JP2024063760A - ポリエステル樹脂水性分散体、および水性インキ組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】過酷な条件での保存安定性に優れ、基材密着性、耐水性に優れた塗膜性能を発現する水性分散体、ならびに水性インキ組成物を提供する。【解決手段】ポリエステル樹脂(A)と水性媒体とを含有し、ポリエステル樹脂(A)は、酸価が3mgKOH/g以上であり、ガラス転移温度が30℃を超え、数平均分子量が3000以上であり、水性媒体は、20℃における水への溶解度が50g/L以上であり、沸点が100℃以上である水溶性有機溶剤(B)を含有することを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。【選択図】なし

Description

本発明はポリエステル樹脂水性分散体、およびそれを含有してなる水性インキ組成物に関するものである。
従来から、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤のバインダー成分としてポリエステル樹脂が用いられている。このようなポリエステル樹脂からなる塗膜は、耐熱性、加工性に優れ、その特性を生かして、家電製品、家具製品、建築材料等の各種用途に広く使用されている。
一方で、環境保護、消防法による危険物規制、職場環境の改善等の理由で、有機溶剤の使用が抑制される傾向にあるため、前記用途に使用できるポリエステル樹脂を水性媒体に微分散させた、ポリエステル樹脂水性分散体の開発も進んでいる。
このような背景のもと、特許文献1にあるように、基材への密着性や接着性に優れた樹脂被膜を形成でき、かつ保存安定性に優れたポリエステル樹脂水性分散体が開示されるなど、樹脂被膜の性能と水性分散体の安定性を両立して高めることが従来から検討されている。
しかしながら、近年さらに過酷な環境における高い安定性と、樹脂被膜としての密着性を両立して有することが求められており、従来のポリエステル樹脂水性分散体では安定性などの性能が不足してしまう問題があった。
特開2014-148618号公報
本発明は、過酷な条件での保存安定性に優れ、基材密着性、耐水性に優れた塗膜性能を発現する水性分散体、ならびに水性インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のポリエステル樹脂を、特定の水性媒体に分散させた水性分散体が、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)ポリエステル樹脂(A)と水性媒体とを含有し、
ポリエステル樹脂(A)は、酸価が3mgKOH/g以上であり、ガラス転移温度が30℃を超え、数平均分子量が3000以上であり、
水性媒体は、20℃における水への溶解度が50g/L以上であり、沸点が100℃以上である水溶性有機溶剤(B)を含有することを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
(2)上記(1)記載のポリエステル樹脂水性分散体と、顔料または染料とを含有してなる水性インキ組成物。
本発明によれば、基材密着性、耐水性に優れた塗膜性能を発現し、過酷な環境下でも長期保存安定性に優れる水性分散体が得られる。また、このような水性分散体を用いた水性インキ組成物は、看板や広告サイン、ポスターなどのメディア、衣類、包装材料などへの印刷用途で好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の水性分散体は、ポリエステル樹脂(A)と水性媒体を含有するものである。
(ポリエステル樹脂(A))
本発明の水性分散体を構成するポリエステル樹脂(A)は、主に多塩基酸成分および多価アルコール成分より構成されるものである。
ポリエステル樹脂(A)を構成する多塩基酸成分としては、特に制限はされず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-tert-ブチルイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸およびその無水物、テトラヒドロフタル酸およびその無水物等の脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の3官能以上のカルボン酸が挙げられる。これらの多塩基酸成分は単独使用あるいは2種以上の併用が可能である。
前記した多塩基酸の中でも、テレフタル酸が好ましく、多塩基酸成分中のテレフタル酸含有割合は、15モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。テレフタル酸の含有割合が15モル%未満であると、得られる水性分散体は、安定性が乏しくなる傾向がある。
多塩基酸として、3官能以上のカルボン酸を含有する場合、多塩基酸成分中の含有割合は、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
多塩基酸として、スルホン酸基を有する多塩基酸も含有することができる。このような多塩基酸とそのエステルとしては、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(SIPA-Na)、5-ナトリウムスルホテレフタル酸(STPA-Na)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-Na)、5-ナトリウムスルホテレフタル酸ジメチル(STPM-Na)、5-カリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-K)、5-リチウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-Li)等が挙げられる。
スルホン酸基を有する多塩基酸は、水性分散体の保存安定性を向上させるが、過剰に用いると、得られる塗膜の耐水性を損ねることがある。本発明においては、多塩基酸成分中のスルホン酸基を有する多塩基酸の含有割合は、10モル%未満であることが好ましく、5モル%未満であることがより好ましく、1モル%未満であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂(A)を構成する多価アルコール成分としては、特に制限はされず、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロブタンジメタノール等の脂環族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル結合含有グリコール、2,2-ビス[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のアルキレンオキシド付加体やビス[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のアルキレンオキシド付加体等が挙げられ、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上のアルコールも使用することができる。これらの多価アルコール成分は単独使用あるいは2種以上の併用が可能である。
多価アルコールとして、3官能以上のアルコールを含有する場合、多価アルコール成分中の含有割合は、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)には、本発明の水性分散体の特性を損なわない範囲で、モノカルボン酸、モノアルコールを含有することもできるが、このようなモノカルボン酸、モノアルコールを過剰に用いると、後述するポリエステル樹脂(A)の製造時に、分子鎖の延長を阻害し、重縮合が進まずに結果として必要な分子量が得られず、密着性が不足することがある。本発明においては、モノカルボン酸、モノアルコールの含有割合は、ポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分またはアルコール成分のうち、各々1モル%未満であることが好ましく、0.1モル%未満であることがより好ましく、0モル%であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の酸価は、3mgKOH/g以上であることが必要であり、3~30mgKOH/gであることが好ましく、4~20mgKOH/gであることがより好ましく、5~15mgKOH/gであることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、酸価が3mgKOH/g未満であると、水性分散体を得ることが困難になることがあり、水性分散体が得られても、保存安定性に劣るものとなる。
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、3000以上であることが必要であり、3000~30000であることが好ましく、5000~25000であることがより好ましく、5000~20000であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が3000未満であると、得られる塗膜は、密着性が乏しくなる。
ポリエステル樹脂(A)の分子量分布における分散度(以下、分散度という)は、2~10であることが好ましく、2~9であることがより好ましく、2~8であることがさらに好ましい。分散度が2未満であるポリエステル樹脂(A)を得ることは困難であり、分散度が10を超えるポリエステル樹脂(A)の水性分散体は、分散安定性が乏しくなる。なお、分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことを指す。
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、30℃を超えることが必要であり、30℃を超え、120℃以下であることがより好ましく、30℃を超え、100℃以下であることがさらに好ましく、45~90℃であることが最も好ましい。ガラス転移温度が30℃以下であるポリエステル樹脂(A)の水性分散体は、安定性が劣るものとなる。
次に、ポリエステル樹脂(A)の製造方法について説明する。
ポリエステル樹脂(A)を製造する方法としては、前記の多塩基酸の1種類以上と、多価アルコールの1種類以上とを、公知の方法により、重縮合反応に付する方法が挙げられる。例えば、全多塩基酸と多価アルコールおよび/またはその低重合体を不活性雰囲気下で反応させてエステル化反応を行い、引き続いて重縮合触媒の存在下、減圧下で、所望の分子量に達するまで重縮合反応を進める方法等を挙げることができる。
エステル化反応における反応温度は180~260℃であることが好ましく、反応時間は2.5~10時間であることが好ましく、4~6時間であることがより好ましい。
重縮合反応における反応温度は220~280℃であることが好ましく、圧力は130Pa以下であることが好ましい。圧力が高いと、重縮合時間が長くなる場合がある。大気圧から130Pa以下に達するまで、60~180分かけて徐々に減圧することが好ましい。
重縮合触媒としては特に限定されないが、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトラ-n-ブチルチタネート、n-ブチルヒドロキシオキソスズ等の公知の化合物を用いることができる。触媒の使用量は、酸成分1モルに対し、0.1~20×10-4モルであることが好ましい。
上記重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分を添加し、不活性雰囲気下、解重合反応を行うことができる。解重合することで、ポリエステル樹脂(A)に所望の酸価を付与することができる。中でも、3官能以上のカルボン酸を解重合剤として用いると、ポリエステル樹脂(A)の分子量低下を抑制しながら、所望の酸価を付与することができるのでより好ましい。
解重合反応における反応温度は160~280℃でありことが好ましく、160~220℃であることがより好ましい。反応時間は、0.5~5時間であることが好ましい。
(水性媒体)
次に、本発明における水性媒体について説明する。
本発明において、水性媒体は、水溶性有機溶剤(B)を含む水である。
本発明において、水溶性有機溶剤(B)は、20℃における水への溶解度が50g/L以上であることが必要であり、100g/L以上であることが好ましく、500g/L以上であることがさらに好ましく、無限大であることが最も好ましい。水性媒体が、20℃における水への溶解度が5g/L未満である水溶性有機溶剤(B)を含有すると、水性分散体は、保存安定性が著しく低下する。
また、水溶性有機溶剤(B)は、沸点が100℃以上であることが必要であり、150℃以上であることが好ましく、180~300℃であることがより好ましく、180~250℃であることがさらに好ましい。水性媒体が、沸点が100℃未満である水溶性有機溶剤(B)を含有すると、水性分散体は、保存安定性に劣ることになり、一方、沸点が300℃を超える水溶性有機溶剤を含有すると、水性分散体を用いた水性インキは、乾燥性が低下する。
本発明における水溶性有機溶剤(B)を、20℃における水への溶解度と沸点とともに示すと、例えば、1-ブタノール(約78g/L、118℃)、イソブタノール(85g/L、108℃)、エチレングリコール(無限大、198℃)、1,2-プロパンジオール(無限大、187℃)、1,3-プロパンジオール(無限大、214℃)、1,2-ブタンジオール(1000g/L、191℃)、1,3-ブタンジオール(無限大、208℃)、1,4-ブタンジオール(無限大、229℃)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(無限大、214℃)、1,2-ペンタンジオール(971g/L、206℃)、1,5-ペンタンジオール(無限大、242℃)、グリセリン(無限大、290℃)、ジエチレングリコール(無限大、245℃)、トリエチレングリコール(無限大、288℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(無限大、125℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(無限大、136℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(無限大、170℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(無限大、202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(無限大、230℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(210g/L、121℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(無限大、188℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(230g/L、156℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(無限大、217℃)などが挙げられる。中でも、ヒドロキシル基を2つ有するグリコールが好ましく、側鎖を有するグリコールがより好ましい。側鎖を有するグリコールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオールなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体における水溶性有機溶剤(B)の含有量は、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~35質量%であることがさらに好ましく、20~30質量%であることが最も好ましい。ポリエステル樹脂水性分散体は、水溶性有機溶剤(B)の含有量が5質量%未満であると、保存安定性が劣ることがある。一方、ポリエステル樹脂水性分散体における水溶性有機溶剤(B)の含有量が50質量%を超えると、得られる水性インキは、乾燥性が低下することがある。
(ポリエステル樹脂水性分散体)
次に、本発明のポリエステル樹脂水性分散体について説明する。
ポリエステル樹脂水性分散体は、固形分濃度が5~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましい。ポリエステル樹脂水性分散体は、固形分濃度が50質量%を超えると、分散していたポリエステル樹脂(A)が凝集しやすくなり、安定性が乏しくなる傾向があり、固形分濃度が5質量%未満であると、例えば、得られる水性インキは、有効成分濃度が低いものとなり、実用上好ましくないものとなる。
ポリエステル樹脂水性分散体は、pHが6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。pHが6未満であるポリエステル樹脂水性分散体は、水性分散体中に分散しているポリエステル樹脂(A)が凝集して、安定性に乏しくなる傾向がある。
ポリエステル樹脂水性分散体におけるポリエステル樹脂(A)の体積平均粒径は、安定性を向上させるため、600nm未満であることが好ましく、300nm未満であることがより好ましく、200nm未満であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂(A)の体積平均粒子径が600nmを超えると、水性分散体は、沈降物が発生して、安定性が乏しくなることがある。
(ポリエステル樹脂水性分散体の製造方法)
ポリエステル樹脂を分散する方法は、特に限定されない。一例としては、ポリエステル樹脂(A)を有機溶剤に溶解させる工程(溶解工程)と、ポリエステル樹脂が溶解したポリエステル樹脂溶液を塩基性化合物とともに水に分散させる工程(転相乳化工程)を含む転相乳化法が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂(A)、塩基性化合物、有機溶剤、水を一括で仕込み、系内を攪拌しながら加熱することで、ポリエステル樹脂を分散する自己乳化法等が挙げられる。
転相乳化法の溶解工程では、必要に応じて加熱を行うこともできる。
また、ポリエステル樹脂(A)を分散する方法として、界面活性剤や高酸価ワックスを乳化剤として用い、強制乳化する方法なども挙げられるが、乳化剤を使用せずに分散する前記転相乳化法と自己乳化法は、得られる塗膜の耐水性が向上するため、好ましい方法である。
ポリエステル樹脂を分散した後、分散体中に含有する有機溶剤および/または塩基性化合物を除去する工程(脱溶剤工程)を経ることで、ポリエステル樹脂の分散安定性を向上させることができる。有機溶剤および/または塩基性化合物の具体的な除去手段としては、常圧下または減圧下で、水性分散体から有機溶剤および水の蒸発留去と、水の添加とを繰り返す方法が挙げられ、この方法によって、有機溶剤および/または塩基性化合物を容易に除去することが可能である。
ポリエステル樹脂を分散した後、適宜、未分散物や凝集物をろ過して取り除くためのろ過工程を設けてもよい。ろ過方法としては、たとえば、600メッシュのステンレス製フィルター(濾過精度25μm、綾織)を設置し、常圧ろ過、または、加圧(空気圧0.2MPa)する方法が挙げられる。
ポリエステル樹脂の分散体に水溶性有機溶剤(B)を含有させる方法としては、前記転相乳化法の溶解工程や転相乳化工程において、また自己乳化法の仕込み時において、また両乳化法の脱溶剤工程の前やろ過工程の前において、水溶性有機溶剤(B)を添加する方法が挙げられる。詳細な理論は解明されていないが、中でも、脱溶剤工程の前に水溶性有機溶剤(B)を添加すると、得られるポリエステル樹脂水性分散体は、安定性がより向上する。
(転相乳化法)
(溶解工程)
前記転相乳化法について詳細に述べる。
ポリエステル樹脂(A)を有機溶剤に溶解して得られるポリエステル樹脂溶液の固形分濃度は、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。固形分濃度が70質量%を超えるポリエステル樹脂溶液は、転相乳化工程において、水と混合した場合に粘度の上昇が大きくなり、このような状態から得られた水性分散体は、体積平均粒径が大きくなる傾向にあり、結果として、安定性が劣ることがある。また、固形分濃度が10質量%未満の水性分散体は、固形分濃度が低く、脱溶剤工程の際に多量の有機溶剤の除去が必要となる。
溶解工程の際に用いる装置は、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(例えばホモミキサー)として知られている装置が挙げられる。
(転相乳化工程)
転相乳化工程では、前記ポリエステル樹脂溶液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させて水性分散体を得る。転相乳化は、常圧、減圧、加圧下のいずれの条件で行ってもよい。
ポリエステル樹脂溶液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる方法としては、ポリエステル樹脂溶液中に塩基性化合物を添加しておき、これに水性媒体を徐々に投入する方法、また、水性媒体中に塩基性化合物を添加しておき、これをポリエステル樹脂溶液に徐々に投入する方法等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂溶液と塩基性化合物の混合性を高める観点から、ポリエステル樹脂溶液に塩基性化合物を添加しておき、これに水性媒体を徐々に投入して転相乳化を行う方法が好ましい。
塩基性化合物は、アンモニアや、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、トリ-n-ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリドデシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、ジメチルアニリン等の有機アミン等が挙げられる。また、塩基性化合物として、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物も挙げられるが、得られる塗膜の耐水性が不足することがあるので好ましくない。
前記塩基性化合物の中でも、水性分散体の製造工程において、ポリエステル樹脂(A)が加水分解反応を起こすことを極力抑制することができるため、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリドデシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、ジメチルアニリン等の3級アミンがより好ましい。
また、得られる塗膜から塩基性化合物を揮散させやすいという観点から、塩基性化合物は、沸点が150℃以下であることがさらに好ましい。このような塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン等が挙げられる。
塩基性化合物の添加量は、ポリエステル樹脂(A)の酸価に対して、0.5~30倍当量であることが好ましく、1~20倍当量であることがより好ましい。この範囲の塩基性化合物を添加することで、安定性が良好な水性分散体が得られる。
転相乳化工程の反応温度は、10~40℃であることが好ましく、10~30℃であることがより好ましく、15~30℃であることがさらに好ましく、15~20℃であることが最も好ましい。反応温度が40℃を超えると、粘度が高くなりすぎて水性分散体が得られないか、得られたとしても分散安定性が劣るものとなる。反応温度が10℃未満であると、水性分散体は、ポリエステル樹脂(A)の分散性が低下し、粘度が急激に上昇し、攪拌が困難になり、均一なものが得られなくなることがある。
転相乳化工程における水性媒体の投入速度は、特に制限されないが、ポリエステル樹脂溶液と塩基性化合物との合計1000質量部に対して、25~100質量部/分であることが好ましい。投入速度が100質量部/分より速いと、ポリエステル樹脂(A)は、水性媒体に分散されにくい塊を形成し、体積平均粒子径が大きくなることがあり、水性分散体は、系内に不均一な部分が発生し、安定性が劣ることがある。投入速度が25質量部/分より遅いと、必要量の水性媒体を添加し終えるのに、多くの時間を費やしてしまうため、経済的に不利となる。
(自己乳化法)
次に自己乳化法について詳細に述べる。
自己乳化法における反応温度は40℃以上であることが好ましく、40~100℃であることがより好ましく、50~90℃であることがさらに好ましい。
自己乳化法の際に用いる装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(例えばホモミキサー)として知られている装置が挙げられる。
(脱溶剤工程)
脱溶剤工程では、ポリエステル樹脂(A)分散体を加熱し、溶解工程で用いた有機溶剤および/または塩基性化合物を除去して水性分散体を得る。脱溶剤は、常圧、減圧下いずれで行ってもよい。
脱溶剤工程に用いる装置としては液体を投入できる槽を備え、既述の範囲内の温度に制御が可能であり、適度な攪拌ができるものであればよい。
(他の成分)
本発明の水性分散体は、さらに他の成分を含有してもよい。他の成分としては、硬化剤、水、アルコール、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、他の水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性オレフィン樹脂、水性アクリル樹脂等の水性樹脂等を挙げることができる。
硬化剤としては、ポリエステル樹脂(A)が有する官能基、例えば、カルボキシル基やその無水物およびヒドロキシル基と反応性を有する硬化剤であれば特に限定されるものではなく、尿素樹脂やメラミン樹脂やベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有ポリマー、フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
(水性インキ組成物)
本発明の水性インキ組成物は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体と、顔料または染料とを含有してなるものである。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、鉛白、酸化亜鉛、グラファイト、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化鉄、マンガンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等が挙げられる。
顔料の含有量は、通常、水性インキ組成物の1~40質量%である。
染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、プロシオン染料、レマゾール染料、フタロシアニン系染料、含金染料などが挙げられる。
染料の含有量も、通常、水性インキ組成物の1~40質量%である。
(塗膜形成方法)
本発明において、水性インキ組成物を用いた塗膜の形成方法は、例えば、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法、カーテンフローコート法、ディッピング法、はけ塗り法等が挙げられ、これらの方法により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥および焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な塗膜を支持体表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや、赤外線ヒーターなどを使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である、支持体の種類などにより適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、通常60~250℃であり、70~230℃が好ましく、80~200℃がより好ましい。加熱時間としては、通常1秒~120分間であり、5秒~100分が好ましく、10秒~60分がより好ましい。
(塗膜)
本発明の水性分散体を用いた水性インキ組成物は、過酷な環境下でも長期保存安定性に優れ、得られる塗膜は、基材密着性、耐水性に優れる。また、本発明の水性インキ組成物は、看板や広告サイン、ポスターなどのメディア、衣類、包装材料などへの印刷用途で好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
なお、評価、測定方法、ポリエステル樹脂の原料と調製方法、水溶性有機溶剤は下記の通りである。
1.ポリエステル樹脂(A)の特性、ポリエステル樹脂水性分散体の特性、水性インキ組成物の特性
(1)ポリエステル樹脂(A)の構成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製、ECA500 NMR)を用いて、H-NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から樹脂組成を求めた(分解能:500MHz、溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸、温度:25℃)。また、H-NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解をおこなった後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析をおこなった。
(2)ポリエステル樹脂(A)の酸価
ポリエステル樹脂(A)を0.5g精秤し、水/1,4-ジオキサン=1/9(体積比)50mlに室温で溶解し、クレゾールレッドを指示薬として0.1Nの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定し、中和に消費されたポリエステル樹脂(A)1gあたりの水酸化カリウムのmg数(mgKOH/g)を酸価とした。
(3)ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量、重量平均分子量、分散度
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量を測定した。
[送液ユニット]:島津製作所社製LC-10ADvp
[紫外-可視分光光度計]:島津製作所社製SPD-6AV、検出波長:254nm
[カラム]:Shodex社製KF-803 1本、Shodex社製KF-804 2本を直列に接続して使用
[溶媒]:テトラヒドロフラン
[測定温度]:40℃
上記の数平均分子量(Mn)、および重量平均分子量(Mw)より、分散度を以下の式により求めた。
分散度=Mw/Mn
(4)ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度
ポリエステル樹脂(A)を10mg秤量し、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、Diamond DSC、検出範囲:-50℃~200℃)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、得られた昇温曲線中の、低温側ベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大となるような点で引いた接線との交点の温度を求め、ガラス転移温度とした。
(5)ポリエステル樹脂水性分散体の固形分濃度
ポリエステル樹脂分散体を約1g秤量(X1gとする)し、これを150℃で2時間乾燥した後の残存物の質量を秤量(Y1gとする)し、下記式により固形分濃度を求めた。
固形分濃度(質量%)=(Y1/X1)×100
(6)ポリエステル樹脂水性分散体のpH
pHメーター(堀場製作所社製F-21)を用いて、pH7およびpH9の標準緩衝液(ナカライテスク社製)により校正した後、測定温度25℃でポリエステル樹脂分散体のpHを測定した。
(7)ポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒子径、数平均粒子径
ポリエステル樹脂水性分散体について、粒度分布測定装置(日機装社製 Nanotrac Wave-UZ152型)を用いて、体積平均粒子径(Mv)、数平均粒子径(Mn)を測定した。なお、ポリエステル樹脂の屈折率は1.57、ポリエステル樹脂の密度は1.21g/cmとした。
(8)ポリエステル樹脂水性分散体と水性インキ組成物の安定性
ポリエステル樹脂水性分散体、水性インキ組成物を30g採取した後、50mLのガラス製サンプル瓶に密封し、(1)25℃で180日、(2)70℃で14日、(3)70℃で30日の条件で保存した。保存後、サンプル瓶から上澄み液を採取し、固形分濃度を測定し、下記式より、沈殿物の割合を計算し、分散安定性の評価を行った。
沈殿物の割合(質量%)={保存前の固形分濃度(質量%)-保存後の固形分濃度(質量%)}/{保存前の固形分濃度(質量%)}
◎:沈殿物の割合が0.3質量%未満
○:沈殿物の割合が0.3質量%以上、0.5質量%未満
△:沈殿物の割合が0.5質量%以上、1.0質量%未満
×:沈殿物の割合が1.0質量%以上
××:該組成物が固化していて上澄みが採取できない
2.塗膜の特性
(1)密着性(碁盤目試験)
PETフィルム(ユニチカ社製、S-75、厚み75μm)のコロナ処理面に、乾燥後の膜厚が1μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、140℃で2分間乾燥させた。得られた積層フィルムを室温で1日放置後、JIS K5400記載のクロスカット法によるテープ剥離(碁盤目試験)をおこなった。すなわち、クロスカットにより、塗膜を100区間にカットし、テープ剥離後、残留した塗膜の区間数で、以下の基準により密着性を評価した。
◎:100区間残留
○:95~99区間残留
△:90~94区間残留
×:残留が89区間以下
(2)耐水性
アルミニウム蒸着PETフィルムのアルミニウム蒸着面に、乾燥後の膜厚が1μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布し、150℃で20秒乾燥した。得られた積層フィルムをイオン交換水に20℃で24時間浸漬し、風乾させた後、塗膜の外観を目視にて観察し、以下の基準で耐水性を評価した。
○:外観変化がなかった。
△:一部分で表面が白く曇った。
×:表面状態が変化(表面全体が白く曇る、もしくは膨潤等)した。
3.ポリエステル樹脂の原料
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
SEA:セバシン酸
EG:エチレングリコール
1,2-PD:1,2-プロパンジオール
NPG:ネオペンチルグリコール
TMA:トリメリット酸
4.ポリエステル樹脂(A)の調製
ポリエステル樹脂(A1)
テレフタル酸(TPA)386g、イソフタル酸(IPA)386g、エチレングリコール(EG)208g、ネオペンチルグリコール(NPG)305gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。この時のモノマー成分の配合は、テレフタル酸:イソフタル酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール=50:50:72:63(モル比)とした。次いで、触媒として三酸化二アンチモンを0.27g(全酸成分の合計1モルあたり2×10-4モル)、熱安定剤としてリン酸トリエチルを0.17g(全酸成分の合計1モルあたり2×10-4モル)添加した後、系の温度を270℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、220℃になったところでトリメリット酸(TMA)を5.9g(全酸成分の合計1モルあたり0.006モル)添加し、220℃で2時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておき払い出した。これを室温まで冷却し、ポリエステル樹脂(A1)を得た。
ポリエステル樹脂(A2~6)
仕込組成を、表1のように変更した以外は、ポリエステル樹脂(A1)と同様にして、ポリエステル樹脂(A2)~(A6)をそれぞれ得た。
ポリエステル樹脂(A1)~(A6)の仕込組成、最終樹脂組成および特性値を表1に示す。
Figure 2024063760000001
5.水溶性有機溶剤(B)
B1:1,2-プロパンジオール
B2:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
B3:イソブタノール
B4:1,3-プロパンジオール
B5:1,3-ブタンジオール
B6:2-メチル-1,3-プロパンジオール
B7:トルエン
B8:アセトン
実施例1
[溶解工程]
2Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂(A1)を400g、メチルエチルケトンを600g投入し、系内温度が70℃になるように加熱攪拌し、ポリエステル樹脂(A1)をメチルエチルケトンに完全に溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂(A1)溶液を得た。
[転相乳化工程]
ガラス容器(内容量2L)に、前記ポリエステル樹脂(A1)溶液を500g仕込み、系内温度を22℃に保ちながら攪拌し、塩基性化合物としてトリエチルアミンを3.8g(ポリエステル樹脂(A1)の酸価に対して1.5倍当量)添加した。続いて40g/分の速度で22℃のイオン交換水580gを添加し、その後、攪拌を30分間続けた。蒸留水を全量添加する間の系内温度は22±1℃、蒸留水添加終了後の固形分濃度は18質量%、転相乳化工程の完了は溶解工程終了から2時間経過後であった。
[脱溶剤工程]
得られたポリエステル樹脂(A1)の分散体800gと、水溶性有機溶剤(B1)として1,2-プロパンジオール100gを丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱し、常圧で水性媒体を420g留去した。その後、室温まで冷却し、さらに攪拌しながら、28質量%アンモニア水0.5gを添加し、最後に固形分濃度が30質量%となるようにイオン交換水を加えて、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
[水性インキ組成物の調製]
得られたポリエステル樹脂水性分散体100gにさらに顔料として、C.I.Pigment Red 104(C1)1gを加えて、水性インキ組成物を得た(実施例1-1)。同様に、染料として、C.I.Basic Violet 14(C2)を1g、また、C.I.Disperse Black 1(C3)1gをそれぞれ加えて、水性インキ組成物を得た(実施例1-2、3)。
実施例2
ポリエステル樹脂(A2)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を8.1g(ポリエステル樹脂(A2)の酸価に対して1.5倍当量)とすること以外は、実施例1と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
実施例3
[自己乳化工程]
ガラス容器(内容量2L)に、ポリエステル樹脂(A3)を185g、イソプロピルアルコール200g、トリエチルアミン9.0g(ポリエステル樹脂(A1)の酸価に対して1.0倍当量)、イオン交換水を606g仕込み、撹拌をしながら昇温した。続いて、70℃に到達した時点から2時間さらに撹拌を続けた。その時系内温度は73±3℃とした。2時間経過後、徐々に降温した。
[脱溶剤工程]
得られたポリエステル樹脂(A3)の分散体800gと、水溶性有機溶剤(B1)として1,2-プロパンジオール100gを丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱し、常圧で水性媒体を420g留去した。その後、室温まで冷却し、さらに攪拌しながら、28質量%アンモニア水0.5gを添加し、最後に固形分濃度が30質量%となるようにイオン交換水を加えて、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
実施例4~8、比較例4~5
水溶性有機溶剤(B)の種類を表2、3に示すものに変更すること以外は、実施例1と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
実施例9
水溶性有機溶剤(B1)を、脱溶剤工程ではなく溶解工程で添加することに変更する以外は、実施例1と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
実施例10
水溶性有機溶剤(B1)を脱溶剤工程ではなく転相乳化工程で添加することに変更する以外は、実施例1と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
実施例11
実施例1と同様に溶解工程、転相乳化工程をおこなった。得られたポリエステル樹脂(A1)の分散体800gを丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱し、常圧で水性媒体を420g留去した。その後、室温まで冷却し、さらに攪拌しながら、28質量%アンモニア水0.5g、水溶性有機溶剤(B1)として1,2-プロパンジオール100gを添加し、最後に固形分濃度が30質量%となるようにイオン交換水を加えて、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
比較例1
ポリエステル樹脂(A4)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を7.2g(ポリエステル樹脂(A4)の酸価に対して10倍当量)とすること以外は、実施例1と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
比較例2
ポリエステル樹脂(A5)を用い、転相乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を7.6g(ポリエステル樹脂(A5)の酸価に対して3.0倍当量)とすること以外は、実施例1と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂分散体を得た。
比較例3
ポリエステル樹脂(A6)を用い、自己乳化工程時に用いる、トリエチルアミンの配合を18g(ポリエステル樹脂(A6)の酸価に対して1.0倍当量)とし、イオン交換水を582gとすること以外は、実施例3と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
比較例6
水溶性有機溶剤(B1)を脱溶剤工程で添加しない以外は、実施例1と同様の調製を行い、ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
ポリエステル樹脂分散体の構成、調製条件、特性、また、得られた塗膜の特性を表2、3に示す。
Figure 2024063760000002
Figure 2024063760000003
実施例のポリエステル樹脂水性分散体あるいは水性インキ組成物は、安定性が良好であり、密着性、耐水性に優れた塗膜を形成することができた。
比較例1のポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂(A4)の酸価が3mgKOH/g未満であったため、安定性が劣るものであった。比較例2のポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂(A5)のガラス転移温度が30℃以下であったため、安定性が劣るものであった。比較例3のポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂(A6)の数平均分子量が3000未満であったため、得られた塗膜は、密着性が劣るものであった。
比較例4のポリエステル樹脂水性分散体は、水溶性有機溶剤(B7)の20℃における水への溶解度が50g/L未満であったため、安定性が劣るものであった。比較例5のポリエステル樹脂水性分散体は、水溶性有機溶剤(B8)の沸点が100℃未満であったため、安定性が劣るものであった。比較例6のポリエステル樹脂水性分散体は、水溶性有機溶剤(B)を含有していないため、安定性が劣るものであった。

Claims (2)

  1. ポリエステル樹脂(A)と水性媒体とを含有し、
    ポリエステル樹脂(A)は、酸価が3mgKOH/g以上であり、ガラス転移温度が30℃を超え、数平均分子量が3000以上であり、
    水性媒体は、20℃における水への溶解度が50g/L以上であり、沸点が100℃以上である水溶性有機溶剤(B)を含有することを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
  2. 請求項1記載のポリエステル樹脂水性分散体と、顔料または染料とを含有してなる水性インキ組成物。

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