JP2011195692A - ポリエステル樹脂水性分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られるポリエステル樹脂被膜 - Google Patents

ポリエステル樹脂水性分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られるポリエステル樹脂被膜 Download PDF

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Abstract

【課題】耐加水分解性に優れた樹脂被膜を形成することができるポリエステル樹脂水性分散体を提供する。
【解決手段】本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、以下の(i)、(ii)および(iii)を同時に満たすことを特徴とする。
(i)アルコール成分、酸成分を配合してなるポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるものである。
(ii)上記(i)におけるポリエステル樹脂を構成する酸成分中に、2つのカルボキシル基間に結合した主鎖の炭素数が10〜30である長鎖ジカルボン酸を3〜30モル%含有し、芳香族ポリカルボン酸を50〜97モル%含有する。
(iii)上記(i)におけるポリエステル樹脂が、酸価が2〜10mgKOH/g、数平均分子量が10,000〜25,000である。
【選択図】なし

Description

本発明は、被膜性能、特に耐加水分解性に優れた樹脂被膜を形成し得ることが可能なポリエステル樹脂水性分散体、及びその製造方法、ならびにそれから得られるポリエステル樹脂被膜に関するものである。
従来、ポリエステル樹脂は被膜形成用樹脂として用いられている。特に、被膜の加工性、有機溶剤に対する耐性(耐溶剤性)、耐候性に優れ、同時にPET、PBT、塩化ビニル、各種金属等の成形品やフィルム等、さまざまな基材への密着性にも優れていることから、このような基材に対する塗料、インキ、接着剤、コーティング剤等に用いる樹脂として、有機溶剤に溶解したものが非常に多く使用されていた。
一方、近年、環境保護、消防法による危険物規制、職場環境の改善等の理由で、有機溶剤の使用が抑制される傾向にある。そのため、前記用途に使用できるポリエステル樹脂を、水性媒体に分散させた、ポリエステル樹脂水性分散体が求められるようになり、その開発が盛んにおこなわれている。
しかしながら、ポリエステル樹脂の構造は、エステル結合が多く含有するものであるため、加水分解反応が起こりやすいという問題がある。そのため、高温高湿条件下で使用する際には、耐加水分解性に劣る場合があった。
前記のような問題を解消すべく、特許文献1では、特定の脂肪族ジカルボン酸を使用した有機溶剤溶解型のポリエステル樹脂を提案している。この場合は、耐加水分解性や接着性が付与されたポリエステル樹脂被膜を形成することはできる。しかしながら、有機溶剤溶解型の接着剤に匹敵する接着性を発現する水性分散体を得るまでには至っていなかった。
特開2006−63184号公報
本発明は、上記の既述事情に鑑みてなされたものであり、各種基材への密着性、接着性、加工性、耐加水分解性等の性能に優れた樹脂被膜を形成できる、ポリエステル樹脂水性分散体を提供することを目的とする。および該ポリエステル樹脂水性分散体の製造方法、ならびに該ポリエステル樹脂水性分散体から得られる樹脂被膜を提供することを目的とする。なお、密着性とは、基材と樹脂被膜の付着の強さの程度を示すものである。接着性とは、樹脂被膜面どうしを重ね合わせて圧着した際の、樹脂被膜間の圧着の強さの程度を示す。
本発明者らは、このような課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の酸成分を特定の比率で配合し、得られるポリエステル樹脂の酸価、および数平均分子量を制御することによって前記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)以下の(i)、(ii)および(iii)を同時に満たすことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
(i)アルコール成分、酸成分を配合してなるポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるものである。
(ii)上記(i)におけるポリエステル樹脂を構成する酸成分中に、2つのカルボキシル基間に結合した主鎖の炭素数が10〜30である長鎖ジカルボン酸を3〜30モル%含有し、芳香族ポリカルボン酸を50〜97モル%含有する。
(iii)上記(i)におけるポリエステル樹脂が、酸価が2〜10mgKOH/g、数平均分子量が10,000〜25,000である。
(2)ポリエステル樹脂を構成する酸成分が、カルボキシル基に結合した主鎖の炭素数が10〜30である長鎖ジカルボン酸と、芳香族ポリカルボン酸のみで構成されていることを特徴とする(1)のポリエステル樹脂水性分散体。
(3)ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−50〜30℃であることを特徴とする(1)または(2)のポリエステル樹脂水性分散体。
(4)以下の(iv)、(v)および(vi)の工程を、この順で含むことを特徴とする(1)〜(3)のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
(iv)ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、ポリエステル樹脂の有機溶剤液を得る工程
(v)40℃以下に保った状態で、前記ポリエステル樹脂の有機溶剤液を塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる工程
(vi)ポリエステル樹脂の有機溶剤液と塩基性化合物を分散させた水性媒体から、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去する工程
(5)(iv)の工程において、沸点が150℃以下、20℃における水への溶解性が5g/L以上である有機溶剤に、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解させることを特徴とする(4)のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
(6)沸点が150℃以下である塩基性化合物を用いることを特徴とする(4)または(5)のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
(7)(1)〜(3)のポリエステル樹脂水性分散体から得られるポリエステル樹脂被膜。
本発明によれば、各種基材への密着性、接着性、造膜性、耐加水分解性の性能に優れた樹脂被膜を形成し得るポリエステル樹脂水性分散体を得ることができる。該ポリエステル樹脂水性分散体は、環境保護、職場環境の改善、操業性の改善の立場から非常に有能な素材であり、有機溶剤の使用を抑制することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体(以下、単に「水性分散体」と称する場合がある)は、ポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるものである。
本発明におけるポリエステル樹脂の構成成分について説明する。本発明のポリエステル樹脂は、アルコール成分、および酸成分より構成されるものである。
本発明において、ポリエステル樹脂は、その全酸成分中に、長鎖ジカルボン酸を含有することが必要である。本発明において、長鎖ジカルボン酸とは、2つのカルボキシル基間に結合した主鎖の炭素数が10〜30であるジカルボン酸である。長鎖ジカルボン酸は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体より得られる樹脂被膜の、耐加水分解性を大きく向上させるという役割を担う。
前記の長鎖ジカルボン酸の主鎖となる炭素原子の数は、2つのカルボニル基を除いて、10〜30であることが必要であり、14〜28であることがより好ましい。前記の炭素原子の数が10未満である場合は、得られる樹脂被膜の耐加水分解性が劣るものとなる。一方、前記の炭素原子の数が30を超えると、原料としては、入手が困難であり、性能の安定性が劣るだけでなく、必要以上に長鎖となるため、ハンドリング性が劣るという問題が生じる。
なお、本発明で言う「主鎖の炭素数」とは、上述のように、長鎖ジカルボン酸の主鎖のうち、2つのカルボニル基を除いた炭素原子の数を指している。
本発明において、ポリエステル樹脂は、その全酸成分中に、長鎖ジカルボン酸を3〜30モル%含有する必要があり、5〜25モル%含有することが好ましく、10〜20モル%含有することがより好ましい。前記の長鎖ジカルボン酸が3モル%未満である場合は、得られる樹脂被膜の耐加水分解性が劣るものとなる。一方、前記の長鎖ジカルボン酸が30モル%を超えて含有される場合は、後述する重縮合時に重合性が低くなってしまい、得られる樹脂被膜の接着性が劣るものとなる。
本発明における、長鎖ジカルボン酸は、たとえば、ドデカン二酸(主鎖の炭素数:10)、テトラデカン二酸(主鎖の炭素数:12)、ヘキサデカン二酸(主鎖の炭素数:14)、オクタデカン二酸(主鎖の炭素数:16)、エイコサン二酸(主鎖の炭素数:18)、水添ダイマー酸(主鎖の炭素数:14,16など)等の飽和長鎖ジカルボン酸;ダイマー酸(主鎖の炭素数:14,16など)等の不飽和長鎖ジカルボン酸が挙げられる。
ダイマー酸は、一般的に植物や動物から抽出される脂肪酸類を、所定の化学プロセスまたは化学反応を経て得られる二量体のことである。該化学プロセスや化学反応の条件によって、下記式(I)で示される非環型や、式(II)で示される環状型の構造をとるものである。この時、主鎖の炭素数としては、下記式(I)、(II)に示すように数えるものとする。なお、ダイマー酸の化学構造は、直鎖であっても分岐の仕方が異なるものや、環状、二環状、芳香族、芳香族二環状の構造を含む各種異性体が存在するが、そのような場合であっても、下記式(I)、(II)にしたがって数えられる炭素数が、本発明に規定された範囲を満たすものであれば単独でも用いることができ、または混合して用いることができる。
Figure 2011195692
すなわち、上記式(I)の場合は、主鎖の炭素数は18である。
Figure 2011195692
すなわち、上記式(II)の場合は、主鎖の炭素数は16である。
本発明で用いる長鎖ジカルボン酸としては、市販されており、比較的容易に入手ができ、樹脂被膜の耐加水分解性を付与させやすい観点から、オクタデカン二酸、ダイマー酸がより好ましい。これらの長鎖ジカルボン酸は、単独で用いることもできるし、2種類以上で併用することも可能である。
また、本発明において、ポリエステル樹脂は、その全酸成分中に、芳香族ポリカルボン酸を50〜97モル%含有する必要があり、60〜97モル%含有することが好ましく、70〜97モル%含有することがより好ましい。芳香族ポリカルボン酸は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体より得られる樹脂被膜の、接着性や加工性を向上させるという役割を担う。芳香族ポリカルボン酸の含有量が50モル%未満である場合は、得られる樹脂被膜の密着性や接着性が劣るものとなる。一方で、芳香族ポリカルボン酸が97モル%を超えて含有される場合は、前記の長鎖ジカルボン酸の含有量が3モル%未満となるため、得られる樹脂被膜の耐加水分解性が劣るものとなる。
芳香族ポリカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、3-tert-ブチルイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸や、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の3官能以上の芳香族カルボン酸が挙げられる。これらの芳香族ポリカルボン酸は、単独で用いることもできるし、2種類以上で併用することも可能である。
前記芳香族ジカルボン酸としては、工業的に多量に生産されており、安価であること等から、テレフタル酸とイソフタル酸がより好ましい。テレフタル酸は、得られるポリエステル樹脂被膜の耐熱性を向上させる利点があり、イソフタル酸は、得られるポリエステル樹脂被膜の耐薬品性を向上させる利点がある。よって、得られるポリエステル樹脂、さらには該ポリエステル樹脂を用いてなるポリエステル樹脂水性分散体に必要とされる特性に応じて、テレフタル酸とイソフタル酸を、適宜配合して用いることができる。
ただし、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の、カルボキシル基や水酸基以外の親水基を有する酸成分を用いた場合は、得られるポリエステル樹脂の被膜において耐水性が悪化する場合があるため、本発明の芳香族ジカルボン酸としては好ましくない。
本発明の目的を達成できる範囲において、前記の長鎖ジカルボン酸や芳香族ポリカルボン酸の他に用いることのできる酸成分としては、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸およびその無水物、テトラヒドロフタル酸およびその無水物等の脂環式ジカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の芳香族ではない3官能以上のポリカルボン酸、等が挙げられる。
ただし、前記の長鎖ジカルボン酸や芳香族ポリカルボン酸の他に用いることのできる酸成分として、前記の3官能以上のカルボン酸が多く含有する場合は、重合度を高くするとゲル化を起こしてしまい、後述する有機溶剤に不溶となる場合がある。そのため、酸成分として、3官能以上のカルボン酸を用いる場合、その含有量は全酸成分の3モル%以下となることが好ましい。
本発明における、ポリエステル樹脂を構成する全酸成分は、前記の長鎖ジカルボン酸と、芳香族ポリカルボン酸のみであることがより好ましい。全酸成分を長鎖ジカルボン酸と芳香族ポリカルボン酸にすることで、密着性、接着性、加工性、耐加水分解性等の特性をバランスよく有するより優れたポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明における、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル結合含有グリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上のポリアルコール、等が挙げられる。さらに、2,2−ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のアルキレンオキシド付加体やビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のアルキレンオキシド付加体等も使用することができる。
本発明におけるアルコール成分としては、工業的に多量に生産されており、安価であることから、エチレングリコールやネオペンチルグリコールを使用することが好ましい。加えて、エチレングリコールは、樹脂被膜の耐薬品性をより向上させるという利点があり、ネオペンチルグリコールは樹脂被膜の耐候性をより向上させるという利点を有するため好ましい。
また、ポリエステル樹脂の構成成分には、上記の成分以外にも本発明の目的を達成できる範囲において、ヒドロキシカルボン酸が共重合されていてもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、たとえば、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸のエチレンオキシド付加体などが挙げられる。また、3官能以上のポリオキシカルボン酸が共重合されていてもよく、たとえば、リンゴ酸、グリセリン酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸、モノアルコールは酸成分、もしくはアルコール成分はポリエステル樹脂中、各々1モル%未満であることが好ましく、0.1モル%未満であることがより好ましく、0モル%であることが特に好ましい。上記の共重合割合が1モル%以上である場合、ポリエステル樹脂の製造時に分子鎖の延長を阻害し、重縮合が進まずに、結果として必要な分子量が得られなくなる場合がある。
モノカルボン酸、モノアルコールとしては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
本発明における、ポリエステル樹脂の酸価は2〜10mgKOH/gである必要があり、4〜10mgKOH/gがより好ましい。酸価が2mgKOH/g未満であると、水性媒体への分散が困難となる。また、たとえ水性分散体が得られたとしても、体積平均粒径が大きいものとなって、保存安定性が悪くなる。また、酸価が10mgKOH/gを超えると、ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、得られたポリエステル樹脂水性分散体を用いた樹脂被膜は、密着性や接着性に劣るものとなる。
本発明における、ポリエステル樹脂の数平均分子量は、10,000〜25,000であることが必要であり、10,000〜20,000がより好ましい。数平均分子量が10,000未満である場合は、得られる樹脂被膜の造膜性が不足し、また、密着性、接着性に劣るものとなる。一方、ポリエステル樹脂の数平均分子量が25,000を超えると、ポリエステル樹脂に好ましい酸価を付与させることが困難となる。
本発明における、ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、−50〜30℃であることが好ましく、−45〜20℃であることがより好ましい。ガラス転移温度を30℃以下とすることで、低温での熱圧着処理や、短時間での熱圧着処理で十分な接着強度が得られる。一般的に、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を30℃以下にした場合は、高温下で長期保存することにより、加水分解反応が促進され、数平均分子量が大きく低下する。しかしながら、本発明においては、ポリエステル樹脂の全酸成分中に、長鎖ジカルボン酸を3〜30モル%含有させているため、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を30℃以下であっても加水分解が抑制され、高温下での長期保存によっても、数平均分子量の低下が起こらず有用である。
また、本発明において、ポリエステル樹脂の数平均分子量保持率は、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。数平均分子量保持率が高いほど、耐加水分解性に優れたポリエステル樹脂であり、保存安定性に優れたポリエステル樹脂であるといえる。数平均分子量保持率が97%未満であると、ポリエステル樹脂が加水分解して分子量の低下が起こり、保存安定性に劣るポリエステル樹脂水性分散体となる。なお、数平均分子量保持率の測定方法については、実施例において詳述する。
次に、本発明における、ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
ポリエステル樹脂を製造する方法としては、前記の酸成分の1種類以上と、アルコール成分の1種類以上とを、公知の方法により、重縮合反応に付する方法が挙げられる。例えば、全モノマー成分および/またはその低重合体を不活性雰囲気下で180〜260℃、2.5〜10時間反応させてエステル化反応をおこない、引き続いて重縮合触媒の存在下、130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で、所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めて、ポリエステル樹脂を得る方法などを挙げることができる。
ポリエステル樹脂を重縮合させる重縮合触媒は、特に限定されず、酢酸亜鉛や三酸化アンチモン等の公知の化合物を用いることができる。
さらに、前記の重縮合反応に引き続き、酸成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合反応を行うことにより、ポリエステル樹脂に所望の酸価を付与することができる。
なお、ポリエステル樹脂に所望の酸価を付与する方法として、前記の重縮合反応に引き続き、無水物の酸成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、ポリエステル樹脂のヒドロキシル基と付加反応する方法も公知であるが、この場合は、製造途中の溶融粘度が非常に高くなり、ポリエステル樹脂を払い出せなくなる場合があるため好ましくない。
解重合反応で用いる酸成分としては、前記した3官能以上のカルボン酸が好ましい。3官能以上のカルボン酸を使用することにより、特に、解重合によるポリエステル樹脂の分子量低下を抑制しながら、所望の酸価を付与することができる。その中でも、耐熱性やハンドリング性などの特性を維持する観点から、芳香族の3官能以上のカルボン酸成分であるトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸が特に好ましい。酸成分の使用量は、得られるポリエステル樹脂の酸価と数平均分子量をバランスよく与えやすい点から、全酸成分の1モル%以下となることが好ましい。
次いで、本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体について説明する。
本発明における、ポリエステル樹脂水性分散体とは、前記したポリエステル樹脂が、水性媒体中に分散されてなる乳液状物である。ここで、水性媒体とは、水を含む液体からなる媒体であり、有機溶剤や塩基性化合物を含んでいてもよい。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体中のポリエステル樹脂の含有率は、5〜50質量%が好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の含有率が50質量%を超えると、分散していたポリエステル樹脂が凝集しやすくなり、安定性が乏しくなる傾向にある。ポリエステル樹脂の含有率が5質量%未満では、ポリエステル樹脂被膜を形成した場合に、被膜の膜厚を十分に得るために、多量のポリエステル樹脂水性分散体を消費してしまう場合があるため実用的ではない。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体のpHは、特に限定されないが、6以上であることが好ましい。pHが6未満であるものは、分散していたポリエステル樹脂が凝集してしまい、均一な水性分散体を得られなくなる場合があるため好ましくない。
本発明における、水性分散体中のポリエステル樹脂微粒子の粒子径は、特に限定されないが、保存安定性を良好に保つ点から、体積平均粒子径が500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。
水性媒体中の水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などが挙げられるが、不純物混入を防止する観点から、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
次に、ポリエステル樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体は、前記ポリエステル樹脂の末端にあるカルボキシル基を、塩基性化合物を用いて、少なくとも一部、または、全部中和することで、水性媒体に分散させる方法により製造される。カルボキシル基を中和することで、カルボキシルアニオンが生成され、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂微粒子は凝集せず、安定に分散することができる。
前記のような製造方法以外にも、例えば、ポリエステル樹脂としてスルホン酸塩基を有するものを用いたり、分散剤として界面活性剤を用いたりすることで、塩基性化合物を用いずに、水性分散体を製造する方法が知られている。しかしながら、塩基性化合物を用いずに得られた水性分散体からなるポリエステル樹脂被膜は、耐水性に劣る場合があるため、本発明においては塩基性化合物を用いることを必須とする。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、数平均分子量10000以上のポリエステル樹脂を用いるため、転相乳化法で製造することが好ましい。なお、転相乳化法については、後述する。
本発明において「転相乳化」とは、ポリエステル樹脂の有機溶剤液に、この溶液に含まれる有機溶剤量を超える量の水を添加して、該有機溶剤液の系を、有機溶剤相からO/Wエマルション分散系に変化させることを意味する。
ポリエステル樹脂水性分散体を、転相乳化法を用いて製造することについて以下に詳述する。転相乳化法は、以下の工程を含むものである。
すなわち、転相乳化法は、第一に、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、ポリエステル樹脂の有機溶剤液を得る工程(溶解工程)、第二に、40℃以下に保った状態で、前記ポリエステル樹脂の有機溶剤液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる工程(転相乳化工程)、第三に、ポリエステル樹脂の有機溶剤液と塩基性化合物を分散させた水性媒体から、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去する工程(脱溶剤工程)の3工程を含むものである。さらに上述の3工程の他に、必要に応じて、未分散物や凝集物をろ過して取り除く工程等を加えて、沈殿物や相分離等の見られない均一な状態の水性分散体を得ることができる。
上記の溶解工程において、ポリエステル樹脂を溶解させる場合の有機溶剤の温度は、適宜選択することが可能である。なかでも、沸点が150℃以下、20℃における水への溶解性が5g/L以上であり、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解することができる有機溶剤が好ましい。
前記の有機溶剤が、前記ポリエステル樹脂を10質量%未満しか溶解することができない場合は、得られるポリエステル樹脂水性分散体の固形分濃度を上げることが困難となる場合がある。また、沸点が150℃を超えると、脱溶剤工程の際に、有機溶剤の完全な除去が非常に困難になり、水性分散体の安定性が乏しくなる場合があるため好ましくない。さらにまた、有機溶剤の20℃における水への溶解性が5g/L未満であると、均一なポリエステル樹脂水性分散体を得られなくなる場合がある。
前記の条件を満たす有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(以下、MEKと表記する場合がある)や、テトラヒドロフラン(以下、THFと表記する場合がある)、1,4−ジオキサン等が好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。なお、MEKの沸点は80℃、THFの沸点は65℃、1,4−ジオキサンの沸点は101℃である。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体を製造する際に用いる塩基性化合物は、カルボキシル基を中和することができるものであれば特に限定されない。塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等の金属水酸化物や、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の有機アミン等が挙げられる。
本発明における塩基性化合物は、ポリエステル樹脂被膜から揮散させやすいという理由から、沸点が150℃以下のものであることが好ましく、たとえば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン等が挙げられる。
本発明における、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させるための装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば、装置は特に限定されない。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(たとえばホモミキサー)として知られている装置が挙げられる。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱を行ってもよい。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体製造の転相乳化工程は、ポリエステル樹脂の有機溶剤液を塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる工程である。ポリエステル樹脂の有機溶剤液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる方法は、例えば、以下のようなものである。
すなわち、予めポリエステル樹脂の有機溶剤溶液中に塩基性化合物を添加しておき、これに水性媒体を徐々に投入する方法、また、水性媒体中に塩基性化合物を添加しておき、これをポリエステル樹脂の有機溶剤液に徐々に投入する方法等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂の有機溶剤液と塩基性化合物の混合が不均一になることを防止する観点から、予めポリエステル樹脂の有機溶剤液に塩基性化合物を添加しておき、これに水性媒体を徐々に投入して転相乳化を行う方法が好ましい。
また、水の投入速度については、ポリエステル樹脂溶液と塩基性化合物との合計1000gに対して、25g〜100g/minで水を投入することが好ましい。水の投入速度が100g/minより速い場合には、ポリエステル樹脂の塊が形成され、この塊は水性媒体に分散しなくなる傾向にあり、最終的に得られる水性分散体の収率が下がる場合がある。また、水の投入速度が25g/minより遅い場合には、必要量の水性媒体を添加し終えるのに、多くの時間を費やしてしまうため、非効率的となる場合がある。
転相乳化を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。また、転相乳化工程は常圧、減圧、加圧下のいずれの条件でおこなってもよい。
転相乳化を行う反応温度は、40℃以下で行うことが好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。40℃を超える反応温度で転相乳化を行うと、得られるポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒径が大きくなり、安定性に乏しいものとなる場合がある。
上記の脱溶剤工程については、常圧、減圧下いずれで行ってもよく、脱溶剤を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。
また、脱溶剤工程後の水性分散体に、さらに、前記の塩基性化合物を添加してもよい。脱溶剤工程後に再度塩基性化合物添加をすることで、水性分散体のpHを6以上に容易に上げることができる。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、保護コロイド作用を有する化合物、水、有機溶剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、染料、他の水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性オレフィン樹脂、水性アクリル樹脂等の水性樹脂等を配合して使用することができる。
次に、本発明における、ポリエステル樹脂被膜について説明する。
本発明のポリエステル樹脂被膜は、上述のポリエステル樹脂水性分散体を用いて形成される。ポリエステル樹脂被膜の形成方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば、グラビアコート法、マイヤーバーコート法、ディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法などが挙げられる。これらの方法により、各種基材表面に均一にポリエステル樹脂水性分散体をコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥および焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一なポリエステル樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや、赤外線ヒータなどを使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である、基材の種類などにより適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、通常60〜250℃であり、70〜230℃が好ましく、80〜200℃が最も好ましい。加熱時間としては、通常1秒〜30分間であり、5秒〜20分が好ましく、10秒〜10分が最も好ましい。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体を用いて形成されるポリエステル樹脂被膜の厚さは、その目的や用途によって適宜選択されるものであるが、上記のような通常の方法を用いて容易にポリエステル樹脂被膜を形成できる観点から、通常0.01〜40μmであり、0.1〜30μmが好ましく、0.5〜20μmが最も好ましい。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、被膜形成能に優れており、また、密着性、接着性、耐加水分解性に非常に優れている。したがって、前記のようにして得られたポリエステル樹脂被膜は、例えば、液体の包装やボイル処理を行う包装等の、高湿条件化で使用する包装フィルムのヒートシール剤やプライマー層として非常に有用である。
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明する。
なお、評価、測定方法は下記の通りである。
(1)ポリエステル樹脂の組成分析
H−NMR分析(バリアン社製、「300MHz」)より求めた。また、H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含むポリエステル樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを精秤し、体積比で、(50mlの水)/(1,4−ジオキサン=1/9である水溶液に溶解して、クレゾールレッドを指示薬として0.1モル/Lの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数を、ポリエステル樹脂のg数で割った値を酸価とした。
(3)ポリエステル樹脂の数平均分子量
GPC分析装置(島津製作所社製、送液ユニットLC−10ADvp型、紫外−可視分光光度計「SPD−6AV型」、検出波長:254nm、溶剤:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)を用いて求めた。このときのポリエステル樹脂を初期のポリエステル樹脂とし、数平均分子量をMnとした。
(4)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、「Diamond DSC」、検出範囲:−50℃〜200℃)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
(5)ポリエステル樹脂水性分散体の固形分濃度
ポリエステル樹脂水性分散体を約1g秤量(Xgとする)し、これを150℃で2時間乾燥した後の残存物(固形分)の質量を秤量し(Ygとする)、次式により固形分濃度を求めた。
固形分濃度(質量%)=(Y/X)×100
(6)ポリエステル樹脂水性分散体のpH
pHメーター(堀場製作所社製「F−21」)を用いて、pH7及びpH9の標準緩衝液(ナカライテスク社製)により校正した後、測定温度25℃でポリエステル樹脂水性分散体のpHを測定した。
(7)ポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒径
ポリエステル樹脂水性分散体を、水で0.1質量%に希釈し、粒径測定装置(日機装社製「MICROTRAC UPA(モデル9340−UPA)」)を用いて測定した。
(8)ポリエステル樹脂水性分散体内のポリエステル樹脂の耐加水分解性
50mlのガラス製サンプル瓶に30mlのポリエステル樹脂水性分散体を入れ、密閉状態、40℃の条件下で6か月静置した。6か月経過後、該水性分散体を常温常圧状態で十分乾燥した後、さらに真空乾燥機で90℃、1日真空乾燥し、完全に水分を除去したポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂を前記(3)に従って、長期静置後のポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)を求めた。
次式により数平均分子量の保持率を求めた。数平均分子量保持率が100に近いほど静置による分子量低下が少なく、耐加水分解性に優れたものであることを示す。
数平均分子量保持率(%)=(Mn/Mn)×100
(9)ポリエステル樹脂被膜の造膜性
二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製、厚さ38μm)のコロナ処理面に、卓上型コーティング装置(安田精機社製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、150℃に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥させることにより膜厚が1μmのポリエステル樹脂被膜を形成した。ポリエステル樹脂被膜を目視にて観察し、以下のように造膜性を評価した。なお、ポリエステル樹脂被膜の膜厚は、厚み計(ユニオンツール社製、「MICROFINE」)を用いて、フィルムの厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いてフィルム上にポリエステル樹脂被膜を形成した後、このポリエステル樹脂被膜を有するフィルムの厚みを同様の方法で測定し、その差をポリエステル樹脂被膜の膜厚とした。
○:クラック、白化がともに見られず、且つ透明で平滑な膜である。
×:クラックが見られる、白化が見られる、不透明である、および凹凸があるという状況のうち、1以上の状況が確認される被膜である。
(10)ポリエステル樹脂被膜の密着性
前記(9)と同様にPETフィルムにポリエステル樹脂被膜を形成した。次いで、JIS Z 1522に規定された粘着テープ(幅18mm)を、端部を残してポリエステル樹脂被膜に貼りつけ、その上から消しゴムでこすって十分に接着させた後に、粘着テープの端部をPETフィルムに対して直角としてから、瞬間的に引き剥がした。この引き剥がした粘着テープ面を、表面赤外分光装置(パーキンエルマー社製、「SYSTEM2000」、Ge60°50×20×2mmプリズムを使用)で分析することにより、粘着テープ面にポリエステル樹脂被膜が付着しているか否かにより以下のように分類し、密着性を評価した。
○:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められない。
×:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められる。
(11)ポリエステル樹脂被膜の接着性
前記(9)と同様にPETフィルム樹脂被膜を形成した。次いで、23℃の室温に取り出し、ポリエステル樹脂被膜が形成されたPETフィルムを2つ準備し、ポリエステル樹脂被膜面とポリエステル樹脂被膜面が接触するように重ねて、ヒートプレス機にて、150℃、シール圧0.1MPa、30秒間圧着した。このサンプルを引張試験機(インテスコ株式会社製「インテスコ精密万能材料試験機2020型」)を用い20℃の雰囲気で、剥離面の角度90度、剥離速度50mm/分、剥離幅25mmの剥離強度を測定した。本発明においては、剥離強度が1.0N/25mm以上であるものが実用的な接着性であり、1.2N/25mm以上であるものがより好ましい接着性であると評価した。
(12)長期静置後のポリエステル樹脂被膜の造膜性、密着性、接着性(ポリエステル樹脂被膜の耐加水分解性)
前記(8)と同様に、密閉状態、40℃の条件下で6か月静置したポリエステル水性分散体を、前記(9)、(10)、および(11)と同様の方法で評価、測定し、長期静置後のポリエステル樹脂被膜の造膜性、密着性、接着性を評価、測定した。
接着性保持率(%)=[(長期静置後の接着性)/(長期静置前の接着性)]×100
本発明においては、接着性保持率が85%以上であるものを、実用に耐えうるものとした。
実施例、および、比較例で用いたポリエステル樹脂は、以下のようにして得られた。
[ポリエステル樹脂の調製例]
[ポリエステル樹脂(P−1)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1869g、イソフタル酸(IPA)を1869g、ダイマー酸(DA;クローダ社製、Pripol1009、主鎖の炭素数16)を1412g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1474g、ネオペンチルグリコール(NPG)1432gをオートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸38gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−1)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−2)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1869g、イソフタル酸(IPA)を1786g、エイコサン二酸(EDA)を1028g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1241g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1823g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸38gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−2)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−3)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を3115g、イソフタル酸(IPA)を415g、ダイマー酸(DA)を2119g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1335g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1666g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸38gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−3)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−4)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を2160g、イソフタル酸(IPA)を166g、ダイマー酸(DA)を3390g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1241g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1042g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート10.2gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸31gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−4)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−5)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1869g、イソフタル酸(IPA)を1869g、ダイマー酸(DA)を1412g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1474g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1432g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸48gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−5)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−6)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1911g、イソフタル酸(IPA)を1911g、ダイマー酸(DA)を1130g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1474g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1432g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸24gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−6)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−7)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1827g、イソフタル酸(IPA)を2201g、ダイマー酸(DA)を424g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1241g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1823g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸38gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−7)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−8)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1661g、ダイマー酸(DA)を2260g、アジピン酸(ADA)を877g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を931g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1562g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート10.2gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸31gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−8)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−9)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を2492g、イソフタル酸(IPA)を623g、アジピン酸(ADA)を913g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1366g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1614g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸38gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−9)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−10)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を997g、イソフタル酸(IPA)を374g、ダイマー酸(DA)を3813g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を866g、ネオペンチルグリコール(NPG)を890g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート7.7gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸23gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−10)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−11)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を789g、イソフタル酸(IPA)を3281g、ダイマー酸(DA)を282g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1474g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1432g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸38gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−11)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−12)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1595g、アジピン酸(ADA)を935g、ダイマー酸(DA)を2260g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を931g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1562g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート10.2gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸31gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−12)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−13)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1869g、イソフタル酸(IPA)を1869g、ダイマー酸(DA)を1412g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1474g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1432g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸4.8gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−13)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−14)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1869g、イソフタル酸(IPA)を1869g、ダイマー酸(DA)を1412g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1474g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1432g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸96gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−1)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−15)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1869g、イソフタル酸(IPA)を1869g、ダイマー酸(DA)を1412g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1474g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1432g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸38g、エチレングリコール12gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−15)を得た。なお、(P−15)においては、用いたEGのうち、0.8モル%分は、解重合反応時に、無水トリメリット酸と共に添加した。
[ポリエステル樹脂(P−16)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1910g、イソフタル酸(IPA)を1910g、アジピン酸(ADA)を292g、アルコール成分として、エチレングリコール(EG)を1102g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1666g、オートクレーブ中に仕込んで、250℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。ついで、酢酸亜鉛3.3gを添加した後、系の温度を265℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸22gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水温が35℃のクエンチングバスを経由してペレタイザー(ナカタニ機械株式会社製、型式「ST」)でカッティングすることで、ペレット状のポリエステル樹脂(P−16)を得た。
ポリエステル樹脂(P−1)〜(P−16)の特性を分析した結果を表1に示す。
Figure 2011195692
なお、表1中の略称は以下のものを表す。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
TMA:トリメリット酸
DA:ダイマー酸
EDA:エイコサン二酸
ADA:アジピン酸
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
[ポリエステル樹脂水性分散体、およびポリエステル樹脂被膜の調製例]
[実施例1]
ジャケット付きガラス容器(内容量2l)にポリエステル樹脂(P−1)を400gとMEKを600g投入し、ジャケットに60℃の温水を通して加熱しながら、攪拌機(東京理化器械社製、「MAZELA1000」)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂を溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液1000gを得た。つぎに、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、回転速度600rpmで攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン24.2gを添加し(イ)、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水を1106g添加して(ロ)、転相乳化を行った。ついで、得られた水性分散体のうち、1600gを2lのフラスコに入れ、常圧下で蒸留をおこなうことで有機溶剤を留去した。蒸留は留去量が631gになったところで終了し、室温まで冷却後、ポリエステル樹脂水性分散体を攪拌しながら、28質量%アンモニア水0.9gを添加し、さらに、蒸留水を添加して固形分濃度を30.0質量%に調整した。その後、1000メッシュのステンレス製フィルターで濾過し、ポリエステル樹脂水性分散体(E−1)を990g得た。また、得られた(E−1)を用いて、前記(9)に記載のようなバーコート法で被膜を形成することにより、PETフィルム(ユニチカ社製、商品名「エンブレット S−38」)上にポリエステル樹脂被膜(T−1)を得た。
実施例1で得られたポリエステル樹脂水性分散体の特性、およびポリエステル樹脂被膜の評価結果を表2に示す。
Figure 2011195692
[実施例2〜実施例9]
使用したポリエステル樹脂、(イ)トリエチルアミン添加量、および(ロ)蒸留水添加量を表2のとおりに変更し、実施例1と同様の操作を行ってポリエステル樹脂水性分散体(E−2)〜(E−8)、(E−20)、ポリエステル樹脂被膜(T−2)〜(T−8)、(T−20)をそれぞれ得た。
実施例2〜実施例9で得られたポリエステル樹脂水性分散体の特性、およびポリエステル樹脂被膜の評価結果を、表2に示す。
[比較例1〜比較例7]
使用したポリエステル樹脂、(イ)トリエチルアミン添加量、および(ロ)蒸留水添加量を表3のとおりに変更し、実施例1と同様の操作を行ってポリエステル樹脂水性分散体(E−9)〜(E−15)、ポリエステル樹脂被膜(T−9)〜(T−15)をそれぞれ得た。なお、比較例5では、ポリエステル樹脂水性分散体、およびポリエステル樹脂被膜を得ることができなかった。
比較例1〜4、比較例6、7で得られたポリエステル樹脂水性分散体の特性、およびポリエステル樹脂被膜の評価結果を、表3に示す。
Figure 2011195692
実施例1〜実施例9で得られたポリエステル樹脂水性分散体は、環境保護、職場環境の改善等の観点から非常に優れたものである。各種基材への密着性、接着性、加工性、耐加水分解性等の性能に優れた樹脂被膜を形成できるものである。
比較例1は、ポリエステル樹脂を構成している酸成分としての長鎖ジカルボン酸が3モル%未満であるために、得られたポリエステル樹脂被膜の耐加水分解性が劣るものであった。
比較例2は、ポリエステル樹脂中の長鎖ジカルボン酸の含有量が30モル%を超えていたために、ポリエステル樹脂の重合度が上がらず、初期、長期静置後ともに、得られたポリエステル樹脂被膜は造膜性が不足し、また、密着性や接着性が劣るものであった。
比較例3は、ポリエステル樹脂中の芳香族ポリカルボン酸の含有量が97モル%を超えたために、長鎖ジカルボン酸の含有量が3モル%未満となり、得られたポリエステル樹脂被膜の耐加水分解性が劣るものであった。
比較例4は、ポリエステル樹脂中の芳香族ポリカルボン酸の含有量が50モル%未満であるために、初期、長期静置後ともに、得られるポリエステル樹脂被膜の密着性や接着性が劣るものであった。
比較例5は、ポリエステル樹脂の酸価が2mgKOH/g未満であるため、ポリエステル樹脂を水性媒体に分散させることが困難となり、水性分散体、および樹脂被膜を得ることができなかった。
比較例6は、ポリエステル樹脂の酸価が10mgKOH/gを超えたために、得られたポリエステル樹脂の分子量はやや低いものとなり、初期、長期静置後ともに、得られたポリエステル樹脂被膜の造膜性が不足し、また、密着性や接着性が劣るものであった。
比較例7は、解重合剤としてTMAに加えEGを用いたため(すなわち、アルコール系の解重合剤を用いたため)、解重合が進みすぎ、所定の酸価は付与されたが、ポリエステル樹脂の数平均分子量が10,000未満となってしまい、初期、長期静置後ともに、得られたポリエステル樹脂被膜の造膜性が不足し、また、密着性や接着性が劣るものであった。

Claims (7)

  1. 以下の(i)、(ii)および(iii)を同時に満たすことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
    (i)アルコール成分、酸成分を配合してなるポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるものである。
    (ii)上記(i)におけるポリエステル樹脂を構成する酸成分中に、2つのカルボキシル基間に結合した主鎖の炭素数が10〜30である長鎖ジカルボン酸を3〜30モル%含有し、芳香族ポリカルボン酸を50〜97モル%含有する。
    (iii)上記(i)におけるポリエステル樹脂が、酸価が2〜10mgKOH/g、数平均分子量が10,000〜25,000である。
  2. ポリエステル樹脂を構成する酸成分が、2つのカルボキシル基間に結合した主鎖の炭素数が10〜30である長鎖ジカルボン酸と、芳香族ポリカルボン酸のみで構成されていることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  3. ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−50〜30℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  4. 以下の(iv)、(v)および(vi)の工程を、この順で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
    (iv)ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、ポリエステル樹脂の有機溶剤液を得る工程
    (v)40℃以下に保った状態で、前記ポリエステル樹脂の有機溶剤液を塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる工程
    (vi)ポリエステル樹脂の有機溶剤液と塩基性化合物を分散させた水性媒体から、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去する工程
  5. (iv)の工程において、沸点が150℃以下、20℃における水への溶解性が5g/L以上である有機溶剤に、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解させることを特徴とする請求項4に記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
  6. 沸点が150℃以下である塩基性化合物を用いることを特徴とする請求項4または5に記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体から得られるポリエステル樹脂被膜。
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