実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域又はドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域又はソース電極)の間にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様のタッチセンサについて説明する。
本発明の一態様は、トランジスタ及び容量素子を有する、アクティブマトリクス方式のタッチセンサである。該トランジスタ及び該容量素子は電気的に接続する。
具体的には、本発明の一態様は、トランジスタ及び容量素子を有するタッチセンサであり、トランジスタ及び容量素子は電気的に接続し、容量素子は、一対の電極と、誘電体層と、を有し、誘電体層は、一対の電極の間に位置し、一対の電極の一方は、酸化物導電体層を有する、タッチセンサである。
なお、本明細書等において、酸化物導電体層は、キャリア密度が高く低抵抗な酸化物半導体層、導電性を有する酸化物半導体層、又は導電性の高い酸化物半導体層等と言い換えることもできる。
酸化物半導体層は、透光性が高い。また、酸化物半導体層において、酸素欠損を増加させる、又は/及び酸化物半導体層中の水素、水等の不純物を増加させることによって、キャリア密度が高く、低抵抗な酸化物半導体層(以下、酸化物導電体層とも記す)とすることができる。このような酸化物半導体層を、タッチセンサの容量素子の電極として好適に用いることができる。
上記構成において、トランジスタは、酸化物半導体層を有し、酸化物導電体層及び酸化物半導体層は、同一表面上に位置することが好ましい。また、該酸化物半導体層はチャネル領域を有することが好ましい。
トランジスタの半導体層と容量素子の電極を同一工程で成膜することで、少ない工程数でタッチセンサを作製することができ、好ましい。
なお、容量素子の電極と同一工程で成膜する層はトランジスタの半導体層に限られない。例えば、トランジスタのゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、又は配線等に透光性の高い材料を用い、容量素子の電極を同一工程で作製してもよい。
以下では、本発明の一態様のタッチセンサの構成と作製方法について例示する。
<タッチセンサの構成例1>
図1(A)に、本発明の一態様のタッチセンサが有するトランジスタ102及び容量素子105を示す。トランジスタ102及び容量素子105は、例えば、タッチセンサのセンサ部に設けられる。本発明の一態様のタッチセンサは、ボトムゲート構造のトランジスタを有する。図1(A)では、トランジスタ102及び容量素子105は、基板302上に絶縁膜338を介して形成されている。
トランジスタ102は、ゲート電極として機能する導電膜304と、導電膜304上のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305と、絶縁膜305上の酸化物半導体層308aと、酸化物半導体層308a上のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310a、310bと、を有する。また、トランジスタ102上、より詳しくは、酸化物半導体層308a、導電膜310a、310b上には、絶縁膜312、314が保護膜として設けられている。また、絶縁膜314上には、絶縁膜348が設けられている。
容量素子105は、一対の電極間に誘電体層を有する。容量素子105は、該一対の電極の一方として導電膜350を有し、該一対の電極の他方として酸化物導電体層308bを有する。また、容量素子105の誘電体層は、絶縁膜314、348である。すなわち、絶縁膜314、348は、トランジスタ102と容量素子105で共通して設けられている。なお、図1(A)においては、誘電体層を、絶縁膜314、348の積層構造を図示しているが、これに限定されず、単層構造又は3層以上の積層構造としてもよい。
酸化物導電体層308bは、酸化物半導体層308aと同一工程で成膜され、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305上に設けられている。また、トランジスタ102のドレイン電極として機能する導電膜310bは、酸化物導電体層308bと電気的に接続する。ここでは、導電膜310bの一部が酸化物導電体層308bに接して設けられている例を示したが、他の導電膜を介して、導電膜310bと酸化物導電体層308bとが電気的に接続されていてもよい。また、導電膜310bは、導電膜350と電気的に接続する構成であってもよい。
なお、本発明の一態様のタッチセンサが有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、スタガ型のトランジスタとしてもよいし、逆スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型又はボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、酸化物半導体、シリコン、ゲルマニウム等が挙げられる。
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
酸化物半導体層308aと、酸化物導電体層308bとは、同一の成膜工程及び同一のエッチング工程を経て、それぞれ島状に加工された層である。酸化物半導体は、膜中の酸素欠損又は/及び膜中の水素、水等の不純物濃度によって、抵抗を制御することができる半導体材料である。そのため、それぞれ島状に加工された酸化物半導体層へ酸素欠損又は/及び不純物濃度が増加する処理、又は酸素欠損又は/及び不純物濃度が低減する処理を選択することによって、同一工程で形成された酸化物半導体層308a及び酸化物導電体層308bの有する抵抗率を制御することができる。
具体的には、容量素子の電極として機能する酸化物導電体層308bとなる島状の酸化物半導体層にプラズマ処理を行い、酸化物半導体層中の酸素欠損を増加させる、又は/及び酸化物半導体層中の水素、水等の不純物を増加させることによって、キャリア密度が高く、低抵抗な酸化物半導体層とすることができる。また、酸化物半導体層に水素を含む絶縁膜を接して形成し、該水素を含む絶縁膜から酸化物半導体層に水素を拡散させることによって、キャリア密度が高く、低抵抗な酸化物半導体層とすることができる。
一方、トランジスタ102上には、酸化物半導体層308aが上記プラズマ処理に曝されないように、絶縁膜312を設ける。また、絶縁膜312を設けることによって、酸化物半導体層308aが水素を含む絶縁膜314と接しない構成とする。絶縁膜312として、酸素を放出することが可能な絶縁膜を用いることで、酸化物半導体層308aに酸素を供給することができる。酸素が供給された酸化物半導体層308aは、膜中又は界面の酸素欠損が低減され高抵抗な酸化物半導体となる。なお、酸素を放出することが可能な絶縁膜として、例えば、酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜を用いることができる。
また、酸化物導電体層308bに行うプラズマ処理としては、代表的には、希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe)、リン、ボロン、水素、及び窒素の中から選ばれた一種を含むガスを用いたプラズマ処理が挙げられる。より具体的には、Ar雰囲気下でのプラズマ処理、Arと水素の混合ガス雰囲気下でのプラズマ処理、アンモニア雰囲気下でのプラズマ処理、Arとアンモニアの混合ガス雰囲気下でのプラズマ処理、又は窒素雰囲気下でのプラズマ処理などが挙げられる。
上記プラズマ処理によって、酸化物導電体層308bは、酸素が脱離した格子(又は酸素が脱離した部分)に酸素欠損が形成される。当該酸素欠損は、キャリアを発生する要因になり得る場合がある。また、酸化物導電体層308bの近傍、より具体的には、酸化物導電体層308bの下側又は上側に接する絶縁膜から水素が供給され、上記酸素欠損に水素が入ると、キャリアである電子を生成する場合がある。したがって、プラズマ処理によって酸素欠損が増加された酸化物導電体層308bは、酸化物半導体層308aよりもキャリア密度が高い。
一方、酸素欠損が低減され、水素濃度が低減された酸化物半導体層308aは、高純度真性化、又は実質的に高純度真性化された酸化物半導体層といえる。ここで、実質的に真性とは、酸化物半導体のキャリア密度が、1×1017/cm3未満であること、好ましくは1×1015/cm3未満であること、さらに好ましくは1×1013/cm3未満であることを指す。または、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性又は実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)になりやすい。また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体層308aは、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度を低減することができる。
また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体層308aは、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×106μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。したがって、酸化物半導体層308aにチャネル領域が形成されるトランジスタ102は、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
また、図1(A)においては、絶縁膜312は、容量素子の電極として機能する酸化物導電体層308bと重なる領域が選択的に除去されるように設けられている。また、絶縁膜314は、酸化物導電体層308bと接して形成した後、酸化物導電体層308b上から除去されてもよい。絶縁膜314として、例えば、水素を含む絶縁膜、換言すると水素を放出することが可能な絶縁膜、代表的には窒化シリコン膜を用いることで、酸化物導電体層308bに水素を供給することができる。水素を放出することが可能な絶縁膜は、膜中の含有水素濃度が1×1022atoms/cm3以上であると好ましい。このような絶縁膜を酸化物導電体層308bに接して形成することで、酸化物導電体層308bに効果的に水素を含有させることができる。このように、上述したプラズマ処理と合わせて、酸化物半導体層(又は酸化物導電体層)に接する絶縁膜の構成を変えることによって、酸化物半導体層(又は酸化物導電体層)の抵抗を任意に調整することができる。
酸化物導電体層308bに含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸素が脱離した格子(又は酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある。したがって、水素が含まれている酸化物導電体層308bは、酸化物半導体層308aよりもキャリア密度が高い。
トランジスタ102のチャネル領域が形成される酸化物半導体層308aは水素ができる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体層308aにおいて、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とする。
一方、容量素子の電極として機能する酸化物導電体層308bは、酸化物半導体層308aよりも水素濃度又は/及び酸素欠損量が多く、低抵抗化されている。
酸化物半導体層308a及び酸化物導電体層308bは、代表的には、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−M−Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf)等の金属酸化物で形成される。なお、酸化物半導体層308a及び酸化物導電体層308bは、透光性を有する。
なお、酸化物半導体層308aがIn−M−Zn酸化物の場合、In及びMの和を100atomic%としたとき、Inが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、又はInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
酸化物半導体層308aは、エネルギーギャップが2eV以上、又は2.5eV以上、又は3eV以上である。
酸化物半導体層308aの厚さは、3nm以上200nm以下、又は3nm以上100nm以下、又は3nm以上60nm以下とすることができる。
酸化物半導体層308aがIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2等が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体層308aの原子数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
なお、図1(A)に示すタッチセンサのその他の構成要素については、タッチセンサの作製方法の説明等において、詳述する。
また、酸素欠損が形成された酸化物半導体に水素を添加すると、酸素欠損サイトに水素が入り伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、酸化物半導体は、導電性が高くなり、導電体化する。導電体化された酸化物半導体を酸化物導電体ということができる。一般に、酸化物半導体は、エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物半導体である。したがって、該ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光性を有する。
ここで、酸化物半導体で形成される膜(以下、酸化物半導体膜(OS)という。)及び酸化物導電体で形成される膜(以下、酸化物導電体膜(OC)という。)それぞれにおける、抵抗率の温度依存性について、図2を用いて説明する。図2において、横軸に測定温度を示し、縦軸に抵抗率を示す。また、酸化物半導体膜(OS)の測定結果を丸印で示し、酸化物導電体膜(OC)の測定結果を四角印で示す。
なお、酸化物半導体膜(OS)を含む試料は、ガラス基板上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により厚さ35nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成し、原子数比がIn:Ga:Zn=1:4:5のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により厚さ20nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理し、さらにプラズマCVD法で酸化窒化シリコン膜を形成して、作製された。
また、酸化物導電体膜(OC)を含む試料は、ガラス基板上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理し、プラズマCVD法で窒化シリコン膜を形成して、作製された。
図2からわかるように、酸化物導電体膜(OC)における抵抗率の温度依存性は、酸化物半導体膜(OS)における抵抗率の温度依存性より小さい。代表的には、80K以上290K以下における酸化物半導体膜(OC)の抵抗率の変化率は、±20%未満である。または、150K以上250K以下における抵抗率の変化率は、±10%未満である。即ち、酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェルミ準位とが一致又は略一致していると推定される。このため、酸化物導電体膜を、容量素子の電極等に用いることが可能である。
<タッチセンサの変形例1>
本発明の一態様のタッチセンサは、可撓性を有する。
作製基板上に被剥離層を形成した後、被剥離層を作製基板から剥離して別の基板に転置することができる。この方法によれば、例えば、耐熱性の高い作製基板上で形成した被剥離層を、耐熱性の低い基板に転置することができる。このため、被剥離層の作製温度が、耐熱性の低い基板によって制限されない。
例えば、作製基板上にトランジスタ102及び容量素子105等を形成した後、これらの素子を作製基板から剥離する。そして、接着剤を用いて、可撓性基板にこれらの素子を貼り合わせ、転置することで、図1(B)に示すタッチセンサを作製できる。図1(B)において、トランジスタ102及び容量素子105は、可撓性基板392及び可撓性基板398の間に位置する。可撓性基板392及び絶縁膜338は、接着層394により貼り合わされている。可撓性基板398、導電膜350、及び絶縁膜348は、接着層396により貼り合わされている。
また、図1(B)には、タッチセンサの端子部、及びトランジスタ103を有する駆動回路部の構成例を示す。センサ部に含まれるトランジスタ102及び容量素子105の構成は図1(A)と同様のため、説明を省略する。
駆動回路部が有するトランジスタ103は、絶縁膜312上に導電膜303を有する点でトランジスタ102と異なる。導電膜303は第2のゲート電極として機能することができる。トランジスタ103は、トランジスタ102に比べて電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。この結果、高速動作が可能な駆動回路部を作製することができる。また、駆動回路部の占有面積の小さいタッチセンサを作製することができる。なお、ここでは、駆動回路部とセンサ部とで異なる構造のトランジスタを用いる例を示したが、駆動回路部が有するトランジスタと、センサ部が有するトランジスタは同じ構造であってもよい。また、駆動回路部が有する複数のトランジスタは、すべて同じ構造であってもよく、二種以上の構造であってもよい。また、センサ部が有する複数のトランジスタは、すべて同じ構造であってもよく、二種以上の構造であってもよい。また、駆動回路部に1つのゲート電極を有するトランジスタを用いてもよいし、センサ部に2つのゲート電極を有するトランジスタを用いてもよい。
トランジスタ103の第2のゲート電極である導電膜303と容量素子105の電極である導電膜350は、同一表面上に位置することが好ましい。
トランジスタの電極と容量素子の電極を同一工程で成膜することで、少ない工程数でタッチセンサを作製することができ、好ましい。
導電膜346は、駆動回路部に外部からの信号や電位を伝達する外部入力端子と電気的に接続する。ここでは、外部入力端子としてFPC808(Flexible Printed Circuit)を設ける例を示している。工程数の増加を防ぐため、導電膜346は、センサ部や駆動回路部に用いる電極や配線と同一の材料、同一の工程で作製することが好ましい。ここでは、導電膜346を、トランジスタ102、103を構成する電極と同一の材料、同一の工程で作製した例を示す。
接続体825はFPC808に接続している。接続体825を介してFPC808と導電膜346は電気的に接続する。
本発明の一態様のタッチセンサにおいて、可撓性基板392側から外光が入射する場合、センサ部に設けられるトランジスタ102の酸化物半導体層308aに光が当たらないよう、導電膜304に遮光性の材料を用いることが好ましい。また、酸化物半導体層308aの底面(絶縁膜305と接する面)全体が導電膜304と重なることが好ましい。なお、可撓性基板392側から外光が入射しない場合などはこれに限られず、酸化物半導体層308aと導電膜304の平面形状の大小関係は問わない。また、駆動回路部のトランジスタ103においても、酸化物半導体層308aの底面全体が導電膜304と重なっていてもよい。
<タッチセンサの構成例2>
図3(A)に、本発明の一態様のタッチセンサが有するトランジスタ104、106、及び容量素子105を示す。本発明の一態様のタッチセンサは、トップゲート構造のトランジスタを有する。トランジスタ104及び容量素子105は、例えば、タッチセンサのセンサ部に設けられる。トランジスタ106は、例えば、タッチセンサの駆動回路部に設けられる。
図3(B)はトランジスタ104の上面図であり、図3(A)に示すトランジスタ104は、図3(B)の一点鎖線X1−X2間の断面図に相当する。図3(C)はトランジスタ106の上面図であり、図3(A)に示すトランジスタ106は、図3(C)の一点鎖線X3−X4間の断面図に相当する。また、図3(E)は、図3(C)の一点鎖線Y3−Y4間の断面図に相当する。なお、図3(A)(E)では、基板等の図示を省略している。また、図3(B)(C)では、明瞭化のため、基板や絶縁膜等の図示を省略している。また、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y3−Y4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
図3(A)(B)に示すトランジスタ104は、絶縁表面上の酸化物半導体層308aと、酸化物半導体層308a上の絶縁膜305と、絶縁膜305を介して酸化物半導体層308aと重なる導電膜304と、酸化物半導体層308a、絶縁膜305、及び導電膜304を覆う絶縁膜312と、絶縁膜312に設けられる開口部を介して、酸化物半導体層308aに接続される導電膜310a、310bと、を有する。なお、トランジスタ104上には、絶縁膜312、導電膜310a、及び導電膜310bを覆う絶縁膜314、348を設けてもよい。
トランジスタ104において、導電膜304は、ゲート電極(トップゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電膜310aは、ソース電極及びドレイン電極の一方の電極としての機能を有し、導電膜310bは、ソース電極及びドレイン電極の他方の電極としての機能を有する。また、トランジスタ104において、絶縁膜338は、酸化物半導体層308aの下地膜としての機能を有し、絶縁膜305は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
容量素子105は、該一対の電極の一方として導電膜350を有し、該一対の電極の他方として酸化物導電体層308bを有する。また、容量素子105の誘電体層は、絶縁膜314、348である。すなわち、絶縁膜314、348は、トランジスタ104と容量素子105で共通して設けられている。図3(A)では、導電膜310bと導電膜350とが接する例を示す。導電膜310bと導電膜350は、他の導電膜を介して電気的に接続していてもよい。
酸化物半導体層308aと、酸化物導電体層308bとは、同一の成膜工程及び同一のエッチング工程を経て、それぞれ島状に加工された層である。トランジスタの半導体層と容量素子の電極を同一工程で成膜することで、少ない工程数でタッチセンサを作製することができ、好ましい。これにより、製造コストの低減が可能である。
次に、トランジスタ104が有する酸化物半導体層308aの詳細について、以下説明を行う。
トランジスタ104の酸化物半導体層308aにおいて、導電膜304と重ならない領域には、酸素欠損を形成する元素を有する。以下、酸素欠損を形成する元素を、不純物元素として説明する。不純物元素の代表例としては、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、希ガス元素等がある。希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンがある。
不純物元素が酸化物半導体膜に添加されると、酸化物半導体膜中の金属元素及び酸素の結合が切断され、酸素欠損が形成される。または、不純物元素が酸化物半導体膜に添加されると、酸化物半導体膜中の金属元素と結合していた酸素が不純物元素と結合し、金属元素から酸素が脱離され、酸素欠損が形成される。これらの結果、酸化物半導体膜においてキャリア密度が増加し、導電性が高くなる。
酸化物半導体層308aのチャネル長方向の断面形状において、酸化物半導体膜のキャリア密度が増加し導電性が高くなる領域(以下、低抵抗領域という)が形成される。また、酸化物半導体層308a中に形成される低抵抗領域は、複数の構造があり、一例を図3(D)に示す。なお、図3(D)において、チャネル長Lは、一対の低抵抗領域に挟まれた領域の長さである。
図3(D)に示すように、酸化物半導体層308aは、導電膜304と重なる領域に形成されるチャネル領域332aと、チャネル領域332aを挟み、且つ不純物元素を含む領域、すなわち低抵抗領域332b、332cとを有する。なお、図3(D)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域332a及び低抵抗領域332b、332cの境界が、絶縁膜305を介して、導電膜304の下端部と、一致又は概略一致している。すなわち、上面形状において、チャネル領域332a及び低抵抗領域332b、332cの境界が、導電膜304の下端部と、一致又は概略一致している。
また、酸化物半導体層308aは、絶縁膜305及び導電膜304と重ならない領域の膜厚が、絶縁膜305及び導電膜304と重なる領域の膜厚よりも薄い領域を有する場合がある(図7(G)等参照)。該薄い領域は、例えば、絶縁膜305及び導電膜304と重なる領域の酸化物半導体膜の膜厚よりも、厚さが0.1nm以上5nm以下薄い。
なお、酸化物半導体層308a中の低抵抗領域332b、332cは、ソース領域及びドレイン領域として機能する。また、低抵抗領域332b、332cには不純物元素が含まれる。
不純物元素が希ガス元素であって、酸化物半導体層308aがスパッタリング法で形成される場合、チャネル領域332a及び低抵抗領域332b、332cは、それぞれ希ガス元素を含む。なお、チャネル領域332aと比較して、低抵抗領域332b、332cの方が希ガス元素の濃度が高い。
これは、酸化物半導体層308aがスパッタリング法で形成される場合、スパッタリングガスとして希ガスを用いるため、酸化物半導体層308aに希ガスが含まれること、並びに低抵抗領域332b、332cにおいて、酸素欠損を形成するために、意図的に希ガスが添加されることが原因である。
また、不純物元素が、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン、又は、塩素の場合、低抵抗領域332b、332cは、上記の不純物元素を有する。このため、チャネル領域332aと比較して、低抵抗領域332b、332cの方が上記の不純物元素の濃度が高い。なお、低抵抗領域332b、332cにおいて、二次イオン質量分析法により得られる不純物元素の濃度は、5×1018atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下、又は1×1019atoms/cm3以上1×1021atoms/cm3以下、又は5×1019atoms/cm3以上5×1020atoms/cm3以下とすることができる。
また、不純物元素が、水素の場合、チャネル領域332aと比較して、低抵抗領域332b、332cの方が水素の濃度が高い。なお、低抵抗領域332b、332cにおいて、二次イオン質量分析法により得られる水素の濃度は、8×1019atoms/cm3以上、又は1×1020atoms/cm3以上、又は5×1020atoms/cm3以上とすることができる。
低抵抗領域332b、332cは不純物元素を有するため、酸素欠損が増加し、キャリア密度が増加する。この結果、低抵抗領域332b、332cは、導電性が高くなる。
なお、不純物元素が、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン、又は塩素の一以上と、希ガスの一以上の場合であってもよい。この場合、低抵抗領域332b、332cにおいて、希ガスにより形成された酸素欠損と、添加された水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン、又は塩素の一以上との相互作用により、低抵抗領域332b、332cは、導電性がさらに高まる場合がある。
低抵抗領域332b、332cは、酸化物導電体からなる(又は酸化物導電体を含む)領域であるといえる。酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェルミ準位とが一致又は略一致していると推定される。このため、酸化物導電体とソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜との接触はオーミック接触であり、酸化物導電体とソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜との接触抵抗を低減できる。
酸化物半導体層308aであって、特にチャネル領域332aにおいて、不純物元素を低減することで、酸化物半導体膜のキャリア密度を低減することができる。このため、酸化物半導体層308aであって、特にチャネル領域332aにおいては、キャリア密度を1×1017個/cm3以下、又は1×1015個/cm3以下、又は1×1013個/cm3以下、又は1×1011個/cm3以下とすることができる。
酸化物半導体層308aとして、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
また、酸化物半導体層308aは、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、後述する微結晶構造、又は非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC−OSは最も欠陥準位密度が低い。
なお、酸化物半導体層308aが、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有する単層構造の場合がある。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上が積層された構造の場合がある。
なお、酸化物半導体層308aにおいて、チャネル領域332aと低抵抗領域332b、332cとの結晶性が異なる場合がある。具体的には、酸化物半導体層308aにおいて、低抵抗領域332b、332cよりもチャネル領域332aの方が、結晶性が高い。これは、低抵抗領域332b、332cに不純物元素が添加された際に、低抵抗領域332b、332cにダメージが入ってしまい、結晶性が低下するためである。
本実施の形態に示すトランジスタ104は、チャネル領域332aがソース領域及びドレイン領域として機能する低抵抗領域332bと低抵抗領域332cに挟まれる構造である。したがって、トランジスタ104は、オン電流が大きく、電界効果移動度が高い。また、トランジスタ104において、導電膜304をマスクとして、不純物元素が酸化物半導体層308aに添加される。すなわち、セルフアラインで低抵抗領域を形成することができる。
また、トランジスタ104は、ゲート電極として機能する導電膜304と、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310a、310bとが重ならない構成である。したがって、導電膜304と、導電膜310a、310bとの間の寄生容量を低減することが可能である。この結果、基板として大面積基板を用いた場合、導電膜304と、導電膜310a、310bと、における信号遅延を低減することが可能である。
図3(A)(C)(E)に示すトランジスタ106は、絶縁膜338上の導電膜303と、絶縁膜338及び導電膜303上の絶縁膜301と、絶縁膜301を介して導電膜303と重なる酸化物半導体層308aと、酸化物半導体層308a上の絶縁膜305と、絶縁膜305を介して酸化物半導体層308aと重なる導電膜304と、酸化物半導体層308a、絶縁膜305、及び導電膜304を覆う絶縁膜312と、絶縁膜312に設けられる開口部140a、140bを介して、酸化物半導体層308aに接続される導電膜310a、310bと、を有する。なお、トランジスタ106上には、絶縁膜312、導電膜310a、及び導電膜310b、を覆う絶縁膜314、348を設けてもよい。
トランジスタ106において、導電膜303は、第1のゲート電極(ボトムゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電膜304は、第2のゲート電極(トップゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電膜310aは、ソース電極及びドレイン電極の一方の電極としての機能を有し、導電膜310bは、ソース電極及びドレイン電極の他方の電極としての機能を有する。また、トランジスタ106において、絶縁膜301は、第1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜305は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
なお、図3(A)(C)(E)に示すトランジスタ106は、先に説明したトランジスタ104と異なり、酸化物半導体層308aの上下にゲート電極として機能する導電膜を有する構造である。トランジスタ106に示すように、本発明の一態様のタッチセンサが有するトランジスタには、2つ以上のゲート電極を設けてもよい。
図3(E)に示すように、第2のゲート電極として機能する導電膜304は、絶縁膜301及び絶縁膜305に設けられる開口部139において、第1のゲート電極として機能する導電膜303に接続される。よって、導電膜304と導電膜303には、同じ電位が与えられる。なお、開口部139を設けずに、導電膜304と導電膜303に異なる電位を与えてもよい。
また、図3(E)に示すように、酸化物半導体層308aは、第1のゲート電極として機能する導電膜303と、第2のゲート電極として機能する導電膜304のそれぞれと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。第2のゲート電極として機能する導電膜304のチャネル幅方向の長さは、酸化物半導体層308aのチャネル幅方向の長さよりも長く、酸化物半導体層308aのチャネル幅方向全体は、絶縁膜305を介して導電膜304に覆われている。また、第2のゲート電極として機能する導電膜304と第1のゲート電極として機能する導電膜303とは、絶縁膜305に設けられる開口部139において接続されるため、酸化物半導体層308aのチャネル幅方向の側面の一方は、絶縁膜305を介して第2のゲート電極として機能する導電膜304と対向している。
別言すると、トランジスタ106のチャネル幅方向において、第1のゲート電極として機能する導電膜303及び第2のゲート電極として機能する導電膜304は、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜301、及び第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305に設けられる開口部において接続すると共に、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜301、及び第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305を介して酸化物半導体層308aを囲む構成である。
このような構成を有することで、トランジスタ106に含まれる酸化物半導体層308aを、第1のゲート電極として機能する導電膜303及び第2のゲート電極として機能する導電膜304の電界によって電気的に囲むことができる。トランジスタ106のように、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜を電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をsurrounded channel(s−channel)構造と呼ぶことができる。
トランジスタ106は、s−channel構造を有するため、第1のゲート電極として機能する導電膜303、又は第2のゲート電極として機能する導電膜304によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導体層308aに印加することができるため、トランジスタ106の電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタ106を微細化することが可能となる。また、トランジスタ106は、第1のゲート電極として機能する導電膜303及び第2のゲート電極として機能する導電膜304によって酸化物半導体層308aが囲まれた構造を有するため、トランジスタ106の機械的強度を高めることができる。
なお、トランジスタ106のチャネル幅方向において、開口部139が形成されていない酸化物半導体層308aの側面に、開口部139と異なる開口部を形成してもよい。
<タッチセンサの変形例2>
本発明の一態様のタッチセンサは、積層構造の酸化物半導体層を有する。
図8(A)に示すタッチセンサは、トランジスタ102に用いる酸化物半導体層308aを、酸化物半導体層307a及び酸化物半導体層309aの積層構造にした例である。また、図8(A)に示すタッチセンサは、容量素子105に用いる酸化物導電体層308bを、酸化物半導体層307b及び酸化物半導体層309bの積層構造にした例である。したがって、その他の構成は、図1(A)に示すタッチセンサと同じであり、先の説明を参酌することができる。なお、酸化物半導体層307b及び酸化物半導体層309bも、酸化物導電体層と言い換えることができる。よって、図8(A)では図1(A)等の酸化物導電体層308bと同じハッチングで示す。なお、図8(A)では基板等の図示を省略している。
酸化物半導体層307a、307b(以下、明細書において酸化物半導体層307とも表記する)と、酸化物半導体層309a、309b(以下、明細書において酸化物半導体層309とも表記する)と、は、少なくとも一の同じ構成元素を有する金属酸化物を用いることが好ましい。または、酸化物半導体層307と酸化物半導体層309の構成元素を同一とし、両者の組成を異ならせてもよい。
酸化物半導体層307がIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf)の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=5:5:6(1:1:1.2)、In:M:Zn=3:1:2が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体層307の原子数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
なお、酸化物半導体層307がIn−M−Zn酸化物であるとき、In及びMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
酸化物半導体層307は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
酸化物半導体層307の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
酸化物半導体層309は、代表的には、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf)であり、且つ酸化物半導体層307よりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体層309の伝導帯の下端のエネルギーと、酸化物半導体層307の伝導帯の下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、又は0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、又は0.4eV以下である。即ち、酸化物半導体層309の電子親和力と、酸化物半導体層307の電子親和力との差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、又は0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、又は0.4eV以下である。
酸化物半導体層309が前述の元素MをInより高い原子数比で有することで、以下の効果を有する場合がある。(1)酸化物半導体層309のエネルギーギャップを大きくする。(2)酸化物半導体層309の電子親和力を小さくする。(3)外部からの不純物を遮蔽する。(4)酸化物半導体層307と比較して、絶縁性が高くなる。また、元素Mは酸素との結合力が強い金属元素であるため、MをInより高い原子数比で有することで、酸素欠損が生じにくくなる。
酸化物半導体層309がIn−M−Zn酸化物である場合、In及びMの和を100atomic%としたとき、好ましくは、Inが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。
また、酸化物半導体層307、及び酸化物半導体層309がIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf)の場合、酸化物半導体層307と比較して、酸化物半導体層309に含まれるMの原子数比が大きく、代表的には、酸化物半導体層307に含まれる上記原子と比較して、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比である。
また、酸化物半導体層309をIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体層307をIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きく、好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも1.5倍以上である。さらに好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも2倍以上大きく、より好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも3倍以上大きい。このとき、酸化物半導体層において、y2がx2以上であると、当該酸化物半導体層を用いたトランジスタに安定した電気特性を付与できるため好ましい。ただし、y2がx2の3倍以上になると、当該酸化物半導体層を用いたトランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y2はx2の3倍未満であると好ましい。
酸化物半導体層309がIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、M>In、更にはZn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:3、In:Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:3:5、In:Ga:Zn=1:3:6、In:Ga:Zn=1:3:7、In:Ga:Zn=1:3:8、In:Ga:Zn=1:3:9、In:Ga:Zn=1:3:10、In:Ga:Zn=1:6:4、In:Ga:Zn=1:6:5、In:Ga:Zn=1:6:6、In:Ga:Zn=1:6:7、In:Ga:Zn=1:6:8、In:Ga:Zn=1:6:9、In:Ga:Zn=1:6:10が好ましい。なお、上記スパッタリングターゲットを用いて成膜された酸化物半導体層307、及び酸化物半導体層309に含まれる金属元素の原子数比はそれぞれ、誤差として上記スパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
また、酸化物半導体層309は、酸化ガリウムを用いて形成することで、トランジスタのリーク電流が低減できる。なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体層307のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
酸化物半導体層309は、後に形成する絶縁膜312又は絶縁膜314を形成する際の、酸化物半導体層307へのダメージ緩和膜としても機能する。酸化物半導体層309の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。
酸化物半導体層307aに第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体層307aにおいて酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸化物半導体層307aにおけるシリコンや炭素の濃度、又は酸化物半導体層309aと、酸化物半導体層307aとの界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体層307aにおいて、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、酸化物半導体層307aのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。
また、酸化物半導体層307aに窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、二次イオン質量分析法により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
なお、図8(A)に示すトランジスタでは、ゲート電極として機能する導電膜304側に位置し、キャリアの主な移動経路となる酸化物半導体層307aと絶縁膜312との間に、酸化物半導体層309aが設けられている。これにより、酸化物半導体層309aと絶縁膜312の間において、不純物及び欠陥によりトラップ準位が形成されても、当該トラップ準位と酸化物半導体層307aとの間には隔たりがある。この結果、酸化物半導体層307aを流れる電子がトラップ準位に捕獲されにくく、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に、電界効果移動度を高めることができる。また、トラップ準位に電子が捕獲されると、該電子がマイナスの固定電荷となってしまう。この結果、トランジスタのしきい値電圧が変動してしまう。しかしながら、酸化物半導体層307aとトラップ準位との間に隔たりがあるため、トラップ準位における電子の捕獲を低減することが可能であり、しきい値電圧の変動を低減することができる。
なお、酸化物半導体層307a及び酸化物半導体層309aは、各層を単に積層するのではなく連続接合(ここでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化する構造)が形成されるように作製する。すなわち、各膜の界面に、トラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が存在しないような積層構造とする。仮に、積層された酸化物半導体層307a及び酸化物半導体層309aの間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結合して、消滅してしまう。
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体層にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(例えば、5×10−7Pa以上1×10−4Pa以下まで)することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体、特に炭素又は水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
ここで、図8(A)に示すトランジスタに含まれる積層構造のバンド構造について、図8(B)を用いて説明する。
図8(B)は、図8(A)に示すトランジスタに含まれるバンド構造の一部を模式的に示している。ここでは、絶縁膜305及び絶縁膜312として(絶縁膜305又は/及び絶縁膜312が積層構造の場合は、酸化物半導体層に接する層として)酸化シリコン層を設けた場合について説明する。なお、図8(B)に表すEcI1は絶縁膜305として用いる酸化シリコン層の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体層307aの伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS2は酸化物半導体層309aの伝導帯下端のエネルギーを示し、EcI2は絶縁膜312として用いる酸化シリコン層の伝導帯下端のエネルギーを示す。
図8(B)に示すように、酸化物半導体層307a及び酸化物半導体層309aにおいて、伝導帯下端のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化するともいうことができる。これは、酸化物半導体層307aと酸化物半導体層309aが共通の元素を含み、酸化物半導体層307a及び酸化物半導体層309aの間で、酸素が相互に移動することで混合層が形成されるためであるということができる。
図8(B)より、酸化物半導体層308aにおいて酸化物半導体層307aがウェル(井戸)となり、酸化物半導体層308aを用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体層307aに形成されることがわかる。なお、酸化物半導体層308aは、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、酸化物半導体層307aと酸化物半導体層309aとが連続接合している、ともいえる。
なお、図8(B)に示すように、酸化物半導体層309aと、絶縁膜312との界面近傍には、絶縁膜312の構成元素であるシリコン又は炭素等の不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得るものの、酸化物半導体層309aが設けられることにより、酸化物半導体層307aと該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、EcS1とEcS2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体層307aの電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲されることで、絶縁膜界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがって、EcS1とEcS2とのエネルギー差を、0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電圧の変動が低減され、安定した電気特性となるため好適である。
また、図8(A)に示す構成においては、容量素子105の一方の電極は、酸化物半導体層307b及び酸化物半導体層309bの積層構造である。該積層構造は、酸化物半導体層309bに接する絶縁膜からの水素の拡散、又はプラズマ処理による不純物の注入又は/及び拡散によって、酸化物半導体層307bと酸化物半導体層309bの積層構造の導電性が向上する。したがって、酸化物半導体層307b、309bは、容量素子105の1つの電極としての機能を有する。
<タッチセンサの作製方法例1>
図1(A)に示すタッチセンサの作製方法の一例について、図4及び図5を用いて説明する。
なお、本発明の一態様のタッチセンサが有するトランジスタ及び容量素子を構成する膜(絶縁膜、酸化物半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD、Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、有機金属化学堆積(MOCVD、Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法や原子層成膜(ALD、Atomic Layer Deposition)法を使ってもよい。
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧又は減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、基板近傍又は基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧又は減圧下とし、反応のための原料ガスが順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行う。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブともよぶ。)を切り替えて2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスと同時又はその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の単原子層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の単原子層が第1の単原子層上に積層されて薄膜が形成される。
このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なトランジスタを作製する場合に適している。
まず、基板302上に絶縁膜338を形成し、絶縁膜338上に導電膜304を形成し、導電膜304上に絶縁膜305を形成する。その後、絶縁膜305上に酸化物半導体層308を形成する(図4(A))。
基板302としては、様々な基板を用いることができ、特定のものに限定されることはない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。特に、半導体基板、単結晶基板、又はSOI基板などを用いてトランジスタ及び容量素子を製造することによって、特性、サイズ、又は形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトランジスタ及び容量素子を製造することができる。このようなトランジスタ及び容量素子によって回路を構成すると、回路の低消費電力化、又は回路の高集積化を図ることができる。
また、基板302として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ及び容量素子を形成してもよい。または、基板302とトランジスタ及び容量素子の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上にトランジスタ等の機能素子を一部あるいは全部完成させた後、基板302より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ及び容量素子は、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
トランジスタ及び容量素子が転載される基板の一例としては、上述したトランジスタ及び容量素子を形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)もしくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、又は薄型化を図ることができる。
トランジスタの特性安定化等のため、下地膜として機能する絶縁膜338を設けることが好ましい。絶縁膜338は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ガリウム膜、又はGa−Zn酸化物膜などの無機絶縁膜を用い、単層で又は積層して作製することができる。絶縁膜338はスパッタリング法、CVD法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD法など)、ALD法、蒸着法、PLD法、塗布法、印刷法等を用いて形成できる。
導電膜304は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、ニッケル、鉄、コバルト、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一又は複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、導電膜304としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイド等のシリサイド膜を用いてもよい。導電膜304は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。導電膜304は、テーパ形状としてもよく、例えばテーパ角を15°以上70°以下とすればよい。ここで、テーパ角とは、テーパ形状を有する層の側面と、当該層の底面との間の角度を指す。
なお、導電膜304に外光が照射される場合は、外光の反射を防ぐため、反射性の低い膜や光を吸収する膜を導電膜304の光が照射される面側に設けてもよい。なお、本発明の一態様において、他の導電膜についても、外光が照射される場合は、外光の反射を防ぐため、反射性の低い膜や光を吸収する膜を導電膜の光が照射される面側に設けてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルを用いてもよい。例えば、窒化チタン膜上に銅膜を積層する積層構造としてもよい。
導電膜304としては、例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、マンガンを含む銅膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜又は窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層し、さらにその上にマンガンを含む銅膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の一又は複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
また、導電膜304は、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、ITO)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
なお、後述の導電膜310a、310bも同様の材料を用いて形成すればよい。
絶縁膜305は、トランジスタ102のゲート絶縁膜に相当する絶縁膜である。絶縁膜305としては、プラズマCVD法、スパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、酸化ネオジム膜、又はGa−Zn酸化物を一種以上含む絶縁膜を用いることができる。なお、絶縁膜305は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
なお、酸化物半導体層308と接する絶縁膜は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。絶縁膜305に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜305を形成すればよい。または、成膜後の絶縁膜305に酸素を導入して、酸素過剰領域を形成してもよい。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
本実施の形態では、絶縁膜305として窒化シリコン層と、該窒化シリコン層上の酸化シリコン層と、を形成する。窒化シリコン層は、酸化シリコン層と比較して比誘電率が高く、酸化シリコン層と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トランジスタ102のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305として、窒化シリコン層を含むことで絶縁膜を物理的に厚膜化することができる。よって、トランジスタ102の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、トランジスタ102の静電破壊を抑制することができる。
酸化物半導体層308は、少なくともインジウム(In)、亜鉛(Zn)及びM(Al、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf等の金属)を含むIn−M−Zn酸化物で表記される膜を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共に、スタビライザーを含むことが好ましい。
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、又はジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザーとしては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等がある。
酸化物半導体層308を構成する酸化物半導体として、例えば、In−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、In−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
なお、ここで、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
酸化物半導体層308の成膜方法は、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、PLD法、ALD法等を適宜用いることができる。
酸化物半導体層308を成膜する際、できる限り膜中に含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。水素濃度を低減させるには、例えば、スパッタリング法を用いて成膜を行う場合には、成膜室内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、さらに好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体層308に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
また、成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプは、例えば、水素分子、水(H2O)など水素原子を含む化合物、炭素原子を含む化合物等の排気能力が高いため、クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した膜中に含まれる不純物の濃度を低減できる。
また、酸化物半導体層308をスパッタリング法で成膜する場合、成膜に用いる金属酸化物ターゲットの相対密度(充填率)は90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%以下とする。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜される膜を緻密な膜とすることができる。
なお、基板302を高温に保持した状態で酸化物半導体層308を形成することも、酸化物半導体層308中に含まれうる不純物濃度を低減するのに有効である。基板302を加熱する温度は、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とすればよい。
次に、酸化物半導体層308を所望の形状に加工することで、島状の酸化物半導体層308a及び島状の酸化物半導体層308cを形成する(図4(B))。
また、のちに酸化物導電体層308bとなる酸化物半導体層308cと、酸化物半導体層308aは、酸化物半導体層308より加工して形成されるため、少なくとも同一の金属元素を有する。また、酸化物半導体層308のエッチング加工の際に、酸化物半導体層308のオーバーエッチングによって絶縁膜305の一部(酸化物半導体層308a及び酸化物半導体層308cから露出した領域)がエッチングされ膜厚が減少することがある。
島状の酸化物半導体層308a及び酸化物半導体層308cを形成後、熱処理を行う。熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、より好ましくは320℃以上370℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、又は減圧雰囲気で行えばよい。また、熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で熱処理を行った後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。ここでの加熱処理によって、絶縁膜305、及び酸化物半導体層308a、308cの少なくとも一から水素や水などの不純物を除去することができる。なお、当該熱処理は、酸化物半導体層308を島状に加工する前に行ってもよい。
なお、酸化物半導体をチャネルとするトランジスタ102に安定した電気特性を付与するためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減し、酸化物半導体を真性又は実質的に真性にすることが有効である。
次に、絶縁膜305、及び酸化物半導体層308a、308c上に導電膜310a、310b、及び絶縁膜312を形成する(図4(C))。絶縁膜312には、酸化物半導体層308cが露出するように、開口部362を形成する。
導電膜310a、310bとしては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、又はタングステン等の金属、又はこれを主成分とする合金を用いた膜を単層構造又は積層構造として形成することができる。例えば、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜又は窒化チタン膜と、そのチタン膜又は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜又は窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜又は窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜又は窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜又は窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫又は酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。また、導電膜310a、310bは、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
絶縁膜312としては、例えば、厚さ150nm以上400nm以下の酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等を用いることができる。本実施の形態においては、絶縁膜312として、厚さ300nmの酸化窒化シリコン膜を用いる。また、絶縁膜312は、例えば、PECVD法を用いて形成することができる。
開口部362の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いることができる。ただし、開口部362の形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、又はドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。なお、開口部362を形成するためのエッチング工程によって、酸化物半導体層308cの膜厚が減少する場合がある。
なお、導電膜310a、310b、絶縁膜312のエッチング工程等において、酸化物半導体層308a、308c中に酸素欠損が形成される場合がある。したがって、この後、熱処理を行うことが好ましい。絶縁膜312として、酸素を放出することが可能な絶縁膜を用いる場合、熱処理によって、絶縁膜312に含まれる酸素の一部を酸化物半導体層308aに移動させ、酸化物半導体層308a中の酸素欠損を低減することが可能である。この結果、酸化物半導体層308aに含まれる酸素欠損量を低減することができる。一方、絶縁膜312と接しない酸化物半導体層308cの酸素欠損量は低減されないため、酸化物半導体層308cは、酸化物半導体層308aより多くの酸素欠損を含有することとなる。熱処理の条件は、酸化物半導体層308a、308cを形成後の熱処理と同様とすることができる。
次に、開口部362を覆うように、絶縁膜312、及び酸化物半導体層308c上に絶縁膜314を形成する。絶縁膜314を形成することによって、酸化物半導体層308cは、酸化物導電体層308bとなる(図4(D))。
絶縁膜314は、水素を含んで構成される。絶縁膜314の水素が酸化物半導体層308cに拡散すると、酸化物半導体層308cにおいて水素は酸素欠損と結合し、キャリアである電子が生成される。その結果、酸化物半導体層308cの抵抗率が低下し、酸化物導電体層308bとなる。
酸化物導電体層308bの抵抗率は、少なくとも酸化物半導体層308aよりも低く、好ましくは、1×10−3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好ましくは、1×10−3Ωcm以上1×10−1Ωcm未満であるとよい。なお、絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が、トランジスタ102に含まれる酸化物半導体層308aへ拡散するのを防ぐ効果も奏する。
絶縁膜314としては、例えば、厚さ50nm以上400nm以下の窒化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン膜等を用いることができる。本実施の形態においては、絶縁膜314として、厚さ100nmの窒化シリコン膜を用いる。
また、上記窒化シリコン膜は、ブロック性を高めるために、高温で成膜されることが好ましく、例えば基板温度100℃以上基板の歪み点以下、より好ましくは300℃以上400℃以下の温度で加熱して成膜することが好ましい。但し、高温で成膜する場合は、酸化物半導体層308aから酸素が脱離し、キャリア密度が上昇する現象が発生することがあるため、このような現象が発生しない温度とする。
次に、絶縁膜314上に絶縁膜348を形成し、絶縁膜348上に導電膜350を形成する。(図5(A))。
絶縁膜348に用いることができる材料としては、他の絶縁膜と同様の材料が挙げられる。
導電膜350には、酸化インジウム、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物、又はグラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。また、導電膜350は、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。また、前述のトランジスタの半導体層に用いることが可能な酸化物半導体を低抵抗化させて用いてもよい。
以上の工程によって、トランジスタ102と、容量素子105と、を同一基板上に形成することができる。
その後、接着層344を用いて基板342を絶縁膜348及び導電膜350上に貼り合わせてもよい(図5(B))。
基板342に用いることができる材料は、基板302と同様である。接着層344には、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
<タッチセンサの作製方法例2>
図3(A)に示すトランジスタ104の作製方法の一例について、図6及び図7を用いて説明する。なお、タッチセンサの作製方法例1と同様の内容は上記を参照することとし、詳細な記載を省略する。
まず、基板302上に絶縁膜338(絶縁膜338a及び絶縁膜338b)を形成する(図6(A))。
酸化物半導体層308aとの界面特性を向上させるため、絶縁膜338において少なくとも酸化物半導体層308aと接する領域は酸化物絶縁膜で形成することが好ましい。また、絶縁膜338として加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで、加熱処理により、絶縁膜338に含まれる酸素を酸化物半導体層308aに移動させることが可能である。
絶縁膜338の厚さは、50nm以上、又は100nm以上3000nm以下、又は200nm以上1000nm以下とすることができる。絶縁膜338を厚くすることで、絶縁膜338の酸素放出量を増加させることができると共に、絶縁膜338と酸化物半導体層308aとの界面における界面準位、並びに酸化物半導体層308aのチャネル領域332aに含まれる酸素欠損を低減することが可能である。
また、絶縁膜338bを形成した後、絶縁膜338bに酸素を添加してもよい。絶縁膜338bに添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。また、絶縁膜上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介して絶縁膜338bに酸素を添加してもよい。
また、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上280℃以下、又は200℃以上240℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、又は100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、又は0.25W/cm2以上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件により、加熱処理により酸素を放出することが可能な酸化シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜を絶縁膜338bとして形成することができる。
ここでは、絶縁膜338b上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介して絶縁膜338bに酸素を添加する方法を説明する。
絶縁膜338b上に、酸素の脱離を抑制する膜141を形成する(図6(B))。
次に、膜141を介して絶縁膜338bに酸素142を添加する(図6(C))。
酸素の脱離を抑制する膜141として、アルミニウム、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、タングステンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、上述した金属元素を組み合わせた合金、上述した金属元素を有する金属窒化物、上述した金属元素を有する金属酸化物、上述した金属元素を有する金属窒化酸化物等の導電性を有する材料を用いて形成する。
酸素の脱離を抑制する膜141の厚さは、1nm以上20nm以下、又は2nm以上10nm以下とすることができる。
膜141を介して絶縁膜338bに酸素142を添加する方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。絶縁膜338b上に膜141を設けて酸素を添加することで、膜141が絶縁膜338bから酸素が脱離することを抑制する保護膜として機能する。このため、絶縁膜338bにより多くの酸素を添加することができる。
また、プラズマ処理で酸素の導入を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸素プラズマを発生させることで、絶縁膜338bへの酸素導入量を増加させることができる。
こののち、膜141を除去する(図6(D))。
なお、成膜後に十分に酸素が添加された絶縁膜338bを形成できる場合においては、図6(B)(C)に示す酸素を添加する処理を行わなくてもよい。
次に、絶縁膜338上に酸化物半導体膜を形成し、該酸化物半導体膜を所望の形状に加工することで、島状の酸化物半導体層308aを形成する。こののち、絶縁膜338及び酸化物半導体層308a上に絶縁膜305を形成する(図6(E))。
酸化物半導体層308aの形成方法について以下に説明する。絶縁膜338b上にスパッタリング法、塗布法、PLD法、レーザーアブレーション法、熱CVD法等により酸化物半導体膜を形成する。次に、酸化物半導体膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて酸化物半導体膜の一部をエッチングすることで、図6(E)に示すように、酸化物半導体層308aを形成することができる。この後、マスクを除去する。なお、酸化物半導体層308aを形成した後、加熱処理を行ってもよい。
また、酸化物半導体層308aとして印刷法を用いることで、素子分離された酸化物半導体層308aを直接形成することができる。
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。なお、AC電源装置又はDC電源装置を用いることで、CAAC−OS膜を形成することが可能である。また、RF電源装置を用いたスパッタリング法で酸化物半導体膜を形成するよりも、AC電源装置又はDC電源装置を用いたスパッタリング法で酸化物半導体膜を形成した方が、膜厚の分布、膜組成の分布、又は結晶性の分布が均一となるため好ましい。
酸化物半導体膜を形成する場合のスパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。
また、酸化物半導体膜を形成する場合のスパッタリングターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい。
なお、酸化物半導体膜を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板温度を150℃以上750℃以下、又は150℃以上450℃以下、又は200℃以上350℃以下として、酸化物半導体膜を成膜することで、CAAC−OS膜を形成することができる。また、基板温度を25℃以上150℃未満とすることで、微結晶酸化物半導体膜を形成することができる。
また、後述するCAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
成膜時の不純物混入を抑制することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、又は−100℃以下である成膜ガスを用いる。
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、又は100体積%とする。
また、酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行い、酸化物半導体膜の脱水素化又は脱水化をしてもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、又は250℃以上450℃以下、又は300℃以上450℃以下とする。
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、又は窒素を含む不活性ガス雰囲気で行う。または、不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水などが含まれないことが好ましい。処理時間は3分以上24時間以下とする。
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱処理時間を短縮することができる。
酸化物半導体膜を加熱しながら成膜することで、さらには酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜において、二次イオン質量分析法により得られる水素濃度を5×1019atoms/cm3以下、又は1×1019atoms/cm3以下、5×1018atoms/cm3以下、又は1×1018atoms/cm3以下、又は5×1017atoms/cm3以下、又は1×1016atoms/cm3以下とすることができる。
ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばInGaZnOX(X>0)膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してInO2層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2とO3ガスを同時に導入してZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてInGaO2層やInZnO2層、GaInO層、ZnInO層、GaZnO層などの混合化合物層を形成してもよい。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングしたH2Oガスを用いてもよいが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Zn(CH3)2ガスを用いてもよい。
なお、本実施の形態においては、酸化物半導体層308aとして、スパッタリング装置を用い、スパッタリングターゲットとしてIn−Ga−Zn金属酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比])を用いて、膜厚50nmの酸化物半導体膜を成膜した後、加熱処理を行い、絶縁膜338bに含まれる酸素を酸化物半導体膜に移動させる。次に、当該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を選択的にエッチングすることで、酸化物半導体層308aを形成する。
なお、加熱処理は、350℃より高く650℃以下、又は450℃以上600℃以下で行うことで、後述するCAAC化率が、60%以上100%未満、又は80%以上100%未満、又は90%以上100%未満、又は95%以上98%以下である酸化物半導体膜を得ることができる。また、水素、水等の含有量が低減された酸化物半導体膜を得ることが可能である。すなわち、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を形成することができる。
絶縁膜305は、酸化物絶縁膜又は窒化物絶縁膜を単層又は積層して形成することができる。なお、酸化物半導体層308aとの界面特性を向上させるため、絶縁膜305において少なくとも酸化物半導体層308aと接する領域は酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。
また、絶縁膜305として、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を設けることで、酸化物半導体層308aからの酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体層308aへの水素、水等の侵入を防ぐことができる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化窒化ガリウム膜、酸化イットリウム膜、酸化窒化イットリウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化窒化ハフニウム膜等がある。
また、絶縁膜305の材料として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでトランジスタのゲートリーク電流を低減できる。
また、絶縁膜305として、加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで、加熱処理により絶縁膜305に含まれる酸素を、酸化物半導体層308aに移動させることが可能である。
絶縁膜305の厚さは、5nm以上400nm以下、又は5nm以上300nm以下、又は10nm以上250nm以下とすることができる。
絶縁膜305は、絶縁膜338bの形成方法を適宜用いることができる。絶縁膜305としては、酸化シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜を、PECVD法を用いて形成することができる。この場合、原料ガスとして、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。
また、絶縁膜305として、堆積性気体に対する酸化性気体を20倍より大きく100倍未満、又は40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100Pa未満、又は50Pa以下とするPECVD法を用いることで、欠陥量の少ない酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
また、絶縁膜305として、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、絶縁膜305として、緻密である酸化シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
また、絶縁膜305を、マイクロ波を用いたプラズマCVD法を用いて形成することができる。マイクロ波とは300MHzから300GHzの周波数域を指す。マイクロ波において、電子温度が低く、電子エネルギーが小さい。また、供給された電力において、電子の加速に用いられる割合が少なく、より多くの分子の解離及び電離に用いられることが可能であり、密度の高いプラズマ(高密度プラズマ)を励起することができる。このため、被成膜面及び堆積物へのプラズマダメージが少なく、欠陥の少ない絶縁膜305を形成することができる。
また、絶縁膜305を、有機シランガスを用いたCVD法を用いて形成することができる。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)などのシリコン含有化合物を用いることができる。有機シランガスを用いたCVD法を用いることで、被覆性の高い絶縁膜305を形成することができる。
また、絶縁膜305として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD法を用いて形成することができる。
また、絶縁膜305として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH)などのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
また、絶縁膜305として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウムTMAなど)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。なお、ALD法で形成することで、被覆率が高く、膜厚の薄い絶縁膜305を形成することが可能である。
また、絶縁膜305として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
ここでは、絶縁膜305として、PECVD装置を用い、厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
次に、絶縁膜305上に導電膜306(導電膜306a及び導電膜306b)を形成する(図6(F))。
導電膜306は、スパッタリング法、真空蒸着法、PLD法、熱CVD法等を用いて形成することができる。本実施の形態においては、導電膜306aとして、スパッタリング装置を用い、窒化タンタル膜を10nm形成する。また、導電膜306bとして、スパッタリング装置を用い、銅膜を300nm形成する。なお、導電膜306aと導電膜306bを真空中で連続して形成すると、導電膜303aと導電膜303bの界面の不純物が抑制できるため好適である。
また、ALDを利用する成膜装置により導電膜306bとしてタングステン膜を成膜することができる。この場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスを同時に導入してタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
次に、導電膜306b上にリソグラフィ工程によりマスク145を形成した後、導電膜306b、導電膜306a、及び絶縁膜305の一部をエッチングし、導電膜304a、304bを形成する(図6(G))。
導電膜306及び絶縁膜305をエッチングする方法は、ウエットエッチング法又は/及びドライエッチング法を適宜用いることができる。
また、導電膜306及び絶縁膜305のエッチング工程において、酸化物半導体層308aの一部を露出させる。なお、図6(H)に示すように、酸化物半導体層308aの一部が露出した領域は、導電膜304及び絶縁膜305のエッチング工程により、導電膜304と重なる酸化物半導体層308aよりも膜厚が薄くなる場合がある。また、図6(H)に示すように、導電膜306及び絶縁膜305のエッチング工程において、下地膜として機能する絶縁膜338bの酸化物半導体層308aから露出した領域の一部が除去され、酸化物半導体層308aと重畳する領域の膜厚よりも薄くなる場合がある。
次に、絶縁膜338b、絶縁膜305、酸化物半導体層308a、導電膜304、及びマスク145上から不純物元素143を添加する(図7(A))。
不純物元素143の添加工程において、導電膜304、絶縁膜305、及びマスク145に覆われていない酸化物半導体層308aに不純物元素が添加される。なお、不純物元素143の添加により、酸化物半導体層308aには酸素欠損が形成される。
不純物元素143の添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。プラズマ処理法の場合、添加する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、不純物元素を添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置、アッシング装置、プラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。
なお、不純物元素143の原料ガスとして、B2H6、PH3、CH4、N2、NH3、AlH3、AlCl3、SiH4、Si2H6、F2、HF、H2及び希ガスの一以上を用いることができる。または、希ガスで希釈されたB2H6、PH3、N2、NH3、AlH3、AlCl3、F2、HF、及びH2の一以上を用いることができる。希ガスで希釈されたB2H6、PH3、N2、NH3、AlH3、AlCl3、F2、HF、及びH2の一以上を用いて不純物元素143を酸化物半導体層308aに添加することで、希ガスと、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン、及び塩素の一以上とを同時に酸化物半導体層308aに添加することができる。
又は、希ガスを酸化物半導体層308aに添加した後、B2H6、PH3、CH4、N2、NH3、AlH3、AlCl3、SiH4、Si2H6、F2、HF、及びH2の一以上を酸化物半導体層308aに添加してもよい。
又は、B2H6、PH3、CH4、N2、NH3、AlH3、AlCl3、SiH4、Si2H6、F2、HF、及びH2の一以上を酸化物半導体層308aに添加した後、希ガスを酸化物半導体層308aに添加してもよい。
不純物元素143の添加は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件を適宜設定して制御すればよい。例えば、イオン注入法でアルゴンの添加を行う場合、加速電圧10kV、ドーズ量は1×1013ions/cm2以上1×1016ions/cm2以下とすればよく、例えば、1×1014ions/cm2とすればよい。また、イオン注入法でリンイオンの添加を行う場合、加速電圧30kV、ドーズ量は1×1013ions/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすればよく、例えば、1×1015ions/cm2とすればよい。
また、ドライエッチング装置を用いて、不純物元素143として、アルゴンの添加を行う場合、平行平板のカソード側に基板を設置し、基板側にバイアスが印加されるように、RF電力を供給すればよい。該RF電力は、例えば、電力密度を0.1W/cm2以上2W/cm2以下とすればよい。
なお、本実施の形態に示すように、マスク145を残した状態で、不純物元素143の添加を行うと好適である。マスク145を残した状態で不純物元素143の添加を行うことで、導電膜304の構成元素が絶縁膜305の側壁に付着するのを抑制することができる。ただし、不純物元素143の添加方法は、これに限定されず、例えば、マスク145を除去した後に、導電膜304及び絶縁膜305をマスクに不純物元素143の添加を行ってもよい。
こののち、加熱処理を行い、不純物元素143が添加された領域の導電性をさらに高めてもよい。上記加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、又は250℃以上450℃以下、又は300℃以上450℃以下とする。
次に、マスク145を除去する(図7(B))。
次に、絶縁膜338b、酸化物半導体層308a、及び導電膜304上に絶縁膜312aを形成し、絶縁膜312a上に絶縁膜312bを形成する(図7(C))。
絶縁膜312a及び絶縁膜312bは、絶縁膜338a及び絶縁膜338bの形成方法を適宜用いることができる。
本実施の形態においては、絶縁膜312aとして、PECVD装置を用い、窒化シリコン膜を100nm形成する。また、絶縁膜312bとして、PECVD装置を用い、酸化窒化シリコン膜を300nm形成する。
絶縁膜312aとして窒化シリコン膜を用いることで、該窒化シリコン膜中の水素が酸化物半導体層308a中に入り込み、絶縁膜312aに接する酸化物半導体層308aのキャリア密度をさらに向上させることが可能となる。
次に、絶縁膜312b上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、絶縁膜312a及び絶縁膜312bの一部をエッチングして、酸化物半導体層308aに達する開口部140a及び開口部140bを形成する(図7(D))。
次に、開口部140a及び開口部140bを覆うように、絶縁膜312b上に導電膜311(導電膜311a及び導電膜311b)を形成する(図7(E))。
導電膜311には、導電膜306の形成方法を適宜用いることができる。ここでは、導電膜311aとして、スパッタリング装置を用い、厚さ50nmのタングステン膜を形成する。また、導電膜311bとして、スパッタリング装置を用い、厚さ200nmの銅膜を形成する。
次に、導電膜311b上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、導電膜311a及び導電膜311bの一部をエッチングして、導電膜310a及び導電膜310bを形成する(図7(F))。
なお、導電膜310aは、導電膜310a1と導電膜310a1上の導電膜310a2の積層構造となる。また、導電膜310bは、導電膜310b1と導電膜310b1上の導電膜310b2の積層構造となる。
次に、絶縁膜312b、導電膜310a及び導電膜310b上に絶縁膜314を形成する(図7(G))。
絶縁膜314は、絶縁膜338aの形成方法を適宜用いることができる。ここでは、絶縁膜314として、PECVD装置を用い、厚さ200nmの窒化シリコン膜を形成する。
以上の工程により、トランジスタ104を作製することができる。
なお、トランジスタ106を形成する場合には、基板302上に絶縁膜338を形成する。次に絶縁膜338上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の形状に加工することで、導電膜303を形成する。次に、図6(A)乃至(F)に示す工程と同様の工程を行う(図6(A)で形成する絶縁膜338はトランジスタ106における絶縁膜301に相当することになる)。その後、絶縁膜305上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、絶縁膜305の一部をエッチングして導電膜303に達する開口部139を形成する。その後の工程については、図6(G)以降に示す工程と同様の工程を行うことで、トランジスタ106を作製することができる。
以上のように、本発明の一態様のタッチセンサは、トランジスタ及び容量素子を有し、トランジスタの半導体層と容量素子の一方の電極とを同一工程で成膜することで作製ができる。よって、少ない工程数でアクティブマトリクス方式のタッチセンサを作製することができる。または、大型のタッチパネルに用いることができるタッチセンサを提供することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様のタッチパネルについて説明する。
本発明の一態様のタッチパネルは、一対の基板間にアクティブマトリクス方式のタッチセンサと表示素子と、を有する。タッチセンサは、例えば、静電容量方式であってもよい。
センサ部と表示部を重ねて有するタッチパネルにおいて、静電容量方式のタッチセンサを構成する配線や電極と、表示部を構成する配線や電極との間には、寄生容量が形成される場合がある。この寄生容量によって、指などを近づけた際の容量変化が小さくなり、タッチセンサの検出感度が低下する恐れがある。また、表示素子を駆動させたときに生じるノイズが、寄生容量を通してタッチセンサ側に伝わることでも、タッチセンサの検出感度が低下する恐れがある。
また、センサ部と表示部の距離を十分広くすることで、寄生容量やノイズの影響を避け、タッチセンサの検出感度の低下を抑制することができるが、タッチパネル全体の厚さが厚くなる場合がある。
本発明の一態様では、アクティブマトリクス方式のタッチセンサを提供する。該タッチセンサは、トランジスタ及び容量素子を有する。該トランジスタ及び該容量素子は電気的に接続する。
本発明の一態様のアクティブマトリクス方式のタッチセンサは、容量素子を構成する電極と、読み出し配線と、を別の層で形成することができる。読み出し配線を細い幅で形成することで、寄生容量を小さくできる。これにより、タッチセンサの検出感度の低下を抑制できる。
一方、寄生容量が形成されることにより、検出信号の振幅が小さくなり、検出感度が低下する場合がある。本発明の一態様では、検出信号を増幅して出力させることで、寄生容量の影響を抑制することができる。
本発明の一態様のタッチパネルは、アクティブマトリクス方式のタッチセンサを用いることで、センサ部と表示部の距離を狭くし、タッチパネルを薄型化することができる。また、2枚の基板の間にタッチセンサ及び表示素子を配置することができることからも、タッチパネルを薄型化することができる。ここで、本発明の一態様のタッチセンサを用いることで、センサ部と表示部の距離を狭くしても、タッチセンサの検出感度の低下を抑制できる。したがって、本発明の一態様では、タッチセンサもしくはタッチパネルの薄型化と、高い検出感度を両立することができる。また、一対の基板に可撓性を有する材料を用いることで、可撓性を有するタッチパネルとすることもできる。また、本発明の一態様では、繰り返しの曲げに強いタッチパネルを提供することができる。または、大型のタッチパネルを提供することができる。
本発明の一態様のタッチパネルが有するタッチセンサには、実施の形態1で詳述した通り、容量素子の電極として酸化物導電体層を用いてもよい。アクティブマトリクス方式のタッチセンサにおいて、トランジスタを構成する半導体層や導電膜と、容量素子の電極とを同一工程で成膜することが好ましい。これにより、タッチパネルを作製するための工程数が少なくなり、製造コストを低減させることができる。
なお、本発明の一態様のタッチパネルは、容量素子の電極として酸化物導電体層を用いることで、他の材料を用いる場合に比べて、視野角依存性が小さくなることがある。また、本発明の一態様のタッチパネルは、容量素子の電極として酸化物導電体層を用いることで、他の材料を用いる場合に比べて、NTSC比を大きくできることがある。
具体的には、本発明の一態様は、一対の基板間にタッチセンサ、遮光層、及び表示素子を有するタッチパネルであり、遮光層は、タッチセンサと表示素子の間に位置し、遮光層は、タッチセンサが有するトランジスタと重なる部分を有し、表示素子は、タッチセンサが有する容量素子と重なる部分を有する、タッチパネルである。
表示素子としては、特に限定はないが、例えば、有機EL素子を用いることができる。したがって、上記構成において、表示素子は、第1の電極、第2の電極、及び発光性の有機化合物を含む層を有し、第1の電極の端部を覆う絶縁膜を有し、発光性の有機化合物を含む層は、第1の電極及び第2の電極の間に位置し、絶縁膜は、タッチセンサが有するトランジスタと重なる部分を有していてもよい。
<タッチパネルの構成例>
図9は本発明の一態様のタッチパネルの構成を説明する投影図である。図9(A)は本発明の一態様のタッチパネル500の投影図であり、図9(B)はタッチパネル500が備える検知ユニット10Uの構成を説明する投影図である。
図9(A)に示すタッチパネル500は、入力装置100と、表示部501と、を有する。
入力装置100は、可撓性を有する。入力装置100は、走査線G1、信号線DL、第1の基材16、及び複数の検知ユニット10Uを有する。図9(B)に示す検知ユニット10Uは、可視光を透過する窓部14を具備し、且つマトリクス状に配設される。走査線G1は、行方向(図中に矢印Rで示す)に配置される複数の検知ユニット10Uと電気的に接続する。信号線DLは、列方向(図中に矢印Cで示す)に配置される複数の検知ユニット10Uと電気的に接続する。第1の基材16は、可撓性を有する。第1の基材16は、検知ユニット10U、走査線G1、及び信号線DLを支持する。
表示部501は、第2の基材510と、複数の画素502と、を有する。複数の画素502は、窓部14に重なり且つマトリクス状に配設される。第2の基材510は、可撓性を有する。第2の基材510は、複数の画素502を支持する(図9(C))。
検知ユニット10Uは、窓部14に重なる検知素子C1及び検知素子C1と電気的に接続される検知回路19を備える(図9(B))。
検知素子C1は、例えば、実施の形態1に示した容量素子105を適用することができる。図9(B)では、容量素子105が有する一対の電極である、導電膜350及び酸化物導電体層308bを記す。
検知回路19は、選択信号を供給され且つ検知素子C1の容量又は寄生する容量の大きさの変化に基づいて検知信号DATAを供給する。
走査線G1は、選択信号を供給することができる。信号線DLは、検知信号DATAを供給することができる。検知回路19は、複数の窓部14の間隙に重なるように配置される。
また、本実施の形態で説明するタッチパネル500は、検知ユニット10U及び検知ユニット10Uの窓部14と重なる画素502の間に、着色層を備える。
本実施の形態で説明するタッチパネル500は、可視光を透過する窓部14を具備する検知ユニット10Uを複数備える可撓性の入力装置100と、窓部14に重なる画素502を複数備える可撓性の表示部501と、を有し、窓部14と画素502の間に着色層を含んで構成される。
これにより、タッチパネルは容量又は寄生する容量の大きさの変化に基づく検知信号と、該検知信号を供給する検知ユニットの位置情報と、を供給すること、検知ユニットの位置情報と関連付けられた画像情報を表示すること、並びに曲げることができる。その結果、利便性又は信頼性に優れた新規なタッチパネルを提供することができる。
また、タッチパネル500は、入力装置100が供給する信号を供給されるフレキシブル基板FPC1又は/及び画像情報を含む信号を表示部501に供給するフレキシブル基板FPC2を備えていてもよい。
また、傷の発生を防いでタッチパネル500を保護する保護層17p又は/及びタッチパネル500が反射する外光の強度を弱める反射防止層567pを備えていてもよい。
また、タッチパネル500は、表示部501の走査線に選択信号を供給する走査線駆動回路503g、信号を供給する配線511及びフレキシブル基板FPC2と電気的に接続される端子519を有する。
以下に、タッチパネル500を構成する個々の要素について説明する。なお、これらの構成は明確に分離できず、一つの構成が他の構成を兼ねる場合や他の構成の一部を含む場合がある。
例えば、複数の窓部14に重なる位置に着色層を備える入力装置100は、入力装置100であるとともにカラーフィルタでもある。
また、例えば入力装置100が表示部501に重ねられたタッチパネル500は、入力装置100であるとともに表示部501でもある。
入力装置100は複数の検知ユニット10U及び検知ユニットを支持する可撓性の基材16を備える。例えば、40行15列のマトリクス状に複数の検知ユニット10Uを可撓性の基材16に配設する。
具体的には、横の寸法が7.668mm、縦の寸法が5.112mmの検知ユニット10Uを、横の寸法が115.02mm、縦の寸法が204.48mmの矩形の領域に、40行15列のマトリクス状に配置することができる。
窓部14は可視光を透過する。
例えば、可視光を透過する材料又は可視光を透過する程度に薄い材料をそれぞれ用いた、基材16、検知素子C1、及び可撓性の保護基材17を、可視光の透過を妨げないように重ねて配置して、窓部14を構成すればよい。
例えば、可視光を透過しない材料に開口部を設けて用いてもよい。具体的には、矩形などさまざまな形の開口部を1つ又は複数設けて用いてもよい。
窓部14に重なる位置に所定の色の光を透過する着色層を備える。例えば、青色の光を透過する着色層CFB、緑色の光を透過する着色層CFG又は赤色の光を透過する着色層CFRを備える(図9(B))。
なお、青色、緑色又は/及び赤色に加えて、白色の光を透過する着色層又は黄色の光を透過する着色層などさまざまな色の光を透過する着色層を備えることができる。
着色層に金属材料、樹脂材料、顔料又は染料等を用いることができる。
窓部14を囲むように遮光層BMを備える。遮光層BMは窓部14より光を透過しにくい。なお、本明細書等では、遮光層にブラックマトリクスを用いる例を示し、符号BMを付すこととする。
カーボンブラック、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等を遮光層BMに用いることができる。
遮光層BMと重なる位置に走査線G1、信号線DL、配線VPI、配線RES及び配線VRES並びに検知回路19を備える。
なお、着色層及び遮光層BMを覆う透光性のオーバーコートを備えることができる。
有機材料、無機材料又は有機材料と無機材料の複合材料を可撓性の基材16、基材510に用いることができる。
5μm以上2500μm以下、好ましくは5μm以上680μm以下、より好ましくは5μm以上170μm以下、より好ましくは5μm以上45μm以下、より好ましくは8μm以上25μm以下の厚さを有する材料を、基材16や基材510に用いることができる。
また、不純物の透過が抑制された材料を基材16や基材510に好適に用いることができる。例えば、水蒸気の透過率が10−5g/(m2・day)以下、好ましくは10−6g/(m2・day)以下である材料を好適に用いることができる。
また、基材510と基材16には、互いに線膨張率がおよそ等しい材料を好適に用いることができる。例えば、基材510及び基材16は、それぞれ、線膨張率が1×10−3/K以下、好ましくは5×10−5/K以下、より好ましくは1×10−5/K以下である材料を好適に用いることができる。
例えば、樹脂、樹脂フィルム又はプラスチックフィルム等の有機材料を、基材16や基材510に用いることができる。
例えば、金属板又は厚さ10μm以上50μm以下の薄板状のガラス板等の無機材料を、基材16や基材510に用いることができる。
例えば、金属板、薄板状のガラス板又は無機材料の膜を、樹脂層を用いて樹脂フィルム等に貼り合せて形成された複合材料を、基材16や基材510に用いることができる。
例えば、繊維状又は粒子状の金属、ガラスもしくは無機材料を樹脂又は樹脂フィルムに分散した複合材料を、基材16や基材510に用いることができる。
例えば、熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂を樹脂層に用いることができる。
具体的には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートもしくはアクリル樹脂等の樹脂フィルム又は樹脂板を用いることができる。
具体的には、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリガラスもしくはクリスタルガラス等を用いることができる。
具体的には、金属酸化物膜、金属窒化物膜もしくは金属酸窒化物膜等を用いることができる。例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸窒化珪素膜、アルミナ膜等を適用できる。
具体的には、開口部が設けられたSUS又はアルミニウム等を用いることができる。
具体的には、アクリル、ウレタン、エポキシ、又はシロキサン結合を有する樹脂などの樹脂を用いることができる。
例えば、可撓性基板392aと、不純物の拡散を防ぐ絶縁膜338aと、可撓性基板392a及び絶縁膜338aを貼り合わせる接着層394aと、が積層された積層体を基材16に好適に用いることができる(図12(A)参照)。
例えば、可撓性基板392bと、不純物の拡散を防ぐ絶縁膜338bと、可撓性基板392b及び絶縁膜338bを貼り合わせる接着層394bと、が積層された積層体を基材510に好適に用いることができる(図12(A)参照)。
具体的には、絶縁膜338aは、厚さ600nmの酸化窒化珪素膜及び厚さ200nmの窒化珪素膜の積層構造を、有していてもよい。
具体的には、厚さ600nmの酸化窒化珪素膜、厚さ200nmの窒化珪素膜、厚さ200nmの酸化窒化珪素膜、厚さ140nmの窒化酸化珪素膜、及び厚さ100nmの酸化窒化珪素膜がこの順に積層された積層構造を、絶縁膜338aに用いることができる。
ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートもしくはアクリル等の樹脂フィルム、樹脂板又はこれら2以上を含む積層体等を可撓性基板392aに用いることができる。
例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネート、又はアクリル、ウレタン、エポキシもしくはシロキサン結合を有する樹脂を含む材料を接着層394aに用いることができる。
可撓性の保護基材17又は/及び保護層17pを備えることができる。可撓性の保護基材17又は保護層17pは傷の発生を防いで入力装置100を保護する。
例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートもしくはアクリル樹脂等の樹脂フィルム、樹脂板又はこれら2以上を含む積層体等を保護基材17に用いることができる。
例えば、ハードコート層又はセラミックコート層を保護層17pに用いることができる。具体的には、UV硬化樹脂又は酸化アルミニウムを含む層を第2の電極に重なる位置に形成してもよい。
表示部501は、マトリクス状に配置された複数の画素502を備える(図9(C))。例えば、画素502は副画素502B、副画素502G及び副画素502Rを含み、それぞれの副画素は表示素子と表示素子を駆動する画素回路を備える。
横の寸法が115.02mm、縦の寸法が198.72mmの矩形の領域に、横の寸法が35.5μm、縦の寸法が106.5μmの副画素を3つ備える画素を横方向に1080個、縦方向に1920個、マトリクス状に配置してもよい。なお、該矩形の領域の対角の長さが9.2インチであり、画素の開口率を56.0%にしてもよい。
なお、画素502の副画素502Bは着色層CFBと重なる位置に配置され、副画素502Gは着色層CFGと重なる位置に配置され、副画素502Rは着色層CFRと重なる位置に配置される。
本実施の形態では、白色の光を射出する有機EL素子を表示素子に適用する場合について説明するが、表示素子はこれに限られない。
例えば、副画素毎に射出する光の色が異なるように、発光色が異なる有機EL素子を副画素毎に適用してもよい。
また、有機EL素子の他、電気泳動方式や電子粉流体(登録商標)方式やエレクトロウェッティング方式などにより表示を行う表示素子(電子インクともいう)、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、液晶素子など、様々な表示素子を表示素子に用いることができる。
また、透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイなどにも適用できる。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、又は、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、又は、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。また、適用する表示素子に好適な構成を様々な画素回路から選択して用いることができる。
また、表示部において、画素に能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を有するアクティブマトリクス方式、又は、画素に能動素子を有しないパッシブマトリクス方式を用いることができる。
アクティブマトリクス方式では、能動素子として、トランジスタだけでなく、さまざまな能動素子を用いることができる。例えば、MIM(Metal Insulator Metal)、又はTFD(Thin Film Diode)などを用いることも可能である。これらの素子は、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留まりの向上を図ることができる。または、これらの素子は、素子のサイズが小さいため、開口率を向上させることができ、低消費電力化や高輝度化をはかることができる。
パッシブマトリクス方式は、能動素子を用いないため、製造工程が少なく、製造コストの低減、又は歩留まりの向上を図ることができる。または、能動素子を用いないため、開口率を向上させることができ、低消費電力化、又は高輝度化などを図ることができる。
表示部501は、反射防止層567pを画素に重なる位置に備えていてもよい。反射防止層567pとして、例えば円偏光板を用いることができる。
表示部501は、信号を供給することができる配線511を備え、端子519が配線511に設けられている。なお、画像信号及び同期信号等の信号を供給することができるフレキシブル基板FPC2が端子519に電気的に接続されている。
なお、フレキシブル基板FPC2にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。
《検知素子C1》
検知素子C1について、図1(A)に示す容量素子105を例に挙げて説明する。容量素子105は、一対の電極として酸化物導電体層308b及び導電膜350を有する。一対の電極間には、誘電体層として絶縁膜314、348を有する。
酸化物導電体層308bは他の領域から分離されるように、例えば島状に形成される。特に、タッチパネル500の使用者に酸化物導電体層308bが識別されないように、酸化物導電体層308bと同一の工程で作製することができる層を酸化物導電体層308bに近接して配置する構成が好ましい。より好ましくは、酸化物導電体層308b及び酸化物導電体層308bに近接して配置する層の間隙に配置する窓部14の数をできるだけ少なくするとよい。特に、当該間隙に窓部14を配置しない構成が好ましい。
酸化物導電体層308bと重なるように導電膜350を備え、酸化物導電体層308bと導電膜350の間に誘電体層(ここでは絶縁膜314、348)を備える。
例えば、大気中において、検知素子C1の一対の電極のどちらかに、大気と異なる誘電率を有するものが近づくと、容量が形成され、形成された容量が回路に寄生する。具体的には、指などが検知素子C1の一方の電極に近づくと、一方の電極と、指などの間に容量が形成される。そして、形成された容量が検知素子C1と電気的に接続される回路に寄生して、検知回路の動作を変化させる。これにより、検知素子C1を近接検知器に用いることができる。
本発明の一態様において、検知素子C1は実施の形態1に示す容量素子105に限られない。
例えば、変形することができる検知素子C1の容量は、変形に伴い変化する。
具体的には、指などが検知素子C1に触れることにより、一対の電極の間隔が狭くなると、検知素子C1の容量は大きくなる。これにより、検知素子C1を 接触検知器に用いることができる。その結果、例えば、筆圧などを検知することができる。
具体的には、検知素子C1を折り曲げることにより、一対の電極の間隔が狭くなる。これにより、検知素子C1の容量は大きくなる。これにより、検知素子C1を屈曲検知器に用いることができる。
一対の電極は、導電性の材料を含む。
例えば、無機導電性材料、有機導電性材料、金属又は導電性セラミックスなどを一対の電極のそれぞれに用いることができる。
具体的には、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、銀又はマンガンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金又は上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いることができる。
または、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる。
または、グラフェン又はグラファイトを用いることができる。グラフェンを含む膜は、例えば膜状に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。還元する方法としては、熱を加える方法や還元剤を用いる方法等を挙げることができる。
または、導電性高分子を用いることができる。なお、実施の形態1で示した酸化物導電体層の構成、形成方法を参照できる。
《検知ユニット10U及び変換器CONV》
図10は本発明の一態様の検知ユニット10U及び変換器CONVの構成及び駆動方法を説明する図である。
図10(A)は本発明の一態様の検知ユニット10U及び変換器CONVの構成を説明する回路図であり、図10(B−1)及び図10(B−2)は駆動方法を説明するタイミングチャートである。また、図10(C)に図10(A)とは異なるマトリクス状の変換器CONVを示し、図11(A)にマトリクス状の検知ユニット10Uを示す。
検知ユニット10Uは例えば第1のトランジスタM1乃至第3のトランジスタM3を含む(図10(A)、図11(A))。また、検知ユニット10Uは電源電位及び信号を供給する配線を含む。例えば、信号線DL、配線VPI、配線CS、走査線G1、配線RES、配線VRES及び信号線DLなどを含む。
なお、検知回路19を窓部14と重ならない領域に配置してもよい。例えば、窓部14と重ならない領域に配線を配置することにより、検知ユニット10Uの一方の側から他方の側にあるものを視認し易くできる。
また、第1のトランジスタM1乃至第3のトランジスタM3は半導体層を有する。例えば、4族の元素、化合物半導体又は酸化物半導体を半導体層に用いることができる。具体的には、シリコンを含む半導体、ガリウムヒ素を含む半導体又はインジウムを含む酸化物半導体などを適用できる。
例えば、同一の工程で形成することができるトランジスタを第1のトランジスタM1乃至第3のトランジスタM3に用いることができる。
第1のトランジスタM1乃至第3のトランジスタM3のいずれか一は、酸化物半導体層を有することが好ましい。このとき、該酸化物半導体層は、酸化物導電体層と同一表面上に位置することが好ましい。酸化物半導体層を有するトランジスタはオフ電流が小さいため、第1のトランジスタM1は該酸化物半導体層を有することが特に好ましい。
導電性を有する材料を配線に適用できる。
例えば、無機導電性材料、有機導電性材料、金属又は導電性セラミックスなどを配線に用いることができる。具体的には、容量素子の一対の電極に用いることができる材料と同一の材料を適用できる。
アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、又はパラジウム等の金属材料や、該金属材料を含む合金材料を走査線G1、信号線DL、配線VPI、配線RES及び配線VRESに用いることができる。
基材16に形成した膜を加工して、基材16に検知回路19を形成してもよい。
又は、他の基材に形成された検知回路19を基材16に転置してもよい。
検知ユニット10Uが供給する検知信号DATAを変換してFPC1に供給することができるさまざまな回路を、変換器CONVに用いることができる(図9(A))。例えば、トランジスタM4を変換器CONVに用いることができる。また図10(C)に示すように、トランジスタM4、M5を変換器CONVに用いることができる。
本発明の一態様の検知回路19は、ゲートが検知素子C1の一方の電極(ここでは酸化物導電体層308b)と電気的に接続され、第1の電極が配線VPIと電気的に接続される第1のトランジスタM1を備える(図10(A))。配線VPIは、例えば接地電位を供給することができる。
また、ゲートが走査線G1と電気的に接続され、第1の電極が第1のトランジスタM1の第2の電極と電気的に接続され、第2の電極が信号線DLと電気的に接続される第2のトランジスタM2を備える構成であってもよい。走査線G1は、選択信号を供給することができる。信号線DLは、例えば検知信号DATAを供給することができる
また、ゲートが配線RESと電気的に接続され、第1の電極が検知素子C1の一方の電極(ここでは酸化物導電体層308b)と電気的に接続され、第2の電極が配線VRESと電気的に接続される第3のトランジスタM3を備える構成であってもよい。配線RESは、リセット信号を供給することができる。配線VRESは、例えば第1のトランジスタM1を導通状態にすることができる電位を供給することができる。
検知素子C1の容量は、例えば、酸化物導電体層308b又は導電膜350にものが近接すること、もしくは酸化物導電体層308b又は導電膜350の間隔が変化することにより変化する。これにより、検知ユニット10Uは検知素子C1の容量又は寄生する容量の大きさの変化に基づく検知信号DATAを供給することができる。
また、検知ユニット10Uは、検知素子C1の他方の電極(ここでは導電膜350)の電位を制御することができる制御信号を供給することができる配線CSを備える。なお、導電膜350が検知回路の配線CSを兼ねていてもよい。
なお、検知素子C1の一方の電極(ここでは酸化物導電体層308b)、第1のトランジスタM1のゲート及び第3のトランジスタM3の第1の電極が電気的に接続される結節部をノードAという。
配線VRESは所定の電位を供給することができる。例えば、検知ユニット10Uが備えるトランジスタを導通状態にする電位を、当該トランジスタのゲートに供給することができる。配線VPIは例えば接地電位を供給することができ、配線VPO及び配線BRは例えば高電源電位を供給することができる。また、配線RESはリセット信号を供給することができ、走査線G1は選択信号を供給することができる。また、信号線DLは検知信号DATAを供給することができ、端子OUTは検知信号DATAに基づいて変換された信号を供給することができる。
なお、検知信号DATAを変換して端子OUTに供給することができるさまざまな回路を、変換器CONVに用いることができる。例えば、変換器CONVを検知回路19と電気的に接続することにより、ソースフォロワ回路又はカレントミラー回路などが構成されるようにしてもよい。
具体的には、トランジスタM4を用いた変換器CONVを用いて、ソースフォロワ回路を構成できる(図10(A))。また、図10(C)に示すように、変換器CONVは、トランジスタM4、M5を有していてもよい。なお、第1のトランジスタM1乃至第3のトランジスタM3と同一の工程で作製することができるトランジスタをトランジスタM4、M5に用いてもよい。
前述の通り、本発明の一態様のアクティブマトリクス方式のタッチセンサは、検知素子を構成する電極と、読み出し配線が別の層で形成することができる。図11(B)に示すように、容量素子の一方の電極である酸化物導電体層308bと信号線DLとを別の層で形成し、信号線DLを細い幅で形成することで、寄生容量を小さくできる。これにより、タッチセンサの検出感度の低下を抑制できる。なお、酸化物導電体層308bは図11(C)に拡大図で示す複数の画素502と重なる。
<検知回路19の駆動方法>
検知回路19の駆動方法について説明する。
《第1のステップ》
第1のステップにおいて、第3のトランジスタM3を導通状態にした後に非導通状態にするリセット信号をゲートに供給し、検知素子C1の一方の電極(ここでは酸化物導電体層308b)の電位を所定の電位にする(図10(B−1)期間T1参照)。
具体的には、リセット信号を配線RESに供給させる。リセット信号が供給された第3のトランジスタM3は、ノードAの電位を例えば第1のトランジスタM1を導通状態にすることができる電位にする(図10(A))。
《第2のステップ》
第2のステップにおいて、第2のトランジスタM2を導通状態にする選択信号をゲートに供給し、第1のトランジスタM1の第2の電極を信号線DLに電気的に接続する。
具体的には、走査線G1に選択信号を供給させる。選択信号が供給された第2のトランジスタM2は、第1のトランジスタM1の第2の電極を信号線DLに電気的に接続する(図10(B−1)期間T2参照)。
《第3のステップ》
第3のステップにおいて、制御信号を検知素子の他方の電極(ここでは導電膜350)に供給し、制御信号及び検知素子C1の容量に基づいて変化する電位を第1のトランジスタM1のゲートに供給する。
具体的には、配線CSに矩形の制御信号を供給させる。矩形の制御信号を導電膜350に供給することで、検知素子C1の容量に基づいてノードAの電位を上昇する(図10(B−1)期間T2の後半を参照)。
例えば、検知素子が大気中に置かれている場合、大気より誘電率の高いものが、検知素子C1の導電膜350に近接して配置された場合、検知素子C1の容量は見かけ上大きくなる。
これにより、矩形の制御信号がもたらすノードAの電位の変化は、大気より誘電率の高いものが近接して配置されていない場合に比べて小さくなる(図10(B−2)実線参照)。
《第4のステップ》
第4のステップにおいて、第1のトランジスタM1のゲートの電位の変化がもたらす信号を信号線DLに供給する。
例えば、第1のトランジスタM1のゲートの電位にもたらされる変化に基づいて変化する電流を信号線DLに供給する。
変換器CONVは、信号線DLを流れる電流の変化を電圧の変化に変換し、該電圧を出力する。
《第5のステップ》
第5のステップにおいて、第2のトランジスタM2を非導通状態にする選択信号をゲートに供給する。
<タッチパネルの断面構成例1>
図12(A)に本発明の一態様のタッチパネルの断面模式図を示す。図12(A)に示すタッチパネルは、一対の基板間にアクティブマトリクス方式のタッチセンサ及び表示素子を有するため、薄型化を図ることができる。
タッチパネルは、可撓性基板392b、接着層394b、絶縁膜338b、トランジスタ102、トランジスタ103、コンタクト部108、容量部109、導電膜346b、絶縁膜348b、導電膜360、絶縁膜371、発光素子107、絶縁膜373、スペーサ375等を有する。発光素子107は、下部電極361、光学調整層363、EL層365、及び上部電極367を有する(図12(B))。
可撓性基板392b及び絶縁膜338bは、接着層394bで貼り合わされている。絶縁膜338b上には、トランジスタ103、トランジスタ102、コンタクト部108、容量部109等がある。トランジスタ103のソース電極又はドレイン電極と、導電膜360と、発光素子107の下部電極361と、は電気的に接続されている。
図12(A)では駆動回路部のトランジスタ、発光素子107の下部電極361とソース電極又はドレイン電極が接続するトランジスタに、トランジスタ103を用いている。また、画素部が有する他のトランジスタとしてトランジスタ102を用いている。トランジスタ103は、トランジスタ102に比べて電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。この結果、高速動作が可能な駆動回路部を作製することができる。また、駆動回路部の占有面積の小さいタッチセンサを作製することができる。また、オン電流の大きいトランジスタ103を画素部に設けることで、大型の表示パネル又はタッチパネルや、高精細な表示パネル又はタッチパネルにおいて配線数が増大しても、各配線における信号遅延を低減することが可能であり、表示むらを抑えることが可能である。なお、駆動回路部が有するトランジスタと、画素部が有するトランジスタは同じ構造であってもよい。また、駆動回路部が有する複数のトランジスタは、すべて同じ構造であってもよく、二種以上の構造であってもよい。また、画素部が有する複数のトランジスタは、すべて同じ構造であってもよく、二種以上の構造であってもよい。また、駆動回路部に1つのゲート電極を有するトランジスタを用いてもよい。また、アクティブマトリクス方式のタッチセンサと、アクティブマトリクス方式の表示素子において、用いるトランジスタは同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよいし、一部が同一の構成であってもよい。
発光素子107はトップエミッション構造であり、上部電極367側に光を射出する。発光素子107の発光領域と重ねてトランジスタ103、トランジスタ102、コンタクト部108、容量部109等を配置することで、画素の開口率を高めることができる。
さらに、タッチパネルは、可撓性基板392a、接着層394a、絶縁膜338a、容量素子105、導電膜346a、絶縁膜348a、着色層CFR、遮光層BM、接着層396等、を有する。容量素子105は、一対の電極として、酸化物導電体層308bと、導電膜350と、を有する。
可撓性基板392a及び絶縁膜338aは、接着層394aで貼り合わされている。絶縁膜338a上には、トランジスタ103、トランジスタ102、容量素子105等がある。本発明の一態様のタッチパネルでは、実施の形態1で示したように、トランジスタの酸化物半導体層と容量素子の一方の電極(酸化物導電体層、導電性を有する酸化物半導体層)を同一平面上に有する。
本発明の一態様のタッチパネルにおいて、遮光層は、タッチセンサと表示素子(発光素子)の間に位置し、遮光層は、トランジスタと重なる部分を有し、表示素子(発光素子)は、容量素子と重なる部分を有する。図12(A)では、容量素子105と発光素子107が重なり、遮光層BMがトランジスタ103やトランジスタ102と重なる例を示す。
本発明の一態様のタッチパネルにおいて、発光素子107の下部電極361の端部を覆う絶縁膜373は、トランジスタと重なる部分を有していてもよい。図12(A)では、絶縁膜373が、トランジスタ103やトランジスタ102と重なる例を示す。
本発明の一態様のタッチパネルは可撓性を有することが好ましい。図12(A)では、可撓性基板392a、392bを用いる例を示すが、本発明の一態様はこれに限られず、実施の形態1などで例示した基板を用いることができ、可撓性を有さない基板を用いてもよい。
図12に示した本発明の一態様のタッチパネルにおける3つの画素を含む断面模式図を図13(A)に示す。本発明の一態様のタッチパネルはカラーフィルタ方式を用いている。本発明の一態様のタッチパネルは、例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の画素で1つの色を表現する構成や、R(赤)、G(緑)、B(青)、W(白)の4色の画素で1つの色を表現する構成、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)の4色の画素で1つの色を表現する構成等が適用できる。色要素としては特に限定はなく、RGBWY以外の色を用いてもよく、例えば、シアン、マゼンタなどで構成されてもよい。
着色層CFR、CFG、CFBとマイクロキャビティ構造(光学調整層363)との組み合わせにより、本発明の一態様のタッチパネルからは、色純度の高い光を取り出すことができる。光学調整層363の膜厚は、各画素の色に応じて変化させればよい。なお、着色層CFR、CFG、CFBのそれぞれの間に遮光層BMを設ける例を示したが、着色層CFR、CFG、CFBの間に遮光層BMを設けなくてもよい。
また、図13(B)に示すように、画素ごとにEL層365が塗り分けられていてもよい。また、スペーサ375を有していなくてもよい。また、導電膜360や絶縁膜371を有さず、下部電極361が、直接トランジスタのソース電極又はドレイン電極と接続していてもよい。
また、図13(C)に示すように、タッチパネルは、発光素子と電気的に接続するトランジスタを有していなくてもよい。導電膜857a及び導電膜857bは、外部接続電極であり、FPC等と電気的に接続させることができる。導電膜814は必ずしも設ける必要は無いが、下部電極361の抵抗に起因する電圧降下を抑制できるため、設けることが好ましい。また、同様の目的で、上部電極367と電気的に接続する導電膜を絶縁膜371上、EL層365上、又は上部電極367上などに設けてもよい。
<タッチパネルの断面構成例2>
図14に本発明の一態様のタッチパネルの断面模式図を示す。
図14に示すタッチパネルは、可撓性基板を3枚用いている点で、タッチパネルの構成例1と異なる。具体的には、タッチセンサと、表示パネルと、を接着層396で貼り合わせた構成である。タッチセンサは、可撓性基板392a上に、トランジスタ102、トランジスタ103、容量素子105を有する。表示パネルは、一対の可撓性基板392b、392d間に、トランジスタ102、トランジスタ103、発光素子107、着色層CFR、遮光層BM等を有する。
図15に本発明の一態様のタッチパネルの断面模式図を示す。
図15に示すタッチパネルは、可撓性基板を4枚用いている点で、タッチパネルの構成例1と異なる。具体的には、タッチセンサと、表示パネルと、を接着層396で貼り合わせた構成である。タッチセンサは、一対の可撓性基板392a、392c間に、トランジスタ102、トランジスタ103、容量素子105を有する。表示パネルは、一対の可撓性基板392b、392d間に、トランジスタ102、トランジスタ103、発光素子107、着色層CFR、遮光層BM等を有する。
図14、15に示す構成に比べて、図12(A)に示した構成は基板や接着層の数が少なく、タッチパネルを薄型化することができるため好ましい。本発明の一態様では、センサ部と表示部の距離を狭くしても、タッチセンサの検出感度の低下を抑制できる。したがって、本発明の一態様では、タッチセンサもしくはタッチパネルの薄型化と、高い検出感度を両立することができる。また、本発明の一態様では、可撓性を有するタッチパネルを提供することができる。なお、タッチパネルの厚さや可撓性を問わない場合、図14、15に示すような構成を適用し、センサ部と表示部の距離を広くすることで、タッチセンサの検出感度の低下を抑制できる。
<タッチパネルの断面構成例3>
図16に本発明の一態様のタッチパネルの断面模式図を示す。
タッチパネルは、可撓性基板392b、接着層394b、絶縁膜338b、トランジスタ104、トランジスタ106、導電膜346b、絶縁膜348b、導電膜360、絶縁膜371、発光素子107、絶縁膜373、スペーサ375等を有する。
図16に示すように、容量素子105と電気的に接続するトランジスタと、発光素子107と電気的に接続するトランジスタと、は、異なる構成であってもよい。また、先の構成例で示したように、同様の構成であってもよい。また、タッチセンサの駆動回路と、画素の駆動回路においても、トランジスタの構成が同様であってもよいし、異なっていてもよい。
<タッチパネルの断面構成例4>
図17に本発明の一態様のタッチパネルの断面模式図を示す。
タッチパネルは、可撓性基板392b、接着層394b、絶縁膜338b、トランジスタ104、トランジスタ106、着色層CFR、導電膜346b、絶縁膜348b、導電膜360、絶縁膜371、発光素子107、絶縁膜373、スペーサ375、接着層394c、可撓性基板392c等を有する。
発光素子107はボトムエミッション構造であり、着色層CFR側に光を射出する。
さらに、タッチパネルは、可撓性基板392a、接着層394a、絶縁膜338a、トランジスタ102、トランジスタ103、容量素子105、導電膜346a、絶縁膜348a、遮光層BM、接着層396等、を有する。
本発明の一態様のタッチパネルにおいて、遮光層は、トランジスタと重なる部分を有し、表示素子(発光素子)は、容量素子と重なる部分を有する。図17では、容量素子105と発光素子107が重なり、遮光層BMがトランジスタ102、103、104、106と重なる例を示す。
<タッチパネルに用いる材料の一例>
次に、タッチパネルに用いることができる材料等を説明する。なお、本明細書中の他の記載も参照できる。
基板には、ガラス、石英、有機樹脂、金属、合金などの材料を用いることができる。発光素子からの光を取り出す側の基板は、該光に対する透光性を有する材料を用いる。
特に、可撓性基板を用いることが好ましい。例えば、有機樹脂や可撓性を有する程度の厚さのガラス、金属、合金を用いることができる。
ガラスに比べて有機樹脂は比重が小さいため、可撓性基板として有機樹脂を用いると、ガラスを用いる場合に比べてタッチパネルを軽量化でき、好ましい。
基板には、靱性が高い材料を用いることが好ましい。これにより、耐衝撃性に優れ、破損しにくいタッチパネルを実現できる。例えば、有機樹脂基板や、厚さの薄い金属基板もしくは合金基板を用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて、軽量であり、破損しにくいタッチパネルを実現できる。
金属材料や合金材料は熱伝導性が高く、基板全体に熱を容易に伝導できるため、タッチパネルの局所的な温度上昇を抑制することができ、好ましい。金属材料や合金材料を用いた基板の厚さは、10μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
金属基板や合金基板を構成する材料としては、特に限定はないが、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、又は、アルミニウム合金もしくはステンレス等の金属の合金などを好適に用いることができる。
また、基板に、熱放射率が高い材料を用いるとタッチパネルの表面温度が高くなることを抑制でき、タッチパネルの破壊や信頼性の低下を抑制できる。例えば、基板を金属基板と熱放射率の高い層(例えば、金属酸化物やセラミック材料を用いることができる)の積層構造としてもよい。
可撓性及び透光性を有する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。特に、熱膨張率の低い材料を用いることが好ましく、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、PET等を好適に用いることができる。また、繊維体に樹脂を含浸した基板(プリプレグともいう)や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜて熱膨張率を下げた基板を使用することもできる。
可撓性基板としては、上記材料を用いた層が、装置の表面を傷などから保護するハードコート層(例えば、窒化シリコン層など)や、押圧を分散可能な材質の層(例えば、アラミド樹脂層など)等と積層されて構成されていてもよい。
可撓性基板は、複数の層を積層して用いることもできる。特に、ガラス層を有する構成とすると、水や酸素に対するバリア性を向上させ、信頼性の高いタッチパネルとすることができる。
例えば、発光素子に近い側からガラス層、接着層、及び有機樹脂層を積層した可撓性基板を用いることができる。当該ガラス層の厚さとしては20μm以上200μm以下、好ましくは25μm以上100μm以下とする。このような厚さのガラス層は、水や酸素に対する高いバリア性と可撓性を同時に実現できる。また、有機樹脂層の厚さとしては、10μm以上200μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下とする。このような有機樹脂層をガラス層よりも外側に設けることにより、ガラス層の割れやクラックを抑制し、機械的強度を向上させることができる。このようなガラス材料と有機樹脂の複合材料を基板に適用することにより、極めて信頼性が高いフレキシブルなタッチパネルとすることができる。
接着層394a、394b、394c、394dには、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC樹脂、PVB樹脂、EVA樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が機能素子に侵入することを抑制でき、タッチパネルの信頼性が向上するため好ましい。
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、発光素子からの光取り出し効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジルコニウム等を用いることができる。
タッチパネルが有するトランジスタの構造は特に限定されない。先の実施の形態でアクティブマトリクス方式のタッチセンサに用いたトランジスタと同様の構成を適用してもよい。例えば、スタガ型のトランジスタとしてもよいし、逆スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型又はボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、シリコン、ゲルマニウム等が挙げられる。または、In−Ga−Zn系金属酸化物などの、インジウム、ガリウム、亜鉛のうち少なくとも一つを含む酸化物半導体を用いてもよい。
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
発光素子としては、自発光が可能な素子を用いることができ、電流又は電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでいる。例えば、発光ダイオード(LED)、有機EL素子、無機EL素子等を用いることができる。
発光素子は、トップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型のいずれであってもよい。光を取り出す側の電極には、可視光を透過する導電膜を用いる。また、光を取り出さない側の電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。
可視光を透過する導電膜は、例えば、酸化インジウム、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などを用いて形成することができる。また、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、もしくはチタン等の金属材料、これら金属材料を含む合金、又はこれら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等も、透光性を有する程度に薄く形成することで用いることができる。また、上記材料の積層膜を導電膜として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とITOの積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。また、グラフェン等を用いてもよい。
可視光を反射する導電膜は、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、もしくはパラジウム等の金属材料、又はこれら金属材料を含む合金を用いることができる。また、上記金属材料や合金に、ランタン、ネオジム、又はゲルマニウム等が添加されていてもよい。また、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金等のアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や、銀と銅の合金、銀とパラジウムと銅の合金、銀とマグネシウムの合金等の銀を含む合金を用いて形成することができる。銀と銅を含む合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜又は金属酸化物膜を積層することで、アルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。また、上記可視光を透過する導電膜と金属材料からなる膜とを積層してもよい。例えば、銀とITOの積層膜、銀とマグネシウムの合金とITOの積層膜などを用いることができる。
電極は、それぞれ、蒸着法やスパッタリング法を用いて形成すればよい。そのほか、インクジェット法などの吐出法、スクリーン印刷法などの印刷法、又はメッキ法を用いて形成することができる。
下部電極361及び上部電極367の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、EL層365に陽極側から正孔が注入され、陰極側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層365において再結合し、EL層365に含まれる発光物質が発光する。
EL層365は少なくとも発光層を有する。EL層365は、発光層以外の層として、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、又はバイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)等を含む層をさらに有していてもよい。
EL層365には低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。EL層365を構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
発光素子は、一対の防湿性の高い絶縁膜の間に設けられていることが好ましい。これにより、発光素子に水等の不純物が侵入することを抑制でき、タッチパネルの信頼性の低下を抑制できる。
防湿性の高い絶縁膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の窒素と珪素を含む膜や、窒化アルミニウム膜等の窒素とアルミニウムを含む膜等が挙げられる。また、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等を用いてもよい。
例えば、防湿性の高い絶縁膜の水蒸気透過量は、1×10−5[g/(m2・day)]以下、好ましくは1×10−6[g/(m2・day)]以下、より好ましくは1×10−7[g/(m2・day)]以下、さらに好ましくは1×10−8[g/(m2・day)]以下とする。
防湿性の高い絶縁膜を、絶縁膜338aや絶縁膜338bに用いることが好ましい。
また、絶縁膜348a、絶縁膜348b、絶縁膜371としては、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン系樹脂等の有機材料をそれぞれ用いることができる。また、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。また、絶縁膜を複数積層させることで、各絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜373としては、有機絶縁材料又は無機絶縁材料を用いて形成する。樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、又はフェノール樹脂等を用いることができる。特に感光性の樹脂材料を用い、絶縁膜373の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
絶縁膜373の形成方法は、特に限定されないが、フォトリソグラフィ法、スパッタ法、蒸着法、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)等を用いればよい。
スペーサ375は、無機絶縁材料、有機絶縁材料、金属材料等を用いて形成することができる。例えば、無機絶縁材料や有機絶縁材料としては、上記絶縁膜に用いることができる各種材料が挙げられる。金属材料としては、チタン、アルミニウムなどを用いることができる。導電材料を含むスペーサ375と上部電極367とを電気的に接続させる構成とすることで、上部電極367の抵抗に起因した電位降下を抑制できる。また、スペーサ375は、順テーパ形状であっても逆テーパ形状であってもよい。
トランジスタの電極や配線、又は発光素子の補助電極等として機能する、タッチパネルに用いる導電膜は、例えば、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらの元素を含む合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。また、導電膜は、導電性の金属酸化物を用いて形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3等)、酸化スズ(SnO2等)、酸化亜鉛(ZnO)、ITO、インジウム亜鉛酸化物(In2O3−ZnO等)又はこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
着色層は特定の波長帯域の光を透過する有色層である。例えば、赤色の波長帯域の光を透過する赤色(R)のカラーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長帯域の光を透過する青色(B)のカラーフィルタなどを用いることができる。各着色層は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
遮光層は、隣接する着色層の間に設けられている。遮光層は隣接する発光素子からの光を遮光し、隣接する発光素子間における混色を抑制する。ここで、着色層の端部を、遮光層と重なるように設けることにより、光漏れを抑制することができる。遮光層としては、発光素子からの発光を遮る材料を用いることができ、例えば、金属材料や顔料や染料を含む樹脂材料を用いてブラックマトリクスを形成すればよい。なお、遮光層は、駆動回路部などの発光部以外の領域に設けると、導波光などによる意図しない光漏れを抑制できるため好ましい。
また、着色層及び遮光層を覆うオーバーコートを設けてもよい。オーバーコートを設けることで、着色層に含有された不純物等の発光素子への拡散を防止することができる。オーバーコートは、発光素子からの発光を透過する材料から構成され、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等の無機絶縁膜や、アクリル膜、ポリイミド膜等の有機絶縁膜を用いることができ、有機絶縁膜と無機絶縁膜との積層構造としてもよい。
また、接着層の材料を着色層及び遮光層上に塗布する場合、オーバーコートの材料として接着層の材料に対してぬれ性の高い材料を用いることが好ましい。例えば、オーバーコートとして、ITO膜などの酸化物導電膜や、透光性を有する程度に薄いAg膜等の金属膜を用いることが好ましい。
接続体825a、825bとしては、熱硬化性の樹脂に金属粒子を混ぜ合わせたペースト状又はシート状の、熱圧着によって異方性の導電性を示す材料を用いることができる。金属粒子としては、例えばニッケル粒子を金で被覆したものなど、2種類以上の金属が層状となった粒子を用いることが好ましい。
なお、本実施の形態では、発光素子を用いたタッチパネルを例に説明したが、本発明の一態様のタッチパネルには、他の表示素子や発光素子を用いてもよい。
本明細書等において、表示素子、発光素子、及び、表示素子又は発光素子を有するタッチパネルは、様々な形態を用いること、又は様々な素子を有することができる。表示素子、表示装置、発光素子、発光装置、又はタッチパネルは、例えば、EL素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、干渉変調(IMOD)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表示素子などの少なくとも一つを有している。これらの他にも、電気的又は磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有していてもよい。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク、電子粉流体(登録商標)、又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部又は全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部又は全部が、アルミニウム、銀などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
なお、ここでは、表示パネルを用いて、様々な表示を行う場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、情報を表示しないようにしてもよい。一例としては、表示パネルのかわりに、照明装置として用いてもよい。照明装置に適用することにより、デザイン性に優れたインテリアとして、活用することができる。または、様々な方向を照らすことができる照明として活用することができる。または、表示パネルのかわりに、バックライトやフロントライトなどの光源として用いてもよい。つまり、表示パネルのための照明装置として活用してもよい。
<タッチパネルの作製方法例>
本発明の一態様の可撓性を有するタッチパネルの作製方法を例示する。
まず、作製基板201上に剥離層203を形成し、剥離層203上に被剥離層205を形成する(図18(A))。また、作製基板221上に剥離層223を形成し、剥離層223上に被剥離層225を形成する(図18(B))。
ここでは、島状の剥離層を形成する例を示したがこれに限られない。この工程では、作製基板から被剥離層を剥離する際に、作製基板と剥離層の界面、剥離層と被剥離層の界面、又は剥離層中で剥離が生じるような材料を選択する。本実施の形態では、被剥離層と剥離層の界面で剥離が生じる場合を例示するが、剥離層や被剥離層に用いる材料の組み合わせによってはこれに限られない。なお、被剥離層が積層構造である場合、剥離層と接する層を特に第1の層と記す。
例えば、剥離層がタングステン膜と酸化タングステン膜との積層構造である場合、タングステン膜と酸化タングステン膜との界面(又は界面近傍)で剥離が生じることで、被剥離層側に剥離層の一部(ここでは酸化タングステン膜)が残ってもよい。また被剥離層側に残った剥離層は、その後除去してもよい。
作製基板には、少なくとも作製工程中の処理温度に耐えうる耐熱性を有する基板を用いる。作製基板としては、例えばガラス基板、石英基板、サファイア基板、半導体基板、セラミック基板、金属基板、樹脂基板、プラスチック基板などを用いることができる。
作製基板にガラス基板を用いる場合、作製基板と剥離層との間に、下地膜として、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁膜を形成すると、ガラス基板からの汚染を防止でき、好ましい。
剥離層は、タングステン、モリブデン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、シリコンから選択された元素、該元素を含む合金材料、又は該元素を含む化合物材料等を用いて形成できる。シリコンを含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれでもよい。また、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、In−Ga−Zn酸化物等の金属酸化物を用いてもよい。剥離層に、タングステン、チタン、モリブデンなどの高融点金属材料を用いると、被剥離層の形成工程の自由度が高まるため好ましい。
剥離層は、例えばスパッタリング法、プラズマCVD法、塗布法(スピンコーティング法、液滴吐出法、ディスペンス法等を含む)、印刷法等により形成できる。剥離層の厚さは例えば10nm以上200nm以下、好ましくは20nm以上100nm以下とする。
剥離層が単層構造の場合、タングステン層、モリブデン層、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成することが好ましい。また、タングステンの酸化物もしくは酸化窒化物を含む層、モリブデンの酸化物もしくは酸化窒化物を含む層、又はタングステンとモリブデンの混合物の酸化物もしくは酸化窒化物を含む層を形成してもよい。なお、タングステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する。
また、剥離層として、タングステンを含む層とタングステンの酸化物を含む層の積層構造を形成する場合、タングステンを含む層を形成し、その上層に酸化物で形成される絶縁膜を形成することで、タングステン層と絶縁膜との界面に、タングステンの酸化物を含む層が形成されることを活用してもよい。また、タングステンを含む層の表面を、熱酸化処理、酸素プラズマ処理、亜酸化窒素(N2O)プラズマ処理、オゾン水等の酸化力の強い溶液での処理等を行ってタングステンの酸化物を含む層を形成してもよい。またプラズマ処理や加熱処理は、酸素、窒素、亜酸化窒素単独、あるいは該ガスとその他のガスとの混合気体雰囲気下で行ってもよい。上記プラズマ処理や加熱処理により、剥離層の表面状態を変えることにより、剥離層と後に形成される絶縁膜との密着性を制御することが可能である。
被剥離層として形成する層に特に限定は無い。例えば、図12(A)に示すタッチパネルを形成する場合は、一方の被剥離層として、絶縁膜338a、トランジスタ102、トランジスタ103、容量素子105、遮光層BM、及び着色層CFRなどを形成すればよい。また、他方の被剥離層として、絶縁膜338b、トランジスタ102、トランジスタ103、発光素子107などを形成すればよい。
剥離層に接して形成する絶縁膜338a、338bは、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン膜等を用いて、単層又は多層で形成することが好ましい。
該絶縁膜は、スパッタリング法、プラズマCVD法、塗布法、印刷法等を用いて形成することが可能であり、例えば、プラズマCVD法によって成膜温度を250℃以上400℃以下として形成することで、緻密で非常に防湿性の高い膜とすることができる。なお、絶縁膜の厚さは10nm以上3000nm以下、さらには200nm以上1500nm以下が好ましい。
次に、作製基板201と作製基板221とを、それぞれの被剥離層が形成された面が対向するように、接着層207を用いて貼り合わせ、接着層207を硬化させる(図18(C))。
なお、作製基板201と作製基板221の貼り合わせは減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
なお、図18(C)では、剥離層203との剥離層223の大きさが異なる場合を示したが、図18(D)に示すように、同じ大きさの剥離層を用いてもよい。
接着層207は剥離層203、被剥離層205、被剥離層225、及び剥離層223と重なるように配置する。そして、接着層207の端部は、剥離層203又は剥離層223の少なくとも一方(先に剥離したい方)の端部よりも内側に位置することが好ましい。これにより、作製基板201と作製基板221が強く密着することを抑制でき、後の剥離工程の歩留まりが低下することを抑制できる。
接着層207には、例えば、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型の接着剤等を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC樹脂、PVB樹脂、EVA樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。接着剤としては、所望の領域にのみ配置できる程度に流動性の低い材料を用いることが好ましい。例えば、接着シート、粘着シート、シート状もしくはフィルム状の接着剤を用いてもよい。例えば、OCA(optical clear adhesive)フィルムを好適に用いることができる。
接着剤は、貼り合わせ前から粘着性を有していてもよく、貼り合わせ後に加熱や光照射によって粘着性を発現してもよい。
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、大気中の水分の侵入による機能素子の劣化を抑制でき、装置の信頼性が向上するため好ましい。
次に、レーザ光の照射により、剥離の起点を形成する(図19(A)(B))。
作製基板201及び作製基板221はどちらから剥離してもよい。剥離層の大きさが異なる場合、大きい剥離層を形成した基板から剥離してもよいし、小さい剥離層を形成した基板から剥離してもよい。一方の基板上にのみ半導体素子、発光素子、表示素子等の素子を作製した場合、素子を形成した側の基板から剥離してもよいし、他方の基板から剥離してもよい。ここでは、作製基板201を先に剥離する例を示す。
レーザ光は、硬化状態の接着層207と、被剥離層205と、剥離層203とが重なる領域に対して照射する(図19(A)の矢印P1参照)。
第1の層の一部を除去することで、剥離の起点を形成できる(図19(B)の点線で囲った領域参照)。このとき、第1の層だけでなく、被剥離層205の他の層や、剥離層203、接着層207の一部を除去してもよい。
レーザ光は、剥離したい剥離層が設けられた基板側から照射することが好ましい。剥離層203と剥離層223が重なる領域にレーザ光の照射をする場合は、被剥離層205及び被剥離層225のうち被剥離層205のみにクラックを入れることで、選択的に作製基板201及び剥離層203を剥離することができる(図19(B)の点線で囲った領域参照。ここでは被剥離層205を構成する各層の一部を除去する例を示す。)。
そして、形成した剥離の起点から、被剥離層205と作製基板201とを分離する(図19(C)(D))。これにより、被剥離層205を作製基板201から作製基板221に転置することができる。
例えば、剥離の起点から、物理的な力(人間の手や治具で引き剥がす処理や、ローラーを回転させながら分離する処理等)によって被剥離層と作製基板201とを分離すればよい。
また、剥離層203と被剥離層との界面に水などの液体を浸透させて作製基板201と被剥離層とを分離してもよい。毛細管現象により液体が剥離層203と被剥離層の間にしみこむことで、容易に分離することができる。また、剥離時に生じる静電気が、被剥離層に含まれる機能素子に悪影響を及ぼすこと(半導体素子が静電気により破壊されるなど)を抑制できる。
次に、露出した被剥離層205と基板231とを、接着層233を用いて貼り合わせ、接着層233を硬化させる(図20(A))。
なお、被剥離層205と基板231の貼り合わせは減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
次に、レーザ光の照射により、剥離の起点を形成する(図20(B)(C))。
レーザ光は、硬化状態の接着層233と、被剥離層225と、剥離層223とが重なる領域に対して照射する(図20(B)の矢印P2参照)。第1の層の一部を除去することで、剥離の起点を形成できる(図20(C)の点線で囲った領域参照。ここでは被剥離層225を構成する各層の一部を除去する例を示す。)。このとき、第1の層だけでなく、被剥離層225の他の層や、剥離層223、接着層233の一部を除去してもよい。
レーザ光は、剥離層223が設けられた作製基板221側から照射することが好ましい。
そして、形成した剥離の起点から、被剥離層225と作製基板221とを分離する(図20(D))。これにより、被剥離層205及び被剥離層225を基板231に転置することができる。
以上に示した本発明の一態様のタッチパネルの作製方法では、それぞれ剥離層及び被剥離層が設けられた一対の作製基板を貼り合わせた後、レーザ光の照射により剥離の起点を形成し、それぞれの剥離層と被剥離層とを剥離しやすい状態にしてから、剥離を行う。これにより、剥離工程の歩留まりを向上させることができる。
また、それぞれ被剥離層が形成された一対の作製基板をあらかじめ貼り合わせた後に、剥離をし、作製したい装置を構成する基板を貼り合わせることができる。したがって、被剥離層の貼り合わせの際に、可撓性が低い作製基板どうしを貼り合わせることができ、可撓性基板どうしを貼り合わせた際よりも貼り合わせの位置合わせ精度を向上させることができる。
なお、図21(A)に示すように、剥離したい被剥離層205の端部は、剥離層203の端部よりも内側に位置するよう形成することが好ましい。これにより、剥離工程の歩留まりを高くすることができる。また、剥離したい被剥離層205が複数ある場合、図21(B)に示すように、被剥離層205ごとに剥離層203を設けてもよいし、図21(C)に示すように、1つの剥離層203上に複数の被剥離層205を設けてもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様のタッチパネルについて説明する。
実施の形態2で示したタッチパネルの各断面構成例では、容量素子105と電気的に接続するトランジスタ102や、当該トランジスタ102と同一表面上に位置するトランジスタ103を示した(図12〜図17参照)。これらのトランジスタのゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極や、配線等に用いる導電膜は、タッチパネルの使用者から視認される場合がある。例えば、図12において、可撓性基板392aと遮光層BMの間に位置する電極や配線が、タッチパネルの使用者から視認される場合がある。特に、電極や配線に、反射性の高い導電膜や、透光性の低い導電膜を用いると、使用者が該電極や該配線を視認しやすくなる。タッチパネルの品質の向上、表示品位の向上のためには、これら電極や配線が使用者に視認されにくいことが好ましい。
そこで、本発明の一態様のタッチパネルでは、使用者に電極や配線が視認されないよう、遮光層を設ける。
具体的には、図22に示すように、トランジスタ103やトランジスタ102、導電膜346a等が遮光層BM2を介して可撓性基板392aと重なるよう、遮光層BM2を配置する。これにより、タッチパネルの使用者から電極や配線が視認されることを抑制でき、タッチパネルの品質の向上や、表示品位の向上を図ることができる。例えば、図22では、遮光層BM2が、容量素子105と電気的に接続するトランジスタ103と重なっている。
なお、図22では、図12に示す遮光層BMの代わりに遮光層BM1を示したが、同様の材料を用いることができる。また、遮光層BM2も、遮光層BMと同様の材料を用いることができる。他の構成は図12と同様であるため、先の記載を参酌できる。
遮光層BM2は、タッチパネルに含まれる電極や配線よりも、タッチパネルの表示面側又はセンサ面側に位置して設けられればよい。なお、遮光層BM2は表示素子と重ならない領域を有する。
図22に示すタッチパネルの作製方法例を、図23を用いて説明する。
第1の作製基板51a上に第1の剥離層53aを形成し、第1の剥離層53a上に第1の絶縁膜55aを形成し、第1の絶縁膜55a上に第1の機能層56を形成する(図23(A))。第1の絶縁膜55aは、図22の絶縁膜338bに相当する。第1の機能層56は、図22の発光素子107、発光素子107と電気的に接続するトランジスタ103、表示部が有するトランジスタ102、発光素子107側の駆動回路部が有するトランジスタ103等を含む。
同様に、第2の作製基板51b上に第2の剥離層53bを形成し、第2の剥離層53b上に第2の絶縁膜55bを形成し、第2の絶縁膜55b上に第2の機能層57を形成する(図23(B))。第2の絶縁膜55bは、図22の絶縁膜338aに相当する。第2の機能層57は、図22の容量素子105、容量素子105と電気的に接続するトランジスタ102、容量素子105側の駆動回路部が有するトランジスタ103、着色層CFR、遮光層BM1等を含む。
このとき、実施の形態1に示すように、容量素子105の電極に酸化物導電体層を用いることが好ましい。また、トランジスタ102の半導体層に酸化物半導体層を用いることが好ましい。
同様に、第3の作製基板51c上に第3の剥離層53cを形成し、第3の剥離層53c上に第3の絶縁膜55cを形成し、第3の絶縁膜55c上に第3の機能層58を形成する(図23(C))。第3の絶縁膜55cは、図22の絶縁膜338xに相当する。第3の機能層58は、図22の遮光層BM2等を含む。
第1の作製基板51a上に形成した第1の機能層56と、第2の作製基板51b上に形成した第2の機能層57を、第1の接着層59aで貼り合わせる(図23(D))。第1の接着層59aは図22の接着層396に相当する。
このとき、発光素子107と容量素子105が重なる部分を有するように、第1の機能層56及び第2の機能層57を貼り合わせることが好ましい。
次に、第2の作製基板51bと第2の絶縁膜55bとを分離する(図23(E))。ここでは、第2の剥離層53bと第2の絶縁膜55bの界面で分離する例を示すが、これに限られない。そして、露出した第2の絶縁膜55bと、第3の作製基板51c上に形成した第3の機能層58を、第2の接着層59bで貼り合わせる(図23(F))。このとき、遮光層BM2とトランジスタ102が重なる部分を有するように、第2の絶縁膜55b及び第3の機能層58を貼り合わせることが好ましい。
その後、第3の作製基板51cと第3の絶縁膜55cとを分離する(図23(G))。ここでは、第3の剥離層53cと第3の絶縁膜55cの界面で分離する例を示すが、これに限られない。そして、露出した第3の絶縁膜55cと、第1の可撓性基板60bを、第3の接着層59cで貼り合わせる(図23(H))。同様に、第1の作製基板51aと第1の絶縁膜55aとを分離する。ここでは、第1の剥離層53aと第1の絶縁膜55aの界面で分離する例を示すが、これに限られない。そして、露出した第1の絶縁膜55aと、第2の可撓性基板60aを、第4の接着層59dで貼り合わせる(図23(H))。なお、第1の作製基板51aと第3の作製基板51cはどちらを先に剥離してもよい。
本作製方法では、それぞれ機能層が形成された一対の作製基板をあらかじめ貼り合わせた後に、剥離をし、可撓性基板を貼り合わせることができる。したがって、機能層の貼り合わせの際に、可撓性が低い作製基板どうしを貼り合わせることができ、可撓性基板どうしを貼り合わせた際よりも貼り合わせの位置合わせ精度を向上させることができる。したがって、発光素子とカラーフィルタ、発光素子とタッチセンサ等の貼り合わせの位置合わせ精度が高い作製方法であるといえる。
なお、遮光層BM2上に直接タッチセンサを作製できる場合は、2つの作製基板のみでタッチパネルを作製してもよい。具体的には、第2の機能層57として、遮光層BM2及びタッチセンサを形成する。そして、第1の作製基板51a上に形成した第1の機能層56と、第2の作製基板51b上に形成した第2の機能層57を、第1の接着層59aで貼り合わせる。それぞれの作製基板を機能層から剥離し、露出した絶縁膜と可撓性基板を接着層で貼り合わせることで、図24に示すような本発明の一態様のタッチパネルを作製することができる。
また、本発明の一態様のタッチパネルは、遮光層BM2を有していなくてもよい。例えば、可撓性基板392aに代えて、円偏光板などの反射防止層を用いることで、本発明の一態様のタッチパネルの品質の向上を図ることもできる。また、本発明の一態様のタッチパネルは、可撓性基板392aと反射防止層の双方を有していてもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様を適用して作製できる電子機器及び照明装置について、図25及び図26を用いて説明する。
本発明の一態様のタッチパネルは可撓性を有する。したがって、可撓性を有する電子機器や照明装置に好適に用いることができる。また、本発明の一態様を適用することで、信頼性が高く、繰り返しの曲げに対して強い電子機器や照明装置を作製できる。
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、本発明の一態様のタッチパネルは可撓性を有するため、家屋やビルの内壁もしくは外壁、又は、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
また、本発明の一態様の電子機器は、タッチパネル及び二次電池を有していてもよい。このとき、非接触電力伝送を用いて、二次電池を充電することができると好ましい。
二次電池としては、例えば、ゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池(リチウムイオンポリマー電池)等のリチウムイオン二次電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などが挙げられる。
本発明の一態様の電子機器は、タッチパネル及びアンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器が二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
図25(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402のほか、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、本発明の一態様のタッチパネルを表示部7402に用いることにより作製される。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高い携帯電話機を歩留まりよく提供できる。
図25(A)に示す携帯電話機7400は、指などで表示部7402に触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指などで表示部7402に触れることにより行うことができる。
また、操作ボタン7403の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部7402に表示される画像の種類を切り替えることができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
図25(B)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7100は、筐体7101、表示部7102、バンド7103、バックル7104、操作ボタン7105、入出力端子7106などを備える。
携帯情報端末7100は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7102はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7102はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7102に表示されたアイコン7107に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7105は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7100に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7105の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7100は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7100は入出力端子7106を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7106を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7106を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7100の表示部7102には、本発明の一態様のタッチパネルが組み込まれている。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高い携帯情報端末を歩留まりよく提供できる。
図25(C)〜(E)は、照明装置の一例を示している。照明装置7200、照明装置7210、及び照明装置7220は、それぞれ、操作スイッチ7203を備える台部7201と、台部7201に支持される発光部を有する。
図25(C)に示す照明装置7200は、波状の発光面を有する発光部7202を備える。したがってデザイン性の高い照明装置となっている。
図25(D)に示す照明装置7210の備える発光部7212は、凸状に湾曲した2つの発光部が対称的に配置された構成となっている。したがって照明装置7210を中心に全方位を照らすことができる。
図25(E)に示す照明装置7220は、凹状に湾曲した発光部7222を備える。したがって、発光部7222からの発光を、照明装置7220の前面に集光するため、特定の範囲を明るく照らす場合に適している。
また、照明装置7200、照明装置7210及び照明装置7220の備える各々の発光部はフレキシブル性を有しているため、発光部を可塑性の部材や可動なフレームなどの部材で固定し、用途に合わせて発光部の発光面を自在に湾曲可能な構成としてもよい。
なおここでは、台部によって発光部が支持された照明装置について例示したが、発光部を備える筐体を天井に固定する、又は天井からつり下げるように用いることもできる。発光面を湾曲させて用いることができるため、発光面を凹状に湾曲させて特定の領域を明るく照らす、又は発光面を凸状に湾曲させて部屋全体を明るく照らすこともできる。
ここで、各発光部には、本発明の一態様のタッチパネルが組み込まれている。本発明の一態様により、湾曲した発光部を備え、且つ信頼性の高い照明装置を歩留まりよく提供できる。
図25(F)には、携帯型のタッチパネルの一例を示している。タッチパネル7300は、筐体7301、表示部7302、操作ボタン7303、引き出し部材7304、制御部7305を備える。
タッチパネル7300は、筒状の筐体7301内にロール状に巻かれたフレキシブルな表示部7302を備える。
また、タッチパネル7300は制御部7305によって映像信号を受信可能で、受信した映像を表示部7302に表示することができる。また、制御部7305にはバッテリをそなえる。また、制御部7305にコネクターを接続する端子部を備え、映像信号や電力を有線により外部から直接供給する構成としてもよい。
また、操作ボタン7303によって、電源のON、OFF動作や表示する映像の切り替え等を行うことができる。
図25(G)には、表示部7302を引き出し部材7304により引き出した状態のタッチパネル7300を示す。この状態で表示部7302に映像を表示することができる。また、筐体7301の表面に配置された操作ボタン7303によって、片手で容易に操作することができる。また、図25(F)のように操作ボタン7303を筐体7301の中央でなく片側に寄せて配置することで、片手で容易に操作することができる。
なお、表示部7302を引き出した際に表示部7302の表示面が平面状となるように固定するため、表示部7302の側部に補強のためのフレームを設けていてもよい。
なお、この構成以外に、筐体にスピーカを設け、映像信号と共に受信した音声信号によって音声を出力する構成としてもよい。
表示部7302には、本発明の一態様のタッチパネルが組み込まれている。本発明の一態様により、軽量で、且つ信頼性の高いタッチパネルを歩留まりよく提供できる。
図26(A)〜(C)に、折りたたみ可能な携帯情報端末310を示す。図26(A)に展開した状態の携帯情報端末310を示す。図26(B)に展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末310を示す。図26(C)に折りたたんだ状態の携帯情報端末310を示す。携帯情報端末310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
表示パネル316はヒンジ313によって連結された3つの筐体315に支持されている。ヒンジ313を介して2つの筐体315間を屈曲させることにより、携帯情報端末310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様のタッチパネルを表示パネル316に用いることができる。例えば、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができるタッチパネルを適用できる。
なお、本発明の一態様において、タッチパネルが折りたたまれた状態又は展開された状態であることを検知して、検知情報を供給するセンサを備える構成としてもよい。タッチパネルの制御装置は、タッチパネルが折りたたまれた状態であることを示す情報を取得して、折りたたまれた部分(又は折りたたまれて使用者から視認できなくなった部分)の動作を停止してもよい。具体的には、表示を停止してもよい。また、タッチセンサによる検知を停止してもよい。
同様に、タッチパネルの制御装置は、タッチパネルが展開された状態であることを示す情報を取得して、表示やタッチセンサによる検知を再開してもよい。
図26(D)(E)に、折りたたみ可能な携帯情報端末320を示す。図26(D)に表示部322が外側になるように折りたたんだ状態の携帯情報端末320を示す。図26(E)に、表示部322が内側になるように折りたたんだ状態の携帯情報端末320を示す。携帯情報端末320を使用しない際に、非表示部325を外側に折りたたむことで、表示部322の汚れや傷つきを抑制できる。本発明の一態様のタッチパネルを表示部322に用いることができる。
図26(F)は携帯情報端末330の外形を説明する斜視図である。図26(G)は、携帯情報端末330の上面図である。図26(H)は携帯情報端末340の外形を説明する斜視図である。
携帯情報端末330、340は、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとしてそれぞれ用いることができる。
携帯情報端末330、340は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン339を一の面に表示することができる(図26(F)(H))。また、破線の矩形で示す情報337を他の面に表示することができる(図26(G)(H))。なお、情報337の例としては、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の通知、電子メールや電話などの着信を知らせる表示、電子メールなどの題名、電子メールなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報337が表示されている位置に、情報337の代わりに、操作ボタン339、アイコンなどを表示してもよい。なお、図26(F)(G)では、上側に情報337が表示される例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、図26(H)に示す携帯情報端末340のように、横側に表示されていてもよい。
例えば、携帯情報端末330の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末330を収納した状態で、その表示(ここでは情報337)を確認することができる。
具体的には、着信した電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末330の上方から観察できる位置に表示する。使用者は、携帯情報端末330をポケットから取り出すことなく、表示を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
携帯情報端末330の筐体335、携帯情報端末340の筐体336がそれぞれ有する表示部333には、本発明の一態様のタッチパネルを用いることができる。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高いタッチパネルを歩留まりよく提供できる。
また、図26(I)に示す携帯情報端末345のように、3面以上に情報を表示してもよい。ここでは、情報355、情報356、情報357がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。
携帯情報端末345の筐体354が有する表示部358には、本発明の一態様のタッチパネルを用いることができる。本発明の一態様により、湾曲した表示部を備え、且つ信頼性の高いタッチパネルを歩留まりよく提供できる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様のタッチセンサやタッチパネルに含まれる酸化物半導体の構成について説明する。
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、本明細書において、結晶が三方晶又は菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
<酸化物半導体の構造>
まず、酸化物半導体の構造について説明する。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous like Oxide Semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OSなどがある。
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であって不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が柔軟であり、短距離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a−like OSは、微小な領域において周期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
<CAAC−OS>
まずは、CAAC−OSについて説明する。
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と、回折パターンと、の複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
以下では、TEMによって観察したCAAC−OSについて説明する。図27(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取得は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって行うことができる。
図27(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を図27(B)に示す。図27(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層の配列は、CAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)又は上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面又は上面と平行となる。
図27(B)に示すように、CAAC−OSは特徴的な原子配列を有する。図27(C)は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。図27(B)、(C)より、ペレット一つの大きさは1nm以上3nm以下程度であり、ペレットとペレットとの傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板5120上のCAAC−OSのペレット5100の配置を模式的に示すと、レンガ又はブロックが積み重なったような構造となる(図27(D))。図27(C)で観察されたペレットとペレットとの間で傾きが生じている箇所は、図27(D)に示す領域5161に相当する。
また、図28(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図28(A)の領域(1)〜(3)を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ図28(B)〜(D)に示す。図28(B)〜(D)より、ペレットは、金属原子が三角形状、四角形状又は六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
次に、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図29(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面又は上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、CAAC−OSのout−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。より好ましいCAAC−OSは、out−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
一方、CAAC−OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC−OSの場合は、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図29(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに対し、InGaZnO4の単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図29(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸及びb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図30(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面又は上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図30(B)に示す。図30(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸及びb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図30(B)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面及び(100)面などに起因すると考えられる。また、図30(B)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
上述したように、CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をするとCAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(又は分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
不純物及び酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。具体的には、8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10−9/cm3以上のキャリア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性又は実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<nc−OS>
次に、nc−OSについて説明する。
nc−OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下、又は1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OSに対し、ペレットよりも大きい径のX線を用いた場合、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークは検出されない。また、nc−OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OSに対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、又はNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。
a−like OSは、高分解能TEM像において鬆が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。
鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。以下では、a−like OSが、CAAC−OS及びnc−OSと比べて不安定な構造であることを示すため、電子照射による構造の変化を示す。
電子照射を行う試料として、a−like OS(試料A)、nc−OS(試料B)及びCAAC−OS(試料C)を準備する。いずれの試料もIn−Ga−Zn酸化物である。
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料は、いずれも結晶部を有することがわかる。
なお、どの部分を一つの結晶部と見なすかの判定は、以下のように行えばよい。例えば、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO4の結晶部と見なすことができる。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa−b面に対応する。
図31は、各試料の結晶部(22箇所から45箇所)の平均の大きさを調査した例である。ただし、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図31より、a−like OSは、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体的には、図31中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×108e−/nm2においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OS及びCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。具体的には、図31中の(2)及び(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc−OS及びCAAC−OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.4nm程度及び2.1nm程度であることがわかる。
このように、a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OS及びCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られないことがわかる。即ち、a−like OSは、nc−OS及びCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OS及びCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc−OSの密度及びCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度及びCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
<成膜モデル>
以下では、CAAC−OS及びnc−OSの成膜モデルについて説明する。
図32(A)は、スパッタリング法によりCAAC−OSが成膜される様子を示した成膜室内の模式図である。
ターゲット1130は、バッキングプレート上に接着されている。ターゲット1130及びバッキングプレート下には、複数のマグネットが配置される。該複数のマグネットによって、ターゲット1130上には磁場が生じている。マグネットの磁場を利用して成膜速度を高めるスパッタリング法は、マグネトロンスパッタリング法と呼ばれる。
ターゲット1130は、多結晶構造を有し、いずれかの結晶粒には劈開面が含まれる。なお、劈開面の詳細については後述する。
基板1120は、ターゲット1130と向かい合うように配置しており、その距離d(ターゲット−基板間距離(T−S間距離)ともいう。)は0.01m以上1m以下、好ましくは0.02m以上0.5m以下とする。成膜室内は、ほとんどが成膜ガス(例えば、酸素、アルゴン、又は酸素を50体積%以上の割合で含む混合ガス)で満たされ、0.01Pa以上100Pa以下、好ましくは0.1Pa以上10Pa以下に制御される。ここで、ターゲット1130に一定以上の電圧を印加することで、放電が始まり、プラズマが確認される。なお、ターゲット1130上の磁場によって、高密度プラズマ領域が形成される。高密度プラズマ領域では、成膜ガスがイオン化することで、イオン1101が生じる。イオン1101は、例えば、酸素の陽イオン(O+)やアルゴンの陽イオン(Ar+)などである。
イオン1101は、電界によってターゲット1130側に加速され、やがてターゲット1130と衝突する。このとき、劈開面から平板状又はペレット状のスパッタ粒子であるペレット1100a及びペレット1100bが剥離し、叩き出される。なお、ペレット1100a及びペレット1100bは、イオン1101の衝突の衝撃によって、構造に歪みが生じる場合がある。
ペレット1100aは、三角形、例えば正三角形の平面を有する平板状又はペレット状のスパッタ粒子である。また、ペレット1100bは、六角形、例えば正六角形の平面を有する平板状又はペレット状のスパッタ粒子である。なお、ペレット1100a及びペレット1100bなどの平板状又はペレット状のスパッタ粒子を総称してペレット1100と呼ぶ。ペレット1100の平面の形状は、三角形、六角形に限定されない、例えば、三角形が2個以上6個以下合わさった形状となる場合がある。例えば、三角形(正三角形)が2個合わさった四角形(ひし形)となる場合もある。
ペレット1100は、成膜ガスの種類などに応じて厚さが決定する。理由は後述するが、ペレット1100の厚さは、均一にすることが好ましい。また、スパッタ粒子は厚みのないペレット状である方が、厚みのあるサイコロ状であるよりも好ましい。
ペレット1100は、プラズマを通過する際に電荷を受け取ることで、側面が負又は正に帯電する場合がある。ペレット1100は、側面に酸素原子を有し、当該酸素原子が負に帯電する可能性がある。例えば、ペレット1100aが、側面に負に帯電した酸素原子を有する例を図34に示す。このように、側面が同じ極性の電荷を帯びることにより、電荷同士の反発が起こり、平板状の形状を維持することが可能となる。なお、CAAC−OSが、In−Ga−Zn酸化物である場合、インジウム原子と結合した酸素原子が負に帯電する可能性がある。または、インジウム原子、ガリウム原子、又は亜鉛原子と結合した酸素原子が負に帯電する可能性がある。
図32(A)に示すように、例えば、ペレット1100は、プラズマ中を凧のように飛翔し、ひらひらと基板1120上まで舞い上がっていく。ペレット1100は電荷を帯びているため、ほかのペレット1100が既に堆積している領域が近づくと、斥力が生じる。ここで、基板1120の上面では、基板1120の上面に平行な向きの磁場が生じている。また、基板1120及びターゲット1130間には、電位差が与えられているため、基板1120からターゲット1130に向けて電流が流れている。したがって、ペレット1100は、基板1120の上面において、磁場及び電流の作用によって、力(ローレンツ力)を受ける(図35参照)。このことは、フレミングの左手の法則によって理解できる。なお、ペレット1100に与える力を大きくするためには、基板1120の上面において、基板1120の上面に平行な向きの磁場が10G以上、好ましくは20G以上、さらに好ましくは30G以上、より好ましくは50G以上となる領域を設けるとよい。または、基板1120の上面において、基板1120の上面に平行な向きの磁場が、基板1120の上面に垂直な向きの磁場の1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上となる領域を設けるとよい。
また、基板1120は加熱されており、ペレット1100と基板1120との間で摩擦などの抵抗が小さい状態となっている。その結果、図36(A)に示すように、ペレット1100は、基板1120の上面を滑空するように移動する。ペレット1100の移動は、平板面を基板1120に向けた状態で起こる。その後、図36(B)に示すように、既に堆積しているほかのペレット1100の側面まで到達すると、側面同士が結合する。このとき、ペレット1100の側面にある酸素原子が脱離する。脱離した酸素原子によって、CAAC−OS中の酸素欠損が埋まる場合があるため、欠陥準位密度の低いCAAC−OSとなる。
また、ペレット1100が基板1120上で加熱されることにより、原子が再配列し、イオン1101の衝突で生じた構造の歪みが緩和される。歪みの緩和されたペレット1100は、ほぼ単結晶となる。ペレット1100がほぼ単結晶となることにより、ペレット1100同士が結合した後に加熱されたとしても、ペレット1100自体の伸縮はほとんど起こり得ない。したがって、ペレット1100間の隙間が広がることで結晶粒界などの欠陥を形成し、クレバス化することがない。また、隙間には、伸縮性のある金属原子などが敷き詰められ、向きのずれたペレット1100同士の側面を高速道路のように繋いでいると考えられる。
以上のようなモデルにより、ペレット1100が基板1120上に堆積していくと考えられる。したがって、エピタキシャル成長とは異なり、被形成面が結晶構造を有さない場合においても、CAAC−OSの成膜が可能であることがわかる。例えば、基板1120の上面(被形成面)の構造が非晶質構造であっても、CAAC−OSを成膜することは可能である。
また、CAAC−OSは、平坦面に対してだけでなく、被形成面である基板1120の上面に凹凸がある場合でも、その形状に沿ってペレット1100が配列することがわかる。例えば、基板1120の上面が原子レベルで平坦な場合、ペレット1100はab面と平行な平面である平板面を下に向けて並置するため、厚さが均一で平坦、かつ高い結晶性を有する層が形成される。そして、当該層がn段(nは自然数。)積み重なることで、CAAC−OSを得ることができる(図32(B)参照)。
一方、基板1120の上面が凹凸を有する場合でも、CAAC−OSは、ペレット1100が凸面に沿って並置した層がn段(nは自然数。)積み重なった構造となる。基板1120が凹凸を有するため、CAAC−OSは、ペレット1100間に隙間が生じやすい場合がある。ただし、ペレット1100間で分子間力が働き、凹凸があってもペレット間の隙間はなるべく小さくなるように配列する。したがって、凹凸があっても高い結晶性を有するCAAC−OSとすることができる(図32(C)参照)。
したがって、CAAC−OSは、レーザ結晶化が不要であり、大面積のガラス基板などであっても均一な成膜が可能である。
このようなモデルによってCAAC−OSが成膜されるため、スパッタ粒子が厚みのないペレット状である方が好ましい。なお、スパッタ粒子が厚みのあるサイコロ状である場合、基板1120上に向ける面が一定とならず、厚さや結晶の配向を均一にできない場合がある。
以上に示した成膜モデルにより、非晶質構造を有する被形成面上であっても、高い結晶性を有するCAAC−OSを得ることができる。
また、CAAC−OSは、ペレット1100のほかに酸化亜鉛粒子を有する成膜モデルによっても説明することができる。
酸化亜鉛粒子は、ペレット1100よりも質量が小さいため、先に基板1120に到達する。基板1120の上面において、酸化亜鉛粒子は、水平方向に優先的に結晶成長することで薄い酸化亜鉛層を形成する。該酸化亜鉛層は、c軸配向性を有する。なお、該酸化亜鉛層の結晶のc軸は、基板1120の法線ベクトルに平行な方向を向く。該酸化亜鉛層は、CAAC−OSを成長させるためのシード層の役割を果たすため、CAAC−OSの結晶性を高める機能を有する。なお、該酸化亜鉛層は、厚さが0.1nm以上5nm以下、ほとんどが1nm以上3nm以下となる。該酸化亜鉛層は十分薄いため、結晶粒界をほとんど確認することができない。
したがって、結晶性の高いCAAC−OSを成膜するためには、化学量論的組成よりも高い割合で亜鉛を含むターゲットを用いることが好ましい。
同様に、nc−OSは、図33に示す成膜モデルによって理解することができる。なお、図33と図32(A)との違いは、基板1120の加熱の有無のみである。
したがって、基板1120は加熱されておらず、ペレット1100と基板1120との間で摩擦などの抵抗が大きい状態となっている。その結果、ペレット1100は、基板1120の上面を滑空するように移動することができないため、不規則に降り積もっていくことでnc−OSを得ることができる。
<劈開面>
以下では、CAAC−OSの成膜モデルにおいて記載のターゲットの劈開面について説明する。
まずは、ターゲットの劈開面について図37を用いて説明する。図37に、InGaZnO4の結晶の構造を示す。なお、図37(A)は、c軸を上向きとし、b軸に平行な方向からInGaZnO4の結晶を観察した場合の構造を示す。また、図37(B)は、c軸に平行な方向からInGaZnO4の結晶を観察した場合の構造を示す。
InGaZnO4の結晶の各結晶面における劈開に必要なエネルギーを、第一原理計算により算出する。なお、計算には、擬ポテンシャルと、平面波基底を用いた密度汎関数プログラム(CASTEP)を用いる。なお、擬ポテンシャルには、ウルトラソフト型の擬ポテンシャルを用いる。また、汎関数には、GGA PBEを用いる。また、カットオフエネルギーは400eVとする。
初期状態における構造のエネルギーは、セルサイズを含めた構造最適化を行った後に導出する。また、各面で劈開後の構造のエネルギーは、セルサイズを固定した状態で、原子配置の構造最適化を行った後に導出する。
図37に示したInGaZnO4の結晶の構造をもとに、第1の面、第2の面、第3の面、第4の面のいずれかで劈開した構造を作製し、セルサイズを固定した構造最適化計算を行う。ここで、第1の面は、Ga−Zn−O層とIn−O層との間の結晶面であり、(001)面(又はab面)に平行な結晶面である(図37(A)参照)。第2の面は、Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間の結晶面であり、(001)面(又はab面)に平行な結晶面である(図37(A)参照)。第3の面は、(110)面に平行な結晶面である(図37(B)参照)。第4の面は、(100)面(又はbc面)に平行な結晶面である(図37(B)参照)。
以上のような条件で、各面で劈開後の構造のエネルギーを算出する。次に、劈開後の構造のエネルギーと初期状態における構造のエネルギーとの差を、劈開面の面積で除すことで、各面における劈開しやすさの尺度である劈開エネルギーを算出する。なお、構造のエネルギーは、構造に含まれる原子と電子に対して、電子の運動エネルギーと、原子間、原子−電子間、及び電子間の相互作用と、を考慮したエネルギーである。
計算の結果、第1の面の劈開エネルギーは2.60J/m2、第2の面の劈開エネルギーは0.68J/m2、第3の面の劈開エネルギーは2.18J/m2、第4の面の劈開エネルギーは2.12J/m2であることがわかった(表1参照)。
この計算により、図37に示したInGaZnO4の結晶の構造において、第2の面における劈開エネルギーが最も低くなる。即ち、Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間が最も劈開しやすい面(劈開面)であることがわかる。したがって、本明細書において、劈開面と記載する場合、最も劈開しやすい面である第2の面のことを示す。
Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間である第2の面に劈開面を有するため、図37(A)に示すInGaZnO4の結晶は、二つの第2の面と等価な面で分離することができる。したがって、ターゲットにイオンなどを衝突させる場合、もっとも劈開エネルギーの低い面で劈開したウェハース状のユニット(我々はこれをペレットと呼ぶ。)が最小単位となって飛び出してくると考えられる。その場合、InGaZnO4のペレットは、Ga−Zn−O層、In−O層及びGa−Zn−O層の3層となる。
また、第1の面(Ga−Zn−O層とIn−O層との間の結晶面であり、(001)面(又はab面)に平行な結晶面)よりも、第3の面((110)面に平行な結晶面)、第4の面((100)面(又はbc面)に平行な結晶面)の劈開エネルギーが低いことから、ペレットの平面形状は三角形状又は六角形状が多いことが示唆される。
次に、古典分子動力学計算により、ターゲットとしてホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を仮定し、当該ターゲットをアルゴン(Ar)又は酸素(O)によりスパッタした場合の劈開面について評価する。計算に用いたInGaZnO4の結晶(2688原子)の断面構造を図38(A)に、上面構造を図38(B)に示す。なお、図38(A)に示す固定層は、位置が変動しないよう原子の配置を固定した層である。また、図38(A)に示す温度制御層は、常に一定の温度(300K)とした層である。
古典分子動力学計算には、富士通株式会社製Materials Explorer5.0を用いる。なお、初期温度を300K、セルサイズを一定、時間刻み幅を0.01フェムト秒、ステップ数を1000万回とする。計算では、当該条件のもと、原子に300eVのエネルギーを与え、InGaZnO4の結晶のab面に垂直な方向からセルに原子を入射させる。
図39(A)は、図38に示したInGaZnO4の結晶を有するセルにアルゴンが入射してから99.9ピコ秒(psec)後の原子配列を示す。また、図39(B)は、セルに酸素が入射してから99.9ピコ秒後の原子配列を示す。なお、図39では、図38(A)に示した固定層の一部を省略して示す。
図39(A)より、アルゴンがセルに入射してから99.9ピコ秒までに、図37(A)に示した第2の面に対応する劈開面から亀裂が生じる。したがって、InGaZnO4の結晶に、アルゴンが衝突した場合、最上面を第2の面(0番目)とすると、第2の面(2番目)に大きな亀裂が生じることがわかる。
一方、図39(B)より、酸素がセルに入射してから99.9ピコ秒までに、図37(A)に示した第2の面に対応する劈開面から亀裂が生じることがわかる。ただし、酸素が衝突した場合は、InGaZnO4の結晶の第2の面(1番目)において大きな亀裂が生じることがわかる。
したがって、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットの上面から原子(イオン)が衝突すると、InGaZnO4の結晶は第2の面に沿って劈開し、平板状の粒子(ペレット)が剥離することがわかる。また、このとき、ペレットの大きさは、アルゴンを衝突させた場合よりも、酸素を衝突させた場合の方が小さくなることがわかる。
なお、上述の計算から、剥離したペレットは損傷領域を含むことが示唆される。ペレットに含まれる損傷領域は、損傷によって生じた欠陥に酸素を反応させることで修復できる場合がある。
そこで、衝突させる原子の違いによって、ペレットの大きさが異なることについて調査する。
図40(A)に、図38に示したInGaZnO4の結晶を有するセルにアルゴンが入射した後、0ピコ秒から0.3ピコ秒までにおける各原子の軌跡を示す。したがって、図40(A)は、図38から図39(A)の間の期間に対応する。
図40(A)より、アルゴンが上から数えて第1層(Ga−Zn−O層)のガリウム(Ga)と衝突すると、当該ガリウムが上から数えて第3層(Ga−Zn−O層)の亜鉛(Zn)と衝突した後、当該亜鉛が上から数えて第6層(Ga−Zn−O層)の近傍まで到達することがわかる。なお、ガリウムと衝突したアルゴンは、外に弾き飛ばされる。したがって、InGaZnO4の結晶を含むターゲットにアルゴンを衝突させた場合、図38(A)における第2の面(2番目)に亀裂が入ると考えられる。
また、図40(B)に、図38に示したInGaZnO4の結晶を有するセルに酸素が入射した後、0ピコ秒から0.3ピコ秒までにおける各原子の軌跡を示す。したがって、図40(B)は、図38から図39(A)の間の期間に対応する。
一方、図40(B)より、酸素が上から数えて第1層(Ga−Zn−O層)のガリウム(Ga)と衝突すると、当該ガリウムが上から数えて第3層(Ga−Zn−O層)の亜鉛(Zn)と衝突した後、当該亜鉛が上から数えて第5層(In−O層)まで到達しないことがわかる。なお、ガリウムと衝突した酸素は、外に弾き飛ばされる。したがって、InGaZnO4の結晶を含むターゲットに酸素を衝突させた場合、図38(A)における第2の面(1番目)に亀裂が入ると考えられる。
本計算からも、InGaZnO4の結晶は、原子(イオン)が衝突した場合、劈開面から剥離することが示唆される。
また、亀裂の深さの違いを保存則の観点から検討する。エネルギー保存則及び運動量保存則は、式(1)及び式(2)のように示すことができる。ここで、Eは衝突前のアルゴン又は酸素の持つエネルギー(300eV)、mAはアルゴン又は酸素の質量、vAは衝突前のアルゴン又は酸素の速度、v’Aは衝突後のアルゴン又は酸素の速度、mGaはガリウムの質量、vGaは衝突前のガリウムの速度、v’Gaは衝突後のガリウムの速度である。
アルゴン又は酸素の衝突が弾性衝突であると仮定すると、vA、v’A、vGa及びv’Gaの関係は式(3)のように表すことができる。
式(1)、式(2)及び式(3)より、vGaを0とすると、アルゴン又は酸素が衝突した後のガリウムの速度v’Gaは、式(4)のように表すことができる。
式(4)において、mAにアルゴンの質量又は酸素の質量を代入し、それぞれの原子が衝突した後のガリウムの速度を比較する。アルゴン及び酸素の衝突前に持つエネルギーが同じである場合、アルゴンが衝突した場合の方が、酸素が衝突した場合よりも1.24倍ガリウムの速度が高いことがわかる。したがって、ガリウムの持つエネルギーもアルゴンが衝突した場合の方が、酸素が衝突した場合よりも速度の二乗分だけ高くなる。
アルゴンを衝突させた場合の方が、酸素を衝突させた場合よりも、衝突後のガリウムの速度(エネルギー)が高くなることがわかる。したがって、アルゴンを衝突させた場合の方が、酸素を衝突させた場合よりも深い位置に亀裂が生じたと考えられる。
以上の計算により、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットをスパッタすると、劈開面から剥離し、ペレットが形成されることがわかる。一方、劈開面を有さないターゲットの他の構造の領域をスパッタしてもペレットは形成されず、ペレットよりも微細な原子レベルの大きさのスパッタ粒子が形成される。該スパッタ粒子は、ペレットと比べて小さいため、スパッタリング装置に接続されている真空ポンプを介して排気されると考えられる。したがって、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットをスパッタした場合、様々な大きさ、形状の粒子が基板まで飛翔し、堆積することで成膜されるモデルは考えにくい。スパッタされたペレットが堆積してCAAC−OSを成膜する図32(A)などに記載のモデルが道理に適っている。
このようにして成膜されたCAAC−OSの密度は、単結晶OSと同程度の密度を有する。例えば、InGaZnO4のホモロガス構造を有する単結晶OSの密度は6.36g/cm3であるのに対し、同程度の原子数比であるCAAC−OSの密度は6.3g/cm3程度となる。
図41に、スパッタリング法で成膜したCAAC−OSであるIn−Ga−Zn酸化物(図41(A)参照)、及びそのターゲット(図41(B)参照)の断面における原子配列を示す。原子配列の観察には、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡法(HAADF−STEM:High−Angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscopy)を用いる。なお、HAADF−STEMでは、各原子の像強度は原子番号の二乗に比例する。したがって、原子番号の近いZn(原子番号30)とGa(原子番号31)とは、ほとんど区別できない。HAADF−STEMには、日立走査透過電子顕微鏡HD−2700を用いる。
図41(A)及び図41(B)を比較すると、CAAC−OSと、ターゲットは、ともにホモロガス構造を有しており、それぞれの原子の配置が対応していることがわかる。したがって、図32(A)などの成膜モデルに示したように、ターゲットの結晶構造が転写されることでCAAC−OSが成膜されることがわかる。
(実施の形態6)
本実施の形態においては、酸化物半導体膜の酸素欠損について、以下詳細に説明を行う。
<(1)VoHの形成しやすさ及び安定性>
酸化物半導体膜(以下、IGZOと示す。)が完全な結晶の場合、室温では、Hは、優先的にab面に沿って拡散する。また、450℃の加熱処理の際には、Hは、ab面及びc軸方向それぞれに拡散する。そこで、ここでは、IGZOに酸素欠損Voが存在する場合、Hは酸素欠損Vo中に入りやすいか否かについて説明する。ここで、酸素欠損Vo中にHがある状態をVoHと表記する。
計算には、図42に示すInGaZnO4結晶モデルを用いた。ここで、VoH中のHがVoから出ていき、酸素と結合する反応経路の活性化障壁(Ea)を、NEB(Nudged Elastic Band)法を用いて計算した。計算条件を表2に示す。
また、InGaZnO4結晶モデルにおいて、酸素が結合する金属元素及びその数の違いから、図42に示すように酸素サイト1乃至酸素サイト4がある。ここでは、酸素欠損Voを形成しやすい酸素サイト1及び酸素サイト2について計算を行った。
はじめに、酸素欠損Voを形成しやすい酸素サイト1として、3個のInと1個のZnと結合した酸素サイトについて計算を行った。
初期状態のモデルを図43(A)に示し、最終状態のモデルを図43(B)に示す。また、初期状態及び最終状態において、算出した活性化障壁(Ea)を図44に示す。なお、ここでの初期状態とは、酸素欠損Vo中にHがある状態(VoH)であり、最終状態とは、酸素欠損Voと、1個のGa及び2個のZnと結合した酸素とHとが結合した状態(H−O)を有する構造である。
計算の結果、酸素欠損Vo中のHが他のOと結合するには約1.52eVのエネルギーが必要であるのに対して、Oと結合したHが酸素欠損Vo中に入るには約0.46eVのエネルギーが必要であった。
ここで、計算により得られた活性化障壁(Ea)と数式6より、反応頻度(Γ)を算出した。なお、数式5において、kBはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。
頻度因子ν=1013[1/sec]と仮定して350℃における反応頻度を算出した。図43(A)に示すモデルから図43(B)に示すモデルへHが移動する頻度は5.52×100[1/sec]であった。また、図43(B)に示すモデルから図43(A)に示すモデルへHが移動する頻度は1.82×109[1/sec]であった。このことから、IGZO中を拡散するHは、近くに酸素欠損VoがあるとVoHを形成しやすく、一旦VoHを形成すると酸素欠損Voから放出されにくいと考えられる。
次に、酸素欠損Voを形成しやすい酸素サイト2として、1個のGaと2個のZnと結合した酸素サイトについて計算を行った。
初期状態のモデルを図45(A)に示し、最終状態のモデルを図45(B)に示す。また、初期状態及び最終状態において、算出した活性化障壁(Ea)を図46に示す。なお、ここでの初期状態とは、酸素欠損Vo中にHがある状態(VoH)であり、最終状態とは、酸素欠損Voと、1個のGa及び2個のZnと結合した酸素とHとが結合した状態(H−O)を有する構造である。
計算の結果、酸素欠損Vo中のHが他のOと結合するには約1.75eVのエネルギーが必要であるのに対して、Oと結合したHが酸素欠損Vo中に入るには約0.35eVのエネルギーが必要であった。
また、計算により得られた活性化障壁(Ea)と上記の数式5より、反応頻度(Γ)を算出した。
頻度因子ν=1013[1/sec]と仮定して350℃における反応頻度を算出した。図45(A)に示すモデルから図45(B)に示すモデルへHが移動する頻度は7.53×10−2[1/sec]であった。また、図45(B)に示すモデルから図45(A)に示すモデルへHが移動する頻度は1.44×1010[1/sec]であった。このことから、一旦VoHを形成すると酸素欠損VoからHは放出されにくいと考えられる。
以上のことから、アニール時にIGZO中のHは拡散し易く、酸素欠損Voがある場合は酸素欠損Voの中に入ってVoHとなりやすいことが分かった。
<(2)VoHの遷移レベル>
IGZO中において酸素欠損VoとHが存在する場合、<(1)VoHの形成しやすさ及び安定性>で示した、NEB法を用いた計算より、酸素欠損VoとHはVoHを形成しやすく、さらにVoHは安定であると考えられる。そこで、VoHがキャリアトラップに関与するかを調べるため、VoHの遷移レベルの算出を行った。
計算にはInGaZnO4結晶モデル(112原子)を用いた。図42に示す酸素サイト1及び酸素サイト2に対してVoHモデルを作成し、遷移レベルの算出を行った。計算条件を表3に示す。
実験値に近いバンドギャップが出るよう、交換項の混合比を調整したことで、欠陥のないInGaZnO4結晶モデルのバンドギャップは3.08eVとなり、実験値の3.15eVと近い結果となった。
欠陥Dをもつモデルの遷移レベル(ε(q/q’))は、以下の数式6により算出される。なお、ΔE(Dq)は欠陥Dの電荷qにおける形成エネルギーであり、数式7より算出される。
数式6及び数式7において、Etot(Dq)は欠陥Dを含むモデルの電荷qにおける全エネルギー、Etot(bulk)は欠陥のないモデル(完全結晶)の全エネルギー、Δniは欠陥に関する原子iの増減数、μiは原子iの化学ポテンシャル、εVBMは欠陥のないモデルにおける価電子帯上端のエネルギー、ΔVqは静電ポテンシャルに関する補正項、EFはフェルミエネルギーである。
算出したVoHの遷移レベルを図47に示す。図47中の数値は伝導帯下端からの深さである。図47より、酸素サイト1に対するVoHの遷移レベルは伝導帯下端の下0.05eVに存在し、酸素サイト2に対するVoHの遷移レベルは伝導帯下端の下0.11eVに存在するため、それぞれのVoHは電子トラップに関与すると考えられる。すなわち、VoHはドナーとして振る舞うことが明らかになった。また、VoHを有するIGZOは導電性を有することが明らかになった。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。