JP4011699B2 - エンボス化粧材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンボス化粧材の最表面に使用される透明シート基材の薄膜化を可能とするエンボス化粧材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンボス化粧材には種々なエンボスパターンが使用されるが、中でも木目柄の導管溝パターンはエンボスパターンの代表的なものであり、天然木材の有する木目導管断面をリアルに再現することによって質感、高級感、意匠性を高めた化粧材が広く利用されている。これらは、一般に天然木材板の木目導管断面に相当する部分の凹凸模様がエンボスされたものである。導管溝の外観をより天然のものに近づけるため、より好ましくはエンボスによって形成された凹陥部にワイピング等の手法によって濃度のある着色材(インキ等)が充填されている。
一般に、エンボス化粧材の製造に使用される従来のエンボス版の版深(凸状部の高さといいかえてもよい)は、天然の導管溝の外観を再現するため100μm以上ある。従ってエンボス時に使用される基材シートの厚みは少なくとも100μmを必要としている。
さらに、近年、所謂、ダブリングエンボス(着色シート基材上に透明トップシート基材を熱融着で積層すると同時に透明トップシート基材にエンボスする方法)が多用されるようになり、しかも、それに使用される透明トップシート基材を熔融押出し成型し、インラインで冷却ローラーをエンボス版としてエンボスを行う製造方法が実施されるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この場合、エンボス加工が施される透明トップシート基材には、押出し成型時の効率化、材料コストの低減化から、80μm以下の厚みが望まれている。従ってエンボス版の版深も80μm以下にせざるを得ないが、単に版深を下げたのでは、エンボスによる意匠効果が弱まってしまうという問題がある。この傾向は、オーク系の木目導管柄の場合に特に顕著である。
本発明は、前述の問題点に鑑みてなされたもので、透明トップシート基材の厚みを低減し、浅い版深のエンボス版を使用しても、これまでの厚い透明トップシート基材に深いエンボス版を用いて製造されたエンボス化粧材と同等の意匠効果のあるエンボス化粧材の製造方法の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明では、天然木材板が有する導管パターンと該導管パターンを囲む導管縁取りパターンのデジタル画像データの作成工程と、レジスト感光液が塗布されたエンボスシリンダー面に前記導管縁取りパターンのデジタル画像データをレーザー光で出力(露光)して、現像して前記導管縁取りパターン部のみ非レジスト部とした上で、第1次腐食を行い、レジスト剥離を行い導管縁取り凹陥部を形成する第1フォトエッチング工程と、前記導管縁取り凹陥部が形成されたシリンダー面にレジスト感光液を塗布し、前記導管縁取り凹陥部と見当を合わせて前記導管パターンのデジタル画像データをレーザー光で出力(露光)して、現像して前記導管縁取り凹陥部の内部に形成された前記導管パターン部のみレジスト部とした上で、第2次腐食を行い、レジスト剥離を行い、周辺に導管縁取り凹陥部を有する導管凸状部を形成する第2フォトエッチング工程とからなるエンボスシリンダー加工工程と、前記エンボスシリンダーによって透明トップシート基材を熱プレスするか、若しくは前記エンボスシリンダー面に紫外線又は電子線硬化性樹脂液を塗布、充填し、必要に応じ透明トップシート基材を積層し、該トップシート基材を通して紫外線または電子線照射で前記紫外線又は電子線硬化性樹脂液を硬化後エンボス版から離型することにより周辺が導管縁取り凸状部で囲まれた導管溝を前記透明基材に賦型するエンボス加工工程と、から構成する。また、前記透明トップシート基材の裏面に対して、前記エンボス加工工程とインラインであるいはオフラインで木目印刷された着色シート基材をラミネートさせる。さらに、前記導管内に着色材充填する。さらにまた、前記着色シート基材の裏面に用途に応じた裏打ち材を貼り合わせる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の製造対象となるエンボス化粧材とは、エンボス加工が施されたシート或いは板である。材料としては、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ABS,ポリスチレン等の熱可塑性樹脂が用いられる。また用途としては、壁、床、天井等の建築物の内装材、扉、窓枠、手摺等の建具、家電製品の筐体、箪笥等の家具、箱等の容器、車両等の内装材、船舶内装材等であって、必要に応じて更に任意の素材が裏打ちして使用される。
また、本発明によるエンボス化粧材の製造方法が狙う凹凸模様(エンボスパターン)の代表的なものは、天然木材板を再現した木目柄に見られる木目導管溝断面パターン(以下導管パターンと称する)であるので、以下導管パターンの場合について説明する。無論、導管パターン以外にもタイルや煉瓦配列の目地溝、トラバーチン大理石の凹陥部、溝状の彫刻模様(唐草文字等)等の場合にも本発明は適用が可能である。
【0006】
図1は、天然木材板に見られる木目模様のなかから導管溝が構成する導管パターンだけを抽出した図柄の一例である。このように導管パターンのみを画像として抽出する方法としては、従来から木目導管パターンの写真製版で公知の各種方法を応用すればよい。例えば、天然木材板全面に黒色系のインキを塗布した後、ドクターブレード、布等で拭き取って導管溝内にのみインキを充填した上で写真撮影する方法が挙げられる。
個々の導管パターンは、一見不規則に見えるが、木材の導管は斜めにカットされることにより略同一方向に延びる長楕円形のものが多い。従って、導管パターンのパターンモデルを以下長楕円形をもって示すことにする。
【0007】
図2は、本発明及び従来技術によるエンボス化粧材の製造方法によって製造されるエンボス化粧材が示す視角的効果の比較説明図
図2においては、分かりやすくするために、本発明(左側)と従来の技術(右側)とを対比して示している。
図2(a)は、導管パターンの平面図、図2(b)は、図2(a)のx−x’断面図である。
本発明によるエンボス化粧材の製造方法によって製造されるエンボス化粧材10の導管パターンは、図2(a)に示すように、導管部1(導管溝に相当する部分)の周辺に導管縁取り凸状部2を配したものである。これに対し従来の導管パターンにはこのような凸状部の形成はみられない。この両者の違いは、図2(b)における断面構造を比較すれば一層明らかである。
本発明による導管部1は、高さdの導管縁取り凸状部2によって取り囲まれている。従って導管部1の深さは従来の場合と略同一でありながら、エンボスによって賦型される透明シート基材8の厚みは、従来の場合と比較して物理的厚みだけから見ても導管縁取り凸状部2の高さdの分だけ薄くすることができる。それに加えて、導管部周縁の導管縁取り凸状部2の与える凹凸の視覚的な強調(エンハンス)効果も奏するため、d以上厚みを薄くすることが可能である。
従って、本発明による場合、透明シート基材8の厚みを少なくしても、導管溝の深度に大きな変化がないので、導管溝がもたらす視覚的な効果、すなわち意匠効果は従来の場合に較べて劣ることはない。
導管部1は、必要に応じて、従来のものと同様にダークな着色材Cを用いたワイピングによってその内部は着色されている。
【0008】
次に、本発明によるエンボス化粧材の製造方法について説明する。
図3は、本発明によるエンボス化粧材の製造方法において作成、使用される天然木材板が有する導管パターンと該導管パターンを囲む導管縁取りパターンの平面図である。
図1に示すような、木目模様から抽出された導管パターンの原画像をCEPS(COLOR ELECTRONIC PREPRESS SYSTEM)等のスキャナーによって電気信号として入力し、AD変換して得られる図3(a)に示すような2値化された導管パターン画像P−1のデジタルデータをハードディスク等の記憶装置に記憶させるとともに、また、この導管パターンの縁取りができるように組み込まれた特定な修正プログラムに従って、作成された図3(b)に示すような2値化された導管縁取りパターン画像P−2のデジタルデータを同じくハードディスク等の記憶装置に記憶させる。
【0009】
図4は、本発明によるエンボス化粧材の製造方法のエンボス版加工工程の説明図である。
先ず、▲1▼で示すように、レジスト感光液4が塗布されたエンボスシリンダー3の表面に前記導管縁取りパターン画像P−2をアルゴンイオン等のレーザー光で出力(露光)して焼き付け、現像し、導管縁取りパターン画像P−2のみ非レジスト部となるようにレジスト部(レジスト層)5を形成する。そのためには、ネガ型のレジスト感光液を用いた場合は、導管縁取りパターン画像P−2の部分のみ露光しないで、その他の部分を露光するようにすればよい。また、ポジ型レジスト感光液を用いる場合が、逆に、導管縁取りパターン画像P−2の部分のみ露光する。そして、次に、非レジスト部を塩化第2鉄溶液等を用いて第1次腐食を行って、▲2▼に示すように、導管縁取り凹陥部6を形成し、レジスト剥離を行って、第1フォトエッチング工程を終了させる。
次に、再度、▲3▼に示すように、レジスト感光液4を全面に塗布し、今度は、前記導管パターン画像P−1を導管縁取り凹陥部6に見当を合わせてレーザー光で出力(露光)して焼き付け、現像して、▲4▼に示すような導管縁取り凹陥部6の内部のみにレジスト部5を設け、この状態で所定の深さに到達するように第2次腐食を行い、▲5▼に示すように導管凸状部7を形成し、レジスト剥離を行って、第2フォトエッチング工程を終了し、目的とするエンボス版Eが得られる。
さらに図示はされてないが、エンボス版Eの面にサンドブラスト等の方法によって化粧材の艶の制御のために微小な凹凸形状を形成し、クロムメッキを施して完成させる。
【0010】
図5は、本発明によるエンボス化粧材の製造方法のエンボス加工工程の説明図である。
本発明を構成するエンボス加工工程は、図5(a)▲6▼に示すようなエンボス版Eに形成された凹凸形状を、加熱軟化せしめた透明シート基材8に賦型する工程であって、図5(a)▲7▼に示すエンボス加工されたエンボス化粧材10には、エンボス版Eの凹凸形状が忠実に賦型され、その結果、導管部1の周辺には導管縁取り凸状部2が導管部1を取り囲むように形成されている。
また、透明シート基材8の裏面は着色シート基材9によってラミネートされている。着色シート基材9には予め木目模様が印刷され、そのインキ層は図示はされていないが透明シート基材8と着色シート基材9間にサンドイッチされているか、あるいは透明シート基材8表面に露出している。
なお、着色シート基材9の代わりに透明シート基材を使用してもよい。
本発明によるエンボス加工には、図5(b)に示すように、エクストルーダーExから高温で押出される透明な熔融樹脂と着色シート基材9とをクーリングロラーの機能を兼ねたエンボス版Eとニップローラー(圧胴)Nとの間で押圧し、ラミネートすると同時にエンボス版Eで賦型を行いエンボス版EからガイドローラーGを通して離型させる方法を採用してもよいし、
あるいは、透明シート基材に対して加熱エンボス版を圧着させて賦型を行い、オフラインで着色シート基材9とのラミネートを行ってもよい。
また、図5(c)に示すように、エンボス版E面の少なくとも凹部を充填するように紫外線又は電子線硬化性樹脂液mを樹脂液供給装置Mから供給して、塗布し、必要に応じ透明トップシート基材8を該樹脂液M上に積層し、該透明トップシート基材8を通して紫外線または電子線照射装置Dを用いて前記紫外線又は電子線硬化性樹脂液を硬化後エンボス版から離型させ、その後、図示はされていないが、オフラインで着色シート基材9をラミネートさせてもよい。
【0011】
以上のように加工された積層材の導管部1には、別工程でワイピングによって黒褐色等暗色系のインキ等の着色材Cを充填し、導管パターンを本物に近づける作業が行われる。
最後に、エンボス化粧材の使用目的に応じた裏打材を図5(a)▲7▼に示す、エンボス化粧材10に対して裏打ちされる。
例えば、エンボス化粧材10がドアの場合は、ハニカムボード等を強力接着を用いて裏打ちし、最終製品とする。
【0012】
従来の場合、一般にエンボスすべき導管溝(導管部)1の深さは100μm以上必要とされ、且つそのために賦型される基材8’の厚みD2は、100μm以上なければならなかったのに対し、本発明においては、エンボスすべき導管溝1の深さは最低70μm以上あればよく、また、使用する透明シート基材8の厚みD1は、最低70μmと略70%の厚みで済み、それにもかかわらず導管パターンのエンボスによる意匠効果に何ら遜色のない化粧材10が得られる。
それは、導管部1の周辺に高さdの導管縁取り凸状部2を形成させることによって、従来の導管部1の深度と変わらない深度を確保できるためである。
導管パターンにもよるが、一般に導管縁取り凸状部2の高さdは、10〜30μmの範囲にあることが望ましい。これは、10μm以下では上記の意匠効果を失い、また30μmを越えると最表面に異常さを感じるためである。なお、導管縁取り凸状部2の幅は50〜120μmの範囲にあることが望ましい。
導管縁取り凸状部2の断面形状は、図5(a)に示すように、隅角部は、丸くなった滑らかな形状が好ましい。特に、導管溝内側の隅角部の曲率をより大きく、また導管溝外側の隅角部の曲率をより小さくすることが、導管溝を天然物と較べて違和感がなく、且つ導管溝の深さを十分強調できて好ましい。
この導管縁取り凸状部2の高さは、図4▲1▼、▲2▼に示す第1次腐食工程によって得られる導管縁取り凹陥部6の深度によって制御することができる。すなわち、導管縁取りパターン画像P−2による縁取り幅が20〜30μmであるとすると、このパターン画像P−2の焼き付けによって得られる非レジスト部の第1次腐食によって生じる導管縁取り凹陥部6の深度を50〜100μmの範囲に加工しておけば、図4▲6▼に示す第2次腐食の後に得られる導管縁取り凹陥部6の深度は、深度が低下して10〜30μmとなり、またエッジもより滑らかになる。この深度は忠実に透明シート基材8に賦型されるので、導管縁取り凸状部2の高さdは、同じく10〜30μmの値になる。
また、従来と同じ厚みの透明シート基材8の使用が許されるならば、従来よりも深度のある導管部1を形成することができ、さらに深みがあり、質感の豊富な導管パターンの再現が可能になる。
さらに、導管部1に着色材Cを充填しない場合においても、導管部1に入射する光が側壁に遮られて作られる陰影により、同様な視覚的効果を奏する。
以上のように、本発明によるエンボス化粧材の製造方法によれば、厚みの少ない透明シート基材8にもかかわらず、天然木材が有する木目柄等の凹凸模様をリアルに、力強く、立体的に、質感を持たせて再現することができる。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、導管部1の周縁に導管縁取り凸状部2からなる輪郭線を設けることにより、薄い透明ート基材を用いても導管エンボスの視覚的な効果を落とさずに加工することができ、透明樹脂の節約ばかりか、透明樹脂の押出し効率、あるいは製膜効率を高め、生産効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】天然木材に見られる木目模様のなかから導管溝が構成する導管パターンだけを抽出した図柄の一例
【図2】本発明及び従来技術によるエンボス化粧材の製造方法によって製造されるエンボス化粧材が示す視角的効果の比較説明図
【図3】本発明によるエンボス化粧材の製造方法において作成、使用される天然木材板が有する導管パターンと該導管パターンを囲む導管縁取りパターンの平面図
【図4】本発明によるエンボス化粧材の製造方法のエンボス版加工工程の説明図
【図5】本発明によるエンボス化粧材の製造方法のエンボス加工工程の説明図
【符号の説明】
1 導管部、導管溝
2 導管縁取り凸状部
3 エンボスシリンダー
4 レジスト部、レジスト層
5 非レジスト部
6 導管縁取り凹陥部6
7 導管凸状部
C 着色材
Ex エクストルーダー
G ガイドローラー
N ニップローラー
m 紫外線又は電子線硬化性樹脂液
M 紫外線又は電子線硬化性樹脂液供給装置
P−1 2値化された導管パターン画像
P−2 2値化された導管縁取りパターン画像

Claims (4)

  1. 天然木材板が有する導管パターンと該導管パターンを囲む導管縁取りパターンのデジタル画像データの作成工程と、
    レジスト感光液が塗布されたエンボスシリンダー面に前記導管縁取りパターンのデジタル画像データをレーザー光で出力(露光)して、現像して前記導管縁取りパターン部のみ非レジスト部とした上で、第1次腐食を行い、レジスト剥離を行い導管縁取り凹陥部を形成する第1フォトエッチング工程と、前記導管縁取り凹陥部が形成されたシリンダー面にレジスト感光液を塗布し、前記導管縁取り凹陥部と見当を合わせて前記導管パターンのデジタル画像データをレーザー光で出力(露光)して、現像して前記導管縁取り凹陥部の内部に形成された前記導管パターン部のみレジスト部とした上で、第2次腐食を行い、レジスト剥離を行い、周辺に導管縁取り凹陥部を有する導管凸状部を形成する第2フォトエッチング工程とからなるエンボスシリンダー加工工程と、
    前記エンボスシリンダーによって透明トップシート基材を熱プレスするか、若しくは前記エンボスシリンダー面に紫外線又は電子線硬化性樹脂液を塗布、充填し、必要に応じ透明トップシート基材を積層し、該トップシート基材を通して紫外線または電子線照射で前記紫外線又は電子線硬化性樹脂液を硬化後エンボス版から離型することにより周辺が導管縁取り凸状部で囲まれた導管溝を前記透明基材に賦型するエンボス加工工程と、
    からなることを特徴とするエンボス化粧材の製造方法。
  2. 前記透明トップシート基材の裏面に対して、前記エンボス加工工程とインラインであるいはオフラインで木目印刷された着色シート基材がラミネートされることを特徴とする請求項1記載のエンボス化粧材の製造方法。
  3. 前記導管内に着色材が充填されることを特徴とする請求項1または2記載のエンボス化粧材の製造方法。
  4. 前記着色シート基材の裏面に用途に応じた裏打ち材が貼り合わされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエンボス化粧材の製造方法。
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