き回し用ローラ54b、54cに順次案内され、液槽53から外部へ送出される。液槽53にはスラリ7が収容されているので、ワイヤ5が液槽53内を案内されることにより、ワイヤ5にスラリ7が供給される。そして、ワイヤ5に付着したスラリ7が、ワイヤ5の走行によりインゴットの切断界面に運ばれる。そして、スラリ7のラッピング作用や化学的作用によってシリコン原子の結合が分断され、インゴットが切断される。
なお、図示しないが、インゴットの切断界面に導入された分量のスラリ7を回収するスラリ貯蔵・攪拌タンクと、インゴットの切断界面に導入された分量のスラリ7をスラリ貯蔵・攪拌タンクから液槽53に供給する機構を設置している。
図16は、実施の形態7のマルチワイヤソーの部分外観図であり、図17は、図16におけるX矢視図である。
この実施の形態7のマルチワイヤソーは、実施の形態6とスラリ供給機構が異なっていて、その他は同様であるので同様な部分の説明は省略する。
実施の形態7に係るマルチワイヤソーでは、スラリ供給機構8Eが、スラリ7を収容するとともに攪拌機構55を有する液槽53Aが備えられ、この液漕53Aの構成面としての側面部のうち対向する2つの側壁部56a、56bには、スリット状の通過孔57a、57bがそれぞれ設けられている。通過孔57a、57bが設けられた位置は、液漕53Aにスラリ7が収容されたときに、スラリ7の液面よりも下方となる位置になっている。そして、図17に示されるように、メインローラ24およびサブローラ27に掛け渡されて構成されたワイヤ7の列は、このスリット状の通過孔57a、57bを通過するように配置され、このため、液漕53Aを通過する際にスラリ7中に案内される。
なお、通過孔57aとワイヤ5との間に若干の隙間が生じており、ここからスラリ7が漏れ出してくる。加工室16内を汚さないためや、螺旋状に巻き付けられたワイヤ5の対向部へのスラリ7の付着を抑制するため、液槽53Aの下部に回収用トレイ58を設けておくことが好ましい。
また、スラリ供給機構8Eにおいて通過孔57a、57bは、対向する側面部56a、56bに設けたが、これに限定されず、液漕53A内のスラリ7に対してワイヤ5を案内することができれば、どの側面部に設けてもよい。例えば、被加工物3の切断位置を液漕53Aの上方に配置させると共に液漕53A内に方向を変更させるためのローラを設け、側面部56aから侵入させた後、液漕53Aの上方へ案内させてもよい。
実施の形態8のマルチワイヤソーは、実施の形態7とスラリ供給機構が異なっていて、その他は同様であるので同様な部分の説明は省略する。
図18は、本発明の実施の形態8に係るマルチワイヤソーのスラリ供給機構8Fにおける側壁部を説明する図であり、図18(A)は閉じた状態を、図18(B)は開放状態を説明するための図である。
図18において、液槽53Aの側壁部56cとこれに対向する側壁部(図示せず)とは、切欠き部59を備えた開放自在の部材60を備えている。この開放自在の部材60は、切欠き部59を備えた上方側壁部材61aと液槽53Aに固定されている下方側壁部材61bから構成されている。上方側壁部材61aを閉じたときには、図18(A)に示すように、切欠き部59が通過孔57cを形成するようになっている。
Claims (8)
- 被加工物とワイヤとの切断界面にアルカリまたは混酸を含むスラリを供給しながら前記被加工物を切断するマルチワイヤソーにおいて、
前記スラリを貯蔵加熱するための加熱機構付貯蔵タンクと、
前記加熱機構付貯蔵タンクから前記ワイヤが前記被加工物に繰り込まれる手前の位置までポンプにより送出された前記スラリを所定の温度に維持しながら搬送する保温パイプと、
ステージに固定された前記被加工物の近傍の温度を前記所定の温度に維持する恒温槽と、
前記ワイヤを前記所定の温度に加熱するワイヤ加熱機構と
を備えることを特徴とするマルチワイヤソー。 - 前記ワイヤ加熱機構は、
ワイヤ繰り出しボビンから前記切断界面に繰り込まれる前記ワイヤの走行経路中に、前記ワイヤの走行方向の前後に位置して前記ワイヤの走行を案内する導電性の2つのプーリと、電源とを備え、前記電源から前記2つのプーリを介して前記ワイヤに電圧を印加し、前記ワイヤに流れる電流に伴って発生するジュール熱により前記ワイヤを加熱するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマルチワイヤソー。 - 複数のローラ間で走行するワイヤにスラリを供給しながら被加工物を切断するマルチワイヤソーにおいて、
前記スラリを吐出するためのスラリ吐出部と、
少なくとも前記スラリ吐出部と前記被加工物とを覆う加工室と、
前記加工室内の湿度を設定湿度に調節するための湿度調節機構と
を備えていること特徴とするマルチワイヤソー。 - 複数のローラ間で走行するワイヤにスラリを供給しながら被加工物を切断するマルチワイヤソーにおいて、
前記被加工物を切断する部位の上流側に設けられた前記ローラと前記被加工物を切断する部位との間に設けられたスラリ吐出部を有するスラリ供給機構を備え、前記スラリ吐出部から吐出されたスラリが前記被加工物の側面に沿って移動することによって、前記ワイヤにスラリを供給することを特徴とするマルチワイヤソー。 - 前記被加工物の側面に、シート部材が貼付されていることを特徴とする請求項4に記載のマルチワイヤソー。
- 複数のローラ間で走行するワイヤに砥粒を含むスラリを供給しながら被加工物を切断するマルチワイヤソーにおいて、
前記スラリを収容する収容部を有し、前記収容部内を前記ワイヤが通過することで、前記ワイヤにスラリが供給されるスラリ供給機構を、前記被加工物が切断される部位の上流に設けたことを特徴とするマルチワイヤソー。 - 前記収容部の構成面に、前記ワイヤが通過可能な通過孔が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のマルチワイヤソー。
- 前記収容部の構成面が、切欠き部を備えた開放自在の部材を有し、前記部材を閉じたときに前記切欠き部が前記通過孔を形成することを特徴とする請求項7に記載のマルチワイヤソー。
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