JPH0784502B2 - β―結晶形ポリプロピレン組成物又はエチレン―プロピレンブロック共重合体組成物及びその製法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、高純度および熱的安定性を有するβ結晶形ア
イソタクチックポリプロピレン組成物又はエチレン−プ
ロピレンブロック共重合体組成物、該ポリプロピレン組
成物又はエチレン−プロピレンブロック共重合体組成物
の製法および該ポリプロピレン組成物又はエチレン−プ
ロピレンブロック共重合体組成物で作られた製品に関す
る。

さらに詳しくは、我々が新しく発見したポリプロピレン
用二成分β成核剤であって文献に記載されている他のβ
成核剤と比較して種々いろいろな有利さを有するβ成核
剤の存在下に溶融結晶化することにより形成されるβ相
ポリプロピレンであって、耐衝撃性を有する製品および
微孔性フィルムの製造に使用されうるβ相ポリプロピレ
ンに関する。

〔従来技術〕

アイソタクチックポリプロピレンは、幾つかの結晶形に
結晶化しうる。α形または単斜晶形は最も安定であり広
く行きわたっている。β形または六方晶形は市販されて
いるポリプロピレンに時折り見られるもので、通常は低
レベルである。ポリプロピレン標本におけるβ形結晶の
相対的割合Ｋは、経験的表現により表わされるＸ線回折
により測定される。

（上記式中、H₁₁₀,H₀₄₀およびH₁₃₀は、それぞれα形の
３つの強いピークの高さ（110），（040），（130）で
あり、Ｈ_βは強いβ−ピークの高さ（300）である。

Ｋ値はβ形が存在しないとＯであり、β形のみが物質中
に存在している場合は単一ピークである。

球晶形態が遭遇する射出成形品、モノフィラメントおよ
び押出し成形品において、β結晶形は通常数％で見出さ
れる。最近まで、詳細な研究のために十分なβ形を作る
確実な方法がなかった。ヘキスト社のエイチ・ジェイ・
ロイゲリング（Ｈ・Ｊ・Leugering）は、少量のキナク
リドン着色剤、パーマネントREd E3Bが選択的にβ形の
核を成形するということを報告している。この化合物
は、幾つかの効果的であると知られているβ成核剤の１
つである。しかしながらポリプロピレンをE3Bの存在下
に溶融物から結晶化しても、比較的高い量のβ形を有す
る物質を得ることはいまだに難しい。ウールマンとウエ
ンドルフは、E3Bの存在下で結晶化したポリプロピレン
試料のＫ値は0.6以下であると報告している。ムースと
ヒルガーは、二軸押出機中でE3Bとともに特別な粉末グ
レードのポリプロピレンを溶融押出しすることにより0.
85程の高いＫ値を有する試料を得ることに成功したが、
これ以上の研究は行なわれなかった。日本国特許公開第
57−172943号には、キナクリドン着色剤と重合触媒と混
合し次いで前記混合触媒の存在下にプロピレンを重合化
することからなるβ形アイソタクチックポリプロピレン
を製造する方法が記載されている。このように製造した
ポリプロピレンを溶融押出しし、次いで冷却速度10℃／
分で結晶化すると、試料は示差走査熱量計（D.S.C.）で
測定すると63−88％のβ形の量を含むことが報告されて
いる。しかしながらD.S.C.法はこのような測定に正確な
方法ではなく、我々の経験によればD.S.C.により測定さ
れるβ形の含有量は過剰評価されているようである。さ
らに、このようにして得られたβ相試料は赤色であり、
熱的に不安定であり、加熱の間に簡単にα形へ転換す
る。

文献において記載されている他のβ成核剤はｏ−フタル
酸および少量のイソフタル酸とテレフタル酸の二ナトリ
ウム塩である。これらの多くはE3Bより効果が低く、Ｋ
値に対し定量的値は記載されていない。

ここにおいて、本発明者はポリプロピレンに対しより効
果的なβ成核剤を見い出し、これを用いると通常の加工
条件下でより高い含量のβ形ポリプロピレン物質を製造
することができることがわかった。

〔発明の目的〕 本発明の目的の１つは、β結晶形ポリプロピレンを製造
する方法を提供するものであって、該方法は本発明によ
り与えられる効果的β成核剤を市販のポリプロピレンと
一定の割合で混合し、次いでこの混合物を通常の条件下
で溶融・加工することからなる。

本発明の別の目的は、Ｋ値で表わされるβ結晶形の割合
がＸ線回折により測定して0.85〜0.93であるアイソタク
チックポリプロピレンのβ結晶形を提供するものであ
る。

本発明のさらに別な目的は、より高い耐衝撃性または市
販のポリプロピレンでは得ることのできない他の特性を
有するポリプロピレン物質のβ結晶から作られる製品を
提供することである。

ポリプロピレン用の二成分β成核剤の提供もまた本発明
の目的である。

〔発明の構成および効果〕

本発明は、無色で、熱的に安定で、320℃以下で不輝撥
な、より効果的β成核剤を提供するものである。前述の
β成核剤が存在することにより、より高いβ形含有率を
有する無色のポリプロピレンを通常の加工条件下で得る
ことができる。25〜135℃の温度範囲で結晶化した試料
に対しＫ値で表わされるβ形の相対量は0.85〜0.93の間
である。β成核剤とポリプロピレンとの混合は全く簡単
で、一軸押出機により行なうことができる。市販のペレ
ット等級のポリプロピレンを本発明の目的で使用するこ
とができる。このようにして得られたβ相ポリプロピレ
ンは熱的安定性が向上し、溶融前にα形へ転換しない。

本発明によるβ成核剤は成分ＡとＢを混合することによ
り形成される。成分Ａは有機二塩基酸たとえばピメリン
酸、アゼライン酸、ｏ−フタル酸、テレフタル酸および
イソフタル酸等である。成分Ｂは第II属金属たとえばマ
グネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウ
ムの酸化物、水酸化物または塩酸である。成分Ｂの酸塩
は無機酸または有機酸たとえば炭酸塩、ステアリン酸塩
等から導びかれる。成分Ｂはまた、すでにペレット材料
に存在するポリプロピレンの添加物の１つでもよい。

成分Ａの割合は、混合の間、１×10^-4−５重量％、最も
好ましくは0.01−１重量％、成分Ｂの割合は、２×10^-4
−５重量％、最も好ましくは0.05−１重量％である。本
発明により製造される市販材料としてのポリプロピレン
のβ形は、表１および２で示すように機械的特性が向上
する。表１で示されるポリプロピレンのα形とβ形の機
械的特性は室温のときのものである。成分Ａの割合を１
×10^-4−５重量％としたのは次の理由による。もしも成
分Ａが0.0001重量％未満であるとβ−結晶相ポリプロピ
レン組成物のＫ値が0.85〜0.93の間に達しないからであ
る。また、成分Ａの割合が５重量％を超えると、Ｋ値は
もはや更に増加せず、更に組成物の機械的特性が悪くな
るからである。また有機二塩基酸は高価である。従っ
て、５重量％を超えることはできない。成分Ｂの割合は
１×10^-3−５重量％が好ましい。これは次の理由によ
る。成分Ｂが0.001重量％以上である場合、無機成分が
均一に分散し成核効果が好ましく得られる。しかし、５
重量％を超えるとβ−結晶相ポリプロピレン組成物の機
械的特性（例えば伸び）等が悪くなり、また組成物は硬
くなる。

表2: 23℃におけるポリプロピレンのα形およびβ形の衝撃強
度メルトフロー速度 衝撃強さ（ノッチ付き） g/10分 kg・cm/cm² α β 0.47 13 40 1.7 6.8 17.6 2.7 3.4 10.1 β相プロピレンは、同じ等級のα相ポリプロピレンと比
較して低い降伏強さとより高い耐衝撃性を有する。他の
特徴は、β形試料を引張ったときこれがその中に幾つか
の空隙を有しながらα形へ転換することであり、これに
よりアイソタクチックポリプロピレンのβ形を引張るこ
とにより容易に微孔性フィルムを得ることができる。

β相ポリプロピレンの珍しい特性により様々な潜在的用
途、たとえば耐衝撃性成形品、微孔性フィルム、合成
紙、電気機器のための良好な油含浸を示す粗面紙等に適
用される。

〔実施例１〕 例1. キサングヤングケミカル（Xiangyan Chemical）工場に
より供給されるポリプロピレンホモポリマー1330（メル
トフロー速度1.5gm/10分）の市販ペレット5kgを出発物
質として用いる。β成核剤を、アゼライン酸5gmと炭酸
カルシウム5gmとを混合することにより調製する。工程
は、β成核剤粉末とポリプロピレンペレットとの予備混
合とこれに続く200℃での一軸押出機を用いた溶融加工
とからなる。冷水中で急冷後に押出物をペレットに切
り、次いで溶融物から等温結晶化する。α形に加えてβ
形の形成は、Ｋ値で表わされるように、23〜140℃の結
晶化温度範囲で見られる。得られた結果を次表にまとめ
る。

例２ 例１の実験を繰り返すが、ただしβ成核剤はピメリン酸
5gmと炭酸カルシウム5gmとを混合することにより調製す
る。25−130℃の温度範囲で結晶化した試料のＫ値は、
0.85−0.93の間である。

例３ 例１の実験を繰り返すが、ただしβ成核剤はテレフタル
酸5gmと酸化カルシウム5gmとを混合することにより調製
する。25−130℃の温度範囲で結晶化した試料の値は、
0.85−0.93の間である。

例４ 例１の実験を繰り返すが、ただし使用するポリプロピレ
ン試料は、キサングセングケミカル工場（Xiangyang Ch
emical Works）より供給されるブロック−コポリマー等
級1330である。23−120℃の温度範囲で結晶化した試料
のＫ値は、次の表で示される。

表： エチレン−プロピレンブロックコポリマー1330（エチレ
ンブロック含量22％）に対する結晶化温度におけるＫ値
の依存性結晶化温度（℃） Ｋ 値 23.2 0.86 40 0.88 60 0.89 80 0.88 100 0.92 120 0.92 例５ 例１の実験を繰り返すが、ただしβ成核剤の成分Ｂを酸
化バリウム5gmとする。このようにして得られた試料の
Ｋ値は25−120℃の結晶化温度で0.85−0.93の間に存在
する。

例６ 例１により調製される試料を射出成形して衝撃試験用の
ノッチ付き試験片を作る。これを23℃で試験すると、衝
撃強さの平均値17.6kg・cm/cm²を示す。一方同じ等級試
料のα形は6.8kg・cm/cm²である。

例７ 例１で調製されたポリプロピレンペレット試料を最初に
フラット・ダイ押出機により薄層フィルムへ押出し、次
いで冷却の間に結晶化する。その後、このフィルムを温
度範囲60−140℃で一軸延伸または二軸延伸する。延伸
工程の間、フィルムは不透明で見掛け密度が非常に減少
した微孔性フィルムに変わり、次いで引張り状態で加熱
処理して空隙構造を安定化する。最終的フィルムは95％
の白色度で両側が印刷可能である。油性インクならびに
タイプライターリボンがこのフィルムに使用可能であ
る。

例８ 100部のポリプロピレンホモポリマーペレット、0.1部の
ピリメン酸および0.1部の水酸化カルシウム粉末を混合
し次いで押出器により溶融した。次いで、溶融組成物を
急冷しそして造粒しβ−結晶ポリプロピレンペレットを
形成した。得られたペレットのＫ値は、Ｘ線回折により
0.93であった。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジン ヘシエン 中華人民共和国，シヤンハイ，リング リ ング ロード 345 (56)参考文献 特開 昭57−172943（ＪＰ，Ａ)

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（Ａ）ａ）0.0001−５重量部の有機二塩基
   酸および ｂ）0.001−５重量部の酸化カルシウムもしくは酸化バ
   リウム、水酸化物又は炭酸塩 から成る二成分β−成核剤；および （Ｂ）0.85〜0.93の間のＫ値を有する、β−結晶相ポリ
   プロピレン又はβ−結晶相エチレン−プロピレンブロッ
   ク共重合体100重量部を含んでなるβ−結晶形ポリプロ
   ピレン組成物又はエチレン−プロピレンブロック共重合
   体組成物（但し、 式中、H₁₁₀,H₀₄₀およびH₁₃₀はそれぞれα形の３つの強
   いピークの高さ（110），（040），（130）であり；そ
   してＨ_βは強いβ−ピークの高さ（300）である）の製
   造方法であって Ａ）有機二塩基酸およびＢ）酸化カルシウムもしくは酸
   化バリウム、水酸化物、又は炭酸塩から成る二成分β−
   成核剤を、通常のポリプロピレン又はエチレン−プロピ
   レンブロック共重合体と混合し、次いでこの混合物を加
   工条件下で溶融し、次いでβ−成核剤の存在下に前記溶
   融物からポリプロピレン又はエチレン−プロピレンブロ
   ック共重合体を結晶化させることからなる、前記方法。
2. 【請求項２】有機二塩基酸がピメリン酸、アゼライン
   酸、ｏ−フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸の
   群から選択される特許請求の範囲第１項記載の製法。
3. 【請求項３】成分ａの割合が混合物において0.01〜１重
   量％の範囲であり、成分ｂの割合が混合物において0.05
   〜１重量％の範囲である特許請求の範囲第１項記載の製
   法。
4. 【請求項４】溶融工程を通常の押出機で行なう特許請求
   の範囲第１項記載の製法。
5. 【請求項５】混合工程において、混合の前にポリプロピ
   レン中にすでに存在する成分ｂを、β−成核剤の一成分
   として用いる特許請求の範囲第１項記載の製法。
6. 【請求項６】（Ａ）ａ）0.0001−５重量部の有機二塩基
   酸および ｂ）0.001−５重量の酸化カルシウムもしくは酸化バリ
   ウム、水酸化物又は炭酸塩から成る２成分β−成核剤；
   および （Ｂ）0.85〜0.93の間のＫ値を有する、β−結晶相ポリ
   プロピレン又はβ−結晶相エチレン−プロピレンブロッ
   ク共重合体100重量部を含んでなるβ−結晶形ポリプロ
   ピレン又はエチレン−プロピレンブロック共重合体組成
   物（但し、 式中、H₁₁₀,H₀₄₀およびH₁₃₀はそれぞれα形の３つの強
   いピークの高さ（110），（040），（130）であり；そ
   してＨ_βは強いβ−ピークの高さ（300）である）。
7. 【請求項７】Ｋ値が0.88〜0.93の間である特許請求の範
   囲第６項記載のβ−結晶相ポリプロピレン又はエチレン
   −プロピレンブロック共重合体組成物。
8. 【請求項８】β−結晶相ポリプロピレンが無色である、
   特許請求の範囲第６項記載のβ−結晶形ポリプロピレン
   又はエチレン−プロピレンブロック共重合体組成物。