JP4583800B2 - 酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ - Google Patents

酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ Download PDF

Info

Publication number
JP4583800B2
JP4583800B2 JP2004125436A JP2004125436A JP4583800B2 JP 4583800 B2 JP4583800 B2 JP 4583800B2 JP 2004125436 A JP2004125436 A JP 2004125436A JP 2004125436 A JP2004125436 A JP 2004125436A JP 4583800 B2 JP4583800 B2 JP 4583800B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oxide ion
hydrogen gas
gas sensor
ion conductor
solid electrolyte
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004125436A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005308528A (ja
Inventor
成人 出来
達也 伊藤
亨 前川
健吾 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
New Cosmos Electric Co Ltd
Original Assignee
New Cosmos Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by New Cosmos Electric Co Ltd filed Critical New Cosmos Electric Co Ltd
Priority to JP2004125436A priority Critical patent/JP4583800B2/ja
Publication of JP2005308528A publication Critical patent/JP2005308528A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4583800B2 publication Critical patent/JP4583800B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

本発明は、水素ガスを選択的に検知可能な、酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサに関するものである。
酸化物イオン伝導体として固体電解質を用いる電気化学式ガスセンサは、一般に、固体電解質に検知極及び対極が一体に接合された構造で、その構造が全て固体からなるために、長期安定性にすぐれ、常温より高い温度で作動させる必要がある場合に適している。また、このような固体電解質を用いる電気化学式ガスセンサは、その検知方式によって、電圧検出型と電流検出型とに分類される。
電圧検出型は、濃淡電池型ともいわれ、固体電解質の片面に固着した検知極に未知濃度(分圧)の検知ガスを供給し、固体電解質の他面に固着した対極に既知濃度(分圧)の基準ガスを供給するとともに、これらのガスを互いに隔離すると、濃淡電池が形成され、その起電力を測定すれば、数1(1)に示すネルンスト式にしたがって検知ガスの濃度(分圧)を知ることができるという原理にもとづくものである。
具体例としては、酸化物イオン導電性の安定化酸化ジルコニウムを固体電解質とし、空気を基準ガスとし、500〜1000℃で作動する酸素濃度センサがよく知られている(特許文献1参照)。
電流検出型は、定電位電解型とも限界電流型ともいわれ、検知極と対極との間に、検知ガスの濃度に応じた限界電流が流れるように、一定電圧を印加した際に、検知極と対極との間に流れる電流を検出することによって、検知極に供給されるガスの濃度を検知するものである。具体例としては、安定化酸化ジルコニウムの片面に白金からなる検知極を、他面にやはり白金からなる対極をそれぞれ接合した素子の検知極側に、未知濃度の酸素含有ガスを供給し、一定の電圧を印加した際、化1(2)(3)式に示す反応が起こり、その際流れる電流から、検知ガスの酸素濃度を検知する方法が提案されている。
適用すべき固体電解質としては、通常は、検知ガス種に対応するイオンが伝導しえる材料を選択する必要がある。例えば、上記のように、検知ガスが酸素の場合には、酸素イオン導電性の電解質が用いられ、検知ガスが水素の場合には、セリウム酸バリウム系あるいはセリウム酸ストロンチウム系などの水素イオン導電性の電解質が選択される。
特開2003−279531号公報
検知ガスが水素及び各種炭化水素ガスなどの還元性ガスの場合には、上記のように、水素イオン導電性の固体電解質を用いるのが、従来必須であるとされていたが、水素イオン導電性のセリウム酸バリウム系あるいはセリウム酸ストロンチウム系電解質は、検知ガス雰囲気中に二酸化炭素が含まれる場合には、不安定であることに難点がある。
また、センサを濃淡電池型とする際には、検知ガスと同一であって、しかも既知濃度の基準ガスを使用する必要があるが、このような措置は、実用上、極めて煩雑であり、現実的ではない。
さらには、固体電解質が一般に、高温でしか充分なイオン導電性を示さないという理由から、センサに、例えば白金抵抗体を接合し、この部分に電流を流すというような、温度制御が可能な加熱措置を施す必要があるが、従来のように、固体電解質の両面に検知極と対極を接合し、検知ガスと基準ガスとを固体電解質を介して隔離するという構造にした場合には、気密性を確保するための構造が複雑になるばかりか、加熱措置を施す余地が乏しくなる点も問題となっていた。
以上の理由から、例えば、溶融アルミニウム中の水素センサの如き特殊用途を除いた、一般用途向けに適した還元性ガス用固体電解質型センサは、未だに実用化されていない。
上記実状に鑑み本発明の目的は、検知出力の安定性が高く、より簡単な構造で、しかも基準ガスを必要としない、酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサを提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサは、基板と、液相析出法(LPD法:Liquid Phase Deposition Method)により前記基板に析出した酸化物イオン伝導体である薄膜の酸化物イオン導電性固体電解質と、前記酸化物イオン導電性固体電解質にそれぞれ接合された検知極及び基準極と、前記基準極を被覆するガス非透過性皮膜と、を有する。
本発明によると、基準極がガス非透過性皮膜で被覆されているため、基準極に一定濃度の水素ガスを供給する必要がない。また、固体電解質として酸化物イオン伝導体である酸化物イオン導電性固体電解質を用いることで、小型のヒータでも加熱保持が可能な約500℃以上600℃以下の温度域で水素ガスセンサを動作させることができるため、省電力、長寿命の水素ガスセンサとすることができる。更に、LPD法により、酸化物イオン導電性固体電解質を薄膜化して析出させているため、水素ガスに対する応答速度が速く、水素ガスに対して選択的に高い感度を示す水素ガスセンサとすることができる。
本発明においては、前記基板に加熱用抵抗体を接合することが好ましい。これによると、加熱用抵抗体で酸化物イオン導電性固体電解質を加熱することで、水素ガスセンサを好適に動作させることができる。
本発明においては、前記基板の片面に析出した前記酸化物イオン導電性固体電解質に前記検知極及び前記基準極をそれぞれ接合するとともに、前記基板の他面に加熱用抵抗体を接合することが好ましい。これによると、基板の片面毎に検知極及び基準極或いは加熱用抵抗体の接合処理を行うため、水素ガスセンサの作製が容易になる。
本発明においては、前記酸化物イオン導電性固体電解質の膜厚が500nm以下であることが好ましい。
本発明においては、前記酸化物イオン導電性固体電解質がイットリウムによって安定化された酸化ジルコニウムであることが好ましい。これによると、水素ガスに対する高応答性と、水素ガスに対しての選択的な高感度が要求される水素ガスセンサに好適な薄膜の酸化物イオン導電性固体電解質を得ることができる。
本発明においては、前記酸化物イオン導電性固体電解質が8mol%のイットリア安定化ジルコニアであることが好ましい。これによると、酸化物イオン導電性固体電解質の導電率を向上させることができる。
本発明においては、前記イットリア安定化ジルコニアの膜厚が500nm以下であることが好ましい。これによると、イットリア安定化ジルコニアの薄膜に発生するクラックの量を抑えることができる。
本発明においては、前記基板が絶縁性セラミックス基板であることが好ましい。これによると、高温下で強度と耐久性に優れる絶縁性セラミックス基板を用いることで、約500℃以上600℃以下の温度域で使用される水素ガスセンサに好適な基板とすることができる。
本発明においては、前記絶縁性セラミックス基板がアルミナもしくはシリカ−アルミナであることが好ましい。これによると、高温下でも絶縁性の基板とすることができる。
本発明においては、前記検知極及び前記基準極が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、金の群から選ばれた貴金属もしくはこれら貴金属の合金であることが好ましい。これによると、スパッタリング法、ペースト法等の公知な方法で検知極及び基準極を酸化物イオン導電性固体電解質に接合できる。
本発明においては、前記ガス非透過性皮膜がガラス状材料であることが好ましい。これによると、一般に市販されているガラス状材料で基準極を好適に被覆できる。
本発明においては、前記ガラス状材料950℃以上の温度焼成されていることが好ましい。これによると、ガラスを完全に溶融させて隙間なく基準極を被覆できる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサの実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサの構成を図1〜図5に基づいて説明する。図1(a)は水素ガスセンサの正面図であり、図1(b)は水素ガスセンサの裏面図である。図2は図1(a)のA−A’線断面図である。
酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ(以下、センサという)10は、図2に示すように、絶縁性セラミックス基板1と、絶縁性セラミックス基板1の片面に接合された加熱用抵抗体6と、液相析出法により絶縁性セラミックス基板1の片面に析出した酸化物イオン伝導体である薄膜の酸化物イオン導電性固体電解質2と、酸化物イオン導電性固体電解質2にそれぞれ接合された検知極4及び基準極(対極)3と、基準極3を被覆するガス非透過性皮膜5と、から構成される。
絶縁性セラミックス基板1は、電気的絶縁性、熱伝導性、耐熱性等の点を考慮して適宜選ばれるが、高密度に焼結させたアルミナもしくはシリカ−アルミナが最適である。絶縁性セラミックス基板1の片面には後述の加熱用抵抗体6が接合され、後述する液相析出法(LPD法)により絶縁性セラミックス基板1の片面に酸化物イオン導電性固体電解質2の薄膜が形成された後、レーザーで1.0mm×1.5mmの大きさに切断される。尚、本実施形態においては電気的絶縁性、熱伝導性、耐熱性等の点を考慮して厚さt=0.4mmのアルミナ基板(絶縁性セラミックス基板)1を用いた。
加熱用抵抗体6は白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、金の群から選ばれた貴金属もしくはこれら貴金属の合金からなり、公知のスパッタリング法、ペースト法等によってアルミナ基板1の片面(後述の検知極4及び基準極3が設けられる面とは反対の面)に接合される。加熱用抵抗体6はシート状としてセラミックス接着剤により接着してもよい。尚、加熱用抵抗体6としてセラミックスを用いても良い。本実施形態においては、加熱用抵抗体6として白金を用い、スパッタリング法によりアルミナ基板1全体に白金薄膜を形成した後、フォトレジストによりパターニングを行い、ドライエッチングによりアルミナ基板1の片面に加熱用抵抗体(白金薄膜ヒータ)6のパターンを形成させる。また、白金薄膜ヒータ6のパターン形成後には、白金薄膜ヒータ6の面を耐酸性テープでマスキングし、後述のLPD法により析出される酸化物イオン導電性固体電解質2からシールする。また、耐酸性テープがはがされ、アルミナ基板1がセンサチップのサイズに切断された後に、白金薄膜ヒータ6表面の白金リボン線取付部7に白金リボン線13,14がスポット溶接により接続される。尚、白金リボン線13,14の白金薄膜ヒータ6への取り付けはスポット溶接に限定されない。
酸化物イオン導電性固体電解質2はLPD法によりアルミナ基板1上に析出した薄膜の酸化物イオン伝導体である。固体電解質として酸化物イオン伝導体である酸化物イオン導電性固体電解質2を用いることで、小型のヒータでも加熱保持が可能な約500℃以上600℃以下の温度域でセンサ10を動作させることができる。
ここで、上記の酸化物イオン導電性固体電解質2の形成に用いられるLPD法について説明する。
LPD法は、セラミックス析出反応液として、酸性フッ化アンモニウム水溶液にて溶解した酸化物若しくは各種金属の水酸化物を溶解した水溶液を用い、その加水分解平衡反応において配位子であるフッ化イオンと、より安定な錯体を形成するホウ酸等をフッ化物イオンイーターとして添加することで、反応液内の平衡を酸化物析出側へシフトさせ、基板をこの反応液中に浸漬することによって、基板上へ酸化物若しくは水酸化物を析出させる方法である。
このLPD法により、アルミナ基板1に酸化物イオン導電性固体電解質2が析出し、薄膜を形成する。本実施形態においては、酸化物イオン導電性固体電解質2として約8mol%のイットリア安定化ジルコニア(Y−ZrO、以下YSZ)を用いることが好ましい。YSZ薄膜は、HZrF水溶液(約0.06mol%/L)及びYイオンを含む塩酸水溶液(約0.02mol%/L,pH=約5)及びEDTA(Ethylen Diamine Tetraacetic Acid(C1014Na・2HO))及び蒸留水をそれぞれ約10:1:1:38vol%混合してなるYSZ析出反応液をアルミニウム板が内壁に沿って設置された容器に流し込み、アルミナ基板1を垂直懸下して速やかに容器に浸漬し、約30℃で反応させて、YSZ薄膜を約500nm以下の膜厚で析出・成膜させた後、電気炉にて約1000℃で約2時間焼成してなる。図3はアルミナ基板1上に析出・成膜した8mol%のYSZ薄膜の断面のSEM写真である。また、図4はアルミナ基板1上に析出・成膜した8mol%のYSZ薄膜の表面のSEM写真である。Yイオンを含む塩酸水溶液は、塩酸水溶液に約0.01mol%/LのYを入れ、撹拌しながらYが完全に溶けるまで待ち、その後、pHが約5になるように塩酸を加えて調製する。尚、膜厚が厚いほど薄膜に発生するクラックが顕在化すること、膜厚を異ならせても水素ガスの感度に顕著な差が認められないことから、YSZ薄膜の膜厚を約200nm以上250nm以下とすることが好ましい。また、焼成温度が約600℃以上であれば十分な導電率を有する固体電解質を得ることができるが、後述の金電極を焼き付ける温度が約900℃、同じく後述のガラス状材料を焼成する温度が約950℃であるため、これらのプロセスの前段階において約1000℃で焼成しておくことが好ましい。また、酸化物イオン導電性固体電解質2として約8mol%のYSZを用いたが、これに限定されるものではない。
検知極4及び基準極3は、酸化物イオン導電性固体電解質(YSZ薄膜)2上に相互に隔離されるように接合されている。両電極とも、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、金の群から選ばれた貴金属もしくはこれら貴金属の合金で構成される。また、両電極とも、スパッタリング法、ペースト法等の公知な方法で接合される。本実施形態においては、検知極4及び基準極3として金電極を用いている。また、アルミナ基板1がセンサチップのサイズに切断された後に、検知極4及び基準極3へのリード線11,12としてφ50μmの金線が金ペーストにより検知極4及び基準極3に固着される。リード線11,12の接続後には、約900℃、約30分の焼き付けが行われ、両電極3,4とリード線11,12はYSZ薄膜2に固着する。
ガス非透過性皮膜5としては、加熱によって溶融するガラス状材料が好適に使用され、基準極3を被覆してガス非透過性とする。これにより、基準極3の水素濃度を0とみなすことができる。ガラス状材料は一般に市販されているもので賄える。ガス非透過性皮膜(ガラス状材料)5の塗布後に約950℃、約30分の焼成が行われ、ガラス状材料5は完全に溶融して基準極3を被覆して隙間なくYSZ薄膜2に固着する。図5はガラス状材料5を約950℃で焼成した場合の微細構造を示す。
上記の構成において、酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサの製造方法について図1及び図3〜図6を用いて説明する。図6は水素ガスセンサの作成フローチャートである。
まず、図6のステップ1(S1)において、アルミナ基板1の表面を研磨する。この研磨によりYSZ薄膜2は、アルミナ基板1の表面に均一に成長して析出するようになる。次に、アルミナ基板1をアセトン中で約15分間超音波洗浄した後、約900℃、約2時間焼成を行い、更にアセトン中で約15分間超音波洗浄を行う。
次に、ステップ2(S2)において、スパッタリング法によりアルミナ基板1全体に白金薄膜を形成した後、フォトレジストによりパターニングを行い、ドライエッチングにより図1(b)に示すような白金薄膜ヒータ6をアルミナ基板1の片面に形成させる。
次に、ステップ3(S3)において、アルミナ基板1をアルカリ洗浄する。ここでは、約48%のフッ化水素酸を約10倍希釈したアルカリ処理液にアルミナ基板1を浸漬することにより脱脂する。その後、白金薄膜ヒータ6の面の少なくとも白金リボン線取付部7を耐酸性テープでマスキングする。
次に、ステップ4(S4)で、LPD法により、アルミナ基板1の表面にYSZ薄膜2を析出・成膜させる。具体的には、HZrF水溶液(約0.06mol%/L)及びYイオンを含む塩酸水溶液(約0.02mol%/L,pH=約5)及びEDTA及び蒸留水をそれぞれ約10:1:1:38vol%混合してなるYSZ析出反応液をアルミニウム板が内壁に沿って設置された容器に流し込み、アルミナ基板1を垂直懸下して速やかに容器内に浸漬し、約30℃で反応させて、アルミナ基板1の白金薄膜ヒータ6が接合した面と反対の面に図3、図4に示すようなYSZ薄膜2を約500nm以下、好ましくは約200nm以上250nm以下の厚みで析出・成膜させる。尚、YSZは約8mol%の濃度が好ましい。その後耐酸性テープをはがす。
次に、ステップ5(S5)で、YSZ薄膜2が表面に成膜したアルミナ基板1を約1000℃、約2時間で加熱し、YSZ薄膜を焼成させる。
次に、ステップ6(S6)で、レーザー等を用いてアルミナ基板1を1.0mm×1.5mmの大きさのセンサチップに切断する。
次に、ステップ7(S7)で、図1(a)のように、公知のスパッタリング法、ペースト法等によって、アルミナ基板1の白金薄膜ヒータ6が接合した面と反対の面に成膜したYSZ薄膜2上に金電極である検知極4及び基準極3を隔離させて接合する。そして、金ペーストによりリード線11,12をそれぞれ基準極3と検知極4に接着する。その後、約900℃、約30分の焼き付けを行い、検知極4及び基準極3をYSZ薄膜2に固着させるとともに、金ペーストを硬化させて、リード線11,12をそれぞれ基準極3と検知極4に固着させる。
次に、ステップ8(S8)で、ガラス状材料5を基準極3に塗布し、基準極3を被覆する。その後約950℃、約30分の焼成を行ってガラス状材料5を完全に溶融させ、YSZ薄膜に隙間なく固着・硬化させる(図5参照)。
次に、ステップ9(S9)で、図1(b)において、白金リボン線13,14を白金薄膜ヒータ6表面の、白金リボン線取付部7にスポット溶接して接続する。これによりセンサ10が完成する。
次に、上記の構成における酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサの作動について図7を用いて説明する。図7はセンサ10の機能図である。
本実施形態のセンサ10は検知極と基準極との電圧(電位差)を測定する電圧検出型である。図7において、白金薄膜ヒータ6に外部電源から入出力ピンを介して電流を供給して、酸化物イオン伝導体であるYSZ薄膜2の温度を約600℃に保持し、水素ガスを検知したい場所にセンサ10を設置する。
本実施形態のセンサ10は厳密に言えば濃淡電池型ではないので、ひとつの推測ではあるが、センサ10が水素ガスに接触すると、検知極4は化2(4)式の平衡反応に基づく水素濃度に応じた平衡電位を示し、基準極3の表面において、酸素が吸着された形(Au(O))になるために、基準極3が化2(5)式の平衡反応による平衡電位を示し、両極の平衡電位の差が電圧として検出されると考えられる。
検知極4と基準極3との間に電圧が生じることで、センサ10が水素ガスを検知する。
次に、本実施形態におけるセンサの効果を確認するため、下記の試験を行った。
本実施形態のYSZ薄膜を使用したセンサと、ペレット状のYSZを使用したセンサを用意し、両センサの白金薄膜ヒータに外部電源から電流を供給して、YSZ薄膜或いはペレット状のYSZの温度を約600℃に保持し、種々のガス種、濃度の雰囲気中に両センサを設置し、検知極と基準極との電圧(電位差)を測定したところ、図8、図9に示す特性が得られた。ここで、図8はセンサの各種ガスに対する感度特性を示すグラフであり、縦軸が検知極−基準極間電圧に係るセンサ出力変化量、横軸がガス濃度の対数である。また、図9はセンサの水素ガスに対する応答特性を示すグラフであり、縦軸が検知極−基準極間電圧に係るセンサ出力変化量、横軸が時間(秒)である。即ち、図8において、各種還元性ガス(水素、一酸化炭素、イソブタン、メタン)に対して、ガス濃度(ppm)の対数とセンサ出力変化量との関係から、図8(a)に示すペレット状のYSZを使用したセンサの特性と、図8(b)に示す本実施形態のYSZ薄膜を用いたセンサの特性を比べると、本実施形態のYSZ薄膜を使用したセンサの方が、水素ガスに対して選択的に高い感度を示すことが判明した。また、図9(a)に示すペレット状のYSZを使用したセンサの特性と、図9(b)に示す本実施形態のYSZ薄膜を用いたセンサの特性を比べると、本実施形態のYSZ薄膜を使用したセンサの方が、水素ガスに対する応答速度が速いことが判明した。
以上のように、本実施形態の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ(センサ)は基準極がガス非透過性皮膜(ガラス状材料)で被覆されているため、基準極の水素濃度を0とみなすことができ、基準極に一定濃度の水素ガスを供給する必要がない。また、固体電解質にYSZを用いることで、小型のヒータでも加熱保持が可能な約500℃以上600℃以下の温度域でセンサを動作させることができるため、省電力、長寿命のセンサとすることができる。更に、LPD法によりYSZを薄膜化して析出しているため、水素ガスに対する応答速度が速く、水素ガスに対して選択的に高い感度を示すセンサとすることができる。
水素エネルギーを利用する燃料電池によるエネルギーシステムの実用化にとって、水素の製造・輸送・貯蔵・充填に係る安全性の確保は不可欠であり、水素を検知するセンサの工業的価値は大である。
(a)は本発明の実施形態例に係るイットリア安定化ジルコニア薄膜を使用した水素ガスセンサの正面図であり、(b)は裏面図である。 図1(a)のA−A’線断面図である。 LPD法により析出した8mol%のイットリア安定化ジルコニア薄膜の断面のSEM写真である。 LPD法により析出した8mol%のイットリア安定化ジルコニア薄膜の表面のSEM写真である。 ガラス状材料を約950℃で焼成した場合の微細構造の拡大図を示す。 本発明の実施形態例に係るイットリア安定化ジルコニア薄膜を使用した水素ガスセンサの作製フローチャートである。 本発明の実施形態例に係るイットリア安定化ジルコニア薄膜を使用した水素ガスセンサの機能図である。 (a)はペレット状のイットリア安定化ジルコニアを使用した水素ガスセンサの各種ガスに対する感度特性を示すグラフであり、(b)は本発明の実施形態例に係るイットリア安定化ジルコニア薄膜を使用した水素ガスセンサの各種ガスに対する感度特性を示すグラフである。 (a)はペレット状のイットリア安定化ジルコニアを使用した水素ガスセンサの水素ガスに対する応答特性を示すグラフであり、(b)は本発明の実施形態例に係るイットリア安定化ジルコニア薄膜を使用した水素ガスセンサの水素ガスに対する応答特性を示すグラフである。
符号の説明
1 絶縁性セラミックス基板(アルミナ基板)
2 酸化物イオン導電性固体電解質(YSZ薄膜)
3 基準極
4 検知極
5 ガス非透過性皮膜(ガラス状材料)
6 加熱用抵抗体(白金薄膜ヒータ)
7 白金リボン線取付部
10 酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ(センサ)
11,12 リード線
13,14 白金リボン線

Claims (12)

  1. 基板と、
    液相析出法により前記基板に析出した酸化物イオン伝導体である薄膜の酸化物イオン導電性固体電解質と、
    前記酸化物イオン導電性固体電解質にそれぞれ接合された検知極及び基準極と、
    前記基準極を被覆するガス非透過性皮膜と、
    を有する酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  2. 前記基板に加熱用抵抗体を接合する請求項1に記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  3. 前記基板の片面に析出した前記酸化物イオン導電性固体電解質に前記検知極及び前記基準極をそれぞれ接合するとともに、
    前記基板の他面に加熱用抵抗体を接合する請求項1又は2に記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  4. 前記酸化物イオン導電性固体電解質の膜厚が500nm以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  5. 前記酸化物イオン導電性固体電解質がイットリウムによって安定化された酸化ジルコニウムである請求項1乃至3に記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  6. 前記酸化物イオン導電性固体電解質が8mol%のイットリア安定化ジルコニアである請求項に記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  7. 前記イットリア安定化ジルコニアの膜厚が500nm以下である請求項に記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  8. 前記基板が絶縁性セラミックス基板である請求項1乃至のいずれかに記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  9. 前記絶縁性セラミックス基板がアルミナもしくはシリカ−アルミナである請求項に記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  10. 前記検知極及び前記基準極が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、金の群から選ばれた貴金属もしくはこれら貴金属の合金である請求項1乃至のいずれかに記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  11. 前記ガス非透過性皮膜がガラス状材料である請求項1乃至10のいずれかに記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
  12. 前記ガラス状材料950℃以上の温度焼成されている請求項11に記載の酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ。
JP2004125436A 2004-04-21 2004-04-21 酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ Expired - Fee Related JP4583800B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004125436A JP4583800B2 (ja) 2004-04-21 2004-04-21 酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004125436A JP4583800B2 (ja) 2004-04-21 2004-04-21 酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005308528A JP2005308528A (ja) 2005-11-04
JP4583800B2 true JP4583800B2 (ja) 2010-11-17

Family

ID=35437477

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004125436A Expired - Fee Related JP4583800B2 (ja) 2004-04-21 2004-04-21 酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4583800B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4682321B2 (ja) * 2005-03-17 2011-05-11 財団法人新産業創造研究機構 希土類含有金属酸化物構造体の製造方法
JP4783095B2 (ja) * 2005-09-06 2011-09-28 新コスモス電機株式会社 水素ガス検出素子および水素ガス検出装置
JP2007248334A (ja) * 2006-03-17 2007-09-27 New Industry Research Organization 還元性ガス検知素子及びその製造方法
JP2007248335A (ja) * 2006-03-17 2007-09-27 New Industry Research Organization 還元性ガス検知素子
WO2011153517A1 (en) * 2010-06-04 2011-12-08 Delphi Technologies, Inc. Low cost co-fired sensor heating circuit
WO2016166911A1 (ja) * 2015-04-15 2016-10-20 株式会社村田製作所 呼気センサ、呼気センサユニットおよび呼気検出方法
JP6758060B2 (ja) * 2016-03-15 2020-09-23 新コスモス電機株式会社 水素ガスセンサ

Citations (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62162626A (ja) * 1986-01-14 1987-07-18 Etsuro Kato 単斜ジルコニア超微結晶の高分散ゾルまたはゲルおよび製造方法
JPH03218927A (ja) * 1990-01-24 1991-09-26 Osaka Gas Co Ltd イオン伝導性化合物薄膜の製造方法
JPH045561A (ja) * 1990-04-23 1992-01-09 Chino Corp ガス濃度センサ
JPH08144092A (ja) * 1994-11-24 1996-06-04 Nkk Corp ジルコニア薄膜の製造方法
JPH08327592A (ja) * 1995-03-31 1996-12-13 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 薄膜式ガスセンサ及びその製造方法
JPH10503022A (ja) * 1994-07-28 1998-03-17 ロト テヒニク ゲーエムベーハー ウント コー フォルシュンク フュア アウトモビル ウント ウンベルトテヒニク 気体状の無水物を計測するための固体電解質センサ
JP2001056313A (ja) * 1999-08-18 2001-02-27 Ngk Spark Plug Co Ltd 固体電解質ガスセンサ及びその製造方法
JP2001294408A (ja) * 2000-04-07 2001-10-23 Stanley Electric Co Ltd 金属酸化物薄膜の作製方法
JP2002193669A (ja) * 2000-12-22 2002-07-10 National Institute Of Advanced Industrial & Technology ペロブスカイト型結晶構造を持つランタン系複合酸化物高密度焼結体の製造方法
JP2002303602A (ja) * 2001-04-03 2002-10-18 Tokyo Yogyo Co Ltd 水素ポンプを利用した固体電解質式水素・水蒸気測定方法及び測定装置
JP2003086033A (ja) * 2001-09-11 2003-03-20 Nagase Chemtex Corp 固体電解質膜の作製方法
JP2005257387A (ja) * 2004-03-10 2005-09-22 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 水素ガス検知素子

Patent Citations (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62162626A (ja) * 1986-01-14 1987-07-18 Etsuro Kato 単斜ジルコニア超微結晶の高分散ゾルまたはゲルおよび製造方法
JPH03218927A (ja) * 1990-01-24 1991-09-26 Osaka Gas Co Ltd イオン伝導性化合物薄膜の製造方法
JPH045561A (ja) * 1990-04-23 1992-01-09 Chino Corp ガス濃度センサ
JPH10503022A (ja) * 1994-07-28 1998-03-17 ロト テヒニク ゲーエムベーハー ウント コー フォルシュンク フュア アウトモビル ウント ウンベルトテヒニク 気体状の無水物を計測するための固体電解質センサ
JPH08144092A (ja) * 1994-11-24 1996-06-04 Nkk Corp ジルコニア薄膜の製造方法
JPH08327592A (ja) * 1995-03-31 1996-12-13 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 薄膜式ガスセンサ及びその製造方法
JP2001056313A (ja) * 1999-08-18 2001-02-27 Ngk Spark Plug Co Ltd 固体電解質ガスセンサ及びその製造方法
JP2001294408A (ja) * 2000-04-07 2001-10-23 Stanley Electric Co Ltd 金属酸化物薄膜の作製方法
JP2002193669A (ja) * 2000-12-22 2002-07-10 National Institute Of Advanced Industrial & Technology ペロブスカイト型結晶構造を持つランタン系複合酸化物高密度焼結体の製造方法
JP2002303602A (ja) * 2001-04-03 2002-10-18 Tokyo Yogyo Co Ltd 水素ポンプを利用した固体電解質式水素・水蒸気測定方法及び測定装置
JP2003086033A (ja) * 2001-09-11 2003-03-20 Nagase Chemtex Corp 固体電解質膜の作製方法
JP2005257387A (ja) * 2004-03-10 2005-09-22 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 水素ガス検知素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005308528A (ja) 2005-11-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPS584986B2 (ja) 酸素濃度測定装置
JP4583800B2 (ja) 酸化物イオン伝導体を用いた水素ガスセンサ
JP4552008B2 (ja) 水素ガスセンサに用いられる薄膜状の金属酸化物イオン伝導体の製造方法
JP6386150B2 (ja) 窒素酸化物センサー及びこれの製造方法
JP2007248335A (ja) 還元性ガス検知素子
JP4465677B2 (ja) 水素ガス検知素子
JP2004093273A (ja) 限界電流式酸素センサ
JP4532923B2 (ja) 還元性ガス検知素子及び還元性ガス検知装置
JPS62144063A (ja) 限界電流式酸素センサ
JPS5876757A (ja) 酸素濃度検出装置
JP2007248334A (ja) 還元性ガス検知素子及びその製造方法
JP3696494B2 (ja) 窒素酸化物センサ
JP5339754B2 (ja) 酸素ガス濃度測定方法
JP4271053B2 (ja) 二酸化炭素検出素子
EP1770391A2 (en) Solid electrolyte gas sensor
JPH0147740B2 (ja)
JP3424455B2 (ja) 酸素センサ
JPS59136651A (ja) 自動車用空燃比計
JPS6217186B2 (ja)
JPH10274636A (ja) Coガス検知素子
JP2643491B2 (ja) 限界電流式酸素センサ
KR20150110198A (ko) 금속 활동도가 고정되는 기준 전극과 고체 전해질을 이용한 산소 센서
RU2100801C1 (ru) Твердотельный газовый сенсор
JPH07167829A (ja) ガスセンサ
KR20120023461A (ko) 질소산화물 가스센서

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070322

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090723

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100302

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100427

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100831

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100901

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130910

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees