JP4908672B2 - 固体電解コンデンサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固体電解質に特定の導電性高分子を用いた固体電解コンデンサに関する。さらに詳しく言えば、小型化、高容量化、低インピーダンス化、そして耐湿負荷特性が良好で耐熱性に優れ、また熱応力緩和特性に優れた固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
固体電解コンデンサは、エッチング処理された比表面積の大きな金属箔(陽極基体)に誘電体の酸化被膜層が形成され、この外側に対向する電極として固体の半導電体層(固体電解質と略する。)が形成され、さらに望ましくは導電ペーストなどの導電体層が形成された素子である。この素子の金属箔に陰極リード端子が、また導電体層に陽極端子が接続され、全体を絶縁性樹脂で完全に封止されてコンデンサ部品として幅広く電気製品に使用されている。
【0003】
固体電解質層の形成方法については、従来から細孔あるいは空隙構造を有する金属表面の誘電体層上に、固体電解質を融解して形成する方法や誘電体層上で固体電解質を産生する方法等が知られている。
【0004】
近年の電気機器のディジタル化、パーソナルコンピュータの高速化に伴い、これらに使用されるコンデンサは小型で大容量のもの、高周波領域において低インピーダンスのものが要求されている。従来、大容量のコンデンサとしては、アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサ等の電解コンデンサがある。しかしながら、アルミ電解コンデンサではイオン伝導性の液状電解質を用いているため高周波領域でのインピーダンスが高く、また温度特性も悪いという問題点を有していた。また、タンタル電解コンデンサではマンガン酸化物を電解質として用いているが、このマンガン酸化物の比抵抗が比較的高いことから高周波領域でのインピーダンスが高いという問題点を有していた。
【0005】
そこで、これらの要求に応えるものとして、電子伝導性を有する導電性高分子を固体電解質として用いることが提案されており、例えば、導電率が10-3〜103S/cmの範囲である真性導電性高分子(特開平1-169914号公報(米国特許第4,803,596号))やポリアニリン(特開昭61-239617号公報)、ポリピロール(特開昭61-240625号公報)、ポリチオフェン誘導体(特開平2-15611号公報(米国特許第4,910,645号))、ポリイソチアナフテン(特開昭62-118511号公報)等のポリマーの使用が知られている。これらのπ共役系構造からなる導電性高分子の多くは、ドーパントを含んだ組成物として使用される。さらに昨今では、ドーパントだけの添加だけでなく、例えば二酸化マンガン(特公平6-101418号公報(米国特許第4,959,753号))やフィラー(特開平9-320901号公報)の併用も行われれている。
【0006】
このように固体電解質として導電性高分子が注目されている理由は電導度が充分高く改良できる等の期待があるからである。しかしながら、電導度が適正範囲より高すぎると、漏れ電流値が大きく上昇する結果ショートに至ることがある。また、電導度が低いと周波数特性が悪くなり容量低下が大きくなるという問題があり、電導度の適正範囲の制御並びに該固体電解質の耐熱性、熱的安定性等が開発課題となっている。
【0007】
一方、固体電解質の形成方法については、従来から微細な空隙構造を有する弁作用金属表面の誘電体層上に、前記のような固体電解質を融解して形成する方法や誘電体層上で前記の導電性高分子を産生する方法等が知られている。具体的には例えば、ピロールやチオフェン等の複素五員環式化合物の重合体を使用する場合、陽極箔を複素五員環式化合物の低級アルコール/水系溶液に浸漬した後、酸化剤と電解質を溶かした水溶液に浸漬して化学重合させ、導電性高分子を形成する方法(特開平5-175082号公報)、3,4−ジオキシエチレン−チオフェンモノマー及び酸化剤を好ましくは溶液の形態において、前後して別々にまたは一緒に金属箔の酸化被覆層に塗被して形成する方法(特開平2-15611号公報(米国特許第4,910,645号)や特開平10-32145号公報(欧州特許公開第820076(A2)号))等が知られている。特に、特開平10-32145号公報(欧州特許公開第820076(A2)号)においては、分子構造中にスルホン酸基を複数有する芳香族ポリスルホン酸がドープされたピロール、チオフェン、フラン、アニリン及びそれらの誘導体から選ばれた重合体が開示され、製造方法として前記モノマーと酸化剤との混合溶液の塗布及び乾燥または酸化剤を導入した後でモノマーを導入する重合方法が開示されている。また、特開平10-32145号公報(欧州特許公開第820076(A2)号)では、前記芳香族ポリスルホン酸のドーパントは酸化剤(第2鉄塩)の構成成分として利用する製造方法を開示しており、これを具備した固体電解コンデンサの特徴として耐高温性や静電容量の悪化防止に優れた記載がある。これら従来技術における酸化剤としては、例えばチオフェン等の複素五員環式化合物の化学重合においては、塩化鉄(III)、Fe(ClO43や有機酸鉄(III)、無機酸鉄(III)、アルキル過硫酸塩、過硫酸アンモニウム(以下、APSと略す。)、過酸化水素、K2Cr27等(特開平2-15611号公報(米国特許第4,910,645号))や、第二銅化合物、銀化合物等(特開平10-32145号公報(欧州特許公開第820076(A2)号))が知られている。
【0008】
具体的には、前記二酸化マンガンを用いた固体電解質のコンデンサは、硝酸マンガンの熱分解時に酸化皮膜層が破壊されてしまう欠点があり、またインピーダンス特性も不十分である。二酸化鉛を用いる場合は、環境上への配慮も必要である。
【0009】
テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯塩を使用する固体電解質のコンデンサは、熱溶融加工性や導電性に優れているが、TCNQ錯塩自体の耐熱性に問題がありハンダ耐熱性の信頼性が悪いと言われている。
【0010】
これらの欠点を改善するために、前記ポリピロ−ル等の導電性高分子が電解重合法または化学的重合法によって誘電体表面の固体電解質に適用されるが、ポリピロール等の導電性高分子を用いた従来のコンデンサでは、耐湿負荷によってコンデンサ特性が大きく変動するという問題点があった。
【0011】
また、耐湿負荷に関連して耐熱性の要求が大きく、例えばコンデンサ素子からコンデンサ部品に成形する際のハンダ耐熱性(リフロー性)も重要視され、耐熱性の高いコンデンサ素子が求められている。
【0012】
固体電解質としての導電性高分子層は、導電率が高く、陽極内部の細孔内表面をもれなく覆うように形成され、そして上記した半田付けの温度に耐える耐熱性材料であることが必要であるが、この他に次のような条件が要求される。
【0013】
すなわち、第1に、半田付け等で発生する熱応力を緩和できること、第2に導電性高分子層の上に形成される導電ペースト層と機械的及び電気的に密着性がよいこと、第3に、誘電体酸化皮膜が導通した際これを修復する能力が良好なことである。
【0014】
上記第1の熱応力の緩和については、表面に誘電体酸化皮膜が形成された陽極の外部表面に、一定の厚さの導電性高分子層を形成することが提案されている。これには、先ず化学重合によりプレコート層となる第1の導電性高分子層を形成した後、この上にこれを電極として電解重合により第2の導電性高分子層を形成する方法(特開昭63-173313号公報(米国特許第4,780,796号))や、フィラー入りの導電性高分子溶液を塗布することにより導電性高分子層を形成する方法(特開平9-320901号公報)が開示されている。この熱応力の緩和能力には、層の厚さのほかに層の構造が影響する。導電性高分子でマクロな構造が異なるものとしては、導電性高分子を連続相とするスポンジ状の導電性高分子成形体(特開平8-53566号公報)が開示されている。
【0015】
上記第2の導電性高分子層と導電ペースト層の密着性の向上については、導電性高分子層の表面に凹凸を形成することが提案されている。これには、1層目の導電性高分子層の上に微粉末を混合させた溶液を液状のままで用いて微粉末を配設した後、その上に2層目の導電性高分子層を形成する方法(特開平7-94368号公報(米国特許第5,473,503号))や、1層目の導電性高分子層の上に導電性高分子の微粉末を気体または液体の気流中に含ませて噴射または噴霧して付着させた後、その上に2層目の導電性高分子層を形成する方法(特開平9-320898号公報(欧州特許公開第825626(A2)号))が開示されている。
【0016】
上記第3の誘電体酸化皮膜の修復能力の向上については、タンタル固体電解コンデンサにおいて、導電性高分子化合物が細孔内に空洞を残して誘電体酸化皮膜を覆う構造とし、酸素の供給源を設けることにより導通時に導電性高分子化合物を絶縁化する方法(特開平7-122464号公報(米国特許第5,455,736号))が開示されている。
このように、従来の導電性高分子では耐熱性が十分ではなかった。
【0017】
また、熱応力の緩和に対して提案されている方法についても、まず、電解重合により形成した導電性高分子層は、表面の凹凸が少なく導電ペースト層との密着性が悪いという欠点が挙げられる。また、フィラー入りの導電性高分子溶液の塗布により一定厚の導電性高分子層を形成する方法(特開平9-320901号公報)では、高分子層の厚さの割には熱応力の緩和能力が低く、比較的厚い高分子層が必要とされるため素子の小型大容量化には不利である。
【0018】
スポンジ状の導電性高分子成形体(特開平8-53566号公報)は、固体電解コンデンサへの適用例が開示されておらず、またこの発明によるスポンジ状の導電性高分子成形体の製造方法は、導電性高分子溶液を冷却して溶剤を凍結させて重合を行った後、溶剤を凍結乾燥あるいは融解させて除去するという方法であるため、操作が面倒であり、更に、凍結、融解の際に誘電体酸化被膜が損傷を受けやすいことから、固体電解コンデンサに適用できる方法とは言い難い。
【0019】
次に、導電性高分子層の表面に凹凸を形成して導電ペースト層との密着性の向上を提案した方法については、まず、1層目の導電性高分子層の上に微粉末を混合させた溶液を液状のままで用いて微粉末を配設する方法(特開平7-94368号公報(米国特許第5,473,503号))では、凹凸の形成状態が素子内、ロット内、ロット間でばらつくという問題がある。また、1層目の導電性高分子層の上に導電性高分子の微粉末を気体または液体の気流中に含ませて噴射または噴霧して付着させる方法(特開平9-320898号公報(欧州特許公開第825626(A2)号))では、高分子層の厚さの割には熱応力の緩和能力が低く、比較的厚い高分子層が必要とされるため素子の小型大容量化には不利であるという問題がある。
【0020】
更に、誘電体酸化被膜の修復能力を向上させるために提案されている、導電性高分子化合物が細孔内に空孔を残して誘電体酸化被膜を覆う構造とする方法(特開平7-122464号公報(米国特許第5,455,736号))では、酸化重合の繰り返しにより細孔内に占める空洞の割合を調整するため細孔内に空洞を残して導電性高分子層を形成した後に陽極の外部表面に導電性高分子層を厚く形成しようとすると、既に微細孔内に存在していた空洞が塞がれる。従って、外部表面への一定厚の導電性高分子層の形成と微細孔内の空洞の確保を両立させることができないという問題があり、また高分子層の表面に凹凸が形成されないため導電ペースト層との密着性が悪いという問題がある。
【0021】
このように、近年高い性能が要求されているコンデンサ素子の製造にあたり、固体電解質の材料やその製造方法、熱的安定性、皮膜の均一性等に対してさらなる改善が要求されている。
【0022】
したがって、本発明の課題は、熱応力の緩和能力、導電ペースト層との密着性、誘電体酸化被膜の修復能力が良好な導電性高分子層を有する、耐熱性に優れた固体電解コンデンサを提供することにある。
【0023】
また、本発明の課題は、軽量最小、高容量、高周波特性、tanδ、漏洩電流、耐熱性(リフロー性)や耐久性等に優れた固体電解コンデンサを提供するにある。
【0024】
さらに本発明の課題は、上記の特性を備えた電解コンデンサの製造方法を提供し、これにより損失係数、漏れ電流、耐熱性、高周波領域での等価直列抵抗及びインピーダンスなどの初期特性のみならず、火花電圧試験に対する耐久性、長期信頼性(高温、高湿下における耐久性など)にも優れた固体電解コンデンサを提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題の達成のために固体電解質である導電性高分子層の化学構造及び層状構造について鋭意検討を重ねた結果、熱応力の緩和特性等は導電性高分子層を層状構造とすることにより解決できることを見出した。
また、耐熱性については、特定の高分子や高分子組成物を固体電解質に用い、さらにはこの特定の高分子や高分子組成物を用いて層状構造にすることにより、課題が達成されることを見出した。
【0026】
すなわち、固体電解質の導電性高分子組成物中のドーパントアニオンの種類、組み合わせ及び含量等について鋭意検討を重ねた結果、対向する電極と一方の電極として弁作用金属箔表面の金属酸化物からなる微細構造の誘電体層、及びその誘電体層上に形成された導電性高分子組成物からなる固体電解質を具備した固体電解コンデンサにおいて、(1)前記固体電解質中に一つ以上のスルホアニオン基とキノン構造を分子内に有するスルホキノンを含み、かつ前記スルホキノン以外のドーパントとして、他のドーパント能を有するアニオンを併含することにより、あるいは(2)前記固体電解質中に1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸をドーパントとして含むことにより、小型で低インピーダンスかつ火花電圧試験に耐久性のある高性能な固体電解コンデンサが得られることを見出した。
【0027】
以上の知見に基いて、本発明は以下の固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供するものである。
(1) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に固体電解質層を設けた固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解質層の少なくとも一部が層状構造をなしていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
(2) 前記固体電解質層が、誘電体被膜上の外部表面または外部表面と微細孔部分内に形成されている前記(1)に記載の固体電解コンデンサ。
(3) 前記層状構造の層間の少なくとも一部に空間部を有する前記(1)または(2)に記載の固体電解コンデンサ。
【0028】
(4) 前記層状構造をなす固体電解質の各層の厚さが0.01〜5μmの範囲であり、固体電解質層の全体の厚さが1〜200μmの範囲である前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
(5) 前記固体電解質層がπ電子共役系高分子及び/またはこれ以外の導電性高分子を含む組成物である前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【0029】
(6) 前記導電性高分子が、下記一般式(I)
【化4】
Figure 0004908672
【0030】
(式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、C1〜6(炭素数1乃至6を意味する。以下同じ。)の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、または置換フェニル基を表わすか、またはR1及びR2は互いに任意の位置で結合して、少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。
XはS、O、Se、TeまたはNR3を表わし、R3は水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、フェニル基、またはC1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基を表わす。
1、R2及びR3が表わすアルキル基またはアルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を含んでもよい。δは0〜1の範囲である。)
で示される構造単位を繰り返し単位として含む前記(5)に記載の固体電解コンデンサ。
【0031】
(7) 前記導電性高分子が、下記一般式(II)
【化5】
Figure 0004908672
【0032】
(式中、R4及びR5は、各々独立して水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、またはC1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。δは0〜1の範囲である。)
で示される構造単位を繰り返し単位として含む前記(5)に記載の固体電解コンデンサ。
【0033】
(8) 前記導電性高分子が、下記一般式(III)
【化6】
Figure 0004908672
【0034】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、1級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基を表わすか、またはR6、R7、R8、R9、R10及びR11の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。
6、R7、R8、R9、R10及びR11が表わすアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ結合を任意の数含んでもよい。
kはチオフェン環と置換基R6〜R9を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表わし、0または1〜3の整数である。但し、k=0の誘導体のうち、R6〜R9の全てが水素原子である構造体を除く。また縮合環は1〜2個の窒素原子(N)またはN−オキシドを含んでもよい。δは0〜1の範囲である。Zは陰イオンを表わし、jはZの価数であり、1または2である。)
で示される構造単位を繰り返し単位として含む縮合ヘテロ多環式重合体である前記(5)に記載の固体電解コンデンサ。
【0035】
(9) 前記一般式(III)の縮合ヘテロ多環式重合体が、k=0の下記一般式(IV)
【化7】
Figure 0004908672
【0036】
(式中、R6、R7、R8、R9、δ、Z及びjは、一般式(III)と同じ意味を表わし、また縮合環は1〜2個の窒素原子(N)またはN−オキシドを含んでもよい。)
で示される縮合ヘテロ多環式重合体である前記(8)に記載の固体電解コンデンサ。
【0037】
(10) 前記一般式(IV)の縮合ヘテロ多環式重合体が、5,6−ジオキシメチレン−イソチアナフテニレン重合体及び5,6−ジメトキシ−イソチアナフテニレン重合体から選ばれる縮合ヘテロ多環式重合体である前記(9)に記載の固体電解コンデンサ。
【0038】
(11) 前記一般式(III)の縮合ヘテロ多環式重合体が、k=1の下記一般式(V)
【化8】
Figure 0004908672
【0039】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10、R11、δ、Z及びjは、一般式(III)と同じ意味を表わし、また縮合環は1〜2個の窒素原子(N)またはN−オキシドを含んでもよい。)
で示される縮合ヘテロ多環式重合体である前記(8)に記載の固体電解コンデンサ。
【0040】
(12) 前記導電性高分子が導電性ポリチオフェンであって、前記導電性ポリチオフェンを含む組成物中に硫酸イオンが0.1〜10モル%の範囲、かつナフタレンスルホン酸イオンが1〜50モル%の範囲含有されている前記(5)に記載の固体電解コンデンサ。
【0041】
(13) 導電性ポリチオフェンが、前記(7)に記載の一般式(II)で示される構造単位を繰り返し単位として含む前記(12)に記載の固体電解コンデンサ。
【0042】
(14) 硫酸イオンが過硫酸塩の還元体に由来するものである前記(12)または(13)に記載の固体電解コンデンサ。
【0043】
(15) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に導電性高分子組成物層からなる固体電解質層を設けてなる固体電解コンデンサにおいて、前記組成物が1つ以上のスルホアニオン基とキノン構造を分子内に有するスルホキノンアニオンを0.1〜50モル%を含み、かつ前記スルホキノンアニオン以外のアニオンを0.1〜10モル%の範囲で含むことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【0044】
(16) 前記組成物中の導電性高分子の主鎖が、下記一般式(I)
【化9】
Figure 0004908672
【0045】
(式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、または置換フェニル基を表わすか、またはR1及びR2は互いに任意の位置で結合して、少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。
XはS、O、Se、TeまたはNR3を表わし、R3は水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、フェニル基、またはC1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基を表わす。
1、R2及びR3が表わすアルキル基またはアルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を含んでもよい。δは0〜1の範囲である。)
で示される構造単位を含む前記(15)に記載の固体電解コンデンサ。
【0046】
(17) 一般式(I)の構造単位が、下記一般式(II)
【化10】
Figure 0004908672
【0047】
(式中、R4及びR5は、各々独立して水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、またはC1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。δは0〜1の範囲である。)
で示される構造である前記(16)に記載の固体電解コンデンサ。
【0048】
(18) スルホキノンアニオンの基本骨格が、p−ベンゾキノン、o−ベンゾキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、2,6−ナフトキノン、9,10−アントラキノン、1,4−アントラキノン、1,2−アントラキノン、1,4−クリセンキノン、5,6−クリセンキノン、6,12−クリセンキノン、アセナフトキノン、アセナフテンキノン、カンホルキノン、2,3−ボルナンジオン、9,10−フェナントレンキノン、2,7−ピレンキノンからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(15)乃至(17)のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【0049】
(19) スルホキノンが、分子内に一つ以上のスルホアニオン基とキノン構造を有するスルホキノンと、前記スルホキノンから産生されるハイドロキノン構造体及び/またはそれらのキンヒドロン構造体を含む前記(18)に記載の固体電解コンデンサ。
【0050】
(20) 前記スルホキノンアニオン以外のアニオンが、酸化剤の還元体アニオンである前記(15)乃至(19)のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【0051】
(21) 酸化剤の還元体アニオンが、硫酸イオンである前記(20)に記載の固体電解コンデンサ。
【0052】
(22) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に導電性高分子組成物層からなる固体電解質層を設けてなる固体電解コンデンサにおいて、前記組成物が1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンをドーパントとして含むことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【0053】
(23) 前記アントラセンモノスルホン酸アニオンが、導電性高分子の全繰り返し構造単位に対して0.1〜50モル%の範囲で含まれる前記(22)に記載の固体電解コンデンサ。
【0054】
(24) 前記アントラセンモノスルホン酸アニオン以外に、ドーパント能を有する酸化剤の還元体アニオンを0.1〜10モル%の範囲で含む前記(22)または(23)に記載の固体電解コンデンサ。
【0055】
(25) 前記酸化剤の還元体アニオンが、硫酸イオンである前記(24)に記載の固体電解コンデンサ。
【0056】
(26) 前記アントラセンスルホン酸誘導体が、アントラセン環の水素がC1〜12の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基またはアルコキシ基で一つ以上置換されたアントラセンモノスルホン酸である前記(22)乃至(25)のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【0057】
(27) 導電性高分子の主鎖が、下記一般式(I)
【化11】
Figure 0004908672
【0058】
(式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、または置換フェニル基を表わすか、またはR1及びR2は互いに任意の位置で結合して、少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。
XはS、O、Se、TeまたはNR3を表わし、R3は水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、フェニル基、またはC1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基を表わす。
1、R2及びR3が表わすアルキル基またはアルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を含んでもよい。δは0〜1の範囲である。)
で示される構造単位を繰り返し単位として含む前記(22)に記載の固体電解コンデンサ。
【0059】
(28) 一般式(I)の繰り返し構造単位が、下記一般式(II)
【化12】
Figure 0004908672
【0060】
(式中、R4及びR5は、各々独立して水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、またはC1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。δは0〜1の範囲である。)
で示される構造である前記(27)に記載の固体電解コンデンサ。
【0061】
(29) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に固体電解質層を設けた固体電解コンデンサの製造方法において、下記一般式(VI)
【化13】
Figure 0004908672
【0062】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、1級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基を表わすか、R6、R7、R8、R9、R10及びR11の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。
6、R7、R8、R9、R10及びR11が表わすアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ結合を任意の数含んでもよい。
kはチオフェン環と置換基R6〜R9を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表わし、0または1〜3の整数である。また縮合環は、1〜2個の窒素原子(N)またはN−オキシドを含んでもよい。)
で示される縮合ヘテロ多環式化合物を単独で、またはドーパント能を有する他のアニオンと共に、微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上で酸化剤の作用によって重合して、誘電体被膜上に固体電解質層を形成することを特徴とする前記(1)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0063】
(30) 縮合ヘテロ多環式化合物として、ジヒドロイソチアナフテン、ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン及びジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン誘導体の中から選ばれる少なくとも1つ用いる前記(29)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0064】
(31) 縮合ヘテロ多環式化合物として、1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5,6−ジオキシメチレン−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5,6−ジメトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン及び1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンから選ばれる少なくとも1つを用いる前記(29)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0065】
(32) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に固体電解質層を設けた固体電解コンデンサの製造方法において、下記一般式(VII)
【化14】
Figure 0004908672
【0066】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びkは前記(29)に記載の一般式(VI)と同じ意味を表わし、縮合環は1〜2個の窒素原子(N)またはN−オキシドを含んでもよい。)
で示される縮合ヘテロ多環式化合物を単独で、またはドーパント能を有する他のアニオンと共に、微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上で酸化剤の作用によって重合して、誘電体被膜上に固体電解質層を形成することを特徴とする前記(1)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0067】
(33) 縮合ヘテロ多環式化合物として、ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシド、ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン−2−オキシド及びジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−2−オキシド誘導体の中から選ばれる少なくとも1つを用いる前記(32)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0068】
(34) 縮合ヘテロ多環式化合物として、1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシド、5,6−ジオキシメチレン−1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシド、5,6−ジメトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシド、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン−2−オキシド及び1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−2−オキシドから選ばれる少なくとも1つを用いる前記(32)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0069】
(35) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に固体電解質として導電性ポリチオフェン組成物を設けた固体電解コンデンサの製造方法において、下記一般式(IX)
【化15】
Figure 0004908672
【0070】
(式中、R4及びR5は前記(17)の記載と同じ意味を表わす。)
で示されるチオフェンモノマーをナフタレンスルホン酸アニオンの存在下で、過硫酸塩の作用によって重合して、誘電体被膜上に固体電解質層を形成することを特徴とする前記(1)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0071】
(36) 過硫酸塩が、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムである前記(35)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0072】
(37) 誘電体層の金属酸化物多孔質内で酸化剤の作用による重合を少なくとも2回繰り返して行う前記(29)乃至(36)のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0073】
(38) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に導電性高分子組成物からなる固体電解質層を設けてなる固体電解コンデンサの製造方法において、前記誘電体被膜上で下記一般式(VIII)
【化16】
Figure 0004908672
【0074】
(式中、R1、R2及びXは、前記(16)に記載と同じ意味を表わす。)
で示されるモノマー化合物を、スルホキノンアニオンを供出できる化合物の存在下で酸化剤により重合させて固体電解質層を形成することを特徴とする前記(15)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0075】
(39) 前記一般式(VIII)で示されるモノマー化合物が、下記一般式(IX)
【化17】
Figure 0004908672
(式中、R4及びR5は、前記(17)に記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物である前記(38)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0076】
(40) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に導電性高分子組成物からなる固体電解質層を設ける固体電解コンデンサの製造方法において、前記誘電体被膜上でモノマーを酸化剤により重合させて固体電解質層を形成する方法であって、
前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物を含む溶液に浸漬する工程と、酸化剤及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬する工程を有することを特徴とする前記(15)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0077】
(41) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物を含む溶液に浸漬した後、酸化剤及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬する工程を含む前記(40)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0078】
(42) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物を含む溶液に浸漬した後、酸化剤及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返す工程を含む前記(41)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0079】
(43) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物を含む溶液に浸漬した後、酸化剤及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返した後、洗浄及び乾燥を行う前記(42)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0080】
(44) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物を含む溶液に浸漬する工程を含む前記(40)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0081】
(45) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を酸化剤及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物を含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返す工程を含む前記(44)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0082】
(46) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物を含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返した後、洗浄及び乾燥を行う前記(45)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0083】
(47) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に導電性高分子組成物からなる固体電解質層を設ける固体電解コンデンサの製造方法において、前記誘電体被膜上でモノマーを酸化剤により重合させて固体電解質層を形成する方法であって、
前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤を含む溶液に浸漬する工程とモノマー化合物及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬する工程を有することを特徴とする前記(15)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0084】
(48) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤を含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬する工程を含む前記(47)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0085】
(49) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤を含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返す工程を含む前記(48)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0086】
(50) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤を含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返した後、洗浄及び乾燥を行う前記(49)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0087】
(51) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬した後、酸化剤を含む溶液に浸漬する工程を含む前記(47)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0088】
(52) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬した後、酸化剤を含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返す工程を含む前記(51)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0089】
(53) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物及びスルホキノンアニオンを含む溶液に浸漬した後、酸化剤を含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返した後、洗浄及び乾燥を行う前記(52)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0090】
(54) 酸化剤が過硫酸塩である前記(38)乃至(53)のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0091】
(55) 酸化剤が過硫酸塩であり、モノマー化合物が下記一般式(VIII)
【化18】
Figure 0004908672
(式中、R1、R2及びXは、前記(16)に記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物である前記(40)乃至(53)のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0092】
(56) 前記一般式(VIII)で示されるモノマー化合物が、下記一般式(IX)
【化19】
Figure 0004908672
(式中、R4及びR5は、前記(17)に記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物である前記(55)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0093】
(57) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に導電性高分子組成物からなる固体電解質層を設けてなる固体電解コンデンサの製造方法において、前記誘電体酸化被膜上でモノマー化合物を酸化剤により重合させる製造方法であって、下記一般式(VIII)
【化20】
Figure 0004908672
【0094】
(式中、R1、R2及びXは、前記(27)に記載と同じ意味を表わす。)
で示されるモノマー化合物を、アントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを供出できる化合物の存在下で重合させて固体電解質層を形成することを特徴とする前記(22)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0095】
(58) 一般式(VIII)で示されるモノマー化合物が、下記一般式(IX)
【化21】
Figure 0004908672
(式中、R4及びR5は、前記(28)に記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物である前記(57)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0096】
(59) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に導電性高分子組成物からなる固体電解質層を設ける固体電解コンデンサの製造方法において、前記誘電体被膜上でモノマーを酸化剤により重合させて固体電解質層を形成する方法であって、
前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物を含む溶液に浸漬する工程と、酸化剤及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬する工程を有することを特徴とする前記(22)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0097】
(60) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物を含む溶液に浸漬した後、酸化剤及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬する工程を含む前記(59)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0098】
(61) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物を含む溶液に浸漬した後、酸化剤及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返す工程を含む前記(60)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0099】
(62) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物を含む溶液に浸漬した後、酸化剤及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返した後、洗浄及び乾燥を行う前記(61)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0100】
(63) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物を含む溶液に浸漬する工程を含む前記(59)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0101】
(64) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物を含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返す工程を含む前記(63)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0102】
(65) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物を含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返した後、洗浄及び乾燥を行う前記(64)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0103】
(66) 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に導電性高分子組成物からなる固体電解質層を設ける固体電解コンデンサの製造方法において、前記誘電体被膜上でモノマーを酸化剤により重合させて固体電解質層を形成する方法であって、
前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤を含む溶液に浸漬する工程とモノマー化合物及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬する工程を有することを特徴とする前記(22)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0104】
(67) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤を含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬する工程を含む前記(66)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0105】
(68) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤を含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返す工程を含む前記(67)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0106】
(69) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、酸化剤を含む溶液に浸漬した後、モノマー化合物及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返した後、洗浄及び乾燥を行う前記(68)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0107】
(70) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬した後、酸化剤を含む溶液に浸漬する工程を含む前記(66)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0108】
(71) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬した後、酸化剤を含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返す工程を含む前記(70)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0109】
(72) 前記誘電体被膜層を形成した弁作用金属を、モノマー化合物及び1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液に浸漬した後、酸化剤を含む溶液に浸漬する工程を複数回繰り返した後、洗浄及び乾燥を行う前記(71)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0110】
(73) モノマー化合物が、下記一般式(VIII)
【化22】
Figure 0004908672
(式中、R1、R2及びXは、前記(27)に記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物である前記(59)乃至(72)のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0111】
(74) 前記一般式(VIII)で示されるモノマー化合物が、下記一般式(IX)
【化23】
Figure 0004908672
(式中、R4及びR5は、前記(28)に記載と同じ意味を表わす。)
で示される化合物である前記(73)に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0112】
(75) 酸化剤が過硫酸塩である前記(57)乃至(74)のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
(76) 固体電解質層の少なくとも一部が層状構造をなしている前記(15)に記載の固体電解コンデンサ。
(77) 少なくとも一部が層状構造の前記固体電解質層が、誘電体被膜上の外部表面または外部表面と微細孔部分内に形成されている前記(76)に記載の固体電解コンデンサ。
(78) 前記層状構造の層間の少なくとも一部に空間部を有する前記(76)または(77)に記載の固体電解コンデンサ。
(79) 前記層状構造をなす固体電解質の各層の厚さが0.01〜5μmの範囲であり、固体電解質層の全体の厚さが1〜200μmの範囲である前記(76)乃至(78)のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
(80) 固体電解質層の少なくとも一部が層状構造をなしている前記(22)に記載の固体電解コンデンサ。
(81) 少なくとも一部が層状構造の前記固体電解質層が、誘電体被膜上の外部表面または外部表面と微細孔部分内に形成されている前記(80)に記載の固体電解コンデンサ。
(82) 前記層状構造の層間の少なくとも一部に空間部を有する前記(80)または(81)に記載の固体電解コンデンサ。
(83) 前記層状構造をなす固体電解質の各層の厚さが0.01〜5μmの範囲であり、固体電解質層の全体の厚さが1〜200μmの範囲である前記(80)乃至(82)のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
(84) 層状構造が3層以上の層状構造である前記(1)記載の固体電解コンデンサ。
(85) 前記層状構造の層間の少なくとも一部に空間部を有する前記(84)に記載の固体電解コンデンサ。
(86) 前記層状構造をなす固体電解質の各層の厚さが0.01〜5μmの範囲であり、固体電解質層の全体の厚さが1〜200μmの範囲である前記(84)または(85)に記載の固体電解コンデンサ。
【0113】
本発明の固体電解コンデンサにおいて使用する弁作用金属とは、アルミニウム、タンタル、チタン、ニオブ、ジルコニウム、マグネシウム、珪素などの単体金属、またはこれらの合金である。それらの形態は、圧延箔のエッチング物、微粉焼結体など微細孔を有する成形体の形態であればよい。
【0114】
これらの弁作用金属には酸化物からなる誘電体被膜が形成されている。
本発明の固体電解コンデンサの一つは、熱応力緩和特性等を具備させるために固体電解質層の少なくとも一部を層状構造としたものである。
【0115】
固体電解質層は弁作用金属表面の誘電体層上の微細孔部分内及びその外部表面に形成される。この外部表面層の厚さは1〜200μmの範囲、好ましくは1〜100μmの範囲である。本発明において上記の層状構造はこの外部表面に多く形成されるが微細孔部分内にも形成されていることが望ましい。層の配列方向は多くは弁作用金属面にほぼ平行に形成されている。そして隣接する層間の少なくとも一部には空間部が形成されている。層状構造をなす各層の一層当りの厚さは0.01〜5μmの範囲であり、好ましくは0.01〜1μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜0.3μmの範囲である。
【0116】
本発明の固体電解コンデンサにおいて使用される固体電解質は、π電子共役系高分子またはそれ以外の高分子、これらの複合物が好ましいが、特にπ電子共役系高分子あるいはこれを含む高分子が好ましい。
【0117】
π電子共役系高分子としては前記一般式(I)の高分子が好適である。
【化24】
Figure 0004908672
(式中の記号は、前記と同じ意味を表わす。)
【0118】
一般式(I)において、置換基R1、R2、及びxがNR3の場合のR3はC1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。具体例としては、メチル、エチル、ビニル、プロピル、アリル、イソプロピル、ブチル、1−ブテニルが挙げられる。また、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシが挙げられる。さらに、前記炭化水素基やアルコキシ基以外の置換基としては、例えば、ニトロ基、シアノ基、フェニル及び置換フェニル(Cl、Br、F等のハロゲン基置換フェニル)が挙げられる。前記のR1、R2のアルキル基、アルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を任意に含有してもよく、特に有用な例としてはメトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシが挙げられる。
【0119】
また、前記置換基R1及びR2は、互いに任意の位置で結合して、少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。このような、一般式(I)の二価の基の例としては、3,4−プロピレン置換構造、3,4−ブチレン置換構造、3,4−ブテニレン置換構造、3,4−ブタジエニレン置換構造、ナフト[2,3−c]縮合構造が挙げられる。
【0120】
Xはヘテロ原子を表わす。具体例としては、S、O、Se、TeまたはNR3である。XがSである前記3,4−ブタジエニレン置換構造は、一般式(I)の化学構造の場合は別名イソチアナフテニレン構造と呼ばれる。さらに、ナフト[2,3−c]縮合構造は、一般式(I)の場合はナフト[2,3−c]チエニレン縮合構造である。式中、δは繰り返し構造単位当りの荷電数を表わし、0〜1の範囲の値である。
【0121】
前記一般式(I)で示される高分子としては、例えば下記一般式(II)
【化25】
Figure 0004908672
(式中の記号は、前記と同じ意味を表わす。)
で示される高分子が挙げられる。
【0122】
一般式(II)中のR4及びR5の置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ビニル、アリルが挙げられる。さらに、R4及びR5のC1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、前記一般式(II)中に記載の2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わし、例えば1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,2−ジメチル−エチレンが好ましい。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれ、例えば、1,2−ビニレン、1,2−プロペニレン、2,3−ブチレン−2−エン、1,2−シクロヘキシレン、メチル−o−フェニレン、1,2−ジメチル−o−フェニレン、エチル−o−フェニレンが挙げられる。
【0123】
上記した本発明の固体電解コンデンサは、誘電体層上の固体電解質の少なくとも一部が層状構造をなし、さらに好ましくは隣接する層間の少なくとも一部に空間部を有する導電性高分子層を設けているため、熱応力を有効に緩和できる。また、好ましくは弁作用金属の外部表面に形成された導電性高分子等の固体電解質層にも空間部が形成されているため、導電ペースト層が空間内に入り込み、良好な密着性が得られる。微細孔内に空間部が形成されていると酸素の供給が確保され、導通時における誘電体被膜の修復能力が向上する。
【0124】
固体電解質層に層状構造及び空間部を形成するには、例えば、後述の実施例に示すようにモノマーと酸化剤を所定の方法で供給し、重合させる工程を繰り返す方法を用いることができる。酸化剤としては、FeCl3やFeClO4、Fe(有機酸アニオン)塩等のFe(III)系化合物類、または無水塩化アルミニウム/塩化第一銅、アルカリ金属過硫酸塩類、過硫酸アンモニウム塩類、過酸化物類、過マンガン酸カリウム等のマンガン類、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、テトラシアノ−1,4−ベンゾキノン等のキノン類、よう素、臭素等のハロゲン類、過酸、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸等のスルホン酸、オゾン等及びこれら複数の酸化剤の組み合わせなどが用いられる。
【0125】
次にハンダ耐熱性等を高めた本発明の固体電解コンデンサについて説明する。このコンデンサは固体電解質として一般式(III)
【化26】
Figure 0004908672
(式中の記号は、前記と同じ意味を表わす。)
で示される縮合ヘテロ多環式重合体を使用するものである。
【0126】
一般式(III)で示される重合体はその繰り返しの構成単位が前記一般式(VI)
【化27】
Figure 0004908672
(式中の記号は、前記と同じ意味を表わす。)
で示される縮合ヘテロ多環式化合物である。
【0127】
一般式(VI)で示される化合物は、具体的には例えばk=0である下記一般式(X)
【化28】
Figure 0004908672
【0128】
(式中、R6、R7、R8及びR9は一般式(VI)と同じ意味を表わし、式中の縮合環には窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよい。)で示される1,3−ジヒドロイソチアナフテン(別名、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェンとも言う。)骨格を有する誘導体であり、また、k=1である下記一般式(XI)
【0129】
【化29】
Figure 0004908672
【0130】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は一般式(VI)と同じ意味を表わし、式中の縮合環には窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよい。)で示される1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン骨格を有する誘導体である。さらには、1,3−ジヒドロアントラ[2,3−c]チオフェン骨格を有する誘導体や1,3−ジヒドロナフタセノ[2,3−c]チオフェン骨格を有する誘導体も例示として挙げることができる。
【0131】
また、一般式(VI)で示される縮合ヘテロ多環式化合物の置換基R6、R7、R8、R9のうち、隣合う2つの置換基が相互に不飽和結合で結合しあって縮合系6員環(オルソ置換)を新たに形成する誘導体も含まれ、例えばその具体例としては、式中k=0の場合においては、1,3−ジヒドロナフト[1,2−c]チオフェン誘導体が、また式中k=1の場合では1,3−ジヒドロフェナントラ[2,3−c]チオフェン誘導体や1,3−ジヒドロトリフェニロ[2,3−c]チオフェン誘導体が、そして式中k=2の場合では1,3−ジヒドロベンゾ[a]アントラセノ[7,8−c]チオフェン誘導体等が包含される。
【0132】
また、一般式(VI)で示される縮合ヘテロ多環式化合物の縮合環には窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよく、例えば、式中k=0の場合では1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンや1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−4−オキシド、1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−4,9−ジオキシドを挙げることができる。
【0133】
また、R6、R7、R8、R9、R10及びR11が表わす置換フェニルの置換基としては、Cl、Br、I、FまたはCF3が挙げられる。
このように、一般式(VI)で示される縮合ヘテロ多環式化合物は、前記の如く1,3−ジヒドロ型の縮合ヘテロ多環式化合物骨格を有し、本発明に記載の酸化反応プロセスによって容易に導電性重合体を与えることができる。
【0134】
上記の一般式(VI)、(X)、(XI)の化合物を繰り返しの構造単位とする重合体が各々一般式(III)、(IV)、(V)に示す重合体である。
【0135】
【化30】
Figure 0004908672
【0136】
【化31】
Figure 0004908672
【0137】
【化32】
Figure 0004908672
【0138】
上記一般式(VI)、(IX)、(X)の化合物としては、例えば以下の構造式で示される化合物を挙げることができる。
【0139】
【化33】
Figure 0004908672
【0140】
【化34】
Figure 0004908672
【0141】
【化35】
Figure 0004908672
【0142】
【化36】
Figure 0004908672
【0143】
【化37】
Figure 0004908672
【0144】
【化38】
Figure 0004908672
【0145】
【化39】
Figure 0004908672
【0146】
【化40】
Figure 0004908672
【0147】
【化41】
Figure 0004908672
【0148】
【化42】
Figure 0004908672
【0149】
【化43】
Figure 0004908672
【0150】
【化44】
Figure 0004908672
【0151】
【化45】
Figure 0004908672
【0152】
【化46】
Figure 0004908672
【0153】
【化47】
Figure 0004908672
【0154】
【化48】
Figure 0004908672
【0155】
【化49】
Figure 0004908672
【0156】
【化50】
Figure 0004908672
【0157】
【化51】
Figure 0004908672
【0158】
【化52】
Figure 0004908672
【0159】
さらに本発明の固体電解コンデンサにおいては、特定の導電性ポリチオフェン組成物を固体電解質として用いることによりリフロー耐熱性等を高めることができる。
この導電性ポリチオフェン組成物は導電性ポリチオフェンに硫酸イオンを含むことが好ましく、さらに他のドーパント能を有するアニオンを含むことが好ましい。
【0160】
この場合の導電性ポリチオフェンとしては前記一般式(II)、すなわち下記の構造式のものが好適に用いられる。
【化53】
Figure 0004908672
【0161】
式中のR4及びR5は、各々独立に水素またはC1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基を表わし、好ましい置換基としてメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ビニル、アリルが挙げられる。
さらに、R4及びR5のC1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、前記一般式(II)中に記載の2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わし、例えば、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,2−ジメチル−エチレンが好ましい。
【0162】
また、R4及びR5は、前記C1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、置換ビニレン基または置換o−フェニレン基等の不飽和炭化水素の環状構造を形成してもよく、例えば、1,2−ビニレン、1,2−プロペニレン、2,3−ブチレン−2−エン、1,2−シクロヘキシレン、メチル−o−フェニレン、1,2−ジメチル−o−フェニレン、エチル−o−フェニレンが挙げられる。δは0〜1の範囲である。
【0163】
上記の導電性ポリチオフェン組成物中の硫酸イオンは過硫酸アンモニウムやアルカリ金属過硫酸塩等の過硫酸塩の還元体に由来させることが好ましい。
【0164】
本発明の固体電解コンデンサにおいて、リフロー耐熱性等を高めた前記一般式(III)〜(V)の縮合ヘテロ多環式重合体や前記導電性ポリチオフェン組成物を用いて固体電解質層の少なくとも一部を層状構造とすることができる。この場合に層状構造の層間の少なくとも一部に空間部を形成することが好ましい。その他層状構造は弁作用金属の外部表面に形成されるが誘電体被膜上の微細孔内にも形成されていることが望ましいこと、層状構造をなす固体電解質の各層の1層当りの厚さが0.01〜5μm、弁作用金属の外部表面に形成される固体電解質層の厚さは1〜200μm、好ましくは1〜100μmである等は前記した通りである。
【0165】
このように構成することにより固体電解質がリフロー耐熱性に優れるばかりでなく、熱応力の緩和能力、導電ペーストとの密着性、誘電体酸化皮膜の修復能力に優れた固体電解コンデンサが得られる。
【0166】
次に製造方法の発明について説明する。
本発明の固体電解コンデンサは固体電解質である前記各ヘテロ化合物重合体の繰り返しの構造単位に対応した各々のヘテロ環状化合物を微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上で酸化剤の作用によって重合させ、その重合体を固体電解質層とすることによって製造することができる。
【0167】
前記(29)項の固体電解コンデンサの製造方法の発明は前記一般式(VI)で示される縮合ヘテロ多環式化合物を上記同様重合させる方法である。この方法によって一般式(III)の縮合ヘテロ多環式重合体が得られる。
【0168】
一般式(VI)においてk=0である縮合ヘテロ多環式化合物は前記一般式(X)で示されるものであり、またk=1である化合物は前記一般式(XI)で示されるものである。一般式(X)、(XI)における具体的化合物は前記構造式(a)〜(t)に示すものなど前記のものと同様である。
この一般式(X)あるいは(XI)で示される化合物を重合することにより、各々一般式(IV)あるいは(V)に示す縮合ヘテロ多環式重合体が得られる。
【0169】
また前記(32)項の発明は一般式(VII)
【化54】
Figure 0004908672
【0170】
(式中の記号は、前記と同じ意味を表わす。)
で示される縮合ヘテロ多環式化合物を前記と同様に重合させる方法である。この方法により前記一般式(III)で示される縮合ヘテロ多環式重合体が得られる。
【0171】
一般式(VII)においてk=0である縮合ヘテロ多環式化合物は下記一般式(XII)
【化55】
Figure 0004908672
【0172】
(式中、R6、R7、R8及びR9は一般式(VII)と同じ意味を表わし、また式中の縮合環には窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよい。)で示される1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシド(別名、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン−2−オキシドとも言う。)骨格を有する誘導体であり、また、k=1である化合物は下記一般式(XIII)
【0173】
【化56】
Figure 0004908672
【0174】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は一般式(VII)と同じ意味を表わし、また式中の縮合環には窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよい。)で示される1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン−2−オキシド骨格を有する誘導体である。さらには、1,3−ジヒドロアントラ[2,3−c]チオフェン−2−オキシド骨格を有する誘導体や1,3−ジヒドロナフタセノ[2,3−c]チオフェン−2−オキシド骨格を有する誘導体も例として挙げることができる。
【0175】
また、一般式(VII)で示される縮合ヘテロ多環式化合物の置換基R6、R7、R8、R9のうち、隣合う2つの置換基が相互に不飽和結合で結合しあって縮合系6員環(オルソ置換)を新たに形成する誘導体も含まれ、その具体例としては、式中k=0の場合においては、1,3−ジヒドロナフト[1,2−c]チオフェン−2−オキシド誘導体が、また式中k=1の場合では1,3−ジヒドロフェナントラ[2,3−c]チオフェン−2−オキシド誘導体や1,3−ジヒドロトリフェニロ[2,3−c]チオフェン−2−オキシド誘導体が、そして式中k=2の場合では1,3−ジヒドロベンゾ[a]アントラセノ[7,8−c]チオフェン−2−オキシド誘導体等が包含される。
【0176】
また、一般式(VII)で示される縮合ヘテロ多環式化合物の縮合環は窒素またはN−オキシドを任意に含んでもよい。例えば、式中k=0の場合では1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−2−オキシドや1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−2,4−ジオキシド、1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−2,4,9−トリオキシドを挙げることができる。
【0177】
このように、一般式(VII)で示される縮合ヘテロ多環式化合物は、前記の如く1,3−ジヒドロ−2−オキシド型の縮合ヘテロ多環式化合物骨格を有し、本発明に記載の酸化反応プロセスによって容易に導電性重合体組成物を与えることができる。
一般式(XII)、一般式(XIII)で示される具体的化合物としては以下の化合物を挙げることができる。
【0178】
【化57】
Figure 0004908672
【0179】
【化58】
Figure 0004908672
【0180】
【化59】
Figure 0004908672
【0181】
【化60】
Figure 0004908672
【0182】
【化61】
Figure 0004908672
【0183】
【化62】
Figure 0004908672
【0184】
【化63】
Figure 0004908672
【0185】
【化64】
Figure 0004908672
【0186】
【化65】
Figure 0004908672
【0187】
【化66】
Figure 0004908672
【0188】
【化67】
Figure 0004908672
【0189】
【化68】
Figure 0004908672
【0190】
【化69】
Figure 0004908672
【0191】
【化70】
Figure 0004908672
【0192】
【化71】
Figure 0004908672
【0193】
【化72】
Figure 0004908672
【0194】
【化73】
Figure 0004908672
【0195】
【化74】
Figure 0004908672
【0196】
【化75】
Figure 0004908672
【0197】
【化76】
Figure 0004908672
【0198】
上記の一般式(VI)及び一般式(VII)の化合物の重合方法は、縮合ヘテロ多環式化合物の酸化的脱水素反応(重合反応)が特徴であり、さらに一般式(VII)の化合物ではこの反応に加えて分子内脱水反応が金属酸化物誘電体層(被膜)の微細孔内において起こることが特徴であり、そのような反応であるため、より活性化され、重合反応が促進されて、容量、tanδ、漏れ電流、インピーダンス及びリフロー耐熱性等のコンデンサ特性上好ましい、高電導度の重合体を効果的に得ることが出来る。
【0199】
すなわち、一般式(VI)の反応による固体電解質(重合体)の製造方法によれば、縮合ヘテロ多環式化合物の脱水素的酸化反応(4電子酸化)が、金属酸化物表面または近傍で溶媒の存在下または無溶媒下で短時間かつ簡便な反応条件で効果的に達成可能であって、従来既知のピロール類またはチオフェン類の脱水素的酸化反応(この場合2電子酸化重合)に比べて、産業上有用な固体電解コンデンサ特性を提供することができる。
【0200】
前記誘電体層中でのin-situ化学重合により促進効果が得られる原理は定かではないが、該誘電体の複雑な微細構造の寄与または大きな比表面積による効果または酸化物薄膜の持つ表面自由エネルギーの寄与等が考えられる。
【0201】
これまで重合体を製造する公知の方法としては、例えば、特開昭63-118323号公報及び特開平2-242816号公報において、1,3−ジヒドロイソチアナフテン構造を有するモノマーが酸化剤の存在下で酸化的に重合される方法が開示されている。しかしながら、これらは単なる高分子化学の重合方法の例示であり、金属酸化物表面での効果を利用する本発明記載の化学反応プロセス(in-situ化学重合法)については全く記載されていない。また、Synthetic Metals誌(16巻,379〜380頁,1986年)においては、1,3−ジヒドロイソチアナフテン構造を有するモノマーを酸素と酸化剤の共存下で酸化的に重合する方法が開示されているが、これも単なる合成反応の例示である。特開昭62-118509号公報及び特開昭62-118511号公報においては、重合体は電気化学的に重合されたものを固体電解質として利用したものであり、製造プロセスが本発明の方法とは異なり、得られるコンデンサの特性も本発明のそれとは異なる。
【0202】
一般式(VII)の化合物の反応による固体電解質(重合体)の製造方法によれば、1,3−ジヒドロ−2−オキシド型の縮合ヘテロ多環式化合物(モノマー)は、誘電体層内において分子内脱水反応及び脱水素的2電子酸化反応(重合)を受けて、適正な電導度を有する重合体組成物をin-situ的に生成する。すなわち、その特徴として前記記載の分子内脱水反応及び脱水素的2電子酸化反応が、金属酸化物表面または近傍で溶媒の存在下または無溶媒下で短時間かつ簡便な反応条件で効果的に達成可能であって、従来既知のピロール類またはチオフェン類の脱水素的酸化反応のみ(この場合は2電子酸化重合)に比べて、産業上有用な固体電解コンデンサ特性を提供することができる。前記誘電体層中でのin-situ化学重合の促進効果は、該誘電体が酸化物であるために分子内脱水反応を誘発し(ルイス酸としての脱水作用)、また該誘電体層の大きな比表面積を持つ等の寄与により、前記酸化剤による脱水素的2電子酸化反応が効果的に促進されるものである。
【0203】
これまで重合体の製造方法に関する公知の方法(例えば、J. Org. Chem.誌,49巻,3382頁,1984年)において、1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシド構造を有するモノマーが硫酸の存在下で重合されてポリイソチアナフテン構造の重合体組成物を与える方法が開示されているが、これらは単なる高分子化学の重合方法の例示であり、金属酸化物表面での効果を利用する本発明記載の化学反応プロセス(in-situ化学重合法)については全く記載されていない。
【0204】
上記した本発明の製造方法によれば、固体電解コンデンサの高容量化を図ることができる。すなわち、直接金属酸化物被膜を有する箔(例えば、アルミニウム化成箔)中で前記化合物モノマーを単独で、または他のドーパント能を有するアニオンと共に、酸化剤の投入によって、脱水素的4電子酸化反応(重合)(一般式(VI)の化合物の場合)、分子内脱水反応及び脱水素的2電子酸化反応(重合)(一般式(VII)の化合物の場合)を段階的に複数回繰り返して実施することにより、重合体組成物を箔中に効果的に充填形成することができる。具体的には、縮合ヘテロ多環式化合物の重合において、先ず細孔構造を有する金属酸化物表面に酸化剤を溶液法による塗布、または気相法による昇華、蒸着等による方法で担持活性化させ、次いでまた必要に応じてドーパント能を有する他のアニオンを供与する化合物と共に縮合ヘテロ多環式化合物を微細構造表面に導入することによって、重合体組成物を誘電体層上または近傍に形成させるものである。この反応を段階的に繰り返し行うことにより、重合体組成物の固体電解質を細孔内部に効果的に充填形成することができる。これにより、固体電解質層内における導電パスの均一性が格段に改善でき、また細孔内部の不要な応力形成を防止(誘電体層の破壊防止)でき、結果的に高容量かつ低インピーダンスの優れたコンデンサ特性を実現することができる。
【0205】
さらに、本発明の製造方法により、ハンダ耐熱性(熱安定性)の優れた固体電解コンデンサを得ることができる。すなわち、従来既知のポリピロール等からなる固体電解質を用いたコンデンサでは、高温高湿度でのLCR(インダクタンス・キャパシタンス抵抗)値の変動が大きく信頼性を悪くしていたが、本発明による化学構造の導電性組成物は、熱安定性に優れかつドープ状態の安定性がよく、さらにはこれらの重合性組成物を誘電体表面に段階的に析出させるために重合体組成物の薄い膜質が何層にも重なった状態を作ることができ、重合体が誘電体被膜に対するダメージを生じない熱安定性に優れたコンデンサを提供することができる。
【0206】
本発明の製造方法において用いられる酸化剤は、脱水素的4電子酸化、脱水素的2電子酸化の酸化反応を充分行わせ得る酸化剤であれば良く、さらに微細孔内で反応させるという使用環境においてコンデンサ性能を向上させ得る酸化剤であれば良く、工業的に安価であり製造上取り扱いが容易である化合物が好まれる。具体的には、例えばFeCl3やFeClO4、Fe(有機酸アニオン)塩等のFe(III)系化合物類、または無水塩化アルミニウム/塩化第一銅、アルカリ金属過硫酸塩類、過硫酸アンモニウム塩類、過酸化物類、過マンガン酸カリウム等のマンガン類、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、テトラシアノ−1,4−ベンゾキノン等のキノン類、よう素、臭素等のハロゲン類、過酸、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸等のスルホン酸、オゾン等及びこれら複数の酸化剤の組み合わせが挙げられる。
【0207】
これらの中で、前記Fe(有機酸アニオン)塩を形成する有機酸アニオンの基本化合物としては、有機スルホン酸または有機カルボン酸、有機リン酸、有機ホウ酸等が挙げられる。有機スルホン酸の具体例としては、ベンゼンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、α−スルホ−ナフタレン、β−スルホ−ナフタレン、ナフタレンジスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸(アルキル基としてはブチル、トリイソプロピル、ジ−t−ブチル等)等が使用される。
【0208】
一方、有機カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、シュウ酸等が挙げられる。さらに本発明においては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸ポリ−α−メチルスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、ポリリン酸等の高分子電解質アニオンも使用されるが、これら有機スルホン酸または有機カルボン酸の例は単なる例示であってこれらに限定されない。また、前記アニオンの対カチオンは、H+、Na+、K+等のアルカリ金属イオン、または水素原子やテトラメチル基、テトラエチル基、テトラブチル基、テトラフェニル基等で置換されたアンモニウムイオン等が例示されるが、これらに限定されない。前記の酸化剤のうち、特に好ましいのは、3価のFe系化合物類、または塩化第一銅系、過硫酸アルカリ塩類、過硫酸アンモニウム塩類、マンガン酸類、キノン類を含む酸化剤が好適に使用できる。
【0209】
本発明の重合体組成物の製造方法において必要に応じて共存させるドーパント能を有するアニオンは、前記酸化剤から産生される酸化剤アニオン(酸化剤の還元体)を対イオンに持つ電解質化合物または他のアニオン系電解質を使用することができる。具体的には例えば、PF6 -、SbF6 -、AsF6 -の如き5B族元素のハロゲン化物アニオン、BF4 -の如き3B族元素のハロゲン化物アニオン、I-(I3 -)、Br-、Cl-の如きハロゲンアニオン、ClO4 -の如き過ハロゲン酸アニオン、AlCl4 -、FeCl4 -、SnCl5 -等の如きルイス酸アニオン、あるいはNO3 -、SO4 2-の如き無機酸アニオン、またはp−トルエンスルホン酸やナフタレンスルホン酸、C1〜5のアルキル置換ナフタレンスルホン酸、CF3SO3 -,CH3SO3 -の如き有機スルホン酸アニオン、またはCH3COO-、C65COO-のごときカルボン酸アニオン等のプロトン酸アニオンを挙げることができる。また、同じく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリ−α−メチルスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、ポリリン酸等の高分子電解質アニオン等を挙げることができるが、必ずしも限定されるものではない。しかしながら、好ましくは、高分子系及び低分子系の有機スルホン酸化合物あるいはポリリン酸化合物が挙げられ、望ましくは芳香族系のスルホン酸化合物(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等)が用いられる。
【0210】
本発明の製造方法において用いられる反応溶媒は、モノマーあるいは酸化剤、ドーパント能を有する電解質を共に、またはそれぞれ単独に溶解可能な溶媒であれば良く、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、あるいはジメチルホルムアミド(DMF)やアセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類、クロロホルムや塩化メチレン等の非芳香族性の塩素系溶媒、ニトロメタンやニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、あるいはメタノールやエタノール、プロパノール等のアルコール類、または蟻酸や酢酸、プロピオン酸等の有機酸または該有機酸の酸無水物(無水酢酸等)、水、あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。また、前記酸化剤及び/またはドーパント能を有する電解質およびモノマーは、それぞれ単独に溶解した溶媒系、すなわち2液系もしくは3液系で取り扱って誘電体層内に化合物を導入し重合反応に供してもよい。
【0211】
本発明の前記(35)項の製造方法は、下記一般式(VIII)
【化77】
Figure 0004908672
【0212】
(式中、R1、R2及びXは前記と同じ意味を表わす。)
で示されるヘテロ環化合物モノマーの中で、特に下記一般式(IX)
【化78】
Figure 0004908672
【0213】
(式中、R4及びR5は前記と同じ意味を表わす。)
で示されるをチオフェンモノマーをナフタレンスルホン酸アニオンの存在下で過硫酸塩(酸化剤)の作用によって重合する方法である。
【0214】
この方法によって硫酸イオン及びナフタレンスルホン酸イオンを含有する導電性ポリチオフェン組成物からなる電解質層が形成される。この組成物中のポリチオフェンは前記一般式(II)に示すものである。
一般式(IX)中の好ましい置換基等は一般式(II)の導電性ポリチオフェンの説明についての記載と同様である。
【0215】
本発明の上記製造方法において使用される、前記一般式(IX)のチオフェン類のうち、3,4−ジオキシエチレン−チオフェンをはじめとする一部のモノマー化合物は公知であり(特開平2-15611号公報(米国特許第4,910,645号))、本発明で使用する過硫酸塩の酸化剤のうち、過硫酸アンモニウム(APSと略する。)やアルカリ金属過硫酸塩の使用も公知である。
【0216】
しかしながら、本発明は酸化重合後の導電性組成物中の硫酸イオン含量が0.1〜10モル%の範囲であり、好ましくは0.2〜5モル%で、かつナフタレンスルホン酸イオン含有量が1〜50モル%の範囲であり、好ましくは5〜40モル%であることを特徴とする。
【0217】
このような導電性組成物中に前記一般式(IX)で示される構造単位を含む重合体を固体電解質とした固体電解コンデンサは、耐電圧特性に特に優れたものでありこれまで知られていなかった。さらに本発明は、前記硫酸イオン含有量とナフタレンスルホン酸イオン含有量の総計値が、導電性組成物の全重量に対して、1.1〜60モル%の範囲であることが好ましい。前記の製造方法において、該組成物の硫酸イオン等が上記の範囲になるように製造条件を定めることができる。
【0218】
コンデンサの製造方法において、前記したように高容量の高周波特性並びにtanδ、漏洩電流、耐熱性(リフロー性)、耐久性等を改善するためには前記固体電解質の形成方法が重要である。そのためには固体電解質を密に充填形成して導電パスの均一性を改善することは重要であり、導電性組成物の構成が非常にコンデンサ特性に影響を与える。本発明においては、前記チオフェンモノマーをナフタレンスルホン酸アニオンの存在下で、過硫酸塩の作用によって酸化重合させて該固体電解質を製造する工程を、1つの陽極基板(弁作用金属)に対して複数回、好ましくは5〜20回繰り返すことによって容易に達成することができる。この場合、前記チオフェンモノマーとナフタレンスルホン酸アニオンを含む溶液(溶液1)を誘電体層に塗布または浸漬する工程と、過硫酸塩を溶解した溶液(溶液2)を前後して別々に塗布または浸漬する工程を含んでもよい。また、溶液1及び溶液2の溶媒は同じでもよく、あるいは異なった溶媒系でもよい。
【0219】
さらに前記酸化重合の繰り返し処理は、ハンダ耐熱性(熱安定性)の優れた固体電解質の生成を容易にする。本発明の方法で得られる導電性組成物の固体電解質を具備したコンデンサは、熱安定性に優れかつドープ状態の安定性がよい。これは、前記硫酸イオンとナフタレンスルホン酸イオンを有する重合体組成物が誘電体表面および細孔内部まで充填よく段階的に析出させることができるために、重合体組成物の薄い膜質が何層にも重なった状態を作ることができ、これにより重合体が誘電体被膜に対するダメージを生じない熱安定性に優れたコンデンサが得られるからである。
【0220】
この製造方法において用いられる過硫酸塩としては過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムが好ましい。
また製造方法において用いられる反応溶液の溶媒は一般式(VI)、(VII)の化合物の反応において用いられる前記の溶媒と同様のものである。
以下に一般式(VI)、(VII)及び(IX)で示される化合物を用いた場合の重合反応の好ましい条件について説明する。
【0221】
上記の製造方法において用いられる一般式(VI)、(VII)及び(IX)のモノマー濃度は、その化合物の置換基(種類)や溶媒等の種類によって異なるが、一般には10-3〜10モル/リットルの範囲が望ましく、10-2〜5モル/リットルの範囲がさらに好ましい。反応温度は、それぞれ反応方法によって定められるもので特に限定できるものではないが、一般的には−70〜250℃の温度範囲で選ばれる。望ましくは、0〜150℃であり、さらに15〜100℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0222】
上記の重合方法においては、先ず酸化剤を誘電体層の表面に担持させ、次いでモノマーを供給し、重合させることが好ましい。
以上のように本発明の固体電解コンデンサは各種の方法によって製造されるが、得られる固体電解質の電導度は、0.1〜200S/cmの範囲であるが、望ましい条件では1〜100S/cm、さらに好ましくは10〜100S/cmの範囲である。
【0223】
固体電解コンデンサには一般に固体電解質層(半導体)上に電気的接触をよくするために導電体層が設けられる。本発明のコンデンサについても、導電ペーストの固体、またはメッキや金属蒸着、導電樹脂フィルムの形成等によりこのような導電体層を設けることが好ましい。
【0224】
次に、本発明の好ましい態様である、前記(15)〜(21)項及び(38)〜(56)項に記載の、固体電解質中に一つ以上のスルホアニオン基とキノン構造を分子内に有するスルホキノンを含み、かつ前記キノン以外のドーパントとして、他のドーパント能を有するアニオンを併含する小型で低インピーダンスかつ火花電圧試験に耐久性のある高性能な固体電解コンデンサ及びその製造方法について説明する。
【0225】
本発明では、導電性高分子組成物中に、一つ以上のスルホアニオン基とキノン構造を分子内に有するスルホキノン(以下、単にスルホキノンと略する。)アニオンを主要なドーパント能を有するアニオンとして含み、かつ助ドーパントとしてスルホキノン以外のアニオンを併含することにより、耐熱性がある好ましい導電性高分子組成物層(電荷移動錯体)を形成することができ、この結果低インピーダンス特性に優れた固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
【0226】
ここで使用する導電性高分子組成物中のπ電子共役高分子は、前記したポリマー主鎖構造にπ電子共役系構造を有する高分子である。具体例としてはポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリヘテロ環式高分子及びその置換誘導体が挙げられる。好ましい具体例として用いられるポリヘテロ環式高分子は、前記一般式(I)
【0227】
【化79】
Figure 0004908672
(式中の記号は、前記と同じ意味を表わす。)
で示される構造単位を含むπ電子共役高分子であり、さらに好ましくは前記一般式(II)
【0228】
【化80】
Figure 0004908672
(式中の記号は、前記と同じ意味を表わす。)
で示される構造単位を含むπ電子共役高分子である。
【0229】
前記一般式(I)の重合体は、一般式(VIII)
【化81】
Figure 0004908672
(式中、R1、R2及びXは前記と同じ意味を表わす。)
で示されるヘテロ環化合物を重合することにより得られ、また前記一般式(II)の重合体は、一般式(IX)
【0230】
【化82】
Figure 0004908672
(式中、R4及びR5は前記と同じ意味を表わす。)
で示される化合物を重合することにより得られる。
【0231】
前記一般式(I)及び一般式(VIII)に関し、置換基R1、R2、R3のC1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。具体例としては、メチル、エチル、ビニル、プロピル、アリル、イソプロピル、ブチル、1−ブテニルが挙げられる。また、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基の有用な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシが挙げられる。さらに、前記炭化水素基やアルコキシ基以外の有用な置換基としては、ニトロ基、シアノ基、フェニル及び置換フェニル(Cl、Br、F等のハロゲン基置換フェニル)が挙げられる。前記のR1、R2のアルキル基、アルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を任意に含有してもよく、特に有用な例としてはメトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシが挙げられる。
【0232】
また、前記置換基R1及びR2が互いに任意の位置で結合して、少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。例えば、一般式(I)または一般式(VIII)の置換例としては、下記に示す3,4−プロピレン置換構造、3,4−ブチレン置換構造、3,4−ブテニレン置換構造、3,4−ブタジエニレン置換構造、ナフト[2,3−c]縮合構造が挙げられる。
【0233】
【化83】
Figure 0004908672
【0234】
【化84】
Figure 0004908672
【0235】
Xはヘテロ原子を表わす。具体例としては、S、O、Se、TeまたはNR3である。XがSである前記3,4−ブタジエニレン置換構造は、一般式(I)のモノマー化合物構造では別名イソチアナフテニレン構造と呼ばれ、また一般式(VIII)のモノマー化合物構造ではイソチアナフテンと呼ばれる。さらに、ナフト[2,3−c]縮合構造は、一般式(I)の場合はナフト[2,3−c]チエニレン構造であり、一般式(VIII)のモノマー化合物構造ではナフト[2,3−c]チオフェンと呼ばれる。式中、δは繰り返し構造単位当りの荷電数を表し、0〜1の範囲の値である。
【0236】
一般式(II)または一般式(IX)中のR4及びR5の有用な置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ビニル、アリルが挙げられる。さらに、R4及びR5のC1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、前記一般式(II)または一般式(IX)中記載の2つの酸素元素を含む、少なくとも1つ以上の5〜7員環の複素環状構造を形成する置換基であり、例えば、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,2−ジメチル−エチレンが好ましい。また、R4及びR5は、前記C1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、置換ビニレン基または置換o−フェニレン基等の不飽和炭化水素の環状構造を形成してもよく、例えば下記に示す1,2−ビニレン、1,2−プロペニレン、2,3−ブチレン−2−エン、1,2−シクロヘキシレン、メチル−o−フェニレン、1,2−ジメチル−o−フェニレン、エチル−o−フェニレンが挙げられる。
【0237】
【化85】
Figure 0004908672
【化86】
Figure 0004908672
【0238】
本発明の固体電解コンデンサ及びその製造方法において、使用される前記一般式(VIII)で示されるモノマー化合物のうち、例えばチオフェン(R1=R2=H、X=S)やピロール(R1=R2=H、X=NH)、または前記一般式(IX)で表されるチオフェン類のうち3,4−ジオキシエチレン−チオフェンのモノマー化合物は公知であり、これらのモノマー化合物を重合し得る酸化剤も多くは公知である。しかしながら、導電性組成物中にドーパントとしてスルホキノンアニオン及び助ドーパントとして他のアニオンを併含して用いた固体電解質を具備したコンデンサは、これまで知られていなかった。
【0239】
すなわち、前記特開平10-32145号公報(欧州特許公開第820076(A2)号)において開示されているコンデンサの導電性高分子組成物は、ベンゾキノンスルホン酸や脂環式スルホン酸のような特定の有機スルホン酸をドープしたポリ(3,4−ジオキシエチレン−チオフェン)重合体であり、ドーパントは特定化学構造の有機スルホン酸アニオンのみである。この有機スルホン酸アニオンは、酸化剤に使用している鉄化合物や第二銅系化合物を構成しているアニオンから供与される技術を開示しており、助ドーパントアニオンの混入は開示されていない。
【0240】
すなわち、本発明の固体電解コンデンサの固体電解質を構成しているアニオンは、前記π共役系高分子の組成物全重量に対して、前記スルホキノンアニオンを0.1〜50モル%の範囲で含み、かつ前記アニオン以外の他のアニオンを0.1〜10モル%の範囲で含む固体電解質を具備したコンデンサであって、前記課題を解決した、特に低インピーダンス特性に優れたコンデンサはこれまで知られていなかった。また、スルホキノンアニオンの1つとして、アントラキノンスルホン酸アニオンをドーパントとして含む固体電解コンデンサの例としては、前記の特公平6-101418号公報(米国特許第4,959,753号)が開示されているが、該当コンデンサには二酸化マンガンが誘電体被膜上に付着された弁金属上に導電性高分子組成物が設けられており、本願発明とは構成が異なり、また前記のごとく二酸化マンガンの形成時(熱分解時)に酸化皮膜層が破壊されてしまう可能性が潜在する欠点が指摘されている。
【0241】
本発明のコンデンサにおいては、特に低インピーダンス特性に優れたコンデンサを提供できる固体電解質を具備したものとして、前記スルホキノンの含量の好ましい範囲がπ共役系高分子の組成物全重量に対して1〜30モル%の範囲である。一方、本発明の前記固体電解質におけるスルホキノンアニオン以外の他のアニオン含量は、好ましくは該高分子の組成物全重量に対して、0.1〜5モル%の範囲である。前記他のアニオンは、本発明の製造方法においてモノマー化合物の重合時に酸化剤を使用するために、酸化剤の還元体アニオンとして含有されるが、別途他の方法により添加されてもよく、方法には制限を受けない。
【0242】
通常、コンデンサの製造方法において、高容量の高周波特性並びにtanδ、漏洩電流、耐熱性(リフロー性)、インピーダンス、耐久性等を改善するためには、前記固体電解質の製造(形成)方法が重要である。そのためには、固体電解質を構成するπ電子共役構造とドーパントの組み合わせ、及び導電性高分子組成物層を微細な誘電体層上に密に充填形成して導電パスの均一性を向上、または改善することは重要であり、特に導電性高分子組成物の構成が非常にコンデンサ特性に影響を与える。
【0243】
本発明の製造方法においては、前記モノマー化合物の重合体のドーパントとしてスルホキノンアニオン及び他のアニオンを共存させる製造方法に特徴があり、具体的には前記一般式(VIII)、好ましくは一般式(IX)で示されるモノマー化合物を、微細孔の誘電体被膜上で酸化剤の作用によってスルホキノンアニオンを供与できる化合物の存在下、酸化的重合を起こさせて生じた重合体組成物を該固体電解質として誘電体表面上に形成させる。そして、前記製造工程を1つの陽極基板に対して1回以上、好ましくは3〜20回繰り返すことによって緻密な固体電解質層を容易に形成することができる。
【0244】
例えば、好ましい製造工程の1つとして、前記重合反応にあっては、誘電体酸化皮膜層を形成した弁作用金属陽極箔を、酸化剤を含む溶液(溶液1)に浸漬する工程とモノマー化合物及びスルホキノンアニオンを含む溶液(溶液2)に浸漬する工程を含んでも良く、あるいは該陽極箔を、前記溶液2に浸漬した後で前記溶液1に浸漬する工程もしくは前記溶液1に浸漬した後で前記溶液2に浸漬する工程を含んでも良い。
【0245】
あるいは、別の実施形態として前記陽極箔を、酸化剤とスルホキノンアニオンを含む溶液(溶液3)に浸漬する工程とモノマー化合物を含む溶液(溶液4)に浸漬する工程を含んでも良く、あるいは前記陽極箔を、前記溶液4に浸漬した後で前記溶液3に浸漬する工程もしくは前記溶液3に浸漬した後で前記溶液4に浸漬する工程を含んだ製造方法を採用してもよい。前記溶液1〜溶液4は、それぞれ懸濁状態で用いても良い。
【0246】
さらには、前記浸漬工程は、塗布作業に変えてもよい。溶液1〜4の溶媒は必要に応じて同じでもよく、あるいは異なった溶媒系でもよく、溶媒の種類に応じて溶液1と溶液2の間、あるいは溶液3と溶液4の間の工程に別途乾燥工程を入れても良い。前記固体電解質形成後には素子を有機溶媒洗浄または水洗にて洗浄する工程を加えても良い。洗浄用有機溶媒には、好ましくは溶液1〜4で使用した溶媒で行うのが簡便で好ましいが、単にモノマー化合物やスルホキノン化合物、他のドーパント能を有するアニオンを保持する化合物を溶解する溶媒であれば何でも良い。
【0247】
さらに前記酸化的重合の繰り返し処理は、ハンダ耐熱性(熱安定性)の優れた固体電解質の生成を容易にする。従来既知のポリピロール等からなる固体電解質を用いたコンデンサでは、高温高湿度でのコンデンサ特性の変動が大きく信頼性を悪くしていたが、本発明で示された導電性組成物の固体電解質を具備したコンデンサは、熱安定性に優れかつドープ状態の安定性がよい。前記2種以上のドーパントを有する重合体組成物が誘電体表面および細孔内部まで充填よく段階的に析出させることができるために、該重合体組成物の薄い膜質が何層にも重なった状態を作ることができる。これにより、該重合体が誘電体被膜に対するダメージを生じない熱安定性に優れたコンデンサを提供することができる。
【0248】
また、本発明で使用するスルホキノンアニオンは、分子内にキノン構造のケトン基と電子吸引性基のスルホン酸基が同一分子内に置換された化学構造を有する化合物アニオンであるために、従来既知の分子アニオン(例えば、ClO4 -、BF4 -、Cl-、SO4 2-等)とはドーパント能力(電荷移動錯体の安定性、導電性等)及び化学的性質が異なり、また従来既知の前記分子アニオン(ClO4 -、BF4 -、Cl-、SO4 2-等)単独で使用する系に比べて優位な効果を示す。すなわち、複数のコンデンサ素子を製作した時のコンデンサ性能で比較した場合、特に優れた効果を引き出すことができる。
【0249】
本発明において使用するスルホキノンとは、分子内に一つ以上のスルホン酸基とキノン構造を有する化合物の総称であり、ドーパントとしてそのスルホン酸アニオンの形態で有効に働く化学構造であれば良い。例えば、スルホキノンの基本骨格を例示すると、p−ベンゾキノン、o−ベンゾキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、2,6−ナフトキノン、9,10−アントラキノン(以下、単にアントラキノンと略する。)、1,4−アントラキノン、1,2−アントラキノン、1,4−クリセンキノン、5,6−クリセンキノン、6,12−クリセンキノン、アセナフトキノン、アセナフテンキノン、カンホルキノン、2,3−ボルナンジオン、9,10−フェナントレンキノン、2,7−ピレンキノンを挙げることができる。
【0250】
さらにまた、前記スルホキノンにおけるスルホン酸基は、前記キノン化合物の水素が一つ以上、スルホン酸基で置換された芳香族スルホン酸構造、もしくはC1〜12の飽和または不飽和炭化水素基の2価基を介するスルホアルキレン基で置換された脂肪族スルホン酸構造を含むものである。さらに、前記スルホキノンの水素が一つ以上、C1〜12、好ましくはC1〜6の飽和または不飽和アルキル基、あるいは同アルコキシ基、またはF、Cl、Brから選ばれる置換基で置換された化学構造であっても良い。
【0251】
中でも、本発明において使用するスルホキノンとしてはアントラキノン、1,4−ナフトキノン、2,6−ナフトキノンの骨格を有するスルホキノンが好ましく使用される。例えばアントラキノン類の場合、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、アントラキノン−1,4−ジスルホン酸、アントラキノン−1,3−ジスルホン酸、アントラキノン−1,6−ジスルホン酸、アントラキノン−1,7−ジスルホン酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸、アントラキノン−2,3−ジスルホン酸、アントラキノン−2,7−ジスルホン酸、アントラキノン−1,4,5−トリスルホン酸、アントラキノン−2,3,6,7−テトラスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩等が使用できる。
【0252】
1,4−ナフトキノン類の場合は、1,4−ナフトキノン−5−スルホン酸、1,4−ナフトキノン−6−スルホン酸、1,4−ナフトキノン−5,7−ジスルホン酸、1,4−ナフトキノン−5,8−ジスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩等が使用できる。
【0253】
2,6−ナフトキノン類の場合は、2,6−ナフトキノン−1−スルホン酸、2,6−ナフトキノン−3−スルホン酸、2,6−ナフトキノン−4−スルホン酸、2,6−ナフトキノン−3,7−ジスルホン酸、2,6−ナフトキノン−4,8−ジスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩等が使用できる。
【0254】
また、前記スルホキノンとしてはさらに工業的な染料の中から、例えばアントラキノンアイリスR、アントラキノンバイオレットRN−3RNがあり、これらも同様に有用なスルホキノン系ドーパントとして前記塩の形態で使用できる。
【0255】
本発明において使用するスルホキノンは、化合物によってはモノマー化合物の重合反応に関与して、1つの酸化的脱水素化剤として働き、その結果スルホキノンは還元されてキノン構造体のプロトン付加体、すなわちハイドロキノン構造、またはキンヒドロンのまま、ドーパントとして固体電解質内に含有されてもよい。
【0256】
本発明で使用される酸化剤は、ピロールやチオフェン類の酸化重合に対して適する酸化剤であればよく、例えば特開平2-15611号公報(米国特許第4,910,645号)記載の塩化鉄(III)、Fe(ClO43や有機酸鉄(III)、無機酸鉄(III)、アルキル過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、K2Cr27等が広範に使用できる。前記有機酸鉄(III)の有機酸の例としては、メタンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸のようなC1〜20のアルキルスルホン酸や同じく脂肪族カルボン酸が挙げられる。しかしながら、前記酸化剤の使用範囲は、詳細には前記一般式(VIII)で示されるモノマー化合物の化学構造と酸化剤および反応条件等の制限を受けることがある。例えば、チオフェン類の酸化(重合)は、Handbook of Conducting Polymers誌(Marcel Dekker, Inc.社発行,1987年,99頁,図5参照)の説明によると、置換基の種類により酸化電位(重合の起こり易さを示す1つの尺度)が大きく変わり、重合反応を左右する(酸化電位は約1.8〜約2.7Vの範囲に広範に広がっている)。従って、具体的には使用するモノマー化合物と酸化剤、反応条件の組合せが重要である。
【0257】
スルホキノンアニオン以外のアニオンとは、上記酸化剤の反応後の還元体アニオンから、具体的には塩素イオン、ClO4 -、C1〜12の脂肪族有機カルボン酸アニオン、硫酸イオン、リン酸アニオン、C1〜12の脂肪族有機リン酸アニオン、ほう酸アニオンが挙げられる。また、NO+,NO2 +塩(例えば、NOBF4、NOPF6、NOSbF6、NOAsF6、NOCH3SO3、NO2BF4、NO2PF6、NO2CF3SO3)の電子受容体ドーパントを使用しても良い。
【0258】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法においては、前記一般式(IX)で示されるチオフェン類の化学重合は、過硫酸塩の使用が特に好適であり、鉄(III)塩系酸化剤の使用は鉄元素の残存が問題となり、コンデンサ特性に対して好ましくなかった。さらに、前記一般式(IX)のモノマー化合物に対して好適な過硫酸塩は、前記一般式(VIII)の内、R1=R2=H、X=Sであるチオフェンには好適ではなく、詳細には酸化剤の使用制限が存在する。前記一般式(IX)で表されるチオフェン類の化学重合に特に好適に使用できる過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸カリウムが挙げられる。
【0259】
次に固体電解質の形成(重合)反応の好ましい条件を以下に示す。
本発明のコンデンサの製造方法において用いられる一般式(VIII)、好ましくは一般式(IX)のモノマー化合物濃度及び酸化剤、スルホキノンの各使用濃度は、化合物及びその置換基の種類や溶媒等との組合せによって異なるが、一般には1×10-4〜10モル/リットルの範囲であり、1×10-3〜5モル/リットルの範囲がさらに好ましい。また、反応温度は、それぞれ反応方法によって定められるもので特に限定できるものでないが、一般的には−70℃〜250℃の温度範囲であり、望ましくは0℃〜150℃であり、さらに15〜100℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0260】
前記本発明の製造方法において用いられる溶液または重合後の水洗用溶媒は、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、あるいはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド(DMF)やアセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類、クロロホルムや塩化メチレン等の非芳香族性の塩素系溶媒、ニトロメタンやニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、あるいはメタノールやエタノール、プロパノール等のアルコール類、またはギ酸や酢酸、プロピオン酸等の有機酸または該有機酸の酸無水物(無水酢酸等)、水、あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水、アルコール類、ケトン類および/またはその混合系が望ましい。
【0261】
このようにして製造された固体電解質の電導度は、0.1〜200S/cmの範囲であるが、望ましい条件では1〜100S/cm、さらに好ましくは10〜100S/cmの範囲である。
【0262】
本発明の一方の電極にはアルミニウムまたはチタン、タンタル、ニオブあるいはこれらを基質とする合金系等の弁作用を有する箔、棒あるいはこれらを主成分とする焼結体等の公知な材料が使用される。これらの金属電極表面は、比表面積を大きくする目的で公知な方法によってエッチング処理や化成処理されて金属箔上に該金属系酸化皮膜層を形成されたものが用いられる。
【0263】
固体電解質の形成は、誘電体層上で形成する方法が好ましく、とりわけ本発明の耐熱性の優れた有機系導電体を細孔あるいは空隙構造を有する誘電体上に化学的に析出する方法が好ましい。さらに、半導体上に電気的接触をよくするために導電体層を設けることが好ましく、例えば、導電ペーストの固体、またはメッキや、金属蒸着、導電樹脂フィルムの形成等が行われる。
【0264】
次に、本発明の他の好ましい態様である、前記(22)〜(28)項及び(57)〜(75)項に記載の、固体電解質中に1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸をドーパントとして含む小型で低インピーダンスかつ火花電圧試験に耐久性のある高性能な固体電解コンデンサ及びその製造方法について説明する。
【0265】
本発明によれば、前記の如く導電性高分子組成物中に1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸(以下、アントラセンモノスルホン酸と略する。)アニオンをドーパント能を有する主要なアニオンとして含むことにより、耐熱性のある好ましい導電性高分子組成物層(電荷移動錯体)を形成することができ、この結果低インピーダンス特性に優れた固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。さらに本発明は、前記アントラセンモノスルホン酸アニオンドーパント以外の他のアニオンをドーパントとして併含してもよい。
【0266】
ここで使用する導電性高分子組成物中のπ電子共役高分子は、前記したポリマー主鎖構造にπ電子共役系構造を有する高分子である。具体例としてはポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリヘテロ環式高分子及びその置換誘導体が挙げられる。好ましい具体例として用いられるポリヘテロ環式高分子は、前記一般式(I)で示される構造単位を含むπ電子共役高分子であり、さらに好ましくは前記一般式(II)で示される構造単位を含むπ電子共役高分子である。
【0267】
前記、一般式(I)及び一般式(VIII)に関しては、前述のスルホアニオン基とキノン構造を分子内に有するスルホキノンを含み、キノン以外のドーパントとして、他のドーパント能を有するアニオンを併含する固体電解コンデンサについての説明と同様であるので詳細は省略する。
【0268】
本発明の固体電解コンデンサ及びその製造方法において、使用される前記一般式(VIII)で示されるモノマー化合物のうち、例えばチオフェン(R1=R2=H、X=S)やピロール(R1=R2=H、X=NH)、または前記一般式(IX)で表されるチオフェン類のうち3,4−ジオキシエチレン−チオフェンのモノマー化合物は公知であり、これらのモノマー化合物を重合し得る酸化剤も多くは公知である。しかしながら、導電性組成物中にドーパントとして1つのスルホン酸基を有するアントラセンモノスルホン酸アニオンまたは助ドーパントとして他のアニオンを併含した固体電解質を具備したコンデンサは、これまで知られていなかった。
【0269】
すなわち、前記特開平10-32145号公報(欧州特許公開第820076(A2)号)において開示されているコンデンサの導電性高分子組成物は、ドーパントとして分子構造中にスルホン酸基を複数有する芳香族ポリスルホン酸化合物がドープされたピロール、チオフェン、フラン、アニリン及びそれらの誘導体から選ばれた重合体が開示されているのみであり、本発明のコンデンサで用いられる1つのスルホン酸基を有する前記アントラセンモノスルホン酸は開示されていない。また、アントラセンモノスルホン酸アニオン以外のドーパントの併含も知られていなかった。
【0270】
さらに、本発明の固体電解コンデンサの固体電解質を構成しているドーパントは、好ましい形態として前記π共役系高分子の全繰り返し単位に対して、前記アントラセンモノスルホン酸アニオンを0.1〜50モル%の範囲で含み、さらに好ましくは前記アニオン以外のドーパントを0.1〜10モル%の範囲で併含する固体電解質を具備したコンデンサであって、前記課題を解決した、特に低インピーダンス特性に優れたコンデンサはこれまで知られていなかった。
【0271】
本発明のコンデンサにおいては、特に低インピーダンス特性に優れたコンデンサを提供できる固体電解質を具備したものとしては、前記アントラセンモノスルホン酸の含量の好ましい範囲がπ共役系高分子の組成物全重量に対して1〜30モル%の範囲である。一方、前記アントラセンスルホン酸アニオン以外の他のドーパント含量は、好ましくは前記π共役系高分子の全繰り返し単位に対して0.1〜5モル%の範囲である。前記他のドーパントは、本発明の製造方法においてモノマー化合物の重合時に酸化剤を使用するために酸化剤の還元体アニオンとして含有されるが、別途他の方法により添加されてもよく併含方法には制限を受けない。
【0272】
通常、コンデンサの製造方法において、高容量の高周波特性並びにtanδ、漏洩電流、耐熱性(リフロー性)、インピーダンス、耐久性等を改善するためには、前記固体電解質の製造(形成)方法が重要である。そのためには、固体電解質を構成するπ電子共役構造とドーパントの組み合わせ、及び導電性高分子組成物層を微細な誘電体層上に密に充填形成して導電パスの均一性を向上、または改善することは重要であり、特に導電性高分子組成物の構成が非常にコンデンサ特性に影響を与える。
【0273】
本発明の製造方法においては、前記モノマー化合物の重合体のドーパントとして前記アントラセンモノスルホン酸アニオンまたは他のアニオンを併含させる製造方法に特徴があり、具体的には前記一般式(VIII)、好ましくは一般式(IX)で表されるモノマー化合物を微細孔の誘電体被膜上で酸化剤の作用によってアントラセンモノスルホン酸アニオンを供与できる化合物の存在下、酸化的重合を起こさせ生じた重合体組成物を該固体電解質として誘電体表面上に形成させる。そして、前記製造工程を1つの陽極基板に対して1回以上、好ましくは3〜20回繰り返すことによって緻密な固体電解質層を容易に形成することができる。
【0274】
例えば、好ましい製造工程の1つとして、前記重合反応にあっては誘電体酸化皮膜層を形成した弁作用金属陽極箔を、酸化剤を含む溶液(溶液1)に浸漬する工程とモノマー化合物及びアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液(溶液2)に浸漬する工程を含んでも良く、あるいは該陽極箔を前記溶液2に浸漬した後で前記溶液1に浸漬する工程もしくは前記溶液1に浸漬した後で前記溶液2に浸漬する工程を含んでも良い。
【0275】
あるいは、別の実施形態として該陽極箔を、酸化剤とアントラセンモノスルホン酸アニオンを含む溶液(溶液3)に浸漬する工程とモノマー化合物を含む溶液(溶液4)に浸漬する工程を含んでも良く、あるいは該陽極箔を前記溶液4に浸漬した後で前記溶液3に浸漬する工程、もしくは前記溶液3に浸漬した後で前記溶液4に浸漬する工程を含んだ製造方法を採用してもよい。前記溶液1〜溶液4はそれぞれ懸濁状態で用いても良い。
【0276】
さらには、前記浸漬工程を塗布作業に変えることも容易である。溶液1〜4の溶媒は必要に応じて同じでもよく、あるいは異なった溶媒系でもよく、溶媒の種類に応じて溶液1と溶液2の間、あるいは溶液3と溶液4の間の工程に別途乾燥工程を入れても良い。前記固体電解質形成後には素子を有機溶媒洗浄または水洗にて洗浄する工程を加えても良い。洗浄用有機溶媒には、好ましくは溶液1〜4で使用した溶媒で行うのが簡便で好ましいが、単にモノマー化合物やアントラセンモノスルホン酸化合物や他のドーパント能を有するアニオンを保持する化合物を溶解する溶媒であれば何でも良い。前記溶媒による洗浄工程により、アントラセンモノスルホン酸ドーパント以外の他のドーパントの重合体中における含量は低減することができるが、本発明の固体電解コンデンサの特性においては少なくともアントラセンモノスルホン酸ドーパントの含有が特性に寄与する場合もある。
【0277】
さらに前記酸化的重合の繰り返し処理は、ハンダ耐熱性(熱安定性)の優れた固体電解質の生成を容易にする。従来既知のポリピロール等からなる固体電解質を用いたコンデンサでは、高温高湿度でのコンデンサ特性の変動が大きく信頼性を悪くしていたが、本発明で示された導電性組成物の固体電解質を具備したコンデンサは熱安定性に優れ、かつドープ状態の安定性がよい。前記アントラセンモノスルホン酸ドーパントと酸化剤由来のドーパントを有する重合体組成物が誘電体表面および細孔内部まで充填よく段階的に析出させることができるために、該重合体組成物の薄い膜質が何層にも重なった状態を作ることができる。これにより、重合体が誘電体被膜に対するダメージを生じない熱安定性に優れたコンデンサを提供することができる。
【0278】
また、本発明で使用するアントラセンモノスルホン酸アニオンは、従来既知のドーパント(例えば、ClO4 -、BF4 -、Cl-、SO4 2-、ベンゼンスルホン酸アニオン等)に比べ、アントラセン骨格の持つ高い芳香族性とスルホン酸基の持つ電子吸引性及び水溶性の特性寄与から、π共役系高分子との電荷移動錯体としての熱的安定性、導電性の安定性等に優れる結果、優れたコンデンサ特性が得られる。
【0279】
本発明において使用するアントラセンモノスルホン酸は、一つのスルホン酸基がアントラセン骨格に置換したアントラセンモノスルホン酸化合物の総称であり、好ましい化合物としては、無置換のアントラセンスルホン酸やアントラセンスルホン酸のアントラセン環の水素がC1〜12、好ましくは1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基またはアルコキシ基で一つ以上置換された置換化合物が挙げられる。
【0280】
前記無置換のアントラセンモノスルホン酸アニオンを供出する化合物としては、具体例にはアントラセン−1−スルホン酸、アントラセン−2−スルホン酸、アントラセン−9−スルホン酸及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。また、上記アントラセン環の水素がさらに置換されたアントラセンモノスルホン酸置換化合物についてその置換基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基や、ビニル、アリル、3−ブテニル、5−ヘキセニル等の不飽和基、及びメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等が挙げられる。
【0281】
本発明で使用される酸化剤は、ピロールやチオフェン類の酸化重合に対して適する酸化剤であればよく、例えば特開平2-15611号公報(米国特許第4,910,645号)記載の塩化鉄(III)、Fe(ClO43や有機酸鉄(III)、無機酸鉄(III)、アルキル過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、K2Cr27等が広範に使用できる。前記有機酸鉄(III)の有機酸の例としては、メタンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸のようなC1〜20のアルキルスルホン酸や同じく脂肪族カルボン酸が挙げられる。しかしながら、前記酸化剤の使用範囲は、詳細には前記一般式(VIII)で表されるモノマー化合物の化学構造と酸化剤および反応条件等の制限を受けることがある。例えば、チオフェン類の酸化(重合)は、Handbook of Conducting Polymers誌(Marcel Dekker, Inc.社発行,1987年,99頁、図5参照)の説明によると、置換基の種類により酸化電位(重合の起こり易さを示す1つの尺度)が大きく変わり、重合反応を左右する(酸化電位は約1.8〜約2.7Vの範囲に広範に広がっている)。従って、具体的には使用するモノマー化合物と酸化剤、反応条件の組合せが重要である。
【0282】
アントラセンモノスルホン酸アニオン以外のドーパントとは、上記酸化剤の反応後の還元体アニオンから具体的には、塩素イオン、ClO4 -、C1〜12の脂肪族有機カルボン酸アニオン、硫酸イオン、リン酸アニオン、C1〜12の脂肪族有機リン酸アニオン、ほう酸アニオンが挙げられる。また、NO+,NO2 +塩(例えば、NOBF4、NOPF6、NOSbF6、NOAsF6、NOCH3SO3、NO2BF4、NO2PF6、NO2CF3SO3)の電子受容体ドーパントを使用しても良い。
【0283】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法においては、前記一般式(IX)で示されるチオフェン類の化学重合は、過硫酸塩の使用が特に好適であり、鉄(III)塩系酸化剤の使用は鉄元素の残存が問題となり、コンデンサ特性に対して好ましくなかった。さらに、前記一般式(IX)のモノマー化合物に対して好適な過硫酸塩は、前記一般式(VIII)の内、R1=R2=H、X=Sであるチオフェンには好適ではなく、詳細には酸化剤の使用制限が存在する。前記一般式(IX)で示されるチオフェン類の化学重合に特に好適に使用できる過硫酸塩は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。
【0284】
次に導電層を形成する重合反応の好ましい条件を以下に示す。
本発明のコンデンサの製造方法において用いられる一般式(VIII)、好ましくは一般式(IX)のモノマー化合物濃度及び酸化剤、アントラセンモノスルホン酸の各使用濃度は、化合物及びその置換基の種類や溶媒等との組合せによって異なるが、一般には1×10-4〜10モル/リットルの範囲であり、1×10-3〜5モル/リットルの範囲がさらに好ましい。また、反応温度は、それぞれ反応方法によって定められるもので特に限定できるものでないが、一般的には−70℃〜250℃の温度範囲であり、望ましくは0℃〜150℃であり、さらに15〜100℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0285】
前記本発明の製造方法において用いられる溶液または重合後の水洗用溶媒は、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、あるいはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド(DMF)やアセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類、クロロホルムや塩化メチレン等の非芳香族性の塩素系溶媒、ニトロメタンやニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、あるいはメタノールやエタノール、プロパノール等のアルコール類、またはギ酸や酢酸、プロピオン酸等の有機酸または該有機酸の酸無水物(無水酢酸等)、水、あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水、アルコール類、ケトン類及び/またはその混合系が望ましい。
【0286】
このようにして製造された固体電解質の電導度は、0.1〜200S/cmの範囲であるが、望ましい条件では1〜100S/cm、さらに好ましくは10〜100S/cmの範囲である。
【0287】
本発明の一方の電極にはアルミニウムまたはチタン、タンタル、ニオブあるいはこれらを基質とする合金系等の弁作用を有する箔、棒あるいはこれらを主成分とする焼結体等の公知な材料が使用される。これらの金属電極表面は、比表面積を大きくする目的で公知な方法によってエッチング処理や化成処理されて金属箔上に該金属系酸化皮膜層を形成されたものが用いられる。
【0288】
固体電解質の形成は、誘電体層上で形成する方法が好ましく、とりわけ本発明の耐熱性の優れた有機系導電体を細孔あるいは空隙構造を有する誘電体上に化学的に析出する方法が好ましい。さらに、半導体上に電気的接触をよくするために導電体層を設けることが好ましく、例えば、導電ペーストの固体、またはメッキや、金属蒸着、導電樹脂フィルムの形成等が行われる。
【0289】
本発明による固体電解コンデンサ製品の一例の縦断面を図1に示す。エッチング処理金属箔(1)からなる陽極基体の酸化被膜(誘電体層)(3)、この外側に対向する電極としての固体の半導電体層(固体電解質)(4)、及び導電ペーストにより形成された導電体層(5)からなる素子を基本とし、金属箔(1)に陰極リード端子(7a)が、導電体層(5)に陽極リード端子(7b)が接続されて、素子全体がエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂(6)で完全に封止され、さらに樹脂モールド、樹脂ケース、金属製の外装ケース、樹脂ディッピング等により外装して各種電気製品用のコンデンサ製品とすることができる。
【0290】
以上、本発明を詳細に説明したが、本発明は特に以下の構成からなる固体電解コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
(1)微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に固体電解質層を設けた固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解質層の少なくとも一部が層状構造をなしていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
(2)前記固体電解質層が、誘電体被膜上の微細孔構造の外部表面または微細孔構造の外部表面と微細孔部分内に形成されている前記1に記載の固体電解コンデンサ。
(3)前記層状構造の層間の少なくとも一部に空間部を有する前記1または2に記載の固体電解コンデンサ。
(4)前記固体電解質層がπ電子共役系高分子及び/またはこれ以外の導電性高分子を含む組成物である前記1乃至3のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
(5)前記導電性高分子が、下記一般式(I)
【化87】
Figure 0004908672
(式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、C1〜6(炭素数1乃至6を意味する。以下同じ。)の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、または置換フェニル基を表わすか、またはR1及びR2は互いに任意の位置で結合して、少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。
XはS、O、Se、TeまたはNR3を表わし、R3は水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、フェニル基、またはC1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基を表わす。
1、R2及びR3が表わすアルキル基またはアルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を含んでもよい。δは0〜1の範囲である。)で示される構造単位を繰り返し単位として含む前記4に記載の固体電解コンデンサ。
(6)前記導電性高分子が、下記一般式(II)
【化88】
Figure 0004908672
(式中、R4及びR5は、各々独立して水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、またはC1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。δは0〜1の範囲である。)
で示される構造単位を繰り返し単位として含む前記4に記載の固体電解コンデンサ。
(7)前記導電性高分子が導電性ポリチオフェンであって、前記導電性ポリチオフェンを含む組成物中に硫酸イオンが0.1〜10モル%の範囲、かつナフタレンスルホン酸イオンが1〜50モル%の範囲含有されている前記4に記載の固体電解コンデンサ。
(8)導電性ポリチオフェンが、前記6に記載の一般式(II)で示される構造単位を繰り返し単位として含む前記7に記載の固体電解コンデンサ。
(9)前記組成物が1つ以上のスルホアニオン基とキノン構造を分子内に有するスルホキノンアニオンを0.1〜50モル%を含み、かつ前記スルホキノンアニオン以外のアニオンを0.1〜10モル%の範囲で含む前記4に記載の固体電解コンデンサ。
(10)前記組成物が1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンをドーパントとして含む前記4に記載の固体電解コンデンサ。
(11)微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に固体電解質として導電性ポリチオフェン組成物を設けた固体電解コンデンサの製造方法において、下記一般式(IX)
【化89】
Figure 0004908672
(式中、R4及びR5は前記6の記載と同じ意味を表わす。)
で示されるチオフェンモノマーをナフタレンスルホン酸アニオンの存在下で、過硫酸塩の作用によって重合して、誘電体被膜上に固体電解質層を形成することを特徴とする前記1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
(12)誘電体層の金属酸化物多孔質内で酸化剤の作用による重合を少なくとも2回繰り返して行う前記11に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【0291】
【実施例および比較例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、下記の例により本発明は何等制限されるものではない。
【0292】
実施例1:
3mm×10mmに切り出したエッチドアルミニウム化成箔を、4mmと5mmの部分に区切るように、両面に渡って幅1mmのポリイミドテープを貼り付けた。このエッチドアルミニウム化成箔の3mm×4mmの部分を、10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13Vの電圧を印加して化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、このアルミニウム箔の3mm×4mmの部分を、過硫酸アンモニウム30重量%を含む水溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、80℃で30分乾燥させた。続いて、このアルミニウム箔の3mm×4mmの部分(誘電体酸化皮膜を形成した部分)を、3,4−ジオキシエチレン−チオフェン20重量%を含むイソプロパノール溶液(溶液2)に浸漬した後引き上げ、60℃の雰囲気に10分放置することで酸化重合を行った。これを再び溶液1に浸漬し、さらに前記と同様に処理した。溶液1に浸漬してから酸化重合を行うまでの操作を10回繰り返した後、50℃の温水で10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行うことにより導電性高分子層(固体電解質層)を形成した。
【0293】
かくして得られた導電性高分子層を形成したアルミニウム箔の断面の走査電子顕微鏡写真(2,000倍)を図2に示し、図2の導電性高分子層のうち誘電体層上の微細孔構造の外部表面に形成された部分の拡大図(10,000倍)を図3、図3の微細孔部分を拡大した走査電子顕微鏡写真(50,000倍)を図4に示す。
【0294】
これらの図から、導電性高分子が金属アルミニウム上の誘電体(アルミナ)の微細孔内の表面を層状構造をなして覆い尽くし、層状導電性高分子層間に空間部が存在することが確認された。ここで、微細孔構造の外部表面に形成された導電性高分子層の厚さは約5μmであり、層構造を形成する1層当たりの厚さは約0.1〜0.3μmの範囲であった。
【0295】
また、上記アルミニウム箔の微細孔部分の拡大図である図2〜図4から、導電性高分子が微細孔内の表面を覆い尽くしているが、この部分においても空間部が存在することがわかる。
【0296】
次に、上記アルミニウム箔の導電性高分子層を形成した部分にカーボンペーストと銀ペーストを付けて陰極リード端子を接続し、また導電性高分子層の形成されていない部分には陽極リード端子を溶接により接続した素子をエポキシ樹脂で封止した後、125℃で定格電圧を印加して2時間エージングを行い、合計30個のコンデンサを完成させた。
【0297】
これら30個のコンデンサ素子について、初期特性として120Hzにおける容量(C)と損失係数(tanδ)(DF)、共振周波数におけるインピーダンス(Z)、及び漏れ電流(LC)を測定した。なお、漏れ電流(LC)は定格電圧を印加して1分後に測定した。表1にこれらの測定値の平均値と、0.16μA(0.002CV)以上の漏れ電流を不良品としたときの不良率およびショート品の数を示した。ここで、漏れ電流の平均値は不良品を除いて計算した値である。また、表2にはリフロー試験およびこれに続いて行った耐湿試験での結果を示した。但し、耐湿試験における漏れ電流値は3.2μA(0.04CV)以上を不良品とした。ここで、リフロー試験は230℃の温度領域を30秒間通過させることにより行った。また、耐湿試験は85℃、85%RHの高温高湿下に500時間放置して行った。
【0298】
比較例1:
導電性高分子の製造方法を以下の方法に代えたこと以外は実施例1と同様にして30個のコンデンサを得た。すなわち、アルミニウム箔の3mm×4mmの部分を、3,4−ジオキシエチレン−チオフェン20重量%を含むイソプロパノール溶液(溶液2)に浸漬し、次いで過硫酸アンモニウム30重量%を含む水溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、60℃の雰囲気に10分放置することで酸化重合を行った。その後、50℃の温水で10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行った。そして、この溶液2及び溶液1に浸漬してから引き上げ放置、温水洗浄、乾燥を行うまでの操作を20回繰り返すことにより導電性高分子層を形成した。ここで、本比較例のコンデンサでは微細孔構造の外部表面に約5μmの厚さの導電性高分子層が形成されたが、走査電子顕微鏡写真では実施例1(図2〜図4)と同様の層状構造は見られなかった。これらコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行い、その結果を表1および表2に示した。
【0299】
実施例2:
実施例1において、過硫酸アンモニウムに代えて過硫酸カリウムを、また3,4−ジオキシエチレン−チオフェンに代えてN−メチルピロールを用いた以外は、実施例1と同様にして30個のコンデンサを得た。本実施例のコンデンサの導電性高分子層においても、実施例1(図2〜図4)と同様の層状構造が見られ、微細孔構造の外部表面に形成された導電性高分子層の厚さは約10μmであり、層構造を形成する1層の厚さは約0.1〜0.5μmであった。また、微細孔内についても図3と同様の空間部が見られた。これらコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行った。その結果を表1および表2に示した。
【0300】
比較例2:
比較例1において過硫酸アンモニウムに代えて過硫酸カリウムを、また3,4−ジオキシエチレン−チオフェンに代えてN−メチルピロールを用いた以外は、比較例1と同様にして30個のコンデンサを得た。本比較例のコンデンサでは微細孔構造の外部表面に約8μmの厚さの導電性高分子層が形成されたが、実施例1(図2〜4)と同様の層状構造は見られなかった。これらコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行い、その結果を表1および表2に示した。
【0301】
実施例3:
実施例1において、導電性高分子の製造方法を以下の方法に代えた以外は、実施例1と同様にして30個のコンデンサ素子を完成させた。すなわち、本実施例においては、アルミニウム箔の3mm×4mmの部分を、酸化剤である2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン30重量%を含むジオキサン溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、100℃で30分乾燥させた。続いて、このアルミニウム箔を、イソチアナフテン20重量%を含むイソプロパノール溶液(溶液2)に浸漬した後引き上げ、80℃の雰囲気に30分放置することで酸化重合を行った。そして、この溶液1に浸漬してから酸化重合を行うまでの操作を10回繰り返した後、50℃のジオキサンで10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行うことにより導電性高分子層を形成した。ここで、本実施例のコンデンサの導電性高分子層においても、実施例1(図2〜4)と同様の層状構造が見られ、微細孔構造の外部表面に形成された導電性高分子層の厚さは約20μmであり、層構造を形成する1層の厚さは約0.2〜1μmであった。また、微細孔内についても図3と同様の空間部が見られた。これらコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行い、その結果を表1および表2に示した。
【0302】
比較例3:
比較例1において導電性高分子の製造方法を以下の方法に代えた以外は、比較例1と同様にして30個のコンデンサ素子を得た。すなわち、本比較例においては、アルミニウム箔の3mm×4mmの部分を、イソチアナフテン20重量%を含むイソプロパノール溶液(溶液2)に浸漬し、続いて2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン30重量%を含むジオキサン溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、80℃の雰囲気に30分放置することで酸化重合を行った。その後、50℃の温水で10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行った。そして、この溶液2に浸漬してから洗浄、乾燥を行うまでの操作を20回繰り返すことにより導電性高分子層を形成した。ここで、本比較例のコンデンサでは微細孔構造の外部表面に約15μmの厚さの導電性高分子層が形成されたが、実施例1(図2〜図4)と同様の層状構造は見られなかった。これらコンデンサ素子の特性評価を実施例1と同様に行い、その結果を表1および表2に示した。
【0303】
【表1】
Figure 0004908672
【0304】
【表2】
Figure 0004908672
【0305】
実施例4:
純度99.99%の厚さ100μmのアルミニウム箔を陽極として常法により電気化学的にその表面をエッチング処理して、多孔質アルミニウム箔を作製し、次いでアジピン酸アンモニウム液中で処理し、アルミニウム箔上に酸化アルミニウム層の誘電体薄膜を形成した。これを熱水でボイルすることで誘電体薄膜を均質化させた。このように作製したアルミニウム箔を充分乾燥後、その細孔表面に酸化剤の硫酸鉄0.1M濃度の水溶液を塗布して加熱乾燥(温度80℃)することで酸化剤を担持し活性化させた。次いで、1,3−ジヒドロイソチアナフテンを5gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、DBSNaと略する。)を0.1g溶かしたエタノール溶液中に前記アルミニウム箔を浸漬し気相中で80℃下10分加熱した。この溶媒の蒸発過程を伴うin-situ重合を20回繰り返して重合体を製造した。表面上に堆積した重合体の電導度を四端子で注意深く測定した結果、50S/cmであった。このように製作したコンデンサ素子の結果を表3に示した。但し、この時の容量及びtanδは周波数が120Hz、インピーダンスは1000KHzについての値である。
【0306】
比較例4:
実施例4と同様な方法によって化成処理したアルミニウム箔を、実施例4で使用したモノマー、酸化剤及びドーパントをそれらの濃度が実施例4の記載と同一となる濃度に調製した3成分混合溶液に浸漬させ、直ちに80℃、10分加熱するin-situ重合処理を20回繰り返してコンデンサ素子を作製した。表面上の電導度を四端子で注意深く測定した結果、10-2S/cmを示したが、コンデンサを作製して得られた容量は小さく、コンデンサ特性として充分ではなかった。コンデンサの特性を表3にまとめて示す。
【0307】
実施例5:
実施例4で使用した1,3−ジヒドロイソチアナフテンを1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェンに代えて、同様の製法によりコンデンサ素子を作製した。表面上に堆積した重合体組成物の電導度は、20S/cm(四端子法)を示し、同じくコンデンサ特性を測定した。その結果を表3に示した。
【0308】
実施例6:
実施例4で使用した1,3−ジヒドロイソチアナフテンを5,6−ジオキシメチレン−1,3−ジヒドロイソチアナフテンに代え、また同実施例に記載のドーパント(DBSNa)を使用しないモノマー溶液で、同様なプロセスを行いコンデンサ素子を作製した。なお、in-situ重合の処理条件は、50℃、10分であった。表面上に堆積した重合体組成物の電導度は、80S/cm(四端子法)であり、表3に示したコンデンサ特性が得られた。
【0309】
比較例5:
実施例6と同一のモノマー及び酸化剤を、各成分濃度が実施例6と同一になるように調製した混合成分溶液に、実施例4と同様な方法によって作製したアルミニウム箔を浸漬し、実施例6と同じ温度(50℃)、時間(10分)及び同じ処理回数を行いコンデンサ素子を作製した。表面上の電導度は、0.1S/cmであった。コンデンサの特性を表3にまとめて示す。コンデンサ特性としては容量が小さかった。
【0310】
実施例7:
実施例4で使用した1,3−ジヒドロイソチアナフテンを1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンに代え、加えてドーパントのDBSNaをナフタレンスルホン酸ナトリウム(以下、NSNaと略する。)に代えて、実施例4と同様な製法によりコンデンサ素子を作製した。表面上に堆積した重合体組成物の電導度は、5S/cm(四端子法)であり、該コンデンサ特性を測定した結果、表3記載のデータが得られた。
【0311】
実施例8:
実施例4で使用した1,3−ジヒドロイソチアナフテンを5,6−ジメトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテンに代え、DBSNaをNSNaに代えて、実施例1と同様な製法によりコンデンサ素子を作製した。但し、重合温度を70℃に、時間を20分に変更した。表面上に堆積した重合体組成物の電導度は、80S/cm(四端子法)であった。コンデンサ特性を測定した結果を表3に記載した。
【0312】
【表3】
Figure 0004908672
【0313】
特性試験1:
前記実施例4〜8及び比較例4、5の製造方法で製作されたコンデンサを各10個ずつ用い、230℃の温度領域を30秒間通過させるリフロー試験を実施し、処理前後の特性比較を行った。その結果を表4に示す。
【0314】
【表4】
Figure 0004908672
【0315】
参考例1:従来技術で製造された重合体組成物の電導度測定
Synthetic Metals誌(16巻,379〜380頁,1986年)記載の手法に従って、1,3−ジヒドロイソチアナフテンモノマー(融点23℃)をニトロベンゼン中50℃下、酸素及び塩化鉄(酸化剤)の存在下で溶液重合し、得られた重合体の電導度を測定したところ0.1S/cmと低く、コンデンサーの固体電解質として好ましい電導度ではなかった。
【0316】
実施例9:
実施例4における1,3−ジヒドロイソチアナフテンの代わりに、1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシドを用いた以外は実施例4と同様にして重合体を製造した。表面上に堆積した重合体組成物の電導度を四端子で注意深く測定した結果、70S/cmであった。このように製作したコンデンサ素子の結果を表5に示した。但し、この時の容量及びtanδは、周波数が120Hz、インピーダンスが1000KHzについての値である。
【0317】
比較例6:
実施例9と同様な方法によって化成したアルミニウム箔を、モノマー、酸化剤及びドーパントの各成分及びそれらの濃度が実施例9の記載と同一になるよう調製した3成分溶液に浸漬させ、直ちに80℃、10分加熱するin-situ重合処理を20回繰り返してコンデンサ素子を作製した。表面上の電導度を四端子で注意深く測定した結果、10-2S/cmを示したが、コンデンサを作製して得られた容量は小さく、コンデンサ特性は表5に示すように充分ではなかった。
【0318】
実施例10:
実施例9で使用した1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシドを1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン−2−オキシドに代えて、同様な製法によりコンデンサ素子を作製した。表面上に堆積した重合体組成物の電導度は、10S/cm(四端子法)を示した。コンデンサ特性を測定し表5に記載した結果を得た。
【0319】
実施例11:
実施例9で使用した1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシドを5,6−ジオキシメチレン−1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシドに代え、また同実施例記載のドーパント(DBSNa)を削除したモノマー溶液で、同様のプロセスを行いコンデンサ素子を作製した。但し、in-situ重合の処理条件は、50℃、10分であった。表面上に堆積した重合体組成物の電導度は、100S/cm(四端子法)であり、表5記載のコンデンサ特性が得られた。
【0320】
比較例7:
実施例11と同一のモノマー及び酸化剤を、各成分濃度が実施例11と同一になるように調製した混合成分溶液に、実施例9と同様な方法によって作製したアルミニウム箔を浸漬し、実施例11と同じ温度(50℃)、時間(10分)で同じ回数の処理を行いコンデンサ素子を作製した。表面上の電導度は、0.05S/cmであり、コンデンサ特性は表5に示すように容量が小さかった。
【0321】
実施例12:
実施例9で使用した1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシドを1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−2−オキシドに代え、さらにドーパントのDBSNaをNSNaに代えて、実施例9と同様な製法によりコンデンサ素子を作製した。表面上に堆積した重合体組成物の電導度は、1S/cm(四端子法)であった。コンデンサ特性を測定した結果、表5記載のデータが得られた。
【0322】
実施例13:
実施例9で使用した1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシドを5,6−ジメトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシドに代え、DBSNaをNSNaに代えて、実施例9と同様な製法によりコンデンサ素子を作製した。但し、重合温度を70℃に、時間を20分に変更した。表面上に堆積した重合体組成物の電導度は、100S/cm(四端子法)であり、コンデンサ特性の測定結果は表5に記載した通りであった。
【0323】
【表5】
Figure 0004908672
【0324】
特性試験2:
前記実施例9〜13及び比較例6、7の製造方法で製作されたコンデンサ製品を各10個ずつ用い、230℃の温度領域を30秒間通過させるリフロー試験を実施し、処理前後の特性比較を行った。その結果を表6に示した。
【0325】
【表6】
Figure 0004908672
【0326】
参考例2:従来法による重合体組成物の電導度測定
J. Org. Chem.誌(49巻,3382頁,1984年)記載の手法に従って、1,3−ジヒドロイソチアナフテン−2−オキシドモノマーを硫酸の存在下室温で重合し、得られた重合体の電導度を測定した。その結果は0.5S/cmと低く、コンデンサーの固体電解質として好ましい電導度ではなかった。
【0327】
実施例14:
アルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成処理して、箔上に誘電体層を形成した。この誘電体層表面に、過硫酸アンモニウム(以下、APSと略する。)20重量%と1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1重量%になるように調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解したイソプロパノール(以下、IPAと略する。)溶液に浸漬した。この基板を60℃の環境下で10分放置することで酸化重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返した。得られた重合組成物中の硫酸イオン及び1−ナフタレンスルホン酸イオンの含有量は、先ず前記重合組成物を水/IPA溶媒中でヒドラジン還元して注意深く抽出し、イオンクロマトグラフィー法で求めたところ、硫酸イオン含有量は重合体組成物の乾燥重量当り1.3重量%、1−ナフタレンスルホン酸イオン含有量は33重量%であった。
【0328】
次に、このポリチオフェン重合体組成物を設けたアルミニウム箔を、10重量%アジピン酸アンモニウム水溶液中で処理して、火花電圧について調べた。試験は、50℃環境下、電流密度10mA/cm2の条件で5回(n=5)行ない、表7に示す結果を得た。次いで、陽極からの集電を行うアルミ芯部をプラス側リード端子に溶接し、また陰極からの集電を行うためのカーボンペーストと銀ペーストを介したマイナス側リード端子を接続し、最後にエポキシ樹脂で封止してコンデンサ素子を作製した。コンデンサ素子を125℃で2時間エージングした後に初期特性を測定した。これらの結果を表8にまとめて示した。なお表中における測定は120Hzで行なった。インピーダンス(Z)は共振周波数での値を測定した。漏れ電流(LC)は定格電圧を印加して1分後に測定した。各測定値は、試料数が30個の平均値であり、漏れ電流については1μA以上をショート(不良)品として表示し、これを除いて漏れ電流の値の平均を算出した。
【0329】
実施例15:
実施例14で使用したAPSを過硫酸カリウムに代え、この濃度を10重量%とし、1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1重量%に調製された溶液に変更した以外は、実施例14の記載と同様にして処理して得たコンデンサ素子を評価した。結果を表7及び表8に示した。但し、重合組成物中の硫酸イオン及び1−ナフタレンスルホン酸イオンの含有量は、実施例14記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含有量は2.1重量%、1−ナフタレンスルホン酸イオン含有量は、29.5重量%であった。
【0330】
実施例16:
実施例14で使用した20重量%のAPS濃度を35重量%に代え、また0.1重量%の1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム濃度を0.04重量%に代えて水溶液を調製した以外は、実施例14の記載と同様にして得たコンデンサ素子を評価した。結果を表7及び表8に示した。但し、重合組成物中の硫酸イオン及び1−ナフタレンスルホン酸イオンの含有量は、実施例14記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含有量は4.7重量%、1−ナフタレンスルホン酸イオン含有量は、9.5重量%であった。
【0331】
比較例8:
実施例14で使用したAPSの代わりに硫酸鉄を10重量%とし、1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1重量%に調製された溶液に変更した以外は、実施例14の記載と同様にして得たコンデンサ素子を評価した。結果を表7及び表8に示した。但し、重合組成物中の硫酸イオン及び1−ナフタレンスルホン酸イオンの含有量は、実施例14記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含有量は20.5重量%、1−ナフタレンスルホン酸イオン含有量は、36.8重量%であった。鉄イオンが8重量%存在すること、および硫酸イオン含有量が10重量%以上よりも高いために、コンデンサ特性は悪かった。
【0332】
比較例9:
実施例14で使用したAPSの代わりに塩化鉄を10重量%とし、1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム0.1重量%に調製された溶液に変更した以外は、実施例14の記載と同様にして得たコンデンサ素子を評価した。結果を表7及び表8に示した。但し、重合組成物中の1−ナフタレンスルホン酸イオンの含有量は、実施例14記載の方法で求めたところ、4.5重量%であった。硫酸イオンが併用して含有されていないためにコンデンサ特性は悪かった。
【0333】
比較例10:
実施例14記載の3,4−ジオキシエチレン−チオフェンをチオフェンに代えた以外は実施例14記載の条件と同じにして、コンデンサ素子を作製する処理を行った。しかし、黒青色のポリチオフェン重合体は全く生成せず、チオフェンの重合がAPSの作用では起こらなかった。すなわち、APSによるチオフェン類の酸化重合は、3,4−ジオキシエチレン基置換のチオフェン類に対して特異的に起こることが判明した。
【0334】
【表7】
Figure 0004908672
【0335】
【表8】
Figure 0004908672
【0336】
表7から明らかなように実施例14〜16での火花電圧試験では、初期の電圧低下は大きいものの反応終了時の火花電圧はいずれも27V以上であった。しかし、比較例8の硫酸鉄を用いた場合は、鉄イオンが8重量%も残存するために火花電圧の低下が大きく、規定の反応終了前に火花電圧が低下し、固体電解質の充填が不十分なままで終了し、好ましくなかった。
【0337】
実施例17:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体表面に、APS20重量%とアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム0.1重量%になるように調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に浸漬した。この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返した。重合組成物中の硫酸イオン及びアントラキノン−2−スルホン酸イオンの含量は、先ず前記重合組成物を水/IPA溶媒中でヒドラジン還元して注意深く抽出し、イオンクロマトグラフィー法で求めたところ、硫酸イオン含量は重合体組成物の乾燥重量当り1.1重量%、アントラキノン−2−スルホン酸イオン含量は、34重量%であった。固体電解質層の電導度は、75S/cmであった。
【0338】
次に、ポリチオフェン重合体組成物を蓄積させたアルミニウム箔を、10重量%アジピン酸アンモニウム水溶液中で処理して、火花電圧について調べた。試験は、素子特性を顕著に比較する上で、素子数を増やして行った(以下の実施例も同じ)。すなわち、50℃環境下、電流密度10mA/cm2の条件でn=5回行い、表9の結果を得た。次いで、陽極からの集電を行うアルミ芯部をプラス側リード端子に溶接し、また陰極からの集電を行うためのカーボンペーストと銀ペーストを介したマイナス側リード端子を接続し、最後にエポキシ樹脂で封止してコンデンサ素子を作製した。コンデンサ素子を125℃で2時間エージングした後に初期特性を測定した。これらの結果を表10にまとめた。ここで、表中、初期特性の容量(C)、損失角の正接(tanδ)(DF)はいずれも120Hzで測定したものである。インピーダンスは、共振周波数での値を示した。LC(漏れ電流)は、定格電圧を印加して1分後に測定した。各測定値は、試料数が30個の平均値であり、LCについては1μA以上を不良品に、また10μA以上をショート品として表示し、これを除いてLC値の平均を算出した。
【0339】
実施例18:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体表面に、APSを20重量%に調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液にアントラキノン−2,6−ジスルホン酸アンモニウムを加えて、その濃度が0.1重量%になるよう調製したIPA/水混合溶液に浸漬した。この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返して、そのコンデンサ素子を評価した。結果を表9及び表10に示した。但し、重合体組成物中の硫酸イオン及びアントラキノン−2,6−ジスルホン酸イオンの含量は、実施例17記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.3重量%、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸イオン含量は、31重量%であった。固体電解質層の電導度は、80S/cmであった。
【0340】
実施例19:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体を、3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に浸漬した後、APS濃度20重量%、1,4−ナフトキノン−2−スルホン酸ナトリウム濃度0.1重量%に調製した水溶液を含浸させた後、この基板を60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返して、コンデンサ素子を評価した。結果を表9及び表10に示した。但し、重合体組成物中の硫酸イオン及び1,4−ナフトキノン−2−スルホン酸イオンの含量は、実施例17記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.0重量%、1,4−ナフトキノン−2−スルホン酸イオン含量は28重量%であった。固体電解質層の電導度は68S/cmであった。
【0341】
実施例20:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体表面に、過硫酸カリウム10重量%とアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム0.1重量%になるように調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に浸漬した。この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させた。この浸漬工程をそれぞれ10回繰り返した後、水洗し乾燥した。このコンデンサ素子の特性を評価し、表9及び表10に記載の結果を得た。但し、重合体組成物中の硫酸イオン及びアントラキノンスルホン酸イオンの含量は、実施例17記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は2.0重量%、アントラキノン−2−スルホン酸イオン含量は、30.0重量%であった。固体電解質層の電導度は、69S/cmであった。
【0342】
実施例21:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体表面に、APS濃度が35重量%に調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液にアントラキノン−2,6−ジスルホン酸アンモニウムを加えて、その濃度が0.04重量%になるよう調製したIPA/水混合溶液に浸漬した。この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させた。この浸漬工程をそれぞれ10回繰り返した後で水洗して乾燥した。そしてそのコンデンサ素子の特性を評価し、表9及び表10に記載の結果を得た。但し、重合組成物中の硫酸イオン及びアントラキノン−2,6−ジスルホン酸イオンの含量は、実施例17記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は4.5重量%、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸イオン含量は、9.2重量%であった。固体電解質層の電導度は、50S/cmであった。
【0343】
実施例22:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体を、特開平2-242816号公報記載の方法を採用して合成及び昇華精製した5,6−ジメトキシ−イソチアナフテンの脱気IPA溶液(1.2mol/l濃度)に浸漬した後、20重量%濃度のAPS水溶液に、Tetrahedron誌(35巻(No.19)、2263頁、1979年)記載の方法で合成した3−メチル−2−アントラキノリルメタンスルホン酸ナトリウムを溶かして、その濃度が0.1重量%になるように調製した水溶液を含浸させた。次いでこの基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させた。この浸漬工程をそれぞれ10回繰り返した後で水洗して乾燥した。そしてそのコンデンサ素子の特性を評価したところ、表9及び表10に記載の結果を得た。但し、重合組成物中の硫酸イオン及び3−メチル−2−アントラキノリルメタンスルホン酸イオンの含量は、実施例17記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は0.5重量%、3−メチル−2−アントラキノリルメタンスルホン酸イオン含量は、4.8重量%であった。固体電解質層の電導度は、40S/cmであった。
【0344】
実施例23:
実施例1で使用した3,4−ジオキシエチレン−チオフェンの替わりにピロール−Nーメチルの同濃度溶液を用いたこと以外は、実施例17の記載と同様にしてコンデンサ素子を作製し、その特性を評価した。結果を表9及び表10に示した。但し、重合組成物中の硫酸イオン及びアントラキノン−2−スルホン酸イオンの含量は、実施例17記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は7.5重量%、アントラキノン−2−スルホン酸イオン含量は、20.3重量%であった。固体電解質層の電導度は、8S/cmであった。
【0345】
実施例24:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体をアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム濃度が0.1重量%及び3,4−ジオキシエチレン−チオフェンが1.2mol/l濃度になるように調製した30%のDMF−IPA溶液に浸漬し、次いで20重量%のAPS水溶液に浸漬した。この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させた。この浸漬工程をそれぞれ10回繰り返した後で水洗して乾燥した。得られたコンデンサ素子の特性を評価し、表9及び表10に記載の結果を得た。但し、硫酸イオン含量は重合体組成物の乾燥重量当り1.2重量%、アントラキノン−2−スルホン酸イオン含量は、37重量%であった。固体電解質層の電導度は、80S/cmであった。
【0346】
参考例3:
実施例17記載の3,4−ジオキシエチレン−チオフェンをチオフェンに替えた以外は実施例17記載の条件と同じにして、コンデンサ素子の作製を試みた。しかし、黒青色のポリチオフェン重合体は全く生成せず、チオフェンの重合がAPSの作用では起こらなかった。すなわち、APSによるチオフェン類の酸化重合は、3,4−ジオキシエチレン基置換のチオフェン類に対して特異的に起こることが判明した。
【0347】
比較例10:
実施例17と同じく化成した誘電体を準備し、これをアントラキノン−2−スルホン酸鉄(III)の12%IPA溶液に浸漬し、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に浸漬した。この基板を60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返した。重合組成物中のアントラキノン−2−スルホン酸イオンの含量は、前記重合組成物を水/IPA溶媒中でヒドラジン還元して注意深く抽出し、イオンクロマトグラフィー法で求めたところ、アントラキノン−2−スルホン酸イオン含量は、重合体組成物の乾燥重量当り25重量%であった。固体電解質層の電導度は、30S/cmであった。次いで、コンデンサ素子を作製して、火花電圧及び他のコンデンサ特性を実施例17と同様に調べたところ、表9及び表10に記載の結果が得られた。
【0348】
比較例11:
実施例17と同様に20重量%のAPSを12重量%に替えた以外は実施例17の記載と同様にして得たコンデンサ素子を評価した。結果を表9及び表10に示した。但し、実施例17に記載の方法で求めた、重合体組成物中の硫酸イオン及びアントラキノン−2−スルホン酸イオンの含量は、硫酸イオン含量0.09重量%、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸イオン含量32重量%であった。固体電解質層の電導度は、40S/cmであった。
【0349】
比較例12:
実施例17で使用したAPSの替わりに硫酸鉄を10重量%とし、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム0.1重量%に調製された溶液に変更した以外は、実施例17の記載と同様にしてコンデンサ素子を作製し、評価した。結果を表9及び表10に示した。但し、重合組成物中の硫酸イオン及びアントラキノン−2−スルホン酸イオンの含量は、実施例17記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は20.0重量%、アントラキノンスルホン酸イオン含量は、37.8重量%であった。しかしながら、鉄イオンが8重量%存在すること、および硫酸イオン含量が10重量%以上よりも高いために、コンデンサ特性は悪かった。
【0350】
比較例13:
実施例17で使用した3,4−ジオキシエチレン−チオフェンをチオフェンに、替え、APSの替わりに10重量%の塩化鉄を使用し、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム0.1重量%に調製された溶液に変更した以外は、実施例17の記載と同様にして得たコンデンサ素子を作製し評価した。その結果を表9及び表10に示した。但し、重合組成物中のアントラキノン−2−スルホン酸イオンの含量は、実施例17記載の方法で求めたところ、4.2重量%であった。
硫酸イオンが併用して含有されていないためにコンデンサ特性は悪かった。
【0351】
【表9】
Figure 0004908672
【0352】
【表10】
Figure 0004908672
【0353】
表9から明らかなように実施例17〜24での火花電圧試験では、電圧低下はほとんど無く反応終了時の火花電圧はいずれも19V以下であった。しかし、比較例12の硫酸鉄を用いた場合は、鉄イオンが8重量%も残存するために火花電圧の低下が大きく、規定の反応終了前に火花電圧が低下し、固体電解質の充填が不十分なままで終了し、好ましくなかった。
【0354】
実施例25:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体表面に、APSが20重量%、アントラセン−2−スルホン酸ナトリウム(Salor社製)が0.3重量%になるように調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に浸漬した。この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返した。重合組成物中の硫酸イオン及びアントラセン−2−スルホン酸イオンの含量は、先ず前記重合組成物を水/IPA溶媒中でヒドラジン還元して注意深く抽出し、イオンクロマトグラフィー法で求めたところ、硫酸イオン含量は重合体の全繰り返し構造単位当り1.7モル%、アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は14.6モル%であった。固体電解質層の電導度は70S/cmであった。
【0355】
次に、ポリチオフェン重合体組成物を蓄積させたアルミニウム箔を、10重量%アジピン酸アンモニウム水溶液中で処理して、火花電圧について調べた。試験は、素子特性を顕著に比較する上で素子数を増やして行った(以下の実施例も同様)。すなわち、50℃環境下、電流密度10mA/cm2の条件でn=5回行ない、表11の結果を得た。次いで、陽極からの集電を行うアルミ芯部をプラス側リード端子に溶接し、また陰極からの集電を行うためのカーボンペーストと銀ペーストを介したマイナス側リード端子を接続し、最後にエポキシ樹脂で封止してコンデンサ素子を作製した。コンデンサ素子を125℃で2時間エージングした後に初期特性を測定した。これらの結果を表12にまとめた。ここで、表中、初期特性の容量(C)、損失角の正接(DF)(tanδ)はいずれも120Hzで測定した値である。インピーダンス(Z)は、共振周波数での値を示し、LC(漏れ電流)は、定格電圧を印加して1分後に測定した値である。各測定値は、試料数が30個の平均値であり、LCについては1μA以上を不良品に、また10μA以上をショート品として表示し、これを除いてLC値の平均を算出した。
【0356】
実施例26:
実施例25記載の方法で準備した誘電体表面に、APSを20重量%に調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に9,10−ジメトキシ−アントラセン−2−スルホン酸テトラブチルアンモニウム塩(以下、DMASTBと略する。)を加えて、その濃度が0.1重量%になるよう調製したIPA/水混合溶液に浸漬した。この時、前記DMASTB塩は、9,10−ジメトキシ−アントラセン−2−スルホン酸ナトリウム(Aldrich社製)からテトラブチルアンモニウムブロマイドと混合反応して再結晶したものを使用した。次に、基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返して得たコンデンサ素子を評価した。結果を表11及び表12に示した。但し、重合体組成物中の硫酸イオン及び9,10−ジメトキシ−アントラセン−2−スルホン酸イオンの含量を実施例25記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は1.8モル%、9,10−ジメトキシ−アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は8.1モル%であった。固体電解質層の電導度は、60S/cmであった。
【0357】
実施例27:
実施例25記載の方法で準備した誘電体を、3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に浸漬した後、APS濃度が20重量%であり9,10−ジメトキシーアントラセン−2−スルホン酸ナトリウム濃度が0.1重量%になるように調製した水溶液を含浸させた後、この基板を60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返して得たコンデンサ素子を評価した。その結果を表11及び表12に示した。但し、重合体組成物中の硫酸イオン及び9,10−ジメトキシーアントラセン−2−スルホン酸イオンの含量を実施例25記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は2.2モル%、9,10−ジメトキシーアントラセン−2−スルホン酸イオン含量は0.6モル%であった。固体電解質層の電導度は、65S/cmであった。
【0358】
実施例28:
実施例25記載の方法で準備した誘電体を準備した。この誘電体表面に、過硫酸カリウムが10重量%、アントラセン−1−スルホン酸ナトリウム(Salor社製)が0.1重量%になるように調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に浸漬した。この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させた。この浸漬工程をそれぞれ10回繰り返した後で水洗して乾燥して得たコンデンサ素子を評価したところ、表11及び表12記載の結果を得た。但し、重合体組成物中の硫酸イオン及びアントラセン−1−スルホン酸イオンの含量を実施例1記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は5.8モル%、アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は15モル%であった。固体電解質層の電導度は、75S/cmであった。
【0359】
実施例29:
実施例25記載の方法で準備した誘電体を準備した。この誘電体表面に、APS濃度が35重量%に調製した水溶液を含浸させ、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に9,10−ジヘキシル−アントラセン−2−スルホン酸テトラブチルアンモニウム(DHASTB)塩を加えてその濃度が0.04重量%になるよう調製したIPA/水混合溶液に浸漬した。この時、前記DHASTB塩は以下の方法により、市販の9,10−ジメトキシ−アントラセン−2−スルホン酸ナトリウム(Aldrich社製)から合成した。すなわち、9,10−ジメトキシ−アントラセン−2−スルホン酸ナトリウムを無水ジメチルホルムアミド溶媒中、塩化チオニルを反応させてスルホニルクロライド体とし、次にメタノールを反応させてスルホン酸メチルエステル体を合成後、ヨウ化アルミニウムでジメトキシ基を切断して9,10−ジヒドロ−アントラセン−2−スルホン酸メチルエステル体を合成した。次に、炭酸カリウムの存在下、臭化ヘキシルを反応させてアルカリ処理後に、目的の9,10−ジヘキシルオキシ−アントラセン−2−スルホン酸ナトリウムを得た。さらに、これにテトラブチルアンモニウムブロマイドを水溶液中で反応させてDHASTB塩を合成した。コンデンサ評価には再結晶したものを使用した。
【0360】
次に、この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させた。この浸漬工程をそれぞれ10回繰り返した後で水洗して乾燥して得たコンデンサ素子を評価したところ、表11及び表12記載の結果を得た。但し、重合組成物中の硫酸イオン及び9,10−ジヘキシルオキシ−アントラセン−2−スルホン酸イオンの含量は、実施例25記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は6.2モル%、9,10−ジヘキシルオキシ−アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は、7.6モル%であった。固体電解質層の電導度は、42S/cmであった。
【0361】
実施例30:
実施例25記載の方法で準備した誘電体を準備した。この誘電体を、特開平2-242816号公報記載の方法を採用して合成及び昇華精製した5,6−ジメトキシ−イソチアナフテンの脱気IPA溶液(1.2mol/l濃度)に浸漬した後、20重量%濃度のAPS水溶液にアントラセン−1−スルホン酸ナトリウムの0.1重量%になるように調製した水溶液を含浸させた。次いでこの基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させた。この浸漬工程をそれぞれ10回繰り返した後で水洗して乾燥して得たコンデンサ素子を評価したところ、表11及び表12記載の結果を得た。但し、重合体組成物中の硫酸イオン及びアントラセン−1−スルホン酸イオンの含量を実施例25記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は0.8モル%、アントラセン−1−スルホン酸イオン含量は5.6モル%であった。固体電解質層の電導度は、30S/cmであった。
【0362】
実施例31:
実施例25で使用した3,4−ジオキシエチレン−チオフェンの替わりにピロール−Nーメチルの同濃度溶液を用いた以外は、実施例25の記載と同様にして得たコンデンサ素子を評価した。結果を表11及び表12に示した。但し、重合組成物中の硫酸イオン及びアントラセン−2−スルホン酸イオンの含量を実施例25記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は6.9モル%、アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は15.8モル%であった。固体電解質層の電導度は、5S/cmであった。
【0363】
実施例32:
規定の面積に加工したアルミニウム化成箔を10重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で13V化成して、誘電体を準備した。この誘電体を、アントラセン−2−スルホン酸ナトリウム濃度が0.1重量%及び3,4−ジオキシエチレン−チオフェンが1.2mol/l濃度になるように準備した30重量%のDMF−IPA溶液に浸漬し、次いで20重量%のAPS水溶液に浸漬した。この基板を取り出して60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させた。この浸漬工程をそれぞれ10回繰り返した後で水洗、乾燥して得たコンデンサ素子を評価したところ、表11及び表12記載の結果を得た。但し、硫酸イオン含量は重合体の全繰り返し構造単位当り1.7モル%、アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は、32モル%であった。固体電解質層の電導度は、75S/cmであった。
【0364】
参考例4:
実施例25記載の3,4−ジオキシエチレン−チオフェンをチオフェンに替えた以外は実施例25記載の条件と同じにして、コンデンサ素子の作製を試みた。しかし、黒青色のポリチオフェン重合体は全く生成せず、チオフェンの重合がAPSの作用では起こらなかった。すなわち、APSによるチオフェン類の酸化重合は、3,4−ジオキシエチレン基置換のチオフェン類に対して特異的に起こることが判明した。
【0365】
比較例14:
実施例25と同じく化成した誘電体を準備し、これをアントラセン−2−スルホン酸鉄(III)の12重量%IPA溶液に浸漬し、次いで3,4−ジオキシエチレン−チオフェンを5g溶解した1.2mol/lのIPA溶液に浸漬した。この基板を60℃の環境下で10分放置することで酸化的重合を完成させ、水で洗浄した。この重合反応処理及び洗浄工程をそれぞれ10回繰り返して得たコンデンサ素子を評価した。重合体組成物中のアントラセン−2−スルホン酸イオンの含量は、前記重合組成物を水/IPA溶媒中でヒドラジン還元して注意深く抽出し、イオンクロマトグラフィー法で求めたところ、アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は重合体の全繰り返し構造単位当り16モル%であった。固体電解質層の電導度は32S/cmであった。次いで、コンデンサ素子を作製して、火花電圧及び他のコンデンサ特性を実施例25と同様に調べたところ、表11及び表12に記載の結果が得られた。
【0366】
比較例15:
実施例25で使用した20重量%のAPSを12重量%に替えた以外は実施例25の記載と同様にして得たコンデンサ素子を評価した。結果を表11及び表12に示した。但し、重合体組成物中の硫酸イオン及びアントラセン−2−スルホン酸イオンの含量を実施例25記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は0.15モル%、アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は27モル%であった。固体電解質層の電導度は、36S/cmであった。
【0367】
比較例16:
実施例25で使用したAPSの替わりに硫酸鉄を10重量%とし、アントラセン−2−スルホン酸ナトリウム0.1重量%に調製された溶液に変更した以外は、実施例25の記載と同様にして得たコンデンサ素子を評価した。結果を表11及び表12に示した。但し、重合組成物中の硫酸イオン及びアントラセン−2−スルホン酸イオンの含量を実施例25記載の方法で求めたところ、硫酸イオン含量は23.6モル%、アントラセン−2−スルホン酸イオン含量は33.8モル%であった。しかしながら、鉄イオンが8モル%存在すること、および硫酸イオン含量が10モル%以上よりも高いために、コンデンサ特性は悪かった。
【0368】
比較例17:
実施例25で使用した3,4−ジオキシエチレン−チオフェンをチオフェンに、替え、APSの替わりに10重量%の塩化鉄を使用し、アントラセン−2−スルホン酸ナトリウム濃度0.1重量%に調製した溶液に変更した以外は、実施例25の記載と同様にして得たコンデンサ素子を評価した。結果を表11及び表12に示した。但し、重合組成物中のアントラセン−2−スルホン酸イオンの含量を実施例25記載の方法で求めたところ、2.9モル%であった。硫酸イオンが併用して含有されていないためにコンデンサ特性は悪かった。
【0369】
【表11】
Figure 0004908672
【0370】
【表12】
Figure 0004908672
【0371】
表11から明らかな通り、実施例25〜32での火花電圧試験では、電圧低下はほとんど無く反応終了時の火花電圧はいずれも19V以下であった。しかし、比較例16の硫酸鉄を用いた場合は、鉄イオンが8モル%も残存するために火花電圧の低下が大きく、規定の反応終了前に火花電圧が低下し、固体電解質の充填が不十分なままで終了し、好ましくなかった。
【0372】
【発明の効果】
本発明の固体電解コンデンサは、第1に固体電解質層に層状構造を有し、さらに好ましくは層間に空間を有しているため、熱応力緩和能力、導電ペースト層との密着性、誘電体皮膜の修復能力に優れる。
第2に特定の縮合ヘテロ環状重合体を固体電解質としているため、ハンダ耐熱性(リフロー性)、熱的安定性に優れている。耐湿特性も良好である。またコンデンサ容量が大きく、インピーダンスが小さい。さらに漏れ電流も小さい。
【0373】
第3に上記の重合体を用いて固体電解質に層状構造を形成し、さらに好ましくは空間部を設けることにより、上記の熱応力緩和能力及びハンダ耐熱性等共に優れた固体電解コンデンサとなる。
【0374】
特に、固体電解質中に一つ以上のスルホアニオン基とキノン構造を分子内に有するスルホキノンを含み、かつ前記キノン以外の他のドーパント能を有するアニオンを併含させ、スルホキノンの含量が0.1〜50重量%、硫酸イオン含量が0.1〜10重量%含まれているた固体電解コンデンサ、及び固体電解質中に1つのスルホン酸基を有するアントラセンモノスルホン酸を含み、他のドーパント能を有するアニオンを併含せたアントラセンモノスルホン酸の含量が0.1〜50モル%、かつ硫酸イオン含量が0.1〜10モル%の範囲の固体電解コンデンサは耐電圧特性(火花電圧試験)、高周波特性、tanδ、インピーダンス特性、漏洩電流、耐熱性(リフロー性)等が大幅に向上し、低インピーダンスで、小型で高性能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 固体電解コンデンサの一例の縦断面図である。
【図2】 本発明の実施例1における導電性高分子層を形成した微細孔構造を有するアルミニウム箔断面の走査電子顕微鏡写真(2,000倍)である。
【図3】 図2の微細孔構造の外部表面の部分を拡大した走査電子顕微鏡写真(10,000倍)である。
【図4】 図3の微細孔部分を拡大した走査電子顕微鏡写真(50,000倍)である。
【符号の説明】
1 金属箔
2 微細孔
3 アルミニウムの酸化物層
4 固体電解質
5 導電体層
6 封口樹脂
7 リード端子

Claims (8)

  1. 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体被膜上に固体電解質層を設けた固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解質層の少なくとも一部が3層以上の多層構造をなし、前記多層構造の層間の少なくとも一部に空間部が形成されており、固体電解質層の全体の厚さが1〜200μmの範囲であり、前記固体電解質層がπ電子共役系高分子及び/またはこれ以外の導電性高分子を含む組成物で、前記導電性高分子が、下記一般式(I)
    Figure 0004908672
    (式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、C1〜6(炭素数1乃至6を意味する。以下同じ。)の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、または置換フェニル基を表わすか、またはR1及びR2は互いに任意の位置で結合して、少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和もしくは不飽和の環状構造を形成する二価の基を形成してもよい。
    XはS、O、Se、TeまたはNR3を表わし、R3は水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、フェニル基、またはC1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基を表わす。
    1、R2及びR3が表わすアルキル基またはアルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミノ結合を含んでもよい。δは0〜1の範囲である。)で示される構造単位を繰り返し単位として含む固体電解コンデンサ。
  2. 前記固体電解質層が、誘電体被膜上の微細孔構造の外部表面または微細孔構造の外部表面と微細孔部分内に形成されている請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  3. 前記多層構造が走査電子顕微鏡にて観察される膜質が重なった多層構造を有し、かつ弁作用金属の外部表面にほぼ平行に形成されている請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
  4. 前記導電性高分子が、下記一般式(II)
    Figure 0004908672
    (式中、R4及びR5は、各々独立して水素原子、C1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、またはC1〜6の炭化水素基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。δは0〜1の範囲である。)
    で示される構造単位を繰り返し単位として含む請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  5. 前記導電性高分子が導電性ポリチオフェンであって、前記導電性ポリチオフェンを含む組成物中に硫酸イオンが0.1〜10モル%の範囲、かつナフタレンスルホン酸イオンが1〜50モル%の範囲含有されている請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  6. 導電性ポリチオフェンが、請求項に記載の一般式(II)で示される構造単位を繰り返し単位として含む請求項に記載の固体電解コンデンサ。
  7. 前記組成物が1つ以上のスルホアニオン基とキノン構造を分子内に有するスルホキノンアニオンを0.1〜50モル%を含み、かつ前記スルホキノンアニオン以外のアニオンを0.1〜10モル%の範囲で含む請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  8. 前記組成物が1つのスルホン酸基を有するアントラセンスルホン酸またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種のアントラセンモノスルホン酸アニオンをドーパントとして含む請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
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