JP6120589B2 - 水性分散体およびこれを用いてなる水性コーティング剤組成物、ならびに被膜 - Google Patents

水性分散体およびこれを用いてなる水性コーティング剤組成物、ならびに被膜 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエステル樹脂と、ビニル系ポリマーからなる水性分散体に関する。
従来から、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤のバインダー成分としてポリエステル樹脂が用いられている。このようなポリエステル樹脂からなる被膜は接着性、加工性、耐熱性に優れ、その特性を生かして、家電製品、家具製品、建築材料等の各種用途に広く使用されている。
特に、環境保護、消防法による危険物規制、職場環境の改善等の理由で、有機溶剤の使用が抑制される傾向にあるため、前記用途に使用できるポリエステル樹脂を、水性媒体に微分散させた、ポリエステル樹脂水性分散体の開発も進んでいる(特許文献1)。
また、アクリル樹脂に代表されるビニル系ポリマーについても、密着性、耐候性、耐衝撃性に優れることが知られており、例えば、特許文献2では、アクリル樹脂を用いて高い密着性を有する水性接着剤が提案されている。
一方、ポリエステル樹脂とビニル系ポリマーを複合化する手法として、特許文献3には、ポリエステル樹脂をシードとし、そこにビニルモノマーを重合させることによって架橋樹脂粒子となることが知られている。
国際公開第2004/037924号パンフレット 特開平08−188605号公報 特開平06−263883号公報
特許文献1、2に記載のような水性分散体は、ポリエステル、アクリル、さらにはポリオレフィン等の種々の材料への優れた密着性は得られていなかった。
また、これら水性分散体は、通常冷暗所で保管するものであり、例えば、夏場の暑い環境下で長期にわたって保管される場合、分散する固形成分が沈殿したり、沈殿は起こさないものの塗工時の造膜性が低下する等の問題があった。
また、特許文献3記載のような樹脂粒子は、高度に架橋したものであり、基材に塗布する際に、造膜性に劣った。
本発明は、特に高温等の厳しい条件においても分散安定性が損なわれず、塗工時造膜性の低下を抑制し、種々の基材への密着性、接着性等に優れた水性分散体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)ポリエステル樹脂(A)およびビニル系ポリマー(B)を(A)/(B)=95/585/15の質量比率で含有する複合樹脂を水性媒体に分散した水性分散体であって、ポリエステル樹脂(A)は、構成する酸成分としてテレフタル酸を20〜45モル%、アルコール成分として1,4−ブタンジオールを70〜100モル%含有し、数平均分子量が5000〜50000、酸価が3mgKOH/g以上、ガラス転移温度が30℃以下であることを特徴とする水性分散体。
(2)ポリエステル樹脂(A)が結晶性を有し、融点が100℃以下であることを特徴とする(1)の水性分散体
(3)ビニル系ポリマー(B)がアクリル樹脂であることを特徴とする(1)または(2)の水性分散体。
)ポリエステル樹脂(A)の微粒子の分散した水性媒体中で、ビニル系モノマーを乳化重合することを特徴とする(1)〜(いずれかの水性分散体の製造方法。
)(1)〜(いずれかの水性分散体を用いてなる水性コーティング剤組成物。
)()の水性コーティング剤組成物より得られる被膜。
本発明によれば、特に高温等の厳しい条件においても分散安定性が損なわれず、塗工時造膜性の低下を抑制し、種々の基材への密着性、接着性等に優れた水性分散体が得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本 発明の水性分散体は、ポリエステル樹脂(A)と、ビニル系ポリマー(B)を含有する複合樹脂を水性媒体に分散したものである。
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分を主成分とするものである。
ポリエステル樹脂(A)を構成する多塩基酸成分としては、特に制限はされず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、3−tert−ブチルイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸およびその無水物、テトラヒドロフタル酸およびその無水物等の脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の3官能以上のカルボン酸が挙げられる。これらの多塩基酸成分は単独使用あるいは2種以上の併用が可能である。ただし、本発明においては、後述する複合粒子を造る工程において、ラジカル重合開始剤を用いる場合があり、その時ポリエステル樹脂(A)の多塩基酸成分として不飽和多塩基酸を含有していると、粒子が架橋構造を取り、結果として水性分散体の安定性を損なう場合があるので、不飽和多塩基酸を含有しない方が好ましい。
前記した多塩基酸成分の中でも、テレフタル酸を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂(A)の多塩基酸成分中のテレフタル酸含有割合は、15〜70モル%含有することが好ましく、20〜60モル%含有することがより好ましく、20〜45モル%含有することがさらに好ましい。テレフタル酸の含有割合が15モル%未満である場合は、得られる水性分散体の分散安定性が乏しくなる傾向があり、70モル%を超える場合は、得られる被膜の接着性が乏しくなる傾向があるだけでなく、理由はわからないが、水性分散体を高温保管後に用いると、得られる被膜はやや造膜性が劣る場合がある。
多塩基酸として、3官能以上の多塩基酸を用いる場合、ポリエステル樹脂(A)の多塩基酸成分中、5モル%以下であることが好ましく、4モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましい。
多塩基酸としては、スルホン酸基を有する多塩基酸を使用することができる。このような多塩基酸としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SIPA−Na)、5−ナトリウムスルホテレフタル酸(STPA−Na)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM−Na)、5−ナトリウムスルホテレフタル酸ジメチル(STPM−Na)、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM−K)、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM−Li)等が挙げられる。このような多塩基酸を過剰に用いることは得られる被膜の耐水性を損ねるものとなる。本発明においては、ポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分中、スルホン酸基を有する多塩基酸は1モル%未満であることが好ましく、0.5モル%未満であることがより好ましく、0モル%であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂(A)を構成する多価アルコール成分としては、特に制限はされず、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロブタンジメタノール等の脂環族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル結合含有グリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上のアルコール、等が挙げられる。さらに、2,2−ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のアルキレンオキシド付加体やビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のアルキレンオキシド付加体等も使用することができる。これらの多価アルコール成分は単独使用あるいは2種以上の併用が可能である。
前記した多価アルコール成分の中でも、1,4−ブタンジオールを用いることが好ましく、ポリエステル樹脂(A)の多価アルコール成分中の1,4−ブタンジオール含有割合は、70〜100モル%含有することが好ましく、80〜100モル%含有することがより好ましく、90〜100モル%含有することがさらにより好ましい。1,4−ブタンジオールの含有量が70モル%未満である場合は、得られる被膜の接着性や耐水性が乏しくなる傾向があるだけでなく、理由はわからないが、水性分散体を高温保管後に用いると、得られる被膜はやや造膜性が劣る場合がある。
多価アルコールとして、3官能以上の多価アルコールを用いる場合、ポリエステル樹脂(A)の多価アルコール成分中、5モル%以下であることが好ましく、4モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂(A)には、本発明の水性分散体の特性を損なわない範囲で、モノカルボン酸、モノアルコールを含有することもできるが、このようなモノカルボン酸、モノアルコールを過剰に用いることは、後述するポリエステル樹脂(A)の製造時に、分子鎖の延長を阻害し、重縮合が進まずに結果として必要な分子量が得られず、密着性が不足する。本発明においては、モノカルボン酸、モノアルコールはポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分またはアルコール成分のうち、各々1モル%未満であることが好ましく、0.1モル%未満であることがより好ましく、0モル%であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の酸価は、3mgKOH/g以上である必要があり、3〜30mgKOH/gであることが好ましく、4〜20mgKOH/gであることがより好ましく、5〜15mgKOH/gであることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂(A)の酸価が3mgKOH/g未満である場合、水性分散体を得ることが困難になる。あるいは、水性分散体が得られたとしても非常に、分散安定性が不安定なものとなる。
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、5000〜50000である必要があり、7000〜30000であることが好ましく、8000〜25000であることがより好ましく、9000〜20000であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が5000未満である場合は、得られる被膜の密着性が乏しくなり、50000を超える場合は、ポリエステル樹脂(A)を製造することが困難となる。
ポリエステル樹脂(A)の分子量分布における分散度(以下、分散度という)は、2〜10であることが好ましく、2〜9がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。ポリエステル樹脂(A)の分散度2未満であるポリエステル樹脂(A)を得ることは困難であり、分散度が10を超えると水性分散体の分散安定性が乏しくなる。なお、分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことを指す。
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、30℃以下である必要があり、−50〜30℃が好ましく、−50〜0℃がより好ましく、−35〜0℃が最も好ましい。ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が30℃を超えると、得られる被膜の密着性や接着性が劣るものとなる。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)は、結晶性を有するものであることが好ましい。本発明において、結晶性とは、DSC(示差走査熱量計)を用いて、JIS K 7121に準拠して測定した場合において、昇温時に結晶融点(以下、融点という)を有し、融解熱量が0.1J/g以上であることを示す。融点を有する場合には、100℃以下であることが好ましく、20〜80℃であることがより好ましく、30〜60℃であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、結晶性を有することで、得られる被膜の耐水性が向上する傾向がある。
次に、ポリエステル樹脂(A)の製造方法について説明する。
ポリエステル樹脂(A)は、前記のモノマーを組み合わせて、公知の方法で製造することができる。前記の酸成分の1種類以上と、アルコール成分の1種類以上とを、公知の方法により、重縮合反応に付する方法が挙げられる。例えば、全モノマー成分および/またはその低重合体を不活性雰囲気下で反応させてエステル化反応を行い、引き続いて重縮合触媒の存在下、減圧下で、所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めて、ポリエステル樹脂(A)を得る方法等を挙げることができる。
エステル化反応における反応温度は180〜260℃とすることが好ましく、反応時間は2.5〜10時間とすることが好ましく、4時間〜6時間とすることがより好ましい。
重縮合反応における反応温度は220〜280℃が好ましく、減圧度は130Pa以下であることが好ましい。減圧度が低いと、重縮合時間が長くなる場合がある。大気圧から130Pa以下に達するまで、60〜180分かけて徐々に減圧することが好ましい。
重縮合触媒としては特に限定されないが、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトラ−n−ブチルチタネート、n−ブチルヒドロキシオキソスズ等の公知の化合物を用いることができる。触媒の使用量としては、酸成分1モルに対し、0.1〜20×10−4モルとすることが好ましい。
上記重縮合反応に引き続き、酸成分を添加し、不活性雰囲気下、解重合反応を行うことができる。解重合することで、ポリエステル樹脂(A)に所望の酸価を付与することができる。中でも、3官能以上のカルボン酸を解重合剤と用いることは、解重合を行う際に、ポリエステル樹脂(A)の分子量低下を抑制しながら、所望の酸価を付与することができるのでより好ましい。
解重合反応における反応温度は160〜280℃が好ましく、160〜220℃がより好ましい。反応時間は、0.5〜5時間とすることが好ましい。
本発明で用いるビニル系ポリマー(B)は、ビニル系モノマー成分を重合することで得られるポリマーであり、ポリエステル樹脂(A)と複合化して複合樹脂とすることにより、得られる水性分散体の、特に、高温等の厳しい条件における分散安定性を高めたり、得られる被膜の耐ブロッキング性を付与することができる。前記ビニル系モノマー成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、カルボキシル基含有ビニル系モノマー、ヒドロキシル基含有ビニル系モノマー、脂肪族ビニル系炭化水素、芳香族ビニル系炭化水素、ビニルエステル、スルホン酸基含有ビニル系モノマー、リン酸基含有ビニル系モノマー、窒素含有ビニル系モノマー、ハロゲン含有ビニル系モノマーなどが挙げられる。
カルボキシル基含有ビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等、それらのモノアルキルエステルなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタアクリル酸を表しており、以下同様の記載法を用いる。ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーとしては、ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコールなどが挙げられる。脂肪族ビニル系炭化水素としては、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどが挙げられる。芳香族ビニル系炭化水素としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。スルホン酸基含有ビニル系モノマーとしては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸や、それらのナトリウム塩などが挙げられる。リン酸基含有ビニル系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸などが挙げられる。窒素含有ビニル系モノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアミン、4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、シアノアクリレートなどが挙げられる。ハロゲン含有ビニル系モノマーとしては、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロプレンなどが挙げられる。これらのビニル系モノマー成分は、単独使用あるいは2種以上の併用が可能である。
本発明におけるビニル系ポリマー(B)は、耐水性などの観点から、アクリル樹脂であることが好ましい。本発明におけるアクリル樹脂とは、ビニル系モノマー成分として、(メタ)アクリル酸、またはその誘導体を少なくとも用いて得られるビニル系ポリマーであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸、またはその誘導体のみから得られるビニル系ポリマーである。
本発明で用いる複合樹脂は、ポリエステル樹脂(A)とビニル系ポリマー(B)を複合化して得られるものである。ポリエステル樹脂(A)とビニル系ポリマー(B)の含有比率は、(A)/(B)=99/1〜80/20(質量比)である必要があり、97/3〜83/17であることが好ましく、95/5〜85/15であることがより好ましく、95/5〜90/10であることがさらに好ましい。複合樹脂におけるポリエステル樹脂(A)の含有比率が99質量%よりも大きくなると、高温時の安定性が劣るものとなり、得られる被膜の耐ブロッキング性が劣るものとなる。複合樹脂におけるポリエステル樹脂(A)の含有比率が80質量%未満であると、得られる被膜の密着性が劣るものとなる。
本発明の水性分散体を得る方法としては、特に限定されないが、あらかじめポリエステル樹脂(A)を水性媒体に分散させて、ポリエステル樹脂(A)の微粒子を有する水性分散体を形成し、さらにそこへ、(1)ビニル系モノマー成分を添加して、後から、乳化剤、重合開始剤をそれぞれ個別に添加して乳化重合する方法、(2)ビニル系モノマー成分と乳化剤の一部および/または全部の混合物を添加して、後から、重合開始剤、残りのビニル系モノマー成分および/または残りの乳化剤を添加しながら乳化重合する方法などが挙げられる。
本発明の水性分散体を得る過程において乳化剤を用いることもできる。乳化剤を用いる場合は、その種類は特に制限されないが、耐水性を向上する観点から、反応性乳化剤を用いることが好ましい。反応性乳化剤としては、エチレン性不飽和二重結合を有する乳化剤であり、ビニル系モノマーと同時に、ビニル系ポリマー(B)の骨格に共重合することができる。反応性乳化剤としては、例えば、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(商品名:三洋化成社製、エレミノールJS−20)などが挙げられる。なお、乳化剤は得られる被膜の耐水性を損ねることがあるため、極力用いないことが好ましい。
本発明の水性分散体を得る過程において重合開始剤を用いることもできる。重合開始剤を用いる場合は、その種類は特に制限されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、p−メンタンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジスオキシベンゾイル、フェニルアセトアルデヒドなどが挙げられる。
本発明の水性分散体は、ポリエステル樹脂(A)と、ビニル系ポリマー(B)の複合樹脂が水性媒体に分散したものである。(A)と(B)とをこのような複合樹脂とすることで、本発明の水性分散体の分散安定性、特に高温保管後の分散安定性、さらには造膜性に優れたものとすることができる。これに対し、例えば、ポリエステル樹脂(A)水性分散体と、ビニル系ポリマー(B)水性分散体を単純に混合するだけでは、本願発明の水性分散体が有するような分散安定性、特に高温保管後の分散安定性および造膜性を有するものは得られない。
ポリエステル樹脂(A)分散体の製造方法は、特に限定されない。一例としては、(1)ポリエステル樹脂(A)を有機溶剤に溶解させる工程(溶解工程)と、ポリエステル樹脂(A)が溶解したポリエステル樹脂(A)溶液を塩基性化合物とともに水に分散させる工程(転相乳化工程)を含む転相乳化法、(2)ポリエステル樹脂(A)、塩基性化合物、有機溶剤、水を一括で仕込み、系内を攪拌しながら加熱することで、ポリエステル樹脂(A)分散体を得る自己乳化法等が挙げられる。転相乳化法の溶解工程では、必要に応じて加熱を行うこともできる。
また、ポリエステル樹脂(A)の分散方法としては、界面活性剤や高酸価ワックスを乳化剤として用い、強制乳化する方法なども挙げられるが、不揮発性乳化剤を使用しないで、前記(1)または(2)の方法を用いて水性分散化する方が、得られる被膜の耐水性が向上するため好ましい。
ポリエステル樹脂(A)分散体を得た後、ポリエステル樹脂(A)分散体中に含有する有機溶剤および/または塩基性化合物を除去する工程(脱溶剤工程)を経ることで、ポリエステル樹脂(A)分散体の分散安定性を向上させることができる。有機溶剤および/または塩基性化合物の具体的な除去手段としては、常圧下または減圧下で水性分散体から有機溶剤および水の蒸発留去と水の添加を繰り返すことによって、有機溶剤および/または塩基性化合物を容易に除去可能である。脱溶剤工程を設ける場合には、脱溶剤工程後の有機溶剤含有量は水性分散体の1質量%未満となることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)分散体の製造において、適宜、未分散物や凝集物をろ過して取り除くためのろ過工程を設けてもよい。ろ過工程を設ける場合には、たとえば、600メッシュのステンレス製フィルター(濾過精度25μm、綾織)を設置し、常圧ろ過、または、加圧(空気圧0.2MPa)ろ過を行えばよい。
ポリエステル樹脂(A)を溶解する有機溶剤としては、沸点が180℃以下のものを用いることが好ましく、150℃以下のものがより好ましい。有機溶剤の沸点が180℃を超えると、脱溶剤工程において有機溶剤を完全に除去することが困難になり、ポリエステル樹脂(A)分散体中に有機溶剤が残るため、ポリエステル樹脂(A)分散体の安定性が低下する、もしくは、水性分散体から得る被膜において、十分に有機溶剤を揮散させることが困難となる場合がある。
有機溶剤は、水との共沸点が60℃〜150℃であるものが好ましい。水との共沸点が150℃を超える場合、脱溶剤工程において有機溶剤を完全に除去することが困難になり、ポリエステル樹脂(A)分散体中に有機溶剤が残るため、ポリエステル樹脂(A)分散体の安定性が低下する、もしくは、水性分散体から得る被膜において、十分に有機溶剤を揮散させることが困難となる場合がある。水との共沸点が60℃未満である場合、共沸物の揮散と水の揮散との間に時間差が生じ、得られる被膜の造膜性が劣る場合がある。
さらに、有機溶剤は、20℃における水への溶解度が5g/L以上であることがより好ましい。有機溶剤の水への溶解性が5g/L未満であると、ポリエステル樹脂(A)分散体は得ることができない場合がある。
上記のような特性を有する有機溶剤としては、酢酸エチル(溶解性:約12g/L、沸点:77.1℃、共沸点:70.4℃)、n−プロパノール(溶解性:無限大、沸点:97.2℃、共沸点:87.7℃)、イソプロパノール(溶解性:無限大、沸点:82.4℃、共沸点:80.2℃)、メチルエチルケトン(溶解性:最小約290g/L、沸点:79.6℃、共沸点:73.4℃)、テトラヒドロフラン(溶解性:無限大、沸点:66.0℃、共沸点:64.0℃)、1,4−ジオキサン(溶解性:無限大、沸点:101℃、共沸点:87.8℃)、シクロヘキサノン(溶解性:約110g/L、沸点:156℃、共沸点:95.0℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(溶解性:無限大、沸点:136℃、水との共沸点:99.4℃)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステル樹脂(A)を有機溶剤に溶解して得られる、ポリエステル樹脂溶液(A)の固形分濃度は、10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。ポリエステル樹脂(A)溶液中のポリエステル樹脂(A)の固形分濃度が70質量%を超える場合には、転相乳化工程において、水と混合した場合に粘度の上昇が大きくなり、このような状態から得られた水性分散体は体積平均粒径が大きくなる傾向にあり、結果として水性分散体の安定性が劣る場合があり好ましくない。また、ポリエステル樹脂(A)の固形分濃度が10質量%未満の場合には、脱溶剤工程の際に多量の有機溶剤を除去することになるため好ましくない。
溶解工程の際に用いる装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(例えばホモミキサー)として知られている装置が挙げられる。
転相乳化工程では、前記ポリエステル樹脂(A)溶液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させて水性分散体を得る。転相乳化は、常圧、減圧、加圧下のいずれの条件で行ってもよい。
ポリエステル樹脂(A)溶液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる方法としては、ポリエステル樹脂(A)溶液中に塩基性化合物を添加しておき、これに水性媒体を徐々に投入する方法、また、水性媒体中に塩基性化合物を添加しておき、これをポリエステル樹脂(A)溶液に徐々に投入する方法等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂(A)溶液と塩基性化合物の混合性を高める観点から、ポリエステル樹脂(A)溶液に塩基性化合物を添加しておき、これに水性媒体を徐々に投入して転相乳化を行う方法が好ましい。
塩基性化合物は、アンモニアや、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリ−n−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリドデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、ジメチルアニリン等の有機アミン等が挙げられる。また、塩基性化合物として、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物も挙げられるが、得られる被膜の耐水性が不足する場合があり好ましくない。
前記塩基性化合物の中でも、水性分散体の製造工程において、ポリエステル樹脂(A)が加水分解反応を起こすことを極力抑制することができるため、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリドデシルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、ジメチルアニリン等の3級アミンがより好ましい。
さらに、得られる被膜から塩基性化合物を揮散させやすいという観点から、塩基性化合物は、沸点が150℃以下のものを用いることがさらにより好ましい。このような塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
塩基性化合物は、用いるポリエステル樹脂(A)の酸価に対して、0.5〜30倍当量添加することが好ましく、1〜20倍当量添加することがより好ましい。この範囲の塩基性化合物を添加することで、安定性が良好な水性分散体が得られる利点がある。
転相乳化工程の反応温度は、10〜40℃とすることが好ましく、10〜30℃とすることがより好ましく、15〜30℃とすることがさらにより好ましく、15〜20℃とすることが最も好ましい。反応温度が40℃を超えると、得られる水性分散体の粘度が高くなりすぎて水性分散体が得られないか、得られたとしても分散安定性が劣るものとなる。反応温度が10℃未満であると、転相乳化工程中にポリエステル樹脂(A)の分散性が低下し、水性分散体の粘度が急激に上昇し、攪拌が困難になり、均一な水性分散体が得られなくなる場合がある。
転相乳化工程における水性媒体の投入速度は、特に制限されないが、ポリエステル樹脂(A)を有機溶剤に溶解したポリエステル樹脂(A)溶液と塩基性化合物との合計1000質量部に対して、25〜100質量部/分とすることが好ましい。投入速度が100質量部/分より速いと、ポリエステル樹脂(A)の塊が形成され、この塊は水性媒体に分散されにくいため、系内に不均一な部分が発生し、水性分散体の体積平均粒子径が大きくなる場合があり、水性分散体の安定性が劣る場合がある。投入速度が25質量部/分より遅いと、必要量の水性媒体を添加し終えるのに、多くの時間を費やしてしまうため、経済的に不利である。
脱溶剤工程では、ポリエステル樹脂(A)分散体を加熱し、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去して水性分散体を得る。脱溶剤は、常圧、減圧下いずれで行ってもよい。
転相乳化工程、脱溶剤工程に用いる装置としては液体を投入できる槽を備え、既述の範囲内の温度に制御が可能であり、適度な攪拌ができるものであればよい。
ポリエステル樹脂(A)分散体の固形分濃度は、5〜50質量%が好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。固形分濃度が50質量%を超えると、分散していたポリエステル樹脂(A)が凝集しやすくなり、安定性が乏しくなる。固形分濃度が5質量%未満であると、最終的に得られる水性分散体の固形分濃度も低くなり、非経済的であり好ましくない。
ポリエステル樹脂(A)分散体は、pHが6以上であることが好ましく、7以上がより好ましく、8以上がさらにより好ましい。pHが6未満であるものは、水性分散体中に分散しているポリエステル樹脂(A)が凝集してしまい、安定性に乏しくなる傾向がある。
ポリエステル樹脂(A)分散体において、ポリエステル樹脂(A)の体積平均粒径は、安定性を向上させるため、400nm未満であることが好ましく、300nm未満であることがより好ましく、200nm未満であることがさらにより好ましく、100nm未満であることが最も好ましい。体積平均粒子径が400nmを超える場合は、沈降物が発生して水性分散体の安定性が乏しくなる場合がある。
本発明の水性分散体は、前記したように、ポリエステル樹脂(A)の微粒子を有する水性分散体を形成した上で、ビニル系モノマー成分を添加して、後から、乳化剤、重合開始剤をそれぞれ個別に添加して乳化重合をおこなう等して、ポリエステル樹脂(A)、ビニル系ポリマー(B)を含有する複合樹脂からなる微粒子が水性媒体に分散した水性分散体とすることができる。
水性分散体の体積平均粒子径は、分散安定性を向上させるため、1000nm未満であることが好ましく、700nm未満であることがより好ましく、600nm未満であることがさらに好ましく、500nm未満であることが特に好ましい。体積平均粒径が1000nmを超える場合は、水性分散体の安定性が乏しくなる傾向にある。
本発明の水性分散体は、さらに後から、他の任意成分を配合して、水性コーティング剤組成物とすることができる。水性分散体に対し配合することのできる任意成分としては、例えば、硬化剤、着色顔料、水、アルコール、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、他の水性樹脂や水性分散体等を挙げることができる。
硬化剤としては、例えば、尿素樹脂やメラミン樹脂やベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有ポリマー、フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、鉛白、酸化亜鉛、グラファイト、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化鉄、マンガンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等が挙げられる。これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
他の水性分散体としては、例えば、ポリエステル樹脂水性分散体、アクリル樹脂水性分散体、ウレタン樹脂水性分散体、オレフィン樹脂水性分散体等が挙げられる。これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
本発明において、水性コーティング剤組成物を用いた被膜の形成方法は、例えば、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法、カーテンフローコート法、ディッピング法、はけ塗り法等が挙げられ、これらの方法により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥および焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な被膜を支持体表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや、赤外線ヒータなどを使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である、支持体の種類などにより適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、通常60〜250℃であり、70〜230℃が好ましく、80〜200℃がより好ましい。加熱時間としては、通常1秒〜120分間であり、5秒〜100分が好ましく、10秒〜60分がより好ましい。
本発明の水性分散体は、特に高温等の厳しい条件においても分散安定性が損なわれず、塗工時造膜性の低下を抑制されており、種々の基材への密着性、接着性等に優れているため、食品包装や工業用途の積層フィルム用接着剤や、家電製品、自動車、缶等の用途にも好適に用いることができる。また、該被膜に対し他の被膜層を積層することも可能であるため、特に機能性を高めた被膜の形成が求められる
家電製品、自動車用途等で好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
なお、評価、測定方法は下記の通りである。
(1)ポリエステル樹脂(A)の構成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製、ECA500 NMR)を用いて、1H−NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から樹脂組成を求めた(分解能:500MHz、溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸、温度:25℃)。また、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解をおこなった後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析をおこなった。
(2)ポリエステル樹脂(A)の酸価
ポリエステル樹脂(A)を0.5g精秤し、水/1,4−ジオキサン=1/9(体積比)50mlに室温で溶解し、クレゾールレッドを指示薬として0.1Nの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定し、中和に消費されたポリエステル樹脂(A)1gあたりの水酸化カリウムのmg数(mgKOH/g)を酸価とした。
(3)ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量、重量平均分子量、分散度および数平均重合度
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量を測定した。
[送液ユニット]:島津製作所社製LC−10ADvp
[紫外−可視分光光度計]:島津製作所社製SPD−6AV、検出波長:254nm
[カラム]:Shodex社製KF−803 1本、Shodex社製KF−804 2本を直列に接続して使用
[溶媒]:テトラヒドロフラン
[測定温度]:40℃
上記の数平均分子量(Mnとする)、および重量平均分子量(Mwとする)より、分散度を以下の式により求めた。
分散度=Mw/Mn
(4)ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度、融点
ポリエステル樹脂(A)を10mg秤量し、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、Diamond DSC、検出範囲:−50℃〜200℃)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、得られた昇温曲線中の、低温側ベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大となるような点で引いた接線との交点の温度を求め、ガラス転移温度とした。また、ポリエステル樹脂(A)を10mg秤量し、前記装置を用いて、窒素気流中、−50℃から昇温速度20℃/分で、200℃まで昇温し、昇温時の融解温度のピークをポリエステル樹脂(A)の融点とした。
(5)固形分濃度
水性分散体を約1g秤量(Xgとする)し、これを150℃で2時間乾燥した後の残存物の質量を秤量(Ygとする)し、下記式により固形分濃度を求めた。
固形分濃度(質量%)=(Y/X)×100
(6)ポリエステル樹脂(A)分散体のpH
pHメーター(堀場製作所社製F−21)を用いて、pH7およびpH9の標準緩衝液(ナカライテスク社製)により校正した後、測定温度25℃でポリエステル樹脂(A)分散体のpHを測定した。
(7)体積平均粒径、数平均粒径
水性分散体中の樹脂の濃度が0.1質量%になるように水で希釈し、レーザー回折式粒径測定装置(日機装社製、MICROTRAC UPA(モデル9340−UPA))を用いて、体積平均粒径、および数平均粒径を測定した。樹脂の屈折率は1.57、樹脂の密度は1.21g/cmと設定した。
(8)水性分散体の分散安定性
水性分散体を30g採取した後、50mLのガラス製サンプル瓶に密封し、25℃で90日保存した。保存後、サンプル瓶から上澄み液を採取し、固形分濃度を測定し、下記式より、沈殿物の割合を計算し、分散安定性の評価を行った。
沈殿物の割合(質量%)={保存前の固形分濃度(質量%)−保存後の固形分濃度(質量%)}/{保存前の固形分濃度(質量%)}
◎:0.1質量%未満
○:0.5質量%未満
△:1.0質量%未満
×:1.0質量%以上
××:該組成物が固化していて上澄みが採取できない。
(9)水性分散体の高温時分散安定性
(8)と同様に、水性分散体を30g採取した後、50mLのガラス製サンプル瓶に密封し、50℃で30日保存した。保存後、(8)と同様の基準にて、高温時の分散安定性の評価を行った。
(10)被膜の密着性
下記手順により、各種被膜形成フィルムを得て、被膜の密着性の評価を行った。なお、被膜の厚みは、厚み計(ユニオンツール社製MICROFINE)を用いて、フィルムの厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いてフィルム上に被膜を形成した後、この被膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差により求めた。
(10)−1 被膜形成二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製
水性分散体を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製S−50、厚さ50μm)のコロナ処理面に、それぞれ卓上型コーティング装置(安田精機社製フィルムアプリケータ;No.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、80℃に設定された熱風乾燥機中で5分間乾燥させることにより、膜厚が3μmの被膜を形成した。
(10)−2 被膜形成アクリルフィルムの作製
水性分散体を、アクリルフィルム(三菱レイヨン社製アクリプレンHBS006、厚さ50μm)に、それぞれ卓上型コーティング装置(安田精機社製フィルムアプリケータ;No.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、80℃に設定された熱風乾燥機中で5分間乾燥させることにより、膜厚が3μmの被膜を形成した。
(10)−3 被膜形成二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製
水性分散体を、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工社製トレファン2500H、厚さ50μm)のコロナ処理面に、それぞれ卓上型コーティング装置(安田精機社製フィルムアプリケータ;No.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、80℃に設定された熱風乾燥機中で5分間乾燥させることにより、膜厚が3μmの被膜を形成した。
(10)−1〜3で得た各被膜形成フィルムの被膜をJIS K−5600−5−6に準拠して、クロスカット法によって密着性を確認した。なお、「100/100」が、全く剥がれがなく、最も良い状態であり、「0/100」が、全てが剥がれ、最も良くない状態を示す。100/100〜80/100を合格とし、100/100〜90/100がより優れており、100/100〜95/100がさらにより優れており、100/100が最も優れていることを示す。
なお、(10)−1で得た被膜形成二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける、被膜密着性の評価が80/100以上であることが好ましく、(10)−1〜3で得たすべての被膜形成フィルムの被膜密着性の評価が80/100以上であることが最も好ましい。
(12)被膜の接着性
前記(10)−1おいて作製した被膜形成二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、および(10)−2において作製した被膜形成アクリルフィルムを被膜面同士が接触するように重ねて、ヒートプレス機(シール圧0.2MPaで10秒間)を用いて80℃でプレスし積層体を作製した。
その後、積層体を20℃、40%RHの雰囲気下で1日放置した後、25mm巾に切断し、引張試験機(インテスコ社製インテスコ精密万能試験機2020型)を用いて、20℃で引張速度50mm/分で180度剥離試験をおこない、剥離強度を測定した。
実用的には、プレスした積層体の剥離強度が、3.5N/25mm以上であることが好ましく、5.0N/25mm以上であることがより好ましく、7.0N/mm以上であることがさらに好ましい。
(13)被膜の耐水性
前記(10)−1において作製した被膜形成二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、60℃の蒸留水に浸漬させ、10日後に静かに引き上げ、風乾させた後、被膜の外観を目視にて観察し、以下の基準で密着性の評価をした。
○:外観変化がなかった。
△:一部分で表面が白く曇った。
×:表面状態が変化(表面全体が白く曇る、もしくは膨潤等)した。
(14)被膜の耐ブロッキング性
前記(10)−1と同様の操作を行って得た膜厚1μmの被膜形成二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの被膜形成面に、別の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの非コロナ面を重ねた状態で500Paの荷重をかけ、38℃の雰囲気下で24時間放置後、25℃まで冷却した後、2枚のフィルムを手で剥がし、容易に剥がすことができるか否かにより下記のように分類し、耐ブロッキング性を評価した。
○:容易に剥がすことができ、全く融着跡が認められない。
△:剥がす際に若干の剥離音があるが、融着跡は認められない。
×:剥がす際にかなりの抵抗があり、融着跡が認められる。
(15)被膜の造膜性
前記(10)−1と同様の操作を行って膜厚3μmの被膜形成二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作製した。被膜の造膜性を下記評価にて確認した。
さらに、前記(9)で高温時の分散安定性を評価した水性分散体を用いて、前記(10)−1と同様の操作を行って膜厚3μmの被膜形成二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作製した。被膜の造膜性を下記評価にて確認した。
○:クラック、微細な凹凸、白化等の外観不良のいずれもが認められない。
△:端部に若干の白化等の外観不良が認められるが、クラック、微細な凸凹等は認められず、実用に足るものである。
×:クラック、微細な凹凸、白化等の外観不良のいずれかが認められる。
[ポリエステル樹脂(A)の調製]
調製例1〜9の手順により、実施例および比較例で用いるポリエステル樹脂(a1)〜(a9)を得た。
調製例1
テレフタル酸1163g、イソフタル酸1412g、セバシン酸1920g、1,4−ブタンジオール2740gからなる混合物をオートクレーブ中で、220℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。この時のモノマー成分の配合は、テレフタル酸:イソフタル酸:セバシン酸:1,4−ブタンジオール=28:34:38:122(モル比)とした。次いで、触媒としてテトラブチルチタネートを2.6g(全酸成分の合計1モルあたり3×10−4モル)添加した後、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、220℃になったところでトリメリット酸を47g(全酸成分の合計1モルあたり0.006モル)添加し、220℃で2時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておきシート状に払い出した。これを室温まで冷却し、シート状のポリエステル樹脂(a1)を得た。
調製例2〜9
仕込組成を、表1のように変更した以外は、ポリエステル樹脂(a1)と同様にして、ポリエステル樹脂(a2)〜(a9)をそれぞれ得た。なお、ポリエステル樹脂(a3)はストランド状に払出し、水冷後、カッティングして、直径約3mm、長さ約3mmのペレット状にして得た。
なお、表1中の、略語は以下のものを示す。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
SEA:セバシン酸
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
1,4−BD:1,4−ブタンジオール
TMA:トリメリット酸
得られたポリエステル樹脂(a1)〜(a9)の最終樹脂組成および特性値を表2に示す。
[ポリエステル樹脂(A)分散体の調製]
調製例10
[溶解工程]
2Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂(a1)を400g、メチルエチルケトンを600g投入し、系内温度が70℃になるように加熱攪拌し、ポリエステル樹脂(a1)をメチルエチルケトンに完全に溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂(a1)溶液を得た。
[転相乳化工程]
ガラス容器(内容量2L)に、前記ポリエステル樹脂(a1)溶液を500g仕込み、系内温度を22℃に保ちながら攪拌し、塩基性化合物としてトリエチルアミンを23g(ポリエステル樹脂(a1)の酸価に対して9倍当量)添加した。続いて40g/分の速度で22℃のイオン交換水542gを添加し、その後、攪拌を30分間続けた。蒸留水を全量添加する間の系内温度は22±1℃、蒸留水添加終了後の固形分濃度は20質量%、転相乳化工程の完了は溶解工程終了から2時間経過後であった。
[脱溶剤工程]
得られたポリエステル樹脂(a1)の分散体800gを丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱し、常圧で水性媒体を284g留去した。その後、室温まで冷却し、さらに攪拌しながら、28質量%アンモニア水0.9gを添加し、最後に固形分濃度が30質量%となるようにイオン交換水を加えて、ポリエステル樹脂分散体(A−1)を得た。
調製例11
ポリエステル樹脂(a2)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を6.5g(ポリエステル樹脂(a2)の酸価に対して3倍当量)とし、イオン交換水を559gとすること以外は、ポリエステル樹脂分散体(A−1)と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体(A−2)を得た。
調製例12
ポリエステル樹脂(a3)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を13g(ポリエステル樹脂(a3)の酸価に対して6倍当量)とし、イオン交換水を552gとすること以外は、ポリエステル樹脂分散体(A−1)と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体(A−3)を得た。
調製例13
ポリエステル樹脂(a4)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を9.1g(ポリエステル樹脂(a4)の酸価に対して1.2倍当量)とし、イオン交換水を556gとすること以外は、ポリエステル樹脂分散体(A−1)と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体(A−4)を得た。
調製例14
ポリエステル樹脂(a5)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を7.2g(ポリエステル樹脂(a5)の酸価に対して20倍当量)とし、イオン交換水を558gとすること以外は、ポリエステル樹脂分散体(A−1)と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体(A−5)を得た。しかし、得られたポリエステル樹脂分散体(A−5)は脱溶剤工程終了後すぐに固化してしまったため、以後の評価を行うことができなかった。
調製例15
ポリエステル樹脂(a6)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を49g(ポリエステル樹脂(a6)の酸価に対して9倍当量)とし、イオン交換水を516gとすること以外は、ポリエステル樹脂分散体(A−1)と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体(A−6)を得た。
調製例16
ポリエステル樹脂(a7)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を55g(ポリエステル樹脂(a7)の酸価に対して9倍当量)とし、イオン交換水を510gとすること以外は、ポリエステル樹脂分散体(A−1)と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体(A−7)を得た。
調製例17
ポリエステル樹脂(a8)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を29g(ポリエステル樹脂(a8)の酸価に対して9倍当量)とし、イオン交換水を536gとすること以外は、ポリエステル樹脂分散体(A−1)と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体(A−8)を得た。
調製例18
ポリエステル樹脂(a9)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を29g(ポリエステル樹脂(a9)の酸価に対して9倍当量)とし、イオン交換水を536gとすること以外は、ポリエステル樹脂分散体(A−1)と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体(A−9)を得た。
得られたポリエステル樹脂分散体(A−1)〜(A−9)の特性値を表3に示す。
実施例1
攪拌機、還流冷却器、2つの滴下漏斗、温度計、窒素導入管を備えた反応容器内に、ポリエステル樹脂水性分散体(A−1)を300g仕込み、窒素ガス雰囲気下、撹拌をしながら80℃に加熱した。次いでメタクリル酸−2−ジメチルアミノエチルを8gとイオン交換水2gからなる水溶液を反応容器中に滴下し、3時間撹拌後、イオン交換水をさらに1600g添加してさらに10分撹拌を続け、反応系を室温まで冷却した。そこへ重合開始剤として5質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を40g添加し、10分撹拌した。そこへ、さらに5質量%過硫酸アンモニウム水溶液を60g添加し、さらに4時間反応を続けた後、反応温度を80℃に昇温して、さらに1時間反応を続けた。反応系を室温まで冷却して反応を終了した。反応液をメカニカルスターラーとリービッヒ冷却器を備えたフラスコへ移し、フラスコをオイルバスで加熱し、常圧で水性媒体を約1500g留去した。その後、室温まで冷却し、最後に固形分濃度が20質量%となるようにイオン交換水を加えて、水性分散体(S−1)を得た。(S−1)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
なお、表4中の、略語は以下のものを示す。
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタアクリレート
EHA:2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート
VA:酢酸ビニル
参考例1
ポリエステル樹脂水性分散体を(A−2)に変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−2)を得た。(S−2)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
実施例3
ポリエステル樹脂水性分散体を(A−6)に変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−3)を得た。(S−3)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
実施例4
ポリエステル樹脂水性分散体を(A−7)に変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−4)を得た。(S−4)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
参考例2
ポリエステル樹脂水性分散体を(A−8)に変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−5)を得た。(S−5)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
参考例3
用いるジメチルアミノエチルメタアクリレートを3gに変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−6)を得た。(S−6)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
参考例4
用いるポリエステル樹脂水性分散体(A−1)を130gと変更して、留去する水性媒体を約1600gとすること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−7)を得た。(S−7)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
実施例8
用いるビニル系モノマーを2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート8gに変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−8)を得た。(S−8)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
実施例9
用いるビニル系モノマーをジメチルアミノエチルメタアクリレート4gと、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート4gに変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−9)を得た。(S−9)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
実施例10
用いるビニル系モノマーを酢酸ビニル 8gに変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−10)を得た。(S−10)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
実施例11
実施例1において、ジメチルアミノエチルメタアクリレートを8gとイオン交換水2gからなる水溶液に、さらにアルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(商品名:エレミノールJS−20、三洋化成社製)を2g添加して10分撹拌し、水溶液を乳化液にした状態で反応容器中に滴下することに変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−11)を得た。(S−11)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
実施例12
ポリエステル樹脂水性分散体を(A−9)に変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−12)を得た。(S−12)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
比較例1
ポリエステル樹脂水性分散体を(A−3)に変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−13)を得た。(S−13)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
比較例2
ポリエステル樹脂水性分散体を(A−4)に変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−14)を得た。(S−14)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
比較例3
ポリエステル樹脂水性分散体(A−1)を、水性分散体(S−15)としてそのまま用いて、各種特性の評価を行った。(S−15)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
比較例4
用いるポリエステル樹脂水性分散体(A−1)を80gと変更して、留去する水性媒体を約1600gとすること以外は、実施例1と同様の操作をおこない、水性分散体(S−16)を得た。(S−16)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
比較例5
実施例1において、用いるポリエステル樹脂水性分散体(A−1)をイオン交換水に変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこない、ポリメタクリル酸の水性分散体を得た。そこへ、イオン交換水で20質量%に希釈したポリエステル樹脂水性分散体(A−1)を300g添加し、10分間撹拌をおこない、水性分散体(S−17)を得た。(S−17)を用いて各種特性の評価を行った結果を表4に示す。
実施例1、3〜4、8〜12では、所定の配合に従ったため、水性分散体は高温においても分散安定性が良好であり、また、得られる被膜は、密着性、接着性に優れた被膜の形成ができた。
比較例1は、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が、30℃を超えるものであったため、得られる被膜は密着性が劣るものであった。
比較例2は、ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が5000未満であったため、得られる被膜は造膜性、密着性が劣るものであった。
比較例3は、ビニル系ポリマー(B)を用いなかったため、得られる水性分散体は高温時の安定性に乏しく、また被膜は耐ブロッキング性が劣るものであった。
比較例4は、ビニル系ポリマー(B)の含有比が、所定の範囲を外れたため、得られる被膜は密着性が劣るものであった。
比較例5は、ポリエステル樹脂(A)とビニル系ポリマー(B)からなるビニル系ポリマーとを、複合樹脂としてではなく、単に混合して用いたため、得られる水性分散体は高温時の安定性に乏しいものとなった。

Claims (6)

  1. ポリエステル樹脂(A)およびビニル系ポリマー(B)を(A)/(B)=95/585/15の質量比率で含有する複合樹脂を水性媒体に分散した水性分散体であって、ポリエステル樹脂(A)は、構成する酸成分としてテレフタル酸を20〜45モル%、アルコール成分として1,4−ブタンジオールを70〜100モル%含有し、数平均分子量が5000〜50000、酸価が3mgKOH/g以上、ガラス転移温度が30℃以下であることを特徴とする水性分散体。
  2. ポリエステル樹脂(A)が結晶性を有し、融点が100℃以下であることを特徴とする請求項1記載の水性分散体。
  3. ビニル系ポリマー(B)がアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の水性分散体。
  4. ポリエステル樹脂(A)の微粒子の分散した水性媒体中で、ビニル系モノマーを乳化重合することを特徴とする請求項1〜いずれかに記載の水性分散体の製造方法。
  5. 請求項1〜いずれかに記載の水性分散体を用いてなる水性コーティング剤組成物。
  6. 請求項記載の水性コーティング剤組成物より得られる被膜。
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