JP2016011420A - シクロオレフィンポリマー用塗工剤および積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の課題は、シクロオレフィンポリマー基材との密着性に優れるとともに、耐水性、耐薬品性、さらに耐湿熱性、透明性、低温造膜性に優れた塗膜を形成することができる塗工剤を提供することである。
(1)ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有するシクロオレフィンポリマー用塗工剤であって、ポリオレフィン樹脂が、プロピレン(A)、ブテン(B)および不飽和カルボン酸成分を共重合体成分として含有することを特徴とするシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
(2)シクロオレフィンポリマー用塗工剤の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が、10,000ppm以下であることを特徴とする(1)記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
(3)プロピレン(A)とブテン(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であることを特徴とする(1)または(2)に記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
(4)さらに、架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
(5)シクロオレフィンポリマー基材の少なくとも片面に、(1)〜(4)のいずれかに記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤から得られる塗膜を設けたことを特徴とする積層体。
(6)さらに塗膜を介してシクロオレフィンポリマー基材又は他基材を貼り合わせたことを特徴とする(5)記載の積層体。
(7)他基材が、ポリオレフィン樹脂基材、金属基材、金属蒸着基材であることを特徴とする(6)記載の積層体。
本発明のシクロオレフィンポリマー用塗工剤(以下、塗工剤と略す場合がある)は、ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有するものである。
したがって、本発明では、ポリオレフィン樹脂として、プロピレン/ブテン/無水マレイン酸三元共重合体を使用することが好ましい。
なお、ポリオレフィン樹脂に導入された酸無水物成分は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部または全部が開環し、カルボン酸またはその塩となる傾向がある。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらは反応温度によって、適宜選択して使用すればよい。
これら他の成分の含有量は、ポリオレフィン樹脂の10質量%以下であることが好ましい。
本発明者らによると、ポリオレフィン樹脂のみを固形成分とする水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量は、水性化前の該ポリオレフィン樹脂原料にて測定した不飽和カルボン酸モノマー量と一致することが確認されている。
本発明において、ポリオレフィン樹脂として、不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppm以下であるものを使用することが好ましく、不飽和カルボン酸モノマー量は、5,000ppm以下であることがより好ましく、1,000ppm以下であることがさらに好ましく、500ppm以下であることが特に好ましく、100ppm以下であることが最も好ましい。
ポリオレフィン樹脂中の、不飽和カルボン酸モノマーを低減する方法は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂から減圧留去する方法、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解させて再沈殿することにより分離する方法、粉末やペレット状にしたポリオレフィン樹脂を水や有機溶媒中で洗浄する方法、ソックスレー抽出法により除去する方法などが挙げられる。中でも、操作性や低減効率の観点から、ポリオレフィン樹脂から減圧留去する方法、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解させて再沈殿することにより分離する方法、粉末やペレット状にしたポリオレフィン樹脂を水や有機溶媒中で洗浄する方法が好ましい。
親水性有機溶剤としては、分散安定性の良好な塗工剤を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
親水性有機溶剤としては、製膜の過程で効率よく塗膜から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える親水性有機溶剤は、塗膜から乾燥により飛散させることが困難となる傾向にあり、特に低温乾燥時の塗膜の密着性や基材との接着性等が低下することがある。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、ポリオレフィン樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの親水性有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
塗工剤の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が5,000ppm以下である塗工剤から得られた塗膜を設けた積層体は、高温環境下において長期使用した場合でも、ヘイズ変化量が少なく高い透明性を維持できるものであり、好適に用いることができる。
本発明の塗工剤を得るための方法は特に限定されないが、既述の各成分、すなわち、ポリオレフィン樹脂、水性媒体、必要に応じて塩基性化合物、有機溶剤等を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が採用でき、この方法が最も好ましい。
なお、塩基性化合物、有機溶剤、水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプなどを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げ常圧になってから配合する方法などがある。
追加配合する塩基性化合物と、有機溶剤と、水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。また、塩基性化合物、有機溶剤、水の合計は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるよう調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で塗工剤を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め塗工剤に水を添加しておいてもよい。
具体的には、イソシアネート基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、アジピン酸ジヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、耐薬品性、取り扱い易さの観点から、オキサゾリン基含有化合物を添加することが好ましい。
オキサゾリン基含有化合物としては、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものが好ましく使用できる。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
本発明の塗工剤には、さらに必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤等の各種薬剤を添加することも可能である。
塗工剤の塗布量は、その用途によって適宜選択され、乾燥後の塗布量として0.01〜100g/m2であることが好ましく、0.1〜50g/m2であることがより好ましく、0.2〜30g/m2であることがさらに好ましい。乾燥後の塗布量が0.01〜100g/m2となるよう製膜すれば、均一性に優れる塗膜を得ることができる。
上記シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、特開平10−120768号公報、特開平11−43566号公報、特開2004−51949号公報、特開2004−156048号公報等に記載された、主鎖に環状のオレフィン骨格を有する熱可塑性オレフィン系樹脂が挙げられる。シクロオレフィンポリマーの市販品としては、JSR社製のARTON、日本ゼオン社製のZEONOR、ZEONEX、ポリプラスチックス社製のTOPAS、三井化学社製のAPELなどが挙げられる。
本発明の塗工剤は、シクロオレフィンポリマー基材への接着性に優れているだけでなく、ポリプロピレン樹脂基材等の他のポリオレフィン樹脂基材や、アルミやメッキ等の金属基材、ポリエチレンテレフタレート樹脂やアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂基材にアルミやインジウムを蒸着した金属蒸着基材や紙、合成紙、ガラスなどの他基材への接着性にも優れている。このため、本発明の塗工剤からなる塗膜をコート層としてシクロオレフィンポリマー基材表面に形成して使用するほかに、この塗膜を接着層として、シクロオレフィンポリマー基材と他基材との接着に使用することができる。
なお、各種の特性は、以下の方法により測定または評価した。
(1)不飽和カルボン酸成分の含有量
プロピレン(A)とプロピレン以外のオレフィン(B)との合計に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm−1)により求めた。
(2)不飽和カルボン酸成分以外の樹脂の構成
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比は、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR、13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法に基づき測定した。
(3)重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgのポリオレフィン樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合は、オルトジクロロベンゼンで溶解した。
(4)不飽和カルボン酸モノマー量
ポリオレフィン樹脂ペレットを凍結粉砕して微細化した微細化物約0.05gを精秤し、20mlのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μm C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー量が1000ppm未満の場合、ポリオレフィン樹脂ペレット量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー標準サンプルを用いて作成した。
(1)ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径、重量平均粒子径、および分散度
日機装社製、Nanotrac Wave−UZ152粒度分布測定装置を用いて、数平均粒子径(mn)、重量平均粒子径(mw)を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
分散度は、下記式に基づき算出した。
分散度=重量平均粒子径(mw)/数平均粒子径(mn)
(2)ゼータ電位
上記(1)記載の装置を用いて測定した。
(3)粘度
300メッシュ濾過後の塗工剤を、B型粘度計(トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計)を用い、温度20℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。
(4)不飽和カルボン酸モノマー量
塗工剤を乾燥することにより得た乾燥残渣を凍結粉砕して微細化した微細化物約0.05gを精秤し、20mlのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μm C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー量が1000ppm未満の場合、該乾燥残渣量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー標準サンプルを用いて作成した。
(5)ポットライフ
塗工剤を室温で90日放置したときの外観を、下記3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
(1)密着性
塗工剤を、シクロオレフィンポリマー基材(日本ゼオン社製「ゼオノアZF−14−100」、厚さ100μm、以下「シクロオレフィンフィルム」と記載)上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で30秒乾燥して、塗膜を得た。
得られたシクロオレフィンフィルム上の塗膜について、JIS K5400記載のクロスカット法によるテープ剥離(碁盤目試験)をおこなった。すなわち、クロスカットにより、塗膜を100区間にカットし、テープ剥離後、残留した塗膜の区間数で、以下の基準により密着性を評価した。
◎:100区間残留。
○:95〜99区間残留。
△:90〜94区間残留。
×:残留が89区間以下。
(2)低温乾燥時の密着性(低温造膜性)
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、50℃で10秒乾燥して、塗膜を得た。
得られたシクロオレフィンフィルム上の塗膜について、前記(1)と同様の方法で碁盤目試験を行い、(1)の基準と同様に低温乾燥時の密着性(低温造膜性)を評価した。
(3)耐水性
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、60℃で30秒、乾燥させた。このようにして作製したコートフィルムを40℃の温水中に24時間浸漬した。
得られたシクロオレフィンフィルム上の塗膜について、前記(1)と同様の方法で碁盤目試験を行い、(1)の基準と同様に耐水性を評価した。
また、塗膜表面を目視で観察し、以下の指標で、外観を評価した。
○:塗膜に変化なし。
△:塗膜は剥がれていないが、白化やブリスターが確認される。
×:塗膜が剥がれる。
(4)耐薬品性
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約2g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、130℃で10分間乾燥した。このようにして得た積層体を20℃の模擬ガソリン(トルエンとイソオクタン(いずれも和光純薬工業社製)の等体積混合物)中に24時間浸漬した後、乾燥した。
得られたシクロオレフィンフィルム上の塗膜について、前記(3)と同様の方法で、密着性と外観について耐薬品性を評価した。
(5)耐湿熱性
(5−1)<COPとOPPの貼り合わせ>
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約5g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分乾燥させた。
このようにして作製したコートフィルムのコート面と延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)のコロナ処理面とを貼りあわせ、120℃で20秒間、2kg/cm2でプレスすることにより、積層体を得た。
得られた積層体を、85℃、85%RHにて1000時間保存を行い、保存の前後でのラミネート強度を測定した。
(試験前)
7N/15mm以上を合格とした。
(試験後)
3N/15mm以上を合格とした。
なお、ラミネート強度の測定は、積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、T型剥離により強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度50mm/分で行った。
(5−2)<COPとALの貼り合わせ>
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約5g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分乾燥させた。
このようにして作製したコートフィルムのコート面とアルミ箔(AL)とを貼りあわせ、120℃で20秒間、2kg/cm2でプレスすることにより、積層体を得た。
得られた積層体を、85℃、85%RHにて1000時間保存を行い、保存の前後でのラミネート強度を測定した。
(試験前)
12N/15mm以上を合格とした。
(試験後)
7N/15mm以上を合格とした。
なお、ラミネート強度の測定は、積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、T型剥離により強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度50mm/分で行った。
(6)透明性(ヘイズ)
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約5g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分乾燥させてコートフィルムを得た。
JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、コートフィルムのヘイズ値T1を測定し、TM1(n=5測定の平均値)を算出した。ただし、この評価値は実施例で用いた、ヘイズが0.3%のシクロオレフィンフィルムにコートしたフィルム全体のヘイズの値である。
実用的には3%以下であることが好ましい。
(7)熱処理前後におけるヘイズ変化量(ΔHz)
(6)透明性において、ヘイズ値を測定したコートフィルムを40℃で24時間の熱処理を行った。その後、JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業社製、NDH2000)を用いてコートフィルムのヘイズ値T2を測定し、TM2(n=5測定の平均値)を算出した。
熱処理前後でのヘイズ変化量△Hzを下記式により算出した。
△Hz(%)=TM2−TM1
実用的にはΔHzは2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂P−1を得た。得られた樹脂の特性を表1に示す。
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=65/35であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−2を得た。
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に変えて、プロピレン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/エチレン=92/8)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−3を得た。
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に変えて、プロピレン−ブテン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン/エチレン=65/24/11)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−4を得た。
製造例1において、アセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−5を得た。
製造例1において、トリエチルアミンのアセトン溶液をアセトンに変更し、その後のアセトン洗浄をメタノール洗浄に変更した以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−6を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を33.0gとし、洗浄工程をアセトンの2回洗浄に変更した以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−7を得た。
製造例7において、洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−8を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を24.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を18.5gとした以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−9を得た。
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を56.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−10を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を20.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−11を得た。
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を20.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−12を得た。
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=97/3であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−13を得た。
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=50/50であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−14を得た。
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に変えて、エチレン−ブテン共重合体(質量比:エチレン/1−ブテン=80/20)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−15を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂P−1、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)および137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が40℃になるまで冷却し、開封して、40.0gのイソプロパノール、5.0gのトルエンおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の塗工剤E−1を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂P−1、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのDMEAおよび137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのDMEAおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の塗工剤E−2を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
表2に示したように、ポリオレフィン樹脂を変更した以外は、E−2と同様の操作を行って、塗工剤E−3〜4、E−6〜11、E−13〜17を得た。なお、E−8、E−9、E−11、E−14においては、最初のDMEAの添加量を8.0gから12.0gに変更し、2回目のDMEAの添加量は、E−2の製造方法と同様に、5.0gとした。
塗工剤E−1の製造において、ポリオレフィン樹脂をP−4に変えて、DMEAの量を12.0gとした以外は同様の操作を行って、塗工剤E−5を得た。
塗工剤E−2を250gと、蒸留水120gを0.5Lの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器とを設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約120gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な塗工剤E−12を得た。なお、E−12中の有機溶剤の含有率は1%未満であった。得られた塗工剤の特性を表2に示す。
塗工剤E−1〜17から得られた塗膜の評価結果を表3に示す。
塗工剤E−1と、オキサゾリン基含有化合物の水性溶液(日本触媒社製WS−700 固形分濃度25質量%)とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン基含有化合物固形分の量が10質量部になるように混合して塗工剤を得た。得られた塗膜の評価結果を表3に示す。
表3に示すように、塗工剤の種類とオキサゾリン基含有化合物の添加量を変更した以外は、実施例11と同様の操作で塗工剤を得た。得られた塗膜の評価結果を表3に示す。
塗工剤E−2と、ポリウレタン樹脂水性分散体(楠本化成社製NEOREZ R−600 固形分濃度33質量%)とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、ポリウレタン樹脂水性分散体の固形分が20質量部になるように添加して塗工剤を得た。得られた塗膜の評価結果を表3に示す。
また、オキサゾリン基含有化合物を添加した場合(実施例11〜15)、耐薬品性により優れる塗膜が得られた。
さらに、ウレタン樹脂を添加した場合(実施例19)、密着性、耐薬品性により優れる塗膜が得られた。
Claims (7)
- ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有するシクロオレフィンポリマー用塗工剤であって、ポリオレフィン樹脂が、プロピレン(A)、ブテン(B)および不飽和カルボン酸成分を共重合体成分として含有することを特徴とするシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
- シクロオレフィンポリマー用塗工剤の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が、10,000ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
- プロピレン(A)とブテン(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であることを特徴とする請求項1または2に記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
- さらに、架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
- シクロオレフィンポリマー基材の少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれかに記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤から得られる塗膜を設けたことを特徴とする積層体。
- さらに塗膜を介してシクロオレフィンポリマー基材又は他基材を貼り合わせたことを特徴とする請求項5記載の積層体。
- 他基材が、ポリオレフィン樹脂基材、金属基材、金属蒸着基材であることを特徴とする請求項6記載の積層体。
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