JP2018172223A - コンクリート構造体 - Google Patents

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晴樹 大藤
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Abstract

【課題】コンクリート表面に含まれる離型剤のブリードアウトを防止することができるコンクリート構造体を提供する。
【解決手段】少なくともコンクリート基材、ブリードアウト防止層が積層されてなるコンクリート構造体であって、ブリードアウト防止層が、不飽和カルボン酸成分を0.1〜15質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含有するコンクリート構造体。好ましくは、ブリードアウト防止層が更にポリウレタン樹脂及び/又は架橋剤を含有し、その上、フッ素樹脂を含有する、コンクリート構造物。更に、好ましくは親水層を積層されている、コンクリート構造物。
【選択図】なし

Description

本発明は、コンクリート構造体に関する。
コンクリートやレンガなどの無機質基材は、土木建築材料として大量に使用されている。特にセメントに水や砂、砂利などを混合し、任意の形状で硬化させることで得られるコンクリート構造体は、道、橋、トンネル、ダム、家、ビルなどとして、生活や社会、産業に欠かせないものとなっている。
コンクリート構造体は、金型枠にコンクリートを流し込み、硬化後に型枠から外して製造されており、型枠からの離型性向上、型枠の防錆性改良、施工面の平滑性向上などの目的のため、型枠には、予めコンクリート離型剤が塗布されている。
コンクリート離型剤は、一般的に、中質粘度の潤滑油(マシン油46〜68程度のもの)を基油とし、使用時に灯油または軽油を50〜60%加えて希釈され、添加剤として植物油や脂肪酸エステルや有機酸などが10〜20%配合されている。
一方、コンクリート構造体の表面は、耐防汚性、光沢性、反射性など様々な加工が塗装などの方法で施されている。特に、コンクリート構造体の表面に、光触媒機能を有する金属酸化物とバインダーとを含有する親水性光触媒塗料を塗装したものは、雨スジ汚れ等の汚れが付着し難く、建築材料として注目されている。
親水性光触媒塗料は、塗装された表面に光が照射されることで、有機化合物の酸化還元反応を引き起こし、接触した有機汚染物質を分解することができる。すなわち、塗料に含まれる光触媒機能を有する金属酸化物は、大気中の水分と反応して前記塗装表面上に親水性基を形成し、水膜の形成および移動を促進し、結果として塗装表面の耐汚染性や抗菌性を向上させている。
特許文献1、2には、光触媒塗料を塗装して親水層を設けたコンクリート構造体が開示されている。
特表2014−504251号公報 特開2008−212821号公報
しかしながら、型枠から離型したコンクリート表面には、型枠に塗布した離型剤が含まれるため、その上に引用文献1、2のように親水性光触媒塗料を塗布して親水層を形成しても、長時間経過すると、離型剤が親水層にブリードアウトすることに起因して、親水層表面の親水性が阻害され、部分的に耐防汚性や抗菌性が不十分となるおそれがあった。
本発明の課題は、コンクリート表面に含まれる離型剤のブリードアウトを防止することができるコンクリート構造体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定組成の酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する層を、コンクリート基材に積層することで、コンクリート表面に含まれる離型剤のブリードアウトを効果的に防止できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)少なくともコンクリート基材、ブリードアウト防止層が積層されてなるコンクリート構造体であって、
ブリードアウト防止層が、不飽和カルボン酸成分を0.1〜15質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とするコンクリート構造体。
(2)ブリードアウト防止層がさらにポリウレタン樹脂および/または架橋剤を含有することを特徴とする(1)記載のコンクリート構造体。
(3)ブリードアウト防止層がさらにフッ素樹脂を含有することを特徴とする(1)または(2)記載のコンクリート構造体。
(4)さらに親水層が積層されてなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のコンクリート構造体。
本発明によれば、ブリードアウト防止層として特定組成の酸変性ポリオレフィン樹脂層をコンクリート基材に積層することで、コンクリート表面に含まれる離型剤のブリードアウトが効果的に防止され、特に、親水層を有するコンクリート構造体であれば、表面の耐防汚性や抗菌性が長時間維持されたコンクリート構造体を提供することができる。また、ブリードアウト防止層は、構成成分が酸変性ポリオレフィン樹脂であるため、安価であり、かつ焼却時にダイオキシン等の有害物質を発生しない。さらに、ブリードアウト防止層を形成するための塗工液は、トルエンなどの有機溶剤を使用せずに製造できるため、作業環境へ配慮されたものであり、シックハウス症候群に対しても考慮されたものである。上記の理由から、本発明のコンクリート構造体は、建築材料用に好適に用いることができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のコンクリート構造体は、コンクリート基材、ブリードアウト防止層が積層されたものであり、ブリードアウト防止層は、不飽和カルボン酸成分を0.1〜15質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する。
[コンクリート基材]
本発明のコンクリート構造体を構成するコンクリート基材としては、特に限定されず公知の種類や組成のものを用いることが可能である。コンクリート組成物としては、セメントと水、さらには骨材、糊材、混和剤などを必要に応じて任意の公知の配合組成に調合した組成物を使用することができる。また、組成物には、本発明で用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を添加してもよい。さらに、コンクリート構造体補強のために、鉄筋を配したり、コンクリートに炭素繊維、アラミド繊維などの高強度・高弾性率繊維を配合することもできる。使用するセメントなどの各種原材料も公知のものを用いることが可能である。このようなコンクリート組成物は、任意の形状に保ち水和反応が進むことによって硬化し、コンクリート構造体とすることができる。なお、本発明では、コンクリートとモルタルは大別せず、モルタルはコンクリートに含まれるものとする。
また、コンクリート基材製造時、型枠に離型剤が塗布されて製造されることが一般的であり、シリコーンオイル、鉱物油、動物油、植物油等の油剤や、これら油剤の水系エマルジョン等の成分を含有する離型剤を表面に含む場合がある。
[ブリードアウト防止層]
<酸変性ポリオレフィン樹脂>
本発明のコンクリート構造体を構成するブリードアウト防止層は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する。
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有するものである。
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂の主成分たるオレフィン成分は、特に限定されず、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜6のアルケンが、密着性の観点から好ましく、これらの混合物でもよい。この中でも、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンなどの炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂において、各成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられ、重合のし易さの点から、ランダム共重合が好ましい。また、必要に応じて、複数種のポリオレフィン樹脂を混合使用してもよい。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂の共重合成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量は、後述する水性媒体への分散性の観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂中に、0.1〜15質量%であることが必要であり、1〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましく、1.5〜7質量%であることが最も好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%未満であると、酸変性ポリオレフィン樹脂は、水性化が困難となり、含有量が15質量%を超えると、水性化は容易になるが、形成されたブリードアウト防止層は、耐水性が低下する場合がある。
不飽和カルボン酸成分として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物も用いることができる。中でも、ポリオレフィン樹脂への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
なお、酸変性ポリオレフィン樹脂に導入されている酸無水物成分は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部または全部が開環し、カルボン酸またはその塩となる傾向がある。
不飽和カルボン酸成分を、未変性ポリオレフィン樹脂へ導入する方法は特に限定されず、例えば、ラジカル発生剤存在下、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分とを未変性ポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸成分をグラフト共重合する方法が挙げられる。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらは反応温度によって、適宜選択して使用すればよい。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて上記以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類並びにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。
上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル類は、コンクリート基材や親水層との密着性を向上させるために有効であり、(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜35質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることがさらに好ましく、5〜25質量%であることが特に好ましく、10〜25質量%であることが最も好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が0.5質量%未満では、密着性向上の効果が見られず、40質量%を超えるとポリオレフィン樹脂由来の性質が失われ、離型剤のブリードアウトを防止する性能が低下する場合がある。
(メタ)アクリル酸エステル類以外の成分の含有量は、一般に、ポリオレフィン樹脂の10質量%以下であることが好ましい。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂は、5〜40質量%の範囲で塩素化されていてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が、5,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましく、20,000〜120,000であることがさらに好ましく、30,000〜100,000であることが最も好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が5,000未満であると、得られる塗膜が硬くてもろくなったり、離型剤のブリードアウトを防止する性能が低下する傾向があり、一方、重量平均分子量が200,000を超えると、樹脂の水性化が困難になる傾向がある。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。
一般に酸変性ポリオレフィン樹脂は、溶剤に対して難溶であり、このため分子量測定が困難となる場合がある。そのような場合には、溶融樹脂の流動性を示すメルトフローレート値を分子量の目安とするのがよい。
本発明では、酸変性ポリオレフィン樹脂として市販のものを用いてもよい。例えば、三井デュポン社製ニュクレルシリーズ、住友化学社製ボンドファーストシリーズ、住友化学工業社製ボンダインシリーズ、ダウ・ケミカル社製プリマコールシリーズなどが挙げられる。また、酸変性ポリオレフィン樹脂として、日本ポリエチレン社製ノバテックシリーズ、プライムポリマー社製ゼオネックスシリーズなどの未変性ポリオレフィン樹脂に、公知の方法で不飽和カルボン酸成分を導入したものを用いてもよい。
本発明のコンクリート構造体を構成するブリードアウト防止層は、密着性を向上させる観点でフッ素樹脂を含有することが好ましく、ブリードアウト防止層を形成する塗工液に、フッ素樹脂の分散体を含有させて形成することが好ましい。
ブリードアウト防止層におけるフッ素樹脂の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、50質量%未満であることがより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。80質量%を超えると、ブリードアウト防止性能が低下する場合がある。
また、本発明ではフッ素樹脂分散体として市販のものを用いてもよく、例えば和光純薬工業社製ナフィオン DE1021、DE2021、DE2020;ダイキン社製ポリフロンPTFE D−210C;三井・デュポンフロロケミカル社製PTFEディスパージョン 31−JRなどが挙げられる。
<添加物>
ブリードアウト防止層は、目的に応じて性能をさらに向上させるために、他の重合体、粘着付与剤、架橋剤、無機粒子、顔料、染料等を含有することができる。
他の重合体、粘着付与剤は、特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジンなどの粘着付与樹脂(粘着付与剤)、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、各種架橋剤等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。なお、これらの重合体は、固形状のままで使用に供してもよいが、水性分散体の安定性維持の点では、水性分散体に加工したものを用いることが好ましい。
中でも、基材との密着性、耐薬品性、耐水性、耐熱性等の観点から、ポリウレタン樹脂を含有することが好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子を使用することができ、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られる高分子を使用することができる。
ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類などの高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族または脂環族に属する公知のジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。また、ジイソシアネート類には、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
本発明では、環境に配慮して水系のポリウレタンを好適に用いることができる。水系のポリウレタン樹脂として市販のものを用いてもよく、例えば、三井化学社製のタケラックシリーズ(W−615、W−6010、W−511など)、アデカ社製アデカボンタイターシリーズ(HUX−232、HUX−320、HUX−380、HUX−401など)、第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズ(500、550、610、650など)、大日本インキ化学工業社製ハイドランシリーズ(HW−311、HW−350、HW−150など)等が挙げられる。
添加物としてポリウレタン樹脂を用いる場合、その含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜300質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましく、3〜100質量部であることがさらに好ましい。ポリウレタン樹脂の含有量が1質量部未満では、塗膜性能の向上が十分でないことがあり、一方、300質量部を超えると、コンクリート基材に対する密着性が低下することがある。
ブリードアウト防止層が含有する架橋剤として、自己架橋性を有する架橋剤、不飽和カルボン酸成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができる。
具体的には、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、取り扱い易さの観点から、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物を添加することが好ましい。
オキサゾリン基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のオキサゾリン基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
カルボジイミド基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱い易さから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであっても構わない。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオール等が共重合されていてもよい。ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。具体的な商品としては、例えば、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」等が挙げられる。
イソシアネート基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4′−または4,4′−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−または2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−または1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3、3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4−または2,6−ジイソシアネート、ぺルヒドロ−2,4′−または4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物、あるいはそれらの改変生成物が挙げられる。ここで、改変生成物とは、多官能イソシアネート化合物のうちのジイソシアネートを公知の方法で変性することによって得られるものであり、例えば、アロファネート基、ビューレット基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基等を有する多官能イソシアネート化合物、さらにはトリメチロールプロパン等の多官能アルコールで変性したアダクト型の多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。なお、上記イソシアネート基含有化合物には、20質量%以下の範囲でモノイソシアネートが含有されていてもよい。また、これらの1種または2種以上を用いることができる。
イソシアネート基含有化合物は、通常、多官能イソシアネート化合物と一価または多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールと反応させて得ることができる。そのような水性の多官能イソシアネート化合物の市販品としては、住友バイエルウレタン社製のバイヒジュール(Bayhydur)3100、バイヒジュールVPLS2150/1、SBUイソシアネートL801、デスモジュール(Desmodur)N3400、デスモジュールVPLS2102、デスモジュールVPLS2025/1、SBUイソシアネート0772、デスモジュールDN、武田薬品工業社製のタケネートWD720、タケネートWD725、タケネートWD730、旭化成工業社製のデュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、デュラネートWX−1741、BASF社製のバソナート(Basonat)HW−100、バソナートLR−9056等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAβ−ジメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
市販のエポキシ化合物としては、本発明に適した水系のものとして、例えば、長瀬ケムテック社製のデナコールシリーズ(EM−150、EM−101など)、旭電化工業社製のアデカレジンシリーズ等が挙げられ、UVインキ密着性や耐スクラッチ性向上の点から多官能エポキシ樹脂エマルションである旭電化社製のアデカレジンEM−0517、EM−0526、EM−11−50B、EM−051Rなどが好ましい。
架橋剤の含有量は、ブリードアウト防止層の耐水性や耐溶剤性等を向上させる観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.01〜80質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがより好ましく、0.5〜30質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が0.01質量部未満であると、上記性能の向上が十分でないことがあり、80質量部を超えると、加工性等が低下することがある。
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ等の無機粒子や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等の層状無機化合物等が挙げられる。これらの無機粒子の平均粒子径は、塗工液の安定性の面から、0.005〜10μmであることが好ましく、0.005〜5μmであることがより好ましい。なお、無機粒子として複数のものを混合して使用してもよい。酸化亜鉛は紫外線遮蔽の目的に、酸化すずは帯電防止の目的にそれぞれ使用できるものである。
<ブリードアウト防止層形成用の塗工液>
本発明のコンクリート構造体を構成するブリードアウト防止層は、上記酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する層であり、酸変性ポリオレフィン樹脂が溶媒に溶解もしくは分散した塗工液をコンクリート基材に塗布、乾燥することにより形成することができる。環境の観点から、溶媒は水性媒体であることが好ましく、酸変性ポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に分散もしくは溶解され、水性化することが好ましく、水性分散体として用いることが好ましい。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、後述する親水性有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよい。
塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。塩基性化合物の配合量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量がより好ましく、0.9〜3.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められなくなる傾向にあり、10倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下したりすることがある。
本発明においては、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に親水性有機溶剤を配合することが好ましい。親水性有機溶剤の含有量としては、水性媒体全体に対し50質量%以下が好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%がさらに好ましく、3〜35質量%が特に好ましい。親水性有機溶剤の含有量が50質量%を超える場合には、実質的に水性媒体と見なせなくなり、使用する親水性有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下することがある。
親水性有機溶剤としては、分散安定性良好な水性分散体を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
親水性有機溶剤としては、製膜の過程で効率よく塗膜から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える親水性有機溶剤は、塗膜から乾燥により飛散させることが困難となる傾向にあり、特に低温乾燥時の塗膜の耐水性や基材との密着性等が低下することがある。
好ましい親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの親水性有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化をより促進させるために、疎水性有機溶剤をさらに添加してもよい。疎水性有機溶剤としては、20℃の水に対する溶解性が10g/L未満であり、上記と同じ理由で、沸点が150℃以下である有機溶剤が好ましい。このような疎水性有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等のオレフィン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの疎水性有機溶剤の添加量は、塗工液に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。疎水性有機溶剤の添加量が15質量%を超えると、ゲル化等を引き起こすことがある。
水性分散体中に分散している酸変性ポリオレフィン樹脂粒子の粒子径は、特に限定されないが、低温造膜性、塗膜の緻密性や透明性、他材料との混合安定性の観点から、体積平均粒子径が0.25μm以下であることが好ましく、0.15μm以下であることがより好ましく、0.001〜0.10μmであることがさらに好ましく、0.001〜0.05μmであることが特に好ましい。体積平均粒子径が0.25μmを上回ると、ブリードアウト防止層を形成する際の造膜性が低下し、それに起因して離型剤のブリードアウトを防止する性能が低下する場合がある。
また水性分散体における酸変性ポリオレフィン樹脂の粒子径分布にかかる分散度(体積平均粒子径/数平均粒子径)は、2.6以下であることが好ましく、特に塗膜の平滑性の観点から、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。分散度が2.6を超えると、塗膜の平滑性、密着性が低下する傾向にある。
本発明では、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体のゼータ電位は、−20mV以下であることが好ましく、−30mV以下であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体は、ゼータ電位が−20mV以下であると、分散安定性に優れ、さらに種々の添加剤と混合した際の混合安定性にも優れる。
水性分散体における酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、製膜条件や塗膜の厚さ、性能等に応じて適宜選択でき、特に限定されるものでないが、水性分散体の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましく、10〜45質量%であることが特に好ましい。
水性分散体は、不揮発性の水性化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明は、不揮発性水性化助剤の使用を排除するものではないが、水性化助剤を用いずとも、酸変性ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に微細かつ安定的に分散することができる。このため、低温乾燥における塗膜特性、特に耐水性、基材との密着が優れており、これらの性能は長期的にもほとんど変化しない。
ここで、「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を製造時(樹脂の水性化時)に用いず、得られる分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、酸変性ポリオレフィン樹脂成分に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
次に、本発明におけるブリードアウト防止層を形成する塗工液として、水性分散体の製造方法を、一例として説明する。
水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、既述の各成分、すなわち、酸変性ポリオレフィン樹脂、水性媒体、必要に応じて有機溶剤、塩基性化合物等を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が採用でき、この方法が最も好ましい。
容器としては、固/液撹拌装置や乳化機として使用されている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。
例えば、上記装置に、酸変性ポリオレフィン樹脂、水性媒体等の原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を80〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは110〜200℃、特に好ましくは110〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで攪拌を続ける(例えば、5〜300分間)。
その後、さらに系内に塩基性化合物、有機溶剤および水から選ばれる少なくとも1種を加え、密閉容器中で、再度、80〜240℃の温度下で加熱、攪拌する。このように、水性媒体を構成するものを追加し、再度加熱、攪拌することで、酸変性ポリオレフィン樹脂の体積平均粒子径を0.25μm以下にすることができる。また、このように2段階の工程によって樹脂を水性化することは、粒子径分布にかかる分散度を好ましい範囲に調整するうえでも好ましい。
なお、塩基性化合物、有機溶剤、水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプなどを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げ常圧になってから配合する方法などがある。
追加配合する塩基性化合物と、有機溶剤と、水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。また、塩基性化合物、有機溶剤、水の合計は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるよう調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
上記工程において、槽内の温度が80℃未満であると、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化が進行し難くなり、一方、槽内の温度が240℃を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂の分子量が低下することがある。
水性分散体の製造時に上記の有機溶剤を用いた場合には、樹脂の水性化の後に、その一部を、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理によって系外へ留去させ、有機溶剤の含有量を低減させてもよい。ストリッピングにより、水性分散体中の有機溶剤含有量は、10質量%以下とすることができ、5質量%以下とすればより好ましく、1質量%以下とすることが、環境上より好ましい。ストリッピングの工程では、水性化に使用した有機溶剤を実質的に全て留去することもできるが、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くしたりする必要があるため、こうした生産性を考慮した場合、有機溶剤含有量の下限は0.01質量%程度が好ましい。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
水性分散体の製造時に沸点が100℃未満の塩基性化合物を使用している場合、上記ストリッピングを行う前に沸点が100℃以上の塩基性化合物を添加することが好ましい。沸点が100℃未満の塩基性化合物のみが含まれる状態でストリッピングを行うと、塩基性化合物が系中から除去されてしまい、結果として水性分散体から樹脂が沈殿する場合がある。
水性分散体の固形分濃度は、例えば、水性媒体を留去する方法や、水で希釈する方法により調整することができる。
上記製造方法を採用することで、酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に効率よく分散または溶解された、均一な液状の水性分散体を調製することが可能となる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、水性分散体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
水性分散体を製造する方法としては、酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に均一に混合・分散される方法であれば、上記方法に限定されない。
<ブリードアウト防止層の形成>
次に、水性分散体を使用してブリードアウト防止層を形成する方法について説明する。
本発明における水性分散体は、塗膜形成能に優れるものであり、具体的には、水性分散体を、コンクリート基材表面に均一に塗布し、乾燥させることにより、均一な塗膜をコンクリート基材表面に密着させて形成することができる。また、この際に乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、より緻密な塗膜を得ることが可能となる。
水性分散体は、必要に応じて、上記の添加物を含有し、また有機防カビ剤、造膜助剤、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、染料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、フィラー等の塗料用添加剤を含有してもよい。
塗布には、公知の方法、例えば、はけ塗り、筆塗り、短毛ローラーコーティング、ナイフコーティング、リップコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が採用できる。これらの方法の中でも、建築材料への塗布に適した、はけ塗り、短毛ローラーコーティング、スプレーコーティングなどの方法が好ましい。
水性分散体の塗布量は、加工時に剥離等を生じない範囲で、かつ、顔料が添加されている場合は十分な発色が得られる範囲で調節する。具体的には、一例として、乾燥後の塗布量として数μm〜数十μmに設定できる。
なお、塗布量を調節するためには、塗布に用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする塗膜の厚さに応じて濃度調整された水性分散体を使用することが好ましい。
乾燥や焼き付けを行う場合の加熱装置として、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用することができる。
加熱温度や加熱時間は、被塗布物であるコンクリート基材の特性や、水性分散体中に任意に配合しうる前述の各種材料の添加量により適宜選択される。加熱温度としては、20〜160℃であることが好ましく、40〜140℃であることがより好ましく、50〜120℃であることがさらに好ましい。一方、加熱時間は、1秒〜30分であることが好ましく、10分〜20分であることがより好ましい。なお、架橋剤を添加した場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度および時間は架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
[他の層]
本発明のコンクリート構造体は、少なくともコンクリート基材、ブリードアウト防止層が積層されてなるものであり、ブリードアウト防止層より表層側には他の層を設けてもよい。他の層としては、これらに限定されるものではないが、例えば、親水層、光沢層、反射層、防汚層、防水層、意匠性を有する層などが挙げられる。また、コンクリート基材に塗料を塗布する際に一般的に下塗りされている防水層をブリードアウト防止層の前後に設けてもよい。なかでも、本発明のコンクリート構造体は、親水層を設けた際にコンクリート離型剤のブリードアウト防止効果を十分に発揮できるので好ましい。
親水層は、バインダーと光触媒機能を有する成分を含有する層であることが好ましく、光触媒機能を有する成分は、光触媒活性を有すれば特に限定されず、その好ましい例としては、酸化チタン(TiO)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feなどの金属酸化物の粒子が挙げられ、酸化チタン粒子、具体的にはアナターゼ型酸化チタン粒子がより好ましい。酸化チタンは、粉末状、ゾル状、溶液状など様々な形態で入手可能であり、光触媒活性を示すものであれば、いずれの形態でも使用可能である。これら光触媒機能を有する成分は、光が照射されれば親水性基を形成する。
また、バインダーとしては、フッ素系樹脂、無機酸化物粒子、シリコーン、アルカリシリケート、アルキルシリケート等を好適に利用することができる。
コンクリート基材上に、ブリードアウト防止層を設けることにより、本発明のコンクリート構造体を製造することができる。本発明のコンクリート構造体は、コンクリート離型剤のブリードアウトを防止できるため、離型剤のブリードアウトで機能が低下するような機能層を積層する場合の構造体として、特に好適である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
各種の特性について、以下の方法で測定または評価した。
1.酸変性ポリオレフィン樹脂の特性
(1)構成
H−NMR分析(日本電子社製、ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d)を溶媒とし、120℃で測定した。
2.酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の特性
(1)分散粒子の数平均粒子径、体積平均粒子径および分散度
マイクロトラック粒度分布計(日機装社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用いて求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
3.コンクリート構造体の評価
(1)促進試験
実施例および比較例で作製したコンクリート構造体の試験片に対し、JIS規格B7753に準じたカーボンアーク灯サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製、型式「S80DHB」、放射照度:255W/m、波長:300〜700nm)にて耐候促進試験を行った(温度:63±3℃、湿度:65±5%RH(噴霧が無い状態)、噴霧条件:120分毎に8分間噴霧する)。200時間暴露後、試験片を取り出し、以下、促進試験片として扱った。
(2)密着性
実施例および比較例で作製したコンクリート構造体の試験片およびその促進試験片を用い、碁盤目試験により密着性評価した。また、碁盤目試験の結果を下記指標にて評価した。
◎:100区間残留。
○:95〜99区間残留。
△:90〜94区間残留。
×:残留が89区間以下。
(3)ブリードアウトの防止性能
実施例および比較例で作製したコンクリート構造体の試験片およびその促進試験片の親水層表面に、20W蛍光灯を50cmの距離から照射下、水で満遍なく濡らし、傾斜10°になるようにして5分間静置した。5分後、水のハジキが生じている面積を算出し、下記指標で評価した。
○:水のハジキ面積が0%
△:水のハジキ面積が5%未満
×:水のハジキ面積が5%以上
(4)耐水性
実施例および比較例で作製したコンクリート構造体の試験片を50℃の水に浸漬し、200時間後に取り出して外観を下記指標にて評価した。
○:外観に変化なし
×:外観に変化がある(白化や塗膜膨れ)もしくは塗膜が剥がれている
酸変性ポリオレフィン樹脂P−1として、住友化学工業社製ボンダインHX−8290を使用し、酸変性ポリオレフィン樹脂P−2として、住友化学工業社製ボンダインTX−8030を使用した。また、酸変性ポリオレフィン樹脂P−3〜P−7は、下記の方法で製造した。
<製造例1−1:酸変性ポリオレフィン樹脂P−3の製造>
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂P−3を得た。
<製造例1−2:酸変性ポリオレフィン樹脂P−4の製造>
製造例1−1において、質量比がプロピレン/1−ブテン=65/35であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂P−4を得た。
<製造例1−3:酸変性ポリオレフィン樹脂P−5の製造>
製造例1−1において、プロピレン−ブテン共重合体に代えて、プロピレン−ブテン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン/エチレン=65/24/11)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂P−5を得た。
<製造例1−4:酸変性ポリオレフィン樹脂P−6の製造>
製造例1−1において得られた酸変性ポリオレフィン樹脂P−3について、無水マレイン酸との反応や樹脂の洗浄を、製造例1−1と同様の操作で行なった。この操作を繰り返し、計4回の反応と洗浄の操作をプロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)に対して行い、酸変性ポリオレフィン樹脂P−6を得た。
<製造例1−5:酸変性ポリオレフィン樹脂P−7の製造>
製造例1−1において、無水マレイン酸を40.0gから5.0gに、ジクミルパーオキサイドを28.0gから3.0gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂P−7を得た。
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体は、下記の方法で製造した。
<製造例2−1:酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂P−1(住友化学工業社製、ボンダインHX−8290)、60.0gのイソプロパノール、2.2gのトリエチルアミン、および177.8gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、密閉した後、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。
その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、内温が約60℃に到達したら、容器内部を減圧して溶媒を減圧留去し、所定の固形分濃度まで濃縮した。
濃縮後、室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
<製造例2−2:酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造>
製造例2−1において、酸変性ポリオレフィン樹脂として、P−1(住友化学工業社製ボンダインHX−8290)に代えて、P−2(住友化学工業社製ボンダインTX−8030)を使用した以外は、同様の操作を行い、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。
<製造例2−3:酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3Aの製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂P−3、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)および137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのDMEAおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、内温が約60℃に到達したら、容器内部を減圧して溶媒を減圧留去し、所定の固形分濃度まで濃縮した。
濃縮後、室温(約25℃)まで冷却し、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3Aを得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
<製造例2−4:酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3Bの製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂P−3、90.0gのテトラヒドロフラン、13.0gのトリエチルアミンおよび167.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、内温が約60℃に到達したら、10.0gのDMEAを添加後、容器内部を減圧して溶媒を減圧留去し、所定の固形分濃度まで濃縮した。
濃縮後、室温(約25℃)まで冷却し、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3Bを得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
<製造例2−5、2−6、2−8:酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4、E−5A、E−6の製造>
製造例2−3において、酸変性ポリオレフィン樹脂P−3に代えて、製造例2−5ではP−4を、製造例2−6ではP−5を、製造例2−8ではP−6を用いた以外は同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4、E−5A、E−6を得た。
<製造例2−7:酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−5Bの製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂P−5、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのDMEAおよび137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、内温が約60℃に到達したら、30gの水を添加後、容器内部を減圧して溶媒を減圧留去し、所定の固形分濃度まで濃縮した。
濃縮後、室温(約25℃)まで冷却し、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−5Bを得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
<製造例2−8:フッ素樹脂含有酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1/DEの製造>
製造例2−1において、フッ素樹脂分散体(和光純薬工業社製、20%ナフィオン(登録商標)分散溶液DE2021)(以下、DEと称す)をフッ素樹脂有効成分が20質量%となるように混合して、フッ素樹脂含有酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1/DEを得た。
<製造例2−9:酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−7の製造>
製造例2−3において、酸変性ポリオレフィン樹脂P−3に代えて、P−7を用いたところ、フィルター上に多量の樹脂を確認した。酸変性ポリオレフィン樹脂P−7は、実質的に分散せず、酸変性ポリオレフィン樹脂P−7の水性分散体を調製できなかった。
酸変性ポリオレフィン樹脂P−1〜P−7の特性、および酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1〜E−6の特性を表1に示す。
Figure 2018172223
実施例1
50×50×50mmサイズの鋼板製の型枠に、シリコン系離型剤(信越化学工業社製、KS−707)を0.8g/mとなるように塗布後、自然乾燥させた。この型枠に、普通ポルトランドセメント:砂:水道水=1:3:0.7の割合(重量比)でよく混合したモルタルを流し込み、2日間放置した後、型枠から取り出してコンクリート基材とした。
コンクリート基材に、下地としてシーラー(エスケー化研社製、水性ミラクシーラーエコ)を約50g/mとなるようにローラー塗布し、6時間乾燥を行った。その後、下地の上に、水性分散体E−1を約200g/mとなるようにローラー塗布し、24時間乾燥を行って、ブリードアウト防止層を形成した。
さらにその後、ブリードアウト防止層の上に、光触媒塗料(TOTO社製、ハイドロテクトクリアコート)を20g/mとなるようにローラー塗布し、6時間乾燥を行い、親水層を形成し、コンクリート構造体を得た。
実施例2〜7、15、比較例1〜3
実施例1において、水性分散体をE−1に代えて表2に記載された分散体を用いた以外は同様に操作して、コンクリート構造体を得た。
なお、比較例2では、フッ素樹脂分散体(DE)を用い、比較例3では、ポリエステル樹脂系水性分散体として、バイロナールMD−1100(東洋紡社製)(以下、MDと称す)を用いた。
実施例8〜14
水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、ポリウレタン樹脂、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物の各固形分(有効成分)の質量部が、表2に示すものとなるように、それぞれの水性分散体を混合して、水性分散体を調製した。得られた添加物含有水性分散体を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、コンクリート構造体を得た。
なお、ポリウレタン樹脂の水性分散体として、三井化学社製タケラックW−6010(固形分濃度30質量%)、オキサゾリン基含有化合物の水性分散体として、日本触媒社製エポクロスWS−500(固形分濃度39質量%)、エポキシ基含有化合物の水性分散体として、アデカ社製アデカレジンEM−0517(固形分濃度51質量%)を用いた。
実施例および比較例のコンクリート構造体の評価結果を表2に示す。
Figure 2018172223
実施例1〜15のコンクリート構造体は、本発明で規定したブリードアウト防止層が中間層として用いられているため、コンクリート基材表面の離型剤のブリードアウトを防止する性能に優れ、また密着性や耐水性においても優れていた。
また、実施例8〜14のコンクリート構造体は、ブリードアウト防止層がポリウレタン樹脂や架橋剤を含有するため、促進試験後においても、ブリードアウト防止性能や密着性が低下することなく優れており、高温下の厳しい室外環境で用いる建築材料としても適している。
実施例15では、フッ素樹脂未含有の実施例1に比べて密着性が優れるものとなっていた。
一方、比較例1のブリードアウト防止層は、酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量が本発明の規定する範囲を超えており、コンクリート構造体は、耐水性に劣り、促進試験後においては、ブリードアウト防止性能や密着性にも劣っていた。
比較例2において、非常に高価かつ廃棄が他樹脂に比べて困難であるフッ素樹脂分散体を用いてブリードアウト防止層を形成したところ、得られたコンクリート構造体は、促進試験後において、ブリードアウト防止性能の低下がみられた。
比較例3において、ポリエステル樹脂系水性分散体を用いてブリードアウト防止層を形成したところ、得られたコンクリート構造体は、ブリードアウト防止性能に劣り、また促進試験後の密着性にも劣るものであった。

Claims (4)

  1. 少なくともコンクリート基材、ブリードアウト防止層が積層されてなるコンクリート構造体であって、
    ブリードアウト防止層が、不飽和カルボン酸成分を0.1〜15質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とするコンクリート構造体。
  2. ブリードアウト防止層がさらにポリウレタン樹脂および/または架橋剤を含有することを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造体。
  3. ブリードアウト防止層がさらにフッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート構造体。
  4. さらに親水層が積層されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリート構造体。

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