JP3695124B2 - ワイヤーソー装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワーク、例えば、半導体シリコン単結晶インゴット(以下、単にインゴットということがある)をスラリーを供給しつつワイヤーによって切断又はスライスしてウェーハを切り出すにあたり、当該スラリーの供給を安定して行うことができかつ切断中のウェーハの割れを防止することができるようにしたワイヤーソー装置及び当該ワイヤーソー装置に用いられるワークプレートに関する。
【0002】
【関連技術】
従来、ワーク、例えば、半導体シリコン単結晶インゴットを切断又はスライスしてウェーハ状に切り出すためのワークの切断装置としては、図5〜図7に示すようなワイヤーソー装置が用いられている。図5はワイヤーソー装置の概略全体説明図、図6は図5の要部の概略側面図及び図7は図6の断面的説明図である。
【0003】
図5において、ワイヤーソー装置12は3つのメインローラ14,16,18を三角形の各頂点位置に互いに平行、且つ回転自在に配置して構成され、これらのメインローラ14,16,18間には線径0.08〜0.25mm程度の特殊ピアノ線からなる1本のワイヤー20が所定のピッチで螺旋状に巻回されワイヤー列を形成している。該メインローラは複数本配設されればよく、その本数に特別の限定はないが、図示した3本又は4本が通常使用される。
【0004】
そして、上方の2つのメインローラ14,16の間、即ち切断領域であって、且つこれらメインローラ14,16の上方には、ワークホルダー22に保持された円筒状半導体シリコンインゴット等のワークWがセットされている。該ワークWは、不図示の駆動手段によってワークホルダー22が上下動せしめられることによって、該ワークホルダー22と共に上下動する。
【0005】
下方のメインローラ18は駆動メインローラであって、これは駆動モータ24によって正逆転せしめられる。
【0006】
該メインローラ14,16の上方には、微細な砥粒を油性又は水溶性のクーラントで懸濁することによって作られた砥粒スラリー26を噴出するノズル28が設置されている。30は該メインローラ14,16間に設けられたスラリー溜りで、ノズル28から噴出したスラリー26を受ける作用を行う。スラリー26は不図示のスラリータンクに貯留されている。
【0007】
上記した複数のメインローラ14,16,18間に螺旋状に巻きつけられたワイヤー20を、ワイヤー送り出し側からワイヤー受け取り側に向けて、往復運動させながら移動させる。
【0008】
このように移動するワイヤー20にワークWを所定の送り速度で圧接するとともに、この圧接部即ちワーク切断部にスラリー26を供給することによって、複数のウェーハを同時に切り出すことができる。そして、このワイヤーソー装置12は、同時に多数のウェーハを切り出すことができるため、従来の内周刃スライサー等に代わって多用されるようになっている。
【0009】
ところで、このワイヤーソー装置12でワークWを切断すためには、ワークWを支持装置32を介してワークホルダー22に支持させておく必要がある。
【0010】
この支持装置32は、ワークプレート34を備えている(図6及び図7)。このワークプレート34の下面には当て板36が接着剤によって接着され、この当て板36にワークWが接着される。このワークプレート34の両端部には側方に突出した凸条段部34a,34bが設けられている。
【0011】
38はワークプレートホルダーで、該ワークプレート34の凸条段部34a,34bを受け入れ可能な形状の溝40a,40bを有している。
【0012】
このようなワイヤーソー用ワーク支持装置32を介してワークホルダー22によって支持されたワークWは、ワイヤーソー装置12における切断ワイヤー20に押し付けられて切断される。
【0013】
このワイヤーソー装置12においては、図5に示すごとく、スラリー26をワイヤー20に直接供給し、ワーク、例えばインゴットWの切断を行っている。該スラリー26の供給位置は、ワーク、例えばインゴットW切断の進行とともにワイヤー20によるワークWの切断位置が変化してしまうことに起因してノズル28とワーク切断部の距離が変化してしまい、安定したスラリー供給を行うのが難しい。
【0014】
このスラリー26の供給が不安定になると、ワイヤー20によるワーク(インゴット)Wの切れ味が変動するため、スライスされたウェーハにはうねりや反りなどという好ましくないウェーハ性状が発現してしまうという問題がある。
【0015】
また、ワイヤー20にスラリー26を直接供給するために、ワークWの切断部に到達する前にスラリー26がワイヤー20の間から下方に落下してしまいスラリー26がワークWの切断に有効に利用されないという無駄が生じていた。
【0016】
さらに、スラリー26をワイヤー20に直接供給すると、スラリー26の流れが切断中のワークWに衝突することになるが、その時、ワークWの切断が進行してワークWがウェーハ状となっている場合には切断中のウェーハにスラリー26が当たることによって切断中のウェーハ(特にワークの両端部に位置するウェーハ)が振動して隣接するウェーハ同士が互いに接触することによるウェーハ割れが生起してしまう不都合もある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、ワーク切断部へのスラリーの供給を安定して行うことを可能とし、スラリーの有効利用を図り、ワイヤーによる切断効率を向上させ、ワーク切断時間の短縮化、スラリー供給量の低減ならびにスラリー供給用ポンプ能力の削減を図ることができるとともにワーク切断中のウェーハの割れを大幅に削減することができるようにしたワイヤーソー装置及び当該ワイヤーソー装置に用いられるワークプレートを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のワイヤーソー装置は、両端部が軸受部によって回転自在に支承されるとともに互いに所定間隔をおいて配置された複数本のメインローラと、該メインローラ間に所定のピッチ幅で巻回されたワイヤーによって形成されたワイヤー列と、円筒状ワークの上面に固着された当て板及び該当て板に固着されたワークプレートを介してワークを支持するワーク支持手段とを有し、該メインローラを回転させることによって該ワイヤー列を走行させて切断領域にある一対のメインローラ間に巻回されたワイヤーにワークを押し当ててこのワークとワイヤーの圧接部にスラリーを供給することによって該ワークをウェーハ状に切断するワイヤーソー装置において、上記スラリーをスラリー供給手段によってワーク外周面に供給し、該ワーク外周面を介して上記ワークとワイヤーの圧接部にスラリーを供給するように構成し、前記スラリー供給手段が、スラリー供給機構を具備したワークプレートであり、かつ前記スラリー供給機構を具備したワークプレートが、その内部に形成された中空状のスラリー受け部と、該ワークプレートの外面部に開穿され該スラリー受け部にスラリーを導入するためのスラリー導入口と、該ワークプレートの外側両面に設けられ該スラリー受け部からスラリーをワーク外周面に供給するためのスラリー供給口とを有し、該スラリー導入口を介してスラリーを該スラリー受け部に導入し、該導入されたスラリーを該スラリー供給口からワーク外周面に供給するようにしたことを特徴とする。
【0019】
前記スラリー供給手段としては、種々の態様が考えられ、例えば別体として設けられたスラリー供給手段からワーク外周面に直接スラリーを供給する構成も可能である
【0020】
上記したように構成すれば、ワークの上方に位置するワークプレートを利用してスラリーの供給を行うことができるので、別体としてスラリー供給機構を設ける必要がないという有利さがある。
【0021】
本発明のワイヤーソー装置によるワークの切断方法は、メインローラ間に巻回されかつ走行するワイヤーにワークを押し当てこのワークとワイヤーの圧接部にスラリーを供給することによって該ワークをウェーハ状に切断するワークの切断方法において、上記スラリーをワーク外周面に供給し、該ワーク外周面を介して上記ワークとワイヤーの圧接部にスラリーを供給するようにしたものである。
【0022】
本発明のワークプレートは、内部に形成された中空状のスラリー受け部と、ークプレートの外面部に開穿され該スラリー受け部にスラリーを導入するためのスラリー導入口と、該ワークプレートの外側両面に設けられ該スラリー受け部からスラリーをワーク外周面に供給するためのスラリー供給口とを有するものであり、上記したワイヤーソー装置に好適に用いられるものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面中、図1〜図4に基いて説明する。図1は本発明のワークプレートをインゴットに当て板を介して固着した状態を示す斜視説明図、図2は図1の上面図、図3は図1の側面図及び図4は図1の正面図である。図1〜図4において図5〜図7と同一又は類似部材は同一符号で示す。
【0024】
本発明のワイヤーソー装置の基本的構成は、図5〜図7に示した従来のワイヤーソー装置と変わるところはないので、その構成についての再度の説明は避け、本発明の特徴点についてのみ説明する。
【0025】
図1〜図4に示すごとく、本発明の特徴はワークプレート34がスラリー26を供給できる構造を有している点にある。すなわち、該ワークプレート34は、その内部に中空状のスラリー受け部40を有している。42はスラリー導入口で、該スラリー受け部40と連通して該ワークプレート34の外面部に開穿されている。該スラリー導入口42は該スラリー受け部40にスラリー26をスラリー供給源(図示せず)から導入する作用を行う。
【0026】
44,44はスラリー供給口で、該スラリー受け部40と連通しかつ下方に開口して該ワークプレート34の外側両面に設けられている。該スラリー供給口44,44はスラリー受け部40からスラリー26をワーク(インゴット)Wの外周面に供給する作用を果す。
【0027】
上記したワークプレート34を用い、ワイヤーソー装置12によってインゴットWを切断又はスライスする場合について説明する。まず、従来と同様に、当て板36をインゴットWの上面に接着し、該当て板36の上面に本発明のワークプレート34を接着する(図1〜図4に示した状態)。
【0028】
図1〜図4の状態において、スラリー供給源(図示せず)からスラリー導入口42を介してスラリー受け部40にスラリー26を導入する。該スラリー受け部40に一旦導入されたスラリー26は該スラリー受け部40の両側に形成されたスラリー供給口44,44から下方に流下しインゴットWの外周面にスラリー26を直接かけ、該スラリー26が該外周面をつたわってワイヤー20とインゴットWとが互いに圧接しているインゴット切断部Aに流動供給される。
【0029】
該インゴット切断部Aに達したスラリー26は安定した供給量を維持してワイヤー20とインゴットWの圧接部に供給されるので、ワイヤー20の切れ味は安定し、切れ味の不安定に起因する反りやうねりなどのウェーハの好ましくない性状の発現を抑制することができる。
【0030】
上述したごとく、インゴットWの外周面にスラリー26を直接かけることにより、このスラリー26は続いてインゴットWの外周面を伝わって下方に流れ、インゴット切断部Aに供給されるが、このようにスラリー26を流下させると、最初にインゴットWの外周面にかけられたスラリー26のほとんど100%がそのままインゴットWの外周面を伝わってインゴット切断部Aに供給されるので、ワイヤー20の上面にスラリー26を供給する従来方法(図5)に比較してスラリー26は効率よく無駄なく切断作業に利用できることとなる。
【0031】
また、ワイヤー20が通過切断した後のインゴットW部分は既に多数の部分ウェーハとなっているが、その既切断部の部分ウェーハ部間の間隙部分にスラリー26が入り込むことにウェーハ部分の振動を防ぐことができそれによってウェーハ割れを防止できる利点がある。
【0032】
このようにスラリー26の有効利用を実現することにより、ワイヤー20によるインゴットWの切断効率を向上させることができ、インゴットWの切断時間の短縮化、スラリー供給量の低減並びにスラリー供給用ポンプ能力の削減を図ることができる。
【0033】
図示した実施の形態では、ワークプレート34を改造し、該ワークプレート34の両側からスラリー26をインゴットWの外周面に流下供給する構成について説明したが、インゴットWの外周面にスラリー26を供給する方法としては種々の態様が適用できることは勿論で、例えば、図5に示したノズル28を上方に移動してインゴットWの外周面にスラリー26を供給できる位置に設置し、該ノズル28からインゴットWの外周面にスラリー26を直接かける構成を採用し、上記した実施の形態と同様の作用効果を達成することもできる。
【0034】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げて説明する。
【0035】
(実施例1)
切断条件
シリコンウェーハの直径:8″
シリコンウェーハの厚さ:860μm
スライス枚数:280枚
ワイヤー速度:500m/min
ワイヤーテンション:2.5kg・f
ワイヤー線径:0.18mmφ
砥粒:GC# 600(SiC)
【0036】
上記した切断条件によって、円筒状半導体シリコン単結晶インゴット(直径8インチ)を、図5に示したタイプのワイヤーソー装置のワークプレートを図1〜図4に示した形状のものに変更したワイヤーソー装置を用いて切断して5ロット(1ロットは140枚)のウェーハを切り出した。このとき切断時間は6時間でスラリー供給量は50リットル/minであった。切り出した各ロットのウェーハ140枚から14枚を抜き取り、厚さ(切断方向及びワイヤー方向)、粗さ及び反りを測定し、測定結果を表1に示した。切断中のウェーハの割れは0枚であった。
【0037】
【表1】
Figure 0003695124
【0038】
表中の厚さは、ウェーハ面内の切断方向及びワイヤー方向で各11点ずつウェーハ厚さを測定し、各方向毎に最大値と最小値の差(TV11)を求め、そのTV11値を1ロット内(14枚)の全数について測定し、算出した平均値と標準偏差によって示した。
【0039】
表中の粗さは、Rmax(Peak to Valley)であり、東京精密(株)製の接触式表面粗さ計(商品名:サーフコム)を用いて測定した。表中の反りは、黒田精工(株)製の反り測定装置(ナノメトロ330F)で測定した。
【0040】
比較例
ワークプレートを従来の形状とした従来のワイヤーソー装置を用い、スラリーも従来と同様にワイヤーに供給した以外は実施例1の切断条件と同様にして5ロット(1ロットは140枚)のウェーハを切り出した。このとき切断時間は7時間でスラリー供給量は100〜60リットル/minであった。切り出した各ロットのウェーハ140枚から14枚を抜き取り、実施例1と同様に厚さ(切断方向及びワイヤー方向)、粗さ及び反りを測定し、その測定結果を表2に示した。切断中のウェーハの割れは6枚であった。
【0041】
【表2】
Figure 0003695124
【0042】
表1及び表2の結果から明らかなごとく、切断されたウェーハの厚さの均一性、表面の粗さ及び反りの点において、実施例1(本発明方法)のウェーハが比較例(従来方法)のウェーハよりも格段に優れていることがわかる。また、本発明方法によれば切断時間が従来方法に比較して短縮され、その上スラリー供給量も大幅に低減でき、したがってスラリー供給ポンプ能力の削減ができることがわかった。さらに上述したようにウェーハ割れも本発明方法によれば大幅に減少することを確認した。
【0043】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明によれば、ワーク切断部へのスラリーの供給を安定して行うことができかつスラリーの有効利用を図ることができることにより、ワイヤーによる切断効率を向上させ、ワーク切断時間の短縮化、スラリー供給量の低減並びにスラリー供給ポンプ能力の削減を図ることができ、その上ワーク切断中のウェーハの割れを大幅に減少することができるという大きな効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のワークプレートをインゴットに当て板を介して固着した状態を示す斜視説明図である。
【図2】 図1の上面図である。
【図3】 図1の側面図である。
【図4】 図1の正面図である。
【図5】 ワイヤーソー装置の概略全体説明図である。
【図6】 図5の要部の概略側面図である。
【図7】 図6の断面的説明図である。
【符号の説明】
12:ワイヤーソー装置、14,16,18:メインローラ、20:ワイヤー、22:ワークホルダー、24:駆動モータ、26:スラリー、28:ノズル、30:スラリー溜り、32:支持装置、34:ワークプレート、34a,34b:凸条段部、36:当て板、38:ワークプレートホルダー、40:スラリー受け部、40a,40b:溝、42:スラリー導入口、44,44:スラリー供給口、A:インゴット切断部、W:ワーク(インゴット)。

Claims (1)

  1. 両端部が軸受部によって回転自在に支承されるとともに互いに所定間隔をおいて配置された複数本のメインローラと、該メインローラ間に所定のピッチ幅で巻回されたワイヤーによって形成されたワイヤー列と、円筒状ワークの上面に固着された当て板及び該当て板に固着されたワークプレートを介してワークを支持するワーク支持手段とを有し、該メインローラを回転させることによって該ワイヤー列を走行させて切断領域にある一対のメインローラ間に巻回されたワイヤーにワークを押し当ててこのワークとワイヤーの圧接部にスラリーを供給することによって該ワークをウェーハ状に切断するワイヤーソー装置において、上記スラリーをスラリー供給手段によってワーク外周面に供給し、該ワーク外周面を介して上記ワークとワイヤーの圧接部にスラリーを供給するように構成し、前記スラリー供給手段が、スラリー供給機構を具備したワークプレートであり、かつ前記スラリー供給機構を具備したワークプレートが、その内部に形成された中空状のスラリー受け部と、該ワークプレートの外面部に開穿され該スラリー受け部にスラリーを導入するためのスラリー導入口と、該ワークプレートの外側両面に設けられ該スラリー受け部からスラリーをワーク外周面に供給するためのスラリー供給口とを有し、該スラリー導入口を介してスラリーを該スラリー受け部に導入し、該導入されたスラリーを該スラリー供給口からワーク外周面に供給するようにしたことを特徴とするワイヤーソー装置。
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