JP6628718B2 - 水性分散体および積層体 - Google Patents
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Description
このため、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂に対して接着する際には、接着剤成分として塩素化ポリオレフィン樹脂を使用することが提案されている。しかし、塩素化ポリオレフィン樹脂は、焼却によって廃棄する際に、酸性ガス等の有害物質を発生するため、近年、環境への関心が高まるにつれ、非塩素系のバインダー樹脂への移行が強く望まれている。
一方、特許文献4に開示された、2種の酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体から得られた塗膜は、シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン樹脂に対する接着性は改善されているが、ポリオレフィン樹脂を基材に接着して積層する際には、高温でプレスすることが必要であり、低温での接着性に劣るものであった。また、ポリオレフィン樹脂を接着して得られた積層体は、袋を作製して内容物を入れて長期間保存すると、積層体の層間接着性が低下し、耐内容物性に劣るものであった。
(1)酸変性ポリエチレン樹脂(A)と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)と、水性媒体とを含有する水性分散体であって、
酸変性ポリエチレン樹脂(A)が、エチレンを含有するオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜15質量%であり、
酸変性ポリプロピレン樹脂(B)が、プロピレンとブテンとからなるオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し、不飽和カルボン酸成分がグラフト共重合され、
酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の質量比(A/B)が、95/5〜50/50であることを特徴とする水性分散体。
(2)プロピレンとブテンとの質量比(プロピレン/ブテン)が、60/40〜95/5であることを特徴とする(1)記載の水性分散体。
(3)酸変性ポリエチレン樹脂(A)が、さらに(メタ)アクリル酸エステル成分を共重合成分として含有することを特徴とする(1)または(2)記載の水性分散体。
(4)酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)のそれぞれの数平均粒子径が、20nm以上の差を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の水性分散体。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水性分散体から形成された層が基材上に積層されたことを特徴とする積層体。
(6)基材上に積層された層の上に、さらに同種または異種の基材が積層されたことを特徴とする(5)記載の積層体。
(7)少なくとも一方の基材がポリプロピレン基材またはシクロオレフィンポリマー基材であることを特徴とする(6)記載の積層体。
本発明の水性分散体は、酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)とを特定の割合で水性媒体中に含有する。
本発明において、酸変性ポリエチレン樹脂(A)は、エチレンを含有するオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有するものである。
オレフィン成分におけるエチレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。オレフィン成分におけるエチレンの含有量が50質量%未満では、ポリエチレン樹脂由来の基材密着性等の特性が失われてしまうことがある。
エチレン以外のオレフィン成分としては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のアルケンや、ノルボルネン等のシクロアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。中でも、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数3〜6のアルケンが好ましく、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数3〜4のアルケンがより好ましい。
なお、酸変性ポリエチレン樹脂(A)に導入された酸無水物成分は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部または全部が開環し、カルボン酸またはその塩となる傾向がある。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらは反応温度によって、適宜選択して使用すればよい。
酸変性ポリエチレン樹脂(A)における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜35質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることがさらに好ましく、5〜25質量%であることが特に好ましく、10〜25質量%であることが最も好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が0.5質量%未満では、基材との接着性が低下することがあり、40質量%を超えるとポリエチレン樹脂由来の性質が失われ、基材との密着性が低下することがある。
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。これらの中で、基材との接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
次に、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)について説明する。
本発明において、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)は、プロピレンとブテンとからなるオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有するものである。
酸変性ポリプロピレン樹脂(B)のオレフィン成分は、プロピレンとブテン(1−ブテン、イソブテンなど)とからなることが必要であり、オレフィン成分としてその他のオレフィンを含有すると、得られる水性分散体は低温接着性が劣り、また塗膜は耐薬品性が劣り、また積層体から作製した袋は耐内容物性に劣るものとなることがある。
オレフィン成分におけるプロピレンとブテンの質量比(プロピレン/ブテン)は、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の分散粒子径を小さくする観点、およびポリプロピレン樹脂基材への接着性を向上させる観点から、60/40〜95/5であることが好ましく、60/40〜80/20であることがより好ましい。プロピレンの割合が60質量%未満または、95質量%を超えると、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の分散粒子径が大きくなり、樹脂の水性分散化が困難となることがあり、また得られる水性分散体は、ポリプロピレン樹脂基材やシクロオレフィンポリマー基材への接着性が低下しやすい傾向にある。また、本発明の水性分散体は、後述するように酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)のそれぞれの樹脂粒子の数平均粒子径の差が小さい水性分散体となるため、低温接着性についても低下することがある。
なお、本発明においては、必要に応じて複数種の酸変性ポリプロピレン樹脂(B)を混合使用してもよい。
したがって、本発明では、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)として、プロピレン/ブテン/無水マレイン酸三元共重合体を使用することが好ましい。
なお、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)に導入された酸無水物成分は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部または全部が開環し、カルボン酸またはその塩となる傾向がある。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらは反応温度によって、適宜選択して使用すればよい。
これら他の成分の含有量は、一般に、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の10質量%以下であることが好ましい。
本発明の水性分散体は、上記の酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)とともに、水性媒体を含有するものであり、酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)は、水性媒体中に分散もしくは溶解している。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、後述する塩基性化合物や有機溶剤を含有していてもよい。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。
塩基性化合物の配合量は、酸変性ポリエチレン樹脂(A)や酸変性ポリプロピレン樹脂(B)中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量がより好ましく、0.9〜3.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、10倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下したりすることがある。
親水性有機溶剤としては、分散安定性良好な水性分散体を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
親水性有機溶剤としては、製膜の過程で効率よく塗膜から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える親水性有機溶剤は、塗膜から乾燥により飛散させることが困難となる傾向にあり、特に低温乾燥時の塗膜の耐水性や基材との接着性等が低下することがある。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの親水性有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
本発明の水性分散体は、酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)と水性媒体とを含有するものであり、酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の質量比(A/B)は、95/5〜50/50であることが必要であり、接着性、ヒートシール性の点から、90/10〜70/30であることが好ましい。酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の含有量が5質量%未満であると、ポリプロピレン樹脂やシクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン樹脂基材との接着性が低下し、逆に50質量%を超えると、ポリオレフィン樹脂以外の基材との接着性を損なうことがある。
通常、上述のような方法により不飽和カルボン酸成分を未変性ポリエチレン樹脂または未変性ポリプロピレン樹脂に導入した場合、未反応の不飽和カルボン酸モノマーが、酸変性ポリエチレン樹脂(A)または酸変性ポリプロピレン樹脂(B)に残存する。
水性分散体の乾燥残渣に含まれる不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppmを超えると、得られる塗膜は、耐水性、耐薬品性、接着性に劣ることがある。特に5,000ppmを超えると、接着性、耐薬品性に劣ることがある。
本発明者らによると、酸変性ポリオレフィン樹脂のみを固形成分とする水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量は、水性化前のそれぞれの酸変性ポリオレフィン樹脂原料にて測定した不飽和カルボン酸モノマー量の合計量と一致することが確認されている。
したがって、水性分散体を構成する酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の原料は、不飽和カルボン酸モノマーの合計量が10,000ppm以下となるように使用することが好ましく、5,000ppm以下となるように使用することがより好ましい。
水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量、酸変性ポリエチレン樹脂(A)または酸変性ポリプロピレン樹脂(B)における不飽和カルボン酸モノマー量は、後述する高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することができる。
次に、本発明の水性分散体を製造する方法について説明する。
本発明の水性分散体を製造する方法としては、酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)とが水性媒体中に均一に混合・分散される方法であれば、限定されない。たとえば、それぞれ予め調製された、酸変性ポリエチレン樹脂(A)の水性分散体と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の水性分散体とを混合し、さらに必要に応じて水または親水性有機溶剤などを添加する方法や、酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)を混合し、水や溶剤と共に攪拌・加熱を行う方法が挙げられる。前記いずれの方法でも、所望の成分比の水性分散体を簡便に調製できるが、前者の方法がより簡便であり好ましい。
本発明の水性分散体には、耐水性、耐薬品性、接着性などの各種の塗膜性能をさらに向上させるために、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、特に限定されないが、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属錯体等を用いることができ、このうちオキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、アジリジン化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
架橋剤の添加量は、特に限定されないが、酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対し、0.01〜80質量部であることが好ましい。
本発明の水性分散体は、各種基材に対する良好な接着性、密着性を有することから、水性分散体から水性媒体を除去することにより、良好な塗膜、接着層を形成することができる。
本発明の水性分散体は、塗膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂塗膜を各種基材表面に接着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間は、基材の特性や架橋剤の種類、配合量等により適宜選択されるものであり、特に限定されず、例えば、加熱温度50〜250℃程度の範囲で使用できる。また、架橋反応を進行させるために20〜60℃程度でエージング処理を行ってもよい。
本発明の水性分散体から水性媒体を除去してなる塗膜の厚さは、特に限定されないが、0.5〜20μmであることが好ましく、3〜15μmであることがより好ましく、5〜13μmであることがさらに好ましく、8〜10μmであることが特に好ましい。厚さが0.5μm未満ではラミネート強度が低くなり、接着剤としての効果が小さく、20μmを超えると乾燥時間が長くなる。
上記方法によって、水性分散体から形成された層が基材上に積層され、本発明の積層体を得ることができる。
貼り合わせ条件は特に限定されないが、温度は、60℃以上であることが好ましく、基材として熱可塑性樹脂フィルムを用いる場合は、熱可塑性樹脂の融点以下であることが好ましい。ラミネート方法としては、例えば、熱ロールで圧力をかけながらラミネートする方法が挙げられる。
本発明の水性分散体は、ポリオレフィン樹脂との接着性に優れ、本発明の水性分散体が塗布される基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン樹脂基材が好ましい。なお、本発明の水性分散体は、比較的低温条件の熱処理でも優れた密着性が得られるため、耐熱性の比較的低い樹脂、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのような融点が180℃以下のポリオレフィン樹脂基材に適用することができる。
上記シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、特開平10−120768号公報、特開平11−43566号公報、特開2004−51949号公報、特開2004−156048号公報等に記載された、主鎖に環状のオレフィン骨格を有する熱可塑性オレフィン系樹脂が挙げられる。シクロオレフィンポリマーの市販品としては、JSR社製のARTON、日本ゼオン社製のZEONOR、ZEONEX、ポリプラスチックス社製のTOPAS、三井化学社製のAPELなどが挙げられる。
本発明の水性分散体を適用する基材としては、上記ポリオレフィン樹脂基材の他に、熱可塑性樹脂からなるフィルムや成形体、紙、合成紙、ガラス、アルミニウム箔等の金属が挙げられる。
基材を構成する熱可塑性樹脂の形状は、フィルムや成形体のほか、それらの積層体が挙げられる。
熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、製法も限定されない。熱可塑性樹脂フィルムの厚さも特に限定されないが、通常5〜500μmの範囲のものが用いられる。
熱可塑性樹脂フィルムは、フィラーを含有していてもよい。フィラーとしては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナ等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂フィルムは、様々なバリアコーティング、易接着コーティング、帯電防止コーティング、紫外線遮蔽コーティング等の機能性処理や、シリカ、アルミナ、アルミニウム等の各種蒸着処理が施されていてもよい。
また、本発明の水性分散体は、上記接着剤以外に、コーティング剤、プライマー、塗料、インキ等としても好適に使用できる。具体例としては、PP押出ラミ用アンカーコート剤、二次電池セパレータ用コーティング剤、UV硬化型コート剤用プライマー、靴用プライマー、自動車バンパー用プライマー、クリアボックス用プライマー、PP基材用塗料、繊維収束剤などが挙げられる。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
(1)酸変性ポリエチレン樹脂(A)、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の構成
1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。樹脂(A)、(B)は、オルトジクロロベンゼン(d4)を溶媒とし、120℃で測定した。
酸変性ポリエチレン樹脂(A)における不飽和カルボン酸成分の共重合量と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)におけるプロピレンとブテンとの合計100質量部に対する不飽和カルボン酸成分の共重合量は、それぞれ赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm−1)により求めた。
JIS 6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
DSC(Perkin Elmer社製DSC−7)を用いて昇温速度10℃/分で測定した。
重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1mL/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンで溶解した。
樹脂ペレットを凍結粉砕によって微細化されたもの約0.05gを精秤し、20mLのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μm C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー量が1000ppm未満の場合、樹脂ペレット量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー標準サンプルを用いて作成した。
(1)固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
日機装社製、Nanotrac Wave−UZ152粒度分布測定装置を用いて、数平均粒子径(mn)、重量平均粒子径(mw)を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
分散度は、下記式に基づき算出した。
分散度=重量平均粒子径(mw)/数平均粒子径(mn)
300メッシュ濾過後の水性分散体を、B型粘度計(トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計)を用い、温度20℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。
以下の水性分散体の評価において、基材を使用する場合は、下記のものを使用した。
COP−1:シクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン社製ゼオノアZF−14−100、厚さ100μm)
COP−2:シクロオレフィンコポリマー板(ポリプラスチックス社製、TOPAS 5013L−10の成形品、10cm×5cm×厚さ2mm)
CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、厚さ50μm)
PE:未延伸ポリエチレンフィルム(タマポリ社製、厚さ40μm)
PET:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET、厚さ50μm)
PC:ポリカーボネート板(日本テストパネル社製、10cm×2cm×厚さ2mm)
Ac:アクリル板(日本テストパネル社製、10cm×5cm×厚さ2mm)
Ny:ナイロン6フィルム(ユニチカ社製、厚さ15μm)
Al:アルミニウム箔(三菱アルミニウム社製、厚さ25μm)
実施例、比較例で作製した水性分散体を乾燥して得た乾燥残渣を凍結粉砕し、得られた微粉末を約0.05g精秤して用いた以外は、上記「1.樹脂の特性」の(6)に記載の樹脂ペレット中の不飽和カルボン酸モノマー量の測定方法と同様にして、水性分散体中の不飽和カルボン酸モノマー量を測定した。
実施例、比較例で作製した水性分散体を50℃で3ヶ月間保存し、液の状態を目視し、液安定性を評価した。
○:作製直後と変化なし
×:増粘またはゲル化あり
水性分散体を、COP−1上に、乾燥後の厚さが2μmになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した。得られた積層体を40℃で1日放置後、60℃の温水に24時間浸漬し、風乾燥後の塗膜の状態を目視し、耐水性を評価した。
○:塗膜に変化なし
△:塗膜がくもる
×:塗膜が剥離している
水性分散体を、PET上に、乾燥後の厚さが1μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥した。得られた積層体を1日放置後、30℃、pH12.0の水酸化ナトリウム水溶液に1日浸漬し、塗膜の状態を目視し、耐アルカリ性を評価した。
○:塗膜に変化なし
×:塗膜が完全に溶解しているかまたは剥離している
水性分散体を、COP−1上に、乾燥後の厚さが約2μmになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、130℃で10分間乾燥した。得られた積層体を20℃の模擬ガソリン(トルエンとイソオクタン(いずれも和光純薬工業社製)の等体積混合物)中に24時間浸漬した後、乾燥した。COP−1上の塗膜の状態を目視し、耐薬品性を評価した。
○:塗膜に変化なし
△:塗膜は剥離していないが、白化やブリスターが確認される
×:塗膜が剥離している
水性分散体を、PET上に、乾燥後の厚さが2μmになるようにメイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で1分間乾燥した。得られた積層体の塗布面を碁盤目状に100分割した。100分割面にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り、勢いよく剥がし、分割された塗膜のうち、基材から剥がれたものを計数し、密着性を評価した。
○:0〜5個剥離
△:6〜10個剥離
×:11個以上剥離
下記の方法で作成した各積層体から幅15mmの測定サンプルを切り出し、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で基材間の剥離強度を測定した。なお、剥離強度は以下のような数値であれば合格とした。
(7.1)PETとCOP−1の貼り合わせ
水性分散体をPETのコロナ面に乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。PETの接着剤塗布面にCOP−1を貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて125℃でプレスした。剥離強度は10N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をPCに乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。PCの接着剤塗布面にCOP−1を貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて125℃でプレスした。剥離強度は10N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をAcに乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、90℃で1分間乾燥した。Acの接着剤塗布面にCOP−1を貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて90℃でプレスした。剥離強度は10N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をPETのコロナ面に乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。PETの接着剤塗布面にCOP−2を貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて125℃でプレスした。剥離強度は10N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をPEに乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、90℃で1分間乾燥した。PEの接着剤塗布面にCPPを貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて90℃でプレスした。剥離強度は20N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をPETのコロナ面に乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。PETの接着剤塗布面にCPPを貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて125℃でプレスした。剥離強度は15N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をNyの光沢面に乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。Nyの接着剤塗布面にCPPを貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて125℃でプレスした。剥離強度は20N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をAlの光沢面に乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。Alの接着剤塗布面にCPPを貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて125℃でプレスした。剥離強度は20N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をPETのコロナ面に乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。PETの接着剤塗布面にPEを貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて90℃でプレスした。剥離強度は20N/15mm以上であれば合格とした。
水性分散体をPETのコロナ面に乾燥後の接着層の厚さが10μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間乾燥した。PETの接着剤塗布面にPETを貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.5MPaで60秒間)にて120℃でプレスした。剥離強度は10N/15mm以上であれば合格とした。
上記(7.6)記載の方法で得られた、CPP/接着層/PETからなる積層体を用いて、CPP面が内面になるように、5×10cmの袋を作製した。袋に内容物としてタバスコ(登録商標)5gを入れて封をした。袋を50℃で2ヶ月間保存したのち開封し、袋を構成する積層体の剥離強度を(7)記載の方法で測定し、耐内容物性を評価した。剥離強度は10N/15mm以上であれば合格とした。
上記(7.6)記載の貼り合わせ方法において、ヒートプレス機によるプレス温度125℃を70℃に変更した以外は同様にして積層体を作製した。得られた積層体の剥離強度を(7)記載の方法で測定し、低温接着性を下記の基準で評価した。
○:7N/15mm以上
△:4N/15mm以上、7N/15mm未満
×:4N/15mm未満
(酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体A−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリエチレン樹脂(住友化学工業社製、ボンダインHX−8290)、60.0gのイソプロパノール、2.2gのトリエチルアミン、および177.8gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、密閉した後、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体A−1を得た。
酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体A−1の製造において、酸変性ポリエチレン樹脂として、住友化学工業社製ボンダインHX−8290に代えて、住友化学工業社製ボンダインTX−8030を使用した以外は、同様の操作を行い、乳白色の均一な酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体A−2を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリエチレン樹脂(ダウ・ケミカル社製、プリマコール5980I)、16.8gのトリエチルアミン、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白色の酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体A−3を得た。
製造例1:酸変性ポリプロピレン樹脂P−1
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を低減した後、減圧乾燥機中で乾燥して、酸変性ポリプロピレン樹脂P−1を得た。
製造例1において、トリエチルアミンのアセトン溶液をアセトンに変更し、その後のアセトン洗浄をメタノール洗浄に変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂P−2を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて60.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂P−3を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を24.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を18.5gとした以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂P−4を得た。
製造例1において、質量比(プロピレン/1−ブテン)が97/3であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂P−5を得た。
製造例1において、質量比(プロピレン/1−ブテン)が65/35であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂P−6を得た。
製造例1において、質量比(プロピレン/1−ブテン)が50/50であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂P−7を得た。
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に代えて、プロピレン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/エチレン=92/8)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂P−8を得た。
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に代えて、プロピレン−ブテン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン/エチレン=65/24/11)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリプロピレン樹脂P−9を得た。
(酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体B−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリプロピレン樹脂P−1、99.0gのテトラヒドロフラン、11.6gのN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)および159.4gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体B−1を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリプロピレン樹脂P−1、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのDMEAおよび137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのDMEAおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体B−2を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
水性分散体B−2を250gと、蒸留水120gを0.5Lの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器とを設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約120gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体B−3を得た。
水性分散体B−2の製造方法において、酸変性ポリプロピレン樹脂P−1に代えて、B−4ではP−2を、B−5ではP−3を、B−6ではP−4を、B−7ではP−5を、B−8ではP−6を、B−9ではP−7を、B−10ではP−8を用いた以外は同様の操作を行って、水性分散体B−4〜10を得た。なお、B−5においては、最初のDMEAの添加量を8.0gから12.0gに変更し、2回目のDMEAの添加量は、B−2の製造方法と同様に、5.0gとした。
水性分散体B−1の製造方法において、酸変性ポリプロピレン樹脂P−1に代えて、P−9を用いた以外は、同様の操作を行って、水性分散体B−11を得た。
・ポリウレタン樹脂:ポリエーテル型ポリウレタン樹脂水性分散体(楠本化成社製、NeoRezR−600、固形分濃度33質量%)
・架橋剤:オキサゾリン基含有化合物の水性溶液(日本触媒社製、エポクロスWS−700、固形分濃度25質量%)
・架橋剤:エポキシ基含有化合物の水性分散体(ADEKA社製、アデカレジンEM−0517、固形分濃度51質量%)
・ポリエステル水性分散体(U−1):ユニチカ社製エリーテルKA−3556(固形分濃度:30%、数平均粒子径:11nm)
・アクリル水性分散体(N−1):NeoCrylA−6045(楠本化成社製、固形分濃度:40%、数平均粒子径:120nm)
酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体A−1と酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体B−1とを、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体と酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体の固形分質量比が95/5になるように配合し、室温で5分間、混合攪拌し、水性分散体を得た。得られた水性分散体を用いて各種性能評価を行った。
表3、4に示したように、酸変性ポリエチレン樹脂(A)水性分散体と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)水性分散体の種類および固形分質量比を変更し、また実施例18〜20では添加物を添加し、比較例12〜17では、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)水性分散体に代えてポリエステル水性分散体やアクリル水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って水性分散体を得た。
これに対し、比較例1〜7の水性分散体は、酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)との質量比が、本発明で規定する範囲外であるため、塗膜は基材との剥離強度が低く、また低温接着性に劣ることがあった。
比較例8〜9では、基材との剥離強度は良好であるが、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)のオレフィン成分が、本発明で規定するプロピレンとブテンとからなるものではないため、低温接着性、耐内容物性に劣っていた。
比較例10〜11では、酸変性ポリエチレン樹脂(A)が、不飽和カルボン酸成分の含有量が本発明の規定量より多いため、基材との剥離強度が低く、塗膜は、耐水性や耐アルカリ性、耐薬品性に劣るものであった。
比較例12〜17の水性分散体は、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)水性分散体に代えてポリエステル水性分散体またはアクリル水性分散体を用いたため、液安定性に劣ることがあり、塗膜は、耐アルカリ性、耐薬品性に劣り、基材との剥離強度が低く接着性に劣るものであった。
Claims (7)
- 酸変性ポリエチレン樹脂(A)と、酸変性ポリプロピレン樹脂(B)と、水性媒体とを含有する水性分散体であって、
酸変性ポリエチレン樹脂(A)が、エチレンを含有するオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜15質量%であり、
酸変性ポリプロピレン樹脂(B)が、プロピレンとブテンとからなるオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し、不飽和カルボン酸成分がグラフト共重合され、
酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)の質量比(A/B)が、95/5〜50/50であることを特徴とする水性分散体。 - プロピレンとブテンとの質量比(プロピレン/ブテン)が、60/40〜95/5であることを特徴とする請求項1記載の水性分散体。
- 酸変性ポリエチレン樹脂(A)が、さらに(メタ)アクリル酸エステル成分を共重合成分として含有することを特徴とする請求項1または2記載の水性分散体。
- 酸変性ポリエチレン樹脂(A)と酸変性ポリプロピレン樹脂(B)のそれぞれの数平均粒子径が、20nm以上の差を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の水性分散体から形成された層が基材上に積層されたことを特徴とする積層体。
- 基材上に積層された層の上に、さらに同種または異種の基材が積層されたことを特徴とする請求項5記載の積層体。
- 少なくとも一方の基材がポリプロピレン基材またはシクロオレフィンポリマー基材であることを特徴とする請求項6記載の積層体。
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