JP4001358B2 - 熱成形用積層シート - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、食品包装、医薬品包装等の各種包装用容器類等に用いられる、ポリエチレン樹脂からなる熱成形用の積層シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、熱成形容器に適した樹脂として、成形性、透明性、剛性等の良さから、ポリスチレン樹脂が多く使用されている。一方、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂も、強度、剛性、耐熱性等に優れた特性を有しているため、そのシートを真空、圧空に熱成形することにより食品包装、医薬品包装用容器等に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリスチレン樹脂の熱成形性は優れているが、最近に至って、スチレンモノマーが溶出し人体に悪影響を及ぼすとの疑いがかかり、特に食品包装の分野で、化学的に安定で、安全性の高い、ポリオレフィン系樹脂製の容器の開発が要望されている。
【0004】
ポリオレフィン系樹脂の一つである、ポリプロピレン系樹脂製シートは熱成形する際の予熱時の加熱によるドローダウンが大きく、良好な成形品が得られる成形時の最適な成形温度幅が非常に狭く、高度な温度制御が要求されるので、工程管理がきわめて困難である。
【0005】
ポリプロピレン樹脂単独で、その成形性を改良することには限界があるので、従来から、ポリプロピレンにポリエチレンや無機フィラー、低分子量の石油樹脂をブレンドさせて改質する試みが行われている。
【0006】
例えば、高粘度のポリプロピレンに、高粘度のポリエチレンおよび含水ケイ酸マグネシウムを添加する方法(特公昭56−15744公報)、ポリプロピレンにポリエチレンおよびエチレン−プロピレン共重合体を添加する方法(特公昭63−29704公報)、ポリプロピレンと分子量分布の狭いポリエチレンを使用する方法(特公昭63−53213号公報)、ポリプロピレンに石油樹脂を添加する方法(特公平6−89191)が挙げられるが、その効果は限定的であり、現実的な成形性については、未だ満足するものが得られていないのが実情である。
【0007】
また、無機フィラー、石油樹脂等を添加して使用した場合には、低分子量成分等のブリード、溶出が生じ、食品包装、医薬品包装に使用するには、安全性の点から使用が困難である。
【0008】
一方、化学的に安定で、安全性の高いポリエチレン樹脂については、熱成形用シートの開発が試みられているが、前記した、ポリプロピレン樹脂と同様その熱成形の制御は困難で、特に深絞り性が悪く、従来その製品化はほとんど行われていないのが現状である。
【0009】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、その課題は、熱成形に優れ、高い剛性と良好な外観を有した容器の製造に利用できる、ポリエチレン樹脂製の熱成形用シートを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するため、請求項1記載の手段は、
2つの表層と、この両表層間に位置する、少なくとも1つの中間層とから構成される積層シートであること、
表層を、密度が0.940〜0.960g/cm、MFRが1.0〜10g/10分、分子量分布Mw/Mnが13〜50であるポリエチレン樹脂で形成すること、
中間層を、密度が表層の密度より少なくとも0.010g/cm高く、かつ0.970g/cm未満、MFRが0.1〜5g/10分、分子量分布Mw/Mnが3〜13であるポリエチレン樹脂で形成すること、
にある。
【0011】
この請求項1記載の発明にあっては、表層のポリエチレン樹脂層が、主として熱成形性の機能を、中間層のポリエチレン樹脂層が、主として強度、剛性等の熱成形容器としの機能を発揮するべく構成されている。
【0012】
以下、ポリエチレン樹脂の構成要件および、その作用を詳細に説明する。
表層は、密度が0.940〜0.960g/cm、MFRが1.0〜10g/10分、および分子量分布Mw/Mnが13〜50であるポリエチレン樹脂で形成される。
【0013】
MFRは、熱成形時におけるポリエチレン樹脂融体の延伸性に関連しており、小さすぎると延伸性が不良になるが、大きすぎると熱成形の予熱時のドローダウンが発生し、またMw/Mnは、深絞り時における偏肉性に関連しており、他の性質とのバランスも考慮して、上記数値範囲のMFR、Mw/Mnのポリエチレン樹脂を表層形成材料として使用することにより、積層シートの良好な熱成形性を確保できる。
【0014】
密度が0.940g/cm以下の場合、熱成形容器の剛性が不足し、0.960g/cm以上では、結晶性が高いため、結晶融点近傍で粘度が急激に変化するため、熱成形時の温度、時間等の制御が困難になる。
【0015】
MFRが1.0g/10分以下では、シートを成形する際における押し出し性に劣り、この結果、シート表面に肌荒れが発生し、かつ熱成形の際には、粘度が高いため延伸性が低く深絞り成形が困難であり、また10g/10分以上では、熱成形の際の粘度が低くなり、予熱中にドローダウンが発生、かつ熱成形容器の強度が小さくなり、実用に供することが困難になる。
【0016】
Mw/Mnが13以下では、熱成形の延伸時に偏肉が発生、深絞り容器の成形ができなくなり、また50以上では押し出しシートの表面の光沢が不良であり、かつ低分子量成分の溶出があり、食品分野等への使用が困難になる。
【0017】
中間層は、密度が表層の密度より少なくとも0.010g/cm高く、かつ0.970g/cm未満、MFRが0.1〜5g/10分、および分子量分布Mw/Mnが3〜13であるポリエチレン樹脂で形成される。
【0018】
中間層は、主として熱成形容器の剛性、強度を発揮するための層であり、剛性の観点からは、密度を高く、強度の観点からは、MFRを低めに設定する必要があるが、他の性質とのバランスを考慮して、上記数値の範囲が適している。
【0019】
充分な剛性を有する容器を得るためは、密度を高くする必要があり、表層に比べて中間層の密度は少なくとも0.010g/cm高くする必要がある。ただし密度を0.970g/cm以上にすると、容器の強度が低下する。
【0020】
MFRが、0.1g/10分以下では、樹脂の流動性が悪く、シートの成形が困難であり、かつ熱成形時の延伸性にも影響を及ぼして、深絞り成形が困難になり、また5g/10分以上では、容器としての実用的な強度を確保することが困難になる。
【0021】
Mw/Mnが3以下では、メルトフラクチャーが発生する等、シートの成形が困難であり、また13以上では、低分子量成分が増加するため、容器としての実用的な強度の確保が困難になる。
【0022】
上記した請求項1の構成により、表層に、主として延伸性、深絞り性等の熱成形性を、中間層に、主として熱成形容器の強度、剛性の機能を、それぞれ分担させることになり、これにより他の樹脂、低分子量物、無機フィラー等を添加することなく、ポリエチレン樹脂単独からなる、外観の良好な、剛性の高い、深絞りの熱成形容器を得ることが可能になる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に用いるポリエチレン樹脂に関わる測定方法は、以下の通りである。
・密度(g/cm):JISK6760に準拠して求めた。
・MFR(g/10分):JISK6760に準拠して求めた。
・分子量分布(Mw/Mn):ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GP C)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)として求めた。
【0024】
本発明に用いるポリエチレン樹脂は、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜20のあるα−オレフィンからなる共重合体である。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、等が挙げられる。
【0025】
本発明では、目的を損なわない範囲で、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、抗ブロッキング剤、紫外線防止剤、無機系顔料、耐候剤などの公知の添加剤を添加することができる。
【0026】
【実施例】
下記のポリエチレン樹脂を原料とし、2台の押出機、3層シート成形用のTダイを用いて2つの表層1、および両表層1間に位置する1つの中間層2からなる3層積層シートを作成した。
・表層1用ポリエチレン樹脂
密度;0.945g/cm、MFR;2.0g/10分、Mw/Mn;20・中間層2用ポリエチレン樹脂
密度;0.960g/cm、MFR;1.0g/10分、Mw/Mn;10
【0027】
上記、シートを、プラグアシスト式真空圧空成形機を用いて、底面4が縦6cm、横8.5cmの長方形であり、上端開口部7が縦7cm、横9.5cmの長方形であり、高さが5.5cmである四角錐台形状(絞り率0.78)であり、かつ上端開口部7の周縁に外鍔状に連設した、幅5mmの平坦なフランジ部8を有する容器3を熱成形した。
【0028】
この容器3を構成する底壁5、側壁6、フランジ部8は、2つの表層1と、この両表層1に挟まれた中間層2からなる3層構造を有している。(図1参照)
【0029】
上記シートは良好な延伸性、深絞り性を有し、得られた容器3は、形状の歪が小さく、肉厚の均一性が高く、表面光沢の点からも良好な外観であり、十分な触感的剛性を有するものであった。
【0030】
【発明の効果】
本発明の積層シートは、両表層に熱成形性の機能を有したポリエチレン樹脂を使用し、中間層に強度、剛性の機能を有するポリエチレン樹脂を使用したので、熱成形の成形範囲が広く、良好な深絞り性を有する熱成形性に優れたシートであり、このシートから熱成形によって得られた容器は、良好な外観、十分な剛性を有し、内容物が接触する表層が、化学的に安定なポリエチレン樹脂製であり、特に食品向け等、安全性が厳しく要求される分野での利用ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱成形用積層シートから熱成形された容器の一例を示す、側壁の一部を破断拡大図示した、全体斜視図。
【符号の説明】
1 ; 表層
2 ; 中間層
3 ; 容器
4 ; 底面
5 ; 底壁
6 ; 側壁
7 ; 上端開口部
8 ; フランジ部

Claims (1)

  1. 2つの表層(1)と、該両表層(1)間に位置する、少なくとも1つの中間層(2)とから構成され、表層(1)を、密度が0.940〜0.960g/cm、MFRが1.0〜10g/10分、分子量分布Mw/Mnが13〜50であるポリエチレン樹脂で形成し、前記中間層(2)を、密度が表層(1)の密度より少なくとも0.010g/cm高く、かつ0.970g/cm未満、MFRが0.1〜5g/10分、分子量分布Mw/Mnが3〜13であるポリエチレン樹脂で形成した熱成形用積層シート。
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