JP2019104832A - 水性分散体 - Google Patents

水性分散体 Download PDF

Info

Publication number
JP2019104832A
JP2019104832A JP2017238181A JP2017238181A JP2019104832A JP 2019104832 A JP2019104832 A JP 2019104832A JP 2017238181 A JP2017238181 A JP 2017238181A JP 2017238181 A JP2017238181 A JP 2017238181A JP 2019104832 A JP2019104832 A JP 2019104832A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
aqueous dispersion
resin
mass
modified polypropylene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017238181A
Other languages
English (en)
Inventor
晴樹 大藤
Haruki Ofuji
晴樹 大藤
崇嗣 杉原
Takashi Sugihara
崇嗣 杉原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Unitika Ltd
Original Assignee
Unitika Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Unitika Ltd filed Critical Unitika Ltd
Priority to JP2017238181A priority Critical patent/JP2019104832A/ja
Publication of JP2019104832A publication Critical patent/JP2019104832A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】各種成形品への密着性に優れており、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性および耐油性に優れた塗膜を形成することができる水性分散体を提供する。【解決手段】酸変性ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリエステル樹脂5〜100質量部と、水性媒体とを含有する水性分散体であって、酸変性ポリプロピレン系樹脂が、ブテンを含まないオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、オレフィン成分としてプロピレンを95質量%以上含有し、酸変性ポリプロピレン系樹脂における、共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が1.5質量%以上であることを特徴とする水性分散体。【選択図】なし

Description

本発明は、酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂を含有する水性分散体に関する。
プラスチック材料を使用したフィルムなどの成形品は、各種用途に使用されており、近年、使用環境が多様化する傾向にあって、高温、高湿環境下において、また、油、酸性薬品、アルカリ性薬品などを使用する過酷な環境下においても使用することが求められている。
一般的には、特定環境下において使用される成形品には、その環境に耐性を有する材料が採用されるが、材料によっては、加工特性が劣ったり、他の要求性能を満たすことができなかったり、コスト的に高価となってしまうことがあった。そのため、成形品等の表面に保護層を設けることで、過酷な環境下での耐性を付与することが一般に行われている。
保護層の材料としては、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れ、安価で加工性に優れる等の理由から、ポリオレフィン樹脂を主成分とする材料が多く用いられている。
保護層として保護フィルムを設ける方法があるが、この方法ではフィルムの貼り付けに手間がかかり、成形品との密着性、加工性も不十分な場合が多く、工程コストも高くなる傾向にあった。さらに、成形品の形状によっては、フィルムの貼り付けが困難である場合もあった。そのため、特許文献1には、コーティングにより保護層を設ける方法が開示されている。
特開2015−229710号公報
しかしながら、特許文献1の水性分散体から得られる塗膜は、耐油性が劣る場合があった。すなわち、透明性や耐熱性に優れているポリカーボネート樹脂(PC)を特許文献1の水性分散体から得られる塗膜で成形品表面を保護したとしても、工場など油を使用する環境下で用いると、部分的に高温となった機械油が蒸気や飛沫として飛散し成形品表面に付着することで、PC製成形品が劣化(白化)してしまう問題が生じた。
本発明は、上記のような問題点を解決するものであって、各種成形品への密着性に優れており、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性および耐油性に優れた塗膜を形成することができる水性分散体を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定組成のポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂とを含有する水性分散体から得られる塗膜が、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)酸変性ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリエステル樹脂5〜100質量部と、水性媒体とを含有する水性分散体であって、
酸変性ポリプロピレン系樹脂が、ブテンを含まないオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、
オレフィン成分としてプロピレンを95質量%以上含有し、
酸変性ポリプロピレン系樹脂における、共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が1.5質量%以上であることを特徴とする水性分散体。
(2)ポリエステル樹脂の数平均分子量が10,000以上であることを特徴とする(1)記載の水性分散体。
(3)不揮発性水性化助剤を実質的に含有しないことを特徴とする(1)または(2)記載の水性分散体。
(4)ポリウレタン樹脂および/または架橋剤を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の水性分散体。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水性分散体の水性媒体を除去してなる塗膜。
(6)ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートのいずれかの材料を含む成形品と(5)の塗膜とを構成要素とすることを特徴とする積層体。
本発明の水性分散体は、特定組成の酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂とを特定の割合で含有することにより、各種成形品への塗工性に優れ、得られる塗膜は、成形品に対する密着性に優れ、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐油性に優れたものとなる。特に、過酷な環境下においても充分な耐油性を示すため、得られる塗膜は成形品の保護層として好適に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水性分散体は、酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂と水性媒体とを含有するものである。
<酸変性ポリプロピレン系樹脂>
まず、酸変性ポリプロピレン系樹脂について説明する。
本発明における酸変性ポリプロピレン系樹脂は、ブテンを含まないオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有するものであり、オレフィン成分として、プロピレンを95質量%以上含有することが必要である。プロピレンの割合が95質量%未満であると、得られる塗膜は、保護層としての性能、特に高温下での耐油性が低下する傾向がある。そのため、ポリオレフィン樹脂としてはホモポリプロピレンであることが好ましい。
プロピレン以外のオレフィン成分を含む場合、オレフィン成分としては、エチレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン類等のアルケン類や、ブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられる。
本発明の酸変性ポリプロピレン系樹脂は、耐油性の観点で、ブテン(1−ブテン、イソブテン)を含まないことが必要である。酸変性ポリプロピレン系樹脂がブテンを含有すると、理由は不明であるが、得られる塗膜は、耐油性が劣る場合がある。
本発明における酸変性ポリプロピレン系樹脂において、ポリプロピレン成分の立体規則性は特に限定されないが、得られる塗膜の保護層としての性能の中でも、特に高温下での耐油性の観点から、アイソタクチック構造であることが好ましい。
酸変性ポリプロピレン系樹脂における、各オレフィン成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられ、重合のし易さの点から、ランダム共重合であることが好ましい。また、必要に応じて、共重合形態が異なる複数種の酸変性ポリプロピレン系樹脂を混合したものを使用してもよい。
本発明における酸変性ポリプロピレン系樹脂は、上記オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有する樹脂である。共重合成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量は、水性媒体への分散性の観点から、酸変性ポリプロピレン系樹脂において、1.5質量%以上であることが必要であり、2.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましい。酸変性ポリプロピレン系樹脂は、不飽和カルボン酸の含有量が少ないと、水性分散体において粒子径が大きくなる傾向にあり、不飽和カルボン酸の含有量が1.5質量%未満では、水性分散体の調製が困難になる傾向にある。また、通常、不飽和カルボン酸成分の含有量が15質量%を超えると、酸変性ポリプロピレン系樹脂の水性化は容易になるが、得られる塗膜は、保護層としての性能が低下することがある。
不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などのほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド、その他誘導体などが挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が、密着性の観点から好ましく、特に(無水)マレイン酸が好ましい。なお、「(無水)〜酸」とは、「〜酸または無水〜酸」を意味する。すなわち、(無水)マレイン酸とは、マレイン酸または無水マレイン酸を意味する。
不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリプロピレン系樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられ、製造のし易さや接着性の観点から、グラフト共重合が好ましい。
不飽和カルボン酸成分を、ポリプロピレン系樹脂へ導入するグラフト共重合方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル発生剤存在下、ポリプロピレン系樹脂と不飽和カルボン酸とをポリプロピレン系樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、ポリプロピレン系樹脂と不飽和カルボン酸とを有機溶媒に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法が挙げられる。操作が簡便である点から、前者の方法が好ましい。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
本発明において、酸変性ポリプロピレン系樹脂は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分以外の成分、たとえば(メタ)アクリル酸エステルなどの成分を、共重合成分として含有してもよい。このような共重合成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、酸変性ポリプロピレン系樹脂の20質量%以下であることが好ましい。
本発明における酸変性ポリプロピレン系樹脂の最も好ましい具体例としては、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体が挙げられる。酸変性ポリプロピレン系樹脂が、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体であることで、得られる塗膜は、保護層としての性能に優れるものとなる。なお、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体における(無水)マレイン酸は、無水マレイン酸、マレイン酸のいずれであってもよく、両者が混在していてもよい。両者の混在した組成とは、アイソタクチックポリプロピレン−無水マレイン酸−マレイン酸共重合体のことであり、本発明ではこの共重合体も、アイソタクチックポリプロピレン−(無水)マレイン酸二元共重合体に含まれる。
酸変性ポリプロピレン系樹脂は、耐熱性の観点から、融点が130℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。
<ポリエステル樹脂>
次に、ポリエステル樹脂について説明する。
本発明の水性分散体は、上記酸変性ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリエステル樹脂を5〜100質量部含有することが必要であり、10〜90質量部含有することが好ましく、30〜80質量部含有することがより好ましい。
ポリエステル樹脂の含有量が5質量部未満では、成形品に対する密着性に劣ったり、保護層としての性能に劣ることがあり、100質量部を超えると、一部の成形品に対する密着性に劣ったり、耐油性や耐アルカリ性に劣ることがある。
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価は、2〜10mgKOH/gであることが好ましく、4〜9mgKOH/gであることがより好ましく、5〜8mgKOH/gであることが最も好ましい。酸価が10mgKOH/gを超えると、ポリエステル樹脂の分子量が低くなって、得られる塗膜は、加工性や密着性が低下し、さらには耐水性が不十分となることがある。また、ポリエステル樹脂は、酸価が2mgKOH/g未満であると、均一な水性分散体を得ることが困難になる。
なお、ポリエステル樹脂は、得られる塗膜の耐水性を損なわない範囲で水酸基を含有してもよく、通常、その水酸基価は30mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量は5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。数平均分子量が10,000以上であることにより、得られる塗膜は、耐薬品性、耐アルカリ性および耐油性が特に優れたものとなる。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、水性分散体の貯蔵安定性が優れる傾向にあることから、−50〜120℃が好ましく、0〜90℃がより好ましい。
次に、ポリエステル樹脂の構成成分について説明する。
ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上の多塩基酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸およびその無水物、テトラヒドロフタル酸およびその無水物などが挙げられる。3官能以上の多塩基酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などが挙げられる。
多塩基酸としては、芳香族ジカルボン酸が好ましく、ポリエステル樹脂の多塩基酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合としては、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。芳香族ジカルボン酸の割合を増すことにより、水性分散体から形成される塗膜の硬度、耐水性、耐溶剤性、加工性などが向上する。芳香族ジカルボン酸としては、工業的に多量に生産されており、安価であることから、テレフタル酸やイソフタル酸が好ましい。
また、多塩基酸として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など、カルボキシル基や水酸基以外の親水性基を有する多塩基酸も使用することができるが、使用量が多いと、水性分散体より形成される塗膜は、耐水性が低下する傾向にある。
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコール、3官能以上の多価アルコールなどが挙げられる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールなどが挙げられ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられ、エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。3官能以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
また、多価アルコールとして、2,2−ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のエチレンオキシド付加体やビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のエチレンオキシド付加体なども使用することができる。
多価アルコールとしては、工業的に多量に生産されており、安価であることから、エチレングリコールやネオペンチルグリコールを使用することが好ましく、ポリエステル樹脂の多価アルコール成分に占めるエチレングリコールとネオペンチルグリコールの合計の割合としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。エチレングリコールは特に塗膜の保護層としての性能を向上させ、ネオペンチルグリコールは特に塗膜の耐候性を向上させるという長所を有する。
ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコール、ヒドロキシカルボン酸が共重合されていてもよく、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体などが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂には3官能以上の多価オキシカルボン酸が共重合されていてもよく、たとえば、リンゴ酸、グリセリン酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
<水性分散体>
本発明の水性分散体について説明する。
本発明の水性分散体は、酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂と水性媒体とを含有するものである。本発明の水性分散体における水性媒体は、水または、水を主成分とする液体のことであり、後述する塩基性化合物や有機溶媒を含有していてもよい。
酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂を含有する水性分散体の調製方法は特に限定されず、別々で調製した酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体とポリエステル樹脂水性分散体を混合して調製する方法や、酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂とを同時に分散することにより水性分散体を調製する方法などを採用することができる。中でも、取り扱いの容易さや水性分散体の製造のしやすさから、別々に調製した酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体とポリエステル樹脂水性分散体とを混合して調製する方法が好ましい。
本発明の水性分散体は、不揮発性水性分散化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「水性分散化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。「不揮発性水性分散化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を、酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂を含有する水性分散体を製造する時に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。不揮発性水性分散化助剤が含まれることにより、水性分散体から得られる塗膜の密着性や接着性が低下したり、塗膜の耐水性や保護層としての性能が低下することがある。したがって、こうした水性分散化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、酸変性ポリプロピレン系樹脂およびポリエステル樹脂の合計に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
本発明でいう不揮発性水性分散化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
本発明の水性分散体には、性能をさらに向上させるために、さらにポリウレタン樹脂および/または架橋剤を含有してもよい。
ポリウレタン樹脂としては、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子が使用でき、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られる高分子が使用できる。
本発明において、ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類等の高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられる。
ポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族または脂環族に属する公知のジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。また、ジイソシアネート類には、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
本発明において、市販の水系のポリウレタン樹脂としては、三井化学社製のタケラックシリーズ(品番:W−615、W−6010、W−511等)、アデカ社製のアデカボンタイターシリーズ(品番:HUX−232、HUX−320、HUX−380、HUX−401等)、第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズ(品番:500、550、610、650等)、大日本インキ化学工業社製のハイドランシリーズ(品番:HW−311、HW−350、HW−150等)が挙げられる。
本発明で用いる架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、不飽和カルボン酸成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができる。
具体的には、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、取り扱い易さおよび密着性の観点から、オキサゾリン基を含有する化合物および/またはエポキシ基を含有する化合物および/またはシランカップリング剤が好ましい。
オキサゾリン基含有化合物としては、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものが好ましく使用できる。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズ等が挙げられる。具体的な商品名としては、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAβ−ジメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
市販のエポキシ化合物としては、本発明に適した水系のものとして、例えば、長瀬ケムテック社製のデナコールシリーズ(EM−150、EM−101など)、旭電化工業社製のアデカレジンシリーズ等が挙げられ、UVインキ密着性や耐スクラッチ性向上の点から多官能エポキシ樹脂エマルションである旭電化社製のアデカレジンEM−0517、EM−0526、EM−11−50B、EM−051Rなどが好ましい。
シランカップリング剤としては既知のものを使用することができ、具体的には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのグリシドキシ基(もしくはエポキシ基)含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなどのビニル基含有シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリロキシ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;γ−クロロプロピルメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中では、被着体との密着性が良好な点で、アミノ基含有シランカップリング剤、グリシドキシ基(もしくはエポキシ基)含有シランカップリング剤が好ましい。
市販のシランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業社製のシランカップリング剤(KBM−403など)、東レ・ダウコーニング社製のシランカップリング剤(Z−6043など)が挙げられる。
本発明における水性分散体は、ポリウレタン樹脂または架橋剤のいずれか、あるいは両方を含有してもよい。
水性分散体において、架橋剤を用いずにポリウレタン樹脂を用いる場合、その含有量は、水性分散体中の酸変性ポリプロピレン系樹脂およびポリエステル樹脂100質量部に対して1〜300質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜150質量部、さらに好ましくは2〜130質量部、特に好ましくは3〜100質量部である。ポリウレタン樹脂の含有量が1質量部未満では、得られる塗膜は、成形品との密着性が不十分となる場合があり、一方、300質量部を超えると、成形品との密着性が不十分となったり、保護層としての性能が低下する場合がある。
水性分散体において、ポリウレタン樹脂を用いずに架橋剤を用いる場合、その含有量は、酸変性ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜40質量部、さらに好ましくは1〜30質量部である。架橋剤の含有量が0.1質量部未満では、架橋が不十分であるため、得られる塗膜は、成形品との密着性が不十分となったり、保護層としての性能に劣る場合があり、一方、50質量部を超えると、成形品との密着性が不十分となる場合がある。
水性分散体が、ポリウレタン樹脂と架橋剤の両方を含む場合は、水性分散体中の酸変性ポリプロピレン系樹脂およびポリエステル樹脂100質量部に対して、架橋剤の含有量は0.1〜50質量部、ポリウレタン樹脂の含有量は0.1〜300質量部であることが好ましい。いずれの成分も含有量が0.1質量部未満であると、得られる塗膜は、成形品との密着性が不十分となる傾向にあり、いずれの成分も含有量が上記範囲を超えると、得られる塗膜は、成形品との密着性が不十分となったり、保護層としての性能に劣る場合がある。
また、本発明の水性分散体には、目的に応じて性能をさらに向上させるために、上記以外の他の重合体が少量含有されていてもよい。含有方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
他の重合体としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジン系やテルペン系などの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。
他の重合体は、添加、混合のしやすさの観点から、水溶性または水性分散性のものを用いることが好ましい。
<酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体>
次に、本発明の水性分散体を調製するために好適な酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体について説明する。
酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体は、酸変性ポリプロピレン系樹脂および水性媒体を含有してなるものである。酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体に含有される水性媒体は、水または、水を主成分とする液体のことであり、後述する塩基性化合物や有機溶媒を含有していてもよい。
水性媒体には、塩基性化合物が含有されていることが好ましい。酸変性ポリプロピレン系樹脂のカルボキシル基が、塩基性化合物によって中和され、生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、微粒子間の凝集が防がれ、分散安定性が付与される。塩基性化合物としてはカルボキシル基を中和できるものであればよいが、包装材料に用いた際の包装材料の性能を良好に保つ観点から、揮発性のものを用いることが好ましい。
塩基性化合物としては、アンモニアや有機アミンが好ましい。有機アミンの具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。
塩基性化合物の含有量は、酸変性ポリプロピレン系樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量であることがより好ましく、0.9〜3.0倍当量であることが特に好ましい。塩基性化合物の含有量が0.5倍当量未満であると、塩基性化合物の添加効果が認められず、一方、含有量が10倍当量を超えると、接着層形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下することがある。
水性媒体は、有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒を含有することで成形品への濡れ性を改善することができる。さらには、後述する酸変性ポリプロピレン系樹脂の水性分散化の際に有機溶媒を添加することで、水性分散化を促進し、分散粒子径を小さくすることができる。
酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体中の有機溶媒の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、0.1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%であることがさらに好ましく、3〜35質量%であることが特に好ましい。有機溶媒の含有量が50質量%を超えると、水性分散体としての安定性が低下する場合がある。
有機溶媒は、水性分散化促進性能や分散安定性の観点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上であることが好ましく、20g/L以上であることがより好ましく、50g/L以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の水性分散体を乾燥して塗膜を得る際の乾燥温度によると、有機溶媒の沸点は、200℃以下であることが好ましい。沸点が200℃を超える有機溶媒は、塗膜中に残存する傾向にあり、得られる塗膜は、密着性や保護層としての性能が低下することがある。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、酸変性ポリプロピレン系樹脂の水性分散化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの有機溶媒を複数混合して使用してもよい。
酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体において、酸変性ポリプロピレン系樹脂粒子の体積平均粒子径は、得られる塗膜の成形品との密着性、保護層としての性能の観点から、0.15μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。粒子径を小さくすることにより、水性分散体は、造膜性が向上し、得られる塗膜は、緻密となることで密着性が向上し、薬品や油が浸透しにくくなり、保護層としての性能が向上する。
酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体における酸変性ポリプロピレン系樹脂の含有量は、成形品との密着性や塗膜の厚み、その他性能等に応じて適宜選択でき、特に限定されるものでないが、水性分散体の粘性を適度に保ち、かつ良好なコーティング性を発現させる点で、1〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましく、10〜45質量%であることが特に好ましい。
酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体の粘度は、特に限定されないが、B型粘度計で20℃条件下にて測定した粘度は、1〜100000mPa・sであることが好ましい。また、pHも特に限定されないが、pH6〜13であることが好ましい。
酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体は、不揮発性の水性分散化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。「不揮発性水性分散化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を、酸変性ポリプロピレン系樹脂の水性分散体を製造する時に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性分散化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、酸変性ポリプロピレン系樹脂に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
次に、酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
酸変性ポリプロピレン系樹脂の水性分散体を製造する方法として、たとえば、酸変性ポリプロピレン系樹脂と、水性媒体(必要に応じて有機溶剤や塩基性化合物等を含有)とを、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法などが知られている。
本発明における酸変性ポリプロピレン系樹脂のオレフィン成分は、プロピレン成分を95質量%以上含有するものであり、好ましくは、アイソタクチック構造からなる(ホモ)ポリプロピレンである。アイソタクチック構造からなる(ホモ)ポリプロピレンは、結晶化度が高く、高融点であり、また酸、アルカリ、有機溶媒などの薬品や水に対して難溶性であるため、水性分散化が困難な特性を有している。ましてや得られる水性分散体の体積平均粒子径を、好ましい範囲にすることはさらに困難である。
水性分散化に用いる装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として使用されている容器を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、酸変性ポリプロピレン系樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1000rpm以上)やホモジナイザーの使用は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。
上記の装置に、酸変性ポリプロピレン系樹脂、塩基性化合物、有機溶媒および水などの原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を80〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは110〜200℃、特に好ましくは100〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで攪拌を続ける(例えば、5〜300分間)。
上記工程において、槽内の温度が80℃未満であると、酸変性ポリプロピレン系樹脂の水性分散化が進行し難くなり、一方、槽内の温度が240℃を超えると、酸変性ポリプロピレン系樹脂の分子量が低下することがある。
ここまでの工程で、酸変性ポリプロピレン系樹脂は水性媒体におおよそ分散した状態となっている。本発明においては、酸変性ポリプロピレン系樹脂の分散化をより良好なものとし、酸変性ポリプロピレン系樹脂の体積平均粒子径を好ましい範囲にするために、その後さらに系内に、塩基性化合物、有機溶媒および水から選ばれる少なくとも1種を加え、密閉容器中で、再度、100〜240℃の温度下で加熱(再昇温)、攪拌することが好ましい。このように、水性媒体を構成するものを追加し、再度加熱、攪拌することで、水性分散体中の酸変性ポリプロピレン系樹脂の体積平均粒子径や粒子径分布にかかる分散度を好ましい範囲に調整できる。
再昇温の工程において、槽内の温度が100℃未満であると、酸変性ポリプロピレン系樹脂の水性分散化が進行し難くなり、一方、槽内の温度が240℃を超えると、酸変性ポリプロピレン系樹脂の分子量が低下することがある。
なお、塩基性化合物、有機溶媒、水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプなどを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げ常圧になってから配合する方法などがある。
追加配合する塩基性化合物と、有機溶媒と、水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。また、塩基性化合物、有機溶媒、水の合計は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるよう調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
水性分散体の製造時に上記の有機溶媒を用いた場合には、水性分散化の後に、その一部またはすべてを、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶媒処理によって系外へ留去させ、有機溶媒の含有量を低減させてもよい。ストリッピングにより、水性分散体中の有機溶媒含有量を50質量%以下とすることが、水性分散体の安定性の観点から好ましい。
ストリッピングの工程では、水性分散化に使用した有機溶媒を実質的に全て留去することもできる。しかし、有機溶媒を実質的に全て留去するためには、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くする必要があり、生産性を考慮すると、有機溶媒含有量の下限は0.01質量%程度が好ましい。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶媒を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
水性分散体の固形分濃度は、このようなストリッピングによって有機溶媒を留去することや、水性媒体で希釈することにより調整することができる。
上記の方法により、水性媒体中に酸変性ポリプロピレン系樹脂の未分散樹脂がほとんどまたは全く残存することなく、水性分散化することが可能となる。さらに、水性分散体中の異物や少量の未分散樹脂を除くために、装置から払い出す際に、濾過工程を設けてもよい。濾過方法は限定されないが、例えば、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(例えば空気圧0.5MPa)する方法が挙げられる。このような濾過工程を設けることで、異物や未分散樹脂が存在した場合であってもそれらを除去できる。
<ポリエステル樹脂水性分散体>
次に、本発明の水性分散体を調製するために好適なポリエステル樹脂水性分散体について説明する。
ポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂および水性媒体を含有してなるものである。ポリエステル樹脂水性分散体に含有される水性媒体は、水または、水を主成分とする液体のことであり、後述する塩基性化合物や有機溶媒を含有していてもよい。
ポリエステル樹脂水性分散体としては、たとえば、塩基性化合物によってポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和してカルボキシルアニオンを生成し、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂の微粒子が凝集せず安定に分散している水性分散体などを挙げることができる。
このポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を塩基性化合物とともに水に分散させて転相乳化後、常圧下で有機溶剤を除去する(脱溶剤する)方法で製造することが、有機溶剤の含有率が低いポリエステル樹脂水性分散体を得る上で好ましい。
上記ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液において、ポリエステル樹脂の濃度は、10〜70質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。有機溶剤溶液は、ポリエステル樹脂の濃度が70質量%を超えると、次の転相乳化の工程において水と混合した場合に、粘度の上昇が大きくなり、このような状態から得られた水性分散体は、体積平均粒子径が大きくなる傾向にあり、貯蔵安定性を損なうため好ましくない。また、ポリエステル樹脂の濃度が10質量%未満の有機溶剤溶液は、脱溶剤の際に多量の有機溶剤を除去することになり、経済的に好ましくない。
ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解するための装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱をおこなってもよい。
なお、ポリエステル樹脂は、単独あるいは2種以上を混合して溶解してもよい。
有機溶剤としては、公知のものを使用することができ、たとえば、ケトン系有機溶剤、芳香族系炭化水素系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、含ハロゲン系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤などが挙げられる。ケトン系有機溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが例示できる。芳香族炭化水素系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼンなど、エーテル系有機溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、含ハロゲン系有機溶剤としては、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジククロロメタンなど、アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールなど、エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルなど、グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどを例示することができる。また、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチルなどの有機溶剤が挙げられ、これら前記した有機溶剤を単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
ポリエステル樹脂水性分散体を得るためには、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解することができるような有機溶剤の選択をおこなうことが好ましく、20質量%以上溶解することができる有機溶剤がより好ましい。このような有機溶剤としては、アセトン、MEK、MIBK、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン単独や、アセトン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MEK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MIBK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、ジオキサン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、テトラヒドロフラン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、シクロヘキサノン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、アセトン/イソプロパノール混合溶液、MEK/イソプロパノール混合溶液、MIBK/イソプロパノール混合溶液、ジオキサン/イソプロパノール混合溶液、テトラヒドロフラン/イソプロパノール混合溶液、シクロヘキサノン/イソプロパノール混合溶液などが好適に使用できる。
次に、上記有機溶剤に溶解したポリエステル樹脂の溶液の転相乳化について説明する。
転相乳化は、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に、水、塩基性化合物と混合しておこなう。本発明においては、塩基性化合物をポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に加えておき、これに水を徐々に投入して転相乳化をおこなうことが好ましい。水の添加速度が速い場合には、ポリエステル樹脂の塊が形成され、この塊は、もはや水性媒体に分散しなくなる場合があり、最終的に得られる水性分散体の収率が下がり、経済的ではない。
なお、本発明において「転相乳化」とは、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に、この溶液に含まれる有機溶剤量(質量)を超える量(質量)の水を添加して、有機溶剤よりも水を多く含む液相にポリエステル樹脂を分散させることを意味する。
転送乳化の際は、不揮発性の水性分散化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。「不揮発性水性分散化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を製造時(転相乳化時や後述の脱溶剤時)に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性分散化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリエステル樹脂に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
転相乳化は、30℃以下でおこなうことが好ましく、20℃以下でおこなうことがより好ましい。30℃以下で転相乳化をおこなうことにより、得られるポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒径は小さくなり、貯蔵安定性の優れた水性分散体を得ることができる。また、体積平均粒径が小さい場合、後述する脱溶剤において、ポリエステル樹脂の微粒子が凝集して沈殿することを抑制でき、その結果、収率が向上するため好ましい。
転相乳化をおこなう装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(たとえばホモミキサー)として知られている装置が挙げられる。なお、ホモミキサーなど剪断の大きい乳化機を用いる際には、衝撃熱により液温が上昇することがあるため、冷却しながら用いることが好ましい。なお、転相乳化は常圧、減圧、加圧下いずれの条件でおこなってもよい。
塩基性化合物としては、アンモニアや有機アミンが好ましい。有機アミンの具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。
次に、有機溶剤の除去(脱溶剤)について説明する。
有機溶剤の除去は、転相乳化した後に蒸留する方法によりおこなうことができる。蒸留は、常圧、減圧下いずれでおこなってもよいが、所要時間、作業性の面からは常圧下でおこなうことが好ましい。
脱溶剤後の水性分散体中の有機溶剤量は、環境問題、職場環境、塗膜物性、貯蔵安定性などの観点から、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
蒸留をおこなう装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。
前記製造方法により、ポリエステル樹脂水性分散体は、外観上、水性媒体中に沈殿、相分離といった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない均一な状態で得られる。
水性分散体の製造にあたっては、異物などを除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、たとえば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)をおこなえばよい。
本発明の水性分散体を各種成形品に塗布し、水性分散体中の水性媒体を除去乾燥することにより塗膜を形成できる。得られた塗膜は保護層としての性能に優れることから、成形品保護層として好適に使用できる。
また、得られた塗膜は酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂を特定の割合で含有しており、塗膜表面に塗布した被着体との密着性および離型性に優れることから、保護層以外にも離型層、転写層などとしても使用することができる。
本発明の水性分散体を塗布する成形品を構成する材料としては、熱可塑性樹脂、金属、紙等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、およびこれらの混合物等のポリエステル;ポリカプロンアミド(ナイロン6)、ポリへキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXDナイロン)、およびこれらの混合物等のポリアミド;ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの混合物等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリビニルアルコール;エチレンとビニルアルコールのランダム・コポリマー等が挙げられる。
これらのうち、密着性および保護層としての利用の観点から、成形品を構成する材料は、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートのいずれかを含むことが好ましい。
本発明の水性分散体を塗布する方法は、成形品の形状により適宜選択でき、特に限定されないが、公知の方法、例えばスプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法、ディップコーティング、ワイヤーバーコーティング、カーテンフローコーティング、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、エアナイフコーティング等が採用できる。
本発明の水性分散体の塗布量は、その用途によって適宜選択され、乾燥膜厚として1〜100μmであることが好ましく、3〜70μmであることがより好ましく、5〜50μmであることがさらに好ましい。
なお、均一な塗膜を得るためには、塗布に用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、装置や使用条件に応じて濃度や粘度が調整された塗料を使用することが好ましい。
本発明の水性分散体を塗布後に乾燥する装置は特に限定するものではなく、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用することができる。
加熱温度や加熱時間は、被塗布物である成形品の特性や、水性分散体中に任意に配合しうる前述の各種材料の添加量により適宜選択される。加熱温度としては、50〜250℃であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましく、100〜180℃であることがさらに好ましい。
一方、加熱時間は、5秒〜180分であることが好ましく、30秒〜120分であることがより好ましく、1分〜60分であることがさらに好ましい。なお、水性分散体が架橋剤を含む場合は、酸変性ポリプロピレン系樹脂およびポリエステル樹脂や他の重合体の官能基と架橋剤との反応を十分進行させるために、架橋剤の種類によって、加熱温度および時間を適宜選定することが望ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.酸変性ポリプロピレン系樹脂の特性
(1)酸変性ポリプロピレン系樹脂の組成、立体規則性
Varian社製、GEMINI2000/300核磁気共鳴装置(磁場強度7.05T)にて、組成はH−NMR、立体規則性は13C−NMR測定をおこない、決定した。前者はテトラクロロエタン(d)を、後者はオルトジクロロベンゼンを測定溶媒とし、120℃で測定した。
(2)酸変性ポリプロピレン系樹脂の融点
パーキンエルマー社製DSC7を用いてDSC法にて測定した。
2.ポリエステル樹脂の特性
(1)ポリエステル樹脂の構成
H−NMR分析(Varian社製、GEMINI2000/300核磁気共鳴装置(磁場強度7.05T))より求めた。また、H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解をおこなった後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析をおこなった。
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlの水/ジオキサン=1/9(体積比)に溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
(3)ポリエステル樹脂の水酸基価
ポリエステル樹脂3gを精秤し、無水酢酸0.6mlおよびピリジン50mlを加え、室温下で48時間攪拌して反応させ、続いて、蒸留水5mlを添加して、さらに6時間、室温下で攪拌を継続することにより、前記反応に使われなかった分の無水酢酸も全て酢酸に変えた。この液にジオキサン50mlを加えて、クレゾールレッド・チモールブルーを指示薬としてKOHで滴定をおこない、中和に消費されたKOHの量(W1)と、最初に仕込んだ量の無水酢酸がポリエステル樹脂と反応せずに全て酢酸になった場合に中和に必要とされるKOHの量(計算値:W0)とから、その差(W0−W1)をKOHのmg数で求め、これをポリエステル樹脂のg数で割った値を水酸基価とした。
(4)ポリエステル樹脂の分子量
GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型および紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により、数平均分子量を求めた。
(5)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
パーキンエルマー社製DSC7を用いてDSC法にて測定した。
3.酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体およびポリエステル樹脂水性分散体の特性
(1)水性分散体中の分散粒子の数平均粒子径および体積平均粒子径
マイクロトラック粒度分布計(日機装社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用いて求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
4.塗膜評価
(1)密着性
水性分散体を、下記フィルムや板上に、乾燥後の塗膜の膜厚が約3μmになるようにメイヤーバーを用いてそれぞれ塗布し、120℃で5分間乾燥して、積層体を得た。
得られた積層体上の塗膜について、JIS K5400記載のクロスカット法によるテープ剥離(碁盤目試験)をおこなった。すなわち、クロスカットにより、塗膜を100区画にカットし、テープ剥離後、残留した塗膜の区画数で、以下の基準により密着性を評価した。
◎:100区画残留。
○:95〜99区画残留。
△:90〜94区画残留。
×:残留が89区画以下。
なお、フィルム、板は、それぞれ以下のものを用いた。
PETフィルム:ユニチカ社製エンブレット S25(コロナ面使用)
Nyフィルム:ユニチカ社製エンブレム ON25(コロナ面使用)
PC板:ポリカーボネート板0.2mm厚(コロナ処理済み、コロナ面使用)
PPフィルム:三井化学東セロ社製OP U−1 25(コロナ面使用)
(2)耐酸性試験(Nyフィルム)
上記(1)に記載の方法でNyフィルムに塗膜が形成された積層体を得た。この積層体を150mm角に切り出し、積層体のNy面と150mm角ガラス板とを重ね合わせ、周囲をテフロン(登録商標)テープ(寺岡製作所製 フッ素樹脂フィルム粘着テープ No.8410 0.18)で封止することにより試験片を得た。
試験片を20%塩酸水溶液に常温で60分浸漬した。その後、取り出して水洗し、乾燥後、積層体の中央部分を15mm幅で切り出した。切り出した積層体について引張せん断試験を行って、破断強度A(N/15mm)を測定した。
また、塩酸水溶液に浸漬していない積層体についても同様に15mm幅で切り出し、破断強度B(N/15mm)を測定した。
得られた破断強度AとBとから、破断強度保持率を下式に基づき算出した。なお、算出した値が100%を超えたサンプルについては、100%と同等と評価した。
破断強度保持率(%)=A/B×100
また、上記塩酸水溶液浸漬後の積層体の塗膜の外観を観察し、これらの結果より、下記指標で耐酸性を評価した。
◎:破断強度保持率が95%以上で、かつ白化が見られない。
○:破断強度保持率が94%未満、90%以上で、かつ白化が見られない。
×:破断強度保持率が90%未満および/または白化が見られる。
(3)耐アルカリ性試験(PETフィルム)
上記(1)に記載の方法でPETフィルムに塗膜が形成された積層体を得た。この積層体を150mm角に切り出し、積層体のPET面と150mm角SUS板とを重ね合わせ、周囲をテフロン(登録商標)テープ(寺岡製作所製 フッ素樹脂フィルム粘着テープ No.8410 0.18)で封止することにより試験片を得た。
試験片を20%水酸化ナトリウム水溶液に常温で60分浸漬した。その後、取り出して水洗し、乾燥後、積層体の中央部分を15mm幅で切り出した。
水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した積層体と浸漬していない積層体とについて、上記(2)に記載された方法で、破断強度を測定し、破断強度保持率を算出し、外観を観察し、これらの結果より、上記(2)と同じ指標で評価した。
(4)耐薬品性試験(常温/PC板)
上記(1)に記載の方法でPC板に塗膜が形成された積層体を得た。この積層体を150mm角に切り出し、積層体のPC面と150mm角SUS板とを重ね合わせ、周囲をテフロン(登録商標)テープ(寺岡製作所製 フッ素樹脂フィルム粘着テープ No.8410 0.18)で封止することにより試験片を得た。
試験片を模擬ガソリン(トルエンとイソオクタン(いずれも和光純薬工業社製)の等体積混合物)に常温で60分浸漬した。その後、取り出してエタノールにより洗浄し、乾燥後、積層体の中央部分を15mm幅で切り出した。
模擬ガソリンに浸漬した積層体と浸漬していない積層体とについて、上記(2)に記載された方法で、破断強度を測定し、破断強度保持率を算出し、外観を観察し、これらの結果より、上記(2)同じ指標で評価した。
(5)耐油性試験(常温/PC板)
上記(4)に記載の方法で、PC板に塗膜が形成された積層体のPC面とSUS板とを重ね合わせ、周囲をテフロン(登録商標)テープで封止した試験片を得た。
試験片を油(エーゼット社製 切削油 NQ004)に常温で60分浸漬した。その後、取り出してエタノールにより洗浄し、乾燥後、積層体の中央部分を15mm幅で切り出した。
油に浸漬した積層体と浸漬していない積層体とについて、上記(2)に記載された方法で、破断強度を測定し、破断強度保持率を算出し、外観を観察し、これらの結果より、上記(2)同じ指標で評価した。
(6)耐油性試験(100℃/PC板)
上記(5)に記載の耐油性試験において、試験片を油(エーゼット社製 切削油 NQ004)に常温で60分浸漬する条件を、試験片を油(エーゼット社製 切削油 NQ004)に浸漬し、100℃の加熱炉に入れて60分間加熱する条件に変更した。その後、取り出してエタノールにより洗浄し、乾燥後、積層体の中央部分を15mm幅で切り出した。切り出した積層体について引張せん断試験を行って破断強度A(N/15mm)を測定した。
また、油に浸漬せずに、100℃の加熱炉に入れて60分間加熱し、冷却した後の積層体についても15mm幅で切り出し、破断強度B(N/15mm)を測定した。
得られた破断強度AとBとから、上記(2)に記載された方法で、破断強度保持率を算出し、外観を観察し、これらの結果より、上記(2)と同じ指標で評価した。
(酸変性ポリプロピレン系樹脂の製造)
製造例1(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−1」の製造)
アイソタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂(MFR=2g/10分、180℃、2160g荷重)100質量部に、無水マレイン酸5.5質量部、ジ−t−ブチルパーオキシド1.0質量部を、170℃に設定した二軸押出機を用いて反応させて、酸変性ポリプロピレン系樹脂を得た。
この樹脂をアセトンで数回洗浄後、減圧乾燥機で乾燥し、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−1」を得た。
製造例2(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−2」の製造)
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を5.5質量部から6.0質量部に変更し、ジ−t−ブチルパーオキシドの添加量を1.0質量部から1.5質量部に変更した以外は同様の操作を行うことにより、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−2」を得た。
製造例3(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−3」の製造)
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を5.5質量部から3.8質量部に変更し、ジ−t−ブチルパーオキシドの添加量を1.0質量部から0.8質量部に変更した以外は同様の操作を行うことにより、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−3」を得た。
製造例4(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−4」の製造)
製造例1において、ホモポリプロピレン樹脂としてシンジオタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂(MFR=5g/10分、180℃、2160g荷重)を用いた以外は同様の操作を行うことにより、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−4」を得た。
製造例5(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−5」の製造)
製造例1において、アイソタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂を、ランダムポリプロピレン(プロピレン/エチレン=96.3/3.7(質量比))に変更した以外は同様の操作を行うことにより、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−5」を得た。
製造例6(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−6」の製造)
ランダムポリプロピレン(プロピレン/エチレン=97.0/3.0(質量比))280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(トリエチルアミン/アセトン=1/4(質量比))で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−6」を得た。
製造例7(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−7」の製造)
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を5.5質量部から2.8質量部に変更し、またジ−t−ブチルパーオキシドの添加量を1.0質量部から0.5質量部に変更した以外は同様の操作を行うことにより、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−7」を得た。
製造例8(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−8」の製造)
製造例1において、アイソタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂を、ランダムポリプロピレン(プロピレン/エチレン=94.5/5.5(質量比))を用いた以外は同様の操作を行うことにより、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−8」を得た。
製造例9(酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−9」の製造)
製造例1において、アイソタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂を、ランダムポリプロピレン(プロピレン/エチレン/ブテン=89.6/4.9/5.5(質量比))を用いた以外は同様に操作を行うことにより、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−9」を得た。
製造例1〜9で得られた酸変性ポリプロピレン系樹脂の特性を表1に示す。
Figure 2019104832
(ポリエステル樹脂の製造)
製造例10(ポリエステル樹脂「P2−1」の製造)
テレフタル酸2492g(60モル部)、イソフタル酸623g(15モル部)、セバシン酸1263g(25モル部)、エチレングリコール1210g(78モル部)、ネオペンチルグリコール1484g(57モル部)、トリメチロールプロパン28g(0.8モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物3.3gを添加した後、系の温度を275℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、265℃になったところで無水トリメリット酸38g(0.8モル部)を添加し、265℃で2時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂「P2−1」を得た。
製造例11、12(ポリエステル樹脂「P2−2」、「P2−3」の製造)
各原料の仕込み組成を表2に示したように変えた以外は前記ポリエステル樹脂「P2−1」の製造と同様にして各ポリエステル樹脂を得た。
製造例10〜12で得られたポリエステル樹脂の特性を表2に示す。
Figure 2019104832
(酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体の調製)
調製例1(酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体「E1−1」の調製)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、75.0gの酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−1」、40.0gのイソプロパノール、100.0gのテトラヒドロフラン、25.0gのシクロヘキサン、15.0gのトリエチルアミン、11.5gのジメチルアミノエタノールおよび233.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を135℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの電源を切り自然冷却した。
内温が60℃まで冷えたところで容器を開封して、47.5gの水を添加した後、真空ポンプを使って系内を徐々に減圧して、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサンと水を除去した。テトラヒドロフラン、イソプロパノール、シクロヘキサンと水を250g以上除去した後、ヒーターの電源を切り、系内温度が35℃になったところで、水を添加して水性分散体中の酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−1」の濃度が25質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、均一な酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体「E1−1」を得た。なお加圧濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
調製例2〜6、8、9(酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体「E1−2〜6、8、9」の調製)
調製例1に記載された方法において、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−1」に代えて、調製例2では「P1−2」を使用して水性分散体「E1−2」を、調製例3では「P1−3」を使用して「E1−3」を、調製例4では「P1−4」を使用して「E1−4」を、調製例5では「P1−5」を使用して「E1−5」を、調製例6では「P1−6」を使用して「E1−6」を、調製例8では「P1−8」を使用して「E1−8」を、調製例9では「P1−9」を使用して「E1−9」を、それぞれ得た。
調製例7
酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−1」に代えて「P1−7」を使用した以外は、調製例1と同様の操作を行ったが、加圧濾過の後のフィルター上に樹脂の未分散物が見られ、安定した水性分散体を得ることができなかった。
調製例10
調製例1に記載された方法において、酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−1」に代えて、調製例10では酸変性ポリエチレン系樹脂「住友化学工業社製、ボンダインHX−8290(P1−10)」を使用して水性分散体「E1−10」を得た。
調製例1〜10で得られた酸変性ポリプロピレン系樹脂水性分散体の特性を表1に示す。
(ポリエステル樹脂水性分散体の調製)
調製例10(ポリエステル樹脂水性分散体「E2−1」の調製)
ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に、ポリエステル樹脂「P2−1」400gと、MEK600gを投入し、ジャケットに60℃の温水を通して加熱しながら、攪拌機(東京理化社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂を溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液1000gを得た。
次に、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、回転速度600rpmで攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン8.7gを添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水を、総重量が2000gとなるまで添加して、転相乳化をおこなった。蒸留水を全量添加する間、系内温度を常に15℃以下に保った。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が20質量%の水性分散体を得た。
次いで、得られた水性分散体のうち、1600gを2Lのフラスコに入れ、常圧下で蒸留をおこなうことで有機溶剤を除去した。留去量が約600gになったところで蒸留を終了し、室温まで冷却後、水を添加して水性分散体中の「P2−1」の濃度が30質量%となるように調整し、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過して、均一なポリエステル樹脂水性分散体「E2−1」を得た。なお濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
調製例11(ポリエステル樹脂水性分散体「E2−2」の調製)
調製例10において、ポリエステル樹脂として「P2−1」に代えて「P2−2」を使用し、トリエチルアミンの添加量を8.7gから11.5gに変更した以外は、同様の方法でポリエステル樹脂水性分散体「E2−2」を得た。
調製例12(ポリエステル樹脂水性分散体「E2−3」の調製)
調製例10において、ポリエステル樹脂として「P2−1」に代えて「P2−3」を使用した以外は、同様の方法でポリエステル樹脂水性分散体「E2−3」を得た。
調製例10〜12で得られたポリエステル樹脂水性分散体の特性を表2に示す。
実施例1〜10、比較例1、2、4、6〜8、10〜12
酸変性ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ポリエステル樹脂の含有量が表3の通りになるように、撹拌下でそれぞれの分散体を混合することにより、水性分散体を調製した。
実施例11〜18、比較例3、5、9、13
酸変性ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ポリエステル樹脂の含有量が表3の通りになるように、撹拌下でそれぞれの分散体を混合し、さらに架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を、酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂の合計100質量部に対して表3の含有量になるように撹拌下で添加することにより、水性分散体を調製した。
架橋剤、ポリウレタン樹脂として、それぞれ以下のものを用いた。
オキサゾリン基含有架橋剤:エポクロスWS−700(日本触媒社製、固形分濃度33質量%)
エポキシ基含有架橋剤:アデカレジンEM−0517(アデカ社製、固形分濃度51質量%)
シランカップリング剤:KBM−403(信越化学工業社製、有効成分100%)
ポリウレタン樹脂:タケラックW−6010(三井化学社製、固形分濃度30質量%)
実施例1〜18および比較例1〜13で得られた水性分散体を用いた試験結果を表3、4に示す。
Figure 2019104832
Figure 2019104832
実施例1〜18の水性分散体は、本発明で規定する特定構造の酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂とを本発明で規定する割合で含有しており、得られる塗膜は、各種成形品への密着性、耐酸・耐アルカリ性、耐薬品性、耐油性、100℃での耐油性に優れるものであった。特に、水性分散体を成形品表面に塗工することで得られる塗膜は、薬品や油による侵食を防ぐことができ、成形品の保護層として好適に用いることができるものであった。また、実施例11〜18の水性分散体は、ウレタン樹脂および/または架橋剤を含有しており、上記性能が特に優れるものであった。
一方、酸変性ポリプロピレン系樹脂の組成が本発明の規定外である水性分散体(比較例1、2、4、6、7)では、塗膜は、保護層としての性能である耐油性に劣る場合があり、特に過酷な条件下での耐油性に顕著に劣っていた。また、これらの性能は、水性分散体がウレタン樹脂および/または架橋剤を含有しても劣ったままであった(比較例3、5)。
また、酸変性ポリプロピレン系樹脂とポリエステル樹脂の含有量が本発明の規定する範囲から外れた水性分散体(比較例8〜13)では、塗膜は、一部の成形品において密着性が劣ったり、保護層としての性能に劣るものであった。
また、共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が本発明で規定する範囲外である酸変性ポリプロピレン系樹脂「P1−7」は、実質的に分散が進行せず水性分散体を得ることができなかった(調製例7)。

Claims (6)

  1. 酸変性ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリエステル樹脂5〜100質量部と、水性媒体とを含有する水性分散体であって、
    酸変性ポリプロピレン系樹脂が、ブテンを含まないオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、
    オレフィン成分としてプロピレンを95質量%以上含有し、
    酸変性ポリプロピレン系樹脂における、共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が1.5質量%以上であることを特徴とする水性分散体。
  2. ポリエステル樹脂の数平均分子量が10,000以上であることを特徴とする請求項1記載の水性分散体。
  3. 不揮発性水性化助剤を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1または2記載の水性分散体。
  4. ポリウレタン樹脂および/または架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の水性分散体の水性媒体を除去してなる塗膜。
  6. ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートのいずれかの材料を含む成形品と請求項5の塗膜とを構成要素とすることを特徴とする積層体。

JP2017238181A 2017-12-13 2017-12-13 水性分散体 Pending JP2019104832A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017238181A JP2019104832A (ja) 2017-12-13 2017-12-13 水性分散体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017238181A JP2019104832A (ja) 2017-12-13 2017-12-13 水性分散体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019104832A true JP2019104832A (ja) 2019-06-27

Family

ID=67061116

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017238181A Pending JP2019104832A (ja) 2017-12-13 2017-12-13 水性分散体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019104832A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4852665B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散体
JP2002173582A (ja) ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法および水性コーティング組成物
JPWO2014088015A1 (ja) 履物構成部材用プライマー、その製造方法、履物構成部材、および履物
JP2015229710A (ja) 水性分散体およびそれより得られる積層体
JP2011195692A (ja) ポリエステル樹脂水性分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られるポリエステル樹脂被膜
JP2014125599A (ja) 易接着層形成用水性接着剤
JP6120589B2 (ja) 水性分散体およびこれを用いてなる水性コーティング剤組成物、ならびに被膜
JP5578891B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られる樹脂被膜
JP3995523B2 (ja) 水性分散体
JP2009242503A (ja) 水性接着剤および同接着剤を用いた積層体
JP4159806B2 (ja) フィルム積層体
JP5666919B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法
JP2019104832A (ja) 水性分散体
JP5241240B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法
JP2002309216A (ja) 樹脂被覆金属用水性接着剤及びこれを用いてなる樹脂被覆金属
JP2017031302A (ja) 射出成形用接着剤
JP4746316B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法
JP6022852B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法
JP6315940B2 (ja) 水性接着剤およびそれより得られる被膜
JP6301741B2 (ja) 水性接着剤およびそれより得られる被膜
JP5881499B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散体、およびそれから得られるポリエステル樹脂被膜
JP2009084380A (ja) ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法
JP5094064B2 (ja) 水性分散体及びそれを用いた積層フィルム
JP2010090189A (ja) 樹脂水性分散体及びその製造方法
JP2001288404A (ja) 水性コーティング組成物及びこれを用いてなるポリオレフィン樹脂成形物。