JPH0799087B2 - 内燃機関のシリンダヘッドカバー - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は内燃機関のブローバイガス処理装置の一部を
構成するシリンダヘッドカバーの改良に関する。

従来の技術 自動車用内燃機関等のブローバイガス処理装置は、一般
に、吸気通路の絞弁上流側からクランクケース内やシリ
ンダヘッドカバー内に新気を導いて内部を掃気し、かつ
この新気によって押し出されたブローバイガスをシリン
ダヘッドカバーのブローバイガス出口から吸気通路の絞
弁下流側に導入して燃焼させる構成となっている。

ここで上記ブローバイガスには、多量のエンジンオイル
が含まれているので、吸気系へのオイルの持ち出しを防
止するために、通常、ブローバイガスの出口となるシリ
ンダヘッドカバー内部に、何らかの油分離手段が設けら
れている。

例えば実公昭63−37464号公報には、シリンダヘッドカ
バーに略Ｕ字形のブリーザ室を設け、その一方の端部か
ら流入したブローバイガスをＵターンさせて油分離を行
うとともに、他方の端部から流入した少量のブローバイ
ガスと衝突させることで更に分離させるようにした構成
のものが開示されている。そして、このシリンダヘッド
カバーは、ブローバイガス出口のみを具備しており、新
気取入口は備えていない。従って、新気は例えば内燃機
関のクランクケース内に直接に導入され、シリンダブロ
ックおよびシリンダヘッドの掃気孔を通して上昇して来
たブローバイガスが上記ブローバイガス出口から導出さ
れることになる。

発明が解決しようとする課題 ところで、上述したようなブローバイガス処理装置にお
いては、機関の高速高負荷時には、絞弁の上下圧力差が
小さくなり、しかもブローバイガス発生量が非常に大き
くなることから、新規通路を介してもブローバイガスが
排出される状態となる。つまり、通常は吸気通路から新
気が導入される新気通路をブローバイガスが逆流して、
吸気通路の絞弁上流側へ流れ、吸入空気とともに燃焼室
へ送り込まれるのである。

従って、上記公報記載のように、シリンダヘッドカバー
にブローバイガス出口とこれに付随する油分離手段のみ
を設けた場合には、クランクケース側の新気取入口に別
途に油分離手段を設ける必要が生じ、機関全体として構
成の複雑化を招き易い。

一方、新気取入口とブローバイガス出口の双方をシリン
ダヘッドカバーに設けることも勿論可能であるが、この
場合には、シリンダヘッドカバーの限られたスペースの
中で新気取入口とブローバイガス出口の双方について十
分な油分離手段を設けることが難しく、しかも新気の動
弁室に対する導入とブローバイガスの排出とを必ずしも
理想的な位置で行うことができずに、両者の置換効率が
低下し易い。

課題を解決するための手段 この発明は、略中央部にシリンダ列方向に沿った凹溝部
を有し、かつブローバイガス掃気用の新気取入口とブロ
ーバイガス出口とが配設されてなる内燃機関のシリンダ
ヘッドカバーにおいて、一方の長辺側の側壁と上記凹溝
部との間の空間内に、新気通路と予備油分離通路とを略
Ｕ字形に連続して形成し、上記新気通路の端部を上記新
気取入口に連通させるとともに、上記予備油分離通路の
端部を新気出口としてシリンダヘッドカバー端部におい
て開口させ、また他方の長辺側の側壁と上記凹溝部との
間の空間内に、ガス通路と主油分離通路とを略Ｕ字形に
連続して形成し、上記ガス通路の端部を上記ブローバイ
ガス出口に連通させるとともに、上記主油分離通路の端
部をブローバイガス取入口として上記新気出口と略対角
線上の位置において開口させたことを特徴としている。

作用 上記構成では、機関の吸気通路から新気取入口へ導かれ
た新気は、先ず新気通路を通して凹溝部に沿って流れ、
かつＵターンし、予備油分離通路を通って新気出口から
シリンダヘッドカバー内部へ流入する。尚、この新気は
更にシリンダヘッドやシリンダブロックの掃気孔を通し
てクランクケース内に流入し、ブローバイガスを排出す
る。

そして、クランクケース等からシリンダヘッドカバー内
に上昇してきたブローバイガスは、ブローバイガス取入
口から主油分離通路に入り、該主油分離通路で油分離さ
れた後にＵターンし、ガス通路を通してブローバイガス
出口から機関吸気通路へ排出される。

そして新気出口とブローバイガス取入口とが略対角線上
に位置して十分離れているので、新気はブローバイガス
取入口へ直接流入することなく機関内部へ行きわたり、
ブローバイガスの良好な置換排出が行われる。

一方、ブローバイガス発生量が増大する高速高負荷時に
は、新気取入口から逆に機関吸気通路へ向けてブローバ
イガスが排出される。つまり予備油分離通路および新気
通路を逆流してブローバイガスが流れるが、その際に
は、新気通路上流に位置する予備油分離通路によって油
分離がなされる。

実施例 以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
する。

第１図〜第７図は、この発明を直列４気筒DOHC型内燃機
関用のシリンダヘッドカバー１に適用した一実施例を示
し、また第８図はこのシリンダヘッドカバー１を具備し
た内燃機関２の自動車のエンジンルーム内におけるレイ
アウトを示している。

このシリンダヘッドカバー１は、略長方形の深皿状をな
し、かつ一端部にシリンダヘッド（図示せず）のチェー
ン室上方を覆うチェーンケース部３を備えているととも
に、略中央部にシリンダ列方向に沿った凹溝部４が形成
されており、該凹溝部４によって、吸気側カムシャフト
上方を覆う細長い空間５と排気側カムシャフト上方を覆
う細長い空間６とが隔てられている。上記凹溝部４に
は、点火プラズ７（第５図参照）を挿入するための４個
の点火プラグ挿入孔８が形成されており、該点火プラグ
挿入孔８の下面周縁の溝９内に、ゴム製シールリング10
が装着されている。尚、この例では各点火プラグ７の上
部に個々に点火コイル11が配設されている（第５図，第
８図参照）。

一方、上記凹溝部４と一方の長辺側の側壁1aとの間の空
間５内には、新気通路12と予備油分離通路13とが略Ｕ字
形に連続して形成されている。具体的には、図示せぬオ
イルフィラーキャップが装着されたオイル注入孔41との
間を隔てる隔壁14aおよびシリンダ列方向に沿った隔壁1
4bがシリンダヘッドカバー１と一体に鋳造形成されてい
る（第１図参照）とともに、これらを覆うように金属板
からなるアンダーカバー15が取り付けられていて、これ
によって上記新気通路12と予備油分離通路13とが略Ｕ字
形の通路状に画成されている。上記新気通路12は、凹溝
部４の壁面に沿って形成され、かつ一端が金属管からな
る新気取入口16に接続されている。上記新気取入口16
は、シリンダヘッドカバー１の端部詳しくはチェーンケ
ース部３と反対側の端部に突出して設けられており、第
８図に示すように機関吸気通路の絞弁上流つまりスロッ
トルチャンバ17上流側の吸気ダクト18に新気用チューブ
42を介して接続されるようになっている。

また側壁1a側に位置する上記予備油分離通路13は、ブロ
ーバイガス逆流時の油分離を担うもので、シリンダヘッ
ドカバー１側に設けた２枚の邪魔板19とアンダーカバー
15側に設けた１枚の邪魔板20とによって第６図のように
屈曲した流路が構成されている。そして、上記予備油分
離通路13の先端部は、新気出口21としてシリンダヘッド
上方に画成される動弁室内に向けて開口している。この
新気出口21はシリンダヘッドカバー１の新気取入口16側
の端部、詳しくは吸気側の端部に位置している。尚、上
記アンダーカバー15の予備油分離通路13下面部分は、第
６図に示すように新気出口21側が低位となるように、つ
まり分離した油が動弁室内に戻るように傾斜面となって
いる。

また凹溝部４と他方の長辺側の側壁1bとの間の空間６内
には、ガス通路25と主油分離通路26とが略Ｕ字形に連続
して形成されている。すなわち、第１図に示すように隔
壁27a,27bがシリンダヘッドカバー１と一体に鋳造形成
されているとともに、これらを覆うように金属板からな
るアンダーカバー28が取り付けられていて、これによっ
て上記ガス通路25と主油分離通路26とが略Ｕ字形の通路
状に画成されている。上記ガス通路25は、凹溝部４の壁
面に沿って形成されているもので、その先端には、隔壁
27c,27dと上記アンダーカバー28とによってチェーンケ
ース部３に沿うように形成されたガス横断通路29が接続
されており、該ガス横断通路29を介してシリンダヘッド
カバー１側面の金属管からなるブローバイガス出口30に
連通している。上記ブローバイガス出口30は、第８図に
示すように、流量制御用のいわゆるPCVバルブ40を具備
し、かつ機関吸気通路の絞弁下流例えば吸気マニホルド
31のサージタンク31aにガス用チューブ32を介して接続
されるようになっている。尚、第８図において、33はエ
アクリーナ、34はラジエータ、35は燃料噴射弁を示す。

また主油分離通路26は、側壁1b側に位置しており、シリ
ンダヘッドカバー１側に設けた３枚の邪魔板36とアンダ
ーカバー28側に設けた２枚の邪魔板37とによって第７図
のように屈曲した流路が構成されている。そして上記主
油分離通路26の基端部は、ブローバイガス取入口38とし
てシリンダヘッド上部の動弁室内に向けて開口してい
る。このブローバイガス取入口38は、シリンダヘッドカ
バー１の排気側でかつチェーン室側の端部つまり前述し
た新気出口21に対し略対角線上の位置に開口している。
尚、上記アンダーカバー28の主油分離通路26下面部分
は、第７図に示すように、ブローバイガス取入口38側が
低位となるように、つまり分離した油が動弁室内に戻る
ように傾斜面となっており、かつ邪魔板36,37より下方
つまりブローバイガス取入口38寄りの位置に、分離した
油を排出する油排出筒39が設けられている。

さて上記の構成においては、機関高速高負荷時を除き新
気取入口16から新気が導入される。この新気は、先ず新
気通路12を通って凹溝部４を冷却するように流れ、かつ
Ｕターンして予備油分離通路13を通り、新気出口21から
動弁室内に入る。この新気は、動弁室内を掃気するのは
勿論のこと、図示せぬシリンダヘッドやシリンダブロッ
クの掃気孔を通ってクランクケース内に導入され、その
内部を掃気する。

この新気によって押し出されたブローバイガスは、上述
した掃気孔や機関端部のチェーン室を通ってシリンダヘ
ッドカバー１内に集められ、かつブローバイガス取入口
38から主油分離通路26に流入する。ここで、上記ブロー
バイガス取入口38と新気の導入が行われる新気出口21と
は略対角線上に十分離れて位置しているので、流入した
新気によって機関内部を良好に掃気することができる。
つまり流入した新気をブローバイガスの掃気に効率良く
利用でき、その置換率が高くなる。

主油分離通路26内に流入したブローバイガスは、該通路
26を通って複数回屈曲する間に油分離がなされ、かつＵ
ターンして、ガス通路25およびガス横断通路29を通り、
ブローバイガス出口30からサージタンク31a内に吸入さ
れる。上記構成では、主油分離通路23を十分に長く確保
できるので、良好な油分離が行える。またブローバイガ
スは、シリンダヘッドカバー１の外側に位置する主油分
離通路26を通る間の外気により冷却され、ガス通路25に
達するときには比較的低温なものとなっているので、点
火プラグ挿入孔８を有する凹溝部４をそれほど加熱する
ことがない。従って、前述した新気通路12による冷却作
用と相俟って凹溝部４の温度を低く保つことができ、シ
ールリング10の早期劣化等を防止できる。

尚、上記主油分離通路26で分離除去された油は、一部が
油排出筒39から排出され、かつ残部がブローバイガス取
入口38から動弁室内に戻る。

一方、ブローバイガス発生量が大となる高速高負荷時に
は、新気通路12を逆流してブローバイガスが排出され
る。すなわち、新気出口21から予備油分離通路13にブロ
ーバイガスが流入し、かつこの予備油分離通路13から新
気通路12を通り、更に新気用チューブ19を介してスロッ
トルチャンバ17上流側の吸気ダクト18内に吸入される。
ここでブローバイガス中の油成分は、予備油分離通路13
を通って流れが屈曲する間に分離除去される。特に主油
分離通路26と同様に十分な通路長が与えられているた
め、良好な油分離が行える。

従って、ブローバイガス出口30および新気取入口16の双
方について良好な油分離性能を確保することができ、機
関吸気系への潤滑油の持ち出しを確実に防止できる。そ
して、それぞれの油分離通路13,26は、凹溝部４で区画
された細長い空間5,6内に略Ｕ字形に配設されているた
め、シリンダヘッドカバー１が過度に大型化することも
ない。

発明の効果 以上の説明で明らかなように、この発明に係る内燃機関
のシリンダヘッドカバーによれば、動弁室に対し開口す
る新気出口とブローバイガス取入口とが略対角線上に位
置するので、導入された新気によって良好な掃気を行う
ことができ、ブローバイガスとの置換効率を高く確保す
ることができる。また、新気取入口とブローバイガス出
口の双方について油分離を行うことが可能であり、特に
主油分離通路と予備油分離通路の通路長を十分に長く確
保できることから良好な油分離性能が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明に係るシリンダヘッドカバーをアンダ
ーカバーを取り外した状態で示す底面図、第２図は同シ
リンダヘッドカバーの上面図、第３図は底面図、第４
図，第５図，第６図および第７図は、それぞれ第２図に
おけるIV−IV線,V−Ｖ線,VI線−VI線およびVII−VII線
に沿った断面図、第８図は自動車のエンジンルーム内に
おけるレイアウトを示す説明図である。 １……シリンダヘッドカバー、４……凹溝部、８……点
火プラグ挿入孔、12……新気通路、13……予備油分離通
路、16……新気取入口、21……新気出口、25……ガス通
路、26……主油分離通路、30……ブローバイガス出口、
38……ブローバイガス取入口。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】略中央部にシリンダ列方向に沿った凹溝部
   を有し、かつブローバイガス掃気用の新気取入口とブロ
   ーバイガス出口とが配設されてなる内燃機関のシリンダ
   ヘッドカバーにおいて、一方の長辺側の側壁と上記凹溝
   部との間の空間内に、新気通路と予備油分離通路とを略
   Ｕ字形に連続して形成し、上記新気通路の端部を上記新
   気取入口に連通させるとともに、上記予備油分離通路の
   端部を新気出口としてシリンダヘッドカバー端部におい
   て開口させ、また他方の長辺側の側壁と上記凹溝部との
   間の空間内に、ガス通路と主油分離通路とを略Ｕ字形に
   連続して形成し、上記ガス通路の端部を上記ブローバイ
   ガス出口に連通させるとともに、上記主油分離通路の端
   部をブローバイガス取入口として上記新気出口と略対角
   線上の位置において開口させたことを特徴とする内燃機
   関のシリンダヘッドカバー。