以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
〈実施の形態1〉
図1および図2は、本発明の基板分断システムの実施形態の一例をそれぞれ異なる方向から見た全体を示す概略斜視図である。
なお、本発明において、「基板」には、複数の基板に分断されるマザー基板、また、鋼板等の金属基板、木板、プラスチック基板およびセラミックス基板、半導体基板、ガラス基板等の脆性材料基板等の単板が含まれる。さらに、このような単板に限らず、一対の基板同士を貼り合わせた貼り合わせ基板、一対の基板同士を積層させた積層基板も含まれる。
本発明の基板分断システムは、例えば、一対のガラス基板が、相互に貼り合わせられた液晶表示装置のパネル基板(表示パネル用貼り合わせ基板)を製造する際、この基板分断システムによって、一対のマザーガラス基板が相互に貼り合わされた貼り合わせマザー基板90を複数枚のパネル基板(表示パネル用貼り合わせ基板)に分断する。
本実施の形態1の基板分断システム1において、第1基板支持部20Aが配置される側を基板搬入側、基板搬出装置80が配置されている側を基板搬出側として以下の説明を行う。また、本発明の基板分断システム1において、基板が搬送されていく方向(基板の流れ方向)は基板搬入側から基板搬出側に向かう+Y方向である。また、この基板が搬送されていく方向はスクライブ装置ガイド体30に対して水平状態で直交する方向であり、スクライブ装置ガイド体30はX方向に沿って設けられる。
この基板分断システム1は、中空の直方体状の架台10を有しており、架台10の上面には4本の支柱14が設けられ、枠状のメインフレーム11が支柱14の上部に配置されている。該架台10の上面には、搬送ロボットよって本基板分断システム1に搬送される貼り合わせマザー基板90を水平状態で支持する基板支持装置20が配置されている。
図1に示すように、基板支持装置20は、メインフレーム11内に搬入される貼り合わせマザー基板90を支持するために基板分断システム1の基板搬入側に配置された第1基板支持部20Aと、貼り合わせマザー基板90が分断され、順次、表示パネルが基板分断システムから搬出された後の貼り合わせマザー基板90を支持するために基板搬出側に配置された第2基板支持部20Bとを備えている。なお、架台10における第1基板支持部20A側を基板搬入側、第2基板支持部20B側を基板搬出側とする。
また、図2に示すように、架台10の上方には、基板支持装置20(第1基板支持ユニット21A)によって水平状態で支持された基板を、水平状態で保持するクランプ装置50が設けられている。さらに、図1に示すように架台10の上面には、メインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bに沿ってスライド可能にスクライブ装置ガイド体30が設けられている。スクライブ装置ガイド体30は、メインフレーム11の上方に、メインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bとは直交するX方向に沿って架設された上側ガイドレール31と、メインフレーム11の下方に、上側ガイドレール31に沿って架設された下側ガイドレール32とを備えており、上側ガイドレール31および下側ガイドレール32は、メインフレーム11の長手方向(Y方向)のフレーム11Aおよび11Bに沿って一体となって移動するようになっている。
図3は、スクライブ装置ガイド体30における上側ガイドレール31近傍の概略斜視図である。上側ガイドレール31には、上部基板分断装置60が、上側ガイドレール31に沿って移動可能に取り付けられている。
図4は、スクライブ装置ガイド体30における下側ガイドレール32近傍の概略斜視図である。下側ガイドレール32には、下部基板分断装置70が、下側ガイドレール32に沿って移動可能に取り付けられている。
上部基板分断装置60および下部基板分断装置70は、それぞれ、リニアモータによって、上側ガイドレール31および下側ガイドレール32に沿って往復移動するようになっており、上側ガイドレール31および下側ガイドレール32にそれぞれリニアモータの固定子が、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70にリニアモータの可動子がそれぞれ取り付けられている。上部基板分断装置60および下部基板分断装置70は、マザー基板がクランプ装置50によって水平状態に保持されるとともに、マザー基板の保持を補助するための基板支持装置20によって支持された貼り合わせマザー基板90の上側および下側の各ガラス基板を複数の表示パネルに分断する。
スクライブ装置ガイド体30における一方の端部には、クランプ装置50によって保持され、基板支持装置20によって支持された貼り合わせマザー基板90に設けられた第1のアライメントマークを撮像する第1光学装置38がスクライブ装置ガイド体30に沿って移動可能に設けられており、また、スクライブ装置ガイド体30における他方の端部には貼り合わせマザー基板90に設けられた第2のアライメントマークを撮像する第2光学装置39がスクライブ装置ガイド体30に沿って移動可能に設けられている。
架台10の上面に、スクライブ装置ガイド体30を移動させるリニアモータの固定子12が、メインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bに沿ってそれぞれ設けられている。各固定子12は、それぞれの外側面が開口した扁平な中空直方体形状に形成され、その断面は、「コ」の字状に形成されている。各固定子の内部には、スクライブ装置ガイド体30の両端を支持する支柱28を保持するガイドベース15に、リニアモータの可動子(図示せず)がメインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bに沿ってスライド可能に挿入されている。
各固定子12には、長手方向に沿って複数の永久磁石がそれぞれ配置されており、隣接する永久磁石の磁極が相互に反転した状態になっている。各可動子は、それぞれ電磁石によって構成されており、各可動子を構成する電磁石の磁極を順次切り換えることによって、各可動子が、各固定子12に沿ってそれぞれスライドする。
図3に示すように、スクライブ装置ガイド体30における上側ガイドレール31には、上部基板分断装置60が取り付けられている。また、図4に示すように、下側ガイドレール32には、上部基板分断装置60と同様の構成であって、上下を反転した状態の下部基板分断装置70が取り付けられている。
上部基板分断装置60および下部基板分断装置70は、前述したように、それぞれ、リニアモータによって、上側ガイドレール31および下側ガイドレール32に沿ってスライドするようになっている。
例えば、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70には、貼り合わせマザー基板90の上部ガラス基板をスクライブするカッターホイール62a(スクライブライン形成手段)がチップホルダ62bに回転自在に取り付けられており、さらに、チップホルダ62bはクランプ装置50によって保持された貼り合わせマザー基板90の表面に対して垂直方向を軸として回転自在にカッターヘッド62cに取り付けられている。そして、カッターヘッド62cは図示しない駆動手段により貼り合わせマザー基板90の表面に対して垂直方向に沿って移動自在になっており、カッターホイール62aには、図示しない付勢手段により適宜、荷重がかけられるようになっている。
上部基板分断装置60は、カッターホイール62aが上部ガラス基板上でX方向に移動するように、カッターホイール62aを支持する。
下側ガイドレール32に設けられた下部基板分断装置70は、上部基板分断装置60と同様の構成になっており、上部基板分断装置60とは上下を反転した状態で、そのカッターホイール62a(図4参照)が、上部基板分断装置60のカッターホイール62aと対向するように配置されている。
上部基板分断装置60のカッターホイール62aは、上述した付勢手段とカッターヘッド62cの移動手段とにより、貼り合わせマザー基板90の表面に圧接され、下部基板分断装置70のカッターホイール62aも、上述の付勢手段とカッターヘッド62cの移動手段とにより、貼り合わせマザー基板90の裏面に圧接される。そして、上部基板分断装置60と下部基板分断装置70とを同時に同一の方向へ移動させることにより、貼り合わせマザー基板90は分断されていく。
基板支持装置20は、カッターホイール62aが上部ガラス基板上をスクライブするように、貼り合わせマザー基板90を支持する。
このように、基板分断システム1によれば、上部ガラス基板側および下部ガラス基板側からそれぞれカッターホイール62aが互いに対向する空間がX−Y平面上で移動自在となるように、基板支持装置20が貼り合わせマザー基板90を支持する。したがって、対向するカッターホイール62aのそれぞれに付加された荷重に釣り合うようにそれぞれのカッターホイール62aは貼り合わせマザー基板90のうねりや撓みに追随して貼り合わせマザー基板90をスクライブすることができる。その結果、貼り合わせマザー基板90に形成されるスクライブラインの品質が良好であり、スクライブラインに沿って基板をブレイクしたとき、貼り合わせマザー基板90の分断面の品質が極めて良好となる。(以上、請求項1の作用)
さらに基板分断システム1によれば、スクライブ装置ガイド体30と基板支持装置20との間に空間を設け、この空間をY軸方向へ移動させ、貼り合わせマザー基板90をクランプ装置50で固定することができるので、空間が移動するときおよび両主面にスクライブする時に貼り合わせマザー基板90が所定の位置決め位置からずれることが防止される。(以上、請求項2の作用)
さらに基板分断システム1によれば、スクライブ装置ガイド体30と第1基板支持部20Aとの間に空間を設けて、この空間をY軸方向へ移動させ、この第1基板支持部20Aは前記空間が移動するときおよび両主面にスクライブする時、貼り合わせマザー基板90と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aにより貼り合わせマザー基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
さらに基板分断システム1によれば、空間の移動に伴って第2基板支持部20Bが移動することで、第1基板支持部20Aにより支持されない基板部分の支持を補助し、またこの第2基板支持部20Bは前記空間が移動する時および両主面にスクライブする時、貼り合わせマザー基板90と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがないので、カッターホイール62aにより不必要なクラックが派生するおそれはない。
図1および図2に示すように、連結板33により上側ガイドレール31および下側ガイドレール32の各端面同士を相互に連結されたスクライブ装置ガイド体30の両端が支柱28により支持され、その支柱28はガイドベース15の上面に保持され、ガイドベース15にはリニアモータの可動子それぞれ取り付けられている。各可動子は、それぞれ同期して駆動させられ、各固定子12に沿ってスライドされる。
図1に示すように、架台10の基板搬出側の上方には、スクライブ加工後完全分断されていない貼り合わせマザー基板90を完全に分断された状態とするためのスチームユニット部160が、第2基板支持部20Bの基板搬出側、基板搬出装置80の基板搬入側に配置される。
架台10の搬出側の上方には、貼り合わせマザー基板90から分断された各表示パネルを搬出する搬出ロボット140と搬出ロボット140をメインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bと直交するX方向に移動可能とするために架設された基板搬出装置用ガイド81とを備えた基板搬出装置80が、スクライブ装置ガイド体30に対して基板搬出側に配置されており、架台10の上面にそれぞれ設けられたガイドレール13に沿って、基板搬出装置用ガイド81の端部が支持部材82を介して、リニアモータによってスライドするようになっている。この場合のリニアモータは、架台10の上面にそれぞれ設けられたリニアモータの固定子12内に、基板搬出装置80の端部にそれぞれ取り付けられたリニアモータの可動子(図示せず)がそれぞれ挿入されて構成されている。
基板搬出装置80の搬出ロボット140には、貼り合わせマザー基板90から分断された各表示パネルを吸引吸着させる吸着部(図示せず)が設けられており、吸着部によって表示パネルが吸着された状態で、基板搬出装置80全体が、基板搬出側にスライドされることにより、分断された各表示パネルは基板支持装置20から搬出される。
このように、基板分断システム1によれば、基板搬出装置80を用いて、分断された単位基板を取り出すので、次工程の装置との基板の受け渡しが容易である。
また、基板分断システム1によれば、基板支持装置20を上部基板分断装置60および下部基板分断装置70とともに移動させるので、脆性材料基板を撓ませたりすることなく脆性材料基板を部分的に支持しながら所望する部位にスクライブラインを形成して脆性材料基板を分断できる(以上、請求項10)。
また、基板分断システム1によれば、基板支持装置20を移動させる際に、脆性材料基板に作用する外力を抑えることができるので、スクライブライン形成の際に不要なクラック(水平クラック)の発生を抑えることができる(以上、請求項11の作用)。
図5は、搬出ロボットの機能を説明するための図である。
図5Aは、基板搬出装置80の搬出ロボット140の構成を示す概略構成図である。搬出ロボット140は基板搬出装置用ガイド81に取り付けられ、リニアモータまたはサーボモータの駆動手段と直線ガイドとを組み合わせた移動機構により基板搬出装置用ガイド81に沿う方向(X方向)に移動自在となっている。
搬出ロボット140は、2個のサーボモータ140aと140mを備えており、サーボモータ140aは駆動シャフト140bと連結している。第1プーリ140cと第2プーリ140eは一体的に取り付けられ、それぞれベアリングを介して駆動シャフト140bに取り付けられ、駆動シャフト140bの回転に対して切り離された状態とされる。アーム140fはその端部が駆動シャフト140bに一体的に取り付けられており、アーム140fは、駆動シャフト140bの回転によって、駆動シャフト140bを中心として回転する。また、アーム140fの先端部には、回転シャフト140gが回転可能に支持されている。回転シャフト140gは、アーム140fを貫通しており、その一方の端部に第3プーリ140hが一体的に取り付けられている。第2プーリ140eと第3プーリ140hとの間には例えば、タイミングベルトのようなベルト141i掛けられる。
さらに、サーボモータ140mの回転軸には第4プーリ140nが取り付けられ、第4プーリ140nと第1プーリ140cとの間が例えば、タイミングベルトのようなベルト140pが掛けられる。これにより、サーボモータ140mの回転はベルト140pを介して第1プーリ140cに伝達され、さらに、ベルト140iを介して第3プーリ140hに伝達され、回転シャフト140gが回転する。
回転シャフト140gの他方の端部には、真空吸着ヘッド取り付け板140jの中央部が一体的に取り付けられている。真空吸着ヘッド取り付け板140jには、真空吸着ヘッド140qが設けられている。真空吸着ヘッド140qは、本基板分断システム1で分断された基板を不図示の吸引機構により吸着する吸着パッド140kを含む。真空吸着ヘッド140qの詳細は、後述される。
このような構成の搬出ロボット140は、サーボモータ140aおよび140mの回転方向と回転角度を組み合わせて設定することにより、アーム140fの移動距離を最小にして、次工程の装置へ分断された基板93の向きを水平の状態で種々角度方向に変えて搬送することができる。
尚、分断された基板の搬送において、分断された基板93は吸引により吸着パットで保持され、搬出ロボット140全体が昇降機構(不図示)により、一旦上昇した後、次工程の装置へ搬送され、再び、昇降機構(不図示)により搬出ロボット140が下降し、次工程の所定の位置で予め決まられた状態に載置される。
次に、このような構成の搬出ロボット140を用いて分断された基板の向きを例えば90°変化させる場合を図5Bを用いて説明する。
分断された基板93に、真空吸着ヘッド取り付け板140jに取り付けられた各真空吸着ヘッド140qの各吸着パッド140kが吸着されると、搬出ロボット140全体が昇降機構により上昇し、サーボモータ140aが駆動されて、駆動シャフト140bは基板側から見て時計の針の回転方向とは逆方向へ90度回転させられる。駆動シャフト140bが90度にわたって回転されると、アーム140fが、駆動シャフト140bを中心として基板側から見て時計の針の回転方向とは逆方向へ90度回転する。これにより、アーム140fの先端部に回転シャフト140gを介して回転可能に支持された真空吸着ヘッド取り付け板140jが、アーム140fともに、駆動シャフト140bを中心として、基板側から見て時計の針の回転方向とは逆方向へ90度回動する。この場合、真空吸着ヘッド取り付け板140jに取り付けられた回転シャフト140gも駆動シャフト140bを中心に回転移動する。
このとき、サーボモータ140mの回転がベルト140pを介して第1プーリ140cに伝達され、さらに、ベルト140iを介して第3プーリ140hに伝達され、回転シャフト140gが時計の針の回転方向に180°回転させられる。回転シャフト140gに取り付けられた真空吸着ヘッド取り付け板140jも回転シャフト140gを中心に時計の針の回転方向に180°回転する。従って、真空吸着ヘッド取り付け板140jは、駆動シャフト140dを中心として基板側から見て時計の針の回転方向とは逆方向へ90度回動する間に、回転シャフト140gを中心として基板側から見て時計の針の回転方向へに180度自転することになる。その結果、各吸着パッド140kにて吸着された分断された基板93は、図5Bに示すように、その回転中心位置を移動させながら、比較的小さなスペースで基板側から見て時計の針の回転方向へ90度回転させられる。
図5Cは、本発明の搬出ロボットの他の例である搬出ロボット500を示す斜視図、図5Dは本発明の搬出ロボット500の構成を示す概略構成図、図5Eは本発明の搬出ロボット500の動作を説明する説明図である。この搬出ロボット500も、分断された基板93(図5E参照)を所定位置に搬送するために使用される搬出ロボット500の支持ビーム(図示せず)に連結ブロック526を介して取り付けられている。連結ブロック526には、垂直状態に配置された連結シャフト531が、ベアリングを介して回転自在に貫通しており、その連結シャフト531内を、駆動シャフト525がベアリングを介して回転自在に挿通しており、連結シャフト531と駆動シャフト525はそれぞれ独立して回転することができる。
連結シャフト531の上端部および駆動シャフト525の上端部は、連結ブロック526の上方にそれぞれ突出している。連結シャフト531内を挿通する駆動シャフト525の上端部には、回転用サーボモータ527の駆動軸が連結されている。
連結ブロック526から上方に突出した連結シャフト531の上端部には、旋回用従動プーリ532が取付けられており、連結ブロック526の上方には、この旋回用従動プーリ532に隣接して、旋回用主プーリ533が設けられている。旋回用主プーリ533は、垂直状態で回転可能に配置された回転軸534に取り付けられている。そして、旋回用主プーリ533と旋回用従動プーリ532とに
わたって旋回用伝動ベルト535が巻き掛けられて、これら旋回用主プーリ533と旋回用従動プーリ532と旋回用伝動ベルト535とによってベルト伝動機構が構成されている。旋回用主プーリ533が取り付けられた回転軸534は、旋回用サーボモータ536によって回転駆動されるようになっている。
連結ブロック526内を貫通する連結シャフト531の下端部には、中空になった旋回アーム523の基端部が連結シャフト531と一体的に回転するように取り付けられている。この旋回アーム523は、水平状態に配置されており、旋回用サーボモータ536の回転が、旋回用主プーリ533、旋回用伝動ベルト535、旋回用従動プーリ532を介して連結シャフト531に伝達されて、連結シャフト531が回転されることによって、旋回アーム523の先端部が、連結シャフト531の軸心を中心として、連結シャフト531と一体的に旋回するようになっている。
連結シャフト531内を挿通する駆動シャフト525の下端部は、中空状態になった旋回アーム523の内部に位置しており、その下端部に、回転用主プーリ528が駆動シャフト525と一体的に回転するように取り付けられている。
旋回アーム523の先端部内には、垂直状態になった回転軸522がベアリングを介して回転可能に設けられている。旋回アーム523内に位置する回転軸522には、回転用従動プーリ524が、回転軸522と一体的に回転するように取り付けられており、この回転用従動プーリ524と、回転用主プーリ528との間に、回転用伝動ベルト529が巻き掛けられている。従って、回転用従動プーリ524と回転用主プーリ528と回転用伝動ベルト529とによってベルト伝動機構が形成されており、回転用サーボモータ527によって駆動シャフト525が回転されると、その回転が、回転用主プーリ528、回転用伝動ベルト529、回転用従動プーリ524を介して回転軸522に伝達されるようになっている。
駆動シャフト525の回転が伝達される回転軸522は、旋回アーム523の下方に設けられた連結体537に取り付けられている。そして、この連結体537に、それぞれが水平状態で相互に平行になった4本の真空吸着ヘッド支持体521の一方の端部がそれぞれ取り付けられており、各真空吸着ヘッド支持体521には、4個の真空吸着ヘッド540が設けられている。真空吸着ヘッド540には、基板93に吸着する吸着パッド521aが取付けられている。なお、複数の真空吸着ヘッド540は、本実施形態において、基板保持手段として機能する。したがって、基板分断システム1によれば、複数の真空吸着ヘッド540によって、分断された基板を確実に受け渡しできる。真空吸着ヘッド540の詳細は、後述される。
本実施形態において、各真空吸着ヘッド支持体521、各吸着パッド521aおよび連結体537が基板保持手段を構成している。また、連結体537に取り付けられた回転軸522、回転軸522に取り付けられた回転用従動プーリ524、駆動シャフト525、駆動シャフト525に取り付けられた回転用主プーリ528、回転用従動プーリ524および回転用主プーリ528に巻き掛けられた回転用伝動ベルト529、および回転用サーボモータ527が、基板回転手段を構成している。
さらに、回転軸522が取り付けられた旋回アーム523、旋回アーム523に取り付けられた連結シャフト531、連結シャフト531に取り付けられた旋回用従動プーリ532、旋回用サーボモータ536、旋回用サーボモータ536に取り付けられた旋回用主プーリ533、旋回用主プーリ533および旋回用従動プーリ532に巻き掛けられた旋回用伝動ベルト535が、基板旋回手段を構成している。
このように、基板搬出装置80は基板保持手段を第1の軸に回転させる基板回転手段と第2の軸に旋回させる基板旋回手段を備える搬出ロボット搬出ロボット500を少なくとも一基具備するので、分断された単位基板を基板の搬送平面上における所望の姿勢で次工程へ搬送することができ、次工程の複数の装置へ同時に搬送することができる。
このような構成の搬出ロボット500では、各吸着パッド521aが基板93を吸着した状態になると、基板93を90°にわたって回動させることができる。
この場合、旋回用サーボモータ536が駆動すると、旋回用サーボモータ536の回転が、旋回用主プーリ533、旋回用伝動ベルト535および旋回用従動プーリ532を介して連結シャフト531に伝達されることによって、連結シャフト531が回転させられる。これにより、連結シャフト531の下端部に一体的に取り付けられた旋回アーム523が、例えば、図5Eに矢印Aで示す方向に、連結シャフト531を中心として90°にわたって旋回させられる。旋回アーム523の先端部が回動させられることによって、この旋回アーム523の先端部に取り付けられた回転軸522が、連結シャフト531を中心とした円周上を旋回する。
このように、基板分断システム1によれば、基板旋回手段による基板保持手段の旋回が、動力伝達機構によって基板回転手段に伝達され、連動して基板回転手段を回転させる。したがって、搬出ロボット500は基板回転手段の回転動作と基板旋回手段の旋回動作を組み合わせることにより分断された単位基板を基板の搬送平面上における所望の姿勢で次工程へ搬送することができる。
さらに、基板回転手段による基板保持手段の回転駆動と、基板旋回手段による基板保持手段の旋回駆動とが互いに独立している。したがって、単位基板の基板搬送平面上における姿勢を容易に設定することができる。
同時に、回転用サーボモータ527が回転駆動することによって、駆動シャフト525が回転させられて、駆動シャフト525の回転が、回転用主プーリ528、伝動伝動回転用伝動ベルト529、回転用従動プーリ524を介して回転軸522に伝達される。これにより、回転軸522の下端部の各真空吸着ヘッド支持体521を取り付けられた連結体537が、回転軸522を中心として回転させられる。
この場合、回転用サーボモータ527によって回転する駆動シャフト525と、旋回用サーボモータ534によって回転される連結シャフト531の回転方向が相互に反対方向になっており、また、駆動シャフト525によって回転される回転軸522の回転角度が、連結シャフト531の回転角度、すなわち、旋回アーム523の回転角度の2倍になっている。これにより、回転軸522の下端部に取り付けられた各真空吸着ヘッド支持体521を支持する連結体537は、回転軸522の回転により、回転軸522の軸心を中心として回転しつつ、連結シャフト531の軸心を中心とした円周上を旋回させられることになる。
このように、基板回転手段による基板保持手段の回転方向が、基板旋回手段による基板保持手段の旋回方向とは反対である。したがって、ロボットアームの移動範囲が最小になるように単位基板を基板の搬送平面上における所望姿勢にすることができる。
さらに、基板回転手段による基板保持手段の回転角度が、基板旋回手段による前記基板保持手段の旋回角度の2倍である。したがって、ロボットアームの移動を最小にすることができる。
さらに、回転用サーバモータ527と旋回用サーバモータ534とが独立している。したがって、単位基板の基板搬送平面上における姿勢を容易に設定することができる。
そして、例えば、図5Eに示すように、連結シャフト531が矢印A方向に90°にわたって回転することによって、旋回アーム523が矢印A方向に90°にわたって旋回させられる場合に、回転軸522が、矢印Aとは反対方向に180°にわたって回転させらることによって、回転軸522の下端部に取り付けられた真空吸着ヘッド支持体521も、同様に、連結シャフト531を中心として90°にわたって旋回する間に、回転軸522を中心として、矢印Aで示す方向とは反対方向である矢印Bで示す方向に、180°にわたって回転させられることになる。
これにより、各真空吸着ヘッド支持体521の各真空吸着ヘッド540の各吸着パッド521aに吸着された基板93は、図5Eに示すように、矢印Bで示す方向に、回転軸522の位置をずらせつつ90°にわたって回動させられる。従って、本実施形態の搬出ロボット500でも、重量の大きな駆動モータを全て搬出ロボット500の基部の部分に備えるため、アーム部の構造を簡単、軽量にすることができるため、慣性が少なく旋回アームを高速移動させることができ、比較的小さなスペースにおいて、基板93を水平状態を保持して、90°にわたって回動させることができる。
以上、図5を参照して、搬出ロボットの詳細を説明した。なお、真空吸着ヘッド140qおよび真空吸着ヘッド540の詳細は、後述される。
再び図1を参照して、基板分断システム1の構成を説明する。
基板支持装置20の第1基板支持部20Aおよび第2基板支持部20Bは、例えば、図1に示すようにそれぞれがスクライブ装置ガイド体30の移動方向と同方向に移動可能になった5つの第1基板支持ユニット21Aおよび第2基板支持ユニット21Bをそれぞれ備えている。各第1基板支持ユニット21Aおよび各第2基板支持ユニット21Bは、それぞれ、メインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bに対して平行な方向(Y方向)に沿て平行に並列してスクライブ装置ガイド体30の基板搬搬入側および基板搬出側にそれぞれ配置される。
図6は、第1基板支持部20Aに設けられた1つの第1基板支持ユニット21Aの側面図である。第1基板支持ユニット21Aは、架台10の上面に設けられた一対のガイドレール13のそれぞれの移動ユニットに保持されたガイドベース15の上面に支柱45が設けられ、その支柱45の上方にメインフレーム11のフレーム11Aおよび11Bに沿うY方向と平行に支持部材43が設けられ、それぞれの支持部材43にメインフレーム11のフレーム11Aと11Bと直交するX方向に架設される2本のユニット取付部材41および42の接合部材46および47に取り付けられる。
第1基板支持ユニット21Aは複数台(本実施例の説明においては5台)、所定の間隔を設けて配置され、スクライブ装置ガイド体30とともにメインフレーム11のフレーム11Aおよび11Bに沿うY方向へ移動する。
第1基板支持ユニット21Aは、メインフレーム11と平行な方向(Y方向)に沿って直線状に延びる支持本体部21aを有しており、支持本体部21aの各端部に、例えば、タイミングベルト21eを案内するタイミングプーリ21cおよび21dがそれぞれ取り付けられている。タイミングベルト21eは駆動用タイミングプーリ21bが後述するクラッチが駆動軸と連結して回転したときに、周回移動させられる。
このように構成される第1基板ユニット21Aのタイミングベルト21eを移動させる機構を図7、図8および図9を用いて説明する。図7はスクライブ装置ガイド体30側から第1基板支持部20Aに設けられた複数(5台)の第1基板支持ユニット21Aを見た時の正面図であり、図8はクラッチユニット110の概略構成図、図9はクラッチユニット110の側面図である。
図7に示すように、第1基板ユニット21Aの支持本体部21aに備えられたそれぞれの駆動用タイミングプーリ21bはメインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bと直交するX方向と平行に設けられた回転駆動シャフト49に結合されている。この回転駆動シャフト49両端はクラッチユニット110へつながり、クラッチユニット110内のクラッチの駆動軸との連結状態によって、回転駆動シャフト49は回転したり、回転しなかったりする。すなわちクラッチユニット内のクラッチが駆動軸122と連結しているときは、回転駆動シャフト49が回転し、駆動軸122と切り離されているときは、回転駆動シャフト49は回転しない。
また、メインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bの下面にはクラッチユニット110のピニオン111を回転させるラック11aがフレーム11Aおよび11Bの長手方向に沿って取り付けられている。
クラッチユニット110のピニオン111は軸123の一方端に結合され、また、軸123の他方端にはタイミングベルト119用のタイミングプーリ112が結合されている。
駆動軸122の一方端にはタイミングプーリ115が結合されており、2個のアイドラー113および114を介してタイミングベルト119がタイミングプーリ112とタイミングプーリ115との間に掛けられ、軸123の回転が駆動軸122に伝達される。
駆動軸122の他端には例えばエアークラッチのようなクラッチ116が取り付けられており、クラッチ116内に圧縮空気を投入することにより、駆動軸122と従動軸124は結合され、圧縮空気の投入が中断しクラッチ116内の空気圧力を大気圧の状態にすると、駆動軸122と従動軸124との結合は遮断される。
従動軸124のクラッチ116と接合しない側の端部にはタイミングプーリ117が結合されていて、このタイミングプーリ117と第1基板ユニット21Aの支持本体部21aに備えられたそれぞれの駆動用タイミングプーリ21bが結合している回転駆動シャフト49の一方端のタイミングプーリ118との間にはタイミングベルト121が掛けられている。
図7に示すように、第1基板支持部20Aに設けられた5つの第1基板支持ユニット21Aの駆動用タイミングプーリ21bを回転させてタイミングベルト21eを移動させる機構(クラッチユニット110)は、メインフレーム11の長手方向のフレーム11B側にも備えられている。
上述したように、5つの第1基板支持ユニット21Aを支持するフレーム11A側の支柱45とフレーム11B側の支柱45がガイドベース15に保持されており、スクライブ装置ガイド体30の両端を支持する支柱28を保持するガイドベース15と一体となって移動するように連結されている。支柱28を保持するガイドベース15にはリニアモータの可動子(図示せず)が取り付けられているため、リニアモータの駆動により、スクライブ装置ガイド体30が基板搬入側へ移動するとともに、第1基板支持部20Aの5台の第1基板支持ユニット21Aが基板搬入側へ移動する。
スクライブ装置ガイド体30が移動する時、フレーム11Aおよび11Bに沿って取り付けられたそれぞれのラック11aとかみ合っているフレーム11A側のクラッチユニット110のピニオン111とフレーム11B側のピニオン111が回転させられる。
尚、第1基板支持ユニット21Aの駆動用タイミングプーリ21bを回転させてタイミングベルト21eを移動させるには、フレーム11Aおよびフレーム11Bの両方のクラッチをそれぞれの駆動軸122と連結させてもよいし、フレーム11Aまたはフレーム11Bのいずれかのクラッチを駆動軸122と連結させてもよい。
基板支持装置20の第2基板支持部20Bは、例えば、それぞれがスクライブ装置ガイド体30の移動方向と同方向に移動可能になった5つの第2基板支持ユニット21Bを備えている。この第2基板支持ユニット21Bは第1基板支持ユニット121Aの構造と同様であり、スクライブ装置ガイド体30に対して対称となるように、Y方向の取付け方向が逆になるように、フレーム11A側の支柱45とフレーム11B側の支柱45に支持され、それぞれの支柱がガイドベース15に保持されている。
5つの第1基板支持ユニット21Aを支持するフレーム11A側の支柱45とフレーム11B側の支柱45がガイドベース15に保持されており、5つの第2基板支持ユニット21Bを支持するフレーム11A側の支柱45とフレーム11B側の支柱45がガイドベース15に保持され、さらに、スクライブ装置ガイド体30の両端を支持する支柱28を保持するガイドベース15と一体となって移動するように連結されている。スクライブ装置ガイド体30の両端を支持する支柱28を保持するガイドベース15にリニアモータの可動子(図示せず)が取り付けられているため、リニアモータの駆動により、スクライブ装置ガイド体30が基板搬入側へ移動するとともに、第1基板支持部20Aの5台の第1基板支持ユニット21Aと第2基板支持部20Bの5台の第2基板支持ユニット21Bが基板搬入側へ移動する。
第2基板支持部20Bのフレーム11A側とフレーム11B側には第1基板支持部20Aと同様のクラッチユニット110が備えられており、スクライブ装置ガイド体30が移動する時、フレーム11Aおよび11Bに沿って取り付けられたそれぞれのラック11aとかみ合っているフレーム11A側のクラッチユニット110のピニオン111とフレーム11B側のピニオン111が回転させられる。
また、第2基板支持ユニット21Bの駆動用タイミングプーリ21bを回転させてタイミングベルト21eを移動させるには、フレーム11Aおよびフレーム11Bの両方のクラッチをそれぞれの駆動軸122と連結させてもよいし、フレーム11Aまたはフレーム11Bのいずれかのクラッチを駆動軸122と連結させてもよい。
このように、第1基板支持部20Aは、スクライブ装置ガイド体30の移動方向に沿って、平行移動する複数の第1基板支持ユニット21Aを備える。そして、複数の第1基板支持ユニット21Aは、スクライブ装置ガイド体30の移動に伴って、スクライブ装置ガイド体30と共に移動する。したがって、スクライブ装置ガイド体30と第1基板支持ユニット21Aとの間に空間を設けて、この空間をY軸方向へ移動させ、基板90をクランプ装置50で固定する構成とすることで、空間が移動するときおよび両主面にスクライブする時、基板90と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。その結果、カッターホイール62aにより基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
さらに、第1基板支持ユニット21Aは、基板90を支持するタイミングベルト21eを具備する。したがって、タイミングベルト21eがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接かつ基板に力が及ぶことがない。したがって、カッターホイール62aは基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
なお、第1基板支持ユニット244Aは、複数のコロを有していてもよい。この場合には、さらに確実に基板90を支持することができる。(以上、請求項4)。例えば、複数のコロは、クラッチ116によって回転される。クラッチ116は、スクライブ装置ガイド体242の移動に応じて、複数のコロを回転させる。クラッチ116は、空間の移動に応じて複数のコロの回転方向または、回転の停止を選択することができてもよい。この場合には、クランプ装置50による基板90の固定を解除することで、基板支持装置20を基板90の搬送にも利用することができる。(以上、請求項5の作用)
また、クラッチユニット110は、複数のコロをスクライブ装置ガイド体30の移動に応じて回転させる。例えば、複数のコロの外周の周速をY軸方向へのスクライブ装置ガイド体30の移動速度と一致させるように回転させる制御を実施することで、複数のコロがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接かつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aは基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
なお、第1基板支持ユニット21Aがタイミングベルト21eである場合には、コロと比較すると基板面を面として支持することができる。したがって、安定して基板を支持することができる。(以上、請求項6)。
また、上述のように、第1基板支持ユニット21Aがタイミングベルト21eである場合でも、クラッチ116は、複数のベルトをスクライブ装置ガイド体30の移動に応じて周回移動させることができる。この場合には、ベルト21eはクラッチ116により、空間の移動に応じてベルト21eの周回移動方向または、周回移動の停止を選択することができる。したがって、クランプ装置50による基板90の固定を解除することで、基板支持装置20を基板の搬送にも利用することができる。(以上、請求項7の作用)。クラッチユニット110は、複数のベルトをモータによりスクライブ装置ガイド体30の移動に応じて周回移動させる。このように、複数のベルト21eの周回移動速度をY軸方向へのスクライブ装置ガイド体30の移動速度と一致させるように周回移動の制御を実施することで、複数のベルト21eがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aにより基板の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
以上、第1基板支持部20Aの構成と機能とを説明した。なお、第2基板支持部20Bは、第1基板支持部20Aと同様の構成および機能を有してもよい。
図1に示すように、架台10の基板搬出側の上方には、スクライブ加工後完全分断されていない貼り合わせマザー基板90を完全に分断された状態とするためのスチームユニット部160が、第2基板支持部20Bの基板搬出側、基板搬出装置80の基板搬入側に配置される。
スチームユニット部160は貼り合わせマザー基板90の上側のマザー基板に蒸気を吹き付ける複数個のスチームユニット161を取り付ける上側スチームユニット取付けバー162と貼り合わせマザー基板90の下側のマザー基板に蒸気を吹き付ける複数個のスチームユニット161を取り付ける下側スチームユニット取付けバー163がフレーム11A側の支柱164とフレーム11B側の支柱164に、フレーム11Aおよびフレーム11Bとは直交するX方向に沿って取り付けられている。
架台10の上面にそれぞれ設けられたガイドレール13に沿って、フレーム11Aおよび11B側のそれぞれの支柱164は、リニアモータによってスライドするようになっている。この場合のリニアモータは、架台10の上面にそれぞれ設けられたリニアモータの固定子12内に、スチームユニット部160にそれぞれ取り付けられたリニアモータの可動子(図示せず)がそれぞれ挿入されて構成されている。
図10はスチームユニット部160を基板搬入側から見たときの要部の正面図である。6個のスチームユニット161が上側スチームユニット取付けバー162に取り付けられ、6個のスチームユニット161が上側の6個のスチームユニット161対して間隙GAを開けて下側スチームユニット取付けバー163に取り付けられる。尚間隙GAはスチームユニット部160が基板搬入側へ移動したときに貼り合わせマザー基板90がその間隙GAを通過するように調整される。
図11はスチームユニット161の構造を示す部分側面断面図である。スチームユニット161はそのほぼ全体がアルミ材質で構成されており、鉛直方向に複数本のヒーター161aが埋め込まれている。自動操作で開閉する開閉弁(不図示)が開くと水が水供給口161bからスチームユニット161内に流入し、ヒーター161aで熱せられて、供給された水が気化して蒸気となる。その蒸気が導通孔161cを通って噴出口161dからマザー基板の表面へ向けて吹き付けられる。スクライブラインが刻まれた基板90の表裏面へ蒸気を吹きかけることにより、加熱された水分がそれぞれのスクライブラインの垂直クラックの内部に浸透し、膨張しようとする力で垂直クラックがそれぞれ伸展し、基板を分断することができる。
また、上側スチームユニット取付けバー162の搬出側には、貼り合わせマザー基板90の上面に蒸気が吹き付けられた後、貼り合わせマザー基板90の表面に残った水分を除去するための基板付着物除去装置700(エアーナイフ700)、1000、1500、2000のいづれか1つが備えられている。基板の表裏面を乾燥させる基板付着物除去装置700(1000、1500、2000)が設けられているので、基板の表裏面に蒸気が吹き付けられ、基板が分断した後の基板の表裏面の水分を完全に取り除くことができる。したがって、次工程の装置に特別な水対策手段を備える必要がない。
基板付着物除去装置700、1000、1500および2000の詳細は、後述される。尚、下側スチームユニット取付けバー163にも上側スチームユニット取付けバー162に取り付けられるものと同様のスチームユニット161と基板付着物除去装置700(エアーナイフ700)が備えられる。
第1基板支持部20Aに貼り合わせマザー基板90が載置され、貼り合わせマザー基板90が位置決めされると、位置決めされた貼り合わせマザー基板90は、クランプ装置50によって保持されるとともに、各第1基板支持ユニット21Aの各タイミングベルト21eによって支持される。
この状態で、まず第1基板支持部20Aと第2基板支持部20Bの4つのクラッチユニット110のクラッチ116が駆動軸122に結合された後、スクライブ装置ガイド体30に設けられた上部基板分断装置60および下部基板分断装置70よって、貼り合わせマザー基板90の分断が開始され、スクライブ装置ガイド体30が基板搬入側へ移動していくのに伴って、第1基板支持部20Aが基板搬入側へスライドされ、さらに第2基板支持部20Bが基板搬入側へとスライドしていく。スクライブ装置ガイド体30が基板搬入側へ移動中、第1基板支持部20Aの第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eと第2基板支持部20Bの第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21eは、スクライブ装置ガイド体30の移動速度と同一の速度で周回移動し、貼り合わせマザー基板90を基板搬出方向へ移動させ、分断途中の貼り合わせマザー基板90は第1基板支持部20Aの第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eと第2基板支持部20Bの第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21eによって支持される状態になる。ところが、スクライブ装置ガイド体30の移動中、第1基板支持部20Aの第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eと第2基板支持部20Bの第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21eは、スクライブ装置ガイド体30の移動速度と同一の速度でスクライブ装置ガイド体30の移動方向とは逆方向に貼り合わせガラス基板90を移動させようとするため、実際には貼り合わせマザー基板90は移動せず、クランプ装置50に保持されたまま、貼り合わせマザー基板90に第1基板支持部20Aの第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eと第2基板支持部20Bの第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21eが摺接することなく支持される。
貼り合わせマザー基板90の分断が完了した状態では、第2基板支持部20Bの全ての第2基板支持ユニット21Bの各タイミングベルト21eによって、貼り合わせマザー基板90が支持される。
各第2基板支持ユニット21Bの各タイミングベルト21eによって、貼り合わせマザー基板90が支持された状態で、スチームユニット部160が基板搬入側へ移動して、スクライブラインが刻まれた貼り合わせマザー基板90の表裏面全体に蒸気を吹きかけて熱応力によって垂直クラックを伸張させて、貼り合わせマザー基板90を完全に分断させるとともに、蒸気を吹きかけた後に貼り合わせマザー基板90の表裏面に残存する水分を基板付着物除去装置700で除去する。
その後、第2基板支持部20Bの全ての第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21e上の貼り合わせ基板90から分断された全ての表示パネル(分断された基板93)が、基板搬出装置80の搬出ロボット140または搬出ロボット500によって搬出されることにより、基板93(端材)が支持される。
そして、基板搬出装置80およびスチームユニット部160が基板搬出側の端部に移動する。
その後、スクライブ装置ガイド体30、第2基板支持部20Bおよび第1基板支持部20Aが基板搬出側にスライドされる。このとき、第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eと第2基板支持部20Bの第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21eは、貼り合わせガラス基板90をスクライブ装置ガイド体30の移動速度と同一の速度で基板搬入方向へあたかも移動させるように周回移動する。
このため、第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eと第2基板支持部20Bの第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21eは基板93の下面から、摺接することなく、順次、非接触状態となり、各タイミングベルト21eによる基板93の支持が順次解除される。そして、基板93(端材)は、クランプ装置50による保持が解除され、基板93(端材)は、下方に落下する。この場合、下方に落下した基板93(端材及びカレット)は、傾斜状態で配置されたガイド板によって案内されてカレット収容ボックス内に収容されるようになっている。
このように、一対のスクライブ装置60、70およびスクライブ装置ガイド体30がY軸方向へ移動する際、基板支持装置20は基板90との摺接がなく、基板90に力が作用しないように、基板90を支持する。したがって、カッターホイール62aは基板の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。(以上、請求項3の作用)。
架台10には、第1基板支持部20Aに支持された貼り合わせマザー基板90を位置決めするための位置決め装置(図示せず)が設けられている。位置決め装置は、例えば複数の位置決めピン(図示せず)が、メインフレーム11のフレーム11Bに沿って、および、そのフレーム11Bに対して直交する方向に沿って、それぞれ一定の間隔をあけて設けられている。また、フレーム11Bに沿って配置された位置決めピンに対して、貼り合わせマザー基板90における各位置決めピンに対向する側縁を押し付けるプッシャー(図示せず)が設けられるとともに、フレーム11Bに対して直交する方向に沿って配置された位置決めピンに対して、貼り合わせマザー基板90における対向する側縁を押し付けるプッシャー(図示せず)が設けられている。
また、例えば、本発明の基板分断システムに搬送されてくる直前に貼り合わせマザー基板90の位置決めを実施する位置決め装置を本基板分断システムとは別に装備させる場合には、本基板分断システム内の位置決め装置を省略することができる。
また、本基板分断システム内の位置決め装置は、上述の位置決めピンとプッシャーに限定されるものではなく、貼り合わせマザー基板90の基板分断システム内における位置を一定にさせる装置であればよい。
さらに、架台10の上方には、第1基板支持部20Aに支持されて、各位置決めピンに押し付けられて位置決めされた貼り合わせマザー基板90をクランプするクランプ装置50が設けられている。たとえば、クランプ装置50は、図2に示すように、メインフレーム11のフレーム11Bに、位置決めされた貼り合わせマザー基板90におけるそのフレーム11Bに沿った側縁部をクランプするように、長手方向に一定の間隔をあけて取り付けられた複数のクランプ具51と、位置決めされた貼り合わせマザー基板90における基板搬入側の側縁部をクランプするために、各メインフレーム11とは直交する方向に沿って一定の間隔をあけて配置された複数のクランプ具51とを有している。
図12および図13は、メインフレーム11のフレーム11Bに設けられた複数のクランプ具51を示し、その動作を説明するための斜視図である。各クランプ具51は、それぞれ同様の構成になっており、メインフレーム11のフレーム11Bに取り付けられたケーシング51aと、このケーシング51aに、垂直状態から水平状態にわたって回動し得るようにそれぞれ取り付けられた上下一対の回動アーム部51bとを有している。各回動アーム部51bは、それぞれの一方の端部を中心として回動し得るようになっており、それぞれの回動の中心となる端部同士が相互な近接した状態になっている。上側に位置する回動アーム部51bの先端部は、垂直状態では、図12に示すように、回動中心に対して上方に位置し、下側に位置する回動アーム部51bの先端部は、垂直状態では、回動中心に対して下方に位置している。そして、各回動アーム部51bが、貼り合わせマザー基板90側に90度にわたってそれぞれ回動することによって、各回動アーム51bは、それぞれ相互に対向した水平状態になる。
各回動アーム部51bの先端部には、貼り合わせマザー基板90の上面および下面にそれぞれ当接するクランプ部51cがそれぞれ取り付けられている。各クランプ部51cは、それぞれ弾性体によって構成されている。そして、各回動アーム部51bがそれぞれ一体となって垂直状態から水平状態に回動されるとともに、水平状態から垂直状態に回動される。そして、各回動アーム部51bが水平状態に回動されると、各回動アーム部51bの先端部にそれぞれ取り付けられたクランプ部51cによって、図13に示すように、貼り合わせマザー基板90がクランプされる。
メインフレーム11のフレーム11Bと直交する方向に沿って配置された各クランプ具51も、それぞれ同様の構成になっており、これらのクランプ具51も一体となって駆動される。貼り合わせマザー基板90は、相互に直交する各側縁部が、それぞれ複数のクランプ具51にてクランプされた状態になると、全てのクランプ具51が下方へ沈み込み、第1基板支持部20Aのタイミングベルト21eによって支持される。
また、上記したクランプ装置50の配置は、貼り合わせマザー基板90を保持するクランプ装置50をメインフレーム11のフレーム11Bとフレーム11B直交する方向の基板搬入側に備える場合を説明したが、フレーム11Bにのみクランプ装置50を備える場合であっても、貼り合わせマザー基板90は基板に損傷を与えることなく保持できる。
上記のクランプ装置50およびクランプ具51の構成は本発明の基板分断システムに用いられる一例を示したものであり、これに限定されるものではない。すなわち、貼り合わせマザー基板90における側縁部を把持または保持する構成のものであればよい。また、例えば基板サイズが小さい場合には、基板の側縁部の1箇所をクランプすることにより基板が保持され、基板に不具合を生じさせることなく基板を分断することができる。
スクライブ装置ガイド体30における上側ガイドレール31には、図3に示すように、上部基板分断装置60が取り付けられており、また、下側ガイドレール253には、図4に示すように、上部基板分断装置60と同様の構成であって、上下を反転した状態の下部基板分断装置70が取り付けられている。上部基板分断装置60および下部基板分断装置70は、前述したように、それぞれ、リニアモータによって、上側ガイドレール31および下側ガイドレール32に沿ってスライドするようになっている。
例えば、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70には、貼り合わせマザー基板90の上部ガラス基板をスクライブするカッターホイール62aがチップホルダ62bに回転自在に取り付けられており、さらに、チップホルダ62bはクランプ装置50によって保持された貼り合わせマザー基板90の表面に対して垂直方向を軸として回転自在にカッターヘッド62cに取り付けられている。そして、カッターヘッド62cは図示しない駆動手段により貼り合わせマザー基板90の表面に対して垂直方向に沿って移動自在になっており、カッターホイール62aには、図示しない付勢手段により適宜、荷重がかけられるようになっている。
チップホルダ62bに保持されたカッターホイール62aとしては、例えば、特開平9−188534号公報に開示されているように、幅方向の中央部が鈍角のV字状になるように突出した刃先を有しており、その刃先に、所定の高さの突起が周方向に所定のピッチで形成されているものが用いられる。
下側ガイドレール32に設けられた下部基板分断装置70は、上部基板分断装置60と同様の構成になっており、上部基板分断装置60とは上下を反転した状態で、そのカッターホイール62a(図4参照)が、上部基板分断装置60のカッターホイール62aと対向するように配置されている。
上部基板分断装置60のカッターホイール62aは、上述した付勢手段とカッターヘッド62cの移動手段とにより、貼り合わせマザー基板90の表面に圧接され、下部基板分断装置70のカッターホイール62aも、上述の付勢手段とカッターヘッド62cの移動手段とにより、貼り合わせマザー基板90の裏面に圧接される。そして、上部基板分断装置60と下部基板分断装置70とを同時に同一の方向へ移動させることにより、貼り合わせマザー基板90は分断されていく。
このように、第1基板支持部241Aは、スクライブ装置ガイド体242の移動方向に沿って、平行移動する複数の第1基板支持ユニット244Aを備える。そして、複数の第1基板支持ユニット244Aは、スクライブ装置ガイド体242の移動に伴って、スクライブ装置ガイド体242と共に移動する。したがって、スクライブ装置ガイド体242と第1基板支持ユニット244Aとの間に空間を設けて、この空間をY軸方向へ移動させ、基板90をクランプ装置251で固定する構成とすることで、空間が移動するときおよび両主面にスクライブする時、基板90と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。その結果、カッターホイール62aにより基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
さらに、第1基板支持ユニット244Aは、基板90を支持するタイミングベルトを具備する。したがって、タイミングベルトがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接かつ基板に力が及ぶことがない。したがって、カッターホイール62aは基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
なお、第1基板支持ユニット244Aは、複数のコロを有していてもよい。この場合には、さらに確実に基板90を支持することができる。(以上、請求項4の作用)。例えば、複数のコロは、クラッチ116によって回転される。クラッチは、スクライブ装置ガイド体242の移動に応じて、複数のコロを回転させる。クラッチ116は、空間の移動に応じて複数のコロの回転方向または、回転の停止を選択することができてもよい。この場合には、クランプ装置251による基板90の固定を解除することで、基板支持装置(第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241B)を基板90の搬送にも利用することができる。(以上、請求項5の作用)。
また、クラッチユニット110は、複数のコロをスクライブ装置ガイド体242の移動に応じて回転させる。例えば、複数のコロの外周の周速をY軸方向へのスクライブ装置ガイド体の移動速度と一致させるように回転させる制御を実施することで、複数のコロがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接かつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aは基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
なお、第1基板支持ユニット244Aがタイミングベルトである場合には、コロと比較すると基板面を面として支持することができる。したがって、安定して基板を支持することができる。(以上、請求項6の作用)。
また、上述のように、第1基板支持ユニット244Aがタイミングベルトである場合でも、クラッチ116は、複数のベルトをスクライブ装置ガイド体244の移動に応じて周回移動させることができる。この場合には、ベルト21eはクラッチ116により、空間の移動に応じてベルトの周回移動方向または、周回移動の停止を選択することができる。したがって、クランプ装置251による基板90の固定を解除することで、基板支持装置20を基板の搬送にも利用することができる。(以上、請求項7の作用)。クラッチユニット110は、複数のベルトをモータによりスクライブ装置ガイド体244の移動に応じて周回移動させる。このように、複数のベルトの周回移動速度をY軸方向へのスクライブ装置ガイド体242の移動速度と一致させるように周回移動の制御を実施することで、複数のベルトがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aにより基板の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
以上、第1基板支持部241Aの構成と機能とを説明した。なお、第2基板支持部241Bは、第1基板支持部241Aと同様の構成および機能を有してもよい。
このカッターホイール62aはWO 03/011777に開示されているサーボモータを用いたカッターヘッド65に回転自在に支持されることが望ましい。
サーボモータを用いたカッターヘッド65の一例として、図14は、カッターヘッド65の側面図を示し、図15にその主要部の正面図を示す。一対の側壁65a間にサーボモータ65bが倒立状態で保持され、その側壁65aの下部には、側方から見てL字状のホルダー保持具65cが支軸65dを通じて回動自在に設けられている。そのホルダー保持具65cの前方(図15中、右方向)には、軸65eを介してカッターホイール62aを回転自在に支持するチップホルダ62bが取り付けられている。サーボモータ65bの回転軸と支軸65dとには、平傘歯車65fが互いにかみ合うように装着されている。これにより、サーボモータ65bに正逆回転により、ホルダー保持具65cは支軸65dを支点として俯仰動作を行ない、カッターホイール62aが上下動する。このカッターヘッド65自体は、上部基板分断装置60と下部基板分断装置70に備えられる。
図16はサーボモータを用いたカッターヘッドの別の一例を示す正面図であり、サーボモータ65bの回転軸をホルダー具65cに直結したものである。
図14及び図16のカッターヘッドはサーボモータを位置制御により回転させることで、カッターホイール62aを昇降させて位置決めする。これらのカッターヘッドはカッターヘッドを水平方向へ移動させて貼り合わせマザー基板90にスクライブラインを形成するスクライブ動作中に、予めサーボモータ65b設定されたカッターホイール62aの位置がズレたときに、その設定位置へ戻すように働く回転トルクを制限して脆性材料基板に対するスクライブ圧をカッターホイール62a伝達するようになっている。すなわち、サーボモータ65bはカッターホイール62aの鉛直方向の位置を制御するとともに、カッターホイール62aに対する付勢手段となる。
上述したサーボモータを備えたカッターヘッドを用いることで、貼り合わせマザー基板90をスクライブする時に、カッターホイール62aが受ける抵抗力の変動によるスクライブ圧の変化に瞬時に対応してサーボモータの回転トルクが修正されるため、安定したスクライブが実施でき、品質のよいスクライブラインを形成することができる。さらに、サーボモータを用いて基板90へカッターホイール62aの押圧力を伝達するため、押圧力を基板90へ伝達する応答性がよくなり、スクライブ加工中にカッターホイール62aの基板90への押圧力(スクライブ荷重)を変化させることができる。
尚、貼り合わせマザー基板90をスクライブするダイヤモンドポイントカッターやカッターホイールなどのスクライブカッターを振動させて、スクライブカッターによる貼り合わせマザー基板90への押圧力を周期的に変化させる機構を備えるカッターヘッドも本発明の基板分断システムのマザー基板の分断に有効に適用される。
尚、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70は上記の構成に限るものではない。すなわち、基板の表裏面を加工して基板を分断させる構成の装置であればよい。
例えば、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70がレーザ光、ダイシングソー、カッティングソー、切断刃 ダイヤモンドカッター等を用いてマザー基板を分断させる装置であってもよい。
マザー基板が、鋼板等の金属基板、木板、プラスチック基板、およびセラミックス基板、ガラス基板、半導体基板等の脆性材料基板である場合には、例えばレーザ光、ダイシングソー、カッティングソー、切断刃ダイヤモンドカッター等を用いてマザー基板を分断する基板分断装置が用いられる。
さらに、一対のマザー基板を貼り合わせた貼り合わせマザー基板、異なるマザー基板を組み合わせて貼り合わせた貼り合わせマザー基板、複数のマザー基板同士を組み合わせて積層させた基板を分断する場合にも上述のマザー基板を分断するものと同様の基板分断装置が用いられる。
例えば、脆性材料基板を貼り合わせたFPDに用いられる貼り合わせマザー基板は接着剤などで貼り合わさられるため、マザー貼り合わせ基板90に撓みやうねりが生じている。本発明の基板分断システム1は、対向するカッターホイール62aのそれぞれに付加された荷重に釣り合うようにそれぞれのカッターホイール62aは基板90のうねりや撓みに追随して基板をスクライブすることができるので、マザー貼り合わせ基板90を分断に対して有効に適用できる。(以上、請求項9の作用)。
また、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70には基板の分断を補助する分断補助手段を備えていてもよい。分断補助手段としては、例えば、ローラなどを基板に押圧させたり、圧縮空気を基板に向けて噴射させたり、レーザを基板に照射するか、熱風などを基板に吹きかけて基板を温める(熱する)ものが一例として挙げられる。
さらに、上述の説明においては、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70が同一の構成である場合を説明したが、基板の分断パターンや基板の分断条件により異なる構成の装置であってもよい。
このような構成の基板分断システムの動作について、大判のガラス板を貼り合わせた貼り合わせ基板を分断する場合の一例を主に説明する。
大判のガラス基板が相互に貼り合わせられた貼り合わせマザー基板90を、複数のパネル基板90a(図18参照)に分断する際には、まず、図17に示すように、基板搬入側の端部から、搬送ロボット等によって本基板分断システムに搬入されて、第1基板支持部20Aの全ての第1基板支持ユニット21Aの各タイミングベルト21eに貼り合わせマザー基板90を水平状態で載置する。
このような状態になると、貼り合わせマザー基板90は、メインフレーム11のフレーム11Bに沿って配置された図示しない位置決めピンに当接するように、図示しないプッシャーによって押圧されるとともに、そのフレーム11Bとは直交する方向に沿って配置された図示しない位置決めピンに当接するように、図示しないプッシャーによって押圧される。これにより、貼り合わせマザー基板90は、基板分断システムにおける架台10内の所定の位置に位置決めされる。
その後、図17に示すように貼り合わせマザー基板90は、クランプ装置50の各クランプ具51によって、メインフレーム11のフレーム11Bに沿った側縁部がそれぞれクランプされるとともに、基板搬入側にフレーム11Bとは直交するように配置された各クランプ具51によって、基板搬入側に位置する貼り合わせマザー基板90の側縁部がクランプされる。
貼り合わせマザー基板90の相互に直交する各側縁部がそれぞれクランプ装置50によってクランプされると、貼り合わせマザー基板90の側縁部をクランプしている各クランプ具51が貼り合わせマザー基板90の自重によりほぼ同時に沈み込むため、貼り合わせマザー基板90が全ての第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eによって補助的に支持された状態とされる。
このような状態になると、第1基板支持部20Aと第2基板支持部20Bの4つのクラッチユニット110のクラッチ116が駆動軸122に結合された後、スクライブ装置ガイド体30が、クランプ装置50によって水平状態にクランプされた貼り合わせマザー基板90における近接した側縁部上の所定位置になるように、基板搬入側にスライドされる。そして、スクライブ装置ガイド体30に設けられた第1光学装置38および第2光学装置39がそれぞれの待機位置からスクライブ装置ガイド体30に沿って移動することにより、それぞれ貼り合わせマザー基板90に設けられた第1アライメントマークと第2アライメントマークを撮像する。
スクライブ装置ガイド体30がスライドすることにより、第1基板支持部20Aが、基板搬入側にスライドされ、第2基板支持部20Bが基板搬入側へスライドされるととともに、第1基板支持部20Aの第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eと第2基板支持部20Bの第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21eが、貼り合わせマザー基板90をスクライブ装置ガイド体30の移動速度と同一の速度でスクライブ装置ガイド体30の移動方向とは逆方向に貼り合わせガラス基板90を移動させるため、貼り合わせマザー基板90は、クランプ装置50に保持されたまま、貼り合わせマザー基板90に第1基板支持部20Aの第1基板支持ユニット21Aのタイミングベルト21eと第2基板支持部20Bの第2基板支持ユニット21Bのタイミングベルト21eが摺接することなく支持される。
次に、第1アライメントマークと第2アライメントマークの撮像結果に基づいて、図示しない演算処理装置によりクランプ装置50によって水平状態で支持された貼り合わせマザー基板90のスクライブ装置ガイド体30に沿った方向に対する傾き、分断開始位置と分断終了位置を演算によって求め、その演算結果に基づいて、貼り合わせマザー基板90の前記傾きに対応して上部基板分断装置60および下部基板分断装置70をX方向へ移動させつつ、スクライブ装置ガイド体30をY方向へ移動させて貼り合わせマザー基板90を分断する。(これを直線補間によるスクライブあるいは分断と呼ぶ)
この場合、図18に示すように、貼り合わせマザー基板90の表面および裏面にそれぞれ対向したカッターホイール62aを、各表面および裏面にそれぞれ圧接して転動させることにより、貼り合わせマザー基板90の表面および裏面にスクライブラインが形成される。
貼り合わせマザー基板90は、例えば、上側ガイドレール31および下側ガイドレール32に沿った列方向に2つのパネル基板90aを、2列にわたって分断するようになっており、貼り合わせマザー基板90から4個のパネル基板90aを分断するために、パネル基板90aの側縁に沿って、上部基板分断装置60のカッターホイール62aおよび下部基板分断装置70のカッターホイール62aをそれぞれ圧接させて転動させる。
この場合、上部基板分断装置60のカッターホイール62aと、下部基板分断装置70のカッターホイール62aにより、各ガラス基板における各カッターホイール62aの転接部分にそれぞれ垂直クラックが生成されてスクライブライン95が形成される。しかも、各カッターホイール62aの刃先には、外周稜線に所定のピッチで突起部がそれぞれ形成されているために、各ガラス基板には、厚さ方向にガラス基板の厚さの約90%の長さの垂直クラックが形成される。
また、貼り合わせマザー基板90をスクライブするダイヤモンドポイントカッターやカッターホイールなどのスクライブカッターをスクライブカッターによる貼り合わせマザー基板90への押圧力を周期的に変化(振動)させる機構を備えるカッターヘッドを用いるスクライブ方法も本発明の基板分断システムの貼り合わせマザー基板90の分断に有効に適用される。
貼り合わせマザー基板90の表裏面をスクライブする方法としては、図19のように貼り合わせマザー基板90の短辺方向である縦方向に沿ってスクライブ定ラインS1〜S4に沿って、順番にスクライブラインを形成した後に、長辺方向である横方向に沿ったスクライブ予定ラインS5からS8に沿って順番にスクライブラインを形成する従来の方法が一般的に用いられる。
(真空吸着ヘッドの詳細)
以下、本発明の実施の形態の真空吸着ヘッド600(例えば、真空吸着ヘッド140q、真空吸着ヘッド540)の詳細を説明する。
図20は本実施の形態における真空吸着ヘッド600の内部構造を示す破断断面図である。図21は真空吸着ヘッド600の中心軸に沿った断面図である。図22は真空吸着ヘッド600の構成部品の取り付け関係を示す分解斜視図である。
この真空吸着ヘッド600は、ケーシング部と吸着部と弾性支持部とを含んで構成される。
吸着部は、基板90を真空吸着させるための吸着パッド608と、吸着パッド608を保持すると共に、吸着パッド608内に対して空気を排気するための排気孔が設けられた吸引シャフト607とを含む。ケーシング部は、吸引シャフト607の移動範囲を規制して微動可能に保持する。弾性支持部は、ケーシング部内で吸引シャフト607を軸方向及び軸方向と斜め方向に微動可能なように弾性的に保持する。
吸引シャフト607は、ケーシング部内の略中間位置に鍔状に設けられた段差部607aを備える。
ケーシング部は、弾性支持部を変形自在に保持するための空間を内側に備えるケーシング602と、ケーシング602の上端部を第1の開口を残して封じる上ケーシングプレート603と、ケーシング602の下端部を第2の開口を残して封じる下ケーシングプレート604とを含む。
弾性支持部は、上ケーシングプレート603と段差部607aとの間に保持される上ばね605と、下ケーシングプレート604と段差部607aとの間に保持される下ばね606とを含む。
図21に示すように、真空吸着ヘッド600の中心軸を2軸とし、上方向を−、下方向を+として記述する。上述のようにケーシング部はケーシング602、上ケーシングプレート603、下ケーシングプレート604を備える。そしてケーシング602内に、弾性支持部として上ばね605と下ばね606が設けられている。ケーシング部は弾性支持部を介して吸着部をz軸方向及びz軸から傾いた斜め方向に移動可能なように、即ち倣い自在なように保持する。またケーシング部は、その内部のバネ力により吸引シャフト607を所定の方向を向いた状態に姿勢を矯正している。吸着部は吸引シャフト607、吸着パッド608、潤滑シート609、ストッパプレート610、接手部611を含んで構成される。
図20〜図22によりケーシング部について説明する。ケーシング602は下部にフランジ602aが一体に形成された円筒状の部材であり、その内径をD1とする。上ばね605及び下ばね606の外径を仮に共にD2とし、上ばね605及び下ばね606がケーシング602の内部で自在に変形するためのクリアランスをdとする。この場合、D1=D2+2dとなる。フランジ部602aはケーシング602を下ケーシングプレート604に固定するものであり、固定用のねじ穴を設けられる程度の厚みを有している。上ケーシングプレート603は、その中央に第1の開口を有し、上ばね605及び下ばね606を介して吸引シャフト607を上下動自在に保持するとき、上ばね605の上部を固定するものであり、その最外径はケーシング602の円筒部の外径と同一である。上ケーシングプレート603はねじによりケーシング602の上端面に固定される。上ケーシングプレート603の内側に環状の突起603aが設けられる。下ケーシングプレート604は図22に示すように、2枚の半円形のプレート604bから構成され、その中央に第2の開口を有し、内側に環状の突起604aが設けられている。突起603aは上ばね605の上端位置を上ケーシングプレート603と同軸に規制し、突起604aは下ばね606の下端位置を下ケーシングプレート604と同軸に規制するものである。また、上ケーシングプレート603の中央の第1の開口と下ケーシングプレート604の中央の第2の開口は、その内側に吸引シャフト607を当接させることで、吸引シャフト607の傾きを制限するものである。
次に吸着部について説明する。吸引シャフト607は、吸着パッド608を保持した状態で真空吸着ヘッド600が吸着対象物に当接したとき、吸着パッド608内の空気を排気したり、吸着パッド608内の負圧を開放したりするための吸気孔が形成された中空のシャフトである。また吸引シャフト607の上側端面には図22に示すような円形の潤滑シート609とストッパプレート610とが取り付けられている。
接手部611はエルボ型及びストレート型のいずれでも良いが、ここではエルボ型のものを図示した。この接手部611は、図20に示すように、接手611aとニップル611bを有し、ニップル611bを吸引シャフト607の吸気孔607bの上部に設けた雌ねじと、接手611aの雄ねじとに螺合させることにより、接手611aを吸引シャフト607に接続する。
弾性支持部について説明する。弾性支持部である上ばね605と下ばね606は、同一の外径D2及び内径寸法を有するコイルスプリングである。上ばね605と下ばね606を図20又は図21に示す状態に保持するには、吸引シャフト607を単体にし、巻き戻し力を加えることにより下ばね606を変形させて内径を拡大し、その状態で吸引シャフト607の上部から挿入する。下ばね606が段差部607aを通り抜けてから巻き戻し力を解放すれば、下ばね606を正規の位置に保持できる。この状態で図22に示すように半割り状態の下ケーシングプレート604をケーシング602のフランジ部602aにねじ締めする。上ばね605はそのまま吸引シャフト607の上部から挿入するだけで、正規の位置に保持できる。次に上ばね605と下ばね606に圧縮力(与圧)を加えた状態にし、上ケーシングプレート603をケーシング602の上端面にねじ締めして固定する。こうすると上ばね605と下ばね606を与圧のかかった状態に保持することができる。
なお、潤滑シート609及びストッパプレート610を固定するには、吸引シャフト607の吸気孔607bにニップル611bを螺合すればよい。このような状態に各部品をセットすると、上ばね605の与圧が下ばね606の与圧より大きくなる。このため上ばね605の与圧に抗した復元力が働き、吸引シャフト607を+z軸方向に寄せておくことができる。しかし吸引シャフト607の+z軸方向への更なる移動は、ストッパプレート610が上ケーシングプレート603の上面に当接することにより規制される。吸着パッド608が吸着対象物に当たったとき、吸引シャフト607が−z軸方向に移動する。
上述のように、吸引シャフト607が軸方向及び軸方向の斜め方向に微動かつ弾性的に支持され倣い自在とされる。したがって、吸着パット608は基板90の主面に倣い、基板90にうねりや撓みなどが存在しても確実に基板90を保持することができる。
さらに、吸着パッド608は、基板90を吸着する以前、および基板90を吸着解除したとき、バネの復元力により吸着パット608の吸着面がほぼ真下を向いた状態に復帰させられる。したがって、吸着パッド608が基板90を吸着する際に基板90を傷付けたり、吸着不良をおこすおそれがない。
なお、上ケーシングプレート603とケーシング602と下ケーシングプレート604とは、別部品として構成したが、ケーシング部としての構造は、弾性支持部の変形自由度を保持できる限り、この構成に限定されるものではない。また上ばね605と下ばね606との組み込み方法は前述の方法に限るものではない。さらに上ばね605と下ばね606の内径及び外径寸法は同じ寸法に限らない。また、上バネ605と下バネ606の長さやバネ定数は諸条件に応じて適宜変更される。吸引シャフト607における吸着パッドの取り付け部の外径が小さい場合、段差部607aを境界にして上ばね605を吸引シャフト607の上部から挿入し、下ばね606を吸引シャフト7の下部から挿入することができる。また吸引シャフト607の形状も、図20及び図21に示したものに限定する必要はない。例えば段差部607aをもつ吸引シャフト607本体を同時加工する代わりに、吸引シャフト607の筒状部にEリングやOリングを挿入し、これらのリングに上ばね605の下端や下ばね606の上端を保持してもよい。また吸引シャフト607の+z軸方向の移動を規制するために、薄板のストッパプレート610を設けたが、この部分にもEリングやOリングを挿入してもよい。また接手部611として、汎用の接手611aとニップル611bとを用いたが、他の構造を有する接続部品を用いてもよい。
なお吸着パッドの構造はその用途に応じて種々のものがある。一般的な基板、プレス加工品等を吸着する場合は、図31に示したような吸着パット651を用いることができる。また2枚のガラス基板を貼り合わせた表示パネル基板を吸着する場合は、2枚のガラス基板間のスペーサの偏在が発生しないように図32に示すような吸着パッド661を用いる。更に大型の貼り合わせガラス基板を複数の箇所で吸着する場合には、この吸着パッド661を複数用いる。このような場合は、各吸着パッドの取付公差及び吸着パッドを複数取り付けた吸着ヘッドの吸着対象物に対する傾きから、従来では、各吸着パッドと吸着対象物との間に間隙が生じるため、吸着パッドの吸着面が全て吸着対象物に接して吸着しようとすると、吸着対象物を強く押しつける部分が発生する場合がある。このとき吸着対象物が例えば脆性材料基板であれば破損させたり、液晶表示パネルの2枚のガラス基板間のギャップが変化してしまうおそれがあった。このような意味で従来の真空吸着ヘッドにおける吸着対象物を吸着するときの吸着パッドと吸着対象物との間隙は、例えば0.0mm〜0.3mmであることが望ましいが、本発明の真空吸着ヘッドは吸着対象物に接してから吸着を行う。本発明の真空吸着ヘッド600が吸着対象物に柔らかく接して、上下方向にスムーズに移動するため、吸着パッドの高さがそろっていなくてもよい。また強い力で押しつけても破損させることなく、確実に吸着を行うことができる。
この発明の他の実施の形態である吸着パッド608の構造について図23を用いて説明する。この吸着パッド608は真空吸着パッド631とスカートパッド632とを含んで構成される。真空吸着パッド631は吸着盤633と補強層634とが両面接着シート635aで接合された多層構造のものである。吸着盤633は、周縁のフラットな面の気密部633aと、多数の凹凸部が形成された吸着部633bとを有している。
吸着盤633は感光性樹脂材からなる円盤状のものであり、その中央部に上下方向に貫通した吸引口636の一部として開口633dが設けられる。気密部633aは感光性樹脂材がエッチングされない領域である。また気密部633aの内周側には環状の溝633cが新たな凹部として形成されている。また吸着盤633の中心に開口633dが設けられる。これらの溝は開口633dと連通し、凹部に存在する空気を排気する際の通路となる。補強層634は吸着盤633を構成する感光性樹脂材が外部応力により変形しないように貼り合わされた層である。
スカートパッド632は、プレート部632aと環状部632bとスカート部632cとが一体に成形されたゴム成形品である。プレート部632aは両面接着シート635bを介して真空吸着パッド631を保持する円盤状の保持部材であり、その径は真空吸着パッド631の外径より充分大きい。このプレート部632aの中心にも開口が設けられ、真空吸着パッド631の開口と連通して吸引口636となっている。環状部632bは所定の間隙を隔てて真空吸着パッド631を取り囲むように、プレート部632aの外縁部分に厚肉環状に形成され、かつ真空吸着パッド631が環状部632bより下に突き出るように形成される。環状部632bの下面は、真空吸着パッド631の下面より高く形成されたものである。スカート部632cは環状部632bを付け根とし、脆性材料基板と対面する方向に円錐状に広がった薄肉環状のゴム部材である。
スカートパッド632は、吸着対象物を吸着するときに、吸着部周辺での排気空間を拡大し、真空吸着パッド631と吸着対象物との吸着可能な間隔を大きくする働きをする。スカート部632cはその肉厚が薄いので、吸着パッド608が吸着対象物に近接したとき外周部が当接して弾性変形する。このようにスカートパッド632のスカート部632cは、吸着対象物との接触により、外界からの空気の流入を遮断するというシール機能を発揮する。
スリット632dは環状部632bに設けた切り込みであり、スカート外部とスカート内部との間で空気がリークするようにしたものである。このスリット632dは、例えば成形後のスカートパッド632に対して側方の一部分に切り込みを入れることで実現できる。スリット632dは、スカート部632cが吸着対象物と接触し、真空吸着パッド631が吸着対象物に接するまでの間に内部の空間を負圧状態に維持でき、真空吸着パッド631が吸着対象物を吸着するのを妨げない大きさの貫通孔であればよい。
図32に示す従来例2の吸着パッドに比べ、図23に示す吸着パッド608ではスカート部が付加されたことにより、接触面積が広がり、吸着対象物の脆性材料基板の表面の傾きやうねりに倣いやすくする効果がある。これにより本願の真空吸着ヘッドが更に容易に脆性材料基板の表面の傾きやうねりに倣って傾くので、脆性材料基板を吸着する直前に吸着盤633の周辺を早期にそして安定して負圧にすることが出来る。
なお、図20〜図22では、吸着パッドとして図23に示す吸着パッド608を取り付けた例を示したが、吸着対象物の素材、構造、形状によっては、図31又は図32に示した吸着パッドを取り付けてもよい。例えば一般的な基板、プレス加工品の場合は図31の吸着パッド651を用いてもよい。また液晶表示パネルのような貼り合わせガラス基板や貼り合わせプラスチック基板の場合、2枚の基板間の間隙が変化することを避けるために図32の吸着パッド661が用いることが好ましい。
以上のように構成された真空吸着ヘッド600を用い、大型の吸着対象物を吸着して搬送する場合の動作について説明する。図24は複数の真空吸着ヘッド600が取り付けられた搬送ロボット640の一例を示す概観図である。チャッキングテーブル641に対して吸着対象物の大きさに応じて複数のアングル642a,642b,642c,642dを固定する。そして夫々のアングル642に複数の真空吸着ヘッド600を吸着対象物の大きさに応じて1列に取り付ける。なお図示しないワーキングテーブルに載置された吸着対象物の表面にうねりがある場合も、吸着パッド608が倣い自在に移動できるので、従来例で述べたような高さを決める機構や個別に吸着ヘッドの高さ調節は不要であり、吸着ヘッドの取付調整作業が容易となる。図26は複数の真空吸着ヘッド600が取り付けられた搬送ロボット640で段差のある吸着対象物を吸着する一例を示す概略図である。図26に示すように、吸着面において小さな段差(オフセット)があるような吸着対象物の場合も、吸着対象物の表面形状に応じて吸着パッドが上下に移動して吸着対象物の表面に倣うため、確実に吸着することが出来る。なお、吸着対象物が小さい場合は、搬送ロボット640に真空吸着ヘッド600を1つ設けるだけでよい。
図25は複数個の吸着パッド608で大型の吸着対象物を吸着して持ち上げるときに大型の吸着対象物にうねりが生じた場合の、吸着パッド608の姿勢の変化を示す模式図である。図25Aは吸着前の真空吸着ヘッド600の状態を示す断面図である。前述したように上ばね605の弾力により、吸引パッド608が最下端に降下した状態を示す。この状態では図24に示す全ての真空吸着ヘッド600における吸着パッド608の高さがz軸方向に揃っており、吸着パッド608の傾きも真空吸着装置内のバネによりほぼ揃った状態となっている。
次に、図示しないワーキングテーブルに載置された吸着対象物に対して、全ての真空吸着ヘッド600が近づき、各吸着パッド608が吸着対象物に密着する。真空吸着ヘッド600の降下量が大きい場合、図25Bに示すように各吸着パッド608が−z軸方向に大きく移動する。吸着対象物に大きなうねりがあった場合、又は吸着対象物の表面が多少傾いていても、吸引シャフト607が倣い自在に移動することで対応でき、各吸着パッドは所望の吸着力が保持される。
次にワーキングテーブルから吸着対象物を引き上げ、別の場所に搬送する場合を考える。大型の吸着対象物を吸着して搬送すると、その途中で吸着対象物が自重で撓むことがある。特に大型の吸着対象物が吸着パッドによって主に中央部で保持されたとき、吸着対象物の外周部は下方に撓み易くなる。この場合、外周部分における吸着対象物の表面の法線が真空吸着ヘッド600のz軸方向から外れてしまう。
図32に示すような首振り機能のない吸着パッド661を用いた場合には、吸着盤662が吸着対象物の表面に密着した後、吸着対象物の一部の表面が傾くと、吸着盤662と吸着対象物の表面の平行度が崩れ、吸着盤662における真空が保持されなくなる。しかし、本実施の形態における真空吸着ヘッド600を用いた場合には、吸着盤662が倣い自在であるので、外側に配置された吸着盤662は吸着対象物の表面の傾きに対して自由自在に倣うことが出来るので吸着盤662の吸着力が保持される。
また、本実施の形態の真空吸着ヘッドは吸着対象物を吸着する前、および吸着を終了し吸着対象物を解放した後は、従来例の吸着パッドのように傾いた状態のままになることがなく、吸着ヘッド内部のバネの復元力により吸着面がほぼ真下を向いた状態に吸着パッドの姿勢が復帰させられる。このため、次に吸着対象物を吸着する際に、吸着対象物を傷つけたり、吸着不良を起こすことがない。
図23に示すような吸着パッド608を用いた場合には、吸着盤633が吸着対象物の表面に密着したとき、スカート部632cは吸着力に寄与しない状態となる。この状態で吸着対象物の一部の表面が傾くと、吸着盤633と吸着対象物の表面の平行度が崩れ、吸着盤633における真空が保持されなくなる。しかし、本実施の形態の真空吸着ヘッド600を用いた場合には、弾性支持部材で支持された吸引シャフト607、且つ吸着対象物の表面が部分的に傾いていても、容易に吸着対象物の表面の傾きに倣うことが出来るので、吸着対象物を強固に保持することができる。図25Cはこの状態を示している。つまり吸着盤633自体が吸着対象物の撓みに追随して傾斜し、また吸引シャフト607の許容傾斜角は、吸引シャフト607の外径と上ケーシングプレート603及び下ケーシングプレート604の内径により決定される。吸引シャフト607の傾斜弾力は、上ばね5及び下ばね606の曲げ応力又は偏心荷重に依存するので、軸方向の伸長又は圧縮力に比較して小さくなる。このことは吸着パッド608が吸着面の傾きに対して柔軟に対応できることを意味する。また、本実施の形態の真空吸着ヘッド600は吸着を終了し、吸着対象物を解放した後において従来例の吸着パッドのように傾いた状態のままになることがなく、吸着ヘッド内部のバネ力により吸着面がほぼ真下を向いた状態に吸着パッドの姿勢が復帰させられる。このため、次に吸着対象物を吸着する際に、吸着対象物を傷つけたり、吸着不良を起こすことがない。
なお、本実施の形態の真空吸着ヘッド600は、その吸引シャフト607が軸方向に自在に移動でき、首振り動作も可能で且つ、吸着ヘッド内部のバネ力により首を振った状態から所定の方向を向いた状態に吸着パッドの姿勢を復帰させられる。このため、従来の真空吸着装置で使用が適さなかった吸着パッドも、吸着対象物の性質に応じて使用できる。特に図32に示す吸着パッド661は好適に利用できる。
次に、本発明の吸着ヘッド600を吸着盤を上に向けた状態でテーブル上に格子状に配置して、吸着対象物を支持するテーブル100について説明する。ここでは吸着対象物は、例としてマザー貼り合わせ基板120とする。図27はこのテーブル100の実施例の正面図で、図28は側面図である。
テーブル100は、その基部となるベース板101上に、吸着盤を上に向けた真空吸着ヘッド600を複数個、格子状に所定の間隔で配置している。真空吸着ヘッドの吸着部には円盤状の吸着パッド103が取り付けられており、吸着パッド103は、その中央部に上下方向に貫通した排気孔104が設けられているが、吸着面に凹凸がない形状になっている。吸着パッド103は、樹脂材からなり、例えばエンジニアプラスチックであるピーク材が使用されている。排気孔104は図示しないポンプに接続されており、適宜、圧縮空気を噴出したり、真空引きを行えるようになっている。
さらに、ベース板101に垂直かつベース板101のXおよびY方向の一方の端面に沿って所定間隔で複数個一列に並んだ基準ピン102と、吸着パッド103に載置されたマザー貼り合わせ基板120を位置決めする際に、マザー貼り合わせ基板120を基準ピン102に当接させるための複数のプッシャー105がそれぞれ備えられている。プッシャー105の先端部には、マザー貼り合わせ基板120にその端面と当接するローラ106がベアリングを介して取り付けられている。基準ピン102は、ローラ106と同様のものを備えても良い。
図29は、テーブル100を用いた位置決めの動作を説明する説明図である。マザー貼り合わせ基板120が搬送ロボットによりテーブル100に載置されると、各々の吸着パッド103の中央の排気孔104より圧縮空気が噴出し、噴出した圧縮空気により、基板120が浮上する。浮上したマザー貼り合わせ基板120は、プッシャー105によりXおよびY方向の基準ピン102に当接させられて位置決めされる。位置決めが完了すると圧縮空気の噴出を停止させ、マザー貼り合わせ基板120を降下させ、再度、吸着パッド103上に載置する。マザー貼り合わせ基板120は、吸着パッド103に載置されると、排気孔104より図示しない真空ポンプにより真空吸引され、吸着パッド103に吸引保持される。マザー貼り合わせ基板120が吸着パッド103に吸引保持されると、ローラ106は元の状態に復帰する。
位置決め動作時に吸着パッド103より噴出した圧縮空気は、図29の矢印に示すようにマザー貼り合わせ基板120の表面に沿って流れる。このとき、吸着パッド103の表面が凹凸の無い平面パッドであるので、圧縮空気の流れが安定し乱流の発生を防止するため、マザー貼り合わせ基板120は振動せずに安定して浮上した状態となる。
図30は、本実施の形態のテーブルにおいて、吸着対象物を浮上させた変則状態を示す模式図である。従来、基板の位置決め時には、圧縮空気の吹き出しによってマザー貼り合わせ基板120とテーブルとの隙間形成を行い、マザー貼り合わせ基板120を浮上させているが、噴出エアによりマザー貼り合わせ基板120を浮上させているため、マザー貼り合わせ基板120には撓みやうねりが発生し、マザー貼り合わせ基板120の下面側の基板が部分的にテーブルと接触し、こすれて、下面側の基板表面に傷が付くことがあった。また、マザー貼り合わせ基板120が位置決め動作中に、テーブルが接触することにより、若干のずれが発生してしまうため、精度の高い位置決め(アライメント)が出来ないという問題もあった。
本発明の真空吸着ヘッド600は吸引シャフトが軸方向及び該軸方向と斜めの方向に微動可能かつ弾性的に支持されているため、真空吸着ヘッド600を用いたテーブル100において、真空吸着ヘッド600は、吸引シャフト607の外径と上ケーシングプレート603及び下ケーシングプレート604の内径により決定された吸引シャフト607の傾斜許容範囲内で、図30に示すように、圧縮空気の噴き出しによるベルヌーイ効果により、真空吸着ヘッド600の吸着パッド103がマザー貼り合わせ基板120の撓みやうねりに完全に追従する。このため、マザー貼り合わせ基板120と吸着パッド103の間の間隔を一定に保つように移動する。排気孔104から吹き出される圧縮空気は、吸着パッド103の外周への層状の流れとなり、マザー貼り合わせ基板120と吸着パッド103との隙間を一定に維持することができる。このため、マザー貼り合わせ基板120の裏面へダメージを与えることを防止でき、安定して浮上した状態を維持することが出来る。
このように安定した状態で位置決めが行われるので、マザー貼り合わせ基板120は、ずれることなく高い精度で安定して位置決めされる。位置決めが完了したマザー貼り合わせ基板120が吸着パッド103に載置されると、真空吸着ヘッド600は倣い自在であるので、前記したベルヌーイ効果によって生じた圧力差に応じてマザー貼り合わせ基板120の表面の傾きに対して自由自在に倣い、載置されたマザー貼り合わせ基板120に不要な応力を加えること無くなる。その後の真空ポンプによる真空引きにおいても、吸着パッド103にマザー貼り合わせ基板120を確実に吸引保持することができる。
また、本実施の形態の真空吸着ヘッドを用いたテーブル100は、マザー貼り合わせ基板120を位置決めする前に載置したとき、位置決めした後再び載置したとき、マザー貼り合わせ基板120を吸着する前、および吸着を終了しマザー貼り合わせ基板120を解放した後において、従来例の吸着パッドのように傾いた状態のままになることがなく、吸着ヘッド内部のバネ力により吸着面がほぼ真上を向いた状態に復帰させられる。このため、次にマザー貼り合わせ基板120を載置する際に、マザー貼り合わせ基板120を傷つけたり、吸着不良を起こしたりすることがない。
テーブル100は基板のサイズに応じて少なくとも1つの真空吸着ヘッド600を備えていればよい。真空吸着ヘッドを複数個備える場合は、図27に示すように、格子状に配置することが好ましい。また前述したようなテーブルに更に位置決め手段を設けた位置決め装置は、フラットパネルディスプレイの製造工程、及び半導体素子の製造工程において、基板を搬入する前のプリアライメント装置として極めて有効に適用される。
以上、真空吸着ヘッドの詳細を説明した。
(基板付着物除去装置の詳細)
以下、図を参照して、本発明の実施の形態の基板付着物除去装置700(エアーナイフ700)を説明する。
本発明において「流体」とは、乾いた空気、乾いた圧縮空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等の気体、水、洗浄液、エッチング液等の処理液、研削水、切削水等の加工液、水と圧縮空気の混合流体、洗浄液と圧縮空気の混合流体、溶剤等が含まれる。
図33は、本発明の基板付着物除去装置700の一例を示す概略斜視図である。この基板付着物除去装置700は上部基板分断装置60、下部基板分断装置70(図1参照)でスクライブラインが形成された基板にスチームユニット部160で蒸気を基板の両主面に吹き付けた後の工程として基板の表裏面に付着した液体を乾燥させるものである。
本発明において「基板」とは、鋼板等の金属基板、木板、プラスチック基板、プリント基板およびセラミック基板、半導体基板、ガラス基板等の脆性材料基板の単板が含まれる。さらに、このような単板の基板に限らず、フラットパネルディスプレイ装置に用いられる脆性材料基板同士を貼り合わせた液晶表示パネル基板およびそのマザー基板等が含まれる。
基板付着物除去装置700は、一対のエアーナイフユニット710Aおよび710Bと、エアーナイフユニット710Aおよび710Bのそれぞれを保持する一対のユニット保持部712、712と、ユニット保持部712、712を取り付ける上部取り付けベース708とから主に構成される。さらに、基板付着物除去装置700は、一対のエアーナイフユニット710Cおよび710Dと、エアーナイフユニット710Cおよび710Dのそれぞれを保持する一対のユニット保持部712、712と、ユニット保持部712、712を取り付ける下部取り付けベース709とから構成される。
一対のユニット保持部712、712は、エアーナイフ本体715と基板とが互いに相対移動される基板搬送路において、エアーナイフ本体715と基板の主面との間に、相対移動方向に直交する方向に略均一な形状を有する流体導入路が形成されるようにエアーナイフ本体715を支持する。
エアーナイフユニット710Aおよび710Bはそれぞれー対のユニット保持部712、712を介して上部取り付けベース708にエアーナイフユニット710Aおよび710Bの長手方向がそれぞれX方向に沿うように上部取り付けベース708に設置される。基本的にエアーナイフユニット710Bはエアーナイフユニット710Aと同様のものである。
エアーナイフユニット710Cおよび710Dはそれぞれー対のユニット保持部712、712を介して下部取り付けベース709にエアーナイフユニット710Cおよび710Dの長手方向がそれぞれX方向に沿うように下部取り付けベース709に設置される。基本的にエアーナイフユニット710Cおよび710Dはエアーナイフユニット710Aと同様のものである。
図34はエアーナイフユニット710Aとそのエアーナイフユニット710Aを保持するユニット保持部712を示す概略斜視図である。エアーナイフユニット710Aは少なくとも1個のエアーナイフ本体715から構成される。図34においては、3個のエアーナイフ本体715を例えばボルト718により一列に連結させてエアーナイフユニット710Aとしている。
エアーナイフユニット710Aから例えば、圧縮空気が吹き出す面715aには715aの傾斜面に沿って圧縮空気が噴出するようにカバー716が取り付けられ、加圧された乾燥気体を吐出可能な流体噴出用スリット717が形成される。エアーナイフユニット710Aの両側面715b及び715cには、それぞれ継ぎ手719及び720が取り付けられ、それぞれの継ぎ手719及び720にチューブ721が接続されている。さらに図示しない圧縮空気供給源を介してチューブ721内から圧縮空気がエアーナイフユニット710Aの内部へ供給される。
エアーナイフユニット710Aを保持する一対のユニット保持部712、712は、一例として、ケーシング722の内部を摺動する摺動部723aを有するロッド723を備え、ロッド723の摺動部723aとロッド723の先端部723b側のケーシング面との間に圧縮バネ724がロッド723に挿通される構成とされ、ロッド723の先端部に取り付けられた取り付け部材725が、ボルト等を用いてエアーナイフ本体715の天面に取り付けられる。また、ユニット保持部712のロッド723の先端部723b側と反対側のケーシング722の天面は、エアーナイフユニット710AがX方向に沿うように上部取り付けベース708に取り付けられる。
図35はエアーナイフユニット710A〜710Dを構成するエアーナイフの構造を説明する断面図である。エアーナイフ本体715はその長手方向に貫通する貫通孔715dが設けられ、その貫通孔715dとつながる長孔715eがエアーナイフ本体715の面715aに設けられる。また、エアーナイフ715の面715aにはL字型のカバー716が設けられている。カバー716はエアーナイフ本体715との間に流体噴出用スリット717を形成する。エアーナイフユニット710Aに設けられた継ぎ手719及び720(図2)からエアーナイフの貫通孔715dに供給された圧縮流体が715eを通り、エアーナイフ715の面715aに沿って流れ、流体噴出用スリット717から吹き出す。なお、図34において、エアーナイフユニット710Aの流体の噴出方向が+Y方向であるのに対して、エアーナイフユニット710Bの流体の噴出方向は−Y方向であり、エアーナイフユニット710Cの流体の噴出方向が+Y方向であるのに対してエアーナイフユニット710Dの流体の噴出方向は−Y方向である。
エアーナイフユニット710Aは、エアーナイフ本体715と基板93の主面との間のクリアランスを調整するクリアランス自動調整手段を有する。クリアランス自動調節手段は、図35に示すように、エアーナイフ本体715の下部(底面)に形成され、基板の主面との間で流体を層流状態で通過させる層流形成面715fと、エアーナイフ本体715を揺動可能に保持する、前記のユニット保持部712、712とからなるクリアランス自動調節手段を有する。
ユニット保持部712、712から構成されるクリアランス自動調節手段を説明する。クリアランス自動調節手段は、流体導入路を乾燥気体が通過する際に生じるベンチュリー効果を用いて、エアーナイフ本体715と基板90の主面との間のクリアランスを調整する。
流体噴出用スリット717から吐出された加圧された流体は層流形成面715f(エアーナイフ本体715の底面)と基板93の表面とによって形成される流体導入路を圧縮された層流として通過するため、基板93の表面に負圧が発生する(ベンチュリー効果)。ユニット保持部712、712の圧縮バネがエアーナイフユニット710Aを保持する上方へ向かう保持力と、前記負圧がエアーナイフユニット710Aのエアーナイフ本体715の層流形成面715fを引き寄せる吸引力とが釣り合うことにより、エアーナイフユニット710Aと基板93との間にエアーナイフユニット710Aの長手方向に均一なクリアランスが生じる。
上記クリアランスは流体噴出用スリット717から吐出される流体の流量、流体を圧縮させる加圧力、流体が層流形成面715fを通過するときの流速の少なくとも一つを変化させることにより、前記クリアランスの間隔を調整することができる。したがって、基板の撓みなどを吸収して前記クリアランスを安定保持することができる。
さらに、層流形成面715fと基板主面(表面および/または裏面)とによって形成される流体導入路に層流を通過させることによって、基板主面付近に負圧を発生させ(ベンチュリー効果)、エアーナイフ本体715を保持するユニット保持部712の上方へ向かう保持力と負圧がエアーナイフ本体715を引き寄せる吸引力とが釣り合う。その結果、エアーナイフ本体715と基板主面との間に基板90の移動方向に直交する方向に略均一な形状を有する流体導入路を容易に形成することができる。
このような構成の基板付着物除去装置700の動作および作用について説明する。
図33に示すように、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70から排出された基板93は上流コンベアに載置され、基板付着物除去装置700へ送られる。図36は基板93が基板付着物除去装置700に搬送される前のエアーナイフユニットの状態を説明する図である。基板が搬送されてくる前、各エアーナイフユニット710A〜710Dは基板93の搬送面(基板93の下面)より数mm間隔をおいて待機する状態とされる。
図37は基板93の表裏面に付着している液体を除去しているときのエアーナイフユニットの状態を説明する図である。まず基板93が上流コンベアにより図中矢印方向に基板付着物除去装置700に搬送されてくると、エアーナイフユニット710A〜710Dに乾いた圧縮空気が供給される。そして、基板93がエアーナイフユニット710Aとエアーナイフユニット710Cのエアーナイフ本体715の層流形成面715fを通過した時点で、基板93とエアーナイフユニット710Aおよび710Cの層流形成面715fとの間の流体導入路に乾いた圧縮空気が流れ、ベンチュリー効果によって基板93の表裏面付近に負圧が発生し、エアーナイフユニット710Aと710Cが、それぞれ基板93の表裏面から約20μm〜100μmのクリアランスを保つ位置まで接近または離反する。エアーユニット710Aと710Bとの間およびエアーナイフユニット710Cと710Dとの間にはそれぞれのエアーナイフユニットの流体噴出用スリット717から吐出された空気によって壁面が形成される(空気の壁)。エアーナイフユニット710Aおよび710Bから吐出された乾いた圧縮空気はその壁面に遮られることで、エアーナイフユニット710Aおよび710Cとそれらの空気の壁面との間に形成される流体導出路に沿って基板93の表裏面から遠ざかるように流れる。さらに、エアーナイフユニット710A及び710Cから吐出する乾いた圧縮空気は、エアーナイフユニット710A及び710Cのエアーナイフ本体715の層流形成面715fとの間の経路の断面積が極めて小さい流体導入路を通過し、経路の断面積が小さい流体導入路から一気に経路の断面積が大きい流体導出路へと吹き出し、拡散することにより、基板90の表裏面に付着した液体Lを霧状(ミスト化)し、基板93の表裏面に付着した液体Lを混合して、流体導出路に沿ってそれぞれ基板93の表裏面から遠ざかるように上昇および下降する。さらに、乾いた圧縮空気は経路狭い流体導入路から一気に経路の広い流体導出路へ吹き出すことにより、ミストを含んだ圧縮空気の流速が一気上がり、基板90の表裏面から遠ざかるように流れるので、ミストが基板93の表裏面に再付着することを防止することができる。
さらに基板93の近傍に空気吸引孔部(図示せず)を設けた場合には、基板93からミストを含んだ圧縮空気は前記吸引孔部へ流れ、舞い上がったミストが再度、基板93へ付着することがない。
また、本発明の基板付着物除去装置700を用いて基板93を乾燥させることが従来の装置のようにエアーナイフを用いて液体を基板の後方へ掃き集めるものではなく、基板93の表面を乾燥させるために、少なくとも一対のエアーナイフユニットを基板の進行方向に並べ、その一対のエアーナイフユニット内、基板93の進行方向に対して後方の一方のエアーナイフユニットから吐出される乾いた圧縮空気は基板93の進行方向の前方へ基板に付着した液体Lを押し出し、その液体Lを霧状にする役割を担っている。さらに、上記一対のエアーナイフ内、進行方向に対して前方の他方エアーナイフユニットから吐出される乾燥した空気は前記一方のエアーナイフユニットから吐出された乾いた圧縮空気が取り残した基板上の空気(水分)を霧状化(ミスト化)し、基板93を完全に乾燥させるとともに、前記一方のエアーナイフユニットから吐出された乾いた圧縮空気と流体導出路で合流し、流体が基板93の表面から遠ざかるように勢いよく流体導出路に沿って上昇することを助ける役割を担っている。
この実施の形態では、基板93とエアーナイフユニット710A〜710Dの層流形成面715fとの間に形成される導入流体路に乾いた圧縮流体が流れ、流路の狭い流体導入路で流体の圧縮が行われ、次いで流体導出路で流体の拡散が行われるので、基板93の表裏面の付着物は凝集することなく、流体に混合されて微細化されるので、基板93の表裏から容易に除去することができる。
また、エアーナイフユニット710A〜710Dのいずれか一つおよび/または流体で形成される壁面が、その壁面とエアーナイフユニット710A〜710Dのいずれか一つとの間に形成される流体導出路の流路断面積が流体導入路の流路断面積よりも大きくなるようにエアーナイフユニット710A〜710Dに対向した位置に配置されので、加圧された流体は経路狭い流体導入路から一気に経路の広い流体導出路へと吹き出すこととなり、流体の流速が一気上がり、より一層、基板93の表裏面から付着物を除去する能力が増加する効果が得られる。
少なくとも一対のエアーナイフユニットが、エアーナイフユニットの流体噴出用スリット717が形成された側を対向して配置されるので、流体が確実に流体導出路に沿って、基板93の表裏面から遠ざかるように流れ、基板93の表裏面の付着物の除去が促進されるという効果が得られる。
基板93の表裏面に少なくとも1つのエアーナイフがそれぞれ配置されるので、基板93の表裏面の基板付着物の除去が可能となる効果が得られる。
エアーナイフユニット710A〜710Dを保持するユニット保持部712が、流体導入路を流体が通過する際に生じるベンチュリー効果を用いて、エアーナイフユニット710A〜710Dと基板93の表裏面との間のクリアランスを調整するクリアランス自動調整手段を有するので、基板93の表裏面に付着した除去対称物に合わせて前記クリアランスを調整できるという効果が得られる。
クリアランス自動調整手段が、エアーナイフユニット710A〜710Dを基板93の表裏面との間で揺動可能に支持するユニット保持部(弾性体)712と、基板93の表裏面に対向しかつ流体導入路の一部を形成するエアーナイフユニット710A〜710Dのエアーナイフ本体715の一側面に形成され、基板93表裏面との間で流体を層流状態で通過させる層流形成面715fとを具備してなるので、層流形成面715fと基板の表裏面とによって形成される流体導入路を層流が通過するため、基板93の表裏面付近に負圧が発生する。エアーナイフユニット710A〜710Dを保持するユニット保持部(弾性体)712の上方へ向かう保持力と前記負圧がエアーナイフ本体を引き寄せる吸引力とが釣り合うことによりエアーナイフユニット710A〜710Dと基板93表裏面との間の前記流体導入路の間隔が狭くなり、流体導入路を通過した層流は、狭い経路から一気に経路の広い場所へと吹き出すこととなり、流体の流速が一気に上がり、より一層、基板90の表裏面から付着物を除去する能力を増加させる効果が得られる。
上述したように、流体導入路では基板の移動方向と直交する方向に均一で圧縮された乾燥気体の流れが形成される。流体導入路において基板90の表裏面の流体付着物は乾燥気体と混合して流体導入路よりも断面積の大きい流体導出路に導かれる。流体導出路で拡散された乾燥気体はミストとなった流体付着物を同伴する流れを形成し、壁面に沿って基板の表裏面から遠ざかるため、流体導入路で乾燥気体の圧縮が行われ、次いで流体導出路で乾燥気体の拡散が行われる。したがって、基板90の表裏面に付着した付着物は凝縮することなく、乾燥気体に混合されて微細化(ミスト化)され除去される。その結果、基板90の表裏面を完全に乾燥させることができる。
また、流体噴出用スリット717が形成された側を対向して、一対のエアーナイフ本体715が配置されるので、乾燥気体が確実に流体導出路に沿って基板90の主面から遠ざかるようにながれ、基板の乾燥が促進される。
以下、クリアランス調節手段の他の形態を示す。
図38は本発明の実施の形態の基板付着物除去装置1000を示した概略斜視図である。この基板付着物除去装置1000は、基板付着除去装置700のユニット保持部712が別のユニット保持部730に置き替わった以外は、構造的な違いはないのので、それぞれの部材についての説明は、基板付着物除去装置700と同一の符号を用いることで省略する。
図39は、ユニット保持部730の構成を示す概略断面図である。図39によりユニット保持部730について説明する。ケーシング732は下部にフランジ732aが一体に形成された円筒状の部材であり、上バネ735及び下バネ736がケーシング732の内部で自在に変形するためのクリアランスを持っている。フランジ部732aはケーシング732を下ケーシングプレート734に固定するものであり、固定用のネジ穴を設けられる程度の厚みを有している。上ケーシングプレート733は、その中央に第1の開口を有し、上バネ735及び下バネ736を介してシャフト737を上下動自在に保持するとき、上バネ735の上部を固定するものであり、上ケーシングプレート733はネジによりケーシング732の上端面に固定される。上ケーシングプレート733の内側に環状の突起733aが設けられる。下ケーシングプレート734は円形のプレートから構成され、その中央に第2の開口を有し、内側に環状の突起734aが設けられている。突起733aは上バネ735の上端位置を上ケーシングプレート733と同軸に規制し、突起734aは下バネ736の下端位置を下ケーシングプレート734と同軸に規制するものである。また、上ケーシングプレート733の中央の第1の開口と下ケーシングプレート734の中央の第2の開口は、その内側にシャフト737を当接させることで、シャフト737の傾きを制限するものである。
シャフト737の中央部のフランジは、上バネ735および下バネ736をそれぞれ押さえる役割をしている。
シャフト737の下バネ736側の先端には取り付け金具738が取り付けられ、エアーナイフユニット710A〜710Dのいずれかとボルト等を用いて接合される。また、上ケーシングプレート733は上部取り付けベース708または下部取り付けベース709とボルト等を用いて結合される。
図39のようなユニット保持部730を本発明の基板付着物除去装置1000に採用することで、上流コンベア、下流コンベアの設置状況により基板付着物除去装置1000で基板93を処理する際、基板93にほぼX方向に沿った上下方向(Z方向)の傾きが生じる場合でも、エアーナイフユニット710A〜710Dの層流形成面715fと基板表裏面との間隔を約20μm〜100μmに維持することができる。
以下、エアーナイフユニットの他の形態を示す。
図40は本発明の実施の形態の基板付着物除去装置1500の概略模式断面図である。図41は本発明の実施の形態の基板付着物除去装置1500に設けられる連結エアーナイフユニット1600を示す外観斜視図である。この連結エアーナイフユニット1600は前述の一対のユニット保持部712、712または一対のユニット保持部730、730で保持され、連結エアーナイフユニット1600が基板93の進行方向(+Y方向)と直交するX方向に沿うように、上部取り付けベース708または下部取り付けベース709とボルト等を用いて結合される。
図41に示すように、連結エアーナイフユニット1600は、複数の流体開放用の孔部1608(図40の破線部を有し)エアーナイフ部1600a及び1600bを流体噴出用スリット1607が対向するように一体的に形成されたものである。エアーナイフ部1600a及び1600bは、エアーナイフ本体715(図35参照)と同様のものであり、図35及び図41を参照にすると、エアーナイフ部1600a及び1600bの長手方向に貫通する貫通孔715dが設けられ、その貫通孔715dとつながる長孔715eがエアーナイフ部1600a及び160bの面1600c及び1600dに設けられる。また、連結エアーナイフユニット1600のエアーナイフ部1600aおよび1600bのそれぞれの面1600cおよび1600dにはL字型のカバー1606が設けられている。連結エアーナイフユニット1600に設けられた継ぎ手(不図示)からエアーナイフ部1600aおよび1600bの貫通孔715dに供給された圧縮流体が長孔715eを通り、連結エアーナイフユニット1600のエアーナイフ部1600aおよび1600bのそれぞれの面1600cおよび1600dに沿って流れ、流体噴出用スリット1607から吹き出す。
このように、連結エアーナイフユニット1600を用いて図40に示される本発明の基板付着除去装置1500は基板処理部を構成する部品点数が減ることで、基板付着物除去装置1500の組立工数を減らすことができる。
以下、基板の主面から導出された流体導出路の流体を補足する補足手段を取り付けた例を示す。図42は本発明の実施の形態の基板付着物除去装置2000の概略構成模式図である。この基板付着物除去装置2000は、図33、図38および図40を参照して説明した基板付着物除去装置700、基板付着物除去装置1000および基板付着物除去装置1500において、上部取り付けベース708および下部取り付けベース709にそれぞれ長孔の排気口708aおよび709aを設け、それらの排気口708aおよび709aを覆うように吸引カバー2001をそれぞれ設置し、それらの吸引カバー2001に吸引モータ(不図示)により吸引される排気ダクト(吸引手段)につながる配管をつなぐためのフランジ2002がそれぞれ設けられる。
基板付着物除去装置2000では、エアーナイフユニット(エアーナイフ部)間形成される流体導出路に沿って基板表裏面から勢いよく上方または下方へ流れてくるミストを含んだ圧縮空気を効率良く基板付着物除去装置2000の機外へ排出することができる。
また、吸引モータ等で吸引する排気ダクト(不図示)が流体導入路につながれることにより、基板93の表裏面から導出された流体導出路の流体を強制的に捕捉するので、基板93の表裏面から除去した付着物の再付着を防止できる。
なお、エアーナイフの形状は、圧縮流体がこのエアーナイフの形状に沿って上昇または下降しやすいように便宜的に6角形の形状としたが、圧縮流体が上昇あるいは下降し易く、また、基板と平行な面715fを有すれば6角形の形状に限らず他の形状であってもよい。
また、複数のエアーナイフユニットを、エアーナイフ本体715の流体噴出用スリット717が形成される側の反対側を壁面として基板93の搬送経路に配置することによって、複数回、基板の表面の付着物の除去が行われるため、ほぼ完全に基板の表面の付着物を取り除くことができる。
さらに、前記複数エアーナイフユニットの少なくとも1つのエアーナイフユニットの流体噴出用スリットから吐出される流体を洗浄液とし、前記複数エアーナイフユニットの少なくとも1つのエアーナイフユニットの流体噴出用スリットから吐出される流体を乾いた圧縮気体とすることで、基板洗浄用の液体で基板の表面を洗浄したのち、洗浄した基板の表面を乾燥させることができる。
また、脆性材料基板同士を貼り合わせた基板である、FPD(フラットパネルディスプレイ)に用いられるPDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶表示パネル、反射型プロジェクターパネル、透過型プロジェクターパネル、有機EL素子パネル、FED(フィールドエミッションディスプレイ)等のパネル基板およびそのマザー基板に本発明の基板処理装置および基板処理方法を有効に適用させることができる。
尚、上述の実施の形態では、主面が水平方向に延びた基板に対して、その主面の上方および/または下方にエアーナイフユニットを配置する構成を示したが、このような形態に限定されることなく、例えば、主面が鉛直方向に延びた基板に対してその主面の一方および/または他方(すなわち、左方および/または右方)にエアーナイフユニットを配置する構成としてもよい。
本発明の基板付着物除去装置によれば、基板とエアーナイフユニットの層流形成面との間に形成される導入流体路に流体が流れ、流路の狭い流体導入路で流体の圧縮が行われ、次いで流体導出路で流体の拡散が行われるので、基板主面の付着物は凝集することなく、流体に混合されて微細化されるので、基板主面から容易に除去することができる。
以上、基板付着物除去装置の詳細を説明した。
以上、図1〜図42を参照して、本発明の実施の形態1の基板分断システム1を説明した。
〈実施の形態2〉
以下、図43〜図55を参照して、本発明の実施の形態2の基板分断システム200を説明する。
図43は、本発明の実施の形態2の基板分断システム200を示す全体概略斜視図、図44はその基板分断システム200の平面図、図45はその基板分断システム200の側面図である。なお、本発明において、「基板」には、複数の基板に分断されるマザー基板を含み、また、鋼板等の金属基板、木板、プラスチック基板およびセラミックス基板、半導体基板、ガラス基板等の脆性材料基板等の単板が含まれる。さらに、このような単板に限らず、一対の基板同士を貼り合わせた貼り合わせ基板、一対の基板同士を積層させた積層基板も含まれる。
本発明の基板分断システムは、例えば、一対のガラス基板が、相互に貼り合わせられた液晶表示装置のパネル基板(表示パネル用貼り合わせ基板)を製造する際、この基板分断システムによって、一対のマザーガラス基板が相互に貼り合わされた貼り合わせマザー基板90が、複数枚のパネル基板93(表示パネル用貼り合わせ基板)に分断される。
本実施の形態2の基板分断システム200は位置決めユニット部220、スクライブユニット部240、リフトコンベア部260、スチームブレイクユニット部280、基板搬送ユニット部300、パネル反転ユニット部320、パネル端子分離部340を備えている。
本実施の形態2の基板分断システム200において、位置決めユニット部220が配置されている側を基板搬入側、パネル端子分離部340が配置されている側を基板搬出側として以下の説明を行う。また、本発明の基板分断システム200において、基板が搬送されていく方向(基板の流れ方向)は基板搬入側から基板搬出側に向かう+Y方向である。また、この基板が搬送されていく方向はスクライブユニット部240のスクライブ装置ガイド体242に対して水平状態で直交する方向であり、スクライブ装置ガイド体242はX方向に沿って設けられる。
基板として貼り合わせマザー基板90を分断する場合を例に挙げて以下の説明を行う。まず、前工程の搬送装置(不図示)によって貼り合わせマザー基板90が位置決めユニット部220へ搬入される。その後、位置決めユニット部220は貼り合わせマザー基板90をスクライブユニット部240の第1基板支持部241Aに載置して、第1基板支持部241A上で貼り合わせマザー基板90を位置決めする。基板分断システム200は、位置決めユニット部220を備えることによって、基板の表裏面のスクライブ予定ラインに沿って正確にスクライブラインを形成することができる。
位置決めユニット部220は図46に示すように、架台230の上方に支柱228を介してY方向に沿って架台230の一方の側縁に沿って延在するガイドバー226とガイドバー226と平行に架台230の他方の側縁に沿って延在するガイドバー227を備える。また、ガイドバー226とガイドバー227の間の架台230の基板搬入側には、架台230の上方に支柱228を介してX方向に沿って延在するガイドバー225を備えている。
ガイドバー225とガイドバー226には貼り合わせマザー基板90を位置決めする際に基準となる複数の基準ローラ223がそれぞれ設けられており、ガイドバー227には、貼り合わせマザー基板90を位置決めする際にガイドバー226に備えられた基準ローラ223に向けて貼り合わせマザー基板90を押し込む複数のプッシャー224が備えられる。
架台230の上方にはガイドバー226とガイドバー227の間に所定の間隔で複数の吸引パットベース221が設けられ、それらの吸引パットベース221は、架台230のガイドバー226側の上面に設けられた昇降装置222と架台230のガイドバー227側の上面に設けられた昇降装置222に保持される。
吸引パットベース221には複数の吸引パット221aが備えられ、前工程の搬送装置(不図示)からこれらの複数の吸引パット221aが貼り合わせマザー基板90を受け取り、不図示の吸引装置により貼り合わせマザー基板90を吸引させて吸着させる。
なお、位置決めユニット部220の複数の吸引パットベース221には、例えば、図20〜図32を参照して説明したような複数の真空吸着ヘッド600に複数の吸引パット221aを取り付けてもよい。この場合には、複数の真空吸着ヘッド600は、前工程から基板90を確実に受け取り、基板90を安定して浮上させて位置決めすることができる。
例えば、真空吸着ヘッドは、基板90を吸引保持し、または圧縮空気を吹き出し浮上させる吸着パッドを含む。真空吸着ヘッドは、複数の吸着パットのそれぞれと基板90との間に、層流が形成された状態で、基板を位置決めする。この場合には、真空吸着ヘッドの吸着パッドから圧縮空気が吹き出され、ベンチュリー効果により吸着パッドが基板のうねりや撓みに追従する。そして、圧縮空気は基板と吸着パッド間の間隔を一定に保つように移動する。したがって、基板と吸着パッド間の空気の流れは層流となり、基板と吸着パッドとの隙間は一定に維持される。その結果、基板が傷つくことなく、基板を精度よく位置決めすることができる。
スクライブユニット部240の第1基板支持部241Aは基板搬入側へ移動して、位置決めユニット部220の位置で待機状態となって、その待機状態の第1基板支持部241Aの中に昇降装置222によって、貼り合わせマザー基板90を保持した複数の吸引パットベース221が沈みこみ第1基板支持部241A上に貼り合わせマザー基板90が載置される。
スクライブユニット部240は実施の形態1の基板分断システム1から基板搬出装置80とスチームユニット部160を取り除いた構成であり、その他の機械構成については実施の形態1と同様の構成となっている。
スクライブユニット部240のスクライブ装置ガイド体242は第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241Bと結合されておりスクライブ装置ガイド体242のY方向の移動に伴って、同時に、第1基板支持部241Aと第2基板支持部241Bがスクライブ装置ガイド体242と同方向に移動する。
第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241Bには、それぞれがスクライブ装置ガイド体242の移動方向と同方向に移動可能になった複数の第1基板支持ユニット244Aおよび複数の第2基板支持ユニット244Bをそれぞれ備えている。各第1基板支持ユニット244Aおよび各第2基板支持ユニット244Bは、それぞれ、フレーム243Aおよび243Bに対して平行な方向(Y方向)に沿ってX方向に並列に配置されている。
第1基板支持部241Aに設けられた1つの第1基板支持ユニット244Aは実施の形態1の図6に示す第1基板支持ユニット21Aと同様であり、第1基板支持ユニット244Aに備えられたタイミングベルトは第1基板支持部241Aに備えられるクラッチが駆動軸と連結したときに周回移動させられる。
第1基板支持ユニット244Aは所定の間隔を設けて複数配置され、スクライブ装置ガイド体242とともにフレーム243Aおよび243Bに沿ってY方向へ移動する。
このように構成される第1基板支持ユニット244Aのタイミングベルトを周回移動させる機構は、実施の形態1の図7乃至図9と同様であり、図7においてフレーム11Aおよび11Bがそれぞれ本実施の形態2におけるフレーム243Aおよび243Bとなっている。
図7に示すように、第1基板支持部241Aに設けられた複数の第1基板支持ユニット244Aの駆動用タイミングプーリを回転させてタイミングベルトを周回移動させるクラッチを備えるクランプユニットは、フレーム243Aおよび243B側に備えられる。
図45に示すように、第1基板支持ユニット244Aを支持するフレーム243A側の支柱245とフレーム243B側の支柱245がガイドベース247に保持され、スクライブ装置ガイド体242の両端を支持する支柱246を保持するガイドベース247にリニアモータの可動子(図示せず)が取り付けられているため、リニアモータの駆動により、スクライブ装置ガイド体242が基板搬入側へ移動するとともに、第1基板支持部241Aの複数の第1基板支持ユニット244Aが基板搬入側へ移動する。
スクライブ装置ガイド体242が移動する時、フレーム243Aおよび243Bに沿って、図8と同様に取り付けられたそれぞれのラックとかみ合っているフレーム243A側のクラッチユニットのピニオンとフレーム243B側のピニオンが回転させられる。
第1基板支持ユニット244Aの駆動用タイミングプーリを回転させてタイミングベルトを周回移動させるには、フレーム243Aおよびフレーム243Bの両方のクラッチをピニオンの回転が伝達される駆動軸と連結させてもよいし、フレーム243A側またはフレーム243B側のいずれかのクラッチをピニオンの回転が伝達される駆動軸と連結させてもよい。
第2基板支持部241Bは、スクライブ装置ガイド体242の移動方向と同方向に移動可能になった複数の第2基板支持ユニット244Bを備えている。この第2基板支持ユニット244Bは第1基板支持ユニット244Aの構造と同様であり、スクライブ装置ガイド体242に対して対称となるように、Y方向の取付け方向が逆になるように、フレーム243A側の支柱245とフレーム243B側の支柱245に支持され、それぞれの支柱がガイドベース247に保持されている。
スクライブ装置ガイド体242の両端を支持する支柱246を保持するガイドベース247にリニアモータの可動子(図示せず)が取り付けられているため、リニアモータの駆動により、スクライブ装置ガイド体242が基板搬入側へ移動するとともに、第2基板支持部241Bの複数の第2基板支持ユニット244Bが基板搬入側へ移動する。
第2基板支持部241Bのフレーム243A側とフレーム243B側には第1基板支持部241Aと同様のクラッチユニット備えられており、スクライブ装置ガイド体242が移動する時、フレーム243Aおよび243Bに沿って取り付けられたそれぞれのラックとかみ合っているフレーム243A側のクラッチユニットのピニオンとフレーム243B側のクラッチユニットのピニオンが回転させられる。
第2基板支持ユニット244Bの駆動用タイミングプーリを回転させてタイミングベルトを周回移動させるには、フレーム243A側およびフレーム243B側の両方のクラッチをピニオンの回転が伝達される駆動軸と連結させてもよいし、フレーム243A側またはフレーム243B側のいずれか一方のクラッチをピニオンの回転が伝達される駆動軸と連結させてもよい。
さらに、架台250の上方には、第1基板支持部241Aに支持された貼り合わせマザー基板90をクランプするクランプ装置251が設けられている。たとえば、クランプ装置251は、図43に示すように、貼り合わせマザー基板90におけるフレーム243Bに沿った側縁部をクランプするように、フレーム243Bに一定の間隔をあけて取り付けられた複数のクランプ装置251と、貼り合わせマザー基板90における基板搬入側の側縁部をクランプするために、フレーム243Bとは直交する方向に沿って一定の間隔をあけて配置された複数のクランプ装置251とを備えている。
それぞれのクランプ装置251の動作は実施の形態1の図12および図13で説明した動作と同様であるため、ここではその動作の説明を省略する。
また、クランプ装置251の配置は、貼り合わせマザー基板90を保持するクランプ装置251をフレーム243Bとフレーム243Bと直交する方向の基板搬入側に備える場合に限らず、フレーム243Bにのみクランプ装置251を備える場合であっても、貼り合わせマザー基板90は損傷を受けることなく保持される。
上記のクランプ装置251は本発明の基板分断システムに用いられる一例を示したものであり、これに限定されるものではない。すなわち、貼り合わせマザー基板90における側縁部を把持または保持する構成のものであればよい。また、例えば基板サイズが小さい場合には、基板の側縁部の1箇所をクランプすることにより基板が保持され、基板に不具合を生じさせることなく基板を分断することができる。
スクライブ装置ガイド体242における上側ガイドレール252には、実施の形態1の図3に示す上部基板分断装置60が取り付けられており、また、下側ガイドレール253には、実施の形態1の図4に示す上部基板分断装置60と同様の構成であって、上下を反転した状態の下部基板分断装置70が取り付けられている。上部基板分断装置60および下部基板分断装置70は、それぞれ、リニアモータによって、上側ガイドレール252および下側ガイドレール253に沿ってスライドするようになっている。
例えば、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70には、実施の形態1の図3および図4で示されるものと同様の貼り合わせマザー基板90をスクライブするカッターホイール62aがチップホルダ62bに回転自在に取り付けられており、さらに、チップホルダ62bはクランプ装置251によって保持された貼り合わせマザー基板90の表裏面に対して垂直方向を軸として回転自在にカッターヘッド62cに取り付けられている。そして、カッターヘッド62cは図示しない駆動手段により貼り合わせマザー基板90の表裏面に対して垂直方向に沿って移動自在になっており、カッターホイール62aには、図示しない付勢手段により適宜、荷重がかけられるようになっている。
チップホルダ62bに保持されたカッターホイール62aとしては、例えば、特開平9−188534号公報に開示されているように、幅方向の中央部が鈍角のV字状になるように突出した刃先を有しており、その刃先に、所定の高さの突起が刃先稜線に所定のピッチで形成されているものが用いられる。
下側ガイドレール253に設けられた下部基板分断装置70は、上部基板分断装置60と同様の構成になっており、上部基板分断装置60とは上下を反転した状態で、そのカッターホイール62a(図4参照)が、上部基板分断装置60のカッターホイール62aと対向するように配置されている。
上部基板分断装置60のカッターホイール62aは、上述した付勢手段とカッターヘッド62cの移動手段とにより、貼り合わせマザー基板90の表面に圧接され、下部基板分断装置70のカッターホイール62aも、上述の付勢手段とカッターヘッド62cの移動手段とにより、貼り合わせマザー基板90の裏面に圧接される。そして、上部基板分断装置60と下部基板分断装置70とを同時に同一の方向へ移動させることにより、貼り合わせマザー基板90は分断されていく。
このように、第1基板支持部241Aは、スクライブ装置ガイド体242の移動方向に沿って、平行移動する複数の第1基板支持ユニット244Aを備える。そして、複数の第1基板支持ユニット244Aは、スクライブ装置ガイド体242の移動に伴って、スクライブ装置ガイド体242と共に移動する。したがって、スクライブ装置ガイド体242と第1基板支持ユニット244Aとの間に空間を設けて、この空間をY軸方向へ移動させ、基板90をクランプ装置251で固定する構成とすることで、空間が移動するときおよび両主面にスクライブする時、基板90と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。その結果、カッターホイール62aにより基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
さらに、第1基板支持ユニット244Aは、基板90を支持するタイミングベルトを具備する。したがって、タイミングベルトがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接かつ基板に力が及ぶことがない。したがって、カッターホイール62aは基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
なお、第1基板支持ユニット244Aは、複数のコロを有していてもよい。この場合には、さらに確実に基板90を支持することができる。(以上、請求項4)。例えば、複数のコロは、クラッチ116によって回転される。クラッチは、スクライブ装置ガイド体242の移動に応じて、複数のコロを回転させる。クラッチ116は、空間の移動に応じて複数のコロの回転方向または、回転の停止を選択することができてもよい。この場合には、クランプ装置251による基板90の固定を解除することで、基板支持装置(第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241B)を基板90の搬送にも利用することができる。(以上、請求項5の作用)
また、クラッチユニット110は、複数のコロをスクライブ装置ガイド体242の移動に応じて回転させる。例えば、複数のコロの外周の周速をY軸方向へのスクライブ装置ガイド体の移動速度と一致させるように回転させる制御を実施することで、複数のコロがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接かつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aは基板90の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
なお、第1基板支持ユニット244Aがタイミングベルトである場合には、コロと比較すると基板面を面として支持することができる。したがって、安定して基板を支持することができる。(以上、請求項6の作用)。
また、上述のように、第1基板支持ユニット244Aがタイミングベルトである場合でも、クラッチ116は、複数のベルトをスクライブ装置ガイド体244の移動に応じて周回移動させることができる。この場合には、ベルト21eはクラッチ116により、空間の移動に応じてベルトの周回移動方向または、周回移動の停止を選択することができる。したがって、クランプ装置251による基板90の固定を解除することで、基板支持装置(第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241B)を基板の搬送にも利用することができる。(以上、請求項7の作用)。クラッチユニット110は、複数のベルトをモータによりスクライブ装置ガイド体244の移動に応じて周回移動させる。このように、複数のベルトの周回移動速度をY軸方向へのスクライブ装置ガイド体242の移動速度と一致させるように周回移動の制御を実施することで、複数のベルトがY軸方向へ移動する際、基板90と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aにより基板の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aから不必要なクラックが派生するおそれはない。
以上、第1基板支持部241Aの構成と機能とを説明した。なお、第2基板支持部241Bは、第1基板支持部241Aと同様の構成および機能を有してもよい。
このカッターホイール62aはWO 03/011777に開示されているサーボモータを用いたカッターヘッド65に回転自在に支持されることが望ましい。
サーボモータを用いたカッターヘッド65の一例として、図14は、カッターヘッド65の側面図を示し、図15にその主要部の正面図を示す。一対の側壁65a間にサーボモータ65bが倒立状態で保持され、その側壁65aの下部には、側方から見てL字状のホルダー保持具65cが支軸65dを通じて回動自在に設けられている。そのホルダー保持具65cの前方(図15中、右方向)には、軸65eを介してカッターホイール62aを回転自在に支持するチップホルダ62bが取り付けられている。サーボモータ65bの回転軸と支軸65dとには、平傘歯車65fが互いにかみ合うように装着されている。これにより、サーボモータ65bに正逆回転により、ホルダー保持具65cは支軸65dを支点として俯仰動作を行ない、カッターホイール62aが上下動する。このカッターヘッド65自体は、上部基板分断装置60と下部基板分断装置70に備えられる。
図16はサーボモータを用いたカッターヘッドの別の一例を示す正面図であり、サーボモータ65bの回転軸をホルダー保持具65cに直結したものである。
図14及び図16のカッターヘッドはサーボモータを位置制御により回転させることで、カッターホイール62aを昇降させて位置決めする。これらのカッターヘッドはカッターヘッドを水平方向へ移動させて貼り合わせマザー基板90にスクライブラインを形成するスクライブ動作中に、予めサーボモータ65b設定されたカッターホイール62aの位置がズレたときに、その設定位置へ戻すように働く回転トルクを制限して脆性材料基板に対するスクライブ圧をカッターホイール62a伝達するようになっている。すなわち、サーボモータ65bはカッターホイール62aの鉛直方向の位置を制御するとともに、カッターホイール62aに対する付勢手段となる。
上述したサーボモータを用いたカッターヘッドを用いることで、貼り合わせマザー基板90をスクライブする時に、カッターホイールが受ける抵抗力の変動によるスクライブ圧の変化に瞬時に対応してサーボモータの回転トルクが修正されるため、安定したスクライブが実施でき、品質のよいスクライブラインを形成することができる。
尚、貼り合わせマザー基板90をスクライブするダイヤモンドポイントカッターやカッターホイールなどのスクライブカッターを振動させて、スクライブカッターによる貼り合わせマザー基板90への押圧力を周期的に変化させる機構を備えるカッターヘッドも本発明の基板分断システムのマザー基板の分断に有効に適用される。
尚上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70は上記の構成に限るものではない。すなわち、基板の表裏面を加工して基板を分断させる構成の装置であればよい。
例えば、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70がレーザ光、ダイシングソー、カッティングソー、切断刃 ダイヤモンドカッター等を用いてマザー基板を分断させる装置であってもよい。
マザー基板が、鋼板等の金属基板、木板、プラスチック基板、およびセラミックス基板、ガラス基板、半導体基板等の脆性材料基板である場合には、例えばレーザ光、ダイシングソー、カッティングソー、切断刃ダイヤモンドカッター等を用いてマザー基板を分断する基板分断装置が用いられる。
さらに、一対のマザー基板を貼り合わせた貼り合わせマザー基板、異なるマザー基板を組み合わせて貼り合わせた貼り合わせマザー基板、複数のマザー基板同士を組み合わせて積層させた基板を分断する場合にも上述のマザー基板を分断するものと同様の基板分断装置が用いられる。
また、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70には基板の分断を補助する分断補助手段を備えていてもよい。分断補助手段としては、例えば、ローラなどを基板に押圧させたり、圧縮空気を基板に向けて噴射させたり、レーザを基板に照射するか、熱風などを基板に吹きかけて基板を温める(熱する)ものが一例として挙げられる。
さらに、上述の説明においては、上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70が同一の構成である場合を説明したが、基板の分断パターンや基板の分断条件により異なる構成の装置であってもよい。
リフトコンベア部260はスクライブユニット部240のスクライブ装置ガイド体242の上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70によって貼り合わせマザー基板90がスクライブされた後、クランプ装置251による貼り合わせマザー基板90のクランプ(保持)が解除されて、第2基板支持部241Bの複数の第2基板支持ユニット244Bに載置されたスクライブ加工済みの貼り合わせガラス基板90をスチームブレイクユニット部280へ搬送する装置である。
図47はリフトコンベア部260の平面図であり、図48はリフトコンベア部260を構成する第3基板支持ユニット261の側面図である。
第3基板支持ユニット261は、フレーム243Aおよびフレーム243Bと平行な方向(Y方向)に沿って直線状に延びる支持本体部261aを有しており、支持本体部261aの各端部に、例えば、タイミングベルト261eを案内するタイミングプーリ261cおよび261dがそれぞれ取り付けられている。駆動用タイミングプーリ261bは回転モータ267の回転がベルト268により伝達される回転軸と連結しており、タイミングベルト261eを周回移動させるものである。
複数の第3基板支持ユニット261が所定の間隔をおいてリフトコンベア部260に配置され、その間隔にスクライブユニット部240の第2基板支持部241Bの複数の第2基板支持ユニット244Bが挿入されるように複数の第3基板支持ユニット261は保持フレーム262に支柱265を介して保持される。
フレーム243A側およびフレーム243B側の保持フレーム262のそれぞれのフレーム262aの中央部には、シリンダー266が備えられ、それらのシリンダー266の本体は架台270の上面にそれぞれ接合され、それらのシリンダー266のロッドは保持フレーム262のそれぞれのフレーム262aに接合される。また、保持フレーム262のそれぞれのフレーム262aの両端側にはガイドシャフト264がそれぞれ備えられ、架台270の上面に備えられるリニアガイド263にそれぞれ挿入される。
スクライブユニット部240のスクライブ装置ガイド体242の上部基板分断装置60及び下部基板分断装置70によって貼り合わせマザー基板90がスクライブされた後、クランプ装置251による貼り合わせマザー基板90のクランプ(保持)が解除されて、第2基板支持部241Bの複数の第2基板支持ユニット244Bに載置されたスクライブ加工済みの貼り合わせガラス基板90は、シリンダー266の駆動により、複数の第3基板支持ユニット261に載せられて鉛直方向に沿って上方(+Z方向)の所定の位置へ移動させられた後、回転モータ267が回転して複数のタイミングベルト261eが移動することにより、スチームブレイクユニット部280へ搬送させられる。
スチームブレイクユニット部280はY方向に沿って移動せず、固定であること以外は、実施の形態1の図10に示すスチームユニット部160と同様の構成である。
スチームブレイクユニット部280は貼り合わせマザー基板90の上側のマザー基板91に蒸気を吹き付ける複数個のスチームユニット284を取り付ける上側スチームユニット取付けバー281と貼り合わせマザー基板90の下側のマザー基板92に蒸気を吹き付ける複数個のスチームユニット284を取り付ける下側スチームユニット取付けバー282がスクライブ装置ガイド体242と平行にX方向に沿って支柱283に取り付けられている。
スチームブレイクユニット部280のフレーム243Aおよび243B側のそれぞれの支柱283は、それぞれ架台270の上面に接合されている。また、スチームブレイクユニット部280の基板搬出側には、スチームユニット284から貼り合わせマザー基板90の表裏面に蒸気を噴射させた後、完全分断された貼り合わせマザー基板90を支持して搬送する例えばシート状のベルトが周回移動するベルトコンベア285が備えられる。
尚、スチームブレイクユニット部280の基板搬出側に備えられたベルトコンベア285の周回移動速度はリフトコンベア部260の複数の第3基板支持ユニット261のタイミングベルト261e周回移動速度とほぼ同一に設定され同期して移動する。
スチームブレイクユニット部280は実施の形態1の図10に示すスチームユニット部160と同様の構成をしており、複数個のスチームユニット284が上側スチームユニット取付けバー281に取り付けられ、複数個のスチームユニット284が上側の複数のスチームユニット284対して間隙GAを開けて下側スチームユニット取付けバー282に取り付けられる。尚間隙GAは貼り合わせマザー基板90がその間隙GAを通過するように調整される。
スチームユニット284の構造は実施の形態1の図11に示すスチームユニット部161と同様の構造であり、スチームユニット284はそのほぼ全体がアルミ材質で構成されており、鉛直方向に複数本のヒーター161aが埋め込まれている。自動操作で開閉する開閉弁(不図示)が開くと水が水供給口161bからスチームユニット284内に流入し、ヒーター161aで熱せられて、供給された水が気化して蒸気となる。その蒸気が導通孔161cを通って噴出口161dからマザー基板の表面へ向けて吹き付けられる。
また、上側スチームユニット取付けバー281の基板搬出側には、マザー基板90の上面に蒸気が吹き付けられた後、マザー基板90の表面に残った水分を除去するためのエアーナイフ(基板付着物除去装置700、1000、1500、2000のいずれか1つ)が備えられている。
尚、下側スチームユニット取付けバー282にも上側スチームユニット取付けバー281に取り付けられるものと同様のスチームユニット284と基板付着物除去装置700、1000、1500、2000のいずれか1つが備えられる。
第2基板支持ユニットに載せられたスクライブ済みの貼り合わせマザー基板90は第3基板支持ユニット261に載せられて鉛直方向に沿って上方(+Z方向)の所定の位置へ移動させられた後、複数の第3基板支持ユニット261のタイミングベルト261e周回移動速度とほぼ同じ周回移動速度でスチームブレイクユニット部280の基板搬出側に備えられたベルトコンベア285を移動させることにより、スクライブ済みの貼り合わせマザー基板90はスチームブレイクユニット部280を通過することでパネル基板90aに分断され、ベルトコンベア285に支持される状態となる。
基板搬送ユニット部300は、スチームブレイクユニット部280を通過することで貼り合わせマザー基板90が分断され、ベルトコンベア285に支持される状態となった移動中および停止中のパネル基板90aを取り上げてパネル反転ユニット部320の反転搬送ロボット321のパネル保持部322に載置する装置である。
架台270および基板搬送ユニット部の架台330の上方には、貼り合わせマザー基板90から分断されたパネル基板を搬出する搬出ロボット310を基板の流れ方向であるY方向と直交するスチームブレイクユニット部280とスクライブ装置ガイド体242と平行なX方向に移動可能とするための基板搬出装置用ガイド301が架設されている。基板搬出ユニット部300は、架台270および330の上面に支柱302を介してフレーム243A側およびフレーム243B側にそれぞれ設けられたガイド303に沿って、基板搬出装置用ガイド301の両端部が支持部材304を介して、リニアモータによってスライドするようになっている。この場合のリニアモータは、それぞれのガイド303にそれぞれ設けられたリニアモータの固定子内に、支持部材304にそれぞれ取り付けられたリニアモータの可動子(図示せず)がそれぞれ挿入されて構成されている。
搬出ロボット310には、貼り合わせマザー基板90から分断された各パネル基板90aを吸引吸着させる吸着部(図示せず)が設けられており、吸着部によってパネル基板90aが吸着された状態で、搬出ロボット310が、基板搬出側にスライドされることにより、パネル反転ユニット部320の反転搬送ロボット321のパネル保持部322に載置する。
基板搬送ユニット部300の搬出ロボット310の構成は実施の形態1の図5Aから図5Eに示す搬出ロボット140または搬出ロボット500と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。尚、搬出ロボット310は基板搬出装置用ガイド301に取り付けられ、リニアモータまたはサーボモータの駆動手段と直線ガイドとを組み合わせた移動機構により基板搬出装置用ガイド301に沿う方向(X方向)に移動自在となっている。また、搬出ロボット310による貼り合わせマザー基板90から分断されたパネル基板90aの搬送において、分断されたパネル基板90aは不図示の吸引機構による吸引により搬出ロボット310の吸着パットで保持し、搬出ロボット310全体が昇降機構(不図示)により、一旦上昇した後、次工程のパネル反転ユニット部320の反転搬送ロボット321へ搬送され、再び、昇降機構(不図示)により搬送ロボット310が下降し、次工程のパネル反転ユニット部320の反転搬送ロボット321のパネル保持部322の所定の位置へ予め決まられた状態で載置される。
パネル反転ユニット部320には反転搬送ロボット321が備えられ、基板搬送ユニット部300の搬出ロボット310からパネル基板90aを受け取りパネル基板90aの表裏を反転してパネル端子分離部340の分離テーブル341上に載置する。したがって、次工程の装置へ基板を反転する(単位基板の表裏を裏返す)必要が有る場合、容易に対応することができる。
反転搬送ロボット321のパネル保持部322は例えば複数の吸着パットを備えており、反転搬送ロボット321のロボット本体部323に対して回転自在に保持される。
反転搬送ロボット321によりパネル端子分離部340の分離テーブル341上に載置されたパネル基板90aは例えば挿入ロボット(不図示)により図49に示すような分離テーブル341の各側縁部付近に設けられた不要部分除去機構342によりパネル基板90aの不要部99をパネル基板90aから分離する。
不要部分除去機構342は、図49に示すように、相対した一対のローラ342bをそれぞれ有する複数の除去ローラ部342aが、分離テーブル341の各側縁に沿って所定のピッチで配置されて構成されている。各除去ローラ部342aに設けられた相対する各ローラ342bは、相互に接近する方向に付勢されており、両ローラ342bの間に、挿入ロボット(不図示)によりパネル基板90aの上側の基板の不要部分99とパネル基板90aの下側の側縁部が挿入される。各ローラ342bは、パネル基板90aの各ローラ342b間への挿入方向の1方向にのみ回転し、相対する一対のローラ342bはそれぞれ、回転方向が逆向きの回転するように設定されている。このように、不要部分除去機構342によれば、基板を分断した単位基板に残存する不要部を容易に取り除くことができる。
このような構成の実施の形態2の基板分断システムの動作について、大判のガラス板を貼り合わせた貼り合わせ基板を分断する場合の一例を主に説明する。
大判のガラス基板が相互に貼り合わせられた貼り合わせマザー基板90を、複数のパネル基板90a(図18参照)に分断する際には、前工程の搬送装置(不図示)から実施の形態2の位置決めユニット部220の複数の吸引パットベース221に備えられた複数の吸引パット221aが貼り合わせマザー基板90を受け取り吸着する。
また、スクライブユニット部240の第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241Bの4つのクラッチは、各第1基板支持ユニット244Aおよび各第2基板支持ユニット244Bのタイミングベルトを周回移動させるタイミングプーリが回転しないように駆動軸との結合を解除させる(以下の説明においてはこの状態にすることをクラッチをOFFさせると呼ぶ)。
クラッチがOFFされた状態で図50のように第1基板支持部241Aは基板搬入側へスクライブ装置ガイド体242および第2基板支持部241Bと伴に移動し、位置決めユニット部220で待機する。
その後、図51に示すように待機状態の第1基板支持部241Aの中に昇降装置222によって、貼り合わせマザー基板90を保持した複数の吸引パットベース221が沈みこみ、複数の吸引パットによる貼り合わせマザー基板の吸着状態を解除して、第1基板支持部241A上に貼り合わせマザー基板90が載置される。
このように、貼り合わせマザー基板90が、第1基板支持部241A上に載置された状態、第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241Bの4つのクラッチをOFFさせた状態で、第1基板支持部241Aが基板搬入側へスクライブ装置ガイド体242および第2基板支持部241Bと伴に僅かに移動し、貼り合わせマザー基板90の基板搬入側の側縁を位置決めユニット部220のガイドバー225に備えられている複数の基準ローラ223と当接させる。
貼り合わせマザー基板90の基板搬入側の側縁を位置決めユニット部220のガイドバー225に備えられている複数の基準ローラ223と当接させた後、位置決めユニット部220のガイドバー227のプッシャー224がガイドバー226の基準ローラ223に向けて貼り合わせマザー基板90を押し込み、貼り合わせマザー基板90のガイドバー226側の側縁とガイドバー226に備えられた基準ローラ223と当接させることにより、スクライブユニット部240の第1基板支持部241A内に貼り合わせマザー基板90を位置決めする。
その後、位置決めユニット部220のガイドバー227のプッシャー224によるガイドバー226の基準ローラ223に向けての貼り合わせマザー基板90の押し込み状態が解除され、第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241Bの4つのクラッチをOFFさせた状態で、第1基板支持部241Aはスクライブ装置ガイド体242および第2基板支持部241Bと共に移動し、貼り合わせマザー基板90がクランプ装置251で保持される位置へ移動した後、貼り合わせマザー基板90の側縁部がクランプ装置251によりクランプされる。
貼り合わせマザー基板90の相互に直交する各側縁部がそれぞれクランプ装置251によってクランプされると、貼り合わせマザー基板90の側縁部をクランプしている各クランプ具が貼り合わせマザー基板の自重によりほぼ同時に沈み込むため、貼り合わせマザー基板90が全ての第1基板支持ユニット244Aのタイミングベルトによって補助的に支持された状態とされる。
図52に示すように、貼り合わせマザー基板90の相互に直交する各側縁部がそれぞれクランプ装置251によってクランプされ第1基板支持ユニット244Aに支持された状態となると、スクライブユニット部240の第1基板支持部241Aおよび第2基板支持部241Bの4つのクラッチは、各第1基板支持ユニット244Aおよび各第2基板支持ユニット244Bの各タイミングベルトを周回移動させるタイミングプーリが回転するように駆動軸と結合される(以下の説明においてはこの状態にすることをクラッチをONさせると呼ぶ)。
第1基板支持部241Aと第2基板支持部241Bの4つのクラッチユニットのクラッチがONされた後、スクライブ装置ガイド体242が、クランプ装置251によって水平状態にクランプされた貼り合わせマザー基板90における基板搬出側の側縁部上の所定位置になるように、基板搬入側にスライドされる。そして、スクライブ装置ガイド体242に設けられた第1光学装置38および第2光学装置39がそれぞれの待機位置からスクライブ装置ガイド体242に沿って移動することにより、それぞれ貼り合わせマザー基板90に設けられた第1アライメントマークと第2アライメントマークを撮像する。
スクライブ装置ガイド体242がスライドすることにより、第1基板支持部241Aが、基板搬入側にスライドされ、第2基板支持部241Bが基板搬入側へスライドされるととともに、第1基板支持部241Aの第1基板支持ユニット244Aのタイミングベルトと第2基板支持部241Bの第2基板支持ユニット244Bのタイミングベルトが、貼り合わせマザー基板90をスクライブ装置ガイド体242の移動速度と同一の速度でスクライブ装置ガイド体242の移動方向とは逆方向に貼り合わせガラス基板90移動させようとするため、貼り合わせマザー基板90は移動せず、クランプ装置251に保持されたまま、貼り合わせマザー基板90は第1基板支持部241Aの第1基板支持ユニット244Aのタイミングベルトと第2基板支持部241Bの第2基板支持ユニット244Bのタイミングベルトに摺接することなく支持される状態になる。
次に、第1アライメントマークと第2アライメントマークの撮像結果に基づいて、図示しない演算処理装置によりクランプ装置251によって水平状態で支持された貼り合わせマザー基板90のスクライブ装置ガイド体242に沿った方向に対する傾き、分断開始位置と分断終了位置を演算によって求め、その演算結果に基づいて、貼り合わせマザー基板90の前記傾きに対応し、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70をX方向へ移動させつつ、スクライブ装置ガイド体242を移動させて貼り合わせマザー基板90を分断する。(これを直線補間によるスクライブあるいは分断と呼ぶ)
この場合、貼り合わせマザー基板90の表面および裏面にそれぞれ対向したカッターホイール62aを、各表面および裏面にそれぞれ圧接して転動させることにより、貼り合わせマザー基板90の表面および裏面にスクライブライン95が形成される。
図53は上部基板分断装置60のカッターホイール62aおよび下部基板分断装置70のカッターホイール62aをそれぞれ圧接させて転動させて貼り合わせマザー基板90から4枚のパネル基板を分断させるために、4枚のパネル基板90aの側縁部にスクライブライン95の形成を完了した時、第2基板支持部241Bが貼り合わせマザー基板を支持している状態を示す図である。
貼り合わせマザー基板90は、例えば、図53に示すように上側ガイドレール252および下側ガイドレール253に沿った列方向に2つのパネル基板90aを、2列にわたって分断するようになっており、貼り合わせマザー基板90から4個のパネル基板90aを分断するために、パネル基板90aの側縁に沿って、上部基板分断装置60のカッターホイール62aおよび下部基板分断装置70のカッターホイール62aをそれぞれ圧接させて転動させる。
この場合、上部基板分断装置60のカッターホイール62aと、下部基板分断装置70のカッターホイール62aにより、各ガラス基板における各カッターホイール62aの転接部分にそれぞれ垂直クラックが生成されてスクライブライン95が形成される。しかも、各カッターホイール62aの刃先には、周方向に所定のピッチで突起部がそれぞれ形成されているために、各ガラス基板には、厚さ方向にガラス基板の厚さの約90%の長さの垂直クラックが形成される。
また、貼り合わせマザー基板90をスクライブするダイヤモンドポイントカッターやカッターホイールなどのスクライブカッターを振動させて、スクライブカッターによる貼り合わせマザー基板90への押圧力を周期的に変化させる機構を備えるカッターヘッドを用いてスクライブ方法も本発明の基板分断システムの貼り合わせマザー基板の分断に有効に適用される。
貼り合わせマザー基板90の表裏面のスクライブ加工が完了し、図53に示す状態になると、クランプ装置251による貼り合わせマザー基板90のクランプ(保持)が解除され、貼り合わせマザー基板90が第2基板支持部241Bに載置されるとともに第2基板支持部241Bの4つのクラッチユニットのクラッチがOFFされる。
その後、図54に示すようにスクライブ済みの貼り合わせマザー基板90を載せた第2基板支持部241Bは第1基板支持部241Aとスクライブ装置ガイド体242とともに基板搬出側へ移動し、リフトコンベア部260に所定の間隔で配置されている複数の第3基板支持ユニット261の間隔に挿入される位置に移動する。
尚、上部基板分断装置60のカッターホイール62aおよび下部基板分断装置70のカッターホイール62aをそれぞれ圧接させて転動させて貼り合わせマザー基板90から4枚のパネル基板を分断させるために、4枚のパネル基板90aの側縁部にスクライブラインを形成するスクライブ方法としては、図53で示すものとは別に実施の形態1の図19に示すスクライブ方法も本実施の形態2の基板分断システムに有効に適用することができる。
複数の第3基板支持ユニット261が所定の間隔をおいてリフトコンベア部260に配置され、その間隔にスクライブユニット部240の第2基板支持部241Bの複数の第2基板支持ユニット244Bが挿入されるように複数の第3基板支持ユニット261は図48に示すように保持フレーム262に支柱265を介して保持され、図55に示すように、複数の第3基板支持ユニット261がスクライブ済みの貼り合わせマザー基板90を受け取るタイミングベルト261eの面が第2基板支持ユニット244Bのスクライブ済みの貼り合わせマザー基板90が載置される面よりも下方に位置するように配置される。
第2基板支持部241Bの複数の第2基板支持ユニット244Bに載置されたスクライブ加工済みの貼り合わせマザー基板90は、シリンダー266の駆動により、複数の第3基板支持ユニット261に載せられて鉛直方向に沿って上方(+Z方向)の所定の位置へ移動させられた後、回転モータ267が回転して複数のタイミングベルト261eが移動することにより、スチームブレイクユニット部280へ搬送させられる。
スチームブレイクユニット部280には貼り合わせマザー基板90の上側のマザー基板91に蒸気を吹き付ける複数個のスチームユニット284を取り付ける上側スチームユニット取付けバー281と貼り合わせマザー基板90の下側のマザー基板92に蒸気を吹き付ける複数個のスチームユニット284を取り付ける下側スチームユニット取付けバー282がスクライブ装置ガイド体242と平行なX方向に沿って支柱283に取り付けられている。
スチームブレイクユニット部280の基板搬出側に備えられたベルトコンベア285の周回移動速度はリフトコンベア部260の複数の第3基板支持ユニット261の複数のタイミングベルト261e周回移動速度とほぼ同一に設定され同期して移動させられ、スクライブ済みの貼り合わせマザー基板90はスチームブレイクユニット部280を通過する。
また、上側スチームユニット取付けバー281の基板搬出側には、エアーナイフ286が備えられており、下側スチームユニット取付けバー282にも上側スチームユニット取付けバー282取り付けられるものと同様のスチームユニット284とエアーナイフ286が備えられ、貼り合わせマザー基板90の表裏面に蒸気が吹き付けられた後、貼り合わせマザー基板90の表裏面に残った水分が完全に除去される。
スクライブラインが刻まれた基板90の表裏面へ蒸気を吹きかけることにより、加熱された水分がそれぞれのスクライブラインの垂直クラックの内部に浸透し、膨張しようとする力で垂直クラックがそれぞれ伸展し、基板を分断することができる。
スクライブ済みの貼り合わせマザー基板90はスチームブレイクユニット部280を通過することで貼り合わせマザー基板90が分断され、ベルトコンベア285に支持される状態となる。
スチームブレイクユニット部280を通過することで貼り合わせマザー基板90は複数のパネル基板90aに分断され、ベルトコンベア285に支持される状態となった移動中および停止中のパネル基板90aは搬出ロボット310により取り上げられて、パネル反転ユニット部320の反転搬送ロボット321のパネル保持部322に載置される。
パネル反転ユニット部320の反転搬送ロボット321は、基板搬送ユニット部の搬送ロボット310からパネル基板90aを受け取り、パネル基板90aの表裏を反転してパネル端子分離部340の分離テーブル341上に載置する。
反転搬送ロボット321によりパネル端子分離部340の分離テーブル341上に載置されたパネル基板90aは、例えば挿入ロボット(不図示)により図49に示すような分離テーブル341の各側縁部付近に設けられた不要部分除去機構342によりパネル基板90aの不要部99をパネル基板90aから分離される。
また、基板にはマザー基板の他に、マザー基板同士を組み合わせて貼り合わせた貼り合わせ基板、異なるマザー基板を組み合わせて貼り合わせた貼り合わせ基板、マザー基板を組み合わせて積層させた基板が含まれる。
以上、図43〜図55を参照して、本発明の実施の形態2の基板分断システム200を説明した。
〈実施の形態3〉
以下、図56〜図62を参照して、本発明の実施の形態3の基板分断システム400を説明する。
図56は、本発明の実施の形態3の基板分断システム400を示す全体概略斜視図である。なお、本発明において、「基板」には、複数の基板に分断されるマザー基板を含み、また、鋼板等の金属基板、木板、プラスチック基板およびセラミックス基板、半導体基板、ガラス基板等の脆性材料基板等の単板が含まれる。さらに、このような単板に限らず、一対の基板同士を貼り合わせた貼り合わせ基板、一対の基板同士を積層させた積層基板も含まれる。
本発明の基板分断システムは、例えば、一対のガラス基板が、相互に貼り合わせられた液晶表示装置のパネル基板(表示パネル用貼り合わせ基板)を製造する際、この基板分断システムによって、一対のマザーガラス基板が相互に貼り合わされた貼り合わせマザー基板90が、複数枚のパネル基板(表示パネル用貼り合わせ基板)に分断される。
本実施の形態3の基板分断システム400は実施の形態1の基板分断システム1における基板支持装置20が実施の形態3の基板支持装置420に置き換えられ、複数の支持ベルト450が本実施の形態3の基板分断システム内に張られること以外は実施の形態1と同様の構成であるため、図56において実施の形態1と同一の部材については同一の符号で示し、詳細な説明については省略する。
本実施の形態3の基板分断システム400において、第1基板支持部420Aが配置される側を基板搬入側、基板搬出装置80が配置されている側を基板搬出側として以下の説明を行う。また、本発明の基板分断システム400において、基板が搬送されていく方向(基板の流れ方向)は基板搬入側から基板搬出側に向かう+Y方向である。
また、この基板が搬送されていく方向はスクライブ装置ガイド体30に対して水平状態で直交する方向であり、スクライブ装置ガイド体30はX方向に沿って設けられる。
基板支持装置420の第1基板支持部420Aおよび第2基板支持部420Bは、例えば、それぞれがスクライブ装置ガイド体30の移動方向と同方向に移動可能になった5つの第1基板支持ユニット421Aおよび第2基板支持ユニット421Bをそれぞれ備えている。各第1基板支持ユニット421Aおよび各第2基板支持ユニット421Bは、それぞれ、メインフレーム11の長手方向のフレーム11Aおよび11Bに対して平行な方向(Y方向)に沿ってX方向に並列に配置されている。
図58は、第1基板支持部420Aに設けられた1つの第1基板支持ユニット421Aの斜視図である。第1基板支持ユニット421Aは、メインフレーム11と平行な方向(Y方向)に沿って直線状に延びる支持本体部421aを有しており、支持本体部421aの上部に、支持ベルト450を案内するベルト受け421bが備えられ、支持本体部421aの基板搬出側の端部にはプーリ421cおよび421dがそれぞれ取り付けられている。また、支持本体部421aの下部中央部にはシリンダー421hが備えられ、シリンダー421hのシリンダーロッドは吸引板421eと接合されている。さらに、支持本体部421aの下部両端部にはリニアガイド421fが備えられ、それぞれのリニアガイド421fに挿入されるシャフト421gの一方端がそれぞれ吸引板421eと接合される。
吸引板421eは、シリンダー421hの駆動により支持ベルト450よりも上方の位置へ移動し、前工程から不図示の搬送装置により第1基板支持部420に搬送される貼り合わせマザー基板90を受け取り、不図示の吸引機構により貼り合わせマザー基板90を吸引して吸着し、第1基板支持ユニット421Aの支持ベルト450上に載置する。
尚、シリンダー421hは2段シリンダーの構成をしており、シリンダー内へ圧縮空気の投入のパターンを不図示の電磁弁で制御することにより、吸引板421eは、選択的に図57に示す支持ベルト450より下方の最下段の位置、貼り合わせマザー基板90を受け取る最上段の位置および支持ベルト450に貼り合わせマザー基板90を載置する中段の位置とされる。
支柱45が架台10の上面に設けられた一対のガイドレール13のそれぞれの移動ユニットに保持されたガイドベース15の上面に設けられ、その支柱45の上方に、メインフレーム11のフレーム11Aおよび11Bに沿うY方向と平行に支持部材43が設けられる。支持本体部21aはそれぞれの支持部材43にメインフレーム11のフレーム11Aと11Bと直交するX方向に架設される2本のユニット取付部材41および42に、支持本体部21aは接合部材46および47を介して取り付けられる。
図57Aおよび図57Bは第1基板支持ユニット421Aがスクライブ装置ガイド体30および第2基板支持ユニット421Bとともに基板搬入側へ移動して様子を説明する図である。図57Aのように基板搬入側のメインフレーム11に接続された支持ベルト450は第1基板支持ユニット421Aのベルト受け421bに支持され、第1基板支持ユニット421Aのプーリ421cおよび421dに掛けられた後、第1基板支持ユニット421Aの下方のプーリ451,第2基板支持ユニット421Bの下方のプーリ452に掛けられた後、第2基板支持ユニット421Bのプーリ421dおよび421cに掛けられ、第2基板支持ユニット421Bのベルト受け421bに支持された後、基板搬出側のメインフレーム11に接続されて張られる。
第1基板支持ユニット421Aを支持するフレーム11A側の支柱45とフレーム11B側の支柱45がガイドベース15に保持され、スクライブ装置ガイド体30の両端を支持する支柱28を保持するガイドベース15にリニアモータの可動子(図示せず)が取り付けられているため、リニアモータの駆動により、スクライブ装置ガイド体30が基板搬入側へ移動するとともに、第1基板支持部420Aの5台の第1基板支持ユニット421Aは基板搬入側へ移動する。
第1基板支持ユニット421Aは複数台(本実施例の説明においては5台)、所定の間隔を設けて配置され、スクライブ装置ガイド体30とともにメインフレーム11のフレーム11Aおよび11Bに沿うY方向へ移動する。
基板支持装置420の第2基板支持部420Bは、例えば、それぞれがスクライブ装置ガイド体30の移動方向と同方向に移動可能になった5つの第2基板支持ユニット421Bを備えている。この第2基板支持ユニット421Bは第1基板支持ユニット421Aから、吸着板421eと吸着板421eを昇降させるシリンダー421h、リニアガイド421f、シャフト421gを取り除いた構成であり、スクライブ装置ガイド体30に対して対称となるように、Y方向の取付け方向が逆になるように、フレーム11A側の支柱45とフレーム11B側の支柱45に支持され、それぞれの支柱がガイドベース15に保持されている。
スクライブ装置ガイド体30の両端を支持する支柱28を保持するガイドベース15にリニアモータの可動子(図示せず)が取り付けられているため、リニアモータの駆動により、スクライブ装置ガイド体30が基板搬入側へ移動するとともに、第2基板支持部420Bの5台の第2基板支持ユニット421Bが基板搬入側へ移動する。
図57Bに示すように第1基板支持ユニット421Aがスクライブ装置ガイド体30および第2基板支持ユニット421Bとともに基板搬入側へ移動すると、第1基板支持ユニット421Aの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体の下方に沈みこみ、第2基板支持ユニット421Bの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方から第2基板支持ユニット421Bのベルト受け421b上に現れてくる状態となる。このように、第1基板支持ユニット421Aが基板と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aは基板の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aにより不必要なクラックが派生するおそれはない。(以上、請求項8の作用)。
また、第2基板支持ユニット421Bがスクライブ装置ガイド体30および第1基板支持ユニット421Aとともに基板搬出側へ移動すると、第2基板支持ユニット421Bの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方へ沈みこみ、第1基板支持ユニット421Aの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方から第1基板支持ユニット421Aのベルト受け421b上に現れてくる状態となる。このように、第2基板支持ユニット421Bが基板と摺接することなくかつ基板に力を及ぼすことがない。したがって、カッターホイール62aは基板の内部に垂直クラックを生成するとき、カッターホイール62aにより不必要なクラックが派生するおそれはない。
このような構成の実施の形態3の基板分断システムの動作について、大判のガラス板を貼り合わせた貼り合わせ基板を分断する場合の一例を主に説明する。
大判のガラス基板が相互に貼り合わせられた貼り合わせマザー基板90を、複数のパネル基板90a(図60参照)に分断する際には、まず、図59に示すように、基板搬入側の端部から、搬送ロボット等によって本基板分断システムに搬入されて、第1基板支持部420Aの全ての第1基板支持ユニット421Aの支持ベルト450に貼り合わせマザー基板90を水平状態で載置する。
このような状態になると、貼り合わせマザー基板90は、実施の形態1と同様に、メインフレーム11のフレーム11Bに沿って配置された図示しない位置決めピンに当接するように、図示しないプッシャーによって押圧されるとともに、そのフレーム11Bとは直交する方向に沿って配置された図示しない位置決めピンに当接するように、図示しないプッシャーによって押圧される。これにより、貼り合わせマザー基板90は、基板分断システムにおける架台10内の所定の位置に位置決めされる。
その後、図59に示すように貼り合わせマザー基板90は、クランプ装置50の各クランプ具51によって、メインフレーム11のフレーム11Bに沿った側縁部がそれぞれクランプされるとともに、基板搬入側にフレーム11Bとは直交するように配置されたクランプ装置50の各クランプ具51によって、基板搬入側に位置する貼り合わせマザー基板90の側縁部がクランプされる。
貼り合わせマザー基板90の相互に直交する各側縁部がそれぞれクランプ装置50によってクランプされると、貼り合わせマザー基板90の側縁部をクランプしている各クランプ具51が貼り合わせマザー基板の自重によりほぼ同時に沈み込むため、貼り合わせマザー基板90が全ての第1基板支持ユニット421Aの支持ベルト450によって補助的に支持された状態とされる。
このような状態になると、スクライブ装置ガイド体30が、クランプ装置50によって水平状態にクランプされた貼り合わせマザー基板90における基板搬出側の側縁部上の所定位置になるように、基板搬入側にスライドされる。そして、スクライブ装置ガイド体30に設けられた第1光学装置38および第2光学装置39がそれぞれの待機位置からスクライブ装置ガイド体30に沿って移動することにより、それぞれ貼り合わせマザー基板90に設けられた第1アライメントマークと第2アライメントマークを撮像する。
スクライブ装置ガイド体30がスライドすることにより、第1基板支持部420Aが、基板搬入側端部にスライドされ、第2基板支持部420Bが基板搬入側へスライドされる。このとき、第1基板支持ユニット421Aのスクライブ装置ガイド体30側の支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方へ沈みこみ、第2基板支持ユニット421Bの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方から第2基板支持ユニット421Bのベルト受け421b上に現れてくるため、支持ベルト450は貼り合わせマザー基板90の下面と摺接しない。
次に、第1アライメントマークと第2アライメントマークの撮像結果に基づいて、図示しない演算処理装置によりクランプ装置50によって水平状態で支持された貼り合わせマザー基板90のスクライブ装置ガイド体30に沿った方向に対する傾き、分断開始位置と分断終了位置を演算によって求め、その演算結果に基づいて、貼り合わせマザー基板90の傾きに対応し上部基板分断装置60および下部基板分断装置70をX方向へ移動させつつ、スクライブ装置ガイド体30をY方向へ移動させて貼り合わせマザー基板90を分断する。(これを直線補間によるスクライブあるいは分断と呼ぶ)
この場合、図60に示すように、貼り合わせマザー基板90の表面および裏面にそれぞれ対向したカッターホイール62aを、各表面および裏面にそれぞれ圧接して転動させることにより、貼り合わせマザー基板90の表面および裏面にスクライブライン95が形成される。
貼り合わせマザー基板90は、例えば、上側ガイドレール31および下側ガイドレール32に沿った列方向に2つのパネル基板90aを、2列にわたって分断するようになっており、貼り合わせマザー基板90から4個のパネル基板90aを分断するために、パネル基板90aの側縁に沿って、上部基板分断装置60のカッターホイール62aおよび下部基板分断装置70のカッターホイール62aをそれぞれ圧接させて転動させる。
この場合、上部基板分断装置60のカッターホイール62aと、下部基板分断装置70のカッターホイール62aにより、各ガラス基板における各カッターホイール62aの転接部分にそれぞれ垂直クラックが生成されてスクライブライン95が形成される。しかも、各カッターホイール62aの刃先には、刃先の外周稜線に所定のピッチで突起部がそれぞれ形成されているために、各ガラス基板には、厚さ方向にガラス基板の厚さの約90%の長さの垂直クラックが形成される。
また、貼り合わせマザー基板90をスクライブするダイヤモンドポイントカッターやカッターホイールなどのスクライブカッターを振動させて、スクライブカッターによる貼り合わせマザー基板90への押圧力を周期的に変化させる機構を備えるカッターヘッドを用いてスクライブ方法も本発明の基板分断システムの貼り合わせマザー基板の分断に有効に適用される。
さらに、上部基板分断装置60のカッターホイール62aおよび下部基板分断装置70のカッターホイール62aをそれぞれ圧接させて転動させて貼り合わせマザー基板90から4枚のパネル基板90aを分断させるために、4枚のパネル基板90aの側縁部にスクライブラインを形成するスクライブ方法としては、図44で示すものとは別に実施の形態1の図19に示すスクライブ方法も本実施の形態2の基板分断システムに有効に適用することができる。
尚、上部基板分断装置60のカッターホイール62aおよび下部基板分断装置70によるスクライブ中、第1基板支持部420Aの全ての第1基板支持ユニット421Aと第2基板支持部420Bの全ての第2基板支持ユニット421Bは基板搬入側および基板搬出側へ移動するが、基板搬入側へ移動するとき、第1基板支持ユニット421Aのスクライブ装置ガイド体30側の支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方へ沈みこみ、第2基板支持ユニット421Bの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方から第2基板支持ユニット421Bのベルト受け421b上に現れてくる状態となり、基板搬出側へ移動するとき、第2基板支持ユニット421Bの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方へ沈みこみ、第1基板支持ユニット421Aの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方より第1基板支持ユニット421Aのベルト受け421b上に現れてくる状態となるため、支持ベルト450が貼り合わせマザー基板90の下面を摺接するおそれはない。
上述のスクライブ方法で貼り合わせマザー基板にスクライブラインを形成した後、図61に示すように、第2基板支持ユニット421Bの支持ベルト450によって、スクライブライン95が形成されたマザー貼り合わせ基板90が支持された状態で、スチームユニット部160が基板搬入側へ移動して、スクライブラインが刻まれた貼り合わせマザー基板90の表裏面全体に蒸気を吹きかけて、貼り合わせマザー基板90を完全に分断させるとともに、蒸気を吹きかけた後に貼り合わせマザー基板90の表裏面に残存する水分を基板付着物除去装置700で除去する。
スクライブラインが刻まれた貼り合わせマザー基板90の表裏面全体に蒸気を吹きかけることにより、カッターホイール62aによって形成されたスクライブラインは、マザーガラス基板1の表面部分が加熱されて体積膨張することによって、垂直クラックは、マザー基板の厚み方向に伸展し、貼り合わせマザー基板90が完全に分断される。
その後、図61に示すように、第2基板支持部420Bの全ての第2基板支持ユニット421Bの支持ベルト450上の貼り合わせ基板90から分断された全てのパネル基板90aが、基板搬出装置80の搬出ロボット140によって搬出されることにより、分断された基板93(端材)が支持される。
そして、基板搬出装置80およびスチームユニット部160が基板搬出側の端部に移動する。
その後、図62に示すように、スクライブ装置ガイド体30、第2基板支持部420Bおよび第1基板支持部420Aが基板搬出側にスライドされる。このとき、第2基板支持ユニット421Bのスクライブ装置ガイド体30側の支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方へ沈みこみ、第1基板支持ユニット421Aの支持ベルト450はスクライブ装置ガイド体30の下方より第1基板支持ユニット421Aのベルト受け421b上に現れてくるため分断された基板93(端材)の下面が支持ベルト450と摺接するおそれはない。
このため、第1基板支持ユニット421Aの支持ベルト450と第2基板支持部420Bの第2基板支持ユニット421Bの支持ベルトは分断された基板93(端材)の下面から、摺接することなく、順次、非接触状態となり、支持ベルト450による分断された基板93(端材)の支持が順次解除される。そして、分断された基板93(端材)は、クランプ装置50による保持が解除され、分断された基板93(端材)は、下方に落下する。この場合、下方に落下した分断されたマザー基板93(端材及びカレット)は、傾斜状態で配置されたガイド板によって案内されてカレット収容ボックス内に収容されるようになっている。
また、マザー基板が、鋼板等の金属基板、木板、プラスチック基板、およびセラミクッス基板、ガラス基板、半導体基板等の脆性材料基板である場合には、例えばレーザ光、ダイシングソー、カッティングソー、切断刃ダイヤモンドカッター等を用いたマザー基板の分断方法が用いられる。
さらに、基板にはマザー基板の他に、マザー基板同士を組み合わせて貼り合わせた貼り合わせ基板、異なるマザー基板を組み合わせて貼り合わせた貼り合わせ基板、マザー基板を組み合わせて積層させた基板が含まれる。
以上、図56〜図62を参照して、本発明の実施の形態3の基板分断システム400を説明した。
〈実施の形態4〉
以下、図63および図64を参照して、本発明の実施の形態4の基板製造装置を説明する。
図63は、本発明の実施の形態4の基板製造装置801を示す。
基板製造装置801は、分断された基板の端面部を面取りする基板面取りシステム2100を本発明の基板分断システム1、200および400のいずれか1台の基板分断システムに接続させたものである。
分断された単位基板を次工程以降の装置に搬送する場合に、分断された単位基板の端面部のエッジが欠けたり、微小なき裂が生じたりし、その欠けやき裂からクラックが単位基板全体に派生し、基板を破損する。しかし、基板製造装置801によれば、面取りシステムを本発明の基板分断システムに接続して単位基板の端面部のエッジを面取りすることで、基板の破損を防止することができる。
図64は、本発明の実施の形態4の基板製造装置802および基板製造装置803を示す。
基板製造装置802および基板製造装置803は、分断された基板のサイズ及びその表裏面と端面部の状況等を検査したり、その基板の機能を検査する検査システム2200を上述の基板製造装置801に組み込だものである。
分断された単位基板を次工程以降の装置へ搬送する場合に、分断された単位基板の端面部のエッジが欠けたり、微小なき裂が生じたりし、その欠けやき裂からクラックが単位基板全体に派生し、基板を破損する。しかし、基板製造装置802または基板製造装置802によれば、面取りシステムを基板分断システムに接続して単位基板の端面部のエッジを面取りすることで、基板の破損を防止することができる。
さらに、基板が単位基板に分断されるときに発生する粉(カレット粉)などで、基板表面に傷が付いたり、単位基板に形成されている電極が切断される。しかし、基板製造装置802または基板製造装置802によれば、検査システムを基板分断システムに接続して、キズや電極の切断などの基板の不良を早期に発見することができ、製品単位基板のコストを低減することができる。
尚、上述の実施の形態1乃至3の基板分断システムの動作の説明においては、ガラス基板を貼り合わせた貼り合わせマザー基板を分断する場合を一例として述べてきたが、これに限定されるものではない。例えば、分断される基板の種類や基板分断システムを構成する各装置の機能性を高めるためなどにより、上述の説明とは異なった動作を実施させる場合もある。
これまでの実施の形態1乃至3の説明においては、主に、ガラス基板が相互に貼り合わされた貼り合わせマザー基板を複数枚の表示パネルに分断する基板分断システムについて説明してきたが、本発明に適用できる基板はこれに限るものではない。
本発明の基板分断システムに適用される基板には、マザー基板が鋼板等の金属基板、木板、プラスチック基板、セラミックス基板や半導体基板並びにガラス基板等を包含する脆性材料基板等が含まれ、さらに、マザー基板を組み合わせて貼り合わせた貼り合わせ基板、異なるマザー基板を組み合わせて貼り合わせた基板、マザー基板同士を組み合わせて積層させた基板が含まれる。
また、脆性材料基板同士を貼り合わせた貼り合わせ脆性材料基板として、FPD(フラットパネルディスプレイ)に用いられるPDP(プラズマデイスプレイ)、液晶表示パネル、反射型プロジェクターパネル、透過型プロジェクターパネル、有機EL素子パネル、FED(フィールドエミッションディスプレイ)等のマザー基板の分断においても、本発明の基板分断システムが適用できる。
以上、図1〜図64を参照して、本発明の基板分断システムおよび基板製造装置を説明した。
〈実施の形態5〉
以下、図65〜図67を参照して、本発明の実施の形態5の基板分断方法を説明する。
例えば、図1を参照して説明した基板分断システム1によって、基板分断処理が実行される。
本発明の実施の形態5の基板分断方法によれば、貼り合わせマザー基板90の両面のそれぞれに一筆書きのスクライブラインを形成することができる。ここで、「一筆書きのスクライブライン」とは、貼り合わせマザー基板90から複数の単位基板を取り出すために形成される1本のみのスクライブラインを意味する。この一筆書きのスクライブラインは、この一筆書きのスクライブラインの始点から終点までスクライブカッタを貼り合わせマザー基板90から離すことなく、この一筆書きのスクライブラインの始点から終点まで貼り合わせマザー基板90への押圧状態を保持(維持)したままで、形成される。
上部基板分断装置60は、貼り合わせマザー基板90の上面(第1面)に、一筆書きのスクライブラインを形成する。下部基板分断装置70は、貼り合わせマザー基板90の下面(第2面)に、一筆書きのスクライブラインを形成する。
図65は、本発明の実施の形態による貼り合わせマザー基板90を分断する分断処理手順を示す。分断処理の実行は、例えば、基板分断システム1に含まれるコンピュータによって制御される。コンピュータは、上部基板分断装置60、下部基板分断装置70、スクライブ装置ガイド体30および基板指示装置20の移動を制御する。
以下、基板分断システム1によって貼り合わせマザー基板90を分断する手順をステップごとに説明する。
基板分断システム1によって貼り合わせマザー基板90を分断する手順は、スクライブ工程とブレイク工程とを包含する。なお、必要に応じて初期設定工程が実施される。
ステップ1101:初期設定工程が実施される。初期設定工程は、スクライブ工程を始める前に基板分断システム1の初期状態を設定する工程である。
初期設定工程が終了すると、処理はステップ1102に進む。
ステップ1102:スクライブ工程が実施される。スクライブ工程は、貼り合わせマザー基板90にスクライブラインを形成する工程である。スクライブ工程の詳細は後述される。
スクライブ工程が終了すると、処理はステップ1103に進む。
ステップ1103:ブレイク工程が実施される。ブレイク工程は、貼り合わせマザー基板90をスクライブラインに沿ってブレイクする工程である。
ブレイク工程が終了すると、処理は終了する。
以下、ステップ1102(図65参照)で実施されるスクライブ工程の詳細を説明する。
図66は、ステップ1102(図65参照)で実施されるスクライブ工程で用いられる貼り合わせマザー基板90の上面を示す。貼り合わせマザー基板90の上面には、スクライブ予定ラインが形成されている。上部基板分断装置60および下部基板分断装置70をスクライブ予定ラインに沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90上にスクライブラインが形成される。なお、貼り合わせマザー基板90の下面にも、貼り合わせマザー基板90の上面に形成されたスクライブ予定ラインに対応するスクライブ予定ラインが形成されている。
貼り合わせマザー基板90の上面に形成されたスクライブ予定ラインは、複数の直線(直線P1P2と、直線P2P3と、直線P4P5と、直線P6P7と、直線P8P9と、直線P10P11と、直線P12P13と、直線P13P2と、直線P14P15と、直線P16P17と、直線P18P19と、直線P20P21と、直線P3P12と、直線P12P22)と、複数の曲線(曲線R1〜曲線R11)とを有する。
基板分断システム1は、スクライブ予定ラインに沿ってスクライブラインを形成し、かつ貼り合わせマザー基板90をスクライブラインに沿ってブレイクすることによって、貼り合わせマザー基板90から単位基板1A、1B、1C、1Dを分断する。
単位基板1Aは、貼り合わせマザー基板90のうち、直線P2P3と直線P6P7と直線P13P2と直線P16P17とで囲まれた部分である。単位基板1Bは、貼り合わせマザー基板90のうち、直線P8P9と直線P12P13と直線P13P2と直線P16P17とで囲まれた部分である。単位基板1Cは、貼り合わせマザー基板90のうち、直線P2P3と直線P6P7と直線P18P19と直線P3P12とで囲まれた部分である。単位基板1Dは、貼り合わせマザー基板90のうち、直線P8P9と直線P12P13と直線P18P19と直線P3P12とで囲まれた部分である。単位基板1A、1B、1C、1Dは、互いに適当な間隔をあけて配置されている。
図67は、ステップ1102(図65参照)で実施されるスクライブ工程で実施されるスクライブ手順を示す。
以下、図66と図67とを参照して、スクライブ手順をステップごとに説明する。
ステップ1001:コンピュータは、所定の待機位置にある上部基板分断装置60が降下するように、また、下部基板分断装置70が上昇するように、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を制御する。上部基板分断装置60が、貼り合わせマザー基板90の上面から0.1mm〜0.2mmの位置にまで、下降し、下部基板分断装置70が貼り合わせマザー基板90の下面から0.1mm〜0.2mmの位置まで上昇すると、カッターホイール62aは、それぞれ貼り合わせマザー基板90の両主面の凹凸に十分に対応できるように貼り合わせマザー基板90を押圧する。上部基板分断装置60および下部基板分断装置70が、上側ガイドレール31および下側ガイドレール32に沿って移動される。
ステップ1002:スクライブラインの形成は、貼り合わせマザー基板90の外周縁部(領域ABCDと領域P2P3P12P13とで囲まれた領域)から始まる。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、各カッターホイール62aを点P1(マザー基板の外周縁部内の点)からスクライブ予定ラインに沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。
ステップ1003:単位基板の外側辺部に沿ってスクライブラインが形成される。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を直線P1P2と直線P2P3とに沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。
ステップ1004:貼り合わせマザー基板90の外周縁部にスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を曲線R1に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。各カッターホイール62aの軌跡が中心角90度の円弧(曲線R1)を描くように上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を移動させる。
ステップ1005:貼り合わせマザー基板90の外周縁部にスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を直線P4P5に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。
ステップ1006:貼り合わせマザー基板90の外周縁部にスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を曲線R2に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。各カッターホイール62aの軌跡が中心角90度の円弧(曲線R2)を描くように上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を移動させる。
ステップ1007:各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を単位基板間の領域内に移動させ、単位基板の内側辺部に沿ってスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を直線P6P7に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。
ステップ1008:貼り合わせマザー基板90の外周縁部にスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を曲線R3に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。カッターホイール62aの軌跡が中心角180度の円弧(曲線R3)を描くように上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を移動させる。
ステップ1009:各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を単位基板間の領域内に移動させ、単位基板の内側辺部に沿ってスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を直線P8P9に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。
ステップ1010:貼り合わせマザー基板90の外周縁部にスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を曲線R4に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。各カッターホイール62aの軌跡が中心角90度の円弧(曲線R4)を描くように上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を移動させる。
ステップ1011:貼り合わせマザー基板90の外周縁部にスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を直線P10P11に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。
ステップ1012:貼り合わせマザー基板90の外周縁部にスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を曲線R5に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。各カッターホイール62aの軌跡が中心角90度の円弧(曲線R5)を描くように上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を移動させる。
ステップ1013:単位基板の外側辺部に沿ってスクライブラインが形成される。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を直線P12P13に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。
ステップ1014:貼り合わせマザー基板90の外周縁部にスクライブラインを形成する。具体的には、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を曲線R6に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。各カッターホイール62aの軌跡が滑らかな曲線(曲線R6)を描くように上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を移動させる。
ステップ1015:制御部は、各カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を直線P13P2、曲線R7、直線P14P15、曲線R8、直線P16P17、曲線R9、直線P18P19、曲線R10、直線P20P21、曲線R11、直線P3P12および直線P12P22に沿って、これらの順番に移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。
ステップ1016:点P22でスクライブラインの形成が終了する。
上部基板分断装置60が所定の位置まで昇降し、下部基板分断装置70を所定の位置まで下降することによって、スクライブ工程が終了する。
ステップ1001〜ステップ1016で示すように、貼り合わせマザー基板90への各カッターホイール62aの押圧が途切れないようにカッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、点P1から点P22まで上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を移動させることによって、単位基板1A、1B、1C、1Dを貼り合わせマザー基板90から分断するためのスクライブラインを貼り合わせマザー基板90に形成する。したがって、貼り合わせマザー基板90への押圧の移動を停止することなく、単位基板1Aを貼り合わせマザー基板90から分断するためのスクライブラインと単位基板1Bを貼り合わせマザー基板90から分断するためのスクライブラインとを形成することができるため、スクライブラインを形成するためのスクライブ加工時間を短縮することができる。また、貼り合わせマザー基板90に形成されるスクライブラインは基板支持装置の移動などによる外的要因による力により貼り合わせマザー基板が分断されることを防止できる。さらに、スクライブライン形成中にマザー基板が2つ以上の部分に分断されにくいので、スチームユニット部で蒸気がふきかけられて分断された単位基板の分断面にカケ、ソゲ(斜めの分断面)などの不良が発生しにくくなる。
本発明のスクライブ手順によれば、第1方向に沿って形成されたスクライブラインと、第1方向とは異なる第2方向に沿って形成されるべきスクライブラインとが、曲線(例えば、2.0R〜6.0R)で繋がるように、単位基板1Aを貼り合わせマザー基板90から分断するための上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を曲線に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する。例えば、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70の移動方向が、直線P2P3に沿った方向から直線P4P5に沿った方向に変わる部分(曲線R1)では、カッターホイール62aを貼り合わせマザー基板90に押圧させつつ、上部基板分断装置60および下部基板分断装置70を曲線R1に沿って移動させることによって、貼り合わせマザー基板90の両主面にスクライブラインを形成する(図66参照)。
このように、第1方向に沿って形成されたスクライブラインと、第2方向に沿って形成されるべきスクライブラインとが曲線で繋がるように、貼り合わせマザー基板90への押圧を移動することができるため、第1方向から第2方向への各カッターホイール62aの方向転換によって生じる各カッターホイール62aへのダメージを低減することができる。
さらに、図14を用いて説明したように、サーボモータを含むカッターヘッド65を用いる場合には、カッターホイール62aに伝達させる荷重の加減の応答を速くできる。したがって、カッターホイール62aの押圧が、単位基板の内側辺部または単位基板の外側辺部から貼り合わせマザー基板90の外周縁部に移動した場合には、カッターホイール62aへの荷重を低減できる。さらに、貼り合わせマザー基板90の外周縁部上を各カッターホイール62aの押圧が移動しているときは、その他の部分を移動しているときと比べて、各カッターホイール62aへの荷重を低減できる。
具体的には、スクライブ予定ラインのうち、点線(直線P1P2、曲線R1、直線P4P5、曲線R2、曲線R3、曲線R4、直線P10P11、曲線R5、曲線R6、曲線R7、直線P14P15、曲線R8、曲線9、曲線R10、直線P20P21、曲線R11、直線P12P22:図66参照)上で各カッターホイール62aを移動させる場合には、各カッターホイール62aへの荷重を低減できる。
このように、サーボモータを含むカッターヘッド65を用いる場合には、各カッターホイール62aが貼り合わせマザー基板90をスクライブする時、貼り合わせマザー基板90への各カッターホイール62aの押圧を任意の場所で低減できるので、カッターホイール62aの摩耗、損傷等を抑制でき、カッターホイール62aを長期にわたって安定的に使用できる。
以上、図1〜図67を参照して、本発明の基板分断システム、基板製造装置および基板分断方法を説明したが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。