JP6832533B2 - 浴室用床パン - Google Patents
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Description
また、タイルを張った床パンは、冷えたタイルの上に足をのせたときに急激に足の熱が奪われて冷やっとするなどの不快感を感じさせるという問題がある。
を備え、前記溶射セラミック皮膜の厚さが、0.05mm以上、1.0mm以下である。
本発明に係る実施形態の床パン1は、図1Aに示すように、浴室用床パンであり、洗い場側の洗場床部11と排水部12とが一体で構成されている。実施形態の床パン1は、図1B及び図1Cに示すように、例えば、プレス成形により、洗場部と排水部が一体で成形された構造体である樹脂構造体10と、樹脂構造体10の上面に設けられた溶射セラミック皮膜10cとを備える。
尚、樹脂構造体10は、洗場床構造部101と排水構造部102とを有しており、洗場床構造部101の上面に設けられた溶射セラミック皮膜には10c1の符号を付し、排水構造部102の上面に設けられた溶射セラミック皮膜には10c2の部号を付している。また、図1B及び図1Cにおいて、15の符号を付して示しているのは、浴室用床パンを支える支持部である。
また、実施形態の床パン1は、図1A〜図1Cでは省略しているが図2及び図3に示すセラミック下地層10aを含んでいることが好ましい。
また、床パン1は、大理石又はタイルを用いた床パンに比較すると冷め難いという利点もある。
また、溶射セラミック皮膜10cは、後述するように、溶射ガンにより溶射することにより形成することができる。これにより、洗場床部11と排水部12との屈曲した境界又は洗場床部11の屈曲部、排水部12内の屈曲部に均一の膜厚でかつ滑らかに形成することができ、美観に優れた床パンを提供することができる。
さらに、実施形態の床パン1は、溶射セラミック皮膜10cによって、例えば、大理石風の模様を再現したり、大理石のような質感を持たせたりすることが可能になり、美観及びデザイン性を向上させることができる。
以下、実施形態の床パン1の各構成部材について詳細に説明する。
実施形態の床パン1において、樹脂構造体10は、洗場床構造部101と排水構造部102とを有しており、例えば、プレス成形により一体で作製される。樹脂構造体10の樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。また、樹脂構造体10は、無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーを含むことにより、樹脂構造体10の熱膨張率を低下させ,後に堆積させる溶射セラミック皮膜の熱膨張率に近づけることができるとともに,樹脂構造体10の耐熱性を高めることができる。
実施形態の床パン1において、図2に示すように、溶射セラミック皮膜10cは、偏平なセラミック粒子100が隣接間で融着して堆積した被膜である。この溶射セラミック皮膜10cは、後述するように、加熱されて溶融又は軟化した多数のセラミック粒子が樹脂構造体10の表面に衝突して順次堆積することにより形成される。この溶射セラミック皮膜10cのセラミック材料としては、アルミナ(Al2O3)、ムライト(Al2O3−SiO2)、スピネル(Al2O3−MgO)、(チタニヤ(TiO2)、ジルコニア、ジルコン、酸化クロム、酸化コバルト等、またはそれらの混合物を用いることができる。溶射セラミック皮膜10cの膜厚は、特に限定されるものではないが、例えば、0.01〜3.0mmの範囲、好ましくは、0.05〜1.0mmの範囲、より好ましくは、0.2〜0.5mmの範囲に設定される。
したがって、足をのせたときの冷やっとする不快感を抑えることを考慮すると、溶射セラミック皮膜10cの膜厚は、好ましくは、好ましくは、0.05以上、1.0mm以下の範囲、より好ましくは、0.05以上、0.5mm以下の範囲に設定される。
実施形態1の床パン1において、樹脂構造体10と溶射セラミック皮膜10cの間に、セラミック下地層10aを含んでいることが好ましい。セラミック下地層10aは、例えば、溶射セラミック皮膜10cに比較して、充填密度の低い、例えば、空孔の多いセラミック層からなる。また、セラミック下地層10aとして、セラミック粒子を添加分散させた樹脂層を用いてもよい。セラミック下地層10aは、溶射時の熱が樹脂構造体10に伝達されるのを抑制し、樹脂の溶融又は劣化を抑制する。また、溶射後は、溶射セラミック皮膜10cと樹脂構造体10の熱膨張率の差に起因する応力を緩和することができ、セラミック下地層10aの剥離を防止し、床パン1の耐久性を向上させることができる。セラミック下地層10aのセラミック材料としては、ムライト、スピネル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、酸化クロム、酸化コバルト等、またはそれらの混合物を用いることができる。セラミック下地層10aは、気孔率を増加させた溶射法により形成することができる。あるいは、上記セラミック粒子を樹脂バインダで混合し、塗布することにより形成することができる。
樹脂構造体成形工程
本製造方法では、まず、シート材を積層して金型で加熱加圧成形することにより樹脂構造体10をプレス成形により作製する。なお、実施形態1の床パン1では、例えば、型締めした金型のキャビティー内にモノマー樹脂を注入して硬化させて作製してもよい(注型成形)。尚、樹脂構造体10の成形方法は、プレス成形、注型成形に限定されず、例えば、射出成形により成形してもよい。
次に、樹脂構造体10表面のうちの少なくとも溶射セラミック皮膜10cを形成する部分を粗面化する(図3(b))。具体的には、サンドブラスト、エッチング、サンドペーパーによる研磨を用いて、例えば、表面粗さが、Rz=1〜100μm好ましくは、Rz=5〜50μmより好ましくは、Rz=10〜30μmになるように粗面化する。以上のような方法によれば、例えば、洗場床部11と排水部12とが一体で構成された床パンであって、洗場床構造部101と排水構造部102とにわたって樹脂構造体10の上面全体を粗面化するような場合であっても均一な面粗さで粗面化できる。
また、この粗面化により、樹脂構造体10とセラミック下地層10a間、溶射セラミック皮膜10cを樹脂構造体10上に直接形成する場合には樹脂構造体10と溶射セラミック皮膜10c間の密着性を高くできる。さらに、上述の範囲の表面粗さになるように粗面化することにより、樹脂構造体10とセラミック下地層10a間、樹脂構造体10と溶射セラミック皮膜10c間の密着性をさらに高くできる。しかしながら、例えば、樹脂構造体10とセラミック下地層10aの材料適宜選択することにより、樹脂構造体10とセラミック下地層10a間の密着性が良好な場合には工程短縮のために粗面化工程を省略することができる。
次に、粗面化した樹脂構造体10表面に、セラミック下地層10aを形成する(図3(c))。セラミック下地層10aは、溶射セラミック皮膜10cに比較して、充填密度が低い(言い換えれば、気孔率の高い)セラミック層であり、例えば、20〜50%により形成する。セラミック下地層10aの気孔率は、例えば、30%〜40%の範囲に設定する。
また、セラミック下地層10aはセラミック粒子を樹脂バインダと混合し、塗布することにより形成することもできる。前記、樹脂バインダは、エポキシ樹脂やアクリル樹脂により形成することができる。この、樹脂バインダとセラミック粒子の混合物を、スプレー塗装、コーターによる塗布、刷毛塗り等により粗面化した樹脂構造体10表面に配設することができる。乾燥後の樹脂バインダのセラミック粒子に対する体積配合比率は、通常、例えば、0.5〜50%、好ましくは5〜30%になるように調整される。しかしながら、乾燥後の樹脂バインダのセラミック粒子に対する体積配合比率は、用途により適宜変更され、例えば、床パンに適用される場合には、0.5〜60%、好ましくは10〜50%になるように調整される。
そして、セラミック下地層10aの上から溶射ガン7により溶融又は軟化させたセラミック粒子を衝突させてセラミック粒子を堆積させることにより溶射セラミック皮膜10cを形成する。溶射方法としては、フレーム溶射、アーク溶射、レーザー溶射、プラズマ溶射など、溶射対象、作業環境等を考慮して種々の溶射方法から選択することができる。
溶射工程では、複数の溶射ガン7を用いて同時に異なるセラミック粒子を溶射して溶射セラミック皮膜10cを形成するようにしてもよい。このようにすると、例えば、表面の色彩に変化を持たせて装飾性を向上させることができる。また、溶射工程では、複数の溶射ガンを用いて交互に異なるセラミック粒子を溶射して溶射セラミック皮膜10cを形成するようにしてもよい。このようにすると、例えば、耐食性と耐熱性などの複数の機能を併せ持った溶射セラミック皮膜を形成することができる。
溶射により形成した溶射セラミック皮膜10cの気孔に樹脂を含浸(充填)させて硬化する(封孔処理)。含浸させる樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やシリコーン樹脂等を使用することができる。この封孔処理は、溶射により溶射セラミック皮膜10cを形成すると、溶射直後の皮膜には、例えば、1〜10%の気孔率で気孔が存在する。このような気孔が存在すると、腐食の原因となる物質が気孔を通って樹脂構造体10に達して樹脂構造体10が腐食する可能性がある。封孔処理は、これを防止するために行う。また、溶射セラミック皮膜10cの気孔すなわち間隙部に樹脂を含むと、気孔が塞がれるので、間隙部が汚染されることがなく清掃が容易である。
したがって、実施形態の製造方法によれば、軽量で耐久性が高い床パンを安価に製造することができる。
しかしながら、本発明では、樹脂構造体10の上面の少なくとも一部に溶射セラミック皮膜10cを設けるようにしてもよい。例えば、床パン1では、樹脂構造体10の洗場床構造部101の上面のみに溶射セラミック皮膜10c1を設けるようにしてもよい。このようにしても、軽量でかつ運搬や据え付け作業が容易な床パンを提供することができる。
また、足をのせたときに足の裏からの熱が伝わりにくくなり急激に足の熱が奪われて冷やっとするなどの不快感を感じさせることがない床パンを提供することができる。
しかしながら、本発明において、セラミック下地層10aは必要に応じて形成されるものであり、任意である。
例えば、樹脂構造体10を耐熱性の高い樹脂を用いて構成することにより、樹脂構造体10の熱劣化を抑えてセラミック下地層10aを省略することができる。
また、溶射工程において、溶射するセラミック粒子の粒径を小さくしたり溶融又は軟化を維持しつつセラミック粒子の温度を抑えることにより、樹脂構造体10の熱劣化を抑え、セラミック下地層10aを省略することができる。
しかしながら、本発明において、樹脂は、セラミック粒子100間の間隙に必要に応じて充填されるものであり、任意である。
例えば、樹脂構造体10及びセラミック粒子100を耐薬品性の高い材料で構成することにより、床パン1の耐久性を向上させて、セラミック粒子100間の樹脂充填をなくしてもよい。
また、セラミック粒子100間に樹脂を充填することなく、溶射セラミック皮膜10cの表面を樹脂コートするようにしてもよい。
実施形態の床パン1において、目地溝25を形成することにより、洗場床部11の上面のデザイン性を高め、目地溝25により洗場床部11上を滑りにくくすることができる。
すなわち、目地溝は、通常、タイルを用いた床パンにおいて、タイル間に形成されるものであるが、タイル間に形成された目地溝は、カビ等により一定期間使用した後は汚れが目立つようになり、その汚れは容易には落とすことができない。しかしながら、実施形態の床パン1は、樹脂構造体10の上面に溶射セラミック皮膜10cが設けらている。そして、その溶射セラミック皮膜10cは、間隙部にフッ素または珪素を含む樹脂120を充填することにより、表面の汚れを防止できかつ清掃しやすくできる。また、溶射セラミック皮膜10cの表面を研磨面とすることにより、さらに汚れの付着を抑えよりいっそう清掃しやすくできる。実施形態の床パン1において、目地溝25を形成した場合には、その目地溝の内部にも溶射セラミック皮膜10cを形成することにより、長期間にわたり汚れの少ない美観を維持することが可能になる。
このようにすると、溶射時における樹脂構造体の反り又は変形を抑制することができる。
7 溶射ガン
10,20,30,40 樹脂構造体
10a セラミック下地層
10c 溶射セラミック皮膜
11 洗場床部
12 排水部
51 補強リブ
100 セラミック粒子
120 樹脂
Claims (16)
- 洗場床構造部と排水構造部とを含む樹脂構造体と、
前記洗場床構造部を構成する床面部および前記床面部の周縁部の屈曲部の上面に設けられた溶射セラミック皮膜と、
を備え、
前記溶射セラミック皮膜の厚さが、0.05mm以上、1.0mm以下であり、
前記溶射セラミック皮膜がアルミナ(Al2O3)、ムライト(Al2O3−SiO2)、スピネル(Al2O3−MgO)、チタニヤ(TiO2)、ジルコニア、ジルコン、酸化クロム、酸化コバルト、またはそれらの混合物であり、
前記樹脂構造体と前記溶射セラミック皮膜の間に、前記溶射セラミック皮膜と比較して、充填密度が低いセラミック層もしくはセラミック粒子を添加分散させた樹脂層を有する、浴室用床パン。 - 前記溶射セラミック皮膜の厚さが、0.5mm以下である請求項1記載の浴室用床パン。
- 前記洗場床構造部の上面に目地溝が設けられており、該目地溝の内面に前記溶射セラミック皮膜が設けられた請求項1又は2に記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂構造体は、熱硬化樹脂からなる請求項1〜3のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 樹脂構造体は、無機フィラーを含む請求項1〜4のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 前記セラミック層又は前記樹脂層の色と前記溶射セラミック皮膜の色とは色相環における中心からの方向のなす角度が60度以下の同系色である請求項1に記載の浴室用床パン。
- 前記セラミック層の色又は樹脂層の色と前記溶射セラミック皮膜の色とは、色の明るさを0〜10の明度で表したときに、明度の差が2以下である請求項1に記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂構造体の色と前記溶射セラミック皮膜の色とは色相環における中心からの方向のなす角度が60度以下の同系色である請求項1〜7のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂構造体の色と前記溶射セラミック皮膜の色とは、色の明るさを0〜10の明度で表したときに、明度の差が2以下である請求項1〜8のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂構造体は、溶射セラミック皮膜が設けられた表面と対向する裏面に、補強リブを有する請求項1〜9のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 前記溶射セラミック皮膜の間隙部に樹脂を含む請求項1〜10のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂の色と前記溶射セラミック皮膜の色とは色相環における中心からの方向のなす角度が60度以内の同系色である請求項11に記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂の色と前記溶射セラミック皮膜の色とは、色の明るさを0〜10の明度で表したときに、明度の差が2以下である請求項11又は12に記載の浴室用床パン。
- 前記樹脂は、フッ素または珪素を含む請求項11〜13のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 前記溶射セラミック皮膜の表面は、研磨面である請求項1〜14のいずれかに記載の浴室用床パン。
- 前記溶射セラミック皮膜は、さらに、前記排水構造部を構成する排水部と前記床面部との境界の屈曲部、および前記排水部内の屈曲部、の上面に設けられている、請求項1〜15のいずれかに記載の浴室用床パン。
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