JP6676139B2 - 接着剤 - Google Patents
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Description
このため、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂に塗料等を塗布する際や接着剤によって接着する際には、塗料や接着剤のバインダー成分として塩素化ポリオレフィン樹脂を使用することが提案されている。しかし、塩素化ポリオレフィン樹脂は、焼却によって廃棄する際に、酸性ガス等の有害物質を発生するため、近年、環境への関心が高まるにつれ、非塩素系のバインダー樹脂への移行が強く望まれている。
このような構成を有する積層体を製造する方法として、基材上に接着層を設けた後、予めフィルム化したシーラント樹脂フィルムを、加熱ロールで加圧しながら接着層上に貼りあわせてシーラント層を形成するドライラミネート法や、基材上に接着層を設けた後、押出機から溶融したシーラント樹脂を接着層上に押出してシーラント層を形成する押出ラミネート法等が採用されている。
樹脂を水性化する場合、一般的に、樹脂の分散を促進するために界面活性剤が用いられる。しかしながら、界面活性剤は、一般に不揮発性であり、水性化された樹脂から得られた塗膜を乾燥しても、塗膜中に残存するため、その使用量が多い場合は、塗膜の耐水性や耐薬品性を著しく低下させる問題があり、また塗膜からブリードアウトする傾向が強まるため、環境的、衛生的にも好ましくなく、さらに、塗膜の性能が、経時的に変化する恐れもあった。
(1)積層体を製造するための接着剤であって、
ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するポリオレフィン樹脂水性分散体を含有し、
ポリオレフィン樹脂が、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、
オレフィン成分が、プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)とからなり、
プロピレン以外のオレフィン(B)がブテンを含み、エチレンを含まず、
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であり、
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との合計100質量部に対し、
共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が、1質量部以上であり、かつ、
水性分散体の乾燥残渣における、不飽和カルボン酸モノマー量が5,000ppm以下であることを特徴とする接着剤。
(2)ポリオレフィン樹脂水性分散体が、さらに、架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする(1)記載の接着剤。
(3)上記(1)または(2)に記載の接着剤から得られる塗膜。
本発明の水性分散体は、無機粒子などの様々な材料との混合安定性に優れており、各種コーティング剤、プライマー、塗料、インキ、接着剤等のバインダー用途として好適である。特に、ポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径が0.05μm以下である水性分散体は、添加剤を添加した際の効果や透明性が顕著に高く、上記用途として特に好適である。
さらに、ポリオレフィン樹脂として、上記構成のものを使用することにより、このような水性分散体を低コストで安定的に製造することが可能となる。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体は、ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するものである。
まず、ポリオレフィン樹脂について説明する。
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有するものであり、オレフィン成分は、プロピレン(A)とプロピレン以外のオレフィン(B)とを含有する。
本発明において、プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比(A/B)は、ポリオレフィン樹脂の分散粒子径を小さくする観点、および塗膜のポリプロピレン製基材(以下、PP製基材と称することがある)への接着性を向上させる観点から、60/40〜95/5であることが必要であり、60/40〜80/20であることが好ましい。プロピレン(A)の割合が60質量%未満であると、PP製基材への接着性が低下し、一方、95質量%を超えると、ポリオレフィン樹脂の分散粒子径が大きくなり、樹脂の水性分散化が困難となることがある。
不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppmを超えるポリオレフィン樹脂を使用して水性分散体を連続生産すると、生産回数を重ねるにつれ、水性分散体中の樹脂の重量平均粒子径が増大したり、また水性分散体の粘度が上昇することがある。また不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppmを超えるポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体から得られた塗膜は、耐水性、耐薬品性、耐湿熱性に劣ることがある。
したがって、ポリオレフィン樹脂水性分散体を構成するポリオレフィン樹脂として、不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppm以下であるものを使用することが好ましい。水性分散体連続生産時のポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径増大や水性分散体の粘度上昇の抑制、また、水性分散体から得られる塗膜の耐水性、耐薬品性、耐湿熱性などの物性を更に求める場合、ポリオレフィン樹脂における、不飽和カルボン酸モノマー量は5,000ppm以下であることがより好ましく、1,000ppm以下であることがさらに好ましく、500ppm以下であることが特に好ましく、100ppm以下であることが最も好ましい。
したがって、本発明では、上述のようにプロピレン以外のオレフィン(B)としてブテンが好適であることから、ポリオレフィン樹脂として、プロピレン/ブテン/無水マレイン酸三元共重合体を使用することが好ましい。
なお、ポリオレフィン樹脂に導入された酸無水物成分は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部または全部が開環し、カルボン酸またはその塩となる傾向がある。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらは反応温度によって、適宜選択して使用すればよい。
これら他の成分の含有量は、一般に、ポリオレフィン樹脂の10質量%以下であることが好ましい。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体は、上記のポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するものであり、ポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に分散もしくは溶解されている。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、後述する有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよい。
親水性有機溶剤としては、分散安定性良好な水性分散体を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
親水性有機溶剤としては、製膜の過程で効率よく塗膜から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える親水性有機溶剤は、塗膜から乾燥により飛散させることが困難となる傾向にあり、特に低温乾燥時の塗膜の耐水性や基材との接着性等が低下することがある。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、ポリオレフィン樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの親水性有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体において、水性分散体中に分散しているポリオレフィン樹脂粒子の粒子径は、特に限定されないが、低温造膜性、塗膜の緻密性や透明性、他材料との混合安定性の観点から、重量平均粒子径が0.15μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましく、0.001〜0.10μmであることがさらに好ましく、0.001〜0.05μmであることが特に好ましい。
また、上記ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体においては、水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppm以下であることが必要である。また、水性分散体連続生産時のポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径増大や水性分散体の粘度上昇の抑制、また、水性分散体から得られる塗膜の耐水性、耐薬品性、耐湿熱性等の物性を更に求める場合、不飽和カルボン酸モノマー量は5,000ppm以下であることがより好ましく、1,000ppm以下であることがさらに好ましく、500ppm以下であることが特に好ましく、100ppm以下であることが最も好ましい。後述する添加物を含む場合、乾燥残渣とは、添加物添加後の水性分散体の乾燥残渣を指す。
上述のように、ポリオレフィン樹脂には未反応の不飽和カルボン酸モノマーが残存する。水性分散体の乾燥残渣に含まれる不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppmを超えると、得られる塗膜の耐水性、耐薬品性、耐湿熱性に劣ることがある。
水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマーは、水性分散体から液状媒体を除去した乾燥残渣を用意し、上述のポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸モノマーを定量する方法と同様の方法で定量することができる。
次に、ポリオレフィン樹脂水性分散体の製造方法について、一例を説明する。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、既述の各成分、すなわち、ポリオレフィン樹脂、水性媒体、必要に応じて有機溶剤、塩基性化合物等を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が採用でき、この方法が最も好ましい。
なお、塩基性化合物、有機溶剤、水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプなどを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げ常圧になってから配合する方法などがある。
追加配合する塩基性化合物と、有機溶剤と、水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。また、塩基性化合物、有機溶剤、水の合計は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるよう調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
本発明の水性分散体には、目的に応じて性能をさらに向上させるために、他の重合体、粘着付与剤、無機粒子、架橋剤、顔料、染料等を添加することができる。
ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類などの高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族または脂環族に属する公知のジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。また、ジイソシアネート類には、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
本発明において、水性分散体に添加するのに適した水系のポリウレタン樹脂として、市販のものを使用することができる。市販の水系のポリウレタン樹脂としては、三井化学社製のタケラックシリーズ(W−615、W−6010、W−511など)、アデカ社製アデカボンタイターシリーズ(HUX−232、HUX−320、HUX−380、HUX−401など)、第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズ(500、550、610、650など)、大日本インキ化学工業社製ハイドランシリーズ(HW−311、HW−350、HW−150など)等が挙げられる。
具体的には、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、取り扱い易さの観点から、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物を添加することが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであっても構わない。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオール等が共重合されていてもよい。ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。具体的な商品としては、例えば、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」等が挙げられる。
イソシアネート基含有化合物は、通常、多官能イソシアネート化合物と一価または多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールと反応させて得ることができる。そのような水性の多官能イソシアネート化合物の市販品としては、住友バイエルウレタン社製のバイヒジュール(Bayhydur)3100、バイヒジュールVPLS2150/1、SBUイソシアネートL801、デスモジュール(Desmodur)N3400、デスモジュールVPLS2102、デスモジュールVPLS2025/1、SBUイソシアネート0772、デスモジュールDN、武田薬品工業社製のタケネートWD720、タケネートWD725、タケネートWD730、旭化成工業社製のデュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、デュラネートWX−1741、BASF社製のバソナート(Basonat)HW−100、バソナートLR−9056等が挙げられる。
市販のエポキシ化合物としては、本発明に適した水系のものとして、例えば、長瀬ケムテック社製のデナコールシリーズ(EM−150、EM−101など)、旭電化工業社製のアデカレジンシリーズ等が挙げられ、UVインキ密着性や耐スクラッチ性向上の点から多官能エポキシ樹脂エマルションである旭電化社製のアデカレジンEM−0517、EM−0526、EM−11−50B、EM−051Rなどが好ましい。
本発明の水性分散体には、さらに必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤等の各種薬剤を添加することも可能である。
次に、本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体の使用方法について説明する。
本発明の水性分散体は、塗膜形成能に優れるものであり、具体的には、本発明の水性分散体を、各種基材表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な塗膜を各種基材表面に接着させて形成することができる。
水性分散体の塗布量は、その用途によって適宜選択され、乾燥後の塗布量として0.01〜100g/m2であることが好ましく、0.1〜50g/m2であることがより好ましく、0.2〜30g/m2であることがさらに好ましい。乾燥後の塗布量が0.01〜100g/m2となるよう製膜すれば、均一性に優れる塗膜を得ることができる。
なお、塗布量を調節するためには、塗布に用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする塗膜の厚さに応じて濃度調整された水性分散体を使用することが好ましい。水性分散体の濃度は、調製時の仕込み組成により調整することが可能であり、また、一旦調製した水性分散体を、適宜希釈したり、あるいは濃縮して、調整してもよい。
加熱温度や加熱時間は、被塗布物である基材の特性や、水性分散体中に任意に配合しうる前述の各種材料の添加量により適宜選択される。加熱温度としては、20〜250℃であることが好ましく、60〜230℃であることがより好ましく、80〜210℃であることがさらに好ましい。一方、加熱時間は、1秒〜20分であることが好ましく、5秒〜15分であることがより好ましく、5秒〜10分であることがさらに好ましい。なお、架橋剤を添加した場合は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度および時間は架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
さらに、本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体から得られる塗膜は、ポリオレフィン樹脂以外の他の基材との接着性も良好であるため、本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体は、基材どうしを接着して積層体とするための接着剤として好適に使用できる。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体を含有するコーティング剤、プライマー、塗料、インキ、接着剤などの具体例としては、PP押出ラミ用アンカーコート剤、二次電池セパレータ用コーティング剤、UV硬化型コート剤用プライマー、靴用プライマー、自動車バンパー用プライマー、クリアボックス用プライマー、PP基材用塗料、包装材料用接着剤、紙容器用接着剤、蓋材用接着剤、インモールド転写箔用接着剤、PP鋼板用接着剤、太陽電池モジュール用接着剤、植毛用接着剤、二次電池電極用バインダー用接着剤、二次電池外装用接着剤、自動車用ベルトモール用接着剤、自動車部材用接着剤、異種基材用接着剤、繊維収束剤などが挙げられる。
積層体の製造方法としては、どのような方法を採用してもよいが、例えばドライラミネート法や押出ラミネート法が挙げられる。本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体は、より工程が簡便でコスト的に有利である、押出ラミネート法による積層体の製造に適用することができる。
一般に積層体からなる包装材料は、剥離強度が1.0N/15mm以上であることが求められており、実用上問題のないレベルとしては1.5N/15mm以上であることが好ましく、2.0N/15mm以上であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体を使用して積層された積層体を包装材料として使用する場合、内容物の保存後や、レトルト処理およびボイル処理などを行った後においても、剥離強度は1.5N/15mm以上保持していることが好ましく、2.0N/15mm以上保持していることがより好ましく、剥離強度が低下していないことが最も好ましい。
なお、各種の特性は、以下の方法により測定または評価した。
(1)不飽和カルボン酸成分の含有量
プロピレン(A)とプロピレン以外のオレフィン(B)との合計に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm−1)により求めた。
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比は、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR、13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法に基づき測定した。
重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1mL/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンで溶解した。
凍結粉砕して微粉化したポリオレフィン樹脂ペレット約0.05gを精秤し、20mLのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μm C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー量が1,000ppm未満の場合、ポリオレフィン樹脂ペレット量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー標準サンプルを用いて作成した。
(1)ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径、重量平均粒子径、および分散度
日機装社製、Nanotrac Wave−UZ152粒度分布測定装置を用いて、数平均粒子径(mn)、重量平均粒子径(mw)を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
分散度は、下記式に基づき算出した。
分散度=重量平均粒子径(mw)/数平均粒子径(mn)
上記(1)記載の装置を用いて測定した。
300メッシュ濾過後の水性分散体を、B型粘度計(トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計)を用い、温度20℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。
水性分散体を乾燥することにより得た乾燥残渣を凍結粉砕して得られた微粉末を約0.05g精秤し、20mLのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μm C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー量が1,000ppm未満の場合、該乾燥残渣量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー標準サンプルを用いて作成した。
ポリオレフィン樹脂水性分散体と、顔料としてカーボンブラックを含有する水性分散体(ライオン社製、ライオンペーストW−376R)とを、ポリオレフィン樹脂の固形分100質量部に対しカーボンブラックが固形分換算で80質量部となるように配合し、プロペラ攪拌して水性塗料を作製した。得られた塗料を40℃下で30日放置して塗料の状態を目視で観察し、下記3段階で評価した。
○:凝集物や相分離なし。
△:相分離はないが、少量の凝集物がある。
×:多量の凝集物があるか、または相分離がある。
(1)密着性
水性分散体を、PP成形片(PP:日本ポリプロピレン社製、ノバテックPP MA3)上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、130℃で10分間乾燥して、塗膜を得た。
得られたPP成形片上の塗膜について、JIS K5400記載のクロスカット法によるテープ剥離(碁盤目試験)をおこなった。すなわち、クロスカットにより、塗膜を100区間にカットし、テープ剥離後、残留した塗膜の区間数で、以下の基準により密着性を碁盤目試験により評価した。碁盤目試験は評価が◎であることが好ましい。
◎:100区間残留。
○:95〜99区間残留。
△:90〜94区間残留。
×:残留が89区間以下。
水性分散体を、延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、OP U−1、厚み20μm)の未処理面上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、60℃で30秒、乾燥させた。このようにして作製したコートフィルムを40℃の温水中に24時間浸漬した。
浸漬後の延伸ポリプロピレンフィルム上の塗膜について、前記(1)と同様の方法で碁盤目試験をおこない、耐水性を評価した。碁盤目試験は評価が△以上であることが好ましく、○以上であることが特に好ましい。
また、塗膜表面を目視で観察し、以下の指標で外観を評価した。
○:塗膜に変化なし。
△:塗膜は剥がれていないが、白化やブリスターが確認される。
×:塗膜が剥がれる。
水性分散体を、PP成形片(PP:日本ポリプロピレン社製、ノバテックPP MA3)上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、130℃で10分間乾燥した。このようにして得た積層体を20℃の模擬ガソリン(トルエンとイソオクタン(いずれも和光純薬工業社製)の等体積混合物)中に24時間浸漬した後、乾燥した。
乾燥後のPP成形片上の塗膜について、前記(1)と同様の方法で、基盤目試験の評価をおこない、耐薬品性を評価した。碁盤目試験は評価が△以上であることが好ましく、○以上であることが特に好ましい。
また、塗膜表面を目視で観察し、以下の指標で外観を評価した。
○:塗膜に変化なし。
△:塗膜は剥がれていないが、白化やブリスターが確認される。
×:塗膜が剥がれる。
水性分散体を、PP成形片(PP:日本ポリプロピレン社製、ノバテックPP MA3)上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、25℃で30分間乾燥した。
得られたPP成形片上の塗膜について、前記(1)と同様の方法で評価した。碁盤目試験は評価が△以上であることが好ましく、○以上であることが特に好ましい。
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット、厚み12μm)のコロナ面に、グラビアコート機を用いて、二液硬化型のポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製)を乾燥後の塗布量が5g/m2になるように塗布、乾燥した後、アルミニウム箔(厚み7μm)を貼り合わせて、基材を調製した。
上記基材のアルミニウム面に、水性分散体を、乾燥後の塗布量が約0.5g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥させ接着層を形成した。
次に、押出ラミネート装置を用いて、接着層表面にシーラント樹脂としてポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製 ノバテックPP FL02A)を溶融押出して、厚み30μmのポリプロピレン層からなるシーラント層が形成された積層体を得た。このとき、Tダイから押出されたポリプロピレン樹脂の温度は240℃であった。
積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、T型剥離により剥離強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度50mm/分で行った。剥離強度としては1.0N/15mm以上が好ましく、1.5N/15mm以上がより好ましく、2.0N/15mm以上がさらに好ましい。
接着層表面にシーラント樹脂としてポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製 ノバテックLD LC600A)を溶融押出した以外は、前記(5)と同様に行い、厚み30μmのポリエチレン層からなるシーラント層が形成された積層体を得た。このとき、Tダイから押出されたポリエチレン樹脂の温度は290℃であった。
その後、前記(5)と同様にして剥離強度を測定した。
水性分散体を、二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製、エンブレット S−50、厚み50μm)のコロナ処理面上に、乾燥後の塗布量が約5g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分乾燥させた。
このようにして作製したコートフィルムのコート面と延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、OP U−1、厚み50μm)のコロナ処理面とを貼りあわせ、120℃で20秒間、2kg/cm2でプレスすることにより、積層体を得た。
得られた積層体を、85℃、85%RHにて1000時間保存を行い、保存の前後での剥離強度を測定し、以下の式で接着強度保持率を求めた。
接着強度保持率(%)=保存試験後の積層体の剥離強度/保存試験前の積層体の剥離強度
得られた接着強度保持率をもとにして、下記4段階で、耐湿熱性を評価した。
◎:接着強度保持率が90%以上。
○:接着強度保持率が70%以上90%未満。
△:接着強度保持率が50%以上70%未満。
×:接着強度保持率が50%未満。
なお、剥離強度は、前記(5)と同様にして測定した。剥離強度は1.0N/15mm以上が好ましく、1.5N/15mm以上がより好ましく、2.0N/15mm以上がさらに好ましい。
水性分散体を、二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製、エンブレット S−12、厚み12μm)のコロナ処理面上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分乾燥させてコートフィルムを得た。
JIS K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、コートフィルムのヘイズ測定を行った。ただし、この評価値は、実施例で用いた、ヘイズが2.8%の二軸延伸ポリエステルフィルムにコートしたフィルム全体のヘイズの値である。
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂P−1を得た。
得られた樹脂の特性を表1に示す。
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=65/35であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−2を得た。
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に代えて、プロピレン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/エチレン=92/8)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−3を得た。
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に代えて、プロピレン−ブテン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン/エチレン=65/24/11)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−4を得た。
製造例1において、アセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−5を得た。
製造例1において、トリエチルアミンのアセトン溶液をアセトンに変更し、その後のアセトン洗浄をメタノール洗浄に変更した以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−6を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を28.0gに代えて33.0gとし、洗浄工程をアセトンの2回洗浄に変更した以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−7を得た。
製造例7において、洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−8を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて24.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を28.0gに代えて18.5gとした以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−9を得た。
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて56.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−10を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を28.0gに代えて20.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−11を得た。
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を28.0gに代えて20.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−12を得た。
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=97/3であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−13を得た。
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=50/50であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−14を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて2.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を28.0gに代えて1.4gとした以外は、同様の方法を行って、ポリオレフィン樹脂P−15を得た。
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でクロロベンゼン470gに加熱溶解させた後、系内温度を130℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸9.5gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド10.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後10時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させ、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂P−16を得た。
英国特許2091745、米国特許4617366および米国特許4644044に記載された方法をもとに、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体を作製し、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂P−17を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂P−1、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)および137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が40℃になるまで冷却し、開封して、40.0gのイソプロパノール、5.0gのトルエンおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−1を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂P−1、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのDMEAおよび137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのDMEAおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−2を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
実施例2において、ポリオレフィン樹脂P−1に代えて、実施例3ではP−2を、参考例3ではP−3を、実施例6ではP−5を、実施例7ではP−6を、参考例5ではP−7を、参考例6ではP−8を、実施例10ではP−9を、参考例7ではP−10を、実施例18ではP−16を用いた以外は同様の操作を行って、水性分散体E−3、E−4、E−6、E−7、E−8、E−9、E−10、E−11、E−18を得た。なお、参考例5〜7においては、DMEAの量を12.0gとした。
実施例1において、ポリオレフィン樹脂P−1に代えて、P−4を用いて、DMEAの量を12.0gとした以外は、同様の操作を行って、水性分散体E−5を得た。
実施例2で得られた水性分散体E−2の250gと、蒸留水120gを0.5Lの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器とを設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約120gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−12を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂P−1、99.0gのテトラヒドロフラン、11.6gのDMEAおよび159.4gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−13を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
実施例13において、ポリオレフィン樹脂P−1に代えて、実施例14ではP−2を、参考例8ではP−3を、参考例9ではP−4を用いた以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂水性分散体E−14〜16を得た。
実施例13で得られた水性分散体E−13の250gと、蒸留水120gを0.5Lの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器とを設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約120gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−17を得た。
水性分散体E−1と、オキサゾリン基含有化合物の水性溶液(日本触媒社製、WS−700、固形分濃度25質量%)とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン基含有化合物固形分の量が10質量部になるように混合してポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
実施例19において、水性分散体E−1に代えて、実施例20ではE−2を、実施例21ではE−3を、参考例10ではE−4を、参考例11ではE−9を、実施例24ではE−10を、参考例12ではE−11を用いた以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。なお、実施例24においては、オキサゾリン基含有化合物固形分の量が5質量部となるようにした。
水性分散体E−2と、カルボジイミド基含有化合物の水性溶液(日清紡社製、カルボジライトV−02−L2、固形分濃度40質量%)とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、カルボジイミド基含有化合物固形分の量が30質量部になるように混合してポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
実施例26において、水性分散体E−2に代えて、E−4を用いた以外は同様の操作を行ってポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
水性分散体E−2と、イソシアネート基含有化合物(BASF社製、バソナートHW−100)の10質量%水溶液とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、イソシアネート基含有化合物固形分の量が25質量部になるように混合してポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
実施例28において、水性分散体E−2に代えて、E−4を用いた以外は同様の操作を行ってポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
水性分散体E−2と、エポキシ基含有化合物の水性溶液(アデカ社製、アデカレジンEM−0517、固形分濃度51質量%、エポキシ当量730)とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、カルボジイミド基含有化合物固形分の量が35質量部になるように混合してポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
実施例30において、水性分散体E−2に代えて、E−4を用いた以外は同様の操作を行ってポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
水性分散体E−1と、ポリウレタン樹脂水性分散液(三井化学社製、タケラックW−6010、固形分濃度30質量%)とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、ポリウレタン樹脂固形分の量が50質量部になるように混合してポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
実施例32において、水性分散体E−1に代えて、実施例33ではE−2を、実施例34ではE−3、参考例16ではE−4を用いた以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。なお、実施例34においては、ポリウレタン樹脂固形分の量が30質量部となるようにした。
水性分散体E−2と、オキサゾリン基含有化合物の水性溶液およびカルボジイミド基含有化合物の水性溶液とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン基含有化合物固形分の量が5質量部になり、カルボジイミド基含有化合物固形分の量が20質量部になるように混合してポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
水性分散体E−1と、オキサゾリン基含有化合物の水性溶液およびポリウレタン樹脂水性分散液とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン基含有化合物固形分の量が10質量部になり、ポリウレタン樹脂固形分の量が50質量部になるように混合してポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
実施例37において、水性分散体E−1に代えて、E−2を用いた以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
実施例2において、ポリオレフィン樹脂P−1に代えて、比較例1ではP−11を、比較例2ではP−12を、比較例3ではP−13を、比較例4ではP−14を用いた以外は、同様の操作を行って、水性分散体E−19、E−20、E−21、E−22を得た。なお、比較例1では、DMEAの量を12.0gとした。
実施例19において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−19を用いた以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
実施例2において、ポリオレフィン樹脂P−1に代えて、P−15を用いた以外は同様の操作を行ったところ、フィルター上に多量の樹脂を確認した。これにより、ポリオレフィン樹脂P−15は、実質的に分散が進行しなかったとみられる。
実施例1において、不揮発性の水性化助剤であるノイゲンEA−190D(第一工業製薬社製、ノニオン性界面活性剤)を、ポリオレフィン樹脂に対して3質量%となるように添加した以外は、実施例1に準じた方法で樹脂の水性化を行い、水性分散体E−23を得た。
撹拌機とヒーターを備えた2L容ガラス容器に、50gのポリオレフィン樹脂P−17、150gのn−プロパノール、3gのDMEAおよび297gの蒸留水を仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ約80℃まで冷却したところで、系内を徐々に減圧して、n−プロパノールと水を除去した。n−プロパノールと水を300g以上除去した後、系内温度が35℃になったところで、水を添加して水性分散体中のポリオレフィン樹脂の濃度が20質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、水性分散体E−24を得た。
一方、比較例1、2では、装置の洗浄をせずに水性分散体の連続生産を行うなかで、生産回数を重ねていくと、ポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径の増大や、水性分散体の粘度上昇が起こり、安定した水性分散体の特性が得られず、連続的な工業生産が難しいものとなった。
中でも、不飽和カルボン酸モノマー量を本発明で規定する範囲内で少なくするにつれて塗膜の耐水性、耐薬品性がより優れるようになり、5,000ppm以下とすることで特に顕著な効果が見られた。
また、本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体を用いて接着層を形成し、ポリプロピレン樹脂押出ラミネートにて作製した積層体は、優れた接着性を示し、特にポリオレフィン成分としてブテン成分を含有する場合に、顕著な接着性を示した。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体に、架橋剤やポリウレタン樹脂を添加した場合(実施例19〜21、24、26、28、30、32〜34、36〜38)、耐薬品性、耐湿熱性により優れる塗膜が得られ、特に水性分散体の粒子径が0.05μm以下の場合は、低温造膜性、添加剤を添加した際の効果、透明性が顕著に高かった。
ポリオレフィン樹脂を構成するプロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比(A/B)が、本発明で規定する範囲外にあると(比較例3、4)、カーボンブラック分散体との混合安定性、PP製基材への低温造膜性や密着性、耐水性、耐薬品性、耐湿熱性に劣るものであった。さらに、不飽和カルボン酸成分の含有量が本発明で規定する範囲外のポリオレフィン樹脂を用いた比較例6は、実質的に分散が進行せず水性分散体を得ることができなかった。
参考例2において、従来既知のポリオレフィン樹脂水性分散体を用いた場合、この水性分散体を用いて形成された接着層上に押出ラミネートすると、ポリエチレン樹脂を押出して作製した積層体は、接着性が優れているものの、ポリプロピレン樹脂を押出して作製した積層体においては、接着性を全く示さなかった。また、この水性分散体は、ポリプロピレン樹脂製基材への密着性が劣っていたため、得られた塗膜は、耐水性、耐薬品性評価でも劣っていた。
Claims (3)
- 積層体を製造するための接着剤であって、
ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するポリオレフィン樹脂水性分散体を含有し、
ポリオレフィン樹脂が、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、
オレフィン成分が、プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)とからなり、
プロピレン以外のオレフィン(B)がブテンを含み、エチレンを含まず、
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であり、
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との合計100質量部に対し、
共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が、1質量部以上であり、かつ、
水性分散体の乾燥残渣における、不飽和カルボン酸モノマー量が5,000ppm以下であることを特徴とする接着剤。 - ポリオレフィン樹脂水性分散体が、さらに、架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の接着剤。
- 請求項1または2に記載の接着剤から得られる塗膜。
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