JP4040185B2 - ポリオレフィン系樹脂組成物、シート及び成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装材料、文具及びその他産業資材に利用されるポリプロピレンを主成分としたポリオレフィン系樹脂組成物、シート及び成形品に関するものである。特に、剛性・耐衝撃性・耐熱性・透明性・熱成形性を全て高いレベルで兼ね備えた、優れたポリプロピレン系シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系シートは、安価で剛性・耐熱性に優れることから、包装材料、文具及びその他産業資材等幅広い分野において使用されている。ポリプロピレン系樹脂は本来、透明性に劣るという欠点があるが、プロピレンの単独重合体やエチレンとの結晶性ランダム共重合体においては、急冷成形や適当な造核剤の添加により大幅に改良することができ、これによって一層広い用途に使用されるようになっている。
【0003】
しかし、プロピレンの単独重合体やエチレンとの結晶性ランダム共重合体は、耐衝撃性に乏しいという欠点があり、これを改良するために一般的なポリエチレンまたはオレフィン系ゴムをブレンドする場合があるが、このとき、透明性は大幅に低下し、前述の方法を用いても十分に改善されない。さらに、冷凍食品包装や寒冷地での使用に耐えうる耐衝撃性を賦与しようとするとき、こうした方法では相当量の配合が必要となる結果、剛性も低下してしまうという欠点があった。一方、こうした用途に用いられる、エチレンとの共重合によりポリエチレン成分や非晶質あるいは低結晶性のプロピレン−エチレン共重合体を結晶性ポリプロピレン中に分散せしめたいわゆるブロックコポリマー(インパクトコポリマー)があるが、これは透明性が極めて劣り、前述のような方法によっても透明性を向上させることはできない。すなわち、従来のポリプロピレン系シートでは、透明性・剛性・耐衝撃性を高レベルで両立することは困難であった。
【0004】
また、ポリプロピレン系シートは、一般に熱成形と呼ばれる2次加工によって凹凸を持った形状に賦形し、容器等に用いられることが多いが、この場合、シートを溶融状態にまで加熱して加工するため、この際に自重による伸びや垂れ下がりの少ないものほど取り扱いやすく、歩留まりや生産性に優れる。従って、ポリプロピレンとしては、溶融粘度の高いものほど適しているが、実用上はこれにも限界があり、それを補うためにポリエチレンをブレンドすることがよく行われているが、この場合、透明性の大きな悪化を伴うことは前述の通りである。
また、シートの状態では透明性が良好であったものが、熱成形工程を経ることによって著しく悪化する場合があるため、シートのときに透明であるだけでは十分ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年は、冷凍状態から直接加熱して食する調理済み食品の増加に代表されるような使用範囲の広範化や、タッパウエアや衣装ケースの高透明化、さらにPL法施行による安全性へのニーズ増大等、素材に求められる機能がより広範化、高機能化、多様化しており、ポリプロピレン系シートに対しても、これらの要求を満たすよう、一層の性能向上が求められている。
単独では限界のあるポリプロピレンの剛性・耐熱性・透明性・耐衝撃性・熱成形性といった性能のうち、従来の技術によって向上させることができるのは限られた幾つかであって、これら全てを同時に高レベルで両立させる技術はなかったため、前述のようなニーズへの対応にも限界があった。
【0006】
本発明は、ポリプロピレン系シートにおいて、従来技術では両立が困難であった、剛性・耐熱性・透明性・耐衝撃性、熱成形性の全てを高いレベルで併せ持ち、特に耐衝撃性は冷凍食品包装や寒冷地における使用に十分耐えうる極めて高いレベルを達成することによって、極めて広範囲な用途に使用可能な優れたポリプロピレン系シート、シート材料としてのポリオレフィン系樹脂組成物及びこのシートから得られる優れた熱成形品を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定のポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を用い、さらに透明性・剛性・耐熱性を向上させることができる造核剤を組み合わせて用いることにより、前記の課題を解決しようとするものである。具体的には、一定以上の結晶性と特定範囲のMFRを持つポリプロピレン系樹脂に対し、造核剤添加によって透明性・剛性・耐熱性を向上させ、さらに一定の温度上昇溶離分別特性と密度、MFRを持ったポリエチレン系樹脂を適当量配合することにより、耐衝撃性や熱成形性の向上を図ることによって、前記の課題を解決しようとするものである。
【0008】
【発明の実施形態】
以下本発明を具体的に説明する。
1.成分(A)ポリプロピレン系樹脂
成分(A)は、コモノマーとしてプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンを含んでもよい結晶性ポリプロピレンであって、所定の諸特性を有するものである。詳しくは、
プロピレン単独重合体(A1)またはプロピレンを主成分とした、プロピレンと炭素数2もしくは4〜20のα−オレフィンとの共重合体(A2)であり、MFR(JIS−K6785:温度230℃、荷重2.16kgf)が0.1〜50g/10分であり、且つ、DSC(JIS−K7121)によって得られる曲線上のこの成分(A)の主たる融解ピーク温度が160℃以上であり、結晶化開始温度が127℃以上、結晶化ピーク温度が125℃以上であるものが選ばれる。
【0009】
また、混合後の諸特性が前述の範囲内にあれば、(A1)または(A2)に該当する2種類以上の結晶性ポリプロピレンの混合物であってもよく、またその混合はいかなる方法によってもよい。(A2)のコモノマーであるα−オレフィンは、1種以上使用でき、例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチル−ペンテン−1等を挙げることができる。MFRが上記範囲より小さい場合は、後述の成分(C)による剛性・透明性・耐熱性向上効果が劣り、MFRが上記範囲より大きい場合は熱成形性が劣ることとなる。また、DSCの特性が上記の範囲からはずれるものは、結晶性が低いため剛性と耐熱性に劣る。
【0010】
2.成分(C)造核剤
前記の成分(A)の透明性を改善し、剛性・耐熱性を向上させる目的から、ポリプロピレン系樹脂に対して造核効果を持つ物質(造核剤)を、成分(C)として1種類以上、量としては、組成物の全量に対して0.03〜2重量%の割合で配合する。配合量がこれより少ない場合は十分な効果が得られず、これより多い場合は過剰であって、不経済であるばかりでなく逆に透明性を低下させたり、シート成形時に煙や臭気の原因になる等弊害の出る恐れがある。造核剤を例示すると、次のような物質が挙げられる。
(C1)下記式[1]で表されるアルミニウム−ジ−パラ−ターシャリブチル−ヒドロキシベンゾイックアシッド
(C2)下記式[2]で表されるリン酸2,2メチレンビス(2,6−ジ−ターシャリブチルフェニル)ナトリウム
(C3)下記式[3]で表される環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩
(C4)下記式[4]で表されるソルビトール系化合物
(C5)ロジン類の金属塩
【0011】
【化1】
【0012】
上記式[3]において、R1 は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、R2 及びR3 は、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基であり、それぞれ異なっていてもよく、Mは、周期律表第III族または第IV族の金属原子であり、Xは、金属の原子価より2だけ少ない数の水酸基である。また、上記式[4]において、R4 及びR5 は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、それぞれ異なっていてもよい。
なお、ここに例示した造核剤は代表的なものであり、これらと同様の効果を有するものであれば例示以外の物質でもよく、同時にこのような物質は最終的にシートに成形される時点において必要量含まれていればよく、配合方法についてはいかなる方法をとってもよい。
【0013】
3.成分(B)ポリエチレン系樹脂
成分(B)は、エチレンを主成分とした炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体であって、所定の諸特性を有するものである。詳しくは、主成分であるエチレンと共に、コモノマーとして炭素数3〜18のα−オレフィンを含む共重合体であって、温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線上のこの成分(B)の最大ピーク温度が25〜82℃であり、該ピークの高さをHとし、その3分の1の高さにおける該ピークの巾をWとしたときのH/Wの値が2.33×10-3(℃-1)以上、好ましくは2.92×10-3(℃-1)以上であり、MFR(JIS−K7210:温度190℃、荷重2.16kgf)が0.1〜50g/10分であり、密度が0.93〜0.88g/cm3 であるポリエチレン系樹脂である。なお、上記の諸特性のいずれかに該当しないようなポリエチレン系樹脂を用いた場合は、得られるシートは透明性、耐衝撃性、熱成形性のいずれかの性能に劣る。
【0014】
ここで、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fraction )とは、一度ポリマーを高温で完全に溶解させた後に冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させ、ついで温度を連続または段階的に昇温して、溶出したポリマー成分を回収し、その濃度及び温度を連続的に検出して、ポリマーの溶出量と溶出温度との関係を求める方法である。その溶出量(溶出分率)と溶出温度によって描かれるグラフが溶出曲線であり、これによりポリマーの組成分布(分子量及び結晶性の分布)を知ることもできる。
【0015】
温度上昇溶離分別(TREF)の測定方法及び装置の詳細については、Journal of Applied Polymer Science第26巻(1981年)第4217〜4231頁に記載されている。また、測定装置として市販のものには、クロス分別装置(三菱化学株式会社製、商品名CFC・T150A)がある。このクロス分別装置は、試料を融解温度の差を利用して分別する温度上昇溶離(TREF)機構と、分別された区分をさらに分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(Size Exclusion Chromatography:SEC)をオンライン接続したものである。
【0016】
本発明における溶出曲線上の最大ピークとは、ピークの高さが最も高いピーク、すなわち溶出分率が最大となるピークをいう。また、本発明におけるH/Wは、該曲線上の、最大ピーク高さ(H)の実測値と、その高さの1/3におけるピークの巾(W)の実測値から算出することができる。実際には、図1に示すように、ピークの巾(W)は、溶出曲線上に高さ(1/3)Hの水平な直線を描き、該曲線とこの直線との交点のうち最大ピークから最も近い、水平軸上前後2点の間の距離を測定することによって得られる。なお、図上の実測値(HまたはW)は、必要に応じ適切な補正を行うことによって、正しい単位(分率または℃)の値とすることができる。
【0017】
本発明においては、成分(B)ポリエチレン系樹脂のTREF特性が、すなわち最大ピーク温度及びH/Wが所定範囲内であれば、組成分布が狭く結晶性が均一なので、成分(A)ポリプロピレン系樹脂と混合した場合に透明性を悪化させることが無く、また剛性・耐熱性を実用上十分なレベルに保ちながら同時に優れた耐衝撃性を賦与することができる。一方、最大ピーク温度が所定範囲より高いと、高結晶成分が多く存在し、該ポリエチレン系樹脂をポリプロピレン系樹脂に配合したシートの衝撃強度及び透明性が低下するので好ましくない。また、H/Wの値が所定範囲より小さい場合も同様である。一方、最大ピーク温度が所定範囲より低いと、シートの剛性・耐熱性が悪化するので好ましくない。
【0018】
前述した諸特性を備えるポリエチレン系樹脂は、エチレンを主成分とし、炭素数3〜18のα−オレフィンをコモノマー成分とする共重合体であるが、そのような共重合体製造の原料α−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチル−ペンテン−1等を挙げることができる。これらコモノマーは1種類に限られず、2種類以上用いて多元系共重合体、例えばターポリマーとしてもよい。
【0019】
しかして、この共重合体中のモノマー単位の割合は、好ましくは、エチレン80モル%以上、コモノマー20モル%以下である。また、該共重合体の製造方法は特に制限されず、上述した諸特性を満たすような条件さえ選べば、公知の方法で製造することができる。例えば、分子量及び結晶性の分布を制御する公知の方法として、重合温度やコモノマー量を調節する方法を適宜採用することにより、所望の共重合体を得ることができる。
【0020】
また、重合触媒や重合方法にも特に制約はなく、例えば、触媒としては、チーグラー型触媒(すなわち担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づくもの)、フィリップス型触媒(すなわち担持酸化クロム(Cr6+)に基づくもの)、カミンスキー型触媒(すなわち担持または非担持メタロセン型化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンとの組み合わせに基づくもの)等が挙げられる。本発明における成分(B)は、比較的せまい組成分布が望ましいので、特にカミンスキー型触媒を用いることが望ましい。重合方法としては、これらの触媒存在下でのスラリー重合法、気相流動床重合法(例えば、特開昭59−23011号公報に記載の方法)や溶液重合法、あるいは圧力が200kg/cm2 以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。
【0021】
4.成分(A)と成分(B)の配合
本発明において成分(A)及び成分(B)の配合割合は、それぞれ50〜85重量%及び50〜15重量%であり、成分(B)が前記の範囲より多い場合は剛性・耐熱性に劣り、逆に少ない場合は耐衝撃、熱成形性に劣る。
【0022】
5.その他の成分
本発明において、シートを形成する樹脂材料であるポリオレフィン系樹脂組成物としては、前述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)の他に、一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分、例えば、酸化防止剤、中和剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、着色剤等を配合することができる。また、本発明の特性を損なわない範囲であれば、炭素数2〜8のα−オレフィン2種以上から成るゴム成分を配合することもできる。
【0023】
6.ポリオレフィン系樹脂組成物の形成
ポリオレフィン系樹脂組成物は、前記各成分を、必要に応じドライブレンドし、直接シート製造装置に供給しシートに成形してもよいが、シート製造装置に供給する前にあらかじめ押出機、バンバリーミキサー、ニーダールーダー等を用いて溶融混練物とし、あるいは溶融混練物をさらに適当な大きさの粒状に固化形成して、これらをシート製造装置に供給してもよい。すなわち、最終的に得られるシート成形物において、各成分の配合量が前記の範囲内であって、さらに実用上問題ない混合状態であれば、ポリオレフィン系樹脂組成物を形成する各成分の配合方法や、工程はいかなるものであってもよい。
【0024】
7.シートの製造
本発明におけるシートの製造は、公知の任意の成形方法に従うことができるが、本発明の特長を生かす上では、シートの両表面または片面を平滑な光沢のある状態にすることのできる方法が好ましい。具体的には、まず連続的にシートを製造する方法としては、溶融状態の樹脂材料を平板状に押し出し、これを表面が平滑な回転する一対のロールで挟み込みながら連続的に冷却固化と表面への平滑性賦与を行う方法、ロールの代わりに表面が平滑なベルトを1つあるいは2つ用いる方法、一旦表面の平滑性にかまわず平板状に固化させたものを再度加熱した上で表面が平滑なロールやベルトを押し当て、最終的に表面が平滑なシートを得る方法、さらに溶融状態の樹脂材料を円筒状に押し出し周囲から水流や気流によって冷却固化する方法等が挙げられる。また、非連続的に製造する方法としては、一旦何らかの方法で平板状にした表面が平滑でないシートを、表面が平滑な1対の板の間に置き熱を加えながら板同士を押しつけることによって表面を平滑にする方法、溶融状態の樹脂原料を表面が平滑な1対の板の間に供給し板で圧力を加えながら冷却固化させる方法等が挙げられる。以上に述べた製造方法のうち、品質の安定性や生産性の面からは、表面が平滑なロールやスチールベルトで連続的にを成形する方法が好ましく、特に片面もしくは両面からスチールベルトで押さえ込む方法が好ましい。
【0025】
8.積層シート
本発明のシートは、前述のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有していれば、単層シートでも多層シートでもよい。該ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有する多層の積層シートを得る方法としては、従来ポリプロピレン樹脂において行われているあらゆる方法が利用可能である。具体的には前述のシート成形の過程において、必要に応じ接着性樹脂を介して、該ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層と所望の素材からなる層とを、溶融状態で積層した後に冷却固化してシートとするいわゆる共押出法、一旦シート状にしたもの同士を溶融樹脂や接着剤等によって張り合わせるラミネーション法、一方のシートに他方を溶融状態で積層した後に直ちに冷却固化し積層シートを得る熱ラミネーション法もしくは押出コーティング法等が挙げられる。
本発明のシートは、従来ポリプロピレン系樹脂が利用されてきた全ての積層体ついて、該ポリプロピレン系樹脂層を代替することにより性能向上を図ることのできる、あらゆる分野に応用可能なものである。
【0026】
9.用途
本発明のシートは、透明性・剛性・耐熱性・耐衝撃性・熱成形性に優れ、またこれから得られる熱成形品も透明性・剛性・耐熱性・耐衝撃性に優れ、さらに固相成形法や圧空成形法によって得られる成形品は透明性・剛性・耐熱性・耐衝撃性の他、光沢にも優れる。よって、次のような用途に適用することができる。
【0027】
(1)文具用シート等
ポリプロピレンシートは、従来折り目をつけたり他の部品を接着したり、あるいは折り曲げた接着し筒状や箱状に形成して、ファイル表紙、各種ケース等に広く用いられている。このような文具用シートは、透明性を求められるものが多く、また製品の薄肉化・軽量化の点から剛性は高いほど好ましく、また様々な条件下で使用されるため割れにくいほど好ましい。よって、本発明はこうした用途に好適である。
【0028】
(2)包装容器等
包装容器は、内容物の透視性を求められることが多く、透明性に優れるほど好ましいが、従来そうしたポリプロピレンシートは耐衝撃性に限界があり、たとえば冷凍用途に供することのできるものはなかった。一方で、包装容器は、落下や転倒、輸送中の衝撃に耐えて密封性を保ち、内容物を保護するという機能が必然的に求められるため、耐衝撃性が高いほど好ましいが、従来の技術では透明性を犠牲にするしかなかった。また食品分野では電子レンジ加熱による加熱・調理や、ボイル処理、レトルト処理等の加熱殺菌処理に耐える耐熱性が求められているが、従来は十分な透明性と耐衝撃性をも同時に得ることはできなかった。当然、剛性は高いほど好ましく、これを犠牲にして透明性と耐衝撃性を両立したとしても、包装材料として実用性を損なうこととなる。本発明はこれらの課題を全て同時に解決するものとして、容器、蓋、トレイ等の包装材料用途に好適である。また、包装容器として用いる場合、シートを加熱して溶融あるいは半溶融状態とした後、金型に空気圧等でこれを押しつけ、冷却・固化させて所望の形状の成形品を得る、いわゆる熱成形という加工を行う場合が多いが、本発明によるシートは、加熱時の自重による垂れ下がりが小さいため成形がしやすく、また熱成形工程を経ても透明性の悪化はほとんど無いため、透明性に優れた熱成形品が高速・高収率で得られるという特長を有し、包装容器用シートに極めて好適であると言える。
【0029】
【実施例】
以下に実例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例における評価は以下の方法によって行った。
【0030】
I.樹脂物性評価方法
(1)MFR(メルトフローレート)
成分(A)のMFRは、JIS−K6758「ポリプロピレン試験方法」のメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kgf)に従って測定した。
成分(B)のMFRは、JIS−K7210「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」の試験条件4(温度190℃、荷重2.16kgf)に従って測定した。
【0031】
(2)示差走査熱量測定法(DSC)
セイコー社製DSC装置を用い、JIS−K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠し、成分(A)のサンプル5mgを採り、200℃で10分間保持した後、40℃まで10℃/分の冷却速度で結晶化させ、このときのDSC曲線から結晶化開始温度及び結晶化ピーク温度を測定した。続いて、10℃/分の昇温速度で融解させたときのDSC曲線から融解ピーク温度を測定した。
【0032】
(3)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線の測定
成分(B)のTREFによる溶出曲線の測定は、以下のようにして行った。
a.測定装置:
測定装置としてクロス分別装置(三菱化学株式会社製、製品名CFC/T150A)を使用し、付属の操作マニュアルの測定法に従って行った。このクロス分別装置は、試料を、溶解温度の差を利用して分別する温度上昇溶離分別(TREF)機構と、区分された区分を更に分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(SEC)とをオンラインで接続した装置である。
【0033】
b.試料溶液:
まず、測定すべき試料(エチレン・α−オレフィン共重合体)を、溶媒(o−ジクロロベンゼン)を用いて濃度が4mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入した。以下の測定は、設定条件に従って自動的に行われた。
【0034】
c.温度上昇溶離分別:
サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された、内径4mm、長さ150mmの装置付属のステンレス製カラム)に0.4ml注入された。該サンプルは、1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却され、上記不活性担体にコーティングされた。このとき、高結晶成分(結晶しやすいもの)から低結晶成分(結晶しにくいもの)の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。TREFカラムを0℃で更に30分間保持した後、0℃の温度で溶解している成分2mlを、1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工株式会社製、AD80M・S、3本)へ注入した。SECで分子サイズでの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(5℃)に昇温され、その温度に約30分間保持された。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。溶出温度としては以下の温度が用いられ、段階的に昇温された。
溶出温度(℃): 0,5,10,15,20,25,30,35,40,
45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,
79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,
140℃。
【0035】
d.溶出曲線作図:
該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液について、装置付属の赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度を測定し(波長3.42μm、メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムを得た。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理した。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算された。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算された。計算結果の作図はプリンターに出力した。出力された微分溶出曲線の作図は、横軸に溶出温度100℃当たり89.3mm、縦軸に微分溶出量(全積分溶出量を1.0としたときの分率で表した、1℃ごとの変化量)0.1当たり76.5mmの尺度で行った。
e.最大ピーク温度とH/W:
次に、この微分溶出曲線から、曲線上最も高さの高いピークの温度(最大ピーク温度:H)、及び、この最大ピークのピーク高さをHとし、その3分の1の高さにおけるピーク幅(W)を測定して、H/Wの値を算出した。
【0036】
II.シート物性評価方法
(1)透明性(ヘーズ:曇価)
後述の方法によって得られたシートを用い、JIS−K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って測定。判定基準は、曇価の測定値(単位:%)に基づき、次の通りである。
◎:10未満
○:10〜20未満
△:20〜40未満
×:40以上
【0037】
(2)剛性(曲げ弾性率)
後述の方法によって得られたシートを用い、JIS−K6758「ポリプロピレン試験法」に従って測定。判定基準は、曲げ弾性率の測定値(単位:MPa)に基づき、次の通りである。
◎:1500以上
○:1500未満〜1300
△:1300未満〜1100
×:1100未満
【0038】
(3)耐衝撃性(重錘落下衝撃)
後述の方法によって得られたシートを用い、下記に従い、−30℃における耐衝撃性を評価した。
【0039】
a.試験法概要:
図2に従って説明すると、試験片(1)をリング状のホルダー(2)に固定して直径70mmの円形露出部を準備し、その中央に一定高さから先端が直径38.1mmの半球形の重錘(3)を落とす。重錘の荷重を段階的に変え、荷重と破壊頻度の関係から破壊確率が50%となるエネルギーを、所定の計算式を用いて割り出し、その破壊エネルギー値を、本試験法で定める落球衝撃強度とする。
b.試験片の温度調整:
ドライアイスで所定の温度に冷やしたエタノールを冷媒とし、これに試験片を3分浸し、取り出して5秒以内に重錘落下を行う。
【0040】
c.重錘落下:
▲1▼1荷重で5枚の試験片を試験する。
▲2▼破壊しそうな適当な荷重で試験し、試験片5枚中一部(1枚以上4枚以下)が破壊する荷重(W’)が得られたら、一定荷重(S)ずつ漸次増加し、全破壊に至る荷重(W’+nS)まで繰り返す。
▲3▼一方、最初の荷重(W’)より、同じく一定荷重(S)ずつ漸次減少させ、5枚全てが破壊しなくなる荷重(W’−n’S)まで繰り返す。
▲4▼荷重間隔(S)は、全破壊荷重(W’+nS)の約20%を目安とする。
▲5▼試験荷重は5水準を標準とする。
【0041】
d.計算:
次式より50%破壊エネルギー(E)を求める。
E=[W−S(t/100−1/2)]×H×0.098
E:50%破壊エネルギー(J)
W:全試験片(5枚)が破壊する最低荷重(kg)
S:繰り返し試験時の荷重間隔(kg)
T:各試験荷重における各5枚の試験片の破壊割合(パーセント)の総和
H:試験片から重錐先端までの高さ(cm)
判定基準は、50%破壊エネルギーの測定値(単位:J)に基づき、次の通りである。
◎:15以上
○:15未満〜10
△:10未満〜5
×:5未満
【0042】
(4)垂れ保持性
後述の方法によって得られたシートを用い、20cm間隔で平行に上下に置いた1対の遠赤外線ヒーターを450℃に熱し、その中間に30cm角の枠に固定したシートを挿入して、加熱した。加熱開始から25秒後、融解による中央部の垂れ下がり量を測定。垂れ下がり量が小さいほど、加熱ムラや成形条件の振れに影響を受けないため熱成形がしやすく且つ歩留まりも高くなり、また広い幅のラインで成形を行うことができるため生産性を上げることができる。判定基準は、垂れ下がり量の測定値(単位:mm)に基づき、次の通りである。
◎:10未満
○:10〜20未満
△:20〜30未満
×:30以上
【0043】
(5)耐熱性(荷重たわみ温度)
シート成形と同じ配合の原料樹脂を用い、JIS−K7152「プラスチック−熱可塑性プラスチックの射出成形試験片」に従って作成した射出成形試験片を用い、JIS−K7191「プラスチック−荷重たわみ温度の測定」に従って、荷重0.45MPaで測定した。判定基準は、荷重たわみ温度の測定値(単位:℃)に基づき、次の通りである。
◎:130以上
○:130未満〜120
△:120未満〜110
×:110未満
【0044】
III.シートの成形
前述の評価に用いたシートは以下のような装置、成形条件によって成形した。
(1)装置: プラ技研株式会社製・ポリッシング3本ロール式シート成形機
基本構成: 単軸押出機(40φ・L/D=28・2台使用)/フィードブロック/コートハンガーダイ/金属ポリッシング3本ロール引き取り機/巻き取り機
(2)条件:
a.原料調整:
成分(A)と成分(B)はドライブレンドによって混合し、これをシート成形機の押出機に供給し、両成分を溶融混練しながらシート成形を行った。成分(C)を添加する場合は、あらかじめ成分(A)に溶融混練して用いた。なお、後記の実施例、比較例とも全て、標準的な量の酸化防止剤、中和剤を添加している。
【0045】
b.押出温度設定:
押出機は最上流を190℃とし、徐々に設定を上げながら先端を230℃設定とした。以降、途中の接続管、フィードブロック、ダイまで全て230℃設定とした。
c.リップ開度: ダイリップの開きは0.8mmとした。
d.エアギャップ: ダイリップ先端からロールまでの距離は150mmとした。
e.引取機:
溶融樹脂の冷却固化は、金属ポリッシング(鏡面)ロール3本縦直列式引き取り機で行った。ロール内部は、一定温度のオイルの循環によって冷却される構造となっており、この時のオイル温度は全て60℃とした。なお、ロール直径は、30cmである。また、ロールの隙間は0.5mmとした。
f.引速: 全て2m/分で成形を行い、0.50mm厚のシートを得た。
【0046】
IV.容器の成形
IIIの方法で得られたシートを、溶融状態付近にまで加熱し、開口部直径60mm、深さ50mm、底部直径55mmの逆円錐台形をした金型上に置き、さらに上から箱をかぶせて金型上方の空間を密閉状態とした後、直ちに型内空気の吸引と上方箱内への加圧空気供給によって金型内壁面に溶融シートを密着させながら固化させるという真空圧空成形法によってカップ状の成形品を得た。加熱は100mm間隔の遠赤外線ヒーター1対で上下から行い、ヒーターの温度は300℃とし、加圧空気圧は、2kgf/cm2 とした。
【0047】
V.成形性及び成形品物性評価方法
上記IVの熱成形の際の成形性及び得られた成形品の物性は、次のようにして判定した。
(1)成形性
真空圧空成形法によって得られる成形品は、加熱不足の状態ではコーナー部がシャープさに欠けるが、加熱時間を徐々に長くしていくとやがて良好な状態になり、そこからさらに加熱時間を長くしていくと、やがて側面の肉厚が薄くなる等肉厚分布の崩れによってカップとしての剛性が低下してくる。この時の良好な成形品が得られる加熱時間の範囲を測定し、これが広いものほど熱成形性に優れると判断した。詳細な判定基準は、加熱時間範囲の測定値(単位:秒)に基づき、次の通りである。
◎:10以上
○:10未満〜7
△:7未満〜4
×:4未満
(2)外観
得られた良好な成形品について、その透明性・光沢を観察し外観を評価した。判定基準は、次の通りである。
◎:非常に優れる
○:優れる
△:普通
×:劣る
(3)肉厚分布
得られた良好な成形品について、その肉厚分布を観察し評価の対象とした。判定基準は、次の通りである。
◎:非常に優れる
○:優れる
△:普通
×:劣る
【0048】
VI.実施例
<実施例−1>
成分(A)としてプロピレン単独重合体(MFR:2.5g/10分、融解ピーク温度:166℃、結晶化開始温度:133℃、結晶化ピーク温度:130℃)70重量部に成分(C)としてC1アルミニウム−ジ−パラ−ターシャリブチル−ヒドロキシベンゾイックアシッド(大日本インキ株式会社製、商品名Al−PTBBA)を0.1重量部添加した溶融混練物を用い、成分(B)としてエチレンを主成分としたヘキセンとの共重合体(日本ポリケム株式会社製、商品名カーネルKE028、MFR:2.2g/10分、密度:0.895g/cm3 、TREFの溶出曲線のピーク温度:58℃、H/W:4.55×10-3℃-1)30重量部を用いてドライブレンド物を得た。
【0049】
このドライブレンド物について、前述の手法に従い、シートの成形(III)及び容器の成形(IV)を行い、また、シート物性(II)、熱成形性等(V)を評価し、その結果を表1に示した。シートは、極めて高い耐衝撃性を示し、透明性、垂れ保持性にも非常に優れ、且つ剛性、耐熱性も高い。熱成形では成形性、成形品の外観、肉厚分布ともに優れている。
【0050】
<実施例−2>
実施例−1において、成分(A)及び成分(B)の配合割合を、それぞれ、70重量%から80重量%及び30重量%から20重量%に変更した外は、全く同様にしてドライブレンド物を得た。
成形・評価の結果は表1に示すように、シートでは、剛性・透明性・耐衝撃性、垂れ保持性が特に優れ、耐熱性も良好である。熱成形では成形性、成形品の外観、肉厚分布ともに優れている。
【0051】
<実施例−3>
実施例−1において、成分(A)をプロピレン単独重合体(MFR:1.0g/10分、融解ピーク温度:165℃、結晶化開始温度:132℃、結晶化ピーク温度:129℃)に代え、成分(A)及び成分(B)の配合割合を、それぞれ85重量%及び15重量%に変更し、さらに成分(C)をC2リン酸2,2メチレンビス(2,6−ジ−ターシャリブチルフェニル)ナトリウム(旭電化株式会社製、商品名NA−11)に変更した外は、全く同様にしてドライブレンド物を得た。
成形・評価の結果は表1に示すように、シートは、特に剛性、耐熱性に優れ、耐衝撃性、透明性、垂れ保持性も高い。熱成形は成形性、外観、肉厚分布とも良好である。
【0052】
<実施例−4>
実施例−3において、成分(A)を、同例のプロピレン単独重合体40重量%及びコモノマーとしてエチレンを3重量%含むプロピレン−エチレンランダム共重合体(MFR1.3g/10分)40重量%に、また、成分(B)の配合割合を20重量%に変更した外は、全く同様にしてドライブレンド物を得た。
成形・評価の結果は表1に示すように、シートは、特に透明性に優れ、剛性、耐熱性、垂れ保持性、耐衝撃性も高い。成形品は外観が特に優れ、肉厚分布、成形性も良好である。
【0053】
<実施例−5>
実施例−1に挙げた配合の層の両表面に、実施例−3に挙げた配合の層を、共押出法により設けた2種3層構成で、各層の厚比比率を1:3:1(0.1:0.3:0.1[mm])とした。
成形・評価の結果は表1に示すように、シートでは、剛性・透明性・耐衝撃性・垂れ保持性に優れる。熱成形では成形性、成形品の外観、肉厚分布ともに優れている。
【0054】
VII.比較例
<比較例−1>
実施例−1において、成分(A)の溶融混練物のみ使用し、成分(B)を配合しなかった。
成形・評価の結果は表1に示すように、シートでは、透明性・剛性・耐熱性は優れるが、耐衝撃性・垂れ保持性に劣る。熱成形では成形性・肉厚分布に劣る。
【0055】
<比較例−2>
プロピレンから誘導される構成単位を主成分とし、さらにエチレンとの共重合により非晶性あるいは低結晶性のプロピレン−エチレン共重合体やポリエチレン分を結晶性ポリプロピレン中に分散せしめた、いわゆるICPからなるシート。シートでは、耐衝撃性や垂れ保持性は優れているが、透明性に劣る。熱成形では、特に成形品の外観が劣る。
【0056】
<比較例−3>
コモノマーとしてエチレンを3重量%含んだ、MFR1.5のプロピレン−エチレンランダムコポリマーに、成分(C)として、C2を0.1重量%添加したもの。
透明性は優れるが、耐衝撃性、耐熱性、垂れ保持性に劣る。熱成形では圧空成形時の外観は優れるが他は通常レベル。
【0057】
<比較例−4>
実施例−1において、成分(B)を直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE:日本ポリケム株式会社製、商品名ノバテックLL・UF422、MFR:0.8g/10分、密度:0.926g/cm3 、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:89℃、H/W:0.992×10-3℃-1)に変更した外は、全く同様にしてドライブレンド物を得た。
シートでは、ポリエチレン系樹脂が本発明の範囲からはずれて、組成分布が広く且つ結晶性も高いものであるため、透明性に劣る。熱成形では、容器外観がポリエチレン成分のみ異なる実施例−2に比較して劣る。
【0058】
<比較例−5>
比較例−4において、成分(A)及び成分(B)の配合割合を、それぞれ90重量%及び10重量%に変更した外は、全く同様にしてドライブレンド物を得た。
シートにおいては、透明性はある程度改善されるが、耐衝撃性が低下する。熱成形においては、成形性、真空成形におけ肉厚分布が劣る。
【0059】
<比較例−6>
実施例−1において、成分(B)を高密度ポリエチレン(HDPE:日本ポリケム株式会社製、商品名ノバテックHD・HJ560、MFR:7.0g/10分、密度:0.964g/cm3 、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:98℃、H/W:10.16×10-3℃-1)に変更した外は、全く同様にしてドライブレンド物を得た。
シートでは、ポリエチレン系樹脂が本発明の範囲からはずれた、高い密度と結晶性を持つため、透明性に劣る。熱成形においても容器の外観が劣る。
【0060】
<比較例−7>
実施例−2において、成分(B)をエチレン−ブテン共重合ゴム(三井化学株式会社製、商品名A−4085、MFR:4.0g/10分、密度:0.870g/cm3 )に変更した外は、全く同様にしてドライブレンド物を得た。
シートでは、耐衝撃性は優れるものの、剛性・耐熱性・透明性・垂れ保持性に劣る。熱成形では、容器の外観が特に劣る。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明により、ポリプロピレン系シート及びそれから得られる熱成形品において、従来は困難であった剛性、透明性、耐熱性、熱成形性、耐衝撃性の高いレベルでの両立が可能となり、これによって、例えば透明性に優れ、なおかつ冷凍食品包装等非常に高い耐寒衝撃性を求められる用途に使用可能で、同時に耐熱性や剛性も十分高く、またシートから容器等の得る際の熱成形工程においても良好な加工性を有し、得られる熱成形品も物性及び外観に優れたものが得られる。本発明は従来のポリプロピレン系シートの用途や機能を大幅に広げるものであり、文具や包装材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 溶出曲線による測定例。
【図2】 耐衝撃性測定装置の概念図。
【符号の説明】
1 試験片
2 リング状のホルダー
3 先端半球形の重錘
Claims (1)
- 下記成分(A)ポリプロピレン系樹脂50〜85重量%、下記成分(B)ポリエチレン系樹脂15〜50重量%及び成分(C)造核剤0.03〜2重量%の3成分を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有する、単層または多層のシートから得られる熱成形品。
(A) コモノマーとしてプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンを含んでもよい結晶性ポリプロピレンであって、以下の諸特性を有するもの。
a)MFR(JIS−K6785)が0.1〜50g/10分。
b)DSC(JIS−K7121)によって得られる曲線上のこの成分の主たる融解ピーク温度が160℃以上、結晶化開始温度が127℃以上、結晶化ピーク温度が125℃以上。
(B) エチレンを主成分とした炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体であって、以下の諸特性を有するもの。
c)密度が0.93〜0.88g/cm3。
d)MFR(JIS−K7210)が0.1〜50g/10分。
e)温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線上のこの成分の最大ピーク温度が25〜82℃、該ピークの高さをH(単位:分率)とし、その3分の1の高さにおける該ピークの巾をW(単位:℃)としたときの、H/Wの値が2.33×10−3(℃−1)以上。
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