JP2018172576A - 酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体 - Google Patents

酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体 Download PDF

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Abstract

【課題】
耐ブロッキング性が良好で、ヒートシール性に優れた水性分散体であり、特に押出しラミネート法でシーラント層を積層した場合、ラミネート強度に優れている包装材料として好適である水性分散体を提供する。
【解決手段】
テトラヒドロフラン(THF)抽出物を含有する 酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体であり、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体から得られる塗膜のTHF抽出物が50質量%以下であることを特徴とする酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒートシール性と耐ブロッキング性を兼ね備えた塗膜を形成できる酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体に関するものである。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、様々な材料に対する良好な接着性およびヒートシール性を有し、ヒートシール剤、ディレードタック剤、繊維処理剤、および接着剤用バインダー、プライマー等の幅広い被覆剤用途に用いられている。こうした樹脂は、環境保護、省資源、作業性や作業環境の観点から水性分散体として使用されている。
水性分散体をコーティングして表面に接着層を形成した熱可塑性樹脂フィルムやアルミニウム箔等の基材フィルムを、別工程にてさらに別基材とヒートシール処理する際には、コーティングされたフィルム等は多くの場合巻き取られロール状とされるが、この際、接着層とその上に重なった基材フィルムとがブロッキングを起こすと作業性が著しく低下し、問題となる。
フィルムのブロッキングを防ぐ方法として、滑材やワックスを使用し摩擦を低減させる方法が知られているが、これらの方法では様々な基材フィルムとの接着性が低下してしまうため、耐ブロッキング性と接着性との両立は困難であった。
そこで、様々な検討が行われ、本出願人は、特許文献1、2の手法を見出した。特許文献1は、脂肪酸アミドと酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体であり、特許文献2は、ダイマー酸系ポリアミド樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体であり、これら水性分散体から得られた塗膜は優れた耐ブロッキング性を有し、塗膜上にポリオレフィン樹脂フィルムを熱ラミネート法で積層することで良好なヒートシール性を示す積層体が得られることが開示されている。
特開2007−262211号公報 特開2012−233019号公報
しかしながら、特許文献1および2では、押出ラミネート法については開示されておらず、押出ラミネート法で積層された積層体のラミネート強度が不十分であり、ヒートシール性には改善の余地があった。
押出しラミネート法とは、基材の上に水性分散体のようなアンカーコート剤を塗布、乾燥し、アンカーコート剤を設けた後、アンカーコート層上に押出し機から溶融したシーラント樹脂を押出し、シーラント層を形成する方法であり、工程が簡略化されるため積層体を低コストで大量生産することができるため当業者の間で好ましく採用されている方法である。
本発明は上記課題を解決するものであり、耐ブロッキング性が良好で、ヒートシール性に優れた水性分散体を提供しようとするものである。特に本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体より形成された塗膜上にシーラント層を押出しラミネート法で積層した場合、ラミネート強度に優れており、たとえば押出しラミネート法でシーラント層を積層する包装材料として好適である。
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定のTHF抽出物を含有する特定量の酸で変性された酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いることで、耐ブロッキング性とヒートシール性という相反する性能を両立でき、特に押出しラミネート用のアンカーコート剤として好適に使用できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は下記の通りである。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有する酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体であり、前記酸変性ポリオレフィン樹脂はテトラヒドロフラン(THF)抽出物を50質量%以下含有することを特徴とする酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体。
(2)テトラヒドロフラン(THF)抽出物の数平均分子量が1000〜15000であることを特徴とする(1)に記載の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体。
(3)さらに架橋剤を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いた押出しラミネート用アンカーコート剤。
(5)基材の少なくとも片面の一部に、(1)〜(3)のいずれかに記載の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体より得られる塗膜が積層された積層体。
(6)(5)に記載の積層体の塗膜の上にシーラント樹脂が積層された包装材料。
(7)(6)に記載された包装材料を製造するための方法であって、シーラント樹脂を積層体の塗膜上に溶融押出してシーラント層を形成することを特徴とする包装材料の製造方法。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体は、基材に塗布して塗膜を形成することで、ヒートシール性と耐ブロッキング性に優れている。なかでも積層体を低コストで大量生産することができる押出しラミネート法におけるラミネート強度に優れている。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂について説明する。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)抽出物を50質量%以下含有するものである。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸により変性されることが好ましい。水性媒体への分散性の点から、不飽和カルボン酸含有量が0.1〜10質量% であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜7質量%がさらに好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。不飽和カルボン酸含有量が0.1質量%未満の場合は、ポリオレフィン樹脂を水性化することが困難になる傾向があり、一方、10質量%を超えた場合は、樹脂の水性化は容易になるが、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂材料へのラミネート強度が低下する傾向にある。
不飽和カルボン酸成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物を用いることができる。中でもポリオレフィン樹脂への導入のし易さの点から無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。ポリオレフィン樹脂に導入された酸無水物単位は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部または全部が開環してカルボン酸またはその塩の構造となる傾向がある。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分が2つ以上含まれていてもよく、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン、ブタジエン、シクロペンテン、クロロプレン、シクロペンタジエン類等のアルケン類やジエン類、環状オレフィンなどが挙げられる。中でも、ポリオレフィン樹脂との接着性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテンがより好ましく、エチレン、プロピレンが最も好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂には、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としてはこれらに限定されることはないが、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジラウリル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸ジステアリル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。中でも、ラミネート強度の点から、(メタ)アクリル酸エステル類を酸変性ポリオレフィン樹脂に含有させることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル類は、酸変性ポリオレフィン樹脂の0.1〜40質量%含有していることが好ましく、0.5〜35質量%含有していることがより好ましく、1〜30質量%含有していることがさらに好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の各成分は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、1〜40質量%の範囲で塩素化されていてもよい。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、10000〜150000の範囲とすることが好ましく、ラミネート強度の点から20000〜120000であることがより好ましく、20000〜100000であることがさらに好ましく、30000〜90000であることが特に好ましく、40000〜80000であることが最も好ましい。重量平均分子量が10000未満の場合には、ラミネート強度が低下する傾向がある。重量平均分子量が150000を超える場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の粘度が高くなり取扱いが困難になる。
酸変性ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸単位を部分的に中和するために、水性媒体として塩基性化合物を含有していることが好ましい。生成するカルボキシルアニオンにより、水性媒体中での樹脂の分散安定性が向上する。
塩基性化合物としては、これらに限定されるものではないが、たとえば、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等を挙げることができる。
次に、テトラヒドロフラン(THF)抽出物について説明する。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂はTHF抽出物を50質量%以下含有することが必要であり、35質量%以下 であることが好ましく、0.1〜35質量%であることがより好ましく、0.1〜30質量%であることがさらに好ましく、1〜25質量%であることが特に好ましい。THF抽出物の含有量が50質量%を超えると、ラミネート強度が低下し、耐ブロッキング性も悪化する傾向にある。また、THF抽出物を含有しなければ、耐ブロッキング性が得られない傾向にある。
本発明におけるTHF抽出物の数平均分子量は、1000〜15000の範囲であることが好ましく、耐ブロッキング性と分散安定性の観点から2000〜10000であることがより好ましく、3000〜8000であることがさらに好ましい。数平均分子量が1000未満の場合には、ラミネート強度が低下する傾向がある。一方、数平均分子量が15000を超える場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂との相溶性が悪化したり、耐ブロッキング性が得られにくい傾向にある。
THF抽出物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて求めることができる。たとえば、本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体から得られる塗膜1gに対し、テトラヒドロフラン10gを添加することでTHF抽出物が溶解する。GPCを用いて、THF抽出物が溶解したテトラヒドロフラン溶液を測定し、ポリスチレン樹脂を標準として数平均分子量を算出する。
本発明で用いるTHF抽出物は、α−オレフィン成分、エチレン成分および上記した酸成分で構成されていることが好ましく、α−オレフィン成分は2つ以上の成分が含まれていてもよい。α−オレフィン成分の具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のアルケン類やブタジエンなどのジエン類などが挙げられる。中でも、ポリオレフィン樹脂とのヒートシール性および耐ブロッキング性の観点から、α−オレフィン成分は、プロピレンまたは1−ブテンがより好ましく、プロピレンが最も好ましい。
耐ブロッキング性とヒートシール性との両立の観点から、THF抽出物におけるα−オレフィン成分は25〜80質量%であることがより好ましく、30〜75質量%であることがさらに好ましく、35〜70質量%であることが特に好ましい。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体は、THF抽出物を含有することで得られる塗膜の耐ブロッキング性を発現させるとともに、熱ラミネート法および押出しラミネート法におけるラミネート強度を向上させるものである。
本発明における水性媒体としては、作業者や作業環境への安全性の観点から、本来そのすべてが水であることが最も好ましいが、酸変性ポリオレフィン樹脂およびTHF抽出物を水性化するため、もしくは乾燥負荷を低減するなどの目的において、「水系」としての特徴を逸脱しない範囲であれば、水以外に親水性の有機溶剤が含まれていても差し支えない。このような有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、アセトン、ジエチルケトン等のケトン類、プロパノ−ル、ブタノ−ル、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフランやジオキサン等の環状エーテル類、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコール誘導体などが挙げられる。また、これらの有機溶剤が酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体全量に占める量は40質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。40質量%を超えて有機溶剤を添加すると、得られる酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体は、脱溶剤に長時間を要して生産性が低下したり、ゲル化するおそれがある。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の製造方法としては、THF難溶性の酸変性ポリオレフィン樹脂とTHF溶解性の酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に均一に混合されて、それらを分散または溶解する方法であれば、特に限定されるものではない。
THF溶解性の酸変性ポリオレフィン樹脂の市販品としては、これらに限定されるものではないが例えば、三井化学社製のルーカントA−5515、ルーカントA−5260、ルーカントA−5320Hなどが挙げられる。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体には、性能をさらに向上させるため、他の重合体の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体、粘着付与剤、無機粒子、架橋剤、顔料、染料等を添加することができる。
他の重合体の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体および粘着付与剤としては、特に限定されない。他の重合体の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を挙げることができ、これらは2種以上を混合して使用してもよい。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン、テルペン樹脂、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体などを挙げることができる 。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の無機粒子や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等の層状無機化合物を添加することができる。これらの無機粒子の平均粒子径は酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の分散安定性の面から0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.005〜5μmである。無機粒子は、2種以上を混合して使用してもよい。酸化亜鉛は紫外線遮蔽、酸化すずは帯電防止の目的にそれぞれ使用できる。
ヒートシール強度をさらに向上させるために、本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体に架橋剤を含有させてもよく、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01〜80質量部、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは0.5〜30質量部添加することができる。架橋剤の含有量が、0.01質量部未満の場合は、塗膜性能の向上の程度が小さく、80質量部を超える場合は、加工性等の性能が低下してしまう。
架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができ、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましく、なかでも、取り扱い易さの観点から、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物を添加することがより好ましい。
オキサゾリン基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のオキサゾリン基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
カルボジイミド基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱い易さから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであっても構わない。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオール等が共重合されていてもよい。ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。具体的な商品としては、例えば、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」等が挙げられる。
イソシアネート基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4′−または4,4′−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−または2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−または1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3、3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4−または2,6−ジイソシアネート、ぺルヒドロ−2,4′−または4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物、あるいはそれらの改変生成物が挙げられる。ここで、改変生成物とは、多官能イソシアネート化合物のうちのジイソシアネートを公知の方法で変性することによって得られるものであり、例えば、アロファネート基、ビューレット基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基等を有する多官能イソシアネート化合物、さらにはトリメチロールプロパン等の多官能アルコールで変性したアダクト型の多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。なお、上記イソシアネート基含有化合物には、20質量%以下の範囲でモノイソシアネートが含有されていてもよい。また、これらの1種または2種以上を用いることができる。
イソシアネート基含有化合物は、通常、多官能イソシアネート化合物と一価または多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールと反応させて得ることができる。そのような水性の多官能イソシアネート化合物の市販品としては、住友バイエルウレタン社製のバイヒジュール(Bayhydur)3100、バイヒジュールVPLS2150/1、SBUイソシアネートL801、デスモジュール(Desmodur)N3400、デスモジュールVPLS2102、デスモジュールVPLS2025/1、SBUイソシアネート0772、デスモジュールDN、武田薬品工業社製のタケネートWD720、タケネートWD725、タケネートWD730、旭化成工業社製のデュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、デュラネートWX−1741、BASF社製のバソナート(Basonat)HW−100、バソナートLR−9056等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAβ−ジメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
市販のエポキシ化合物としては、本発明に適した水系のものとして、例えば、長瀬ケムテック社製のデナコールシリーズ(EM−150、EM−101など)、旭電化工業社製のアデカレジンシリーズ等が挙げられ、UVインキ密着性や耐スクラッチ性向上の点から多官能エポキシ樹脂エマルションである旭電化社製のアデカレジンEM−0517、EM−0526、EM−11−50B、EM−051Rなどが好ましい。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体には、必要に応じて、さらにレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤等の各種薬剤を添加することも可能である。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体は、各種基材に塗布後、液状媒体を除去することで塗膜を形成することができる。その塗膜は耐ブロッキング性に優れており、様々な材料に対して優れたラミネート強度を有していることから、アンカーコート剤、プライマー、接着剤として好適である。
基材としては、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板、アルミ箔、木材、織布、編布、不織布、石膏ボード、木質ボード等が挙げられ、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体はこれらの基材へ塗工または含浸される。上記基材の中で、アルミ箔、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましく、適宜選んで使用することができ、一種でも二種でもよい。なかでも、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂材料であることが好ましく、ポリオレフィン樹脂材料同士の積層、ポリオレフィン樹脂材料と紙や合成紙との積層、ポリオレフィン樹脂材料とアルミ箔との積層に用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリグリコール酸やポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体等のポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、塩化ビニル、PPからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。さらに、フィルム製造工程中において、未延伸フィルムに本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を塗布してそのコートフィルムを延伸する方法(いわゆるインラインコート法)を採用できる。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を基材に塗工する方法は特に限定されるものではないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の塗布量については、基材によって適宜決定すればよいが、塗膜の厚みは、基材が熱可塑性樹脂フィルムの場合、ラミネート強度と耐ブロッキング性の両立の観点から、0.1〜10μmであることが好ましい。
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の乾燥温度は特に限定されず、基材の耐熱温度等によって適宜決定すればよいが、通常、50〜240℃であればよく、60〜210℃がより好ましく、70〜200℃がさらに好ましい。乾燥温度が50℃未満の場合、水性媒体を十分、揮発させることができない、あるいは揮発させるのに時間を要するため良好な接着性能を発現させることが困難になる。一方、乾燥温度が240℃を超えると接着性能が低下する傾向がある。
また、本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体から得られる塗膜を基材の少なくとも片面の一部に積層した積層体は、ラミネート強度に優れているため、その塗膜をアンカーコート層として、このアンカーコート層の上に、たとえばシーラント樹脂層などの別の層をさらに積層し、積層体とすることができる。前記別の層をシーラント樹脂層とした場合、耐ブロッキング性、ヒートシール性に優れていることから、包装材料として好適に用いることができる。
塗膜上にシーラント樹脂層など別の層をさらに積層する方法としては、熱ラミネート法や押出ラミネート法など公知の方法を用いることができる。本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を基材の上に塗布、乾燥し、得られる塗膜は、塗膜上に押出し機から溶融したシーラント樹脂を押出し、シーラント層を形成する押出しラミネート法が好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
(1)THF抽出物の定量
実施例および比較例の水性分散体より得られた塗膜1gをテトラヒドロフラン(THF)10gに浸し、THF抽出物を抽出した。THF抽出液を乾燥させ重量を測定しTHF抽出物の定量をおこなった。
(2)THF抽出物の数平均分子量
実施例および比較例の水性分散体より得られた塗膜1gをテトラヒドロフラン(THF)10gに浸し、THF抽出物を抽出した。抽出したTHF溶液をシリンジディスクフィルター(Whatman社製PURADISC(登録商標)0.45μm PTFE Membrane with Polypropylene Housing)を用いてろ過し、ろ液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記の条件で測定し、ポリスチレン樹脂を標準としてTHF抽出物の数平均分子量を求めた。
<GPC条件>
カラム:SHODEX社製KF−804L2本+KF−805L1本の連結
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1ml/min
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂およびTHF抽出物の構成
実施例および比較例の水性分散体より得られた塗膜からテトラヒドロフラン(THF)でTHF抽出物を溶解したTHF抽出物溶液をH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)し求めた。
THFで溶解しなかった酸変性ポリオレフィン樹脂を120℃のオルトジクロロベンゼン(d)で溶解させ、酸変性ポリオレフィン樹脂溶液をH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)し求めた。
(4)ヒートシール強度(熱ラミネート)
実施例および比較例で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を延伸ポリプロピレン(PP)フィルム(厚み50μm)のコロナ処理面、及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)のコロナ処理面上に乾燥後の塗布量が約4g/mになるようにメイヤーバーでコートし、90℃で120秒間乾燥した。コート面同士をヒートプレス機(シール圧3kg/cm、120℃、5秒間)で圧着させた。
このサンプルを15mm幅で切り出し、20℃、65%RHで24時間静置後、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で塗膜の剥離強度を測定することでヒートシール強度(熱ラミネート)を評価した。
測定はサンプル数5で行い、その平均値を採用した。ヒートシール強度は5N/15mm以上であることが必要であり、10N/15mm以上であることがより好ましく、15N/15mm以上であることが特に好ましい。
(5)ヒートシール強度(押出しラミネート)
実施例および比較例で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)のコロナ処理面上に乾燥後の塗布量が約0.3g/mになるようにメイヤーバーでコートし、90℃で10秒間乾燥し、塗膜を得た。続いて、シーラント樹脂としてのポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製ノバテックLC600A)を、押出機を備えたラミネート装置を用いて、上記塗膜面に320℃で溶融押出し、厚さ30μmのシーラント樹脂層(ポリエチレン樹脂層)を積層したラミネートフィルムを得た。
得られたラミネートフィルムの中央付近から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、T型剥離試験により試験片の端部から基材とシーラント層との界面を剥離して強度を測定した。測定は、20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度200mm/分で行った。測定はサンプル数5で行い、その平均値を採用した。ラミネート強度は3N/15mm以上であることが必要であり、5N/15mm以上であることがより好ましく、試験片の端部からシーラントの界面を取り出せないことが最も好ましい。
(6)耐ブロッキング性評価
アルミニウム箔(三菱アルミニウム社製)上に実施例で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を乾燥後の塗布量が5g/mになるようにメイヤーバーでコートし、90℃で120秒間乾燥し、塗膜を得た。前記塗膜面に、アルミニウム箔を重ね合わせた状態で、0.1MPaの荷重をかけ、30℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用いて引張りせん断強度を測定することで、その耐ブロッキング性を評価した。評価基準は以下に示す。測定はサンプル数5で行い、その平均値を採用した。引張りせん断強度は、5.0N/cm以下であることが必要であり、2.5N/cm以下であることがより好ましく、1.0N/cm以下である状態が最も好ましい。
◎:1.0N/cm以下
○:1.0N/cm超え、2.5N/cm以下
△:2.5N/cm超え、5.0N/cm以下
×:5.0N/cm超え
<酸変性ポリオレフィン樹脂>
市販品を用いるか、下記記載の方法にて酸変性ポリオレフィン樹脂を製造した。
A1:アルケマ社製 ボンダインLX4110
A2:三洋化成工業社製 ユーメックス1001
A3:WO2004/104090の製造例に記載された方法に従って作製した。
A1〜A3について、樹脂組成を表1に記す。
<THF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂>
下記市販品を用いた。
B1:三井化学社製 ルーカントA−5515(酸変性量:0.8質量%、数平均分子量6000、25℃液体)
B2:三井化学社製 ルーカントA−5260(酸変性量:4.0質量%、数平均分子量3700、25℃液体)
B3:三井化学社製 ルーカントA−5320H(酸変性量:2.6質量%、数平均分子量9500、25℃液体)
B4
:日本曹達社製 G−1000(酸変性量:0質量%、数平均分子量1400、25℃液体)
B1〜B4について、樹脂組成および特性を表2に記す。
その他成分として、下記架橋剤または脂肪酸アミドを使用した。
C1:オキサゾリン基含有化合物(日本触媒社製 架橋剤 エポクロス WS−700)
C2:カルボジイミド基含有化合物(日清紡社製 架橋剤 カルボジライト SV−02)
C3:脂肪酸アミド(中京油脂社製 脂肪酸アミド ハイミクロンL−271)
(酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の製造)
60gの酸変性ポリオレフィン樹脂(A1)を、90gのイソプロパノール、3.0gのトリエチルアミンおよび147.0gの蒸留水を撹拌機付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に投入した。系内温度を140〜145℃に上昇させ、この温度を保持したまま撹拌速度300rpmで30分間撹拌した。撹拌速度300rpmのまま撹拌させつつ25℃まで自然冷却した。得られた分散体を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で自重濾過し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体Em1を得た。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A2)、(A3)についても酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体Em1と同様に行い、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体Em2、Em3をそれぞれ得た。
実施例1
樹脂固形分の質量比が酸変性ポリオレフィン樹脂(A1)/THF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂(B1)=100/5になるように、THF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂(B1)を酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体Em1に加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。ヒートシール強度、ラミネート強度、耐ブロッキング性について、上述の方法で測定し、評価した。
実施例2、3
THF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂(B)の種類を表3に示すものに変更した以外は、実施例1と同様に行い、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。また、上述の方法で測定し、評価した。
実施例4、5
酸変性ポリオレフィン樹脂の種類を表3に示すものに変更した以外は、実施例2と同様に行い、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。また、上述の方法で測定し、評価した。
実施例6
酸変性ポリオレフィン樹脂とTHF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂の質量比を表3に示す割合に変更した以外は実施例2と同様に行い、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。また上述の方法で測定し、評価した。
実施例7、8
実施例2において、さらに架橋剤C1、C2をそれぞれ酸変性ポリオレフィン樹脂(A1)/THF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂(B2)/架橋剤(C)=100/5/5となるように含有させた以外は同様に行い、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。また、上述の方法で測定し、評価した。
比較例1
THF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂を含有していない以外は実施例1と同様に行い、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。また上述の方法で測定し、評価した。
比較例2
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有していない以外は実施例2と同様に行い、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。また、上述の方法で測定し、評価した。
比較例3
実施例1において、THF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂(B1)に代えて、(B4)を用いた以外は同様に行ったが、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得ることができず評価ができなかった 。
比較例4
THF溶解性酸変性ポリオレフィン樹脂の替わりに、脂肪酸アミドを使用した以外は、実施例2と同様の試験を行った。
実施例1〜8、比較例1〜4の物性の評価結果を表3に記載した。
実施例1〜8では、本発明で規定される酸変性ポリオレフィン樹脂がTHF抽出物を所定量含有しているため、ラミネート強度が高く、ヒートシール性に優れており、耐ブロッキング性についても良好であった。
比較例1、2では、酸変性ポリオレフィン樹脂またはTHF抽出物のいずれかが含まれていないため、耐ブロッキング性とラミネート強度を両立させることができなかった。
比較例3では、水性分散体を得ることができなかった。
比較例4では、THF抽出物が脂肪酸アミドを用いたため、ラミネート強度が劣っていた。

Claims (7)

  1. 酸変性ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有する酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体であり、前記酸変性ポリオレフィン樹脂はテトラヒドロフラン(THF)抽出物を50質量%以下含有することを特徴とする酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体。
  2. テトラヒドロフラン(THF)抽出物の数平均分子量が1000〜15000であることを特徴とする請求項1に記載の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体。
  3. さらに架橋剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いた押出しラミネート用アンカーコート剤。
  5. 基材の少なくとも片面の一部に、請求項1〜3のいずれかに記載の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体より得られる塗膜が積層された積層体。
  6. 請求項5に記載の積層体の塗膜の上にシーラント樹脂が積層された包装材料。
  7. 請求項6に記載された包装材料を製造するための方法であって、シーラント樹脂を積層体の塗膜上に溶融押出してシーラント層を形成することを特徴とする包装材料の製造方法。
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