本発明の両面粘着シートは、ポリエステルフィルム(A)、離型層(B)、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)、耐熱水接着性改良層(D)、ポリエステル系基材フィルム(E)、耐熱水接着性改良層(D’)、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C’)、離型層(B’)およびポリエステルフィルム(A’)が、この順に積層された両面粘着シートであって、明細書中で定義した方法で測定される上記離型層(B)と上記粘着層(C)との剥離強度と、上記離型層(B’)と上記粘着層(C’)との剥離強度が、いずれも0.03〜1.0N/20mmというものである。
[ポリエステルフィルム(A)、ポリエステル系基材フィルム(E)、ポリエステルフィルム(A’)]
ポリエステルフィルム(A)、ポリエステル系基材フィルム(E)およびポリエステルフィルム(A’)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を主成分(80質量%以上)とするものであれば任意に使用できる。二軸延伸化したものが望ましく使用される。二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えばポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加等の方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得た後、未延伸シートを延伸すればよい。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。
ポリエステル系基材フィルム(E)には、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理等の公知の接着性向上処理を行ってもよい。
[離型層(B)と粘着層(C)、および離型層(B’)と粘着層(C’)との剥離強度]
本発明の両面粘着シートでは、離型層(B)と粘着層(C)との剥離強度、および離型層(B’)と粘着層(C’)との剥離強度が、いずれも0.03〜1.0N/20mmである。上記剥離強度が0.03N/20mm以上であれば良好な剥離性を示すとともに、両面粘着シートを巻き取る場合に、ポリエステルフィルム(A)と離型層(B)からなるセパレートフィルム(AB)やポリエステルフィルム(A’)と離型層(B’)からなるセパレートフィルム(A’B’)を備えたセパレートフィルムの浮きを抑制することができ、両面粘着シートの品位を高く保つことができる。一方、1.0N/20mm以下であれば、上記セパレートフィルム(AB)や(A’B’)の剥離性が良好である。剥離強度を上記範囲に制御するには、下記構成の離型層(B)や(B’)をポリエステルフィルム(A)、(A’)の表面に設けることが好ましい。なお、剥離強度は、以下のようにして測定した。
まず、長さ200mm程度、幅20mmの両面粘着シートの剥離強度を測定したい面(2面)を露出させ、両面粘着シートを、一方の面を含む積層体と、他方の面を含む積層体とに分けて、それぞれを引張試験機のチャックにセットする。すなわち、例えば、離型層(B)と粘着層(C)との界面の剥離強度を測定する場合は、離型層(B)と粘着層(C)の界面で両面粘着シートを少し剥がし、離型層(B)と粘着層(C)のそれぞれを露出させる。この場合は、一方のチャックで、ポリエステルフィルム(A)と離型層(B)とからなるセパレートフィルム(AB)を把持し、一方のチャックで、粘着層(C)〜セパレートフィルム(A’B’)の積層体を把持する。そして、JIS K6854−3に記載の方法で、T型剥離強度を測定した。用いた引張試験機は、商品名「オートグラフ」(島津製作所社製)であり、チャック間距離50mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件でT型剥離試験を行った。剥離の際には、T型が維持されるように、フィルムの端部を棒で持ち上げた。T型剥離時の最大強度を剥離強度とした。離型層(B’)と粘着層(C’)との界面の剥離強度を測定する場合は、離型層(B’)と粘着層(C’)の界面で両面粘着シートを少し剥がし、一方のチャックで、ポリエステルフィルム(A’)と離型層(B’)とからなるセパレートフィルム(A’B’)を把持し、一方のチャックで、粘着層(C’)〜セパレートフィルム(AB)の積層体を把持して、上記と同様に引張試験を行えばよい。
以下、本発明においては、上記特性を単に剥離性と称することもある。
[離型層(B)、(B’)]
本発明の両面粘着シートにおける離型層(B)、(B’)は、剥離強度が上記範囲を満たすものであればよく、粘着層(C)、(C’)との剥離性を考慮すれば、非シリコーン化合物からなるものであることが好ましい。離型層が、離型層として汎用される硬化型シリコーン化合物の硬化物からなる場合には、粘着層(C)、(C’)との親和性が高いため、粘着層(C)、(C’)のシリコーン化合物を架橋させる際に、粘着層(C)と離型層(B)、粘着層(C’)と離型層(B’)がそれぞれ架橋反応することがあり、剥離性が低下する場合がある。安定的な剥離性を得るには、離型層は、実質的にシリコーン化合物を含まない離型剤を使用して形成することが好ましい。なお、ここで、「離型層が非シリコーン化合物からなる」とは、離型層がシリコーン化合物を10質量%以下含む化合物(または組成物)から形成されていることを意味し、より好ましいシリコーン化合物量は5質量%以下であり、シリコーン化合物が0質量%であることが最も好ましい。なお、離型層(B)と(B’)は全く同一の化合物(または組成物)であってもよいし、異なる化合物(または組成物)であってもよい。
また、離型層は、金属または無機系薄膜からなるものであってもよいが、剥離安定性やコスト面からは、バインダー樹脂、高分子ワックス成分および帯電防止剤を含む組成物からなるものであることが好ましい。離型層(B)は、ポリエステルフィルム(A)とセットで、粘着層(C)のセパレートフィルム(AB)となり、離型層(B’)は、ポリエステルフィルム(A’)とセットで粘着層(C’)のセパレートフィルム(A’B’)となるものである。
バインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタンおよびアクリル系ポリマーよりなる群から選択される1種以上のポリマーであることが好ましく、これらのポリマーをそれぞれ単独で用いてもよく、また、異なる2種または3種を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリエステル、ポリウレタンおよびアクリル系ポリマーは、耐熱水接着性改良層(D)および(D’)の構成ポリマーとして後述するものと同様のポリマーを用いることができる。バインダー樹脂には架橋の必要性は低いが、耐熱水接着性改良層(D)および(D’)と同様に、架橋剤を併用してもよいし、自己架橋型のポリマーを用いてもよい。
本発明において使用される高分子ワックス成分は、従来公知の材料が使用可能である。例えばポリエチレン系、ポリプロピレン系、アクリル系、脂肪酸系等のワックスエマルジョン等が示されるが、特に粘着感の無い硬質タイプの熱分解安定性に優れた高分子ワックス剤は、剥離性の向上に効果があり、かつフィルム巻き取り時に、反対側表面へのワックスの転移を抑制することができるので好ましい。また、これらのワックス剤の好ましい数平均分子量は1000〜10000であり、より好ましくは1500〜6000の範囲である。
前記高分子ワックス成分は、バインダー樹脂との合計を100質量%としたときに、固形分で、2〜10質量%含まれていることが好ましい。3〜8質量%含まれているのがさらに好ましい。高分子ワックス成分の添加量を2質量%以上とすることで、架橋処理後の粘着層(C)、(C’)との剥離性を良好にし、また、セパレートフィルム(AB)、(A’B’)の滑り性を向上させることができる。一方、高分子ワックス成分の添加量を10質量%以下とすることにより、剥離力を維持して、両面粘着シートの製造工程でチャンネリング現象の発生を抑制することができる。さらに、離型層(B)、(B’)からの高分子ワックス成分の移行を抑制できるため、架橋処理後の粘着層(C)、(C’)の表面が汚染されることが少なくなる。
離型層(B)、(B’)において使用される帯電防止剤としては、バインダー樹脂と混合可能であるか、または相溶性のあるものであれば、イオン性を特に限定されるものではなく、従来公知の市販の材料が利用可能であり、例えばアニオン、カチオン、ノニオン、両性系の界面活性剤や、高分子型界面活性剤等がいずれも使用可能である。好ましくは積層面へのブリードアウトの少ない高分子型帯電防止剤が好ましい。
高分子型帯電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれも使用できるが、中でも、アニオン系とノニオン系の高分子型帯電防止剤が好適である。
アニオン系高分子型帯電防止剤としては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、硫酸エステル基から選ばれる少なくとも1つの極性基またはそれらの塩を有する極性ポリマーが好ましい。極性基はポリマー1分子当たり5モル%以上を必要とする。これらの導電性能を有する極性ポリマー中には、極性基としてヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アジリジン基、活性メチレン基、スルフィン酸基、アルデヒド基、ビニルスルホン基を含んでいてもよい。これらの中でも、スチレンスルホン酸またはその塩を繰り返し単位として含む帯電防止剤が好適である。
このような帯電防止剤としては、ポリスチレンスルホン酸またはその塩が挙げられる。塩としては、例えば、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩が挙げられる。ポリスチレンスルホン酸またはその塩は、例えば、日本エヌエスシーから、VERSA−TL(登録商標)という商品名で、分子量の異なる未中和や各種の塩が市販されている。また、スチレンスルホン酸またはその塩を繰り返し単位として含む帯電防止剤としては、スチレンスルホン酸−マレイン酸コポリマーも使用可能であり、日本エヌエスシーから市販されている。
一方、ノニオン系高分子型界面活性剤としては、アニリンあるいはその誘導体、ピロールあるいはその誘導体、イソチアナフテンあるいはその誘導体、アセチレンあるいはその誘導体、チオフェンあるいはその誘導体等を構成単位として含むπ電子共役系導電性高分子が好ましい。それらの中でも着色が少ない点から、チオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含むπ電子共役系導電性高分子が好ましい。π電子共役系導電性高分子は、1種の構成単位のみを繰り返し単位として含む単独重合体でもよく、2種以上の構成単位を繰り返し単位として含む共重合体でもよい。
チオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含む導電性高分子としては、例えば、スタルクヴィテック社製の「バイトロン(登録商標)P」シリーズ、ナガセケムテックス社製の「デナトロン(登録商標)P−502RG」、「デナトロン(登録商標)P−502S」、インスコンテック社製のコニソールF202、F205、F210、P810(以上、商品名)、信越ポリマー製CPS−AS−X03(商品名)等が市販されている。
離型層(B)、(B’)中の帯電防止剤の配合量は、バインダー樹脂の種類と帯電防止剤の種類により好適な範囲が異なるので一義的に決めることはできず、離型層(B)の粘着層(C)からの剥離強度、および離型層(B’)の粘着層(C’)からの剥離強度が、それぞれ前記の範囲となるように調整すればよい。
例えば、アニオン系界面活性剤を帯電防止剤として用いる場合には、帯電防止剤の配合量は、離型層(B)の粘着層(C)からの剥離強度、および離型層(B’)の粘着層(C’)からの剥離強度が、前記の範囲になるように、バインダー樹脂との合計を100質量%としたときに、固形分で、2〜10質量%含まれていることが好ましく、さらに好ましくは3〜8質量%である。アニオン系界面活性剤の配合量を2質量%以上とすることで、架橋処理後の粘着層(C)、(C’)からの剥離性を良好にするとともに、セパレートフィルム(AB)、(A’B’)の帯電防止性も良好になる。一方、帯電防止剤の配合量を10質量%以下とすることにより、剥離力を維持し、両面粘着シートの製造工程におけるチャンネリング現象の発生を抑制することができる。さらに、離型層(B)、(B’)からの高分子ワックス成分の移行を抑制できるため、架橋処理後の粘着層(C)、(C’)の表面が汚染されることが少ない。
ポリエステルフィルム(A)、(A’)上に上記構成の離型層(B)、(B’)を形成するには、バインダー樹脂、高分子ワックス成分、帯電防止剤、および必要に応じて表面粗面化物質等の他の添加剤を、あらかじめ所定量混合して樹脂組成物を調製し、塗工すればよい。樹脂組成物には、コート性向上のための界面活性剤や紫外線防止剤や酸化防止剤等を含有させることができる。塗工方法は、グラビアコーター、リバースロールコーター、リバースキスコーター、エアーナイフコーター、バーコーター等の通常のコート用装置を用いて塗布すればよく、方法はこれらにこだわらない。後述する耐熱水接着性改良層(D)、(D’)の場合と同様に、ポリエステルフィルム(A)、(A’)を得る際に、一軸方向に延伸されたフィルム(A)、(A’)の片面に樹脂組成物を塗布し、さらに先の一軸延伸と直角方向に延伸するいわゆるインラインコート法や、二軸延伸後塗布するいわゆるオフラインコート法等が例示される。
上記離型層(B)、(B’)の厚さは、剥離力を適正な範囲とするために、乾燥状態で0.03〜1μmが好ましく、0.05〜0.5μmがより好ましい。離型層(B)、(B’)の厚さは、この範囲内であれば、同じでも異なっていてもどちらでもよい。
[粘着層(C)、(C’)]
本発明の両面粘着シートにおいて、離型層(B)と接するのは粘着層(C)であり、離型層(B’)と接するのは粘着層(C)である。粘着層(C)、(C’)は、ポリジメチルシロキサン骨格の架橋されたシリコーン化合物を主成分(70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%)として含む。なお、粘着層(C)と(C’)は異なる組成であっても構わない。
上記のポリジメチルシロキサン骨格を有した架橋されたシリコーン化合物は、数平均分子量(Mn)が5万〜50万の未架橋体を架橋したものであることが好ましい。未架橋体のMnは8万〜40万がより好ましく、10万〜35万がさらに好ましい。
シリコーン化合物の未架橋体を用いることで溶媒への溶解性や流動性が確保でき、粘着層(C)、(C’)の形成が容易となる。また、未架橋体のMnが5万以上のものは架橋性が向上するため、好適である。未架橋体のMnが50万以下であれば、塗工液の粘度が高くなり過ぎるなどの生産時の操業性の悪化を抑制することができる。従って、シリコーン化合物の未架橋体を用いポリエステルフィルムに積層をして、その後に架橋を行うのが好ましい実施態様である。
上記内容を満たす未架橋シリコーン化合物としては、例えば、シリコーンオイルとして市販されているものを使用することができる。シリコーンオイルを用いる場合は、ストレートシリコーンオイルの中でも、非反応性のジメチルシリコーンオイルを用いるのが好ましい。これにより、架橋後のシリコーン化合物がポリジメチルシロキサン骨格を有するものとなる。メチルフェニルタイプのシリコーンオイルでは架橋性が低下し、反応性のメチル水素タイプのシリコーンオイルは保存安定性等が悪いため、品質や操業性に悪影響を及ぼすことがあるので好ましくないが、30質量%未満(より好ましくは5質量%未満)であれば、メチルフェニルタイプやメチル水素タイプまたは各種の変性タイプといった、ポリジメチルシロキサン骨格を有さないシリコーン化合物を配合して用いても構わない。
また、上記未架橋シリコーン化合物には、10質量%未満であればポリアルキルアルケニルシロキサン骨格のシリコーン化合物が含まれていてもよいが、できるだけ少ない方がよい。ポリアルキルアルケニルシロキサン骨格のシリコーン化合物を含まないポリジメチルシロキサン骨格のシリコーン化合物のみよりなることが最も好ましい。
本発明における粘着層(C)、(C’)には、本発明の効果を妨げない範囲であれば、シリカ等の補強剤が含まれてもよいが、補強剤を全く含まないことが特に好ましい。
上記の未架橋シリコーン化合物を用いることで、従来公知のミラブルタイプのシリコーンコンパウンドを原料とした場合より、前記したとおり、品質、品質安定性および生産時の操業性等において優位であるという本発明の効果が発現する。
上記粘着層(C)、(C’)には、粘着層(C)、(C’)と、耐熱水接着性改良層(D)、(D’)との接着強度を高めて、粘着層(C)、(C’)を剥離しにくくするための接着性改良剤が含まれていてもよい。この接着性改良剤としては、ラジカル反応に対して活性な反応基を含む化合物を用いるのが好ましい。この化合物としては、(メタ)アクリル酸誘導体およびアリル誘導体等が例示されるが、中でも不飽和結合を2個以上、特に3個以上有する誘導体が好ましい。これらの化合物は、ゴムの共架橋剤として広く使用されており、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル、多価カルボン酸のアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
上記多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルは、2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールのアルコール性水酸基2個以上を(メタ)アクリル酸でエステル化したエステル化合物である。具体的には、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル]プロパン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールテトラ(メタ)アクリレート、ダイマージオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、特に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含む化合物が好ましい。なお、上記の化合物は、アクリル酸およびメタクリル酸のそれぞれの単独エステル化合物を例示したが、アクリル酸とメタクリル酸の混合エステルの形であってもよい。
また、多価カルボン酸のアリルエステルとしては、フタル酸ジアリレート、トリメリット酸ジアリレート、ピロメリット酸テトラアリレート等が挙げられる。
上記接着性改良剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、粘着層(C)と(C’)とで異なる接着性改良剤を用いても構わない。なお、この発明に用いられる接着性改良剤は、上記の例示化合物に限定されるものではない。
上記接着性改良剤の配合量は、シリコーン化合物成分100質量部に対して0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。接着性改良剤の配合量を0.2質量部以上とすることにより、粘着層の耐熱水接着性を向上させる効果がより一層大きくなる。一方、接着性改良剤の配合量が20質量部を超えると、耐熱水接着性を向上させる効果が飽和に達するだけでなく、逆に、この効果を悪化させる場合がある。
上記粘着層(C)、(C’)の厚みの下限は、粘着力の点から3μmが好ましく、より好ましくは5μm、さらに好ましくは8μmである。一方、粘着層(C)、(C’)の厚みの上限は、経済性の観点から、粘着力が安定して維持できる範囲で決定すればよい。例えば、100μmが好ましく、80μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。粘着層(C)と(C’)の厚みは、同じでも異なっていてもどちらでもよい。
本発明においては、上記粘着層(C)、(C’)の形成方法は限定されないが、前記した未架橋のシリコーン化合物を溶剤に溶解あるいは分散させて、必要に応じて接着性改良剤を添加して塗工液を調製し、塗工法で塗布した後に、架橋処理をして形成するのが好ましい実施態様である。
例えば、未架橋のシリコーンオイルは、トルエン等の芳香族炭化水素によく溶解するので、これらの溶剤に溶解して塗工法で塗布するのが好ましい。未架橋のシリコーンオイルを用いると、従来のミラブルタイプのシリコーンゴムコンパウンドを溶剤に溶解する場合に必要な混練等によるコンパウンドの可塑化工程が不要である。また、得られた塗工液の保存安定性がよく、シリコーンゴムコンパウンドの溶液調製の際によく見られるゲル化等の増粘現象等も起こらない。さらに、シリコーンゴムコンパウンドの溶液化において発生することがあるシリコーンゴムコンパウンドの未溶解による異物の生成が抑制されるため、清澄度の高い塗工液が得られる等のメリットがある。
粘着層(C)は、例えば、上記シリコーンオイル等を含む塗工液を、ポリエステル系基材フィルム(E)の表面に形成された耐熱水接着性改良層(D)の表面、またはポリエステルフィルム(A)の表面に形成された離型層(B)の表面に塗工し、他の層を積層し、または積層せずに、架橋処理を行うことで、形成することができる。また、粘着層(C’)は、例えば、上記塗工液を、ポリエステル系基材フィルム(E)の表面に形成された耐熱水接着性改良層(D’)の表面、またはポリエステルフィルム(A’)の表面に形成された離型層(B’)の表面に塗工し、他の層を積層し、または積層せずに、架橋処理を行うことで、形成することができる。
上記シリコーン化合物の架橋方法は、例えば、熱架橋であってもよく、電子線やγ線等のような高エネルギーの活性線による架橋であってもよい。シリコーン化合物に活性線を照射すると、ポリジメチルシロキサンのメチル基から水素が引き抜かれ、同様にメチル基から水素が引き抜かれた隣接するシリコーン化合物との間で、架橋反応が起こると考えられている。従って、活性線による架橋方法では、シリコーン化合物にラジカル発生のための過酸化物等や架橋用触媒等の添加剤を配合する必要がない。このため、これらの添加物の残渣による被着体に対する汚染が抑制され、架橋用触媒等を配合した後のポットライフを考慮する必要もなく、短時間で効率的に架橋が完了するため生産性が高くなる等のメリットがある。
活性線の中でも、電子線架橋法が照射装置(EB照射装置)の入手しやすさから好適である。EB照射装置における電子線照射量としては、5〜50Mradの範囲が好ましい。電子線照射量を5Mrad以上とすることにより、シリコーン化合物の架橋反応を促進でき、再剥離する際に被着体に対する糊残りを低減し、リペアー性を向上させることができる。一方、電子線照射量を50Mrad以下にすることにより、架橋反応の過度の進行による粘着性の低下を抑制することができる。
物品の貼り合せに使用した場合の使用時の信頼性の点から、粘着層(C)、(C’)の粘着力の下限は0.01N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であることが好ましく、より好ましくは0.05N/20mmである。一方、再剥離性を向上させ、良好なリペアー性を確保する点から、粘着層(C)、(C’)の粘着力の上限は1.0N/20mmであることが好ましく、より好ましくは0.5N/20mmである。また、上記評価法で評価した場合にガラス面に粘着層が残らないこと、すなわち、糊残りがないことがリペアー性の点から好ましい。
本発明においては、上記粘着層(C)と耐熱水接着性改良層(D)、粘着層(C’)と耐熱水接着性改良層(D’)、耐熱水接着性改良層(D)とポリエステル系基材フィルム(E)、耐熱水接着性改良層(D’)とポリエステル系基材フィルム(E)のそれぞれが、強固に接着していることが好ましい。例えば、粘着層(C)や(C’)とポリエステル系基材フィルム(E)との間にカッターナイフを差し込んで、指で力を加えて引き剥がし(界面出し)を実施した場合に、接着強度が強固で界面出しができないことが好ましい。本発明においては、粘着層(C)や(C’)とポリエステル系基材フィルム(E)との間に耐熱水接着性改良層(D)および(D’)が存在するが、この耐熱水接着性改良層(D)および(D’)の厚みは薄いので、上記界面出しにおける真の界面は分析不可能であり、明確でない。要するに、粘着層(C)、(C’)とポリエステル系基材フィルム(E)とが強固に接着しており、界面出しが不可能である状態が好ましい。以下、本発明においては、上記特性を単に接着性と称することもある。
また、本発明の両面粘着シートを熱水中で長時間保存しても、上記接着性が維持されることが好ましい。以下、接着性の熱水耐久性を耐熱水接着性と称することもある。
[耐熱水接着性]
次に、本発明の両面粘着シートの重要な効果である耐熱水接着性の評価方法について説明する。
粘着層(C)の耐熱水接着性を測定する場合は、両面粘着シートを50mm×50mmに切断し、ポリエステルフィルム(A)と離型層(B)とからなるセパレートフィルム(AB)を剥離する。蒸留水400ccを入れた500ccの蓋付きの円筒状のガラス容器の中に、上記試料を粘着層(C)が下側になるように水中に沈め、試料全体が水中に浸漬した状態で容器に蓋をする。試料の自重だけでは水中に浸漬しない場合は、例えば、60mm×60mm、厚さ188μmのポリエステルフィルムを試料の上に載せて、重しにすればよい。重しの大きさや素材は特に限定されるものではなく、試料全体が水中に浸漬すればよい。試料の入った容器を、80℃に設定したギアーオーブン中に入れ、24時間静置する。熱処理後、オーブンから容器を取り出し、速やかに試料を取り出して、粘着層(C)側から端部に指腹で力を加えて10回擦り、粘着層(C)がポリエステル系基材フィルム(E)側から剥離するかどうかを評価し、粘着層(C)が剥離しないものを○、粘着層(C)が剥離するものを×とした。
粘着層(C’)の耐熱水接着性を測定する場合は、ポリエステルフィルム(A)と離型層(B)とからなるセパレートフィルム(AB)を剥離する代わりに、ポリエステルフィルム(A’)と離型層(B’)とからなるセパレートフィルム(A’B’)を剥離して、粘着層(C’)が下側になるように水中に沈め、上記と同様に測定すればよい。
この耐熱水接着性において、粘着層(C)、(C’)が剥離しないような耐熱水接着性改良層(D)、(D’)を選択することにより、例えば、カーナビゲーション用タッチパネル等の部材として使用した場合に、粘着層(C)、(C’)とポリエステル系基材フィルム(E)との界面における界面剥離を抑制できるため、装置の信頼性が向上する。
[耐熱水接着性改良層(D)、(D’)]
耐熱水接着性改良層(D)、(D’)は、上記耐熱水接着性の評価において、粘着層(C)、(C’)がポリエステル系基材フィルム(E)から剥離しないための層である。耐熱水接着性改良層(D)、(D’)の厚みは0.01〜0.5μmであることが好ましい。耐熱水接着性改良層(D)、(D’)の厚みが0.01〜0.5μmであれば、良好な耐熱水接着性を示すが、上記範囲外では耐熱水接着性が○にならないことがあるため好ましくない。より好ましい厚みの範囲は、0.03〜0.4μmであり、0.05〜0.3μmがさらに好ましい。
耐熱水接着性改良層(D)、(D’)として好ましいのは架橋されたポリマー層(架橋ポリマー層)であり、ポリマーを架橋剤で架橋した層である場合と、自己架橋型ポリマーを用いた層である場合がある。耐熱水接着性改良層(D)と(D’)は、同じ組成のポリマー層であってもよいし、異なる組成のポリマー層であってもよい。
架橋剤で架橋する方法において使用できるポリマーは特に限定されないが、ポリエステル、ポリウレタンおよびアクリル酸系ポリマーよりなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。上記ポリマーは、それぞれ単独で用いてもよく、また、異なる2種または3種を組み合わせて用いてもよい。
〔耐熱水接着性改良層(D)、(D’)用のポリエステル〕
上記ポリエステルは、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、多価カルボン酸とグリコールを重縮合して得られるものである。
ポリエステルを構成する多価カルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸あるいはこれらのエステル誘導体を使用することができる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等を用いることができる。耐熱水接着性改良層(D)の強度や耐熱性の点から、これらの芳香族ジカルボン酸が、好ましくは多価カルボン酸成分100モル%中30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは40モル%を占めるポリエステルを用いることが好ましい。
また、脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
ポリエステルのグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等を用いることができる。
また、ポリエステルを水系液にして塗液として用いる場合には、ポリエステルの水溶性化あるいは水分散化を容易にするため、カルボン酸(塩)基を含む化合物、スルホン酸(塩)基を含む化合物、ホスホン酸(塩)基を含む化合物等を共重合することが好ましい。
カルボン酸(塩)基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸等、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。
スルホン酸(塩)基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができる。
ホスホン酸(塩)基を含む化合物としては、例えば、ホスホテレフタル酸、5−ホスホソフタル酸、4−ホスホイソフタル酸、4−ホスホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ホスホ−p−キシリレングリコール、2−ホスホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができる。
また、本発明においては、上記ポリエステルとして、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシ等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等の変性ポリエステル共重合体も使用可能である。
好ましいポリエステルとしては、酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれるものを用いた共重合体等が挙げられる。耐水性が必要とされる場合は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の代わりに、トリメリット酸をその共重合成分とした共重合体等も好適に用いることができる。
上記ポリエステルは、以下の製造法によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分が、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸からなり、グリコール成分が、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなるポリエステルについて説明すると、これらのモノマーを直接エステル化反応させるか、あるいは、エステル交換反応させる第一段階と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階とによって製造する方法等により製造することができる。
この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物等を用いることができる。
また、カルボキシル基を末端および/または側鎖に多く有するポリエステルを得る方法としては、特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報等に記載の3価以上の多価カルボン酸を共重合することにより製造することができるが、むろんこれら以外の方法であってもよい。
また、水分散ポリエステル樹脂として、例えば市販されている「バイロナール(登録商標)」シリーズ(東洋紡績社製)を用いることもできる。
ポリエステルの固有粘度は、特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、最も好ましくは0.4dl/g以上であることである。ポリエステルのガラス転移温度(以下、Tgと略称することもある)は、0〜130℃であることが好ましく、より好ましくは10〜85℃である。Tgが0℃以上のポリエステルを用いることで耐熱水接着性が向上し、また、耐熱水接着性改良層(D)、(D’)をポリエステル系基材フィルム(E)の表面に積層した後、一端巻き取る場合などのブロッキング現象を抑制することができる。また、Tgが130℃以下のポリエステルを用いることで、安定性や水分散性を良好に維持することができる。
〔耐熱水接着性改良層(D)、(D’)用のポリウレタン〕
次に、ポリウレタンについて説明する。ポリウレタンは、ウレタン結合を有したものであれば特に限定されるものではなく、主要構成成分としては、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を重合して得られるものである。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、アクリル系ポリオール等を用いることができる。
また、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物等を用いることができる。
ポリウレタンの合成の際には、上記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の他に、公知の鎖延長剤や架橋剤等を含んでいてもよい。鎖延長剤あるいは架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等を用いることができる。
安定なポリウレタン水分散体を得るには、水への親和性が高められたポリウレタンを合成することが好ましく、具体的には、アニオン性基を適量ポリウレタン中に導入すればよい。例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤等に、アニオン性基を有する化合物を用いる方法、生成したポリウレタンの未反応イソシアネート基とアニオン性基を有する化合物を反応させる方法、あるいはポリウレタンの活性水素を有する基と特定の化合物を反応させる方法等を用いて製造することができる。
上記ポリウレタン中のアニオン性基は、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基およびこれらのアンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩あるいはマグネシウム塩として用いられる。
ポリウレタン中のアニオン性基を有するユニットの量は、ポリウレタンの水分散性の点から、0.05質量%〜15質量%が好ましい。
また、例えばポリウレタン水分散体として、「ハイドラン(登録商標)」シリーズ(大日本インキ化学工業社製)を用いることもできる。
〔耐熱水接着性改良層(D)、(D’)用のアクリル系ポリマー〕
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分としては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等);2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミドN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー等を用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて(共)重合される。さらに、これらは他種のモノマーと併用することができる。
ここで他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のスルホン酸基およびそれらの塩を含有するモノマー;クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物を含有するモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル等を用いることができる。
また、上記アクリル系ポリマーとしては、変性アクリル系ポリマー、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等も使用可能である。
上記アクリル系ポリマーのTgは、耐熱水接着性や耐ブロッキング性の点から下限を−10℃とすることが好ましく、より好ましくは0℃であり、最も好ましくは10℃である。一方、アクリル系ポリマーのTgは、耐熱水接着性や造膜性の点から上限を90℃とすることが好ましく、より好ましくは50℃、最も好ましくは40℃である。また、アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は5万以上が好ましく、より好ましくは30万以上とすることが、耐熱水接着性の点で望ましい。
上記アクリル系ポリマーとして好ましいのは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸から選ばれたモノマーからなる共重合体等である。
アクリル系ポリマーを水に溶解、乳化、あるいは懸濁し、水系液として用いることが、環境汚染や塗工時の防爆性の点で好ましい。このような水系アクリル系ポリマーは、親水性基を有するモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩等)との共重合や反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合等の方法によって作成することができる。
また、市販のアクリル系エマルジョンを用いてもよく、例えば、「ジョンクリル(登録商標)」シリーズ(BASFジャパン社製)が挙げられる。
[耐熱水接着性改良層(D)、(D’)に用いられる架橋剤]
本発明においては、上記ポリエステル、ポリウレタンおよびアクリル系ポリマーは架橋されていることが好ましい。上記ポリマーを架橋剤を用いて架橋する場合、架橋剤としては、上記したポリマーに存在する官能基、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メチロール基、アミド基等と架橋反応し得るものを用いればよい。例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、アクリルアミド系、ポリアミド系樹脂、アミドエポキシ化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤等を用いることができる。特に、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が、上記ポリマーとの相溶性や、耐熱水接着性等の点から好適に用いることができる。なお、耐熱水接着性改良層(D)と(D’)とで、架橋剤の量や種類を異ならせても構わない。
メラミン系架橋剤としては、特に限定されないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、あるいはこれらの混合物等を用いることができる。また、メラミン系架橋剤としてはモノマー、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物等を用いることができる。エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等を用いることができる。メチル化トリメチロールメラミン、ブチル化ヘキサメチロールメラミン等のメチロール化メラミン樹脂が好ましい。さらに、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えば、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いてもよい。
また、オキサゾリン系架橋剤は、化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであれば特に限定されるものではないが、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。
オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することもできる。中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
オキサゾリン基含有共重合体において、オキサゾリン基を含有するモノマーと共に用いられる少なくとも1種の他のモノマーとしては、オキサゾリン基を含有するモノマーと共重合可能なモノマーであれば、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類あるいはメタクリレート類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲン−α,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族モノマー類等を用いることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することができる。
また、オキサゾリン基含有ポリマーとしては、例えば、「エポクロス(登録商標)」シリーズ(日本触媒社製)が入手可能である。
イソシアネート系架橋剤は、化合物中に官能基としてイソシアネート基を有するものであれば特に限定されるものではないが、1分子中にイソシアネート基を2個以上を含む多官能性イソシアネート化合物の使用が好ましい。
多官能性イソシアネート化合物としては、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを用い得る。ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体がある。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類等の高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
なお、イソシアネート化合物を架橋剤として用いる場合に、ブロック型イソシアネート化合物を用いることも可能である。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて調製することができる。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノール等のチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノール等の第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステル等の活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダ等を挙げることができる。
エポキシ系架橋剤としては、化合物中に官能基としてエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではないが、1分子中にエポキシ基を2個以上含む多官能性エポキシ化合物の使用が好ましい。
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル等を挙げることができる。
上記架橋剤として、アルキル化フェノール類、クレゾール類等のホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物等のアミノ樹脂等も使用できる。
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノール等のフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。
アミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン等が挙げられるが好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミン等を挙げることができる。
上記ポリマー(ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系ポリマー)と架橋剤は任意の比率で混合して用いることができるが、本発明の耐熱水接着性の効果をより顕著に発現させるには、架橋剤は、ポリマー100質量部に対し、固形分質量比で2質量部以上、50質量部以下の添加が好ましく、より好ましくは3〜25質量部である。架橋剤の添加量が、2質量部未満の場合、その添加効果が小さく、また、50質量部を超える場合は、耐熱水接着性が低下する傾向がある。
[耐熱水接着性改良層(D)、(D’)の自己架橋型ポリマー]
本発明においては、上記方法以外にも、例えば、前記したポリマーに架橋性の官能基を導入した自己架橋型のポリマーを用いて耐熱水接着性改良層(D)および/または(D’)を形成してもよい。自己架橋型のポリマーを用いる場合の架橋方法は、例えば、熱架橋であってもよく、紫外線、電子線およびγ線等のような高エネルギーの活性線による架橋であってもよい。
以下、自己架橋型のポリマーとして、ポリエステルの場合について具体的な方法を例示する。
本発明で好適に使用される自己架橋型のポリエステルは、疎水性共重合ポリエステルに、少なくとも1種のラジカル重合性二重結合を有する化合物をグラフトさせたポリエステル系グラフト共重合体である。本発明におけるポリエステル系グラフト共重合体の「グラフト化」とは、主鎖である幹ポリマーに、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することにある。グラフト重合は、通常、疎水性共重合ポリエステルを有機溶剤中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤を使用して、少なくとも一種のラジカル重合性モノマーを反応させることにより実施される。疎水性共重合ポリエステルとは、本来それ自身で水に溶解しない、本質的に水不溶性のポリエステルであるため、水に溶解するポリエステル樹脂をグラフト重合の際の幹ポリマーとして使用する場合に比べ、耐熱水接着性に優れている。
疎水性共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分100モル%中、芳香族ジカルボン酸が60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が0〜39.5モル%、ラジカル重合性二重結合を含有するジカルボン酸が0.5〜10モル%であることが好ましい。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸が68〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸が2〜7モル%である。
前記芳香族ジカルボン酸が60モル%以上であり、前記脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が39.5モル%以下である場合には、耐熱水接着性が良好となる。また、ラジカル重合性二重結合を含有するジカルボン酸を0.5モル%以上用いることで、ポリエステル樹脂に対するラジカル重合性モノマーのグラフト化を効率よく行うことができる。一方、10モル%以下とすることにより、グラフト化反応の後期に、反応溶液の粘度が顕著に上昇することを抑制し、反応を均一に進行できるため好ましい。
芳香族ジカルボン酸、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸は、前記例示の化合物がいずれも使用可能である。ラジカル重合性二重結合を含有するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、等のα、β−不飽和ジカルボン酸;2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等の不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸等を例示することができる。これらの重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸のうち、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸が好ましい。
グリコール成分も、前記例示の化合物がいずれも使用可能である。グリコール成分は、2種以上併用してもかまわない。なかでも、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール等が好ましい。
前記疎水性共重合ポリエステルには、0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合することができる。3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。また、3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。
3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し0〜5モル%、好ましくは0〜3モル%の範囲で共重合され、この範囲であれば重合時のゲル化を抑制することができる。
また、疎水性共重合ポリエステルの重量平均分子量は、耐熱水接着性の点から下限が5,000であることが好ましい。また、重合時のゲル化等の点で、上限は50,000であることが好ましい。
疎水性共重合ポリエステルを合成した後は,グラフト重合を行う。グラフト重合は、疎水性共重合ポリエステルを有機溶剤中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤を使用して少なくとも一種のラジカル重合性モノマーを反応させることにより行う。なお、グラフト反応終了後の反応生成物は、所望の疎水性共重合ポリエステルとラジカル重合性モノマーとのグラフト共重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性共重合ポリエステルおよび疎水性共重合ポリエステルにグラフトしなかったラジカル重合性モノマーから得られる(共)重合体をも含有している。本発明におけるポリエステル系グラフト共重合体とは、上記したポリエステル系グラフト共重合体だけでなく、これに加えて、グラフト化を受けなかった疎水性共重合ポリエステル、グラフトしなかったラジカル重合性モノマーから得られる(共)重合体およびモノマー(残存モノマー)も含む反応混合物をも包含する。
本発明において、疎水性共重合ポリエステルにラジカル重合性モノマーをグラフト重合させた反応物の酸価は、耐熱水接着性の点から、600eq/106g以上であることが好ましい。より好ましくは、反応物の酸価は1200eq/106g以上である。反応物の酸価が600eq/106g未満である場合は、耐熱水接着性が低下する場合がある。
また、本発明の目的に適合する望ましい疎水性共重合ポリエステルとラジカル重合性モノマーの質量比率は、ポリエステル/ラジカル重合性モノマー=40/60〜95/5の範囲が望ましく、より望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。
疎水性共重合ポリエステルの質量比率を40質量%以上とすることで、ポリエステルの優れた接着性を発揮することができる。一方、疎水性共重合ポリエステルの質量比率を95質量%以下とすることで、耐ブロッキング性を改善するとともに、反応物の酸価を上記範囲に調整することができる。
グラフト重合反応物は、有機溶媒の溶液もしくは分散液または水系溶媒の溶液もしくは分散液の形態になる。特に、水系溶媒の分散液、すなわち、水分散体の形態が、作業環境、塗布性の点で好ましい。よって、グラフトさせるラジカル重合性モノマーとしては、親水性ラジカル重合性モノマーを必須的に含むラジカル重合性モノマーを用いることが好ましい。そして、有機溶媒中でグラフト重合した後は、有機溶媒を留去し、水を添加すれば、水分散体を得ることができる。
親水性ラジカル重合性モノマーとは、親水基を有するか、後で親水基に変化できる基を有するラジカル重合性モノマーを意味する。親水基を有するラジカル重合性モノマーとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基等を含むラジカル重合性モノマーを挙げることができる。一方、親水基に変化できる基を有するラジカル重合性モノマーとしては、酸無水物基、グリシジル基、クロル基等を含むラジカル重合性モノマーを挙げることができる。これらの中でも、水分散性の点から、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基を有するか、カルボキシル基を発生する基を有するラジカル重合性モノマーが好ましい。
グラフト反応物の酸価を上記好適範囲にするためには、カルボキシル基を含有しているか、カルボキシル基を発生する基を有するラジカル重合性モノマーが含まれているほうが好ましい。このようなモノマーとしては、フマル酸、フマル酸モノエチル;マレイン酸とその無水物、マレイン酸モノエチル;イタコン酸とその無水物、イタコン酸のモノエステル;アクリル酸、メタクリル酸;およびこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等が挙げられる。好ましくは、マレイン酸無水物である。上記モノマーは1種もしくは2種以上を用いて共重合させることができる。
グラフトさせるラジカル重合性モノマーには、酸価を上記好適範囲にする限りは、他種のモノマーが含まれていてもよい。他種のモノマーとしては、前記したアクリル系ポリマーを合成するときに用い得るモノマーがそのまま用い得る。
本発明で用いるグラフト重合開始剤としては、例えば、当業者に公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、有機アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)が挙げられる。グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性モノマーに対して、少なくとも0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上である。
重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えば、オクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールを必要に応じて用い得る。この場合、重合性モノマーに対して0〜5質量%の範囲で添加することが望ましい。
グラフト化反応生成物は、塩基性化合物で中和することが好ましく、中和することによって容易に水分散化することができる。塩基性化合物としては、塗膜形成時に揮散する化合物が望ましく、アンモニア、有機アミン類等が好適である。望ましい化合物としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
塩基性化合物は、グラフト化反応生成物中に含まれるカルボキシル基含有量に応じて、少なくとも部分中和または完全中和によって水分散体のpH値が5.0〜9.0の範囲であるように使用するのが望ましい。沸点が100℃以下の塩基性化合物を使用した場合であれば、乾燥後の塗膜中の残留塩基性化合物も少なく、例えば、高温、多湿下等の過酷な環境下における耐熱水接着性が向上する。
グラフト化反応生成物では、ラジカル重合性モノマーの重合物の重量平均分子量は500〜50,000であるのが好ましい。ラジカル重合性モノマーの重合物の重量平均分子量を500未満にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、共重合ポリエステルへの親水性基の付与が充分に行われない傾向がある。また、ラジカル重合性モノマーのグラフト重合物は分散粒子の水和層を形成するが、充分な厚みの水和層をもたせ、安定な水分散体を得るためにはラジカル重合性モノマーのグラフト重合物の重量平均分子量は500以上であることが望ましい。
ラジカル重合性モノマーのグラフト重合物の重量平均分子量は、溶液重合における重合性の点より、その上限値が50,000であることが好ましい。ラジカル重合性モノマーのグラフト重合物の重量平均分子量を500〜50,000の範囲内とするためには、開始剤量、モノマー滴下時間、重合時間、反応溶媒、モノマー組成、または必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行うことが好ましい。
グラフト共重合体のガラス転移温度は、特に限定されないが、耐熱水接着性を考慮すれば、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上である。
本発明において、疎水性共重合ポリエステルにラジカル重合性モノマーをグラフト重合させた反応物は、ポリエステル中のヒドロキシル基と,グラフト部分に存在するカルボキシル基が反応するため、自己架橋性を有する。また、常温では架橋しないが、塗膜形成の際の乾燥時の熱で、熱ラジカルによる水素引き抜き反応等の分子間反応を行い、架橋剤なしで架橋する。これにより、高度な耐熱水接着性を発揮する。塗膜の架橋度については、種々の方法で評価できるが、例えば、疎水性共重合ポリエステルおよびグラフトした重合体の両方を溶解するクロロホルム溶媒等での不溶分率を測定する方法等が挙げられる。
80℃程度で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる塗膜の不溶分率は、耐熱水接着性と耐ブロッキング性の点から、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
自己架橋型ポリエステル樹脂水分散体として、例えば、「バイロナール(登録商標)AGN702」(東洋紡績社製)等の市販のものを用いることもできる。
また、上記と類似した方法でグラフト化ポリウレタンを調製することができる。
[耐熱水接着性改良層(D)、(D’)の添加剤]
耐熱水接着性改良層(D)、(D’)中には本発明の効果が損なわれない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤等が配合されていてもよい。
特に、耐熱水接着性改良層(D)、(D’)中に無機粒子を添加したものは、例えば、ポリエステル系基材フィルム(E)の表面に耐熱水接着性改良層(D)と(D’)を積層して一端巻き取る場合等に、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので好ましい。この場合、添加する無機粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等を用いることができる。用いられる無機粒子は、平均粒径0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.01〜3μm、最も好ましくは0.05〜2μmである。無機粒子の使用量は特に限定されないが、耐熱水接着性改良層(D)、(D’)中のポリマー100質量部に対し、固形分で0.05〜10質量部混合することが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
[耐熱水接着性改良層(D)、(D’)の形成方法]
耐熱水接着性改良層(D)、(D’)は、上記したポリエステル、ポリウレタンおよびアクリル系ポリマーよりなる群から選択される1種以上のポリマーと架橋剤との混合物の水分散体や、自己架橋型ポリマーの水分散体から形成されるため、塗工法で形成するのが最も簡便である。ポリエステル系基材フィルム(E)の片面に耐熱水接着性改良層(D)用塗工液を、もう一方の面に耐熱水接着性改良層(D’)用塗工液を塗工すればよい。耐熱水接着性改良層(D)と(D’)の塗工は、同時に行っても、どちらかを先に行っても、どちらでもよい。また、ポリエステル系基材フィルム(E)の未延伸フィルムに塗布し、次いで少なくとも一方向に延伸する方法、縦延伸後に塗布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法等、いずれの方法も可能である。なかでも、ポリエステル系基材フィルム(E)を製造する際、フィルムの結晶配向が完了する前に塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる、いわゆるインラインコート法が、容易に薄膜を形成できるため、本発明の効果をより顕著に発現させることができ、好ましい。
例えば、ポリエステル系基材フィルム(E)の未延伸フィルムへ(D)用塗工液や(D’)用塗工液を塗布する場合は、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法等を用いることができる。
[両面粘着シートの光学特性]
本発明の両面粘着シートは、高透過率が要求される用途では、全光線透過率が91%以上で、かつヘーズが1.2%以下であることが好ましい。全光線透過率が92%以上で、かつヘーズが1.1%以下であることがより好ましい。さらに、65℃、85RH%で200時間保存した後も、全光線透過率とヘーズが上記の好適範囲に入っていることが好ましい。
本発明の両面粘着シートは、上記特性を有することにより、光学用部材の貼り合せ用として好適に使用することができるが、この用途に限定されるわけではない。
[両面粘着シートの製造方法]
上記の両面粘着シートの製造方法は特に限定されないが、少なくともポリジメチルシロキサン骨格を有するシリコーン化合物の未架橋体を含む層が耐熱水接着性改良層(D)および/または(D’)表面に積層された状態で、ポリジメチルシロキサン骨格を有するシリコーン化合物の未架橋体を含む層(以下単に、シリコーン化合物の未架橋層と称することもある)の架橋を行う工程を含む方法で製造するのが好ましい。該方法で実施することにより、前記した特性を安定して発現でき、かつ経済性に優れているからである。
上記製造方法において、シリコーン化合物の未架橋層を、耐熱水接着性改良層(D)および/または(D’)表面へ積層するには、前記した方法で製造されたポリエステル系基材フィルム(E)表面に積層された耐熱水接着性改良層(D)あるいは(D’)表面に塗工法等で直接積層してもよいし、前記した方法で製造されたセパレートフィルム(AB)やセパレートフィルム(A’B’)の離型層(B)あるいは離型層(B’)表面に塗工法等で積層し、得られた積層フィルムのシリコーン化合物の未架橋層とポリエステル系基材フィルム(E)表面に積層された耐熱水接着性改良層(D)あるいは(D’)表面に重ね合わせて積層しても良い。
また、シリコーン化合物の未架橋層の積層方法は、両面とも上記方法の一つの方法で行ってもよいし、それぞれ別の方法で行ってもよい。さらに、また、前者の方法で実施する場合は、両面塗工法等で同時に両面に積層してもよいし、片面ずつ逐次で行ってもよい。
[両面粘着シートの使用方法]
本発明には、本発明の両面粘着シートを、静電容量方式のタッチパネルのオーバレイシートと座標検出シートとの貼着に用いることを特徴とする両面粘着シートの使用方法、および抵抗膜式タッチパネルのタッチパネルと表示装置との貼着に用いることを特徴とする両面粘着シートの使用方法が包含される。静電容量方式のタッチパネルのフェイスシートであるオーバレイシートとは、タッチパネルにおいて、指によってタッチされるシートであり、座標検出シートとは、タッチされた位置座標を検出するシートである。また、抵抗膜式タッチパネルのタッチパネルとは、指やペンなどによってタッチされる部位であり、表示装置とは、タッチすべき画像等を表示する装置である。
本発明の両面粘着シートは、上記部位への使用には限定されず、タッチパネルの組み立て工程において、他の部材の貼付に用いても構わない。また、本発明の両面粘着シートは、タッチパネル以外にも、各種表示装置の組み立て用途、光学部材の貼り合わせ用途、光学部材以外の部材の貼り合わせ用途等に適用することが可能である。
上記使用方法においては、貼り合せ作業時にセパレートフィルムを片面ずつ剥離して作業をしてもよいし、両面を同時に剥離して作業をしてもよい。前者の場合は、セパレートフィルムの剥離性に差をつけておき、剥離性の重い方の面の方を先に剥離して作業をした方が貼り付けの作業性が良い場合があるので推奨される。該両面のセパレートフィルムの剥離性に差を付ける方法は限定されない。例えば、両面の粘着層を形成するシリコーン化合物の種類を変更するとか、該粘着層の架橋条件を変更する等で対応する方法を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例で採用した測定・評価方法は次の通りである。また、実施例中で「部」とあるのは「質量部」を意味し、「%」とあるのは断りのない限り「質量%」を意味する。
1.剥離性
まず、長さ200mm程度、幅20mmの両面粘着シートについて、剥離性を評価したい面(2面)を露出させ、両面粘着シートを一方の面を含む積層体と他方の面を含む積層体とに分け、それぞれを引張試験機のチャックにセットする。すなわち、例えば、離型層(B)と粘着層(C)との界面の剥離強度を測定する場合は、離型層(B)と粘着層(C)の界面で両面粘着シートを少し剥がし、離型層(B)と粘着層(C)のそれぞれを露出させる。この場合は、一方のチャックで、ポリエステルフィルム(A)と離型層(B)とからなるセパレートフィルム(AB)を把持し、一方のチャックで、粘着層(C)〜セパレートフィルム(A’B’)の積層体を把持する。そして、JIS K6854−3に記載の方法で、T型剥離強度を測定した。用いた引張試験機は、商品名「オートグラフ」(島津製作所社製)であり、チャック間距離50mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件でT型剥離試験を行った。剥離の際には、T型が維持されるように、フィルムの端部を棒で持ち上げた。T型剥離時の最大強度を剥離強度とした。離型層(B’)と粘着層(C’)との界面の剥離強度を測定する場合は、離型層(B’)と粘着層(C’)の界面で両面粘着シートを少し剥がし、一方のチャックで、ポリエステルフィルム(A’)と離型層(B’)とからなるセパレートフィルム(A’B’)を把持し、一方のチャックで、粘着層(C’)〜セパレートフィルム(AB)の積層体を把持して、上記と同様に引張試験を行った。
離型層(B)と粘着層(C)、あるいは離型層(B’)と粘着層(C’)が剥離しない場合は、剥離困難として測定しなかった。この場合は、離型層(B)または離型層(B’)が、離型層として機能していないことを表す。
2.接着性
粘着層(C)および(C’)とポリエステル系基材フィルム(E)との間にカッターナイフを差し込んで、指で力を加えて引き剥がし(界面出し)を実施した。接着性が強固で界面出しができないものを○、界面出しが可能なものを×として評価した。
3.耐熱水接着性
両面粘着シートを50mm×50mmに切断し、セパレートフィルム(AB)またはセパレートフィルム(A’B’)を剥離する。蒸留水400ccを入れた500ccの蓋付きの円筒状のガラス容器の中に、上記試料を粘着層(C)または(C’)が下側になるように水中に沈め、試料全体が水中に浸漬した状態で容器に蓋をする。試料の自重だけでは水中に浸漬しない場合は、例えば、60mm×60mm、厚さ188μmのポリエステルフィルムを試料の上に載せて、重しにすればよい。重しの大きさや素材は特に限定されるものではなく、試料全体が水中に浸漬すればよい。試料の入った容器を、80℃に設定したギアーオーブン中に入れ、24時間静置する。熱処理後、オーブンから容器を取り出し、速やかに試料を取り出して、粘着層(C)または(C’)側から端部に指腹で力を加えて10回擦り、粘着層(C)または(C’)がポリエステル系基材フィルム(E)側から剥離するかどうかを評価し、粘着層(C)または(C’)が剥離しないものを○、粘着層(C)または(C’)が剥離するものを×とした。
4.粘着力
粘着層(C)および(C’)のガラスに対する粘着力を、JIS Z0237に準じて180度剥離法で測定した。ガラスは、厚み3mm、幅30mmの耐熱性ガラスを用いた。試料は20mm幅とし、ガラスへの貼着は2Kgのローラを用いて約29mm/秒の速さで2往復することにより行った。引張り速度は300mm/minとし、23℃の雰囲気下で引っ張り試験を行い、最大引張強度を粘着力(N/20mm)とした。
5.全光線透過率およびヘーズ
全光線透過率はJIS K7361−1に、ヘーズはJIS K7136に準じて、日本電色工業株式会社製ヘーズ測定器「NDH−2000」を用いて測定した。
6.塗工液の清澄度
粘着層(C)と(C’)形成用塗工液それぞれ100ccを40mmφの200メッシュ(線径0.04mm)の金網で濾過して、肉眼で不溶物の有無を確認し、不溶物無しの場合を○、不溶物有りの場合を×とした。
7.塗工液の溶液安定性
粘着層(C)と(C’)形成用塗工液それぞれを、密閉状態で、室温(23℃)で90日間保存した時の溶液の粘度変化で評価し、溶液安定性を判定した。溶液の粘度変化が±20%以内の場合を○、溶液の粘度変化が±20%を超える場合を×とした。なお、粘度はB型粘度計で測定した。
実施例1
(1)耐熱水接着性改良層(D)および(D’)形成用塗工液の調製
〔水分散性共重合ポリエステル樹脂の調製〕
蒸留塔が付属した1個の加圧エステル化反応槽と、真空発生装置が付属した2個の重縮合反応槽を用い、バッチワイズ方式で共重合ポリエステルを合成した。
まず、エステル化反応槽にテレフタル酸229kg、イソフタル酸222kg、5−ソジウムスルホイソフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)エステル(34%含有エチレングリコール溶液)191kgおよび窒素雰囲気下140℃で溶融したネオペンチルグリコール213kg、更に回収・精製されたエチレングリコールとネオペンチルグリコールの混合溶液(質量比45:55)87kgを仕込み、攪拌しながら更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液(三酸化アンチモン濃度1.3%)を39kg(酸成分に対して三酸化アンチモンとして0.05モル%)を加えてから窒素で加圧し、熱媒体で反応槽を昇温して塔頂温度を150℃に制御しながらグリコールを反応槽内に還流し、0.3MPaの圧力(ゲージ圧)下で、235℃で130分間エステル化反応を行い、共重合ポリエステルのオリゴマーを得た。
次いで、オリゴマーを第一の重縮合反応槽に移送し、攪拌しながら40kPaまで減圧速度5kPa/分、その後0.3kPaまで減圧速度0.8kPa/分で減圧し、255℃で160分初期縮合を行って、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。その後、0.13kPaの真空下で、螺旋状の攪拌翼を回転させた第二の重縮合反応槽にプレポリマーを移送し、265℃の温度で120分間後期縮合を行い、還元粘度0.41の共重合エステルポリマーとした。この第二の重縮合反応槽に窒素を導入し、ギアーポンプで共重合エステルポリマーを厚さ7mmのシート状で取り出し,水冷しながらシートカッターで破砕して共重合ポリエステルの破砕物を得た。
〔塗工液の調製〕
上記破砕物100部を、定法により水分散体化した。この水分散体の固形分100部に対し、メチロール化メラミン樹脂「サイメル(登録商標)303」(三井サイテック社製)を固形分で5部と、触媒として、「キャタリスト600」(三井サイテック社製)を0.025部加え、よく撹拌して塗工液(D−1)とした。
(2)ポリエステル系基材フィルム(E)の製造と耐熱水接着性改良層(D)および(D’)の積層
平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカ(サイリシア;富士シリシア社製)を0.04%含むポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65dl/g)のペレットを充分に真空乾燥した後、280℃に加熱された押し出し機に供給し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて、表面温度30℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸フィルムを95℃の加熱ロール群を通過させながら、長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムの両面にコロナ放電処理を施し、その両処理面に上記塗工液(D−1)を塗布した。この一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸した。さらに225℃で、幅方向に6%弛緩させながら、6秒間、熱処理を行った。二軸延伸ポリエチレンテレフタレート基材フィルム(E1)の両面に、厚さ0.08μmの架橋された耐熱水接着性改良層(D1)と(D’1)とが積層された厚さ100μmの積層体(i)が得られた。
(3)離型層(B)および(B’)形成用塗工液の調製
バインダー樹脂として水分散性共重合ポリエステル樹脂である「バイロナール(登録商標)MD−1200」(東洋紡績社製)を、高分子ワックス成分としてポリエチレン系エマルジョンワックス剤(理研ビタミン社製)を、帯電防止剤としてアニオン系帯電防止剤(ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム;商品名TB702;松本油脂製薬社製)を、表面粗面化物質として平均粒子径2μmであるスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子「エポスター(登録商標)MS」(日本触媒社製)と、平均粒子径0.05μmのコロイダルシリカ「スノーテックス(登録商標)XL」(日産化学工業社製)とをそれぞれ用いた。
ホモジナイザーを用いて、表面粗面化物質の有機球状微粒子を水とイソプロピルアルコール(質量比80/20)との混合液中で充分に分散させてから、塗工液の全質量に対して、バインダー樹脂2.5%、高分子ワックス成分0.13%、帯電防止剤0.13%、有機球状微粒子0.025%、コロイダルシリカ0.3%となるように、充分に混合して塗工液(B−1)を調製した。
(4)ポリエステルフィルムの製造と離型層の積層
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65dl/g)のペレットを充分に真空乾燥した後、280℃の加熱された押し出し機に供給し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸フィルムを95℃の加熱ロール群を通過させながら、長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。この一軸配向フィルムの両面に上記方法で調製した塗工液(B−1)を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸した。さらに225℃で、幅方向に6%弛緩させながら、6秒間、熱処理を行った。ポリエステルフィルム(A−1)の両面に厚さ0.15μmの離型層(B−1)が積層された厚さ50μmの積層体(ii)を得た。この積層体(ii)を、ポリエステルフィルム(A)と離型層(B)とからなるセパレートフィルム(AB)として使用すると共に、また、ポリエステルフィルム(A’)と離型層(B’)とからなるセパレートフィルム(A’B’)としても使用する。
(5)粘着層(C)、(C’)の積層
シリカ等の補強剤を実質的に含まず、数平均分子量が15万(GPC法で測定、ポリスチレン換算)の未架橋のポリジメチルシロキサン骨格よりなる非反応性のシリコーン化合物(KF−96H−50万cs;信越化学工業社製)を、トルエンに対する質量比率が23%となるように秤量し、トルエンと共に真空脱泡装置付き撹拌機に投入し、大気圧下、室温で15時間撹拌して、トルエンに溶解させた。得られた溶液に、上記シリコーン化合物100部に対して、トリメチロールプロパントリメタクリレートが2部となるように添加し、均一に撹拌した後、真空脱泡装置を駆動し、ゲージ圧が−750mmHgの真空下でさらに20分間撹拌し、脱泡した。次いで、脱泡後のシリコーン化合物溶液をロールコーターに供給し、上記積層体(i)の両面に、シリコーン化合物溶液を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、続いてオーブンに導入して80℃で乾燥した。未架橋の粘着層(C−1)と(C’−1)とが積層体(i)の両面に形成された積層体(iii)が得られた。
上記積層体(iii)の両面の未架橋の粘着層(C−1)と(C’−1)との表面に、それぞれ積層体(ii)を重ねつつ、圧着ローラ(圧力30N/cm2)で押さえ、連続的に積層した。得られた積層体(iv)を連続的に電子線照射装置に導入し、(C−1)の表面の積層体(ii)側から、200KV、16Mradのエネルギーで電子線を照射して粘着層の架橋を行い、架橋後の粘着層(C1)を備えた積層体(iv')をロール状に巻取った。この積層体(iv')を再度電子線照射装置に導入し、(C’−1)の表面の積層体(ii)側から、200KV、18Mradのエネルギーで電子線を照射して粘着層の架橋を行い、架橋後の粘着層(C’1)を備えた積層体(iv'')をロール状に巻取った。ここまでの製造工程において、セパレートフィルム(AB)および(A’B’)のチャンネリング現象の発生は見られなかった。
上記実施例1で得られた両面粘着シートの特性と、粘着層(C)および(C’)形成するための塗工液の特性を表1に示した。
本実施例で得られた両面粘着シートは、透明性に優れていた。また、耐熱水接着性改良層(D)を介して粘着層(C)が、また耐熱水接着性改良層(D’)を介して粘着層(C’)がポリエステル系基材フィルム(E)と強固に接着されており、接着性および耐熱水接着性にも優れていた。また、離型層(B)と粘着層(C)および離型層(B’)と粘着層(C’)との剥離力も適度であり、剥離性に優れた高品質な両面粘着シートであった。さらに、両面粘着シートの製造における粘着層(C)および(C’)を形成するための塗工液の清澄度や安定性にも優れており、操業性や操業安定性に優れていることが確認できた。
以下の実施例や比較例においては、セパレートフィルム、離型層、粘着層および耐熱水接着性改良層のいずれもが、両面とも同一のものを使用するので、「’」を付けて区別することなく、単に、(AB)、(B)、(C)、(D)との表示のみで代表して記述する。
比較例1
実施例1の方法において、耐熱水接着性改良層(D)形成用の塗工液(D−1)の塗布を取り止める以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを得た。評価結果を表1に示す。
本比較例1で得られた両面粘着シートは、粘着層(C)と基材フィルム(E)との接着性および耐熱水接着性が劣っており、低品質であった。
比較例2
実施例1の方法において、耐熱水接着性改良層(D)形成用の塗工液(D−1)へ、架橋剤であるメチロール化メラミン樹脂の配合を取り止めた以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを得た。評価結果を表1に示す。
本比較例2で得られた両面粘着シートは、粘着層(C)と基材フィルム(E)との耐熱水接着性が劣っており、低品質であった。
比較例3
実施例1の方法において、離型層(B)形成用の塗工液(B−1)への高分子ワックス成分と帯電防止剤の配合を取り止めた以外は、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表1に示す。
本比較例3で得られた両面粘着シートは、粘着層(C)から、セパレートフィルム(AB)を剥離しようとしたが剥離ができず、剥離性に劣るものであった。従って、両面粘着シートとして使用できなかった。
比較例4および5
実施例1の方法において、離型層(B)形成用塗工液(B−1)に、比較例4においては高分子ワックス成分を、比較例5においては帯電防止剤の配合を、それぞれ取り止める以外は、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表1に示す。
比較例4で得られた両面粘着シートは、粘着層(C)から、セパレートフィルム(AB)の剥離ができなかった。また、比較例5はセパレートフィルム(AB)の剥離強度が高く、セパレートフィルム(AB)の剥離性が劣っていた。
比較例6
実施例1の方法において、セパレートフィルム(AB)として、シリコーン処理された厚さ38μmの離型用ポリエステルフィルム(E7002;東洋紡績社製)を用いる以外は、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表1に示す。
本比較例6で得られた両面粘着シートは、比較例3同様に、粘着層(C)から、セパレートフィルムを剥離しようとしたが剥離ができず、剥離性に劣るものであった。EB架橋により、架橋接着現象が起こったと推測される。従って、両面粘着シートとして使用できなかった。
比較例7
実施例1の方法において、耐熱水接着性改良層(D)の厚みを0.7μmになるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表1に示す。
本比較例7で得られた両面粘着シートは、粘着層(C)の耐熱水接着性が劣っており、低品質であった。
比較例8
比較例2の方法で、粘着層(C)形成用塗工液の調製を、以下に示したように変更する以外は、比較例2と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表1に示す。
〔粘着層(C)形成用塗工液の調製〕
ポリジメチルシロキサン骨格のシリコーン化合物60部、ポリジメチルアルケニルシロキサン骨格のシリコーン化合物25部およびシリカ15部からなる高透明度型シリコーンゴムコンパウンド(「TSE260−3U」;ゴム硬度30度;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)をトルエンに対する質量比率が23%となるように秤量し、トルエンと共に真空脱泡装置付き撹拌機に投入し、大気圧下、室温で15時間撹拌してトルエンに溶解させた。得られた溶液に、トリメチロールプロパントリメタクリレートを、ゴムコンパウンド100部に対して2部となるように添加し、均一に撹拌した後、真空脱泡装置を駆動し、ゲージ圧が−750mmHgの真空下でさらに20分間撹拌し、脱泡した。なお、上記シリコーンゴムコンパウンドは購入後6ヶ月を経過したものを用いた。
本比較例8で得られた両面粘着シートは、比較例2で得られた両面粘着シートの問題に加えて、上記塗工液の清澄度および保存安定性が劣っていた。
参考例1
実施例1の方法において、耐熱水接着性改良層(D)を形成する塗工液を、有機シリコーン(「KS−744」;信越化学工業社製)8部および触媒「PL−3」(信越化学工業社製)0.06部をトルエン100質量部に溶解した溶液に変更する以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを得た。評価結果を表1に示す。
本参考例1で得られた両面粘着シートは、粘着層(C)と基材フィルム(E)との耐熱水接着性が劣っており、低品質であった。
実施例2
実施例1のポリエステル系基材フィルム(E)の製造の際に、塗工液(D−1)の塗布を取り止める以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル系基材フィルム(E−2)を得た。この基材フィルム(E−2)の両面にコロナ処理を行った。別途、共重合ポリエステル樹脂溶液(「バイロン(登録商標)30SS」;東洋紡績社製)とポリイソシアネート系架橋剤(「コロネート(登録商標)HX」;日本ポリウレタン社製)を、それぞれ固形分比で100:3(部)になるように配合し、耐熱水接着性改良層(D)用の塗工液(D−2)を調製した。この塗工液(D−2)を、コロナ処理後の基材フィルム(E−2)の両面に、コーターを用いて塗布し、乾燥させた。基材フィルム(E−2)の両面に架橋された耐熱水接着性改良層(D−2)が積層された積層体(i)が得られた。この積層体(i)を用いて、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。なお、二軸延伸後の耐熱水接着性改良層(D−2)の厚みは、それぞれ0.31μmであった。評価結果を表2に示す。
本実施例で得られた両面粘着シートは、実施例1で得られた両面粘着シートと同等の特性を有しており、高品質であった。
比較例9
実施例2の塗工液(D−2)の調製の際に、架橋剤の「コロネートHX」の配合を取り止め、「バイロン30SS」のみを用いる以外は、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表2に示す。
本比較例9で得られた両面粘着シートは、粘着層(C)の耐熱水接着性が劣っており、低品質であった。
実施例3〜6
実施例1の耐熱水接着性改良層用塗工液(D−1)を、以下の組成に変更する以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを得た。評価結果を表2に示す。
これらの実施例で得られた両面粘着シートは、実施例1で得られた両面粘着シートと同等の特性を有しており、高品質であった。
〔実施例3の塗工液〕
アクリル系エマルジョン(「ジョンクリル(登録商標)PDX−7630A」;BASFジャパン社製)の固形分100部に対し、前記の「サイメル303」10部と、前記の「キャタリスト600」0.04部を混合して、耐熱水接着性改良層用塗工液(D−3)とした。
〔実施例4の塗工液〕
ポリウレタン系水分散体(「ハイドラン(登録商標)AP40」;大日本インキ工業社製)の固形分100部に対し、オキサゾリン系架橋剤として(「エポクロス(登録商標)WS−700」;日本触媒社製)を固形分で3部添加して、耐熱水接着性改良層用塗工液(D−4)とした。
〔実施例5の塗工液〕
水分散型共重合ポリエステル「バイロナール(登録商標)MD−1200」(東洋紡績社製)7.5部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタンの20%水溶液(「エラストロン(登録商標)H−3」;第一工業製薬社製)11.3部、エラストロン用触媒(「Cat64」;第一工業製薬社製)0.3部、水39.8部およびイソプロピルアルコール37.4部を容器に入れて、よく混合した。
さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤(「メガファック(登録商標)F142D」;大日本インキ化学工業社製)の10%水溶液を0.6部、コロイダルシリカ(「スノーテックス(登録商標)OL」;平均粒径40nm;日産化学工業社製)の20%水分散液を2.3部、乾式法シリカ(「アエロジルOX50」;「アエロジル」はデグサの登録商標;平均粒径200nm;平均一次粒径40nm;日本アエロジル社製)の3.5%水分散液を0.5部添加した。次いで、5%の重曹水溶液で塗工液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過して、耐熱水接着性改良層用塗工液(D−5)とした。
〔実施例6の塗工液〕
自己架橋型ポリエステル樹脂水分散体「バイロナール(登録商標)AGN702」(東洋紡績社製)40部、水24部及びイソプロピルアルコール36部を混合し、さらにアニオン系界面活性剤の10%水溶液0.6部、プロピオン酸1部、コロイダルシリカ粒子(「スノーテックス(登録商標)OL」;平均粒径40nm;日産化学工業社製))の20%水分散液1.8部、乾式法シリカ粒子(「アエロジルOX50」;平均粒径200nm;平均一次粒径40nm;日本アエロジル社製)の4%水分散液1.1部を添加し、耐熱水接着性改良層用塗工液(D−6)とした。
実施例7
実施例1の方法において、セパレートフィルム(AB−1)の製造に用いる離型層用塗工液の高分子ワックスを、アクリル系ワックス剤エマルション(「ST−200」;日本触媒社製)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表2に示す。
本実施例7で得られた両面粘着シートは、実施例1で得られた両面粘着シートと同等の特性を有しており高品質であった。また、実施例1と同様に両面粘着シートの製造時にセパレートフィルムの浮き発生は見られなかった。
実施例8
実施例1の方法において、セパレートフィルム(AB−1)の製造に用いる離型層用塗工液の帯電防止剤をアニオン系帯電防止剤(「TB214」;第一工業製薬社製)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表3に示す。
本実施例8で得られた両面粘着シートは、実施例1で得られた両面粘着シートと同等の特性を有しており高品質であった。また、実施例1と同様に両面粘着シートの製造時にセパレートフィルムの浮き発生は見られなかった。
実施例9
実施例1の方法において、セパレートフィルム(AB−1)の製造に用いる離型層用塗工液の高分子ワックス成分が0.2%、帯電防止剤が0.3%となるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表3に示す。
本実施例9で得られた両面粘着シートは、実施例1で得られた両面粘着シートと同等の特性を有しており高品質であった。また、実施例1と同様に両面粘着シートの製造時にセパレートフィルムの浮き発生は見られなかった。
比較例10
実施例1の方法において、セパレートフィルム(AB−1)の製造に用いる離型層用塗工液の高分子ワックス成分が1.3%、帯電防止剤が1.5%となるように変更する以外は実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。評価結果を表3に示す。
本比較例10で得られた両面粘着シートのセパレートフィルム(AB)の剥離強度は、ほぼ0N/20mmであり、剥離性は極めて良好であったが、ポリエステルフィルム積層体(iv)や両面粘着シートの製造時に、セパレートフィルム(AB)の浮きが発生することがあった。
実施例10
実施例1と同じ方法で調製したセパレートフィルム(AB)の離型層(B)面に、実施例1と同じ方法で調製したシリコーン化合物溶液をロールコーターで、シリコーン化合物溶液を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、続いてオーブンに導入して80℃で乾燥した。未架橋の粘着層(C−1)が積層された積層体(v)を得た。該積層体(v)の(C−1)層面に、実施例1と同じ方法で得た積層体(i)を重ねつつ、圧着ローラ(圧力30N/cm2)で押さえ、連続的に積層した。得られた積層体(vi)をロール状に巻取った。この積層体(vi)をさらに連続的に電子線照射装置に導入し、そのセパレートフィルム(AB)側から、200KV、16Mradのエネルギーで電子線を照射して粘着層の架橋を行い、架橋された粘着層(C)を有する積層体(vi')をロール状に巻取った。
上記積層体(v)のC−1層面に、上記方法で得た積層体(vi')の耐熱水接着性改良層(D)側を重ねつつ、圧着ローラ(圧力30N/cm2)で押さえ、連続的に積層した。得られた積層体(vii)をロール状に巻取った。この積層体(vii)を連続的に電子線照射装置に導入し、その新たに積層したセパレートフィルム(AB)側から、200KV、18Mradのエネルギーで電子線を照射して粘着層の架橋を行った。架橋された粘着層(C)を2層有する積層体(vii')をロール状に巻取った。ここまでの製造工程において、セパレートフィルム(AB)のチャンネリング現象の発生は見られなかった。
本実施例で得られた両面粘着シートは、実施例1で得られた両面粘着シートと同等の特性を有しており高品質であった。
実施例11
実施例1〜10で得られた両面粘着シートを用いて、静電容量方式のタッチパネルのフェイスシートであるオーバレイシートと座標検出シートとを貼り合せた。これらの貼着工程の作業性は良好であった。その上、粘着層(C)はリペアー性に優れているので、貼着ミスが生じても容易にリペアーができた。従って、貼着ミスによる不良品の発生を無くすことができた。特に、本発明の両面粘着シートは、両面の粘着層ともにリペアー性が優れているので、オーバレイシートおよび座標検出シートの両方の貼着ミスによるロスをなくすことができた。なお、実施例7、8および10で得られた両面粘着シートは、両面のセパレートフィルムを剥がした状態で貼り合せた。
実施例12
実施例1〜10で得られた両面粘着シートを用いて、抵抗膜式タッチパネルのタッチパネル部と表示装置との貼り合わせを行った。実施例11と同様に、貼着工程の作業性は良好であった。また、実施例11と同様に、貼着ミスによる表示装置およびパネルのロスを無くすことができた。なお、実施例7、8および10で得られた両面粘着シートは、両面のセパレートフィルムを剥がした状態で貼り合せた。