JP6911704B2 - 化粧材 - Google Patents

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Description

本発明は化粧材に関し、従来とは異なる質感を備える化粧材に関する。
化粧材における意匠表現は多岐に亘るが、例えば特許文献1〜特許文献3に記載のように、多数の万線状の凹凸模様を設けることで、表面で反射される光線の強度、すなわち光沢度が、照明光の入射角及び観察者の視線方向の組み合わせに応じて変化する特有の外観上の質感を持たせる技術がある。このように多数の万線状の凹凸模様を形成することで、例えば木材の表面(木目)の照り感を表現することもできる。
特公平7−22989号公報 特開平4−125199号公報 特許第4612200号公報
このような万線状の凹凸模様は、複数の領域に分けられ、隣り合う領域で万線の高さ、幅、ピッチ及び万線が延びる方向の少なくとも1つが異なるように構成されている。これにより領域が視覚的に区別されている。
ところが、隣り合う領域間における視覚的な区別、触感的な区別が必ずしも明確でないことがあった。
そこで本発明は、これまでとは異なる質感を与え、特に視覚的、触感的に複数の領域を区別し易い質感を与えることができる構造を具備した化粧材を提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。
本発明の1つの態様は、表面に凹凸模様が形成されてなる化粧材であって、凹凸模様は、万線状の凸線条部及び凹線条部が交互に配列した形態であり、凸線条部の高さ、幅、ピッチ及び延びる向きのうち少なくとも1つが異なる領域が複数具備され、隣り合う領域の間には凸条又は凹条からなる境界手段が形成されている、化粧材である。
上記化粧材において、境界手段が凸条であるときに、当該凸条が、隣接する領域の凸線条部よりも高く形成されるように構成してもよい。
上記化粧材において、境界手段が凸条であるときに、当該凸条が、隣接する領域の凸線条部よりも低く形成されるように構成してもよい。
上記化粧材において、複数の領域には、隣り合う領域で凸線条部の高さが異なる領域が含まれるように構成されてもよい。
上記化粧材において、領域に含まれる複数の凸線条部は、その頂部を含む仮想の包絡面が凹凸を有するように高さが異なる形状であってもよい。
本発明の化粧材によれば、領域間に配置される境界手段によって隣り合う領域間における視覚的な区別、触感的な区別を際立たせることができ、これまでとは異なる質感を与え、特に視覚的、触感的に複数の領域を区別し易い質感を与えることができる。
化粧材10の表面の一部を拡大して表した平面図である。 図1の一部をさらに拡大して表した図である。 図3(a)〜図3(c)はいずれも化粧材10の断面を表した図である。 化粧材10の断面のうち境界手段30を含む部位を拡大した図である。 領域の他の形態を表す断面図である。 化粧材10の断面のうち凸条から成る境界手段30’を含む部位を拡大した図である。 化粧材10の断面のうち凹条から成る境界手段30”を含む部位を拡大した図である。 化粧材50の表面の一部を拡大して表した図である。 網状領域について説明する図である。 レーザにより型に凹凸を形成する場面を説明する図である。 図11(a)〜図11(c)は、化粧材10の層構成の他の例を説明する図である。
以下、本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら形態に限定されるものではない。なお、以下に示す図面では分かりやすさのため部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見やすさのため説明上不要な部分の図示や繰り返しとなる符号は省略することがある。
図1は第1の形態にかかる化粧材10の一部を拡大し、模様形成層12側から平面視した図(平面図)である。図1には便宜のため、方向を表す矢印(x、y、z)も表した。ここでxy方向は化粧材10における面内方向、z方向は厚さ方向である。従って図1は化粧材10を模様形成層12側の特にz方向から視た図と言うことになる。
図1からわかるように本形態の化粧材10は、正六角形の領域である単位領域13が平面視で2次元的にxy方向に配列されて所謂6方最密充填構造又は正角形の平面内タイル貼り構造をなし、さらに、隣り合う単位領域13の間に境界手段30が設けられている。
なお、ここで言う単位領域とは、繰り返し単位、即ち、平面(xy平面)内において、並進対称性を有する方向(3対の対辺と直交する方向)に隣接して繰り返し配列することにより平面を被覆することが可能な単位となる領域を意味する。
図2には、図1のうちから一部を抜き出し、特に隣り合う3つの単位領域13に注目して拡大した図を表した。図2からわかるように、単位領域13はさらに複数の個別領域14〜個別領域23の10領域に分かれており、個別領域14〜個別領域23にそれぞれの凹凸模様が形成されている。
本形態の化粧材10では繰り返し単位としての単位領域13が配列され、この単位領域13の中にそれぞれの凹凸模様を具備する個別領域14〜個別領域23が形成されるとともに、隣り合う単位領域13の間に境界手段30が設けられている例である。ただし本発明は、このような繰り返し単位としての単位領域は必ずしも必要ではなく、後述する第2の形態のように、単位領域を形成することなく、個別領域がxy平面に亘って複数配置され、個別領域の間に境界手段が設けられたものであってもよい。本形態では2種類の領域が存在するため、わかり易さのために「単位領域」及び「個別領域」と呼んで区別するが、これらを総称して「領域」として表現することもできる。
図1、図2には一部に点線が示されている。この点線は実際には存在しない線であるが、単位領域及び個別領域の境界をわかり易くするために付した仮想の線である。図1からわかるように本形態では単位領域13は正六角形であり、単位領域13内において各個別領域14〜個別領域23は三角形である。
図3(a)〜図3(c)には、個別領域14〜個別領域23のうち、3つの個別領域14、15、16が備える断面形状を表した。この断面はいずれも個別領域に形成される凸線条部の稜線が延びる方向に対して直交する厚さ方向(z方向)断面である。
図3(a)〜図3(c)からわかるように、化粧材10は、基材11及び該基材11の一方の面に積層された模様形成層12を有して構成されている。この模様形成層12が上記単位領域13及び個別領域14〜個別領域23の形状を形成している。
図4には、図2にAで示した線に沿った化粧材10の厚さ方向断面図を表した。従って図4には、隣り合う単位領域13の間に設けられた境界手段30の断面が表れている。より詳しくは、1つの単位領域13の個別領域21と、隣り合う単位領域13の個別領域18との間に設けられた境界手段30である。
この断面は境界手段30が延びる方向に対して直交する厚さ方向断面である。
以下、各構成についてさらに詳しく説明する。
基材11は、模様形成層12を支持するとともに化粧材10に強度を付与する機能を有するシート状の部材である。基材11は従来公知の化粧材と同様の機能を有するものであればよいので、その材料は特に限定されない。例えば、基材の材料としては、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、或いは、ラジカル重合型のアクリレート系やカチオン重合型のエポキシ系等で電離放射線(紫外線、電子線等)で硬化する電離放射線硬化性樹脂等が用いられる。なお、基材の材料が樹脂の場合、公知の着色剤で着色しても良い。この他、紙、不織布、金属、木等もシート、板、立体物等の形状で、適宜上記樹脂材料と積層させて、使用することもできる。
基材の厚さには特に制限は無いが、シート状基材又はフィルム状基材の場合は、例えば、厚さ20μm以上1000μm以下程度、板状基材の場合は、例えば、1mm以上20mm以下程度のものが使用される。
模様形成層12は、基材11の一方の面に積層され、化粧材に模様を付与するする層であり、本形態では単位領域13及び個別領域14〜個別領域23のように所定の凹凸形状を有して凹凸模様を構成している。本形態で模様形成層12は次のような形態を備えている。
上記したように、本形態の模様形成層12は、化粧材10の平面視で正六角形の単位領域13を有し、複数の単位領域13が2次元的にxy平面内に配列されて基材11を被覆している。そして、各々の単位領域13が複数の個別領域14〜個別領域23に分かれており、個別領域ごとにそれぞれの凹凸形状が形成されている。以下個別領域14、15、16を例に説明する。
個別領域14は図2、及び図3(a)からわかるように、凹凸模様が形成されており、この凹凸模様は万線状の凸線条部14aと凹線条部14bとが交互に配列してなる。
この凸線条部14aは図3(a)に表れる断面において高さH14a、幅W14aの長方形とされている。凸線条部14aはこの断面を有して、その稜線が配列方向とは異なる方向(例えば配列方向に直交する方向)に延びるように構成されている。凸線条部14aが延びる長さは個別領域14の輪郭形状により決まる。
同様に凹線条部14bは図3(a)に表れる断面において深さD14b、及び幅W14bの長方形とされている。凹線条部14bはこの断面を有して配列方向とは異なる方向(例えば配列方向に直交する方向、凸線条部14aに平行)に延びるように構成されている。凹線条部14bが延びる長さは個別領域14の輪郭形状により決まる。なお、凹線条部14bの形状はその性質上、凸線条部14aの形状に基づくものとなる。
凸線条部14a及び凹線条部14bのピッチP14はW14aとW14bとの和により得ることができる。
ここで、W14a、W14b、H14a、D14bの大きさは特に限定されることはないが、化粧材の模様を形成するという観点から微細なものあることが好ましい。より好ましくは、本形態ではそれぞれ、1μm≦W14a≦1000μm、1μm≦W14b≦1000μm、3μm≦H14a≦3000μm、3μm≦D14a≦3000μmである。
また、凸線条部14aにおける高さと幅の比であるH14a/W14a(アスペクト比とも言う。)は1よりも大きいことが好ましい。これによれば化粧材の質感をさらに新しいものとすることができる。但し、アスペクト比が大き過ぎると、型製造の難度が上がり、又、型及び化粧材において外力が加わった際に凹凸模様への応力が集中しては損傷し易くなる。そのため、通常は、H14a/W14aは5以下、好ましくは3以下とされる。
なお、本形態の凸線条部14aの断面形状は長方形であるが、これに限定されることなく他の形態であってもよい。これには例えば台形、先端が半円形である形状、及び、出隅部、入隅部にRが形成され形状等を挙げること等ができ、適宜変更することは可能である。凹線条部14bは隣り合う2つの凸線条部14aの間に形成されるため、その断面形状は凸線条部14aの形状により決まる。他の個別領域における凸線条部及び凹線条部も同様である。
ここで凸線条部の幅はその高さ方向中央における幅を凸線条部の幅とする。同様に凹線条部の幅はその深さ方向中央における幅を凹線条部の幅とする。
模様形成層12を形成する材料は、化粧材に用いられる通常の材料を適宜用いることができる。基材を加熱軟化させて型(エンボス版)を押圧するのであれば模様形成層12は基材11と同じ材料により形成される。また模様形成層12を基材11と別層として基材11に積層するのであれば、溶融した組成物を成形後に硬化させる観点から、基材11とは別に準備した、上記挙げたような基材11と同様の樹脂を用いることができる。
個別領域15は、両領域境界を挟んで個別領域14に隣り合う個別領域であり、図2、及び図3(b)からわかるように、凹凸模様が形成されている。この凹凸模様は万線状の凸線条部15aと凹線条部15bとが交互に配列してなる。
凸線条部15aは図3(b)に表れる断面において高さH15a、及び幅W15aの長方形とされている。凸線条部15aはこの断面を有してその稜線が配列方向とは異なる方向(例えば配列方向に直交する方向)で、かつ、個別領域14の凸線条部14aが延びる方向とは異なる方向に延びるように構成されている。凸線条部15aが延びる長さは個別領域15の輪郭形状により決まる。
凹線条部15bは図3(b)に表れる断面において深さD15b、及び幅W15bの長方形とされている。凹線条部15bはこの断面を有して配列方向とは異なる方向(例えば配列方向に直交する方向、凸線条部15aに平行)に延びるように構成されている。凹線条部15bが延びる長さは個別領域15の輪郭形状により決まる。なお、凹線条部15bの形状はその性質上、凸線条部15aの形状に基づくものとなる。
従って凸線状部15a及び凹線条部15bのピッチP15はW15aとW15bとの和により得ることができる。
ここで、個別領域15における高さH15a、深さD15b、幅W15a、幅W15bの好ましい大きさの範囲は個別領域14と同様に考えることができる。これに加えて個別領域15では、個別領域14との関係で、H14a>H15aであることが好ましい。さらに、本形態で個別領域15は、D14b>D15b、W14a=W15a、W14b<W15b、及び、P14<P15とされている。
個別領域16も両領域の境界を挟んで個別領域14に隣り合う個別領域であり、図2、及び図3(c)からわかるように、凹凸模様が形成されている。この凹凸模様は万線状の凸線条部16aと凹線条部16bとが交互に配列してなる。
凸線条部16aは図3(c)に表れる断面において高さH16a、及び幅W16aの長方形とされている。凸線条部16aはこの断面を有してその稜線が配列方向とは異なる方向(例えば配列方向に直交する方向)で、かつ、個別領域14の凸線条部14aが延びる方向とは異なる方向に延びるように構成されている。凸線条部16aが延びる長さは個別領域16の輪郭形状により決まる。
凹線条部16bは図3(c)に表れる断面において深さD16b、及び幅W16bの長方形とされている。凹線条部16bはこの断面を有して配列方向とは異なる方向(例えば配列方向に直交する方向、凸線条部16aに平行)に延びるように構成されている。凹線条部16bが延びる長さは個別領域16の輪郭形状により決まる。なお、凹線条部16bの形状はその性質上、凸線条部16aの形状に基づくものとなる。
従って凸線状部16a及び凹線条部16bのピッチP16はW16aとW16bとの和により得ることができる。
ここで、個別領域16における高さH16a、深さD16b、幅W16a、幅W16bの好ましい大きさの範囲は個別領域14と同様に考えることができる。これに加えて個別領域16ではH14a>H16aであることが好ましい。さらに、本形態で個別領域16は、D14b>D16a、W14a<W16a、W14b<W16b、及び、P15=P16とされている。
他の個別領域17〜個別領域23についても同様に考えることができ、凸線条部の高さ、幅、ピッチ及び延びる向きの少なくとも1つにおいて隣の個別領域と異なっていることが好ましい。
これらにより、模様形成層12でこれまでとはさらに異なる特有の質感を表現することができる。
この中でも、複数存在する領域(単位領域及び個別領域を問わず模様形成層に存在する領域の総称としての領域。)の間で、例えば個別領域14と個別領域15との関係のように、凸線条部の高さが異なる関係にある領域が含まれることが好ましい。このように高さが異なる関係にある複数の領域を含むことで、従来と異なる質感の表現の多様性を高めることができる。
ここで、このように凸線条部における高さを領域間で異なるものとする際には、次のようにしてもよい。すなわち、凸線条部の幅をW、凹線条部の幅をWとしてW/Wをデューティー比としたとき、凸線条部の高さHによらずデューティー比W/Wが同じ、又は、凸線条部の高さHが高いものほどデューティー比W/Wが小さくなるように構成することができる。これにより従来に対してさらに異なる質感の表現をすることができる。因みに、特許文献1(特許第4612200号公報)に開示された化粧材に於いては、金属の版材上に版下画像からの露光でパターニングされた感光性レジスト膜を介してしての腐蝕により製造したエンボス版により賦形する為、所謂サイドエッチング現象により必然的にデューティー比W/Wは高さHの増大と共に増大するものしか製造し得無い(特許文献1の図1参照)。
なお、ここまで示した各領域の凸線条部はその稜線が直線状に延びる形態であるが、これに限らず、平面視に於いて、凸線条部は稜線が延びる方向に対して放物線、双曲線、正弦波曲線、双曲線正弦関数曲線、楕円関数曲線、サイクロイド曲線等の曲線状乃至は波型状など他の形態となるようにすることもできる。
図5には変形例を説明する図を示した。変形例では凸線条部及び凹線条部の形態が異なる。図5には代表して個別領域14についてのみ示したが、他の領域も同様に考えることができる。
本例では、図5からわかるように、個別領域14に属する複数の凸線条部14aは基材側(基端部側)とは反対側(頂部側)において全体として凹凸を有している。この凹凸は、図5に符号Sで表した点線のように、凸線条部14aの頂部の稜線を含むような仮想の包絡面を模様頂部包絡面Sとしたとき、この仮想包絡面Sが凹凸を有するように形成されている。すなわち、xy方向位置において凸線条部14aの高さが一定でなく、xy方向の位置により当該高さが変わるような凹凸面とされている。尚、図5は断面図である為、図示されているものは該模様頂部包絡面Sのzx平面で切断された曲線となる。
個別領域の凸線条部及び凹線条部をこのように形成することによりさらに、外観上及び触感上、質感の異なる模様を提供することができる。
なお、このような場合において、隣り合う個別領域で凸線条部の高さが異なるとは、1つの個別領域に属する凸線条部の平均高さを代表高さとし、隣り合う個別領域と当該代表高さが異なることを意味する。
次に図2及び図4に戻り境界手段30について説明する。境界手段30は、隣り合う単位領域13の間に設けられて、両者の境界に配置される部位であり、本形態では、図4に表れているように高い凸条により形成されている。
具体的には本形態の境界手段30は高さH30a、幅W30aを有する長方形断面を有し、この断面を有して個別領域13間の境界に沿って延びている。
本形態では境界手段30が個別領域の凸線条部に対して大きく突出するように構成されており、これにより特に視覚的、触感的に複数の領域を区別し易い質感を与えている。また、化粧材の表面を爪等で引っかくようにした場合に、このような境界手段が存在することにより、境界手段が存在しない場合に対して発生する音が変わり、かかる観点からもこれまでとは異なる化粧材を提供することができる。
より具体的には、例えば境界手段30の高さH30aを、当該境界手段30に隣接する凸線条部である、図4にNで示した凸線条部18a、及び図4にMで示した凸線条部21aよりも高くすることにより構成することができる。
境界手段30の高さH30aは、30μm以上800μm以下の範囲、且つ境界手段30と隣接する凸線条部18a及び凸線条部21aとの高度差を10μm以上500μm以下とすることが、外観的及び触感的に明確に隣接領域間を弁別し得る上で好ましい。
また、さらには境界手段30の幅W30aも当該境界手段30に隣接する凸線条部である、図4にNで示した凸線条部18a、及び図4にMで示した凸線条部21aの幅より大きくしたり、小さくしたりしてもよい。
境界手段30の幅W30aは、10μm以上5000μm以下の範囲、且つ境界手段30と隣接する凸線条部18a及び凸線条部21aとの幅差を20μm以上500μm以下とすることが、外観的及び触感的に明確に隣接領域間を弁別し得る上で好ましい。
図6には他の形態の境界手段30’が適用された例を表した。図6は図4と同じ視点による図である。この境界手段30’も、隣り合う単位領域13の間に設けられて、両者の境界に配置される部位であり、本形態では、境界手段30が隣接する凸線条部18a及び21aよりも低い凸条により形成されている。
具体的には本形態の境界手段30’は高さH30’a、幅W30’aを有する長方形断面を有し、この断面を有して個別領域13間の境界に沿って延びている。
本形態では境界手段30’が個別領域の凸線条部に対して低くなるように構成されており、これにより特に視覚的、触感的に複数の領域を区別し易い質感を与えている。また、化粧材の表面を爪等で引っかくようにした場合に、このような境界手段が存在することにより、境界手段が存在しない場合に対して発生する音が変わり、かかる観点からもこれまでとは異なる化粧材を提供することができる。
より具体的には、例えば境界手段30’の高さH30’aを、当該境界手段30’に隣接する凸線条部である、図6にNで示した凸線条部18a、及び図6にMで示した凸線条部21aよりも低くすることにより構成することができる。
境界手段30’の高さH30’aは、5μm以上300μm以下の範囲、且つ境界手段30’と隣接する凸線条部18a及び凸線条部21aとの高度差を10μm以上500μm以下とすることが、外観的及び触感的に明確に隣接領域間を弁別し得る上で好ましい
また、さらには境界手段30’の幅W30’aを当該境界手段30’に隣接する凸線条部である、図6にNで示した凸線条部18a、及び図6にMで示した凸線条部21aの幅より大きくしたり、小さくしたりしてもよい。
境界手段30’の幅W30’aは、10μm以上5000μm以下の範囲、且つ境界手段30’と隣接する凸線条部18a及び凸線条部21aとの幅差を20μm以上500μm以下とすることが、外観的及び触感的に明確に隣接領域間を辨別し得る上で好ましい。
図7には他の形態の境界手段30”が適用された例を表した。図7は図4と同じ視点による図である。この境界手段30”も、隣り合う単位領域13の間に設けられて、両者の境界に配置される部位であり、本形態では、境界手段30”が隣接する凸線条部18a及び凸線条部21aよりも凹となる凹条により形成されている。
具体的には本形態の境界手段30”は深さD30”b、幅W30”bを有する長方形の断面を有し、この断面を有して個別領域13間の境界に沿って延びている。
本形態では境界手段30”が個別領域の凸線条部の基端部(基材11側端部)に対してさらに深くなるように溝状に構成されており、これにより特に視覚的、触感的に複数の領域を区別し易い質感を与えている。また、化粧材の表面を爪等で引っかくようにした場合に、このような境界手段が存在することにより、境界手段が存在しない場合に対して発生する音が変わり、かかる観点からもこれまでとは異なる化粧材を提供することができる。
より具体的には、例えば境界手段30”の深さD30”bを、当該境界手段30”に隣接する凸線条部である、図7にNで示した凸線条部18a、及び図7にMで示した凸線条部21aの基端部から5μm以上300μm以下とすることにより構成することができる。
また、さらには境界手段30”の幅W30”bを当該境界手段30”に隣接する凸線条部である、図7にNで示した凸線条部18a、及び図7にMで示した凸線条部21aの幅より大きくしたり、小さくしたりしてもよい。
境界手段30”の幅W30”bは、10μm以上5000μm以下の範囲、且つ境界手段30”と隣接する凸線条部18a及び凸線条部21aとの幅差を20μm以上500μm以下とすることが、外観的及び触感的に明確に隣接領域間を弁別し得る上で好ましい。
ここで説明した各境界手段30、30’、30”は、いずれも断面形状は長方形であるが、これに限定されることなく他の形態であってもよい。これには例えば台形、先端が半円形である形状、及び、出隅部、入隅部にRが形成され形状等を挙げること等ができ、適宜変更することは可能である。
また、境界手段の形状は1つの化粧板の中で一定である必要はなく部位によって異なるものであってもよい。
図8には、第2の形態にかかる化粧材50を平面視した図を表した。図8は、図1に相当する図である。この化粧材50では、模様形成層52において、領域53〜領域57がx方向に順次配列され、各領域の境界部分に境界手段61〜境界手段64が配置されている。各領域53〜領域57には上記個別領域の例に倣って凸線条部及び凹線条部が具備され、各境界手段61〜境界手段64には上記境界手段の例に倣って境界手段30、30’、及び30”から選ばれた何れか1種又は2種以上の境界手段が形成されている。
このような化粧材50によっても上記効果を奏するものとなる。
次に化粧材10の製造方法の例を説明する。ただし、化粧材10を製造する方法がこれに限定されることはない。
以下に説明する製造方法には、原稿画像を作製する工程、版下画像を作製する工程、版を作製する工程、模様形成層及び境界手段を形成する工程を含んでいる。
原稿画像を作製する工程では、模様形成層12に表現すべき平面視に於ける模様、及び境界手段30を取得してこれを原稿画像とする。原稿画像はデジタルデータであることが好ましいため、デジタルデータでない場合には写真やスキャナ等を用いることによりデジタルデータ化する。また、初めから模様をCAD等を用いてデジタルデータを利用して設計していた場合にはそのデジタルデータを用いることができる。
これで、デジタルデータとして原稿画像が得られる。
版下画像を作製する工程では、得られた原稿画像を、濃度−万線変換プログラムによって、模様の階調画像に対応して二値画像としての万線パターン及び境界手段を二次元仮想平面上に生成して配置し、デジタルデータとして版下画像を得る。
ここでは、予め設定しておいた、凸線条部の周期、万線の線形状、線が延びる方向、万線の幅の可変レンジ等の万線生成条件に従い、二値画像として図1の如き万線及び境界手段の平面視画像を生成する。このようにして生成された万線及び境界手段は、その線分部分が、化粧材における凸線条部に該当し、線分と線分との間の部分が化粧材における凹線条部に該当する。このようにして、万線模様を有する版下画像が得られる。
版を作製する工程では、版下画像に基づいて図1の如き平面視形状の模樣を表面に有するエンボス版(化粧材用成形型)の作製を行う。
該模樣は、閉領域からなる各個別領域14〜23、14〜23、14〜23、…が相互に隣接して連結することで平面を区画して被覆した個別領域の集合体を有する。
ここで、このような凹凸模様は、図1に対応する図9に示したように、各領域及び境界手段の輪郭形状のみからなり万線状の凸線条部及び凹線条部を具備しない画像である網状領域12’に対して、各個別領域に相当する領域内14〜23、14〜23、…内に万線状の凸線条部14a、15a、16a・・・及び凹線条部14b、15b、16b、…を交互に配列してなるものと考える。
そして具体的には凹凸模様の製造工程は以下の手順(1)〜(5)からなる。
〔(1)濃淡階調版下画像作成工程〕
以下の画像作成工程(1)−1〜(1)−3を、アドビシステムズ社製のグラフィックデザイン描画ソフトウエア「Illustrator」を用い、TIFF形式で8bitの画像濃淡階調(256階調)で2540dpiの解像度の画像データ(網状領域、万線、及び両者の合成画像)を作成した。
(1)−1
先ず、図1の模様の平面視画像から、万線画像を除いた図9に示した画像に相当する網状領域12’の画像を作成した。
(1)−2
描画ソフトウエア「Illustrator」を用い、各個別領域14、15、…、22、23に嵌め込むべき万線状の凸線条部及び凹線条部14a及び14b、15a及び15b、…、22a及び22b、23a及び23bの形状(以下、万線形状ともいう。)に対応するデジタルの濃淡画像データを作成した。該濃淡画像は、後述の金属ロール表面の一座標毎に画像濃度を対応させたものである。
(1)−3
描画ソフトウエア「Illustrator」を用い、以上で得られた網状領域内の各個別領域内に以上で得られた各個別領域用の万線形状を嵌め込み、図1の凹凸模様に対応する濃淡画像データを得た。この濃淡画像データを凹凸模様画像データともいう。
〔(2)金属ロール準備工程〕
上記工程(1)と並行して、図10に示したようなエンボス版彫刻用の金属ロール70を準備した。金属ロール70は、軸方向両端部に回転駆動軸(shaft)71を有する中空の鉄製の円筒の表面に銅層をメッキ形成したものである。砥石で金属ロール70の表面を研磨して粗面化し、彫刻用レーザ光の鏡面反射による彫刻効率の低下を防止する処理をした。
〔(3)レーザ光彫刻工程〕
図10に模式的に示したように、レーザ光直接彫刻機を用い、工程(2)で用意した金属ロール70の表面を工程(1)で作成した凹凸模様画像データに基づき彫刻する。これによりその表面に図1のような化粧材表面の凹凸模様と同一平面視形状で且つ逆凹凸(化粧材の凸に対応する部分がエンボス版面上では凹となる関係)の凹凸形状を形成した。
従ってエンボス版における凹凸模様が備えるべき形状は、上記した化粧材における凹凸模様の凹凸関係が反転した態様であり、同様に考えることができる。
金属ロール70をその回転駆動軸71を介して電動機で駆動し、回転駆動軸71を中心軸として回転する。レーザーヘッド72から出射される発振波長1024nm、レーザスポット径10μm、出力600Wのファイバーレーザ光Lで金属ロール70の表面の全面を走査する。その際には工程(1)で作成した凹凸模様画像データの濃度値に応じてレーザ光をON−OFF切換(照射又は非照射の切換)を行い、照射位置には1回のレーザ光照射による金属の蒸発で深さ10μmの凹部を形成する。かかるレーザ光による金属ロール表面に対する走査を10回繰り返した。また、蒸発した金属が粉体となって金属ロール70の表面に残留又は付着することを防止するため、彫刻液吐出口73から彫刻液Tを金属ロール70の表面のレーザ光照射領域に吹き付けた状態でレーザ光照射を行った。
その際に、例えば、凹凸模様画像データ上で版深50μmに対応する画像濃度の位置座標においては、合計10回の走査のうち、最初の5回分のみレーザ光を照射(ON)し、残り5回分についてはレーザ光は非照射(OFF)となるよう制御する。
かかるレーザ光の走査を完了させ、金属ロール30の表面に所望の凹凸形状を形成した。
〔(4)電界研磨工程〕
彫刻液を洗浄した後、電解研磨を行い、金属ロール70の表面に付着した金属の残渣を除去した。
〔(5)クロムメッキ工程〕
工程(4)の後、該金属ロール表面にメッキにより厚さ10μmのクロム層を形成した。
以上により粗面形成層12の表面に形成された凹凸模様の凹凸、及び境界手段30の凸が反転した凹凸形状を表面に備える版(化粧材用成形型、本形態ではエンボス版)を得ることができる。
次に、模様形成層、及び境界手段を形成する工程で、作製された版(エンボス版)を用いて、基材11にエンボス加工を行えば化粧材10が得られる。エンボス加工は、適宜な公知の方法によれば良く、特に制限はない。エンボス加工の代表的な方法例えば次のようなものである。
基材としてポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂シートを用いる。この基材を加熱軟化させ、その表面にエンボス版を押圧して該樹脂シート表面にエンボス版表面の凹凸模樣を賦形する。そして樹脂シートを冷却して固化させて樹脂シート上の凹凸模様を固定する。その後に凹凸模様が賦形された樹脂シートをエンボス版から離型する。
ここで、各種エンボス加工法について、さらに説明すると例えば次の(A)〜(E)のような方法がある。
(A)基材となる樹脂シートを加熱軟化させ、エンボス版を押圧して、エンボス加工する。
(B)エンボス版を押圧する時の熱圧で表面シートとなる樹脂シート(基材)とベースシートとする樹脂シート(第2の基材)とを熱融着することにより、エンボス加工とラミネートとを同時に行うダブリングエンボス法によりエンボス加工する。
(C)表面シートとする樹脂シート(基材)を、Tダイから溶融押出しをし、冷却ローラを兼ねるシリンダ状のエンボス版上に接触させて表面シートの成膜と同時にエンボス加工する。このとき、さらに表面シートの裏面側に挿入したベースシートとする樹脂シート(第2の基材)を熱融着させてダブリングエンボスを成膜と同時に行う。
(D)特開昭57−87318号公報、特開平7−32476号公報等に開示の如く、シリンダ状のエンボス版の表面に電離放射線硬化性樹脂の未硬化液状物を塗工する。さらにその上に、樹脂シート等からなるベースシートを重ねた状態で電離放射線を照射して未硬化液状物を硬化させて硬化物とする。その際、該硬化物をベースシートと接着させた後、エンボス版から離型して、ベースシートと該ベースシート上の硬化物とからなる基材とすることで、基材にエンボス加工する。
(E)チタン紙等の紙にメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化物を含浸した含浸紙を、コア紙、木材合板上等の裏打材上に載置して、これら載置した複数層を熱プレス成形することによって各層を積層一体化して熱硬化性樹脂化粧材を作製する。そのとき、含浸紙表面側にエンボス版を挿入することによって、熱硬化性樹脂を含浸硬化させて化粧材とする際にその表面に熱プレスと同時にエンボス加工する。
なお、(A)〜(C)のエンボス加工法で用いる基材の材料としては代表的には熱可塑性樹脂が使用され、(D)のエンボス加工法で用いる基材の材料としては代表的には電離放射線硬化性樹脂が使用され、(E)のエンボス加工法で用いる基材の材料としては代表的には熱硬化性樹脂が使用される。
以上のようにして化粧材10を得ることができる。図8の化粧材50も、基本的には、以上説明した化粧材10と同様の製造方法により得ることができる。
次に、化粧材10の変形例を説明する。図11(a)〜図11(c)に層構成を示した。ここで図11(a)〜図11(c)では代表して模様形成層12の一部として領域14が表れているが、他の部分は上記した通りである。
図11(a)の構成の化粧材10’は単層からなる化粧材である。このような化粧材10’は、例えば、熱可塑性樹脂シートからなる基材11を、加熱軟化してエンボス版を押圧するエンボス加工を行えば良い。この結果、基材11の表面には、所望の凹凸形状の凸線条部14a及び凹線条部14bを具備する模様形成層12、及び境界手段30による凹凸模様が賦形される。この構成では付加的な装飾層は無いが、基材11を透明なものとした場合でも、他の素材に積層することで、当該他の素材の模様を活かして表面化粧することができる。また、基材11は適宜着色剤で茶色や灰色等に着色してもよく、この場合には基材自体が装飾層となる。
図11(b)の構成の化粧材10’’は、図11(a)の構成に対して、基材11の裏側に装飾層11aを形成した構成である。この様な構成の化粧材10’’を作製するには、例えば、基材11としては装飾層11aが透視できる様に透明な樹脂シートを使用し、この基材11の裏側とする面に装飾層11aを印刷形成した後、加熱軟化させてエンボス版を表側とする面に押圧するエンボス加工を行えば良い。
図11(c)の構成の化粧材10’’’は、図11(b)の構成に対して、さらに装飾層11aの面のうち模様形成層12が配置される側とは反対側にもベースシートとする他の基材11bを積層した例である。この様な構成の化粧材10’’’を作製するには、ベースシートとする着色した不透明な熱可塑性樹脂シートからなる基材11bの表側とする面に、装飾層11aを印刷形成した後、このベースシートと、表面シートとする透明な熱可塑性樹脂シートからなる基材11とを、ダブリングエンボス法で熱融着によって積層すると同時に基材11の表面に所望の凹凸模様をエンボス加工すれば良い。
以上説明した化粧材の用途は特に制限は無いが、例えば、壁、床、天井等の建築物の内装材、建築物の外壁、屋根、門扉、塀、柵等の外裝材、扉、窓枠、扉、扉枠等の建具、廻り縁、幅木、手摺等の造作部材の表面材、テレビ受像機、冷蔵庫等の家電製品の筐体の表面材、箪笥等の家具の表面材、箱、樹脂瓶等の容器の表面材、車両等の内装材又は外裝材、船舶の内装材又は外裝材等である。
10、50 化粧材
11 基材
12 模様形成層
13 単位領域(領域)
14〜23、53〜57 個別領域(領域)
14a、15a、16a 凸線条部
14b、15b、16b 凹線条部
30、61〜64 境界手段(凸条、凹条)

Claims (5)

  1. 表面に凹凸模様が形成されてなる化粧材であって、
    前記凹凸模様は、万線状の凸線条部及び凹線条部が交互に配列した形態であり、
    前記凸線条部の高さ、幅、ピッチ及び延びる向きのうち少なくとも1つが異なる領域が複数具備され、
    隣り合う前記領域の間には凸条又は凹条からなる境界手段が形成されている、化粧材。
  2. 前記境界手段は、凸条を具備してなり、前記境界手段の凸条は、隣接する前記領域の前記凸線条部よりも高く形成されている、請求項1に記載の化粧材。
  3. 前記境界手段は、凸条を具備してなり、前記境界手段の凸条は、隣接する前記領域の前記凸線条部よりも低く形成されている、請求項1に記載の化粧材。
  4. 複数の前記領域には、隣り合う前記領域で前記凸線条部の前記高さが異なる領域が含まれる、請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧材。
  5. 前記領域に含まれる複数の前記凸線条部は、その頂部を含む仮想の包絡面が凹凸を有するように高さが異なっている形成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の化粧材。
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