JP2016011420A - シクロオレフィンポリマー用塗工剤および積層体 - Google Patents

シクロオレフィンポリマー用塗工剤および積層体 Download PDF

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剛正 吉野
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晴樹 大藤
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Abstract

【課題】シクロオレフィンポリマー基材との密着性に優れるとともに、耐水性、耐薬品性、さらに耐湿熱性、透明性、低温造膜性に優れた塗膜を形成することができるシクロオレフィンポリマー用塗工剤を提供する。【解決手段】ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有するシクロオレフィンポリマー用塗工剤であって、ポリオレフィン樹脂が、プロピレン(A)、ブテン(B)および不飽和カルボン酸成分を共重合体成分として含有することを特徴とするシクロオレフィンポリマー用塗工剤。【選択図】なし

Description

本発明は、シクロオレフィンポリマーに好適に使用できる水系塗工剤に関するものである。
近年、タッチパネルなどの分野では光学ポリエチレンテレフタレートのオリゴマー成分のブリードによる耐久性低下や加水分解の問題からシクロオレフィンポリマー(COP)基材を使用することが多くなっている。シクロオレフィンポリマーは、低吸水性、高透明性、高耐熱性、低誘電率、低誘電正接という優れた特性を併せ持っており注目されている材料であるが、接着が難しい材料としても知られている。このため、シクロオレフィンポリマーに特化した接着剤やコーティング剤の開発がなされ、同材料の表面をコロナ処理やプラズマ処理すること等も併せて行われている。例えば、特許文献1には、シクロオレフィンポリマーの表面をプラズマ処理することが記載されている。
また、ポリオレフィン材料は水をはじきやすいことから、溶剤系接着剤が主に使用されていたが、近年、環境保護や職場環境改善の観点から揮発性有機溶剤、特にトルエン等の芳香族系有機溶剤の使用が制限される傾向にあり、水系接着剤への要望が高まっている。しかし、従来の水系接着剤は溶剤系のものと比べポリオレフィン材料に対する接着性に劣っているため、使用範囲に制限を受けていた。こうした中、特許文献2には、水系接着剤が開示されており、シクロオレフィンポリマーにも適用できることが記載されている。
特開2011−104886号 特開2007−308588号
しかしながら、特許文献1に開示された方法においては、プラズマ処理という特殊な装置を導入する必要があった。また、特許文献2に開示された水性接着剤は、塗膜の接着性や耐水性、耐薬品性に関して、未だ改良の余地があった。
本発明の課題は、シクロオレフィンポリマー基材との密着性に優れるとともに、耐水性、耐薬品性、さらに耐湿熱性、透明性、低温造膜性に優れた塗膜を形成することができる塗工剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂として、特定の構成を有することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有するシクロオレフィンポリマー用塗工剤であって、ポリオレフィン樹脂が、プロピレン(A)、ブテン(B)および不飽和カルボン酸成分を共重合体成分として含有することを特徴とするシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
(2)シクロオレフィンポリマー用塗工剤の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が、10,000ppm以下であることを特徴とする(1)記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
(3)プロピレン(A)とブテン(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であることを特徴とする(1)または(2)に記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
(4)さらに、架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
(5)シクロオレフィンポリマー基材の少なくとも片面に、(1)〜(4)のいずれかに記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤から得られる塗膜を設けたことを特徴とする積層体。
(6)さらに塗膜を介してシクロオレフィンポリマー基材又は他基材を貼り合わせたことを特徴とする(5)記載の積層体。
(7)他基材が、ポリオレフィン樹脂基材、金属基材、金属蒸着基材であることを特徴とする(6)記載の積層体。
本発明のシクロオレフィンポリマー用塗工剤によれば、接着が難しいとして知られているシクロオレフィンポリマー基材に対して優れた密着性を有するとともに、耐水性、耐薬品性、耐湿熱性、透明性、低温造膜性を併せ持った塗膜が得られ、シクロオレフィンポリマー基材と他基材との接着に好適に使用できる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のシクロオレフィンポリマー用塗工剤(以下、塗工剤と略す場合がある)は、ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有するものである。
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分としてのプロピレン(A)およびブテン(B)と、不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有する。
本発明の塗工剤において、ポリオレフィン樹脂を構成するプロピレン(A)と、ブテン(B)との質量比(A/B)は、ポリオレフィン樹脂粒子の分散粒子径を小さくする観点、および塗膜のシクロオレフィンポリマー基材への接着性を向上させる観点から、60/40〜95/5であることが好ましく、60/40〜80/20であることが好ましい。プロピレン(A)の割合が60質量%未満であると、シクロオレフィンポリマー基材への接着性が低下し、一方、95質量%を超えると、ポリオレフィン樹脂粒子の分散粒子径が大きくなり、樹脂の水性分散化が困難となることがある。
ポリオレフィン樹脂は、プロピレン(A)と、ブテン(B)以外の他のオレフィン成分を含有していてもよい。例えば、エチレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン類等のアルケン類や、ブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂において、各成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられるが、重合のし易さの点から、ランダム共重合されていることが好ましい。また、必要に応じて複数種のポリオレフィン樹脂を混合使用してもよい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、上記オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有する樹脂である。共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量は、水性媒体への分散性の観点から、プロピレン(A)と、ブテン(B)との合計100質量部(A+B)に対し、1質量部以上であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましく、1〜8質量部であることが特に好ましく、1.5〜7質量部であることが最も好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が1質量部未満であると、ポリオレフィン樹脂を水性化することが困難となり、一方、含有量が15質量部を超えると、樹脂の水性化は容易になるが、シクロオレフィンポリマー基材への接着性が低下することがある。
不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物も用いることができる。中でも、プロピレン(A)とブテン(B)とを含有するポリオレフィン樹脂(以下、未変性ポリオレフィン樹脂と称する)への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
したがって、本発明では、ポリオレフィン樹脂として、プロピレン/ブテン/無水マレイン酸三元共重合体を使用することが好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではない。例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
なお、ポリオレフィン樹脂に導入された酸無水物成分は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部または全部が開環し、カルボン酸またはその塩となる傾向がある。
不飽和カルボン酸成分を、ポリオレフィン樹脂へ導入する方法(酸変性)は特に限定されず、例えば、ラジカル発生剤存在下、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分とを未変性ポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸成分をグラフト共重合する方法が挙げられる。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらは反応温度によって、適宜選択して使用すればよい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂には、必要に応じて上記以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類並びにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。
これら他の成分の含有量は、ポリオレフィン樹脂の10質量%以下であることが好ましい。
本発明では、ポリオレフィン樹脂として市販のものを用いてもよい。一例として、住友化学社製のタフセレンシリーズ、三井化学社製のタフマーシリーズ、REXtac社製のAPAOシリーズ(非晶性ポリアルファオレフィン)、クラリアント社製のリコセンPPシリーズ、エボニック・デグサ社製のベストプラストなどが挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂として、市販の未変性ポリオレフィン樹脂に、公知の方法で不飽和カルボン酸成分を導入したものを用いてもよい。
本発明の塗工剤は、後述するように、乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が、10,000ppm以下であることが好ましい。
本発明者らによると、ポリオレフィン樹脂のみを固形成分とする水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量は、水性化前の該ポリオレフィン樹脂原料にて測定した不飽和カルボン酸モノマー量と一致することが確認されている。
本発明において、ポリオレフィン樹脂として、不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppm以下であるものを使用することが好ましく、不飽和カルボン酸モノマー量は、5,000ppm以下であることがより好ましく、1,000ppm以下であることがさらに好ましく、500ppm以下であることが特に好ましく、100ppm以下であることが最も好ましい。
通常、上述のような方法により不飽和カルボン酸成分を未変性ポリオレフィン樹脂に導入した場合、未反応の不飽和カルボン酸モノマーが、ポリオレフィン樹脂に残存する。
ポリオレフィン樹脂中の、不飽和カルボン酸モノマーを低減する方法は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂から減圧留去する方法、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解させて再沈殿することにより分離する方法、粉末やペレット状にしたポリオレフィン樹脂を水や有機溶媒中で洗浄する方法、ソックスレー抽出法により除去する方法などが挙げられる。中でも、操作性や低減効率の観点から、ポリオレフィン樹脂から減圧留去する方法、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解させて再沈殿することにより分離する方法、粉末やペレット状にしたポリオレフィン樹脂を水や有機溶媒中で洗浄する方法が好ましい。
ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸モノマーを定量する方法としては、公知の方法を用いることができる。一例としては、抽出溶媒にて樹脂から不飽和カルボン酸モノマーを抽出し、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどを用いて定量することができる。また、不飽和カルボン酸モノマーの酸無水物を定量する際は、水で加水分解することにより対応する不飽和カルボン酸モノマーとして定量してもよい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が、5,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましく、20,000〜120,000であることがさらに好ましく、30,000〜100,000であることが特に好ましく、35,000〜80,000であることが最も好ましい。ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が5,000未満であると、基材との接着性が低下したり、得られる塗膜が硬くてもろくなる傾向があり、一方、重量平均分子量が200,000を超えると、樹脂の水性化が困難になる傾向がある。なお、樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。
本発明の塗工剤は、上記のポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するものであり、ポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に分散もしくは溶解されている。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、後述する塩基性化合物や有機溶剤を含有していてもよい。
塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。塩基性化合物の配合量は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量がより好ましく、0.9〜3.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、10倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、塗工剤の安定性が低下したりすることがある。
本発明においては、ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に親水性有機溶剤を配合することが好ましい。親水性有機溶剤の含有量としては、水性媒体全体に対し50質量%以下が好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%がさらに好ましく、3〜35質量%が特に好ましい。親水性有機溶剤の含有量が50質量%を超える場合には、実質的に水性媒体と見なせなくなり、本発明の目的のひとつ(環境保護)を逸脱するだけでなく、使用する親水性有機溶剤によっては塗工剤の安定性が低下することがある。
親水性有機溶剤としては、分散安定性の良好な塗工剤を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
親水性有機溶剤としては、製膜の過程で効率よく塗膜から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える親水性有機溶剤は、塗膜から乾燥により飛散させることが困難となる傾向にあり、特に低温乾燥時の塗膜の密着性や基材との接着性等が低下することがある。
好ましい親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、ポリオレフィン樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの親水性有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
ポリオレフィン樹脂の水性化をより促進させるために、疎水性有機溶剤をさらに添加してもよい。疎水性有機溶剤としては、20℃の水に対する溶解性が10g/L未満であり、上記と同じ理由で、沸点が150℃以下である疎水性有機溶剤が好ましい。このような疎水性有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等のオレフィン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの疎水性有機溶剤の添加量は、塗工剤に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。添加量が15質量%を超えると、ゲル化等を引き起こすことがある。
本発明の塗工剤中に分散しているポリオレフィン樹脂粒子の粒子径は、特に限定されないが、シクロオレフィンポリマー基材との密着性、低温造膜性や透明性の観点から、重量平均粒子径が150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、1〜50nmであることが特に好ましい。
本発明の塗工剤におけるポリオレフィン樹脂粒子の粒子径分布にかかる分散度(重量平均粒子径/数平均粒子径)は、シクロオレフィンポリマー基材との密着性や低温造膜性の観点から、2.6以下であることが好ましく、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。分散度が2.6を超えると、塗膜の平滑性、密着性が低下する傾向にある。
本発明の塗工剤では、ゼータ電位が−20mV以下であることが好ましく、−30mV以下であることがより好ましい。ゼータ電位が−20mV以下であると、塗工剤は分散安定性(ポットライフ)に優れる。
本発明の塗工剤におけるポリオレフィン樹脂の含有量は、製膜条件や塗膜の厚さ、性能等に応じて適宜選択でき、特に限定されるものでないが、塗工剤の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましく、10〜45質量%であることが特に好ましい。
本発明において、塗工剤の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量は、耐水性、耐薬品性、耐湿熱性、熱処理前後におけるヘイズ変化量の観点から10,000ppm以下であることが好ましく、5,000ppm以下であることがより好ましく、1,000ppm以下であることがさらに好ましく、500ppm以下であることが特に好ましく、100ppm以下であることが最も好ましい。
塗工剤の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が5,000ppm以下である塗工剤から得られた塗膜を設けた積層体は、高温環境下において長期使用した場合でも、ヘイズ変化量が少なく高い透明性を維持できるものであり、好適に用いることができる。
本発明の塗工剤は、他剤との混合安定性や疎水性溶剤などとの混合安定性を高めるために不揮発性の水性化助剤を本発明の効果を損なわない限りにおいて含有してもよく、ポリオレフィン樹脂成分に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満程度含まれていてもよく、含有しないことが最も好ましい。本発明は、水性化助剤を用いずとも、ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に微細かつ安定的に分散することができる。このようにして得られた塗工剤は、シクロオレフィンポリマー基材との密着性、低温造膜性、耐水性、耐薬品性、耐湿熱性、透明性に優れており、これらの性能は長期的にもほとんど変化しない。
ここで、「水性化助剤」とは、塗工剤の製造において、水性化促進や安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば150℃以上)であることを指す。
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
本発明の塗工剤の製造方法について、一例を説明する。
本発明の塗工剤を得るための方法は特に限定されないが、既述の各成分、すなわち、ポリオレフィン樹脂、水性媒体、必要に応じて塩基性化合物、有機溶剤等を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が採用でき、この方法が最も好ましい。
容器としては、固/液撹拌装置や乳化機を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能なものが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも本発明の塗工剤の製造が可能である。
例えば、上記の装置にポリオレフィン樹脂、水性媒体等の原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を70〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは100〜200℃、特に好ましくは110〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子がなくなるまで(例えば、5〜300分間)攪拌を続ける。ここで、槽内の温度が70℃未満になると、ポリオレフィン樹脂の水性化が進行し難くなる。一方、槽内の温度が240℃を超えると、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下する恐れがある。
上記方法では、塩基性化合物、有機溶剤及び水を適宜追加配合してもよく、そのときの割合としては、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。塩基性化合物、有機溶剤又は水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げた後、開封して配合する方法等がある。追加配合する塩基性化合物、有機溶剤又は水の総量は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるように調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
また、追加配合の後、再度80〜240℃の温度に加熱し、攪拌する。このように、水性媒体を構成するものを追加し、再度加熱、攪拌することで、ポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径を小さくすることができる。このように2段階の工程によって樹脂を水性化することは、粒子径分布にかかる分散度を好ましい範囲に調整するうえでも好ましい。
なお、塩基性化合物、有機溶剤、水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプなどを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げ常圧になってから配合する方法などがある。
追加配合する塩基性化合物と、有機溶剤と、水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。また、塩基性化合物、有機溶剤、水の合計は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるよう調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
上記工程において、槽内の温度が80℃未満であると、ポリオレフィン樹脂の水性化が進行し難くなり、一方、槽内の温度が240℃を超えると、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下することがある。
塗工剤の製造時に上記の有機溶剤を用いた場合には、樹脂の水性化の後に、その一部を、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理によって系外へ留去させ、有機溶剤の含有量を低減させてもよい。ストリッピングにより、水性分散体中の有機溶剤含有量は、10質量%以下とすることができ、5質量%以下とすればより好ましく、1質量%以下とすることが、環境上より好ましい。ストリッピングの工程では、水性化に使用した有機溶剤を実質的に全て留去することもできるが、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くしたりする必要があるため、こうした生産性を考慮した場合、有機溶剤含有量の下限は0.0001質量%程度が好ましい。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で塗工剤を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め塗工剤に水を添加しておいてもよい。
塗工剤の固形分濃度は、例えば、水性媒体を留去する方法や、水で希釈する方法により調整することができる。
上記の製造方法により、ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に効率よく分散または溶解された、均一な液状の塗工剤を調製することが可能となる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、塗工剤中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
本発明の塗工剤には、目的に応じて性能をさらに向上させるために、他の重合体、架橋剤、粘着付与剤、無機粒子、顔料、染料等を添加することができる。
本発明の塗工剤に添加する他の重合体、粘着付与剤は、特に限定されない。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ロジンなどの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。なお、これらの重合体は、固形状のままで使用に供してもよいが、塗工剤の安定性維持の点では、水性分散体に加工したものを用いることが好ましい。添加量としては、特に限定されないが、塗工剤中のポリオレフィン樹脂固形分100質量部あたり、1〜50質量部とすることが好ましい。なかでも、シクロオレフィンポリマー基材との密着性、耐薬品性の観点から、ウレタン樹脂を添加することが好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子を使用することでき、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られる高分子を使用することが好ましい。
ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類などの高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられ、中でも接着性を向上させる理由からポリテトラメチレングリコールが好ましい。
ポリウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族または脂環族に属する公知のジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられ、中でも耐水性や耐湿熱性を発現させる理由からイソホロンジイソシアネートが好ましい。また、ジイソシアネート類には、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
本発明において、塗工剤に添加するのに適した水系のポリウレタン樹脂として、市販のものを使用することができる。市販の水系のポリウレタン樹脂としては、楠本化成社製のNEOREZシリーズ(R−600、R−966など)、三井化学社製のタケラックシリーズ(W−615、W−6010、W−511など)、アデカ社製のアデカボンタイターシリーズ(HUX−232、HUX−320、HUX−380、HUX−401など)、第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズ(500、550、610、650など)、大日本インキ化学工業社製ハイドランシリーズ(HW−311、HW−350、HW−150など)等が挙げられる。
本発明の塗工剤に添加する架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、不飽和カルボン酸成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等が挙げられる。
具体的には、イソシアネート基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、アジピン酸ジヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、耐薬品性、取り扱い易さの観点から、オキサゾリン基含有化合物を添加することが好ましい。
オキサゾリン基含有化合物としては、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものが好ましく使用できる。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
架橋剤の添加量は、特に限定されないが、塗膜の耐薬品性等の塗膜性能を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.01〜80質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがより好ましい。
本発明の塗工剤に添加する無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ等の無機粒子や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等の層状無機化合物等が挙げられる。これらの無機粒子の平均粒子径は、塗工剤の安定性の面から、0.005〜10μmであることが好ましく、0.005〜5μmであることがより好ましい。なお、無機粒子として複数のものを混合して使用してもよい。酸化亜鉛は紫外線遮蔽の目的に、酸化すずは帯電防止の目的にそれぞれ使用できるものである。
本発明の塗工剤に添加する顔料、染料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等が挙げられ、分散染料、酸性染料、カチオン染料、反応染料等いずれのものも使用することが可能である。
本発明の塗工剤には、さらに必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤等の各種薬剤を添加することも可能である。
本発明の塗工剤は、塗膜形成能に優れており、各種基材表面に均一に塗布し、乾燥することにより、均一な塗膜を形成することができる。
製膜には、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。
塗工剤の塗布量は、その用途によって適宜選択され、乾燥後の塗布量として0.01〜100g/mであることが好ましく、0.1〜50g/mであることがより好ましく、0.2〜30g/mであることがさらに好ましい。乾燥後の塗布量が0.01〜100g/mとなるよう製膜すれば、均一性に優れる塗膜を得ることができる。
加熱温度や加熱時間は、基材の特性や、水性分散体中に任意に配合しうる前述の各種材料の添加量により適宜選択される。加熱温度としては、20〜250℃であることが好ましく、60〜230℃であることがより好ましく、80〜210℃であることがさらに好ましい。一方、加熱時間は、1秒〜20分であることが好ましく、5秒〜15分であることがより好ましく、5秒〜10分であることがさらに好ましい。なお、架橋剤を添加した場合は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度および時間は架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
本発明の積層体は、上記の塗工剤から水性媒体を除去して得られる塗膜を、シクロオレフィンポリマーの少なくとも片面に設けたものである。本発明の塗工剤により得られる塗膜は、シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン樹脂基材との接着性に優れるため、コーティング剤、プライマー、塗料、インキおよび接着剤等として好適に使用できる。
上記シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、特開平10−120768号公報、特開平11−43566号公報、特開2004−51949号公報、特開2004−156048号公報等に記載された、主鎖に環状のオレフィン骨格を有する熱可塑性オレフィン系樹脂が挙げられる。シクロオレフィンポリマーの市販品としては、JSR社製のARTON、日本ゼオン社製のZEONOR、ZEONEX、ポリプラスチックス社製のTOPAS、三井化学社製のAPELなどが挙げられる。
本発明の塗工剤は、シクロオレフィンポリマー基材への接着性に優れているだけでなく、ポリプロピレン樹脂基材等の他のポリオレフィン樹脂基材や、アルミやメッキ等の金属基材、ポリエチレンテレフタレート樹脂やアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂基材にアルミやインジウムを蒸着した金属蒸着基材や紙、合成紙、ガラスなどの他基材への接着性にも優れている。このため、本発明の塗工剤からなる塗膜をコート層としてシクロオレフィンポリマー基材表面に形成して使用するほかに、この塗膜を接着層として、シクロオレフィンポリマー基材と他基材との接着に使用することができる。
熱可塑性樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂やアクリル樹脂の他にもナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ABS樹脂またはそれらの混合物よりなるフィルムまたはそれらのフィルムの積層体が挙げられる。
熱可塑性樹脂フィルムは、フィラーを含有していてもよい。フィラーとしては、無機系のものが好ましく、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナ等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂フィルムは、様々なバリアコーティング、易接着コーティング、帯電防止コーティング、紫外線遮蔽コーティング等の機能性処理やシリカ、アルミナ、アルミ等の各種蒸着処理が施されていてもよい。本発明の塗工剤は上記処理が施された面に対する接着性も良好である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各種の特性は、以下の方法により測定または評価した。
1.ポリオレフィン樹脂
(1)不飽和カルボン酸成分の含有量
プロピレン(A)とプロピレン以外のオレフィン(B)との合計に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm−1)により求めた。
(2)不飽和カルボン酸成分以外の樹脂の構成
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比は、オルトジクロロベンゼン(d)中、120℃にてH−NMR、13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法に基づき測定した。
(3)重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgのポリオレフィン樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合は、オルトジクロロベンゼンで溶解した。
(4)不飽和カルボン酸モノマー量
ポリオレフィン樹脂ペレットを凍結粉砕して微細化した微細化物約0.05gを精秤し、20mlのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μm C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー量が1000ppm未満の場合、ポリオレフィン樹脂ペレット量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー標準サンプルを用いて作成した。
2.塗工剤
(1)ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径、重量平均粒子径、および分散度
日機装社製、Nanotrac Wave−UZ152粒度分布測定装置を用いて、数平均粒子径(mn)、重量平均粒子径(mw)を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
分散度は、下記式に基づき算出した。
分散度=重量平均粒子径(mw)/数平均粒子径(mn)
(2)ゼータ電位
上記(1)記載の装置を用いて測定した。
(3)粘度
300メッシュ濾過後の塗工剤を、B型粘度計(トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計)を用い、温度20℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。
(4)不飽和カルボン酸モノマー量
塗工剤を乾燥することにより得た乾燥残渣を凍結粉砕して微細化した微細化物約0.05gを精秤し、20mlのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μm C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー量が1000ppm未満の場合、該乾燥残渣量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー標準サンプルを用いて作成した。
(5)ポットライフ
塗工剤を室温で90日放置したときの外観を、下記3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
3.塗膜
(1)密着性
塗工剤を、シクロオレフィンポリマー基材(日本ゼオン社製「ゼオノアZF−14−100」、厚さ100μm、以下「シクロオレフィンフィルム」と記載)上に、乾燥後の塗布量が約2g/mになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で30秒乾燥して、塗膜を得た。
得られたシクロオレフィンフィルム上の塗膜について、JIS K5400記載のクロスカット法によるテープ剥離(碁盤目試験)をおこなった。すなわち、クロスカットにより、塗膜を100区間にカットし、テープ剥離後、残留した塗膜の区間数で、以下の基準により密着性を評価した。
◎:100区間残留。
○:95〜99区間残留。
△:90〜94区間残留。
×:残留が89区間以下。
(2)低温乾燥時の密着性(低温造膜性)
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約2g/mになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、50℃で10秒乾燥して、塗膜を得た。
得られたシクロオレフィンフィルム上の塗膜について、前記(1)と同様の方法で碁盤目試験を行い、(1)の基準と同様に低温乾燥時の密着性(低温造膜性)を評価した。
(3)耐水性
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約2g/mになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、60℃で30秒、乾燥させた。このようにして作製したコートフィルムを40℃の温水中に24時間浸漬した。
得られたシクロオレフィンフィルム上の塗膜について、前記(1)と同様の方法で碁盤目試験を行い、(1)の基準と同様に耐水性を評価した。
また、塗膜表面を目視で観察し、以下の指標で、外観を評価した。
○:塗膜に変化なし。
△:塗膜は剥がれていないが、白化やブリスターが確認される。
×:塗膜が剥がれる。
(4)耐薬品性
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約2g/mになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、130℃で10分間乾燥した。このようにして得た積層体を20℃の模擬ガソリン(トルエンとイソオクタン(いずれも和光純薬工業社製)の等体積混合物)中に24時間浸漬した後、乾燥した。
得られたシクロオレフィンフィルム上の塗膜について、前記(3)と同様の方法で、密着性と外観について耐薬品性を評価した。
(5)耐湿熱性
(5−1)<COPとOPPの貼り合わせ>
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約5g/mになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分乾燥させた。
このようにして作製したコートフィルムのコート面と延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)のコロナ処理面とを貼りあわせ、120℃で20秒間、2kg/cmでプレスすることにより、積層体を得た。
得られた積層体を、85℃、85%RHにて1000時間保存を行い、保存の前後でのラミネート強度を測定した。
(試験前)
7N/15mm以上を合格とした。
(試験後)
3N/15mm以上を合格とした。
なお、ラミネート強度の測定は、積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、T型剥離により強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度50mm/分で行った。
(5−2)<COPとALの貼り合わせ>
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約5g/mになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分乾燥させた。
このようにして作製したコートフィルムのコート面とアルミ箔(AL)とを貼りあわせ、120℃で20秒間、2kg/cmでプレスすることにより、積層体を得た。
得られた積層体を、85℃、85%RHにて1000時間保存を行い、保存の前後でのラミネート強度を測定した。
(試験前)
12N/15mm以上を合格とした。
(試験後)
7N/15mm以上を合格とした。
なお、ラミネート強度の測定は、積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、T型剥離により強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度50mm/分で行った。
(6)透明性(ヘイズ)
塗工剤を、シクロオレフィンフィルム上に、乾燥後の塗布量が約5g/mになるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分乾燥させてコートフィルムを得た。
JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、コートフィルムのヘイズ値T1を測定し、TM1(n=5測定の平均値)を算出した。ただし、この評価値は実施例で用いた、ヘイズが0.3%のシクロオレフィンフィルムにコートしたフィルム全体のヘイズの値である。
実用的には3%以下であることが好ましい。
(7)熱処理前後におけるヘイズ変化量(ΔHz)
(6)透明性において、ヘイズ値を測定したコートフィルムを40℃で24時間の熱処理を行った。その後、JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業社製、NDH2000)を用いてコートフィルムのヘイズ値T2を測定し、TM2(n=5測定の平均値)を算出した。
熱処理前後でのヘイズ変化量△Hzを下記式により算出した。
△Hz(%)=TM2−TM1
実用的にはΔHzは2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
製造例1:ポリオレフィン樹脂P−1の製造
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂P−1を得た。得られた樹脂の特性を表1に示す。
製造例2:ポリオレフィン樹脂P−2の製造
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=65/35であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−2を得た。
製造例3:ポリオレフィン樹脂P−3
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に変えて、プロピレン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/エチレン=92/8)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−3を得た。
製造例4:ポリオレフィン樹脂P−4
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に変えて、プロピレン−ブテン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン/エチレン=65/24/11)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−4を得た。
製造例5:ポリオレフィン樹脂P−5
製造例1において、アセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−5を得た。
製造例6:ポリオレフィン樹脂P−6
製造例1において、トリエチルアミンのアセトン溶液をアセトンに変更し、その後のアセトン洗浄をメタノール洗浄に変更した以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−6を得た。
製造例7:ポリオレフィン樹脂P−7
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を33.0gとし、洗浄工程をアセトンの2回洗浄に変更した以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−7を得た。
製造例8:ポリオレフィン樹脂P−8
製造例7において、洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−8を得た。
製造例9:ポリオレフィン樹脂P−9
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を24.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を18.5gとした以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−9を得た。
製造例10:ポリオレフィン樹脂P−10
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を56.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−10を得た。
製造例11:ポリオレフィン樹脂P−11
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を20.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−11を得た。
製造例12:ポリオレフィン樹脂P−12
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を20.0gとし、トリエチルアミンのアセトン溶液の洗浄工程およびアセトンの洗浄工程を省いた以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−12を得た。
製造例13:ポリオレフィン樹脂P−13
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=97/3であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−13を得た。
製造例14:ポリオレフィン樹脂P−14
製造例1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=50/50であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−14を得た。
製造例15:ポリオレフィン樹脂P−15
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体に変えて、エチレン−ブテン共重合体(質量比:エチレン/1−ブテン=80/20)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−15を得た。
製造例1〜15で得られたポリオレフィン樹脂の特性を表1に示す。
塗工剤E−1の製造
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂P−1、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)および137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が40℃になるまで冷却し、開封して、40.0gのイソプロパノール、5.0gのトルエンおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の塗工剤E−1を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
塗工剤E−2の製造
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂P−1、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのDMEAおよび137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのDMEAおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の塗工剤E−2を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
塗工剤E−3〜4、E−6〜11、E−13〜17の製造
表2に示したように、ポリオレフィン樹脂を変更した以外は、E−2と同様の操作を行って、塗工剤E−3〜4、E−6〜11、E−13〜17を得た。なお、E−8、E−9、E−11、E−14においては、最初のDMEAの添加量を8.0gから12.0gに変更し、2回目のDMEAの添加量は、E−2の製造方法と同様に、5.0gとした。
塗工剤E−5の製造
塗工剤E−1の製造において、ポリオレフィン樹脂をP−4に変えて、DMEAの量を12.0gとした以外は同様の操作を行って、塗工剤E−5を得た。
塗工剤E−12の製造
塗工剤E−2を250gと、蒸留水120gを0.5Lの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器とを設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約120gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な塗工剤E−12を得た。なお、E−12中の有機溶剤の含有率は1%未満であった。得られた塗工剤の特性を表2に示す。
実施例1〜10、16〜18、比較例1〜4
塗工剤E−1〜17から得られた塗膜の評価結果を表3に示す。
実施例11
塗工剤E−1と、オキサゾリン基含有化合物の水性溶液(日本触媒社製WS−700 固形分濃度25質量%)とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン基含有化合物固形分の量が10質量部になるように混合して塗工剤を得た。得られた塗膜の評価結果を表3に示す。
実施例12〜15
表3に示すように、塗工剤の種類とオキサゾリン基含有化合物の添加量を変更した以外は、実施例11と同様の操作で塗工剤を得た。得られた塗膜の評価結果を表3に示す。
実施例19
塗工剤E−2と、ポリウレタン樹脂水性分散体(楠本化成社製NEOREZ R−600 固形分濃度33質量%)とを、オレフィン樹脂固形分100質量部に対して、ポリウレタン樹脂水性分散体の固形分が20質量部になるように添加して塗工剤を得た。得られた塗膜の評価結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例1〜19において得られた塗工剤は、シクロオレフィンポリマー基材との密着性に優れ、低温での造膜性に優れている。またこれらの塗工剤から得られた塗膜は、耐水性、耐薬品性、耐湿熱性、透明性にも優れるものであった。
また、オキサゾリン基含有化合物を添加した場合(実施例11〜15)、耐薬品性により優れる塗膜が得られた。
さらに、ウレタン樹脂を添加した場合(実施例19)、密着性、耐薬品性により優れる塗膜が得られた。
一方、ポリオレフィン樹脂の構成が、本発明の範囲外にあると(比較例1〜4)、シクロオレフィンポリマー基材との密着性、耐水性、低温造膜性、耐薬品性、耐湿熱性のすべてに劣るものであった。



Claims (7)

  1. ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有するシクロオレフィンポリマー用塗工剤であって、ポリオレフィン樹脂が、プロピレン(A)、ブテン(B)および不飽和カルボン酸成分を共重合体成分として含有することを特徴とするシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
  2. シクロオレフィンポリマー用塗工剤の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が、10,000ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
  3. プロピレン(A)とブテン(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であることを特徴とする請求項1または2に記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
  4. さらに、架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤。
  5. シクロオレフィンポリマー基材の少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれかに記載のシクロオレフィンポリマー用塗工剤から得られる塗膜を設けたことを特徴とする積層体。
  6. さらに塗膜を介してシクロオレフィンポリマー基材又は他基材を貼り合わせたことを特徴とする請求項5記載の積層体。
  7. 他基材が、ポリオレフィン樹脂基材、金属基材、金属蒸着基材であることを特徴とする請求項6記載の積層体。
























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