JP5687070B2 - 人工心臓弁用のステント - Google Patents

Description

本発明は、人工心臓弁に関する。本発明は、詳細には、人工心臓弁を経皮的に移植する器具、方法及び運搬システムに関する。

〔関連出願の説明〕
本願は、２００８年１月２４日に出願された米国特許仮出願第６１／０６２，２０７号（発明の名称：Delivery Systems and Methods of Implantation for Prosthetic Heart Valves）及び２００８年６月２６日に出願された米国特許仮出願第６１／０７５，９０２号（発明の名称：Heart Valve）の優先権主張出願であり、これらの米国特許仮出願を参照により援用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。

多種多様な形式の心臓弁手術を利用して疾患のある又は欠陥のある心臓弁を修復し又は交換することができる。典型的な心臓弁手術は、全身麻酔下で行われる直視下心臓手術（開心術）を含み、このような手術の実施中、血液の流れを心肺バイパス器械により制御しながら心臓を停止させる。この種の心臓弁手術は、侵襲性が非常に高く、患者に多くの潜在的に重篤な危険、例えば感染、発作、腎不全及び例えば心肺バイパス器械の使用と関連した副作用にさらす。

最近、心臓弁の低侵襲経皮置換の関心が高まっている。このような手術では、患者の皮膚に極めて小さな開口部を作り、弁組立体をこの開口部を経て体内に挿入し、そしてカテーテルに類似した運搬器具により心臓まで運搬する。このような技術は、侵襲形態の手術、例えば上述の直視下心臓手術に対して好ましい場合が多い。肺動脈弁置換に関し、米国特許出願公開第２００３／０１９９９７１（Ａ１）号明細書及び同第２００３／０１９９９６３（Ａ１）号明細書（両方とも出願人は、タワー等（Tower, et al.））は、拡張型ステント内に設けられ、置換用肺動脈弁として用いられるウシの頸動脈の弁付きセグメントを記載している。置換用弁は、バルーンカテーテルに取り付けられ、血管系を経て経皮的に傷害のある肺動脈弁の存在場所まで運搬され、そしてバルーンによって拡張されて弁葉状片（葉片ともいう）を右心室流出路に押し付け、置換用弁を繋留すると共にこれを密封する。ボーンヘッファー等（Bonhoeffer, et al.）著，「パーキュタネオス・インサーション・オブ・ザ・プルモナリー・バルブ（Percutaneous Insertion of the Pulmonary Valve）」，ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー（Journal of the American College of Cardiology），２００２年，第３９号，ｐ．１６６４〜１６６９及びボーンヘッファー等（Bonhoeffer, et al.）著，「トランスカテーテル・リプレイスメント・オブ・ア・ボバイン・バルブ・イン・プルモナリー・ポジション（Transcatheter Replacement of a Bovine Valve in Pulmonary Position）」，サーキュレーション（Circulation），２０００年，第１０２号，ｐ．８１３〜８１６に記載されているように、置換用肺動脈弁を埋め込んで、これが弁付き導管内に位置する生まれつきの肺動脈弁又は人工肺動脈弁に取って代わるようにすることができる。

人工心臓弁の種々の形式及び形態は、疾患のある生まれつきのヒトの心臓弁に取って代わるよう経皮的弁手技に用いられる。任意特定の人工心臓弁の実際の形状及び形態は、或る程度、置換されるべき弁（即ち、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁又は肺動脈弁）で決まる。一般に、人工心臓弁は、設計上、置換されるべき弁の機能を再現するようになっており、バイオプロテーゼ又は機械式人工心臓弁に用いられる弁葉状片様構造体を有する。換言すると、置換用弁は、ステント付き弁を構成するよう拡張型ステント内に何らかの仕方で設けられる弁付き静脈セグメントを有する場合がある。経皮移植用のこのような弁を調製するため、ステント付き弁を最初に拡張又は非圧着状態で用意するのが良く、次に、これができるだけカテーテルの直径に近くなるまでカテーテルのバルーン部分周りに圧着し又は圧縮するのが良い。

全体として同様な形態をもつ他の経皮運搬型人工心臓弁が、例えばボーンヘッファー・ピー等（Bonhoeffer, P. et al.）著，「トランスカテーテル・インプランテーション・オブ・ア・ボバイン・バルブ・イン・プルモナリー・ポジション（Transcatheter Implantation of a Bovine Valve in Pulmonary Position）」，サーキュレーション（Circulation），２００２年，第１０２号，ｐ．８１３〜８１６及びクリビエル・エー等（Cribier, A. et al.）著，「パーキュタネオス・トランスカテーテル・インプランテーション・オブ・アン・エオルティック・バルブ・プロステーシス・フォー・カルシフィック・エオルティック・ステノーシス（Percutaneous Transcatheter Implantation of an Aortic Valve Prosthesis for Calcific Aortic Stenosis）」，サーキュレーション（Circulation），２００２年，第１０６号，ｐ．３００６〜３００８によって示唆された。なお、これら２つの非特許文献を参照により援用し、その開示内容を本明細書の一部とする。これら技術は、少なくとも部分的に、運搬されたプロテーゼの位置を維持するために拡張状態の支持構造体と生まれつきの組織との摩擦形式の係合を利用している。ただし、ステントは、ステント及びステントを拡張するために用いられる場合のあるバルーンによってもたらされる半径方向力に応答して周りの組織中に少なくとも部分的に埋め込み状態になる場合もある。かくして、これら経カテーテル技術では、人工心臓弁を患者の生まれつきの組織に従来のように縫い付けることは、不要である。同様に、ボーンヘッファー・ピー等（Bonhoeffer, P. et al.）著，「パーキュタネオス・インサーション・オブ・ザ・プルモナリー・バルブ（Percutaneous Insertion of the Pulmonary Valve）」，ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー（J Am Coll Cardiol），２００２年，第３９号，ｐ．１６６４〜１６６９には、生物学的弁の経皮運搬が記載されており、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容を本明細書の一部とする。弁を先に埋め込んだ弁付き又は非弁付き導管又は先に埋め込んだ弁内で拡張型ステントに縫着する。この場合も又、補助弁ステントの半径方向拡張が置換用弁の配置及び維持のために用いられる。

米国特許出願公開第２００３／０１９９９７１（Ａ１）号明細書 米国特許出願公開第２００３／０１９９９６３（Ａ１）号明細書

ボーンヘッファー等（Bonhoeffer, et al.）著，「パーキュタネオス・インサーション・オブ・ザ・プルモナリー・バルブ（Percutaneous Insertion of the Pulmonary Valve）」，ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー（Journal of the American College of Cardiology），２００２年，第３９号，ｐ．１６６４〜１６６９ ボーンヘッファー等（Bonhoeffer, et al.）著，「トランスカテーテル・リプレイスメント・オブ・ア・ボバイン・バルブ・イン・プルモナリー・ポジション（Transcatheter Replacement of a Bovine Valve in Pulmonary Position）」，サーキュレーション（Circulation），２０００年，第１０２号，ｐ．８１３〜８１６ ボーンヘッファー・ピー等（Bonhoeffer, P. et al.）著，「トランスカテーテル・インプランテーション・オブ・ア・ボバイン・バルブ・イン・プルモナリー・ポジション（Transcatheter Implantation of a Bovine Valve in Pulmonary Position）」，サーキュレーション（Circulation），２００２年，第１０２号，ｐ．８１３〜８１６ クリビエル・エー等（Cribier, A. et al.）著，「パーキュタネオス・トランスカテーテル・インプランテーション・オブ・アン・エオルティック・バルブ・プロステーシス・フォー・カルシフィック・エオルティック・ステノーシス（Percutaneous Transcatheter Implantation of an Aortic Valve Prosthesis for Calcific Aortic Stenosis）」，サーキュレーション（Circulation），２００２年，第１０６号，ｐ．３００６〜３００８ ボーンヘッファー・ピー等（Bonhoeffer, P. et al.）著，「パーキュタネオス・インサーション・オブ・ザ・プルモナリー・バルブ（Percutaneous Insertion of the Pulmonary Valve）」，ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー（J Am Coll Cardiol），２００２年，第３９号，ｐ．１６６４〜１６６９

弁置換技術及び器械において技術進歩が見られたが、低侵襲且つ経皮的な仕方で移植可能な心臓弁の種々の設計を提供することが引き続き要望されている。さらに、弁を埋め込んだ後に移動に対して抵抗する弁を提供することが望ましい。

本発明の置換用心臓弁は各々、弁構造体が取り付けられたステントを有する。本発明のステントは、多種多様な構造体及び単独で又は本発明の他のステントの特徴と組み合わせて使用できる特徴を有する。構造体の多くは、経皮的に患者の心臓まで運搬可能な比較的小さな直径まで圧縮可能であり、次に、外部圧縮力（例えば、自己拡張型ステント）の取り外しか外方半径方向力（例えば、バルーン拡張型ステント）の利用によるかのいずれかにより拡張可能である。本明細書において説明する運搬システムにより運搬される器具を用いると、ステント、バルブ付きステント又は他のインターベンション器具、例えばＡＳＤ（心房中隔欠損）閉鎖器具、ＶＳＤ（心室中隔欠損）閉鎖器具又はＰＦＯ（卵円孔開存）閉塞具を運搬することができる。

本発明の置換用心臓弁の挿入方法は、ステント構造体をこれらの挿入中、これらの圧縮状態に維持し、ステント構造体がいったんこれらの所望の配置場所に位置すると、ステント構造体が拡張することができ又はステント構造体を拡張させることができる運搬システムの用意を含む。さらに、本発明の運搬方法は、ステントをステント運搬システムから配備し又は部分的に配備した後、ステントをこれらの抜去又は再配置のために改修でき又は取り出すことができるようにする特徴部の用意を更に含むのが良い。これらの方法は、順行性方式が逆行性方式かのいずれかを用いてステント構造体の移植を含む。さらに、本発明の運搬方式の多くにおいて、ステント構造体は、ステント構造体を所望の向きに位置決めすることができるよう生体内で回転可能である。

本発明のステント構造体は、ワイヤ又は他の構造的要素の互いに対する構成により葉状片（葉片ともいう）摩耗に対する抵抗をもたらすことができる。他のステント構造体は、弁置換手技のために取り付けられた弁に使用されるワイヤ形状及び特徴のクラウン密度の減少及び種々の他の形態を提供することができる。

添付の図を参照して本発明を更に説明し、幾つかの図を通じて、同一の構造体は、同一の参照符号で示されている。

本発明のステントの一実施形態の正面図である。 本発明のステントの一実施形態の正面図である。 本発明のステントの一実施形態の正面図である。 本発明のステント実施形態の斜視図である。 別のステント実施形態の平面図である。 別のステント実施形態の正面図である。 別のステント実施形態の正面図である。 別のステント実施形態の斜視図である。 延長要素を有し、マンドレルに取り付けられたステント実施形態の斜視図である。 図９に示された形式のステントを運搬するために使用できる例示の運搬システムの正面図である。 ３つの連続した運搬ステップを含む図９に示されている形式のステントを運搬するための運搬システムの一部分の拡大正面図である。 大動脈内に位置決めされたステントの概略正面図である。 心臓血管内に位置決めされた１つのステント実施形態の斜視図である。 心臓血管内に位置決めされた別のステント実施形態の斜視図である。 心臓血管内に位置決めされた別のステント実施形態の斜視図である。 心臓血管内に位置決めされた別のステント実施形態の斜視図である。 ステント実施形態の正面図である。 ステント実施形態の正面図である。 図２０のステントの平面図である。 心臓血管内に位置決めされた図２０のステントの概略正面図である。 別のステント実施形態の正面図である。 図２３のステントの側面図である。 マンドレルに取り付けられた図２３のステントの斜視図である。 心臓血管の略図に対して位置決めされた図２３のステントの平面図であり、ステントがその内側部分内に葉状片を有している状態を示す図である。 図２３のステントの平面図である。 心臓内に位置決めされた図２３のステントの平面側斜視図である。 マンドレルに取り付けられたステントの別の実施形態の正面図である。 図２９に示された形式のステントの中実モデルの正面図である。 図２９に示された形式のステントの中実モデルの斜視図である。 ステント実施形態の正面図である。 ステント実施形態の斜視図である。 本発明の弁付きステントの正面図である。 本発明の弁付きステントの正面図である。 心臓弁まで運搬されているステント組立体の概略正面図である。 心臓弁内に位置決めされたステント組立体の正面図である。 図３６及び図３７に示されたステント組立体の正面図である。 心臓血管内に位置決めされた長さＬのステント組立体の正面図である。 心臓内の解剖学的位置の略図に対して位置決めされた別のステント実施形態の平面図である。 別のステント実施形態の平面図である。 心室中隔及び僧帽弁器械に対して位置決めされた別のステントの平面図である。 追加のステント実施形態の斜視図である。 追加のステント実施形態の斜視図である。 追加のステント実施形態の斜視図である。 別のステント実施形態の正面図である。 心臓血管内に位置決めされたステント実施形態の概略正面図である。 心臓血管内に位置決めされたステント実施形態の概略正面図である。 心臓血管内に位置決めされたステント実施形態の概略正面図である。 心臓血管内に位置決めされたステント実施形態の概略正面図である。 分かりやすくするために切除された心臓弁の一部分に対して位置決めされた１つのステントの正面図である。 分かりやすくするために切除された心臓弁の一部分に対して位置決めされた別のステントの正面図である。 分かりやすくするために切除された心臓弁の一部分に対して位置決めされた別のステントの正面図である。 ステントフレーム内に取り付けられた弁の断面平面図である。

本明細書を参照して、種々の心臓弁運搬器具及び方法に従って用いられる人工心臓弁は、多種多様な形態、例えば組織葉状片を備えた人工心臓弁又はポリマー製、金属製又は組織工学的葉状片（leaflet ）を備えた人工心臓弁を含み、任意の心臓弁を置換するよう特別に形作られているのが良い。すなわち、本明細書の説明の大部分は大動脈弁の置換に関するが、本発明の人工心臓弁は又、一般に、生まれつきの僧帽弁、肺動脈弁又は三尖弁の置換に用いられ、静脈弁として用いられ、或いは、例えば大動脈弁又は僧帽弁の領域の障害のあるバイオプロテーゼを置換するよう使用できる。

本明細書において説明する運搬器具及び方法に用いられる弁の各々は、代表的には、ステントの内部領域内に取り付けられる葉状片（リーフレット）を有するが、葉状片は、分かりやすくする目的で図示の実施形態の多くには示されていない。一般に、本明細書において説明するステントは、心臓弁に所望の圧縮性、所望の強度及び葉状片取り付けゾーンを提供するよう互いに対して配置された多数本のストラット又はワイヤ部分を含む支持構造体を有する。本発明のステントの特定の形態に関する他の詳細についても以下に説明されるが、一般的に言って、本発明のステントは、全体として管状の支持構造体であり、葉状片は、弁付きステントを提供するよう支持構造体に固定される。葉状片を種々の材料、例えば当該技術分野において知られている自己由来組織、異種移植材料又は合成物から作ることができる。葉状片は、同種生物学的弁構造体、例えばブタ、ウシ又はウマの弁として提供されるのが良い。変形例として、葉状片は、互いに別個独立に提供され（例えば、ウシ又はウマの心膜葉状片）次にステントの支持構造体に組み付けられても良い。別の変形例では、ステント及び葉状片は、同時に製作されても良く、例えば、このような製作は、例えばテキサス州サンアントニオ所在のアドバンスト・バイオ・プロスセティック・サーフェシス・リミテッド（Advanced Bio Prosthetic Surfaces Ltd.：ＡＢＰＳ）により製造された形式の高強度超微細加工ＮｉＴｉフィルムを用いて達成できる。支持構造体は、一般に、３つの葉状片に対応するよう構成されるが、本明細書において説明する人工心臓弁は、４つ以上又は２つ以下の葉状片を備えることができる。

より一般的に言って、支持構造体と１つ又は２つ以上の葉状片の組み合わせは、図示すると共に本明細書において説明する形態とは異なる種々の他の形態を取ることができ、このような形態としては、任意公知の設計の人工心臓弁が挙げられる。本発明の或る特定の実施形態では、葉状片を備えた支持構造体は、任意公知の拡張型構成の人工心臓弁であって良く、これは、バルーン拡張型であれ、自己拡張型であれ、或いは拡開型（unfurling）であれいずれであっても良い（例えば、米国特許第３，６７１，９７９号明細書、同第４，０５６，８５４号明細書、同第４，９９４，０７７号明細書、同第５，３３２，４０２号明細書、同第５，３７０，６８５号明細書、同第５，３９７，３５１号明細書、同第５，５５４，１８５号明細書、同第５，８５５，６０１号明細書及び同第６，１６８，６１４号明細書、米国特許出願公開第２００４／００３４４１１号明細書、ボーンヘッファー・ピー等（Bonhoeffer, P. et al.）著，「パーキュタネオス・インサーション・オブ・ザ・プルモナリー・バルブ（Percutaneous Insertion of the Pulmonary Valve）」，ペディアトリック・カーディオロジー（Pediatric Cardiology），２００２年，第３９号，ｐ．１６６４〜１６６９、アンダーソン・エイチ・アール等（Anderson H R, et al.）著，「トランスルミナル・インプランテーション・オブ・アーティフィシャル・ハート・バルブス（Transluminal Implantation of Artificial Heart Valves）」，ヨーロピアン・ハート・ジャーナル（EUR Heart J.），１９９２年，第１３号，ｐ．７０４〜７０８、アンダーソン・ジェイ・アール等（Anderson, J. R., et al.）著，「トランスルミナル・カテーテル・インプランテーション・オブ・ニュー・エクスパンダブル・アーティフィシャル・カーディアック・バルブ（Transluminal Catheter Implantation of New Expandable Artificial Cardiac Valve），ヨーロピアン・ハート・ジャーナル（EUR Heart J.），１９９０年，第１１号，（サプレメント）２２４ａ、フーバート・エス・エル（Hubert S. L.）著，「エバリュエーション・オブ・エクスプランテッド・ポリウレタン・トリリーフレット・カーディアック・バルブ・プロステーシス（Evaluation of Explanted Polyurethane Trileaflet Cardiac Valve Prosthesis）」，ジャーナル・オブ・トラシック・アンド・カーディオバスキュラー・サージェリー（J Thorac Cardiovascular Surgery），１９８９年，第９４号，ｐ．４１９〜４２９、ブロック・ピー・シー（Block P C）著，「クリニカル・アンド・ホモダイナミック・フォローアップ・アフター・パーキュタネオス・エオルティック・バルブロプラスティ・イン・ジ・エルダリー（Clinical and Hemodyamic Follow-Up After Percutaneous Aortic Valvuloplasty in the Elderly）」，ジ・アメリカン・ジャーナル・オブ・カーディオロジー（The American Journal of Cardiology），第６２巻，１９９８年１０月１日、ボージェムリン・ワイ（Boudjemline, Y.）著，「ステップス・トゥワード・パーキュタネオス・エオルティック・バルブ・リプレースメント（Steps Toward Percutaneous Aortic Valve Replacement）」，サーキュレーション（Circulation），２００２年，第１０５号，ｐ．７７５〜７７８、ボーンヘッファー・ピー（Bonhoeffer, P.）著，「トランスカテーテル・インプランテーション・オブ・ア・ボバイン・バルブ・イン・プルモナリー・ポジション，ア・ラム・スタディ（Transcatheter Implantation of a Bovine Valve in Pulmonary Position, a Lamb Study）」，サーキュレーション（Circulation），２０００年，第１０２号，ｐ．８１３〜８１６、ボージェムリン・ワイ（Boudjemline, Y.）著，「パーキュタネオス・インプランテーション・オブ・ア・バルブ・イン・ザ・ディセンディング・エオルタ・イン・ラムズ（Percutaneous Implantation of a Valve in the Descending Aorta In Lambs）」，ヨーロピアン・ハート・ジャーナル（EUR Heart J），２００２年，第２３号，ｐ．１０４５〜１０４９、クルキンスキー・ディー（Kulkinski, D.）著，「フューチャー・ホライゾンズ・イン・サージカル・エオルティック・バルブ・リプレースメント：レッスンズ・ラーンド・ドゥーリング ・ジ・アーリー・ステージズ・オブ・ディベロッピング・ア・トランスルミナル・インプランテーション・テクニーク（Future Horizons in Surgical Aortic Valve Replacement: Lessons Learned During the Early Stages of Developing a Transluminal Implantation Technique）」，エーエスエーアイオー・ジャーナル（ASAIO J），２００４年，第５０号，ｐ．３６４〜３６８に記載されており、これら特許文献及び非特許文献を参照により引用し、これらの教示内容を本明細書の一部とする）。

本発明のステントの向き及び位置決めは、ステントの自動配向（例えば、ステント及び先に埋め込まれたステント又は弁構造体の特徴部相互間の干渉）によるか例えばＸ線透視視覚化技術を用いて達成できるステントの特徴部を解剖学的特徴部又は先のバイオプロテーゼ特徴部に整列させるステントの手動配向によるかのいずれかによって達成できる。例えば、本発明のステントを生まれつきの解剖学的構造に整列させる場合、ステントは、冠動脈を閉塞しないよう整列させられるべきであり、生まれつきの僧帽弁又は三尖弁は、前方葉状片及び／又は三角部／接合部（commissure）に対して整列させられるべきである。

本明細書において説明するステントの支持構造体の幾つかの実施形態は、押し潰し状態から拡張状態に移行可能であるよう配置された一連のワイヤ又はワイヤセグメントであるのが良い。幾つかの実施形態では、支持構造体を構成する多数本の個々のワイヤは、金属又は他の材料で形成可能である。これらワイヤは、支持構造体が内径が拡張状態における内径から大幅に減少した収縮状態への折り畳み又は圧縮を可能にするように配置される。弁が取り付けられたこのような支持構造体は、その押し潰し状態で、運搬器具、例えばバルーンカテーテルに嵌めた状態で取り付けられるのが良い。支持構造体は、所望時に例えばバルーンカテーテルの拡張によって支持構造体をその拡張状態に変化させることができるよう構成されている。このようなステントに用いられる運搬システムは、新たなステントをその所望の配置場所に正しく位置決めするために所与の度合いの回転及び軸方向配向性を備えることが必要である。

他の実施形態におけるステントの支持構造体のワイヤは、変形例として、圧縮及び外力の除去後に元の状態に拡張する形状記憶材料、例えばニッケルチタン合金（例えば、ニチノール）又は超高張力材料で作られても良い。この材料を用いた場合、支持構造体は、例えば熱、エネルギー等を加えることにより或いは外力（例えば、圧縮力）を除くことにより収縮状態から拡張状態に自己拡張可能である。この支持構造体は、ステントの構造を損傷することなく圧縮及び再拡張を繰り返すことができる。さらに、このような実施形態の支持構造体は、単一材料片からレーザ切断可能であり又は多種多様なコンポーネントから組み立て可能である。これらの形式のステント構造体に関し、用いることができる運搬システムの一例は、ステントを配備するまでステントを覆う引っ込み可能なシースを備えたカテーテルを有し、配備時点において、シースを引っ込めるとステントが拡張することができる。変形例として、本発明のステント構造体を移植するのに、従来型外科技術及び／又は低侵襲手術手技を用いても良い。このような場合、本発明のステントは、有利には、ステントを患者の体内の解剖学的場所に固定するのに必要な縫合糸の本数は比較的少なく又はゼロである場合がある。

次に図（幾つかの図を通じて、同一のコンポーネントは、同一の参照符号で示されている）を参照し、先ず最初に図１ないし図５を参照すると、これらの図は、それぞれ、各々がマンドレルに嵌めて位置決めされたステント１０，２０，３０，４０を示している。特に図１を参照すると、ステント１０は、１２個のクラウンを備えた第１の端部及び１２個のクラウンを備えた第２の端部１４を有している。第２の端部１４のステントクラウンの各々は、例えば運搬システム及び／又は組織弁に取り付け可能に使用できるループ又はアイレット１９を有している。第２の端部のクラウンの各々は、図示のようにループ又はクラウン１９を有し又はクラウンのほんの幾つかがこのようなループ又はアイレットを有することが想定される。ループ１９の寸法形状は、単一ステントに関して全て同一であっても良く、或いは、ループは、互いに異なる寸法及び／又は形状を有しても良い。ステント１０は、少なくとも１つの長手方向ポスト又は支柱１６を更に有し、これら長手方向ポストは、ステントの第１の端部１２に追加の安定性を提供することに加えてステントへの組織の取り付けのために使用できる。長手方向ポスト１６は、全体としてステント１０の環状領域に沿って延び、葉状片材料の取り付けを許容する高さを有している。即ち、ポスト１６の高さは、全体として、ステント１０のための所望の接合高さと同一である。図示のように、長手方向ポスト１６は、葉状片を葉状片接合部の垂直部分相互間に引き入れることができるほど十分な距離だけ互いに間隔を置いて位置した２本のバー又は垂直部分で構成されている。また、他のスカート材料部分及び／又は接合保護特徴部を垂直部分相互間の空間中に引き込むことができる。各ポスト１６の垂直部分相互間の空間は、図１に示されているように小刻みな段部１８を有するのが良く、これら段部は、例えば縫合のための繋留箇所を提供するのを役立ち、或いは、ポストは、図３のポスト１３２に関して示されているようにこのような段部を備えない場合があり、これについては、以下に詳細に説明する。段部１８が設けられる場合、段部は、全体として垂直ポストに垂直であっても良く、それにより、開口部の形状が全体として長方形になり、或いは、段部は、開口部は円形、楕円形又は別の選択された形状のものであるように異なる向きに差し向けられると共に形作られても良い。さらに、ポスト１６の垂直部分は、ステントワイヤの残部とは異なる材料で作られ又は異なる厚さを有しても良く且つ／或いはポストが流出側端部に補強状態の取り付けステント又は溶接部を備え、この領域に追加の強度をもたらしても良いことが注目される。

このステント１０では、ワイヤ構造体は、ポスト１６の一端部と第１の端部１２との間にのみ（このことをステントの大動脈観点と称する場合がある）、追加のワイヤ構造体は、ステントポストの他端部と第２の端部１４との間に延びている（このことをステントの心室観点と称する場合がある）。ステント１０は、弁の各接合のための１つの長手方向ポスト１６を有するのが良く、弁は、所望ならばこの長手方向ポストに取り付けられる。即ち、３葉状片形弁の場合、３つの長手方向ポスト１６が設けられる。

図２のステント２０は、全体として図１に関して上述した構成とほぼ同じ構成に配置された多数本のワイヤを有する。しかしながら、ステント２０は、第１の端部２２と第２の端部２４との間に位置し、ステントの第１の端部及び第２の端部の直径よりも直径が大きい中央球状領域を更に有する。球状領域は、ステントが患者の体内に位置決めされる解剖学的構造（例えば、大動脈弁洞領域）の輪郭に全体としてマッチするよう形作られるのが良い。第１の端部２２は、無外傷性であるが、これが患者の解剖学的構造との接触状態を失い又は後日別の器具（例えば、冠動脈カテーテル）の邪魔をするほど顕著ではないほどの量だけ内方に（即ち、ステントの中心軸線に向かって）フレア状になり又はラッパ状に広がっている。かくして、内方フレアは、図示のフレアよりも程度が小さくても良い。ただし、このフレアは、図示のフレアよりも程度が大きいことが可能である。さらに、第２の端部２４は、図示のように僅かに外方にフレア状になっている。ステント２０の第２の端部２４の（即ち、ステントの長手方向中心軸線から遠ざかったところの）このフレアは、埋め込まれた心臓弁と生まれつき備わっている弁輪との間の漏れを阻止し又は最小限に抑えることができると共に／或いは例えばステントの移動を阻止するためにステントを心臓内の欠陥又は開口部の壁に当てて固定する物理的及び／又は視覚的ドッキング特徴部を提供することができる。さらに、第２の端部２４は、隣接の解剖学的構造（例えば、僧帽弁前方葉状片又は左心室壁）の外傷を最小限に抑えるためにこのステントを大動脈領域内に埋め込んだときに有利な場合のある少なくとも僅かに内方の曲がり部（例えば、図３参照）を更に有するのが良い。この僅かな内方曲がり部は又、脚（bundle branch）の領域中の中隔に加わる圧力を最小限に抑えるのに役立つことができ、それにより、経カテーテル弁置換術の実施中又は実施後に不整脈又は心臓ブロックの潜在的発生の恐れを減少させることができる。

図３及び図４は、ステントの幾つかの部分に関して特定の所望の形状にマッチするよう「選択的に」フレア状になったステント３０，４０を示している。例えば、或る特定のステントワイヤは、置換用弁のステントと組織葉状片との間の潜在的な干渉を回避するよう外方にフレア状になっている。組織が取り付けられるステント特徴部は、全くフレア状になっていなくても良く、その結果、ステントは、比較的管状であり又はこれらワイヤは、これとは異なり、内方又は外方にフレア状になっても良い。ステント３０，４０は、それぞれ、ステントの隣接部分よりも直径が幾分大きな中央領域３４，４４を有している。ステント３０は、ステントへの組織の取り付けのために使用できる少なくとも１つの長手方向要素又は特徴部、例えば長手方向ポスト３２を更に有している。このようなポスト３２は、中央領域３４の他のステント要素と長手方向軸線から同一の距離に位置決めされても良く、或いは、長手方向ポストは、所望ならば中央領域３４の他のステント要素よりもステントの中心軸線の近くに位置し又はこれから一段と遠ざかったところに位置しても良い。ポストを中央領域３４の他のワイヤよりも中心軸線の近くに位置決めすることにより、新たな又は交換用弁のステント３０，４０の内部に位置決めされた動的葉状片の自由縁部は、弁葉状片が完全開放状態にあるとき、ステントポストに接触する可能性が低い。この接触の可能性の減少により、弁サイクル動作中における葉状片に対する摩耗の恐れを減少させることができる。ポストのワイヤを他のステントワイヤよりも長手方向中心軸線の近くに位置決めすることで得られる追加の利点は、接合部の応力が最小限に抑えられること及び冠動脈の灌流の維持が助けられることにある。これは、弁葉状片の後ろの冠動脈の流れが維持されるよう葉状片の開放度を制限することによって達成できる。ステントの最大外周部から内方にオフセットした取り付け箇所を備えるこれら形態の更に別の利点は、小さな組織弁を用いることができるということにあり、それにより、運搬システムの全体的経カテーテル圧着プロフィールが減少する。

弁葉状片に対する潜在的な摩耗の減少は、別法として、葉状片接合部を外周部ではなく、ステントの中央部の近くに締結することによって達成できる。図５４は、３つの葉状片４０２を備えた外側ステントフレーム４００の略図によりこのような構成を示しており、葉状片４０２は、各２つの隣り合う葉状片が葉状片接合領域４０４でステントフレーム４００に取り付けられるよう配置されている。接合領域４０４の３つの組をなす葉状片４０２の各々の別の締結箇所は、ステントフレーム４００の中央に向かって内方に内側締結箇所４０６までずらされている。このように、葉状片４０２が開放状態にあるとき、これら自由縁部を円又は内部領域４０８まで外方に動かすことしかできず、このことは、破線で概略的に示されている。図示のように、葉状片４０２がこの完全開放位置にある場合であっても、葉状片は、外側ステントフレーム４００に接触せず、それにより、弁葉状片に対する潜在的な摩耗が減少する。

ステント１０，２０，４０は各々、一端部に１２個のステントクラウンを提供すると共に反対側に６つのステントクラウンを提供するワイヤの構成を含み、ステント３０は、両方の端部に１２個のクラウンを有する。ステントの流出側端部に１２個のクラウンを有する実施形態の場合、この構成は、追加の強度をステント環状領域に与えて移動を阻止し、狭窄した生まれつきの弁オリフィスを開放し、更に、心膜葉状片をステントに取り付ける非常に多くの箇所を提供することができる。しかしながら、流出部に１２個未満の（例えば、６個の）クラウンを提供することが可能である。というのは、同一のステント強度は、必要な組織取り付け箇所が少ないので、この端部に必要ではないからである。これら図示のステントは、異なる数のステントクラウンを単一のステントの互いに反対側の端部に設けるというこの特徴を達成することができるワイヤの構成の幾つかであるに過ぎない。別の変形例では、１つのステントの端部の各々は、同一の数のステントクラウンを有するのが良いが、中央部分は、端部のいずれよりもワイヤの密度が大きくても良く又は小さくても良い。端部の１つに設けられるステントクラウンが少ないステントは、関連の運搬システムの使用を単純化することができる。というのは、ステントクラウンの数が少ない端部は、運搬システムに連結されることが必要なクラウンの数がこれに対応して少なくなるからである。

図５ないし図８は、追加のステント実施形態８０，６０，７０を示している。ステント６０は、図２のステント２０とほぼ同じ形状を有するが、ステント６０は、上端部に同一の数のステントクラウンを有するがステント２０のワイヤ構成例の一部である同一の長手方向ポストを備えてはいない。これとは異なり、ステント６０は、その全長に沿って全体として規則的な対角線方向十文字形（×字形）ワイヤパターンを有し、更に、一端部に多数のアイレット又はフック６２を有している。第１のステント端部６４が全体として内方にフレア状になっており、第２のステント端部６６がステントの中央領域と比較して内方と外方の両方に異形になっている。ステント７０は、一端部にワイヤに対して球形の形状を有すると共に他端部にアイレット又はフープを有し、更に、ステントの互いに反対側の端部に互いに異なる数のステントクラウンを有している。ステント８０は、ステント８０の外周部から内方に位置決めされた葉状片８４のための取り付け箇所を提供するポケット部分８２を有している。この場合も又、これら内方に配置された取り付け箇所は、葉状片摩耗の恐れを減少させ、接合取り付け箇所を、葉状片に加わる応力が少ない領域に移している。最後に、ポケット８２は、縫合糸結び目をこれらが弁の全体的圧着プロフィールを増大させないよう位置決めすることができる領域を提供している。

図９は、ステントクラウン、長手方向ポスト、ポスト及びワイヤの少なくとも一方に設けられた小刻みな段部に関して上述した幾つかの特徴を有する別のステント実施形態９０を示している。ステント９０は、互いに間隔を置いて位置した２本の垂直バーで構成された少なくとも１本の長手方向ステントポスト９２を更に有している。ステント９０は、各々がステント本体から外方に延び、そして２つの長手方向ポスト９２相互間に延びる３つのウイング９４を更に有している。長手方向ポスト９２は、葉状片の摩耗等を回避することと関連して上述した利点を提供するようステント９０の外周部の内方に位置決めされるのが良い。これらウイングは、ステントが埋め込まれると、ステントを生まれつき備わった葉状片の頂部特徴部に結合するよう使用できる。この場合も又、このステントは、その反対側の端部に様々な数のクラウンを有すると共に一端部のクラウンに設けられたフック又はアイレットを有する。

図１０ないし図１３は、ウイングを備えたステント、例えばステント９０を運搬する例示の一運搬システム１００の一部分を示している。特に、図１０は、主カテーテルシース内に収納された完全圧着状態のステントを有する運搬システム先端部を示している。図１１は、主カテーテルシース１０２を引っ込めることにより運搬システム１００から配備されているウイング９４を示している。移植の際、ウイング９４をこれが生まれつき備わった弁葉状片の流出特徴部とインターフェイスを取るよう位置決めするのが良い。これらウイング９４がいったん生まれつき備わった弁葉状片と接触関係をなすと、カテーテル先端部を図１２に示されているように前方に駆動することによりステントの流入側端部又は環状端部を配備する。生まれつき備わった葉状片は、今や、ステント９０のウイング９４及び流入側端部に接触し、それにより交換用弁の移動の恐れを最小限に抑える。いまや、ステントの流出側端部は、運搬システムから放出されたステント９０を完全に再拡張するよう図１３に示されているように配備可能であり、これは、主カテーテルシースを更に引っ込めることによって達成される。

図１４は、柔軟性の高い運搬システム取り付け端部１１２を有するステント１１０を示しており、この取り付け端部により、確実な固定状態を生じさせるよう解剖学的構造とインターフェイスを取るステント１１０の部分を依然として運搬システムに取り付けられたままの状態で完全に配備することができる。このシステムにより、スプロケット方式の運搬システム取り付け機構体が運搬システムの直径の大きさを最小限に抑えるのに役立ち得る。スプロケット方式運搬システムは、或る形式の内部コア部材を有し、この内部コア部材から多数の突起が延びており、この場合、突起の形状は、ステントのワイヤとの係合が可能なものである。ステント１１０は、ステントの大動脈側端部に設けられた各クラウンの取り付けを必要とせず、他方、ステントの心室領域又は観点が機能及び位置決めを評価するよう完全に配備することが依然として可能であり、それにより運搬システムについて小さな直径の採用が可能である。図示のように、ステント１１０は、大動脈１１４に対して位置決めされ、ステント１１０は、柔軟性の非常に高いストラップを有する流出側端部を有し、これらストラットにより、ステントの繋留部分を完全に配備して弁の機能及び位置決めを評価することができ、他方、スプレット方式運搬システムに依然として捕捉されたままである。ステントの外周部は、好ましくは、繋留領域の最大内周部にマッチするよう拡張することができる。

図１５は、中央領域１２２を備えたステント１２０の別の実施形態を示しており、この中央領域は、端部のいずれの直径よりも大きな直径を有している。第１の端部１２４は、６つのステントクラウンを有し、反対側の第２の端部１２６は、１２個のステントクラウンを有し、これらクラウンの各々は、アイレット１２８を有している。このような構成では、ステントの流出側端部に設けられたクラウンの数が減少し、それにより運搬システムへの取り付けに必要な箇所が少なくなっている。図１６は、両端部に位置するフレア状領域及び全体として円筒形の中央領域を有する別のステント実施形態１３０を示している。

図１７は、心臓の大動脈弁位置に位置決めされたステント１４０の別の実施形態を示している。ステント１４０は、一端部に６つのステントクラウンを有すると共に反対側端部に１２個のステントクラウンを有し、このステントは、ワイヤ相互間の比較的大きな開口部１４２を備えた中央領域を有している。隙間１４２は、血液の流れを遮断せず又は妨害しないよう冠血管口に位置決めされるのが良い。ステント１２０，１３０，１４０は、本明細書において説明する他のステント実施形態の多くと共に、耐移動性を向上させると共に弁傍の置換用弁密封を向上させるよう環状の生まれつき備わった解剖学的特徴にマッチするよう設計されている。

図１８は、解剖学的適合性が得られるよう設計されると共に血管の環状領域に全体として着座するよう位置決めされた球状部分を含むステント１５０の別の実施形態を示している。この図に示されているリング１５２は、ステントの外側に設けられた密封ガスケットであり、このリングは、移植時に全体として血管の輪に位置決めされる。ガスケットは、例えば織物又はインフレート可能な管構造体で作られるのが良い。

図１９は、ステント１６０を示しており、このステントは、本発明の他のステント実施形態に関して説明した輪郭の多くを備えておらず、弁組織の取り付けのための長手方向ポスト１６２を有している。ポスト１６２は、互いに間隔を置いた２つの長手方向ワイヤ部分１６６で構成され、これらポストは、長手方向部分１６６相互間に延びるオプションとしての中間部材１６８を更に有している。この図に示されている外側リング構造体は、ステント内の組織材料に使用できる一般的なステッチ経路を示すものとして提供されている。

図２０ないし図２２は、本発明のステントに関して上述した多くの特徴を追加の特徴と共に含むステント１８０の実施形態を示している。具体的に説明すると、図２０に示されているステント１８０は、ステント１８０の長さの方向に延びる長手方向ポスト１８２及び一端部に設けられ、球状であり又はステントの中央部分よりも直径が大きな領域１８４を有している。ステント１８０の反対側の端部は、全体として管状の中央部分の互いに反対側の側部から延びるフレア状部分１８６を有している。図２１に示されているように、各フレア状部分１８６は、２つのクラウンを有するのが良い。ただし、フレア状部分１８６は、図示の形態とは幾分異なる形態のものであって良いことが可能である（例えば、上述したよりも多い又は少ないクラウンが設けられて良く、これらクラウンは、互いに異なる形状のものであって良く、フレア状部分１８６は、ステントの周囲の大部分又はごく一部分周りに延びても良いこと等である）。図２０に更に示されているように、ステントの幾何学的形状は、組織のための最適な取り付け箇所を有するよう設計されるのが良い。即ち、ステントノード軌道は、組織の取り付けのための所望の箇所を提供するよう具体的に選択されるのが良い。このような特徴は、図２０に示されているように長手方向ポストを含むステント向きに考えられると共に設計されるのが良く、このような特徴は又、長手方向ポストなしでダイヤモンド形ワイヤパターンを有するステント向きに考えられても良い。

ステント１８０の外側プロフィールが図２２では患者の解剖学的構造（即ち、大動脈）内の例示の位置に位置した状態で示されており、大動脈の球状領域内に位置決めされている接合ポストを含む中央領域を備えている。フレア１８６は、ステント１８０を定位置に繋留するのを助けるために心室内に延びている。フレア１８６は好ましくは、これらが生まれつきの解剖学的機能を邪魔しない場所に位置決めされる。即ち、フレア１８６は、僧帽弁前方葉状片を邪魔すべきではなく、しかも、興奮伝導系脚の領域中の中隔に圧力を及ぼしてはならない。この場合又、冠動脈の閉塞又は遮断の恐れを最小限に抑えるためにステント１８０の中央部分が生まれつきの大動脈洞領域に接触しないことが好ましい。

本明細書において説明すると共に図示されたステント実施形態の多くに関し、ステントの或る特定の部分のアスペクト比は例示であり、図示のものとは幾分異なる場合があることが注目される。さらに、実施形態の任意のもののステントが大動脈弁の交換のために位置決めされる場合、ステントは、冠血管が位置する領域中に低密度ワイヤ部分を備えるのが良いことが注目される。ステントをクロックする必要性をなくすため、中央領域においてステント周囲全体に沿うワイヤ密度を減少させるのが良い。さらに、本明細書において説明するステント実施形態は、弁に関する組織の取り付けための追加の構造体、例えば実施形態の多くに関して説明した垂直ステントポストを有するよう改造されるのが良い。

図２３ないし図２８は、低密度ワイヤを含む少なくとも２つの領域を備える中央円筒形部分を有するステント２００の別の実施形態を示しており、これら領域の各々は、冠血管口の領域に位置決め可能に設けられている。この低密度領域のワイヤは、ステントの他のワイヤ相互間の空間よりも広い開口部２０２を提供するよう配置されている。これら開口部は、ステント１２０の周囲に沿ってジグザグ形のパターンをなして配置されるようステントの長さに沿ってオフセットしている。ステント２００の一端部は、ステントの中央円筒形部分の互いに反対側の側部から延びるフレア状部分２０４を有している。各フレア状部分２０４は、３つのクラウンを有しているが、フレア状ステント部分に関して上述したように、この形態の変形例が想定される。図２６に示されているように、ステント２００は、フレア状部分の１つが左心室に位置決めされ、ステントの開口部の１つが左冠状動脈に位置決めされるよう僧帽弁２１０に対して位置決めされている。図２７は、ステント１９０の平面図であり、図２８は、僧帽弁の中隔及び前方葉状片を含む患者の解剖学的構造に対するステント１９０の１つの例示の位置を示している。

図２９は、冠血管のための開口部２２２（即ち、ワイヤの低密度領域）を含むステント２２０を示しており、このステントは、ステントを患者の生まれつき解剖学的構造に固定するのを助けるよう輪下及び輪上円周方向ウイングを更に有している。具体的に説明すると、開口部２２２の下に位置する領域は、ステント２２０の周囲の全て又は一部に沿って延びるのが良いウイング２２４を形成するよう外方湾曲部又はフレア部を有している。この場合、ワイヤは、ステントの長手方向中心軸線に向かって湾曲して戻り、次に、再び外方に湾曲し又はフレア状になってウイング２２６を形成し、このウイングは、ステント２２０の周囲の全て又は一部に沿って延びるのが良い。図示のように、ウイング２２４，２２６及びこれらウイング相互間の領域は、全体的に正弦波の形態をなし、この場合、ウイング２２４は、輪の上方に位置決めされるのが良く、ウイング２２６は、輪の下方に位置決めされるのが良く、それによりその位置に確実な取り付けを可能にするための繋留部が提供される。この一連のウイングは、大動脈狭窄症の患者層においてステントを石灰化され又は融合葉状片の領域に繋留するのに役立ち得る。ステント２００は、接合部の高い箇所及び低い箇所、インプラントの環状（弁輪）平面及び／又は他の特徴部を識別するのに使用できる画像化マーカ２２８を更に有する。マーカは又、患者の解剖学的構造内の最適なインプラント配置場所に関する高い境界部及び低い境界部を識別するのに使用できる。

図３０及び図３１は、一端部に設けられ、ウイング領域を形成する正弦波形状を含む図２９のステントとほぼ同じ形状のステント２４０の中実モデルを示す図である。これらウイングは、図示のプロフィールとは異なるプロフィールを有しても良い。ただし、この実施形態では、「谷部」２４６により互いに分離された正弦波「山部」２４２，２４４が設けられ、山部２４２，２４４が設けられることが好ましく、この場合、弁輪は、山部２４２，２４４が弁輪の互いに反対側の側部に位置するよう谷部２４６内に位置決めされるのが良い。山部及び谷部は、図示の高さとは異なる高さを有しても良く、山部相互間の間隔も又、異なっても良い。即ち、輪下フレアと輪上フレアとの間の間隔は、実施される特定の手技及びステントの所望の特性に応じて様々であって良い。これら実施形態は、本明細書において説明する他の形状のステントと共に、ステントが患者の解剖学的構造の種々の輪郭に一致することができるので患者の体内におけるステント移動を最小限に抑えるのに役立ち得る。図３０は又、生まれつきの解剖学的構造の生まれつきの三次元形態にマッチするよう全体としてステント２４０の周囲に沿って設けられるのが良いオプションとしての溝２４８を示している。ガスケット２５０を溝２４８内に配置するのが良く、この場合、このようなガスケット２５０は、溝２４８の形状とほぼ同じ１つの連続構造体を有しても良く、或いは、溝２４８の幾つかの部分内に１つ又は２つ以上の部分片を有しても良い。ガスケット２５０は、弁傍密封具合を向上させることができる。さらに、ガスケット２５０は、患者の生まれつきの組織内に入り込むことができる材料で作られるのが良く、これは、ステントが移動に抵抗するのを助けることができる。

図３２及び図３３は、輪下領域と洞管状接合（ＳＴＪ）領域の両方にフレアを有する別のステント実施形態２４０を示している。図示のステントは、垂直ステントポスト、１２個の流入側クラウン及び６つの流出側クラウンを更に有する。ただし、これらよりも多い又は少ない数の流入側クラウン及び流出側クラウンが設けられても良い。ステント２４０は、図１ないし図４のステント及び本明細書において説明すると共に図示した他のステントについて示したワイヤ構成とほぼ同じワイヤ構成を有するが、ステント２４０の中央領域は、管状又は「真っ直ぐ」であり、両端部に僅かに湾曲した領域を有する。

本発明の例示の一ステントは、次の特徴、即ち、一端部に設けられ、運搬システム及び組織弁に取り付けのためのアイレット、垂直接合取り付けストラット又はポスト、適度にフレア状になった非接合取り付け垂直ストラット又はＳＴＪフレア、輪下フレア、流入及び流出側無外傷曲率部、１２個の流入側クラウン及び流出側端部の６つのテーパクラウンを組み合わせて有する。ステントのこのような実施形態は、例えば、図３４及び図３５のステント２５０として示されている。ステント２５０は、弁のための葉状片を提供するようその内部領域内に取り付けられた組織材料２５２を更に有している。垂直ポスト２５４を構成するために２つの互いに間隔を置いた垂直部材が用いられ、垂直ポストの１つが、図３５で最も良く見える。組織を垂直ポスト２５４に縫い付ける例示の一パターンも又示されている。ただし、縫い付けパターンは、図示の縫い付けパターンとは異なっても良い。

本発明のバルーン拡張型ステントを移植場所まで運搬するステップは、経皮的に実施されるのが良い。一般的に言えば、これは、運搬カテーテル、バルーンカテーテル及びガイドワイヤを含む経カテーテル組立体と用意するステップを含む。この種の幾つかの運搬カテーテルが当該技術分野において知られており、このような運搬カテーテルは、バルーンカテーテルを受け入れるルーメンを有する。バルーンカテーテルは、ガイドワイヤが摺動可能に納められるルーメンを有する。さらに、バルーンカテーテルは、インフレーション源に流体結合されるバルーンを有する。注目されることとして、埋め込まれるべきステントが自己拡張型ステントである場合、バルーンは不要であり、シース又は他の拘束手段が、本明細書において説明されるように、ステントの配備までステントをその圧縮状態に維持するために用いられる。いずれの場合においても、バルーン拡張型ステントの場合、経カテーテル組立体は、移植場所への所望の経皮接近に適した寸法のものである。例えば、経カテーテル組立体は、頸動脈、頸静脈、鎖骨下静脈、大腿動脈又は大腿静脈等の口を経て心臓弁に運搬可能な寸法になっているのが良い。本質的には、経皮肋間穿通法を用いて経カテーテル組立体の使用を容易にするのが良い。

運搬に先立って、ステントは、ステント構造体の永久変形を生じさせることなく、できるだけ小さくなるよう収縮状態でバルーンに被せる。拡張状態と比較すると、支持構造体をそれ自体及びバルーン上に圧縮し、かくして、拡張状態における内径と比較して減少した内径を生じさせる。この説明は、バルーン拡張型ステントの運搬に関するが、同一の基本的な手順も又、自己拡張型ステントに当てはまる場合があり、自己拡張型ステントでは、運搬システムは、バルーンを備えておらず、好ましくは、ステントをその配備まで圧縮状態に維持するシース又は他の何らかの形式の形態を有する。

ステントをバルーンに取り付けた状態で、患者に設けた経皮口（図示せず）を通って運搬カテーテルを介して経カテーテル組立体を運搬する。

ガイドワイヤを患者の体内に挿入することにより移植場所を定め、ガイドワイヤは、バルーンカテーテルが運搬カテーテル内に引っ込められた状態で運搬カテーテルの遠位端部から延びる。次に、バルーン及びステントを移植場所に対して位置決めした状態でバルーンカテーテルを運搬カテーテルからガイドワイヤに沿って遠位側に前進させる。変形実施形態では、ステントを低侵襲手術切開部経緯で（即ち、非経皮的に）移植場所まで運搬する。別の変形実施形態では、ステントを開放心臓／胸部手術により運搬する。本発明のステントの一実施形態では、ステントは、ステントの正しい配置を視覚的にしやすくするよう放射線不透過性、エコー源性又はＭＲＩ視認性材料を含む。変形例として、他の公知の外科的視覚的保持手段をステントに組み込んでも良い。心臓内へのステントの配置に関して説明した技術を用いると、ステントが納められた解剖学的構造の長さに対する長手方向におけるステントの配置のモニタと修正の両方を行うことができる。

ステントをいったん正しく位置決めすると、バルーンカテーテルを作動させてバルーンをインフレートさせ、かくしてステントを拡張状態に移行させる。変形例として、支持構造体が形状記憶材料で作られている場合、ステントは、その拡張状態に自己拡張することができる。

弁に設けられている１つ又は２つ以上のマーカを対応の画像化システム（例えば、エコー、ＭＲＩ等）と一緒に本明細書において説明した種々の再位置決め可能運搬システムと共に使用するのが良い。その目的は、弁を運搬システムから放出する前に、弁が正しく配置されているかどうかを確認することにある。弁が移植部位に正しく配置されているかどうかを確認するために多くの要因を単独で又は組み合せ状態で考察するのが良く、幾つかの例示の要因は、次の通りであり、即ち、（１）置換用弁の周りに弁傍漏れがないこと（これは、血液が弁を通って流れている間に試験することができるので有利であり、というのは、これら運搬システムは、弁を通る流れ及び弁の周りの流れを可能にするからである）、（２）冠状動脈に対する置換用弁の最適な回転向き、（３）置換用弁が定位置にある状態で冠血管の流れの存在、（４）生まれつきの患者の解剖学的構造に対する置換用弁輪の正しい長手方向位置合わせ、（５）置換用弁の洞領域の位置が生まれつきの冠血管の流れを妨害していないという確認、（６）密封スカートが弁傍漏れを最小限に抑えるよう解剖学的特徴部と整列していないという確認、（７）置換用弁が最後の放出に先立って不整脈を誘発していないという確認及び（８）置換用弁が隣接の弁、例えば僧帽弁の機能を妨害していないという確認である。

図３６ないし図３９は、本発明のステントの種々の実施形態の略図である。具体的に説明すると、図３６は、ステント組立体２８０を示しており、このステント組立体は、患者の左心室領域及び左心室流出路中の特定の解剖学的構造と整列させてこれを固定する特徴部を有する。ステント組立体２８０は、ステント付き弁２８２を有し、テザー２８４がこのステント付き弁から延びている。テザー２８４は、好ましくは、弁輪の上方の生まれつきの大動脈の曲率に対応するよう柔軟性がある。オプションとしてのアンカー２６８はステントの遠位端部ところに示されている。具体的に説明すると、テザー２８４の各々は、ステント２８２の接合部２８８の１つから延びている。ステント組立体２８０は、アンカー２８６の近くのテザー２８４相互間に位置決めされた遠位要素、例えばステントグラフト２９０を更に有し、このステントグラフトは、柔軟性があり、非常に様々な患者の解剖学的構造に対応することができる。ステントグラフト２９０は、移植時に左心室流出路の洞領域の遠位側に位置決めされる。この形態は、ステント組立体の安定化を容易にすることができ、又この形態は、後で埋め込まれる別のステントグラフトと位置が合い又はこれとインターフェイスを取るよう設計されるのが良い。

このステント組立体２８０は、輪下ステント特徴部と輪上ステント特徴部との間の柔軟性連結部を有するのが良い。柔軟性連結部は、エラストマー、織物、金属等であるのが良い。このような柔軟性連結部は、ステント組立体が洞管状接合部の上方の最も変化の度合いが強い解剖学的構造に対応すると共に更に大動脈の曲率に対応するのを助けることができる。さらに、柔軟性連結部は、ステント組立体が動脈瘤の大動脈に対応できるようにすることができる。

ステント組立体２８０は、ステント付き弁２８２の端部に隣接して位置決めされたガスケット２９４を更に有するのが良い。さらに、ステント組立体が患者の体内に埋め込まれると、プラーク、石灰化及び遠位側に移動して血栓塞栓性事象、例えば発作を引き起こす他の塞栓を取り込むことができる容積部を作ることにより塞栓性保護を提供するプラークポケット２９６を形成するのが良い。

変形例として、システムの幾つかの部分は、他の部分よりも長い寿命を有するよう設計されても良い。例えば、本発明のフレームは、比較的長い寿命（例えば、２０年間）を有するよう設計され、組織コンポーネントは、比較的短い有効寿命（例えば、１０年間）を有するのが良い。

塞栓性保護器具２９２が図３６に示されているようにステント組立体２８０の遠位側に設けられるのが良い。器具２９２は、弁手技により放出されると共に／或いは生じた塞栓を捕捉して取り込む一方で、弁移植中、大動脈及び冠状動脈を通る無抑制又は十分な灌流を維持するよう利用できる。さらに、図３６ないし図３９は、この同一の目的を達成することができる織物、ポリマー及び／又は組織で覆われた洞管状接合部２８４の上方に位置決めされたステントの一部分を示している。

図３７ないし図３９は、心臓血管内に且つ解剖学的構造（図３８）とは別個独立に設けられたステント組立体２８０の別の図である。ステントポストをアンカー２８６により繋留することは、弁の突き出しを阻止するのに役立ち得るということが注目される。図３７は、患者の解剖学的構造内の輪上位置に埋め込まれたステント組立体２８０を示しており、これは、大動脈の狭窄領域を回避することにより開口領域を向上させることができるので有益である。図３９は、大動脈の湾曲領域に合致するためにステントドラフト材料の柔軟性を示している。

図４０は、非冠血管洞領域３１０内に位置決めされた固定タブ３０２を有するステント３００の平面図であり、右環状動脈３１４にも左冠状動脈３１２にもこのようなタブは設けられていない。即ち、ステント３００の固定コンポーネントは、システムを大動脈弁輪に隣接した左心室の非冠血管洞及び／又は領域に固定することができる。これは、冠血管の血液の流れの閉塞を回避すると共にシステムと中隔及び僧帽弁前方葉状片との間の望ましくない相互作用を阻止することができる。さらに、固定タブ３０２は、次の冠血管インターベンションを阻止せず又は禁止せず、他方、大動脈に向かうステントの移動を最小限に抑え又は阻止するという利点を提供する。図４１は、固定タブ３０２とステントの移動を阻止するのを助けるフレア状部分３０４の両方を備えたステントを示している。図４２は、心室間中隔３０６及び僧帽弁器具３０８に対して位置決めされたフレア状領域３０４を有するステント３００を示している。

図４３ないし図４５は、変形例としてのステント実施形態３６０，３７０，３８０を示しており、これら実施形態の各々は、それぞれ、フレア状部分３６２，３７２，３８２と共に延長又は固定タブ３６４，３７４，３８４を有している。ステント３６０のタブ３６４は、膨らんだワイヤ領域として構成され、ステント３７０のタブ３７４は、ウイング３７２と全体として同一の方向に傾斜した延長部を有し、ステント３８０のタブ３８４は、ウイング３８２の方向とは全体として逆の方向に傾斜した延長部を有している。ステント３７０は、そのタブ３７４が非冠血管洞３７６に対して位置決めされた状態で図５１に示され、ステント３８０は、そのタブ３８４が非冠血管洞３８６に対して位置決めされた状態で図５２に示され、ステント３６０は、その固定タブ３６４が非冠血管洞３６６に対して位置決めされた状態で図５３に示されている。図示のように、これらタブは、患者の解剖学的構造に対するこれらの干渉に起因したステント移動を阻止するのに役立ち得る。

図４７及び図４８は、患者の大動脈を概略的に示している。図示のように、大動脈は、輪レベルの遠位側で湾曲し始めている。多くの典型的な経カテーテル弁ステントは、円筒形であり、比較的真っ直ぐな軸線を有している。このようなステント構造体は、形状が生まれつきの解剖学的構造に容易には一致せず、それにより、多くの潜在的な問題が生じる。第１に、曲率の内側部分（例えば、図４９ではステント３３０に隣接した領域３３２を備えた状態で示されている）での解剖学的構造に加わる圧力の減少により、不適切な着座、移動及び／又は弁傍漏れが生じる場合がある。第２に、曲率の外側部分での解剖学的構造に加わる圧力の増大により、心臓伝導系脚又は干渉が生じる場合があり又はその恐れが増大する。第３に、曲率の外側部分における解剖学的構造に加わる圧力の増大により、組織の局部びらん、刺激及び／又は剥離が生じる場合がある。第４に、ステントにおける捩じり及び／又は曲げ応力及び歪が増大する場合があり、これは、ステントの短期間構造健全性に悪影響を及ぼす場合がある。最後に、生まれつきの解剖学的構造の曲率との形状一致の欠如により、外科医がステント及び弁を所望の場所に正確に又は首尾一貫して位置決めすることはできなくなる場合がある。

本発明の幾つかのステントは、生まれつきの解剖学的構造と弁フレームのこの非形状一致性を軽減することができる。一実施形態では、ステント、例えば図５０のステント３３５は、生まれつきの解剖学的構造にマッチし又はこれとほぼ同形になる所定の曲率を有するのが良い。他の実施形態では、ステントは、これが生まれつきの湾曲した解剖学的構造と同形となることができるステントの部分に柔軟性（例えば、図４７及び図４８のステント３２０の領域３２２）又はヒンジ付き領域（例えば、図４８のステント３４０のヒンジ３４２）を有するのが良い。図４６及び図４７は、中央領域に柔軟性を有するステント設計例を示しており、このような柔軟性により、生まれつきの解剖学的構造との形状一致性（コンフォーミティ）を向上させることができる。中央領域又は部材３２２は、広範な材料、例えば金属、ポリマー、織物等で構成できる。部材３２２は、柔軟性が生まれつきの湾曲した大動脈の解剖学的構造に合致することができる多くの幾何学的形状を有するのが良い。再び図３６を参照すると、このステント組立体は、上行大動脈内の生まれつきの解剖学的構造の曲率との高度の形状一致性の実現を可能にする柔軟性材料、例えば織物、組織、又はポリマー材料を除き、互いには取り付けられない要素２８７を有する。

本発明は又、オプションとして又は変形例として、ステント組立体（例えば、ノーズ組立体内の）を運搬する運搬システムに組み込み可能な遠位塞栓保護特徴部、例えば血栓塞栓性フィルタを有する。保護特徴部は、経皮弁運搬中、急性的保護をもたらすことができる。保護特徴部は、心収縮期又は心拡張期に冠血管を通る実質的に抑制されない流れをもたらすことができる。

今や本発明の幾つかの実施形態を参照して本発明を説明した。本明細書において記載された特許又は特許出願を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。上記詳細な説明及び実施例は、理解しやすくするためにのみ与えられている。これら説明及び実施例から理解されるべき不必要な限定は存在しない。当業者には明らかなように、本発明の範囲から逸脱することなく、説明した実施形態の多くの変更を行うことができる。かくして、本発明の範囲は、本明細書において説明した構成には限定されず、特許請求の範囲に記載された構成及びこれら構成の均等範囲によってのみ定められる。

Claims (4)

1. ステント付き弁であって、
   ステント構造体であって、内部領域、長手方向軸線、及び前記ステント構造体の中央領域に設けられた複数本の長手方向に延びているワイヤを備えた全体として管状の本体部分を有し、前記複数本のワイヤは、前記長手方向軸線から第１の距離をおいたところに配置された多数本の接合ワイヤと、２本の隣り合う接合ワイヤ相互間の各々に位置決めされた少なくとも１本の構造用ワイヤとを含み、前記構造用ワイヤは、前記長手方向軸線から第２の距離をおいたところに配置され、前記第１の距離が前記第２の距離よりも短く、
   前記長手方向軸線に対して外方に湾曲している第１の端部と、前記長手方向軸線に対して内方に湾曲している第２の端部とを有しているステント構造体を備え、
   前記第２の端部が一列のダイヤモンド形セルを備え、少なくとも１つの前記セルの最下点が前記接合ワイヤの取り付け箇所と交わり、前記ステント付き弁はさらに、
   複数個の葉状片を含む弁構造体、を備え、
   各葉状片は、第１の端部、第２の端部、及び前記第１の端部と前記第２の端部との間に延びる自由縁部を有し、
   各葉状片の前記第１の端部は、前記ステント中央領域において１本の接合ワイヤに取り付けられ、各葉状片の前記第２の端部は、前記中央ステント領域においてその隣りの１本の接合ワイヤに取り付けられ、各葉状片の前記自由縁部は、前記弁が開放位置にあるとき、前記中央ステント領域において前記構造用ワイヤに接触しないようになっている、
   ことを特徴とするステント付き弁。
2. 前記第１の端部は、前記ステントの流入側端部であり、前記第２の端部は、前記ステントの流出側端部であり、前記第１の端部は、直径が前記第２の端部よりも小さい、
   請求項１に記載のステント付き弁。
3. 前記第１の端部は、前記ステントの流入側端部であり、前記第２の端部は、前記ステントの流出側端部であり、前記第２の端部は、直径が前記第１の端部よりも小さい、
   請求項１に記載のステント付き弁。
4. 前記第１の端部と前記第２の端部との間の前記ステント構造体の中央領域は、前記ステントの前記第１の端部と前記第２の端部の両方の直径よりも大きい直径を有する、
   請求項１に記載のステント付き弁。

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