JP5229342B2 - 血清調製方法 - Google Patents
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Description
〔血液成分分離装置1の全体構成〕
本発明の実施の形態に係る血液成分分離装置1の構成について、図1を用いて説明する。図1では、血液成分分離装置1の構成のうち、主要な部分だけを抜き出して図示している。
上記構成を有する血液成分分離装置1を用いた血清調製操作について、図2〜図8を用いて説明する。なお、図2は操作の説明のため適宜併用して用いる。
次に、図2に示すように、貯留工程S1を開始後、それと並行するように血液貯留部10を振盪させる(活性化促進工程S2)。図3に示すように、採取された血液を貯留した血液貯留部10は、振盪装置100により緩やかに撹拌され、内部に収納されたガラス加工体12と接触することになる。そして、血液中に含まれる血小板及び凝固因子がガラス加工体12の表面で凝固し、凝固の際に活性化された血小板から、これらを由来とする増殖因子が放出される。(また、この活性化促進工程を低温下で行うと血小板の凝集促進に効果的である。)
全血の遠心分離:4,400g×4〜6(min.)、2,250g×10(min.)
多血小板血漿(PRP)の遠心分離:1,100g×4〜6(min.)
本発明の実施の形態に係る血液成分分離装置1では、血液バッグと同等の内容積を有する本体部11と、その内部に配されたガラス加工体12とから血液貯留部10を構成し、この血液貯留部10の内部で血液から血清を調製するので、従来のような採血管を用いる場合に比べて、一度に大量の血清を調製することができ、調製作業における工程面等で効果を奏する。また、これにより、調製した血清が微生物等によって汚染される危険性も低くなり、安全性の高い血清を調製するうえでも適している。
本実施形態に係る血液成分分離装置は、上記第1実施形態に係る血液成分分離装置1と、血液貯留部10内に収容されるガラス加工体の形態に相違点を有する。そのため、以下では、ガラス加工体の形態について、図10を用いて説明し、その他の部分についての説明は省略する。
本実施形態に係る血液成分分離装置は、上記第1実施形態に係る血液成分分離装置1と、成分収容部20を構成する袋体21〜26の一つを空気抜き用としたところに相違点を有する(図1参照)。空気は採血時には、チューブ41の体積分だけ必然的に血液貯留部10に混入されてしまうが、各血液成分に分離工程S5の際にはない方が好ましい。そのため本実施形態に係る空気抜き用袋体を、血液貯留部10と成分収容部20との間に設置すれば各血液成分に分離工程S5前に空気のみを除去することが可能である。なお、本実施形態におけるその他の構成は第1実施形態と同様であるためその他の部分についての説明は省略する。
本実施形態に係る血液成分分離装置は、図11に示すように上記第1実施形態に係る血液成分分離装置1の血液貯留部10に添加される血液凝固促進個体の代わりに空気15を含有させたところに相違点を有する。この場合、あらかじめ血液凝固促進個体を添加させておく必要がないため、製造コストの削減に繋がる。空気15の含有量は、貯留可能な血液量に対して0.03(cc/ml)から1(cc/ml)であることが好ましく、あらかじめ前記含有量となるよう封入した空気の漏出を使用時まで防止する機構をチューブ41に有することが好ましい。
また、空気と血液凝固促進個体を併用してもよい。
本実施形態に係る血液成分分離装置は、図12に示すように、上記第1実施形態に係る血液成分分離装置1の成分収容部を構成する袋体21〜26の少なくとも一つにガラス加工体12(血液凝固促進個体)を添加したところに相違点を有する。また、本実施形態の場合、ガラス加工体12を添加する容器にカルシウムイオンを含むクエン酸中和剤をさらに添加してもよい。この場合、血液貯留部10には、CPD液のような抗凝固剤を添加した所謂「献血用血液バッグ」を用いることができる。
本実施形態に係る血液成分分離装置は、図13に示すように、上記第5実施形態に係る血液成分分離装置1の袋体21に添加されている血液凝固促進個体の代わりに空気15を含有させたところに相違点を有する。この場合第4実施形態と同様に、あらかじめ血液凝固促進個体を添加させておく必要がないため、製造コストの削減に繋がる。空気15の含有量は、貯留可能な血液量に対して0.03(cc/ml)から1(cc/ml)であることが好ましく、あらかじめ前記含有量となるよう封入した空気の漏出を使用時まで防止する機構をチューブ51に有することが好ましい。
また、空気と血液凝固促進個体を併用してもよい。
第1実施形態において血液を分離した血液成分分離装置1を使用する。図14に示すように血液を分離し、血清を袋体21(成分収容部)に導出させた後の血液貯留部10には、フィブリンが付着した凝固体付着ガラス加工体14と赤血球等の残渣が残っている。この血液貯留部10と気密接続された成分収容部21〜26のうち血清が収容されなかったいずれか一つにあらかじめ生理食塩水を入れておき、あるいはこの血液貯留部10のチューブ41に生理食塩水が含有されている生理食塩水含有袋体120を接続させ、血液貯留部10中の赤血球と混合させた後に輸血用血液として使用することができる(図15参照)。また、フィブリンが付着した凝固体付着ガラス加工体14は、全ての血液成分を導出した後にさらに洗浄し、洗浄後に得られるフィブリンを幹細胞の足場、あるいは傷口のバリヤーとして使用することができる。
上記実施形態で説明した、血清調製並びに血清の小分けを機械的かつ自動的に行うことを可能としたのが本実施形態の血清調製装置である。図24に示すように、本血清調製装置240は、血液凝固促進容器241に採取した血液を無菌的に導入する血液導入手段242(落差圧や突出ポンプ等)と、前記血液凝固促進容器にて調製された血清を無菌的に導出する血清導出手段243(吸引ポンプ等)と、導出した血清を複数の血清保存容器244に導出・分配する血清導入手段245(落差圧や突出ポンプ等)と、血清調製容器に血液を導入し始めた時点から該血清調製容器を振とうさせる振とう手段246と、振とう終了後、血清調製容器を遠心して血清成分を分離する分離手段247と、これらの各動作タイミング並びに動作自体を制御する制御手段248とから構成されている。血液凝固促進容器とは、上記したように血清調製のために血液凝固機能を備えた容器のことであって、上記した可撓性バッグ内にガラス加工体を配したもののほか、ガラス容器等その他血液凝固機能を備えた容器であれば何れでもよい。また、図30に示す混注ポート511〜516を備えた容器を使用してもよい。なお、無菌的にするには、扱う液体に菌が混入しないような外気と液体とを隔離する構造を備えていればよいのであって、その形態は特に限定されない。また、上記血液、血清等の液体の量を公知の流量計によって、モニタしその結果により動作制御(導入血液量の制御、分配血清量の制御等)してもよい。また、血清を分配した後に、血清保存容器に自動的に密栓をするようにしてもよい。
なお、上記血清調製装置240において、別途、血清を調製した後において、該調製容器を装着すると、保存容器に分配することができるような分配装置として機能させてもよい。
図25は、血清調製バッグに空気量調節のためのフィルタ251を備えた可撓性バッグ(図1の10に相当する容器)を示している。
該フィルタは、血液をバッグ内に導入した後、フィルタを外部に開放(図示しない蓋部をオープンにすることで解放される)することで空気量を調整する機能を持つ。これは、空気量が多量である場合に、撹拌量が不十分であると血餅が生じ、赤血球等の血液成分が回収できなくなってしまうことを回避するために配されており、空気量を調整することで血液の凝固速度を血液量に適した相対的な大きさに調整するという機能を持たせたものである。
図26は、血清調製のための血液凝固促進容器261を振とうさせる時間帯を血清調製量が十分なレベルにまで達するよう最適に制御する機能を備えた血清調製装置の機能ブロック図である。
本実施形態では、血球成分を使用せず分離された血清を主として使用する場合を想定した実施形態であり、上記ガラス加工体以外に血清分離剤が収納された血清調製容器であることに特徴点がある。このように血清分離剤を備えることによって、血清の産生がガラスによる血液凝固促進によって促されるとともに、産生された血清が他の成分ときれいにかつ効率良く分離されることになる。
図27は、図1における血清調製装置と同様に、採取した血液中から血液凝固促進させて血清を調製する装置である血清調製装置270を示す。該血清調製装置270が図1のものと異なるのは、採取した血液を複数の血清調製容器271に分配し、該血清調製容器271中で血清を調製し、調製血清を複数の保存容器272に移送・保存するという点である。このように採取した血液を複数の血清調製容器271に分配し、該血清調製容器271中で血清を調製することによって、血清調製容器の血液による膨らみが大きくなり、ガラス加工体の自由度が大となるので、ガラスが撹拌され易く、血液との接触性が向上することとなり血清の調製がより効率良く行われることになる。
図28は、新たな血清調製装置280を示す。該血清調製装置280は、カテーテル281が接続された留置針282と、カテーテル281の端部に接続されるシリンジ283とを備え、シリンジ283内には血液凝固促進個体284(ガラス等)が収納されている。
図29は、図1の血清調製装置と略同様の構成であるが、バッグからバッグの間の導通路にフィルタ291を備えている点が大きく異なる。このフィルタ291は、血球成分を通さず、血清を選択的に通過させるような大きさのポアを有するフィルタである。このため、遠心分離工程を経なくても、このフィルタに振とう後の液体を通過させることによって血清を簡便に分離することができる。
図30は、図1の血清調製装置と略同様の構成であるが、各バッグが、無菌的に接続・離脱自在に構成されている血清調製装置である点で異なる。接続・離脱自在に構成とは、挿入具の挿脱にともなって弁体のスリット状開口部が開閉する機能を有する気密性の高い混注ポート(日本国特許第3389983号等参照)を備えた構成が挙げられる。なお、この場合、接続する導通路となるチューブ先端には、ルアを用いることが望ましい。かかる構成によって、バッグの取り付け、取り外しを簡便に行うことができる。
図31は、図1の血液貯留部10と略同一の機能を持つが、血清取出口付近に血清調製時に血液が進入しないように、仕切りとなる一時的仕切り310を備えている点で異なる。ここにおいて、血清取出口付近に血液が進入し、凝固した場合血清が取り出し難くなる。あるいは、保存する血清に凝固した血液が混入することになる。一時的仕切り310は、血清調製後は、取り除くことが可能で、血清取出口から血清を保存バッグに移送させることができるようになっている。一時的仕切り310としては、クランプによる閉鎖、イージーピール等による閉鎖が考えられる。要すれば、一時的仕切り310は、血清調製時に前記取出口及びその近傍を血液から隔離でき、血清取出時には、隔離が解除されるものであれば、その形態は問わない。
図32は、図1の血液貯留部10と略同一の機能を持つが、血清取出口付近に血清調製操作により血液が進入しないように、フラッシュ用バッグ320を備えている点で異なる。ここにおいて、血清取出口付近に血液が進入し、凝固した場合血清が取り出し難くなる。あるいは、保存する血清に凝固した血液が混入することになる。
本実施形態では、図1の血液貯留部10にガラス加工体を有さず、採取した血液はその空のバッグ内で放置されて血清が調製されることになる。そして、調製された血清が、保存バッグに移送されて複数の保存バッグに小分けされて保存されることになる。
本実施形態では、図1に示したガラス加工体がチューブ42等に入り込んで、血清の移送の障害にならないよう工夫した点について特記する。
[活性化促進効果の確認]
ソーダガラスからなる、大小のガラス加工体をそれぞれ表1の条件で血液収容部に添加した。この血液収容部に20mlのヒト新鮮血を入れ、撹拌しながらインキュベートし、10,20,30,60,90分後に1.5mlずつ採取し、血小板数の計測を行った。なお、撹拌には、撹拌(振盪)装置(マルチシェーカーMMS−300 東京理科器械製)を、血球カウントには、血球カウント装置(多項目自動血球計数装置 K−4500 シスメックス製)を用いた。
[増殖因子放出効果の確認]
増殖因子放出効果の検討を行った。実施例1で用いた9つの試料の中から5つの試料を選び、5名の対象者の新鮮血をそれぞれの試料に添加し、20分経過後の増殖因子の測定を行う。具体的には、下記の表2の条件で実施例1と同様の方法でインキュベートした後、市販のテストキット(R&D SYSTEMS社製)により増殖因子(TGF−β1、PDGF−BB)量をマイクロプレートリーダー(Multiskan BICHROMATIC Labsystem社製)を用いて測定し、ガラス加工体との接触面積0の検体における量との比として表した。その結果を図17及び図18に示す。図中、横軸はガラス表面積を、縦軸には各増殖因子の量を示す。図17より、ガラス加工体を血液1ml当り0.6mm2とわずかでも添加すると、増殖因子の放出量は大幅に増加した。しかし、表面積比を極端に大きくした場合には、TGF−β1量はほぼ平衡となることがわかった。また、図18では、ガラス加工体を僅かに添加するだけで増殖因子の大幅な増加が確認された。さらに、図17と同様に表面積比を極端に大きくした場合には、PDGF−BB量はほぼ平衡となることがわかった。
[ガラス加工体による溶血性の検討]
実施例1及び2より、ガラス加工体を添加することにより、血小板の活性化と増殖因子の増加に効果があることが確認された。しかし、ガラス加工体の添加により血清調製中に溶血を引き起こすことが懸念された。そこで、ガラス加工体の添加量と溶血の関係を検討した。
[ラット幹細胞の増殖確認]
血液1(ml)あたりのガラス加工体の接触面積を0(mm2)あるいは1.5(mm2)とし、ヒトから採取した血液を前記ガラス加工体のいずれかが収容された血液貯留部中にて20分間振盪した。振盪終了後血液を遠心分離(遠心分離条件:2250(g)×10(min.)、4(℃))し、上清を分離した。上清を56℃で30分間熱処理した後、0.22(μm)のフィルターでろ過し、−80℃にて凍結保存した。上清は細胞培養時に解凍され、細胞培養用の培地に添加された。細胞は、ラットの大腿骨骨髄より得られた細胞をあらかじめ7日間培養し、得られた接着性の細胞を骨髄由来細胞とし本実施例に供した。1ウェルあたり1万個の細胞を播種し、培地には10%濃度となるようガラス加工体を添加して得た上清、ガラス加工体未添加で得た上清、あるいは市販の細胞培養用のウシ胎児血清を添加し培養した。培養開始後1,3,7日に細胞数をカウントした。細胞の増殖への効果を確認した結果を図20に示す。
[赤血球の回収]
回収される赤血球について確認を行った。ガラス加工体接触面積を血液1(ml)あたり12.5(mm2)とし、20(ml)採血後60分間マルチシェーカーMMS−300(東京理科器械株式会社製)にて撹拌しながら振盪させた。対象として従来の血清調製方法により、試験管に採血し同じ時間静置した血液を用い、経時的な赤血球数の変化を調べた。その結果を図21に示す。これより、採血直後の赤血球数を100%とした場合、ガラス加工体と60分振盪した後の赤血球は約80%残存していた。一方、従来の方法で血清を採取した場合においては、容器内の血液の大部分が血餅となるため、採血後60分でわずか10%しか赤血球が回収されなかった。
[多血小板血漿(PRP)からの血清回収]
あらかじめCPD液等の抗凝固剤を用いて採血された血液、あるいは成分献血により調製された多血小板血漿(PRP)からも、増殖因子を多く含む血清が調製可能であることを確認した。最終濃度が12.2%となるようにCPDを添加したヒト新鮮血液を調製した。このCPD加血液を760g、10分(22℃)の条件で遠心分離し、多血小板血漿を調製した。得られた多血小板血漿0.8mLを表4に示すようにあらかじめ塩化カルシウムとガラス加工体が添加された容器内で37℃にてインキュベートを開始し、適宜振盪した。多血小板血漿添加後に多血小板血漿からフィブリンが析出し、外観上流動性が低下するまでの時間を測定した。流動性の低下した各検体は直ちに2,250g、10分(4℃)の条件にて遠心分離を行い、得られた上清を分離した。その後この上清に含まれるPDGF−BB量とTGF−β1量を測定した。測定した各増殖因子の量は、同一血液から調製した血清中に含まれていた各増殖因子量に対する比(%)として図22に示した。
[空気添加効果の確認]
空気、あるいはガラス加工体をそれぞれ表5に示す条件で血液収容部に添加した。この血液収容部に20(ml)のヒト新鮮血を入れ、マルチシェーカーMMS−300(東京理科器械社製)にて撹拌しながらインキュベートし、20分後の血小板数を多項目自動血球計数装置K−4500(シスメックス社製)を用いて計数した。
Claims (3)
- 少なくとも血液由来の凝固因子を含む液性成分と、血小板と、を含む流動体を貯留する血液貯留部と、
前記血液貯留部に、無菌的かつ気密に連結された成分収容部と、を備え、
前記血液貯留部は、前記流動体と接触し凝固を促進させる血液凝固促進個体を含有し、
前記血液凝固促進個体は、前記流動体に対して不溶性であり、かつ、塊状の外観形状を有する表面が二酸化ケイ素化合物からなる層で形成されたものである血液成分分離収容装置を用いた血清調製方法であって、
前記流動体を前記血液貯留部内で前記血液凝固促進個体と接触させて血液凝固を促進させ血清を調製する工程と、
前記血液貯留部内で調製された前記血清を、前記血液貯留部に無菌的かつ気密に連結された前記成分収容部に移送して収容する工程と、を備える血清調製方法。 - 前記血清を移送した後の前記血液貯留部に残存している残渣に、生理食塩水及び血液保存液から選択される少なくとも一種を添加して前記残渣と混合する工程を更に有する請求項1に記載の血清調製方法。
- 請求項2に記載の血清調製方法において、
前記血液貯留部に残存している残渣を洗浄して、前記流動体由来の非細胞成分を回収する工程、を更に含む血清調製方法。
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