JP6419276B1 - セルロース含有樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂成形体に充分な機械的特性を与えつつ、実成形を問題なく行うのに充分な流動性を有し、成形体とした際に強度欠陥を実質的に有しない樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】熱可塑性樹脂100質量部と、セルロース成分0.1〜100質量部とを含む樹脂組成物であって、セルロース成分は、長さ/径比率(L/D比)が30未満のセルロースウィスカーと、L/D比が30以上のセルロースファイバーとを含む、樹脂組成物が提供される。セルロース成分の径は、500nm以下であることが好ましい。【選択図】なし
Description
本発明は、セルロースを含有する樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂は、軽く、加工特性に優れるため、自動車部材、電気・電子部材、事務機器ハウジング、精密部品等の多方面に広く使用されている。しかしながら、樹脂単体では、機械特性、寸法安定性等が不十分である場合が多く、樹脂と各種無機材料をコンポジットしたものが一般的に用いられている。
熱可塑性樹脂をガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイなどの無機充填剤である強化材料で強化した樹脂組成物は、比重が高いため、得られる樹脂成形体の重量が大きくなるという課題がある。
近年、樹脂の新たな強化材料として、セルロースが用いられるようになってきている。
セルロースは、その単体特性として、アラミド繊維に匹敵する高い弾性率と、ガラス繊維よりも低い線膨張係数を有することが知られている。また、真密度が1.56g/cm3と、低く、一般的な熱可塑性樹脂の補強材として使用されるガラス(密度2.4〜2.6g/cm3)やタルク(密度2.7g/cm3)と比較し圧倒的に軽い材料である。
セルロースは、樹木を原料とするもののほか、麻・綿花・ケナフ・キャッサバ等を原料とするものなど多岐にわたっている。さらには、ナタデココに代表されるようなバクテリアセルロースなども知られている。これら原料となる天然資源は地球上に大量に存在し、この有効利用のために、樹脂中にセルロースをフィラーとして活用する技術が注目を浴びている。
特許文献1〜4には、セルロースナノファイバー(以下、CNFと称することがある)と呼ばれる微細な繊維状セルロースを熱可塑性樹脂中に分散させる技術が記載されている。
CNFは、パルプ等を原料とし、ヘミセルロース部分を加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミルやディスクミルといった粉砕法により解繊することにより得られるものであり、水中において微細なナノ分散と呼ばれるレベルの高度の分散状態やネットワークを形成している。
しかしながら、樹脂中にCNFを配合するためには、CNFを乾燥し粉末化する必要があるが、CNFは水と分離する過程で微分散状態から、強固な凝集体となり、再分散しにくいといった課題がある。この凝集力はセルロースが持つ水酸基による水素結合により発現されており、非常に強固であるといわれている。
そのため、充分な性能を発現させるためには、CNFに強いせん断等を与えて、ナノメートルサイズ(すなわち1μm未満)の繊維径まで解繊する必要がある。また、解繊自体を充分に実現できても、解繊された状態を樹脂中で維持することは困難である。そして、セルロースファイバーを樹脂組成物中に充填して微分散させた場合、樹脂組成物の強度を発現するに至るよりも少量の充填で、樹脂組成物が大幅な溶融粘度上昇を引き起こしてしまう。大幅な溶融粘度の上昇は、成形加工、特に精密な構造を有する材料の成形加工ができないといった深刻な課題に直結し、仮に成形できたとしても意図したほどの機械的特性を発現できないという問題を招来する。
つまり、現時点において、樹脂成形体の所望の機械的特性を発現するために充分な量の微細なセルロースを樹脂組成物中で微分散させ、かつ実成形に耐えうるほどの充分な流動性を確保する技術は存在しない。
また、更には、CNFの樹脂組成物中での分散均一性が充分ではないことは、成形体の部位による機械的強度の違いを招くこととなり、得られる機械的特性は、非常にバラツキが大きなものとなる。この場合、成形体が、部分的に強度欠陥を有するものとなり、実製品としての信頼性を大幅に毀損してしまうこととなる。そのため、CNFはその優れた特性を持ちつつも、実際には、実用に供されていないのが実情である。
本発明は、樹脂成形体に充分な機械的特性を与えつつ、実成形を問題なく行うのに充分な流動性を有し、さらには、実用に耐えうる充分な物性安定性を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討を進めた結果、熱可塑性樹脂に対して、セルロース成分を必要量含む樹脂組成物において、セルロース成分が、長さ/径比率(L/D比)が30未満のセルロースウィスカーと、L/D比が30以上のセルロースファイバーを含むことにより、樹脂組成物が、表記の課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] 熱可塑性樹脂100質量部と、セルロース成分0.1〜100質量部とを含む樹脂組成物であって、前記セルロース成分は、長さ/径比率(L/D比)が30未満のセルロースウィスカーと、L/D比が30以上のセルロースファイバーを含む、樹脂組成物。
[2] 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらのいずれか2種以上の混合物からなる群より選択される上記態様1記載の樹脂組成物。
[3] 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンであり、該ポリプロピレンのISO1133に準拠して230℃で測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下である上記態様1記載の樹脂組成物。
[4] 前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂であり、該ポリアミド系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95である上記態様1記載の樹脂組成物。
[5] 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂であり、該ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95である上記態様1記載の樹脂組成物。
[6] 前記熱可塑性樹脂が、ポリアセタール系樹脂であり、該ポリアセタール系樹脂が、0.01〜4モル%のコモノマー成分を含有するコポリアセタールである上記態様1記載の樹脂組成物。
[7] 前記セルロース成分の総質量に対する前記セルロースウィスカーの比率が50質量%以上である上記態様1〜6のいずれか記載の樹脂組成物。
[8] 前記セルロース成分の径が500nm以下である上記態様1〜7のいずれか記載の樹脂組成物。
[9] 前記セルロースウィスカーの結晶化度及び前記セルロースファイバーの結晶化度がそれぞれ55%以上である上記態様1〜8のいずれか記載の樹脂組成物。
[10] 前記セルロースウィスカーの重合度が100以上300以下である上記態様1〜9のいずれか記載の樹脂組成物。
[11] 前記セルロースファイバーの重合度が400以上3500以下である上記態様1〜10のいずれか記載の樹脂組成物。
[12] 前記セルロース成分100質量部に対し、動的表面張力が60mN/m以下である有機成分を50質量部以下の量でさらに含む上記態様1〜11のいずれか記載の樹脂組成物。
[13] 前記有機成分が界面活性剤である上記態様12記載の樹脂組成物。
[14] 前記有機成分の静的表面張力が20mN/m以上である上記態様12又は13記載の樹脂組成物。
[15] 前記有機成分がロジン誘導体、アルキルフェニル誘導体、ビスフェノールA誘導体、βナフチル誘導体、スチレン化フェニル誘導体、及び硬化ひまし油誘導体からなる群より選択される1種以上である上記態様12〜14のいずれか記載の樹脂組成物。
[16] 前記有機成分がポリオキシエチレン誘導体である上記態様12〜15のいずれか記載の樹脂組成物。
[17] 前記樹脂組成物の引張破断強度の変動係数(標準偏差/算術平均値)が、10%以下である上記態様1〜16のいずれか記載の樹脂組成物。
[18] 前記樹脂組成物の引張降伏強度が、前記熱可塑性樹脂の引張降伏強度の1.1倍以上である上記態様1〜17のいずれか記載の樹脂組成物。
[19] 前記樹脂組成物の0℃〜60℃の範囲での線膨張係数が50ppm/k以下である上記態様1〜18のいずれか記載の樹脂組成物。
[20] 上記態様1〜19のいずれか記載の樹脂組成物より形成される樹脂ペレット。
[21] 上記態様1〜19のいずれか記載の樹脂組成物より形成される樹脂成形体。
[1] 熱可塑性樹脂100質量部と、セルロース成分0.1〜100質量部とを含む樹脂組成物であって、前記セルロース成分は、長さ/径比率(L/D比)が30未満のセルロースウィスカーと、L/D比が30以上のセルロースファイバーを含む、樹脂組成物。
[2] 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらのいずれか2種以上の混合物からなる群より選択される上記態様1記載の樹脂組成物。
[3] 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンであり、該ポリプロピレンのISO1133に準拠して230℃で測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下である上記態様1記載の樹脂組成物。
[4] 前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂であり、該ポリアミド系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95である上記態様1記載の樹脂組成物。
[5] 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂であり、該ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95である上記態様1記載の樹脂組成物。
[6] 前記熱可塑性樹脂が、ポリアセタール系樹脂であり、該ポリアセタール系樹脂が、0.01〜4モル%のコモノマー成分を含有するコポリアセタールである上記態様1記載の樹脂組成物。
[7] 前記セルロース成分の総質量に対する前記セルロースウィスカーの比率が50質量%以上である上記態様1〜6のいずれか記載の樹脂組成物。
[8] 前記セルロース成分の径が500nm以下である上記態様1〜7のいずれか記載の樹脂組成物。
[9] 前記セルロースウィスカーの結晶化度及び前記セルロースファイバーの結晶化度がそれぞれ55%以上である上記態様1〜8のいずれか記載の樹脂組成物。
[10] 前記セルロースウィスカーの重合度が100以上300以下である上記態様1〜9のいずれか記載の樹脂組成物。
[11] 前記セルロースファイバーの重合度が400以上3500以下である上記態様1〜10のいずれか記載の樹脂組成物。
[12] 前記セルロース成分100質量部に対し、動的表面張力が60mN/m以下である有機成分を50質量部以下の量でさらに含む上記態様1〜11のいずれか記載の樹脂組成物。
[13] 前記有機成分が界面活性剤である上記態様12記載の樹脂組成物。
[14] 前記有機成分の静的表面張力が20mN/m以上である上記態様12又は13記載の樹脂組成物。
[15] 前記有機成分がロジン誘導体、アルキルフェニル誘導体、ビスフェノールA誘導体、βナフチル誘導体、スチレン化フェニル誘導体、及び硬化ひまし油誘導体からなる群より選択される1種以上である上記態様12〜14のいずれか記載の樹脂組成物。
[16] 前記有機成分がポリオキシエチレン誘導体である上記態様12〜15のいずれか記載の樹脂組成物。
[17] 前記樹脂組成物の引張破断強度の変動係数(標準偏差/算術平均値)が、10%以下である上記態様1〜16のいずれか記載の樹脂組成物。
[18] 前記樹脂組成物の引張降伏強度が、前記熱可塑性樹脂の引張降伏強度の1.1倍以上である上記態様1〜17のいずれか記載の樹脂組成物。
[19] 前記樹脂組成物の0℃〜60℃の範囲での線膨張係数が50ppm/k以下である上記態様1〜18のいずれか記載の樹脂組成物。
[20] 上記態様1〜19のいずれか記載の樹脂組成物より形成される樹脂ペレット。
[21] 上記態様1〜19のいずれか記載の樹脂組成物より形成される樹脂成形体。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成形体に充分な機械的特性を与えつつ、実成形において問題のない流動性をも併せ持ち、更には実用に耐えうる充分な物性安定性を持つという効果を有する。
本発明の例示の態様について以下具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
≪熱可塑性樹脂≫
本発明において用いることができる熱可塑性樹脂としては、100℃〜350℃の範囲内に融点を有する結晶性樹脂、又は、100〜250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性樹脂が挙げられる。
本発明において用いることができる熱可塑性樹脂としては、100℃〜350℃の範囲内に融点を有する結晶性樹脂、又は、100〜250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性樹脂が挙げられる。
ここでいう結晶性樹脂の融点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温していった際に、現れる吸熱ピークのピークトップ温度をいう。吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を指す。この時の吸熱ピークのエンタルピーは、10J/g以上であることが望ましく、より望ましくは20J/g以上である。また測定に際しては、サンプルを一度融点+20℃以上の温度条件まで加温し、樹脂を溶融させたのち、10℃/分の降温速度で23℃まで冷却したサンプルを用いることが望ましい。
ここでいう非晶性樹脂のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置を用いて、23℃から2℃/分の昇温速度で昇温しながら、印加周波数10Hzで測定した際に、貯蔵弾性率が大きく低下し、損失弾性率が最大となるピークのピークトップの温度をいう。損失弾性率のピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側のピークのピークトップ温度を指す。この際の測定頻度は、測定精度を高めるため、少なくとも20秒に1回以上の測定とすることが望ましい。また、測定用サンプルの調製方法については特に制限はないが、成形歪の影響をなくす観点から、熱プレス成型品の切り出し片を用いることが望ましく、切り出し片の大きさ(幅及び厚み)はできるだけ小さい方が熱伝導の観点より望ましい。
本発明で好適に使用可能な熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でもポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が、取り扱い性・コストの観点からより好ましい樹脂である。
熱可塑性樹脂として好ましいポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα−オレフィン類)やアルケン類をモノマー単位として重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどに例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などに例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などに代表されるエチレンなどα−オレフィンの共重合体等が挙げられる。
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、さらにより好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、さらにより好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、組成物の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、組成物の流動性の観点から上記下限値を超えないことが望ましい。
また、セルロースとの親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。この際の酸としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及び、これらの無水物、クエン酸等のポリカルボン酸から、適宜選択可能である。これらの中でも好ましいのは、変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物である。変性方法については特に制限はないが、過酸化物の存在下/非存在下で融点以上に加熱して溶融混練する方法が一般的である。酸変性するポリオレフィン樹脂としては前出のポリオレフィン系樹脂はすべて使用可能であるが、ポリプロピレンが中でも好適に使用可能である。酸変性されたポリプロピレンは、単独で用いても構わないが、組成物としての変性率を調整するため、変性されていないポリプロピレンと混合して使用することがより好ましい。この際のすべてのポリプロピレンに対する酸変性されたポリプロピレンの割合は、0.5質量%〜50質量%である。より好ましい下限は、1質量%であり、更に好ましくは2質量%、更により好ましくは3質量%、特に好ましくは4質量%、最も好ましくは5質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%であり、更に好ましくは40質量%、更により好ましくは35質量%、特に好ましくは30質量%、最も好ましくは20質量%である。セルロースとの界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、樹脂としての延性を維持するためには、上限以下が好ましい。
酸変性されたポリプロピレンの好ましいISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)は、セルロース界面との親和性を高めるため、50g/10分以上であることが好ましい。より好ましい下限は100g/10分であり、更により好ましくは150g/10分、最も好ましくは200g/10分である。上限は特にないが、機械的強度の維持から500g/10分である。MFRをこの範囲内とすることにより、セルロースと樹脂との界面に存在しやすくなるという利点を享受できる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂の例示としては、ラクタム類の重縮合反応により得られるポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12や、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1−6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミンなどのジアミン類と、ブタン二酸 、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4ジカルボン酸等、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などのジカルボン酸類との共重合体として得られるポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6、C、ポリアミド2M5,C及び、これらがそれぞれ共重合された共重合体、一例としてポリアミド6,T/6,I等の共重合体が挙げられる。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12といった脂肪族ポリアミドや、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,Cといった脂環式ポリアミドがより好ましい。
本発明で使用可能なポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値は、20μモル/gであると好ましく、より好ましくは30μモル/gである。また、その末端カルボキシル基濃度の上限値は、150μモル/gであると好ましく、より好ましくは100μモル/gであり、更に好ましくは 80μモル/gである。
本実施形態のポリアミドにおいて、好ましい全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95であることがより好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは0.40であり、最も好ましくは0.45である。またカルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロース成分の組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
本実施形態のポリアミドにおいて、好ましい全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95であることがより好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは0.40であり、最も好ましくは0.45である。またカルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロース成分の組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
ポリアミド系樹脂の末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ 酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコールなどの末端基と反応する末端調整剤を重合液に添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸 、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、 カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルア ミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシル アミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
これら、アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、 1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。それらの末端基の濃度を求める方法として、具体的に、特開平7−228775号公報に記載された方法が推奨される。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H−NMRの積算回数は、十分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンは必要である。そのほか、特開2003−055549号公報に記載されているような滴定による測定方法によっても末端基の濃度を測定できる。ただし、混在する添加剤、潤滑剤等の影響をなるべく少なくするためには、1H−NMRによる定量がより好ましい。
本発明で使用可能なポリアミド系樹脂は、濃硫酸中30℃の条件下で測定した固有粘度[η]が、0.6〜2.0dL/gであることが好ましく、0.7〜1.4dL/gであることがより好ましく、0.7〜1.2dL/gであることが更に好ましく、0.7〜1.0dL/gであることが特に好ましい。好ましい範囲、その中でも特に好ましい範囲の固有粘度を有する上記ポリアミドを使用すると、樹脂組成物の射出成形時の金型内流動性を大幅に高め、成形片の外観を向上させるという効用を与えることができる。
本発明において、「固有粘度」とは、一般的に極限粘度と呼ばれている粘度と同義である。この粘度を求める具体的な方法は、96%濃硫酸中、30℃の温度条件下で、濃度の異なるいくつかの測定溶媒のηsp/cを測定し、そのそれぞれのηsp/cと濃度(c)との関係式を導き出し、濃度をゼロに外挿する方法である。このゼロに外挿した値が固有粘度である。
これらの詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice-Hall,Inc 1994)の291ページ〜294ページ等に記載されている。
このとき濃度の異なるいくつかの測定溶媒の点数は、少なくとも4点とすることが精度の観点より望ましい。このとき、推奨される異なる粘度測定溶液の濃度は、好ましくは、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dLの少なくとも4点である。
これらの詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice-Hall,Inc 1994)の291ページ〜294ページ等に記載されている。
このとき濃度の異なるいくつかの測定溶媒の点数は、少なくとも4点とすることが精度の観点より望ましい。このとき、推奨される異なる粘度測定溶液の濃度は、好ましくは、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dLの少なくとも4点である。
熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETと称することもある)、ポリブチレンサクシネート(脂肪族多価カルボン酸と脂肪族ポリオールとからなるポリエステル樹脂(以下、単位PBSと称することもある)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下、単にPBSAと称することもある)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、単にPBATと称することもある)、ポリヒドロキシアルカン酸(3−ヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂。以下、単にPHAと称することもある)、ポリ乳酸(以下、単にPLAと称することもある)、ポリブチレンテレフタレート(以下、単にPBTと称することもある)、ポリエチレンナフタレート(以下、単にPENと称することもある)、ポリアリレート(以下、単にPARと称することもある)、ポリカーボネート(以下、単にPCと称することもある)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でより好ましいポリエステル系樹脂は、PET、PBS、PBSA、PBT、PENが挙げられ、更に好ましくは、PBS、PBSA、PBTが挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂は、重合時のモノマー比率や末端安定化剤の添加の有無や量によって、末端基を自由に変えることが可能であるが、本発明におけるポリエステル系樹脂としては、該ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95であることがより好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは、0.40であり、最も好ましくは0.45である。また、カルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは、0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、セルロース成分の組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂には、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、1,3−ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましく使用できる。特に、コモノマー成分(例えば1,3−ジオキソラン)量としては0.01〜4モル%の範囲内がより好ましい。コモノマー成分量の好ましい下限量は、0.05モル%であり、より好ましくは0.1モル%であり、さらにより好ましくは0.2モル%である。また好ましい上限量は、3.5モル%であり、さらに好ましくは3.0モル%であり、さらにより好ましくは2.5モル%、最も好ましくは2.3モル%である。
押出加工や成形加工時の熱安定性の観点から、下限は上述の範囲内とすることが望ましく、機械的強度の観点より、上限は上述の範囲内とすることが望ましい。
<<セルロース成分>>
次に本発明において用いることができるセルロース成分について詳述する。
次に本発明において用いることができるセルロース成分について詳述する。
本発明で用いることができるセルロース成分は、少なくとも2種以上のセルロースの組合せである。一態様において、セルロース成分は、セルロースウィスカーとセルロースファイバーとを含む。両者を含む混合物は、樹脂組成物の流動性の悪化を抑制し、かつ成形体中の安定分散性が確保されるため、強度欠陥をなくすことが可能となる。
本発明におけるセルロースウィスカーとは、パルプ等を原料とし、これを裁断後、塩酸や硫酸といった酸中で、セルロースの非晶部分を溶解後に、残留した結晶質のセルロースを指し、長さ/径比率(L/D比)は30未満のものである。本開示で、「長さ」(L)及び「径」(D)は、セルロースウィスカーにおける長径及び短径、並びに、セルロースファイバーにおける繊維長及び繊維径に、それぞれ相当する。図1は、セルロースウィスカー(針状結晶粒子状セルロース)の例を示す顕微鏡画像であり、図1(B)は図1(A)の部分拡大図である。いずれのセルロースも針状結晶粒子状の構造をなし、L/Dが30未満の低L/Dであることが判る。
また、セルロースファイバーとは、パルプ等を100℃以上の熱水等で処理し、ヘミセルロース部分を加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミルやディスクミルといった粉砕法により解繊したセルロースを指し、L/D比は、30以上のものである。図2は、セルロースファイバー(繊維状セルロース)の例を示す顕微鏡画像である。いずれのセルロースも繊維状の構造をなし、L/Dが30以上の高L/Dであることが判る。
図1及び図2は、それぞれ、セルロース(加水分解後のウェットケーク)(図1について)又はセルローススラリー(図2について)を、1質量%(図1について)又は0.1質量%(図2について)濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させたものを走査型電子顕微鏡SEM(装置名:日本電子株式会社製 型式JSM−6700F、5kV、10mA、30,000倍(図1について)又は3,500倍(図2について))で観察したものである。より詳細には、前記ホモジナイザーで得られた水分散体を、0.1質量%(図1について)又は0.01質量%(図2について)にイオン交換水で希釈し、真鍮製ステージ上にカーボンテープで張り付けたマイカ上にキャストし、12時間常温で乾燥、これに真空下で白金蒸着(装置名:日本電子株式会社、商品名オートファインコーター JFC−1600、30mA、30秒間、想定膜厚8nm)した試料片を観察している。
セルロースウィスカーのL/D上限は、好ましくは25であり、より好ましくは20であり、さらにより好ましくは15であり、さらにより好ましくは10であり、最も好ましくは5である。下限は特に限定されないが、1を超えていればよい。樹脂組成物の良好な流動性を発現させるために、セルロースウィスカーのL/D比は上述の範囲内にあることが望ましい。
また、セルロースファイバーのL/D下限は、好ましくは50であり、より好ましくは80であり、より好ましくは100であり、さらにより好ましくは120であり、最も好ましくは150である。上限は特に限定されないが、取扱い性の観点から好ましくは5000以下である。本開示の樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体の良好な機械的特性を少量で発揮させるために、セルロースファイバーのL/D比は上述の範囲内であることが望ましい。
本開示で、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比は、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の水分散液を、高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、高分解能走査型顕微鏡(SEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本のセルロースが観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本のセルロースの長さ(L)及び径(D)を計測し、比(L/D)を算出する。比(L/D)が30未満のものをセルロースウィスカー、30以上のものをセルロースファイバーと分類する。セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々について、長さ(L)の数平均値、径(D)の数平均値、及び比(L/D)の数平均値を算出して、本開示の、セルロースウィスカー及びセルロースナノファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比とする。また、本開示のセルロース成分の長さ及び径とは、上記100本のセルロースの数平均値である。
又は、組成物中のセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比は、固体である組成物を測定サンプルとして、上述の測定方法により測定することで確認することができる。
又は、組成物中のセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比は、組成物の樹脂成分を溶解できる有機または無機の溶媒に組成物中の樹脂成分を溶解させ、セルロースを分離し、前記溶媒で充分に洗浄した後、溶媒を純水に置換した水分散液を作製し、セルロース濃度を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとして上述の測定方法により測定することで確認することができる。この際、測定するセルロースは無作為に選んだL/Dが30以上のセルロースファイバー100本以上と、L/Dが30未満のセルロースウィスカー100本以上の、合計200本以上での測定を行う。
又は、組成物中のセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比は、固体である組成物を測定サンプルとして、上述の測定方法により測定することで確認することができる。
又は、組成物中のセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比は、組成物の樹脂成分を溶解できる有機または無機の溶媒に組成物中の樹脂成分を溶解させ、セルロースを分離し、前記溶媒で充分に洗浄した後、溶媒を純水に置換した水分散液を作製し、セルロース濃度を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとして上述の測定方法により測定することで確認することができる。この際、測定するセルロースは無作為に選んだL/Dが30以上のセルロースファイバー100本以上と、L/Dが30未満のセルロースウィスカー100本以上の、合計200本以上での測定を行う。
本開示で、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーとは、それぞれ、径がナノメートルサイズ(すなわち1μm未満)であるものを意味する。本発明で好適に使用可能なセルロース成分(特に、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々)は、その径が500nm以下のものである。好ましいセルロース成分の径の上限は、450nmであり、より好ましくは400nmであり、さらにより好ましくは350nmであり、最も好ましくは300nmである。
特に好ましい態様において、セルロースウィスカーの径は、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは450nm以下、更に好ましくは400nm以下、更により好ましくは350nm以下であり、最も好ましくは300nm以下である。
また、特に好ましい態様において、セルロースファイバーの径は、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、更により好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは15nm以上であり、最も好ましくは20nm以上であり、好ましくは450nm以下であり、より好ましくは400nm以下であり、更に好ましくは350nm以下であり、更により好ましくは300nm以下であり、最も好ましくは250nm以下である。
機械的特性を有効に発現させるためには、セルロース成分の径を上述の範囲内にすることが望ましい。
本発明で好適に使用可能なセルロースウィスカーは、結晶化度が55%以上のセルロースウィスカーである。結晶化度がこの範囲にあると、セルロースウィスカー自体の力学物性(強度、寸法安定性)が高まるため、樹脂に分散した際に、樹脂組成物の強度、寸法安定性が高くなる傾向にある。
セルロースウィスカーの結晶化度は、好ましくは60%以上であり、より好ましい結晶化度の下限は65%であり、さらにより好ましくは70%であり、最も好ましくは80%である。セルロースウィスカーの結晶化度は高いほど好ましい傾向にあるので、上限は特に限定されないが、生産上の観点から99%が好ましい上限である。
また、セルロースファイバーは、結晶化度が55%以上のセルロースファイバーが好適に使用可能である。結晶化度がこの範囲にあると、セルロースファイバー自体の力学物性(強度、寸法安定性)が高まるため、樹脂に分散した際に、樹脂組成物の強度、寸法安定性が高くなる傾向にある。より好ましい結晶化度の下限は、60%であり、さらにより好ましくは70%であり、最も好ましくは80%である。セルロースファイバーの結晶化度についても上限は特に限定されず、高い方が好ましいが、生産上の観点から好ましい上限は99%である。
リグニン等の不純物残存量が多いと、加工時の熱により変色をきたすことがあるため、押出加工時及び成形加工時の樹脂組成物の変色を抑制する観点から、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの結晶化度は上述の範囲内にすることが望ましい。
ここでいう結晶化度は、セルロース成分がセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10〜30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=([2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]−[2θ/deg.=18の非晶質に起因する回折強度])/[2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]×100
また結晶化度は、セルロース成分がセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%) =h1 /h0 ×100
セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型及びII型は汎用されており、III型、IV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。本発明で用いるセルロース成分としては、構造上の可動性が比較的高く、当該セルロース成分を樹脂に分散させることにより、線膨張係数がより低く、引っ張り、曲げ変形時の強度及び伸びがより優れた樹脂コンポジットが得られることから、セルロースI型結晶又はセルロースII型結晶を含有するセルロース成分が好ましく、セルロースI型結晶を含有し、かつ結晶化度が55%以上のセルロース成分がより好ましい。
結晶化度(%)=([2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]−[2θ/deg.=18の非晶質に起因する回折強度])/[2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]×100
また結晶化度は、セルロース成分がセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%) =h1 /h0 ×100
セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型及びII型は汎用されており、III型、IV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。本発明で用いるセルロース成分としては、構造上の可動性が比較的高く、当該セルロース成分を樹脂に分散させることにより、線膨張係数がより低く、引っ張り、曲げ変形時の強度及び伸びがより優れた樹脂コンポジットが得られることから、セルロースI型結晶又はセルロースII型結晶を含有するセルロース成分が好ましく、セルロースI型結晶を含有し、かつ結晶化度が55%以上のセルロース成分がより好ましい。
セルロースウィスカーの重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは120以上であり、より好ましくは130以上であり、より好ましくは140以上であり、より好ましくは150以上、好ましくは300以下、より好ましくは280以下、より好ましくは270以下、より好ましくは260以下、より好ましくは250以下である。
また、セルロースファイバーの重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは420以上であり、より好ましくは430以上、より好ましくは440以上、より好ましくは450以上であり、好ましくは3500以下、より好ましく3300以下、より好ましくは3200以下、より好ましくは3100以下、より好ましくは3000以下である。
また、セルロースファイバーの重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは420以上であり、より好ましくは430以上、より好ましくは440以上、より好ましくは450以上であり、好ましくは3500以下、より好ましく3300以下、より好ましくは3200以下、より好ましくは3100以下、より好ましくは3000以下である。
加工性と機械的特性発現の観点から、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの重合度を上述の範囲内とすることが望ましい。加工性の観点から、重合度は高すぎない方が好ましく、機械的特性発現の観点からは低すぎないことが望まれる。
セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの重合度は、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」の確認試験(3)に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従って測定される平均重合度を意味する。
セルロース成分の重合度(すなわち平均重合度)を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースやリグニン等の不純物も取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、後記の混練工程中等のセルロース成分と有機成分(例えば界面活性剤)に機械的せん断力を与える工程において、セルロース成分が機械処理を受けやすくなり、セルロース成分が微細化されやすくなる。その結果、セルロース成分の表面積が高くなり、有機成分(例えば界面活性剤)との複合化の制御が容易になる。
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、アルカリ加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、例えば、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースをセルロース原料とし、これを水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分間以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。なお、加水分解時のセルロース原料の分散液には、水の他、本発明の効果を損なわない範囲において有機溶媒を少量含んでいてもよい。
本発明で用いるセルロース成分のゼータ電位、又は、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々のゼータ電位は、−40mV以下であることが好ましい。ゼータ電位がこの範囲にある場合、セルロース成分と樹脂とをコンパウンドした際に、セルロース成分と樹脂との過度の結合を生じることなく、良好な溶融流動性を保つことができる。ゼータ電位は、より好ましくは−30mV以下であり、さらに好ましくは−25mV以下であり、特に好ましくは−20mV以下であり、最も好ましくは−15mV以下である。この値が小さいほどコンパウンドの物性が優れるため下限は特に限定されるものではないが、製造容易性の観点から−5mV以上が好ましい。
ここでいうゼータ電位は以下の方法で測定することができる。セルロース成分、又はセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々を、1質量%濃度の純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させて得た水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、ゼータ電位計(例えば大塚電子製、装置名ELSZ−2000ZS型、標準セルユニット)を使用し、25℃で測定する。
本発明における熱可塑性樹脂100質量部に対するセルロース成分の量は、0.1〜100質量部の範囲内である。セルロース成分の量の下限は、好ましくは0.5質量部、より好ましくは1質量部、最も好ましくは2質量部である。セルロース成分の量の上限は、好ましくは80質量部、より好ましくは70質量部、最も好ましくは60質量部である。
加工性と機械的特性のバランスの観点から、セルロース成分の量を上述の範囲内とすることが望ましい。
加工性と機械的特性のバランスの観点から、セルロース成分の量を上述の範囲内とすることが望ましい。
セルロース成分の総質量に対するセルロースウィスカーの比率は、50質量%以上であることが好ましい。上記比率は、より好ましくは50質量%超、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。上記比率の上限は、好ましくは98質量%、より好ましくは96質量%、最も好ましくは95質量%である。
樹脂組成物としての流動性の観点から、セルロース成分の総質量に占めるセルロースウィスカーの比率は上述の範囲内とすることが望ましい。
樹脂組成物としての流動性の観点から、セルロース成分の総質量に占めるセルロースウィスカーの比率は上述の範囲内とすることが望ましい。
≪有機成分≫
本発明の樹脂組成物は、付加的成分として有機成分を含むことが可能である。一態様において、有機成分は、動的表面張力60mN/m以下を有する。また、一態様において、有機成分は、界面活性剤である。有機成分は、熱可塑性樹脂に対するセルロース成分の分散性の向上に寄与する。その好ましい量は、セルロース成分100質量部に対し、有機成分が50質量部以下の量の範囲内である。より好ましい上限量は45質量部であり、さらにより好ましくは40質量部、さらにより好ましくは35質量部、特に好ましくは30質量部である。付加的成分であるため、下限は特に限定されないが、セルロース成分100質量部に対し、0.1質量部以上添加することで、取扱い性を高めることができる。下限量は、より好ましくは0.5質量部、最も好ましくは1質量部である。
本発明の樹脂組成物は、付加的成分として有機成分を含むことが可能である。一態様において、有機成分は、動的表面張力60mN/m以下を有する。また、一態様において、有機成分は、界面活性剤である。有機成分は、熱可塑性樹脂に対するセルロース成分の分散性の向上に寄与する。その好ましい量は、セルロース成分100質量部に対し、有機成分が50質量部以下の量の範囲内である。より好ましい上限量は45質量部であり、さらにより好ましくは40質量部、さらにより好ましくは35質量部、特に好ましくは30質量部である。付加的成分であるため、下限は特に限定されないが、セルロース成分100質量部に対し、0.1質量部以上添加することで、取扱い性を高めることができる。下限量は、より好ましくは0.5質量部、最も好ましくは1質量部である。
典型的な有機成分としては、炭素原子を基本骨格とし、炭素、水素、酸素、窒素、塩素、硫黄、リンから選ばれる元素から構成される官能基を有するものが挙げられる。分子中に上述の構造を有していれば、無機化合物と上記官能基が化学結合したものも好ましい。
有機成分は、単独であってもよく、2種以上の有機成分の混合物であってもよい。混合物の場合、本開示の有機成分の特性値(例えば静的表面張力、動的表面張力、SP値)は、当該混合物の値を意味する。
本実施形態においては、有機成分の静的表面張力は20mN/m以上であることが好ましい。この静的表面張力は、ウィルヘルミー法で測定される表面張力を指す。室温で液体状の有機成分を使用する場合は、25℃で測定した値を用いる。室温で固体又は半固形状の有機成分を使用する場合は、有機成分を融点以上に加熱し溶融した状態で測定し、25℃に温度補正した値を用いる。なお本開示で室温とは、25℃を意味する。また、添加を容易にするためなどの目的で、有機成分を有機溶剤や水等に溶解・希釈してもよい。この場合の上記静的表面張力は、使用する有機成分自体の静的表面張力を意味する。
また、樹脂組成物を調製する際の、有機成分の添加方法としては、特に制限はないが、熱可塑性樹脂、セルロース成分及び有機成分とをあらかじめ混合し溶融混練する方法、樹脂にあらかじめ有機成分を添加し、必要により予備混練した後、セルロース成分を添加して溶融混練する方法、セルロース成分と有機成分を予め混合した後、熱可塑性樹脂と溶融混練する方法等が挙げられる。セルロース成分が水に分散している分散液中に有機成分を添加し、乾燥してセルロース製剤を作製したのち、当該製剤を熱可塑性樹脂に添加する方法も有効である。
有機成分の静的表面張力が本開示の特定の範囲内であることは、セルロース成分の樹脂中での分散性が驚異的に向上するという、通常では予期しえない効果を奏する。理由は定かではないが、有機成分内にある親水性官能基が、セルロース成分表面の水酸基と水素結合等を介することによって、セルロース成分の表面を被覆し、樹脂との界面形成を阻害しているためであると考えられる。その親水性基がセルロース成分側に配されることにより、樹脂側には疎水雰囲気となるため、樹脂側との親和性も増すためと考えられる。
有機成分の好ましい静的表面張力の下限は、23mN/mであり、より好ましくは25mN/m、さらに好ましくは30mN/m、更により好ましくは35mN/m、最も好ましくは39mN/mである。有機成分の静的表面張力の好ましい上限は、72.8mN/m、より好ましくは60mN/m、さらに好ましくは50mN/m、最も好ましくは45mN/mである。
有機成分の熱可塑性樹脂に対する親和性とセルロース成分に対する親和性とを両立し、樹脂中へのセルロース成分の微分散性、樹脂組成物の流動性、樹脂成形体の強度及び伸びの向上といった特性を発現させる観点で、有機成分の静的表面張力を特定の範囲にすることが好ましい。
本開示でいう有機成分の静的表面張力は、市販の表面張力測定装置を用いることで測定することが可能である。具体的に例示すると、自動表面張力測定装置(例えば協和界面科学株式会社製、商品名「CBVP−Z型」、付属のガラス製セルを使用。)を用い、ウィルヘルミー法により測定することができる。この時、有機成分が室温で液体の場合は、付属のステンレス製シャーレに底から液面までの高さを7mm〜9mmとなるように仕込み、25℃±1℃に調温した後に測定し、以下の式により求められる。
γ=(P−mg+shρg)/Lcosθ
ここで、γ:静的表面張力、P:つりあう力、m:プレートの質量、g:重力定数、L:プレート周囲長、θ:プレートと液体の接触角、s:プレート断面積、h:(力が釣り合うところまで)液面から沈んだ深さ、ρ:液体の密度である。
γ=(P−mg+shρg)/Lcosθ
ここで、γ:静的表面張力、P:つりあう力、m:プレートの質量、g:重力定数、L:プレート周囲長、θ:プレートと液体の接触角、s:プレート断面積、h:(力が釣り合うところまで)液面から沈んだ深さ、ρ:液体の密度である。
なお、室温で固体のものは上述の方法では表面張力は測定できないため、便宜上、融点+5℃の温度で測定した表面張力を採用する。融点が未知の物質である場合、まずは目視による融点測定法(JIS K6220)により融点を測定し、融点以上に加熱して溶融させた後、融点+5℃の温度に調節し、上述したウィルヘルミー法により表面張力を測定することで可能である。
有機成分の動的表面張力は60mN/m以下であることが好ましい。より好ましい動的表面張力の上限は、55mN/mであり、50mN/mがより好ましく、45mN/mがさらに好ましく、40mN/mが特に好ましい。有機成分の動的表面張力の好ましい下限を挙げるとすると、10mN/mである。より好ましい下限は、15mN/mであり、20mN/mが最も好ましい。
ここでいう動的表面張力は、最大泡圧法(液体中に挿した細管(以下、プローブ)に空気を流して、気泡を発生させたときの最大圧力(最大泡圧)を計測し、表面張力を算出する方法)で測定される表面張力のことである。具体的には、有機成分を5質量%としてイオン交換水に溶解又は分散し測定液を調製し、25℃に調温した後、動的表面張力計(例えば英弘精機株式会社製 製品名シータサイエンスt−60型、プローブ(キャピラリーTYPE I(ピーク樹脂製)、シングルモード)を使用し、気泡発生周期を10Hzで測定された表面張力の値を指す。各周期における動的表面張力は、以下の式により求められる。
σ=ΔP・r/2
ここで、σ:動的表面張力、ΔP:圧力差(最大圧力−最小圧力)、r:キャピラリー半径である。
σ=ΔP・r/2
ここで、σ:動的表面張力、ΔP:圧力差(最大圧力−最小圧力)、r:キャピラリー半径である。
最大泡圧法で測定される動的表面張力は、動きの速い場における有機成分の動的な表面張力を意味する。有機成分は水中では、通常ミセルを形成している。動的表面張力が低いということは、ミセル状態からの有機成分の分子の拡散速度が速いことを表し、動的表面張力が高いということは分子の拡散速度が遅いことを意味する。
有機成分の動的表面張力が特定値以下であることは、セルロース成分の樹脂組成物中での分散を顕著に向上させるという効果を奏する点で有利である。この分散性向上の理由の詳細は不明であるが、動的表面張力が低い有機成分は、押出機内での拡散性に優れることで、セルロース成分と樹脂との界面に局在化できること、さらにセルロース成分表面を良好に被覆できることが、分散性向上の効果に寄与していると考えられる。この有機成分の動的表面張力を特定値以下とすることにより得られるセルロース成分の分散性の改良効果は、成形体の強度欠陥を消失させるという顕著な効果を発現させる。
有機成分としては、水より高い沸点を有するものが好ましい。なお、水よりも高い沸点とは、水の蒸気圧曲線における各圧力における沸点(例えば、1気圧下では100℃)よりも高い沸点を指す。
有機成分として水より高い沸点を有するものを選択することにより、例えば、有機成分の存在下で、水に分散されたセルロース成分を乾燥させ、セルロース製剤を得る工程において、水が蒸発する過程で水と有機成分とが置換されてセルロース成分表面に有機成分が存在するようになるため、セルロース同士の凝集を大幅に抑制する効果を奏することができる。
有機成分は、その取扱い性の観点より、室温(すなわち25℃)で液体のものが好ましく使用可能である。常温で液体の有機成分は、セルロース成分と親和しやすく、樹脂にも浸透しやすいという利点を有する。
有機成分としては、溶解パラメーター(SP値)が7.25以上であるものがより好ましく使用可能である。有機成分がこの範囲のSP値を有することで、セルロース成分の樹脂中での分散性が向上する。
SP値は、Fodersの文献(R.F.Foders:Polymer Engineering & Science,vol.12(10),p.2359−2370(1974))によると、物質の凝集エネルギー密度とモル分子量の両方に依存し、またこれらは物質の置換基の種類及び数に依存していると考えられ、上田らの文献(塗料の研究、No.152、Oct.2010)によると、後述する実施例に示す既存の主要な溶剤についてのSP値(cal/cm3)1/2が公開されている。
有機成分のSP値は、実験的には、SP値が既知の種々の溶剤に有機成分を溶解させたときの、可溶と不溶の境目から求めることができる。例えば、実施例に示す表中のSP値が異なる各種溶剤(10mL)に、有機成分1mLを室温においてスターラー撹拌下で1時間溶解させた場合に、全量が溶解するかどうかで判断可能である。例えば、有機成分がジエチルエーテルに可溶であった場合は、その有機成分のSP値は7.25以上となる。
一態様において、有機成分は界面活性剤である。界面活性剤としては、親水性の置換基と疎水性の置換基が共有結合した化学構造を有する化合物が挙げられ、食用、工業用など様々な用途で利用されているものを用いることができる。例えば、以下のものを1種又は2種以上併用して用いる。特に好ましい態様において、有機成分は、前述のような特定の動的表面張力を有する界面活性剤である。
界面活性剤は、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、セルロース成分との親和性の点で、陰イオン系界面活性剤及び非イオン系界面活性剤が好ましく、非イオン系界面活性剤がより好ましい。
陰イオン系界面活性剤としては、脂肪酸系(陰イオン)として、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム,アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム等が挙げられ、直鎖アルキルベンゼン系として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、高級アルコール系(陰イオン)系として、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、アルファオレフィン系としてアルファオレフィンスルホン酸ナトリウム等、ノルマルパラフィン系としてアルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、それらを1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
非イオン系界面活性剤としては、脂肪酸系(非イオン)として、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の糖脂質、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられ、高級アルコール系(非イオン)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられ、アルキルフェノール系としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、それらを1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
両性イオン系界面活性剤としては、アミノ酸系として、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム等が挙げられ、ベタイン系としてアルキルベタイン等が挙げられ、アミンオキシド系としてアルキルアミンオキシド等が挙げられ、それらを1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
陽イオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩系として、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、それらを1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
界面活性剤は、油脂の誘導体であってよい。油脂としては、脂肪酸とグリセリンとのエステルが挙げられ、通常は、トリグリセリド(トリ−O−アシルグリセリン)の形態を取るものをいう。脂肪油で酸化を受けて固まりやすい順に乾性油、半乾性油、不乾性油と分類され、食用、工業用など様々な用途で利用されているものを用いることができ、例えば以下のものを、1種又は2種以上併用して用いる。
油脂としては、動植物油として、例えば、テルピン油、トール油、ロジン、白絞油、コーン油、大豆油、ゴマ油、菜種油(キャノーラ油)、こめ油、糠油、椿油、サフラワー油(ベニバナ油)、ヤシ油(パーム核油)、綿実油、ひまわり油、エゴマ油(荏油)、アマニ油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル、レタス油、魚油、鯨油、鮫油、肝油、カカオバター、ピーナッツバター、パーム油、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)、鶏油、兎脂、羊脂、馬脂、シュマルツ、乳脂(バター、ギー等)、硬化油(マーガリン、ショートニングなど)、ひまし油(植物油)等が挙げられる。
特に、上述の動植物油の中でも、セルロース成分表面への親和性、均一コーティング性の観点から、テルピン油、トール油、ロジンが好ましい。
テルピン油(テルビン油ともいう)は、マツ科の樹木のチップ、或いはそれらの樹木から得られた松脂(まつやに)を水蒸気蒸留することによって得られる精油のことであり、松精油、ターペンタインともいう。テルピン油としては、例えば、ガム・テレピン油(松脂の水蒸気蒸留によって得られたもの)、ウッド・テレピン油(マツ科の樹木のチップを水蒸気蒸留或いは乾留することで得られたもの)、硫酸テレピン油(硫酸塩パルプ製造時にチップを加熱処理した時に留出して得られたもの)、亜硫酸テレピン油(亜硫酸パルプ製造時にチップを加熱処理した時に留出して得られたもの)が挙げられ、ほぼ無色から淡黄色の液体で、亜硫酸テレピン油以外は主にα−ピネンとβ−ピネンを成分とする。亜硫酸テレピン油は、他のテレピン油と異なりp−シメンを主成分とする。上述の成分を含んでいれば、前記テルピン油に含まれ、いずれも単独又は複数の混合物の誘導体を、本発明の界面活性剤として使用することができる。
トール油は、松材を原料にクラフトパルプを作る際に副成する、樹脂と脂肪酸を主成分とする油である。トール油としては、オレイン酸とリノール酸を主成分とするトール脂肪を用いても、アビエチン酸などの炭素数20のジテルペノイド化合物を主成分とするトールロジンを用いてもよい。
ロジンは、マツ科の植物の樹液である松脂等のバルサム類を集めてテレピン精油を蒸留した後に残る残留物で、ロジン酸(アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等)を主成分とする天然樹脂である。コロホニー或いはコロホニウムとも呼ばれる。中でも、トールロジン、ウッドロジン、ガムロジンが好適に使用できる。これらロジン類に種々の安定化処理、エステル化処理、精製処理などを施したロジン誘導体を、界面活性剤として使用できる。安定化処理とは、上記ロジン類に水素化、不均化、脱水素化、重合処理等を施すことをいう。また、エステル化処理とは、上記ロジン類、又は安定化処理を施したロジン類を各種アルコールと反応させてロジンエステルとする処理のことをいう。このロジンエステルの製造には各種公知のアルコール又はエポキシ化合物等を使用することができる。アルコールとしては、例えば、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコールのような1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコールが挙げられる。また、イソペンチルジオール、エチルヘキサンジオール、エリトルロース、オゾン化グリセリン、カプリリルグリコール、グリコール、(C15−18)グリコール、(C20−30)グリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ジチアオクタンジオール、DPG、チオグリセリン、1,10−デカンジオール、デシレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチルヒドロキシメチルシクロヘキサノール、フィタントリオール、フェノキシプロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、BG、PG、1,2−ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、メチルプロパンジオール、メンタンジオール、ラウリルグリコール等の多価アルコールを用いてもよい。また、イノシトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール等の糖アルコールとして分類されるものも、多価アルコールに含まれる。
さらに、上記アルコールとしては、アルコール性の水溶性高分子を用いることもできる。アルコール性の水溶性高分子としては、多糖類・ムコ多糖類、デンプンとして分類されるもの、多糖誘導体として分類されるもの、天然樹脂に分類されるもの、セルロース及び誘導体に分類されるもの、タンパク質・ペプチドに分類されるもの、ペプチド誘導体に分類されるもの、合成ホモポリマーに分類されるもの、アクリル(メタクリル酸)酸共重合体に分類されるもの、ウレタン系高分子に分類されるもの、ラミネートに分類されるもの、カチオン化高分子に分類されるもの、その他の合成高分子に分類されるもの等が挙げられ、常温で水溶性のものを用いることができる。より具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガムなどのカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、POE/POP共重合体、ポリビニルアルコール、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、セルロースウィスカー、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース(本開示のセルロースファイバー及びセルロースウィスカーではないもの)、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体等が挙げられる。
上述の各種ロジンエステルの中でも、セルロース成分表面のコーティング性、樹脂中でのセルロース製剤の分散性がさらに促進される傾向にあるため、ロジンと水溶性高分子がエステル化したものが好ましく、ロジンとポリエチレングリコールとのエステル化物(ロジンエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレングリコール樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンロジン酸エステルともいう。)が特に好ましい。
硬化ひまし油型の界面活性剤としては、例えば、トウダイグサ科のトウゴマの種子等から採取する植物油の一種であるひまし油(ひましあぶら、ひましゆ、蓖麻子油)を原料として、水素化されたものを疎水基として、その構造中の水酸基と、PEO鎖等の親水基が共有結合した化合物が挙げられる。ひまし油の成分は、不飽和脂肪酸(リシノール酸が87%、オレイン酸が7%、リノール酸が3%)と少量の飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸などが3%)のグリセリドである。また、代表的なPOE基の構造としては、エチレンオキサイド(EO)残基が4〜40までのものがあり、代表的なものとしては15〜30のものが挙げられる。ノニルフェノールエトキシレートのEO残基は、15〜30が好ましく、15〜25がより好ましく、15〜20が特に好ましい。
鉱物油の誘導体としては、例えば、カルシウム石鹸基グリース、カルシウム複合石鹸基グリース、ナトリウム石鹸基グリース、アルミニウム石鹸基グリース、リチウム石鹸基グリース等のグリース類等が挙げられる。
界面活性剤は、アルキルフェニル型化合物であってもよく、例えば、アルキルフェノールエトキシレート、すなわちアルキルフェノールをエチレンオキシドでエトキシル化して得られる化合物が挙げられる。アルキルフェノールエトキシレートは非イオン界面活性剤である。親水性のポリオキシエチレン(POE)鎖と、疎水性のアルキルフェノール基がエーテル結合で結びついていることから、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテルとも呼ばれる。一般にアルキル鎖長、POE鎖長の異なる多数の化合物の混合物として、平均鎖長の異なる一連の製品が市販されている。アルキル鎖長は炭素数6〜12(フェニル基を除く)が市販されているが、代表的なアルキル基の構造は、ノニルフェノールエトキシレートやオクチルフェノールエトキシレートが挙げられる。また、代表的なPOE基の構造としては、エチレンオキサイド(EO)残基が5〜40までのものがあり、代表的なものとしては15〜30のものが挙げられる。ノニルフェノールエトキシレートのEO残基は、15〜30が好ましく、15〜25がより好ましく、15〜20が特に好ましい。
界面活性剤は、βナフチル型化合物であってもよく、例えば、その化学構造の一部に、ナフタレンを含み、芳香環の2又は3又は6又は7位の炭素が水酸基と結合したβモノ置換体と、PEO鎖等の親水基が共有結合した化合物が挙げられる。また、代表的なPOE基の構造としては、エチレンオキサイド(EO)残基が4〜40までのものがあり、代表的なものとしては15〜30のものが挙げられる。EO残基が15〜30が好ましく、15〜25がより好ましく、15〜20が特に好ましい。
界面活性剤は、ビスフェノールA型化合物であってもよく、例えば、その化学構造の一部に、ビスフェノールA(化学式 :(CH3)2C(C6H4OH)2)を含み、その構造中の二つのフェノール基と、PEO鎖等の親水基が共有結合した化合物が挙げられる。また、代表的なPOE基の構造としては、エチレンオキサイド(EO)残基が4〜40までのものがあり、代表的なものとしては15〜30のものが挙げられる。ノニルフェノールエトキシレートのEO残基は、15〜30が好ましく、15〜25がより好ましく、15〜20が特に好ましい。このEO残基は、一つの分子中に、二つのエーテル結合がある場合は、それら二つを足し合わせた平均値を指す。
界面活性剤は、スチレン化フェニル型化合物であってもよく、例えば、その化学構造の一部に、スチレン化フェニル基を含み、その構造中のフェノール基と、PEO鎖等の親水基が共有結合した化合物が挙げられる。スチレン化フェニル基は、フェノール残基のベンゼン環にスチレンが1〜3分子付加した構造を有する。また、代表的なPOE基の構造としては、エチレンオキサイド(EO)残基が4〜40までのものがあり、代表的なものとしては15〜30のものが挙げられる。ノニルフェノールエトキシレートのEO残基は、15〜30が好ましく、15〜25がより好ましく、15〜20が特に好ましい。このEO残基は、一つの分子中に、二つのエーテル結合がある場合は、それら二つを足し合わせた平均値を指す。
界面活性剤の具体的な好適例としては、例えば、アシルグタミン酸塩等のアシルアミノ酸塩、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩等のアニオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化(N,N’−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピチジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル4級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体等のカチオン性界面活性剤;2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミタゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等の両性界面活性剤、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン−ソルビタンテトラオレエート等のポリオキシエチレン−ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレン−ソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレン−ソルビットペンタオレエート、ポリオキシエチレン−ソルビットモノステアレート、ポリオキシエチレン−グリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレン−グリセリントリイソステアレート等のポリオキシエチレン−グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノジオレエート、システアリン酸エチレングリコール等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレイン酸等のポリオキシエチレンヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
上述の中でも、セルロース成分との親和性の点で、親水基としてポリオキシエチレン鎖、カルボン酸、又は水酸基を有する界面活性剤が好ましく、親水基としてポリオキシエチレン鎖を有するポリオキシエチレン系界面活性剤(ポリオキシエチレン誘導体)がより好ましく、非イオン系のポリオキシエチレン誘導体がさらに好ましい。ポリオキシエチレン誘導体のポリオキシエチレン鎖長としては、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、15以上が特に好ましい。鎖長は長ければ長いほど、セルロース成分との親和性が高まるが、コーティング性(樹脂及びセルロース成分との界面への局在性)とのバランスにおいて、上限としては60以下が好ましく、50以下がより好ましく、40以下がさらに好ましく、30以下が特に好ましく、20以下が最も好ましい。
疎水性の樹脂(例えばポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル等)にセルロース成分を配合する場合には、親水基としてポリオキシエチレン鎖に代えて、ポリオキシプロピレン鎖を有するものを用いることが好ましい。ポリオキシプロピレン鎖長としては、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、15以上が特に好ましい。鎖長は長ければ長いほど、セルロース成分との親和性が高まるが、コーティング性とのバランスにおいて、上限としては60以下が好ましく、50以下がより好ましく、40以下がさらに好ましく、30以下が特に好ましく、20以下が最も好ましい。
上述の界面活性剤でも、特に、疎水基としては、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型、ロジンエステル型、ビスフェノールA型、βナフチル型、スチレン化フェニル型、硬化ひまし油型が、樹脂との親和性が高いため、好適に使用できる。好ましいアルキル鎖長(アルキルフェニルの場合はフェニル基を除いた炭素数)としては、炭素鎖が5以上であるこことが好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましく、16以上が特に好ましい。樹脂がポリオレフィンの場合、炭素数が多いほど、樹脂との親和性が高まるため上限は設定されないが、好ましくは30、より好ましくは25である。
これらの疎水基の中でも、環状構造を有するもの、又は嵩高く多官能構造を有するものが好ましく、環状構造を有するものとしては、アルキルフェニルエーテル型、ロジンエステル型、ビスフェノールA型、βナフチル型、スチレン化フェニル型が好ましく、多官能構造を有するものとしては、硬化ひまし油型が特に好ましい。これらの中でも、特にロジンエステル型、硬化ひまし油型が最も好ましい。
したがって、特に好ましい態様において、界面活性剤は、ロジン誘導体、アルキルフェニル誘導体、ビスフェノールA誘導体、βナフチル誘導体、スチレン化フェニル誘導体、及び硬化ひまし油誘導体からなる群より選択される1種以上である。
界面活性剤以外の有機成分としては、油脂、脂肪酸、及び鉱物油からなる群から選択される1種以上でかつ上記界面活性剤に包含されない化合物が挙げられる。油脂としては、界面活性剤の項で油脂として例示したものが挙げられる。
脂肪酸とは、一般式CnHmCOOH(n、mは整数)で表せる化合物をいい、食用、工業用など様々な用途で利用されているものを用いることができる。例えば、以下のものを1種又は2種以上併用して用いる。
例えば、飽和脂肪酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸 、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、例えば、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等のω−3脂肪酸;リノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等のω−6脂肪酸;パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸等のω−7脂肪酸;オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のω−9脂肪酸が挙げられる。
鉱物油としては、流動パラフィン、シリコンオイル、シリコングリース等のグリース類;ナフテン系及びパラフィン系鉱物油;鉱物油や高度水素分解油にPAOやエステル(或いは水素化分解油)を混合し得られる部分合成油;PAO(ポリアルファオレフィン)等の化学合成油・全合成油・合成油等が挙げられる。
セルロース成分100質量部に対する有機成分の量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは35質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。付加的成分であるため、下限は特に限定されないが、セルロース成分100質量部に対し、合計量が0.1質量部以上であることで、取扱い性を高めることができる。合計量は、より好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは1質量部以上である。
本発明の樹脂組成物においては、得られる成形体の強度欠陥の解消の観点から、引張破断強度の変動係数CVを、10%以下とすることが好ましい。ここでいう変動係数とは、標準偏差(σ)を算術平均(μ)除して100を乗じた百分率であらわされるもので、相対的なばらつきを表す単位のない数である。
CV=(σ/μ)×100
ここで、μとσは、下式により与えられる。
ここで、xiは、n個のデータ x1、x2、x3・・・・Xnのうちの引張破断強度の単一の個データである。
引張破断強度の変動係数CVを算出する際のサンプル数(n)は、その欠陥を見つけやすくするため、少なくとも10以上であることが望ましい。より望ましくは15以上である。
CV=(σ/μ)×100
ここで、μとσは、下式により与えられる。
引張破断強度の変動係数CVを算出する際のサンプル数(n)は、その欠陥を見つけやすくするため、少なくとも10以上であることが望ましい。より望ましくは15以上である。
より好ましい変動係数の上限は、9%であり、さらに好ましくは8%、より好ましくは7%、更により好ましくは6%、最も好ましくは5%である。下限はゼロが好ましいが、製造容易性の観点からは好ましくは0.1%である。
本発明の樹脂組成物は、セルロース成分として、セルロースウィスカーとセルロースファイバーとを含む。このように特定の2種以上のセルロースの組合せとすることにより、従来よりも高分散性かつ高濃度で樹脂組成物中にセルロース成分を存在させることが可能となる。これにより、従来のセルロース組成物からなる樹脂成形品に見られた、部分的な強度欠陥の発生を解消し、実製品としての信頼性が大幅に向上するという、画期的な効果がもたらすことが可能となる。
従来の樹脂成形品の上記のような部分的な強度欠陥は、セルロースの不均一分散や、例えばL/Dの大きいセルロースファイバーの絡まりによる空隙(ボイド)の形成が原因と考えられる。この強度欠陥の形成しやすさを評価する指標としては、複数の試験片の引張試験を実施し、破断強度のバラツキの有無・数を確認する方法が挙げられる。
たとえば、自動車のボディや、ドアパネル、バンパーといった構造部品の成形体中に、セルロースが不均一分散した部分や、L/Dの大きいセルロースファイバーの絡まりによるボイドが存在すると、成形体に瞬間的に大きな応力がかかった際、若しくは振動の様に、小さい応力ではあるが、応力が繰り返しかかった際に、上述した均一ではない部分やボイドに応力が集中することとなる。そして最終的には、集中した応力によりこれら成形体が破壊される事態に至る。これが製品としての信頼性低下となっている。
この実製品で起こる構造欠陥を試験段階で予見することは、従来まで困難であり、例えば、製品中のセルロースファイバーの分散性を顕微鏡等で確認するような手法が用いられていた。しかしながら顕微鏡での観察等は、極めて微視的な観察であり、試験片全体、製品全体を網羅的に評価できるものではなかった。
本発明者らは、種々の検討を進める中で、引張破断強度の変動係数と、製品の構造欠陥の割合に相関関係があることを見出した。
より詳細に説明すると、例えば内部構造が均質で、ボイド等もない材料であれば、複数のサンプルの引張破断試験を行った際にも、破断に至る際の応力は、当該複数のサンプル間でほぼ同値であり、その変動係数は非常に小さい。しかしながら内部に不均一部やボイドを有する材料は、あるサンプルにおいて破断に至る応力がその他のサンプルの応力と大きな差異を有する。このような、他のサンプルの応力と異なる応力を示すサンプルの多さの程度を、変動係数という尺度を用いることで明確にすることができる。
例を挙げると、例えば、降伏強度を有さない材料の場合は、内部に欠陥を有するサンプルは、その他のサンプルに比して、より低い強度で破断に至る。また、降伏強度を有する材料の場合は、降伏に至ったのち、ネッキングに至る途中で破断に至ることが多く、内部に欠陥を有するサンプルは、その他のサンプルに比して、より高い強度で破断に至る傾向を示す。このように挙動の違いはあるが、引張破断強度の変動係数という尺度により、実製品の強度欠陥の発生可能性を予期しえる。
引張破断強度の変動係数には、組成物中におけるセルロース成分の分散状態が大きく影響を与えていると考えられる。分散状態を良好にする手法は種々ある。例として、セルロースファイバーとセルロースウィスカーの比率を最適化する方法、セルロース成分の径やL/Dを最適化する方法、押出機での溶融混練の際に、スクリュー配置の最適化や、温度のコントロールによる樹脂粘度の最適化により、セルロース成分に充分なせん断を与える方法、最適な有機成分(例えば界面活性剤)を追加添加することにより樹脂とセルロース成分の界面を強化する方法、樹脂とセルースとの間に何らかの化学結合を形成させる方法等、様々なアプローチが挙げられる。セルロース成分の分散状態を改善するためにこれらのアプローチのいずれを採用してもよい。引張破断強度の変動係数CVを10%以下とすることは、得られる成形体の強度欠陥の解消に高く寄与することができ、成形体の強度に対する信頼性が大幅に向上するという効果を与える。
本発明の樹脂組成物においては、引張降伏強度が、熱可塑性樹脂単独に比して飛躍的に改善する傾向がある。樹脂組成物の引張降伏強度の、セルロース成分を含まない熱可塑性樹脂単独の引張降伏強度を1.0としたときの比率は、1.1倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.15倍以上、さらにより好ましくは1.2倍以上、最も好ましくは1.3倍以上である。上記比率の上限は特に制限されないが、製造容易性の観点から、例えば、5.0倍であることが好ましく、より好ましくは4.0倍である。
本発明の樹脂組成物は、セルロース成分として2種以上のセルロースを含むため、従来のセルロース系組成物よりも低い線膨張性を示すことが可能となる。具体的には、樹脂組成物の温度範囲0℃〜60℃における線膨張係数は50ppm/K以下であることが好ましい。より好ましい組成物の線膨張係数は45ppm/K以下であり、さらにより好ましくは40ppm/K以下であり、最も好ましくは35ppm/K以下である。線膨張係数の下限は特に制限されないが、製造容易性の観点から、例えば、5ppm/Kであることが好ましく、より好ましくは10ppm/Kである。
本発明の樹脂組成物は、セルロースの組成物内での分散均一性に優れるため、大型成形体における線膨張係数のバラツキが小さいという特徴をも有する。具体的には、大型成形体の異なる部位から採取した試験片を用いて測定した線膨張係数のバラツキが非常に低いという特徴を示す。
セルロースの組成物内での分散が不均一で、部位による線膨張係数の違いが大きい場合、温度変化により、成形体に歪みや、反りが生じるといった不具合を生じやすい。しかもこの不具合は熱膨張の違いにより生じ、温度の上下により可逆的に発生する故障モードである。そのため、室温状態でのチェックでは認識できないという潜在的危険性を有する故障モードとなりうるものである。
線膨張係数のバラツキの大小は、部位の異なる部分より得た測定サンプルの線膨張係数の変動係数を用いて表すことが可能である。ここでいう変動係数とは、上述の引張破断強度の変動係数の項で説明したものと計算方法は同じである。
本発明の樹脂組成物から得られる線膨張係数の変動係数は、15%以下であることが好ましい。より好ましい変動係数の上限は、13%であり、さらに好ましくは11%、より好ましくは10%、更により好ましくは9%、最も好ましくは8%である。下限はゼロが好ましいが、製造容易性の観点からは好ましくは0.1%である。
線膨張係数の変動係数を算出する際のサンプル数(n)は、データの誤差等による影響を少なくするため、少なくとも10以上であることが望ましい。
線膨張係数の変動係数を算出する際のサンプル数(n)は、データの誤差等による影響を少なくするため、少なくとも10以上であることが望ましい。
本発明の樹脂組成物は、種々の形状での提供が可能である。具体的には、樹脂ペレット状、シート状、繊維状、板状、棒状等が挙げられるが、樹脂ペレット形状が、後加工の容易性や運搬の容易性からより好ましい。この際の好ましいペレット形状としては、丸型、楕円型、円柱型などが挙げられ、これらは押出加工時のカット方式により異なる。アンダーウォーターカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは、丸型になることが多く、ホットカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは丸型又は楕円型になることが多く、ストランドカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは円柱状になることが多い。丸型ペレットの場合、その好ましい大きさは、ペレット直径として1mm以上、3mm以下である。また、円柱状ペレットの場合の好ましい直径は、1mm以上3mm以下であり、好ましい長さは、2mm以上10mm以下である。上記の直径及び長さは、押出時の運転安定性の観点から、下限以上とすることが望ましく、後加工での成形機への噛み込み性の観点から、上限以下とすることが望ましい。
本発明の樹脂組成物は、種々の樹脂成形体として利用が可能である。樹脂成形体の製造方法に関しては特に制限はなく、いずれの製造方法でも構わないが、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法、発泡成形法などが使用可能である。これらの中では射出成形法がデザイン性とコストの観点より、最も好ましい。
本発明の樹脂組成物の製法として特に制限はないが、具体例としては以下の様な方法が挙げられる。
単軸又は、二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース成分との混合物を溶融混練し、ストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、ペレット状成形体として得る方法、単軸又は、二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース成分との混合物を溶融混練し、棒状又は筒状に押出し冷却して押出成形体として得る方法、単軸又は、二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース成分との混合物を溶融混練し、Tダイより押出しシート、又はフィルム状の成形体を得る方法、単軸又は、二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース成分との混合物を溶融混練し、ストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、ペレット状成形体として得る方法等が挙げられる。
単軸又は、二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース成分との混合物を溶融混練し、ストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、ペレット状成形体として得る方法、単軸又は、二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース成分との混合物を溶融混練し、棒状又は筒状に押出し冷却して押出成形体として得る方法、単軸又は、二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース成分との混合物を溶融混練し、Tダイより押出しシート、又はフィルム状の成形体を得る方法、単軸又は、二軸押出機を用いて、樹脂とセルロース成分との混合物を溶融混練し、ストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、ペレット状成形体として得る方法等が挙げられる。
また、樹脂とセルロース成分との混合物の溶融混練方法の具体例としては、樹脂と所望の比率で混合されたセルロース混合粉末とを、有機成分(例えば界面活性剤)の存在下/又は非存在下で混合した後、一括溶融混練する方法、樹脂及び必要により有機成分を溶融混練した後、所望の比率で混合されたセルロース混合粉末及び必要により有機成分を添加して、更に溶融混練する方法、樹脂、所望の比率で混合されたセルロース混合粉末及び水、並びに必要により有機成分を混合した後、一括で溶融混練する方法、樹脂及び必要により有機成分を溶融混練した後、所望の比率で混合されたセルロース混合粉末及び水、並びに必要により有機成分を添加して、更に溶融混練する方法等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、高機械的特性及び低線膨張性を有し、大型部品に対応可能な高い流動性を有するだけではなく、部分的な強度欠陥を実質的に含まない成形体を与えるため、種々の大型部品用途に好適に使用可能である。
本発明を実施例に基づいて更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
[原料及び評価方法]
以下に、使用した原料及び、評価方法について説明する。
以下に、使用した原料及び、評価方法について説明する。
≪熱可塑性樹脂≫
ポリアミド
ポリアミド6(以下、単にPAと称す。)
宇部興産株式会社より入手可能な「UBEナイロン 1013B」
カルボキシル末端基比率が、([COOH]/[全末端基])=0.6
ポリプロピレン
ホモポリプロピレン(以下、単にPPと称す)
プライムポリマーから入手可能な「プライムポリプロ J105B」
ISO1133に準拠230℃測定MFR=9.0g/10分
マレイン酸変性ポリプロピレン(以下、単にMPPと称す)
三洋化成工業株式会社から入手可能な「ユーメックス1001」
ISO1133に準拠して230℃で測定されたMFR=230g/10分
ポリアミド
ポリアミド6(以下、単にPAと称す。)
宇部興産株式会社より入手可能な「UBEナイロン 1013B」
カルボキシル末端基比率が、([COOH]/[全末端基])=0.6
ポリプロピレン
ホモポリプロピレン(以下、単にPPと称す)
プライムポリマーから入手可能な「プライムポリプロ J105B」
ISO1133に準拠230℃測定MFR=9.0g/10分
マレイン酸変性ポリプロピレン(以下、単にMPPと称す)
三洋化成工業株式会社から入手可能な「ユーメックス1001」
ISO1133に準拠して230℃で測定されたMFR=230g/10分
≪セルロース成分≫
セルロースウィスカー(以下、CWと略すことがある)
市販DPパルプ)(平均重合度1600)を裁断し、10%塩酸水溶液中で、105℃で30分間加水分解した。得られた酸不溶解残さを濾過、洗浄、pH調整し、固形分濃度14重量%、pH6.5の結晶セルロース分散体を調製した。この結晶セルロース分散体を噴霧乾燥し、結晶セルロースの乾燥物を得た。次に、供給量を10kg/hrとして、気流型粉砕機(STJ−400型、セイシン企業社製)に上記で得た乾燥物を供給して粉砕し、結晶セルロース微粉末としてセルロースウィスカーを得た。得られたセルロースウィスカーの特性を後述の方法で評価した。結果を下記に示す。
L/D=1.6
平均径=200nm
結晶化度=78%
重合度=200
ゼータ電位=−20mV
セルロースウィスカー(以下、CWと略すことがある)
市販DPパルプ)(平均重合度1600)を裁断し、10%塩酸水溶液中で、105℃で30分間加水分解した。得られた酸不溶解残さを濾過、洗浄、pH調整し、固形分濃度14重量%、pH6.5の結晶セルロース分散体を調製した。この結晶セルロース分散体を噴霧乾燥し、結晶セルロースの乾燥物を得た。次に、供給量を10kg/hrとして、気流型粉砕機(STJ−400型、セイシン企業社製)に上記で得た乾燥物を供給して粉砕し、結晶セルロース微粉末としてセルロースウィスカーを得た。得られたセルロースウィスカーの特性を後述の方法で評価した。結果を下記に示す。
L/D=1.6
平均径=200nm
結晶化度=78%
重合度=200
ゼータ電位=−20mV
セルロースファイバーA(以下、CF−Aと略すことがある)
リンターパルプを裁断後、オートクレーブを用いて、120℃以上の熱水中で3時間加熱し、ヘミセルロース部分を除去した精製パルプを、圧搾、純水中に固形分率が1.5重量%になるように叩解処理により高度に短繊維化およびフィブリル化させた後、そのままの濃度で高圧ホモジナイザー(操作圧:85MPaにて10回処理)により解繊することにより解繊セルロースを得た。ここで、叩解処理においては、ディスクリファイナーを用い、カット機能の高い叩解刃(以下カット刃と称す)で4時間処理した後に解繊機能の高い叩解刃(以下解繊刃と称す)を用いてさらに1.5時間叩解を実施し、セルロースファイバーAを得た。得られたセルロースファイバーの特性を後述の方法で評価した。結果を下記に示す。
L/D=300
平均繊維径=90nm
結晶化度=80%
重合度=600
ゼータ電位=−30mV
リンターパルプを裁断後、オートクレーブを用いて、120℃以上の熱水中で3時間加熱し、ヘミセルロース部分を除去した精製パルプを、圧搾、純水中に固形分率が1.5重量%になるように叩解処理により高度に短繊維化およびフィブリル化させた後、そのままの濃度で高圧ホモジナイザー(操作圧:85MPaにて10回処理)により解繊することにより解繊セルロースを得た。ここで、叩解処理においては、ディスクリファイナーを用い、カット機能の高い叩解刃(以下カット刃と称す)で4時間処理した後に解繊機能の高い叩解刃(以下解繊刃と称す)を用いてさらに1.5時間叩解を実施し、セルロースファイバーAを得た。得られたセルロースファイバーの特性を後述の方法で評価した。結果を下記に示す。
L/D=300
平均繊維径=90nm
結晶化度=80%
重合度=600
ゼータ電位=−30mV
セルロースファイバーB(以下、CF−Bと略すことがある)
叩解処理の条件を、カット刃での処理時間を2.5時間とし、その後の解繊刃での処理時間を2時間とする以外は、CF−Aと同じ条件とし、以下のセルロースファイバーBを得た。
L/D=450
平均繊維径=100nm
結晶化度=80%
重合度=600
ゼータ電位=−30mV
叩解処理の条件を、カット刃での処理時間を2.5時間とし、その後の解繊刃での処理時間を2時間とする以外は、CF−Aと同じ条件とし、以下のセルロースファイバーBを得た。
L/D=450
平均繊維径=100nm
結晶化度=80%
重合度=600
ゼータ電位=−30mV
セルロースファイバーC(以下、CF−Cと略すことがある)
リンターパルプを(株)石川総研製の乾式粉砕機、アトムズを用いて合計8回の微粉化処理を行いセルロースの微粉末を作製した。CF−Aの製造条件における精製パルプを前記工程にて得られたセルロース微粉末に置き換え、以降、CF−Aの製造方法と同様に叩解処理、高圧ホモジナイザーによる処理、および疎水化処理を行い、以下のセルロースファイバーCを得た。
L/D=150
平均繊維径=90nm
結晶化度=65%
重合度=450
ゼータ電位=−30mV
リンターパルプを(株)石川総研製の乾式粉砕機、アトムズを用いて合計8回の微粉化処理を行いセルロースの微粉末を作製した。CF−Aの製造条件における精製パルプを前記工程にて得られたセルロース微粉末に置き換え、以降、CF−Aの製造方法と同様に叩解処理、高圧ホモジナイザーによる処理、および疎水化処理を行い、以下のセルロースファイバーCを得た。
L/D=150
平均繊維径=90nm
結晶化度=65%
重合度=450
ゼータ電位=−30mV
セルロースファイバーD(以下、CF−Dと略すことがある)
酢酸菌を培養しセルロースナノファイバーを得た。培養は標準的な条件である、Hestrin−Schramm培地(「セルロース辞典」セルロース学会編集、朝倉書店、2000年発行、p44)を用い、果糖を炭素源としてPH6、温度28℃で8日間、内寸40cm幅×60cm長×15cm高さのプラスチック製バット内での静置培養を複数回行った。得られた厚みが約15mmの半透明ゲル状物を、サイコロ状に裁断した後、耐圧溶菌用タンク(容量:2m3)中に投入し、2重量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸液させた状態で、120℃で1時間の溶菌処理を行った。
酢酸菌を培養しセルロースナノファイバーを得た。培養は標準的な条件である、Hestrin−Schramm培地(「セルロース辞典」セルロース学会編集、朝倉書店、2000年発行、p44)を用い、果糖を炭素源としてPH6、温度28℃で8日間、内寸40cm幅×60cm長×15cm高さのプラスチック製バット内での静置培養を複数回行った。得られた厚みが約15mmの半透明ゲル状物を、サイコロ状に裁断した後、耐圧溶菌用タンク(容量:2m3)中に投入し、2重量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸液させた状態で、120℃で1時間の溶菌処理を行った。
さらに得られたウェット状のゲルを水洗した後、再度、先と同じ条件で溶菌処理を行い、得られたウェット状ゲルをセルロース固形分として約0.5重量%となるように洗浄用タンク(容量:2m3)内で4℃の冷水で希釈、タンク内に装着されたディスパー型のホモミキサーで約10分間分散処理を行った後、加圧濾過により濃縮物を得た。同様に洗浄用タンク内で4℃の冷水にて固形分率が約0.5重量%となるように希釈しホモミキサーで約10分間分散処理を行った後、加圧濾過により濃縮する分散、濃縮の各工程を3度繰り返し、以下の精製されたセルロースファイバーDを得た。
L/D=1400
平均繊維径=90nm
結晶化度=93%
重合度=2700
ゼータ電位=−30mV
L/D=1400
平均繊維径=90nm
結晶化度=93%
重合度=2700
ゼータ電位=−30mV
<セルロース成分の重合度>
「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定した。
<セルロース成分の結晶形、結晶化度>
X線回折装置(株式会社リガク製、多目的X線回折装置)を用いて粉末法にて回折像を測定(常温)し、Segal法で結晶化度を算出した。また、得られたX線回折像から結晶形についても測定した。
「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定した。
<セルロース成分の結晶形、結晶化度>
X線回折装置(株式会社リガク製、多目的X線回折装置)を用いて粉末法にて回折像を測定(常温)し、Segal法で結晶化度を算出した。また、得られたX線回折像から結晶形についても測定した。
<セルロース成分のL/D>
セルロース成分を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを、原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)を求め、100個〜150個の粒子の平均値として算出した。
セルロース成分を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを、原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)を求め、100個〜150個の粒子の平均値として算出した。
<セルロース成分の平均径>
セルロース成分を固形分40質量%として、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、商品名「5DM−03−R」、撹拌羽根はフック型)中において、126rpmで、室温常圧下で30分間混練した。次いで、固形分が0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」、ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m2/sで45分間遠心処理する。)した。遠心後の上澄み液を用いて、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分間、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)を測定し、この値を平均径とした。
セルロース成分を固形分40質量%として、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、商品名「5DM−03−R」、撹拌羽根はフック型)中において、126rpmで、室温常圧下で30分間混練した。次いで、固形分が0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」、ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m2/sで45分間遠心処理する。)した。遠心後の上澄み液を用いて、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分間、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)を測定し、この値を平均径とした。
<セルロース成分のゼータ電位>
セルロース成分を、1質量%濃度の純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させて得た水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、ゼータ電位計(大塚電子製、装置名ELSZ−2000ZS型、標準セルユニット)を使用し、25℃で測定した。
セルロース成分を、1質量%濃度の純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させて得た水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、ゼータ電位計(大塚電子製、装置名ELSZ−2000ZS型、標準セルユニット)を使用し、25℃で測定した。
≪有機成分≫
有機成分としては以下のものを用いた。
ロジンエチレンオキサイド付加物(ロジン−ポリエチレングリコールエステル、ハリマ化成株式会社社製、商品名「REO−15」、静的表面張力39.7mN/m、SP値7.25以上、常圧下沸点100℃超):以下、単にロジンエステルと称する。
流動パラフィン(和光純薬製、特級グレード、静的表面張力26.4mN/m、沸点100℃超)
トール油脂肪酸(ハリマ化成株式会社製 商品名「ハートールSR−30」、静的表面張力30.2mN/m、SP値7.25以上、常圧下沸点100℃超):以下、単にトール油と称する。
テルピン油(ヤスハラケミカル株式会社製 商品名「ターピネオール」、静的表面張力33.2mN/m、SP値7.25以上、常圧下沸点100℃超)
グリセリン(静的表面張力63.4mN/m、常圧下沸点100℃超)
エタノール(和光純薬製、特級グレード、静的表面張力22.3mN/cm、SP値12.58、常圧下沸点78.4℃)
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンN−515 静的表面張力34.8mN/m、動的表面張力40.9mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単にアルキルフェニルエーテルと称する。
有機成分としては以下のものを用いた。
ロジンエチレンオキサイド付加物(ロジン−ポリエチレングリコールエステル、ハリマ化成株式会社社製、商品名「REO−15」、静的表面張力39.7mN/m、SP値7.25以上、常圧下沸点100℃超):以下、単にロジンエステルと称する。
流動パラフィン(和光純薬製、特級グレード、静的表面張力26.4mN/m、沸点100℃超)
トール油脂肪酸(ハリマ化成株式会社製 商品名「ハートールSR−30」、静的表面張力30.2mN/m、SP値7.25以上、常圧下沸点100℃超):以下、単にトール油と称する。
テルピン油(ヤスハラケミカル株式会社製 商品名「ターピネオール」、静的表面張力33.2mN/m、SP値7.25以上、常圧下沸点100℃超)
グリセリン(静的表面張力63.4mN/m、常圧下沸点100℃超)
エタノール(和光純薬製、特級グレード、静的表面張力22.3mN/cm、SP値12.58、常圧下沸点78.4℃)
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンN−515 静的表面張力34.8mN/m、動的表面張力40.9mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単にアルキルフェニルエーテルと称する。
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンKTSP−16 静的表面張力39.0mN/m、動的表面張力55.8mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単にスチレン化フェニルエーテルと称する。
ポリオキシエチレンβナフチルエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンBN−10 静的表面張力48.2mN/m、動的表面張力51.7mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単にβナフチルエーテルと称する。
ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンBEO−17.5 静的表面張力49.5mN/m、動的表面張力53.1mN/m、常圧下沸点100℃超)
ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンRCW−20 静的表面張力42.4mN/m、動的表面張力52.9mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単に硬化ひまし油エーテルと称する。
ポリオキシエチレン直鎖アルキルエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンCH−315L 静的表面張力36.7mN/m、動的表面張力62.6mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単に直鎖アルキルエーテルと称する。
ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル(日光ケミカルズ株式会社製 NIKKOL BPS−20 静的表面張力51.3mN/m、動的表面張力65.7mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単にフィトステロールと称する。
ポリオキシエチレンβナフチルエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンBN−10 静的表面張力48.2mN/m、動的表面張力51.7mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単にβナフチルエーテルと称する。
ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンBEO−17.5 静的表面張力49.5mN/m、動的表面張力53.1mN/m、常圧下沸点100℃超)
ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンRCW−20 静的表面張力42.4mN/m、動的表面張力52.9mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単に硬化ひまし油エーテルと称する。
ポリオキシエチレン直鎖アルキルエーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンCH−315L 静的表面張力36.7mN/m、動的表面張力62.6mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単に直鎖アルキルエーテルと称する。
ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル(日光ケミカルズ株式会社製 NIKKOL BPS−20 静的表面張力51.3mN/m、動的表面張力65.7mN/m、常圧下沸点100℃超):以下、単にフィトステロールと称する。
<静的表面張力の測定>
各有機成分を用い、自動表面張力測定装置(協和界面科学株式会社製、商品名「CBVP−Z型」、付属のガラス製セル)を用い、ウィルヘルミー法により静的表面張力を測定した。実施例、比較例で用いた各有機成分は常温で液体であったので、装置に付属のステンレス製シャーレに底から液面までの高さを7mm〜9mmとなるように仕込み、25℃±1℃に調温した後に測定し、以下の式により求めた。γ=(P−mg+shρg)/Lcosθ。ここで、P:つりあう力、m:プレートの質量、g:重力定数、L:プレート周囲長、θ:プレートと液体の接触角、s:プレート断面積、h:(力が釣り合うところまで)液面から沈んだ深さ、ρ:液体の密度(実施例、比較例で用いた有機成分は密度が1±0.4g/mLだったので、1を用いた。)、である。
各有機成分を用い、自動表面張力測定装置(協和界面科学株式会社製、商品名「CBVP−Z型」、付属のガラス製セル)を用い、ウィルヘルミー法により静的表面張力を測定した。実施例、比較例で用いた各有機成分は常温で液体であったので、装置に付属のステンレス製シャーレに底から液面までの高さを7mm〜9mmとなるように仕込み、25℃±1℃に調温した後に測定し、以下の式により求めた。γ=(P−mg+shρg)/Lcosθ。ここで、P:つりあう力、m:プレートの質量、g:重力定数、L:プレート周囲長、θ:プレートと液体の接触角、s:プレート断面積、h:(力が釣り合うところまで)液面から沈んだ深さ、ρ:液体の密度(実施例、比較例で用いた有機成分は密度が1±0.4g/mLだったので、1を用いた。)、である。
常温で固体のものは、融点以上に加熱して溶融させた後、融点+5℃の温度に調節し、上述したウィルヘルミー法により表面張力を測定した。
<動的表面張力の測定>
各有機成分を用い、動的表面張力計(英弘精機株式会社製 製品名シータサイエンスt−60型、プローブ(キャピラリーTYPE I(ピーク樹脂製)、シングルモード)を使用し、最大泡圧法により気泡発生周期を10Hzで動的表面張力を測定した。実施例、比較例で用いた各有機成分を5質量%としてイオン交換水に溶解又は分散し測定液を調製し、その溶液又は分散液100mLを、100mL容量のガラス製ビーカーに仕込み、25℃±1℃に調温された後、測定された値を用いた。動的表面張力は、以下の式により求められた。σ=ΔP・r/2。ここで、σ:動的表面張力、ΔP:圧力差(最大圧力−最小圧力)、r:キャピラリー半径、である。
各有機成分を用い、動的表面張力計(英弘精機株式会社製 製品名シータサイエンスt−60型、プローブ(キャピラリーTYPE I(ピーク樹脂製)、シングルモード)を使用し、最大泡圧法により気泡発生周期を10Hzで動的表面張力を測定した。実施例、比較例で用いた各有機成分を5質量%としてイオン交換水に溶解又は分散し測定液を調製し、その溶液又は分散液100mLを、100mL容量のガラス製ビーカーに仕込み、25℃±1℃に調温された後、測定された値を用いた。動的表面張力は、以下の式により求められた。σ=ΔP・r/2。ここで、σ:動的表面張力、ΔP:圧力差(最大圧力−最小圧力)、r:キャピラリー半径、である。
<有機成分のSP値の測定>
SP値は、各サンプル1mLをSP値が既知の下表の溶剤10mLに室温で滴下し、スターラーで1時間撹拌した後、相分離なく溶解した溶剤のSP値の範囲から求めた。
SP値は、各サンプル1mLをSP値が既知の下表の溶剤10mLに室温で滴下し、スターラーで1時間撹拌した後、相分離なく溶解した溶剤のSP値の範囲から求めた。
≪引張降伏強度上昇比≫
射出成形機を用いて、ISO294−3に準拠した多目的試験片を成形した。
ポリプロピレン系材料に関しては、JIS K6921−2に準拠した条件で実施した。
ポリアミド系材料に関しては、JIS K6920−2に準拠した条件で実施した。
原料樹脂(すなわち熱可塑性樹脂単独)及び樹脂組成物(すなわちセルロース含有樹脂組成物)の各々について、ISO527に準拠して引張降伏強度を測定し、セルロース含有樹脂組成物の引張降伏強度を原料樹脂の引張降伏強度で除して、引張降伏強度上昇比を算出した。
なお、ポリアミド系材料は、吸湿による変化が起きるため、成形直後にアルミ防湿袋に保管し、吸湿を抑制した。
射出成形機を用いて、ISO294−3に準拠した多目的試験片を成形した。
ポリプロピレン系材料に関しては、JIS K6921−2に準拠した条件で実施した。
ポリアミド系材料に関しては、JIS K6920−2に準拠した条件で実施した。
原料樹脂(すなわち熱可塑性樹脂単独)及び樹脂組成物(すなわちセルロース含有樹脂組成物)の各々について、ISO527に準拠して引張降伏強度を測定し、セルロース含有樹脂組成物の引張降伏強度を原料樹脂の引張降伏強度で除して、引張降伏強度上昇比を算出した。
なお、ポリアミド系材料は、吸湿による変化が起きるため、成形直後にアルミ防湿袋に保管し、吸湿を抑制した。
≪引張破断強度の変動係数≫
ISO294−3に準拠した多目的試験片を用いて、ISO527に準拠して引張破断強度をn数15でそれぞれ測定し、得られた各データをもとに下式に基づき変動係数(CV)を計算した。
CV=(σ/μ)×100
ここで、σは標準偏差、μは引張破断強度の算術平均を表す。
ISO294−3に準拠した多目的試験片を用いて、ISO527に準拠して引張破断強度をn数15でそれぞれ測定し、得られた各データをもとに下式に基づき変動係数(CV)を計算した。
CV=(σ/μ)×100
ここで、σは標準偏差、μは引張破断強度の算術平均を表す。
≪線膨張係数≫
多目的試験片の中央部から、精密カットソーにて縦4mm、横4mm、長さ4mmの立方体サンプルを切り出し、測定温度範囲−10〜80℃で、ISO11359−2に準拠して測定し、0℃〜60℃の間での膨張係数を算出した。この際、測定に先立ち、120℃環境下で5時間静置してアニーリングを実施した。
多目的試験片の中央部から、精密カットソーにて縦4mm、横4mm、長さ4mmの立方体サンプルを切り出し、測定温度範囲−10〜80℃で、ISO11359−2に準拠して測定し、0℃〜60℃の間での膨張係数を算出した。この際、測定に先立ち、120℃環境下で5時間静置してアニーリングを実施した。
≪流動性(最小充填圧力)≫
実成形に近い流動性の指標として、最小充填圧力を測定した。
具体的には、型締圧力200トンの射出成形機に、フィルムゲートを幅方向に有する、長さ200mm、幅150mmで、厚みが平板中央部で3mmから1.5mmに変化する平板金型を取り付け、シリンダー温度と金型温度を以下のように設定し、試験片が充填するギリギリの圧力を測定した。この際、保圧切り替えは行わず、射出圧力、速度は1段のみとした。また、20ショット連続でフル充填で成形した後に、徐々に射出圧力を落としていき、未充填が生じる直前若しくは、ヒケが生じる直前の射出圧力を最小充填圧力とした。
シリンダー温度
ポリプロピレン系材料 210℃
ポリアミド系材料 260℃
金型温度
ポリプロピレン系材料 40℃
ポリアミド系材料 70℃
実成形に近い流動性の指標として、最小充填圧力を測定した。
具体的には、型締圧力200トンの射出成形機に、フィルムゲートを幅方向に有する、長さ200mm、幅150mmで、厚みが平板中央部で3mmから1.5mmに変化する平板金型を取り付け、シリンダー温度と金型温度を以下のように設定し、試験片が充填するギリギリの圧力を測定した。この際、保圧切り替えは行わず、射出圧力、速度は1段のみとした。また、20ショット連続でフル充填で成形した後に、徐々に射出圧力を落としていき、未充填が生じる直前若しくは、ヒケが生じる直前の射出圧力を最小充填圧力とした。
シリンダー温度
ポリプロピレン系材料 210℃
ポリアミド系材料 260℃
金型温度
ポリプロピレン系材料 40℃
ポリアミド系材料 70℃
≪成形片外観≫
流動性評価の際に成形したフル充填の成形片の外観を以下の指標で評価した。
点数 状況
5 成形片全面に光沢がある
4 成形片の流動末端部に光沢がない
3 成形片の薄肉部に光沢がない
2 成形片全面に光沢がなく、若干の変色が確認できる。
1 成形片全面に光沢がなく、かなりの変色が確認できる。
流動性評価の際に成形したフル充填の成形片の外観を以下の指標で評価した。
点数 状況
5 成形片全面に光沢がある
4 成形片の流動末端部に光沢がない
3 成形片の薄肉部に光沢がない
2 成形片全面に光沢がなく、若干の変色が確認できる。
1 成形片全面に光沢がなく、かなりの変色が確認できる。
≪成形片膨張率≫
実際の成形体の寸法変化に即した評価方法として、成形片膨張率を測定した。
具体的には、流動性評価の際に成形したフル充填の成形片を用いて、23℃、50%RHの環境下で成形片長さ方向の寸法を測定したのち、試験片を60℃のオーブン中に入れ、30分後に取り出した直後の長さ方向の寸法を実測し、寸法変化率を計算した。測定はn=5で実施しその算術平均をもって、成形片膨張率とした。
実際の成形体の寸法変化に即した評価方法として、成形片膨張率を測定した。
具体的には、流動性評価の際に成形したフル充填の成形片を用いて、23℃、50%RHの環境下で成形片長さ方向の寸法を測定したのち、試験片を60℃のオーブン中に入れ、30分後に取り出した直後の長さ方向の寸法を実測し、寸法変化率を計算した。測定はn=5で実施しその算術平均をもって、成形片膨張率とした。
≪着色性≫
着色しやすさの指標として着色性を評価した。一般的に樹脂に着色する際は、一度白色にした後、所望の色に必要な染顔料を添加して調色する作業が行われる。白色へのしやすさは、着色性を大きく左右することとなる。ここでは所定量の酸化チタンを添加した際の白さを測定することにより着色性を評価した。
着色しやすさの指標として着色性を評価した。一般的に樹脂に着色する際は、一度白色にした後、所望の色に必要な染顔料を添加して調色する作業が行われる。白色へのしやすさは、着色性を大きく左右することとなる。ここでは所定量の酸化チタンを添加した際の白さを測定することにより着色性を評価した。
実施例で作製したセルロース成分を配合したペレット100質量部に対して、酸化チタンを50質量%含むマスターバッチを3質量部の割合でドライブレンドし、型締圧力200トンの射出成形機を用いて、流動性(最小充填圧力)で用いたものと同じ平板金型を用い、シリンダー温度と金型温度を以下のように設定し、試験片が充分に充填する圧力で成形を行った。なお、この時使用したマスターバッチは、ポリプロピレン系材料に関してはポリプロピレンをベース樹脂とし、ポリアミド系材料に関してはポリアミドをベースとするマスターバッチを用いた。
シリンダー温度/金型温度
ポリプロピレン系材料 210℃/40℃
ポリアミド系材料 260℃/70℃
シリンダー温度/金型温度
ポリプロピレン系材料 210℃/40℃
ポリアミド系材料 260℃/70℃
得られた試験片の平板部を用いて、色差計(コニカミノルタ社製 CM−2002)を用いて、D65光、10°視野にてL*値を測定し、以下の評価基準により着色性の評価を行った。
平板のL*値 着色性
85以上 優れる
80以上85未満 良好
75以上80未満 劣る
75未満 不良
平板のL*値 着色性
85以上 優れる
80以上85未満 良好
75以上80未満 劣る
75未満 不良
≪フェンダーの欠陥率≫
実施例で得られたペレットを用いて、最大型締圧力4000トンの射出成形機のシリンダー温度を250℃に設定し、図3の概略図に示す形状を有するフェンダーを成形可能な所定の金型(キャビティー容積:約1400cm3、平均厚み:2mm、投影面積:約7000cm2、ゲート数:5点ゲート、ホットランナー:なお、図3中で、成形体のランナー位置を明確にするためにランナー(ホットランナー)の相対的な位置1を図示した。)を用い、金型温度を60℃に設定し、20枚のフェンダーを成形した。
実施例で得られたペレットを用いて、最大型締圧力4000トンの射出成形機のシリンダー温度を250℃に設定し、図3の概略図に示す形状を有するフェンダーを成形可能な所定の金型(キャビティー容積:約1400cm3、平均厚み:2mm、投影面積:約7000cm2、ゲート数:5点ゲート、ホットランナー:なお、図3中で、成形体のランナー位置を明確にするためにランナー(ホットランナー)の相対的な位置1を図示した。)を用い、金型温度を60℃に設定し、20枚のフェンダーを成形した。
得られたフェンダーを床に置き、5kgの砂を入れた袋を、約50cmの高さより、フェンダー中心部に落下させ、フェンダーの破壊状況を確認した。20枚中破壊した枚数を数えた。
≪線膨張係数の変動係数≫
フェンダーの欠陥率の測定で使用したフェンダーを用いて、図4の(1)から(10)の位置よりおおよそ約10mm角に切り出し、縦約10mm、横約10mm、厚さ2mmの10個の小平板試験片を採取した。なお、(1)〜(3)は成形体ゲート付近、(4)〜(7)は成形体の流動末端部、(8)〜(10)は、成形体の中央部である。
得られた小平板試験片を、さらに精密カットソーにて縦4mm、横2mm、長さ4mmの測定用直方体サンプルに切り出した。この時の直方体サンプルの横部分がフェンダーの厚さ方向となる。
測定に先立ち、120℃環境下で5時間静置してアニーリングを実施して測定用サンプルを得た。得られたサンプルを、測定温度範囲−10℃〜+80℃で、ISO11359−2に準拠して測定し、0℃〜60℃の間での膨張係数を算出し、合計10個の測定結果を得た。この10個の測定データをもとに下式に基づき変動係数(CV)を計算した。
CV=(σ/μ)×100
ここで、σは標準偏差、μは引張破断強度の算術平均を表す。
フェンダーの欠陥率の測定で使用したフェンダーを用いて、図4の(1)から(10)の位置よりおおよそ約10mm角に切り出し、縦約10mm、横約10mm、厚さ2mmの10個の小平板試験片を採取した。なお、(1)〜(3)は成形体ゲート付近、(4)〜(7)は成形体の流動末端部、(8)〜(10)は、成形体の中央部である。
得られた小平板試験片を、さらに精密カットソーにて縦4mm、横2mm、長さ4mmの測定用直方体サンプルに切り出した。この時の直方体サンプルの横部分がフェンダーの厚さ方向となる。
測定に先立ち、120℃環境下で5時間静置してアニーリングを実施して測定用サンプルを得た。得られたサンプルを、測定温度範囲−10℃〜+80℃で、ISO11359−2に準拠して測定し、0℃〜60℃の間での膨張係数を算出し、合計10個の測定結果を得た。この10個の測定データをもとに下式に基づき変動係数(CV)を計算した。
CV=(σ/μ)×100
ここで、σは標準偏差、μは引張破断強度の算術平均を表す。
[実施例1〜46及び比較例1〜10]
ポリアミド、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーを、それぞれ表3〜5記載の割合で混合し、東芝機械(株)製のTEM48SS押出機で、スクリュー回転数350rpm、吐出量140kg/hrで溶融混練し、真空脱揮した後、ダイからストランド状に押出し、水浴で冷却し、ペレタイズした。ペレットは円柱状の形状で、直径が2.3mmで、長さが5mmであった。
これらを上述した評価方法に準拠して、評価した。
ポリアミド、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーを、それぞれ表3〜5記載の割合で混合し、東芝機械(株)製のTEM48SS押出機で、スクリュー回転数350rpm、吐出量140kg/hrで溶融混練し、真空脱揮した後、ダイからストランド状に押出し、水浴で冷却し、ペレタイズした。ペレットは円柱状の形状で、直径が2.3mmで、長さが5mmであった。
これらを上述した評価方法に準拠して、評価した。
ポリアミド系樹脂をベースとして、セルロースファイバーとセルロースウィスカーの比率を変更した。
セルロースファイバー単独の比較例2に対して、セルロースウィスカーを併用した実施例5では、フェンダーの欠陥率、流動性(最小充填圧力)、成形片外観、着色性及び成形片の膨張率が大幅に改善していることが判る。
セルロースファイバー単独の比較例2に対して、セルロースウィスカーを併用した実施例5では、フェンダーの欠陥率、流動性(最小充填圧力)、成形片外観、着色性及び成形片の膨張率が大幅に改善していることが判る。
ポリプロピレン系樹脂をベースとして、セルロースファイバーとセルロースウィスカーの比率を変更した。ポリアミド系樹脂での例と同様の傾向を示し、セルロースファイバー単独の比較例4に対して、セルロースウィスカーを併用した実施例14〜18では、フェンダーの欠陥率、流動性(最小充填圧力)、成形片外観、着色性及び成形片の膨張率が大幅に改善していることが判る。
ポリプロピレン系樹脂をベースとして、セルロース成分との親和性を向上させるため、酸変性ポリプロピレンを併用した例を示す。
表4及び5の例と表6及び7の例とを比較すると、酸変性ポリプロピレンを併用することで、セルロース成分の分散性が向上するためか、全体的に物性は良好になっている。
表4及び5の例と表6及び7の例とを比較すると、酸変性ポリプロピレンを併用することで、セルロース成分の分散性が向上するためか、全体的に物性は良好になっている。
[実施例47〜57]
ポリアミド100質量部に対して、セルロースウィスカー15質量部、セルロースファイバー5質量部、及び表6に示した有機成分5質量部を混合し、東芝機械(株)製のTEM48SS押出機で、スクリュー回転数350rpm、吐出量200kg/hrで溶融混練し、真空脱揮した後、ダイからストランド状に押出し、水浴で冷却し、ペレタイズした。ペレットは円柱状の形状で、直径が2.3mmで、長さが5mmであった。
これらを上述した評価方法に準拠して、評価した。
ポリアミド100質量部に対して、セルロースウィスカー15質量部、セルロースファイバー5質量部、及び表6に示した有機成分5質量部を混合し、東芝機械(株)製のTEM48SS押出機で、スクリュー回転数350rpm、吐出量200kg/hrで溶融混練し、真空脱揮した後、ダイからストランド状に押出し、水浴で冷却し、ペレタイズした。ペレットは円柱状の形状で、直径が2.3mmで、長さが5mmであった。
これらを上述した評価方法に準拠して、評価した。
有機成分として種々のものを用いた結果、実施例49〜52及び54において、フェンダー欠陥率がゼロを示した。また、これらの例において、総じて引張降伏強度上昇率、成形片膨張率及び、線膨張係数の変動係数の改善が確認された。
本発明の樹脂組成物は、例えば、高い強度と低い線膨張性とともに、安定した性能が求められる大型部品である自動車の外装材料用途の分野で好適に利用できる。
1 ランナー(ホットランナー)の相対的な位置
(1)〜(10) 線膨張係数の変動係数を測定するための試験片を採取した位置
(1)〜(10) 線膨張係数の変動係数を測定するための試験片を採取した位置
Claims (20)
- 熱可塑性樹脂100質量部と、セルロース成分0.1〜100質量部とを含む樹脂組成物であって、前記セルロース成分は、径が1μm未満、長さ/径比率(L/D比)が15以下のセルロースウィスカーと、径が1μm未満、L/D比が150以上のセルロースファイバーを含む、樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらのいずれか2種以上の混合物からなる群より選択される請求項1記載の樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンであり、該ポリプロピレンのISO1133に準拠して230℃で測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下である請求項1記載の樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂であり、該ポリアミド系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95である請求項1記載の樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂であり、該ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95である請求項1記載の樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリアセタール系樹脂であり、該ポリアセタール系樹脂が、0.01〜4モル%のコモノマー由来構造単位を含有するコポリアセタールである請求項1記載の樹脂組成物。
- 前記セルロース成分の総質量に対する前記セルロースウィスカーの比率が50質量%以上である請求項1〜6のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記セルロース成分の径が500nm以下である請求項1〜7のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記セルロースウィスカーの結晶化度及び前記セルロースファイバーの結晶化度がそれぞれ55%以上である請求項1〜8のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記セルロースウィスカーの重合度が100以上300以下である請求項1〜9のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記セルロースファイバーの重合度が400以上3500以下である請求項1〜10のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記セルロース成分100質量部に対し、動的表面張力が60mN/m以下である有機成分を50質量部以下の量でさらに含む請求項1〜11のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記有機成分が界面活性剤である請求項12記載の樹脂組成物。
- 前記有機成分の静的表面張力が20mN/m以上である請求項12又は13記載の樹脂組成物。
- 前記有機成分がロジン誘導体、アルキルフェニル誘導体、ビスフェノールA誘導体、βナフチル誘導体、スチレン化フェニル誘導体、及び硬化ひまし油誘導体からなる群より選択される1種以上である請求項12〜14のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記有機成分がポリオキシエチレン誘導体である請求項12〜15のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物の引張降伏強度が、前記熱可塑性樹脂の引張降伏強度の1.1倍以上である請求項1〜16のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物の0℃〜60℃の範囲での線膨張係数が50ppm/K以下である請求項1〜17のいずれか一項記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜18のいずれか一項記載の樹脂組成物より形成される樹脂ペレット。
- 請求項1〜18のいずれか一項記載の樹脂組成物より形成される樹脂成形体。
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