JP2024075728A - 化粧材 - Google Patents

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Abstract

【課題】表出する表現に幅を持たせ、より多くの態様で表現することができる化粧材を提供する。【解決手段】溝を備える化粧材であって、溝が形成された側の平面視において溝が複数配置されており、溝は該溝の幅方向端部の少なくとも一方が平面視で2次元方向のいずれかに延びており、複数の溝は、異なる方向に延びる溝を含むものとする。【選択図】図2

Description

本発明は化粧材に関する。
建物の外装壁面、内装壁面等の表面化粧に使用される素材の一例として「焼杉」のように木材表面を焦がし炭化させることで耐久性を向上させた物がある。この焼杉は耐久性の向上に留まらず、建物等の外観の特徴を表現する要素としても用いられることもある。その場合に、焼杉は木材の表面を炭化させたものなので、実際の焼杉を用いると素手で触れたときに表面の炭化した木材が磨耗し易く、炭が手に付着してしまう欠点がある。この欠点は化粧フィルム(化粧材)に焼杉の模様を付すことで解消することができる。
例えば特許文献1、特許文献2には、熱可塑性樹脂基材フィルムの表面に絵柄模様層の印刷と凹凸模様のエンボス加工とを用いて化粧フィルムを製造することが開示されている。従って、焼杉の板から従来公知の写真製版技術を用いて印刷版とエンボス版を製版し、これらを用いて従来公知の印刷法及びエンボス加工法を用いて、焼杉板表面の絵柄模様及び凹凸模様の意匠外観を再現する化粧フィルムを製造することは可能ではある。
特開平10-324097 特開2005-335336
しかしながら、その際に、意匠外観及び触感に優れた本物の焼杉板表面の外観を忠実に再現する為には、素材即ち原稿となる焼杉板、特にエンボス版の原稿となる焼杉として十分に意匠外観の優れたものを用意する必要が有る。ただし、その為には、良質の天然の杉板を入手することに加えて、杉板表面を焼く微妙な加減を調節する技能が必要である。例え、良質な意匠外観の杉板を入手できも、焼き加減を失敗すると、印刷及びエンボス版の原稿となる焼杉板を確保できないことになるため、意匠外観及び触感が良好な焼杉板表面を再現する化粧材の製造は難度の高いものであった。
焼杉板表面特有の意匠外観と触感は、絵柄模様よりも寧ろ、表面凹凸形状(凹凸模様)に依存する部分が大きい。そのため、特に、焼杉板表面の凹凸模様の再現及びそれを実現する手段であるエンボス版が重要であると共に製造の難度が高いものであった。
本開示は、焼杉板表面特有の意匠外観と触感を再現する化粧材を容易に製造できると共に、天然木原稿に依存、制限されずに表出する意匠外観と触感の表現に自由度と幅を持たせ、さらには焼杉板のみでは無く、他の素材の意匠外観及び触感の再現も含めた、より多くの態様で表現することができる化粧材を提供することを課題とする。
本開示の1つの態様は、溝を備える化粧材であって、溝が形成された側の平面視において溝が複数配置されており、溝は該溝の幅方向端部の少なくとも一方が平面視で2次元方向のいずれかに延びており、複数の溝は、異なる方向に延びる溝を含む、化粧材である。
本開示の化粧材によれば、焼杉板表面特有の意匠外観と触感を再現する化粧材を容易に製造できると共に、天然木原稿に依存、制限されずに表出する意匠外観と触感の表現に幅を持たせ、更には焼杉板のみでは無く、他の素材の意匠外観及び触感の再現も含めた、より多くの態様で表現することができる。
図1は、化粧材10の表面の一部を拡大して表した平面図であり、化粧材10の微細なパターン表面を含むものである。 図2は図1と同じ視点で、模様形成層12の一部を拡大した図である。 図3は、模様形成層12の形態を説明するために模式的に表した化粧材10の一部を拡大した斜視図である。 図4は、化粧材10の断面図である。 図5は、溝13の形態を説明する断面図である。 図6は、溝13の他の形態を説明する断面図である。 図7は、溝13の他の形態を説明する断面図である。 図8は、溝13の他の形態を説明する断面図である。 図9は、溝13の他の形態を説明する断面図である。 図10は、インキ部14の他の形態を説明する断面図である。 図11は、インキ部14の他の形態を説明する断面図である。 図12は、インキ部14の他の形態を説明する断面図である。 図13(a)、図13(b)は、微小凹部15が具備された例を説明する図である。 図14(a)乃至図14(c)は、他の層構成による例を説明する図である。 図15は、レーザにより型に凹凸を形成する場面を説明する図である。
以下、図面を参照しつつ各形態について説明する。本発明はこれら形態に限定されるものではない。以下に示す図面では分かりやすさのため部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見易さのために説明上不要な部分の図示や繰り返しとなる符号は省略することがある。
[化粧材の形態]
図1は1つの形態にかかる化粧材10の一部を拡大し、模様形成層12側から平面視した図(平面図)である。図1及び以降に示す図には必要に応じて便宜のため、方向を表す矢印(x、y、z)、即ち座標系も併せて表記した。ここでxy方向は化粧材10における面内方向、z方向は厚さ方向である。従って図1は化粧材10を模様形成層12側の特にz方向から見た(平面視した)図ということになる。
図1からわかるように、本形態では全体として表面に、杉材板の表面を焼いて適度に炭化させたいわゆる焼杉板調の、表面に存在する亀裂状の凹部の意匠外観及び及び触感(以下、単に「焼杉調」とも略称する)を与えるように模様形成層12が構成されている。
ただし、本発明において表現すべき態様は焼杉調であることに限らず、目地を有するタイル貼や煉瓦積調、繊維状の凹部を多数有する布目調、皺状の凹部を多数有する皮シボ調等も対象とすることができる。本発明では、化粧材の態様で、後で説明するような異なる方向に延びた複数の溝により様々な態様を表現する。例えば、当該溝により、タイル貼や煉瓦積調の態様の場合は輪郭線がささくれたり崩れたりした目地溝の外観、布目調の態様の場合は繊維集合体の構造(テクスチュア:texture)中の溝状凹部の外観、皮シボ調の態様の場合は皮革表面の皺状凹部の外観をそれぞれ表現する。
図2乃至図5には模様形成層12の形態を説明するための模式図を示した。
図2は図1と同じ視点で、模様形成層12の一部を拡大した図である。ここには溝13の平面視における形態が表れている。
図3は化粧材10の一部を拡大した斜視図である。
図4はある溝13が延びる方向に直交する方向で厚さ方向断面図である。
図5は図4のうち1つの溝13に着目して形態を説明する図である(ただし見易さのためハッチングは省略している。以下同様)。
図1乃至図5よりわかるように、本形態で化粧材10は、基材11及び該基材11の一方の面に具備された模様形成層12を有している。従って本形態では基材11の一方の面が模様形成層12として機能するように構成されている。換言すれば、本形態においては、基材11自体が模様形成層12を兼ねた単層構成となっている。なお、図14に図示した後述の形態のように、基材11と模様形成層12とを別個の独立層とし、両層を積層した複数層構成とした形態とすることも可能である。
以下、各構成についてさらに詳しく説明する。
<基材>
基材11は、模様形成層12を保持するとともに化粧材10に強度を付与する機能を有するシート状の部材である。基材11の形態としてはフィルム、シート、又は板のいずれでもよい。一般的には、厚さが比較的薄いものから、順次、フィルム、シート、板と呼称されるが、本形態においては、これら基材の厚み形態による差異は本質的な事項ではなく重要な事項でもない。そのため、本明細書中においてはフィルム、シート、及び板のいずれかの用語は適宜他の用語に読み換えても本発明の本質も特許請求の範囲の解釈も不変である。
基材11は従来公知の化粧材と同様の機能を有するものであればよいので、その材料は特に限定されない。例えば、基材の材料としては、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、テレフタル酸-エチレングリコール-1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体、各種のポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、或いは、ラジカル重合型のアクリレート系やカチオン重合型のエポキシ系等の単量体やプレポリマーで電離放射線(紫外線、電子線等)で硬化する電離放射線硬化性樹脂等が用いられる。なお、基材の材料が樹脂の場合、公知の着色剤で着色しても良い。この他、紙、不織布、金属、木等もシート、板、立体物等の形状で、適宜上記樹脂材料と積層させて、使用することもできる。
基材の厚さには特に制限は無いが、シート状の基材又はフィルム状の基材の場合は、例えば、厚さ20μm以上1000μm以下程度、板状の基材の場合は、例えば、1mm以上20mm以下程度のものが使用される。
<模様形成層>
模様形成層12は、基材11の一方の面に具備され(基材11が模様形成層12を兼用する場合は、基材11の一方の面の近傍が模様形成層12となる。)、化粧材の表面に所望の模様を付与する。本形態では化粧材10に焼杉調の模様を表現するために適する形態とされている。図1乃至図5よりわかるように、本形態で模様形成層12は、溝13、及び、溝13の内側に配置されたインキ部14を具備している。
溝13は、模様形成層12に対して具体的に模様を付与する溝であり、模様形成層12には、複数の溝が設けられている。この複数の溝13がxy面内に配置されることで、所定の外形(本形態では焼杉調の外形)が表出される。
溝13は、図5からわかるように、幅方向(溝が延びる方向に直交する方向)一方側の端部Wから最深部Dに延びる第一傾斜部S、及び、幅方向他方側の端部Wから最深部Dに延びる第二傾斜部Sを備えている。
そして、複数の溝13は、図2に表れたように、模様形成層12のxy面内(平面視)で様々な向きや長さを有して配置される。これにより所定の外形(本形態では焼杉調の外形)を表出している。
(溝の延在方向形状、パターン)
すなわち、溝13のうち、W、及び、Wの少なくとも一方が、その平面視(図1、図2による視点)において、W間の幅を後述の如き一定の範囲内に保った上で、例えば、図2の平面図のような形態で、x方向、y方向、及び、x方向かつy方向のいずれかに延びるとともに、当該延びる態様として直線状、曲線状のいずれであってもよく、延びる方向の向きが途中で変わるように折れ線状であったり湾曲していたりしてもよい。
そして複数のW及び/又はWについては、平面視で同じ方向に延びるものとこれとは異なる方向に延びるものとが混在し、複数のW、端部Wの延びる方向における形状(例えば直線や曲線)が同じであってもよく、異なっていてもよい。
このように複数の溝13がxy面内で形成する形状は上記のように構成されることで所定の外形(本形態では焼杉調の外形)と人が視覚的に感じる形状を表出していれば、複数の溝13が配列される具体的な形状パターンは特に限定されることはない。一方で、配列パターンを作成する際には、既存のパターンを手掛かりとし、これに対して必要に応じて変形、追加、一部削除、又は変形することなく用いることができる。以下に具体例を説明する。
パターンを形成する際に、実際の焼杉の表面を参照し、これを複数のW、Wのxy面内形状に適合させてパターンを形成してもよい。このときには、例えば焼杉の表面の濃淡の境界にW及び/又はWを合わせる等してW、Wのxy面内形状を決めることができる。
また、パターンを形成する際に、地形における崖線形状や海岸線形状を手掛かりにして、これを複数のW、Wのxy面内形状に適合させてパターンを形成してもよい。このときには例えば、地図を用いて崖線や海岸線を抽出し、これを複数組み合わせる等して所定の線群をxy平面に形成し、この線群をW及び/又はWを合わせる等してW、Wのxy面内形状を決めることができる。
また、パターンを形成する際に、地形における河川網の形状を手掛かりにしてこれを複数のW、Wのxy面内形状に適合させてパターンを形成してもよい。このときには、地図を用いて河川網を抽出し、これを複数組み合わせる等して所定の線群をxy平面に形成し、この線群をW及び/又はWを合わせる等してW、Wのxy面内形状を決めることができる。
この他、河川網は数理解析によるパターン化が試されていることから、このような数理的なパターンを手掛かりにしてこれを複数のW、Wのxy面内形状に適合させてパターンを形成してもよい。具体的には例えば、フラクタル幾何形状が挙げられ、「吉山昭、発展する地理的パターンのモデル-フラクタル成長モデルの適用-、理論地理学ノート、No.8(1992)、pp.111-118」、「徳永英二、河川の分岐と流域構成について、サイエンス社、数理科学11月号、昭和56年11月1日発行、No.221、pp.45-50」等がある。また、河道の解析として「桝谷敬一ら、解像度が異なる河道類似性解析法、Theory and Application of GIS、2010、Vol.18、No.1、pp.63-71」等がある。このときには、これら数理分析により線群を得て、さらにこれらの線群を組み合わせる等して、この組み合わされた線群をW及び/又はWを合わせる等してW、Wのxy面内形状を決めることができる。
また、パターンを形成する際に、ランダムウォーク(random walk)の軌跡を手掛かりにしてこれを複数のW、Wのxy面内形状に適合させてパターンを形成してもよい。このときには、例えばランダムウォークのシミュレーションに所定の制約条件を付して2次元のランダムウォークの軌跡を得て、さらにこれらの線群を組み合わせる等して、この組み合わされた線群をW及び/又はWを合わせる等してW、Wのxy面内形状を決めることができる。
当該制約条件としては例えばシミュレーションの全ステップにおいてx座標の増分Δxは増加のみ、y座標の増分Δyは増加、0、減少のいずれかの3種を可能とし、さらに、連続しての増加、0の維持、又は連続しての減少の回数の上限を5回とする等を挙げることができる。
模様形成層に形成されるこのような溝の延びる方向、形状、配置パターン等により、従来に比べて表現に幅を持たせ、より多くの態様で表現することができる化粧材とすることができる。
(溝の断面形状)
溝13の幅(溝が延びる方向に直交する断面におけるWとWとの距離、図4のW)は特に限定されることはなく、意匠外観を再現する対象となる素材(原稿)に応じた範囲とすればよいが、一般的な意匠外観形状の場合は、50μm以上10000μm以下の範囲であることが好ましく、特に焼杉調の場合は、150μm以上1000μm以下の範囲が好ましい。これにより溝として視認され難くしつつも、溝13が複数配置されることで全体として所望の外形を表出することができる。また、溝13内にインキ部14を設ける場合にはインキ14を溝13に配置しやすくすることができる。
1つの溝13においてその延びる方向で幅Wが一定である必要はなく、幅が変化してもよい。
溝13の深さ(溝が延びる方向に直交する断面におけるz方向の大きさ、図4のD)も特に限定されることはないが、30μm以上100μm以下であることが好ましい。これにより陰影による模様表現の効果を顕著にすることができる。
また、1つの溝13においてその延びる方向で深さDが一定である必要はなく、深さDが変化してもよい。
さらに溝13は次の形態を有してもよい。
とWとを結ぶ線分W12、WとDとを結ぶ線分W(本形態ではSに一致する。)、及び、WとDとを結ぶ線分W(本形態ではSに一致する。)を考え、線分W12と線分Wとがなす角をθ、線分W12と線分Wとがなす角をθとしたとき、θがθより大きくなっている。すなわち、第一傾斜部Sと第二傾斜部Sが最深部Dを挟んで対称とならずに異なるように構成されている。
また、以下には他の形態の第一傾斜部S、第二傾斜部S、及び、これらによるθ及びθの出し方について図6乃至図8を参照しつつ説明する。いずれの図も図5と同じ視点による図である。
図6の形態は、最深部が所定の幅を有している場合である。このような場合には、当該最深部の幅のうち中央を最深部Dとして、線分W及び線分Wを定義すればよい。
図7の形態は、第一傾斜部S及び第二傾斜部Sが曲線状となる場合である。このような場合にも、上記と同様にして線分W及び線分Wを定義すればよい。この場合は、線分W及び線分Wは、角度θ及びθを求めるのに際して、非直線となっている第一傾斜部S及び第二傾斜部Sを平滑化したもので代表(代替)することに相当する。
図8の形態は、第一傾斜部S及び第二傾斜部Sが階段状となる場合である。このような場合にも、角度θ及びθを求めるのに際して、非直線となっている第一傾斜部S及び第二傾斜部Sを平滑化して代表(代替)するものとして、上記と同様にして線分W及び線分Wを定義すればよい。
図9の形態は、1つの溝13においてWとWとで厚さ方向位置(z方向位置)が異なる場合である。この場合もWとWとを結ぶ線分W12、WとDとを結ぶ線分W(本形態ではSに一致する。)、及び、WとDとを結ぶ線分W(本形態ではSに一致する。)を考え、線分W12と線分Wとがなす角をθ、線分W12と線分Wとがなす角をθとしたとき、θがθより大きくなっている。すなわち、第一傾斜部Sと第二傾斜部Sが最深部Dを挟んで対称とならずに異なるように構成されている。
この形態ではWの方がWの位置より高くなっているが、これに限らずWの方がWの位置より低くなるように構成してもよい。
第一傾斜部S及び第二傾斜部Sは上記示した形態例とは異なる形態をとってもよい。また、ある溝13において第一傾斜部Sと第二傾斜部Sとで異なる形態としてもよい。このような形態でも上記と同様にθ及びθを定義する。
ここでθの範囲は特に限定されることはないが、20°以上90°以下が好ましい。θの範囲も特に限定されることはないが、10°以上80°以下が好ましい。また、θからθを引いた差(θ-θ)が10°以上70°以下であることが好ましい。
溝13が延びる方向については、第一傾斜部Sの形状、第二傾斜部Sの形状、θ、θ及びθとθとの差は一定である必要はなく、溝13が延びる方向で変化してもよい。従って、θとθとの位置関係が延びる方向で逆転することもあり得る。その際でもその大小関係は同様に考えることができる。
隣り合う溝13で、第一傾斜部Sと第二傾斜部Sとが隣り合ってもよいし、第一傾斜部S同士、第二傾斜部S同士が隣り合ってもよい。
このようなθとθとの関係は必須の事項ではないが、このような断面形状の溝により、従来に比べて意匠に幅を持たせ、より多くの態様で表現するという観点で、さらに顕著な効果を奏する。
(インキ部の態様)
次にインキ部14について説明する。図3、図4からわかるように、インキ部14は溝13の溝内に配置されたインキからなる部位である。インキの配置は必須の事項ではないが、インキの配置により、溝13のみの場合に対して、異なる外観や触感が付与されるなど、従来に比べて意匠に幅を持たせ、より多くの態様で表現する効果をより顕著なものとすることができる。
インキ部14の形態は例えば次のようにすることができる。1つの例は図4に示したように、当該断面においてインキ部14の表面14fが、第一傾斜部S及び第二傾斜部Sを覆い、端部Wと端部Wとの間のいずれかの部位で最も深くなるように構成される。すなわち、インキ部14の表面14fは、当該溝の開口している方向であると共に化粧材の観察者の方向(例えば、図2の場合においては、同図のz軸の+方向)に対して、図2に示すように凹表面が凹状となる形態である。
図10は、当該断面においてインキ部14が、第一傾斜部S及び第二傾斜部Sを覆い、端部Wと端部Wとの間で概ね同じz位置を維持して平坦となる形態である。
また、図11は、インキ部14の表面14fが、第一傾斜部S及び第二傾斜部Sの一部を覆うと共に、該溝の開口している方向であると共に当該化粧材の観察者の方向(例えば、図10の場合においては、同図のz軸の+方向)に対して、図11に示したように凹状で、第二傾斜部Sの一部が露出している形態である。
また、図示はしないが、インキ部14が、第一傾斜部Sの一部及び第二傾斜部Sの一部を覆い、第一傾斜部S及び第二傾斜部Sのいずれも一部が露出している形態も考えられる。
また、第一傾斜部S、及び、第二傾斜部Sの少なくとも一方が階段状である場合、例えば図12に示したように、階段状の出隅部13OCにインキ部14が形成されず、出隅部13OCが露出しているような形態も考えられる。
以上のようなインキ部14において、第一傾斜部S側におけるインキ部の厚さを、第二傾斜部S側におけるインキ部の厚さよりも厚くすることができる。より具体的には、第一傾斜部Sにおけるインキ部の平均厚さを、第二傾斜部Sにおけるインキ部の平均厚さよりも厚くする。
ここで、「第一傾斜部Sにおけるインキ部の平均厚さ」は、当該断面において、第一傾斜部S上に存在するインキ部の断面積を第一傾斜部Sの長さで除した値とし、「第二傾斜部Sにおけるインキ部の平均厚さ」は、当該断面において、第二傾斜部S上に存在するインキ部の断面積を第二傾斜部Sの長さで除した値とする。
インキ部14の形状は溝13が延びる方向に沿って一定である必要はなく、異なるように変化してもよく、複数の溝13に配置されるインキ部14は、それぞれが異なる形態であってもよい。このようなインキ部14の形状が変化することにより特有の視覚的効果が期待できる。例えば第一傾斜部の傾斜角、第二傾斜部の傾斜角によって溝13内へのインキの充填態様が異なる。より詳しくは例えば、第一傾斜部の傾斜角(θ)と第二傾斜部の傾斜角(θ)との差が溝13へのインキの充填率の変化に影響するため、この傾斜角の差を変化させることで、効果的なグラデーションを形成しやすい。また、W、WとDとの差(高低差)が大きい程に立体感を強調することができ、陰影表現が豊かになる。従って、このような各要素を組み合わせることにより充填されるインキの形態が変化し、多様な表現が可能となる。
インキ部を構成するインキの材料は特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。例えばベヒクルに着色顔料、艶消し顔料、染料、紫外線吸収剤等の何れか1種又は2種以上を含有するものを適用できる。ベヒクルは、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線効果型樹脂から適宜選択可能である。
このようなインキ部14によれば、溝13の幅方向において、インキ部14の厚さが順次変化する、最深部を挟んで幅方向一方側と他方側とで形状が非対称となる、第一傾斜部S側のインキ部14の厚さの方が第二傾斜部S側のインキ部よりも厚くなる等の形態となる等により、第一傾斜部S側と第二傾斜部S側とでインキ部14の形態変化が異なるため、反射光の強さや方向が従来とは異なるので視覚的にもこれまでとは異なる効果を有する化粧材10となる。同様に触感もこれまでは異なるものとなる。
(その他の態様)
図13には、上記形態に加えて、模様形成層12のうち溝13が設けられていない部分の表面に微小凹部15が形成された化粧材10’の説明図を示した。図13(a)は図3に相当する図、図13(b)は図4に相当する図である。
これら図からわかるように、化粧材10’では、模様形成層12のうち溝13が設けられていない部分の表面に複数の微小凹部15が設けられ、ここにもインキ部14が形成されている。当該微小凹部15は溝形状ではなく、平面視でいずれか一方向に大きく延びることはなく、円形や楕円形であることが好ましく、その平面視における大きさも溝13の幅に比べて小さい。また微小凹部15の深さも溝13の深さに比べて浅く形成されている。
このような微小凹部15としてはいわゆるブラストによる表面調整がされた面の形態を模したものとすることができる。
本形態では微小凹部15にもインク部14が形成されているが、これに限らず微小凹部15にはインク部が形成されてない形態とすることもできる。
<化粧材の層構成>
以上説明した化粧材10は、基材11が模様形成層12も兼用しており、基材11自体の表面に溝13、及び、インキ層14が形成された1層構成による例であるが、化粧材の層構成はこれに限定されることはなく、基材11上に、基材11とは別の材料からなる別層としての模様形成層12を積層した積層構成としてもよい。また、これら1層構成又は積層構成の基材11及び模様形成層12に加えて、更に、適宜必要な層が積層されていてもよい。図14に説明のための図を示した。これら図はいずれも図4と同様の視点による図である。
図14(a)は、基材11の一方の面(同図における上方の面)上に、該基材11とは別材料から成る別個の層として用意された模様形成層12が積層された化粧材10aである。なお、この模様形成層12も基材11と同様の材料により構成することもできる。ただし、基材11と模様形成層12とは同じ材料で構成されていても良く、また、厚さが異なっていてもよい。この場合、例えば基材11を着色隠蔽層、模様形成層12を無色又は着色透明層とすることで、特有の質感を表出することができる。また、化粧材全体の強度を高める観点で、さらに追加の基材(第二の基材)が基材11に積層されていてもよい。
図14(b)は、基材11のうち模様形成層12として機能する同図における上側近傍層の最表面に透明樹脂による保護層16bが積層された化粧材10bである。これにより化粧材の耐候性、耐傷性、及び耐汚性を高めることができる。保護層16bを構成する樹脂は特に限定されることはないが、基材11、及び、インキ部14の説明で挙げた材料のうち透明であるものを用いることができる。
図14(c)は、基材11のうち模様形成層12として機能する同図における上側近傍層とは反対側の面に、即ち同図における下側に印刷層17cが積層された化粧材10cである。この場合に、基材11を無色又は着色透明とすれば印刷の絵柄が化粧材10cの絵柄として表出され、特有の表現となる。
上記の他、第二の基材(さらに第三の基材があってもよい。)、保護層、印刷層を適宜組み合わせて層構成をすることができる。
例えば、第二の基材、印刷層、及び、基材(模様形成層)の順に積層された化粧材、第二の基材、基材(模様形成層)、及び、保護層の順に積層された化粧材、第二の基材、印刷層、基材(模様形成層)、及び、保護層の順に積層された化粧材等を挙げることができる。
[化粧材の製造方法]
次に化粧材10を例に、化粧材の製造方法の例を説明する。ただし、化粧材を製造する方法がこれに限定されることはない。
以下に説明する製造方法には、原稿画像を作製する工程、版下画像を作製する工程、版を作製する工程、模様形成層の溝を形成する工程、及び、インキを充填する工程を含んでいる。
<原稿画像を作製する工程>
原稿画像を作製する工程では、模様形成層12のうちの溝で表現すべき平面視における模様(焼杉調模様)を取得してこれを原稿画像とする。
このような原稿画像は種々の方法により取得することができる。
(作図)
CAD等を用いて直接溝13となる形状を作図して原稿画像とすることができる。
(実際の焼杉)
実際の焼杉の表面の実物や写真を準備し、例えば焼杉の表面の濃淡の境界による線群を抽出し、これを複数組み合わせる等して所定の線群をxy平面に形成してこれを原稿画像とすることができる。
(崖線、海岸線形状)
崖線や海岸線が表れた地図を準備し、ここから崖線や海岸線を抽出し、これを複数組み合わせる等して所定の線群をxy平面に形成してこれを原稿画像とすることができる。
(河川網)
河川網が表れた地図を準備してここから河川の形状を抽出し、これを複数組み合わせる等して所定の線群をxy平面に形成してこれを原稿画像とすることができる。
この他、河川網は数理解析によるパターン化が試されていることから、このような数理的なパターンから河川の形状を抽出し、これを複数組み合わせる等して所定の線群をxy平面に形成してこれを原稿画像とすることができる。具体的な数理解析としてフラクタル幾何形状が挙げられ、「吉山昭、発展する地理的パターンのモデル-フラクタル成長モデルの適用-、理論地理学ノート、No.8(1992)、pp.111-118」、「徳永英二、河川の分岐と流域構成について、サイエンス社、数理科学11月号、昭和56年11月1日発行、No.221、pp.45-50」等がある。また、河道の解析として「桝谷敬一ら、解像度が異なる河道類似性解析法、Theory and Application of GIS、2010、Vol.18、No.1、pp.63-71」等がある。
(ランダムウォーク)
ランダムウォーク(random walk)の軌跡を求め、これを複数組み合わせる等して所定の線群をxy平面に形成してこれを原稿画像とすることができる。このときには、例えばランダムウォークを用いたシミュレーションに所定の制約条件を付して2次元のランダムウォークの軌跡を得ることができる。当該制約条件としては例えばシミュレーションの全ステップにおいてx座標の増分Δxは増加のみ、y座標の増分Δyは増加、0、減少のいずれかの3種を可能とし、さらに、連続しての増加、0の維持、又は連続しての減少の回数の上限を5回とする等を挙げることができる。
<版下画像を作製する工程>
版下画像を作製する工程では、基材11の表面に表現すべき平面視における模様を原稿画像から画像濃度(濃淡)として取得してこれを版下画像とする。版下画像はデジタルデータであることが好ましいため、原稿画像がデジタルデータでない場合には原稿画像をスキャナで読み込みAD変換する手法を用いることにより、2次元座標平面(x、y)内に画素が配列してなり、各画素には各々固有の濃度値が対応して成るデジタルデータを得る。また、初めから原稿画像をCAD等を用いてデジタルデータを利用して設計していた場合にはそのデジタルデータを用いることができる。
そして当該デジタルデータに対して濃度から凹凸への変換プログラムによって、模様の階調画像に対応して二値画像としての各領域のパターンを二次元仮想平面上に生成して配置し、デジタルデータとして版下画像を得る。
<版を作製する工程>
版を作製する工程では、版下画像に基づいて溝13による平面視形状の模様を表面に有するエンボス版(化粧材用成形型)の作製を行う。具体的には凹凸模様の製造工程は以下の工程(1)乃至工程(5)からなる。
(1)濃淡画像データ作成工程
アドビシステムズ社製のグラフィックデザイン描画ソフトウエア「Photoshop」(登録商標)を用い、TIFF形式で8bitの画像濃淡階調(256階調)で2540dpiの解像度の濃淡画像データを作成した。この濃淡画像データを凹凸模様画像データともいう。
(2)金属ロール準備工程
図15に示したようなエンボス版彫刻用の金属ロール20を準備した。金属ロール20は、軸方向両端部に回転駆動軸(shaft)21を有する中空の鉄製の円筒の表面に銅層をメッキ形成したものである。砥石で金属ロール20の表面を研磨して粗面化し、彫刻用レーザ光の鏡面反射による彫刻効率の低下を防止する処理をした。
(3)レーザ光彫刻工程
図15に模式的に示したように、レーザ光直接彫刻機を用い、工程(2)で用意した金属ロール20の表面を工程(1)で作成した凹凸模様画像データに基づき彫刻する。これによりその表面に化粧材表面の溝13による凹凸模様と同一平面視形状で且つ逆凹凸(化粧材の凸線条に対応する部分がエンボス版面上では凹線条となる関係)の凹凸形状を形成した。
従ってエンボス版における凹凸模様が備えるべき形状は、上記した化粧材における溝13による凹凸模様の凹凸関係が反転した態様であり、同様に考えることができる。
金属ロール20をその回転駆動軸21を介して電動機で駆動し、回転駆動軸21を中心軸として回転する。レーザーヘッド22から出射されるレーザ光Pで金属ロール20の表面を走査する。蒸発した金属が粉体となって金属ロール20の表面に残留又は付着することを防止するため、彫刻液吐出口23から彫刻液Tを金属ロール20の表面のレーザ光照射領域に吹き付けた状態でレーザ光照射を行う。
(4)電界研磨工程
彫刻液を洗浄した後、電解研磨を行い、金属ロール20の表面に付着した金属の残渣を除去した。
(5)クロムメッキ工程
工程(4)の後、金属ロール表面にメッキにより厚さ10μmのクロム層を形成した。
以上により模様形成層12の表面に形成された溝13による凹凸模様の凹凸が反転した凹凸形状を表面に備える版(化粧材用成形型、本形態ではエンボス版)を得ることができる。
<模様形成層の溝を形成する工程>
次に、模様形成層の溝を形成する工程では、作製された版(エンボス版)を用いて、基材11にエンボス加工を行えば溝13が得られる。エンボス加工は、適宜な公知の方法によれば良く、特に制限はない。エンボス加工の代表的な方法は例えば次のようなものである。
基材としてポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂シートを用いる。この基材を加熱軟化させ、その表面にエンボス版を押圧して該樹脂シート表面にエンボス版表面の凹凸模様を賦形する。そして樹脂シートを冷却して固化させて樹脂シート上の凹凸模様を固定する。その後に凹凸模様が賦形された樹脂シートをエンボス版から離型する。
ここで、各種エンボス加工法について、さらに説明すると例えば次の(A)乃至(E)のような方法がある。
(A)基材となる樹脂シートを加熱軟化させ、エンボス版を押圧して、エンボス加工する。
(B)エンボス版を押圧する時の熱圧で表面シートとなる樹脂シート(基材)とベースシートとする樹脂シート(第2の基材)とを熱融着することにより、エンボス加工とラミネートとを同時に行うダブリングエンボス法によりエンボス加工する。
(C)表面シートとする樹脂シート(基材)を、Tダイから溶融押出しをし、冷却ローラを兼ねるシリンダ状のエンボス版上に接触させて表面シートの成膜と同時にエンボス加工する。このとき、さらに表面シートの裏面側に挿入したベースシートとする樹脂シート(第2の基材)を熱融着させてダブリングエンボスを成膜と同時に行う。
(D)特開昭57-87318号公報、特開平7-32476号公報等に開示の如く、シリンダ状のエンボス版の表面に電離放射線硬化性樹脂の未硬化液状物を塗工する。さらにその上に、樹脂シート等からなるベースシートを重ねた状態で電離放射線を照射して未硬化液状物を硬化させて硬化物とする。その際、該硬化物をベースシートと接着させた後、エンボス版から離型して、ベースシートと該ベースシート上の硬化物とからなる基材とすることで、基材にエンボス加工する。
(E)チタン紙等の紙にメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化物を含浸した含浸紙を、コア紙、木材合板上等の裏打材上に載置して、これら載置した複数層を熱プレス成形することによって各層を積層一体化して熱硬化性樹脂化粧材を作製する。そのとき、含浸紙表面側にエンボス版を挿入することによって、熱硬化性樹脂を含浸硬化させて化粧材とする際にその表面に熱プレスと同時にエンボス加工する。
なお、(A)乃至(C)のエンボス加工法で用いる基材の材料としては代表的には熱可塑性樹脂が使用され、(D)のエンボス加工法で用いる基材の材料としては代表的には電離放射線硬化性樹脂が使用され、(E)のエンボス加工法で用いる基材の材料としては代表的には熱硬化性樹脂が使用される。
<インキを充填する工程>
インキを充填する工程では、基材11の表面に形成された溝13にインキを充填してインキ部14を形成する。これは、基材11のうち溝13が形成された側の面にインキ部14となるべき材料のインキ(未硬化状態)を供給し、その上をドクターブレードで掻く(ワイピングする)ことにより行う。これにより、余分なインキを除去することができるとともに溝13内にインキを押し込むことができる。
そして、適切な方法によりインキを硬化させることにより化粧材10となる。
[化粧材の用途]
以上説明した化粧材の用途は特に制限は無いが、例えば、壁、床、天井等の建築物の内装材、建築物の外壁、屋根、門扉、塀、柵等の外裝材、扉、窓枠、扉枠等の建具、廻り縁、幅木、手摺等の造作部材の表面材、テレビ受像機、冷蔵庫等の家電製品や複写機等の事務機器の筐体の表面材、箪笥等の家具の表面材、箱、樹脂瓶等の容器の表面材、車両等の内装材又は外装材、船舶の内装材又は外装材等である。
10 化粧材
11 基材
12 模様形成層
13 溝
14 インキ部

Claims (1)

  1. 溝を備える化粧材であって、
    溝が形成された側の平面視において前記溝が複数配置されており、
    前記溝は該溝の幅方向端部の少なくとも一方が前記平面視で2次元方向のいずれかに延びており、
    前記複数の溝は、異なる方向に延びる溝を含む、化粧材。
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