JP3755937B2 - 柔軟性プラスチックによる薬品包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品包装の分野で、固形剤包装用として一般に用いられているPTP(プレス・スルー・パック)包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医薬品包装の分野で、固形剤包装用として一般に用いられているPTP包装は主に硬質塩化ビニールやポピプロピレンからなるシートを底材として用い、該底材をポケット形状に成形しその中に固形剤(錠剤、カプセル剤など)を充填し、アルミ箔からなる蓋材で密封した包装体であり、1960年代前半に実用化され広く普及してきた。
ところが最近、PTP包装のまま無意識に薬を内服してしまう事故が増えてきており、PTPが原因として起こる食道異物症の頻度が増加しつつある。従来からPTP包装に主に用いられている硬質塩化ビニールやポリプロピレンからなるシートを用いたPTP包装体は固いため、PTPによる食道異物が停滞していた部位に穿孔が生じたり、異物を摘出する際PTP包装の角で食道壁を切って損傷するといった危険性があった。
そこで、医薬品メーカーやPTP包装用シートの材料メーカーにPTP誤飲時の対策が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の硬質塩化ビニール等によるPTP包装での食道異物症において、PTP包装の固さからくる食道壁損傷の問題点を解決するため種々の検討を行った結果なされたもので、その目的とするところは、PTP包装の底材に柔軟性があり、さらに防湿性にも優れた薬品包装体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フィルムまたはシートからなる底材の成形部に薬品を入れ、アルミ箔を主体とする蓋材によって密閉した薬品包装体において、曲げ弾性率が5,000kgf/cm2以下のオレフィン系柔軟性プラスチック層およびポリ塩化ビニリデン樹脂層からなり、水蒸気透過度が3g/m2・24hrs以下、曇度が30%以下であり、かつ厚みが0.15mm〜0.60mmであるフィルムまたはシートを底材として用いた柔軟性プラスチックによる薬品包装体であり、更に好ましい態様は、該フィルムまたはシートの層構成が、薬品包装体の内側からオレフィン系柔軟性プラスチック層、ポリ塩化ビニリデン樹脂層の順で積層された2層構成、または該フィルムまたはシートの層構成が、薬品包装体の内側からオレフィン系柔軟性プラスチック層、ポリ塩化ビニリデン樹脂層、オレフィン系柔軟性プラスチック層の順で積層された3層構成であり、該オレフィン系柔軟性プラスチックがオレフィン系熱可塑性エラストマー又はエチレン−αオレフィン共重合体又はプロピレン−αオレフィン共重合体であり、エチレン−αオレフィン共重合体がエチレン−オクテン共重合体である柔軟性プラスチックによる薬品包装体である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明における多層シートの積層方法としては、特に限定するものではないが、数台の押出機により樹脂を溶融押出して多層ダイ、あるいはフィードブロックに導いてシート化する共押出法や、各層を形成する単層のシートまたはフィルムを適当な接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法、ポリ塩化ビニリデン樹脂層に関してはコーティングにより形成する方法等が用いられる。なお、共押出法により多層シートを形成する場合には、各樹脂層の間に適当な接着性樹脂層を設けたほうが好ましい。
【0006】
本発明の薬品包装体の底材に用いられるオレフィン系柔軟性プラスチックとしては、特に限定するものではないが、好ましくはオレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体が用いられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとしてポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリオレフィン樹脂を、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、ブチルゴム(BR)等を用いたもので、ソフトセグメントを架橋していないもの、部分的に架橋したもの、ほぼ完全に架橋したもの等が用いられる。また、製法としては、特に限定するものではないがハード・ソフト両成分、また必要に応じて架橋剤、可塑化オイルなどを混合して密閉型混合機、あるいは単軸または2軸押出機などを用いて溶融混練、架橋反応させる溶融混練型のもの、ハード・ソフト両成分を1つの重合プロセスの中で生成させるリアクター型のものが用いられる。
【0007】
また、エチレン−αオレフィン共重合体およびプロピレン−αオレフィン共重合体のαオレフィンとしては特に限定はしないが、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等をあげることができる。中でもエチレン−オクテン共重合体が好ましい。
【0008】
本発明で用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマーの曲げ弾性率は5,000kgf/cm2以下が好ましい。曲げ弾性率がこれより大きいとフィルムまたはシートが固くなり、本発明の目的である誤飲時の食道壁損傷の問題点の解決にはならない。
【0009】
本発明におけるポリ塩化ビニリデン樹脂層は、共押出しにより積層する場合には、塩化ビニリデン60〜97重量部と塩化ビニル、アルキルアクリレート、アクリル酸、アクリロニトリル等の不飽和単量体との二元又は多元の共重合体であり、必要に応じて公知の可塑剤、安定剤等を配合したものが用いられる。
【0010】
また、コーティングにより積層する場合には、主成分としての塩化ビニリデンと、メタクリル酸と、アクリロニトリル及び/又はメタクリル酸メチルとを乳化共重合して得られる水分散体を、エアナイフコート法、グラビアコート法、ロールコート法等で塗布する方法が用いられる。上記ポリ塩化ビニリデン水分散体の調整の際に用いる乳化剤、重合開始剤、界面活性剤等の種類は特に問わない。しかし、乾燥塗膜中に多量に残留すると、バリアー性が低下するので、その使用量は出来るだけ少ないほうが好ましく、乳化重合に続いて透析処理を行い、可能な限り除去することが好ましい。また、塩化ビニリデンとアクリロニトリル等との共重合体を、メチルエチルケトンやテトラヒドロフランなどの溶剤に溶解して、上記と同様の方法で塗膜を形成する方法も用いられる。
また、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなるフィルムをドライラミネート等の方法でラミネートする方法も用いられる。
【0011】
本発明に用いられるオレフィン系柔軟性プラスチックからなるフィルムまたはシートの水蒸気透過度については3g/m2・24hrs以下が好ましい。一般に医薬品は高湿度下に放置されると湿潤、変色、艶の消失などの外観変化を起こしたり、また含量(力価)低下、崩壊時間の延長、溶質速度の遅延などの変化を起こすことがあり、水蒸気透過度が3g/m2・24hrs以上になるとこれらの点から好ましくない。
透明性は曇度で30%以下が好ましい。曇度が30%以上になると内容製剤の外観、形状、識別コードなどが確認しずらくなるため好ましくない。
厚みは0.15mm〜0.60mmの範囲であり、さらに好ましくは、0.20mm〜0.40mmである。厚みが0.15mmよりも薄い場合は機械的強度が弱くなるため、流通過程でピンホールや破れが生じたりし、内容製剤の保護機能が保たれなくなる。また、0.60mmよりも厚いとコスト的に高くなるため好ましくない。
【0012】
また、本発明のオレフィン系柔軟性プラスチックには、必要に応じて基本的な性能を損なわない範囲で帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。
本発明に用いられるオレフィン系柔軟性プラスチックからなるフィルムまたはシートの層構成については特に限定するものではないが、薬品包装体の内側からオレフィン系柔軟性プラスチック層、ポリ塩化ビニリデン樹脂層の順で積層された2層構成や、薬品包装体の内側からオレフィン系柔軟性プラスチック層、ポリ塩化ビニリデン樹脂層、オレフィン系柔軟性プラスチック層の順で積層された3層構成などがアルミ箔とのシール性や、生産方法の自由度、及び生産コスト等の点で好ましい。
【0013】
本発明の薬品包装体の包装方法としては、特に限定はしないが一般的なPTP包装用の包装機が用いられる。すなわちオレフィン系柔軟性プラスチックからなる底材用フィルムまたはシートを上下加熱盤あるいは加熱ドラムによって加熱し、圧空成形法または真空成形法により錠剤あるいはカプセル剤形状等にポケットを成形し、その中に製剤を充填し、アルミ箔を主体とする蓋材によってシールし、さらに分割用のスリットがいれられ、最後に所定の形状に打ち抜かれて作製される。
【0014】
【実施例】
下記に示す実施例1〜5及び比較例1の各原材料を、Tダイ押出法により溶融押出しし、厚み0.30mmのシートを作製した。
上記シートにポリ塩化ビニリデン樹脂の水分散体(旭化成工業(株)製 サランラテックス L−509)をグラビアコーティングにより0.015mm厚みになるように塗布した。得られたシートをPTP成型機(シー・ケー・ディー株式会社製 FBP−M2)を用いて、ポケット(直径10mmφ、深さ5mm)を成形し、その中に錠剤を充填し、アルミ箔からなる蓋材(厚み=0.02mm)でシールし、PTP包装体を作製した。
【0015】
(実施例1)
ミラストマー5030B(オレフィン系熱可塑性エラストマー;三井石油化学株式会社製)
(実施例2)
ENGAGE*POEs EG8100(エチレン−オクテン共重合体;DowPlastics製)
(実施例3)
日石ソフトレックス EL5DT21(オレフィン系熱可塑性エラストマー;日本石油化学株式会社製)
(実施例4)
SPX8600(オレフィン系熱可塑性エラストマー;三菱化学株式会社製)
【0016】
(比較例1)
DEXFLEX 433(オレフィン系熱可塑性エラストマー;旭化成株式会社製)
また、下記のPTP用シートを用いて実施例1と同様の方法によりPTP包装体を作製した。
(比較例2)
硬質塩化ビニールからなる0.30mm厚のPTP用シート
(比較例3)
ポリプロピレンからなる0.30mm厚のPTP用シート
(比較例4)
実施例2と同じ樹脂を用いた0.30mm厚の単層のシート
【0017】
(実施例5)
下記に示す原材料を用い、柔軟性プラスチック層(A)/接着性樹脂層(B)/PVDC層(C)/(B)/(A)の層構成の0.3mm厚みの多層シートを共押出法により作製した。なお、各層厚みは、137/5/16/5/137μmとした。
・A層;ENGAGE*POEs EG8100(Dow Plastics製)
・B層;アドマー VF−500(三井石油化学製)
・C層;塩化ビニリデン92重量%とアクリル酸8重量%の共重合体
表1および表2に実施例および比較例の評価結果を示す。実施例1〜5についてはすべての評価を満足しているが、比較例1〜3では包装体の柔軟性、比較例4では水蒸気透過度が劣る。
【0018】
なお各項目の評価方法を下記に示した。
・曲げ弾性率:実施例および比較例で用いられるオレフィン系柔軟性プラスチックの厚さ4mmの試験片を別途作製し、JIS−K−7203に基づき、温度23℃、相対湿度50%で測定した。
・水蒸気透過度:得られた0.3mm厚のシートを用い、JIS−Z0208に基づいて条件B、すなわち温度40℃、相対湿度90%で測定した。
・曇度:得られた0.3mm厚のシートを用い、JIS−K−7105に基づいて測定した。
・包装体の柔軟性:得られたPTP包装体(1錠分に分割したもの)について、角部の安全性等を官能的に評価した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【発明の効果】
本発明の薬品包装体は従来の硬質塩化ビニールやポピプロピレンからなるシートを底材として用いたPTP包装体に比較して柔軟であるため、誤ってPTP包装のまま服用したとしても、停滞していた部位に穿孔が生じたり、摘出する際にPTP包装の角で食道壁を切って損傷したりといった危険性を防止することができる。さらにポリ塩化ビニリデン樹脂を積層することによって防湿性にも優れた薬品包装体を提供することができる。
Claims (5)
- フィルムまたはシートからなる底材の成形部に薬品を入れ、アルミ箔を主体とする蓋材によって密閉した薬品包装体において、曲げ弾性率が5,000kgf/cm2以下のオレフィン系柔軟性プラスチック層およびポリ塩化ビニリデン樹脂層からなり、水蒸気透過度が3g/m2・24hrs以下、曇度が30%以下であり、かつ厚みが0.15mm〜0.60mmであるフィルムまたはシートを底材として用いたことを特徴とする柔軟性プラスチックによる薬品包装体。
- 該フィルムまたはシートの層構成が、薬品包装体の内側からオレフィン系柔軟性プラスチック層、ポリ塩化ビニリデン樹脂層の順で積層された2層構成であることを特徴とする請求項1記載の柔軟性プラスチックによる薬品包装体。
- 該フィルムまたはシートの層構成が、薬品包装体の内側からオレフィン系柔軟性プラスチック層、ポリ塩化ビニリデン樹脂層、オレフィン系柔軟性プラスチック層の順で積層された3層構成であることを特徴とする請求項1記載の柔軟性プラスチックによる薬品包装体。
- 該オレフィン系柔軟性プラスチックがオレフィン系熱可塑性エラストマー又はエチレン−αオレフィン共重合体又はプロピレン−αオレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1、2または3記載の柔軟性プラスチックによる薬品包装体。
- 該オレフィン系柔軟性プラスチックがエチレン−オクテン共重合体であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の柔軟性プラスチックによる薬品包装体。
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