JP5114116B2 - 水性分散体およびその製造方法、水性分散体混合物 - Google Patents
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しかし、水性塗料は、環境に対する影響は小さいものの、熱可塑性樹脂に対する付着性が低く、しかも得られる皮膜の耐水性も低かった。
そこで、特許文献1では、酸変性ポリオレフィンと変性澱粉と乳化剤とを含み、pHが6以上の水性分散体が提案されている。
また、特許文献2では、熱可塑性樹脂に対する付着性が高い水性塗料として、塩素化ポリオレフィンを含む水性塗料組成物が提案されている
特許文献2に記載の水性塗料組成物においても、ABS樹脂等のスチレン系樹脂に対する付着性は不充分であり、しかも得られる皮膜の耐水性も不充分であった。
さらに、特許文献2に記載の水性塗料組成物は、塩素化ポリオレフィンという塩素含有樹脂を主成分としており、廃棄物焼却時の塩素ガス発生やリサイクルの面で問題があった。そのため、塩素含有樹脂を含まない水性塗料組成物が求められていた。
また、そのような水性分散体を高い生産性で製造できる水性分散体の製造方法を提供することを目的とする。
[1] 酸変性非晶性ポリオレフィン(A)と、該酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して5〜20質量部の酸変性ポリプロピレン(B1)と、3〜20質量部のアニオン型界面活性剤(C)と、0.5〜20質量部の水(D)とを含有する水性分散体(I)であって、
酸変性非晶性ポリオレフィン(A)は、プロピレン単位を80〜99質量%、1−ブテン単位を1〜20質量%を含有し、酸変性された重合体で、結晶化度が0〜10%、質量平均分子量が70,000〜200,000であり、
酸変性ポリプロピレン(B1)は、質量平均分子量が1,800〜35,000、酸価が3〜80mg/gであることを特徴とする水性分散体(I)。
[2] [1]に記載の水性分散体(I)と、水性分散体(II)とを含有する水性分散体混合物であって、
水性分散体(II)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)と、該エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)100質量部に対して5〜20質量部の酸変性ポリエチレン(B2)と、3〜20質量部のアニオン型界面活性剤(C)と、水(D)とを含有し、
エチレン酢酸ビニル共重合体(E)は、エチレン単位が63〜77質量%、質量平均分子量が20,000〜100,000であり、
酸変性ポリエチレン(B2)は、質量平均分子量が1,000〜10,000であることを特徴とする水性分散体混合物。
[3] [1]に記載の水性分散体(I)と、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)に芳香族ビニル単量体単位を含有するグラフト鎖がグラフトしたグラフト重合体(G)とを含有することを特徴とする水性分散体混合物。
[4] [1]に記載の水性分散体(I)と、水性分散体(III)とを含有する水性分散体混合物であって、
水性分散体(III)は、芳香族ビニル−オレフィンブロック共重合体(S)を含むブロック共重合体成分と、該ブロック共重合体成分100質量部に対して5〜20質量部の酸変性ポリエチレン(B2)と、3〜20質量部のアニオン型界面活性剤(C)と、水(D)とを含有し、
酸変性ポリエチレン(B2)は、質量平均分子量が1,000〜10,000であることを特徴とする水性分散体混合物。
該混練物に、前記酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.5〜20質量部の水(D)を注入した後、さらに溶融混練する工程とを有する水性分散体(I)の製造方法であって、
酸変性非晶性ポリオレフィン(A)は、プロピレン単位を80〜99質量%、1−ブテン単位を1〜20質量%を含有し、酸変性された重合体で、結晶化度が0〜10%であり、質量平均分子量が70,000〜200,000であり、
酸変性ポリプロピレン(B1)は、質量平均分子量が1,800〜35,000、酸価が3〜80mg/gであることを特徴とする水性分散体(I)の製造方法。
本発明の水性分散体の製造方法によれば、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、各種樹脂(特にポリプロピレンおよびスチレン系樹脂等)に対する付着性が充分に高く、得られる皮膜の耐水性に優れる水性分散体を高い生産性で製造できる。
本発明の水性分散体(I)は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリプロピレン(B1)と、アニオン型界面活性剤(C)と、水(D)とを含有するものである。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A)は、プロピレン単位が80〜99質量%、1−ブテン単位を1〜20質量%を含有し、酸変性された重合体で、結晶化度が0〜10%、質量平均分子量が70,000〜200,000の重合体である。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A)の質量平均分子量は、特開2002−302659号公報に記載の方法でプロピレンと1−ブテンを、生成ポリマーの組成に応じて、供給組成を調節し、水素ガスの供給量によって調節することができる。
本発明における結晶化度は、広角X線回折装置を用いて測定した。
酸変性する方法としては、例えば、不飽和カルボン酸および有機過酸化物とを、共に溶融混練する方法等が挙げられる。この溶融混練には樹脂を混練する一般的な装置が使用できる。具体的には回分式ではバンバリーミキサーやニーダーを、連続式では押出機を挙げることができる。
不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
本発明における酸価とは、酸変性重合体1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)である。
酸変性物ポリプロピレン(B1)は、ポリプロピレンにカルボン酸またはカルボン酸無水物を結合させた変性物である。カルボン酸およびカルボン酸無水物は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)を得る際に用いるものと同様である。
酸変性ポリプロピレン(B1)の具体例としては、例えば、酸価が3〜80mg/gの酸変性エチレン−プロピレン共重合体(ただしエチレンとプロピレンの構成比はプロピレンの方が多いもの)、酸変性ホモポリプロピレンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンに対する付着性がより高くなる点では、酸変性ホモポリプロピレンが好ましい。
酸変性ポリプロピレン(B1)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アニオン型界面活性剤(C)としては、例えば、第1級高級脂肪酸塩、第2級高級脂肪酸塩、第1級高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、第1級高級アルキルスルホン酸塩、第2級高級アルキルスルホン酸塩、高級アルキルジスルホン酸塩、スルホン化高級脂肪酸塩、高級脂肪酸硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルベンゾイルイミダゾールスルホン酸塩などが挙げられる。
上記のアニオン型界面活性剤を構成する高級脂肪酸としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸と、これらの混合物が挙げられる。
高級脂肪酸と塩を形成するための元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
アニオン型界面活性剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
これらのアニオン型界面活性剤の中でも、牛脂脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウムが、耐水性の面からより好ましい。
水性分散体中の水(D)は転相時に必要な水であり、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.5〜20質量部である。
なお、水(D)の量が前記範囲である水性分散体(I)の固形分濃度は80質量%以上であり、実質的に固体である。そのため、この水性分散体(I)を既存の塗工方法を適用するため、あるいは、他の薬剤を混合しやすくするためには、粘度を適切な範囲にする目的で、水性分散体(I)に50質量部以上の希釈水を添加し、希釈して、固形分濃度が10〜60質量%の水性分散液とすることが好ましい
水性分散体には、必要に応じて、各種副資材が含まれてもよい。副資材としては、例えば、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤等の分散剤、乳化剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、ゲル化剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤、造膜助剤、レベリング剤等が挙げられる。
本発明の水性分散体(I)の製造方法は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)と酸変性ポリプロピレン(B1)とアニオン型界面活性剤(C)とを含む混合物を溶融混練して混練物を得る工程(以下、第1の工程という。)と、該混練物に水(D)を添加した後、さらに溶融混練する工程(以下、第2の工程という。)とを有する。
第1の工程における酸変性ポリプロピレン(B1)の配合量は、水性分散体(I)における含有量と同様に、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して5〜20質量部であり、好ましくは5〜10質量部である。
アニオン型界面活性剤(C)の配合量は、水性分散体(I)における含有量と同様に、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して3〜20質量部であり、好ましくは5〜15質量部である。
溶融混練条件は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)の物性により適宜選択されるが、溶融混練温度は160〜250℃とすることが好ましい。溶融混練温度が160℃以上であれば、溶融粘度が充分に低くなるため容易に混練でき、250℃以下であれば、必要以上に加熱しないから、酸変性非晶性オレフィン(A)の劣化や熱分解を抑制し、且つ、エネルギー使用量を削減できる。
第2の工程において、混練物に水を添加する際には、水のみを添加してもよいし、他の添加成分を溶解した水溶液の形態で添加してもよい。他の添加成分としては水性分散体(I)をより容易に製造できることから、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリが好ましい。
水(D)の添加量は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、2〜10質量部であることがより好ましい。水(D)の添加量が0.5質量部未満であると水性分散体(I)は得られず、20質量部を超えると水性分散体(I)の樹脂固形分の平均粒子径が大きくなって付着性および耐水性が低くなる。
第2の工程における溶融混練においても、第1の工程と同様に、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機を適用することができる。
第2の工程における溶融混練温度は、第1工程と同様に160〜250℃とすることが好ましい。溶融混練温度が160℃以上であれば、容易に転相させることができ、250℃以下であれ必要以上に加熱しないから樹脂の劣化や熱分解を抑制し、且つエネルギー使用量を削減できる。
上記製造方法において、平均粒子径が小さい水性分散体が得られるのは、酸変性ポリプロピレン(B1)が、酸変性非晶性ポリオレフィン(A)が連続相である段階で、界面活性剤(C)をミクロ分散させるためと推定される。よって、本発明の製造方法では、酸変性ポリプロピレン(B1)は重要な役割を果たし必須の成分であるが、他の分散方法では僅かに粘度を低下させる程度の効果しか発揮しない。
<第1の実施形態例>
本発明の水性分散体混合物の第1の実施形態例について説明する。第1の実施形態例の水性分散体混合物(以下、第1の水性分散体混合物という。)は、上記水性分散体(I)と水性分散体(II)とを含有するものである。
水性分散体(II)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)と、酸変性ポリエチレン(B2)と、アニオン型界面活性剤(C)と、水(D)とを含有するものである。
水性分散体(II)の質量平均粒子径は、水性分散体(I)と同様に、0.1〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.8μmであることがより好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)は、エチレンと酢酸ビニルとを共重合して得られる共重合体である。ただし、一部の酢酸ビニル単位がケン化されていても構わない。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)のエチレン含有率は63〜77質量%であり、70〜74質量%であることが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)のエチレン含有率が77質量%を超えると、各種樹脂に対する付着性が低くなり、63質量%未満であると耐水性が低くなる。
酸変性ポリエチレン(B2)は、ポリエチレン系樹脂が不飽和カルボン酸によって酸変性されたものである。不飽和カルボン酸は塩を形成していても構わない。
酸変性ポリエチレン(B2)を構成するポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンまたはプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンまたはプロピレンとビニル化合物との共重合体等が挙げられる。ただし、共重合体の場合は、エチレン単位が共重合単位より多い。
酸変性ポリエチレン(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
不飽和カルボン酸としては、不飽和ジカルボン酸が好ましい。
水性分散体(II)に含まれるアニオン型界面活性剤(C)は、水性分散体(I)に含まれるものと同様である。
水性分散体(II)におけるアニオン型界面活性剤(C)の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)100質量部に対して3〜20質量部であり、好ましくは5〜15質量部である。アニオン型界面活性剤(C)の含有量が3質量部未満であると、水性分散体(II)の分散安定性が低くなり、20質量部を超えると、付着性および耐水性が低くなる。
水性分散体(II)における水の含有量は水性分散体(I)と同様である。
また、水性分散体(II)には、必要に応じて、副資材が含まれてもよい。副資材は、水性分散体(I)に含まれてもよいものと同様である。
水性分散体(II)の製造方法は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)と酸変性ポリエチレン(B2)とアニオン型界面活性剤(C)とを含む混合物を溶融混練して混練物を得る工程(以下、第1の工程という。)と、該混練物に水(D)を添加した後、さらに溶融混練する工程(以下、第2の工程という。)とを有する。
第1の工程における酸変性ポリエチレン(B2)の配合量は、水性分散体(II)における含有量と同様に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)100質量部に対して5〜20質量部であり、好ましくは5〜10質量部である。
アニオン型界面活性剤(C)の配合量は、水性分散体(II)における含有量と同様に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)100質量部に対して3〜20質量部であり、好ましくは5〜15質量部である。
第1の工程における溶融混練する際の装置および条件は、水性分散体(I)の製造と同様である。
第2の工程において、混練物に水を添加する際には、水性分散体(I)の製造と同様に、水のみを添加してもよいが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリを溶解した水溶液の形態で添加することが好ましい。
水(D)の添加量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、2〜10質量部であることがより好ましい。水(D)の添加量が0.5質量部未満であると水性分散体(II)は得られず、20質量部を超えると水性分散体(II)の樹脂固形分の平均粒子径が大きくなって付着性および耐水性が低くなる。
第2の工程における溶融混練する際の装置および条件は、水性分散体(I)の製造と同様である。
また、水性分散体(I)の製造と同様に、得られた水性分散体(II)には、さらに水を添加することが好ましい。
第1の水性分散体混合物は、水性分散体(I)と水性分散体(II)とを混合することにより製造することができる。
水性分散体(I)と水性分散体(II)とを混合する方法としては見かけ状固体のまま混合する方法や、水性分散液にしてラテックス状で混合する方法などが挙げられる。
本発明の水性分散体混合物の第2の実施形態例について説明する。第2の実施形態例の水性分散体混合物(以下、第2の水性分散体混合物という。)は、上記水性分散体(I)とグラフト重合体(G)とを含有するものである。
グラフト重合体(G)は、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)に、芳香族ビニル単量体単位を含有するグラフト鎖がグラフトしたものである。
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)は、一般にEPDMと称されるものである。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。これらの中でも、付着性の点から、ジシクロペンタジエンおよび/またはエチリデンノルボルネンが好ましい。
EPDM中の不飽和基の割合は、非共役ジエン単位の種類および比率に依存するため一概には規定できないが、ヨウ素価に換算して8〜50の範囲であることが好ましい。この範囲にあると、得られる付着性に優れる。
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)のラテックスの調製方法としては、例えば、水性分散体の製法と同様に、アニオン型界面活性剤(C)および酸変性ポリオレフィンの存在下で、別プロセスで製造された塊状またはペレット状のエチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)に機械的剪断力を与え、水中に微細に分散安定化させる方法等が挙げられる。
その際、アニオン型界面活性剤(C)の量は、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、2〜5質量部であることがより好ましい。アニオン型界面活性剤(C)の量が1質量部未満であると、得られるラテックスの分散安定性が低くなり、10質量部を超えると、付着性および耐水性が低くなる。
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)の質量平均粒子径は、乳化剤の種類、その量、酸変性ポリオレフィンの種類、その量、機械乳化の際の剪断力、温度条件等を調整することにより制御できる。
グラフト鎖を構成する芳香族ビニル単量体単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系樹脂に対する付着性を高める場合には、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
また、必要に応じて、芳香族ビニル単量体単位に共重合可能な他の単量体単位が共重合されていてもよい。他の単量体としては、シアン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単位、マレイミド化合物等が挙げられる。
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルが挙げられる。
マレイミド化合物としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
これら他の単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
グラフト重合体(G)は、例えば、乳化グラフト重合により製造される。すなわち、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)を含有するラテックスに単量体成分を添加し、乳化剤の存在下で単量体成分をラジカル重合させることにより製造される。この際、グラフト率およびグラフト成分の分子量を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
ラジカル重合の際に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、レドックス系開始剤が好ましく、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が特に好ましい。
乳化剤としては、アニオン型界面活性剤(C)やその他公知の乳化剤が使用できる。なお、乳化剤は、グラフト重合の際に新たに添加しなくてもよいし、必要に応じてグラフト重合の際に乳化剤を新たに添加してもよい。
第2の水性分散体混合物は、水性分散体(I)とグラフト重合体(G)とを混合することにより製造することができる。
水性分散体(I)とグラフト重合体(G)とを混合する方法としては見かけ状固体のまま混合する方法や、水性分散液にしてラテックス状で混合する方法などが挙げられる。
本発明の水性分散体混合物の第3の実施形態例について説明する。第3の実施形態例の水性分散体混合物(以下、第3の水性分散体混合物という。)は、上記水性分散体(I)と水性分散体(III)とを含有するものである。
水性分散体(III)は、芳香族ビニル−オレフィンブロック共重合体(S)を含むブロック共重合体成分と、酸変性ポリエチレン(B2)と、アニオン型界面活性剤(C)と、水(D)とを含有するものである。
水性分散体(III)の質量平均粒子径は、水性分散体(I)と同様に、0.1〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.8μmであることがより好ましい。
ブロック共重合体成分に含まれる芳香族ビニル−オレフィンブロック共重合体(S)は、芳香族ビニル単位を含有するハードセグメントと、オレフィン系ゴム状重合体を含有するソフトセグメントとを有するブロック共重合体である。
ハードセグメントを構成する芳香族ビニル単量体としては、グラフト重合体(G)のグラフト鎖を構成する芳香族ビニル単量体と同様である。
ソフトセグメントとしては、エチレン−プロピレン重合体、エチレン−ブチレンブロック重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン重合体などのゴム状重合体が挙げられる。これらのゴム状重合体のうち1種を単独で、あるいは2種以上を使用することができる。
エチレン−プロピレン−非共役ジエンブロック共重合体に含有されるジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−エチル−1,11−トリデカジエン、5−メチレン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
水性分散体(III)における酸変性ポリエチレン(B2)の含有量は、ブロック共重合体成分100質量部に対して、5〜20質量部であり、7〜18質量部であることが好ましい。酸変性ポリエチレン(B2)の含有量が5質量部未満であると、あるいは、20質量部を超えると、安定な乳化物が得られず凝集物量が増加する。
水性分散体(III)に含まれるアニオン型界面活性剤(C)は、水性分散体(I)に含まれるものと同様である。
水性分散体(III)におけるアニオン型界面活性剤(C)の含有量は、ブロック共重合体成分100質量部に対して3〜20質量部であり、好ましくは5〜15質量部である。アニオン型界面活性剤(C)の含有量が3質量部未満であると、水性分散体(III)の分散安定性が低くなり、20質量部を超えると、付着性および耐水性が低くなる。
水性分散体(III)における水の含有量は水性分散体(I)と同様である。
また、水性分散体(III)には、必要に応じて、副資材が含まれてもよい。副資材は、水性分散体(I)に含まれてもよいものと同様である。
水性分散体(III)の製造方法は、ブロック共重合体成分と酸変性ポリエチレン(B2)とアニオン型界面活性剤(C)とを含む混合物を溶融混練して混練物を得る工程(以下、第1の工程という。)と、該混練物に水(D)を添加した後、さらに溶融混練する工程(以下、第2の工程という。)とを有する。
第1の工程における酸変性ポリエチレン(B2)の配合量は、水性分散体(III)における含有量と同様に、ブロック共重合体成分100質量部に対して5〜20質量部であり、好ましくは5〜10質量部である。
アニオン型界面活性剤(C)の配合量は、水性分散体(III)における含有量と同様に、ブロック共重合体成分100質量部に対して3〜20質量部であり、好ましくは5〜15質量部である。
第1の工程における溶融混練する際の装置および条件は、水性分散体(I)の製造と同様である。
第2の工程において、混練物に水を添加する際には、水性分散体(I)の製造と同様に、水のみを添加してもよいが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリを溶解した水溶液の形態で添加することが好ましい。
水(D)の添加量は、ブロック共重合体成分100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、2〜10質量部であることがより好ましい。水(D)の添加量が0.5質量部未満であると水性分散体(III)は得られず、20質量部を超えると水性分散体(III)の樹脂固形分の平均粒子径が大きくなって付着性および耐水性が低くなる。
第2の工程における溶融混練する際の装置および条件は、水性分散体(I)の製造と同様である。
また、水性分散体(I)の製造と同様に、得られた水性分散体(III)には、さらに水を添加することが好ましい。
第3の水性分散体混合物は、水性分散体(I)と水性分散体(III)とを混合することにより製造することができる。
水性分散体(I)と水性分散体(III)とを混合する方法としては見かけ状固体のまま混合する方法や、水性分散液にしてラテックス状で混合する方法などが挙げられる。
また、水性分散体および水性分散体混合物は、分散媒として水を使用しているので、環境上の問題が少なく、取り扱い性に優れる。
水性分散体または水性分散体混合物は各種基材に塗布されて使用される。基材としては、例えば、紙、繊維織物、プラスチック成形品、木材、金属などが挙げられる。これらの中でも、プラスチック成形品、とりわけポリプロピレン成形品に対しては、水性分散体または水性分散体混合物の高い付着性が顕著に発揮される。該ポリプロピレン成形品に、他のポリオレフィン(例えば、エチレン・プロピレン共重合体ゴム等)、無機フィラー(例えば、タルク、ガラス繊維、炭酸カルシウム等)、安定剤、着色剤などの各種添加剤が含まれている場合も、発揮される効果は同等である。
更にはスチレン系樹脂からなる成型品に対しても同様の効果を発揮する事からその利用用途はこれまでの既存技術で得られる水性分散体の範囲を大きく越えて幅広く産業に活用できる。
水性分散体または水性分散体混合物の塗布方法としては、例えば、各種塗工機を用いる方法、スプレーを用いる方法、刷毛塗り、浸漬などを挙げることができる。
また、以下の例における各期樹脂および酸変性ポリオレフィンの特性は、下記のようにして測定した。
・ポリオレフィン単位の定量:日本電子(株)製、高分解能フーリエ変換核磁気共鳴装置JNM−AL400型によりモル比を測定して求めた。
・ポリオレフィンおよび酸変性ポリオレフィンの質量平均分子量:ウォーターズ社製、アライアンスGPC V2000型により測定した。
・ポリオレフィンの結晶化度:理学電機(株)製、広角X線回折装置RAD−RX型により求めた。
・平均粒子径:マウンテック(Mountech)社製のマイクロトラックUPAにて測定した。
結晶化度が0%、GPCによる質量平均分子量が250,000であり、プロピレン単位が88%、1−ブテン単位が12%であるプロピレン−1−ブテン共重合体(a−1)を、攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えたステンレス製反応槽中に3kg仕込んで加熱溶融させた。その後、反応槽内の温度を180℃に保って、無水マレイン酸20gおよびジクミルパーオキサイド30gを攪拌しながら各々3時間かけて滴下し、その後更に3時間反応させた。
反応終了後、得られた反応生成物を多量のアセトン中に投入し、精製して無水環を開いた状態での酸価が3mg/gである酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)を得た。この酸変性非晶性ポリオレフィンのX線回折による結晶化度は0%であり、GPCによる質量平均分子量は110,000であり、プロピレン単位88%、1−ブテン単位12%であった。
プロピレン−1−ブテン共重合体(a−1)を、ジクミルパーオキサイド20gで反応させた以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の製法と同様にして、プロピレン単位の含有量は88%、1−ブテン単位の含有量は12%、結晶化度は0%、質量平均分子量は160,000、酸価は3mg/gの酸変性非晶性ポリオレフィン(A−2)を得た。
プロピレン−1−ブテン共重合体(a−1)を、ジクミルパーオキサイド38gで反応させた以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の製法と同様にして、プロピレン単位の含有量は88%、1−ブテン単位の含有量は12%、結晶化度は0%、質量平均分子量は80,000、酸価は3mg/gの酸変性非晶性ポリオレフィン(A−3)を得た。
プロピレン−1−ブテン共重合体(a−1)の代わりに、結晶化度が7%、GPCによる質量平均分子量が260,000、プロピレン単位が95%、1−ブテン単位が5%であるプロピレン−1−ブテン共重合体(a−2)を使用し、無水マレイン酸量を15gに変更した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−4)を得た。酸変性非晶性ポリオレフィン(A−4)のプロピレン単位の含有量は95%、1−ブテン単位の含有量は5%、結晶化度は5%、質量平均分子量は150,000、酸価は3mg/gであった。
プロピレン−1−ブテン共重合体(a−1)の代わりに、結晶化度が0%、GPCによる質量平均分子量が250,000、プロピレン単位が82%、1−ブテン単位が18%であるプロピレン−1−ブテン共重合体(a−3)を使用し、ジクミルパーオキサイドの量を35gに変更した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−5)を得た。酸変性非晶性ポリオレフィン(A−5)のプロピレン単位の含有量は82%、1−ブテン単位の含有量は18%、結晶化度は0%、質量平均分子量は90,000、酸価は3mg/gであった。
無水マレイン酸の量を80gに、ジクミルパーオキサイドの量を45gに変更した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−6)を得た。酸変性非晶性ポリオレフィン(A−6)のプロピレン単位の含有量は88%、1−ブテン単位の含有量は12%、結晶化度は0%、質量平均分子量は90,000、酸価は6mg/gであった。
無水マレイン酸の量を10gに、ジクミルパーオキサイドの量を20gに変更した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−7)を得た。酸変性非晶性ポリオレフィン(A−7)のプロピレン単位の含有量は88%、1−ブテン単位の含有量は12%、結晶化度は0%、質量平均分子量は180,000、酸価は2mg/gであった。
無水マレイン酸の量を10gに、ジクミルパーオキサイドの量を10gに変更した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−8)を得た。酸変性非晶性ポリオレフィン(A−8)のプロピレン単位の含有量は88%、1−ブテン単位の含有量は12%、結晶化度は0%、質量平均分子量は220,000、酸価は2mg/gであった。
無水マレイン酸の量を30gに、ジクミルパーオキサイドの量を55gに変更した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−9)を得た。酸変性非晶性ポリオレフィン(A−9)のプロピレン単位の含有量は88%、1−ブテン単位の含有量は12%、結晶化度は0%、質量平均分子量は50,000、酸価は5mg/gであった。
プロピレン−1−ブテン共重合体(a−1)の代わりに、結晶化度が8%、GPCによる質量平均分子量が260,000、プロピレン単位が100%であるプロピレン−1−ブテン共重合体(a−4)を使用し、無水マレイン酸の量を50gに、ジクミルパーオキサイドの量を40gに変更した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン系樹脂(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−10)を得た。得られた酸変性非晶性ポリオレフィン(A−10)のプロピレン単位の含有量は100%、結晶化度は7%、質量平均分子量は80,000、酸価は5mg/gであった。
プロピレン−1−ブテン共重合体(a−1)の代わりに、結晶化度が0%、GPCによる質量平均分子量が260,000、プロピレン単位が70%、1−ブテン単位が30%であるプロピレン−1−ブテン共重合体(a−5)を使用した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン系樹脂(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−11)を得た。酸変性非晶性ポリオレフィン(A−11)のプロピレン単位の含有量は70%、1−ブテン単位の含有量は30%、結晶化度は0%、質量平均分子量は90,000、酸価は3g/mgであった。
プロピレン−1−ブテン共重合体(a−1)の代わりに、結晶化度が15%、GPCによる質量平均分子量が240,000、プロピレン単位が88%、1−ブテン単位が12%であるプロピレン−1−ブテン共重合体(a−6)を使用した以外は、酸変性非晶性ポリオレフィン系樹脂(A−1)の製法と同様にして、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−12)を得た。酸変性非晶性ポリオレフィン(A−12)のプロピレン単位の含有量は100%、結晶化度は15%、質量平均分子量は80,000、酸価は5mg/gであった。
非晶性ポリオレフィン系樹脂(A−13)として、デグッサ製ベストプラスト792を使用した。このポリオレフィンは未変性のものである。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)100部と、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)100部に対して18部の酸変性ポリプロピレン(B1−1)である質量平均分子量17,000の無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学(株)製「三井ハイワックス 0555A」、酸価45mgKOH/g)と、12部のオレイン酸カリウムとを、二軸押出機(スクリュー径;30mm、L/D;40、バレル温度;200℃)にその投入口から供給して溶融混練した。
また、該二軸押出機のベント部に設けた供給口より20%の水酸化カリウム水溶液を、ポリオレフィン100部に対する水の量が8部になるように、1.8MPaで圧入した。
そして、二軸押出機先端より吐出された固形状の水性分散体(I−1)を、295質量部の温水中で分散させて、水性分散体(I)を含む水性分散液を得た。この水性分散液の固形分濃度は30%、平均粒子径は0.40μmであった。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−2)を使用した以外は製造例1と同様にして、水性分散体(I−2)を含む平均粒子径0.44μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−3)を使用した以外は製造例1と同様にして、水性分散体(I−3)を含む平均粒子径0.43μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−4)を使用した以外は製造例1と同様にして、水性分散体(I−4)を含む平均粒子径0.47μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−5)を使用した以外は製造例1と同様にして、水性分散体(I−5)を含む平均粒子径0.45μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−6)を使用した以外は製造例1と同様にして、水性分散体(I−6)を含む平均粒子径0.40μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−7)を使用した以外は実施例1と同様にして、水性分散体(I−7)を含む平均粒子径0.45μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−8)を使用した以外は実施例1と同様にして、水性分散体(i−1)を含む平均粒子径0.39μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−9)を使用した以外は実施例1と同様にして、水性分散体(i−2)を含む平均粒子径0.52μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−10)を使用した以外は実施例1と同様にして、水性分散体(i−3)を含む平均粒子径0.56μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−11)を使用した以外は実施例1と同様にして、水性分散体(i−4)を平均粒子径0.46μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、酸変性非晶性ポリオレフィン(A−12)を使用した以外は実施例1と同様にして、水性分散体(i−5)を含む平均粒子径0.60μmの水性分散液を得た。
酸変性非晶性ポリオレフィン(A−1)の代わりに、非晶性ポリオレフィン(A−13)を使用した以外は実施例1と同様にして、水性分散体(i−6)を含む平均粒子径0.32μmの水性分散液を得た。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)としてエチレン含有率が72%、質量平均分子量が61,000、融点が62℃、X線結晶化度が15%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製「エバフレックス EV210」)100部と、酸変性ポリエチレン(B2)である質量平均分子量が2,700である無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学(株)製「三井ハイワックス 2203A」、酸価33mgKOH/g)7部と、アニオン型乳化剤であるオレイン酸カリウム8部とを混合した。
次いで、得られた混合物を二軸押出機(池貝鉄工(株)製「PCM−30型」、L/D=40)のホッパーより4kg/時間で供給し、溶融混練した。さらに水酸化カリウム9%水溶液を240g/時間で連続的に供給しながら、加熱温度(シリンダー温度)160℃で溶融混練して混練物を得た。引き続き、該混練物を二軸押出機先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却して水性分散体(II)を得た。
そして、冷却して得た水性分散体(II)を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、水性分散体(II)を含む水性分散液を得た。この水性分散液の固形分濃度は40%、平均粒子径は0.21μmであった。
<エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P−1)の製造>
エチレン−プロピレン−非共役ジエン重合体(EPDM)(エチレン単位70%、プロピレン単位27%、ジエン成分として5−エチリデンノルボルネン3%含有)100部と、酸変性ポリエチレン(B2)(三井化学(株)製「三井ハイワックス 2203A」)15部と、オレイン酸カリウム3部とを、二軸スクリュー押出機(池貝鉄工製、PCM−30型、L/D=40)のホッパーより4kg/時間の速度で供給した。同時に同押出機のベント部に設けた供給口より水酸化カリウム20%水溶液を125g/時間で連続的に供給した。これらを加熱温度(シリンダー温度)190℃、スクリュー回転数250rpmで混練して混練物を得た。引き続き、該混練物を二軸押出機先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。その後、取り出したEPDMの分散体を温水に連続的に分散させて、質量平均粒子径が390nmのエチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P−1)水性分散体を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機、温度計および攪拌装置を備えたガラス製反応器内に、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P−1)水性分散体70部(固形分換算)、イオン交換水290部(エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体水性分散体中の水も含む)、オレイン酸ナトリウム0.3部、水酸化ナトリウム0.01部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.45部、硫酸第一鉄七水塩0.01部、およびデキストローズ0.57部を仕込み、内温を80℃に保った。
これにスチレン30部、クメンハンドロパーオキサイド0.5部、およびt−ドデシルメルカプタン0.1部からなる混合物、およびオレイン酸ナトリウム1.0部、水酸化ナトリウム0.1部、および水20部からなる水溶液を、各々別供給口から200分かけて同時に滴下して重合を行った。この間、内温は80℃で一定に制御した。
滴下終了後、さらに30分間80℃のまま保持した後に冷却を行い、重合を終了しグラフト重合体(G)水性分散体を得た。
芳香族ビニル−オレフィンブロック共重合体(S)として、スチレン含有率が13%であるスチレン系ブロック共重合体((株)クラレ製「セプトン 2063」)100部と、酸変性ポリエチレン(B2)(三井化学(株)製「三井ハイワックス 2203A」7部と、オレイン酸カリウム8部とを混合した。
次いで、得られた混合物を二軸押出機(池貝鉄工(株)製「PCM−30型」、L/D=40)のホッパーより4kg/時間で供給し、溶融混練した。さらに水酸化カリウム9%水溶液を240g/時間で連続的に供給しながら、加熱温度(シリンダー温度)160℃で溶融混練して混練物を得た。引き続き、該混練物を二軸押出機先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却して水性分散体(III−1)を得た。
そして、冷却して得た水性分散体(III−1)を80℃の温水中に投入し連続的に分散させて、水性分散体(III−1)を含む水性分散液を得た。この水性分散液の固形分濃度は40%、平均粒子径は0.33μmであった。
芳香族ビニル−オレフィンブロック共重合体(S)として、スチレン含有量29%であるスチレン系ブロック共重合体(クレイトンポリマー製「KRATON G1650」)80部、プロピレン系ランダム共重合体(プライムポリマー製「プライムポリプロJ715M」)15部、エチレン系ランダム共重合体(プライムポリマー製「エボリューSP2540」)5部と、酸変性ポリエチレン(B2)(三井化学(株)製「三井ハイワックス 2203A」)7部と、オレイン酸カリウム8部とを混合した。
次いで、得られた混合物を二軸押出機(池貝鉄工(株)製「PCM−30型」、L/D=40)のホッパーより4kg/時間で供給し、溶融混練した。さらに水酸化カリウム9%水溶液を240g/時間で連続的に供給しながら、加熱温度(シリンダー温度)160℃で溶融混練して混練物を得た。引き続き、該混練物を二軸押出機先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却して、水性分散体(III−2)を得た。
上記製造例1〜17で得られた水性分散体をそのまま又は表1〜4に示すように配合して水性分散体混合物を調製し、これらより形成した皮膜を下記評価方法で評価した。評価結果を表1〜4に示す。
[試験片の作製]
塗布する基材となるポリプロピレンとしてプライムポリマー社製の「プライムポリプロJ715M」と、スチレン系樹脂としてユーエムジー・エービーエス社製 ABS樹脂「EX120」を用い、これらをそれぞれ射出成形して、100×100mm、厚さ2mmの平板を得た。
この平板の表面を脱脂処理した後、No.13のコーティングバーを使用して、厚さ10μmになるように水性分散体または水性分散体混合物を塗布した。そして70℃および65℃で20分間乾燥し、室温で24時間静置して皮膜を形成し、皮膜を形成した平板を試験片として用いた。
[付着性試験]
カッターにより皮膜にポリプロピレン製平板に達する切れ目を1mm間隔で100個のマス目が形成されるように形成した。そして、マス目にセロハンテープ(登録商標、ニチバン社製)を密着させた後、引き剥がし、残存したマス目の数を記録した。加熱前および加熱後の両方において、残存したマス目の数が多い程、付着性に優れる。
[耐水性試験]
上記試験片作成方法に従い、ABS製平板およびポリプロピレン製平板に対し、水性分散体混合物を塗布し、70℃で20分間乾燥させて試験片を得た。金属製のカゴの中に入れた試験片を、40℃の温水中に完全に浸漬させ、10日間放置した。その後、温水中から取出し、外観に異常が認められなければ、引き続き、上記付着性試験と同様の試験を行った。残存したマス目の数が多い程、耐水性に優れる。
なお、結果を示す欄において空欄の箇所は未評価である。
水性分散体(I)と水性分散体(II)とを含有する実施例8〜10の第1の水性分散体混合物、水性分散体(I)とグラフト重合体(G)とを含有する実施例11〜13の第2の水性分散体混合物、水性分散体(I)と水性分散体(III)とを含有する実施例14〜19の第3の水性分散体混合物も、ポリプロピレンに対して充分な付着性と耐水性を有していた。
水性分散体(II)のみ(参考例1)、グラフト共重合体(G)のみ(参考例2)、水性分散体(III−1)のみ(参考例3)、水性分散体(III−2)のみ(参考例4)でも、ポリプロピレンに対する付着性および耐水性が共に低かった。
Claims (5)
- 酸変性非晶性ポリオレフィン(A)と、該酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して5〜20質量部の酸変性ポリプロピレン(B1)と、3〜20質量部のアニオン型界面活性剤(C)と、0.5〜20質量部の水(D)とを含有する水性分散体(I)であって、
酸変性非晶性ポリオレフィン(A)は、プロピレン単位を80〜99質量%、1−ブテン単位を1〜20質量%を含有し、酸変性された重合体で、結晶化度が0〜10%、質量平均分子量が70,000〜200,000であり、
酸変性ポリプロピレン(B1)は、質量平均分子量が1,800〜35,000、酸価が3〜80mg/gであることを特徴とする水性分散体(I)。 - 請求項1に記載の水性分散体(I)と、水性分散体(II)とを含有する水性分散体混合物であって、
水性分散体(II)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)と、該エチレン−酢酸ビニル共重合体(E)100質量部に対して5〜20質量部の酸変性ポリエチレン(B2)と、3〜20質量部のアニオン型界面活性剤(C)と、水(D)とを含有し、
エチレン酢酸ビニル共重合体(E)は、エチレン単位が63〜77質量%、質量平均分子量が20,000〜100,000であり、
酸変性ポリエチレン(B2)は、質量平均分子量が1,000〜10,000であることを特徴とする水性分散体混合物。 - 請求項1に記載の水性分散体(I)と、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム質重合体(P)に芳香族ビニル単量体単位を含有するグラフト鎖がグラフトしたグラフト重合体(G)とを含有することを特徴とする水性分散体混合物。
- 請求項1に記載の水性分散体(I)と、水性分散体(III)とを含有する水性分散体混合物であって、
水性分散体(III)は、芳香族ビニル−オレフィンブロック共重合体(S)を含むブロック共重合体成分と、該ブロック共重合体成分100質量部に対して5〜20質量部の酸変性ポリエチレン(B2)と、3〜20質量部のアニオン型界面活性剤(C)と、水(D)とを含有し、
酸変性ポリエチレン(B2)は、質量平均分子量が1,000〜10,000であることを特徴とする水性分散体混合物。 - 酸変性非晶性ポリオレフィン(A)と、該酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して5〜20質量部の酸変性ポリプロピレン(B1)と、3〜20質量部のアニオン型界面活性剤(C)とを溶融混練して混練物を得る工程と、
該混練物に、前記酸変性非晶性ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.5〜20質量部の水(D)を注入した後、さらに溶融混練する工程とを有する水性分散体(I)の製造方法であって、
酸変性非晶性ポリオレフィン(A)は、プロピレン単位を80〜99質量%、1−ブテン単位を1〜20質量%を含有し、酸変性された重合体で、結晶化度が0〜10%であり、質量平均分子量が70,000〜200,000であり、
酸変性ポリプロピレン(B1)は、質量平均分子量が1,800〜35,000、酸価が3〜80mg/gであることを特徴とする水性分散体(I)の製造方法。
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