JP6784553B2 - セルロースナノファイバー濃縮物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、セルロースナノファイバー濃縮物の製造方法に関する。
近年、セルロース繊維、特に木材由来のセルロース繊維(パルプ)を種々の方法で微細化したセルロースナノファイバーが、その優れた特性とリサイクル性から注目を集めている。セルロースナノファイバーは低固形分の水性分散体の状態で製造されるが、歩留まり、ろ水性が不十分であり、且つ、その製品形態が低固形分の水分散体である場合には流通コストが高くなるという問題がある。また、その製品形態がゲル状である場合には製品移送で不具合を生じる場合や取り扱う際のハンドリング性が悪いという問題がある。これらの問題はセルロースナノファイバーを今後より汎用的なものとし、広範な分野で用途開発を行う上では解決すべき大きな課題である。
これら問題を解決する手段として、セルロースナノファイバーをより高固形分で製造するか、あるいは、低固形分で製造後、濃縮して高固形分化を図るための技術検討がなされているが、簡便、且つ、低コストで商業的に利用できる技術は限られている。また、セルロースナノファイバー濃縮物を再分散して利用する技術も限られている。
特許文献1には、セルロースナノファイバー水性分散体を濃縮するために、HLB8〜18のポリオキシアルキレン化合物の存在下、低濃度のセルロースナノファイバー水性分散体を濃縮して高濃度のセルロースナノファイバー水性分散体を得ることが開示されている。しかしながら、濃縮物の再分散性という点で問題がある。
特開2015−117340号公報
本発明の実施形態は、セルロースナノファイバーを容易に高固形分化、即ち濃縮することができる、セルロースナノファイバー濃縮物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係るセルロースナノファイバー濃縮物の製造方法は、セルロースナノファイバー水性分散体への添加により当該水性分散体に曇点又は熱ゲル化点を持たせることができる濃縮助剤(A)の存在下、1)セルロースナノファイバー水性分散体を曇点又は熱ゲル化点以上の温度に昇温してセルロースナノファイバーを含む凝集体を生じさせる工程と、2)得られた凝集体を含む液を曇点又は熱ゲル化点以上の温度でろ過する工程と、を含むものである。
本発明の実施形態に係るセルロースナノファイバーの再分散方法は、上記の方法により得られたセルロースナノファイバー濃縮物を、水、有機溶剤、及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒に再分散させるものである。
本発明の実施形態に係る製造方法であると、セルロースナノファイバー水性分散体を効率的に濃縮して、セルロースナノファイバー濃縮物を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態において、セルロースナノファイバーとは、セルロース系原料を解繊して得られる、ナノメートルレベルの繊維径を持つ微細繊維をいう。セルロースナノファイバーは、平均繊維長が50nm〜5000nmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmであり、平均繊維径が1nm〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは2〜300nmであり、2〜150nmでもよい。
ここで、平均繊維径とは、次のようにして測定される数平均繊維径である。すなわち、固形分率で0.05〜0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。得られた画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、数平均繊維径を算出する。
セルロース系原料としては、木材由来のクラフトパルプまたはサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末等が挙げられる。この他に、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物由来のセルロース系原料も使用することができる。また、これらのセルロース系原料を高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの分散装置、好ましくは湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーなどで微細化したものをセルロース系原料として使用することもできる。ここで、粉末セルロースとは、木材パルプの非結晶部分を酸加水分解により除去した後、粉砕及び篩い分けすることで得られる微結晶性又は結晶性セルロースからなる棒軸状粒子である。
セルロース系原料は、セルロースだけでなく、アニオン変性セルロースも含む概念である。アニオン変性セルロースとは、アニオン性の基(カルボキシル基やカルボキシメチル基、リン酸基など)を導入したセルロース系原料をいう。そのため、セルロースナノファイバーの具体例には、カルボキシル基を導入したカルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル基を導入したカルボキシメチル化セルロースナノファイバー、及び、リン酸基を導入したリン酸化セルロースナノファイバーも含まれる。ここで、上記のカルボキシル基やカルボキシメチル基、リン酸基等のアニオン性基には、酸型だけでなく、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩など、塩型も含む概念であり、酸型と塩型が混在してもよい。
カルボキシル化セルロースナノファイバーの例としては、TEMPO酸化セルロースが挙げられる。TEMPO酸化セルロースとは、パルプ等の天然セルロースを、水溶性の安定ニトロキシルラジカルであるTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシルの略称)触媒酸化したセルロースシングルナノファイバーである。TEMPO酸化セルロースは、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的にカルボキシル基に酸化変性された、微細なセルロース繊維である。
TEMPO酸化セルロースは、天然セルロースとTEMPOを水に分散させた後、次亜塩素酸ナトリウム等の共酸化剤を添加して酸化反応を行い、その後、必要に応じて還元反応を行った後、精製し、次いで、解繊処理することにより製造することができる。解繊処理は、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用して行うことができる。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、セルロースを構成するグルコースユニットの水酸基をカルボキシメチル化したものであり、例えば、以下のようにして作製するカルボキシメチル基を導入したセルロースを解繊することで得ることができる。セルロース系原料を発底原料にし、3〜20質量倍の低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合物と水の混合媒体を溶媒として使用する。混合媒体における低級アルコールの混合割合は、60〜95質量%である。発底原料のグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムをマーセル化剤として使用し、発底原料、溶媒、及びマーセル化剤を混合し、反応温度を0〜70℃、かつ反応時間を15分〜8時間としてマーセル化処理を行う。その後、モノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウム(カルボキシメチル化剤)をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、かつ反応時間30分〜10時間としてエーテル化反応を行うことにより、カルボキシメチル基を導入したセルロースを得ることができる。エーテル化反応後、TEMPO酸化セルロースと同様の解繊処理を行うことにより、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーを得ることができる。
リン酸化セルロースナノファイバーは、例えば、次の方法により製造することができる。乾燥したあるいは湿潤状態のセルロース系原料にリン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法、セルロース系原料の分散液にリン酸またはリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。リン酸またはリン酸誘導体としては、リン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸あるいはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これにより、セルロースを構成するグルコースユニットの水酸基にリン酸基を含む化合物またはその塩が脱水反応してリン酸エステルが形成され、リン酸基又はその塩が導入される。リン酸基が導入されたセルロース繊維は、TEMPO酸化セルロースと同様の解繊処理を行うことにより、セルロースナノファイバーとなる。
セルロースナノファイバー水性分散体とは、水を必須成分とする水性媒体にセルロースナノファイバーを分散させたものを意味する。また、その成分に防腐剤やpH調整剤等を含んでいてもよい。
水性媒体としては、水以外に、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール(IPA)等)、アセトン、メチルエチルケトン、グリコール又はそのエーテル誘導体(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ジメチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール等)、グリセリン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の水混和性有機溶剤が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。水性媒体としては、水、又は、水と水混和性有機溶剤との混合液が好ましい。なお、水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解する有機溶剤をいう。
セルロースナノファイバー水性分散体に含まれるセルロースナノファイバーの量は、特に限定されない。例えば、セルロースナノファイバー水性分散体の全量に対して、セルロースナノファイバーの含有量は、0.01〜30質量%でもよく、0.1〜10質量%でもよく、0.1〜3質量%でもよい。
本実施形態に係るセルロースナノファイバー濃縮物の製造方法は、上記のようにして作製したセルロースナノファイバー水性分散体を、濃縮、即ち高濃度化する方法に特徴があり、セルロースナノファイバー水性分散体の調製工程は特に限定されない。
本実施形態において、セルロースナノファイバー水性分散体の濃縮方法は、特定の濃縮助剤(A)の存在下、1)セルロースナノファイバー水性分散体を曇点又は熱ゲル化点以上の温度に昇温してセルロースナノファイバーを含む凝集体を生じさせる工程(以下、工程1)と、2)得られた凝集体を含む液を曇点又は熱ゲル化点以上の温度でろ過する工程(以下、工程2)と、含む。このように濃縮助剤(A)を用いてセルロースナノファイバーを含む凝集体を生じさせ、その状態のままろ過することにより、セルロースナノファイバーを容易に高濃度化することができる。すなわち、該濃縮助剤(A)は、セルロースナノファイバー濃縮物を製造するに際し、高いろ水性を発揮し、セルロースナノファイバー濃縮物を効率的に製造することができる。この濃縮方法は、簡便、且つ、低コスト、更には汎用設備を用いて製造できる点で商業生産への適用が可能であり、産業的利用価値が大きい。また、本実施形態により得られるセルロースナノファイバー濃縮物は、水及び/又は有機溶剤に容易に再分散させることができる。また、フィラーとして樹脂へ配合することも可能である。
濃縮助剤(A)としては、セルロースナノファイバー水性分散体への添加により当該水性分散体に曇点又は熱ゲル化点を持たせることができる水溶性化合物が用いられる。ここで、セルロースナノファイバー水性分散体に曇点を持たせることができる濃縮助剤を、曇点を有する濃縮助剤(A1)といい、熱ゲル化点を持たせることができる濃縮助剤を、熱ゲル化点を有する濃縮助剤(A2)という。
濃縮助剤(A)としては、ポリオキシアルキレン鎖を分子内に有する化合物、アルキルセルロース、及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。このうち、ポリオキシアルキレン鎖を分子内に有する化合物が、曇点を有する濃縮助剤(A1)であり、アルキルセルロース、及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースが、熱ゲル化点を有する濃縮助剤(A2)である。
ここで、曇点とは、濃縮助剤(A1)を含む溶液の温度を上昇させていったときに、溶液から濃縮助剤(A1)が不溶化し始める温度である(「化学辞典」、(株)東京化学同人、1994年発行)。
曇点を有する濃縮助剤(A1)である、ポリオキシアルキレン鎖を分子内に有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤が挙げられる。
ポリオキシアルキレン鎖は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドから群から選ばれる一種以上のアルキンオキシドの開環重合物であることが好ましい。より好ましくは、ポリオキシアルキレン鎖は、エチレンオキサイド単独の開環重合物、あるいは、エチレンオキサイドと、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドとを組み合わせた開環重合物である。アルキレンオキシド(オキシアルキレン基)の平均付加モル数は、特に限定しないが、20〜300モルであることが好ましく、より好ましくは、30〜100モルである。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとしては、エチレンオキシド5〜200モルとプロピレンオキシド5〜200モルとの共重合体が挙げられる。好適に使用できるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとしては、第一工業製薬株式会社製の「エパン」シリーズ等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、炭素数6〜22のアルキル基を有するアルコールのアルキレンオキシド付加物が含まれ、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えば、「DKS NL」シリーズ、第一工業製薬株式会社製)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(例えば、「ノイゲン TDS」シリーズ)、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(例えば、「ノイゲン LP」シリーズ、第一工業製薬株式会社製)、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル(例えば、「ノイゲン TDX」シリーズ、第一工業製薬株式会社製)、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(例えば、「ノイゲン XL」シリーズ、第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(例えば、「ノニポールシリーズ」、三洋化成工業株式会社製)等が好適に使用できる。ここで、アルキル基の炭素数としては7〜10でもよい。
ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(例えば、「ノイゲンEA−137」、「ノイゲンEA−157」、第一工業製薬株式会社製)等が好適に使用できる。
ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、「ソルゲン TW」シリーズ、第一工業製薬株式会社製)等が好適に使用できる。
熱ゲル化点とは、濃縮助剤(A2)を含むことで熱ゲル性を示す溶液が、加熱によりゲル化を開始する温度である(「セルロースエーテル水溶液の熱可逆的ゲル化に伴う温度−粘度挙動」(高分子論文集,vol.38,pp.133−137,1981年)参照。同文献における「増粘開始温度T」である)。また、熱ゲル性とは、濃縮助剤(A2)を含む溶液が、加熱によりゲル化し、冷却により元の水溶液に復元する性質(熱可逆的ゲル化)である。
熱ゲル化点を有する濃縮助剤(A2)である、アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース(例えば、「メトローズSM」シリーズ、信越化学工業株式会社製)が挙げられ、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、「メトローズSH」シリーズ、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。これらは、例としてセルロースを水酸化ナトリウムで処理した後、塩化メチルまたは酸化プロピレン等のエーテル化剤と反応させて得られる水溶性セルロースエーテルである。ここで、メチルセルロースとは、セルロースの水酸基の水素原子の一部をメチル基で置換したものである。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとは、セルロースの水酸基の水素原子の一部をメチル基又はヒドロキシプロピル基で置換したもの等が挙げられる。
工程1においては、セルロースナノファイバー水性分散体に濃縮助剤(A)を添加し混合することにより、濃縮助剤含有セルロースナノファイバー水性分散体を調製し、得られた水性分散体を加熱して、当該水性分散体の曇点又は熱ゲル化点以上の温度に昇温すればよい。
濃縮助剤(A)の使用量は、特に限定しないが、濃縮助剤含有セルロースナノファイバー水性分散体の全量に対して、0.01〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜20質量%であり、更に好ましくは0.05〜5質量%である。
濃縮助剤(A)をセルロースナノファイバー水性分散体に添加し混合する際には、ホモミキサーなどの分散装置を用いた分散処理を行ってもよく、当該水性分散体中に濃縮助剤(A)を溶解させることができる。その際、濃縮助剤(A)とともに、水などの水性媒体を更に追加し、セルロースナノファイバーの濃度を調整してもよい。
濃縮助剤含有セルロースナノファイバー水性分散体は、その曇点又は熱ゲル化点以上の温度に昇温することにより、セルロースナノファイバーを含む凝集体を生じさせることができる。ここで、昇温速度は、特に限定しないが、0.5〜10℃/分であることが好ましく、より好ましくは1〜5℃/分である。また、昇温する温度は、曇点又は熱ゲル化点以上であれば特に限定しないが、曇点又は熱ゲル化点に対して、1〜30℃高い温度であることが好ましく、より好ましくは5〜20℃高い温度である。
一実施形態において、濃縮助剤含有セルロースナノファイバー水性分散体を、上記所定の昇温速度で加熱しながら、不溶化し始める曇点を超え又はゲル化し始める熱ゲル化点を超えて、これら曇点又は熱ゲル化点よりも高い上記所定の温度まで加温することが好ましい。昇温する際には、凝集体が生成されやすいように、撹拌しないか、又はゆるやかに撹拌することが好ましい。
このようにして生成される凝集体には、セルロースナノファイバーとともに、水性媒体及び濃縮助剤(A)が含まれる。凝集体は、濃縮助剤含有セルロースナノファイバー水性分散体に含まれる水性媒体の一部を取り込んだ状態で、残部の水性媒体から分離した状態に形成される。
工程1においては、濃縮助剤(A)に加えて、曇点又は熱ゲル化点を上昇あるいは低下させる機能を有する調整助剤(B)を用いてもよい。すなわち、濃縮助剤含有セルロースナノファイバー水性分散体中に調製助剤(B)を含ませることにより、その曇点又は熱ゲル化点を上昇又は低下させることができる。
このような機能を持つ調整助剤(B)としては、(B1)硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、及び乳酸イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を成分としてなる塩、及び/又は、(B2)下記一般式(1)〜(5)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
2n+1−OH (1)
2p+1−CO−C2q+1 (2)
2s+1−COO−C2t+1 (3)
2u+1O−(AO)−C2w+1 (4)
R(OH) (5)
式中、nは1〜9の整数、p及びqはそれぞれ独立に1〜9の整数、sは0〜9の整数、tは1〜4の整数、u及びwはそれぞれ独立に0〜9の整数、vは1〜3の整数、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rは炭素数3〜10の炭化水素基、mは3又は4を示し、1分子中に複数のAOが存在する場合、それぞれ同じでも異なってもよい。
調製助剤(B1)として、硫酸イオンを成分としてなる塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムなどの硫酸塩が挙げられる。ハロゲン化物イオンを成分としてなる塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化アンモニウムなどが挙げられる。炭酸イオンを成分としてなる塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩が挙げられる。リン酸イオンを成分としてなる塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムなどのリン酸塩が挙げられる。酢酸イオンを成分としてなる塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩が挙げられる。乳酸イオンを成分としてなる塩としては、例えば、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸アンモニウムなどの乳酸塩が挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
調製助剤(B2)について、式(1)中のnは、より好ましくは1〜4の整数である。式(1)で表される化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等などのアルコールが挙げられる。式(2)中のp及びqは、より好ましくは、それぞれ独立に1〜3の整数である。式(2)で表される化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンが挙げられる。式(3)中のsは、より好ましくは1〜3の整数であり、tは、より好ましくは1〜3の整数である。式(3)で表される化合物としては、酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪酸エステルが挙げられる。式(4)中のu及びwは、より好ましくは、それぞれ独立に0〜4の整数の整数であり、vは、より好ましくは1又は2である。AOは、より好ましくは炭素数2又は3のオキシアルキレン基である。式(4)で表される化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ジメチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコール又はそのエーテル誘導体が挙げられる。式(5)中のRは、より好ましくは炭素数3〜6の炭化水素基であり、mは、より好ましくは3である。式(5)で表される化合物としては、例えば、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、調製助剤(B1)のいずれか少なくとも1種と調製助剤(B2)のいずれか少なくとも1種を組み合わせて用いてもよい。
調製助剤(B)の使用量は、特に限定しないが、調製助剤(B)を含む濃縮助剤含有セルロースナノファイバー水性分散体の全量に対して、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。
工程2においては、工程1で得られた凝集体を含む液を、その曇点又は熱ゲル化点以上の温度でろ過する。すなわち、凝集体と水性媒体が分離した状態にある液を用いて、凝集体の状態を維持できるように曇点又は熱ゲル化点以上の温度を維持したままろ過操作を行い、凝集体と水性媒体を分離する。
ろ過時の温度は、凝集体を含む液の曇点又は熱ゲル化点以上であれば特に限定しない。例えば、凝集体を含む液の液温が、曇点又は熱ゲル化点に対して、1〜30℃高い温度であることが好ましく、より好ましくは5〜20℃高い温度である。
ろ過装置としては、凝集体を含む液の温度を、曇点又はゲル化点以上に保持しつつろ過できるものであればよく、例として、保温機能付きメンブレンろ過器を用いることができる。
工程2によりろ液から分離された残渣である凝集体は、曇点又はゲル化点未満の温度にすることで未凝集の状態となり、元のセルロースナノファイバー水性分散体に対して、より高濃度化されたセルロースナノファイバー水性分散体となる。すなわち、セルロースナノファイバー濃縮物が得られる。
ここで、セルロースナノファイバー濃縮物とは、上記工程1の処理対象であるセルロースナノファイバー水性分散体に対して、高濃度化されたセルロースナノファイバー含有物(即ち、セルロースナノファイバーの含有率を高めたもの)をいう。詳細には、セルロースナノファイバー濃縮物は、昇温処理を行う濃縮助剤含有セルロースナノファイバー水性分散体に対して高濃度化されたものでもよいが、より好ましくは、濃縮助剤(A)及び濃度調整のための水性媒体を添加する前のセルロースナノファイバー水性分散体に対して高濃度化されていることである。
セルロースナノファイバー濃縮物の性状は、特に限定されず、水性分散体でもよく、また上記の凝集体の状態でもよく、更には後述する乾燥体の状態でもよい。また、セルロースナノファイバー濃縮物に含まれるセルロースナノファイバーの量は、特に限定されず、例えば、セルロースナノファイバー濃縮物の全量に対して、2.0〜100質量%でもよく、3.0〜80質量%でもよく、4.0〜50質量%でもよい。また、セルロースナノファイバー濃縮物に含まれる濃縮助剤(A)の量は、セルロースナノファイバーの量に対して、1〜50質量%でもよく、2〜25質量%でもよい。
本実施形態に係るセルロースナノファイバー濃縮物の製造方法においては、上記の工程2のろ過工程によりろ液と分離した凝集体、又は該凝集体を曇点又は熱ゲル化点未満の温度にすることで得られた水性分散体を、脱水及び/又は乾燥することにより水分を低減させる工程(以下、工程3)を更に含んでもよい。
工程3における脱水としては、例えば、遠心分離等が挙げられる。
工程3における乾燥としては、例えば、加熱乾燥、送風乾燥、マイクロ波乾燥、赤外線乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されず、加熱乾燥の場合を例示するならば、80〜140℃でもよく、100〜120℃でもよい。また、乾燥時間も、特に限定されず、例えば、1〜3,000分でもよく、5〜180分でもよい。
本実施形態においては、上記方法により得られたセルロースナノファイバー濃縮物を、水、有機溶剤、及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒に再分散させてもよい。再分散方法としては、特に限定されず、セルロースナノファイバー濃縮物を、水、有機溶剤、及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒に加え、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの分散装置を用いて分散処理することにより、セルロースナノファイバーを分散媒中に分散させることができる。好ましくは、分散装置として、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることである。
再分散させる際に用いる分散媒としての有機溶剤としては、セルロースナノファイバーの用途に応じて適宜に選択することができ、特に限定されないが、例えば、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール(IPA)等)、アセトン、メチルエチルケトン、グリコール又はそのエーテル誘導体(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ジメチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール等)、グリセリン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の水混和性有機溶剤が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
再分散させる際に用いる分散媒としての樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂やポリビニルブチラールなどの上記有機溶剤に溶解する樹脂が好ましい。再分散させる分散媒として水及び/又は有機溶剤とともに樹脂を用いる場合、再分散後に、得られたセルロースナノファイバー分散体を乾燥させることにより、樹脂中にセルロースナノファイバーが分散したセルロースナノファイバー/樹脂複合体を作製してもよい。
再分散させる分散媒としては、水、又は水とその他の分散媒との混合液が好ましい。また、再分散後のセルロースナノファイバーの濃度についても、セルロースナノファイバーの用途に応じて適宜に設定することができ、特に限定されないが、例えば、0.01〜30質量%でもよく、0.1〜10質量%でもよい。
なお、本実施形態に係るセルロースナノファイバー濃縮物の用途は特に限定されず、例えば、増粘剤、ゲル化剤、保形剤等として用いてもよく、また、樹脂に配合するフィラーとして用いてもよく、その他、様々な用途に利用可能である。
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、曇点及び熱ゲル化点の測定方法は以下の通りである。
・試料液を試験管内に50mmの高さまで入れ、温度計下端が試験管底部より15mm上にあるようにし、試験管を約5℃の水を入れたビーカー中に入れる。試料液をかき混ぜながらビーカーを毎分1℃の昇温速度で加温し、ゆるやかに撹拌する。試料液が急激に白濁したときの温度を試料液の曇点とする。熱ゲル化点も同じ方法で測定する。
[実施例1〜8、比較例1〜3]
TEMPO酸化セルロースナノファイバーの2質量%水分散液(レオクリスタI−2SP、第一工業製薬株式会社製)に表1に記載した濃縮助剤(A)及び水を添加し、ホモミキサー(T.K.ロボミックス、プライミックス社製)を用いて8000rpm、10分間処理することで表1に記載の濃度の濃縮助剤含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液を調製し、試料液とした。
試料液5gを、毎分1℃の昇温速度で、それぞれの試料液の曇点又は熱ゲル化点の15℃以上の温度に加温し、続いて、同じく試料液の曇点又は熱ゲル化温度の15℃以上の温度に加温したメンブレンろ過器でろ過して、実施例1〜8に係るセルロースナノファイバー濃縮物を得た。加温及びろ過温度は、表1に記載の通りである。ろ過器のフィルターはオムニポア社製メンブレンフィルター(直径47mm、材質がPTFEであるもの)を用いた。このとき、ろ過器に試料を入れた時点からろ過器のフィルターの下に液が移動しなくなるまでの時間を測定し、ろ過時間とした。
また、比較例1,2として、濃縮助剤(A)を添加しないこと以外は上記と同様にしてTEMPO酸化セルロースナノファイバー0.3質量%及び0.15質量%水分散液を調製し、ろ過を行ってブランクとした。比較例3として、曇点以上に加熱することなくろ過した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
表1中のろ過性の評価は、実施例1〜7及び比較例3は比較例1をブランクとし、実施例8は比較例2をブランクとして、それぞれろ過時間を比較して評価した。実施例のろ過時間がそれぞれブランクのろ過時間に対して1/3以下に短縮できたものを◎、1/3超2/3以下に短縮できたものを○、2/3超のものを△、またブランクよりもろ過時間が長くなったものを×とした。
また、濃縮度の評価は、各実施例及び比較例における残渣の固形分が、試料調製に用いたTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の固形分、即ち希釈前の、製品有姿濃度である2質量%に対してどの程度濃縮されたかを評価した。ただし、実施例1〜8及び比較例3においては残渣中の濃縮助剤(A)を差し引くために、各実施例における残渣の固形分に対して以下の計算式(*)を用いて残渣中のTEMPO酸化セルロースナノファイバーの固形分を算出し、評価を行った。計算式(*)は、TEMPO酸化セルロースナノファイバーのみの固形分を、各実施例における残渣の固形分と、試料液中のTEMPO酸化セルロースナノファイバー及び濃縮助剤(A)の比率によって、簡易的に算出したものである。
式(*): D=E×{F/(F+G)}
D:TEMPO酸化セルロースナノファイバーの固形分(質量%)
E:残渣の固形分(質量%)
F:TEMPO酸化セルロースナノファイバー量(質量%)
G:濃縮助剤(A)添加量(質量%)
表1中の濃縮度の評価は、残渣中のTEMPO酸化セルロースナノファイバーの固形分が、試料調製に用いたTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の固形分、即ち希釈前の、製品有姿濃度である2質量%の4倍以上だったものを◎、1.5倍以上4倍未満だったものを○、1.5倍未満だったものを×とした。
表1中の濃縮助剤(A)は以下の通りである。
・エパン740:第一工業製薬株式会社製のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー
・DKS NL−60:第一工業製薬株式会社製のポリオキシエチレン(6EO)ラウリルエーテル
・ノイゲンLP−100:第一工業製薬株式会社製のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル
・メトローズSM4000:信越化学工業株式会社製のメチルセルロース
・メトローズ65SH4000:信越化学工業株式会社製のヒドロキシプロピルメチルセルロース
Figure 0006784553
[実施例9〜16]
表2に記載の濃度で濃縮助剤(A)及び調整助剤(B)を添加したTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液を調製し、試料液とした。ここでは、濃縮助剤(A)にはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーである第一工業製薬株式会社製のエパン740を、TEMPO酸化セルロースナノファイバーにはTEMPO酸化セルロースナノファイバーの2質量%水分散液(レオクリスタI−2SP、第一工業製薬株式会社製)を用いた。試料液が曇点の15℃以上の温度に加温されていることを確認後、同じく試料液の曇点の15℃以上の温度に保温したメンブレンろ過器でろ過した。加温及びろ過温度は、表2に記載の通りである。このとき、ろ過器に試料を入れた時点からろ過器のフィルターの下に液が移動しなくなるまでの時間を測定し、ろ過時間とした。また、ろ過残渣の固形分を測定した。
表2中のろ過性の評価は、比較例2のろ過時間とそれぞれ比較して評価した。また、比較のため、表1の実施例8を併せて記載した。実施例のろ過時間が比較例2のろ過時間に対して1/3以下に短縮できたものを◎、1/3超2/3以下に短縮できたものを○、2/3超のものを△、また比較例2よりもろ過時間が長くなったものを×とした。
また、濃縮度の評価は、各実施例及び比較例における残渣の固形分が、試料調製に用いたTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の固形分、即ち希釈前の、製品有姿濃度である2質量%に対してどの程度濃縮されたかを評価した。ただし、実施例8〜16においては残渣中の濃縮助剤(A)を差し引くために、各実施例における残渣の固形分に対して上記計算式(*)を用いて残渣中のTEMPO酸化セルロースナノファイバーの固形分を算出し、評価を行った。表2中の濃縮度の評価は、表1中の濃縮度の評価方法と同じである。
Figure 0006784553
[実施例17]
実施例17として、TEMPO酸化セルロースナノファイバーの代わりに下記方法で針葉樹系パルプを用いて作製した置換度0.05のカルボキシルメチル化セルロースナノファイバーを用いること以外、実施例1と同様にして、濃縮助剤(A)にエパン740を用い濃縮試験を行ったところ、実施例1で得られた結果と同じく、良好なろ過性及び濃縮度を示す結果が得られた。
家庭用ミキサーで粉砕した針葉樹パルプ(LBKP)20gに、イソプロピルアルコール(IPA)112gと水48gとの混合溶媒160gを加え、次に水酸化ナトリウムを8.8g加え、撹拌、混合させた後、30℃で60分間攪拌した。次いで、反応液を70℃まで昇温し、モノクロロ酢酸ナトリウムを12g(有効成分換算)添加した。1時間反応させた後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりの置換度0.05のアニオン変性セルロース繊維を得た。その後、アニオン変性セルロース繊維を固形分濃度2質量%とし、高圧ホモジナイザーを用いて圧力140MPaで5回処理することにより、アニオン性基としてカルボキシメチル基由来のカルボン酸ナトリウム塩基(−CHCOONa)を有するセルロースナノファイバーの水分散体を得た。得られたカルボキシルメチル化セルロースナノファイバーは、数平均繊維径が25nm、アニオン性基(カルボキシル基)量が0.30mmol/gであった。
[実施例18]
実施例18として、TEMPO酸化セルロースナノファイバーの代わりに下記方法で針葉樹系パルプを用いて作製したリン酸化セルロースナノファイバーを用いること以外、実施例1と同様にして、濃縮助剤(A)にエパン740を用い濃縮試験を行ったところ、実施例1で得られた結果と同じく、良好なろ過性及び濃縮度を示す結果が得られた。
リン酸二水素ナトリウム二水和物10.14g、リン酸水素二ナトリウム1.79gを19.27gの水に溶解させ、リン酸系化合物の水溶液(以下、「リン酸化試薬A」という。)を得た。このリン酸化試薬AのpHは25℃で4.73であった。
針葉樹晒クラフトパルプを濃度4質量%になるように水を加えて、ダブルディスク型リファイナーで変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121−2(カナダ標準ろ水度法)に準ずる)が250ml、長さ平均繊維長が0.68mmになるまで叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーを絶乾質量で3g分取し、イオン交換水で0.3質量%に希釈した後、抄紙法により脱水し、パルプシートを得た。得られたパルプシートの含水率は90%、厚みは200μmであった。
このパルプシートを前記リン酸化試薬A31.2g(乾燥パルプ100質量部に対してリン元素量として80.2質量部)に浸漬させ、170℃の送風乾燥機(ヤマト科学株式会社DKM400)で2時間半加熱処理し、セルロースにリンオキソ酸基を導入した。次いで、リンオキソ酸基を導入したセルロースに500mlのイオン交換水を加え、攪拌洗浄後、濾過脱水して、脱水シートを得た。得られた脱水シートを300mlのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液5mlを少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、500mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに2回繰り返して、リンオキソ酸導入セルロースの脱水シートを得た。
洗浄脱水後に得られたリンオキソ酸導入セルロースの脱水シートにイオン交換水を添加後、攪拌し、2.0質量%のスラリーにした。このスラリーを、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理して、リン酸化セルロースナノファイバースラリーを得た。
[再分散性の評価]
上記実施例1〜5及び17、18で得られた濃縮物を105℃で3時間乾燥させたものを、固形分が0.3質量%になるように分散媒に加え、超音波ホモジナイザー(ソニック社製、VC−505)で1時間処理して再分散させた。分散性評価を表3に示す。分散性は、再分散処理後に静置したものに対するチンダル現象の有無によって目視評価し、24時間静置後にチンダル現象が確認できたものを◎(優)、12時間静置後にチンダル現象が確認できたものを○(良)、3時間静置後にチンダル現象が確認できたものを△(可)、直後にのみチンダル現象が確認できたものを×(不可)とした。
Figure 0006784553
表3に示すように、濃縮助剤を用いずに試料液を濃縮することで得た比較例1のTEMPO酸化セルロースナノファイバー濃縮物は、水、イソプロパノール(IPA)またはエチレングリコールのいずれに対しても再分散性が不十分であり、特にIPAに対しては再分散性が悪かった。一方、濃縮助剤(A)にエパン740を用いると、水、IPAに再分散が可能となり、特にエチレングリコールに対して再分散性を向上させることができた。また、濃縮助剤(A)にDKS NL−60を用いると、IPA、エチレングリコールへ再分散が可能であり、特に水に対して再分散性を向上させることができた。濃縮助剤(A)にノイゲンLP−100を用いると、IPAに対して再分散性を向上させることができ、水に対して再分散性を特によく向上させることができた。また、濃縮助剤(A)にメトローズSM−4000を用いると、IPA、エチレングリコールに対する再分散性を向上させることができた。さらに、濃縮助剤(A)にメトローズ65SH−4000を用いると、IPA、エチレングリコールへ再分散が可能であり、特に水に対して再分散性を向上させることができた。
さらに、低置換度カルボキシルメチル化セルロースナノファイバーについても、濃縮助剤(A)としてエパン740を用いることで水、IPAへの再分散が可能となり、特にエチレングリコールに対して再分散性を向上させることができた。リン酸化セルロースナノファイバーについても、濃縮助剤(A)としてエパン740を用いることで水、IPAへの再分散が可能となり、特にエチレングリコールに対して再分散性を向上させることができた。
以上のように、本実施形態にかかる濃縮方法を用いると、セルロースナノファイバーと濃縮助剤からなる濃縮物を高固形分で得られる。即ち、本実施形態の製造方法はセルロースナノファイバーを容易に濃縮することができるので、製造効率の向上やエネルギーコストの低減が期待できる。また、本実施形態により得られるセルロースナノファイバー濃縮物は、溶媒に再分散させることができる。
[樹脂への再分散性評価]
実施例1で得られたろ過残渣0.19gを100mLビーカーに測り取り、30mLの純水を加え、超音波ホモジナイザー(ソニック社製、VC−505)で5分間攪拌し、再分散液とした。この再分散液を、固形分が10質量%になるように純水に溶解、調製したPVA溶液1gに、TEMPO酸化セルロースナノファイバーの固形分がPVA固形分に対して5質量%、即ち0.005gになるように加えた。混合液を十分に攪拌した後、シャーレにキャストし、乾燥させてTEMPO酸化セルロースナノファイバー/PVA複合膜を調製し、実施例19とした。
また、比較例1で得られたろ過残渣を用いること以外は実施例19と同様にしてTEMPO酸化セルロースナノファイバー/PVA複合膜を調製し、比較例4とした。さらに、TEMPO酸化セルロースナノファイバー再分散液を添加しないこと以外は実施例19及び比較例4と同様にしてPVA膜を調製し、比較例5とした。
得られた複合膜について、セルロースナノファイバーの樹脂中への再分散性を評価した。評価は、得られた複合膜を目視で観察し、セルロースナノファイバーが再分散されずに残っている粗大物の有無を調べた。以下にその評価基準を記載する。
○…複合化膜に粗大物が確認されず、PVA膜(比較例5)と同等の均一性がある。
×…複合化膜に粗大物が確認でき、PVA膜(比較例5)と比較して均一性がない。
Figure 0006784553
表4に示すように、濃縮助剤を用いずに試料液を濃縮することで得た比較例1のセルロースナノファイバー濃縮物は、水またはPVAに対して再分散性が不十分であり、PVAとの複合化膜を調製した際に粗大物を生じた。一方、濃縮助剤(A)にエパン740を用いると、水またはPVAに対して再分散性が良好であり、PVAとの複合化膜を調製した際に粗大物を生じなかった。
以上のように、本実施形態にかかる濃縮方法を利用して得られるセルロースナノファイバーと濃縮助剤からなる濃縮物は、樹脂中に容易に再分散することが可能である。即ち、本実施形態の製造方法は、セルロースナノファイバーと樹脂の複合化において有用である。

Claims (6)

  1. セルロースナノファイバー水性分散体への添加により当該水性分散体に熱ゲル化点を持たせることができる濃縮助剤(A)としてアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種の存在下、1)セルロースナノファイバー水性分散体を熱ゲル化点以上の温度に昇温してセルロースナノファイバーを含む凝集体を生じさせる工程と、2)得られた凝集体を含む液を熱ゲル化点以上の温度でろ過する工程と、を含むセルロースナノファイバー濃縮物の製造方法。
  2. 前記濃縮助剤(A)に加えて熱ゲル化点を上昇あるいは低下させる機能を有する調整助剤(B)を用いる、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記調整助剤(B)が、硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、及び乳酸イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を成分としてなる塩、及び/又は、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項に記載の製造方法。
    2n+1−OH (1)
    2p+1−CO−C2q+1 (2)
    2s+1−COO−C2t+1 (3)
    2u+1O−(AO)−C2w+1 (4)
    R(OH) (5)
    式中、nは1〜9の整数、p及びqはそれぞれ独立に1〜9の整数、sは0〜9の整数、tは1〜4の整数、u及びwはそれぞれ独立に0〜9の整数、vは1〜3の整数、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rは炭素数3〜10の炭化水素基、mは3又は4を示し、1分子中に複数のAOが存在する場合、それぞれ同じでも異なってもよい。
  4. 前記ろ過する工程において、凝集体を含む液の液温を熱ゲル化点に対して1〜30℃高い温度とする、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記ろ過する工程によりろ液と分離した凝集体、又は該凝集体を熱ゲル化点未満の温度にすることで得られた水性分散体を、脱水及び/又は乾燥することにより水分を低減させる工程を更に含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の方法により得られたセルロースナノファイバー濃縮物を、水、有機溶剤、及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒に再分散させる、セルロースナノファイバーの再分散方法。
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