JP7307551B2 - Ptp用多層シート - Google Patents

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本発明は、耐黄変性に優れた新規なPTP用多層シートに関する。
さらに詳細には、本発明は、耐黄変性に優れ、かつ好ましくは有機溶剤含有量が大幅に低減された、食品または医薬品包装のためのPTP用多層シートに関する。
長期の品質保持が要求される食品や医薬品等の包装材料として、酸素透過率や水蒸気透過率が改善された積層プラスチックシートが知られている。また近年、包装用の積層材料におけるアンカーコート層として、各層の密着性、特に塩化ビニル層と塩化ビニリデン系樹脂層との密着性をより向上させる材料として、種々のアンカーコート剤が開発されている。
例えば、特許文献1には、塩化ビニル等で形成された2枚の硬質プラスチックシートの各々の片面に塩化ビニリデン系共重合体樹脂エマルジョンを塗布し、その塗布面の中間に溶融ポリエチレンを押し出し、固着せしめることを含む、熱成型用積層プラスチックシートの製造方法が開示されている。
また、特許文献1には、各層の接着性・密着性、具体的には塩化ビニル層と塩化ビニリデン系樹脂層との密着性、あるいはポリエチレン層と塩化ビニリデン系樹脂層との密着性を改善するためのアンカーコート層として、アルキルチタネート系、ポリイソシアネート系、およびアルキレンイミン系のアンカーコート剤を用い得ることが記載されている。当該文献の実施例では、ポリイソシアネート系のアンカーコート剤が用いられた。
一方、医薬品や食品等の包装のため、カプセルや錠剤等の固形剤、粒状の食品等を包装するためにPTP(プレス・スルー・パッケージ)が広く使用されている。
PTPは、例えば、透明シートを加熱し、圧空成形、真空成形等を施すことでカプセルや錠剤等の固形物を収納するポケット部を形成し、次いでポケット部にカプセル等を収納し、例えばアルミ箔等の引裂・開封が可能な材質の箔やフィルムを蓋材として貼り合せて一体化した包装を指す。
PTPのポケット部の包装材としては、医薬品や食品等の包装対象製品の性質に鑑み、長期の品質保存性を確保するのに十分なレベルの水蒸気透過率(WVTR)または酸素透過率、機械的強度等の各種物性が求められている。
例えば、特許文献2には、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)からなる層(i)、及び、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)からなる層(ii)を、層(i)/層(ii)/層(i)の順に積層してなり、所定の吸光度比を有する材料を用いたPTP用多層シートが開示されている。当該文献には、塩化ビニル層と塩化ビニリデン系樹脂層との接着性向上のため、アルキルチタネート系化合物、ポリイソシアネート系化合物、ポリアルキレンイミン系化合物、ポリウレタン系樹脂等のアンカーコート剤を用い得ることが、記載されている。
これらのアンカーコート剤の中でも、ポリウレタン系のアンカーコート剤は最も高い密着性を有することが知られており、広く市販・使用されている。このようなポリウレタン系のアンカーコート剤の例としては、BASF社から市販されている「Emuldur 381A」が挙げられる。
特公昭49-24587号公報 特許第6022311号公報
PTPのポケット部の包装材としては、医薬品や食品等の包装対象製品を外部から正しく視認することが可能なように、長期に渡って大きな経時変化なしに透明性が持続されることが求められる。
しかし、PTP用多層シートにおいて、ポリ塩化ビニル系樹脂層とポリ塩化ビニリデン系樹脂層との接着性向上のためにアンカーコート剤としてポリウレタン系樹脂を用いた場合には、多層シートの加熱成型または多層シートと金属箔との一体成形の際や、多層シート成型後の経時劣化(特に常温以上での保管による劣化など)により黄変が生じるという不都合があることが分かった。このような黄変はポリエステルやポリオール等からなる主剤とイソシアネートからなる硬化剤との反応によりポリウレタンを生成する際にわずかに残留したイソシアネートや、ポリウレタン生成後に分解することでわずかに生成したイソシアネートが水分と反応してアミンが生成し、ポリ塩化ビニルまたはポリ塩化ビニリデンにこのアミンが作用して脱塩酸し、分子中に二重結合が形成されるためであると考えられる。
また、PTPのポケット部の包装材は、医薬品や食品等を包装対象製品としており、健康被害を防止する必要性から、包装材の製造工程で使用された有機溶剤(特に健康に対する影響が大きいベンゼン類など)の残留量を極力少なくすることが望ましい。
従って、本発明の課題は、耐黄変性に優れ、かつ残留溶剤の含有量が小さい、新規なPTP用多層シートを提供することである。
また、本発明の更なる課題は、耐黄変性に優れ、残留溶剤の含有量が小さく、かつ非常に高いバリア性(酸素/水蒸気に対する)を有する、新規なPTP用多層シートを提供することである。
上記課題を解決するための本発明の諸態様は、以下のとおりである。
[1].
水性分散体(L)を含む第1の層(L1)を介して、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)とポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)とを積層してなるPTP用多層シートであって、この水性分散体(L)は、オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とから形成されたポリオレフィン共重合体の樹脂粒子を含み、このポリオレフィン共重合体の全構成モノマーに対する不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が0.01~5質量%であり、この樹脂粒子の数平均粒子径が1μm以下であり、且つ不揮発性水性化助剤を実質的に含まない、上記PTP用多層シート。
[2].
前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)の1046cm-1/1070cm-1の吸光度比から求められる相対結晶化度が1.45以上である、上記[1]項に記載のPTP用多層シート。
[3].
更に、ポリエチレン系樹脂(C)を含む内部補強層(C1)を含み、
この内部補強層(C1)は、前記水性分散体(L)を含む第2の層(L2)を介して、前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)に積層されており、
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)またはポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)が、前記水性分散体(L)を含む第3の層(L3)を介して、前記内部補強層(C1)に積層されている、上記[1]または[2]項に記載のPTP用多層シート。
[4].
更に、ポリエチレン系樹脂(C)を含む内部補強層(C1)を含み、
この内部補強層(C1)は、前記水性分散体(L)を含む第2の層(L2)を介して、前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)に積層されており、
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)が、前記水性分散体(L)を含む第3の層(L3)を介して、前記内部補強層(C1)に積層されており、
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)が、前記水性分散体(L)を含む第4の層(L4)を介して、前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)に積層されている、上記[1]または[2]項に記載のPTP用多層シート。
[5].
前記ポリエチレン系樹脂(C)が、0.91~0.93g/cmの密度、ならびに、190℃および2.16kg荷重で測定された3g/10分以下のメルトマスフローレート(MFR)を有する低密度ポリエチレンであり、かつ
前記内部補強層(C1)の厚みが15~80μmである、上記[3]または[4]項に記載のPTP用多層シート。
[6].
医薬品包装用である、上記[1]~[5]項のいずれか1項に記載のPTP用多層シート。
なお、本明細書において「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。
また、本明細書において「シート」の用語は、「フィルム」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。
本明細書において数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。
本願の実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。
本発明によれば、耐黄変性に優れ、かつ残留溶剤の含有量が小さいPTP用多層シートを得ることができる。
また、本発明の所定の態様によれば、耐黄変性に優れ、残留溶剤の含有量が小さく、かつ非常に高い酸素・水蒸気バリア性を有するPTP用多層シートを得ることができる。
さらに、本発明の所定の態様によれば、上記諸特性に加えて、耐衝撃性に優れたPTP用多層シートを得ることができる。
図1は、本発明の第1の態様(基本構造)に係るPTP用多層シートの模式図である。 図2は、本発明の第2の態様に係るPTP用多層シートの模式図である。 図3は、本発明の第3の態様に係るPTP用多層シートの模式図である。
(1)本発明に係るPTP用多層シートの第1の態様(基本構造)
本発明に係るPTP用多層シートは、水性分散体(L)を含む第1の層(L1)を介して、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)とポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)とを積層してなる基本構造(A1)/(L1)/(B1)を含む。
理解容易化のため、図1に、本態様(基本構造)に係るPTP用多層シートの模式図を示す。図1において、参照番号1はポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)を示し、参照番号2は水性分散体(L)(アンカーコート剤)を含む第1の層(L1)を示し、参照番号3はポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)を示す。また、図1において、「PVC」はポリ塩化ビニルの略号であり、「PVDC」はポリ塩化ビニリデンの略号であり、「AC」はアンカーコートの略号である(図2、3においても同様)。
この水性分散体(L)は、オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とから形成されたポリオレフィン共重合体の樹脂粒子を含み、このポリオレフィン共重合体の全構成モノマーに対する不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が0.01~5質量%であり、この樹脂粒子の数平均粒子径が1μm以下であり、且つ不揮発性水性化助剤を実質的に含まない。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む層
本発明に用いることができるポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは600~1,300であってよい。ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度が600以上であることによって、十分な機械強度の多層シートを得ることができる。一方、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度が1,300以下であることによって、溶融粘度の増加に伴う発熱が生じることなく、樹脂の分解による着色の発生を少なくすることができる。
このような観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度は、600~1,100であることがより好ましく、650~900であることがさらに好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)としては、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下「塩化ビニル系共重合体」と称する)、この塩化ビニル系共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体(以下「塩化ビニル系グラフト共重合体と称する)などを挙げることができる。
塩化ビニル系共重合体は、得られる多層シートの機械的特性の観点から、共重合体中に占める塩化ビニルの割合が60~99質量%であることが好ましい。
塩化ビニルの単独重合体、及び、塩化ビニル系共重合体は、任意の公知の方法、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造することができる。
ここで、塩化ビニル系共重合体を構成する塩化ビニルと共重合可能な単量体は、分子中に反応性二重結合を有するものである限り、特に限定されない。このような単量体の例としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα-オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのN-置換マレイミド類などを挙げることができる。これらの単量体は、単独、又は、2種以上の組み合わせで用いることができる。
塩化ビニル系共重合体以外の重合体は、塩化ビニルをグラフト共重合できるものである限り、特に限定されない。この重合体の例としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどを挙げることができる。これらの重合体は、単独、又は、2種以上の組み合わせで用いることができる。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を添加してもよい。
このような添加剤の例としては、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の熱安定性を向上するための安定剤、衝撃改良剤、滑剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、PVC以外の樹脂などが挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の熱安定性を向上するための安定剤の例としては、カルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物であるCa-Zn系安定剤が挙げられる。脂肪酸の例としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられる。その他の安定剤の例としては、アルキル錫マレー、アルキル錫ラウレート、アルキル錫メルカプト、錫メルカプト酸エステルなどが挙げられる。
衝撃改良剤の例としては、MBS樹脂、ABS樹脂、ブチルアクリレートを主成分とするアクリルゴムなどが挙げられる。この中でも、衝撃改良剤としてMBS樹脂を用いることが最も好ましい。MBS樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の総量100質量%に対して通常3~20質量%程度、好ましくは5~19質量%の量で用いられてよい。
滑剤の例としては、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩などが挙げられる。
紫外線吸収剤の例としては、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
可塑剤の例としては、エポキシ化植物油(例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油)、フタル酸エステル類(例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート)、ポリエステル系可塑剤(例えば、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸などの二塩基酸と1,2-プロパンジオール、ブタンジオールなどグリコール類とのポリエステル)等が挙げられる。この中でも、可塑剤としてはエポキシ化大豆油等のエポキシ化植物油を用いることが最も好ましい。エポキシ化大豆油等の可塑剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の総量100質量%に対して通常0.5~15質量%程度、好ましくは1~10質量%の量で用いられてよい。
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)の厚みは、特に限定されるわけではないが、機械的強度および酸素・水蒸気バリア性のバランスの観点から、通常30~300μm程度、好ましくは40~300μmであってよい。
基本構造(A1)/(L1)/(B1)からなる積層体である多層シートの場合、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)の厚みは、通常100~300μm程度であり、好ましくは120~300μmであってよい。
後述の内部補強層(C1)を含む積層体である多層シートの場合、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)の厚みは、通常30~200μm程度であり、好ましくは40~180μmであってよい。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む層
本発明に用いることができるポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)は、塩化ビニリデンを含んでなる樹脂である限りは特に限定されないが、好ましい例として、塩化ビニリデン単量体が70~95重量%の共重合組成を有する塩化ビニリデン系共重合体ラテックスが挙げられる。
塩化ビニリデン系共重合体の共重合組成において塩化ビニリデン単量体が70重量%以上であることによって、得られる多層シートの酸素・水蒸気バリア性の改良効果を得ることができる。また、共重合組成において塩化ビニリデン単量体が95重量%以下であることによって、重合反応性が保たれると共に、十分なエマルジョン安定性を得ることができる。
塩化ビニリデン系共重合体の形成において、塩化ビニリデンと共重合する単量体の例としては、塩化ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、酢酸ビニル、またはこれらの1種または複数種の混合物が挙げられる。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)としての塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの好ましい具体例として、以下が挙げられる:
塩化ビニリデン85~95重量部、及び、塩化ビニリデンと共重合可能なモノマー5~15重量部(塩化ビニリデン及び塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーの合計は100重量部)を含んでなる塩化ビニリデン系共重合体ラテックスであり、塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーが、塩化ビニリデン及び塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーの合計100重量部に基づいて、メタクリル酸メチル4~10重量部、メタアクリロニトリルまたはアクリロニトリル0.3~5重量部、アクリル酸0~2重量部を含む、塩化ビニリデン系共重合体ラテックス。
本態様の塩化ビニリデン系共重合体ラテックスは、任意選択で、これら以外のモノマーを含んでよく、含まなくてもよい。通常、この塩化ビニリデン系共重合体ラテックスは、これら以外のモノマーを含まない。
これらのモノマーの組成について、塩化ビニリデン及び塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーの合計を100重量部とするとき、十分な酸素・水蒸気バリア性を得る観点から、塩化ビニリデン(以下、VDCと略すことがある)の含有量は85~95重量部であり、好ましくは90~93重量部であってよい。他方で、VDCと共重合可能なモノマーの含有量は5~15重量部であり、好ましくは7~10重量部であってよい。
典型的に、本態様の塩化ビニリデン系共重合体ラテックスは、ラテックスの総重量に基づいて、VDC85~95重量%、及び、VDCと共重合可能なモノマー5~15重量%を含んでなる。この場合、塩化ビニリデン及び塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーの合計は、100重量%であってよい(ラテックスは、これら以外のモノマーを含まずに構成されてよい)。好ましくは、上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスは、VDC90~93重量%、及び、VDCと共重合可能なモノマー7~10重量%を含んでよい。
本態様において、VDCと共重合可能なモノマーは、メタクリル酸メチル(MMA)、メタアクリロニトリル(MAN)またはアクリロニトリル(AN)、及びアクリル酸(AA)を含み、好ましくは、MMA、及びANまたはMANからなる。VDCと共重合可能なモノマーは、好ましくは、アクリル酸メチル(MA)を含まない。
本態様において、VDCと共重合可能なモノマーは、VDC及びVDCと共重合可能なモノマーの合計100重量部に基づいて、MMAが4~10重量部、MANまたはANが0.3~5重量部であり、より好ましくは組成中のMMAのMAN(またはAN)に対する重量比が1.0以上(MMA/MANまたはAN≧1.0)であってよい。この範囲内であることにより、上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスを含む層を有するフィルムは、そのバリア性を保持したまま、ポリマーの変色(黄変)及び結晶化を抑制し、柔軟性を付与することが可能になる。より好ましい実施形態では、VDC及びVDCと共重合可能なモノマーの合計100重量部に基づいて、MMAが5~8重量部、MANまたはANが0.4~2重量部であってよい。また、他のより好ましい実施形態において、組成中のMMAのMAN(またはAN)に対する重量比は、3.0以上であり、さらに好ましくは5.0以上であってよい。
さらに、VDCと共重合可能なモノマーにおいて、VDC及びVDCと共重合可能なモノマーの合計100重量部に基づくAAの含有量は0~2.0重量部であり、より好ましくは0~1.0重量部であってよい。この範囲であると、上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスは、熱と機械シアによる凝集が抑制され、塗工性が向上し得る。
上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスは、単量体混合物を乳化重合することによって製造することができる。特に限定されないが、乳化重合は、通常、30~70℃の温度で行われる。重合温度は、好ましくは40~60℃の範囲内であってよい。重合温度を70℃以下にすることにより、重合中の原料の分解が抑えられるため、好ましい。重合温度を30℃以上にすることにより、重合速度を上げることができるので、重合の効率が良くなる。重合時の媒体として例えば水又はメタノールを使用することができるが、好ましくは水のみを使用してよい。
上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの乳化重合に用いる塩化ビニリデン及び塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーは、例えば重合前に予め所定量を混合し、連絡的に投入してもよく、及び/または、段階的にバッチ投入してもよい。連続投入する場合の単量体の添加速度は、例えば重合温度を50℃とする場合は、添加する単量体の総重量の内の70%以上を17~30時間、好ましくは19~30時間、更に好ましくは21~30時間をかけて添加する程度が好ましい。連続添加する時間は、重合温度によって最適化することが好ましい。好ましい一態様は、重合初期に単量体をバッチ投入し、後に残量を連続投入する方法である。単量体の連続投入を行うことにより、共重合体の重合度を調整することができ、共重合体の重量平均分子量を最適な範囲に調整することが可能となり、重合を効率的に行うことができる。
上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの乳化重合に用いることができる界面活性剤として、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩などの陰イオン性界面活性剤が挙げられる。重合開始剤として、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、tーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。重合活性剤として、例えば亜硫酸水素ナトリウムのような開始剤のラジカル分解を加速する重合活性剤が挙げられる。
これら重合添加剤は、特に限定されず、例えば本技術分野において従来から好ましく使用されている種類であってよい。これらの物質はラテックスから生成させた塗膜中に残存してバリア性を劣化させる要因となりうるので、その使用量は可能な限り少量であることが好ましい。
上記ラテックスを構成する塩化ビニリデン系共重合体の重合度は、例えば重合に供する単量体の一部を速度調整しながら連続添加して重合することにより、最適な範囲内に調整することができる。その重合度の尺度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw、及び数平均分子量Mnによって判断される。一実施形態において、上記ラテックスを構成する塩化ビニリデン系共重合体の重量平均分子量Mwは、通常12万~30万であり、好ましくは12万~22万である。数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)は、通常3.0以下である。
上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスに含まれる塩化ビニリデン系共重合体粒子は、特に限定されないが、その平均粒径は100~200nmであることが好ましい。平均粒径をこの範囲とすることで、ラテックスの貯蔵安定性が良く、塗工性が向上する。
上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスの固形分は、特に限定されないが、通常40~70重量%である。
また、上記塩化ビニリデン系共重合体ラテックスに、必要に応じて、一般的に使用されている種々の成分、たとえば、消泡剤、レオロジー調整剤、増粘剤、分散剤、及び、界面活性剤等の安定化剤、湿潤剤、可塑剤、着色剤、ワックス、シリコーンオイルなどを添加してもよい。また、このラテックスに、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機フィラー、着色顔料、体質顔料等を配合して使用することも可能である。
一態様において、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)(典型例として塩化ビニリデン系共重合体ラテックス)は、高い酸素・水蒸気バリア性を得る観点から、1046cm-1/1070cm-1の吸光度比から求められる相対結晶化度が1.45以上であることが好ましい。この相対結晶化度は、1.50以上であることがより好ましい。
ここで、1046cm-1/1070cm-1の吸光度比は、以下の方法で算出することができる。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を、乾燥後の塗布量が約8g/mとなるように二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下「OPPフィルム」と称する)に塗布し、次いで、80℃で15秒間乾燥した後、40℃で16時間熱処理を施す。次にフーリエ変換赤外分光光度計を用いて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)が塗布されたOPPフィルムの1200~800cm-1のスペクトルを測定する。得られたスペクトルにおいて、1100cm-1と850cm-1を線で結び、この線をベースとして1046cm-1と1070cm-1のピーク強度を測定し、吸光度比(1046cm-1の吸光度/1070cm-1の吸光度)を算出する。この吸光度比が大きい方が、結晶化度が高いことを示す。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)の厚みは、特に限定されるわけではないが、機械的強度および酸素・水蒸気バリア性のバランスの観点から、通常3~200μm程度、好ましくは5~100μm、さらに好ましくは10~50μmであってよい。
水性分散体(L)を含む層
本発明に用いられる水性分散体(L)は、オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とから形成されたポリオレフィン共重合体の樹脂粒子を含み、このポリオレフィン共重合体の全構成モノマーに対する不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が0.01~5質量%である。この樹脂粒子の数平均粒子径は1μm以下である。水性分散体(L)は、不揮発性水性化助剤を実質的に含まない。
このように水性分散体(L)にポリオレフィン共重合体の樹脂粒子を用いることによって、ポリ塩化ビニルまたはポリ塩化ビニリデンの脱塩酸を起こすアミンを生じることがないので、分子中に二重結合が形成されず、黄変が効果的に防止され得る。
以下では、オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とから形成されたポリオレフィン共重合体を「酸変性ポリオレフィン樹脂」(または単に「ポリオレフィン樹脂」)と称することがある。また、以下では、「不飽和カルボン酸またはその無水物」と共重合(すなわち酸変性)されていないポリオレフィンを「未変性ポリオレフィン樹脂」等と称することがある。
水性分散体(L)は、上記の要件を満たす限り、特に限定されない。
ポリオレフィン共重合体を構成するポリオレフィン成分の好ましい例としては、エチレンおよび/またはプロピレン(A)とそれ以外のオレフィン(B)とから構成される共重合体を挙げることができる。
この態様において、エチレンおよび/またはプロピレン(A)と、(A)以外のオレフィン(B)との質量比(A/B)は、水性分散体の密着性向上や、ポリオレフィン共重合体の分散粒子径を小さくする観点から、60/40~99/1であることが好ましい。この質量比は、より好ましくは、60/40~97/3、60/40~95/5、60/40~80/20、70/30~97/3、70/30~95/5、または70/30~80/20であってよい。
エチレンまたはプロピレン以外のオレフィン(B)の例としては、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、ノルボルネン類等のアルケン類、ブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン共重合体の製造容易性、水性化の容易性等の観点から、あるいは密着性の観点から、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等のα-オレフィンが好ましい。
オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物との共重合の形態は、特に限定されるものではなく、その例としてランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。重合の容易性の観点からは、ランダム共重合されていることが好ましい。また、必要に応じて、複数種のポリオレフィン共重合体を混合使用してもよい。
水性分散体(L)に含まれるポリオレフィン共重合体の全構成モノマーに対する不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量は、水性媒体への分散性(ポリオレフィンの水性化の向上)や水性分散体の密着性改善のバランスの観点から、通常0.01~5質量%である。ポリオレフィン共重合体の全構成モノマーに対する不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量は、好ましくは、0.01~3質量%、0.01~1質量%、0.01~0.8質量%、0.01~0.5質量%、0.05~5質量%、0.05~3質量%、0.05~1質量%、0.05~0.8質量%、0.05~0.5質量%、0.1~5質量%、0.1~3質量%、0.1~1質量%、0.1~0.8質量%、0.1~0.5質量%、0.2~5質量%、0.2~3質量%、0.2~1質量%、0.2~0.8質量%、または0.2~0.5質量%であってよい。
不飽和カルボン酸(またはその無水物)成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物も用いることができる。中でも、エチレンおよび/またはプロピレン(A)とそれ以外のオレフィン(B)とを含有する未変性のポリオレフィン樹脂への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
ポリオレフィン共重合体に導入された酸無水物単位は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する水性媒体中ではその一部または全部が開環する傾向がある。
不飽和カルボン酸またはその無水物を未変性ポリオレフィン樹脂へ導入する方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル発生剤存在下、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分とを未変性ポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸成分をグラフト共重合する方法が挙げられる。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド、tert-ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ-tert-ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。
ポリオレフィン共重合体は、必要に応じて上記以外の他の成分を含んでいてよい。このような他の成分の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類並びにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄、およびこれらの混合物等が挙げられる。
これらの他の成分の含有量は、通常、ポリオレフィン共重合体の10質量%以下であってよい。
ポリオレフィン共重合体の重量平均分子量は、水性分散体の密着性向上および製造容易性の観点から、5,000~300,000であることが好ましい。この重量平均分子量は、より好ましくは、5,000~250,000、5,000~200,000、5,000~150,000、5,000~120,000、5,000~100,000、10,000~300,000、10,000~250,000、10,000~200,000、10,000~150,000、10,000~120,000、10,000~100,000、20,000~300,000、20,000~250,000、20,000~200,000、20,000~150,000、20,000~120,000、20,000~100,000、30,000~300,000、30,000~250,000、30,000~200,000、30,000~150,000、30,000~120,000、30,000~100,000、35,000~300,000、35,000~250,000、35,000~200,000、35,000~150,000、35,000~120,000、または35,000~100,000であってよい。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。
ポリオレフィン共重合体の融点は、特に限定されないが、水性分散体の密着性や造膜性の観点から、20~150℃の範囲であることが好ましく、20~100℃であることがより好ましい。
ポリオレフィン共重合体のメルトフローレート値(ISO1133に準じて190℃、21.2N荷重にて測定)は、水性分散体の密着性および製造容易性の観点から、0.01~1000g/10分であることが好ましく、0.05~500g/10分であることがより好ましく、0.1~300g/10分であることがさらに好ましく、0.5~100g/10分であることが特に好ましい。
本発明の水性分散体は、上記のポリオレフィン共重合体と水性媒体とを含有するものである。ポリオレフィン共重合体は、水性媒体中に分散もしくは溶解されている。水性媒体は、水を主成分とする液体である。
水性分散体の製造時には、ポリオレフィン共重合体の水性化を促進し、分散粒子径を小さくする目的で、水性媒体中に、必要に応じ、水以外に有機溶剤(親水性(水溶性)有機溶剤や疎水性有機溶剤)を含ませてよい。
水性分散体の製造時に有機溶剤を用いた場合には、後述するように、ストリッピング等によってこれを極力少ない量に至るまで(限りなくゼロに近づくように)除去することが好ましい。
また、不飽和カルボン酸成分を中和するために必要な場合には、塩基性化合物を用いることができるが、臭気や安全性に配慮して、より少ない量で(通常5倍当量以下で)用いるのがよい。
一実施形態では、水性分散体の製造時にポリオレフィン共重合体(酸変性ポリオレフィン樹脂)100質量%に対して添加し得る塩基性化合物の量は、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下であってよい。得られる水性分散体は、塩基性化合物を実質的に含まないものであってよい(水性分散体において、ポリオレフィン共重合体100質量%に対し1質量%以下であってよい)。
水性分散体の製造時に用いることができる塩基性化合物の例としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、2-メトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2,2-ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ピロール、ピリジン、およびこれらの混合物等が挙げられる。
水性分散体の製造時に用いることができる親水性有機溶剤は、分散安定性が良好な水性分散体を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。また、親水性有機溶剤としては、製膜過程で効率良く塗膜から除去させる観点から、および低温乾燥時の塗膜の耐水性や基材との接着性を向上させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。
このような親水性有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2-ジメチルグリセリン、1,3-ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン、およびこれらの混合物等が挙げられる。
水性分散体の製造時における親水性有機溶剤の含有量は、通常、水性媒体全体に対し50質量%以下であってよい。その含有量は、好ましくは1~45質量%であってよく、より好ましくは2~40質量%であってよく、さらに好ましくは3~35質量%であってよい。
水性分散体の製造時に用いることができる疎水性有機溶剤としては、20℃の水に対する溶解性が10g/L未満であり、沸点が150℃以下である有機溶剤が好ましい。そのような疎水性有機溶剤の例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等のオレフィン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、これらの混合物などが挙げられる。このような疎水性有機溶剤の添加量は、通常、水性分散体に対して15質量%以下であってよい。
本発明の水性分散体において、水性分散体中に分散しているポリオレフィン共重合体の樹脂粒子の数平均粒子径は、低温造膜性、塗膜の緻密性や透明性、他材料との混合安定性などの観点から、通常1μm以下である。この数平均粒子径は、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.8μm以下、さらにより好ましくは0.7μm以下、最も好ましくは0.6μm以下であってよい。
水性分散体におけるポリオレフィン共重合体の含有量は、製膜条件や塗膜の厚み、性能等に応じて適宜選択でき、特に限定されない。この含有量は、水性分散体の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる観点から、1~60質量%であることが好ましく、3~55質量%であることがより好ましく、5~50質量%であることがさらに好ましく、10~45質量%であることが特に好ましい。
本発明の水性分散体は、不揮発性の水性化助剤を実質的に含まない。水性化助剤を用いずとも、本発明による酸変性されたポリオレフィン共重合体を水性媒体中に微細かつ安定的に分散することは可能である。これにより、当該水性分散体は、低温乾燥における塗膜特性、特に耐水性、密着性、ヒートシール性が優れており、これらの性能は長期的にもほとんど変化しない。
ここでの「水性化助剤」は、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物を指す。また、ここでの「不揮発性」は、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
本明細書における「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした水性化助剤を製造時(樹脂の水性化時)に用いず、得られる分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリオレフィン共重合体に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.3質量%以下程度含まれていてもよい。
不揮発性水性化助剤の例としては、乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられる。この乳化剤には、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。
アニオン性乳化剤の例としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。ノニオン性乳化剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられる。両性乳化剤の例としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子の例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン-プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
上記ポリオレフィン共重合体を含有する水性分散体においては、これから得られる塗膜の耐水性、耐薬品性、耐湿熱性の観点から、また水性分散体の連続生産時のポリオレフィン共重合体の数平均粒子径増大や水性分散体の粘度上昇を抑制する等の観点から、水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppm以下であることが好ましい。ポリオレフィン共重合体のみを固形成分とする水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量は、水性化前の当該ポリオレフィン共重合体原料にて測定した不飽和カルボン酸モノマー量と一致することが確認されている。この乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量は、より好ましくは5,000ppm以下、さらに好ましくは1,000ppm以下、さらにより好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下であってよい。後述する添加物を含む場合、乾燥残渣とは、そのような添加物を添加した後の水性分散体の乾燥残渣を指す。
ポリオレフィン共重合体中の不飽和カルボン酸モノマー量を低減する方法は、例えば、ポリオレフィン共重合体から減圧留去する方法、ポリオレフィン共重合体を溶媒に溶解させて再沈殿することにより分離する方法、粉末やペレット状にしたポリオレフィン共重合体を水や有機溶媒中で洗浄する方法、ソックスレー抽出法により低減する方法などが挙げられる。中でも、操作性や低減効率の観点から、ポリオレフィン共重合体から減圧留去する方法、ポリオレフィン共重合体を溶媒に溶解させて再沈殿することにより分離する方法、粉末やペレット状にしたポリオレフィン共重合体を水や有機溶媒中で洗浄する方法が好ましい。
水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量は、水性分散体から液状媒体を除去した乾燥残渣を得て、水、アセトン、MEK、メタノール、エタノールなどの抽出溶媒を用いてこの乾燥残渣から不飽和カルボン酸モノマーを抽出し、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどを用いて定量することができる。不飽和カルボン酸モノマーの酸無水物を定量する際は、加水分解することにより対応する不飽和カルボン酸モノマーとして定量してもよい。
次に、ポリオレフィン共重合体を含む水性分散体の製造方法の一例を説明する。
この製造方法の例は、ポリオレフィン共重合体が、プロピレン含有主鎖を有する場合に好適に使用され得る。
この水性分散体を得るための方法は、特に限定されないが、ポリオレフィン共重合体、水性媒体、必要に応じて有機溶剤、塩基性化合物等を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が最も一般的である。
この容器としては、固/液撹拌装置や乳化機として使用されている装置を使用することができる。例えば、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は、特に限定されないが、ポリオレフィン共重合体が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。
例えば、上記装置に、ポリオレフィン共重合体、水性媒体等の原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合する。次いで、槽内の温度を、通常80~240℃、好ましくは100~220℃の温度に保ちながら、例えば5~300分間、粒子が十分微細になるまで攪拌を続ける。槽内の温度を80~240℃の範囲内にすることによって、ポリオレフィン共重合体の水性化がより進行し、またポリオレフィン共重合体の分子量の低下が抑制される。
次いで、さらに系内に塩基性化合物、有機溶剤および水から選ばれる少なくとも1種を加え、密閉容器中で、再度80~240℃の温度下で加熱、攪拌してよい。このような操作によって、ポリオレフィン共重合体の樹脂粒子の数平均粒子径をより確実に1μm以下にすることができる。また、このように2段階工程によって樹脂を水性化することは、粒子径分布にかかる分散度を好ましい範囲に調整するうえでも好ましい。
追加配合する塩基性化合物と有機溶剤と水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めることができる。また、塩基性化合物、有機溶剤、水の合計量は、配合した後の固形分濃度が1~50質量%となるよう調整することが好ましく、2~45質量%となる量がより好ましく、3~40質量%となる量が特に好ましい。
本発明によるPTP用多層シートは、一般に、医薬品や食品等を包装対象製品としている。そのため、水性分散体の製造時に上記の有機溶剤を用いた場合には、健康被害を防止する必要性から、樹脂の水性化の後に、有機溶剤の実質的に全てを、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理によって系外へ留去させることが望ましい。このような脱溶剤処理により、水性分散体の有機溶剤含有量を、通常1質量%以下まで、好ましくは0.8質量%以下まで、より好ましくは0.6質量%以下まで、さらにより好ましくは0.5質量以下まで、より一層好ましくは0.4質量%以下まで、最も好ましくは0.3質量%以下まで低減させるとよい。
ストリッピングの方法としては、例えば、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。加熱の温度は特に限定されないが、揮発の効率や作業性の観点から、40~200℃の範囲が好ましく、50~150℃がより好ましく、60~120℃がさらに好ましい。減圧度は、特に限定されないが、混合液が突沸したり激しく沸騰しない程度が好ましく、そのような現象が起こらない範囲で適宜調整すればよい。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
なお、従来技術におけるように、例えば、水性分散体にポリウレタン系のアンカーコート剤を用いた場合、ポリウレタンの原料として用いられる芳香族イソシアネートは一般的に非常に高い沸点を有しているため、これをアンカーコート剤の系内から(すなわち多層シートの水性分散体を含む層から)完全に除去するのは困難である。従って、得られる多層シートの水性分散体を含む層にて、有機溶剤(有機化合物)としての芳香族化合物を実質的に含まない状態にまで減少させることは難しいと考えられる。PTP用多層シートの用途を考慮すると、健康に対する影響が大きいベンゼン類が残留することは回避するべきである。
それに対して、本発明によれば、ポリオレフィン共重合体の樹脂粒子を用いることによって、有利にも、ポリウレタン系のアンカーコート剤のこのような困難性を生じることなく、多層シートの水性分散体を含む層にて、有機溶剤(ベンゼン類を含む)を実質的に含まない状態にまで減少させることが可能である。
水性分散体の固形分濃度は、例えば、水性媒体を留去する方法や、水で希釈する方法により調整することが可能である。
水性分散体の製造方法の他の例として、以下の方法が挙げられる。
この製造方法は、ポリオレフィン共重合体が、エチレン含有主鎖を有する場合、特に酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体である場合に好適に使用され得る。
まず、ポリオレフィン共重合体(酸変性ポリオレフィン樹脂)濃度が1質量%以下となるように沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒と混合してポリオレフィン共重合体の溶液を得る。次いで、この溶液の1.5倍以上の質量の水性媒体にこの溶液を添加し、ポリオレフィン共重合体の溶液と水性媒体の混合液を得る。次いで得られた混合液中の沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒の少なくとも一部を脱溶剤処理によって揮発させることで、不揮発性水性分散化助剤および塩基性化合物を実質的に含有しない水性分散体を製造することができる。
この製造方法の例において、水溶性有機溶媒は、100℃以下の沸点を有することにより、脱溶剤処理における揮発を容易に行うことができる。沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒は、20℃における水に対する溶解性が50g/L以上であることが好ましく、100g/L以上がより好ましく、200g/L以上がさらに好ましく、500g/L以上が特に好ましく、任意の量で水に溶解するものが最も好ましい。また、沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒は、ポリオレフィン共重合体の濃度が1質量%以上で溶解できるものがより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が最も好ましい。
このような沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリルなどが挙げられる。
ここで、ポリオレフィン共重合体溶液中のポリオレフィン共重合体濃度は、生産性の観点から、1質量%以下とすることが好ましく、0.9質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましく、0.7質量%以下がさらにより好ましく、0.6質量%以下が特に好ましく、0.5質量%以下が最も好ましい。
上述の濃度が1質量%以下のポリオレフィン共重合体溶液を、この溶液の1.5倍以上の質量の水性媒体に添加することで、沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒と水性媒体の混合液中にポリオレフィン共重合体を均一分散させることができる。水性媒体の量は、分散性および生産性の観点から、より好ましくは上述のポリオレフィン共重合体溶液の1.7~10倍の範囲であり、さらに好ましくは2~8倍であり、さらにより好ましくは2.5~5倍であってよい。
ここでの脱溶剤処理は、上で説明した別態様の製造方法における「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理と同様であってよい。
すなわち、ここでの脱溶剤処理は、ポリオレフィン共重合体溶液と水性媒体の混合液から沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒の少なくとも一部を揮発させ、混合液中の有機溶媒量を低減させる処理である。脱溶剤処理の方法としては、例えば、混合液を加熱および/または減圧し、水溶性有機溶媒を系外に留去する方法が好ましく採用される。加熱の温度は特に限定されないが、揮発の効率や作業性の観点から、40~200℃の範囲が好ましく、50~150℃がより好ましく、60~120℃がさらに好ましい。減圧度は、特に限定されないが、混合液が突沸したり激しく沸騰しない程度が好ましく、そのような現象が起こらない範囲で適宜調整すればよい。このような脱溶剤処理によって、沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒の実質的に全てを混合液から除去することが望ましい。
脱溶剤処理は、沸点が100℃以下の水溶性有機溶媒のみならず、混合液中の水の一部を混合液より除去することもまた好ましい。この様に水の一部を除去することで、水性分散体におけるポリオレフィン共重合体の含有量を好ましい範囲に調整することが可能である。
水性分散体を製造装置から送出する際に、容器内の異物や少量の未分散樹脂を除くために濾過工程を設けてもよい。濾過方法は、例えば、ステンレス製フィルター等で加圧濾過する方法が挙げられる。このような濾過工程を設けることで、異物や未分散樹脂を確実に除去された水性分散体を得ることができる。
本発明の水性分散体には、目的に応じて性能をさらに向上させるために、他の重合体、粘着付与剤、無機粒子、架橋剤等を添加することができる。
水性分散体に添加し得る他の重合体、粘着付与剤は、特に限定されないが、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジンなどの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、これらの混合物等が挙げられる。
水性分散体におけるこのような他の樹脂、粘着付与剤の添加量は、密着性の観点から、ポリオレフィン共重合体100質量部に対して、1~300質量部であることが好ましく、3~200質量部であることがより好ましく、5~100質量部であることがさらに好ましい。
水性分散体に添加し得る無機粒子は、特に限定されないが、例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ等の無機粒子や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等の層状無機化合物、これらの混合物等が挙げられる。これらの無機粒子の平均粒子径は、水性分散体の安定性の面から、0.005~10μmであることが好ましく、0.005~5μmであることがより好ましい。酸化亜鉛は紫外線遮蔽の目的に、酸化すずは帯電防止の目的にそれぞれ使用できる。
水性分散体におけるこのような無機粒子の添加量は、例えば、ポリオレフィン共重合体100質量部に対して1質量部以下であってよい。
水性分散体に添加し得る架橋剤は、特に限定されないが、例えば、自己架橋性を有する架橋剤、不飽和カルボン酸成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属、これらの混合物等が挙げられる。
架橋剤の具体例としては、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、これらの混合物等が挙げられる。中でも、取り扱い易さの観点から、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物を添加することが好ましい。
ここでのオキサゾリン基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のオキサゾリン基を有する化合物である。オキサゾリン基含有化合物としては、特に限定されないが、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー、これらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。
ここでのカルボジイミド基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有する化合物である。カルボジイミド基含有化合物としては、特に限定されないが、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミド、これらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い易さから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドは、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も、特に限定されず、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであってもよい。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオール等が共重合されていてもよい。
ここでのイソシアネート基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート基含有化合物としては、特に限定されないが、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-または4,4’-ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-または1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3、3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4-または2,6-ジイソシアネート、ぺルヒドロ-2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物、あるいはそれらの改変生成物が挙げられる。ここで、改変生成物とは、多官能イソシアネート化合物のうちのジイソシアネートを公知の方法で変性することによって得られるものであり、例えば、アロファネート基、ビューレット基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基等を有する多官能イソシアネート化合物、さらにはトリメチロールプロパン等の多官能アルコールで変性したアダクト型の多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。なお、上記イソシアネート基含有化合物には、20質量%以下の範囲でモノイソシアネートが含有されていてもよい。また、これらの1種または2種以上を用いることができる。
イソシアネート基含有化合物は、通常、多官能イソシアネート化合物と一価または多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとを反応させて得ることができる。
ここでのエポキシ基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ基含有化合物としては、特に限定されないが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAβ-ジメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;p-オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4-エポキシ-6メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂、これらの混合物などが挙げられる。
水性分散体におけるこのような架橋剤の添加量は、塗膜の耐水性や耐溶剤性等または加工性を向上させる観点から、ポリオレフィン共重合体100質量部に対し、0.01~80質量部であることが好ましく、0.1~50質量部であることがより好ましく、0.5~30質量部であることがさらに好ましい。
このような水性分散体(L)を含む層((L1)あるいは内部補強層を含む態様においては(L2)、(L3)または(L4))は、対象となる基材の表面に水性分散体を均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な塗膜を各種基材表面に接着させて形成することができる。
製膜には、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。
水性分散体の塗布量は、均一性に優れる塗膜を得る観点から、乾燥後にて0.01~200g/mであることが好ましく、0.1~100g/mであることがより好ましく、0.5~100g/mであることがさらに好ましく、1~80g/mであることがさらにより好ましい。塗布量を調節するためには、塗布に用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする塗膜の厚みに応じて濃度調整された水性分散体を使用することが好ましい。例えば、内部補強層を含む態様(後述する第2または第3の態様)における水性分散体(L)を含む層(L2)または(L3)の厚み(すなわちポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む層と内部補強層との間に介在する層の厚み)は、ポリ塩化ビニル系樹脂を含む層に接する水性分散体(L)を含む層(L1)または(L4)の厚みよりも、通常小さく設定され得る。このときの前者/後者の厚みの比は、好ましくは、0.1/1~0.8/1の範囲内とされ得る。
乾燥や焼き付けのための加熱装置として、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用することができる。
加熱温度および加熱時間は、対象基材の特性や、水性分散体中に任意に配合しうる各種材料の添加量により適宜選択され得る。加熱温度は、20~250℃であることが好ましく、40~230℃であることがより好ましく、60~210℃であることがさらに好ましい。一方、加熱時間は、1秒~30分であることが好ましく、5秒~20分であることがより好ましく、5秒~15分であることがさらに好ましい。
この第1の態様(基本構造)のPTP用多層シートを形成する場合、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)に、上述の手段により水性分散体(L)を含む第1の層(L1)を形成し、そこへポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)を塗布・乾燥することで各層を順次形成することができる。
塗布方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。
(2)本発明に係るPTP用多層シートの第2および第3の態様
本発明に係るPTP用多層シートの第2の態様は、上記基本構造に対して、更に、前記水性分散体(L)を含む第2の層(L2)、ポリエチレン系樹脂(C)を含む内部補強層(C1)、水性分散体(L)を含む第3の層(L3)、およびポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)またはポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)をこの順で含む。
理解容易化のため、図2に、本態様(ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)が用いられる場合)に係るPTP用多層シートの模式図を示す。図2において、参照番号4はポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)を示し、参照番号5は水性分散体(L)を含む第1の層(L1)を示し、参照番号6はポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)を示し、参照番号7は水性分散体(L)を含む第2の層(L2)を示し、参照番号8はポリエチレン系樹脂(C)を含む内部補強層(C1)を示し、参照番号9は水性分散体(L)を含む第3の層(L3)を示し、参照番号10はポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)を示す。
また、本発明に係るPTP用多層シートの第3の態様は、上記基本構造に対して、更に前記水性分散体(L)を含む第2の層(L2)、ポリエチレン系樹脂(C)を含む内部補強層(C1)、水性分散体(L)を含む第3の層(L3)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)、水性分散体(L)を含む第4の層(L4)、およびポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)をこの順で含む。
理解容易化のため、図3に、本態様に係るPTP用多層シートの模式図を示す。図3において、参照番号11はポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)を示し、参照番号12は水性分散体(L)を含む第1の層(L1)を示し、参照番号13はポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)を示し、参照番号14は水性分散体(L)を含む第2の層(L2)を示し、参照番号15はポリエチレン系樹脂(C)を含む内部補強層(C1)を示し、参照番号16は水性分散体(L)を含む第3の層(L3)を示し、参照番号17はポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)を示し、参照番号18は水性分散体(L)を含む第4の層(L4)を示し、参照番号19はポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)を示す。
内部補強層(C1)を構成するポリエチレン系樹脂(C)の例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂の中でも、柔軟性、透明性、加工性等に優れるため、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
内部補強層(C1)を構成する低密度ポリエチレンは、一般に高圧重合法によって製造されるものであり、その密度範囲は、通常0.910以上0.930未満程度である。
また、内部補強層(C1)を構成する低密度ポリエチレンは、JIS K7210-1:2014に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定された(以下同様)メルトマスフローレート(MFR)が、得られるPTP用多層シートの機械的強度・耐衝撃性の観点から、好ましくは6g/10分以下、より好ましくは5g/10分以下、さらにより好ましくは4/10分以下、より一層好ましくは3/10分以下、最も好ましくは2.5/10分以下であってよい。
このような低密度ポリエチレンの市販品の例としては、住友化学社の「スミカセンL211」、旭化成社の「サンテック-LD」シリーズの「L2340」等が挙げられる。
内部補強層(C1)は、機械的強度および製造時(押出加工時)の加工容易性のバランスの観点から、10μm~200μmの範囲であってよく、好ましくは15μm~150μmであってよく、より好ましくは15μm~100μm、さらにより好ましくは15μm~80μm、最も好ましくは20μm~80μmであってよい。
内部補強層(C1)を備えるPTP用多層シートの第2または第3の態様において、機械的強度および製造時の加工容易性のバランスの観点から、ポリエチレン系樹脂(C)が0.91~0.93g/cmの密度および3g/10分以下のメルトマスフローレート(MFR)を有する低密度ポリエチレンであり、かつ内部補強層(C1)の厚みが15~80μmであることが好ましい。上記第2または第3の態様において、ポリエチレン系樹脂(C)が0.91~0.93g/cmの密度および2.5g/10分以下のメルトマスフローレート(MFR)を有する低密度ポリエチレンであり、かつ内部補強層(C1)の厚みが20~80μmであることがさらに好ましい。
内部補強層(C1)を含むPTP用多層シートを形成する際、これに接することになる両側の層上に、上記水性分散体(L)を含む層((L2)および(L3))、すなわちアンカーコート層を予め形成することでアンカー処理を施すとよい。
第2の態様においては、内部補強層(C1)の片側の積層基材である(A1)/(L1)/(B1)と、内部補強層(C1)の他方側の基材である(A2)とに、それぞれ、アンカーコート層(L2)および(L3)を予め形成し、それらの間に内部補強層(C1)を配置・積層することによって、当該態様のPTP用多層シートが得られる。
第3の態様においては、内部補強層(C1)の片側の積層基材である(A1)/(L1)/(B1)と、内部補強層(C1)の他方側の基材である(B2)/(L4)/(A2)とに、それぞれ、アンカーコート層(L2)および(L3)を予め形成し、それらの間に内部補強層(C1)を配置・積層することによって、当該態様のPTP用多層シートが得られる。
内部補強層(C1)を含むPTP用多層シートを形成する方法は、特に限定されないが、例えば上記のアンカー処理を施した2つの基材(あるいは積層基材)に対して、その間にT-ダイから溶融ポリエチレンを押出ラミネーションにより積層し、冷却することによって積層体構造を形成することができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本発明の主題は、あくまで添付の特許請求の範囲によって決定され得るものであり、その文言上の範囲に加え、当業者によって自明な変更、均等物などを含む。
先ず、使用した原材料をまとめて下記に示す。
<ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)および第2の層(A2)>
・PVC-1(PVCシート):
厚みが100μmの住友ベークライト社製PVCシート(商品名VSS)
・PVC-2(PVCシート):
厚みが80μmの住友ベークライト社製PVCシート(商品名VSS)
<ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)>
PVDC-1:1046cm-1/1070cm-1の吸光度比から求められる相対結晶化度が1.20である、固形分が50%の旭化成社製ポリ塩化ビニリデン系樹脂ラテックス(商品名サランラテックスL-509)
PVDC-2:1046cm-1/1070cm-1の吸光度比から求められる相対結晶化度が1.52である、固形分が55%の旭化成社製ポリ塩化ビニリデン系樹脂ラテックス(商品名サランラテックスS823A)
<アンカーコート剤>
AC剤-1:融点が約80℃であるエチレン単位を主体とする5重量%以下の範囲の無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン樹脂からなり、平均粒径が約180nmで且つ不揮発性水性化助剤を実質的に含まない固形分が約27%のユニチカ社製水分散体(商品名アローベースSB-5030N)。
AC剤-2(比較用):平均粒径が約120nmであるサイデン化学社製カルボキシル基含有保護コロイド系アクリルエマルション(商品名サイビノールEK-61)。
AC剤-3(比較用):BASFジャパン社製ポリウレタン系ラテックス(商品名Emuldur381A)。
AC剤-4(比較用):主剤として東洋紡社製ポリエステル樹脂(商品名バイロンSS)、硬化剤として東ソー社製イソシネート(商品名コロネートL)を、重量比で、主剤:硬化剤:酢酸エチル=10:5:85に混合したもの。
AC剤-5(比較用):BASFジャパン社製ポリエチレンイミン50%水溶液(商品名ポリミンP)。
<内部補強層(C1)用樹脂>
補強層樹脂-1:JIS K6922-1に準拠して測定された密度が0.924kg/m、MFRが2.0g/10分、JIS K7171に準拠して測定された曲げ弾性率が245MPa、DSC法による融点が112℃である、住友化学社製低密度ポリエチレン(商品名スミカセンL211)。
補強層樹脂-2:JIS K6922-1に準拠して測定された密度が0.918kg/m、MFRが6.8g/10分、JIS K7171に準拠して測定された曲げ弾性率が110MPa、DSC法による融点が107℃である、旭化成社製低密度ポリエチレン(商品名サンテックLD L-1850K)。
補強層樹脂-3:JIS K6922-1に準拠して測定された密度が0.885kg/m、MFR(230℃、21.6N)が6.7g/10分、JIS K7171に準拠して測定された曲げ弾性率が35MPa、DSC法による融点が66℃である、三井化学社製α-オレフィン共重合体(商品名タフマー MY-2)。
また、PTP用多層シートの各種物性を、下記の方法で測定・評価した。
<膜密着強度>
下記の積層体1(または各例における同等物)から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機を用い、T型剥離により剥離強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度50mm/分で行った。
<水蒸気透過率(WVTR)>
JIS K7129 B法(赤外センサー法)及びASTM F1249-90に示された測定方法に準じ、MOCON社製水蒸気透過率測定装置を用いて、PTP用多層シートの水蒸気透過率(WVTR)を測定した。
<落球衝撃強度>
これはJIS K 5600に準拠したデュポン衝撃強度を示す。
直径38mm、重さ226gの鋼球を、高さを10cm刻みで変化させて落下させて、同一高さで10回測定して割れが発生した回数が5回未満であれば合格とし、合格の最低値を落球衝撃強度とした。
なお測定が出来る最大高さは100cmである。
<耐光性(耐黄変性)>
2,000ルクスの蛍光灯下で1250時間放置した後の黄色度YIを測定し、その差異を黄変度ΔYIとして算出した。色差計は、コニカミノルタ株式会社製の分光測色計CM-5を用いた。
<残留溶剤量>
中国 YBB00202005-2015(ポリ塩化ビニル/ポリエチレン/ポリ塩化ビニリデン固体薬用複合シート)及びYBB00312004-2015(包装材料溶剤残留量測定方法)に従い、ガスクロマトグラフ法で測定した。
なお、ベンゼン類の検出限界は0.01mg/mである。
実施例1、比較例1-1~1-3:本発明によるPTP用多層シート(1)および比較用PTP用多層シートの形成および物性評価
上記PVC-1シートの片面を35W・min/mの強度でコロナ処理して、この表面に、上記に示したAC剤-1、AC剤-2、AC剤-3及びAC剤-4のいずれかを約2g/m(乾燥時)となるようにメイヤーバーで塗布し、75℃の恒温室にて30秒放置・乾燥させてアンカーコート層を形成した。次に、アンカーコート層の表面にポリ塩化ビニリデン系樹脂である上記PVDC-2を20g/m(乾燥時)となるようにメイヤーバーで塗布し、80℃の恒温室にて1分放置・乾燥させて積層体1及び比較用の積層体1’-1~1’-3をそれぞれ得た(実施例1、比較例1-1~1-3)。
基準サンプルとして、AC剤を用いずに直接PVC-1シートにPVDC-2を塗布したものも作成した。
得られた積層体を120℃の恒温槽に放置し、経時の黄変度を評価した。黄変度(ΔYI)は、各積層体との黄変度(YI)をコニカミノルタ社製分光測色計CM-5にて測定し、初期値との差で示した。
また、膜密着強度を測定して、結果を表1にまとめた。
Figure 0007307551000001
<評価結果>
実施例1は、黄変度が基準サンプル並みであり、また膜密着強度は、比較例1-3の溶剤系ポリウレタンAC剤(AC剤-4)よりは若干劣るが、比較例1-2の水系ポリウレタンAC剤(AC剤-3)よりも優れると共に、さらに比較例1-1の水系アクリルAC剤(AC剤-2)よりも大幅に優れていた。なお、比較例1-1の水系アクリルAC剤(AC剤-2)は、黄変度は比較例1-2の水系ポリウレタンAC剤(AC剤-3)よりも優れたが、膜密着強度が大幅に劣っていた。
因みに、三井化学社製無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂(商品名アドマーNF518)からなる厚み50μmのフィルムに、上記PVDC-2を塗布しようとしてもハジキが発生して塗布できなかった。
従って、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)とポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)とを積層する場合、本願に示すオレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とから形成されたポリオレフィン共重合体の樹脂粒子を含み、このポリオレフィン共重合体の全構成モノマーに対する不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が0.01~5質量%であり、この樹脂粒子の数平均粒子径が1μm以下であり、且つ不揮発性水性化助剤を実質的に含まない水性分散体(L)が、黄変抑制及び膜密着強度の観点から必要であることがわかった。
実施例2:本発明によるPTP用多層シート(2)の形成および物性評価
上記PVC-1シートにAC剤-1を0.5g/m(乾燥時)となるようにグラビアコート法で塗布し、70℃のエアオーブンを通して乾燥後、PVDC-1を46g/m(乾燥時)となるようにキスコート-エアナイフ法で塗布して、90℃のエアオーブンを通して乾燥後、巻き取って積層体2を得た。
次に、上記PVC-1シートの表面及び上記積層体2のPVDC-1面夫々にAC剤-1を0.3g/m(乾燥時)となるようにグラビアコート法で塗布し、その間に、350℃に溶融した補強層樹脂-1を30μmになる様に押出してサンドラミネートして4層の積層体(層構成:PVC-1/AC剤-1/PVDC-1/AC剤-1/補強層-1/AC剤-1/PVC-1)であるPTP用多層シート(2)を得た。
このPTP用多層シート(2)に対して、上記各物性の測定・評価を行った。結果を表2に示す。
比較例2:比較用PTP用多層シート(2’)の形成および物性評価
上記PVC-1シートにAC剤-4(溶剤系ポリウレタンAC剤)を1.0g/m(乾燥時)となるようにグラビアコート法で塗布し、70℃のエアオーブンを通して乾燥後、PVDC-1を46g/m(乾燥時)となるようにキスコート-エアナイフ法で塗布して、90℃のエアオーブンを通して、乾燥後巻き取って積層体2’を得た。
次に、上記PVC-1シートの表面及び上記積層体2’のPVDC-1面夫々にAC剤-5を0.1g/m(乾燥時)となるようにグラビアコート法で塗布し、その間に、350℃に溶融した補強層樹脂-1を30μmになる様に押出してサンドラミネートして4層の積層体(層構成:PVC-1/AC剤-4/PVDC-1/AC剤-5/補強層-1/AC剤-5/PVC-1)であるPTP用多層シート(2’)を得た。
この比較用PTP用多層シート(2’)に対して、上記各物性の測定・評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0007307551000002
<評価結果>
本発明による4層の積層体であるPTP用多層シート(2)は、長時間経過後の黄色度、耐黄変性ならびに膜密着強度、WVTR、落球衝撃強度(耐衝撃性)の各物性において高度にバランスがとれた優れた結果を示した。
特に、本発明のPTP用多層シート(2)は残留溶剤量が極めて少ないものになっていた。
実施例3:本発明によるPTP用多層シート(3)の形成および物性評価
上記PVC-2シートにAC剤-1を0.5g/m(乾燥時)となるようにグラビアコート法で塗布し、70℃のエアオーブンを通して乾燥後、PVDC-2を46g/m(乾燥時)となるようにキスコート-エアナイフ法で塗布して、90℃のエアオーブンを通して乾燥後巻き取って積層体3を得た。
次に、2枚の上記積層体3のPVDC-2面夫々にAC剤-1を0.3g/m(乾燥時)となるようにグラビアコート法で塗布し、その間に、350℃に溶融した補強層樹脂-1を35μmになる様に押出してサンドラミネートして5層の積層体(層構成:PVC-2/AC剤-1/PVDC-2/AC剤-1/補強層-1/AC剤-1/PVDC-2/AC剤-1/PVC-2)であるPTP用多層シート(3)を得た。
このPTP用多層シート(3)に対して、上記各物性の測定・評価を行った。結果を表3に示す。
実施例4:本発明によるPTP用多層シート(4)の形成および物性評価
実施例3において、補強層樹脂-1を、補強層樹脂-2が80重量%と補強層樹脂-3が20重量%とのブレンド物(メルトマスフローレート:約6.8g/10分)に替えた以外は同様な操作を行ってPTP用多層シート(4)を得た。
このPTP用多層シート(4)に対して、上記各物性の測定・評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0007307551000003
<評価結果>
本発明による5層の積層品であるPTP用多層シート(3)及び(4)は耐黄変性、残留溶剤量ならびに膜密着強度、WVTRの各物性において優れた結果を示した。
特に、PTP用多層シート(3)及び(4)はPTP用多層シート(2)に比べて、総厚みが薄いにも関わらず水蒸気バリア性に優れていた。なお、シートの総厚みはPTPの錠剤取り出し性と密接に関わっており、この点においても改良される傾向にあった。
また、PTP用多層シート(4)(実施例4)は、補強層樹脂のメルトマスフローレートが約6.8g/10分であることに起因して落球衝撃強度(耐衝撃性)は小さいが、錠剤を充填したシートをその角を下にして落下させた時の角部割れが極端に少なくなる傾向にあった。
本発明のPTP用多層シートは、耐黄変性に優れ、かつ残留溶剤の含有量が小さいため医薬品用として好適である。
また、好ましい態様による本発明のPTP用多層シートは、優れた耐黄変性および残留溶剤量に加え、非常に大きなバリア性を有し、あるいは、更に改善された耐衝撃性を有するため、医薬品用としての信頼性がより高められる。

Claims (6)

  1. 水性分散体(L)を含む第1の層(L1)を介して、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第1の層(A1)とポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)とを積層してなるPTP用多層シートであって、この水性分散体(L)は、オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とから形成されたポリオレフィン共重合体の樹脂粒子を含み、このポリオレフィン共重合体の全構成モノマーに対する不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が0.01~5質量%であり、水性分散体中の樹脂粒子の数平均粒子径が1μm以下であり、且つ不揮発性水性化助剤を実質的に含まず、
    前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)は、
    塩化ビニリデン及び塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーの合計100重量部に基づいて、メタクリル酸メチル4~10重量部、及び、メタアクリロニトリル0.3~5重量部を含んでなる、
    上記PTP用多層シート。
  2. 前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)の1046cm-1/1070cm-1の吸光度比から求められる相対結晶化度が1.45以上である、請求項1に記載のPTP用多層シート。
  3. 更に、ポリエチレン系樹脂(C)を含む内部補強層(C1)を含み、
    この内部補強層(C1)は、前記水性分散体(L)を含む第2の層(L2)を介して、前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)に積層されており、
    ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)またはポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)が、前記水性分散体(L)を含む第3の層(L3)を介して、前記内部補強層(C1)に積層されている、請求項1または2に記載のPTP用多層シート。
  4. 更に、ポリエチレン系樹脂(C)を含む内部補強層(C1)を含み、
    この内部補強層(C1)は、前記水性分散体(L)を含む第2の層(L2)を介して、前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第1の層(B1)に積層されており、
    ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)が、前記水性分散体(L)を含む第3の層(L3)を介して、前記内部補強層(C1)に積層されており、
    ポリ塩化ビニル系樹脂(A)を含む第2の層(A2)が、前記水性分散体(L)を含む第4の層(L4)を介して、前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(B)を含む第2の層(B2)に積層されている、請求項1または2に記載のPTP用多層シート。
  5. 前記ポリエチレン系樹脂(C)が、0.91~0.93g/cmの密度、ならびに、190℃および2.16kg荷重で測定された3g/10分以下のメルトマスフローレート(MFR)を有する低密度ポリエチレンであり、かつ
    前記内部補強層(C1)の厚みが15~80μmである、請求項3または4に記載のPTP用多層シート。
  6. 医薬品包装用である、請求項1~5のいずれか1項に記載のPTP用多層シート。
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