JP4838528B2 - ラミネート用水性接着剤 - Google Patents

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Description

本発明は、50〜100℃程度の比較的、低温における熱処理により、その後のエージング処理なしでも、塗膜の耐水性、耐溶剤性、各種基材との密着性、ラミネート性(ラミネート強度)、耐ボイル性、耐レトルト性等の優れた性能を発現することのできるラミネート用水性接着剤に関するものである。
同種あるいは異種フィルムを貼り合せた、いわゆるラミネートフィルムは単独のフィルムにはない特性(例えば、ヒートシール性や酸素、水蒸気バリア性の兼持)を付与できることから、包装や日用雑貨などの分野で広く用いられている。包装分野ではラミネート用接着剤の要求性能として耐ボイル性や耐レトルト性が必要となる場合が多い。従来、耐ボイル性や耐レトルト性を必要とする場合には樹脂を有機溶剤に溶解または分散させた、いわゆる溶剤系のものが多く使用されてきた。この場合、樹脂と架橋剤(イソシアネート化合物など)からなる接着剤がよく知られているが、ラミネート強度を発現させるには室温〜50℃程度でエージング処理を長時間する必要があり生産性に問題があった。さらに、溶剤系の場合、環境問題(揮発性有機化合物の問題)、職場環境の問題、危険物の問題(消防法など)の観点から有機溶剤の使用が制限される傾向がある。そこで、溶剤系とほぼ同様の設備が使用できる水系接着剤の検討が数多く行われている。
例えば、特許文献1、2などにはポリウレタン樹脂水性分散体と架橋剤(イソシアネート化合物など)からなる接着剤が開示されている。しかしながら、ラミネート強度を発現させるにはエージング処理を長時間行う必要があり生産性に問題があった。さらに、耐ボイル性や耐レトルト性は満足いくものではなかった。
特許文献3には変性ポリオレフィン樹脂とブロックイソシアネートの組み合わせによって、基材との密着性、接着性を損なうことなく、耐水性、耐溶剤性を改良した技術が記載されている。しかしながら、ブロック型イソシアネートは、一定の加熱によりブロック剤が外れない限り架橋反応が進行しないことから、非ブロック型のイソシアネートに比べて高温・長時間の熱処理が必要であったため、耐熱性が低い基材には適用できなかった。また、特許文献3では、ポリオレフィン樹脂やイソシアネートを水性媒体中に分散するために界面活性剤を必須成分として一定量用いているが、こうした界面活性剤は不揮発性であり、乾燥後もポリオレフィン樹脂の塗膜中に残存するため、その使用量が多い場合は、塗膜の耐水性や基材との密着性が不十分となり、また経時的に性能が変化することがある。さらに、塗膜からブリードアウトする恐れがあるため、環境的、衛生的にも好ましいとは言えない。また、耐ボイル性や耐レトルト性も満足いくものではなかった。
また、特許文献4には、界面活性剤等の不揮発性化合物を添加せずに変性ポリオレフィン樹脂を水性分散体とすることが記載されており、さらに、この水性分散体にイソシアネート化合物やメラミン化合物等の架橋剤を添加して耐溶剤性等の塗膜物性を向上させることが記載されている。しかしながら、耐熱性が低い基材に対して塗膜物性を向上させるための具体的な解決策は示されていなかった。また、耐ボイル性や耐レトルト性も満足いくものではなかった。
特開平11−241057号公報 特開2003−82321号公報 特許2976841号公報 国際公開第02/055598号パンフレット
以上のように、従来の接着剤は、反応温度、時間に制限を受け、基材によっては使用できない場合があった。また、樹脂とイソシアネートとの混合系ではラミネート強度を発現させるにはエージング処理を長時間する必要があった。また、耐ボイル性や耐レトルト性も満足いくものはなかった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定組成のポリオレフィン樹脂と非ブロック型のイソシアネートとの系では、上記問題を解決し、50〜100℃の比較的、低温の処理においても塗膜の耐水性、耐溶剤性、各種基材との密着性を有し、エージング処理なしで優れたラミネート性(ラミネート強度)を発現し、さらに耐ボイル性、耐レトルト性といった優れた性能を発現することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量%含有するポリオレフィン樹脂(A)、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)、塩基性化合物(C)、および水性媒体を含有し、前記不飽和カルボン酸単位の一部が塩基性化合物(C)により中和されており、(B)の含有量が(A)100質量部に対して0.5〜30質量部であるミネート用水性接着剤であって、
前記ポリオレフィン樹脂(A)が、下記ポリオレフィン樹脂(a)および/または(b)であり、さらに界面活性剤を実質的に含有していないことを特徴とするラミネート用水性接着剤。
ポリオレフィン樹脂(a):
不飽和カルボン酸単位(a1)を0.1〜5質量%、及びエチレン単位(a2)と(メタ)アクリル酸エステル単位(a3)を含有し、(a2)と(a3)の質量比(a2)/(a3)が60/40〜98/2であるポリオレフィン樹脂。
ポリオレフィン樹脂(b):
不飽和カルボン酸単位(b1)を0.1〜10質量%、炭素数3〜6の不飽和炭化水素単位(b2)を50〜98質量%含有するポリオレフィン樹脂。
(2)塩基性化合物(C)の含有量がポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.3〜1.5倍当量であることを特徴とする(1)記載のラミネート用水性接着剤。
(3)水性媒体中の有機溶剤含有量が3質量%以下であることを特徴とする(1)または(2)記載のラミネート用水性接着剤。
)熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に(1)〜()のいずれかに記載のラミネート用水性接着剤から水性媒体を除去して得られる接着層を設け、さらにこの接着層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼り合せたラミネートフィルム。
)接着層の厚みが0.5〜10μmである()記載のラミネートフィルム。
本発明のラミネート用水性接着剤は、例えば50〜100℃といった比較的、低温の乾燥条件において塗膜を形成させた場合においても、塗膜の耐水性、耐溶剤性、基材との密着性に優れており、しかも良好なラミネート性(ラミネート強度)、耐ボイル性、耐レトルト性を発現することができる。そのため、この接着剤を用いて熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせれば、上記各種性能に優れたラミネートフィルムとすることができる。さらに、ラミネート強度を発現するためのエージング処理を必要としないため非常に生産性が優れる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のラミネート用水性接着剤は、不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量部含有するポリオレフィン樹脂(A)、特定量の非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)、塩基性化合物(C)を水性媒体中に溶解または分散してなるものである。水性媒体とは、水を主成分とする媒体であり、後述する水溶性有機溶剤を含有していてもよい。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(A)は、不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量%含有している必要がある。不飽和カルボン酸単位が0.1質量%未満の場合、接着剤とする際の水性化(液状化)が困難になり、またイソシアネート化合物と反応する際の架橋点が乏しくなり、塗膜の耐水性が低下し易い。一方、10質量%を超えると、ポリエステルやポリオレフィン等の極性の低い基材との密着性や耐ボイル性、耐レトルト性が低下する。また、イソシアネート化合物との混合安定性が低下する。なお、ポリオレフィン樹脂(A)の不飽和カルボン酸単位は後述する塩基性化合物で一部が中和されている必要がある。
不飽和カルボン酸単位とは、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸単位は、ポリオレフィン樹脂(A)中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。なお、酸無水物を導入した場合には、樹脂の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、特に塩基性化合物を含有する媒体中では、その一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造をとる場合がある。
ポリオレフィン樹脂(A)の主成分であるオレフィン成分(不飽和炭化水素化合物成分)としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン化合物が樹脂の入手し易さの点から好ましく、この中でもエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。オレフィン成分の含有量は、樹脂構成成分の50質量%以上でないとポリオレフィン樹脂といえず、ポリオレフィン樹脂の塗膜性能やポリオレフィン材料との接着性の点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。不飽和カルボン酸単位およびオレフィン成分を除く構成成分は、特に限定されず、例えば、ブタジエンやイソプレン等のジエン類、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、一酸化炭素、二酸化硫黄、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
ポリオレフィン樹脂(A)の中でも、各種の塗膜性能が良好である点から、下記、ポリオレフィン樹脂(a)、ポリオレフィン樹脂(b)またはこれらの混合物であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂(a)と(b)を混合して用いる場合、(a)/(b)=0/100〜100/0の任意の質量比で混合して使用できる。
ポリオレフィン樹脂(a)は、不飽和カルボン酸単位(a1)を0.1〜5質量%、およびエチレン単位(a2)と(メタ)アクリル酸エステル単位(a3)を含有し、(a2)と(a3)の質量比(a2)/(a3)が60/40〜98/2であるポリオレフィン樹脂である。
ポリオレフィン樹脂(a)においては、不飽和カルボン酸単位(a1)は、ポリオレフィン樹脂(a)中に0.1〜5質量%含有していることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%であり、さらに好ましくは1〜5質量%であり、1〜4質量%が最も好ましい。さらに、(a2)成分と(a3)成分との質量比(a2)/(a3)は、この2成分の合計量を100質量%とした場合60/40〜98/2の範囲であることが好ましく、ラミネート基材との良好な接着性を持たせるために、この範囲は65/35〜97/3であることがより好ましく、65/35〜95/5であることがさらに好ましく、70/30〜92/8であることが特に好ましく、75/25〜90/10であることが最も好ましい。(a3)成分の比率が2質量%未満では、ラミネート基材との接着性が低下する恐れがある。一方、化合物(a3)の含有量が40質量%を超えるとオレフィン由来の樹脂の性質が失われ、ポリオレフィン樹脂基材との接着性が低下する恐れがある。
(メタ)アクリル酸エステル(a3)単位としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、ラミネート基材との接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。(なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。)
ポリオレフィン樹脂(a)の具体例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。共重合体の形態はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいが、入手が容易という点でランダム共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
本発明において、ポリオレフィン樹脂(a)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、通常0.01〜10000g/10分、好ましくは0.1〜1000g/10分、より好ましくは1〜500g/10分、さらに好ましくは2〜300g/10分、特に好ましくは2〜200g/10分のものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂(a)のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化が困難になる。一方、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが10000g/10分を超えると、塗膜は硬くてもろくなり、基材との接着性が低下してしまう。
ポリオレフィン樹脂(a)の合成法は特に限定されず、一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、不飽和カルボン酸単位はグラフト共重合(グラフト変性)されていてもよい。
また、ポリオレフィン樹脂(a)は、(a1)〜(a3)成分以外に、既述したその他の成分を全体の10質量%以下程度で含有していてもよい。
ポリオレフィン樹脂(b)は、不飽和カルボン酸単位(b1)を0.1〜10質量%、炭素数3〜6の不飽和炭化水素単位(b2)を50〜98質量%含有するポリオレフィン樹脂である。
不飽和カルボン酸単位(b1)は、ポリオレフィン樹脂(b)中に0.1〜10質量%含有していることが好ましく、より好ましくは0.1〜8質量%であり、さらに好ましくは0.5〜7質量%であり、1〜5質量%が最も好ましい。
炭素数3〜6の不飽和炭化水素単位(b2)の含有量は、50〜98質量%とすることが好ましく、より好ましくは60〜98質量%、さらに好ましくは70〜98質量%、特に好ましくは75〜98質量%である。炭素数3〜6の不飽和炭化水素の含有量が50質量%未満ではポリプロピレン等のポリオレフィン材料に対する接着性が低下し、98質量%を超えると相対的に後述する不飽和カルボン酸単位の含有量が低下してしまうために、ラミネート基材との接着性が低下する恐れがある。炭素数3〜6の不飽和炭化水素としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のアルケン類やブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられ、樹脂の製造のし易さ、各種材料に対する接着性等の点から、プロピレン成分またはブテン成分(1−ブテン、イソブテンなど)であることが好ましく、両者を併用することもできる。
上記した炭素数3〜6の不飽和炭化水素以外に、各種材料に対する接着性向上の点から、さらにエチレン成分を2〜50質量%含有したものが好ましく、特に、プロピレン成分、ブテン成分、エチレン成分の3成分を含有し、その構成比率が、この3成分の総和を100質量部としたとき、プロピレン成分8〜90質量部、ブテン成分8〜90質量部、エチレン成分2〜50質量部であることが好ましい。
不飽和カルボン酸単位(b1)をポリオレフィン樹脂(b)へ導入する方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤存在下、ポリオレフィン樹脂(b)と不飽和カルボン酸とをポリオレフィン樹脂(b)の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、ポリオレフィン樹脂(b)を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等によりポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸単位をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
ポリオレフィン樹脂(b)において、(b2)成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合等が挙げられるが、重合のし易さの点から、ランダム共重合されていることが好ましい。また、本発明の構成成分比率となるように2種以上のポリオレフィン樹脂を混合してもよい。
また、(b1)、(b2)以外の他の成分をポリオレフィン樹脂(b)全体の10質量%以下程度、含有していてもよく、他の成分としては、1−オクテン、ノルボルネン類等の炭素数6以上のアルケン類やジエン類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。中でも、基材との接着性、樹脂の水性化し易さの点から、(a3)成分として具体例を挙げたような(メタ)アクリル酸エステル類をポリオレフィン樹脂(b)全体の0.1〜10質量%含有していることがより好ましく、0.5〜10質量%含有していることがさらに好ましく、1〜10質量%含有していることが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂(b)はテトラヒドロフラン、トルエン等の有機溶剤に溶解し易いため、樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。ポリオレフィン樹脂(b)の重量平均分子量は5,000〜150,000であることが好ましく、20,000〜120,000であることがより好ましく、30,000〜100,000であることがさらに好ましく、35,000〜90,000であることが特に好ましく、40,000〜80,000であることが最も好ましい。重量平均分子量が5,000未満の場合は、基材との接着性が低下したり、耐ボイル性、耐レトルト性が悪化する傾向がある。重量平均分子量が150,000を超える場合は、基材との接着性が低下したり、樹脂の水性化が困難になったりする。
本発明のポリオレフィン樹脂(A)〔ポリオレフィン樹脂(a)やポリオレフィン樹脂(b)など〕は塩素化されていれもよい。塩素化度は、通常、3〜40質量%が好ましく、入手し易い点から5〜30質量%がより好ましい。塩素化の方法は公知の方法でよい。
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)とは、非ブロック型のイソシアネート基を1分子中に2個以上含有する化合物である。ここで「非ブロック型」とは、イソシアネート基がラクタム系やオキシム系の化合物(いわゆるブロック剤)でブロック(または、保護、マスク)されていないことを示す。こうした化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4´−又は4,4´−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−又は1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3、3、5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、4,4´−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4−又は2,6−ジイソシアネート、ぺルヒドロ−2,4´−又は4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネートや、それらの改変生成物として得られる多官能イソシアネートが挙げられる。改変生成物としては、上記のようなイソシアネート化合物を公知の方法で変性することによって、アロファネート基、ビューレット基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基等のイソシアネートから誘導される官能基を分子中に有する多官能イソシアネート化合物に変性した化合物や、トリメチロールプロパン等の多官能アルコールで変性したアダクト型の多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。これらの中でも、イソシアヌレート基を有する多官能イソシアネート化合物を使用することが、樹脂塗膜の耐溶剤性を向上させる点で特に好ましい。なお、多官能イソシアネート化合物には、20質量%以内の範囲でモノイソシアネートが含有されていてもよい。上記した多官能イソシアネート化合物の中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる改変生成物を使用することが耐ボイル性、耐レトルト性、樹脂塗膜の耐溶剤性を向上させる点で好ましく、その中でも特にイソシアヌレート基を有するものが好ましい。
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)の中でも、水性(水溶性もしくは水分散性)のものが好ましい。また、好ましい水性の多官能イソシアネート化合物は、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとを反応させて得ることができる。そのような水性の多官能イソシアネート化合物の市販品としては、BASF社製のバソナート(BASONAT)PLR8878、バソナートHW−100等、住友バイエルウレタン株式会社製のバイヒジュール(Bayhydur)3100、バイヒジュールVPLS2150/1、SBUイソシアネートL801、デスモジュール(Desmodur)N3400、デスモジュールVPLS2102、デスモジュールVPLS2025/1、SBUイソシアネート0772、デスモジュールDN等、武田薬品工業株式会社製のタケネートWD720、タケネートWD725、タケネートWD730等、旭化成工業株式会社製のデュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、デュラネートWX−1741等がある。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートの改変生成物であるバイヒジュール3100、デスモジュールDN、バソナートHW−100が特に好ましい。
イソシアネート化合物(B)の含有量は、ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して0.5〜30質量部とする必要があり、ラミネート強度と耐ボイル性、耐レトルト性との両立させる点から、1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜8質量部であることがさらに好ましく、1〜7質量部であることが特に好ましい。(B)の含有量が0.5質量部未満では塗膜の耐溶剤性向上、耐ボイル性や耐レトルト性向上の効果が小さく、30質量部を超えると水性接着剤の貯蔵安定性の低下やラミネート強度が著しく低下してしまう。
本発明の水性接着剤において、不飽和カルボン酸単位により導入されたポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基は、塩基性化合物(C)によってその一部が中和されていることが必要である。塩基性化合物によってカルボキシル基または酸無水物基をアニオン化し、アニオンの静電気的反発力によって水性媒体中における樹脂微粒子間の凝集が防がれ、良好な分散化が達成される。塩基性化合物の添加量は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基(酸無水物基1モルはカルボキシル基2モルとみなす)に対して0.3〜1.5倍当量であることが好ましく、0.5〜1.2倍当量がより好ましく、0.6〜1.0倍当量が特に好ましい。0.3倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、1.5倍当量を超えると塗膜や接着層等を形成する際の乾燥時間が長くなったり、イソシアネート化合物(B)を添加した場合の貯蔵安定性や可使時間が短くなったりする。
ここで添加される塩基性化合物(C)としては、沸点が150℃以下であることが好ましい。沸点が150℃以下とすることで比較的、低温の乾燥で架橋反応が進行し、耐ボイル性、耐レトルト性、耐溶剤性等の塗膜の性能が向上する。沸点が150℃を超える場合、高温での乾燥が必要になり基材にダメージを与える恐れがある。沸点は150℃以下の塩基性化合物としては、アンモニアや沸点が150℃以下の有機アミン化合物を挙げることができ、有機アミン化合物の具体例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、アニリン、モルホリン、N−メチルモルホリン等を挙げることができる。中でも、水性接着剤の貯蔵安定性や可使時間の点から、アンモニアおよび/または沸点が150℃以下の3級の有機アミン化合物(トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン等)が好ましい。
次に、本発明の水性接着剤の製造方法を説明する。
本発明の水性接着剤を製造する方法は特に限定されないが、まずポリオレフィン樹脂の水性分散体を得て、これにイソシアネート化合物を混合する方法が簡便である。
ポリオレフィン樹脂の水性分散体の製法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩基性化合物、水性媒体および必要に応じてその他の成分を、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用して、加熱、攪拌する方法を採用することができる。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。装置の槽内に各原料を投入した後、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておき、次いで、槽内の温度を50〜200℃で、5〜120分間攪拌を続けることにより樹脂を十分に水性化させ、その後、攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体が得られる。
原料を攪拌する際には、水性化をスムーズに進行させる目的で、水溶性の有機溶剤を添加することが好ましい。有機溶剤を使用することで界面活性剤を添加せずにポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を得ることができる。こうした有機溶剤としては、20℃における水に対する溶解性が20g/L以上のものが好ましく用いられる。有機溶剤を用いる場合の添加量はポリオレフィン樹脂の水性分散体100質量部に対して1〜40質量部程度がよい。なお、有機溶剤は、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱することで、系外へ除去(ストリッピング)することができる。最終的な有機溶剤量は、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)との混合後の可使時間を長くできることから、ポリオレフィン樹脂の水性分散体100質量部に対して、30質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、0〜1質量%が特に好ましい。特に、後述する水酸基を有する有機溶剤を用いる場合は、その量は3質量%以下がより好ましく、0〜1質量%が特に好ましい。水酸基を有する有機溶剤の含有量を3質量%以下とすることで可使時間を飛躍的に向上させることができる。
使用される有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられ、低温乾燥性の点から水酸基を有する有機溶剤であるエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールが特に好ましい。
水性分散体中のポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径(以下、mn)は、イソシアネート化合物(B)との混合安定性および反応性が向上するという観点から、1μm以下が好ましく、塗膜の平滑性の観点から0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。さらに、重量平均粒子径(以下、mw)に関しては、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下が特に好ましい。粒子径を小さくすることで、塗膜の平滑性が向上する。粒子の分散度(mw/mn)は、イソシアネート化合物との混合安定性および反応性、塗膜の平滑性の観点から、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。粒子径の下限は特にないが、通常、mn、mwともに0.01μm程度である。このような粒子径は、例えば上述のような製法を採用することにより達成することができる。
以上のようにして得られるポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体と、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)とを混合・攪拌することで本発明の水性接着剤が得られる。
なお、水性接着剤における、樹脂含有率は、イソシアネート化合物(B)の量や、成膜条件、目的とする樹脂層の厚さや性能等により適宜調整され、特に限定されるものではないが、接着剤の粘性を適度に保ち、かつ良好なプライマー層形成能を発現させる点で、1〜50質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましく、5〜45質量%がさらに好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。
水性接着剤中の界面活性剤の使用量は、少ないほど塗膜の耐水性、耐ボイル性、耐レトルト性、基材との密着性が向上し、また衛生面での問題も生じないことから、水性接着剤中のポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。上記したような製造方法を採ることで、本発明の水性接着剤における界面活性剤の使用量を減じることができる。なお、「界面活性剤を実質的に含有しない」とは、界面活性剤を製造時(樹脂の分散時)に用いず、得られる接着剤が結果的に界面活性剤を含有しないことを意味する。
本発明でいう界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。これらを使用する場合には、塗膜からのブリードアウトをできるだけ避ける観点から、分子量が5000以上のものを用いることが好ましく、10000以上のものがより好ましく、15000以上のものがさらに好ましい。
本発明の水性接着剤には、使用目的に応じて顔料または染料を添加してもよいし、市販の塗料やインキに本発明の水性接着剤を添加してもよい。使用する顔料または染料は特に限定されるものではなく、一般的に使用されているものを塗料やインキの種類によって適宜選択すれば良い。顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、酸化鉄、カーボンブラックなどの無機顔料、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾール系、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系などの有機顔料が挙げられる。また、染料としては直接染料や反応染料、酸性染料、カチオン染料、バット染料、媒染染料などが挙げられる。上記の顔料または染料は単独もしくは2種類以上が含有されていても差し支えない。
さらに、本発明の水性接着剤には、必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤を添加することも可能である。また、水性接着剤の保存安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を添加することも可能である。
さらに、本発明の水性接着剤には、ポリオレフィン樹脂(A)以外に他の樹脂を添加してもよく、そのような樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂系樹脂、ゴム系樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂等、エチレン−酢酸ビニル等の上記したポリオレフィン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、1〜50質量部程度である。
本発明において、基材との接着性、耐水性、耐溶剤性等の性能をさらに向上させるために、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)以外の架橋剤を添加することもできる。こうした架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属イオン等を用いることができ、このうちブロックイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性接着剤は、塗膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥又は乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂塗膜を各種基材表面に接着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間は、基材の特性や硬化剤の種類、配合量等により適宜選択されるものであり、特に限定されず、例えば、加熱温度50〜250℃程度の範囲で使用できるが、特記すべきは、50〜120℃、好ましくは50〜100℃程度の、従来ブロック型イソシアネートでは架橋反応が進行しにくい条件でも使用することができ、このような範囲で、耐熱性の低い基材に適用可能であるとともに、エネルギー的にも有利である。このような低温の乾燥においても優れた耐水性、ラミネート強度を発現する。また、架橋反応を進行させるために20℃〜60℃程度でエージング処理を行ってもよい。
本発明の水性接着剤は、各種材料に対する良好な密着性を有することから、前記のようにして水性接着剤から水性媒体を除去することにより、良好な接着層、プライマー層を形成することができる。
本発明の接着剤が塗布される基材としては、紙、合成紙、各種熱可塑性樹脂のフィルムや成形体、ガラス、金属、アルミ箔、プラスチック等が挙げられ、特に限定されないが、本発明の接着剤は、比較的低温の条件で熱処理でも優れた密着性が得られるため、耐熱性の比較的低い基材、例えば、融点が180℃以下の熱可塑性樹脂(PP、PE等)へ適用できる。また、基材の形状としては、合成紙、熱可塑性樹脂フィルムが好ましく、熱可塑性樹脂フィルムが特に好ましい。
基材としての熱可塑性樹脂フィルムは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物よりなるフィルムまたはそれらのフィルムの積層体が挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、製法も限定されるものではない。熱可塑性樹脂フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常5〜500μmの範囲のものを用いる。
熱可塑性樹脂フィルムは、フィラーを含有していてもよい。フィラーとしては、無機系のものが好ましく、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナ等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂フィルムは、様々なバリアコーティング、易接着コーティング、帯電防止コーティング、紫外線遮蔽コーティング等の機能性処理やシリカ、アルミナ、アルミ等の各種蒸着処理が施されていてもよい。本発明の水性接着剤は左記処理が施された面に対する接着性も良好である。
本発明の水性接着剤から水性媒体を除去してなる塗膜は、前述した基材(熱可塑性樹脂フィルムなど)に設けることが好ましい。接着層の厚みは、特に限定されないが、0.5〜10μmであることが好ましく、1〜8μmであることがより好ましく、1〜6μmであることがさらに好ましく、1.5〜5μmであることが特に好ましい。厚みが0.5μm未満では接着剤としての効果が小さく(ラミネート強度が低い)、10μmを超えると乾燥時間が長くなる。
さらに上記接着層を介して、前述した熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせてラミネートフィルムとして用いることができる。これを袋状に成形して各種包装材料として使用することもできる。
ラミネート条件は特に限定されないが、温度としては60℃以上かつ熱可塑性樹脂フィルムの樹脂融点以下が好ましい。ラミネート方法としては、例えば、熱ロールで圧力をかけながらラミネートする方法が挙げられる。
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
1. 樹脂の特性
(1)ポリオレフィン樹脂の構成
1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。ポリオレフィン樹脂は、オルトジクロロベンゼン(d4)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)ポリオレフィン樹脂の水性化後のエステル基残存量
ポリオレフィン樹脂の水性分散体を150℃で乾燥させた後、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、水性化前の(メタ)アクリル酸エステルのエステル基量を100%としてエステル基の残存率(%)を求めた。
(3)ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS 6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
(4)ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量
GPC分析(東ソー社製HLC-8020、カラムはTSK-GEL)を用いて、試料をテトラヒドロフランに溶解して40℃で測定し、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。
2. ポリオレフィン樹脂水性分散体の特性
(1)水性化収率
水性化後の水性分散体を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)した際に、フィルター上に残存する樹脂質量を測定し、仕込み樹脂質量より収率を算出した。
(2)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(3)水性分散体の平均粒子径
日機装株式会社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径および重量平均粒子径を求めた。ここで、粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
(4)水性分散体の貯蔵安定性
水性分散体を室温で30日放置した後の水性分散体の外観を次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
3.材料特性
以下の評価においては、熱可塑性樹脂フィルムとして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm、以下、PET)、2軸延伸ナイロン6フィルム(ユニチカ社製エンブレム、厚み15μm、以下、Ny)、延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、厚み50μm、以下、PP)、未延伸ポリエチレンフィルム(タマポリ社製、厚み40μm、以下、PE)を用いた。
(1)塗膜の耐水性評価方法
PETフィルムに水性接着剤を乾燥後の接着層の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、90℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは40℃で1日放置後、60℃の温水に24時間浸漬し、風乾燥後の塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:塗膜がくもる、×:塗膜が完全に溶解、または剥離
(2)塗膜の耐溶剤性評価方法
PETフィルムに水性接着剤を乾燥後の接着層の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、90℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは40℃で1日放置後、イソプロパノール中に室温で24時間浸漬した後、乾燥させて、塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:塗膜がくもる、×:塗膜が完全に溶解、または剥離
(3)基材/接着層の接着性評価
各種基材に水性接着剤を乾燥後の接着層の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、90℃で1分間、乾燥させた。得られた積層体は室温で1日放置後、表面にセロハンテープ(ニチバン社製TF-12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視で評価した。
○:全く剥がれなし、△:一部、剥がれた、×:全て剥がれた
(4)〜(6)の評価に用いた各種ラミネートフィルムの作製および処理条件は次の通り。
〔ラミネート条件〕
水性接着剤をPETフィルムまたはNyフィルム上に乾燥後の接着層の厚みが4μmになるようにメイヤーバーでコートし、90℃で1分間乾燥した。PETフィルムの接着剤塗布面にはOPPフィルムを、Nyフィルムの接着剤塗布面にはPEフィルムをそれぞれ貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.3MPaで2秒間)にて100℃でプレスした。
〔エージング処理条件〕
ラミネートフィルムへのエージング処理条件(有無)は次の通り。
「エージングなし」:ラミネートフィルム作製後(プレス後)、室温で10分放置後に評価に供した。
「エージングあり」:ラミネートフィルム作製後(プレス後)、熱風乾燥機(エタック社製HIFLEX FX212C型)にて、40℃×24時間の処理を行い評価に供した。
〔ボイル処理〕
ラミネートフィルムを98℃の熱水に30分間浸漬した後、室温まで冷却して評価に供した。
〔レトルト処理〕
ラミネートフィルムに対して125℃で30分の蒸気レトルト処理を行った後、室温まで冷却して評価に供した。
(4)ラミネート強度測定
ラミネートフィルムに各種処理を施した後、15mm幅で切り出して測定サンプルとし、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で塗膜の剥離強度を測定することでラミネート強度を評価した。なお、ボイル処理やレトルト処理によって気泡が生じた場合はラミネート強度の測定は行わなかった。なお、ラミネート強度測定に用いたボイルまたはレトルト処理フィルムサンプルは、すべて、ボイルまたはレトルト処理の前に、エージング処理を行ったものを用いた。
(5)耐ボイル性(外観)
エージング有り・無しの各ラミネートフィルムについて、ボイル処理後のフィルムの外観を目視観察し、次の基準で評価した。
○:変化なし、△:接着層が白化するが気泡はない、×:気泡が入る
(6)耐レトルト性(外観)
エージング有り・無しの各ラミネートフィルムについて、レトルト処理後のフィルムの外観を目視観察し、次の基準で評価した。
○:変化なし、△:接着層が白化するが気泡はない、×:気泡が入る
(ポリオレフィン樹脂P−1の製造)
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708、プロピレン/ブテン/エチレン=65/24/11質量%)100g、トルエン500gを、攪拌機、冷却管、滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を110℃に保って攪拌下、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド1.0gのヘプタン20g溶液を1時間かけて加えた後、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸7.0g、アクリル酸ラウリル9.0g、ジクミルパーオキサイド0.5gのヘプタン10g溶液をそれぞれ1時間かけて滴下し、その後30分間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応物を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥してポリオレフィン樹脂P-1を得た。P-1の重量平均分子量は50,000、アクリル酸ラウリルの樹脂中の含有量は6質量%であった。
その他のポリオレフィン樹脂は市販のものを使用した。以下の水性分散体の製造において使用したポリオレフィン樹脂の組成を表1に示す。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX-8290、住友化学工業社製〕、60.0gのイソプロパノール(和光純薬社製)、2.2gのトリエチルアミン(和光純薬社製)(カルボキシル基の0.9倍当量)および177.8gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(P-1)、90.0gのn−プロパノール(和光純薬社製)、3.9gのN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製)(カルボキシル基の0.9倍当量)及び146.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白黄色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E-3を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)
樹脂の水性化の際に、ノニオン性界面活性剤(平均分子量15500のエチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、旭電化工業社製アデカプルロニックF-108)をポリオレフィン樹脂の固形分100質量部に対して2質量部となるように添加した以外はE-1の製造と同様の方法でポリオレフィン樹脂水性分散体E-3を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4の製造)
E−1 250g、蒸留水95gを0.5リットルの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約95gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、濾液の固形分濃度を測定したところ、20.5質量%であった。この濾液を攪拌しながら蒸留水を添加し、固形分濃度が20.0質量%になるように調整し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E-4を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。なお、島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC-8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG-HT(5%)-Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用いて測定した際のE-5中の水溶性有機溶剤含有率は0.5質量%であった。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体H−1の製造)
ポリオレフィン樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体樹脂(プリマコール5980I、アクリル酸20質量%共重合体、ダウケミカル製)を用いた。ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、45.0gのエチレン−アクリル酸共重合体樹脂(プリマコール5980I、ダウケミカル社製)、11.4gのトリエチルアミン(カルボキシル基の0.9倍当量)、および243.6gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに40分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体H-1を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
実施例1
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(BASF社製、バソナートHW-100、イソシアネート含有率約17%)(以下、HW-100)を水で希釈し10質量%になるように希釈した。ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1と上記のイソシアネート化合物希釈液とを、ポリオレフィン樹脂100質量部に対してHW-100が5質量部となるように配合し、室温で5分間、混合攪拌し、水性接着剤W-1を得た。W-1を用いて各種性能評価を行った。
次に、各種評価のうち、耐水性評価において、基材をPEフィルムに変え、乾燥温度を120℃、時間を1分間に変更したが、耐熱性の低い基材であるPEフィルムは熱収縮により変形し、この基材においては実用に耐えない温度であることが確認された。
実施例2〜4
ポリオレフィン樹脂水性分散体としてE-2、E-3、E-4を用いた以外は実施例1と同様の方法でW-2、W-3、W-4を得た。W-2(実施例2)、W-3(実施例3)、W-4(実施例4)を用いて各種性能評価を行った。
実施例5、6
E-4とHW-100との質量比を表3のように変更した以外は実施例1と同様の方法でW-5、W-6を得た。W-5、W-6を用いて各種性能評価を行った。
実施例7
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1とE-2をポリオレフィン樹脂の質量比が50/50になるように混合した液を用いた以外は実施例1と同様の方法でW-7を得た。W-7を用いて各種性能評価を行った。
実施例8
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(住友バイエルウレタン社製、デスモジューDN、イソシアネート含有率約22%)を用いた以外は実施例1と同様の方法でW-8を得た。W-8を用いて各種性能評価を行った。
比較例1
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物を添加せずに、ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1のみで各種性能評価を行った。
比較例2
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(HW-100)の添加量を、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して40質量部とした以外は実施例4、5と同様の方法でX-2を得た。X-2を用いて各種性能評価を行った。
比較例3
ポリオレフィン樹脂水性分散体H-1を用いた以外は実施例1と同様の方法でX-3を得た。X-3を用いて各種性能評価を行った。
比較例4
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1と架橋剤としてメラミン化合物(サイメル327、三井サイテック社製)とを、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し架橋剤5質量部となるように配合し、室温で10分間、混合攪拌し、水性接着剤X-4を得た。X-4を用いて各種性能評価を行った。
比較例5、6
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1と架橋剤としてブロック型イソシアネート化合物(エラストロンBN-11、第一工業製薬社製、比較例5)またはカルボジイミド化合物(カルボジライトE-01、日清紡社製、比較例6)とを、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し架橋剤5質量部となるように配合し、室温で5分間、混合攪拌し、水性接着剤X-5、X-6を得た。X-5、X-6を用いて各種性能評価を行った。
実施例1〜8、比較例1〜6の結果を表3および表4に示す。
実施例9
有機溶剤の含有量の異なるE-1とE-4を用いて、HW-100の添加量を5質量部とし、HW-100混合後の保存時間を変えた接着剤を用いて耐ボイル性(40℃で1日のエージング後)を評価した。なお、保存時間は、混合直後を0時間とし、20℃の雰囲気下で接着剤を保存した時間を示す。結果を表5に示す。
表3、4の結果より、実施例1〜8で得られた水性接着剤は、塗膜の耐水性、耐溶剤性、各種基材との接着性が良好であり、ラミネート強度に優れるものであった。特筆すべきは、エージング処理を行わずとも良好なラミネート強度が発現し、耐ボイル性、耐レトルト性にも優れていたことである。イソシアネート化合物の添加量が多い場合はラミネート強度がやや低下する傾向があり(実施例5、6)、また、接着剤中に界面活性剤を含有している場合は(実施例3)、含有していない場合に比べて耐ボイル性や耐レトルト性の塗膜性能は低下する傾向があったが、これらはすべて実用に耐えうるレベルにあった。
一方、比較例1のように、イソシアネート化合物を添加しない場合は、塗膜の耐溶剤性に劣り、耐ボイル性、耐レトルト性にも劣っていた。比較例2のように、イソシアネート化合物の含有量が本発明の範囲を上方に外れた場合、ラミネート強度が著しく低下した。また、比較例3のように、本発明の範囲を外れる組成のポリオレフィン樹脂を用いた場合、各種接着性、ラミネート強度は著しく劣っており、耐ボイル性、耐レトルト性にも劣っていた。比較例4〜6では、架橋剤として本発明の範囲外のものを用いたが、実施例1や比較例1との比較からわかるように、90℃での乾燥では、各種塗膜性能の向上は認められず、むしろ低下する傾向があった。
表5の結果より、接着剤中の有機溶剤量が少ない方が混合後の時間が長くても耐ボイル性は発現した。

Claims (5)

  1. 不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量%含有するポリオレフィン樹脂(A)、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)、塩基性化合物(C)、および水性媒体を含有し、前記不飽和カルボン酸単位の一部が塩基性化合物(C)により中和されており、(B)の含有量が(A)100質量部に対して0.5〜30質量部であるミネート用水性接着剤であって、
    前記ポリオレフィン樹脂(A)が、下記ポリオレフィン樹脂(a)および/または(b)であり、さらに界面活性剤を実質的に含有していないことを特徴とするラミネート用水性接着剤。
    ポリオレフィン樹脂(a):
    不飽和カルボン酸単位(a1)を0.1〜5質量%、及びエチレン単位(a2)と(メタ)アクリル酸エステル単位(a3)を含有し、(a2)と(a3)の質量比(a2)/(a3)が60/40〜98/2であるポリオレフィン樹脂。
    ポリオレフィン樹脂(b):
    不飽和カルボン酸単位(b1)を0.1〜10質量%、炭素数3〜6の不飽和炭化水素単位(b2)を50〜98質量%含有するポリオレフィン樹脂。
  2. 塩基性化合物(C)の含有量がポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.3〜1.5倍当量であることを特徴とする請求項1記載のラミネート用水性接着剤。
  3. 水性媒体中の有機溶剤含有量が3質量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のラミネート用水性接着剤。
  4. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に請求項1〜のいずれかに記載のラミネート用水性接着剤から水性媒体を除去して得られる接着層を設け、さらにこの接着層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼り合せたラミネートフィルム。
  5. 接着層の厚みが0.5〜10μmである請求項記載のラミネートフィルム。
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