JP3868076B2 - オレフィン系複合樹脂積層シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱成形性や剛性に優れたオレフィン系複合樹脂積層シートに関する。更に詳しくは、食品包装材分野に用いられる容器を製造するにあたり、従来より優れた垂れの保持性と剛性や耐熱性のあるオレフィン系複合樹脂積層シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロピレン系樹脂シートは、耐熱性、耐油性等に優れることから二次成形(真空成形、圧空成形等)によって各種容器、カップ、トレーなどの成形品の製造に用いられている。
しかしながら、真空成形等の熱成形法で容器を加工する際、ポリプロピレン系樹脂シートは他の樹脂(ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂等)と比較してその溶融特性がシャープなことから、予熱時の加熱によるドローダウン性が大きく、成形容器にシワや偏肉、或いは穴が発生しやすいという欠点があった。
そこで、このポリプロピレンシートの熱成形時の垂れ下がりを改良する技術としては、ポリプロピレン樹脂にポリエチレン樹脂をブレンドする一般的方法(特開昭52−136247号公報、同55−108433号公報、特公昭63−30951号公報)、ポリプロピレン樹脂に無機フィラーと無水マレイン酸変性ポリオレフィン、或いはシラン変性ポリオレフィン等を配合してなる組成物を用いる方法(特開昭51−69553号公報、同52−15542号公報)、ポリオレフィンに繊維状ポリテトラフルオロエチレンを添加する方法(特開平8−165358号公報)が知られている。
【0003】
しかし、ポリエチレンを単純にブレンドする方法、或いは無機充填剤を単純に混合したものは、リサイクル材が30〜50重量%と増加傾向によってシート幅が900mm以上に広くなるとドローダウン性が著しく大きくなり、しかも近年、衛生面やハンドリング性改良容器である嵌合品は、製品の形状を得る為、従来の加熱時間より2倍以上加熱されることからドローダウン性が更に大きくなる等、広幅シートへの適用には限界があった。
また、繊維状ポリテトラフルオロエチレンをポリオレフィンに添加したものは、透明性があっても剛性や耐熱性、或いは収縮性が劣るため、内容量の大きい容器や定寸法容器等の製造には限界があった。
特に近年、冷凍食品や電子レンジ加熱食品の増加に伴い、耐熱性や耐寒性のある残留歪みの少ない真空成形品である嵌合容器や深絞り容器が普及し、しかも容器生産者からは再生材量を多くしても真空成形時の生産性が向上できる1m以上の広幅シートの材料開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記現状に鑑み、食品包装材料分野に用いられる容器や蓋の製造等にあたり、ドローダウン性に優れ、かつ剛性や耐寒性のあるオレフィン系複合樹脂積層シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成すべく、鋭意検討した結果、メルトフローレイトや密度の異なるオレフィン系樹脂もしくはオレフィン系複合樹脂を表面層に用い、ポリエチレン樹脂を特定量配合したオレフィン系樹脂もしくはオレフィン系複合樹脂を中間層に用いた多層構成のオレフィン系複合樹脂積層シートとすることで、再生材を投入してもドローダウン性が著しく向上し、剛性、耐寒性、耐熱性に優れることを見出し、本発明に至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は、中間層及び表面層がオレフィン系樹脂又は該オレフィン系樹脂に無機フィラーを10重量%以上含有するオレフィン系複合樹脂からなり、中間層が表面層に挟まれてなる積層シートであって、表面層及び中間層の少なくともどちらか一方がオレフィン系複合樹脂で構成され、かつ下記(i)〜(iii)を満たすことを特徴とするオレフィン系複合樹脂積層シートである。
(i)表面層は、オレフィン系樹脂がプロピレンを主成分とし、かつオレフィン系樹脂及びオレフィン系複合樹脂の密度が1.75g/cm3以下、メルトフローレート(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が0.3〜20g/10分であること。
(ii)中間層のオレフィン系樹脂は、メルトフローレート(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が0.5〜5g/10分のプロピレン系樹脂を10〜85重量%と密度が0.970g/cm 3 以下、メルトフローレート(試験条件:190℃、2.16kg荷重)が0.05〜5.0分のポリエチレン樹脂を15〜90重量%含有する樹脂組成物であり、かつオレフィン系樹脂及びオレフィン系複合樹脂のメルトフローレート(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が10g/10分以下、密度が1.75g/cm3以下であること。
(iii)450℃に加熱された上下ヒーター面から15cm離れた中央水平部分のχmm厚みシート(30cm×30cmのサンプル試験片)をf(x)時間加熱したときの最大垂れ量が30mm以下であること。
尚、加熱時間f(x)秒は、下記式から算出されるものである。
f(x)=21.8χ+19.5
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
1.表面層
(1)表面層のオレフィン系樹脂
シートの表面層に用いられるオレフィン系樹脂とは、プロピレンを主成分とするものである。具体的にはプロピレン単独重合体、或いはプロピレン含量が97重量%以上のプロピレンと、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1等のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体あるいはこれらの混合物や、エチレン(共)重合体(エチレンの単独重合体もしくはエチレンと炭素数3〜20、好ましくは3〜12、より好ましくは3〜8のα−オレフィンとの共重合体)であって、エチレン含量が50重量%以上のものがプロピレン系樹脂に対し、40重量%以下含まれたオレフィン混合物等であリ、中でもプロピレン単独重合体やプロピレン単独重合体とプロピレン−α−オレフィン共重合体の混合物、或いはブロック共重合体が剛性や耐熱、耐寒性の点で好ましい。
【0008】
上記オレフィン系樹脂は、JISーK6758(230℃−2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイト(以下MFRということがある)が0.3〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であり、更に好ましくは、0.5〜10g/10分であり、MFRが0.3g/10分未満ではシート成形が高樹脂圧力で困難となり、しかも積層シートに表面荒れが起こりやすく、MFRが20g/10分を超えるとシート成形時にサージングが発生し、ドローダウン改良効果も少ない。
【0009】
上記オレフィン系樹脂は、JIS−K6758(23℃)に準拠して測定した密度が1.75g/cm3以下であり、好ましくは0.920g/cm3以下、更に好ましくは0.903〜0.920g/cm3であり、密度が1.750g/cm3を超えると流動性が劣り、高樹脂圧力でシート成形が困難となったり、容器の賦型性が劣る。
【0010】
(2)表面層のオレフィン系複合樹脂
シートの表面層に用いられるオレフィン系複合樹脂は、前記表面層(1)に記載のオレフィン系樹脂に無機フィラーを含有する。該オレフィン系複合樹脂のJIS−K6758(23℃)に準拠して測定した密度は1.75g/cm3以下、好ましくは1.60g/cm3以下、更に好ましくは1.45g/cm3以下であり、密度が1.750g/cm3を超えると流動性が劣り、高樹脂圧力でシート成形が困難となったり、容器の賦型性が劣る。
【0011】
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、マイカ、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、チタンホワイト、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ等の非繊維状無機粉体が好適である。無機粉体の粒径は特に限定されないが、好ましくは0.1から50μmである。これらの無機フィラーは単独または2種以上混合して用いることができる。これらの中でも特に粒径が20μm以下のタルクが効果的である。
【0012】
オレフィン系複合樹脂中のオレフィン系樹脂と無機フィラーとの配合比率は、好ましくはオレフィン系樹脂:無機フィラー(重量%)=20〜80:80〜20、より好ましくは40〜80:60〜20、特に好ましくは50〜70:50〜30である。無機フィラーが80重量%を超えオレフィン系樹脂が20重量%未満となると、樹脂材料中の無機フィラーの分散性が低下し、かつ成形時の押出性や容器等の二次成形品の賦型性、耐寒性、耐衝撃性が劣る傾向にある。一方、オレフィン系樹脂が80重量%を超え無機フィラー量が20重量%未満となると、容器等の二次成形品の剛性や耐熱性が劣る傾向にあるため、二次成形品の大きさに限界が生じたり、補強構造の複雑な設計を要することから金型費が高くなったり、形状付与等による容器生産性が劣る等の問題が生じる場合がある。
【0013】
前記オレフィン系樹脂と無機フィラーは、例えばゲレーションミキサー、スーパーミキサー等で混合し、さらに押出機やニーダー、カレンダーロール等の単独機或いは2機併用の混合機等で溶融分散させながら混練しペレット化することにより、オレフィン系複合樹脂材料とすることができる。
【0014】
また、前記オレフィン系複合樹脂は、JIS−K6758(230℃−2.16kg荷重)に準拠して測定したMFRが0.3〜20g/10、好ましくは0.3〜10g/10分であり、更に好ましくは0.5〜10g/10分である。MFRが0.3g/10分未満ではシート成形が高樹脂圧力で困難となり、しかも積層シートに表面荒れが起こりやすく、MFRが20g/10分を超えるとシート成形時にサージングが発生し、ドローダウンの改良効果も少ない。
【0015】
2.中間層
シートの中間層に用いられるオレフィン系樹脂又はオレフィン系複合樹脂は、プロピレンを主成分とするものであり、プロピレンの単独重合体、又はプロピレンとエチレンもしくは炭素数4〜20(好ましくは4〜12、より好ましくは4〜8)のα−オレフィンとのブロック又はランダム共重合体を主体とするものであり、該プロピレン系樹脂中のプロピレン重合体の含有量が好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上のものである。用いるプロピレン共重合体としては、具体的にはプロピレン含量が99〜90重量%のプロピレンと、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1等のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体あるいはこれらの混合物、又は該オレフィン系樹脂に無機フィラーを20〜80重量%含有する密度が1.75g/cm3以下のオレフィン系複合樹脂であり、中でもプロピレン単独重合体やプロピレン−α−オレフィンブロック或いはランダム共重合体、又は該樹脂に、無機フィラーが前記範囲内で含まれたものが好ましい。
【0016】
また、上記プロピレン共重合体は、上記のものの2種以上の混合物でもよいが、プロピレン含量が99〜90重量%、好ましくは98〜94重量%のものが剛性、耐熱性の点から望ましく、また、JIS−K6758(230℃−2.16荷重)に準拠したMFRが10g/10分以下、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは、0.5〜5g/10分であるものがドローダウン保持性の点で好ましい。
【0017】
中間層のオレフィン系樹脂、又はオレフィン系複合樹脂中のポリエチレン樹脂は、エチレンの単独重合体もしくはエチレンと炭素数3〜20(好ましくは3〜12、より好ましくは3〜8)のα−オレフィンとの共重合体であり、2種類以上の混合物であってもよい。エチレン含量が50重量%以上のものが好適である。
【0018】
エチレンの単独重合体及びエチレン含量70重量%以上のエチレンとα−オレフィンとの共重合体が剛性、耐熱性の点で好ましく、密度(JIS K7112、A法)は0.970g/cm3以下であれば特に限定されないが、0.930g/cm3以下の密度を有するポリエチレン樹脂を使用すると耐衝撃性等が良好である。前記ポリエチレン樹脂は、触媒としてチーグラー系の化合物やメタロセン系化合物等の存在下に、高圧イオン重合、気相重合、溶液重合法により製造されるMFR(JIS K7210、条件4)が10g/10分以下、好ましくは、0.01〜10g/10分、更に好ましくは、0.05〜5.0g/10分のものが良好である。MFRが上記範囲以外のものはいずれも溶融粘度が高すぎるか低すぎるため、プロピレン系重合体との相溶性が悪くなったり、表層との流動性バランスを阻害したりしてシートにサージングを発生させて容器賦型性不良が生じる。
【0019】
上記中間層のポリエチレン樹脂の割合は、プロピレン系樹脂に対し15重量%以上、好ましくは15〜90重量%、更に好ましくは20〜80重量%配合した混合物であり、該混合物のMFR(JIS−K6758〈230℃、2.16kg荷重〉に準拠する)が、10g/10分以下、好ましくは5g/10分以下、密度(JIS K7112、A法)は、1.750g/cm3以下のものが中間層の構成物として必須である。
【0020】
前記組成物において、ポリエチレン樹脂が15重量%未満やMFRが上記範囲を超えるものは、真空成形時の予熱工程でシートのドローダウンが大きくなり、容器にシワや穴が発生して賦型性不良が生じ、特に1000mm以上の広幅シートの真空成形では容器の製造ロスが大きい。MFRの下限については、MFR測定時に実質上流動性のないものであっても、シート成形機によりシートが成形される範囲のものであればよく、特に限定されないが0.01g/10分未満では押出量の低下やモーター負荷が大きくなり、生産性が低下する。また、密度が上記範囲を超えると、流動性が劣る。
【0021】
前記オレフィン系複合樹脂中の無機フィラーは、表面層に用いた種類や粒径内の無機フィラー(単独或いは2種以上の混合物可)や混合法であれば特に限定はなく、オレフィン系複合樹脂中のオレフィン系樹脂と無機フィラーとの配合比率は、好ましくはオレフィン系樹脂:無機フィラー(重量%)=20〜80:80〜20、より好ましくは40〜80:60〜20、特に好ましくは50〜70:50〜30である。無機フィラーが80重量%を超えオレフィン系樹脂が20重量%未満となると、樹脂材料中の無機フィラーの分散性が低下し、かつ成形時の押出性や容器等の二次成形品の賦型性、耐寒性、耐衝撃性が劣る傾向にある。一方、オレフィン系樹脂が80重量%を超え無機フィラー量が20重量%未満となると、容器等の二次成形品の剛性や耐熱性が劣る傾向にあるため、二次成形品の大きさに限界が生じたり、補強構造の複雑な設計を要することから金型費が高くなったり、形状付与等による容器生産性が劣る等の問題が生じる場合がある。
【0022】
また、シートの表面層または中間層を構成する各成分に、前記成分以外の成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、透明化剤、着色剤、腐食防止剤等を目的に応じて適時加えたり、塗布してもよい。
【0023】
前記の表面層と中間層からなるオレフィン系樹脂積層シートの厚み構成は、表面層厚み比が該積層シートの2%以上、好ましくは5〜80%、更に好ましくは5〜60%である。
この範囲未満では、シートのドローダウン性の改良効果がなく、しかも真空成形時の加工温度幅が狭く、容器の賦型性不良が生じるので好ましくない。
また、シートの全体厚みは、上記層構成比で容器成形等ができる範囲であれば特に制限はないが、一般の食品用容器では3mm以下が好ましい。
【0024】
また、上記積層複合樹脂シートの製造法は、鏡面ロールを用いるポリシング法、エアーナイフ法(ロール圧延含)あるいは、金属鏡面ベルト法(シングルやツインベルト含む)や急冷後に金属鏡面ベルトで圧着化するTダイ法、インフレーション法、カレンダーロール法等の共押出法や単層法に表面層を融着したり、接着剤で貼り合わすラミネート法等から製造されるものであれば特に限定されないが、共押出法が生産性や層構成を簡便に調整できることから好ましい。
本発明のオレフィン系複合樹脂積層シートの熱成形品の製造方法は、間接加熱成形法(真空成形法、圧空成形法、固相圧空成形法)、固相プレス成形、スタンピング成形、或いは前記成形法の組み合わせ等による容器成形法であれば特に限定されない。
【0025】
上記成形時におけるオレフィン系複合樹脂積層シートの表面温度は、150℃以上、好ましくは150〜350℃、更に好ましくは150〜250℃の範囲内であり、150℃未満ではオレフィン系複合樹脂積層シートの溶融特性が不完全であるため容器の賦型性が悪く、しかも容器内に歪みが残存し、電子レンジ等で再加熱したとき容器が変形する。また、350℃を超えると積層シートが熱で劣化を起こしドローダウンが激しくなり、容器にシワや穴が発生する。
【0026】
上記オレフィン系複合樹脂積層シートの表面温度は、厚み(χmm)が厚くなると断面積あたりの熱量が小さくなるため、一定温度による加熱時間では得られる温度が異なり、しかも垂れ量も異なる。従って厚みの異なる積層シートの定垂れ量が得られる加熱時間f(x)は下記式で表すことができる。
f(x)=21.8χ+19.5
f(x):加熱時間(秒)、χ:オレフィン系複合樹脂積層シートの厚み(mm)
本発明のオレフィン系複合樹脂積層シートは、450℃に加熱された上下ヒーター面から15cm離れた中央水平部分のχmm厚みシート(30cm×30cmのサンプル試験片)をf(x)時間加熱したときの最大垂れ量が30mm以下であることが必須である。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
実施例1
MFR0.5g/10分、密度0.905g/cm3のプロピレン系ブロック重合体40重量%(日本ポリケム(株)製:ノバテックPP EC9(商品名)融点169℃〈以下BPP−2と称す〉)とエチレン重合体30重量%(日本ポリケム(株)製:ノバテックHD HB331R(商品名)融点135℃〈以下HPE−1と称す〉)とタルク30重量%(富士タルク(株)製 粒径10μ)を温度170℃のゲレーションミキサーで溶融分散させ、該溶融分散された混合物を口径60mmφの単軸押出機で温度230℃で押し出し、MFRが0.8g/10分、密度が1.15g/cm3のプロピレン系複合ペレットを造粒した。次に前記複合ペレット100重量%を口径90mmφの押出機から、一方、MFR1.4g/10分、密度0.904g/cm3のプロピレン系ブロック重合体(日本ポリケム(株)製:のノバテックPP EC7(商品名)融点168℃〈以下BPP−1と称す〉)を口径50mmφの押出機からそれぞれ押出し、2種3層構成のフィードブロックが装着した共押出機のTダイから、樹脂温度240℃、幅400mmのシート状に、プロピレン系ブロック重合体/オレフィン系複合樹脂(タルク濃度30wt%)/プロピレン系ブロック重合体の層構成となるように溶融押し出しした。ついで前記溶融シートをポリシング法の冷却ロール(ロール温度:上50℃、中70℃、下50℃)に導いて冷却固化し、厚みが0.5mm、幅350mmのプロピレン系ブロック重合体/オレフィン系複合樹脂(タルク濃度30wt%)/プロピレン系ブロック重合体(25/450/25μm)の2種3層のオレフィン系複合樹脂積層シートを製出した。
得られたオレフィン系複合樹脂積層シートを、JIS−K6758に準拠して曲げ弾性、及びASTM−D2794に準拠しデュポン衝撃強度を測定した。
【0028】
前記オレフィン系複合樹脂積層シートを、中央に30cm角の穴を有する2枚の鉄枠(33mm×33mm×2mm)の間に挟み、断熱箱の中に水平にセットする。次に鉄枠にサンドイッチされたオレフィン系複合樹脂積層シートを均一に加熱出来るように450℃に加熱された上下ヒーター(上下ヒーターは、設置されたシート面から15cm離れたところからオレフィン系複合樹脂積層シートを加熱)をシート上下面にスライドさせる。鉄枠内のシートは、加熱によって一旦、下面ヒーター方向に垂れ下がり、その後、シートの厚み方向に均一に昇温が進むと、オレフィン系複合樹脂積層シートは再び水平となり、更なる上下面ヒーターの加熱により、オレフィン系複合樹脂積層シートは自重で垂れ下がり進行する。前記記載のオレフィン系複合樹脂積層シートの垂れ挙動は下面ヒーターの下に設置したレーザー光線をオレフィン系複合樹脂積層シート面にあてて1秒間隔で垂れ量を測定しながら、加熱時のスタートから35秒間加熱した時の垂れ量とそのときの表面温度を測定した。
この35秒後の加熱時間によって、オレフィン系複合樹脂積層シートの垂れ量や垂れ勾配(35秒加熱した時の1秒あたりの垂れ量)が少ない程、また、前記手法の垂れ量が30mmに到達するまでの加熱時間f(x)が長い程、ドローダウン性の優れたシートと称す。
【0029】
実施例2〜6、比較例1〜6
本オレフィン系複合樹脂積層シートの表面層や中間層に、下記樹脂を用いて厚みを変化させたり、添加するエチレン系重合体のグレード変更や配合割合、或いはタルクを表1に記載の割合で混合したオレフィン系複合樹脂積層シートを得た他は、実施例1と同様に積層シートの物性や垂れ量を評価し、その結果を表1に示す。
【0030】
HPP−1:MFR=0.5g/10分、密度=0.904g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックPP EA9〈商品名〉融点171℃)
HPP−2:MFR=2.3g/10分、密度=0.904g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックPP FL6CK〈商品名〉融点172℃)
HPP−3:MFR=25g/10分、密度=0.905g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックPP MA03〈商品名〉融点172℃)
BPP−1:MFR=1.4g/10分、密度=0.904g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックPP EC7〈商品名〉融点168℃)
BPP−2:MFR=0.5g/10分、密度=0.905g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックPP EC9〈商品名〉融点169℃)
HPE−1:MFR=0.3g/10分、密度=0.953g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックHD HB331R〈商品名〉融点135℃)
HPE−2:MFR=0.05g/10分、密度=0.945g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックHD HB21OR〈商品名〉融点135℃)
LPE−1:MFR=0.3g/10分、密度=0.923g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックLD LF122〈商品名〉融点103℃)
LLPE−1:MFR=2.0g/10分、密度=0.920g/cm3
(日本ポリケム(株)製 ノバテックLL SF240〈商品名〉融点126℃)
ゴム:MFR=3.6/10分、密度=0.890g/cm3
(三井石油化学工業(株)製 タフマーA−4085〈商品名〉)タルク:富士タルク(株)製 粒径10um
【0031】
比較例7
HPP−1、50重量%とHPE−1、20重量%とタルク30重量%を温度170℃のゲレーションミキサーで溶融分散させ、該溶融分散された混合物を口径60mmφの単軸押出機で温度230℃で押し出し、MFRが0.8g/10分、密度が1.14g/cm3のプロピレン系複合ペレットを造粒した。
次に前記複合ペレット100重量%を口径90mmφの押出式シート成形機から、樹脂温度240℃、幅40mmのシート状に溶融押し出しした。ついで前記溶融シートをポリシング法の冷却ロール(ロール温度:上50℃、中70℃、下50℃)に導いて冷却固化し、厚みが0.5mm、幅350mmの単層オレフィン系複合樹脂シート(タルク濃度30wt%)を製出した。
得られた単層のオレフィン系複合樹脂積層シートの曲げ弾性やデュポン衝撃強度、或いは垂れ特性を評価し、その結果を表1に示す。
【0032】
実施例7
下記▲1▼、▲2▼のオレフィン系複合材料を温度170℃のゲレーションミキサーで溶融分散させ、該溶融分散された混合物を口径60mmφの単軸押出機で温度230℃で押し出し、MFRが0.8g/10分、密度が1.14g/cm3のプロピレン系複合ペレット▲1▼と、MFRが0.4g/10分、密度が1.16g/cm3のプロピレン系複合ペレット▲2▼をそれぞれ造粒した。
【0033】
▲1▼BPP−1が70重量%とタルクが30重量%の組成物
▲2▼BPP−2が30重量%とHPE−1が40重量%とタルクが30重量%の組成物
次に、▲1▼のプロピレン複合ペレットを口径40mmφの押出機から、一方▲2▼のオレフィン系複合ペレットを口径90mmφの押出機からそれぞれ押出し、
2種3層構成のフィードブロックが装着した共押出機のTダイから、樹脂温度240℃、幅1100mmのシート状に、プロピレン系複合樹脂/オレフィン系複合樹脂(タルク濃度:30wt%)/プロピレン系複合樹脂の層構成となるように溶融押し出しした。ついで前記溶融シートをポリシング法の冷却ロール(ロール温度:上60℃、中80℃、下60℃)に導いて冷却固化し、厚みが0.5mm、幅1040mmのプロピレン系複合樹脂/オレフィン系複合樹脂(タルク濃度:30wt%)/プロピレン系複合樹脂(50/400/50μm)の2種3層のオレフィン系複合樹脂積層シートを製出した。
【0034】
得られたオレフィン系樹脂積層シートを、浅野研究所製の真空成形機(名称:FLS 415)のヒーター温度:設定325℃(下ヒーター)〜470℃(上ヒーター)、サイクル:5.0秒で加熱したときのオレフィン系複合樹脂積層シートのドローダウン性と縦:18cm、横:25cm、深さ:3cmの容器成形品(35ヶ採り)の賦型外観を目視観察した結果や耐寒性や耐熱性評価結果を表2に示す。
【0035】
比較例8〜9、比較例8〜10
表面層や中間層に、表2の樹脂や再生材を用いた他は、実施例7の共押出装置の加工条件でオレフィン系複合樹脂積層シートを得、真空成形機でドローダウン製や容器賦型性、耐寒性、耐熱性を評価した結果を表2に示す。
【0036】
比較例11
比較例7で得られた複合ペレット70重量%と再生材30重量%とを配合し、口径90mmφの押出式シート成形機から、樹脂温度240℃、幅1100mmのシート状に溶融押し出しした。ついで前記溶融シートをポリシング法の冷却ロール(ロール温度:上60℃、中80℃、下60℃)に導いて冷却固化し、厚みが0.5mm、幅1040mmの単層のオレフィン系複合樹脂シート(タルク濃度30wt%)を製出した。 得られた単層のオレフィン系複合樹脂積層シートの真空成形機でドローダウン性や容器賦型性、耐寒性、耐熱性を評価した。その結果を表2に示す。
尚、オレフィン系樹脂積層シートのドローダウン性、或いは真空成形機による容器の賦型性、耐寒性、耐熱性評価は、下記方法で行った。
【0037】
(1)容器成形時のドローダウン性
得られたオレフィン系複合樹脂積層シートを、浅野研究所製の真空成形機(名称:FLS 415)のヒーター温度:設定325℃(下ヒーター)〜470℃(上ヒーター)で5.0秒で加熱したときの該溶融積層シートのドローダウン量をスケールで測定した値を垂れ量とした。
【0038】
(2)容器の賦型性
得られたプロピレン系複合樹脂積層シートを、浅野研究所製の真空成形機(名称:FLS 415)のヒーター温度:設定325℃(下ヒーター)〜470℃(上ヒーター)、サイクル:5.0秒で加熱成形し、縦:18cm、横:25cm、深さ:3cmの容器(35ヶ採り)を得たときの容器外観を目視で観察したときの結果を下記範囲で○〜×と判断した。
評価基準 結果
35個の容器とも賦型性が良好であり、容器に変肉が見られない。 ○
35個の一部容器にシワが残存したり、容器に変肉がある。 △
容器にシワが多発したり、穴が発生したりして容器の変肉が激しい。 ×
【0039】
(3)耐寒性
真空成形機で得られた容器に250gのお米を充填し、ストレッチフィルム(ユカラップ)でラップ、シールした充填容器を−20℃の雰囲気中に24時間放置後、1mの高さから10回底面へ落下し、外観変化を下記範囲で○〜×と判定した。
評価基準 結果
容器にクラックや割れが無く、丈夫で変化がみられない。 ○
4〜9回の落下により容器の一部にクラックや割れが発生した。 △
1〜3回の落下で容器にクラックや割れが発生した。 ×
【0040】
(5)耐熱性
真空成形機で得られた容器を、室内雰囲気温度が130℃に設定されたオーブン(コマツ機械製のパーヘクトオーブン)に3分間加熱放置後、オーブンから容器を取り出して容器の収縮率を測定した値を下記範囲で○〜×と判断した。
評価基準 結果
容器の収縮率が0〜1.5%以内であり、外観に変化が見られない。 ○
容器の収縮率が1.5〜3%以内であり、外観が少し変形している。 △
容器の収縮率が3%以上であり、容器に変形が見られる。 ×
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、MFRの密度の異なるオレフィン系樹脂又はオレフィン系複合樹脂を表面層に用い、ポリエチレン樹脂を特定量配合したオレフィン系樹脂又はオレフィン系複合樹脂を中間層に用いた多層構成のオレフィン系複合樹脂積層シートとすることで、再生材を投入してもドローダウン性が著しく向上し、剛性、耐寒性、耐熱性に優れる容器の生産性向上が図れるオレフィン系複合樹脂積層シートを供給できる。
Claims (3)
- 中間層及び表面層がオレフィン系樹脂又は該オレフィン系樹脂に無機フィラーを10重量%以上含有するオレフィン系複合樹脂からなり、中間層が表面層に挟まれてなる積層シートであって、表面層及び中間層の少なくともどちらか一方がオレフィン系複合樹脂で構成され、かつ下記(i)〜(iii)を満たすことを特徴とするオレフィン系複合樹脂積層シート。
(i)表面層は、オレフィン系樹脂がプロピレンを主成分とし、かつオレフィン系樹脂及びオレフィン系複合樹脂の密度が1.75g/cm3以下、メルトフローレート(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が0.3〜20g/10分であること。
(ii)中間層のオレフィン系樹脂は、メルトフローレート(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が0.5〜5g/10分のプロピレン系樹脂を10〜85重量%と密度が0.970g/cm 3 以下、メルトフローレート(試験条件:190℃、2.16kg荷重)が0.05〜5.0分のポリエチレン樹脂を15〜90重量%含有する樹脂組成物であり、かつオレフィン系樹脂及びオレフィン系複合樹脂のメルトフローレート(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が10g/10分以下、密度が1.75g/cm3以下であること。
(iii)450℃に加熱された上下ヒーター面から15cm離れた中央水平部分のχmm厚みシート(30cm×30cmのサンプル試験片)をf(x)時間加熱したときの最大垂れ量が30mm以下であること。
尚、加熱時間f(x)秒は、下記式から算出されるものである。
f(x)=21.8χ+19.5 - 全層内の表面層の厚み比が2%以上である請求項1記載のオレフィン系複合樹脂積層シート。
- オレフィン系複合樹脂は、オレフィン系樹脂20〜80重量%に無機フィラー80〜20重量%を含有することを特徴とする請求項1記載のオレフィン系複合樹脂積層シート。
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