実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではない。
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、コイル、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の構成例について、図面を参照して説明する。ここでは、半導体装置の一例として、トランジスタについて説明する。
[構成例1]
[トランジスタの構成例]
図1に本構成例で例示するトランジスタ100を示す。図1(A)は、トランジスタ100の上面概略図であり、図1(B)、(C)は、それぞれ図1(A)中に示す切断線A1−A2、B1−B2で切断した断面概略図である。なお、図1(A)には明瞭化のため、主要な構成要素のみを示している。
図1に示す構成は、基板101上に設けられた絶縁層107上に、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114が順に積層された積層構造を含む酸化物積層110を有する。また第2の酸化物層114の上面に接し、酸化物積層110上で離間する第1の電極102a、及び第2の電極102bを有する。また、第1の電極102a、第2の電極102b、第2の酸化物層114の露出した面を覆うゲート絶縁層104と、ゲート絶縁層104上に酸化物積層110と重なるゲート電極105を有する。
また、ゲート絶縁層104、ゲート電極105を覆って絶縁層108と、絶縁層108上に絶縁層109が設けられている。さらに、絶縁層109上に、それぞれ絶縁層109、絶縁層108及びゲート絶縁層104に設けられた開口部において第1の電極102aと電気的に接続する電極106aと、第2の電極102bと電気的に接続する電極106bと、を有する。
ここで、第1の電極102aは、トランジスタ100のソース電極として機能する。また第2の電極102bは、トランジスタ100のドレイン電極として機能する。
酸化物積層110は、基板101側から第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114が積層された積層構造を有している。ここで、酸化物積層110を構成するそれぞれの層のうち、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113に主としてチャネルが形成される。すなわち、トランジスタ100は、埋め込みチャネル構造を有しているとも言える。
ここで、第2の酸化物層114は、ゲート絶縁層としての機能を有していてもよい。
また、第1の酸化物半導体層112は、第1の酸化物半導体層112に含まれる酸化物半導体に対して導電性を付与する元素を含む第2の領域112bと、当該第2の領域112bよりも当該元素の濃度が低い第1の領域112aと、を有する。当該元素としては、好ましくはリンが挙げられる。
そのほか、酸化物半導体に導電性を付与する上記元素としては、15族元素(例えば砒素(As)、アンチモン(Sb))や、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、インジウム(In)、フッ素(F)、塩素(Cl)、水素(H)、チタン(Ti)、及び亜鉛(Zn)などを用いることができる。
第1の酸化物半導体層112中に上記元素を含む第2の領域112bを設けることにより、トランジスタ100のオン状態におけるソース−ドレイン間の直列抵抗を低減することができ、その結果オン状態におけるソース−ドレイン間に流れる電流(オン電流ともいう)を高めることができる。
ここで、第2の領域112bは、第1の酸化物半導体層112の端部よりも内側の領域に設けられている。また、第1の酸化物半導体層112において、第2の領域112bは、その底部と側部が第1の領域112aに囲まれるように設けられている。また、第2の領域112bの上部に第2の酸化物半導体層113が設けられている。
このように、第2の領域112bが第1の酸化物半導体層112の第1の領域112a、及び第2の酸化物半導体層113に囲まれるように設けられていることにより、第2の領域112bが第1の電極102a及び第2の電極102bと直接接触することがないため、トランジスタ100のオフ状態におけるソース−ドレイン間のリーク電流(オフ電流ともいう)を低減しつつ、トランジスタ100のオン電流を高めることができる。
ここで、トランジスタ100の酸化物積層110における第1の電極102aの近傍を拡大した断面概略図を図1(D1)に、第2の電極102bの近傍を拡大した断面概略図を図1(D2)にそれぞれ示す。
図1(D1)、(D2)に示すように、第2の領域112bは、ソース電極として機能する第1の電極102aと重畳し、且つ、ドレイン電極として機能する第2の電極102bと重畳しないように設けられている。
図1(D1)に示すように、ソース電極として機能する第1の電極102aと第2の領域112bとが重畳して設けられることにより、第2の酸化物層114及び第2の酸化物半導体層113を介して、第1の電極102aから第2の領域112bにキャリアが供給されやすくなり、オン電流を増加させることができる。
ここで図1(D1)に示すように、チャネル長方向(電流の流れる向きに平行な方向)における第1の電極102aと第2の領域112bとが重畳する長さを、Lovとする。Lovを長く設定するほど、第1の電極102aから第2の領域112bに対してキャリアが供給されやすくなるため好ましい。
また、図1(D1)に示すように、第2の領域112bと第1の電極102aとの間に、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114が設けられている。このような構成とすることで、第2の領域112bと第1の電極102aとが接しないため、トランジスタ100のオン、オフ動作を確実なものとすることができ、さらにはノーマリーオフ型のトランジスタ100を実現できる。
ここで、第1の電極102aと第2の領域112bとが接しないよう、これらの距離を十分にとるために、第2の酸化物半導体層113の厚さを調整することが好ましい。例えば、第1の電極102aと重なる領域において、第2の酸化物半導体層113の厚さを10nm以上40nm以下、好ましくは20nm以上40nm以下とすると、オン電流を犠牲にすることなくトランジスタ100のオン、オフ動作を確実なものとすることができ、さらにはノーマリーオフ型のトランジスタ100を実現できる。
一方、図1(D2)に示すようにドレイン電極として機能する第2の電極102bと第2の領域112bとが重畳しないように設けられることにより、チャネルのドレイン端における電界集中が緩和され、トランジスタ100の特性の劣化を抑制することができる。
ここで、図1(D2)に示すように、チャネル長方向における第2の電極102bと第2の領域112bとの端部間の最短距離をLoff1とする。また第2の電極102bの酸化物積層110と接する面の高さと、第2の領域112bの上面の高さとの差を、Loff2とする。ここで、Loff2は第2の酸化物半導体層113の厚さ、及び第2の酸化物層114の厚さによって制御することができる。
ここで、第2の領域112b中のキャリア濃度によっては、第2の電極102bと第2の領域112bとが重畳する場合、またはLoff1が小さい場合に、トランジスタ100のオフ電流が増大してしまう場合がある。そのためLoff1を長く設定することが好ましい。また、Loff1が短い場合であっても、Loff2を長く設定することにより、第1の電極102aと第2の電極102bとの距離を増大させることなく、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。このように、Loff1及びLoff2の長さを調整することにより、トランジスタのオン電流を高めつつ、オフ電流を低減することができる。
なお、第1の電極102a及び第2の電極102bとして、酸素と結合しやすい導電材料を用いることが好ましい。例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wなどを用いることができる。後のプロセス温度が比較的高くできることなどから、融点の比較的高いWやTiを用いることが好ましい。なお、酸素と結合しやすい導電材料には、酸素が拡散しやすい材料も含まれる。
このような導電材料と酸化物積層110を接触させると、酸化物積層110中の酸素の一部が、酸素と結合しやすい導電材料側に取り込まれる。トランジスタの作製工程には、いくつかの加熱工程があることから、上記酸素の移動により、酸化物積層110において第1の電極102aまたは第2の電極102bと接触した界面近傍の領域に酸素欠損が発生し、n型化した領域(低抵抗領域ともいう)が形成される。当該低抵抗領域はトランジスタ100のソースまたはドレインとして作用させることができる。
このように、酸化物積層110中の第1の電極102aまたは第2の電極102bと接する領域に低抵抗領域を形成することにより、第1の電極102aまたは第2の電極102bと酸化物積層110との接触抵抗が低減され、トランジスタ100におけるソース−ドレイン間の寄生抵抗を低減できる。その結果、トランジスタのオン電流を増大させることができる。
ここで、酸素を十分に含み、高純度化された酸化物半導体膜は、バンドギャップが2.8eV〜3.2eV程度であり、少数キャリアが1×10−9個/cm3程度と極めて少なく、多数キャリアはトランジスタのソースから来るのみである。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタはアバランシェブレークダウンがない。
そのため、数10V、または数100Vといった高い電圧で駆動した場合であっても、トランジスタのチャネル長に対してチャネル幅を極めて大きく設定することができる。その結果、トランジスタのオン電流をより高めることができる。例えばチャネル長に対するチャネル幅の比(W/L)を、103以上、さらには104以上、さらには105以上とした場合でも、良好なオンオフ動作が実現できる。例えば30V以下で駆動させる場合、チャネル長を3μmとしたときのチャネル幅は、1cm以上10m以下の範囲、例えば80cmとすればよい。
また、酸化物半導体はバンドギャップが大きいため、酸化物半導体を適用したトランジスタは、その電気的特性の温度依存性を極めて小さいものとすることができる。例えば半導体としてシリコンを用いた場合などに比べて、しきい値電圧やオン電流、オフ電流などの温度依存性が優れたトランジスタを実現できる。したがって、酸化物半導体を適用したトランジスタは高温動作に適しているといえる。
[酸化物積層について]
以下では、本発明の一態様に含有される積層構造について説明する。
〔構成例〕
図2(A)に示す積層構造は、絶縁層107と、ゲート絶縁層104との間に酸化物積層110を有して構成される。また酸化物積層110は、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114を含む。なお、実際の断面構造において、第1の酸化物層111と第1の酸化物半導体層112との境界、第1の酸化物半導体層112と第2の酸化物半導体層113の境界、及び第2の酸化物半導体層113と第2の酸化物層114との境界は明瞭でない場合がある。特に、第1の酸化物半導体層112と第2の酸化物半導体層113とは組成が同一または近い場合ではその境界が不明瞭な場合が多いため、図2(A)ではこれらの境界を破線で示している。
第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114は、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113を構成する金属元素を一種以上含む酸化物である。
第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113としては、少なくともインジウム、亜鉛、及びM(MはAl、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)を含むIn−M−Zn酸化物で表記される層を含む。第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113がインジウムを含むと、トランジスタのキャリア移動度が高くなるため好ましい。
第1の酸化物半導体層112と第2の酸化物半導体層113とは、同一の金属元素を含むことが好ましい。さらにはこれら金属元素の組成が等しい、または近い組成であることが好ましい。第1の酸化物半導体層112と第2の酸化物半導体層113の組成を揃えることにより、伝導帯下端のエネルギーをできるだけ近づけることができる。その結果、いずれかの層に電流経路が偏ることなくいずれの層も主たる電流経路として用いることができるため、トランジスタのソース−ドレイン間の直列抵抗を低減することができる。
第1の酸化物半導体層112の下層に位置する第1の酸化物層111としては、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記され、第1の酸化物半導体層112よりもMの原子数比が高い酸化物層を含む。具体的には、第1の酸化物層111として、第1の酸化物半導体層112よりも前述の元素を1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物層を用いる。前述の元素はインジウムよりも酸素と強く結合するため、酸素欠損が酸化物層に生じることを抑制する機能を有する。すなわち、第1の酸化物層111は第1の酸化物半導体層112よりも酸素欠損が生じにくい酸化物層である。
また第2の酸化物半導体層113の上層に位置する第2の酸化物層114としては、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記され、第2の酸化物半導体層113よりもMの原子数比が高い酸化物層を含む。具体的には、第2の酸化物層114として、第2の酸化物半導体層113よりも前述の元素を1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物層を用いる。前述の元素はインジウムよりも酸素と強く結合するため、酸素欠損が酸化物層に生じることを抑制する機能を有する。すなわち、第2の酸化物層114は第2の酸化物半導体層113よりも酸素欠損が生じにくい酸化物層である。
つまり、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114が、少なくともインジウム、亜鉛、及びM(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)を含むIn−M−Zn酸化物であるとき、第1の酸化物層111をIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、第1の酸化物半導体層112または第2の酸化物半導体層113をIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]、第2の酸化物層114をIn:M:Zn=x3:y3:z3[原子数比]とすると、y1/x1およびy3/x3がy2/x2よりも大きくなることが好ましい。y1/x1およびy3/x3はy2/x2よりも1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。このとき、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113において、y2がx2以上であるとトランジスタの電気特性を安定させることができる。ただし、y2がx2の3倍以上になると、トランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y2はx2の3倍未満であることが好ましい。
なお、第1の酸化物層111がIn−M−Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが75atomic%未満、Mが25atomic%以上、より好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。
また、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113がIn−M−Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
また、第2の酸化物層114がIn−M−Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが75atomic%未満、Mが25atomic%以上、より好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。
なお、第1の酸化物層111と第2の酸化物層114とは、異なる構成元素を含む層としてもよいし、同じ構成元素を同一の原子数比で、又は異なる原子数比で含む層としてもよい。
第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114には、例えばインジウム、亜鉛、及びガリウムを含んだ酸化物半導体を用いることができる。
第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114の各々の厚さは、トランジスタ100に要求される電気的特性(出力電流など)に応じて設定すればよい。例えば、第2の酸化物層114の厚さは、3nm以上500nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、より好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113のそれぞれの厚さは、3nm以上500nm以下、好ましくは3nm以上200nm以下、より好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、第1の酸化物層111の厚さは、上記第2の酸化物層114、第1の酸化物半導体層112、または第2の酸化物半導体層113と同等かそれ以上の厚さとすることが好ましい。
また、第1の酸化物層111は、第1の酸化物半導体層112を構成する金属元素を一種以上含み、伝導帯下端のエネルギーが第1の酸化物半導体層112よりも、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.15eV以上であって、2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下の範囲で真空準位に近い酸化物半導体で形成することが好ましい。
同様に、第2の酸化物層114は、第2の酸化物半導体層113を構成する金属元素を一種以上含み、伝導帯下端のエネルギーが第2の酸化物半導体層113よりも、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.15eV以上であって、2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下の範囲で真空準位に近い酸化物半導体で形成することが好ましい。
このような構造において、ゲート絶縁層104上に設けられるゲート電極に電界を印加すると、酸化物積層110のうち、伝導帯下端のエネルギーが最も小さい第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113に主としてチャネルが形成される。すなわち、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113とゲート絶縁層104との間に第2の酸化物層114が設けられていることによって、トランジスタのチャネルをゲート絶縁層104と接しない構造とすることができる。
なお、第2の酸化物層114は、ゲート絶縁層としての機能を有していてもよい。第2の酸化物層114のバンドギャップが十分に大きい場合には完全な半導体ではなく絶縁体に近い性質を有するため、ゲート絶縁層として機能させることができる。
また図2(A)に示す断面構造は、第1の酸化物半導体層112内に酸化物半導体に対して導電性を付与する元素を含む第2の領域112bが設けられている。また第2の領域112bよりも少なくとも絶縁層107側に、当該元素の濃度が第2の領域112bよりも低い第1の領域112aが設けられている。また、第2の領域112bの上面は、第2の酸化物半導体層113と接している。
ここで、第1の領域112aと第2の領域112bとは、その境界近傍において上記元素の濃度が連続的に変化するために、これらの境界が不明瞭な場合がある。そのため図2(A)では、第1の領域112aと第2の領域112bとの境界を点線で示している。
上述のように、第2の領域112bは、酸化物半導体に対して導電性を付与する元素を含む領域である。当該元素としては、好ましくはリンを用いることができる。
酸化物半導体中に含まれるリンは酸化物半導体を構成する酸素と結合する。その結果、酸化物半導体中に酸素欠損が生じ、バンドギャップ中に不純物準位が形成され、当該不純物準位がドナーとなり電子を生成することでn型化することがある。すなわち、酸化物半導体中にリンを導入することにより、酸化物半導体をn型化させることができる。したがって、第2の領域112bをn型化領域と呼ぶこともできる。
第2の領域112bに含まれる元素として、リン(P)のほか、15族元素(例えば砒素(As)、アンチモン(Sb))や、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、インジウム(In)、フッ素(F)、塩素(Cl)、水素(H)、チタン(Ti)、及び亜鉛(Zn)を用いてもよい。
上述の元素を第1の酸化物半導体層112に導入する方法としては、例えばイオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などを用いることができる。
第2の領域112bにおける上記元素の濃度は、例えば1×1015atoms/cm3以上1×1020atoms/cm3以下、好ましくは1×1015atoms/cm3以上1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1016atoms/cm3以上1×1018atoms/cm3以下とする。上記元素の導入に伴い第2の領域112bのキャリア密度が増大するが、上記濃度が低いとトランジスタのオン電流を増大させる効果が希薄になり、一方上記濃度が高すぎるとトランジスタのスイッチング特性が得られない(オフしない、またはピンチオフしない)などの不具合が生じる場合がある。
なお、酸化物積層110中の元素濃度は、二次イオン分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定することができる。
第2の領域112bにおいて、上述した元素の濃度は、第1の酸化物半導体層112の厚さ方向に連続的な勾配を有していてもよい。ここで、第2の領域112bの厚さ方向における濃度分布について、濃度の最も高い領域が第1の酸化物半導体層112内の第2の酸化物半導体層113側に位置していることが好ましい。また、当該元素が、第1の酸化物半導体層112から第1の酸化物層111にまで拡散し、当該元素の濃度が絶縁層107に向かって厚さ方向に減少する連続的な勾配を有していてもよい。また同様に当該元素が、第1の酸化物半導体層112から第2の酸化物半導体層113にまで、または第2の酸化物層114にまで拡散し、当該元素の濃度がゲート絶縁層104に向かって厚さ方向に減少する連続的な勾配を有していてもよい。
このような構成とすることで、主として電流が流れる第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113の積層構造の内部にn型領域を埋め込むことができる。このような積層構造をトランジスタに適用することにより、トランジスタのソース−ドレイン間の直列抵抗を効果的に低減できる。
さらに、n型化した第2の領域112bを第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113の積層構造の内部に設けることにより、当該第2の領域112bと絶縁層107との間に第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112中の第1の領域112aが挟持された構造とすることができる。したがって、絶縁層107を構成する元素(例えばシリコン)が主として電流経路となる第2の領域112bに混入することによる移動度の低下を抑制することができる。同様に、第2の領域112bとゲート絶縁層104との間に第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114が挟持された構造とすることにより、ゲート絶縁層104を構成する元素(例えばシリコン)が第2の領域112bに混入することによる移動度の低下を抑制することができる。
〔酸化物積層のバンド構造〕
酸化物積層110のバンド構造を説明する。
図2(B)、(C)は、図2(A)で例示した積層構造の厚さ方向におけるエネルギーバンド構造の一部を模式的に示している。図2(B)は、図2(A)中の第2の領域112bを含まない領域に、図2(C)は第2の領域112bを含む領域に、それぞれ対応する。
図2(B)において、EcI1は絶縁層107の伝導帯下端のエネルギーを模式的に示している。同様に、EcS1は第1の酸化物層111、EcS3は第2の酸化物層114、EcI2はゲート絶縁層104の伝導帯下端のエネルギーを模式的に示している。またEcS2は、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113のそれぞれの伝導帯下端のエネルギーを模式的に示している。なお、ここでは便宜上、図2(A)でのそれぞれの厚さは考慮されていない。
なお、図2(B)では第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114が同様のエネルギーギャップを有する酸化物層である場合について示したが、それぞれが異なるエネルギーギャップを有し、伝導帯下端のエネルギーが異なる酸化物層であってもよい。同様に、ここでは第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113が同様のエネルギーギャップを有する酸化物半導体層である場合について示したが、これらが異なるエネルギーギャップを有し、伝導帯下端のエネルギーが異なっていてもよい。
ここで、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差(電子親和力ともいう)は、真空準位と価電子帯上端のエネルギーとの差(イオン化ポテンシャルともいう)からエネルギーギャップを引いた値となる。なお、エネルギーギャップは、分光エリプソメータ(例えばHORIBA JOBIN YVON社 UT−300)を用いて測定できる。また、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)装置(例えばPHI社 VersaProbe)を用いて測定できる。
図2(B)に示すように、第1の酸化物層111と第1の酸化物半導体層112、及び第2の酸化物半導体層113と第2の酸化物層114において、伝導帯下端のエネルギーはこれらの間に障壁が無く連続的に変化する。これは、第1の酸化物層111と第1の酸化物半導体層112、及び第2の酸化物半導体層113と第2の酸化物層114のそれぞれの組成が近似することにより酸素が相互に拡散しやすく、これらの間に混合層とも呼ぶべき層が形成されているためと理解できる。
図2(B)より、酸化物積層110における第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113がウェル(井戸)となり、酸化物積層110を用いたトランジスタにおいて、チャネルが第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113に形成されることがわかる。なお、酸化物積層110は伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、U字型井戸(U Shape Well)とも呼ぶことができる。またこのような構成で形成されたチャネルを埋め込みチャネルということもできる。
図2(C)において、EcS2aは第1の酸化物半導体層112中の第1の領域112a、及び第2の酸化物半導体層113における伝導帯下端のエネルギーであり、EcS2bは第1の酸化物半導体層112中の第2の領域112bにおける伝導帯下端のエネルギーを示している。EcS2bはEcS2aよりも低いエネルギーとなる。
図2(C)に示すように、第1の領域112aと第2の領域112bにおいて、伝導帯下端のエネルギーはこれらの間に障壁がなく連続的に変化する。これは第2の領域112bに含まれる酸化物半導体に対して導電性を付与する元素の濃度が厚さ方向に広がりを有しているためと理解できる。
また、第2の酸化物半導体層113を形成した後の熱処理などにより第2の領域112bに含有される上記元素が第2の酸化物半導体層113中に拡散する場合がある。このような場合、第2の領域112bから第2の酸化物半導体層113の向きに上記元素の濃度が連続的に変化する。その結果、図2(C)に示すように、第2の領域112bと第2の酸化物半導体層113の間でも伝導帯下端のエネルギーに障壁がなく連続的に変化する。
図2(C)より、酸化物積層110において、第1の酸化物半導体層112中の第1の領域112aと第2の酸化物半導体層113が第1のウェルを構成し、さらに第1の酸化物半導体層112中の第2の領域112bが第2のウェルを構成する。すなわち、埋め込みチャネルの中にさらにウェルが形成されている。このように2段階のウェルを有することから、このような構成を二重井戸(Double Well)構造とも呼ぶことができる。第1の酸化物半導体層112中にさらにウェルを有することにより、より大きな電流を流すことが可能となる。
さらに、第2の領域112bが構成するウェルが、第1の酸化物層111と絶縁層107との界面、及び第2の酸化物層114とゲート絶縁層104との界面と隔絶されているため、これらの界面に生成されるトラップ準位の影響が、トランジスタのキャリアの主要な経路となる第2の領域112bに及ぶことを抑制することができる。
以上が酸化物積層のバンド構造についての説明である。
〔酸化物積層の形成〕
第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114は、第1の酸化物半導体層112または第2の酸化物半導体層113を構成する金属元素を一種以上含む酸化物であるから、酸化物積層110は主成分を共通して積層された酸化物積層ともいえる。主成分を共通として積層された酸化物積層は、各層を単に積層するのではなく、連続接合(ここでは、特に伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の井戸構造)が形成されるように作製することが好ましい。なぜなら、各層の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまうためである。
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(例えばスパッタリング装置)を用いて各層を大気に触れさせることなく連続して積層することが好ましい。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(5×10−7Pa〜1×10−4Pa程度まで)することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
高純度真性酸化物半導体を得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
第1の酸化物半導体層112の下層に設けられる第1の酸化物層111、及び第2の酸化物半導体層113の上層に設けられる第2の酸化物層114は、バリア層として機能し、酸化物積層110に接する絶縁層(絶縁層107及びゲート絶縁層104)と、酸化物積層110との界面に形成されるトラップ準位の影響が、トランジスタのキャリアの主な経路(キャリアパス)となる第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113へと及ぶことを抑制することができる。
例えば、酸化物半導体層に含まれる酸素欠損は、酸化物半導体のエネルギーギャップ内の深いエネルギー位置に存在する局在準位として顕在化する。このような局在準位にキャリアがトラップされることで、トランジスタの信頼性が低下するため、酸化物半導体層に含まれる酸素欠損を低減することが必要となる。酸化物積層110においては、第1の酸化物半導体層112や第2の酸化物半導体層113と比較して酸素欠損の生じにくい酸化物層を第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113の上下に接して設けることで、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113における酸素欠損を低減することができる。例えば、第1の酸化物半導体層112や第2の酸化物半導体層113は、一定電流測定法(CPM:Constant Photocurrent Method)により測定された局在準位による吸収係数を1×10−3/cm未満、好ましくは1×10−4/cm未満とすることができる。
また、第1の酸化物半導体層112が、構成元素の異なる絶縁層(例えば酸化シリコン膜を含む下地絶縁層)と接する場合、2層の界面に界面準位が形成され、該界面準位はチャネルを形成することがある。このような場合、しきい値電圧の異なる第2のトランジスタが出現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。しかしながら、酸化物積層110においては、第1の酸化物層111が第1の酸化物半導体層112を構成する金属元素を一種以上含んで構成されるため、第1の酸化物層111と第1の酸化物半導体層112の界面に界面準位を形成しにくくなる。よって第1の酸化物層111を設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
また、ゲート絶縁層104と第2の酸化物半導体層113との界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低下する。しかしながら、酸化物積層110においては、第2の酸化物層114が第2の酸化物半導体層113を構成する金属元素を一以上含んで構成されるため、第2の酸化物半導体層113と第2の酸化物層114との界面ではキャリアの散乱が起こりにくく、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
また、第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114は、酸化物積層110に接する絶縁層(絶縁層107またはゲート絶縁層104)の構成元素が、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113に混入して、不純物により準位が形成されることを抑制するためのバリア層としても機能する。
例えば、酸化物積層110に接する絶縁層107、またはゲート絶縁層104として、シリコンを含む絶縁層を用いる場合、該絶縁層中のシリコン、または絶縁層中に混入されうる炭素などの不純物が、第1の酸化物層111又は第2の酸化物層114の中へ界面から数nm程度にまで混入することがある。シリコン、炭素等の不純物が第1の酸化物半導体層112や第2の酸化物半導体層113中に混入すると、不純物準位を形成し、該不純物準位がドナーとなり電子を生成することでn型化することがある。
しかしながら、第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114の厚さが数nmよりも厚ければ、混入したシリコン、炭素等の不純物が第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113にまで到達しないため、不純物準位の影響は低減される。
ここで、第1の酸化物半導体層112中の第1の領域112a、及び第2の酸化物半導体層113に含まれるシリコンの濃度は、3×1018atoms/cm3以下、好ましくは3×1017atoms/cm3以下とする。また、第1の酸化物半導体層112中の第1の領域112a、及び第2の酸化物半導体層113に含まれる炭素の濃度は3×1018atoms/cm3以下、好ましくは3×1017atoms/cm3以下とする。特に第1の酸化物半導体層112中の第1の領域112a、及び第2の酸化物半導体層113に第14族元素であるシリコン又は炭素が多く混入しないように、第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114で、キャリアパスとなる第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113を挟む、または囲む構成とすることが好ましい。すなわち、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113に含まれるシリコン及び炭素の濃度は、第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114に含まれるシリコン及び炭素の濃度よりも低いことが好ましい。
なお、酸化物半導体層中の不純物濃度は二次イオン分析法で測定することができる。
なお、第1の酸化物層111または第2の酸化物層114と、酸化シリコン膜などの絶縁膜との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得る。第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114が存在することにより、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113と当該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、EcS1またはEcS3と、EcS2とのエネルギー差が小さい場合、第1の酸化物半導体層112または第2の酸化物半導体層113の電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲されることで、絶縁膜界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。
したがって、EcS1及びEcS3と、EcS2とのエネルギー差を、それぞれ0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすることで、トランジスタのしきい値電圧の変動が低減され、安定した電気特性を得ることができる。
積層構造を構成する各酸化物層は、少なくともインジウム(In)を含み、スパッタリング法好ましくはDCスパッタリング法で成膜することのできるスパッタリングターゲットを用いて成膜する。スパッタリングターゲットにインジウムを含ませることで導電性が高まるため、DCスパッタリング法で成膜することを容易なものとする。
第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114を構成する材料は、In−M−Zn酸化物(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される材料を用いる。Mとしては、Gaを用いることが好ましい。例えばInGaXZnYOZ(X=3以上6以下、Y=1以上10以下、Z>0)で表記される材料を用いることが好ましい。但し、含ませるGaの割合が多い、具体的にはInGaXZnYOZで表記できる材料でX=10を超えると成膜時に粉が発生する恐れがあり、スパッタリング法で成膜することが困難となるため不適である。
なお、第1の酸化物層111及び第2の酸化物層114は、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113に用いる材料よりもインジウムの原子数比が少ない材料を用いる。酸化物層中のインジウムやガリウムなどの含有量は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)や、X線電子分光法(XPS)で比較できる。
多層構造を構成する各酸化物層(第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114)は、例えば非単結晶を有してもよい。非単結晶は、例えば、CAAC(C Axis Aligned Crystal)、多結晶、微結晶、非晶質を有する。非単結晶において、非晶質は最も欠陥準位密度が高く、CAACは最も欠陥準位密度が低い。なお、CAACについては、後に詳細に説明する。
多層構造を構成する各酸化物層は、例えば微結晶を有してもよい。微結晶酸化物膜は、例えば、1nm以上10nm未満のサイズの微結晶を膜中に含む酸化物を有している。
多層構造を構成する各酸化物層は、例えば非晶質を有してもよい。非晶質酸化物膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分のない酸化物を有している。または、非晶質酸化物膜は、例えば、完全な非晶質であり、結晶部を有さない酸化物を有している。
なお、多層構造を構成する各酸化物層が、CAAC酸化物、微結晶酸化物、非晶質酸化物の混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質酸化物の領域と、微結晶酸化物の領域と、CAAC酸化物の領域と、を有する。また、混合膜は、例えば、非晶質酸化物の領域と、微結晶酸化物の領域と、CAAC酸化物の領域と、の積層構造を有してもよい。
なお、多層構造を構成する各酸化物層は、例えば、単結晶を有してもよい。
多層構造を構成する各酸化物層は、複数の結晶部を有し、当該結晶部のc軸が被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃っていることが好ましい。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。そのような酸化物半導体膜の一例としては、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜がある。
第1の酸化物層111は、絶縁層107の構成元素(例えばシリコン)を不純物として含有することで、非晶質構造を有する場合がある。但し、チャネルを形成する第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113は、結晶部を有することが好ましい。非晶質構造を有する第1の酸化物層111上に結晶部を有する第1の酸化物半導体層112を積層する場合、当該酸化物積層を結晶構造の異なるヘテロ構造と呼ぶことができる。
また、第2の酸化物層114は、非晶質構造としてもよいし、結晶部を有していてもよい。但し、結晶部を有する第2の酸化物半導体層113上に第2の酸化物層114を成膜すると、第2の酸化物層114も結晶部を有する膜になりやすく、その場合には、第2の酸化物半導体層113と第2の酸化物層114の境界を透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)などによる断面観察では判別することが困難となる場合もある。但し、第1の酸化物層111の結晶性は第1の酸化物半導体層112よりも低い場合が多く、結晶性の程度で境界を判別できる場合が多い。
〔酸化物の結晶性について〕
なお、酸化物積層110において、少なくとも第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113のいずれか一方は、CAAC−OS膜であることが好ましい。
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
まずは、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、CAAC−OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
図13(a)は、CAAC−OS膜の断面TEM像である。また、図13(b)は、図13(a)をさらに拡大した断面TEM像であり、理解を容易にするために原子配列を強調表示している。
図13(c)は、図13(a)のA−O−A’間において、丸で囲んだ領域(直径約4nm)の局所的なフーリエ変換像である。図13(c)より、各領域においてc軸配向性が確認できる。また、A−O間とO−A’間とでは、c軸の向きが異なるため、異なるグレインであることが示唆される。また、A−O間では、c軸の角度が14.3°、16.6°、26.4°のように少しずつ連続的に変化していることがわかる。同様に、O−A’間では、c軸の角度が−18.3°、−17.6°、−15.9°と少しずつ連続的に変化していることがわかる。
なお、CAAC−OS膜に対し、電子回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)が観測される。例えば、CAAC−OS膜の上面に対し、例えば1nm以上30nm以下の電子線を用いる電子回折(ナノビーム電子回折ともいう。)を行うと、スポットが観測される(図19(A)参照。)。
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
なお、CAAC−OS膜に含まれるほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。ただし、CAAC−OS膜に含まれる複数の結晶部が連結することで、一つの大きな結晶領域を形成する場合がある。例えば、平面TEM像において、2500nm2以上、5μm2以上または1000μm2以上となる結晶領域が観察される場合がある。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
また、CAAC−OS膜中において、c軸配向した結晶部の分布が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりもc軸配向した結晶部の割合が高くなることがある。また、不純物の添加されたCAAC−OS膜は、不純物が添加された領域が変質し、部分的にc軸配向した結晶部の割合の異なる領域が形成されることもある。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
次に、多結晶酸化物半導体膜について説明する。
多結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶粒を確認することができる。多結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶粒は、例えば、TEMによる観察像で、2nm以上300nm以下、3nm以上100nm以下または5nm以上50nm以下の粒径であることが多い。また、多結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶粒界を確認できる場合がある。
多結晶酸化物半導体膜は、複数の結晶粒を有し、当該複数の結晶粒間において結晶の方位が異なっている場合がある。また、多結晶酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有する多結晶酸化物半導体膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピーク、2θが36°近傍のピーク、またはそのほかのピークが現れる場合がある。
多結晶酸化物半導体膜は、高い結晶性を有するため、高い電子移動度を有する場合がある。従って、多結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有する。ただし、多結晶酸化物半導体膜は、結晶粒界に不純物が偏析する場合がある。また、多結晶酸化物半導体膜の結晶粒界は欠陥準位となる。多結晶酸化物半導体膜は、結晶粒界がキャリアトラップやキャリア発生源となる場合があるため、多結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、CAAC−OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる場合がある。
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することができない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc−OS膜は、例えば、TEMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
nc−OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。従って、nc−OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OS膜に対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある(図19(B)参照。)。
nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そのため、nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
従って、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて、キャリア密度が高くなる場合がある。キャリア密度が高い酸化物半導体膜は、電子移動度が高くなる場合がある。従って、nc−OS膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有する場合がある。また、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて、欠陥準位密度が高いため、キャリアトラップが多くなる場合がある。従って、nc−OS膜を用いたトランジスタは、CAAC−OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる。ただし、nc−OS膜は、比較的不純物が多く含まれていても形成することができるため、CAAC−OS膜よりも形成が容易となり、用途によっては好適に用いることができる場合がある。そのため、nc−OS膜を用いたトランジスタを有する半導体装置は、生産性高く作製することができる場合がある。
次に、非晶質酸化物半導体膜について説明する。
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶部を有さない酸化物半導体膜である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体膜が一例である。
非晶質酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶部を確認することができない。
非晶質酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物半導体膜に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物半導体膜に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターンが観測される。
非晶質酸化物半導体膜は、水素などの不純物を高い濃度で含む酸化物半導体膜である。また、非晶質酸化物半導体膜は、欠陥準位密度の高い酸化物半導体膜である。
不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜は、キャリアトラップやキャリア発生源が多い酸化物半導体膜である。
従って、非晶質酸化物半導体膜は、nc−OS膜と比べて、さらにキャリア密度が高くなる場合がある。そのため、非晶質酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になりやすい。従って、ノーマリーオンの電気特性が求められるトランジスタに好適に用いることができる場合がある。非晶質酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が高いため、キャリアトラップが多くなる場合がある。従って、非晶質酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、CAAC−OS膜やnc−OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる。
次に、単結晶酸化物半導体膜について説明する。
単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損が少ない)酸化物半導体膜である。そのため、キャリア密度を低くすることができる。従って、単結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になることが少ない。また、単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低いため、キャリアトラップが少なくなる場合がある。従って、単結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
なお、酸化物半導体膜は、欠陥が少ないと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、結晶性が高いと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、水素などの不純物濃度が低いと密度が高くなる。単結晶酸化物半導体膜は、CAAC−OS膜よりも密度が高い。また、CAAC−OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、多結晶酸化物半導体膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも密度が高い。
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
酸化物半導体膜が複数の構造を有する場合、ナノビーム電子回折を用いることで構造解析が可能となる場合がある。
図19(C)に、電子銃室10と、電子銃室10の下の光学系12と、光学系12の下の試料室14と、試料室14の下の光学系16と、光学系16の下の観察室20と、観察室20に設置されたカメラ18と、観察室20の下のフィルム室22と、を有する透過電子回折測定装置を示す。カメラ18は、観察室20内部に向けて設置される。なお、フィルム室22を有さなくても構わない。
また、図19(D)に、図19(C)で示した透過電子回折測定装置内部の構造を示す。透過電子回折測定装置内部では、電子銃室10に設置された電子銃から放出された電子が、光学系12を介して試料室14に配置された物質28に照射される。物質28を通過した電子は、光学系16を介して観察室20内部に設置された蛍光板32に入射する。蛍光板32では、入射した電子の強度に応じたパターンが現れることで透過電子回折パターンを測定することができる。
カメラ18は、蛍光板32を向いて設置されており、蛍光板32に現れたパターンを撮影することが可能である。カメラ18のレンズの中央、および蛍光板32の中央を通る直線と、カメラ18のレンズの中央を通り、床面と垂直な直線と、の為す角度は、例えば、15°以上80°以下、30°以上75°以下、または45°以上70°以下とする。該角度が小さいほど、カメラ18で撮影される透過電子回折パターンは歪みが大きくなる。ただし、あらかじめ該角度がわかっていれば、得られた透過電子回折パターンの歪みを補正することも可能である。なお、カメラ18をフィルム室22に設置しても構わない場合がある。例えば、カメラ18をフィルム室22に、電子24の入射方向と対向するように設置してもよい。この場合、蛍光板32の裏面から歪みの少ない透過電子回折パターンを撮影することができる。
試料室14には、試料である物質28を固定するためのホルダが設置されている。ホルダは、物質28を通過する電子を透過するような構造をしている。ホルダは、例えば、物質28をX軸、Y軸、Z軸などに移動させる機能を有していてもよい。ホルダの移動機能は、例えば、1nm以上10nm以下、5nm以上50nm以下、10nm以上100nm以下、50nm以上500nm以下、100nm以上1μm以下などの範囲で移動させる精度を有すればよい。これらの範囲は、物質28の構造によって最適な範囲を設定すればよい。
次に、上述した透過電子回折測定装置を用いて、物質の透過電子回折パターンを測定する方法について説明する。
例えば、図19(D)に示すように物質におけるナノビームである電子24の照射位置を変化させる(スキャンする)ことで、物質の構造が変化していく様子を確認することができる。このとき、物質28がCAAC−OS膜であれば、図19(A)に示したような回折パターンが観測される。または、物質28がnc−OS膜であれば、図19(B)に示したような回折パターンが観測される。
ところで、物質28がCAAC−OS膜であったとしても、部分的にnc−OS膜などと同様の回折パターンが観測される場合がある。したがって、CAAC−OS膜の良否は、一定の範囲におけるCAAC−OS膜の回折パターンが観測される領域の割合(CAAC化率ともいう。)で表すことができる場合がある。例えば、良質なCAAC−OS膜であれば、CAAC化率は、50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となる。なお、CAAC−OS膜と異なる回折パターンが観測される領域を非CAAC化率と表記する。
一例として、成膜直後(as−sputterdと表記。)、または酸素を含む雰囲気における450℃加熱処理後のCAAC−OS膜を有する各試料の上面に対し、スキャンしながら透過電子回折パターンを取得した。ここでは、5nm/秒の速度で60秒間スキャンしながら回折パターンを観測し、観測された回折パターンを0.5秒ごとに静止画に変換することで、CAAC化率を導出した。なお、電子線としては、プローブ径が1nmのナノビームを用いた。なお、同様の測定は6試料に対して行った。そしてCAAC化率の算出には、6試料における平均値を用いた。
各試料におけるCAAC化率を図20(A)に示す。成膜直後のCAAC−OS膜のCAAC化率は75.7%(非CAAC化率は24.3%)であった。また、450℃加熱処理後のCAAC−OS膜のCAAC化率は85.3%(非CAAC化率は14.7%)であった。成膜直後と比べて、450℃加熱処理後のCAAC化率が高いことがわかる。即ち、高い温度(例えば400℃以上)における加熱処理によって、非CAAC化率が低くなる(CAAC化率が高くなる)ことがわかる。また、500℃未満の加熱処理においても高いCAAC化率を有するCAAC−OS膜が得られることがわかる。
ここで、CAAC−OS膜と異なる回折パターンのほとんどはnc−OS膜と同様の回折パターンであった。また、測定領域において非晶質酸化物半導体膜は、確認することができなかった。したがって、加熱処理によって、nc−OS膜と同様の構造を有する領域が、隣接する領域の構造の影響を受けて再配列し、CAAC化していることが示唆される。
図20(B)および図20(C)は、成膜直後および450℃加熱処理後のCAAC−OS膜の平面TEM像である。図20(B)と図20(C)とを比較することにより、450℃加熱処理後のCAAC−OS膜は、膜質がより均質であることがわかる。即ち、高い温度における加熱処理によって、CAAC−OS膜の膜質が向上することがわかる。
このような測定方法を用いれば、複数の構造を有する酸化物半導体膜の構造解析が可能となる場合がある。
なお、酸化物積層110において、第1の酸化物層111を非晶質構造として、該非晶質構造の表面からCAAC−OS膜を成膜して第1の酸化物半導体層112としてもよい。
〔CAAC−OS膜の成膜方法〕
CAAC−OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa−b面から劈開し、a−b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC−OS膜を成膜することができる。
平板状のスパッタリング粒子は、例えば、a−b面に平行な面の円相当径が3nm以上10nm以下、厚さ(a−b面に垂直な方向の長さ)が0.7nm以上1nm未満である。なお、平板状のスパッタリング粒子は、a−b面に平行な面が正三角形または正六角形であってもよい。ここで、面の円相当径とは、面の面積と等しい正円の直径をいう。
また、CAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
成膜時の基板温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、基板温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板温度を高めることで、平板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。このとき、スパッタリング粒子が正に帯電することで、スパッタリング粒子同士が反発しながら基板に付着するため、スパッタリング粒子が偏って不均一に重なることがなく、厚さの均一なCAAC−OS膜を成膜することができる。
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
CAAC−OS膜を成膜した後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下とする。また、加熱処理の時間は1分以上24時間以下、好ましくは6分以上4時間以下とする。また、加熱処理は、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行えばよい。好ましくは、不活性雰囲気で加熱処理を行った後、酸化性雰囲気で加熱処理を行う。不活性雰囲気での加熱処理により、CAAC−OS膜の不純物濃度を短時間で低減することができる。一方、不活性雰囲気での加熱処理によりCAAC−OS膜に酸素欠損が生成されることがある。その場合、酸化性雰囲気での加熱処理によって該酸素欠損を低減することができる。また、加熱処理を行うことで、CAAC−OS膜の結晶性をさらに高めることができる。なお、加熱処理は1000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下または1Pa以下の減圧下で行ってもよい。減圧下では、CAAC−OS膜の不純物濃度をさらに短時間で低減することができる。
加熱処理は、例えば抵抗発熱体やランプなどを用いて加熱する加熱機構、または、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導または熱輻射によって、加熱する加熱機構、例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)などのRTA(Rapid Thermal Anneal)を用いることができる。LRTAは、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する。GRTAは、高温のガスを用いて熱処理を行う。ガスとしては、不活性ガスが用いられる。RTA装置を用いることによって、処理時間が短縮することができるので、量産する上では好ましい。また、加熱処理はインライン型の加熱装置を用いて行ってもよい。
スパッタリング用ターゲットの一例として、In−Ga−Zn酸化物ターゲットについて以下に示す。
InOX粉末、GaOY粉末及びZnOZ粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットとする。なお、X、Y及びZは任意の正数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末及びZnOZ粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、1:1:2、3:1:4、1:3:1、1:3:2、1:3:4、1:6:2、1:6:4、1:6:5、1:6:8または3:1:2である。なお、粉末の種類、及びその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
または、CAAC−OS膜は、以下の方法により形成する。
まず、第1の酸化物半導体膜を1nm以上10nm未満の厚さで成膜する。第1の酸化物半導体膜はスパッタリング法を用いて成膜する。具体的には、基板温度を100℃以上500℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下とし、成膜ガス中の酸素割合を30体積%以上、好ましくは100体積%として成膜する。
次に、加熱処理を行い、第1の酸化物半導体膜を結晶性の高い第1のCAAC−OS膜とする。加熱処理の温度は、350℃以上740℃以下、好ましくは450℃以上650℃以下とする。また、加熱処理の時間は1分以上24時間以下、好ましくは6分以上4時間以下とする。また、加熱処理は、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行えばよい。好ましくは、不活性雰囲気で加熱処理を行った後、酸化性雰囲気で加熱処理を行う。不活性雰囲気での加熱処理により、第1の酸化物半導体膜の不純物濃度を短時間で低減することができる。一方、不活性雰囲気での加熱処理により第1の酸化物半導体膜に酸素欠損が生成されることがある。その場合、酸化性雰囲気での加熱処理によって該酸素欠損を低減することができる。なお、加熱処理は1000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下または1Pa以下の減圧下で行ってもよい。減圧下では、第1の酸化物半導体膜の不純物濃度をさらに短時間で低減することができる。
第1の酸化物半導体膜は、厚さが1nm以上10nm未満であることにより、厚さが10nm以上である場合と比べ、加熱処理によって容易に結晶化させることができる。
次に、第1の酸化物半導体膜と同じ組成である第2の酸化物半導体膜を10nm以上50nm以下の厚さで成膜する。第2の酸化物半導体膜はスパッタリング法を用いて成膜する。具体的には、基板温度を100℃以上500℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下とし、成膜ガス中の酸素割合を30体積%以上、好ましくは100体積%として成膜する。
次に、加熱処理を行い、第2の酸化物半導体膜を第1のCAAC−OS膜から固相成長させることで、結晶性の高い第2のCAAC−OS膜とする。加熱処理の温度は、350℃以上740℃以下、好ましくは450℃以上650℃以下とする。また、加熱処理の時間は1分以上24時間以下、好ましくは6分以上4時間以下とする。また、加熱処理は、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行えばよい。好ましくは、不活性雰囲気で加熱処理を行った後、酸化性雰囲気で加熱処理を行う。不活性雰囲気での加熱処理により、第2の酸化物半導体膜の不純物濃度を短時間で低減することができる。一方、不活性雰囲気での加熱処理により第2の酸化物半導体膜に酸素欠損が生成されることがある。その場合、酸化性雰囲気での加熱処理によって該酸素欠損を低減することができる。なお、加熱処理は1000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下または1Pa以下の減圧下で行ってもよい。減圧下では、第2の酸化物半導体膜の不純物濃度をさらに短時間で低減することができる。
以上のようにして、合計の厚さが10nm以上であるCAAC−OS膜を形成することができる。当該CAAC−OS膜を、酸化物積層における酸化物半導体層として好適に用いることができる。
このような形成方法によって得られる酸化物半導体膜は、例えば、非晶質表面、非晶質絶縁表面、非晶質酸化物表面などであっても、高い結晶性を有する。
次に、例えば、基板加熱しないことなどにより被形成面が低温(例えば、130℃未満、100℃未満、70℃未満または室温(20℃〜25℃)程度)である場合の酸化物膜の形成方法について説明する。
被形成面が低温の場合、スパッタ粒子は被成膜面に不規則に降り注ぐ。スパッタ粒子は、例えば、マイグレーションをしないため、既に他のスパッタ粒子が堆積している領域も含め、無秩序に堆積していく。即ち、堆積して得られる酸化物膜は、例えば、厚さが均一でなく、結晶の配向も無秩序になる場合がある。このようにして得られた酸化物膜は、スパッタ粒子の結晶性を、ある程度維持するため、結晶部(ナノ結晶)を有する。
また、例えば、成膜時の圧力が高い場合、飛翔中のスパッタ粒子は、アルゴンなどの他の粒子(原子、分子、イオン、ラジカルなど)と衝突する頻度が高まる。スパッタ粒子は、飛翔中に他の粒子と衝突する(再スパッタされる)ことで、結晶構造が崩れる場合がある。例えば、スパッタ粒子は、他の粒子と衝突することで、平板状の形状を維持することができず、細分化(例えば各原子に分かれた状態)される場合がある。このとき、スパッタ粒子から分かれた各原子が被形成面に堆積していくことで、非晶質酸化物膜が形成される場合がある。
また、多結晶酸化物を有するターゲットを用いたスパッタリング法ではなく、液体を用いて成膜する方法の場合、またはターゲットなどの固体を気体化することで成膜する方法の場合、各原子に分かれた状態で飛翔して被形成面に堆積するため、非晶質酸化物膜が形成される場合がある。また、例えば、レーザアブレーション法では、ターゲットから放出された原子、分子、イオン、ラジカル、クラスターなどが飛翔して被形成面に堆積するため、非晶質酸化物膜が形成される場合がある。
以上が酸化物積層についての説明である。
[変形例]
以下では、図1に示すトランジスタとは、構成の一部が異なる変形例について説明する。
図3に本変形例で例示するトランジスタ150を示す。図3(A)は、トランジスタ150の上面概略図であり、図3(B)、(C)は、それぞれ図3(A)中に示す切断線C1−C2、D1−D2で切断した断面概略図である。なお図3(A)には明瞭化のため、主要な構成要素のみを示している。
トランジスタ150は、ゲート電極105の形状が異なる点で上記構成例1と相違しており、そのほかの部分は共通である。
トランジスタ150のゲート電極105は、第1の電極102aと重畳し、且つ第2の電極102bと重畳しないように設けられている。
このように、ドレイン電極として機能しうる第2の電極102bとゲート電極105とが重ならないように離間して設けることにより、ゲート−ドレイン間の耐圧を向上させることができる。したがって極めて高い電圧でトランジスタ150を駆動した場合でも高い信頼性を確保することができる。
また、図3(A)、(B)に示すように、第1の酸化物半導体層112中の第2の領域112bは、その第2の電極102b側の端部が、ゲート電極105よりも内側に設けられることが好ましい。換言すると、ゲート電極105は第2の領域112bよりも第2の電極102b側に延在するように設けることが好ましい。なお、ゲート電極105、及び第2の領域112bの、第2の電極102b側のそれぞれの端部が、一致するように設けられていてもよい。
n型化された第2の領域112bを、ゲート電極105よりも内側に設けることで、トランジスタ特性がノーマリーオンとなってしまうことを抑制できる。このとき、ソース−ドレイン間においてゲート電極105が重畳している長さをゲート長とすると、ゲート電極105と第2の領域112bとが重なる領域におけるソース−ドレイン間方向の長さを、例えばゲート長以下、好ましくは0.8倍以下、より好ましくは0.5倍以下とする。
本変形例の構成とすることで、ゲート−ドレイン耐圧が向上し、より高い電流を流すことができる高信頼性のトランジスタを実現できる。また、ノーマリーオフ型のトランジスタを実現できる。
以上が本変形例についての説明である。
[作製方法例1]
以下では、本発明の一態様の半導体装置の作製方法の一例について、図面を参照して説明する。
[トランジスタの作製方法例]
ここでは、上記変形例で例示したトランジスタ150の作製方法例について説明する。図4及び図5は、作製工程に係る断面概略図である。
〔絶縁層107の形成〕
まず、基板101上に絶縁層107を形成する。
基板101は、作製工程中にかかる熱に対して耐熱性を有する基板を用いる。例えば、ガラス基板、金属基板、合金基板、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板などを用いることができる。また、基板101に他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板を用いてもよい。この場合、トランジスタ150の第1の電極102a、第2の電極102b、またはゲート電極105の少なくとも一つが上記他のデバイスと電気的に接続するように形成してもよい。
なお、トランジスタに大きな電流を流す際に発熱が問題となる場合には、基板101として熱伝導性の高い材料を用いることが好ましい。例えば、金属基板、合金基板、半導体基板などを用いることができる。
絶縁層107としては、プラズマCVD法やスパッタリング法などの方法により、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルなどの酸素を含む絶縁膜を用いて形成することができる。または、基板101の表面を熱酸化して形成した酸化膜を絶縁層107として用いてもよい。
絶縁層107は、基板101からの不純物の拡散を防止する役割を有するほか、酸化物積層110に酸素を供給する役割を担うため、酸素を含む絶縁層を用いるものとする。また、上述のように基板101が他のデバイスが形成された基板である場合、絶縁層107は層間絶縁層としての機能も有する。その場合は、表面が平坦になるようにCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等で平坦化処理を行うことが好ましい。
本実施の形態のトランジスタ150において、酸素を含有する絶縁層107が、酸化物半導体層を含む積層構造(酸化物積層110)の下方に設けられている。このような構成とすることで、絶縁層107に含まれる酸素を、チャネル形成領域へ供給することが可能となる。絶縁層107は、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域を有することが好ましい。絶縁層107が過剰に酸素を含有することで、チャネル形成領域への酸素の供給がより促進されうる。
なお、本明細書等において、過剰な酸素とは、加熱処理により酸化物半導体層中、酸化物層中、酸化シリコン中、または酸化窒化シリコン中を移動可能な酸素、または、本来の化学量論比にある酸素よりも過剰に存在する酸素、または、酸素の不足によるVo(酸素ベーカンシー(空孔))を満たすまたは充填する機能を有する酸素を示す。
絶縁層107は、少なくとも後に形成される酸化物積層110への酸素の供給源となりえる酸素を含む材料で形成することが好ましい。また、過剰に酸素を含む膜とすることが好ましい。
絶縁層107に酸素を過剰に含有させるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁層107の成膜を行えばよい。または、成膜後の絶縁層107に酸素を導入して酸素を過剰に含有させてもよく、双方の手段を組み合わせてもよい。
例えば、成膜後の絶縁層107に酸素(少なくとも酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)を導入して酸素を過剰に含有する領域を形成する。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。酸素導入処理には、酸素を含むガスを用いることができる。酸素を含むガスとしては、酸素、一酸化二窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、一酸化炭素などを用いることができる。また、酸素導入処理において、酸素を含むガスに希ガスを含ませてもよい。
〔第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112の形成〕
次いで、絶縁層107上に第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112を順に積層する(図4(A))。第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、またはPLD(Pulsed Laser Deposition)法等を用いて成膜する。
第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112、並びに後に形成する第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114には、上記構成例1で例示した材料を用いることができる。
例えば、第1の酸化物層111には、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:6:4[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:9:6[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、又はその近傍の組成を有する酸化物を用いることが好ましい。
また例えば第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113には、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、又はその近傍の組成を有する酸化物を用いることが好ましい。
また、例えば第2の酸化物層114には、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:6:4[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:9:6[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、又はその近傍の組成を有する酸化物を用いることが好ましい。
なお、例えばIn、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)2+(b−B)2+(c−C)2≦r2を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。
なお、各層の組成は上述の原子数比に限られない。但し、第1の酸化物半導体層112は第1の酸化物層111よりもインジウムの含有量を多くするとよく、第2の酸化物半導体層113は第2の酸化物層114よりもインジウムの含有量を多くするとよい。酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、インジウムの含有量を多くすることにより、より多くのs軌道が重なるため、インジウムがガリウムより多い組成となる酸化物はインジウムがガリウムと同量または少ない組成となる酸化物と比較して移動度が高くなる。また、ガリウムはインジウムと比較して酸素欠損の形成エネルギーが大きく酸素欠損を生じにくいため、ガリウムの含有量の多い酸化物は安定した特性を備える。
そのため、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113にインジウムの含有量の多い酸化物を用いることで、高い電界効果移動度を備えるトランジスタを実現することができる。また絶縁層との界面側にガリウムの多い酸化物を用いることで、トランジスタの信頼性を高めることが可能となる。
また、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114として用いることのできる酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)もしくは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。特に、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113がインジウムを含有すると、トランジスタのキャリア移動度を高めることができ、亜鉛を含有すると、CAAC−OS膜を形成しやすくなるため好ましい。また、酸化物半導体層を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、インジウム及び亜鉛と共に、スタビライザーを含むことが好ましい。
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザーとしては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等がある。
例えば酸化物、特に酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In−Zn酸化物、Sn−Zn酸化物、Al−Zn酸化物、Zn−Mg酸化物、Sn−Mg酸化物、In−Mg酸化物、In−Ga酸化物、In−Ga−Zn酸化物、In−Al−Zn酸化物、In−Sn−Zn酸化物、Sn−Ga−Zn酸化物、Al−Ga−Zn酸化物、Sn−Al−Zn酸化物、In−Hf−Zn酸化物、In−La−Zn酸化物、In−Ce−Zn酸化物、In−Pr−Zn酸化物、In−Nd−Zn酸化物、In−Sm−Zn酸化物、In−Eu−Zn酸化物、In−Gd−Zn酸化物、In−Tb−Zn酸化物、In−Dy−Zn酸化物、In−Ho−Zn酸化物、In−Er−Zn酸化物、In−Tm−Zn酸化物、In−Yb−Zn酸化物、In−Lu−Zn酸化物、In−Sn−Ga−Zn酸化物、In−Hf−Ga−Zn酸化物、In−Al−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Al−Zn酸化物、In−Sn−Hf−Zn酸化物、In−Hf−Al−Zn酸化物を用いることができる。
但し、上記構成例1で詳細を記したように、第1の酸化物層111は第1の酸化物半導体層112よりも電子親和力が大きくなるように、また、第2の酸化物層114は第2の酸化物半導体層113よりも電子親和力が大きくなるように、それぞれの材料を選択する。
なお、酸化物積層110を構成する各層の成膜には、スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法としてはRFスパッタリング法、DCスパッタリング法、ACスパッタリング法等を用いることができる。特に、成膜時に発生するゴミを低減でき、且つ膜厚分布も均一とすることから、DCスパッタリング法を用いることが好ましい。
なお、第1の酸化物層111を成膜後、第1の酸化物半導体層112の成膜前に、第1の酸化物層111に対して酸素を導入してもよい。当該酸素導入処理により、第1の酸化物層111が過剰に酸素を含有し、その後の成膜工程後における熱処理によって該過剰な酸素を第1の酸化物半導体層112へ供給することができる。また第2の酸化物半導体層113の成膜工程後における熱処理によって該過剰な酸素を第2の酸化物半導体層113へ供給することもできる。その結果、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113の酸素欠損を効果的に低減することができる。
第1の酸化物層111に添加する酸素の量としては、代表的には、イオン注入法において、ドーズ量は5×1014atoms/cm2以上1×1017atoms/cm2以下が好ましい。後に形成される酸化物半導体膜の酸素欠損を低減できる程度の酸素を添加することが好ましく、代表的には5×1014atoms/cm2以上、さらには1×1015atoms/cm2以上である。一方、酸素の添加量が多ければ多い程処理時間が長くなり、量産性が低下するため、1×1017atoms/cm2以下、さらには5×1016atoms/cm2以下、さらには2×1016atoms/cm2以下が好ましい。
なお、第1の酸化物層111は酸素の導入処理によって非晶質化する場合がある。酸化物積層110において、少なくとも第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113は、CAAC−OS膜とすることが好ましい。よって、当該酸素の導入処理は、第1の酸化物層111の成膜後であって、第1の酸化物半導体層112の成膜前に行うことが好ましい。
〔第2の領域112bの形成〕
続いて、第1の酸化物半導体層112上に、レジストマスク121を形成する。レジストマスク121は、第1の酸化物半導体層112の第2の領域112bとなる領域以外を覆って形成する。
続いて、第1の酸化物半導体層112のレジストマスク121に覆われていない領域に、元素122を導入する(図4(B))。
元素122としては、リン(P)のほか、15族元素(例えば砒素(As)、アンチモン(Sb))や、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、インジウム(In)、フッ素(F)、塩素(Cl)、水素(H)、チタン(Ti)、及び亜鉛(Zn)を用いてもよい。
また、導入する元素122は、ラジカル、原子、分子、又はイオンのいずれかを少なくとも含んでいればよい。
上述の元素を第1の酸化物半導体層112に導入する方法としては、例えばイオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などを用いることができる。または、上記元素122を含む雰囲気下における熱処理やプラズマ処理を行ってもよい。
元素122の導入において、第1の酸化物半導体層112の第1の酸化物層111との界面に元素122が達しないように導入の条件を設定することが好ましい。また、第1の酸化物半導体層112の厚さ方向において、最も元素122の濃度の高い領域が、第1の酸化物半導体層112の表面近傍(例えば表面から20nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下の範囲)に位置するように元素122を導入することが好ましい。または、元素122の濃度の最も高い領域が、第1の酸化物半導体層112表面から第1の酸化物半導体層112の厚さの3/4以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/4以下の範囲に位置するように、元素122を導入することが好ましい。
このような方法により元素122を導入することで、第1の酸化物半導体層112中にn型領域である第2の領域112bと、第2の領域112bよりも元素122の濃度の低い第1の領域112aを形成することができる。ここで、第1の領域112aは好ましくはi型または実質的にi型であることが好ましい。
元素122を導入後、レジストマスク121を除去する。
〔第2の酸化物半導体層113、第2の酸化物層114の形成〕
次いで、第1の酸化物半導体層112上に、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114を順に積層する(図4(C))。この段階で、酸化物積層110が形成される。
第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114は、上述の材料及び方法を用いて形成することができる。
ここで、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114の形成後、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、または減圧状態で行えばよい。また、加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。加熱処理によって絶縁層107及び酸化物積層110から水素や水などの不純物を除去することができる。また、当該加熱処理により、絶縁層107から酸化物積層110に対して酸素を供給することができる。
なお、上記熱処理は、少なくとも第1の酸化物半導体層112を形成した後であればどの段階で行ってもよく、また複数回繰り返し行ってもよい。例えば、第1の酸化物半導体層112の形成直後、第2の酸化物層114の形成直後、またはそれ以降の段階で行ってもよい。
ここで、酸化物積層110を形成した後に、酸化物積層110の結晶性を向上させるための処理を施してもよい。少なくとも第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113の結晶性を向上させることで、トランジスタの電気特性を向上させることができる。
酸化物積層110の結晶性を向上させるための処理として、エネルギービームを照射した加熱処理を行うことが好ましい。エネルギービームの代表例はレーザ光である。酸化物積層110に照射するレーザ光としては、パルスレーザ光が好ましい。酸化物積層110が形成された基板に熱的なダメージを与えることなく、かつレーザ光の照射領域を瞬間的に結晶化可能な温度に加熱することが可能となるためである。
酸化物積層110を加熱するレーザ光の波長は、酸化物積層110でレーザ光が吸収されるように、酸化物積層110に含まれる酸化物半導体のバンドギャップ以上のエネルギーを有する短波長であることが好ましい。そのような波長を有するレーザ光の光源の一例としては、エキシマレーザを用いることができる。エキシマレーザとして、XeCl(308nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm)などを用いることができる。また、YAGレーザなどの第3高調波を用いてもよい。
続いて、フォトリソグラフィ法等を用いて酸化物積層110の不要な部分をエッチングし、酸化物積層110を島状に加工する(図4(D))。
このとき、第1の酸化物半導体層112中の第2の領域112bの側面が、上記エッチングにより露出しないようにすることが好ましい。
以上の工程により、島状の酸化物積層110を形成することができる。
〔第1の電極102a、第2の電極102bの形成〕
続いて、酸化物積層110上に導電膜を成膜し、不要な部分をエッチングすることにより、第1の電極102a及び第2の電極102bを形成する(図5(A))。
導電膜の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wなどの金属、または上述の金属を含む合金を用いることができる。該導電膜はスパッタリング法などにより形成することができる。
ここで、導電膜のエッチングの際に、酸化物積層110の上部がエッチングされ、第1の酸化物層111の一部が薄くなる、または消失する場合がある。したがって、第1の酸化物層111は当該エッチングによる影響を考慮して成膜時の厚さを設定しておくことが好ましい。
また、導電膜のエッチングにドライエッチングを用いた場合には、酸化物積層110の表面、または絶縁層107の表面にエッチング残渣が付着する場合がある。その場合、エッチング残渣を除去するため、洗浄処理をすることが好ましい。当該洗浄処理を行うことで、第1の電極102aと第2の電極102bの短絡を抑制することができる。当該洗浄処理は、TMAH(Tetramethylammonium Hydroxide)溶液などのアルカリ性の溶液、希フッ酸、シュウ酸、リン酸などの酸性の溶液を用いて行うことができる。
ここで、上記と同様の加熱処理を行ってもよい。
〔ゲート絶縁層104の形成〕
続いて、酸化物積層110、第1の電極102a及び第2の電極102b上にゲート絶縁層104を形成する。
ゲート絶縁層104の材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどを用いることができる。なお、ゲート絶縁層104は、上記材料の積層膜を用いてもよい。ゲート絶縁層104は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することができる。
ゲート絶縁層104は、上記絶縁層107と同様、酸化物積層110への不純物の拡散を防止する役割を有するほか、酸化物積層110に酸素を供給する役割を有していてもよく、酸素を含む絶縁層を用いることが好ましい。
ゲート絶縁層104の形成後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は上記と同様の条件で行うことができる。加熱処理により、酸化物積層110を囲む酸素を含む層から、酸化物積層110中に効果的に酸素が供給され、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113中の酸素欠損を低減できる。
〔ゲート電極105の形成〕
次に、ゲート絶縁層104上に導電膜を形成し、不要な部分をエッチングすることにより、ゲート電極105を形成する(図5(B))。
導電膜の材料としては、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ru、Ag、Ta及びWなどの金属、または上述の金属を含む合金を用いることができる。該導電膜はスパッタリング法などにより形成することができる。
ここでは図5(B)に示すように、ゲート電極105が第1の電極102aと重畳し、且つ第2の電極102bと重畳しないように設ける例を示している。またこのとき、ゲート電極105が第2の領域112bよりも第2の電極102b側に延在するように設けることが好ましい。
なお、図1で例示したトランジスタ100を作製する場合には、ゲート電極105の形状を、第1の電極102a及び第2の電極102bの両方と重畳するように加工すればよく、それ以外の工程は、本作製方法例1を援用することができる。
ゲート電極105の形成後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は上記と同様の条件で行うことができる。加熱処理により、酸化物積層110を囲む酸素を含む層から、酸化物積層110中に効果的に酸素が供給され、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113中の酸素欠損を低減できる。
〔絶縁層108、絶縁層109の形成〕
続いて、ゲート絶縁層104及びゲート電極105上に絶縁層108と絶縁層109を順に積層する。
絶縁層108及び絶縁層109の材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどを用いることができる。なお絶縁層108及び絶縁層109は、上記材料の積層膜を用いてもよい。絶縁層108及び絶縁層109は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することができる。
ここで、絶縁層108として、酸素に対する透過性の低い(酸素に対するバリア性を有する)層を用いることが好ましい。酸素に対する透過性の低い層の材料としては、酸化アルミニウムや、窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどの窒化物が挙げられる。ゲート絶縁層104を覆って酸素に対する透過性の低い絶縁層108を設けることにより、その後の加熱処理によって絶縁層107、または絶縁層107及びゲート絶縁層104から放出される酸素が、絶縁層108を介して外部に放出されることを抑制し、当該酸素を効率的に酸化物積層110に供給することができる。
または、絶縁層108として酸化物積層110への酸素の供給源となり得る酸素を含む(過剰の酸素を含む)層とし、絶縁層109として酸素に対する透過性の低い層としてもよい。このとき、加熱処理によって絶縁層108から放出される酸素が絶縁層109を介して外部に放出されることが抑制され、より効率的に当該酸素を酸化物積層110に供給することができる。
絶縁層108、または絶縁層108及び絶縁層109の形成後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は上記と同様の条件で行うことができる。加熱処理により、酸化物積層110を囲む酸素を含む層から、酸化物積層110中に効果的に酸素が供給され、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113中の酸素欠損を低減できる。
続いて、絶縁層109及び絶縁層108を選択的にエッチングし、第1の電極102aに達する開口部、及び第2の電極102bに達する開口部を形成する。
続いて、絶縁層109上に導電膜を形成し、不要な部分をエッチングにより除去することにより、第1の電極102aと電気的に接続する電極106a、及び第2の電極102bと電気的に接続する電極106bを形成する(図5(C))。
導電膜の材料としては、第1の電極102a、第2の電極102b、またはゲート電極105に用いる材料を適用できる。
また、電極106a及び電極106bの形成後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は上記と同様の条件で行うことができる。加熱処理により、酸化物積層110を囲む酸素を含む層から、酸化物積層110中に効果的に酸素が供給され、第1の酸化物半導体層112及び第2の酸化物半導体層113中の酸素欠損を低減できる。
以上の工程により、トランジスタ150を作製することができる。
以上が本作製方法例についての説明である。
[変形例1]
以下では、上記トランジスタの作製方法例とは一部が異なるトランジスタの作製方法例について説明する。なお以下では主に上記と相違する点について説明し、上記と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
まず、上記と同様に基板101上に絶縁層107、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112を形成する。続いて、第1の酸化物半導体層112上にレジストマスク121を形成する。続いて、第1の酸化物半導体層112の一部に該レジストマスク121の開口部を介して元素122を導入し、第1の酸化物半導体層112に元素122を含む第2の領域112bと、元素122の濃度の低い第1の領域112aを形成する(図6(A))。
元素122の導入後、レジストマスク121を除去する。
続いて、フォトリソグラフィ法等を用いて、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112の不要な部分をエッチングし、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112を島状に加工する(図6(B))。
続いて、第1の酸化物半導体層112を覆って、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114を成膜する。その後、フォトリソグラフィ法等を用いて第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114の不要な部分をエッチングし、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114を島状に加工する(図6(C))。
このとき、図6(C)に示すように、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114の積層体が、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112の側面を覆うように加工することが好ましい。このような加工を行うことで、第1の酸化物半導体層112の端部が露出することがないため、第1の酸化物半導体層112の端部から酸素が脱離して酸素欠損が生じてしまうことを抑制できる。
これ以降の工程は、上記作製方法例を参酌できる。すなわち、上記と同様の方法を用いて第1の電極102a、第2の電極102b、ゲート絶縁層104、ゲート電極105、絶縁層108、絶縁層109、電極106a及び電極106bを順次形成する。
以上の工程により、トランジスタ160を作製することができる(図6(D))。
トランジスタ160は、上記トランジスタ150と比較して、酸化物積層110の端部の形状が異なる点で相違している。具体的には、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114が、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112の端部を覆うように設けられている。
以上が本変形例1についての説明である。
[変形例2]
以下では、上記トランジスタの作製方法例及び上記変形例1とは一部が異なるトランジスタの作製方法例について説明する。なお以下では主に上記と相違する点について説明し、上記と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
まず、上記と同様に基板101上に絶縁層107、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112を形成する。
続いて、フォトリソグラフィ法等を用いて、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112の不要な部分をエッチングし、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112を島状に加工する(図7(A))。
続いて、第1の酸化物半導体層112上に、レジストマスク121を形成する。その後、第1の酸化物半導体層112の一部に該レジストマスク121の開口部を介して元素122を導入し、第1の酸化物半導体層112に元素122を含む第2の領域112bと、元素122の濃度の低い第1の領域112aを形成する(図7(B))。
元素122の導入後、レジストマスク121を除去する。
続いて、第1の酸化物半導体層112を覆って、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114を成膜する。その後、フォトリソグラフィ法等を用いて第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114の不要な部分をエッチングし、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114を島状に加工する(図7(C))。
このとき、上記変形例1と同様に、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114の積層体が、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112の側面を覆うように加工することが好ましい。
これ以降の工程は、上記作製方法例を参酌できる。すなわち、上記と同様の方法を用いて第1の電極102a、第2の電極102b、ゲート絶縁層104、ゲート電極105、絶縁層108、絶縁層109、電極106a及び電極106bを順次形成する。
以上の工程により、トランジスタ160を作製することができる(図7(D))。ここで、図7(D)に示すトランジスタ160は、上記変形例1で例示した図6(D)に示すトランジスタ160と同様の構成となる。
以上が本変形例についての説明である。
[変形例3]
以下では上記トランジスタの作製方法例及び上記各変形例とは一部が異なるトランジスタの作製方法例について説明する。なお以下では主に上記と相違する点について説明し、上記と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
まず、上記と同様に基板101上に絶縁層107、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112を形成する。続いて、第1の酸化物半導体層112上にレジストマスク121を形成する。続いて、第1の酸化物半導体層112の一部に該レジストマスク121の開口部を介して元素122を導入し、第1の酸化物半導体層112に元素122を含む第2の領域112bと、元素122の濃度の低い第1の領域112aを形成する(図8(A))。
元素122の導入後、レジストマスク121を除去する。
続いて、フォトリソグラフィ法等を用いて、第1の酸化物半導体層112の不要な部分をエッチングし、第1の酸化物半導体層112を島状に加工する(図8(B))。
第1の酸化物半導体層112のエッチングには、第1の酸化物層111とエッチング速度の選択比が十分に大きい条件を用いることが好ましい。なお、第1の酸化物層111と第1の酸化物半導体層112の組成が近い場合や、エッチングの選択比が十分に大きくとれない場合などでは、第1の酸化物層111がエッチングされ、一部が薄膜化する場合がある。
続いて、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112を覆って、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114を成膜する。その後、フォトリソグラフィ法等を用いて第1の酸化物層111、第2の酸化物半導体層113、第2の酸化物層114の不要な部分をエッチングし、第1の酸化物層111、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114を島状に加工する(図8(C))。
このとき、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114の積層体が、第1の酸化物半導体層112の側面を覆うように加工することが好ましい。このような加工を行うことで、第1の酸化物半導体層112の端部が露出することがないため、第1の酸化物半導体層112の端部から酸素が脱離して酸素欠損が生じてしまうことを抑制できる。
これ以降の工程は、上記作製方法例を参酌できる。すなわち、上記と同様の方法を用いて第1の電極102a、第2の電極102b、ゲート絶縁層104、ゲート電極105、絶縁層108、絶縁層109、電極106a及び電極106bを順次形成する。
以上の工程により、トランジスタ170を作製することができる(図8(D))。
トランジスタ170は、酸化物積層110の端部の形状が異なる点で、上記トランジスタ150及びトランジスタ160と相違している。具体的には、第2の酸化物半導体層113が第1の酸化物半導体層112の側面を覆い、且つ第1の酸化物層111の上面の一部に接して設けられている。
以上が本変形例3についての説明である。
[変形例4]
以下では、上記トランジスタの作製方法例及び上記各変形例とは一部が異なるトランジスタの作製方法例について説明する。なお以下では主に上記と相違する点について説明し、上記と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
まず、上記と同様に基板101上に絶縁層107、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112を形成する。
続いて、フォトリソグラフィ法等を用いて、第1の酸化物半導体層112の不要な部分をエッチングし、第1の酸化物半導体層112を島状に加工する(図9(A))。当該エッチングについては、上記変形例3を参酌できる。
続いて、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112上にレジストマスク121を形成する。その後、第1の酸化物半導体層112の一部に該レジストマスク121の開口部を介して元素122を導入し、第1の酸化物半導体層112に元素122を含む第2の領域112bと、元素122の濃度の低い第1の領域112aを形成する(図9(B))。
元素122の導入後、レジストマスク121を除去する。
続いて、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112を覆って、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114を成膜する。その後、フォトリソグラフィ法等を用いて第1の酸化物層111、第2の酸化物半導体層113、第2の酸化物層114の不要な部分をエッチングし、第1の酸化物層111、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114を島状に加工する。
このとき変形例3と同様に、第2の酸化物半導体層113及び第2の酸化物層114の積層体が、第1の酸化物半導体層112の側面を覆うように加工することが好ましい。
これ以降の工程は、上記作製方法例を参酌できる。すなわち、上記と同様の方法を用いて第1の電極102a、第2の電極102b、ゲート絶縁層104、ゲート電極105、絶縁層108、絶縁層109、電極106a及び電極106bを順次形成する。
以上の工程により、トランジスタ170を作製することができる(図9(D))。ここで、図9(D)に示すトランジスタ170は、上記変形例3で例示した図7(D)に示すトランジスタ170と同様の構成となる。
以上が本変形例についての説明である。
上記実施の形態で開示された、金属膜、半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜はスパッタ法やプラズマCVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成してもよい。熱CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法を使ってもよい。
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行ってもよい。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の層が第1の層上に積層されて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なFETを作製する場合に適している。
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した実施形態に開示された金属膜、半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜を形成することができ、例えば、In−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及びジメチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CH3)3である。また、トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CH3)3である。また、ジメチル亜鉛の化学式は、Zn(CH3)2である。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C2H5)3)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C2H5)2)を用いることもできる。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシド溶液、代表的にはテトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH))を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスを同時に導入してタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してIn−O層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2とO3ガスを同時に導入してZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてIn−Ga−O層やIn−Zn−O層、Ga−Zn−O層などの混合化合物層を形成してもよい。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたH2Oガスを用いてもよいが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Zn(CH3)2ガスを用いてもよい。
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態1とは異なる半導体装置の構成例、及び作製方法例について、図面を参照して説明する。なお以下では、上記実施の形態1と共通する部分については説明を省略する場合がある。
[構成例2]
[トランジスタの構成例]
図10に本構成例で例示するトランジスタ200を示す。図10(A)は、トランジスタ200の上面概略図であり、図10(B)、(C)は、それぞれ図10(A)中に示す切断線E1−E2、F1−F2で切断した断面概略図である。なお、図10(A)には明瞭化のため、主要な構成要素のみを示している。
図10に示す構成は、基板101上に設けられた絶縁層107上に、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び第2の酸化物層114が順に積層された積層構造を含む酸化物積層110を有する。また第2の酸化物半導体層113の上面の一部、及び第2の酸化物層114の下面の一部と接し、第1の酸化物半導体層112上で離間する第1の電極102aと、第2の電極102bを有する。また第2の酸化物層114上にゲート絶縁層104と、ゲート絶縁層104上に酸化物積層110と重なるゲート電極105を有する。
また、ゲート電極105を覆って絶縁層108と、絶縁層108上に絶縁層109が設けられている。さらに、絶縁層109上に、それぞれ絶縁層109、絶縁層108に設けられた開口部において第1の電極102aと電気的に接続する電極106aと、第2の電極102bと電気的に接続する電極106bと、を有する。
第1の酸化物半導体層112は、第1の酸化物半導体層112に含まれる酸化物半導体に対して導電性を付与する元素を含む第2の領域112bと、当該第2の領域よりも当該元素の濃度が低い第1の領域112aとを有する。
また第2の領域112bは、第1の酸化物半導体層112の端部よりも内側の領域に設けられている。また、第1の酸化物半導体層112において、第2の領域112bは、その底部と側部を第1の領域112aに囲まれるように設けられている。また、第2の領域112bの上部に第2の酸化物半導体層113が設けられている。
ここで、第1の電極102a及び第2の電極102bが、それぞれチャネルが形成される第2の酸化物半導体層113の上面に接して設けられている。その結果、第1の電極102aまたは第2の電極102bと第2の酸化物半導体層113との間に第2の酸化物層114を設ける構成に比べてオン状態におけるソース−ドレイン間の直列抵抗が低減され、より大きな電流を流すことができる。
ここで、第1の電極102aと第2の領域112bとが接しないよう、これらの距離を十分にとるために、第2の酸化物半導体層113の厚さを調整することが好ましい。例えば、第1の電極102aと重なる領域において、第2の酸化物半導体層113の厚さを10nm以上40nm以下、好ましくは20nm以上40nm以下とすると、オン電流を犠牲にすることなくトランジスタ200のオン、オフ動作を確実なものとすることができ、さらにはノーマリーオフ型のトランジスタ200を実現できる。
また、第2の酸化物層114の端部は、絶縁層108に接して設けられている。ここで、絶縁層108として過剰な酸素を含む層を用いた場合、熱処理などにより絶縁層108から放出される酸素を、第2の酸化物層114を介して第2の酸化物半導体層113に供給することができる。その結果、第2の酸化物半導体層113や、第1の酸化物半導体層112中の酸素欠損を低減することができる。一方、絶縁層108として酸素に対するバリア性を有する層を用いた場合には、熱処理などにより第2の酸化物層114の端部から酸素が放出されてしまうことを抑制できる。
[変形例]
以下では、図10に示すトランジスタとは構成の一部が異なる変形例について説明する。
図11に本変形例で例示するトランジスタ210の断面概略図を示す。
トランジスタ210は、ゲート電極105、ゲート絶縁層104及び第2の酸化物層114の形状が異なる点で、図10に示すトランジスタ200と相違しており、そのほかの部分は共通である。
トランジスタ210のゲート電極105は、第1の電極102aと重畳し、且つ第2の電極102bと重畳しないように設けられている。
このように、ドレイン電極として機能しうる第2の電極102bとゲート電極105とが重ならないように離間して設けることにより、ゲート−ドレイン間の耐圧を向上させることができる。したがってこのような構成とすることで、極めて高い電圧でトランジスタ210を駆動した場合でも高い信頼性を確保することができる。
また、図11に示すように、第1の酸化物半導体層112中の第2の領域112bは、その第2の電極102b側の端部が、ゲート電極105よりも内側に設けられることが好ましい。すなわち、ゲート電極105は第2の領域112bよりも第2の電極102b側に延在するように設けることが好ましい。なお、ゲート電極105、及び第2の領域112bの、第2の電極102b側のそれぞれの端部が、一致するように設けられていてもよい。
n型化された第2の領域112bを、ゲート電極105よりも内側に設けることで、トランジスタ特性がノーマリーオンとなってしまうことを抑制できる。このとき、ソース−ドレイン間においてゲート電極105が重畳している長さをゲート長とすると、ゲート電極105と第2の領域112bとが重なる領域におけるソース−ドレイン間方向の長さを、例えばゲート長以下、好ましくは0.8倍以下、より好ましくは0.5倍以下とする。
また、第2の酸化物層114及びゲート絶縁層104は、ゲート電極105よりも外側の領域にまで延在し、第1の電極102a及び第2の電極102bの一部と重なるように設けられている。このような構成とすることで、第2の酸化物層114が第2の酸化物半導体層113を確実に覆うことができる。また図11に示すように、第2の酸化物層114及びゲート絶縁層104を島状に加工し、これらの端部が電極106a及び電極106bよりもゲート電極105側に設けることで、電極106a及び電極106bと第2の酸化物層114が接することがないため、電極106a及び電極106bにより第2の酸化物層114中の酸素が引き抜かれてしまうことを防ぐことができる。
本変形例の構成とすることで、ゲート−ドレイン耐圧が向上し、より高い電流を流すことができる高信頼性のトランジスタを実現できる。また、ノーマリーオフ型のトランジスタを実現できる。
以上が本変形例についての説明である。
[作製方法例2]
以下では、本発明の一態様の半導体装置の作製方法の一例について、図面を参照して説明する。なお、実施の形態1と共通する部分は、説明を省略する場合がある。
[トランジスタの作製方法例]
以下では、上記構成例2で例示したトランジスタ200の作製方法について説明する。
まず、基板101上に絶縁層107、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112を形成する。続いて、第1の酸化物半導体層112上にレジストマスク121を形成する。続いて、第1の酸化物半導体層112の一部に該レジストマスク121の開口部を介して元素122を導入し、第1の酸化物半導体層112に元素122を含む第2の領域112bと、元素122の濃度の低い第1の領域112aを形成する。元素122の導入後、レジストマスク121を除去する。
続いて、第1の酸化物半導体層112上に第2の酸化物半導体層113を形成する。その後、フォトリソグラフィ法等を用いて、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、及び第2の酸化物半導体層113の不要な部分をエッチングし、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、及び第2の酸化物半導体層113を島状に加工する(図12(A))。
続いて、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、及び第2の酸化物半導体層113上に導電膜を成膜し、不要な部分をエッチングすることにより、第1の電極102a及び第2の電極102bを形成する(図12(B))。
ここで、導電膜のエッチングの際に、第2の酸化物半導体層113の上部がエッチングされ、第2の酸化物半導体層113の一部が薄くなる場合がある。したがって、第2の酸化物半導体層113は、当該エッチングによる影響を考慮して成膜時の厚さを設定しておくことが好ましい。
また、導電膜のエッチングにドライエッチングを用いた場合には、第1の酸化物層111、第1の酸化物半導体層112、第2の酸化物半導体層113、及び絶縁層107の表面にエッチング残渣が付着する場合がある。その場合、エッチング残渣を除去するため、洗浄処理をすることが好ましい。当該洗浄処理を行うことで、第1の電極102aと第2の電極102bの短絡を抑制することができる。洗浄処理は、TMAH溶液などのアルカリ性の溶液、希フッ酸、シュウ酸、リン酸などの酸性の溶液を用いて行うことができる。
特に、第2の酸化物半導体層113の表面にエッチング残渣が残存していると、後に形成する第2の酸化物層114との界面に意図しない界面準位が形成されてしまい、トランジスタの電気的特性や信頼性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、当該洗浄処理を行うことは特に有効である。
続いて、第2の酸化物層114、ゲート絶縁層104、及び導電膜を順に成膜する。その後フォトリソグラフィ法等を用いて第2の酸化物層114、ゲート絶縁層104、及び導電膜の不要な部分をエッチングし、同一パターンに加工された第2の酸化物層114、ゲート絶縁層104、及びゲート電極105を形成する(図12(C))。
ここで、第2の酸化物層114、ゲート絶縁層104、及びゲート電極105は、同一のレジストマスクを用いて加工してもよいし、ゲート電極105を形成した後にレジストマスクを除去し、ゲート電極105をエッチングマスク(ハードマスクともいう)として用いて第2の酸化物層114及びゲート絶縁層104を加工してもよい。いずれにしても、一つのフォトマスクを用いて第2の酸化物層114、ゲート絶縁層104、及びゲート電極105を加工できる。そのため、例えば実施の形態1の作製方法例1で例示した方法に対して、使用するフォトマスクを増やすことなく加工を行うことができる。
これ以降の工程は、実施の形態1を参酌できる。すなわち、上記と同様の方法を用いて絶縁層108、絶縁層109、電極106a及び電極106bを順次形成する。
以上の工程により、トランジスタ200を作製することができる(図12(D))。
なお、元素122を導入した後に、第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112を島状に加工し、その後第2の酸化物半導体層113を成膜して、当該第2の酸化物半導体層113を、上記第1の酸化物層111及び第1の酸化物半導体層112の端部を覆うように島状に加工してもよい。
また、元素122を導入した後に、第1の酸化物半導体層112のみを島状に加工し、その後第2の酸化物半導体層113を成膜して、当該第2の酸化物半導体層113及び第1の酸化物層111で第1の酸化物半導体層112を囲むように、当該第2の酸化物半導体層113及び第1の酸化物層111を島状に加工してもよい。
また、図11に示すトランジスタ210を作製する場合には、第2の酸化物半導体層113及びゲート絶縁層104の積層体と、ゲート電極105とを別々に加工することにより作製することができる。例えば、第2の酸化物半導体層113及びゲート絶縁層104の加工を行った後に、ゲート電極105となる導電膜を成膜し、ゲート電極105の加工を行う。または、第2の酸化物半導体層113、ゲート絶縁層104及びゲート電極105となる導電膜を成膜し、ゲート電極105の加工を行った後に、第2の酸化物半導体層113及びゲート絶縁層104の加工を行ってもよい。またその場合には、ハーフトーンマスク(グレートーンマスクともいう)を用いて加工してもよい。
以上が本作製方法例2についての説明である。
(実施の形態3)
本実施の形態では本発明の一態様の半導体装置の一形態として、上記実施の形態で例示したトランジスタを具備するインバータ及びコンバータ等の電力変換回路の構成例について説明する。
[DCDCコンバータ]
図14(A)に示すDCDCコンバータ501は、一例としてチョッパー回路を用いた、降圧型のDCDCコンバータである。DCDCコンバータ501は、容量素子502、トランジスタ503、制御回路504、ダイオード505、コイル506及び容量素子507を有する。
DCDCコンバータ501は、制御回路504によるトランジスタ503のスイッチング動作により動作する。DCDCコンバータ501により、入力端子IN1とIN2に印加される入力電圧V1は、出力端子OUT1とOUT2より降圧されたV2として負荷508に出力できる。DCDCコンバータ501が具備するトランジスタ503には、上記実施の形態で例示した半導体装置を適用することができる。そのため、スイッチング動作によって大きな出力電流を流すことができ、且つオフ電流を低減することができる。したがって消費電力が低減され、高速な動作が可能なDCDCコンバータを実現できる。
図14(A)では非絶縁型の電力変換回路の一例としてチョッパー回路を用いた降圧型のDCDCコンバータを示したが、他にもチョッパー回路を用いた昇圧型のDCDCコンバータ、チョッパー回路を用いた昇圧降圧型のDCDCコンバータが具備するトランジスタにも上記実施の形態で例示した半導体装置を適用することができる。そのため、スイッチング動作によって大きな出力電流を流すことができ、且つオフ電流を低減することができる。したがって消費電力が低減され、高速な動作が可能なDCDCコンバータを実現できる。
次いで図14(B)に示すDCDCコンバータ511は、一例として絶縁型の電力変換回路であるフライバックコンバータの回路構成例を示す。DCDCコンバータ511は、容量素子512、トランジスタ513、制御回路514、一次コイル及び二次コイルを具備する変圧器515、ダイオード516及び容量素子517を有する。
図14(B)に示すDCDCコンバータ511は、制御回路514によるトランジスタ513のスイッチング動作により動作する。DCDCコンバータ511により、入力端子IN1とIN2に印加される入力電圧V1は、出力端子OUT1とOUT2より昇圧または降圧されたV2として負荷518に出力できる。DCDCコンバータ511が具備するトランジスタ513には、上記実施の形態で例示した半導体装置を適用することができる。そのため、スイッチング動作によって大きな出力電流を流すことができ、且つオフ電流を低減することができる。したがって消費電力が低減され、高速な動作が可能なDCDCコンバータを実現できる。
なお、フォワード型のDCDCコンバータが具備するトランジスタにも上記実施の形態で例示した半導体装置を適用することができる。
図15に示すインバータ601は、一例としてフルブリッジ型のインバータである。インバータ601は、トランジスタ602、トランジスタ603、トランジスタ604、トランジスタ605、及び制御回路606を有する。
図15に示すインバータ601は、制御回路606によるトランジスタ602乃至605のスイッチング動作により動作する。入力端子IN1とIN2に印加される直流電圧V1は、出力端子OUT1とOUT2より交流電圧V2として出力することができる。インバータ601が具備するトランジスタ602乃至605には、上記実施の形態で例示した半導体装置を適用することができる。そのため、スイッチング動作により大きな出力電流を流すことができ、且つオフ電流を低減することができる。したがって消費電力が低減され、高速な動作が可能なインバータとすることができる。
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では本発明の一態様の半導体装置の一形態として、上記実施の形態で例示したトランジスタを具備する電源回路の構成例について説明する。
図16に、本発明の一態様に係る電源回路400の構成を、一例として示す。図16に示す電源回路400は、制御回路413と、パワースイッチ401と、パワースイッチ402と、電圧調整部403と、を有する。
電源回路400には、電源416から電圧が供給されており、パワースイッチ401及びパワースイッチ402は、電圧調整部403への上記電圧の入力を制御する機能を有する。
なお、電源416から出力される電圧が交流電圧である場合、図16に示すように、電圧調整部403への第1電位の入力を制御するパワースイッチ401と、電圧調整部403への第2電位の入力を制御するパワースイッチ402とを、電源回路400に設ける。電源416から出力される電圧が直流電圧である場合、図16に示すように、電圧調整部403への第1電位の入力を制御するパワースイッチ401と、電圧調整部403への第2電位の入力を制御するパワースイッチ402とを、電源回路400に設けてもよいし、或いは、第2電位を接地電位とし、電圧調整部403への第2電位の入力を制御するパワースイッチ402を設けずに、電圧調整部403への第1電位の入力を制御するパワースイッチ401を電源回路400に設けてもよい。
そして、本発明の一態様では、パワースイッチ401及びパワースイッチ402として、耐圧性の高いトランジスタを用いる。例えば上記トランジスタとして、実施の形態1で例示したトランジスタを用いることができる。
パワースイッチ401及びパワースイッチ402として、上記結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いることにより、高い出力電流を流すことが可能で、且つ耐圧を高めることができる。
上記トランジスタ材料を活性層に用いた電界効果トランジスタを、パワースイッチ401またはパワースイッチ402に用いることで、炭化珪素や窒化ガリウムなどを活性層に用いた電界効果トランジスタよりも、パワースイッチ401またはパワースイッチ402のスイッチングを高速にすることができ、それにより、スイッチングに起因する電力損失を小さく抑えることができる。
電圧調整部403は、パワースイッチ401及びパワースイッチ402を介して電源416から電圧が入力されると、当該電圧の調整を行う機能を有する。具体的に、電圧調整部403における電圧の調整とは、交流電圧を直流電圧に変換すること、電圧の高さを変えること、電圧の高さを平滑化すること、のいずれか一つまたは複数を含む。
電圧調整部403において調整された電圧は、負荷417と制御回路413に与えられる。
また、図16に示す電源回路400では、蓄電装置404と、補助電源405と、電圧発生回路406と、トランジスタ407乃至トランジスタ410と、容量素子414と、容量素子415とを有する。
蓄電装置404は、電圧調整部403から与えられた電力を、一時的に蓄える機能を有する。具体的に蓄電装置404は、電圧調整部403から与えられた電圧を用いて、電力を蓄えることができるキャパシタ、二次電池などの蓄電部を有する。
補助電源405は、蓄電装置404から出力が可能な電力が不足しているときに、制御回路413の動作に要する電力を、補う機能を有する。補助電源405として、一次電池などを用いることができる。
電圧発生回路406は、蓄電装置404または補助電源405から出力される電圧を用いて、パワースイッチ401及びパワースイッチ402のスイッチングを制御するための電圧を、生成する機能を有する。具体的に電圧発生回路406は、パワースイッチ401及びパワースイッチ402をオンにするための電圧を生成する機能と、パワースイッチ401及びパワースイッチ402をオフにするための電圧を生成する機能とを有する。
無線信号入力回路411は、トランジスタ407乃至トランジスタ410のスイッチングに従ってパワースイッチ401及びパワースイッチ402を制御する機能を有する。
具体的に、無線信号入力回路411は、外部から与えられる、パワースイッチ401及びパワースイッチ402の動作状態を制御するための無線信号に重畳した命令を電気信号に変換する入力部と、上記電気信号に含まれる命令をデコードし、トランジスタ407乃至トランジスタ410のスイッチングを、上記命令に従って制御するための信号を生成する信号処理部と、を有する。
トランジスタ407乃至トランジスタ410は、無線信号入力回路411において生成された信号に従って、スイッチングを行う。具体的に、トランジスタ408及びトランジスタ410がオンであるとき、電圧発生回路406で生成された、パワースイッチ401及びパワースイッチ402をオンにするための電圧が、パワースイッチ401及びパワースイッチ402に与えられる。また、トランジスタ408及びトランジスタ410がオフであるとき、パワースイッチ401及びパワースイッチ402に、パワースイッチ401及びパワースイッチ402をオンにするための上記電圧が与えられた状態が、維持される。また、トランジスタ407及びトランジスタ409がオンであるとき、電圧発生回路406で生成された、パワースイッチ401及びパワースイッチ402をオフにするための電圧が、パワースイッチ401及びパワースイッチ402に与えられる。また、トランジスタ408及びトランジスタ410がオフであるとき、パワースイッチ401及びパワースイッチ402に、パワースイッチ401及びパワースイッチ402をオフにするための上記電圧が与えられた状態が、維持される。
そして、本発明の一態様では、上記電圧がパワースイッチ401及びパワースイッチ402に与えられた状態を維持するために、トランジスタ407乃至トランジスタ410に、オフ電流の著しく小さいトランジスタを用いる。上記構成により、電圧発生回路406において、パワースイッチ401及びパワースイッチ402の動作状態を定めるための電圧の生成を停止しても、パワースイッチ401及びパワースイッチ402の動作状態を維持することができる。よって、電圧発生回路406における消費電力を削減し、延いては電源回路400における消費電力を小さく抑えることができる。
なお、トランジスタ407乃至トランジスタ410にバックゲートを設け、バックゲートに電位を与えることにより、トランジスタ407乃至トランジスタ410の閾値電圧を制御してもよい。
バンドギャップがシリコンの2倍以上であるワイドギャップ半導体を活性層に用いたトランジスタは、オフ電流が著しく小さいので、トランジスタ407乃至トランジスタ410に用いるのに好適である。上記ワイドギャップ半導体として、例えば、酸化物半導体などを用いることができる。
なお、電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物が低減され、なおかつ酸素欠損が低減されることにより高純度化された酸化物半導体(purified OS)は、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い。そのため、水分または水素などの不純物濃度が十分に低減され、なおかつ酸素欠損が低減されることにより高純度化された酸化物半導体膜を用いることにより、トランジスタのオフ電流を小さくすることができる。よって、高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタを、トランジスタ407乃至トランジスタ410に用いることで、電圧発生回路406における消費電力を削減し、電源回路400における消費電力を小さく抑える効果を高めることができる。
具体的に、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタのオフ電流が小さいことは、いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×106μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。この場合、オフ電流をトランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電流は、100zA/μm以下であることが分かる。また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入または容量素子から流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行った。当該測定では、上記トランジスタに高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用い、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測定した。その結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、数十yA/μmという、さらに小さいオフ電流が得られることが分かった。従って、高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、オフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく小さい。
また、酸化物半導体の中でもIn−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物などは、炭化シリコンまたは窒化ガリウムと異なり、スパッタリング法や湿式法により電気的特性の優れたトランジスタを作製することが可能であり、量産性に優れるといった利点がある。また、炭化シリコンまたは窒化ガリウムとは異なり、上記酸化物半導体In−Ga−Zn系酸化物は室温でも成膜が可能なため、ガラス基板上への成膜、或いはシリコンを用いた集積回路上に電気的特性の優れたトランジスタを作製することが可能である。また、基板の大型化にも対応が可能である。
容量素子414は、トランジスタ407及びトランジスタ408がオフであるとき、パワースイッチ401に与えられている電圧を、保持する機能を有する。また、容量素子415は、トランジスタ409及びトランジスタ410がオフであるとき、パワースイッチ402に与えられている電圧を、保持する機能を有する。容量素子414及び415の一対の電極の一方は、無線信号入力回路411に接続される。なお、図17に示すように、容量素子414及び415を設けなくてもよい。
そして、パワースイッチ401及びパワースイッチ402がオンであるとき、電源416から電圧調整部403への電圧の供給が行われる。そして、上記電圧により、蓄電装置404には電力が蓄積される。
また、パワースイッチ401及びパワースイッチ402がオフであるとき、電源416から電圧調整部403への電圧の供給が停止する。よって、蓄電装置404への電力の供給は行われないが、本発明の一態様では、上述したように、蓄電装置404または補助電源405に蓄えられている電力を用いて、制御回路413を動作させることができる。すなわち、本発明の一態様に係る電源回路400では、制御回路413によるパワースイッチ401及びパワースイッチ402の動作状態の制御を行いつつ、電圧調整部403への電圧の供給を停止することができる。そして、電圧調整部403への電圧の供給を停止することで、負荷417への電圧の供給が行われないときに、電圧調整部403が有する容量の充放電により電力が消費されるのを防ぐことができ、それにより、電源回路400の消費電力を小さく抑えることができる。
(実施の形態5)
本発明の一態様に係る半導体装置(電力変換回路、電源回路などを含む)は、機器への電力の供給を制御するのに適しており、特に大きな電力が必要な機器に好適に用いることができる。例えば、モーターなどの電力によりその駆動が制御される駆動部を備える機器や、電力により加熱または冷却を制御する機器などに好適に用いることができる。
本発明の一態様に係る半導体装置を用いることのできる電子機器として、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)などがある。その他に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、扇風機、ドライヤー、エアコンディショナーなどの空調設備、エレベータやエスカレータなどの昇降設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、電動ミシン、電動工具、半導体試験装置、などが挙げられる。また、本発明の一態様に係る半導体装置は、電力を用いて電動機により推進する移動体に用いられていてもよい。上記移動体には、自動車(自動二輪車、三輪以上の普通自動車)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、航空機、船舶、鉄道車両などが、その範疇に含まれる。また、食品、家電製品、上記移動体、鉄鋼、半導体機器、土木、建築、建設などのあらゆる分野で用いられる産業用ロボットの駆動の制御に用いることもできる。
以下では、電子機器の具体例を図18に示す。
図18(A)は電子レンジ1400であり、筐体1401と、被処理物を載置するための処理室1402と、表示部1403と、操作盤などの入力装置1404と、筐体1401の内部に設置されている高周波発生装置から発生した電磁波を、処理室1402に供給する照射部1405とを、有する。
本発明の一態様に係る半導体装置は、例えば、高周波発生装置への電力の供給を制御する電源回路に用いることができる。
図18(B)は洗濯機1410であり、筐体1411と、筐体1411内に設けられた洗濯槽の入り口を、開閉させる開閉部1412と、操作盤などの入力装置1413と、洗濯槽の給水口1414とを、有する。
本発明の一態様に係る半導体装置は、例えば、洗濯槽の回転を制御するモーターへの電力の供給を制御する回路に用いることができる。
図18(C)は、電気冷凍冷蔵庫の一例である。図18(C)に示す電子機器は、筐体1451と、冷蔵室用扉1452と、冷凍室用扉1453と、を備える。
図18(C)に示す電子機器は、筐体1451の内部に本発明の一態様である半導体装置を有する。上記構成にすることにより、例えば、筐体1451内部の温度に応じて、または冷蔵室用扉1452及び冷凍室用扉1453の開閉に従って、筐体1451内の半導体装置に対する電源電圧の供給を制御できる。
図18(D)は、エアコンディショナーの一例である。図18(D)に示す電子機器は、室内機1460及び室外機1464により構成される。
室内機1460は、筐体1461と、送風口1462と、を備える。
図18(D)に示す電子機器は、筐体1461の内部に本発明の一態様である半導体装置を有する。上記構成にすることにより、例えば、リモートコントローラからの信号に従って、または室内の温度や湿度に応じて、筐体1461内の半導体装置に対する電源電圧の供給を制御できる。
また、本発明の一態様の半導体装置は、室外機1464が有するファンの回転を制御するモーターへの電力の供給を制御する回路にも用いることができる。
なお、図18(D)では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有するエアコンディショナーであってもよい。
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
本実施例では、酸化物積層のバンド構造について調べた。
[エネルギーギャップ]
まず、酸化物半導体膜に対してイオン注入を異なる条件で行った試料を作製し、それぞれの試料に対してエネルギーギャップを測定した。
〔試料の作製〕
試料の基板として石英基板を用いた。基板表面上に厚さ約100nmの酸化物半導体膜を成膜した。酸化物半導体膜の成膜は、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]である多結晶のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法を用いた。
続いて、酸化物半導体膜に対して、イオン注入法を用いてリンの注入を行った。リンの注入は、加速電圧を10kV、20kV、及び30kVの3条件とし、リンのドーズ量を1×1012cm−2、1×1013cm−2、1×1014cm−2、5×1014cm−2、1×1015cm−2、3×1015cm−2、5×1015cm−2の7条件とした。
〔エリプソメトリーによる評価〕
作製した各試料に対して、エリプソメトリー法によりバンドギャップを算出した。ここで、酸化物半導体膜としては、基板側からリンのドープされていない第1層(L1)とリンのドープされた第2層(L2)の積層構造を仮定した。イオン注入の条件と第2層(L2)の厚さの関係を図21の上段に、またイオン注入の条件と第2層(L2)のバンドギャップの関係を図21の下段にそれぞれ示す。
なお、図21の下段の各図中に示す破線は、リンの注入を行っていない試料におけるバンドギャップ(3.22eV)を示している。
図21の上段より、加速電圧が高いほど、また注入量が多いほど、リンがドープされ低抵抗化した領域が深さ方向に広がる傾向があることが確認できた。
図21の下段より、注入量が多いほどバンドギャップが小さくなる傾向があることが確認できた。また加速電圧が低いほど深さ方向の分布小さくなり、その結果注入量に対するバンドギャップの変化量が大きい傾向があることが分かった。
[バンド構造]
以下では、上記とは異なる試料を作製し、紫外光電子分光法(UPS)を用いて評価した。
〔試料の作製〕
試料の基板として、シリコンウェハを用いた。まず、シリコン基板上の酸化膜を希フッ酸により除去したあと、シリコン基板上に厚さ約10nmの第1の酸化物膜、及び厚さ約25nmの第1の酸化物半導体膜を連続して成膜した。第1の酸化物膜の成膜はIn:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]である多結晶のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法を用いた。第1の酸化物半導体膜の成膜は、上記と同様に行った。
続いて、第1の酸化物半導体膜に対し、イオン注入法によりリンを注入した。リンの注入は、加速電圧を10kVとし、リンのドーズ量を1×1014cm−2の条件で行った。
続いて、厚さ約10nmの第2の酸化物半導体膜、及び厚さ約10nmの第2の酸化物膜を連続して成膜した。第2の酸化物半導体膜の成膜は、上記第1の酸化物半導体膜の成膜と同様に行い、第2の酸化物膜の成膜は、上記第1の酸化物膜の成膜と同様に行った。
〔UPSによる評価〕
作製した試料について、UPSを用いて真空準位と価電子帯上端のエネルギー差(イオン化ポテンシャルともいう。)を測定した。測定は、試料表面からスパッタリング法によりエッチングしながら行うことで、イオン化ポテンシャルの深さ方向の分布を調べた。
図22に、UPSによって求めたスパッタ時間に対する真空準位と価電子帯上端のエネルギー差(Ev)を示す。また図22に示す破線は、Evの値から推定した、各膜の境界を示している。
また図22には、当該Evと、上記エリプソメトリー法によって求めたバンドギャップの値とを用いて算出した真空準位と伝導帯下端のエネルギー差(Ec)を示している。ここで、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]である多結晶のスパッタリングターゲットを用いて成膜した膜(IGZO(111)と表記する)についてはバンドギャップを3.22eVとし、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]である多結晶のスパッタリングターゲットを用いて成膜した膜(IGZO(132)と表記する)についてはバンドギャップを3.50eVとした。
図22に示すように、UPSによって求めたIGZO(111)内の真空準位と価電子帯上端のエネルギー差(Ev)は、リンの注入の有無に寄らず、ほぼ一定の値(約8.0eV)であった。
また、図22に示すように、真空準位と伝導帯下端エネルギー差(Ec)は、IGZO(132)が最も小さく、次いでIGZO(111)、リンを注入したIGZO(111)の順に大きいことが確認できた。ここでIGZO(132)とIGZO(111)の伝導帯下端のエネルギーの差は約0.28eVであり、IGZO(111)とリンを注入したIGZO(111)の伝導帯下端のエネルギーの差は約0.24eVであった。
以上の結果から、本発明の一態様の酸化物積層が2段階のウェルを有することが確認できた。
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。