JP4538123B2 - プロピレン重合体シート熱成形品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン重合体シートを熱成形してなる、透明性、透視性に優れた熱成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロピレン重合体は、耐熱性、剛性、衝撃及び衛生性に優れた材料として、押出シート成形され、熱成形によって各種包装の容器や蓋(熱成形品)に使用されている。
一方、上記熱成形品としては、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等も使用されているが、プロピレン重合体は結晶性樹脂のためにこれらの非晶性樹脂に比較して透明性が劣ると言う問題がある。
プロピレン重合体の透明性を改良する方法として、プロピレン−α−オレフィン共重合体を用いる方法、或いは、さらに結晶造核剤を添加した方法を用いることもできるが、これらの方法でシートの透明性、透視性をある程度向上させることが出来るものの、このシートを用いて真空成形や真空圧空成形等の熱成形で成形品を成形した場合、透明性や特に透視性が損なわれることが現状の問題となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決した真空成形や真空圧空成形等の熱成形においても、透明性、透視性の損なわれないプロピレン重合体シートからの熱成形品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる現状に鑑み鋭意検討の結果、特定のプロピレン重合体を用いたシート及び成形方法を使用することによって、熱成形された製品の透明性、透視性に優れることを見いだし、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、MFR(230℃、荷重21.18Nで測定)が0.1〜50g/10分である、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン含量90重量%以上のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体からなるプロピレン重合体100重量部に対して、平均粒子径5〜20nmのカーボンブラックおよび結晶造核剤をそれぞれ0.00005〜0.0005重量部および0.01〜1重量部添加してなるプロピレン重合体組成物から得られるプロピレン重合体シートを熱成形してなる、HAZEが%以下、LSI(Light Scattering Index)が以下である熱成形品である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、特定のプロピレン重合体からのシートを熱成形することにより得られる透明性、透視性の優れたポリプロピレン熱成形品である。以下に、シート組成、熱成形、熱成形品について詳細に説明する。
【0006】
1.プロピレン重合体シート
(1)プロピレン重合体
本発明で用いられるプロピレン重合体は、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン含量が90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは96重量%以上のプロピレンと、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1等のα−オレフィンとのランダム共重合体である。中でもプロピレンとエチレン及び/又はブテン−1とのランダム共重合体およびこれらのブレンド物が好ましい。
【0007】
上記プロピレン重合体は、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されたMFRが0.1〜50g/10分、好ましくは0.2〜20g/10分、さらに好ましくは0.3〜10g/10分である。MFRが上記範囲を超えると、溶融張力が不足してシートの押出成形性が不良となり、MFRが上記範囲未満では、シート成形時に流動不良となって厚み変動を起こしやすくなる。
【0008】
(2)配合物
本発明で用いるプロピレン重合体には、熱成形品の透視性をさらに優れたものにするために、カーボンブラック、結晶造核剤等の配合物を添加することができる。
(i)カーボンブラック
本発明のプロピレン重合体に添加できるカーボンブラックは、従来公知のものを使用することができ、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。
また、カーボンブラックの粒子径としては、電子顕微鏡で測定された一次粒子の平均粒子径が30nm以下、好ましくは25nm以下、さらに好ましくは5〜20nmのものである。平均粒子径が上記範囲を上回ると、透明性及び透視性の改良効果がない。
上記カーボンブラックの配合量は、プロピレン重合体100重量部に対して、0〜0.002重量部、好ましくは0〜0.001重量部、さらに好ましくは0.00005〜0.0005重量部である。カーボンブラックの添加量が上記範囲を上回ると、黒色が強くなって透明性が損なわれる傾向にある。
【0009】
(ii)結晶造核剤
本発明のプロピレン重合体に添加できる結晶造核剤としては、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、ソルビトール系誘導体、ロジンの金属塩等が挙げられる。これらの核剤の中ではp−t−ブチル安息香酸アルミニウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)アルミニウム、p−メチル−ベンジリデンソルビトール、p−エチル−ベンジリデンソルビトール、ロジンのナトリウム塩等が好適である。
結晶造核剤の配合量は、プロピレン重合体100重量部に対して、0.01〜1重量部、好ましくは0.03〜0.8重量部、特に好ましくは0.05〜0.6重量部である。該造核剤の配合量が上記範囲未満では、透明性が不足して本発明の効果が奏されず、一方、配合量が上記範囲を超えると、さらなる透明性の向上が期待できず、単にコストアップとなり好ましくない。
【0010】
(iii)他の付加的成分
本発明においては、さらに他の付加的成分を本発明の効果を著しく損なわない範囲で配合することができる。この付加的成分としては、通常のポリオレフィン用に使用される酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤及び本発明に使用する以外の樹脂、エラストマー等がある。
【0011】
(3)プロピレン重合体シートの製造
本発明のプロピレン重合体シートの製造方法としては、通常に使用されるTダイ法の押出成形機が利用できる。
より具体的な例をTダイ成形機で説明すると、押出機に本発明で用いるプロピレン重合体を投入し、190〜260℃の温度で加熱溶融混練後、Tダイのダイリップより膜状に押出し、エアーナイフ法、エアーチャンバー法、ポリシングロール法、スイングロール法、ベルトキャスト法、水冷法等で溶融膜シートを狭圧冷却して、引取機で引き取り、シートを製出する。
この様なシートの引き取り方法としては、表面光沢、透明性の観点から、片面あるいは両面を金属ベルトで押さえて狭圧冷却固化するベルトキャスト法が最も好ましい。さらに金属ベルトは、30℃以下の冷媒で冷却されていることが好ましい。冷媒としては、冷却ロール、冷却空気、水が挙げられる。
【0012】
上記の方法によって得られる本発明の熱成形品に使用できるシートは、全厚みが0.10〜1.5mm、好ましくは0.15〜1.2mm、特に好ましくは0.2〜1.0mmである。
シートの厚みがこの範囲を上回ると、透明性が不足し、上記範囲を下回ると、熱成形された製品の剛性が不足するので好ましくない。
【0013】
また、プロピレン重合体シートは、単層のみでなく多層のシートであっても良く、単層の押出成形機の他に2種以上の多層押出成形機を使用することにより製造できる。多層シートの層構成としては、例えば、プロピレン重合体シート/プロピレン重合体シートの2層シート、プロピレン重合体シート/プロピレン重合体シート/プロピレン重合体シートの3層シート、プロピレン重合体シート/他樹脂シート層の2層シート等がある。上記に述べた必須層以外の層を含んだ多層樹脂シートとしては、本発明のプロピレン重合体や本発明以外のオレフィン系重合体、再生樹脂、ガスバリアー性樹脂、接着性樹脂等のシートがあるが、少なくとも1層のプロピレン重合体シートが必要であり、プロピレン重合体シートの少なくとも1層にカーボンブラックが添加された層を用いることが好ましい。
【0014】
更に、本発明の熱成形品は、シートの段階でシート表面に帯電防止剤、防曇剤、滑剤などを塗布することもできる。
ここで、防曇剤としては、蔗糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルが使用でき、滑剤としては、シリコンオイルやアミド系滑剤などが使用できる。
【0015】
2.熱成形品
(1)熱成形法
本発明の熱成形品は、上記のプロピレン重合体シートを熱成形して得られる。熱成形方法は、通常の差圧を利用した真空圧空成形機を使用できる。
具体的には、プロピレン重合体シートを250〜450℃に設定したセラミック等の間接ヒーターで加熱し、2kg/cm以上、好ましくは2.5kg/cm以上、さらに好ましくは2.8kg/cm以上の圧空圧力で賦形する。
圧空圧力が上記範囲を下回ると、成形品の形が完全に仕上がらず、いたずらに温度を上げると透明性が損なわれる。
さらに本発明では、真空圧空成形時にプラグアシストを利用することも可能である。
【0016】
(2)熱成形品
上記のプロピレン重合体シートから得られた本発明の熱成形品は、透明性、透視性が優れ、次のHAZE、LSIを有し、各種包装の容器や蓋に使用することができる。
本発明の熱成形品は、JIS−K−7105で測定されたHAZEが10%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下である。HAZEが上記範囲を上回ると透明性及び透視性が損なわれる。
また、(株)東洋精機製作所製のLSIテスターで測定されたLSI(Light Scattering Index)は、12以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。LSIが上記範囲を上回ると透明性及び透視性が損なわれる。
ここで、LSIとは、狭角光学系での拡散透過光量を測定する透視性を表すインデックスであり、フィルムの分野では広く使用されている。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、試験法は以下の通りである。
(1)HAZE:JIS−K6758に準拠して測定した。
(2)LSI:(株)東洋精機製のLSIテスター(No.207)で測定した。
(3)透視性:成形品を目視にて、次の基準で評価した。
◎:非常に良く透視できる。
○:かなり透視できる。
△:透視性不足。
【0018】
実施例1
MFRが1.9g/10分、エチレン含量が2重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体100重量部に対して、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−プチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム0.1重量部、結晶造核剤としてソルビトール系誘導体(新日本理化株式会社製 ゲルオールDH)0.2重量部、平均粒子径が16nmのカーボンブラックを0.0002重量部添加して、250℃のスクリュー押出機にて混合し、プロピレン重合体組成物とした。
【0019】
このプロピレン重合体組成物を240℃に加熱した幅1350mmのT型ダイスによりシート状に押し出し、17℃の冷却水が内部で吹き付けられている金属ベルトで挟み冷却固化させて引き取り、シートを得た。得られたシートの厚みは0.35mmであった。
このシートを引き取る途中でシートの裏面に1.5KVでコロナ放電処理をかけた後、表面にシリコンオイルを塗布し、さらに裏面に蔗糖脂肪酸エステルを塗布し、巻き取り機でシートの裏面が内側になるように巻き取った。
このシートについて、巾方向の中央部のHAZE、LSI、透視性を測定した(成形後、常温で24時間養生)。
【0020】
又、このシートを、株式会社浅野研究所製の間接加熱式圧空成形機(名称:コスミック成形機)を使用して300℃のセラミックヒーターで上下より加熱し、圧空圧力4kg/cmの条件で、縦13cm、横18cm、深さ1cmの蓋型成形品を熱成形した。
この成形品について、中央部のHAZE、LSI、透視性を測定した(成形後、常温で24時間養生)。結果を表1に示す。
【0021】
実施例2、参考例
カーボンブラックの配合量を変えた以外は実施例1と同様にして成形品を製造し評価した。結果を表1に示す。
【0022】
比較例1
成形品の圧空圧力を変えた以外は、実施例3と同様にして成形品を製造し評価した。結果を表1に示す。
【0023】
比較例2
カーボンブラックの平均粒子径を84nmのものを使用した以外は、実施例1と同様にして成形品を製造し評価した。結果を表1に示す。
【0024】
比較例3
シート製造時の冷却固化方式を2本の径300mmの金属ロールで挟み込む方式とした以外は、実施例3と同様にして成形品を製造し評価した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0004538123
【0026】
【発明の効果】
本発明のプロピレン重合体シートの熱成形による熱成形品は、HAZEが10%以下及びLSIが12以下で、透明性、透視性に優れている。特に、シートの成形においてベルトキャスト法を用い、熱成形において特定圧空圧力による真空圧空成形を用いることにより、より優れた透明性、透視性を有する成形品が得られる。

Claims (5)

  1. MFR(230℃、荷重21.18Nで測定)が0.1〜50g/10分である、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン含量90重量%以上のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体からなるプロピレン重合体100重量部に対して、平均粒子径5〜20nmのカーボンブラックおよび結晶造核剤をそれぞれ0.00005〜0.0005重量部および0.01〜1重量部添加してなるプロピレン重合体組成物から得られるプロピレン重合体シートを熱成形してなる、HAZEが%以下、LSI(Light Scattering Index)が以下である熱成形品。
  2. プロピレン重合体シートがT型ダイスより溶融押出したシートの少なくとも片面を金属ベルトで押さえて冷却固化されることを特徴とする請求項に記載の熱成形品。
  3. プロピレン重合体シートの厚みが0.10〜1.5mmである請求項1または2に記載の熱成形品。
  4. プロピレン重合体シートを熱成形する際、圧空圧力が2kg/cm以上の真空圧空成形機を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱成形品。
  5. プロピレン重合体シートが多層成形機で得られる2層以上の積層シートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱成形品。
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