JP5881499B2 - ポリエステル樹脂水性分散体、およびそれから得られるポリエステル樹脂被膜 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエステル樹脂水性分散体、およびそれから得られるポリエステル樹脂被膜に関する。
ポリエステル樹脂は、被膜形成用樹脂として広く用いられている。特に、ポリエステル樹脂からなる被膜は、加工性、有機溶剤に対する耐性(耐溶剤性)および耐候性に優れ、同時にPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、塩化ビニルあるいは各種金属などの成形品やフィルムなどのさまざまな基材への密着性にも優れている。そのため、このような基材に対して適用される塗料、インキ、接着剤、コーティング剤などの用途において、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解したものが多く使用されていた。
一方、近年、環境保護、消防法による危険物規制および職場環境の改善などの理由で、有機溶剤の使用が抑制される傾向にある。そのため、前記用途において使用されうるポリエステル樹脂を、有機溶剤にではなく水性媒体に分散させてなる、ポリエステル樹脂水性分散体が求められるようになり、その開発が盛んにおこなわれている。
例えば、酸価が2mgKOH/g以上8mgKOH/g未満と低くかつ高分子量であるポリエステル樹脂を、水性媒体中に分散させたポリエステル樹脂水性分散体が知られている(特許文献1)。このポリエステル樹脂水性分散体から形成された樹脂被膜は、一定レベルの密着性、加工性、耐水性に優れるものの、有機溶剤溶解型の接着剤に匹敵する程度の十分な接着性(基材同士を接着させる特性)を有するものではなかった。
接着性に優れる樹脂被膜を得ることを目的として、その融点、結晶融解熱量、酸価および数平均分子量が特定の範囲であるポリエステル樹脂が分散されてなるポリエステル樹脂水性分散体が提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、特許文献2に記載されたポリエステル樹脂水性分散体は、透明性に劣るものであり、特に長期間使用された場合における経時的な透明性の劣化が顕著である。そのため、例えば、ディスプレイ用積層フィルムのアンカーコート剤や接着剤などの、高い透明性が長期間維持されることを要求される用途には不適である。つまり、特許文献2に記載されたポリエステル樹脂水性分散体には、その用途が限定されてしまうという問題がある。
国際公開第2004/037924号パンフレット 国際公開第2007/086266号パンフレット
つまり、従来技術においては、密着性、加工性、耐水性および接着性に加えて、さらに透明性(初期の透明性)および長期透明性に優れた樹脂被膜を形成しうる、ポリエステル樹脂水性分散体はいまだ得られていない。
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、樹脂被膜とされた場合に、密着性、加工性、耐水性および接着性に加えて、さらに透明性および長期透明性に優れるポリエステル樹脂水性分散体を得ることを技術的な課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)ポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるポリエステル樹脂水性分散体であって、前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分およびアルコール成分が、下記(i)および(ii)を同時に満たすことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
(i)酸成分が、芳香族多塩基酸(a1)を50〜65モル%、炭素数が4〜12である脂肪族多塩基酸(a2)を35〜50モル%を含有する。
(ii)アルコール成分が、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)50〜80モル%、および炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)20〜50モル%のみからなり、前記炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)が直鎖脂肪族グリコールおよび/または直鎖エーテル結合含有グリコールである。
(2)上記(i)における酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸を含有し、テレフタル酸およびイソフタル酸の比率が、モル比で、(テレフタル酸)/(イソフタル酸)=49/51〜25/75であることを特徴とする(1)のポリエステル樹脂水性分散体。
(3)上記(i)における酸成分が、3官能以上の芳香族多塩基酸を0.01モル%以上2モル%以下の割合で含有することを特徴とする(1)または(2)のポリエステル樹脂水性分散体。
(4)上記(i)における酸成分が、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸を含有しないことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのポリエステル樹脂水性分散体。
(5)ポリエステル樹脂が、その酸価が4〜10mgKOH/g、ガラス転移温度が30℃以下および数平均分子量が13,000〜30,000であり、かつ融点を有しないものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのポリエステル樹脂水性分散体。
(6)水性分散体中のポリエステル樹脂の体積平均粒子径が10nm以上400nm以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのポリエステル樹脂水性分散体。
(7)(1)〜(6)のいずれかのポリエステル樹脂水性分散体から得られるポリエステル樹脂被膜。
本発明によれば、ポリエステル樹脂被膜(以下、単に「樹脂被膜」と称する場合がある)とされた場合に、密着性、加工性、耐水性および接着性に優れ、加えて、透明性および長期透明性に優れるポリエステル樹脂水性分散体を得ることができる。さらに、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、保存安定性にも優れるものである。加えて、水性媒体が使用された分散体であるため、環境への負荷を低減できる点においても非常に優れるものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体(以下、単に「水性分散体」と称する場合がある)は、ポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるポリエステル樹脂水性分散体であって、前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分およびアルコール成分が、下記(i)および(ii)を同時に満たすことを特徴とする。
(i)酸成分が、芳香族多塩基酸(a1)を50〜65モル%、炭素数が4〜12である脂肪族多塩基酸(a2)を35〜50モル%を含有する。
(ii)アルコール成分が、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)50〜80モル%、および炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)20〜50モル%のみからなり、前記炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)が直鎖脂肪族グリコールおよび/または直鎖エーテル結合含有グリコールである。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体においては、上記の(i)および(ii)を同時に満足するポリエステル樹脂を用いることにより、密着性、加工性、耐水性および接着性に優れ、加えて透明性および長期透明性にバランスよく優れるという顕著な効果が奏される。
まず、本発明に使用するポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は、酸成分およびアルコール成分から構成されるものである。
ポリエステル樹脂は、その全酸成分中に、芳香族多塩基酸(a1)を50〜65モル%の割合で含有する必要があり、52〜63モル%の割合で含有することが好ましく、54〜61モル%の割合で含有することがより好ましい。ポリエステル樹脂が芳香族多塩基酸(a1)を50〜65モル%の割合で含有することで、樹脂被膜とされた場合の耐水性、および接着性がバランスよく向上されたポリエステル樹脂水性分散体とすることができる。
つまり、ポリエステル樹脂中の芳香族多塩基酸(a1)の割合が50モル%未満である場合は、得られる樹脂被膜の耐水性に劣るようなポリエステル樹脂水性分散体しか得られないという問題がある。また、芳香族多塩基酸(a1)の割合が65モル%を超える場合は、その結果として、全酸成分中において、後述するような炭素数が4〜12である脂肪族多塩基酸(a2)の割合が35モル%未満になるため、得られる樹脂被膜の接着性に劣るという問題がある。
芳香族多塩基酸(a1)としては、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、3−tert−ブチルイソフタル酸、ジフェン酸などの2官能の芳香族カルボン酸;ヘミメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸などの3官能以上の芳香族カルボン酸などが挙げられる。なかでも、密着性、加工性等のバランスが取りやすいこと、長期透明性に優れることから、テレフタル酸(TPA)およびイソフタル酸(IPA)を組み合わせて用いることが好ましい。
芳香族多塩基酸(a1)として、テレフタル酸およびイソフタル酸を組み合わせて用いる場合には、両者の割合が、モル比で、(TPA)/(IPA)=49/51〜25/75であることが好ましく、45/55〜30/70であることがより好ましい。このような範囲でもちいることにより、密着性、加工性等のバランスを取りながらも、透明性および長期透明性に優れた被膜を得ることが可能となる。
芳香族多塩基酸(a1)においては、3官能以上の芳香族多塩基酸の含有割合が、全酸成分中の2モル%以下であることが好ましい。3官能以上の芳香族多塩基酸は1分子中に、より多くのカルボン酸基を有することから、後述するポリエステル樹脂の酸価を効率よく上げることができる。したがって、解重合を行い酸価の付与を行うこと、および分子量と酸価のバランスを取りやすくすることを目的として、3官能以上の芳香族多塩基酸を好ましく用いることができる。これら3官能以上の芳香族多塩基酸を用いる場合は、0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは0.5モル%以上の割合で用いることができる。しかしながら、一方で、3官能以上の芳香族多塩基酸を過剰に用いると、ゲル状態になり易いという問題がある。つまり、本発明においては、3官能以上の芳香族多塩基酸の割合が2モル%を超えると、ポリエステル樹脂がゲル状になってしまうことで加工性に劣るものとなり、水性分散体とすることができない場合がある。また、水性分散体が得られたとしても、樹脂被膜とされた場合の接着性に劣るものとなる場合がある。
なお、本発明におけるポリエステル樹脂においては、全酸成分中のスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の含有割合が、1モル%以下であることが好ましく、0モル%含有であることがより好ましい。スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分を、1モル%を超えて含有するものであると、樹脂被膜とされた場合の耐水性が大きく低下するようなポリエステル樹脂水性分散体しか得られない場合がある。スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸をポリエステル樹脂の組成に対して配合することで、一般的に、界面活性剤などを使用することなく、該ポリエステル樹脂を容易に水性媒体に分散することができるという利点がある。しかしながら、その一方で、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量が多すぎると、ポリエステル樹脂の耐水性を損ねてしまうため、1モル%以上含有することは好ましくないのである。
スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SIPA−Na)、5−ナトリウムスルホテレフタル酸(STPA−Na)、5−カリウムスルホイソフタル酸(SIPA−K)、5−カリウムスルホテレフタル酸(STPA−K)、5−リチウムスルホイソフタル酸(SIPA−Li)、5−リチウムスルホテレフタル酸(STPA−Li)、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(SIPG−Na)、2,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(STPG−Na)、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウム(SIPG−K)、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸リチウム(SIPG−Li)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM−Na)、5−ナトリウムスルホテレフタル酸ジメチル(STPM−Na)、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM−K)、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM−Li)などが挙げられる。
また、本発明におけるポリエステル樹脂は、全酸成分中に、炭素数が4〜12の脂肪族多塩基酸(a2)を35〜50モル%の割合で含有する必要があり、37〜48モル%の割合で含有することが好ましく、39〜46モル%の割合で含有することがより好ましい。炭素数が4〜12の脂肪族多塩基酸(a2)の含有割合を35〜50モル%とすることで、本発明のポリエステル樹脂水性分散体から得られる樹脂被膜の耐水性や接着性がバランスよく向上するという効果が奏される。
つまり、このような脂肪族多塩基酸(a2)の割合が35モル%未満である場合は、得られる樹脂被膜の接着性が不足するという問題がある。一方、50モル%を超える場合は、得られる樹脂被膜の耐水性が不足するという問題がある。
炭素数が4〜12の脂肪族多塩基酸(a2)としては、たとえば、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの3官能以上の脂肪族カルボン酸などが挙げられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸や、3官能以上の脂肪族多塩基酸を用いたポリエステル樹脂は、後述する製造方法ではゲル状態になり易くなるため、上記のなかでも、飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることがより好ましい。なかでも、接着性の向上において効果が高いという観点から、セバシン酸を用いることが特に好ましい。
本発明にて用いられるポリエステル樹脂は、アルコール成分が、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)50〜80モル%、および炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)20〜50モル%のみからなることを必要とする。アルコール成分をこのような組成とすることで、本発明のポリエステル樹脂水性分散体から得られる樹脂被膜の接着性、透明性および長期透明性がバランスよく向上する。
全アルコール成分中における炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)の割合が、50モル%未満である場合は、得られる樹脂被膜の接着性に劣るという問題がある。一方、80モル%を超えると、得られる樹脂被膜の透明性や長期透明性に劣るという問題がある。
本発明において、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)は、直鎖脂肪族グリコールおよび/または直鎖エーテル結合含有グリコールである。
炭素数が3〜6である側鎖を有しない直鎖脂肪族グリコールとしては、たとえば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。なかでも、後述の炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)との組み合わせにおいて、樹脂被膜の接着性および長期透明性のバランスが良い点で、1,4−ブタンジオールが好ましい。
炭素数が3〜6である側鎖を有しない直鎖エーテル結合含有グリコールとしては、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。なかでも、後述の炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)との組み合わせにおいて、長期透明性に優れる点で、ジエチレングリコールが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂は、全アルコール成分中に、炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)を20〜50モル%の割合で含有する必要がある。炭素の数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)の含有割合を20〜50モル%とすることで、本発明のポリエステル樹脂水性分散体から得られる樹脂被膜の密着性、接着性、透明性および長期透明性がバランスよく向上する。
つまり、炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)の含有割合が20モル%未満である場合は、得られる樹脂被膜の透明性や長期透明性に劣るという問題がある。一方、50モル%を超える場合は、得られる樹脂被膜の密着性や接着性に劣るという問題がある。
炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)としては、たとえば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。なかでも、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)との組み合わせにおいて、長期透明性に優れる点で、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールが好ましい。
本発明においては、全アルコール成分中において、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)と、炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)との合計が、100モル%でなければならない。つまり、本発明にて用いられるポリエステル樹脂において、上記の(b1)および(b2)以外のアルコール成分が含有された場合には、本発明の効果を奏することができない。
また、ポリエステル樹脂には、本発明の特性を損なわない範囲で、必要に応じて、安息香酸、フェニル酢酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのモノカルボン酸が共重合されていてもよい。
モノカルボン酸の共重合割合は、ポリエステル樹脂を構成する酸成分中、1モル%以下であることが好ましく、0.1モル%以下であることがより好ましく、0モル%であることが特に好ましい。該共重合割合が1モル%を超えると、後述するポリエステル樹脂の製造時に分子鎖の延長を阻害する場合がある。その結果、ポリエステル樹脂の重縮合が進まず、必要な分子量が得られないため造膜性が不足する場合がある。
ポリエステル樹脂の酸価は、水性分散体としたときの分散性および長期保存安定性や、得られる樹脂被膜の耐水性を向上させる観点から、4〜10mgKOH/gであることが好ましく、5〜10mgKOH/gであることがより好ましく、5〜9mgKOH/gであることがさらに好ましく、5〜8mgKOH/gであることが特に好ましく、6〜8mgKOH/gであることが最も好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価が4mgKOH/g未満であると、水性媒体への分散が困難となる場合があり、たとえ分散できたとしても均一な水性分散体を得ることが難しい場合がある。一方、10mgKOH/gを超えると、樹脂被膜とされた際の耐水性に劣る場合がある。ポリエステル樹脂の酸価を上記の範囲に制御するためには、重縮合によって得られたポリエステルを、3官能以上の芳香族多塩基酸を用いて解重合することにより、安定的な酸価を付与するという手法を採用すればよい。
本発明におけるポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体から得られる樹脂被膜の接着性をより向上させる観点から、30℃以下であることが好ましく、−50〜30℃がより好ましく、−50〜0℃が特に好ましく、−30〜0℃であることが最も好ましい。なお、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を上記の範囲に制御するためには、ポリエステル樹脂を構成する酸成分およびアルコール成分を、任意に選択して調整するという手法を採用すればよい。
本発明におけるポリエステル樹脂は、融点を有しないものであること(つまり、非晶性であること)が好ましい。ポリエステル樹脂が融点を有しないものであると、本発明のポリエステル樹脂水性分散体から得られる樹脂被膜の長期透明性が向上されるという効果が奏される。なお、ポリエステル樹脂の融点を発現させないためには、ポリエステル樹脂を構成する酸成分およびアルコール成分を、本発明で規定する成分の範囲内で適宜調整するという手法を用いればよい。
本発明におけるポリエステル樹脂の数平均分子量は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体から得られる樹脂被膜の接着性をより向上させるために、13000〜30000であることが好ましく、13000〜25000であることがより好ましく、15000〜25000であることがさらに好ましく、15000〜23000であることが特に好ましく、17000〜23000であることが最も好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量が13000未満であると、樹脂被膜とされた場合の接着性および長期透明性に劣る場合がある。一方、30000を超えると、水性媒体に対するポリエステル樹脂の分散性に劣る場合がある。なお、数平均分子量を上記の範囲に制御するためには、重縮合によって得られたポリエステル樹脂を、3官能以上の芳香族多塩基酸を用いて解重合するという手法を採用すればよい。
本発明におけるポリエステル樹脂の平均分子量の分散度は、特に制限されないが、1.2〜8であることが好ましく、1.5〜6であることがより好ましく、2〜5であることがさらに好ましい。なお、分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことを指す。ここでいう重量平均分子量は、数平均分子量と同様に、後述するような公知の測定方法により得ることができる。
次に、ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
本発明におけるポリエステル樹脂は、上述の原料モノマーを組み合わせて、公知の方法で製造することができる。製造方法の具体例としては、原料モノマー成分および/またはその低重合体を、不活性雰囲気下で反応させてエステル化反応をおこない、引き続いて重縮合触媒の存在下および減圧下で、所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めることにより、ポリエステル樹脂を得る方法などを挙げることができる。
エステル化反応においては、反応温度は180〜260℃とすることが好ましい。また、反応時間は2.5〜10時間とすることが好ましく、4時間〜6時間とすることがより好ましい。
重縮合反応においては、反応温度は220〜280℃が好ましい。減圧度は、130Pa以下であることが好ましい。減圧度が低いと、重縮合時間が長くなるか、あるいは得られるポリエステル樹脂の数平均分子量が低いものとなる場合がある。なお、減圧に際しては、大気圧から130Pa以下に達するまで、60〜180分かけて徐々に減圧することが好ましい。
重縮合反応においては、反応を促進されるための重縮合触媒を用いてもよい。このような触媒としては、特に限定されないが、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトラ−n−ブチルチタネート、n−ブチルヒドロキシオキソスズ等の公知の化合物を用いることができる。触媒の使用量としては、酸成分1モルに対し、0.1〜20×10−4モルとすることが好ましい。
また、重縮合反応においては、熱安定剤としてのリン酸やリン酸トリエチルなどを用いることもできる。熱安定剤は重縮合触媒と同時に添加されてもよいし、もしくはどちらか一方を先に添加し、後からもう一方を添加してもよい。
上記の重縮合反応に引き続き、前記の酸成分および/またはアルコール成分を添加することにより、不活性雰囲気下で解重合反応をおこなってもよい。本発明においては、ポリエステル樹脂に所望の酸価を付与することができる観点から、酸成分で解重合することが好ましい、また、ポリエステル樹脂の数平均分子量と酸価をバランスよく所望の値にすることができる観点から、3官能以上のカルボン酸成分および/またはその無水物を用いて解重合することがより好ましい。あるいは、ポリエステル樹脂がゲル状態となるのを防ぐために、全酸成分に対して2モル%以下の割合で3官能以上の芳香族カルボン酸成分および/またはその無水物を用いて、解重合することが最も好ましい。
次いで、本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体について以下に説明する。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂が、水性媒体中に分散されてなるものである。該水性分散体は乳液状物であってもよい。
ここで、水性媒体とは、水を含む液体からなる媒体をいうものであり、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下の割合であれば有機溶剤を含んでいてもよい。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体中において、ポリエステル樹脂の含有率は5〜50質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の含有率が50質量%を超えると、分散していたポリエステル樹脂が凝集しやすくなり、保存安定性に乏しくなる傾向にある。一方、ポリエステル樹脂の含有率が5質量%未満であると、ポリエステル樹脂被膜を形成した場合に、該被膜の膜厚を十分に得るために多量のポリエステル樹脂水性分散体を消費してしまうことがあり、コストなどの観点から好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、pHが6以上であることが好ましく、7以上がより好ましく、8以上がさらに好ましい。pHが6未満であると、分散しているポリエステル樹脂が凝集してしまい、均一な水性分散体を得られなくなる場合がある。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体は、界面活性剤を含有しないことが好ましい。水性分散体に界面活性剤を含む場合は、該ポリエステル樹脂を容易に水性媒体に分散することができるが、一方で、得られる樹脂被膜の耐水性が大きく低下する場合がある。
ここで、一般的な界面活性剤としては、例えば、Aldrich社製のIgepalシリーズ;三洋化成社製のナロアクティーN-100、ナロアクティーN-120、ナロアクティーN-140などナロアクティーシリーズ;三洋化成社製のサンノニックSS-120、サンノニックSS-90、サンノニックSS-70などのサンノニックSSシリーズ;三洋化成社製のサンノニックFD-140、サンノニックFD-100、サンノニックFD-80などのサンノニックFDシリーズ;三洋化成社製のセドランFF-220、セドランFF-210、セドランFF-200、セドランFF-180などのセドランFFシリーズ;三洋化成社製のセドランSNP-112などのセドランSNPシリーズ;三洋化成社製のニューポールPE-64、ニューポールPE-74、ニューポールPE75などのニューポールPEシリーズ;サンモリン11が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体において、ポリエステル樹脂の体積平均粒径は、保存安定性を向上させる観点から、10nm以上400nm以下の微粒子であることが好ましく、10nm以上300nm以下であることがより好ましく、10nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。体積平均粒子径が400nmを超える場合は、水性分散体中に沈降物が発生して保存安定性に劣る場合がある。
水性媒体として用いる水の種類は特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水等が挙げられるが、不純物の混入を防止する観点から、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体には、硬化剤として、オキサゾリン基含有ポリマーが含有されていてもよい。つまり、本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体においては、安定な水性分散体を得る観点から、ポリエステル樹脂は多くのカルボキシル基末端を有するものであり、そのカルボキシル基末端と速やかに反応することから、オキサゾリン基含有ポリマーを硬化剤として用いることが好ましい。
本発明に用いられるオキサゾリン基含有ポリマーとしては、オキサゾリン基を有する重合体であればよく、特に限定されるものではない。また、オキサゾリン基含有ポリマーは、1種類で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、水性分散体に配合する目的で用いられるものである。そのため、混合安定性の観点から、水溶性もしくは水分散性であることが好ましい。オキサゾリン基含有ポリマーとしては、市販品を好適に使用することができ、例えば、日本触媒社製の、「エポクロスWS-500」、「エポクロスWS-700」、「エポクロス−K1010E」、「エポクロス−K1020E」、「エポクロス−K1030E」、「エポクロス−K2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」などを入手することができる。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体において、ポリエステル樹脂(A)とオキサゾリン基含有ポリマー(B)との質量比は、ポリエステル樹脂の特性、オキサゾリン基含有ポリマーの特性、さらには必要に応じて配合されるその他の成分の特性などに応じて適宜選択されるものである。なかでも、樹脂被膜とされた場合の耐水性や耐溶剤性などをさらに向上させる観点から、(A)/(B)=95/5〜85/15であることが好ましく、93/7〜87/13であることがより好ましい。つまり、ポリエステル樹脂の質量比が、ポリエステル樹脂とオキサゾリン基含有ポリマーとの合計量中95質量%を超えると、樹脂被膜とされた場合の耐水性や耐溶剤性向上の効果が乏しくなる場合がある。一方、85質量%未満であると、水性分散体とした場合にゲル化してしまう場合がある。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、水、アルコールや、他の水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性オレフィン樹脂、水性アクリル樹脂などの水性樹脂などを配合して使用することができる。
次に、本発明のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体は、例えば、上記のポリエステル樹脂のカルボキシル基を、塩基性化合物を用いて、少なくとも一部または全部を中和することで、水性媒体に分散させる方法により製造される。カルボキシル基を中和することで、カルボキシルアニオンが生成され、このアニオン間の電気反発力によって分散しているポリエステル樹脂は凝集しにくくなる、その結果、ポリエステル樹脂が水性分散体中に安定に存在することができる。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体の製造方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
(a)ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ(溶解工程)、このポリエステル樹脂溶液に塩基性化合物及び水を添加して有機溶剤を含有したポリエステル樹脂水性分散体を得る(転相乳化工程)方法。
(b)ポリエステル樹脂、塩基性化合物、有機溶剤および水を一括で仕込み、系内を攪拌しながら加熱することで、有機溶剤を含有したポリエステル樹脂水性分散体を得る方法(自己乳化工程)。
上述の「転相乳化」とは、ポリエステル樹脂の有機溶剤液に、この溶液に含まれる有機溶剤量を超える量の水を添加して、有機溶剤液の系を、有機溶剤相からO/Wエマルション分散系に変化させることである。
本発明においては、水性分散体を容易に得ることができるから、(a)の製造方法を用いることがより好ましい。
本発明の水性分散体の製造方法は、上記の各乳化工程の後に、さらにポリエステル樹脂分散体から、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去してポリエステル樹脂水性分散体を得る工程(脱溶剤工程)を設けてもよい。系中に有機溶剤が残っている状態では、水性分散体の保存安定性が劣るため、(a)の乳化工程後を用いる場合は、脱溶剤工程を設けた方が好ましい。また、脱溶剤工程後の有機溶剤の含有量は、水性分散体中の1質量%以下となることがより好ましい。
本発明の水性分散体の製造方法においては、適宜、ポリエステル樹脂の未分散物や凝集物をろ過して取り除くためのろ過工程を設けてもよい。例えば、600メッシュのステンレス製フィルター(濾過精度25μm、綾織)を設置し、常圧ろ過、または加圧(空気圧0.2MPa)ろ過をおこなえばよい。
溶解工程では、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液が得られる。ここで、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱して溶解させてもよい。
ポリエステル樹脂を溶解する有機溶剤としては、沸点が180℃以下のものを用いることが好ましく、150℃以下のものがより好ましい。有機溶剤の沸点が180℃を超えると、脱溶剤工程において有機溶剤を完全に除去することが困難になる。そのため、ポリエステル樹脂水性分散体中に有機溶剤が残ってしまい、保存安定性が低下する場合がある。
有機溶剤は、20℃における水への溶解度が5g/L以上であることが好ましい。有機溶剤の水への溶解性が5g/L未満であると、ポリエステル樹脂が良好に分散せず、水性分散体を得ることができない場合がある。
このような有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸エチル、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、2−ブトキシエタノールなどが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、酢酸エチルの沸点は77℃、水への溶解度は約12g/L(20℃)、1−プロパノールの沸点は97℃、水への溶解度は無限大(20℃)、2−プロパノールの沸点は82℃、水への溶解度は無限大(20℃)、アセトンの沸点は56℃、水への溶解度は無限大(20℃)、メチルエチルケトンの沸点は80℃、水への溶解度は約290g/L(20℃)、テトラヒドロフランの沸点は65℃(20℃)、水への溶解度は無限大(20℃)、1,4−ジオキサンの沸点は101℃(20℃)、水への溶解度は無限大(20℃)、シクロヘキサノンの沸点は156℃、水への溶解度は約110g/L(20℃)、2−ブトキシエタノールの沸点は170℃、水への溶解度は無限大(20℃)である。
ポリエステル樹脂を溶解させる有機溶剤の使用量としては、得られる溶液中のポリエステル樹脂の濃度を10〜70質量%の範囲とすることが好ましく、20〜60質量%の範囲とすることがより好ましく、30〜50質量%の範囲とすることが特に好ましい。溶液中のポリエステル樹脂の濃度が70質量%を越える場合には、次の転相乳化工程において、水と混合した場合に粘度の上昇が大きくなる。このような状態から得られた水性分散体は体積平均粒径が大きくなる傾向にあり、保存安定性が劣る場合があるため好ましくない。一方、ポリエステル樹脂の濃度が10質量%未満の場合には、次の転相乳化工程により、ポリエステル樹脂の濃度がさらに低下する場合や、脱溶剤工程の際に多量の有機溶剤を除去しなければならない場合があるため好ましくない。
溶解工程の際に用いる装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(例えばホモミキサー)として知られている装置が挙げられる。
転相乳化工程では、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させポリエステル樹脂分散体を得る。転相乳化は、常圧、減圧、加圧下のいずれの条件でおこなってもよい。
ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる方法としては、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液中に塩基性化合物を添加しておき、これに水性媒体を徐々に投入する方法、または、水性媒体中に塩基性化合物を添加しておき、これをポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に徐々に投入する方法などが挙げられる。
なかでも、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液と塩基性化合物の混合が不均一になることを防止する観点から、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に塩基性化合物を添加しておき、これに水性媒体を徐々に投入して転相乳化をおこなう方法が好ましい。
転相乳化工程に用いる塩基性化合物は、カルボキシル基を中和することができるものであれば特に限定されない。塩基性化合物としては、例えば、アンモニアや、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどの有機アミンなどが挙げられる。
なお、塩基性化合物として、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの金属水酸化物も挙げられるが、このような金属水酸化物を用いると得られる樹脂被膜の耐水性が不足する場合があり好ましくない。
塩基性化合物としては、製造工程において、水性分散体中のポリエステル樹脂が加水分解反応を起こすことを抑制する観点から、3級アミンを用いることがより好ましい。
さらに、ポリエステル樹脂水性分散体から得られる樹脂被膜から、塩基性化合物を揮散させやすいという観点から、塩基性化合物は、沸点が150℃以下のものを用いることがさらにより好ましい。このような塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどが挙げられる。
塩基性化合物は、用いられるポリエステル樹脂の酸価に対して0.5〜30倍当量添加することが好ましく、1〜20倍当量添加することがより好ましい。塩基性化合物の添加量を上述の範囲とすることで、保存安定性が良好な水性分散体が得られるという利点がある。
転相乳化工程の反応温度は、10〜40℃とすることが好ましく、10〜30℃とすることがより好ましく、15〜30℃とすることが特に好ましく、15〜20℃とすることが最も好ましい。反応温度が40℃を超えると、得られる水性分散体の粘度が高くなりすぎて水性分散体が得られないか、得られたとしても保存安定性が劣るものとなる。反応温度が10℃未満であると、転相乳化工程中に内容物の粘度が急激に上昇し、攪拌が困難になり、均一な水性分散体が得られなくなる場合がある。
転相乳化工程における水性媒体の投入速度は、特に制限されないが、ポリエステル樹脂溶液と塩基性化合物との合計1000質量部に対して、25〜100質量部/分とすることが好ましい。投入速度が100質量部/分を超えて速いと、ポリエステル樹脂の塊が形成されてしまう。ここで、この塊は水性媒体に分散できないため、系内に不均一な部分が発生し、水性分散体の体積平均粒子径が本発明の範囲を外れる場合がある。一方、投入速度が25質量部/分より遅いと、必要量の水性媒体を添加し終えるのに多くの時間を費やしてしまう場合があるため、経済的に不利である。
転相乳化後のポリエステル樹脂分散体における固形分濃度としては、5〜60質量%が好ましい。固形分濃度をこの範囲とすることで、続く脱溶剤工程におけるポリエステル樹脂の凝集を抑制することができる。
脱溶剤工程では、ポリエステル樹脂分散体を加熱し、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去してポリエステル樹脂水性分散体を得る。脱溶剤は、常圧、減圧下いずれでおこなってもよい。
転相乳化工程および脱溶剤工程に用いる装置としては、特に限定されるものではなく、液体を投入できる槽を備え、既述の範囲内の温度に制御が可能であり、適度な攪拌ができるものであればよい。
次に、本発明のポリエステル樹脂水性分散体を用いて形成される、本発明の樹脂被膜について説明する。本発明における樹脂被膜は、例えば、グラビアコート法、マイヤーバーコート法、ディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法などにより形成される。これらの方法により、各種基材の表面に対して、ポリエステル樹脂水性分散体を均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥および焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材の表面に密着させて形成することができる。
このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや、赤外線ヒータなどを使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である、基材の種類などにより適宜選択されるものである。なかでも、経済性を考慮すると、加熱温度としては、通常60〜250℃であることが好ましく、70〜230℃であることがより好ましく、80〜200℃であることが最も好ましい。加熱時間としては、通常1秒〜30分間であることが好ましく、5秒〜20分がより好ましく、10秒〜10分が最も好ましい。
本発明の樹脂被膜の厚さは、その目的や用途によって適宜選択されるものであるが、通常0.01〜40μmであることが好ましく、0.1〜30μmがより好ましく、0.5〜20μmが最も好ましい。
本発明のポリエステル樹脂被膜は、密着性、加工性、耐水性、接着性および長期透明性に優れるため、各種用途において好適に使用することができる。例えば、ディスプレイ用積層フィルムのアンカーコート剤や接着剤として非常に有用であるといえる。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
本発明にて用いられた評価方法、測定方法は下記の通りである。
(1)ポリエステル樹脂の構成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製、「ECA500 NMR」)を用いてH−NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から樹脂組成を求めた。条件としては、溶媒として重水素化トリフルオロ酢酸を用い、分解能を500MHz、温度を25℃とした。また、H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解をおこなった後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析をおこなった。
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを、水と1,4−ジオキサンの混合溶媒[(水)/(1,4−ジオキサン)=1/9、体積比]50mlに室温で溶解して、溶解液とした。この溶解液を、クレゾールレッドを指示薬として0.1Nの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定し、中和に消費された共重合ポリエステル樹脂1gあたりの水酸化カリウムのmg数(mgKOH/g)を酸価とした。
(3)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、「Diamond DSC」、検出範囲:−50℃〜200℃)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定をおこなった。そして、得られた昇温曲線中の、低温側ベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大となるような点で引いた接線との交点における温度を求め、ガラス転移温度とした。
(4)ポリエステル樹脂の融点
20℃、60RH%の状態で一週間静置したポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、「Diamond DSC」、検出範囲:−50℃〜200℃)を用いて、窒素気流中、−50℃から昇温速度20℃/分で、280℃まで昇温し、昇温時の融解温度のピークをポリエステル樹脂の融点とした。なお、融解温度のピークが発現しなかったものは、融点「なし」とした。
(5)ポリエステル樹脂の数平均分子量、重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量を測定した。
[送液ユニット]:島津製作所社製LC−10ADvp
[紫外−可視分光光度計]:島津製作所社製SPD−6AV、検出波長:254nm
[カラム]:Shodex社製KF−803 1本、Shodex社製KF−804 2本を直列に接続して使用
[溶媒]:テトラヒドロフラン
[測定温度]:40℃
(6)ポリエステル樹脂水性分散体の固形分濃度
ポリエステル樹脂水性分散体を約1g秤量(Xgとする。)し、これを150℃で2時間乾燥した後の残存物の質量を秤量(Ygとする。)した。そして、以下の式(イ)により固形分濃度を求めた。
固形分濃度(質量%)=(Y/X)×100 (イ)
(7)ポリエステル樹脂水性分散体のpH
pHメーター(堀場製作所社製、「F−21」)を用い、pH7およびpH9の標準緩衝液(ナカライテスク社製)により校正した後、測定温度25℃でポリエステル樹脂水性分散体のpHを測定した。
(8)ポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒径、数平均粒径
ポリエステル樹脂水性分散体中のポリエステル樹脂の濃度が0.1質量%になるように水で希釈し、レーザー回折式粒径測定装置[日機装社製、「MICROTRAC UPA」(モデル9340−UPA)]を用い、体積平均粒径、および数平均粒径を測定した。なお、ポリエステル樹脂の屈折率は1.57、ポリエステル樹脂の密度は1.21g/cmに設定した。
(9)ポリエステル樹脂水性分散体の保存安定性
水性分散体30gを50mLのガラス製サンプル瓶に密封し、25℃で60日保存した。保存後、サンプル瓶から上澄み液を採取し、固形分濃度を測定し、以下の式(ロ)により、沈殿したポリエステル樹脂の割合を計算し、以下の基準で評価した。
沈殿したポリエステル樹脂の割合(質量%)={保存前の固形分濃度(質量%)−保存後の固形分濃度(質量%)}/{保存前の固形分濃度(質量%)} (ロ)
◎:固形分濃度が0.1質量%未満である。
○:固形分濃度が0.1質量%以上0.5質量%未満である。
△:固形分濃度が0.5質量%以上1.0質量%未満である。
×:固形分濃度が1.0質量%以上である。
(10)樹脂被膜の造膜性
水性分散体を、二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(ユニチカ社製、厚さ38μm)のコロナ処理面に、卓上型コーティング装置(安田精機社製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした。その後、120℃に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥させることにより、膜厚が1μmの樹脂被膜を形成した。樹脂被膜を目視にて観察し、以下の基準で評価し、造膜性を評価した。なお、被膜の膜厚は、厚み計(ユニオンツール社製、「MICROFINE」)を用い、フィルムの厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いてフィルム上に樹脂被膜を形成した後、この樹脂被膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を求めることにより算出した。
○:クラック、ブツおよび白化のいずれもが見られない。
×:クラック、ブツおよび白化のいずれかが見られる。
(11)樹脂被膜の密着性
前記(10)と同様にして、PETフィルム上に2μmの樹脂被膜を形成した。その後、樹脂被膜の表面に、JIS Z1522に規定された粘着テープ(幅18mm)を、端部を残して貼りつけ、その上から消しゴムでこすって両者を十分に接着させた。次いで、粘着テープの端部をPETフィルムに対して直角としてから、瞬間的に剥離させた。この剥離させた粘着テープ面を、表面赤外分光装置(パーキンエルマー社製、「SYSTEM2000」、Ge60°50×20×2mmプリズムを使用)を用い、粘着テープ面に、被膜を形成していたポリエステル樹脂が付着しているか否かを分析し、以下の基準で評価した。
○:粘着テープ面に樹脂に由来するピークが認められない。
×:粘着テープ面に樹脂に由来するピークが認められる。
(12)樹脂被膜の初期透明性
前記(10)と同様にして、PETフィルム上に膜厚が1μmの樹脂被膜を形成した後、50mm×50mmのサイズで切り出して試験片とした。この試験片に対して、濁度計(日本電色工業社製、「NDH2000」)を用い、JIS K7105にしたがった方法で拡散透過率(T)、および、全光線透過率(T)を測定した。下記式(ハ)によりHz(ヘイズ)を算出した。なお、基材のPETフィルムのみのHzは4.2(%)であった。
Hz(%)=T/T×100 (ハ)
(13)樹脂被膜の長期透明性
(12)と同様に作製した試験片を、20℃、60RH%の環境下に90日静置した。90日静置後、(12)と同様の方法でHzを算出した。
(14)樹脂被膜の耐水性
前記(10)と同様にして、PETフィルム上に膜厚が1μmの樹脂被膜を形成してサンプルとした。このサンプルを25℃の蒸留水に浸漬させ、24時間後に静かに引き上げた。次いで、風乾させた後の樹脂被膜の外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:樹脂被膜において外観変化が全くなかった。
×:表面状態が変化(表面が白く曇る、樹脂被膜が溶解、膨潤などの変化)した。
(15)樹脂被膜の接着性
前記(10)と同様にして、PETフィルム上に膜厚が2μmの樹脂被膜を形成した。このような樹脂被膜が形成されたPETフィルムを2枚準備し、樹脂被膜同士が接触するように重ねて、ヒートプレス機(シール圧0.2MPaで10秒間)にて80℃でプレスしてサンプルとした。このサンプルを25mm幅で切り出し、1日静置後、引張試験機(インテスコ社製、「インテスコ精密万能材料試験機2020型」)を用い、引張速度50mm/分、引張角度180度での条件で、樹脂被膜の剥離強度を測定した。本発明においては、剥離強度3.5N/25mm以上であれば有機溶剤溶解型の接着剤に匹敵する程度の接着性を有するものであると判断した。なお、剥離強度は5.0N/25mm以上が好ましく、7.0N/25mm以上がさらに好ましい。
実施例、および比較例で用いたポリエステル樹脂は、以下のようにして調製した。
[ポリエステル樹脂A]
テレフタル酸(TPA)1163g、イソフタル酸(IPA)1412g、セバシン酸(SEA)1920g、ネオペンチルグリコール(NPG)937g、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)1938gからなる混合物をオートクレーブ中で、235℃で6時間加熱してエステル化反応をおこなった。仕込時の樹脂組成は、TPA/IPA/SEA/NPG/1,4−BD=28/34/38/36/86(モル比)であった。
次いで、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4g(酸成分1モルあたり4.0×10−4モル)を添加し、系の温度を245℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし系の温度を下げた。そして、235℃になったところでトリメリット酸74g(酸成分1モルに対して0.014モル)を添加し、235℃で2時間撹拌して、解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、ポリエステル樹脂Aを得た。ポリエステル樹脂Aの仕込組成を表1に示す。
[ポリエステル樹脂B〜O]
原料モノマーの種類、解重合剤の種類およびそれらの仕込組成を、表1のように変更した以外は、ポリエステル樹脂Aと同様にして、ポリエステル樹脂B〜Oを得た。
Figure 0005881499
得られたポリエステル樹脂A〜Oについて、最終の樹脂組成および特性値を表2に示す。
Figure 0005881499
なお、表1および表2中における略語は以下のものを示す。
TPA:テレフタル酸[芳香族多塩基酸(a1)]
IPA:イソフタル酸[芳香族多塩基酸(a1)]
ADA:アジピン酸[脂肪族多塩基酸(a2)]
SEA:セバシン酸[脂肪族多塩基酸(a2)]
1,4−CHDA:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸[脂肪族多塩基酸(a2)]
1,4−BD:1,4−ブタンジオール[炭素数が3〜6である側鎖を有しない直鎖脂肪族グリコール(b1)]
NPG:ネオペンチルグリコール[炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)]
DEG:ジエチレングリコール[炭素数が3〜6である側鎖を有しない直鎖エーテル結合含有グリコール(b1)]
MPD:2−メチル−1,3−プロパンジオール(炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール)
EG:エチレングリコール
TMA:トリメリット酸(3官能以上の芳香族カルボン酸)
TMAA:無水トリメリット酸(3官能以上の芳香族カルボン酸、解重合反応の際に添加)
[実施例1]
2Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂Aを400gとメチルエチルケトンを600g投入し、系内温度が50℃になるように加熱攪拌し、ポリエステル樹脂をメチルエチルケトンに完全に溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を得た。次いで、ガラス容器(内容量:2L)に、前記溶液を500g仕込み、系内温度を17℃に保ちながら攪拌し、塩基性化合物としてトリエチルアミン64.9g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量)を添加した。
次いで、40g/分の速度で17℃の蒸留水500gを添加し、その後、攪拌を30分間続けた。蒸留水を全量添加する間の系内温度は、17±1℃であった。そして、得られたポリエステル樹脂800gを丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ冷却器を設置したフラスコをオイルバスで加熱し、常圧で水性媒体を315g留去した。その後、室温まで冷却し、さらに攪拌を続けながら、28質量%アンモニア水1.0gを添加した。そして、固形分濃度が30質量%となるように蒸留水を加えて、フラスコ内の液状物を600メッシュのステンレスフィルターでろ過し、実施例1のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[実施例2]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Bを用い、および、仕込量として、トリエチルアミンを43.3g(ポリエステル樹脂の酸価に対して12倍当量のアミンに相当)、蒸留水を522gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[実施例3]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Cを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを56.3g(ポリエステル樹脂の酸価に対して12倍当量のアミンに相当)、蒸留水を509gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[実施例4]
実施例1で得られたポリエステル樹脂水性分散体100gを、225mlのマヨネーズ瓶に取り、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら、オキサゾリン系含有ポリマーを含んだ水溶液(日本触媒社製、「エポクロス WS−700」、不揮発分25質量%)を10g、添加した。さらに常温で30分攪拌を続けて、実施例4のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[実施例5]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Kを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを75.7g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量のアミンに相当)、蒸留水を489gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[実施例6]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Lを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを70.3g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量のアミンに相当)、蒸留水を495gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[実施例7]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Mを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを51.9g(ポリエステル樹脂の酸価に対して12倍当量のアミンに相当)、蒸留水を513gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[実施例8]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Oを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを70.3g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量のアミンに相当)、蒸留水を495gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例8のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[実施例9]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Fを用いた以外は、実施例1同様の方法で、実施例9のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[比較例1]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Eを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを37.9g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量のアミンに相当)、蒸留水を527gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[比較例2]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Gを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを54.1g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量のアミンに相当)、蒸留水を511gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[比較例3]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Hを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを64.9g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量のアミンに相当)、蒸留水を500gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[比較例4]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Iを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを54.1g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量のアミンに相当)、蒸留水を511gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[比較例5]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Jを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを70.3g(ポリエステル樹脂の酸価に対して15倍当量のアミンに相当)、蒸留水を495gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[比較例6]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Nを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを56.3g(ポリエステル樹脂の酸価に対して12倍当量のアミンに相当)、蒸留水を509gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例6のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[比較例7]
ポリエステル樹脂Aに代えて、ポリエステル樹脂Dを用い、および、仕込量としてトリエチルアミンを34.6g(ポリエステル樹脂の酸価に対して12倍当量のアミンに相当)、蒸留水を531gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例7のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
実施例1〜9および比較例1〜7にて得られたポリエステル樹脂水性分散体の特性値、およびこれらの水性分散体を用いて得られるポリエステル樹脂被膜の特性評価結果を、表3および表4に示す。
Figure 0005881499
Figure 0005881499
なお、表3における※1は、接着性に非常に優れていたため、接着性評価の際に基材であるPETフィルムが破損したことを示す。
表3から明らかなように、実施例1〜9にて得られた本発明のポリエステル樹脂水性分散体は保存安定性に優れているものであった。さらに、実施例1〜8にて得られた水性分散体から形成された樹脂被膜は密着性、加工性、耐水性、接着性に加えて、初期透明性および長期透明性に優れるものであった。
実施例4においては、オキサゾリン系含有ポリマーが含有されたポリエステル樹脂水性分散体が得られた。ここで、該水性分散体から得られる樹脂被膜は、実施例1よりもさらに接着性に優れていた。
実施例9は、ポリエステル樹脂を構成する酸成分において、3官能以上の芳香族多塩基酸の割合が2モル%を超えるものであったため、600メッシュのステンレスフィルターでろ過した際に、フィルター上の残渣物が多くなり、ポリエステル樹脂水性分散体の固形分濃度や、保存安定性にやや劣るものとなったが、十分に実用に耐えうるものであった。
比較例1、2および6にて得られたポリエステル樹脂水性分散体は、用いられたポリエステル樹脂を構成するアルコール成分において、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)の割合が80モル%を超えるものであり、また、炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)の割合が20モル%未満であった。そのため、該水性分散体から得られた樹脂被膜は、長期透明性に劣るものとなった。
比較例3にて得られたポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂を構成する全グリコール成分において、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)の割合が50モル%未満であり、また、炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)の割合が50モル%を超えるものであった。そのため、得られた樹脂被膜は接着性および密着性に劣るものとなった。
比較例4にて得られたポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂を構成する酸成分において、芳香族多塩基酸(a1)の割合が65モル%を超えるものであり、炭素数が4〜12である脂肪族多塩基酸(a2)の割合が35モル%未満であった。そのため、得られた樹脂被膜は接着性に劣るものとなった。
比較例5にて得られたポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂を構成する酸成分において、芳香族多塩基酸(a1)の割合が50モル%未満であり、炭素数が4〜12である脂肪族多塩基酸(a2)の割合が50モル%を超えるものであった。そのため、得られた樹脂被膜は耐水性に劣るものとなった。
比較例7にて得られたポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂を構成する全アルコール成分において、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)、および炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)以外のアルコール成分が含有されていた。そのため、得られた樹脂被膜は、接着性に劣るものとなった。

Claims (7)

  1. ポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるポリエステル樹脂水性分散体であって、前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分およびアルコール成分が、下記(i)および(ii)を同時に満たすことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
    (i)酸成分が、芳香族多塩基酸(a1)を50〜65モル%、炭素数が4〜12である脂肪族多塩基酸(a2)を35〜50モル%を含有する。
    (ii)アルコール成分が、炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)50〜80モル%、および炭素数が3〜6である側鎖を有するグリコール(b2)20〜50モル%のみからなり、前記炭素数が3〜6である側鎖を有しないグリコール(b1)が直鎖脂肪族グリコールおよび/または直鎖エーテル結合含有グリコールである。
  2. 上記(i)における酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸を含有し、テレフタル酸およびイソフタル酸の比率が、モル比で、(テレフタル酸)/(イソフタル酸)=49/51〜25/75であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  3. 上記(i)における酸成分が、3官能以上の芳香族多塩基酸を0.01モル%以上2モル%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  4. 上記(i)における酸成分が、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸を含有しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  5. ポリエステル樹脂が、その酸価が4〜10mgKOH/g、ガラス転移温度が30℃以下および数平均分子量が13,000〜30,000であり、かつ融点を有しないものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  6. 水性分散体中のポリエステル樹脂の体積平均粒子径が10nm以上400nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂水性分散体から得られるポリエステル樹脂被膜。
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