JPH0630609B2 - ポリシストロン性発現ベクターおよびそれを用いた方法 - Google Patents

ポリシストロン性発現ベクターおよびそれを用いた方法

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JPH0630609B2
JPH0630609B2 JP59007899A JP789984A JPH0630609B2 JP H0630609 B2 JPH0630609 B2 JP H0630609B2 JP 59007899 A JP59007899 A JP 59007899A JP 789984 A JP789984 A JP 789984A JP H0630609 B2 JPH0630609 B2 JP H0630609B2
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dhfr
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、脊椎動物細胞培養におけるポリペプチド産生
への組換DNA技術の適用に係る。更に詳しくは、本発
明は、脊椎動物細胞培養における外来ポリペプチドの産
生を操る際の手段としての第2制御ポリペプチドのコー
ド配列の利用に係る。
異種タンパク質すなわち宿主細胞によって通常産生され
ないタンパク質を産生するために宿主細胞を利用する一
般的原理はよく知られている。然しながら、得られるタ
ンパク質の取り扱い易さという観点から望ましい脊椎動
物宿主細胞の利用によりかなりの量の異種タンパク質を
得ることには多くの技術的困難性を伴う。異種タンパク
質をコードする遺伝物質をバクテリアに組み込んでこれ
を発現させることに成功した例は沢山知られている。た
とえば、ヒトインターフェロン,デスアセチル−チモシ
ンα−1,ソマトスタチン及びヒト成長ホルモンがこの
ようにして産生された。最近、宿主として酵母細胞(例
えば本出願人の1981年2月25日付US特許出願番号第23
7,913号;EPO出願公開番号第0060057号参照)及び脊
椎動物細胞培養物(1981年8月31日に出願されたUS特
許出願番号第298,235号;EPO出願公開番号第0073656
号参照)のような非−バクテリア宿主を利用することが
可能になった。哺乳動物のタンパク質の産生に宿主とし
て脊椎動物細胞培養物を利用することは有利である。な
ぜならば、そのようなシステムは、修飾,グリコシレー
ション,輸送配列の付加及び細胞の中で産生されたペプ
チドのその他の後処理に対する付加的な可能性を有して
いるからである。例えば、バクテリアは成功裡にトラン
スフェクトされ且つ「αチモシン」を発現し得るが、産
生されるポリペプチドは哺乳動物に見られる「天然の」
αチモシンのN−アセチル基を欠いている。
一般に、宿主細胞が異種タンパク質を産生し得るように
工夫された遺伝子工学技術にあっては、 (1)「プロモーター」すなわちコード配列の発現を制御
且つ可能にするヌクレオチド配列; (2)mRNAにリボソーム結合部位を付与する配列; (3)「コード領域」すなわち所望ポリペプチドをコード
するヌクレオチド配列; (4)所望タンパク質に対する全コードが解読されたなら
その転写を終止させ得る「終止配列」; (5)ベクターが直接ゲノムに組み込まれない場合の「レ
プリコン」すなわちベクターが細胞内にあるなら該全ベ
クターの再生を可能にする複製のオリジン; を含むDNA配列すなわち「発現ベクター」を調製しな
ければならない。
本発明のベクター構築に於いては、同一のプロモーター
が二つのコード配列即ち所望タンパク質のコード配列と
第2タンパク質のコード配列とを制御することになる。
転写終止もまたこれらの配列によって行なわれる。然し
ながら、タンパク質は分離した形態で産生される。なぜ
ならば、該タンパク質は翻訳終止及び開始シグナルによ
って分離されているからである。
一般に、遺伝発現ベクターは二本鎖DNAの染色体外ル
ープであるプラスミドの形態にある。これらはバクテリ
ア中に天然の形態で存在するものであり、しばしば細胞
毎に多数コピーとして存在する。然しながら、「制限酵
素」を用いて適当な配置で上掲した4つの必須要素を一
緒に切り継ぎ(スプライシング)することにより、人工
プラスミドを構築することも可能である(もちろんこれ
らは最も有用である)。制限酵素とはその触媒活性が特
定の塩基配列での溶解に限定されるヌクレアーゼであ
り、各塩基配列は特定の制限酵素に対して特徴的であ
る。上掲要素(又はその断片)の末端部位をうまく構築
することにより、制限酵素はこれらの要素を一緒に切り
継ぎして最終遺伝発現ベクターを形成するものであるこ
とが判る。
次に宿主細胞を誘発してベクターを取り込ませ(トラン
スフェクション)、通常の生育の附随的な結果として所
望のポリペプチドの合成が行なわれるように該宿主細胞
を増殖する。
上記した方法には2つの重要な問題が残っている。その
1つは、ベクター中に、上掲した4つの必須要素に加え
て、実際に遺伝発現ベクターを取り込んだ細胞を端的に
選択し得るようなマーカーを有することが望ましいこと
である。宿主としてバクテリアを利用する場合、しばし
ば用いられるマーカーはテトラサイクリン又はアンピシ
リンの如き抗生物質に対する耐性である。薬剤耐性の細
胞のみが抗生物質含有培地で成長する。それ故に、トラ
ンスフェクトさせようとする細胞培養物が抗生物質含有
培地で生育する場合には、現実にトランスフェクトされ
た細胞のみがコロニーとして出現する。形質転換の頻度
は極めて低いので(理想的条件下でトランスフェクトし
た場合10個の細胞当り約1個の細胞が形質転換され
る)、これは実際問題として先ず第一に必要な要件であ
る。
宿主として脊椎動物細胞を用いると、達成される形質転
換率はより高くなる(10につき約1個の細胞)。然
しながら、容易な選択は所望のトランスフェクトされた
細胞を得る際の重要問題として残る。選択は重要であ
る。なぜならば、細胞分裂の速度がバクテリアの場合よ
りも約50倍低いからである。すなわち、E.coliは約20
〜30分毎に1回細胞分裂するが、ヒト組織培養細胞は12
〜24時間毎に、1回細胞分裂するだけである。
本発明は、一面において、例えば、宿主細胞が欠損して
いる必須酵素の如き第2タンパク質のコード配列の発現
を利用することにより、所望タンパク質用遺伝発現ベク
ターを取り込んだ脊椎動物細胞を選択するという問題に
指向している。例えば、ジヒドロフォレートリダクター
ゼ(DHFR)をDHFR欠損宿主を用いる際のマーカ
ーとして利用し得る。
外来宿主に於けるポリペプチド産生の第2の問題は、満
足的量のタンパク質を回収するということである。所望
の異種ポリペプチド産生を調整し好ましくは該産生量を
高めるべく或るメカニズムを採用することは望ましいこ
とである。本発明の別の一面に於いては、外部制御パラ
メータによって影響され得る第2のコード配列を利用
し、これらのパラメータを制御することにより発現を制
御する。更に、2つの配列をそれ自身ポリシストロンと
して配置することにより、第1配列の高い発現レベルを
有する形質転換体の選択が可能となる。
DHFRコード配列が、哺乳動物細胞中に取り込まれ、
発現され且つ増幅され得ることは既に示されている。メ
トトレキセート耐性チャイニーズハムスター卵巣(CH
O)細胞からのゲノムDNAがマウス細胞に取り込ま
れ、これまたメトトレキセート耐性である形質転換体が
得られている(後記文献1参照)。マウス細胞に於いて
メトトレキセート(MTX)耐性が得られるメカニズム
は次の3つによるものと思われる:DHFRコード配列
遺伝子増幅(文献2,3,4参照);MTX摂取の低下
(文献5,6参照)及び産生されたDHFRのMTXに
対する親和力の低下(文献7参照)。
MTX曝露によるDHFR遺伝子の増幅は同時にトラン
スフェクトされた遺伝子配列の増幅を同時に生起するも
のと思われる。B型肝炎DNA配列を含むプラスミド及
びMTX耐性DHFRの突然変移遺伝子を含むハムスタ
ー細胞系(セルライン)からのゲノムDNAの両者でト
ランスフェクトされたマウス線維芽細胞は、DHFR配
列増幅を刺激すべくMTXが使用された場合、培地中に
増加された量のB型肝炎表面抗原(HBsAg)を分泌
することが示されている(後記文献8参照)。更に、
E.coliタンパク質XGPRTをコードするmRNA
は、MTXの存在下で、別個のプロモーターによる制御
下にあるDHFR及びXGPRT遺伝子配列で同時にト
ランスフェクトされたCHO細胞中で増幅される(文献
9参照)。また、MTXの存在下でDHFR/SV40プ
ラスミド組み合せ中のプロモーター固有の配列発現もま
た増加されることが示された(文献10参照)。
本発明は、同一のプロモーターの制御下にある第2の遺
伝コード配列を含む所望ポリペプチドの遺伝発現ベクタ
ーで形質転換された脊椎動物細胞宿主に於いて、この第
2の配列が、一般的に形質転換体に対しての便利な選択
マーカーとなるのみならず、第1の配列に対し制御デバ
イスとして作用すると共に第1配列の高い発現レベルを
示す形質転換体に対しても簡便なスクリーニングマーカ
ーとなり、もって所望ポリペプチドの発現が調整される
ことになり大抵の場合該発現が高められることになると
いう発見に基づいている。
このことは、本発明の方法によれば2つのタンパク質が
成熟形態で別々に産生されるので特に重要である。融合
情報(mRNA)が形成されるように2つのDNAコー
ド配列は同一の転写プロモーターによって制御される
が、これらは第1の配列に対する翻訳終止シグナル及び
第2の配列に対する翻訳開始シグナルによって分離され
ており、それ故に2つの異なったタンパク質が得られる
のである。
脊椎動物宿主細胞培養システムは動物システムに適当な
グリコシレーション,ホスホリレーション及び脂質会合
を生起し得るので(バクテリア宿主ではこれが起こらな
い)しばしば有利であり、このような状況に合うマーカ
ーシステム及び調整システムが得られるということは重
要な意味をもつ。
したがって、本発明の一面は、第2のタンパク質及び所
望タンパク質をコードする配列を含み、所望配列及び第
2配列の両者が同一のプロモーターによって支配されて
いるポリシストロン性発現ベクターを利用して、脊椎動
物細胞宿主から有用な異種タンパク質を得る方法にあ
る。コード配列は翻訳停止及び開始シグナルコドンによ
って分離されている。第2配列の発現は所望タンパク質
の配列の発現に対して制御作用を及ぼし、第2タンパク
質はトランスフェクトされた細胞の選択に対するマーカ
ーとして作用する。本発明はこれら作用のいずれか一方
又は両方を有する第2配列を利用するものである。
他の面に於いては本発明は、所望の異種ペプチドを産生
するために脊椎動物細胞をトランスフェクトするのに適
した遺伝発現ベクター,このトランスフェクションによ
って生じた細胞培養物及びこの細胞培養によって産生さ
れたポリペプチドに関する。
A.定義 本明細書中の「プラスミド」とは、バクテリア中に天然
に存在するプラスミド及び人工的に構築した環状DNA
断片の両方を含む。
本明細書中の「発現ベクター」とは、宿主細胞培養に於
ける異種ペプチド発現のための上掲した4つの必須要素
を少なくとも含むプラスミドを意味する。
本明細書中の「異種タンパク質」とは、宿主有機体によ
っては通常産生されないものであるか又はその生存のた
めには通常要求されないタンパク質又はペプチドを意味
する。
本明細書中の「所望タンパク質」とは、本発明方法で産
生しようとする異種タンパク質又はペプチドを意味す
る。
本明細書中の「第2ペプチド」とは、宿主細胞に於ける
発現の第1産物として望ましい異種ペプチドではないタ
ンパク質又はペプチドを意味し、このタンパク質自身の
性質又はこれをコードしている配列の性質によって、発
現ベクターによるトランスフェクションのマーカーとな
り得及び/又は第1の所望の異種ペプチドの発現を調整
し得る別の異種ペプチドを意味する。
ペプチド配列は約5個のアミノ酸のように短いものから
約1000のアミノ酸のように長いものまである。ペプチド
という用語とタンパク質という用語の従来から観念され
ている相違は本明細書に於いては従来のように識別され
ていない。区別されなければならない場合には、そのよ
うに特定する。
本明細書中の「第1配列」とは、所望ペプチドをコード
するヌクレオチド配列である。
本明細書中の「第2配列」とは、第2ペプチドをコード
するヌクレオチド配列である。
本明細書中の宿主細胞の「トランスフェクション」と
は、何らかのコード配列が実際に発現されるか否かに関
わりなく、検知可能なように発現ベクターが宿主細胞に
取り込まれたことを意味する。本発明に於いては、成功
的トランスフェクションは該宿主細胞中のこのベクター
の作用の何らかの徴候が認められたなら確認されたこと
になる。この意味に於いて成功の種々のレベルが存在す
ることが判る。第1に、ベクターのコード配列は発現さ
れるかもしれないしされないかもしれない。しかし、ベ
クターがプロモーター及びターミネーターを含んで適切
に構築されたなら、発現が生起する確率は高い。第2
に、ベクターとなるプラスミドが細胞中に取り込まれて
発現されていても細胞の正常染色体中に組み込まれてい
ない場合には、このプラスミドを発現する能力は数世代
後喪失される。一方、ベクターが染色体中に組み込まれ
れば、宿主細胞の繰り返し複製を通じて発現は安定して
いる。また中間の結果となる場合もある。トランスフェ
クションがこのように生起し得る方法の詳細は理解され
ていないが、宿主培養の数世代に亘る発現の安定性とい
う意味で一連の成果が実験的に認められていることは明
らかである。
B.所望ペプチドの好ましい具体例 好ましい特定の具体例に於いては、例えば、第1の遺伝
子配列はB型肝炎表面抗原(HBsAg)をコードす
る。このタンパク質はB型肝炎ウィルスから誘導される
ものであり、ヒトのB型肝炎の感染源である。この病気
は衰弱,肝臓障害,初期癌及び時には死をもたらすもの
である。この病気は特に多くのアフリカの国々及びアジ
アの国々でかなり流行しており、これらの国々では多数
の人々が該病気を潜在的に伝染する慢性的保菌者となっ
ている。このウィルス(HBV)は該カプシド更にエン
ベロープで包囲されているDNA分子からなる。該ウィ
ルスに関連しているタンパク質は表面抗原(HBsA
g),コア抗原及びDNAポリメラーゼ等である。HB
sAgは感染したヒトに抗体を生じさせることが知られ
ている。感染個体の血清中に見られるHBsAgは径の
平均値が約22nmであるタンパク質粒子からなり、そのた
め「22nm粒子」と呼称されている。したがって、HBs
Ag粒子がワクチン用の有効な基剤となると思われる。
C.第2ペプチドの好ましい具体例 或る生育条件下で細胞によって産生される一定量の特定
酵素を制御するのに環境条件がしばしば有効であること
が認められている。本発明の好ましい具体例において
は、ジヒドロフォレートリダクターゼ(DHFR)の阻
害剤であるメトトレキセート(MTX)に対するある種
の細胞の感受性を利用する。DHFRは1つの炭素単位
の転位を含む合成反応に間接的に要求される酵素であ
る。DHFR活性を欠いていると、その合成に1つの炭
素単位の転位が必要とされる化合物が存在する場合を除
いて、細胞は成長することができない。然しながら、D
HFRを欠く細胞はグリシン,チミジン及びヒポキサン
チンが共に存在すると成育する。
通常DHFRを産生する細胞は、メトトレキセートによ
って阻害されることが知られている。殆んどの場合、適
当量のメトトレキセートを正常細胞に添加すると、細胞
の死につながる。しかしながら、或る種の細胞はDHF
Rの量を多くすることによってメトトレキセート処理に
対しても生き残るようであり、この酵素を阻害するメト
トレキセートの能力を超えるものを有している(後記文
献2,3,4参照)。このような細胞に於いてはDHF
R配列をコードするメッセンジャーRNAの量が増加し
ていることが既に示されている。このことはメッセンジ
ャーRNAをコードする遺伝子物質中のDNA量が増加
していることを仮想することにより説明がつくものであ
る。実際、メトトレキセートの添加は明らかにDHFR
遺伝子の遺伝子増幅を生起する。同一のプロモーターに
よって調整されてはいないが、DHFR配列に物理的に
結合している遺伝子配列もまた増幅される(文献1,
8,9,10参照)。結局、別種のタンパク質(この場合
は所望のタンパク質である)に対する遺伝子を附随的に
増幅するために、メトトレキセート処理によって得られ
るDHFR遺伝子の増幅を利用することが可能となる。
更に、DHFRに対する第2の配列が取り込まれる宿主
細胞そのものがDHFR欠損であると、DHFRはまた
成功裡にトランスフェクトされた細胞の選択に対する簡
便なマーカーとして作用する。DHFR配列が所望ペプ
チドに対する配列に有効に結合していると、この能力は
所望の配列を用いる成功的トランスフェクションに対す
るマーカーとして同様に作用する。
D.使用したベクター構築技術(物質及び方法) 下記Fに記載の実施例で構築されたベクターは単離プラ
スミド又はDNA断片の開裂及び結合によって構築され
たものである。
適当なバッファー中で1種又は複数の制限酵素で処理す
ると開裂が起こる。一般に、約20μgのプラスミド又は
DNA断片は200μのバッファー溶液中の約1〜5単
位の酵素を必要とする(特定の制限酵素に対する適当な
バッファーは製造業者により特定されている)。37℃で
約1時間のインキュベーション時間が実行可能である。
インキュベーション後、タンパク質をフェノール及びク
ロロホルムで抽出除去し、核酸をエタノールを用いる沈
澱により水性画分から回収する。
平滑末端が要求される場合には、調製物を10単位のポリ
メラーゼI(Klenow)を用いて15℃で15分間処理し、
フェノール−ク−ロロホルム抽出及びエタノール沈澱す
る。
開裂断片のサイズ分離をD.Goeddel et al.,Nucleic
Acids Res.,:4057(1980)に記載されている6%
ポリアクリルアミドゲルを用いて行なう。この文献に記
載の内容を本発明書中に含めるものとする。
ほぼ等モル量の所望成分を結合するために、正しい整合
性を提供するべく適当に末端処理し、0.5μgDNAに
つき約10単位のT4DNAリガーゼで処理する。
E.好ましい具体例の詳細な説明 一般に、本発明に好適な発現ベクターは遺伝子スプライ
シング技術の適用により構築される。出発物質は天然の
バクテリアプラスミドであり、必要に応じて予め修飾し
ておく。本発明の好ましい具体例に於いては、M.Lus
ky et al.,Nature,239:79(1981)に記載の方法により調
製された修飾pBR322プラスミドであるpMLプラス
ミドを利用する。これは、サルウィルスSV40から誘導
される唯一のプロモーター並びにDHFR及びHBsA
gに対するコード配列を含有する。
構築に於いて、プロモーターを(リボソーム結合配列と
共に)、所望タンパク質をコードするコード配列及び第
2タンパク質をコードするコード配列の上流に位置させ
る。単一の転写終止配列を両者の下流に位置させる。上
流コード配列の末端部に翻訳終止シグナルを位置させ、
その下流に下流配列の翻訳開始シグナルを位置する。こ
のようにして、2つのコード配列が単一mRNA鎖中で
発現するが、2つの別々の成熟タンパク質が発現され
る。
特に好ましい具体例に於いては、第2ペプチドをコード
する配列は所望ペプチドをコードする配列の下流にあ
る。これらの環境下にあっては、第2ペプチドによって
形質転換された細胞を選択しようとする方法が、所望ペ
プチドの特に高い産生をも選択する。
F.実施例 下記実施例は本発明を説明するものであって、何ら本発
明を制限するものではない。
実施例1HBsAg配列含有ベクターpE342.HS94.
HBV 第1図に、HBsAgプラスミドの構築を示す。
表面抗原遺伝子を含む1986 bpEcoRI−BglII断片
を、Liu et al.,DNA,:213(1982)(本明細書中
に包含する)に記載の如く、pBR322でクローン化し
たHBVウィルスゲノムから単離した。この配列をpM
LのEcoRI及びBamHI部位間に結合した。pMLは
Lusky et al.,Nature,293:79(1981)(本明細書中に包
含する)に記載のように、サル細胞中での複製を阻害す
る配列を欠如しているpBR322誘導体である。得られ
たプラスミドの唯一のEcoRI部位に、ウィルスゲノム
のHindIII及びPvuII消化によって得、予め修飾して両
端をEcoRI制限部位にしたSV40の342bpオリジン断
片を挿入してp342Eを得た。p342E(pHBs348−E
とも指称される)は、Levinson et al.による1981年12
月3日付出願の米国特許出願第326,980号明細書に記載
されている。該出願を引用して本明細書中に包含する
(欧州特許出願公開第0073656号)。要約すれば、サル
ウィルスSV40のオリジンを単離するために、SV40D
NAをHindIIIで消化し、コンバーター(AGCTGA
ATTC)を添加してHindIII末端をEcoRI末端に変
換した。DNAをPvuIIで切断しRIリンカーを添加し
た。EcoRIで消化後、オリジンを含む348bpb断片をポ
リアクリルアミドゲル電気泳動及び電気溶出で単離し、
pBR322中でクローン化した。HBV(Animal Vir
us Genetics(Ch.5)Acad.Pres,N.Y.(198
0))のEcoRI及びBglIIによる消化で得られた1986bp
断片(これはHBsAgをコードする遺伝子を含んでい
る)を、EcoRI部位及びBamHI部位でプラスミドpM
L(Lusky et al.,Nature,293:79(1981))にクローン
化して発現プラスミドpHBs348−Eを構築した(pM
Lは、サル細胞中でのプラスミド複製を阻害する配列が
除去された欠失を有するpBR322誘導体である)。得
られたプラスミド(pRI−Bgl)を次にEcoRIで直
線化し、SV40のオリジン領域を示す348bp断片をpR
I−BglのEcoRI部位に導入した。オリジン断片はい
ずれの配向でも挿入され得る。この断片は複製のオリジ
ン以外に初期及び後期のSV40プロモーターをコードし
ているので、オリジンの配向次第でどちらかのプロモー
ターが作用し該プロモーターの制御下でHBV遺伝子が
発現し得た(pHBS348−Eは初期プロモーターの制
御下で発現したHBsを示す)。pE342を修飾するた
めに、pE342をEcoRIで部分消化し、KlenowDNA
ポリメラーゼIを用いて開裂部位を充填し、プラスミド
を再結合し、これによりpE342中のSV40オリジンに
先行するEcoRI部位を除去する。得られたプラスミド
即ち、pE342△R1をEcoRIで消化し、KlenowDN
AポリメラーゼIを用いて充填し、BamHIで再度切断
する。アクリルアミドゲル電気泳動後、約3500bp断片を
電気溶出し、フェノール−クロロホルム抽出し、前記の
如くエタノール沈澱させる。EcoRI及びXbaで消化し
てHBsAgの5′非翻訳リーダー領域を除去し、肝炎
発現プラスミドpHS94(Liu et al.,上掲)の類似す
る150bpEcoRI−Xba断片を代わりに挿入してpE34
2.HS94.HBVを形成した。
(Liu et al.によって記載されているようにpHS94
は真のHBsAg遺伝子の翻訳開始コドンを含むが、
5′非翻訳情報配列は全部欠如している。前記のごとき
SV40初期プロモーターの制御下で真のEcoRI−Bgl
II断片とpHS94由来等価物の双方の発現レベルは同等
であり、プラスミドの性能に影響することなく交換可能
である。) 実施例2DHFR配列含有ベクターpE342.D22 唯一の発現可能な配列としてDHFRを担持するプラス
ミドpE348.D22の構築を第2図に示す。
DHFRcDNAプラスミドpDHFR−11(Nunberg
et al.,Cell,19: 355(1980)参照)の1600l bpPstI
インサートをエキソヌクレアーゼBal31で処理してPst
I部位に隣接するポリG:C領域を除去し、BglIIで消
化し、得られた約660 bp断片をゲルから単離した。Bal
31−BglII消化cDNAをBglII部位を含有するpBR
322プラスミド誘導体に結合した(pBR322をHindIII
で消化した後、プラスミド断片をKlenowDNAポリメ
ラーゼを用いて4種のデオキシヌクレオチド三リン酸の
存在下で充填し、BglIIで再切断した)。得られたプラ
スミドpDHFR−D22は、pBR322とDHFRcD
NAの5′末端との融合部位の29bp上流に位置するEco
RI部位を有する。次いで、cDNAインサートのコー
ド配列を含むEcoRI−BglII断片をpDHFR−D22
から切り出し、EcoRI−BamHIで消化したpE342.
HBV(実施例1)に結合してDHFR発現プラスミド
pE342.D22を形成した。
実施例3DHFR及びHBsAg配列双方を含有するベ
クター 2種のベクター、即ちDHFR遺伝子がHBsAg遺伝
子の下流にあるポリシストロン含有ベクターpE342.H
BV.D22、並びにDHFR及びHBsAg遺伝子がポ
リシストロンになっていないベクター、pE342.HB
V.E400.D22を構築した(第3図)。
A.クローン化HBV DNA(Liu et al.,上掲)の
EcoRI−TaqI断片を、EcoRI−ClaIで消化した
pE342.D22に結合してpE342.HBV.D22を構築し
た。
B.pE342.HBV.D22のBglII部位とDHFRイン
サートのClaI部位間にSV40初期プロモーターを融合
して更に修飾した。
HBVウィルスDNAは、BglII部位を超えて20bpの位
置に唯一のTaqI部位を含有している。この部位を用い
て、表面抗原遺伝子を含むEcoRI−BglII断片を生成
した。即ち、クローン化HBVウィルスDNAをEcoR
I及びTaqI消化すると、表面抗原遺伝子を含み且つE
coRI部位から1985 bp離れている(Liu et al.,上
掲)唯一のBglII部位を含有する〜2000bpの断片が得ら
れる。(消化によって生成するDNA断片の末端TaqI
及びClaIは粘着性であり共に結合する。) ClaI部位が再生される。即ち、pE342.HBV.D22
はBglII及びClaI部位の双方を含み、これらはDHF
Rコード配列の直前に位置している。
SV40DNAをHpaIIで消化し、前記のように充填し、
HindIIIで再切断して、pE342.HBV.D22のBglII
及びClaI部位に対して粘着性の制限部位を両端に有す
るSV40オリジンを構築した。オリジンを含む440 bp断
片を単離した。これをHindIII及びBamHI消化によっ
て生成する4000 bp pBR322断片並びに、クローン化し
たHBVウィルスDNAをEcoRI消化しKlenowDN
AポリメラーゼIで充填し、BglIIで再消化し、アクリ
ルアミドゲルで単離して生成した表面抗原遺伝子を含む
1986 bp断片と共に三者間結合した。これら3種の断片
の結合は、充填したHpaIIをEcoRIと、2個のHindI
II部位を互いに、且つBglIIをBamHIと結合すること
によってのみ達成し得る。次いで、得られたプラスミド
をClaI及びBamHIで制限消化すると、SV40オリジ
ンを含む470 bp断片が得られる。この断片をpE342.H
BV.D22のClaI及びBglII部位に挿入して、pE34
2.HBV.E400.D22を形成する(第3図参照)。
実施例4宿主細胞のトランスフェクション 本実施例の宿主細胞は組織培養で増殖させた脊椎動物細
胞である。当業界で公知のように、これらの細胞は単離
した正常細胞から連続トランスファー処理により得ら
れ、永久セルラインとして維持し得る。これらのセルラ
インは、液体媒質中の個体支持体上に維持されるか、又
は支持栄養物を含有する懸濁物中で増殖させることによ
り維持される。
好ましい実施例では、DHFR活性を欠損しているCH
O細胞を使用した。これらの細胞は、Urlaub and Ch
asin,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),77:4216(19
80)(本明細書中に包含する)に記載のように製造し増
殖させる。
これらの細胞を上記のように調製された所望のベクター
5mgで、Graham and Van Der Eb,Virology,5
5:456(1978)(本明細書中に包含する)の方法でトラン
スフェクトする。
一連のプラスミドが特定宿主細胞と確実に相互作用する
ようにし得る方法があり、その結果、1個のプラスミド
が細胞に吸収されると他のプラスミドも同様に吸収され
る確立が増大する。従って、1次配列及び2次配列を夫
々含む別々のベクターを使用してこれらの配列を導入し
てもよいし、両配列を含む単一ベクターを使用して導入
してもよい。
実施例5トランスフェクトされた細胞の増殖及びペプチ
ドの発現 前記のトランスフェクション操作にかけたCHO細胞
を、最初非選択培地中で、2日間増殖させ、次いでグリ
シン,ヒポキサンチン及びチミジンを欠く培地中に細胞
を移し、プラスミドDHFRを発現し得る細胞を選択し
た。約1〜2週間後個々のコロニーをクローニングリン
グで単離した。
60又は100mmの組織培養皿に約0.5×10細胞/皿で細
胞をプレートした。2日間増殖させた後、増殖培地を交
換した。24時間RIA(AusriaII,Abbott)でHBs
Agをアッセイした。細胞をカウントし、HBsAg産
生を細胞1個当りの基準で標定した。このようにして、
使用した各ベクターについて10〜20個のランダムなコロ
ニーを解析した。
本発明の一実施例で次表の結果が得られた。
最高の発現を示すセルラインの数個で20回以上の移行の
間表面抗原の産生をモニターしたところ安定であった。
表面抗原を発現する細胞は基層に無限に付着したままで
あり、培地を補充している限りは大量の表面抗原を分泌
し続ける。
ポリシストロン性遺伝子構築によって高レベルのHBs
Agを産生する細胞が単離されることは明らかである。
pE342.HBV.D22で形質転換されたコロニーは100
%が500ng/10細胞/日以上を産生したが、非ポリ
シストロン性プラスミドpE342.HBV.E400.D22で
形質転換されたコロニーは92%が前記量より少量を産生
した。1500ng/10細胞/日以上のレベルで産生した
のはポリシストロン性トランスフェクションを行なった
細胞のみであった。
実施例6メトトレキセート処理 表面抗原を産生するセルラインは、10nMより高濃度の
メトトレキセート(MTX,DHFRの特異的阻害剤)
によって阻害される。MTXの組織培養細胞に対する影
響に関する従来の研究結果と一致して、約10−5の頻
度で高濃度(50nM)のMTXに耐性のクローンが出現
する。然しながらこれらのクローンは、MTX耐性クロ
ーン中でHBV配列が増幅するにもかかわらず、最早表
面抗原を産生しない。即ちこの場合、HBV遺伝子は増
幅されるが発現は低下する。これは、表面抗原を更に産
生すると細胞に致死性になることを示す。
実施例7所望ペプチドの回収 産生された表面抗原は、ウィルスに感染した患者の血清
で観察される22nm粒子に類似の粒子状である。この抗原
形態は高い免疫原性を有することが示されている。仔ウ
シ血清又は他の補足物を欠く培地で細胞を増殖させる
と、培地に含有されるタンパク質の約10%が表面抗原で
あり、このタンパク質は当業界に公知の方法で単離され
得る。表面抗原は、SDS−ポリアクリルアミドゲル上
を22nm粒子由来タンパクと共に移動する。
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【図面の簡単な説明】
第1図は、HBsAg発現ベクターpE342.HS94.H
BVの構築を示す図、第2図は、DHFR発現ベクター
pE342.D22の構築を示す図、第3図は、DHFR及び
HBsAg発現ベクターpE342.HBV.D22及びpE
342.HBV.E400.D22の構築を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特表 昭57−500408(JP,A) J.Mol.Appl.Genet.V ol.1,No.3,P.165−175 (1981)

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】脊椎動物宿主細胞に於いて所望の成熟タン
    パク質を産生する方法であって、 (a)i)所望のタンパク質をコードするDNA配列と ii)第2タンパク質をコードするDNA配列とからな
    り、 i)及びii)の各配列が、同一のプロモーターに機能可
    能に結合しており且つ翻訳終止シグナル及び翻訳開始シ
    グナルによって分離されており、さらに両配列間にスプ
    ライス部位が介在しない発現ベクターを用意し、 (b)脊椎動物宿主細胞を(a)に記載のベクターでトランス
    フェクトし、 (c)第2タンパク質の産生に好都合な条件下で該宿主細
    胞を増殖させる ことからなる前記タンパク質産生方法。
  2. 【請求項2】第2タンパク質がDHFRであることを特
    徴とする特許請求の範囲第1項に記載の方法。
  3. 【請求項3】所望のタンパク質がHBsAgであること
    を特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の方法。
  4. 【請求項4】所望のタンパク質がHBsAgであること
    を特徴とする特許請求の範囲第2項に記載の方法。
  5. 【請求項5】宿主細胞がCHO細胞であることを特徴と
    する特許請求の範囲第1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】宿主細胞がDHFRを欠損していることを
    特徴とする特許請求の範囲第2項に記載の方法。
  7. 【請求項7】宿主細胞がCHO細胞であることを特徴と
    する特許請求の範囲第6項に記載の方法。
  8. 【請求項8】トランスフェクトされた宿主細胞をDHF
    R阻害剤の存在下で生育することを特徴とする特許請求
    の範囲第2項に記載の方法。
  9. 【請求項9】阻害剤がメトトレキセートであることを特
    徴とする特許請求の範囲第8項に記載の方法。
  10. 【請求項10】宿主細胞に於ける所望のタンパク質の産
    生を制御する方法であって、 (a)第2タンパク質のコード配列と所望タンパク質のコ
    ード配列とを含み、双方の配列が同一のプロモーター配
    列に機能可能に結合しており且つ翻訳終止シグナル及び
    翻訳開始シグナルによって分離されており、さらに両配
    列間にスプライス部位が介在しない発現ベクターで該宿
    主細胞をトランスフェクトし、 (b)外的に制御されるプロモーターを調節することによ
    り細胞を培養して、第2タンパク質をコードしている配
    列の増幅を生せしめることからなる前記方法。
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