JP4925144B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解質層を有する固体電解コンデンサの製造方法に関し、より詳しくは、高電導性を示す導電性高分子層を固体電解質層として備え、電気特性に優れた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
固体電解コンデンサに用いられる固体電解質形成用材料として、二酸化マンガン等に代表される無機導電性材料や、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体等の有機導電性材料が知られている。
さらに、それらの固体電解質形成用材料より電気電導性に優れる導電性高分子材料を固体電解質として用いた固体電解コンデンサが広く実用化されている。
この導電性高分子材料においては、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、「EDOT」と略記する。)をモノマーとして重合した導電性高分子が広く知られている。
このEDOTは、重合の反応速度が穏やかであり、陽極の誘電体酸化皮膜との密着性に優れた導電性高分子層を形成するため、固体電解コンデンサの固体電解質層形成材料として有用である。
しかし、近年の電子機器は、より省電力化、高周波数化への対応を求められており、それらの電子機器に用いられる固体電解コンデンサにおいても、小型大容量化や低等価直列抵抗(以下、「ESR」と略記する。)化等、電気特性のさらなる向上が求められている。
固体電解コンデンサの電気特性は、用いる固体電解質形成材料種や形成方法に大きく依存するが、従来公知であるEDOTを凌駕する優れた導電性高分子モノマーの開発や、新しい固体電解質層の形成方法に期待が持たれている。
このような背景の中、従来技術として3−アルキル−4−アルコキシチオフェンの重合体を固体電解質とする固体電解コンデンサが知られていて、該重合体を用いることによって、高周波領域でも優れた電気特性を有する固体電解コンデンサが得られることが報告されている(特許文献1)。
また、アルコキシ基で置換された部位を有するアルキレンジオキシチオフェン誘導体を重合して得られる重合体を固体電解質として使用する固体電解コンデンサが提案されている。
この重合体を採用することにより、重合体中に残留する重合用酸化剤の結晶化を抑制でき、得られる固体電解コンデンサの漏れ電流を低減することが可能とされる(特許文献2)。
特開2001−332453号公報 特開2004−096098号公報
しかし、上記文献に開示されている重合体をもってしてもなお十分な電気特性や耐熱性を得ることが困難であり、さらなる固体電解コンデンサの電気特性と耐熱性との向上が要望されている。
この一方、固体電解コンデンサは静電容量を大容量化するために、エッチングで拡面化したアルミニウム箔を巻回または積層して陽極素子に用いる箔タイプと、金属微粒子を焼結成形して多孔体となし大容量を得る焼結成形素子タイプがある。焼結成形素子タイプは大容量化を目的に、金属微粒子の粒子径がますます微粒子化されており、そのCV積(焼結成形素子1g当りの静電容量と電圧の積)は10万μFV/g以上に及ぶ。
また、近年高性能化のためにポリピロールやPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)が固体電解質に使用される。これらは化学酸化重合や電解重合で重合されるが、多孔質焼結成形素子の空隙は微細化する傾向にあり、この空隙内にポリピロールやPEDOTを重合して充填することは困難であった。
本発明の目的は、高静電容量、および低ESRを示す、より優れた電気特性に加え、優れた耐熱性をも兼ね備えた固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、下記一般式〔1〕により表わされる化合物を重合させて得られる高分子を固体電解質として含む固体電解コンデンサが本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下に示すものである。
第1の発明は、下記一般式〔2〕および〔3〕
〔2〕
〔3〕
により表わされる化合物の少なくとも1つを重合させて得られる高分子を、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法であって、
(A)上記一般式〔2〕および〔3〕により表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つ、
(B)ドーパント、
および(C)酸化剤
を、液相にて接触させて重合を行う工程を含み、
前記(B)ドーパントおよび(C)酸化剤として、(B)ドーパントおよび(C)酸化剤の双方の性質を持つ化合物を使用し、
前記(B)ドーパントおよび(C)酸化剤の双方の性質を持つ化合物が、有機スルホン酸第二鉄塩であり、
前記液相が、有機スルホン酸第二鉄塩を40〜70重量%の範囲で含み、
前記弁作用金属が、アルミニウムであることを特徴とする、固体電解コンデンサの製造方法である。
第2の発明は、前記液相の溶媒が、n−ブタノールである、第1の発明に記載の固体電解コンデンサの製造方法である。
本発明によれば、静電容量が高く、ESRが低く、さらには耐熱性に優れる固体電解コンデンサを提供することができる。
また下記一般式〔2〕および〔3〕
〔2〕
〔3〕
により表わされる化合物の少なくとも一方を重合させて得られる高分子を固体電解質として使用した場合には、これらのモノマーの重合速度が比較的穏やかであるため、微細な多孔質を有する弁作用金属微粒子を焼結して得られた多孔性成形体の空隙に十分充填できる。
これにより、静電容量が高く、ESRが低く、さらには耐熱性に優れる固体電解コンデンサを提供することができる。
EDOTの置換基の炭素数を横軸に取り、ESR(mΩ)を縦軸にとったグラフである(実施例7〜9、比較例4、7)。 EDOTの置換基の炭素数を横軸に取り、重合速度(秒)を縦軸にとったグラフである(実施例4〜6および比較例1〜2)。 本発明の実施例10に係る固体電解コンデンサの構造を説明するための模式断面図である。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、下記一般式〔1〕により表わされる化合物を重合させて得られる高分子を固体電解質として含む固体電解コンデンサである。
〔1〕
上記一般式〔1〕において、Rは炭素数1〜2の直鎖状のアルキル基を示す。Zは酸素原子を示す。
炭素数が1〜2の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
炭素数が6を超える直鎖又は分岐鎖状のアルキル基の場合、得られる化合物の重合反応性が低下し、重合体が得られにくくなる。
前記一般式〔1〕により表される化合物として、より好ましくは、
2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)、
2−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−エチル−EDOT)、
が挙げられる。
上記一般式〔1〕により表わされる化合物を重合させて得られる高分子は、高電導性を示し、熱安定性に優れたものとなる。
本発明に使用する前記化合物は、公知の導電性高分子モノマー、例えばEDOTと比較して重合速度が改善されているものである。
すなわち、EDOTより重合速度が緩和であるにも関わらず、重合性に富むため、多孔質で複雑な形状を有している弁作用金属の孔奥深くまで浸透して重合することが可能となる。
よって、本発明に使用される化合物の高分子は、特に、固体電解コンデンサの固体電解質に適した導電性高分子材料となる。
上記した化合物において、下記一般式〔2〕および〔3〕の少なくとも一方の化合物を使用した場合、特にESR特性と耐熱性に優れた固体電解コンデンサが得られる。
〔2〕
〔3〕
上記一般式〔1〕〜〔3〕により表わされる化合物の少なくとも一つを重合させて得られる高分子は、以下に示す重合方法等により得ることができる。
例えば、上記化合物を、酸化剤を用いて化学酸化重合することによっても高分子を得ることができ、また、電気化学的な酸化重合によっても高分子を得ることができる。
化学酸化重合における前記酸化剤としては、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素、二酸化塩素、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、亜塩素酸などのハロゲン化物、
5フッ化アンチモン、5塩化リン、5フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデンなどの金属ハロゲン化物、
過マンガン酸塩、重クロム酸塩、無水クロム酸、第二鉄塩、第二銅塩などの高原子価状態遷移金属イオン又はその塩、
硫酸、硝酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのプロトン酸、
三酸化硫黄、二酸化窒素などの酸素化合物、
過酸化水素、過硫酸アンモニム、過ホウ酸ナトリウムなどのペルオキソ酸及び塩、
モリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸及び塩等が挙げられる。
また、電気化学的な酸化重合としては、上記一般式〔1〕〜〔3〕により表わされる化合物の少なくとも一つと、ドーパントとを、溶媒に溶解した電解液中にて、電解酸化することによって重合する方法等を挙げることができる。
上記ドーパントとしては、例えば、ヨウ素、臭素、塩素等のハロゲンイオン、ヘキサフルオロリン、ヘキサフルオロヒ素、ヘキサフルオロアンチモン、テトラフルオロホウ素、過塩素酸等のハロゲン化物イオン、
メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等のアルキル置換有機スルホン酸イオン、
カンファースルホン酸イオン等の環状スルホン酸イオン、
ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸等のアルキル置換もしくは無置換のベンゼンモノもしくはジスルホン酸イオン、
2−ナフタレンスルホン酸、1,7−ナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸基を1〜4個置換したナフタレンスルホン酸のアルキル置換もしくは無置換イオン、
アントラセンスルホン酸イオン、アントラキノンスルホン酸イオン、
アルキルビフェニルスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等のアルキル置換もしくは無置換のビフェニルスルホン酸イオン、
ポリスチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等の高分子スルホン酸イオン等、
モリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸イオン等が挙げられ、これらの各種塩を支持電解質として用いることができる。
上記溶媒としては、水、
テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、
ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の非プロトン性溶媒、
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、
クロロホルム、塩化メチレン等の非芳香性の塩素化合物系溶媒、
ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物系溶媒、
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、
蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸または該有機酸の酸無水物(無水酢酸等)等を挙げることができる。
上記溶媒は、単独で使用できるのはもちろんのこと、上記した溶媒の複数種を混合した混合溶媒として使用することもできる。
電気化学的な重合方法としては、上記化合物を上記電解液中で電解酸化することにより、陽極上に高分子を形成することができる。
本発明の固体電解コンデンサは、一般式〔1〕〜〔3〕により表わされる化合物の少なくとも一つを重合して得られる高分子を含む固体電解質層を具備しており、静電容量が高く、ESRが低く、優れた電気特性を有する。
加えて、従来のポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、「PEDOT」と略記する。)を固体電解質層とする固体電解コンデンサより、著しく耐熱性が向上したものとなる。
本発明の固体電解コンデンサが低ESRを示す理由としては、はっきりと明らかになっていないが、本発明に用いる化合物の重合速度が比較的緩慢であり、重合反応液が誘電体酸化皮膜中によく浸透してからの高分子形成が可能であるため、より密着性の高い固体電解質層を形成できるためと考えられる。
さらに、得られる高分子が鎖長の短いアルキル基を置換基として有していることによる誘起効果が生じ、電子分布がPEDOTより広がり(共役系が広がり)、その結果、導電性が高まることによるものと推測される。
次に、本発明の固体電解コンデンサの製造方法について説明する。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、
誘電体酸化皮膜を形成させた弁作用金属上に、
上記一般式〔1〕により表わされる化合物を重合させて得られる高分子を、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に形成する工程を有することを特徴とする。
弁作用金属としては、アルミニウム用いることができる。
これら弁作用金属の形態は、金属箔、あるいはこれを主成分とする粉末の焼結体等が好適に使用できる。
上記弁作用金属に誘電体酸化皮膜を形成する方法としては、アジピン酸二アンモニウム水溶液などの化成液中で、陽極酸化を行うことによって弁作用金属表面に誘電体酸化皮膜を形成することができる。
上記高分子を形成する工程は、上述した化学酸化重合による方法であっても良いし、電解酸化重合による方法であっても良い。
得られる固体電解コンデンサの電気特性や、より簡便な製造工程であるという面から、化学酸化重合により高分子を形成する工程であることが好ましい。
化学酸化重合により高分子を形成する好ましい製造方法は、上記〔2〕〜〔3〕により表わされる化合物の少なくとも1つの化合物(A)、ドーパント(B)および酸化剤(C)を、液相にて接触させることにより弁作用金属上に高分子を形成する工程を含むものである。
この上記化合物(A)、ドーパント(B)および酸化剤(C)を、液相にて接触させる方法としては、
1.上記〔2〕〜〔3〕により表わされる化合物の少なくとも1つの化合物(A)、ドーパント(B)および酸化剤(C)混合した溶液を調整し、この溶液を弁作用金属に塗布あるいは浸漬によって接触させ、高分子を得る方法
2.前記化合物液を準備し、別途ドーパントおよび酸化剤を含有する溶液を準備して、上記化合物液を含浸保持させた弁作用金属を、前記酸化剤溶液中に塗布あるいは浸漬し、接触させ高分子を得る方法
3.ドーパントおよび酸化剤を含有する溶液を、塗布あるいは含浸して保持させた弁作用金属に、前記化合物液を塗布あるいは浸漬し、接触させ重合体を得る方法等
が挙げられる。
これらの方法は、特に制限されるものでない。
弁作用金属上に高分子を形成する方法としては、弁作用金属上に保持された化合物(A)、ドーパント(B)および酸化剤(C)を含む液を所定温度にて所定時間保持することにより形成することができる。
ここで、所定温度とは、0℃から150℃の範囲で任意に選択することができ、所定時間とは1分から24時間の範囲で任意に選択することができる。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法におけるより好ましい形態として、ドーパント(B)および酸化剤(C)の双方の性質を持つ化合物の溶液を使用する方法があげられる。
ドーパント(B)および酸化剤(C)の双方の性質を持つ化合物とは、導電性高分子のドーパントとなるアニオン成分を含む酸化剤であり、そのような導電性高分子のドーパントとなるアニオン成分を含む酸化剤を用いることにより、化学重合の際に、アニオン成分が導電性高分子に取り込まれてドーパントとして機能し、導電性が向上された導電性高分子を得ることができる。
好ましいアニオン成分としては、有機スルホン酸イオン、カルボン酸イオン等の有機酸イオン、ホウ素化合物イオン、リン酸化合物イオン、過塩素酸イオン等の無機酸イオンなどがあげられる。
そのようなアニオン成分を含む酸化剤として特に好適なものとしては、塩化第二鉄や過塩素酸第二鉄等の無機酸の鉄(III)塩、ベンゼンスルホン酸第二鉄やパラトルエンスルホン酸第二鉄塩、アルキルナフタレンスルホン酸第二鉄塩等の有機酸の鉄(III)塩を挙げることができ、最も好適なものとして、有機スルホン酸第二鉄(III)塩を挙げることができる。
(B)ドーパントおよび(C)酸化剤の双方の性質を持つ化合物を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒が好適であり、より好ましくは、エタノール、n−ブタノールが挙げられる。
これらの中で特に好適なものは、上記有機スルホン酸の鉄(III)が上記アルコール系溶媒に、40重量%〜70重量%溶解されたものである。
この様な濃度に溶解された(B)ドーパントおよび(C)酸化剤の双方の性質を持つ化合物を用いることにより、導電性及び耐久性に優れた高分子を、複雑な形状を有する弁作用金属上に、緻密に形成することが可能となる。
以下、本発明の固体電解コンデンサの製造方法について、アルミニウム巻回型コンデンサを作製する方法を具体例に挙げ、説明する。
まず陽極となるアルミニウム箔表面をエッチングして粗面化させた後、陽極リードを接続し、ついでアジピン酸二アンモニウム等の水溶液中で化成処理して、誘電体酸化皮膜を形成させる。本発明を実施する上で、エッチング倍率の大きな箔を用いることにより、静電容量の大きなコンデンサを得ることができ、好ましい。
別途、陰極リードを接続した対向陰極アルミニウム箔と、上記陽極アルミニウム箔との間に、マニラ紙等のセパレータを挟み込み、円筒状に巻き取り、ついで熱処理によりセパレータを炭化させて、巻回型のコンデンサ素子を準備する。
次に、上記コンデンサ素子の陽極箔上に、導電性高分子からなる固体電解質層を形成させる。この固体電解質層を形成させる方法としては、コンデンサ素子に導電性高分子モノマーである一般式〔1〕〜〔3〕の少なくとも1つにより表わされる化合物を含む液を浸漬、塗布、吹き付けなどの方法により含浸させ、ついで、含浸させた化合物に、酸化剤を接触させることによって重合反応させて固体電解質層を形成する。
なお、先に酸化剤を含浸させ、その後、上記化合物を接触させて重合する方法や、上記化合物と酸化剤とを混合した溶液を一度に含浸させて重合する方法も適用でき、特に限定されない。
また、化学酸化重合は、液相中で接触させた化合物、ドーパントおよび酸化剤を0〜150℃の温度下にて所定時間置き、溶媒を加熱乾燥させることによって重合を行うことが好ましい。0℃未満では、重合反応が生じにくくなり、150℃を越える温度では、コンデンサ特性が悪化する場合がある。
上記含浸、加熱工程は複数回繰り返してもよい。
上記工程により、陽極アルミニウム箔の微細なエッチング孔内に、導電性高分子層を十分に充填させた固体電解質層を形成することができる。
ついで、エポキシ樹脂等を用いて、コンデンサケースを封口し、電圧を印加してエージングを行い、本発明の固体電解コンデンサを得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例中、「%」は「質量%」を表す。また特に指定した場合を除き、静電容量(C)及び誘電損失(tanδ)は周波数120Hzで、等価直列抵抗(ESR)は周波数100kHzで測定した。
また、容量含浸率は、固体電解質層形成前のコンデンサ素子を15%アジピン酸二アンモニウム水溶液中で測定した静電容量に対し、得られた固体電解コンデンサの静電容量を百分率で示したものである。
また、LCは漏れ電流を示し、定格電圧を印加した後、60秒後に固体電解コンデンサに流れる直流電流を測定した値を示したものである。
[2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)を用いた固体電解コンデンサの作製方法]
アルミニウム箔の表面をエッチングして粗面化させた後、カシメ付けにより、陽極リードを接続させ、ついで、10%アジピン酸二アンモニウム水溶液中、電圧4Vで化成処理して、アルミニウム箔の表面に誘電体酸化皮膜を形成させた。
ついで、上記陽極箔と、陰極リードとを抵抗溶接により接続させた対向陰極アルミニウム箔との間に、厚さ50μmのマニラ紙をセパレータとして挟み込み、円筒状に巻き取り、次いで、温度400℃で4分間、熱処理して、マニラ紙を炭化させて、コンデンサ素子を準備した。得られたコンデンサ素子の15%アジピン酸二アンモニウム水溶液中での静電容量は650μFであった。
次に重合に使用する化合物である2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)と、酸化剤である50%p−トルエンスルホン酸第二鉄/n−ブタノール溶液とを準備し、両者の重量比率を1:2.5に調合した溶液に当該コンデンサ素子を120秒間浸漬後、45℃で2時間、105℃で35分、125℃で1時間加熱して、化学酸化重合を行い、コンデンサ素子中にポリ−2−メチル−EDOTを形成させた。
ついで、エポキシ樹脂を用いて、このコンデンサケースを封口し、両極に電圧4Vを印加させてエージングを行い、固体電解コンデンサを完成させた。
[2−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−エチル−EDOT)を用いた固体電解コンデンサの作製方法]
実施例1と同様の重合前処理済みコンデンサ素子を準備し、重合に使用する化合物として実施例1の2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−エチル−EDOT)を用いた以外は実施例1と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。
[2−プロピル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−プロピル−EDOT)を用いた固体電解コンデンサの作製方法]
実施例1と同様の重合前処理済みコンデンサ素子を準備し、重合に使用する化合物として実施例1の2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−プロピル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−プロピル−EDOT)を用いた以外は実施例1と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。
[比較例1]
[2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(EDOT)を用いた固体電解コンデンサの作製方法]
実施例1と同様の重合前処理済みコンデンサ素子を準備し、重合に使用する化合物として実施例1の2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(EDOT)を用いた以外は実施例1と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。
それぞれ実施例1〜3および比較例1により得られた固体電解コンデンサの初期電気特性、容量含浸率および漏れ電流の電気特性を表1に示す。
表1に示すように、様々な化合物を比較した結果、実施例1〜3で得られた固体電解コンデンサは、比較例のEDOTを用いた固体電解コンデンサより、低い等価直列抵抗を有していることがわかった。
特に、実施例1により得られた固体電解コンデンサは、ESRが著しく低減されていることがわかった。
6mlバイアルに酸化剤である50%p−トルエンスルホン酸第二鉄/n−ブタノール溶液を0.3g取り、20℃で30分保温した。
次に重合に使用する化合物である2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)を0.1g取り、バイアルに添加して計測を開始した。
添加してから5秒経過後、10秒間、バイアル中の内容物をスパチェラにて激しく攪拌した。
攪拌を終了してからバイアル中に固形が析出し始めるまでの時間を測定した。この結果を表2にまとめた。
なお、表2中の重合速度とは固形が析出した秒数から10秒を引いた値である。
実施例4の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−エチル−EDOT)を使用した他は実施例4の場合と全く同様に実験を行った。結果を表2に示す。
実施例4の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−プロピル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−プロピル−EDOT)を使用した他は実施例4の場合と全く同様に実験を行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例4の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−ヘキシル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−ヘキシル−EDOT)を使用した他は実施例4の場合と全く同様に実験を行った。重合速度測定中、固形の析出を確認することができなかった。経時的に内容物の粘度が上昇し、内容物がタール状となった。液が動かなくなった時間を表2に示す。
[比較例3]
実施例4の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(EDOT)を使用した他は実施例4の場合と全く同様に実験を行った。結果を表2に示す。
実施例4〜6および比較例1〜2の結果について、EDOTの置換基である、メチル基、エチル基、プロピル基およびヘキシル基の炭素数を横軸に取り、重合速度(秒)を縦軸にとったグラフを図2に示す。
図2より、EDOTに炭素数3以上のアルキル基が置換した場合には重合速度が大きく遅延することが判明した。
実施例1の場合で、湿度22%の条件下、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)の量を1.10gとし、酸化剤である50%p−トルエンスルホン酸第二鉄/n−ブタノール溶液とを準備し、両者の重量比率を1:2.5に調合して60秒間攪拌した。
次にこの溶液に実施例1に使用したコンデンサ素子を120秒間浸漬後、グローブボックス中で密閉瓶に入れてから30分経過後、45℃で2時間加熱し、密閉瓶からコンデンサ素子を取り出して105℃で35分、125℃で1時間加熱して、化学酸化重合を行い、コンデンサ素子中にポリ−2−メチル−EDOTを形成させた。
結果を表3に示した。
実施例7の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−エチル−EDOT)を用いた以外は実施例7と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。結果を表3に示した。
実施例7の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−プロピル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−プロピル−EDOT)を用いた以外は実施例7と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。結果を表3に示した。
[比較例4]
実施例7の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−ヘキシル−EDOT)を用いた以外は実施例7と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。結果を表3に示した。
[比較例5]
実施例7の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキシン(2−ヒドロキシメチル−EDOT)を用いた以外は実施例7と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。結果を表3に示した。
[比較例6]
実施例7の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオセピン(2−メチル−PDOT)を用いた以外は実施例7と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサの作製を試みたが十分な性能の固体電界コンデンサは得られなかった。
[比較例7]
実施例7の場合で、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)に代えて、2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(EDOT)を用いた以外は実施例7と同様な方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。結果を表3に示した。
実施例7〜9、比較例4〜7により得られた固体電解コンデンサを125℃の条件下、4.0Vの電圧をかけて耐熱試験を実施した。耐熱実験前、24時間後および48時間後の結果を表3に示した。
実施例7〜9、比較例4、7により得られた固体電解コンデンサについて、EDOTの置換基である、メチル基、エチル基、プロピル基およびヘキシル基の炭素数を横軸に取り、ESR(mΩ)を縦軸にとったグラフを図1に示す。
図1より、EDOTに炭素数1または2のアルキル基が置換した場合にはESRが小さくなり、特にEDOTに炭素数1のアルキル基が置換した場合にはESRが小さくなることが判明した。
[参考例]
陽極として大きさが5×3×1mmのタンタル焼結体を用い、陽極線としてタンタル線を用いた重量が約100mgの陽極体を0.05重量%燐酸水溶液中で80℃、25Vで150分陽極酸化し、脱イオン水の流水により洗浄して、乾燥を行いコンデンサ素子とした。なお、この状態をコンデンサと見立て化成液中の静電容量を測定した結果160μFであった。
[比較参考例10]
[2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)を用いた固体電解コンデンサの作製方法]
図3は本発明の実施例10に係る固体電解コンデンサの構造を説明するための模式断面図である。
タンタル金属微粒子を加圧成形し焼結した陽極11を形成し、これをリン酸水溶液の電解液中で化成処理し、その表面に誘電体酸化被膜12を形成させたコンデンサ素子を作成する。
次に、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−メチル−EDOT)、p−トルエンスルホン酸鉄(III)、ブチルアルコールからなる化学重合液に前記コンデンサ素子を浸漬した後、大気中で熱処理を行い、誘電体酸化被膜12上にポリ2−メチル−EDOTからなる固体電解質13を化学酸化重合により形成する。この浸漬、熱処理工程は5回以上繰り返して行われる。この時の熱処理は、室温で10分間放置した後、150℃で5分間行った。
その後、固体電解質13上に、グラファイト層14および銀ペースト層15を順次形成し、銀ペースト層15に導電性接着剤19を介して陰極リード17を、陽極11に陽極リード16をそれぞれ接続すると共に、これらを樹脂外装18によりモールドし、固体電解コンデンサを完成させた。
[比較参考例11]
[2−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−エチル−EDOT)を用いた固体電解コンデンサの作製方法]
実施例1と同様の重合前処理済みコンデンサ素子を準備し、モノマーに2−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−エチル−EDOT)を用いた以外は実施例10と同様の方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。
[比較参考例12]
[2−プロピル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−プロピル−EDOT)を用いた固体電解コンデンサの作製方法]
実施例1と同様の重合前処理済みコンデンサ素子を準備し、モノマーに2−プロピル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(2−プロピル−EDOT)を用いた以外は実施例1と同様の方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。
比較例8
[2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(EDOT)を用いた固体電解コンデンサの作製方法]
実施例9と同様の重合前処理済みコンデンサ素子を準備し、モノマーを2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ジオキシン(EDOT)にした以外は実施例1と同様の方法で処理を行い、固体電解コンデンサを作製した。
それぞれ比較参考例10〜12および比較例8にて得られた固体電解コンデンサの初期電気特性、容量含浸率の電気特性を表4に示す。
表4に示すように、様々なモノマーを比較した結果、本発明により得られる固体電解コンデンサ(実施例9、比較参考例10〜12)は、従来のEDOTを用いた固体電解コンデンサと比較して、容量含浸率が高く、低い等価直列抵抗を有していることがわかった。
1 比較例3
2 実施例4
3 実施例5
4 実施例6
5 比較例2
6 比較例7
7 実施例7
8 実施例8
9 実施例9
10 比較例4
11 陽極
12 誘電体酸化被膜
13 固体電解質
14 グラファイト層
15 銀ペースト層
16 陽極リード
17 陰極リード
18 樹脂外装
19 導電性接着剤

Claims (2)

  1. 下記一般式〔2〕および〔3〕
    〔2〕
    〔3〕
    により表わされる化合物の少なくとも1つを重合させて得られる高分子を、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法であって、
    (A)上記一般式〔2〕および〔3〕により表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つ、
    (B)ドーパント、
    および(C)酸化剤
    を、液相にて接触させて重合を行う工程を含み、
    前記(B)ドーパントおよび(C)酸化剤として、(B)ドーパントおよび(C)酸化剤の双方の性質を持つ化合物を使用し、
    前記(B)ドーパントおよび(C)酸化剤の双方の性質を持つ化合物が、有機スルホン酸第二鉄塩であり、
    前記液相が、有機スルホン酸第二鉄塩を40〜70重量%の範囲で含み、

    前記弁作用金属が、アルミニウムであることを特徴とする、固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記液相の溶媒が、n−ブタノールである、請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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