JP4237878B2 - 万線状凹凸模様を有する化粧材、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木目の「照り」による木肌感等を、人工的で技とらしくなく自然な感じに表現できる、化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、木目柄等有する化粧材が、シート、板材、或いはその他立体物等として、広く使用されている。そして、天然木材が有する独特の「照り」をも化粧材にて表現する為に、万線凹凸模様を設ける事が試みられている。照りは、着色インキの印刷で表現できる木目模様とは本質的に異なる、木材の視覚的特性の一つである光沢感である。それは、着色インキの印刷で表現できる木目模様は、木材切断面に入射した光が散乱した散乱反射光成分に該切断面固有の色成分が含まれ、それが切断面で面分布するからである。しかし、「照り」は、木材切断面に現れる細胞、繊維、導管等の多数の繊維質によって鏡面反射した鏡面反射光成分による。この反射光は鏡面反射である為、反射物体の色を反映せず、前記繊維質の部分部分の微妙な配向方向の違いによる鏡面反射光量の強弱が面分布となって現れて、「照り」となる。そこで、この鏡面反射光の面的強弱の分布模様を、従来は万線模様のパターンを設けて表現する事が試みられて来た訳である。
【0003】
以上の様な「照り」を表現する為に万線凹凸模様を設けた化粧材は、例えば、▲1▼特公平7−22989号公報、▲2▼特公平7−106625号公報、▲3▼特開平4−125199号公報等で提案されている。
▲1▼では、平行曲線群〔図18(A)及び(C)参照〕若しくは平行曲線群と平行直線群を組み合わせた線群〔図18(B)参照〕のパターンからなる万線凹凸模様を開示している。平行曲線群の代表例としては、正弦波、サイクロイド曲線、円弧の曲線単位を複数本互いに平行移動して配列したものを挙げている。また、線群のパターンを、輪郭線にて囲まれた複数の閉領域毎に、線の方向や形状を変えた万線凹凸模様等も挙げている〔図18(D)参照〕。
▲2▼では、前記図18(A)の様な、一定周期又は不定周期のウェーブ状曲線型の凹状溝を互いに平行に多数配列してなる平行曲線群凹凸模様の他に、図18(E)の様な、閉曲線で囲まれた区画領域内に同一方向に走る直線状凹状溝を互いに平行に多数配列してなる平行直線群からなる万線凹凸模様を挙げている。
▲3▼では、万線同士が完全平行では無い形態として、ウェーブ状曲線群からなる溝状凹凸模様にて、図19に示す様な、ウェーブ状曲線群を関数曲線からなり各曲線の関数パラメータを順次変化させ各曲線間の間隔が線方向に滑らかに変化させた万線凹凸模様とする事で、木目の照りをより自然なものとして表現できると、提案している。
そして、以上の様な従来の万線凹凸模様は、図18の(F)の斜視図に示す如く、いずれも単調な平行関係を有する連続の曲線等であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上の様に、特に天然木の照りを微細な溝状凹凸模様を設ける事で表現した化粧材が各種提案され、照り感は一応表現できる様になった。しかし、その照り感は、人工的に設けた万線凹凸による為に、天然木の照りと比べると不自然感が残った。それは、上記説明した様な従来の万線凹凸模様は、その全てに於いて、図18(C)及び(D)等の様に一部特殊な場合もあるが、それらも含めて、溝間の間隔は一定(完全平行)か、一定で無い場合でも滑らかに変化する規則性を有している。しもか、溝となる万線の長さは領域内で連続乃至は無限長を前提にしたからである。すなわち、図18(A)、(B)、図19は万線が無限長であり、また、図18(C)、(D)、(E)も、万線の長さ自体は有限長ではあるが、万線を、エンドレスに繋いだり〔図18(C)〕、或いは1つの閉領域内の全領域にわたって連続している〔図18(D)、(E)〕。更に、これら全てに於いて、(本発明の様に万線凹凸模様同士を立体的に重ね合わせて複合化した複合万線状凹凸模様では無く)単一の万線凹凸模様(高低の水準は図18(F)からも明白な様に2段階)のみで表現していたからであった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、独特の万線状凹凸模様により、特に木目の「照り」による木肌感等を、人工的で技とらしくなく自然な感じに表現できる化粧材と、その製造方法を提供する事である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで上記課題を解決すべく、本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材では、基材の表面に万線状凹凸模様が形成された層を有してなり、該万線状凹凸模様は、その平面視パターンが、互いに完全には重ならない、第1の万線状凹凸模様と第2の万線状凹凸模様との集合体からなり、第1の万線状凹凸模様及び第2の万線状凹凸模様の双方が、線長が有限長であり、かつ、その長さが不規則に異なる多数の線素を隣接する線素間に於いては、各線素の方向が一定の平均値と分散を有する分布からなる揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンからなり、且つ深さ方向の水準面が3段階か又は4段階からなるものである構成とした。
この様な万線状凹凸模様(これを複合万線状凹凸模様と呼ぶことにする)によって、平面視が単一の万線状凹凸模様であって、且つ高低の水準が2段階の従来の凹凸模様に比べて、人工的な技とらしさが減り自然な風合いを表現できる化粧材となる。例えば、木目の照り表現では、露骨さが無くなり自然な感じで照りが表現できる。また、第1と第2の万線状凹凸模様の各々による二種類の照りの分布も重複させて表現でき、複雑な照り表現もできる。
しかも、第1の万線状凹凸模様及び第2の万線状凹凸模様の双方が、前記のような揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンであるので、人工的な技とらしさが無く極めて自然な風合いを表現できる化粧材となる。
なお、本発明の化粧材は、前記構成に於いて更に、前記第1の万線状凹凸模様及び前記第2の万線状凹凸模様を形成する線素が、始点及び終点の両端を細く先鋭化した先端を有するものとできる。
【0007】
また、本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材の製造方法では、万線状凹凸模様が形成された層を有する化粧材の製造方法において、万線状凹凸模様を付与対象物に賦形する為の賦形版として、2段腐食により凹凸模様を賦形した賦形版を使用する。すなわち、2段腐食により、線長が有限長であり、かつ、その長さが不規則に異なる多数の線素を隣接する線素間に於いては、各線素の方向が一定の平均値と分散を有する分布からなる揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンからなる第1の万線状凹凸模様を版基材表面に腐食形成後、その上から更に該第1の万線状凹凸模様とは完全には凹凸模様が重ならない様に線長が有限長であり、かつ、その長さが不規則に異なる多数の線素を隣接する線素間に於いては、各線素の方向が一定の平均値と分散を有する分布からなる揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンからなる第2の万線状凹凸模様を腐食形成して、第1及び第2の万線状凹凸模様による少なくとも2段階の深さを有する複合化された複合万線状凹凸模様を形成した賦形版を使用して、付与対象物に第1の万線状凹凸模様及び第2の万線状凹凸模様からなる複合化された複合万線状凹凸模様を賦形する様にした。
しかも、第1の万線状凹凸模様及び第2の万線状凹凸模様の双方が、前記のような揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンであるので、人工的な技とらしい感じが無く、極めて自然な感じで照り等が表現できる様になる。
なお、本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材の製造方法は、前記方法に於いて更に、前記第1の万線状凹凸模様及び前記第2の万線状凹凸模様を形成する線素が、始点及び終点の両端を細く先鋭化した先端を有するようにできる。
【0008】
この様に、用いる賦形版として、版基材表面にその万線状凹凸模様を2段腐食で形成し、なお且つそれぞれの腐食で形成する万線状凹凸模様同士が完全には凹凸模様が重ならない様に腐食する事で、平面視で2種類の凹凸模様が部分部分で重なり合って深さ(高低)の水準は3段階又は4段階になることによって、凹凸形状が複雑化し、複合化した複合万線状凹凸模様を有する賦形版を使用する様にした。この事で、平面視が単一の万線状凹凸模様であって、且つ高低の水準が2段階の従来の凹凸模様に比べて、人工的な技とらしさが減り自然な風合いを表現できる化粧材が得られる様になる。例えば、木目の照り表現では、露骨さが無くなり自然な感じで照りが表現できる。また、第1と第2の万線状凹凸模様の各々による二種類の照りの分布も重複させて表現でき、複雑な照り表現もできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材、及びそのの製造方法について、実施の形態を説明する。
【0014】
〔2段腐食による賦形版〕
先ず、本発明の製造方法の特徴である、2段腐食による賦形版を図1の概念図で説明する。図1は、2段腐食によって第1及び第2の万線状凹凸模様を版基材表面に腐食形成して、複合万線状凹凸模様を有する賦形版を作製する方法を示す概念図である。
【0015】
先ず、図1(A)の如く、金属等からなる版基材21に感光性レジスト膜22を形成した後、最初の第1の万線状凹凸模様に対応した平面視パターンP1を、感光性レジスト膜22にレーザービームBを走査する等して露光する。そして、図1(B)の如く感光性レジスト膜22を現像した後、腐食して(感光性レジスト膜22は除去すれば)、図1(C)の如き、第1の凹凸模様31のみから成る1段腐食の賦形版23が得られる。なお、従来の技術として列記した万線状凹凸模様に使用した賦形版は、腐食が1回のみのこの1段腐食の賦形版23である。
【0016】
そして、本発明では更にもう一度腐食する。すなわち、図1(D)の如く、1段腐食の賦形版23上に形成した新たな感光性レジスト膜22aに、第2の万線状凹凸模様に対応した平面視パターンP2を、レーザービームBを走査する等して露光する。但し、第2の万線状凹凸模様は最初の第1の万線状凹凸模様とは完全には平面視パターンが重ならない様にする(一部ならば重なっても良い。平面視パターンにもよるが、一部とは大部分に近い事もあり得るし、ほんの僅かの事もあり得る。実際は図14や図15を参照)。そして、図1(E)の如く感光性レジスト膜22aを現像した後、腐食して(感光性レジスト膜22aは除去して)、図1(F)の如き、本発明の化粧材の製造方法で使用する複合万線状凹凸模様3を有する(2段腐食の)賦形版20が得られる。なお、これから付与対象物に賦形した場合は、その凹凸模様は凹凸が逆関係になる事は言うまでもない。
【0017】
図1(G)は、この様にして得られた賦形版20が有する、複合万線状凹凸模様3にて、第1及び第2の万線状凹凸模様が複合化した状態を概念的に示す斜視図である。なお、図1(G)の概念図或いは後述する図14で例示する賦形版20、或いは更に図15て例示する最終的な化粧材Dにおいては、この複合万線状凹凸模様3から、その元になった第1の万線状凹凸模様(或いはその平面視パターン)と第2の万線状凹凸模様(或いはその平面視パターン)とを完全に区分けして認識する事は凹凸模様にもよるが一般に難しい。しかし、複合万線状凹凸模様3を構成する多数の万線の一部には、区分けして認識できるものもある。この様な訳で、複合万線状凹凸模様3を概念的に斜視図で図示した図1(G)では、元になった第1及び第2の万線状凹凸模様は示していない。(但し、図15の化粧材Dでは、一部の線(溝)は示してある。)
【0018】
この様に、複合万線状凹凸模様では、完全にその元になった第1及び第2の万線状凹凸模様の平面視パターンを認識した上で、それが重なり合って腐食されたものであることは判別しずらい。しかし、本発明による複合万線状凹凸模様は、その特徴的形状として、2段腐食によって少なくとも3段階の水準の深さを有し、しかも第1と第2の万線状凹凸模様とが、完全には凹凸模様が重ならない模様である事として認識できる。
なお、二段腐食にて、形成される凹凸模様の深さの水準は、3段階、又は4段階となる。すなわち、1回目の腐食で腐食する量(深さ)と2回目の腐食で腐食する量(深さ)を同一にした場合には、1回目のみ腐食された箇所の深さと2回目のみ腐食された箇所の深さは同一となる為、複合万線状凹凸模様が成す水準面は、2回とも腐食された水準面、1回目のみ又は2回目のみ腐食された水準面、2回とも腐食され無かった水準面の計3段階となる。但し、もちろんの事、1回目と2回目でそれぞれの腐食量を異なるものとしても良く、この場合には、複合万線状凹凸模様が成す水準面は、1回目のみ腐食された水準面、2回目のみ腐食された水準面、1回目と2回目の両方とも腐食された水準面、2回とも腐食され無かった水準面の計4段階となり、深さ的にもより複雑な複合万線状凹凸模様となる。
また、第1、第2、及び第3の万線状凹凸模様を3回にわたって腐食する場合は、各回の腐食量が同量か否かによって、最低限4段階、最高で9段階の水準面が深さ方向に形成される。
そして、第1及び第2の万線状凹凸模様としては、従来公知の万線凹凸模様や、或いは特に木目の照り表現では好ましくは後述する「揺らぎ線分万線状凹凸模様」を使用する事が好ましい。
【0019】
〔賦形版による凹凸模様の賦形〕
この様にして得た賦形版は、従来公知の万線模様の場合と同様に、付与対象物である基材の材質等に応じて、エンボス版、成形型等として使用することによって、本発明の化粧材を得る。
【0020】
(1)化粧材に於ける付与対象物が、熱可塑性樹脂シート等で熱圧によって塑性変形可能の場合には、エンボス版として作製した賦形版によって、熱圧を加えて、賦形すれば良い。エンボスには、平版プレス機、ロールエンボス機等の公知の各種プレス、エンボス機を使用する。円筒状のエンボス版を使用するロールエンボス法は、付与対象物を長尺帯状シート等として連続生産出来るので生産性が良い。付与対象物への加熱加圧条件は、付与対象物の熱圧的挙動による異なるが、通常の熱可塑性樹脂の場合、軟化点又は熱変形温度と融点又は熔融温度との間の適当な温度に加熱し、エンボス版を押圧して賦形し、冷却して形状を固定する。
また、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂で塑性変形不可能の場合でも、その硬化前の固体で塑性変形可能な段階でエンボス版で熱圧又は圧を与えて賦形するか、液状段階で取り扱えるならば、エンボス版を成形型として使用して硬化させる(後で詳述する)等して、賦形できる。エンボス版による賦形は、通常、付与対象物がシート又は板状の場合に適する。
【0021】
(2)また、付与対象物が立体物で樹脂等の成形体である場合には、成形型の型面に複合万線状凹凸模様を形成しておいた成形型を賦形版として作製して、該成形型を使って、成形と同時にその表面に賦形する。成形方法は、例えば射出成形、キャスティング成形、圧縮成形等である。
【0022】
なお、(2段腐食で作製した)賦形版から直接に化粧材に複合万線状凹凸模様を付与する以外に、賦形版から一旦シート等に賦形したものを第二の賦形版として、この第二の賦形版を使用して化粧材に複合万線状凹凸模様を付与する様な、間接的な凹凸模様の付与方法でも良い。
例えば、支持体シートと転写層とからなる転写シートの支持体シートを第二の賦形版として使用する。すなわち、(2段腐食で作製した)賦形版から支持体シートに複合万線状凹凸模様を賦形し、この賦形された支持体シートによって、被転写体に転写移行する転写層の表面に複合万線状凹凸模様を転写と共に付与する方法等である。この場合、成形型内に転写シートを挿入して成形すれば、樹脂等の成形体の表面に成形と同時に複合万線状凹凸模様を適宜絵柄等と共に付与できる方法となる(射出成形では所謂射出成形同時絵付け方法に於ける転写方法)。
【0023】
次に、上記各種付与方法の中から、前記(1)で挙げた硬化性樹脂の未硬化液状段階にて賦形版を成形型として使用して硬化させる方法として、電離放射線硬化性樹脂を用いて、円筒状のエンボス版で連続帯状の基材シート上に電離放射線硬化性樹脂硬化物による複合万線状凹凸模様を連続形成する方法を更に詳述しておく。
【0024】
この方法は、特開昭57−87318号公報、特公昭57−22755号公報、特公昭63−50066号公報、特開平7−32476号公報等に開示されるものであって、賦形版(成形型)の凹凸形状を忠実に電離放射性硬化性樹脂の硬化物に賦形する方法である。基本的には、以下の工程からなる。
【0025】
▲1▼表面に目的とする形状と同形状且つ逆凹凸の凹凸形状(複合万線状凹凸模様)を形成した円筒形状の版胴(成形型としての賦形版)を用意し、これを軸芯の回りに回転させる。
▲2▼長尺帯状の基材シートを、該版胴の周速度と同速度で供給する。
▲3▼該基材シートと該版胴とを、その間に電離放射線硬化性樹脂の未硬化液状組成物を介して重ね合わせて密着させ、該液状組成物が該版胴の少なくとも凹部を完全に充填する様にする。
▲4▼その状態のままで電離放射線を照射して、該液状組成物を架橋、硬化させる。
▲5▼而る後に、基材シートを、それに接着し且つ版胴上の凹凸模様が賦形された電離放射線硬化性樹脂の硬化物と共に剥離除去する。
【0026】
以上の方法に於いて、円筒形状の版胴(型)としては、公知の凹版、グラビア版、エンボス版と基本的には、同様の材料、同様の構造、同様の製法によるものを用いれば良い。版の材料としては、通常は鉄、銅等の金属が用いられる。但し、版胴内部から紫外線或いは可視光線を照射する場合には、硝子、石英等の透明な材料を用いる。
版胴の軸芯の回りの回転駆動は、通常の輸転式グラビア印刷機、輪転式エンボス機等と同様な機構、方法を用いれば良い。基材シートの版胴への密着の為には、ゴム、金属等のローラ(圧着ローラ)で圧着する。又基材シートの版胴からの剥離にもゴム、金属等のローラ(剥離ローラ)で押さえて剥離する。基材シートは、長尺・帯状のものを用いる。此の様な基材シートは巻出ロール(供給ロール)から巻き出して、賦形後は巻取りロール(排紙ロール)で巻き取る。
【0027】
基材シートと版胴とを、その間に電離放射線硬化性樹脂の未硬化液状組成物を介して重ね合わせて密着させる態様としては、次の(1) 〜(3) がある。(1) 先ず基材シート上に液状組成物を塗布し、次いで該塗布面が版胴表面に向くようにして、該基材シートを該版胴に重ね合わせる。(2) 先ず版胴上に液状組成物を塗布し、次いで該版胴上の塗布面に基材シートを重ね合わせる。(3) 先ず版胴上と基材シート上との各々に液状組成物を塗布し、次いで該基材シートと該版胴とを各々の塗布面が対向する様にして重ね合わせる。
【0028】
版胴と基材シート間にある未硬化液状組成物への電離放射線の照射の態様としては、次の▲1▼と▲2▼がある。▲1▼電離放射線に対して透明な基材シートを選び(例えば、紫外線に対してはポリプロピレン基材シート、電子線に対しては薄葉紙を選択)、基材シート側から照射する。▲2▼電離放射線に対して透明な版胴を選び(例えば、紫外線に対して石英の版胴を選択)、版胴の内部から照射する。
【0029】
基材シートの材料は、▲1▼ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性樹脂ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂等の樹脂シート、▲2▼薄葉紙、上質紙、クラフト紙、和紙等の紙、▲3▼硝子、ビニロン、ポリエステル、セルロース等の繊維からなる不織布、或いは織布、▲4▼アルミニウム、鉄、銅等の金属箔等がある。なお、上記▲2▼〜▲4▼は、透明版胴内からの紫外線照射射、又は電子線等の高透過性放射線の場合のみ可能である。また、基材シートの厚さは通常20〜200μm程度のものを用いる。
【0030】
電離放射線硬化性樹脂としては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和結合、又は、エポキシ基等のカチオン重合性官能基を有するプレポリマー、モノマー、又はポリマー、或いはポリチオ一ル化合物からなり、これらを1種のみ又は2種以上適宜混合した組成物を用いる。組成物は、未硬化時に液状のものを用いる。
【0031】
前記分子中に重合性不飽和結合を有するプレポリマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類がある〔尚、本明細書では(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味で用いる。以下同様〕。前記分子中に重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル等の単官能(メタ)アクリル酸エステル類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)エチル等の不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、分子中に2個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等がある。
【0032】
分子中にカチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂等、脂肪環型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル系樹脂、スピロ系化合物等のプレポリマー等がある。
【0033】
以上の化合物を必要に応じ1種もしくは2種以上混合して用いるが、樹脂組成物に通常の塗工適性を付与するために、前記プレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記モノマー及び/又はポリチオールを95重量%以下とすることが好ましい。また、硬化物の可撓性、表面硬度等の物性を調節する為に前記プレポリマー、オリゴマー、モノマーの少なくとも1種に対して、以下の様な電離放射線非硬化性樹脂を1〜70重量%程度混合して用いることができる。電離放射線非硬化性樹脂としてはウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0034】
特に紫外線で硬化させる場合には前記電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤を添加する。分子中にラジカル重合性不飽和結合を有する化合物に対しては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルメウラムモノサルファイド、チオキサントン類等がある。
分子中にカチオン重合性官能基を有する化合物に対しては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、ジアリルヨードシル塩等がある。又、必要に応じて更に、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。
【0035】
以上の電離放射線硬化性樹脂組成物の未硬化液状組成物を版胴、或いは基材シートに塗工するには公知の各種方法、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、Tダイコート等の方法を用る。特に版胴塗工の場合はインキパン中の液状組成物に、回転する版胴を浸漬させる(所謂ドブ浸け)も可能である。
【0036】
尚、ここで電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギーを有するものを意味し、紫外線、可視光線、X線、電子線、α線等があるが、通常紫外線、又は電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源が使用される。電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。
【0037】
〔複合万線状凹凸模様〕
次に、本発明の化粧材に於ける複合万線状凹凸模様ついて更に説明する。先ず、一般に万線凹凸模様とは、図2の断面図で概念的に示す如く、溝状の凹部1と凸部2とからなる万線凹凸模様8であり、平面視パターンは図18や図19で示した如き模様となる。
なお、本発明で言う万線状凹凸模様の「平面視パターン」とは、図2の一般的な万線凹凸模様8によって説明すれば、該万線凹凸模様を、該万線凹凸模様8表面の包絡面Eに投影して射影を得、該包絡面Eを平面に展開(それにともなって包絡面に投影された万線凹凸模様の射影も平面化される)して得られる平面模様のことである。特に図2の如く、化粧材表面の包絡面Eが平面の場合は、包絡面(xy平面乃至はそれと平行な面)Eに万線凹凸模様8を投影したものが平面視パターンそのものとなる。
また、化粧材においては、万線としての線の部分は、万線凹凸模様が外表面に存在する場合では、通常は線の部分が凹部1に該当し、線と線との間隙部分が凸部2に該当するが、この逆でもよい。
【0038】
そして、本発明による複合万線状凹凸模様の場合でも同様に、化粧材においては、万線としての線の部分は、複合万線状凹凸模様が外表面に存在する場合では、通常は線の部分が凹部に該当し、線と線との間隙部分が凸部に該当するが、この逆でもよい。但し、万線が複合化されている為に、第1の万線状凹凸模様での線と線との間隙部分が凸部であっても、その部分の一部又は全部が第2の万線状凹凸模様での線の部分と重なれば、重なった部分は元の表面の高さでは無く、中間的な深さの凹部となる。もちろん、該凹部は第1及び第2の万線状凹凸模様の両方で線の部分となって重なった部分による凹部に対しては浅く凸部と見做す事もできる。
【0039】
この様に本発明に於ける複合万線状凹凸模様は、図3の平面図で概念的に示す如く、第1と第2の万線状凹凸模様とが、完全には両凹凸模様の平面視パターンP1及びP2が互いに完全には重ならない様に複合化した万線状凹凸模様である。図3にて、符号41a〜41cが第1の万線状凹凸模様31の線素の平面視パターンP1、符号42a〜42cが第2の万線状凹凸模様32の線素の平面視パターンP2である。第1の万線状凹凸模様31と第2の万線状凹凸模様32とから複合万線状凹凸模様3が形成される。なお、図3では、有限長の線素によって万線を例示したが、無限長の場合もある。
そして、本発明にて、完全には凹凸模様の平面視パターンが重ならないとは、図3の如く、線素41aと線素42aの如く互いに重なり合っても一部であり交差していたり、線素41bと線素42bの如く互いに重なり合い線素42bが線素41bの内部に包含されている等しても互いの中心線が一致せずズレていたり、線素41cと線素42c(或いは線素41bと線素42b線素)の如く互いに重なり合っても線素の長さが異なっていたり、或いは、図示はしないが或る一つの線素同士としては互いに全く重なり合わないが、その線素が伸びる方向(すなわち万線の伸びる方向)が異なる、等の事を指す。なおもちろんだが、多数の線素によって表現される万線としては、そのうちの一部(おそらく極僅かの少数)の1又は複数の線素同士が完全に重なり合っているものを排除するものでは無い。一部の線素での完全に一致した重なり合いは、場合によっては偶然に生ずる事もあり得るからである。
また、図3の如く平面視パターンP1、及びP2の位置関係にある複合万線状凹凸模様の断面形状は、図15の如く3段階の水準面、或いは図示しないが4段階の水準面を成す。
【0040】
第1及び第2の万線状凹凸模様として、それぞれに使用する万線状凹凸模様は、従来公知の万線凹凸模様でも良い。例えば、従来技術で説明した図18や図19に示した様な万線凹凸模様である。或いは、特開平10−16375号公報で開示のコンピュータ画像処理で作成したヘアラインパターンも万線凹凸模様として使用できる。これらの万線凹凸模様を第1と第2の万線状凹凸模様として使用するには、元は全く同じ模様を使用する場合でも、(模様全体を)回転させたり、拡大(縮小)倍率を変えたりする事で、ズラして使用すれば完全には重ならない様に出来る。或いは、元から異なる凹凸模様のものを使用すれば良い。
【0041】
本発明に於ける複合万線状凹凸模様としては、好ましくは、第1と第2の万線状凹凸模様同士で異なる凹凸模様のものを使用するのが複雑度が増し、自然な感じや複雑さが表現でき望ましい。第1と第2の万線状凹凸模様同士に異なる凹凸模様を採用する場合、その異なり具合であるが、それは目的とする意匠表現によって異なる。例えば全く異なる場合では図18(A)と図18(C)の万線凹凸模様を使用する等である。
【0042】
特に、木目の照りを表現する場合では、例えば、図18(A)の万線凹凸模様を第1及び第2の万線状凹凸模様として、元は同一のものを(模様全体を)回転させたり拡大(縮小)倍率を変えたりする事でズラして使用したり、似てはいるが異なる万線凹凸模様(例えば、万線の伸びる方向が完全同一では無いが略同一である模様)を使用すれば、より自然な感じとなる。
【0043】
なかでも、より自然な木目の照りを表現できる複合万線状凹凸模様として好ましいのは、万線の伸びる方向が完全同一では無いが略同一である万線状模様として、第1の万線状凹凸模様及び第2の万線状凹凸模様の双方に、線長が不規則に異なる多数の線素を、近傍の線素間に於いては、揺らぎを有する平行関係となる様に配置したパターンから成る揺らぎ線分万線状凹凸模様を使用したものである。
【0044】
なお、本明細書の記載では、特に揺らぎ線分万線状凹凸模様を区別する場合は「揺らぎ線分万線状凹凸模様」と記載し、単に「万線状凹凸模様」と称するときは、図18や図19等で説明した「従来公知の万線凹凸模様」や「揺らぎ線分万線状凹凸模様」を包含した凹凸模様として記載する。また、この様な万線状凹凸模様を第1及び第2の凹凸模様として2段腐食で複合化した模様を、「複合万線状凹凸模様」する。
【0045】
なお、複合万線状凹凸模様として、第1及び第2の万線状凹凸模様に加えて、更に第3(乃至はそれ以上の)万線状凹凸模様を三次元的に複合させても良い。すなわち、この場合は、第2の万線状凹凸模様を腐食した版基材上に、更に第3の万線状凹凸模様を露光し、現像したレジストパターンを形成し、3回目の腐食を行えば良い。かくして得られる複合万線状凹凸模様は、その平面視パターンが、第1、第2、及び第3の万線状凹凸模様の平面視パターンを各々が完全には重ならない様にして重ねられたパターンを成し、且つ深さ方向の水準面は、第1回目、第2回目、及び第3回目の各々の腐食深度如何によって、4段階〜9段階となる。同様にして、第4、第5、・・・・・・の万線状凹凸模様を複合して行くこともできる。但し、より多くの万線状凹凸模様を複合させる程、工程数も増え、また凹凸模様となった版基材上への感光性レジスト膜形成、及び万線状凹凸模様の露光も難しくなって来る。
【0046】
次に、揺らぎ線分万線状凹凸模様について更に説明する。
【0047】
(揺らぎ線分万線状凹凸模様)
図4に示す如く、揺らぎ線分万線状凹凸模様9では、図18や図19の如き従来公知の万線凹凸模様に見られた様に、任意領域内に於いて線が連続していないで有限長である。つまり領域内で無限長を想定した連続線が互いに平行に多数配列したパターンでも、閉曲線でも無く、有限長の線分(線素4)を、しかもその長さを不規則に変えた上に、隣接する線素間で必ずしも完全平行に揃ってはいないが略平行となる様な揺らぎによる不規則性を有した平行関係で配置したパターンからなる。従って、図4からも分かる様に、揺らぎ線分万線状凹凸模様においては、或る線素の終端の延長上に別の線素の先端が位置するとは限らない。しかし、各線素はその走る方向が全くランダムに配置されているのではなく、図4に例示した揺らぎ線分万線状凹凸模様としての万線状凹凸模様3が波状を示す如く、線素の集合体の平均として見た場合には、波等の或る方向性、つまり異方性を有する。
なお、揺らぎ線分万線状凹凸模様による複合万線状凹凸模様の場合でも、通常は複合万線状凹凸模様が外表面に存在する場合など、線素4の部分が凹部1に該当し、線素と線素との間隙部分が凸部2に該当するが、この逆でもよい。
【0048】
次に、図5の概念図で、揺らぎ線分万線状凹凸模様に於ける特徴の一つである、揺らぎを持った平行関係での線素の配置について説明する。同図は、線素4が配置される仮想面Pの小領域について、該仮想面(上の任意ポイント)が有する互いに平行な方向ベクトル場に於いて各ベクトルを、その向きに連ねて得られる線、すなわちベクトル場の流線を複数の線5として図示してある。仮想面Pは平面である。但し、実際の化粧材に於いて複合万線状凹凸模様を有する面(包絡面)は平面以外にも曲面や折れた面等があり得る。また、隣接する線5同士は同図の場合では平行である。もちろん、より広い領域で離れた線5同士では平行関係とは限らない。しかし、非平行関係でも、小領域でみれば平行関係が成立する。そして、線5上の或る点Qに於ける方向ベクトルはVq→であり、同じ線5上で点Qから離れた点Rに於ける方向ベクトルはVr→である。〔なお、ベクトルは文字上に横矢印を付して本来は表すが、ここでは便宜上、文字の右側に付してある〕方向ベトクルは二次元ベクトルである。方向ベクトルは、もちろん、線素を配置する仮想面全領域ではランダムでは無く、例えば、波状等と任意の異方性が定義されるベクトルである。また、ここでは、それぞれの線5は、互いに平行に図示したが、図示された線5と線5との間にも、例えばそれらの中間値とした方向ベクトルが存在するが、説明上、離散的に線5を描いてある。
なお、この様な平行な複数の線5は、従来公知の万線凹凸模様に於ける万線と考えても良い。平易に説明すれば、有限長さ揺らぎ万線状凹凸模様は、従来公知の万線凹凸模様に於ける万線(線5)に対して、不規則な長さの複数の線素4を平均値が万線(線5)に一致する様にして線素の走行方向に所定の分散を持たせ、万線に対する平行関係に揺らぎを持たして配置して、万線状凹凸模様としてのパターンとしたものである。
【0049】
そして、図5の如く、仮想面Pに配置された各線素4a〜4d等は、それぞれの線長が一定ではなく不規則である。しかも、小領域で見た場合に、各線素は揺らいだ平行関係にあり、おおよそ平行である。つまり、各線素の持つ方向ベクトルは、仮想面Pが持つ平行方向ベクトル場に対して揺らいでいるが、大略は一致している。つまり、各線素(の方向ベトクル)が走る形状は、仮想面Pの線5に沿っているか、或いはずれていても大略は沿った形状である。従って、各線素5はこの点では規則性を持つ(仮想面Pの方向ベクトルはランダムではなく異方性が或る為、この異方性による規則性を持つ)。
なお、線素は、図5の線素4a及び4bで例示する様に、線素同士は必ずしも分離独立している必要はなく、一部が接触していても良い。
【0050】
なお、図4に示す概念図では、図6(A)でも示す様に各線素4の線幅(太さ)は同じで、その始点から終点まで均一な太さとしたが、図6(B)に示す様に、始点及び終点の両端を細く先鋭化しても良い。また、線幅も、不規則、或いは線長に応じて短い場合は細く、或る長さ以上では一定又は略一定等とある程度の規則性を持たせても良い。特に、両端を細く先鋭化すると、線素が突然終了した事による不自然さを防げる。但し、先鋭化した先端は滑らかな丸まっていても良く、鋭角でも良い。
【0051】
以上の説明した様に、揺らぎ線分万線状凹凸模様は、少なくとも▲1▼線素が隣接する線素同士の平行関係が揺らいだ平行関係にあり、各線素の方向が一定の平均値と分散を有する分布をしているという不規則性が加味された規則性が有る点と、▲2▼線素が無限長の連続線ではなく線長が有限長で且つ不規則である点に、特徴がある。この為、揺らぎ線分万線状凹凸模様は、異方性の点では従来の連続万線による凹凸模様の「万線凹凸模様」とは類似しているが、図12に例示の具体例からも分かる様に、そのパターンは万線が線素からなること、及び揺らぎ等による不規則性の点で全く異質である。
【0052】
ところで、揺らぎ線分万線状凹凸模様は、上記▲1▼及び▲2▼以外の不規則性を備えていてもよい。例えば、凹凸の高低差、線幅、線長と線幅との比率、線素が分布する面密度等である。また、▲1▼の線素の線長の不規則性も、一定の長さの平均値を中心に所定の分散で分布する揺らぎを持つ不規則性でも良い。これら、各種不規則性を更に付与する事で、木目照り感はより自然に表現できる。
【0053】
揺らぎ線分万線状凹凸模様が、全体として示す平均化した万線の異方性(の形状)の一つは、図18(A)或いは図8(A)に示す波形であり、波形は、樹木を成長方向に斜め又は平行に切断した木肌面に於ける木目の照り感の表現に好適なパターンである。もちろん、揺らぎ線分万線状凹凸模様は、特に木目の照り感の表現に好適になる事を意識したものではあるが、その他の意匠表現にも当然使用できる。揺らぎ線分万線状凹凸模様の線素の走る向きを、部分部分で変えたパターンとすれば、表面の部分部分の領域で異なる鏡面反射光量を持たせた意匠表現の化粧材にできる。もちろん、該パターンは、意匠表現に応じて任意のパターンとすれば良い。
【0054】
従って、揺らぎ線分万線状凹凸模様は、図8(A)に示す波形以外にも、例えば、図8(B)の如き略直線の全面が一方向のみの異方性、或いは、図8(C)の如き螺旋状の異方性等と、その異方性のパターンは任意である。但し、図8(D)の如く、各線素は線長が不規則で有るが向きも完全に不規則で、異方性が無いものは対象外である。図8(D)では、或る微小領域に於ける照りが他の領域と区別されず、全面均一な照りとなる。また、従来の万線凹凸模様として説明した図18(A)〜(E)、及び図19の各種万線凹凸模様も、線素を配置する際の方向ベトクル場(の流線)としても良い。
【0055】
次に、図9の概念図を用いて、鏡面反射光量の大小と揺らぎ線分万線状凹凸模様との関係を説明する。図9(A)及び(C)は、照明光源の入射角と観察者の視線方向とを或る特定の組み合わせに固定した場合の天然木板の或る面に於いて表現すべき鏡面反射光量の大小を、スカラー値で示した図であり、領域a1のそれは1.05、領域a2では2.35、領域a3では0.95である。この値は、天然木板に於ける木材繊維の配向方向と相関を持つ。なお、照明光Lは光源Lsから入射角θで面に入射し、観察者は面の法線方向Nに位置するO1か、或いは、鏡面反射角θ方向のO2のいずれかである。O1の位置で観察すると、鏡面反射画像のネガパターンを、又はO2の位置で観察すると鏡面反射画像のポジパターンを測定(観察)することになる。そして、図9(B)は、図9(A)に対応して割り付けた揺らぎ線分万線状凹凸模様の一例である。すなわち、図9(B)では、スカラー値が小さい領域、即ち鏡面反射性の高い領域a1やa3では、万線状凹凸模様4の向きは大略縦方向としてy軸方向からの角度を少な目にし、また、スカラー値が大きい領域、即ち拡散反射性の高い領域a2では、万線状凹凸模様4の向きを大きく左右に波状に振らして、y軸方向からの角度を大き目にしてある。この様に、揺らぎ線分万線状凹凸模様は、表現すべき鏡面反射光量の大小のパターンに応じて、線素の向き、或いは更に線素の密度や線素の幅等を変化させた模様とすれば良い。なお、各領域間に引かれた線分は便宜上描いたもので、領域間で鏡面反射光量は連続的に滑らかに変化する。但し、意匠表現次第では、鏡面反射光量が領域間で不連続に変化しても良い事はもちろんである。
【0056】
なお、図8及び図9に於いては、平行な点線(つまり或る線素の終端の延長上に次の線素の始点が来て、点線同士の平行関係に揺らぎが無い)で複数の線素を図示しているが、これは単なる図示に於ける便宜の為である。
【0057】
次に、図10〜図12により、実際の揺らぎ線分万線状凹凸模様の一例を説明する。図10は、線素を配置する仮想面の方向ベクトル場の流線7、即ち線素の平均方向の一例で、板目等の木目等に適用できる方向ベクトルの一例である。そして、図11は図10の方向ベクトルと組み合わせ得る木材切断面模様として、板目面に現れる年輪模様6の一例である。そして、図12は、実際に図10の方向ベクトルに対して、線素4を配置して得られたパターンによる、揺らぎ線分万線状凹凸模様9の具体例を示す部分拡大図である。
【0058】
図12の様に、揺らぎ線分万線状凹凸模様9は、従来の万線凹凸模様に比べて、人工的感触が極めて少ない。例えて言えば、図12の揺らぎ線分万線状凹凸模様は、実際の照りの面分布を持たせる為に波うっている事が異なる他は、あたかも実物のラワン合板の表面に現れる導管溝の拡大図の如くであり、極めて自然な感触のパターンである。
【0059】
以上説明した様な揺らぎ線分万線状凹凸模様を作成する方法としては、例えば次の様にして作成できる。その一つは、コンピュータによる画像合成で得る方法である。仮想面上の異方性を持った方向ベトクルは、従来の万線凹凸模様同様に得られる。或いは、実際の天然木の板を多数の方向から写真撮影して、板面の明るさの濃淡として、表面の光沢分布(明るさと、明るくなる方向)をサンプリングし、それを元に方向ベクトルを決めても良い。この際、方向ベクトルを決めるには、特開平10−287033号公報で開示した様に、光沢分布木材の繊維の配向性を示す「繊維もぐり角」を演算により求めて、方向ベクトルを決めても良い。
【0060】
そして、線素の線長を不規則にするには、仮想面に配置する時に所定の平均値と分散を持った分布でランダム化して配置し、また、平行関係に揺らぎを持たせるには、例えば、配置済の線素をフラクタル処理して変形させたり、例えば図10の様な平行流線群上に一旦配置済の線素をその中心を回転軸として所定の平均値と分散を持った回転角度分布でランダムにわずかに回転させたりすれば良い。なお、平行関係に揺らぎを付与する場合、正規分布の様な線素の操作すべき座標値に対して、或る中心値が最も確率が大きく、両側に離れる程小さくする様にしても良いが、或る中心値に対して両側に或る幅を持った範囲内で一様な確率になる様にしても良い。
【0061】
(万線状凹凸模様の大きさ)
次に、図7は、(1回目又は2回目の腐食として形成する場合の)揺らぎ線分万線状凹凸模様等の第1又は第2の万線状凹凸模様31又は32の大きさを説明する概念図である。なお、複合万線状凹凸模様では、これらが重なった(深さがより深い所も出来た)凹凸模様となる。
【0062】
揺らぎ線分万線状凹凸模様等の万線状凹凸模様31、32は、溝状の凹部1と、凸部2とからなるが、凹部1の幅w1と凸部の幅w2とは、用途により異なるが、それぞれ通常1〜1000μmの範囲である。1μm未満であると照りの再現効果が不十分であり、また、1000μmを超える場合は、各線素が目視で識別できる程度に目立ってしまう。もちろん、各線素を識別出来る程度に目だ立たせる意匠表現もあり得るが、木目の照りの再現には、線素は目立たない方が良い。従って、木目の照りの再現の場合には、w1及びw2の幅は、5〜100μm、より好ましくは5〜50μmの範囲が良い。なお、揺らぎ線分万線状凹凸模様等では、図4〜図6等による説明からも分かる様に、w1とw2とは必ずしも同一値とは限らない。
また、凹部の深さ(凹部と凸部との高低差)は、通常1〜100μm程度であるが、木目の照り表現の場合は、好ましくは5〜50μmの範囲とするのが良い。なお、凹部の深さも、w1及びw2の大きさが大きい場合は深くしたり、或いは深さ単独で独立に不規則に変化させても良い。
【0063】
なお、揺らぎ線分万線状凹凸模様等の万線状凹凸模様、或いは複合万線状凹凸模様において、凹部(或いは凸部)の横断面形状は、概念図の図7の如き四角形形状の場合は、木目の照りの表現等の独特の光沢感を表現する場合には、底面による鏡面反射を活かせるので、好ましい形状である。しかし、凹部及び凸部の横断面形状はこれ以外の形状でも良い。例えば、目視出来る程度の複合万線状凹凸模様の場合などでは、その凹部の横断面形状を角が丸くなった四角形や半円や三角等その他形状としても良い。また、大きさ次第では、腐食や賦形の際に角が丸みを帯びる事もある。
また、複合万線状凹凸模様或いは万線状凹凸模様に於いて、凹部を線と見立て模様を作るか、凸部を線と見立てて模様を作るかは、任意であり。
【0064】
〔複合万線状凹凸模様による再現テクスチュア〕
代表的には木目板の「照り」であるが、特に限定はない。例えば、石板、織布等のテクスチュア等の表現でも良い。特に、第1及び第2の双方に揺らぎ線分万線状凹凸模様を採用した場合では、木目板の照り等は好適である。なお、揺らぎ線分万線状凹凸模様による場合には、ヘアラインのテクスチャア表現にも適している。
【0065】
〔複合万線状凹凸模様の実際〕
ここで、微妙に異なる揺らぎ線分万線状凹凸模様を、第1及び第2の万線状凹凸模様として作成する一つの具体的方法を図13の概念図で説明する。先ず、図13(A)の如き、所望の年輪模様6を切断面に有する板材を用意する。そして、この切断面が呈する照りの分布(照りの方向と量)を、多数の方向から写真撮影して、板面の明るさの濃淡分布としてサンプリングして、それを元に、コンピュータによる仮想的な三次元空間内に定義した、木材の成長方向に配向した多数の繊維束からなる三次元樹木モデルの切断面に現れる繊維束の切断面との成す角度として定義する「繊維潜り角」の分布として一旦求める。そして、この繊維潜り角から、図10の様な方向ベクトルを演算で求める。そして次に、この方向ベクトル場によって、線素の配置密度を適宜調整して、線素を仮想面にランダムに配置する。次に、配置された各線素それぞれに対して、その線上の位置座標について、フラクタル処理を行って、線素を変形させて平行関係に揺らぎを付与すれば、図13(B)で概念的に示す揺らぎ線分万線状凹凸模様の平面視パターンの一方が出来る。
他方の揺らぎ線分万線状凹凸模様の平面視パターンは、同じ方向ベクトル場によって同様に揺らぎ線分万線状凹凸模様を作成する。但し、ランダマイズに使用する乱数系列は異なるものを使用すれば、図13(B)の左右で示す如き、相互に微妙に異なる第1、第2の万線状凹凸模様の平面視パターン31、32ができる。なおこの際第1と第2の平面視パターンを構成する各線分を、例えばその重心を中心に、少しランダム化した角度で回転操作をする事も好ましい。回転角度は例えば最大でも1度以内でランダム化する。そして、これら平面視パターン31、32同士は、その万線の伸びる方向が完全同一では無いが略同一で、互いに揺らぎの分だけばらついている。
【0066】
この様にして作成した万線状凹凸模様の平面視パターンは、コンピュータ上の画像データとして作成しておき、該画像データによってレーザビームの強弱(乃至はオンオフ)を変調しつつ走査して、版基材上の感光性レジスト膜上に直接露光して、現像、腐食工程を行うダイレクトエッチング法で、賦形版を作製する。或いは、該平面視パターンを写真フィルム(原版)原稿として作成しておき、この原稿を予め感光性レジスト膜を形成した版基材上の該レジスト膜に密着させて、水銀灯で露光し、現像、腐食を行う通常のエッチング法で賦形版を作成する。
【0067】
そして、図14は、複合万線状凹凸模様を賦形する為の賦形版の一例として、第1及び第2の万線状凹凸模様の両方に微妙に異なる揺らぎ万線状凹凸模様の平面視パターンを使用し、両平面視パターンを部分的に重ね合わせた場合の賦形版20の賦形面の凹凸模様を示す斜視図である。なお、図14では、線画による図面表示で見やすい様に、凹凸の段差は強調し且つ側面は垂直面として断面長方形としてある。この図では、1回目と2回目の腐食深度を同一とした為、凹凸の段差は3つの水準面、F1、F2、F3からなる。
【0068】
そして、図15は本発明で実際に得られる化粧材Dに於ける複合万線状凹凸模様3の或る様子を示す斜視図である。図15の化粧材Dに於ける万線状凹凸模様3は、図14で示した賦形版20同様に、第1及び第2の万線状凹凸模様の両方に微妙に異なる揺らぎ万線状凹凸模様の平面視パターンを使用し、両平面視パターンを部分的に重ね合わせた場合の一例である。また、木目の照り表現を目的に作成したものである。但し、化粧材に於いては、賦形側を観察側とすれば、賦形版とは凹凸関係が逆関係となっている。
図15の如く、本発明で得られる化粧材Dでは、互いに深さの異なる水準面V1や水準面V2を有する溝が多数見られる。第1及び第2の万線状凹凸模様の双方の線部分の平面視パターンの重なった部分は、例えば深い水準面V1の輪郭で表現される溝となる。また、第1又は第2の万線状凹凸模様の何方か片方の線部分のみで互いに線部分同士が平面視パターンに於いて重ならない部分は、例えば浅い水準面V2の輪郭で表現される溝となる。そして、いずれの万線状凹凸模様の線部分にも平面視パターンが該当し無い部分は、化粧材の最上面を成す水準面V3となる。この化粧材Dに於ける水準面V1、V2、V3は、賦形版20に於ける水準面F1、F2、F3に対応する。
なお、図15でも図14同様に、線画による図面表示で見やすい様に、凹凸の段差は強調し且つ側面は垂直面として断面長方形としてある。但し、図15は、実際に木目模様の化粧板を使用する為に使用した複合万線状凹凸模様に使った、二つの揺らぎ線分万線状凹凸模様の平面視パターンから、三次元コンピュータグラフックスによって、それらパターンを部分的に重ね合わせて仮想的に二段腐食により賦形版を作成し更に付与対象物に該賦形版から賦形して得られた複合万線状凹凸模様の画像に基づいて、線画として見やすい様に描き直した図面である。
【0069】
〔化粧材の構成〕
以上、複合万線状凹凸模様と、その付与方法を各種説明したところで、次に、本発明独特の複合万線状凹凸模様が付与された化粧材について、その材料、層構成等について説明する。
【0070】
(複合万線状凹凸模様を形成する基材)
化粧材の基材として、賦形版から複合万線状凹凸模様を付与する付与対象物としての基材としては、特に限定はなく、その用途及び形状等により、樹脂、金属、セラミックス、或いはこれらの積層物や混合物等の複合物が使用される。例えば樹脂では、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等があり、硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、多官能アクリレート系、エポキシ系等の電離放射線硬化性樹脂等がある。また、金属ではアルミニウム、銅、鉄等がある。また、セラミックスでは、ガラス等がある。
これらには前記した如く、熱可塑性樹脂等にはエンボス版として賦形版を使用したり、硬化性樹脂や金属には、成形型として賦形版を使用したりして、万線状凹凸模様を形成する。
【0071】
なお、これらの基材は、複合万線状凹凸模様が付与されてなくても、化粧材の基材として使用できる。また、化粧材の構成においては、これらの基材に複合万線状凹凸模様を付与したものに、さらに積層する等して複合して使用し得る裏打ち用基材(複合万線状凹凸模様は付与出来ないか付与しずらいもの)として繊維質基材がある。例えば、薄葉紙、上質紙、コート紙、和紙、リンター紙、クラフト紙等の紙類や、織布、不織布等の布類である。
化粧材の形状がシートや板の場合には、通常、基材はシート(フィルム)や板の単層、又はこれらの積層体で使用される。
【0072】
本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材の製造方法で製造する化粧材、及び本発明の化粧材としては、上記説明した特徴を有する複合万線状凹凸模様を有しておれば、その層構成、材料構成、形状等は特に限定されない。それらの点については、従来公知の各種化粧材と同様で良い。複合万線状凹凸模様の位置は、化粧材の表側面や裏側面等の表面、或いは内面等と任意である。もちろんだが、複合万線状凹凸模様は、それによる反射光を利用し得る程度に隠蔽されない位置とする。
【0073】
そこで、先ず、本発明の製造方法で得る事ができる化粧材、及び本発明の化粧材について、その幾つかの形態について、図16及び図17に断面図として例示する。
【0074】
図16(A)及び(B)に示す万線状凹凸模様を有する化粧材Dは、その基本形とでも言える構成のもので、基材11の片面に万線状凹凸模様3を有する構成である。複合万線状凹凸模様3は基材の表側面に有っても良いし〔図16(A)〕、裏側面に有っても良い〔図16(B)〕。これら於いて、基材は例えば、シートや板、樹脂成形体等である。最も単純な例では、基材11が透明な樹脂フィルムからなる基材シートで、その片面に複合万線状凹凸模様3のみが装飾処理として施されている化粧シートの形態での化粧材である。
次に、図16(C)に示す化粧材Dの一構成は、図16(A)の構成に対して、複合万線状凹凸模様3を表側面として、基材11の裏側面に、模様層12a及び隠蔽層12bがこの順に絵柄層12として、形成された構成である。この場合は、基材11は透明である。
【0075】
次に、図16(D)に示す化粧材Dの一構成は、化粧シート等として使用される場合であり、裏側から順に着色樹脂層13、透明接着剤層14、絵柄層12、透明保護層15が積層され、着色樹脂層13と透明接着剤層14との界面に複合万線状凹凸模様3が有る構成である。また、図16(E)は、図16(D)の構成に於いて、更に透明保護層15の表側面に導管模様等の(複合万線状凹凸模様よりも大きい)凹凸模様16を有する構成である。なお、着色樹脂層13に金属箔粉や二酸化チタン被覆雲母の鱗片状粒子等からなる光輝性のある顔料を添加しておくと、複合万線状凹凸模様3による光の異方性反射と着色樹脂層13の光の拡散反射との相乗効果により、より明瞭な照りを再現できる。
【0076】
(複合万線状凹凸模様以外の装飾)
本発明で製造する化粧材、及び本発明の化粧材は、基材が複合万線状凹凸模様のみで装飾処理されたものでも良い。例えば、図16(A)及び(B)の構成の場合で、基材11がそれ自体には何も装飾処理が施されていない透明樹脂の基材の場合である。しかし、もちろんだが、本発明独特の複合万線状凹凸模様は、例えば木目の照りの自然な再現に極めて効果的である。特に木目の照り表現には、複合万線状凹凸模様(の元となる第1及び第2の万線状凹凸模様)として、揺らぎ線分万線状凹凸模様が好適である。従って、この様な場合には、例えば木目等の絵柄を付与する等のその他の装飾処理を組み合わせる事が意匠表現上好ましい。そこで、化粧材に付与され得る各種装飾処理について説明する。
【0077】
化粧材に付与される(複合万線状凹凸模様以外の)装飾処理としては、▲1▼処理対象の基材が樹脂やガラス等の透明性が有る場合は基材自体に着色剤を添加して着色(透明又は不透明)する処理、▲2▼模様印刷や金属薄膜形成、▲3▼複合万線状凹凸模様以外の凹凸模様賦形等がある。これら各種の装飾処理は組み合わせて使用する事もある。また、化粧材の形態においては、これら装飾処理の処理対象物が、複合万線状凹凸模様の付与対象物と同じ場合も有るし、異なる場合もある。異なる場合は、それら対象物を積層する等して化粧材としての形態とする〔図16(D)及び(E)参照〕。
【0078】
例えば、上記▲1▼の装飾処理では、図16(A)及び(B)に於いて、その基材11に着色剤を添加する形態がある。或いは、図16(D)及び(E)の化粧材の一構成要素である着色樹脂層13である。これらの場合、処理対象物と付与対象物は同一である。また、着色樹脂層13は、複合万線状凹凸模様の付与対象物たる基材でもある。
基材が樹脂等の場合には、その着色剤は、例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(或いは染料も含む)、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等である。着色は透明着色、不透明(隠蔽)着色いずれでも良い。なかでも、複合万線状凹凸模様が形成された面に接する層中には、真珠光沢(パール)顔料等の光反射量が多い顔料を添加すると、複合万線状凹凸模様の効果を強調できる。同様に、複合万線状凹凸模様が形成された面に光反射性の金属薄膜層を形成するのも同様な効果が得られる。
【0079】
また、上記▲2▼の装飾処理の例では、図16(C)の模様層12a及び隠蔽層12bからなる絵柄層12、図16(D)及び(E)の化粧材の一構成要素である透明保護層15に対する絵柄層12等の、印刷等による形成等である。図16(D)及び(E)の化粧材の場合では、絵柄層12は通常は、透明保護層15を基材(基材シート)として、その表面に形成された後、シート状の着色樹脂層13と透明保護層15とを、間に例えば2液硬化型ウレタン樹脂等からなる透明接着剤層14を介して積層する事で得られる。従って、この場合、処理対象物と付与対象物は別物である。絵柄層は印刷インキ層や金属薄膜層等である。
【0080】
絵柄層形成の為の印刷や塗工に用いる印刷インキ(或いは塗料)は、例えば、バインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等を、1種又は2種以上を混合して用い、これに前記▲1▼で列記した様な公知の着色剤等を添加した物を用いる。
印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等の公知の印刷法で行う。絵柄が全ベタの場合は、グラビア塗工等の公知の塗工法を用い塗料にて形成する事もできる。
金属薄膜層形成は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用い、真空蒸着、スパッタリング等の方法で製膜して形成する。該金属薄膜層は、全面に設けても、或いは、部分的にパターン状に設けて良い。
絵柄層の模様としては、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等がある。特に、本発明での複合万線状凹凸模様による意匠表現として、木目の照りの表現は極めて好適でありので、絵柄層の模様としては、木目模様は好ましい模様である。例えば、杉、松、欅、檜、チーク、オーク等の木目柄との万線状凹凸模様との組み合わせが好適である。模様は、基材の表側面、裏側面、表裏両面、或いは、多層構成の基材では層間の場合もある。
【0081】
(複合万線状凹凸模様以外の凹凸模様)
また、上記▲3▼の装飾処理の例では、図16(D)の化粧材の一構成要素である透明樹脂層15に対する、(複合万線状凹凸模様よりも大きい)凹凸模様16の賦形である。凹凸模様16は、例えば木目の導管、石板表面凹凸模様(花崗岩の劈開面等)、布表面のテクスチュア等の凹凸を表現する。この場合は、処理対象物と付与対象物は別物である。なお、凹凸模様16が木目導管の場合には、更に公知のワイピング法(特公昭58−14312号公報等参照)等によって、着色インキを充填する装飾処理もある。
【0082】
また、図17の要部拡大図で概念的に例示する様に、複合万線状凹凸模様3よりも小さい微細凹凸模様17の賦形もある。図17の微細凹凸模様17は、複合万線状凹凸模様3と同一面に形成した例だが、他の面の場合もある。微細凹凸模様17は、例えばサンドブラスト等により形成する砂目模様状やマット面、或いはヘアライン等の凹凸である。特に、図17の様に、微細凹凸模様17を複合万線状凹凸模様3と同一面に付与すると(同図では微細凹凸模様17を複合万線状凹凸模様3の凸部2の面の他に凹部1内部にも付与してある)、複合万線状凹凸模様3の鏡面反射性を抑制気味にして照り感を若干抑える等と、複合万線状凹凸模様の意匠感を調整できる。
なお、揺らぎ線分万線状凹凸模様による複合万線状凹凸模様の場合は、該複合万線状凹凸模様自体を、ヘアラインの意匠表現として使用する事もできる。
【0083】
なお、複合万線状凹凸模様に対する、それよりも大きい凹凸模様、それよりも小さい微細凹凸模様と区別して説明したが、少なくとも複合万線状凹凸模様と同一面にその他の凹凸模様を形成する場合は、複合万線状凹凸模様の凹凸が暈けて消失してしまわない様であれば良い。例えば、同一面への付与で幅が同じ様であっても深さが浅ければ複合万線状凹凸模様の効果の消失は防げる。また、複合万線状凹凸模様の付与面と異なる面に、その他の凹凸模様を形成するのであれば、複合万線状凹凸模様の効果を消失せず、且つその他の凹凸による効果も得られるものであれば、その凹凸は複合万線状凹凸模様の凹凸の同程度の大きさのものであっても良い。
【0084】
以上の、複合万線状凹凸模様以外の凹凸模様の形成は、形成する対象物により、例えば、サンドブラスト加工、ケミカルマット処理、ヘアラン加工等の付与方法によれば良い。また、図17の様に、複合万線状凹凸模様と同一面の場合には、複合万線状凹凸模様を付与するエンボス版等の版面状にそれらが組合わさった凹凸を形成したものを使用して付与しても良い。
【0085】
(上塗り層)
また、装飾処理としては、上記▲1▼〜▲3▼以外に化粧材の表面に上塗り層を設ける処理もある。上塗り層は無色透明又は有色透明層で、塗装感や着色による意匠感等の表現に使用される。もちろん、上塗り層はも、この他にも、表面の耐久性の付与の目的でも使用される。但し、複合万線状凹凸模様が表面の有る場合には、上塗り層は、複合万線状凹凸模様の凹凸がそれによって埋没しない程度の厚さ(例えば3μm程度)とする。但し、複合万線状凹凸模様の凹凸が埋没しても、表面での鏡面反射は期待できないが、凹凸界面を挟む層間に屈折率差や、或いは下側層が金属薄膜層や光輝性顔料を有する等で光反射性であれば、それらによる内部界面反射を利用して、万線状凹凸模様の効果を得ることも可能である。上塗り層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーに、必要に応じ、紫外線吸収剤、着色顔料、体質顔料、滑剤等を添加した塗料を塗工して形成する。
【0086】
(その他)
以上、図16及び図17による化粧材を一例として、本発明で得られる化粧材の基本的構成を説明してきたが、該化粧材の構成は、これら説明に限定されるものではない。該化粧材は、その層構成、材料、装飾処理の組み合わせ等は従来公知の化粧材同様の各種の構成があり得る。
【0087】
〔化粧材の用途〕
本発明で製造される化粧材の用途は、特に限定されず、その従来に無い凹凸模様を活かして、各種用途に用いられ得る。例えば、壁面、天井、床等の建築物の内装建材用途、或いは、外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の外装建材用途、窓枠、扉、手摺、敷居、鴨居等の建具類の表面化粧材用途、箪笥等の家具やテレビ受像機等の弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧材用途、自動車、電車等の車両、航空機、船舶等の各種乗物の内装材用途、或いは、化粧品容器や小物入れ、包装シート等の各種包装容器及び材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途に用いられ得る。そして、化粧材は、シートや板、立体形状物品等の各種形状で使用される。なお、複合万線状凹凸模様も含めた装飾面は、平面の他に曲面等でも良い。
【0088】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳述する。
【0089】
(万線状凹凸模様のパターンの作成)
先ず、万線状凹凸模様の元になる第1及び第2の万線状凹凸模様の平面視パターンとして、図12に例示した様なパターンを、天然の欅板目木板断面の照りのサンブリングとコンピュータを利用した画像の人工合成とにより次の様にして作成した。天然木の照りのサンプリングは、図9(C)で説明した様に、光源Lsからの照明光の入射角θを45°に固定し、観察者は、木目板の法線方向O1に固定し天然木板を水平面内に於いて法線Nを中心として30°ピッチで回転させて、多数の方向から写真撮影して照り分布を得た。そして照り分布からコンピュターで繊維潜り角を演算して求め、繊維潜り角から、図10に示す様な仮想面の方向ベトクルの面分布を得た。
【0090】
次に図13で説明した様に、仮想面に線素をランダムに配置し、配置された線素の位置座標について中点変位法によるフラクタル処理を行った。この際、仮想面の異方性は、全体的には一方向(図11の図面上下方向を主軸とする)で波うった異方性であるで、主軸に直交方向の座標値に対してのみ、フラクタル処理を行った。変形量は結果を見ながら適度な量に調整した。次いで、線素の幅(太さ)を、中央は太くし、先端と終端は細くし、中央部の太さもランダムにした。そして、図12に示す様な揺らぎ線分万線状凹凸模様の2値画像からなるパターンを作成した。これを、第1の万線状凹凸模様の平面視パターンP1とした。
【0091】
次に、上記にて使用したのと同一の方向ベトクルの面分布を使用して、使用する乱数系列を変えて同様にして揺らぎ線分万線状凹凸模様を作成した。但し、この際、更に線素に対する回転操作(平均0度で正負に分布する最大1度(で最小は−1度))のランダム回転を行って、更に平行関係に揺らぎ処理を行った。そして、図12に示す様な(上記のものとは微妙に異なる)揺らぎ線分万線状凹凸模様の2値画像からなるパターンを作成した。これを、第2の万線状凹凸模様の平面視パターンP2とした。第2の万線状凹凸模様は、第1の万線状凹凸模様とは、全体的な万線の伸びる方向は同じだが、構成する線素の長さ、幅、形状、位置が異なる。
【0092】
次いで、図1で説明した如く2段腐食で上記合成した平面視パターンP1、P2を用いて、アルゴンレーザー露光によるダイレクトエッチング法によって、版基材として円筒状の鉄芯の表面に銅メッキ層を形成したものに、凹凸を直接形成し賦形版とした。賦形版上の凹凸は、複合万線状凹凸模様の元となった揺らぎ線分万線状凹凸模様の平面視パターンの線素に対応する部分が、凸部(或いは最深では無い凹部)を成す。1回目と2回目の腐食の腐食深度は同一とし、1回の腐食で形成した万線状凹凸模様に於ける線素は、中央部での最大幅は、40〜60μm、線長は最大3mm、凹凸の高低差(深さ)は30〜40μmである。腐食液は塩化第二鉄水溶液を用い、凹凸模様の水準面は、図14の如く3段階(F1、F2、F3)のものを得た。なお、賦形版は、1回目の腐食前のみサンドブラスト処理をして、微細凹凸模様を版基材の全面に形成した。
【0093】
そして、図16(C)の如き構成の化粧材を作るべく、厚み100μmのポリプロピレン系のオレフィン系熱可塑性エラストマーフィルムを基材11として、そのコロナ処理面に対して、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーの樹脂とするビヒクルに対して弁柄及びカーボンブラックを主成分とする着色顔料等を添加した絵柄インキで欅板目の模様層12aを、また、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーの樹脂とするビヒクルに対して弁柄、イソインドリノン及びチタン白を主成分とする着色顔料を添加したインキで、その上の全ベタの隠蔽層12bをグラビア印刷して、木目柄の絵柄層12を形成した。なお、印刷版は、万線状凹凸模様の平面視パターンをサンプリングしたものと同じ板目木板を原稿として写真製版して作成した。次いで、印刷面の反対面に対して、上記賦形版を用いて熱圧を加えて、図15に示す様な複合万線状凹凸模様3を賦形して形成して、化粧材Dとしての化粧シートを得た。
得られた木目模様の化粧材は、複合万線状凹凸模様によって、従来の万線凹凸模様では表現出来なかった落ち着いた極めて自然な感じの天然木に近い照りが表現されていた。
【0094】
【発明の効果】
▲1▼本発明によれば、人工的な技とらしく、鋭くギラギラした感じでは無く、落ち着いたより自然な感じで実物の木目の照りに近い感じで表現できる化粧材を製造できる。また、付与される複合万線状凹凸模様に独特の、従来に無い自然な表面反射模様が醸しだす風合い等を活かした意匠表現ができる。
なお、従来の2段腐食として、同じ万線状凹凸模様で腐食時の線幅を変えて、一本の線となる凹部の中を常に2段階の深さにする技術はあった。しかし、この場合は、万線状凹凸模様が成す凹凸模様の種類は1種類であり、本発明の様な模様の複合化による効果は得られない。
▲2▼また、第1及び第2の万線状凹凸模様の双方が、平面視パターンに於いて、その万線の伸びる方向が完全同一では無いが略同一とした賦形版を使用すれば、例えば木目の照り表現では、照りの方向やその面分布は単一の万線状凹凸模様による表現と略同一だが、微妙に異なる第2の万線状凹凸模様も有る為に、分布の輪郭がぼやけ気味となり、照りも落ち着いた感じとなる。この為、単一の万線状凹凸模様による表現に比べて、ソフトな感じとなり露骨さが減る。従って、木目の照り表現では、より自然な感じで照りが表現できる。
▲3▼更に、第1及び第2の万線状凹凸模様の双方が、その平面視パターンに於いて、その万線の伸びる方向が完全同一では無いが略同一とする場合に、更にそれら万線状凹凸模様に揺らぎ線分万線状凹凸模様を採用した場合には、実物の木目の照りに近い感じを、鋭くギラギラした感じでは無く、落ち着いたより自然な感じで表現できる。しかも、揺らぎ線分万線状凹凸模様同士を複合化する事で、単一の揺らぎ線分万線状凹凸模様にて所々に線素の面密度が密(又は疎)になり黒っぽく(又は白っぽく)なる場合でもそれを目立たなくして、より自然な感じで木目の照り等を表現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧材の製造方法で使用する賦形版と複合万線状凹凸模様とを、該版への凹凸模様形成方法で説明する概念図。
【図2】万線状凹凸模様を一般的な(1段腐食の場合で)概念的に説明する断面図。
【図3】複合万線状凹凸模様にて第1及び第2の万線状凹凸模様の平面視パターンの重なり合いを概念的に説明する平面図。
【図4】揺らぎ線分万線状凹凸模様を概念的に説明する平面図。
【図5】揺らぎ線分万線状凹凸模様の平面視パターンを形成する線素の、平行関係に付与された揺らぎ(不規則性)を説明する概念図。
【図6】揺らぎ線分万線状凹凸模様となる平面視パターンの線素の形状を説明する概念図。
【図7】揺らぎ線分万線状凹凸模様等の万線状凹凸模様の断面の大きさを説明する概念図。
【図8】揺らぎ線分万線状凹凸模様の異方性の各種例を示す概念図。
【図9】揺らぎ線分万線状凹凸模様で、照り等に面分布を持たせた一例を示す概念図。
【図10】揺らぎ線分万線状凹凸模様で、板目等の柾目に対する方向ベクトルの一例を示す概念図。
【図11】図10の揺らぎ線分万線状凹凸模様と組み合わせる、板目の年輪模様の一例を示す概念図。
【図12】図10の方向ベクトルに対する揺らぎ線分万線状凹凸模様にて、その線素の平面視パターンの具体例を示す部分拡大図。
【図13】板目の年輪模様から微妙に異なる揺らぎ線分万線状凹凸模様を第1と第2の各々の万線状凹凸模様の平面視パターンとすべく作製する過程の説明図。
【図14】賦形版の実際の複合万線状凹凸模様(二つの揺らぎ線分万線状凹凸模様を使用)を示す斜視図(概念図)。
【図15】化粧材に付与された実際の複合万線状凹凸模様(二つの揺らぎ線分万線状凹凸模様を使用)を示す斜視図(概念図)。
【図16】本発明の製造方法で得られる化粧材について、層構成の幾つかを例示する断面図。
【図17】複合万線状凹凸模様より更に小さい微細凹凸模様が更に複合した形態を概念的に例示する断面図。
【図18】従来の万線凹凸模様の各種例を説明する説明図。
【図19】従来の万線凹凸模様の他の例を説明する説明図。
【符号の説明】
1 凹部(溝状凹部)
2 凸部
3 複合万線状凹凸模様
4、4a〜4d 線素
5 近傍では平行関係にある仮想面の方向ベクトルを連ねた線
6 年輪模様
7 線素を配置する仮想面の方向ベクトル(を連ねた線)
8 従来の万線凹凸模様
9 揺らぎ線分万線状凹凸模様の平面視パターン(P1、P2)
11 基材
12 絵柄層
12a 模様層
12b 隠蔽層
13 着色樹脂層
14 透明接着剤層
15 透明保護層
16 (複合万線状凹凸模様よりも大きい)凹凸模様(導管模様等)
17 (複合万線状凹凸模様よりも小さい)微細凹凸模様(砂目模様等)
21 版基材
22、22a 感光性レジスト膜
23 1段腐食の賦形版
20 賦形版
31 第1の万線状凹凸模様の平面視パターン(P1)
32 第2の万線状凹凸模様の平面視パターン(P2)
41a〜41c 第1の万線状凹凸模様の線素(P1)
42a〜42c 第2の万線状凹凸模様の線素(P2)
a1〜a3 或る面の領域
D 化粧材
F1、F2、F3 賦形版に於ける水準面
L 照明光
Ls 光源
N 法線方向
O1、O2 観察者
P 線素を配置する仮想面
P1 第1の万線状凹凸模様の平面視パターン
P2 第2の万線状凹凸模様の平面視パターン
Q 仮想面の方向ベトクルを表す線上の点
R 仮想面の方向ベトクルを表す線上の点
Vq→ 点Qに於ける仮想面の方向ベクトル
Vr→ 点Rに於ける仮想面の方向ベクトル
V1、V2 化粧材に於ける溝の水準面
V3 化粧材に於ける最表面の水準面
w1 凹部幅
w2 凸部幅
θ 入射角
Claims (4)
- 基材の表面に万線状凹凸模様が形成された層を有してなり、該万線状凹凸模様は、その平面視パターンが、互いに完全には重ならない、第1の万線状凹凸模様と第2の万線状凹凸模様との集合体からなり、第1の万線状凹凸模様及び第2の万線状凹凸模様の双方が、線長が有限長であり、かつ、その長さが不規則に異なる多数の線素を隣接する線素間に於いては、各線素の方向が一定の平均値と分散を有する分布からなる揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンからなり、且つ深さ方向の水準面が3段階か又は4段階からなる複合万線状凹凸模様である、万線状凹凸模様を有する化粧材。
- 前記第1の万線状凹凸模様及び前記第2の万線状凹凸模様を形成する線素が、始点及び終点の両端を細く先鋭化した先端を有することを特徴とする請求項1に記載の万線状凹凸模様を有する化粧材。
- 万線状凹凸模様が形成された層を有する化粧材の製造方法において、万線状凹凸模様を付与対象物に賦形する為の賦形版として、2段腐食により、線長が有限長であり、かつ、その長さが不規則に異なる多数の線素を隣接する線素間に於いては、各線素の方向が一定の平均値と分散を有する分布からなる揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンからなる第1の万線状凹凸模様を版基材表面に腐食形成後、その上から更に該第1の万線状凹凸模様とは完全には凹凸模様が重ならない様に線長が有限長であり、かつ、その長さが不規則に異なる多数の線素を隣接する線素間に於いては、各線素の方向が一定の平均値と分散を有する分布からなる揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンからなる第2の万線状凹凸模様を腐食形成して、第1及び第2の万線状凹凸模様による少なくとも2段階の深さを有する複合化された複合万線状凹凸模様を形成した賦形版を使用して、付与対象物に第1の万線状凹凸模様及び第2の万線状凹凸模様からなる複合化された複合万線状凹凸模様を賦形する、万線状凹凸模様を有する化粧材の製造方法。
- 前記第1の万線状凹凸模様及び前記第2の万線状凹凸模様を形成する線素が、始点及び終点の両端を細く先鋭化した先端を有することを特徴とする請求項3に記載の万線状凹凸模様を有する化粧材の製造方法。
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