(実施の形態1)
配線を多層化した荷重センサについて図1および図2を用いて説明する。図1は配線を単層とした荷重センサの断面図である。図2は配線を多層化した荷重センサの断面図である。図1において、1は金属弾性体でありその上には結晶化ガラス14aを形成し、その上に非晶質ガラス15aを介して、配線16a,感歪抵抗体17を形成して、少なくとも感歪抵抗体17を埋込むように保護層18aを形成する。
また図2において、1は金属弾性体であり、その上には内部電極19を内蔵した状態で結晶化ガラス14bを形成し、更にその上に非晶質ガラス15bを介して配線16b,感歪抵抗体17をそれぞれ形成し、少なくとも感歪抵抗体17を埋込むように保護層18bを形成する。
なお、図2は、結晶化ガラスの中に内部電極19を内蔵する点で図1と相違する。
図2に示すように、本発明では、設計事項やスペックに応じて内部電極19を結晶化ガラス14bの中に埋込むことができ、荷重センサのEMI(電磁気特性もしくは耐ノイズ性)を改善でき、更に内部電極の埋込みや、配線や感歪抵抗体を焼成する際に、ガラス層が再溶解してクラック発生することを防止できる。
また図1に示すように、結晶化ガラス14aと感歪抵抗体17の間に非晶質ガラス15aを挟むことで、結晶化ガラス14aと感歪抵抗体17の相互作用を防止することができる。
図3は本発明の荷重センサを製造する様子を説明するための断面図である。まず前準備として、特開平6−137805号公報を参考に、所定のガラス原料を混合、白金坩堝内で溶解し、これを急冷し、ボールミルで粉砕し、所定の結晶化ガラス粉を作成した。次に、この結晶化ガラス粉に、溶剤(αテルピネオール)に溶かした樹脂(エチルセルロース)を添加し、セラミック製の3本ロールを使って混練し、ペースト化し、これを結晶化ガラスペーストとした。
次に図3(A)に示すように、金属弾性体1の上に結晶化ガラスペースト20aを所定パターンで印刷した。そして、これを乾燥、850℃で焼成して、図3(B)に示すように金属弾性体1の上に1層目の結晶化ガラス21aを形成した。次に図3(C)に示すように、結晶化ガラス21aの上に、結晶化ガラスペースト20bを所定形状に印刷した。そしてこれを乾燥し、850℃で焼成して、図3(D)に示すように金属弾性体1の上に、結晶化ガラス21a,21bを形成した。このように結晶化ガラス層を印刷,焼成を繰り返すことで複数層化することによって、ペースト中の塵や気泡、あるいは印刷時に発生しやすいピンホール等を防止することができる。
次に図3(E)に示すように、結晶化ガラス21a,21bの上に、電極ペースト22を所定パターンで印刷する。そしてこれを乾燥,焼成して、図3(F)に示すように、結晶化ガラス21a,21bの上に内部電極23を形成した。その後、図3(G)に示すように、内部電極23を覆うように、結晶化ガラスペースト20cを所定パターンで印刷し、これを乾燥し,更に850℃で焼成して図3(H)に示すように結晶化ガラス層21cを形成した。
次に図3(I)に示すように結晶化ガラス層21cの上に、非晶質ガラスペースト24を所定パターンで印刷し、これを乾燥,焼成して図3(J)に示すように非晶質ガラス25を形成した。次に、非晶質ガラス25の上に、配線ペースト(図示していない)を所定形状に印刷,乾燥し、850℃で焼成して図3(K)に示すように配線26を形成した。次に配線26の間に抵抗体ペースト(図示していない)を所定形状に印刷、850℃で焼成し、図3(L)に示すように感歪抵抗体27を形成した。そして、感歪抵抗体27の上に保護ペースト(図示していない)を印刷し、これを乾燥,焼成を互いに複数回繰り返すことで、図2に示すように荷重センサを作成した。
こうして作成した荷重センサの特性を評価したところ、歪み感度,温度特性,信頼性,耐ノイズ性(EMI),耐静電気特性(ESD)のすべてにおいて所望の特性を満たし、車載用としての規格値を満足することができた。
また金属弾性体1と内部電極23との間、配線26や感歪抵抗体27と内部電極23との間はガラス層が2層であり、特に絶縁不良も発生しなかったので、ガラス層を各々3層にする必要が無かった。
比較のため、従来例1として非晶質ガラスペーストだけを用いて荷重センサの配線の多層化を試みた。まず、特開平9−243472号公報や特開2003−97997号公報で提案されているホウケイ酸鉛系(B2O3−SiOw−PbO)のガラスペーストを用いて、図1や図2に示した構造を作成した。
図3(A)〜(D)に示した(印刷−乾燥−焼成)工程を3回繰り返して、金属弾性体1の上に非晶質ガラス層3層を形成した。次に図3(E)〜(F)に示すように内部電極23を形成し、更に図3(G)〜(J)に示した(印刷−乾燥−焼成)工程を3回繰り返して、内部電極の上に非晶質ガラス層を3層形成した。そして、図3(K),(L)の工程によって、配線や感歪抵抗体を形成し、最後に保護層を3層形成した。
こうした非晶質ガラスだけを用いて多層化した場合、荷重センサの特性を評価したところ、歪み感度,温度特性,信頼性,耐ノイズ性(EMI)、耐静電気特性(ESD)共に問題なく、車載用としての規格値を満足することができた。また金属弾性体1と内部電極23の間、配線26や感歪抵抗体27と内部電極23の間は、ガラス層が各々3層であるためか特に絶縁不良も発生しなかった。しかし実施の形態1と比べて、ガラスの層数,印刷,焼成回数が多いのでコスト高になってしまった。
そこで、試みに、図1と同じ工程にして、金属弾性体1と内部電極23との間、配線26や感歪抵抗体27と内部電極23との間のガラス層を各々2層にしてみた。しかしこのような非晶質ガラスを用いて、ガラス層を各々2層とした場合、絶縁不良が多発して、実用に耐えなかった。また別の試みとして、ガラス層の厚みを40μm程度と厚くしたところ、内部にクラックが発生する場合があった。このように従来の非晶質ガラスの場合、どうしても層数削減しようとすると課題が残った。
比較のために、従来例2として、結晶化ガラスペーストだけを用いて荷重センサの配線の多層化を試みた。従来例2として、結晶質ガラスを用いた場合について説明する。
発明者らは、従来例の結晶化ガラスとして、特開平6−137805号公報等で提案された、結晶化ガラス組成を元に、結晶化ガラスペーストを作成した。まず、特開平6−137805号公報を参考に、所定のガラス原料を混合,白金坩堝内で溶解し、これを急冷し、ボールミルで粉砕し、所定の結晶化ガラス粉を作成した。
次に、この結晶化ガラス粉に、溶剤(αテルピネオール)に溶かした樹脂(エチルセルロース)を添加し、セラミック製の3本ロールを使って混練し、ペースト化し、これを従来の結晶化ガラスペーストとした。そして、図3(A)〜(H)の工程を行った。そして図3(I)〜(J)の工程では、非晶質ガラスの代りに結晶化ガラスペーストを用いた。そして、図3(K)〜(L)の工程を経て、最後に保護層を形成した。こうして、従来例2のサンプルを作成した。この従来例2の特性を測定したところ、荷重センサとしての所定感度が得られないばかりか、抵抗値のばらつきが大きく、重量センサとして実用的ではなかった。この原因は、感歪抵抗体の下に形成されたガラス層が結晶質ガラスであったためと思われる。
そこで、特開平6−1378805号公報等を参考に、結晶化ガラス層の上に金属アルコキシド層を形成してみた。しかし強度や膜質が弱いため、車載用の荷重センサとして要求されるスペックを充分に満足できなかった。このように、結晶化ガラスを用いると、金属弾性体1と内部電極23との間、配線26や感歪抵抗体27と内部電極23との間は、共にガラス層が2層でも高歩留が得られるが、感歪抵抗体と抵抗体とのマッチングが難しいということを知見した。
比較のため、従来例3として、特許3010166号(米国特許第5898359号)で提案されている組成について検討してみた。まず、厚み2mmの金属弾性体の上に、市販のガラスペーストを印刷し、850℃で焼成し、これを図1の結晶質ガラス14a相当とした。そしてこの上に、鉛−アルミナ−ホウケイ酸塩ガラスをガラスマトリックスとし、この中に粒子状アルミナを15〜35%,粒子状酸化亜鉛を3〜6%添加したインターフェース層,非晶質ガラス15a相当の位置に形成した。こうして作成した従来例3について、荷重センサとしての特性を測定したが、期待した特性は得られなかった。これは、特許3010166号公報で提案している、抵抗体材料を用いなかったためであると思われる。
またこの従来例3の構造で、内部電極を形成したところ、図20に示したような問題点が発生する場合があった。すなわち、従来例3の材料では、配線の多層化に限度があることが判った。
なお、結晶化ガラスの厚みは10〜200μmが望ましいとされる。結晶化ガラスの厚みが10μm未満の場合、絶縁不良が発生する可能性がある。また結晶化ガラスの厚みが200μmを超えると、ガラスの材料費が増加するためコスト高を是認しなければならない。
また非晶質ガラスの厚みは5〜100μmが望ましいとされる。非晶質ガラスの厚みが5μm未満の場合、非晶質ガラスのピンホール等で、歪み抵抗体と結晶化ガラスが接してしまい、抵抗値が変化するという不都合が生じるからである。
また少なくとも感歪抵抗体を覆う保護層は、厚み200μm以下が望ましい。保護層の厚みが200μmを超えると、保護層を所定パターンでの形成時に、パターンの端がダレたり、滲んだりして半導体やチップ部品の実装用のランド(保護層18中に形成された部品を実装するための接続孔で、この孔の中には配線26が露出している)が潰れてしまうことが生じうる。
また、歪み抵抗体の上に形成するオーバーコート材料は、PbOを60wt%以上含むガラス層が望ましい。PbOを60wt%以上含むガラスペーストの場合、その焼成温度が400〜700℃程度と、歪み抵抗体の一般的な焼成温度である850℃より150℃以上低温のため、オーバーコート材料の焼成温度では歪み抵抗体は影響を受け難い。またオーバーコートに樹脂を使うことも可能である。オーバーコートに樹脂を使う場合、シリコン樹脂やエポキシ樹脂等を用い、この中に必要に応じてガラスやセラミック粉を5から50wt%程度フィラーとして添加することで、その機械的強度を上げられ、荷重センサを車に取りつける際に、スパナ等の工具で傷つき難くなる。なお、フィラーの添加量が5%未満の場合、樹脂塗膜の高強度化の効果が充分ではなくなる。
またフィラーを50wt%より多く添加した場合、オーバーコートがスカスカになってしまうという不都合が生じる。また樹脂を用いたオーバーコートの場合も厚みは10μm以上で200μm以下が望ましい。また少なくとも感歪抵抗体を覆う保護層は、厚み200μm以下が望ましい。保護層の厚みが200μmを超えると、保護層を所定パターンでの形成時に、パターンの端がダレたり、滲んだりして半導体やチップ部品の実装用のランド(保護層18中に形成された部品を実装するための接続孔で、この孔の中には配線26が露出している)が潰れてしまう不都合が生じるからである。
また、オーバーコートを複数層にすることも効果的である。更にオーバーコートを、ガラスもしくはセラミックからなる材料で厚み10μm以上200μm以下とし、更にその上に樹脂を主体とする材料で同様に厚み10μm以上200μm未満の第2のオーバーコートを形成することも可能である。このように、ガラスや樹脂を使ってオーバーコートを多層化することによって、感歪抵抗体や配線の信頼性を改善できる。またこうした部材には、PbOを含むガラス材料や市販の樹脂材料を使うことができる。
(実施の形態2) 非晶質ガラスの組成
実施の形態2では、配線の多層化や、結晶質ガラスとの同時焼成に対応可能な非晶質ガラスの最適化例について説明する。
まず表5の組成番号1〜5に示すように、SiO2を減らして、CaO、ZrO2、Al2O3、B2O3についてその組成を振ったが良い結果は得られなかった。そこで表5の組成番号6〜10に示すように、SiO2の量を45〜65wt%として、CaO、ZrO2、PbO、Al2O3、B2O3についてその組成を振ったところ良い結果が得られた。一方表5の組成番号11から14に示すように、SiO2の量を70wt%以上にした場合、良い結果は得られなかった。
そこで、表6に示すようにSiO2の最低割合を40wt%(組成番号15〜25に相当)と最大割合を80wt%(組成番号26〜36に相当)にして、各組成の割合を変化させてみた。
これ以外にも更に数多くのガラス組成について実験した結果、表7に示す組成の割合が、一番良い結果が得られた。またこうした実験の中で、非晶質ガラスに含まれる酸化鉛の割合が、感歪抵抗体と拡散し合い、抵抗値等に影響を与えることが判った。発明者らが使った抵抗体材料に酸化鉛が含まれていたためであるが、今後、酸化鉛を使わない感歪抵抗体が開発された場合、表7からPbOをゼロとすることが可能と思われる。
以上の結果より、非晶質ガラスとしては、表7に示すように、SiO2が40〜80wt%,アルミナが1〜10wt%,CaOが5〜15wt%,PbOが3〜15wt%,ZrO2が3〜10wt%の組成が最適であることがわかった。また、B2O3を適量添加することで、ガラスの焼結性、電極材料とのマッチング性(接着強度,同時焼成でのクラック防止等)が改善できることが確められた。
図4は、こうして作成した非晶質ガラスと、従来の結晶化ガラスを組合わせて同時焼成する様子を示す断面図である。図4(A)において、28は結晶化ガラスペースト、29は非晶質ガラスペーストである。まず、従来の結晶化ガラスペースト28と実施の形態2の非晶質ガラスペースト29を、図4(A)に示すように多層化して、これを850℃(トータル焼成時間1時間)のメッシュベルト炉で同時焼成したところ、図4(B)に示すように、結晶質ガラス30aと非晶質ガラス31aが得られ、その内部構造に異常は発生していなかった。
比較のために、従来例の非晶質ガラスとして、特開平9−243472号公報,特開2003−97997号公報で提案されているホウケイ酸鉛系(B2O3−SiO2−PbO)ガラスと、従来の結晶化ガラスを同時に焼成実験した。まず図4(A)に示すように、金属基板1上に市販の結晶化ガラス29を印刷し、その上に特開平9−243472号公報や特開2003−97997号公報で提案されているホウケイ酸鉛系(B2O3−SiOw−PbO)を印刷し、これらを同時に850℃で焼成し、その断面を観察したところ図4(C)のような結果が得られた。
図4(C)において、13はクラックである。クラック13は図4(C)に示すように、非晶質ガラス31bと結晶質ガラス30bの界面や、非晶質ガラス31b内部に発生しやすかった。このように、従来の非晶質ガラスの場合、非晶質ガラスを同時に焼成することは難しいことが判った。
一方、本発明で提案した非晶質ガラスを市販の結晶化ガラスと組合わせて、荷重センサを作成し、自作の自動車衝突衝撃装置を用いて耐力を測定したところ、所望な耐力が得られていることが判った。特に、金属弾性体との接着に結晶質ガラスを使うことで、荷重センサ自体の耐力が、非晶質ガラスだけを使った場合よりも改善されることも判った。これは、非晶質ガラスに比べて、結晶質ガラスの方が強度が高く、たとえクラックが発生しても、非晶質ガラスのように伝播しにくいためと思われる。
なお非晶質ガラスの作業温度もしくは軟化点は、500℃以上が望ましい。500℃未満の場合、感歪抵抗体を850℃等の高温で焼成した場合、感歪抵抗体と反応し特性を変化させてしまうことが考えられる。また非晶質ガラスの作業温度は700〜900℃が望ましい。作業温度が700℃未満の非晶質ガラスの場合、感歪抵抗体を850℃等の高温で焼成した場合、感歪抵抗体と反応し、特性を変化させる場合がある。また作業温度が900℃を超える非晶質ガラスの場合、金属弾性体に耐熱性に優れた高価な材料を使う必要がある。
(実施の形態3) 結晶質ガラスの最適化
実施の形態3では、市販の非晶質ガラス(たとえば、ホウケイ酸鉛系B2O3−SiO2−PbO)と組合わせても、同時焼成可能な結晶化ガラスについて最適化した。
表8は結晶質ガラス組成の最適化例である。表8は、MgOの割合を振ったものである。その結果MgOの割合は、結晶性と相関があるため、30〜55wt%が良いことが判った。そこで、表9,表10および表11に示すように、SiO2,B2O3,BaO,ZrO2,Al2O3等について最適化を行った。
その結果、SiO2やB2O3の添加によって焼結性は改善され、一定量のアルミナが添加されることで特性が改善されることが判った。またCaOの添加量は、0〜6wt%が望ましかった。CaOの添加量が増えれば表面が粗くなってしまい、他のペーストのスクリーン印刷工程で不良発生の原因となる可能性がある。また上記の表には示していないが、SnO2についても検討すると、その添加量は0〜5wt%が良い結果が得られた。
以上のように、結晶質ガラスとしてはMgOが30〜55wt%、アルミナが1〜30wt%,SiO2が10〜25wt%,BaOが5〜25wt%,B2O3が5〜30wt%,CaOは0〜6wt%,ZrO2やSnO2は0〜5wt%が望ましい。また他の元素としては、ZrO2,SnO2は0.1〜5wt%を含ませることも可能である。
なお、PbO,ZnOは、出発原料や粉体やインキ化の途中で不純物として極少量混入させる分には実用上支障はないが、理想的には含まないことが望ましい。なお、焼成工程で多少拡散するぐらいなら、実用上支障ないが、こうした元素がもしガラス中に0.1wt%以上含まれると、信頼性に悪影響を与え、たとえば、PbOやZnOは水溶性であるため、信頼性を低下させてしまうことが予測できる。
こうして最適化した結晶化ガラスを用いて、荷重センサを作成し、自作の自動車衝突衝撃装置を用いて耐力を測定したところ、実用上充分な耐力が得られた。しかしこの結晶化ガラスの上に、感歪抵抗体を直接形成した場合、抵抗体の特性(温度特性、抵抗値の安定性等)が影響を受ける場合があった。
その場合、図1や図2に示したように、こうした結晶化ガラスの上に非晶質ガラスを形成することで、荷重センサとしての電気的特性を安定化できる。なお、本発明の結晶化ガラスが、一般の非晶質ガラスだけを使って作成した荷重センサに比べて耐力が高かった理由は、内部にクラックが発生したとしても、結晶化ガラスを構成する粒界で止るためと思われる。
以上のように、実施の形態3の結晶化ガラスの場合、非晶質ガラスとのマッチング性も高く、市販の非晶質ガラスとの同時焼成も可能であり、荷重センサの低コスト化が可能であった。
またこうして得られた結晶化ガラスをペースト化し、従来の非晶質ガラスとして、特開平9−243472号公報や特開2003−97997号公報で提案されているホウケイ酸鉛系(B2O3−SiOw−PbO)ガラスとを選び、同時焼成の実験を行った。図4に示すように、金属弾性体上に所定形状で印刷した。そしてこの上に市販の非晶質ガラスペーストを印刷し、同時に焼成したが、図4(B)に示すように、非晶質ガラス及び結晶質ガラスには異常は発生しなかった。
比較のために、従来例の結晶化ガラスとして、表1で提案されている結晶化ガラスを選び、同様に図4に示すような同時焼成の実験を行った。まず図4(A)に示すように、金属基板上に従来の結晶化ガラスペーストを印刷し、その上に市販の非晶質ガラスペーストを印刷し、これらを同時に850℃で焼成し、その断面を観察したところ図4(C)のように、クラックが発生し、結晶質ガラスと非晶質ガラスを同時に焼成することは難しいことが判った。
たとえクラック13が発生していなかったとしても、従来の非晶質ガラスでは車載用の耐久性の高い荷重センサとしての性能は実用的ではなかった。これは、従来の結晶化ガラス(たとえば、表1)に比べ、本ガラスはアルミナが一定以上含まれ、BaOやB2O3の割合が少なめであることも一原因と考えられた。また実施の形態3で提案する結晶化ガラスは、後述するように、セラミック粉と同時に焼結しコンポジットガラス化させやすい特徴があることも判った。
(実施の形態4) 印刷積層(硬化)
実施の形態4では、多層印刷したガラス層の焼成コストを下げるために一括焼成する場合について説明する。実施の形態1で説明したように、ガラス層を多層化する際、1層ごとに印刷,乾燥,焼成を繰り返した場合、層数の増加につれて、焼成回数が増加し、製品のコストアップにつながる。しかし、ガラスを多層化する際、印刷、乾燥を繰返し、ガラス層を多層化した後、一括焼成しようとしても、塗膜の平滑性が低下し、多層印刷したガラス層にピンホールや厚みムラが発生しやすいという問題点が生じる。
そこで、実施の形態4では、結晶化ガラスペーストに、硬化型ペーストを採用することによって、こうした課題を解決する方法について説明する。
まず比較のため、従来例として、結晶質ガラスペーストを多層化した場合に発生しやすい、ピンホールや厚みムラについて図5を用いて説明する。図5は、金属弾性体上に結晶質ガラスペーストを多層印刷する様子を説明する断面図である。図5(A)のように、金属弾性体1の上に印刷された結晶質ガラスペースト32aは、一定時間後にレベリング(表面平滑化)する。これは結晶質ガラスペースト32aに含まれている溶剤成分が、金属弾性体1の中に染込まないためである。図5(B)において、33aは結晶質ガラス乾燥膜であり、結晶質ガラスペースト32aがレベリングした後、溶剤が揮発,乾燥されたものである。図5(C)は、結晶質ガラス乾燥膜33aの上に、結晶質ガラスペースト32aを印刷する様子である。
矢印34は、結晶質ガラスペースト32bに含まれる溶剤成分が、下地となる結晶質ガラス乾燥膜33aに染込む様子を示す。そして溶剤成分が下地に染込んだ結果、結晶質ガラスペースト32bに含まれる溶剤成分が少なくなり、結晶質ガラスペースト32bの粘度が上がり、ペーストの流動性が低下し、表面に凹凸35やピンホール(図示していない)が発生する。その結果、図5(D)に示すように、結晶質ガラス乾燥膜33bの表面に凹凸35が残る。こうした凹凸35は焼成しても消えない。これは結晶質ガラスは、非晶質ガラスに比べて焼成時の流動性が少ないためである。
その結果、図5(E)に示すように、こうした上に内部電極36aを形成すると、内部電極36aと金属弾性体1の間で、絶縁不良が発生しやすくなった。
そこで、発明者らはこうした課題を解決するために、様々な実験を繰り返した。その結果、こうした課題は、図5に示すように、ペースト中の溶剤が下地に染込むことが主原因であることが判った。そこで、硬化型のガラスペーストを開発した。
図6は発明者らが開発した硬化型ガラスペーストを用いて多層印刷する様子を示す。図6(A)〜図6(E)は、本発明の硬化型ガラスペーストを用いて金属基板上にガラス層を印刷によって多層に形成する様子を説明するための断面図である。図6(A)は金属基板1の上に、硬化型ガラスペースト37aをスクリーン印刷等で印刷された状態を示している。この状態では金属基板1の中に硬化型ガラスペースト37a中の溶剤は染み込まないためにすぐにレベリングする。
その後、この硬化型ガラスペースト37aを、熱や光、電子ビーム等で硬化、もしくは不溶化させ、図6(B)に示す硬化済みガラスペースト38aを形成する。この硬化済みガラスペースト38aの表面は充分レベリングされており、更にこの硬化されたガラスペーストには溶剤は殆ど染込まなくなっている。
次に図5(C)に示すように、更に2層目となるガラス層を形成するために、硬化型ガラスペースト37bを印刷する。図6(C)において、硬化済みガラスペースト38aは、硬化済みであるので、その上に印刷された硬化型ガラスペースト37bの溶剤は、矢印34のように染みこもうとしても殆ど染み込まない。そのため、硬化型ガラスペースト37bは、図5(C)のような凹凸35,厚みムラ、ピンホールを発生させることなく、すぐにレベリングする。
こうしてレベリングした硬化型ガラスペースト37bを硬化させることで、図6(D)に示すように、2層目のガラス層を形成する硬化済みガラスペースト38bの表面も、凹凸や厚みムラ,ピンホール等の無い平滑な表面となる。
その結果、図6(E)に示すように、内部電極36bを形成しても、内部電極36bと金属弾性体1の間で絶縁不良が発生しにくい。このようにして、硬化型のガラスペーストを使って、印刷多層化した場合、焼成前のガラス塗膜に凹凸や厚みムラ、ピンホール等の欠陥の発生を抑制できるため、荷重センサの歩留を高められ、製造コストを下げられる。
一方、従来のガラスペーストの場合、ペーストの中の溶剤成分が下地に染み込むために印刷直後から急激に粘度が上がりレベリングしなくなることから、その表面には大きなムラが発生することとなる。このムラはスクリーン印刷の場合、スクリーン版のメッシュが粗くなればなるほど発生しやすくなる。
そのため、ガラス層の厚みを厚くしようとして、スクリーン版のメッシュを粗くしたとしても、膜厚は厚くなってもかえってムラが発生しやすくなるために、製品歩留りを低下させることがあった。そのため、従来はより細かいメッシュ(細かいほどムラが発生しにくい)を使って多層印刷されていたが、細かいメッシュを使うほど膜厚が薄くなるため、必要な膜厚を得るためには、印刷回数を増やす必要があり、工数増加になっていた。
図7は、こうしたレベリングの様子を説明するものである。図7においてX軸は印刷してからの時間(単位は分)であり、図5(C)や(D),図6の(C)や(D)に相当する。また図7のY軸は、印刷直後からレベリングするまでのペースト表面の凹凸(図5のCやD参照)を、非接触のレーザー式表面粗さ計で測定したものである。図7において、a(×印に相当)は、結晶化ガラス粉を用いて作成した硬化型ガラスペーストであり、印刷後、すぐに凹凸が減り、レベリングすることが判る。また図7においてC(○印に相当)は、非晶質ガラス粉を用いて作成した硬化型ガラスペーストであり、印刷後、すぐに凹凸が減り、レベリングすることが判る。一方、図7のb(●印に相当)は、従来の溶剤乾燥型のガラスペーストの場合であり、印刷した後はその凹凸は低減しにくい。
なお、実施の形態4では、結晶化ガラスペーストの硬化型にしたが、非晶質ガラスペーストや、内電ペースト、配線ペーストもこうした硬化型ペーストにすることで、多層印刷した時のレベリング性を大きく改善でき、荷重センサの低コスト化と歩留アップが可能となる。またこうした硬化型ペーストの作成において、従来より提案されている非晶質ガラス粉や結晶化ガラスを使うことも可能であり、また本発明で提案する非晶質ガラスや結晶質ガラス、あるいは後述するコンポジットガラスへの応用することは容易である。
(実施の形態5) 硬化型絶縁ペーストの内容
次に硬化型ペーストに用いる部材について、詳しく説明する。まず硬化型ガラスペーストに用いるガラス粉としては平均粒径が0.1〜10μmが最適である。平均粒径が0.1μm未満のガラス粉は高価である。また平均粒径が10μmを超えるガラス粉は20から30μmの大きなガラス粉が含まれている可能性がある。また硬化型ガラスペーストに含まれるガラス粉末は、60〜80wt%の範囲が望ましい。60wt%未満の場合、硬化した後、焼成すると出来あがったガラスがポーラス(内部に隙間が発生する)になったり、焼成時の膜厚収縮が大きくなり過ぎて、複数層を同時焼成するときにクラックが発生する可能性がある。またガラスペースト中にガラス粉を80wt%以上含ませた場合、ペースト中の流動成分(樹脂や溶剤)が少なくなって、ペーストの流動性が低下し、レベリングしにくくなる場合がある。また硬化型ガラスペーストに含まれる樹脂分は1〜20wt%が望ましい。樹脂が1wt%未満の場合、硬化した塗膜の強度が低く、多層印刷した時に剥がれたり、取れたりすることがある。また樹脂分が20wt%を越えた場合、ペーストの硬化に問題は無いが、硬化後のペーストを焼成する際、樹脂成分の分解量が大きくなり、たとえば、焼成炉の中で多量の煙が発生すると共に、塗膜がブクブクと膨れたり、割れ出したりする可能性がある。またペースト中の溶剤量は10〜40wt%が望ましい。溶剤量が10wt%未満の場合、インキの粘度が高くなり、連続印刷性やレベリング性に影響を与える場合がある。また溶剤量が40wt%以上の場合、インキの乾燥時間が長くなる。なお、硬化型ペーストにおいて、無溶剤化も可能であるが、溶剤は10wt%以上、含まれていることが望ましい。これはまったくの無溶剤にした場合、スクリーン印刷に必要な粘度までペースト粘度を下げるには、かなりの樹脂量添加が必要になり、こうした樹脂が焼成時にクラック等の発生原因になる可能性があるためである。なお、硬化型インキに添加する溶剤としては、沸点150℃以上のものが望ましい。沸点が150℃未満の溶剤は、印刷機上での乾燥が速すぎて、連続印刷性やインキの機上安定性に影響を与える場合がある。
このような硬化型のペーストを作成するには、インキのバインダ成分(樹脂成分)として、硬化型の樹脂を選ぶ。硬化型樹脂としては、光(UV)や電子ビーム(EB),熱硬化型の樹脂が市販されている。なお、本発明の場合、ペーストは焼成するため、灰分の少ない硬化型の樹脂を選ぶ必要がある。また多少の灰分(たとえば1%程度)が残っていたとしても、こうした灰分は酸化物の場合が多いので、本発明の場合、ガラス成分の一部になり、品質に影響を与え無いことが多い。
硬化型ガラスペーストに含まれる樹脂成分は、1〜20wt%が望ましい。樹脂成分が1wt%未満の場合、硬化してできた塗膜(特に焼成前)の物理的強度が低い場合がある。このように硬化後での塗膜強度が低い場合、その上に次のガラスペースト等をスクリーン印刷等で印刷する際に、塗膜が剥がれたり、傷付いたりして製品の歩留まりを下げる場合がある。
特に硬化型絶縁ペースト中の樹脂の5〜100wt%を硬化型樹脂とすることで、多層印刷時のペースト溶剤の染み込みを防止する効果を有効に発揮させることができる。このように、ペースト中に非硬化型樹脂を予め添加しておくことによって、絶縁ペーストの製造を容易にできると共に、スクリーン印刷機上で絶縁ペーストが硬化してしまい、後で取れなくなることがない。たとえば、硬化絶縁ペースト中の樹脂成分のうち、50%を熱硬化型のキシレン樹脂、残り50%を溶剤に可溶なエチルセルロース樹脂とすることで、万一、インキがスクリーン版の上で硬化しても(あるいは硬化しかけても)、エチルセルロースの溶剤可溶性を活かして、簡単に溶剤で拭き取れる。そのため、スクリーン版に異物として残らないため、長時間の安定した印刷(あるいは無人印刷)が可能になる。硬化型樹脂としては熱,光,電子線照射のいずれか一つ以上の作用によって硬化する樹脂を用いることができる。
特に生産性を考慮すると一液性の硬化型樹脂がより望ましい。二液性の硬化型樹脂は母体となる樹脂に反応開始剤を添加することで樹脂の硬化が始まる。しかし、こうした二液性の樹脂で絶縁ペーストを作製した場合、使用直前に反応開始剤を添加,混合する必要があり、そのために工程が煩雑になる。
一方、一液性の硬化型樹脂は反応開始剤を添加しなくとも、上記方法により硬化するために、本発明の硬化型樹脂として使いやすい。またこうした樹脂はα−テルピネオールやブチルカルビトール、イソホロン等と言ったスクリーン印刷に広く使われる高沸点溶剤によく溶解するため、粘度調整もしやすい。また印刷後にスクリーン版を洗浄する場合においても、酢酸ブチル等で簡単にクリーニングすることができる。こうした硬化型樹脂としてはエポキシ樹脂,フェノール樹脂が使いやすい。たとえば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂を使うことができる。なおこうした用途に二液型の硬化樹脂を使うと、ペースト化させるのが煩雑であり、更に反応開始剤を添加した後のペーストのポットライフが短くなる。一液型硬化樹脂の場合、反応開始剤の添加が不要でありペースト化も容易である。たとえばキシレンフェノールホルムアルデヒド樹脂に代表される一液型樹脂はαテルピネオールやイソホロン,酢酸ブチル等の溶剤にも溶けやすいため、インキ化も容易であり、スクリーン印刷した後の洗浄も簡単である。
こうした硬化性樹脂を用いてガラスペーストや電極ペーストを製造する場合、ペースト中に添加する有機溶剤が沸点150℃以上のものが望ましい。沸点150℃未満の有機溶剤は印刷工程中に自然蒸発しやすいために、作業工程中でペーストの粘度が変化して印刷表面にピンホールが発生したり、レベリングしにくくなることが生じ得る。
なお、ペースト中の樹脂成分はすべてを熱硬化性樹脂にする必要はない。ペーストに含まれる樹脂性分の中の5〜100wt%を硬化性樹脂にすればよい。このように硬化性で無い樹脂、たとえば広くバインダー樹脂として知られるエチルセルロース樹脂やブチラール樹脂、アクリル樹脂等を加えておくことで、万一インキがスクリーン版の上で硬化、あるいはゲル化しても、エチルセルロース等の溶剤可溶性を活かして簡単に拭取れる。
また、硬化型ペースト中に含まれる有機溶剤は沸点150℃以上のものが望ましい。このように硬化型ペースト内に有機溶剤を含ませることで、硬化型ペーストの粘度調整や固形分調整が容易になるため、年間を通して製造品質を安定化できる。なお沸点150℃未満の有機溶剤の場合、印刷工程中に自然蒸発しやすいため、作業行程中でペースト粘度が変化し、印刷された塗膜の厚みバラツキを発生させる場合がある。またこうした有機溶剤は、硬化型ペースト中に溶剤が10〜40wt%含まれていることが望ましい。硬化型ペースト中の溶剤が10wt%未満の場合、溶剤による粘度や固形分調整の範囲が狭くなってしまう。また溶剤が40wt%以上含まれる場合、インキの乾燥による膜厚変化が大きくなる。
なお硬化型ペーストの粘度は印刷性とレベリング性の観点から10〜10000ポイズ(回転式粘度計の場合の回転数は10〜100rpmの範囲、もしくはズリ速度で1〜100/sの範囲)が望ましい。なおこうした硬化型ペーストは、ある程度チキソ性(ズリ速度で粘度が変るレオロジー的現象)が有る方が望ましい。そのためペーストの粘度比(たとえば、回転数10rpmと50rpm、あるいはズリ速度1/sと5/s)等は、1.0以上、望ましくは1.2以上が望ましい。なお粘度比が5を超えるとチキソ性が高くなりすぎて、レベリングまでの時間が長くなりあまり実用的ではない。
なお、こうして作成した硬化型ガラスペーストは、従来のエチルセルロース等の樹脂を使った溶剤希釈型ガラスペーストに比べて、焼結後(800〜900℃での焼成後)のガラス自体に違いは無いが、その焼成プロファイルに明らかな違いが観察される。そこで、発明者らは従来提案されている結晶化ガラス粉を用いて、フェノール樹脂を使った硬化型ガラスペーストと、エチルセルロース樹脂を使った従来型のガラスペーストを作成し、これを所定量、白金容器にセットし、室温から900℃までの熱分析(TG/DTAと呼ばれる)を行った。その結果、互いの特徴が、特にDTAグラフ(図示していない)に現れた。従来型の場合、150〜200℃で溶剤成分が蒸発する吸熱ピークが観察された。
その後、300℃前後でエチルセルロース樹脂が熱分解する発熱ピークが観察され、その後は特に変化がなく、800℃付近でガラスの結晶化によると思われる発熱ピークが観察された。
一方、硬化型の場合、150〜200℃で溶剤成分が蒸発する吸熱ピークが観察された後は、300〜450℃付近に樹脂が硬化することによる発熱と思われるブロードなピークが観察され、最後に500〜550℃で、硬化した樹脂が熱分解すると思われる発熱ピークが観察され、その後は特に変化が無く、800℃付近でガラスの結晶化によると思われる発熱ピークが観察された。
以上の熱分析の結果から、硬化型樹脂の場合、樹脂が硬化されることで、耐熱性が上がり、ペーストの熱分解温度を上げることが判る。そこで、ここで用いたガラスペーストを用いて、図10(A)(なお、図10については、後の実施の形態で説明する)に示したように、焼結抑制剤を添加していない内部電極を埋込み、この内部電極と共に同時焼成したところ、硬化型ガラスペーストの場合、図10(B)に示すように、(焼結抑制剤を添加していない内部電極にも関らず)特に問題なく多層の同時焼成ができる場合があった。
一方、従来型のガラスペーストの場合、すべてが図10(C)に示すように、各種クラックが発生した。以上の実験結果と、熱分析の結果より、硬化型樹脂を使うことで、内部電極が焼成,収縮する場合(500℃前後からと考えられる)での、クラック防止の効果があることが判った。つまり従来型のガラスペーストでは、内部電極の収縮が始まる温度では、ガラス粉同士は結着力が低い状態(樹脂成分が熱分解されて無くなっているため)なので、金属の収縮によって、ガラス層が割れてしまい、これがクラックの発生原因になると考えられる。
一方、硬化型ガラスペーストの場合、内部電極の収縮が始まる温度では、ガラス粉同士の結着力は強い(硬化されることで耐熱性が上がった樹脂成分が、まだ残っている)ため、金属の収縮でのガラス層の割れを防止できていると思われる。
このように、硬化型樹脂を用いることで、従来のガラス組成でも、ある程度の焼結抑制が可能であることが判る。このような、硬化型樹脂を使った焼結抑制技術を使うことで、ガラスと金属の同時焼成を可能にするだけでなく、熱異種ガラス同士(たとえば、軟化点や転移点の異なるガラス同士、あるいは結晶質ガラスと非晶質ガラス等)であっても、多層化した状態での同時焼成を行いやすい効果が得られる。このように、樹脂を硬化型にすることで、樹脂の耐熱温度を上げ、焼結時の割れを防止する場合、焼成後のガラスや電極にはこうした樹脂成分が焼失して残っていないため、特性に影響を与えることは無い。しかし、樹脂(有機物)を使うため、せいぜい600℃付近までの、焼結抑制(もしくは同時焼成でのクラック防止)効果しか得られないが、これでもかなりのクラック防止効果がある。
またこうした有機物を用いたクラック防止技術と、後述する電極への焼結抑制剤の添加(無機物を用いたクラック防止技術)と併用することで、クラック防止や複数多層の同時焼成を更に容易にすることは言うまでもない。
また硬化もしくは不溶化後のガラスペーストの厚みは12〜300μmが望ましい。12μm未満の場合、印刷時にピンホールが発生する場合がある。また12μm未満の場合、焼成後のガラス層の厚みが10μm未満と、更に薄くなるため絶縁不良を発生させる可能性がある。ガラスペーストの厚みが300μmを超える場合、硬化させながら多層印刷しても、印刷積層数が増えるためコストアップになる。また300μmを超える場合、焼成後のガラス層の厚みが200μmを超えるため、荷重センサの厚みや重さが増加し、更にガラスの材料費もアップする。
(実施の形態6)
次に実施の形態6として、硬化型の結晶化ガラスペーストの製造方法について説明する。
まず、結晶化ガラスとして、表8〜表11で示した材料を、白金製坩堝の中に秤量し、これを高熱で溶解した。その後、溶解させたガラス成分を水中に投下し、急冷した。その後、これをボールミルを使って長時間粉砕した。その後、分級し、粒径10μm以下のガラス粉を用意した。次にインキ用のビヒクルとして、硬化型樹脂をえらび、これに溶剤に溶解された硬化型フェノール樹脂を用い、ここにガラス粉を所定量添加して、セラミック製の3本ロールで混練した。なおセラミックロールには水冷装置を接続し、ロール混練時のロール発熱による樹脂硬化を防止した。また1ロットが1Kg程度の少量の場合、適当な容器の中でスパチュラ等の治具を使って手でプレミキシングした後、そのまま3本ロールで混練しても問題が無かった(多少の凝集体が残っていてもロール上で肉眼で検出でき、必要に応じてロール回数を増加することで対策できた)。しかし1ロットが10Kg以上の場合、手でプレミキシングすることは体力的に負担がかかりすぎるので、プラネタリーミキサーやニーダー等の機械を使って、プレミキシングした後、3本ロールで混練することが望ましい。
こうして作成したガラスペーストに所望に応じて溶剤を添加し、粘度調整した後、濾過し完成させた。なお、濾過には市販の開口が10〜20μmのスクリーン型フィルターを使い、所望に応じて加圧濾過することで濾過効率を上げられる。
こうして作成した硬化型ガラスペーストを使って、図6(A)〜(E)のようにして、印刷,硬化を繰返して多層印刷したが特に問題点を見つけることはできなかった。またこれを焼成したが、特に異常を見つけることもできなかった。また比較のために、従来インキとして、ビヒクルとして硬化型フェノール樹脂の代りに、エチルセルロースをαテルピネオールに溶解したものを用いて同様にインキを作成した。これを用いて、多層印刷したところ、図5(A)〜(E)に示すような結果が得られた。またこれを焼成したところ、金属弾性体と内部電極の間に絶縁不良が発生しやすかった。そこで、絶縁不良の発生したサンプルの断面を観察したところ、図5(E)に示したように、ガラス層に厚みムラが多く、更に焼結済みのガラス内部にも空洞が生じていた。
なお硬化温度は100℃以上で10秒以上,400℃未満で30分未満が望ましい。硬化温度が100℃未満の場合、インキ混練時やインキを自然放置させておくとインキ粘度が増加する可能性がある。硬化温度が400℃以上の場合、一部樹脂が分解し出すため、硬化性樹脂にこうした樹脂を添加して印刷性を改善することが難しくなる場合がある。また硬化時間は10秒以上30分以内が望ましい、特に100℃で10秒以内に硬化し始めるような樹脂は、インキ混練時に粘度が変化したり、ポットライフが短くなる可能性がある。
なお硬化温度を400℃以上で30分以上に設定すると、添加した樹脂の一部が分解し始める可能性があり、その上に次のガラス層等を印刷した場合、そのレベリング性が低下することが生じうる。
また、硬化(もしくは不溶化)に光を使うことができる。たとえばUV(紫外線),IR(遠赤を含む遠赤外線)を用いることで硬化できる。こうした光硬化性樹脂は、スクリーン印刷用に、たとえば、ポスターのオーバーコート材料として、各メーカーから市販されている。またこうした光硬化型樹脂でも、BCA(ブチルカルビトールアセテート)やαテルピネオール等の沸点が150℃以上の高沸点溶剤で希釈できるものが市販されている。本発明にはこうしたものを使うこともできる。
またここで、硬化装置の設定を400℃としておいても、荷重センサの場合、金属弾性体に熱容量が大きいため、中々温度が上がらない場合がある。そうした場合、ホットプレート等を使って直接加熱してもよい。
なお、結晶化ガラスに用いる結晶化ガラスとしては、表8〜表11に示した以外のものを用いることができる。特に本発明で提案する荷重センサの場合、金属弾性体を用いるため、熱膨張係数が90×1E−7/℃(9ppm/℃)から、150×1E−7/℃(15ppm/℃)程度の、市販の結晶化ガラスを選ぶことができる。
なお、この場合、ガラス粉の平均粒径は5μm未満が望ましい。平均粒径が5μm以上の場合、20〜30μmの大きな塊が残っている場合があり、これらが印刷性に影響を与える可能性がある。またペースト粘度としては、10〜10000ポイズの範囲が適当である。粘度が10ポイズ未満の場合、粘度が低すぎて、高膜厚が得難く、更に印刷パターンが滲んだり、ダレたりする可能性がある。また粘度が10000ポイズを超える場合、粘度が高すぎて、塗膜にピンホールが発生する可能性がある。なおこうしたペーストの場合、粘度は粘度計のズリ速度(あるいは回転数)によって、大きく変化する場合がある。そのため、ペースト粘度の測定は、ズリ速度が1〜100/sの範囲で行うことが望ましい。
(実施の形態7)
次に実施の形態7として、非晶質ガラスペーストの硬化型ペーストについて説明する。
まず、非晶質ガラスとして、表5〜表7で示した材料を、白金製坩堝の中に秤量し、これを高熱で溶解した。その後、溶解させたガラス成分を水中に投下し急冷した。その後、これをボールミルを使って長時間粉砕した。その後、粒径10μm未満のガラス粉を分級によって回収した。次にインキ用のビヒクルとして、硬化型樹脂を選び、これに溶剤に溶解された硬化型フェノール樹脂を用い、ここにガラス粉を所定量添加して、セラミック製の3本ロールで混練した。なおセラミックロールには水冷装置を接続し、ロール混練時のロール発熱による樹脂硬化を防止した。また1ロットが1Kg程度の少量の場合、適当な容器の中でスパチュラ等の治具を使って手でプレミキシングした後、そのまま3本ロールで混練しても問題が無かった。なお多少の凝集体が残っていてもロール上で肉眼で検出でき、必要に応じてロール回数を増加することで対策することができた。
しかし1ロットが10Kg以上の場合、手でプレミキシングすることは体力的に負担がかかりすぎるので、プラネタリーミキサーやニーダー等の機械を使って、プレミキシングした後、3本ロールで混練することが望ましい。
こうして作成したガラスペーストに必要に応じて溶剤を添加し、粘度調整した後、濾過し完成させた。なお、濾過には市販の開口が10〜20μmのスクリーン型フィルターを使い、所望に応じて加圧濾過することで濾過効率を上げられる。
こうして作成した硬化型ガラスペーストを使って、図5(A)〜(E)に示すようにして、印刷,硬化を繰返して多層印刷したが特に問題点を見つけることはできなかった。またこれを焼成したが、特に異常を見つけることもできなかった。
また比較のために、従来インキとして、ビヒクルとして硬化型フェノール樹脂の代りに、エチルセルロースをαテルピネオールに溶解したものを用いて、同様にインキを作成した。これを用いて、多層印刷したところ、図5(A)〜(E)に示すような結果が得られた。またこれを焼成したところ、金属弾性体と内部電極の間に絶縁不良が発生しやすかった。そこで、絶縁不良の発生したサンプルの断面を観察したところ、図5(E)に示したように、ガラス層に厚みムラが多く、更に焼結済みのガラス内部にも空洞が多かった。
なお硬化温度は100℃以上で10秒以上、400℃未満で30分未満が望ましい。硬化温度が100℃未満の場合、インキ混練時やインキを自然放置させておくとインキ粘度が増加する可能性がある。硬化温度が400℃以上の場合、一部樹脂は分解しだすため、硬化性樹脂にこうした樹脂を添加して印刷性を改善することが難しくなる場合がある。また硬化時間は10秒以上30分以内が望ましい、特に100℃で10秒以内に硬化し始めるような樹脂は、インキ混練時に粘度変化したり、ポットライフが短くなることが考えられる。
また400℃以上で30分以上の必要な場合は、添加した樹脂の一部が分解し始める可能性があり、その上に次のガラス層等を印刷した場合、そのレベリング性が低下する場合がある。
なお、非晶質ガラスに用いる材料として、表5〜表7に示した以外のものを用いることができる。特に本発明で提案する荷重センサの場合、金属弾性体を用いるため、熱膨張係数が90×1E−7/℃から、150×1E−7/℃程度の、市販の非晶質ガラスの中から、感歪抵抗体とのマッチング性を良い材料を選べばよい。ガラス粉の平均粒径は5μm未満が望ましい。平均粒径が5μm以上の場合、20〜30μmの大きな塊が残っている場合があり、これらが印刷性に影響を与える可能性がある。またペースト粘度としては、10〜10000ポイズの範囲が適当である。粘度が10ポイズ未満の場合、粘度が低すぎて、高膜厚が得難く、更に印刷パターンが滲んだり、ダレたりする可能性がある。また粘度が10000ポイズを超える場合、粘度が高すぎて塗膜にピンホールが発生する可能性がある。なおこうしたペーストの場合、粘度は粘度計のズリ速度(あるいは回転数)によって、大きく変化する場合がある。そのため、ペースト粘度の測定は、ズリ速度が1〜100/sの範囲で行うことが望ましい。
(実施の形態8)
次に実施の形態8として、硬化型の電極ペーストの製造方法について説明する。
まず、内電ペーストとして、銀を主体とした導電粉を選び、ここに予め溶剤に溶解された硬化型フェノール樹脂を用い、金属製の3本ロールで混練した。なお3本ロールには水冷装置を接続し、ロール混練時のロール発熱による樹脂硬化を防止した。また1ロットが1Kg程度の少量の場合、適当な容器の中でスパチュラ等の治具を使って手でプレミキシングした後、そのまま3本ロールで混練しても問題が無かった。なお多少の凝集体が残っていてもロール上で肉眼で検出でき、必要に応じてロール回数を増加することで対策できた。
しかし1ロットが10Kg以上の場合、手でプレミキシングすることは体力的に負担がかかりすぎるので、プラネタリーミキサーやニーダー等の機械を使って、プレミキシングした後、3本ロールで混練することが望ましい。こうして作成した電極ペーストに所望に応じて溶剤を添加し、粘度調整した後、濾過し完成させた。なお、濾過には市販の開口が10〜20μmのスクリーン型フィルターを使い、必要に応じて加圧濾過することで濾過効率を上げられる。
こうして作成した電極ペーストを使って、図5(A)〜(E)に示すようにして、印刷,硬化を繰返して多層印刷したが特に問題は発生しなかった。またこれを焼成したが、特に異常を見つけることもなかった。また比較のために、従来インキとして、ビヒクルとして硬化型フェノール樹脂の代りに、エチルセルロースをαテルピネオールに溶解したものを用いて、同様にインキ作成した。これを用いて、多層印刷したところ、図4(A)〜(E)に示すような結果が得られた。またこれを焼成したところ、電極ペースト上に印刷したガラス材料に印刷ムラに起因する凹凸が多数発生していた。
金属弾性体と内部電極の間に絶縁不良が発生しやすかった。そこで、絶縁不良の発生したサンプルの断面を観察したところ、図4(E)に示したように、ガラス層に厚みムラが多く、更に焼結済みのガラス内部にも空洞が多かった。
なお硬化温度は100℃以上で10秒以上、400℃未満で30分未満が望ましい。硬化温度が100℃未満の場合、インキ混練時やインキを自然放置させておくとインキ粘度が増加する可能性がある。硬化温度が400℃以上の場合、一部樹脂は分解し出すため、硬化性樹脂にこうした樹脂を添加して印刷性を改善することが難しくなる場合がある。また硬化時間は10秒以上30分以内が望ましい。
特に100℃で10秒以内で硬化し始めるような樹脂を採用すると、インキ混練時に粘度変化したり、ポットライフが短くなる可能性がある。また硬化温度を400℃以上で30分以上に設定すると、添加した樹脂の一部が分解し始める可能性があり、その上に次のガラス層等を印刷した場合、そのレベリング性が低下する場合がある。
なお、本発明では、硬化型ペーストは、電極ペーストだけでなく、ガラスペーストと組合わせることができる。
次に、硬化型の電極ペーストに使用する硬化型樹脂について説明する。まず、硬化型樹脂としては一液型の硬化樹脂が望ましい。こうした用途に、一般のフェノール樹脂,エポキシ樹脂を用いることができる。なお、二液性の樹脂で絶縁ペーストを作製した場合、使用直前に反応開始剤を添加,混ぜる必要がある。そのため、一般の製造工程において、工程が煩雑になると共に、どうしても反応開始剤の秤量間違いが発生しやすい。
一方、キシレン樹脂等に代表される一液型の硬化樹脂は反応開始剤を添加せずとも、加熱だけで硬化するため、本発明の硬化型樹脂として使いやすい。なお、硬化型電極ペーストとしては、金属粉が10〜80wt%含まれていることが望ましい。金属粉が10wt%以下の場合、必要な導通性が得られない場合がある。
また金属粉が80wt%より多い場合、印刷後に充分なレベリング(平滑化)が得られない場合がある。また硬化型電極ペースト中に含まれる樹脂成分は、1〜20wt%以下が望ましい。樹脂成分が1wt%未満の場合、硬化してできた未焼成絶縁層(硬化後)の物理的強度が低い場合がある。未焼成絶縁層(硬化後)の強度が低い場合、その上に次の絶縁ペーストをスクリーン印刷等で印刷する際に、電極パターンが割れたり,傷付いたり,メッシュ状に凹んだりする場合があり、製品の歩留まりを下げる場合がある。
また、硬化型電極ペースト中に含まれる有機溶剤は、沸点150℃以上のものが望ましい。このように硬化絶縁ペースト内に有機溶剤を含ませることで、ペーストの粘度調整やペーストの固形分調整が容易になるため、長期間に渡り製造品質を安定化することができる。なお沸点150℃未満の有機溶剤の場合、印刷工程中に自然蒸発しやすいため、作業行程中でペースト粘度が変化し、未焼成絶縁層(硬化後)の厚みバラツキを発生させる場合がある。
またこうした有機溶剤は、ペースト中に溶剤が10〜40wt%含まれていることが望ましい。ペースト中の溶剤が10wt%未満の場合、溶剤による粘度や固形分調整の範囲が狭くなってしまう。また溶剤が40wt%以上含まれる場合、インキの乾燥による膜厚変化が大きくなり、場合によっては乾燥(もしくは硬化)後のみ電極の内部が多孔質になる場合がある。なお絶縁ペーストの粘度は10ポイズ以上10000ポイズ以下が望ましい。10ポイズ未満では、インキ粘度が低すぎてスクリーン印刷がしにくくなる。
またインキ粘度が10000ポイズを超えると、粘度が高すぎて、いくら下地が硬化していても、充分なレベリングを行うことは難しい。なお、絶縁ペースト中の樹脂の5〜100wt%を一液硬化型樹脂とすることで、絶縁ペーストの製造を容易にできると共に、スクリーン印刷機上で絶縁ペーストが硬化してしまい、後で取れなくなることがない。
たとえば、硬化絶縁ペースト中の樹脂成分のうち、50%を熱硬化型のキシレン樹脂、残り50%を溶剤に可溶なエチルセルロース樹脂とすることで、万一、インキがスクリーン版の上で硬化しても(あるいは硬化しかけても)、エチルセルロースの溶剤可溶性を活かせば簡単に溶剤で拭き取れる。そのため、スクリーン版に異物として残らないため、長時間の安定した印刷,あるいは無人印刷が可能になる。
なお、硬化温度は100℃以上,10秒以上が望ましい。硬化しやすい樹脂、たとえば、100℃未満,10秒未満で硬化する樹脂をペーストに用いた場合、印刷工程中、あるいは冷暗所に保存していてもペーストのポットライフが短くなる可能性がある。
なお、金属粉としては平均粒径0.1〜10μmが望ましく、ペースト中には、こうした銀を主体とする金属粉が60〜80wt%以上含まれることが望ましい。このように、安価で抵抗値の低い銀を電極に用いることで電子部品の低コスト化が可能になる。なお、所望に応じてパラジウムや白金を添加、もしくは合金として添加することで、はんだ濡れ性やマイグレーション防止等が可能になり、電子部品の信頼性を高められる。
なお複数の未焼成の絶縁層を必要に応じて電極層と共に、基板上に形成されたまま同時に焼成することも可能である。実施の形態1から3では、多層化印刷時の品質向上について説明した。しかし、こうして硬化,形成された複数の未焼成の絶縁層を金属基板上に形成されたまま同時に焼成することも可能である。このように複数の未焼成の絶縁層を未焼成の電極層と共に同時に焼成することで、焼成炉の数を減らせ、製造コストを大幅に下げられる。
また、これらの焼成温度は600〜950℃(望ましくは600〜900℃)が望ましい。600℃未満の場合、導電率や基材との接着力が不充分な場合がある。また950℃より高い焼成温度が必要な場合、配線材料として安価な銀を主体とした導体粉が使えず、更に金属基板自体により高価な特殊なもの(高耐力、耐酸化性、耐熱性)を使う必要がある。また焼成は、窒素ガスや水素ガス等を使った還元雰囲気ではなくて、一般の酸素を含むエアーを用いた、酸化雰囲気で行うことが望ましい。このように、酸化雰囲気で焼成することで、絶縁体内部に硬化型樹脂が残留炭素として残りにくくできるため、絶縁層の信頼性を上げられる。
また硬化型の電極ペーストの場合、粒径が0.1〜10μmの金属粉が、60〜80wt%,ガラス粉もしくはセラミック粉が1〜10wt%,樹脂が1〜20wt%,沸点150℃以上の溶剤が10〜40wt%含まれていることが望ましい。また粘度は10〜10000ポイズで、かつ樹脂中の5〜100%が硬化型樹脂であることが望ましい。
金属粉の平均粒径が0.1μm未満の場合、焼結時の収縮開始温度が下がり、同時焼成しにくい場合がある。また10μmを超えると、厚みムラが発生しやすく、ファインパターンの形成も難しくなる。また金属粉の添加量が60wt%未満の場合、抵抗値が高くなる場合がある。また80wt%以上の場合、溶剤等の有機成分が少なくなる分、インキ粘度が変化しやすくなり、取扱いが難しい。ガラス粉もしくはセラミック粉は、粉でなくても有機化合物(いわゆる、金属レジネート)であっても良いが、これらの添加量が1wt%未満の場合、添加効果が少なくなり、基材との密着性が低下することがある。
またその添加量が10wt%を超えると、抵抗値を上げる場合がある。また樹脂が1wt%未満の場合、電極ペーストの硬化後の塗膜強度が低下して、取れやすくなったり、傷付きやすくなったりする。また樹脂が20wt%を超えると、塗膜強度は高くなるが、焼成時の樹脂分解量が多くなり、焼成途中に膨れたり、割れたりする場合がある。
また溶剤の沸点は150℃以上が望ましい。150℃以下の溶剤では、印刷機上でペーストがすぐ乾いてしまい、連続印刷性に影響を与える。また溶剤が10wt%未満の場合、ペーストが乾燥しやすくなると共に、インキ粘度が変化しやすい。
また40wt%を超える場合、インキ乾燥に時間がかかりすぎる。また粘度が10ポイズ以下の場合、印刷時にパターンがにじみやすく、高精度なパターン形成が難しくなる場合がある。
また粘度が10000ポイズを超えると、粘度が高すぎてファインパターンの印刷が難しい。また樹脂中の硬化型樹脂の割合が5wt%未満の場合、硬化しない場合がある。また100%が硬化性樹脂であっても支障ないが、この場合、硬化性樹脂は溶剤可溶型のものが望ましい。溶剤可溶型の硬化性樹脂を用いることで、インキ中の固形分(揮発成分以外)を増やせ、塗膜を厚くできると共に、印刷終了後の設備や版を、有機溶剤で洗浄できるため作業性が良い。またペースト粘度も溶剤量で最適値に調整できる。
またこうして形成される内部電極の厚みは50μm未満が望ましい。50μmを超える場合、電極コストが上がると共に、この厚みが段差となり、その上に形成するガラス層や配線,抵抗体等の形成に影響を与える場合がある。
(実施の形態9) 内電共材
実施の形態9は、内部電極の組成を最適化することで、ガラスと内部電極を同時焼成時に発生しやすい課題を解決する。まず内部電極としては銀が80wt%以上とし、更に内部電極の上下に形成されている結晶質ガラス材料や、アルミナ材料を、無機系の焼結抑制剤として合せて1〜20wt%を添加することが望ましい。
たとえば、図2において、内部電極19には、内部電極19を上下に挟んでいる結晶化ガラス14bを構成するガラス材料や、コンポジットガラス材料を、予め内部電極ペースト中に添加しておくことが望ましい。こうすることで、内部電極ペーストを結晶質ガラスと焼成した場合の接合をより強固なものにできると共に、内部電極19の熱膨張係数を結晶化ガラス14bに近づけられるために、ガラス層と同時に焼成してもその応力集中を抑制でき、クラックが発生しにくい。
次に図8を用いて、内部電極とガラスの複数層を同時に焼成する場合について説明する。このように複数層を焼成することで、製造コストを下げられる。図8(A)において、金属弾性体1の上に、結晶質ガラス39a,39bが形成(焼成済み)されている。またこの結晶質ガラス39hの上には、内部電極ペースト40aが所定パターンで印刷され、その上に更に結晶質ガラスペースト41aが所定パターンで印刷されている。このように、多層印刷する場合、ペーストを硬化型にしておくことで、そのレベリング性を改善でき、印刷塗膜の厚みバラツキやピンホールを減らせる。
実施の形態9では、内部電極ペーストとその上を覆っている結晶化ガラスペーストの同時焼成について説明する。
図8(B)において、結晶質ガラス39cと内部電極42aは、結晶質ガラスペースト41aと内部電極ペースト40aが同時に焼成されたものである。図8(B)に示すように、予め内部電極ペースト40aに焼結抑制材を添加しておくことで、内部電極ペーストとその上を覆っている結晶化ガラスペーストを同時焼成しても特に課題は発生しない。
一方、図8(C)に示すように、内部電極ペースト40aに焼結抑制材が添加されていない場合、内部電極42bの周囲と、その周囲を囲む結晶化ガラス39cにクラック43が発生しやすい。なお、図8(C)において、結晶化ガラス39a,39bは、予め焼成されて結晶化している(結晶化することで、融点が1000℃以上に上がる)ため、内部電極ペースト40aを850℃程度で焼成しても、クラック43は発生しにくい。
なお、焼結抑制材としては、セラミック粉や金属レジネート(有機金属)を用いることができる。
また図9は、内部電極を下地となる結晶化ガラスと共に、これら複数層を一括して焼成する様子を説明するための断面図である。図9(A)において、金属弾性体1の上に、複数の結晶化ガラスペースト41b,41cが印刷積層された上に、更に内部電極ペースト40bが所定形状に印刷されている。予め内部電極ペースト40bに焼結抑制材を添加しておくことで、図9(B)にその断面で説明するように、内部電極42bや、その下地となる結晶化ガラス39c,39dに課題は発生しない。一方、図9(C)に示すように、内部電極ペースト40bに焼結抑制材が添加されていない場合、内部電極42b周囲と、その下の結晶化ガラス39c、39dにクラック43が発生しやすくなる。こうしたクラックの発生原因は、金属とガラスの焼成収縮の違いであり、これらのクラック43は、結晶化ガラス同士の界面や、内部電極との界面にも発生する場合がある。
図10は、内部電極の上下を結晶化ガラスで挟んだ状態で、これら複数層を一括で焼成する様子を示す断面図である。図10(A)において、金属弾性体1の上に、複数の結晶化ガラスペースト41d,41eを印刷し、更に内部電極ペースト40cが所定形状に印刷され、更に結晶化ガラスペースト41fに覆われている。予め内部電極ペースト40cに焼結抑制材を添加しておくことで、図10(B)にその断面で説明するように、内部電極ペースト40cとそれを上下に挟む結晶化ガラスペースト41e、41fを同時焼成しても、特に課題は発生しない。
一方、図10(C)に示すように、内部電極ペースト40cに焼結抑制材が添加されていない場合、内部電極42cの周囲と、それを埋込む結晶化ガラス39fやその界面にクラック43が発生しやすい。またこれらのクラック43は、結晶化ガラス同士の界面や、内部電極との界面にも発生する場合がある。
なお、こうした電極ペーストに、セラミック粉や結晶化ガラスを焼結抑制剤として添加する場合、これらは粉末状で添加すると、焼結後に凝集体として残り、信頼性を低下させる場合がある。そのため、セラミック粉を添加する場合、これらを予めペースト状に分散しておくことが望ましい。なお、ガラスペーストや電極材料を硬化型ペーストとすることでも、図8から図10に示したように、複数層の同時焼成時でのクラック発生を防止することができる。
これはペーストを硬化させることによって、硬化後のペーストの焼成収縮開始温度が、一般のエチルセルロース等の樹脂を用いた場合より100〜200℃程度高温側にシフトするためである。更に硬化型ペーストにこうした焼成抑制剤を添加することで相乗効果も期待でき、その分、焼結抑制剤の添加量を減らし、電極の導電率を高められ、焼結抑制剤にくらべ、硬化型樹脂の方が大幅に安価なため、電極材料のコストダウンも図れる。
またこうした技術を使って、図2に示すように、内部電極19を内蔵したまま結晶化ガラス14bを同時焼成したり、内部電極19と結晶化ガラス14bと非晶質ガラス15bを同時焼成したり、内部電極19と結晶化ガラス14bと非晶質ガラス15bと配線16bを同時焼成できることは言うまでもない。また前述したように、硬化型樹脂を使ったクラック防止技術と、ここで説明した焼結抑制剤を用いたクラック防止技術を併用することで、更に同時焼成が容易になる。
なお、内部電極としては、銀を主体としながら、所望に応じて、すなわち、設計事項やスペックに応じて、Bi2O3を1〜15wt%添加することが望ましい。Bi2O3の添加量が1wt%未満の場合、ガラスとの接着力が低い場合がある。また15wt%を超えると、抵抗値が所定の範囲を超えたり、ビスマスのガラス層への拡散による影響が考えられる。またSiO2やCuOを0.5〜10wt%含ませることが望ましい。これらが0.5wt%未満の場合、ガラスの接着性が低下する場合がある。また10wt%を超えると、抵抗値を上げたり、ガラスへの拡散による影響が考えられる。また、こうしたSiO2やCuOは、電極の焼結抑制の効果も期待できる。
(実施の形態10)
実施の形態10では、感歪抵抗体に接続される配線材料について説明する。感歪抵抗体に接続される配線を利用して、各種半導体やチップ部品をはんだ実装することで製品のコストを抑えられる。またこうした部品実装は、メーカーで行われず、ユーザーにて行われる場合がある。一般のアルミナ基板等を用いたハイブリッドICに比べて、荷重センサは金属基板を使っている分熱容量が大きい。
そのため、荷重センサに予めはんだリフローを行ったとしても、一般の回路基板に比べて、はんだが付き難い場合がある。そのため、はんだ付けに時間がかかり、荷重センサの配線がはんだ喰われすることがある。このはんだ喰われとは、配線を形成する電極材料が、はんだの中に溶解してしまい、その厚みが薄くなったり、無くなったりすることで、こうしたはんだ喰われが発生すると、実装された部品の接着強度や引張り強度が低下することが考えられる。
こうした、荷重センサに特有な課題に対しては、配線に用いる電極材料に、銀パラジウムを用いることが望ましい。特にパラジウムの含有率を5%以上、望ましくは10%以上とすることで、様々なはんだ付け条件においても、はんだ喰われの発生を抑制できる。
なお、配線にはんだ付けするには、はんだ喰われの他に、配線材料のはんだに対する濡れ性も重要な要素である。こうしたはんだに対する濡れ性を改善するには、配線材料に酸化ビスマスを添加することが望ましい。酸化ビスマスの添加量は、1〜20wt%程度、望ましくは5wt%以上20wt%未満が良い。酸化ビスマスの添加量が1wt%未満の場合、添加効果が得られない場合がある。
また20wt%を超えると、添加した酸化ビスマスが焼成後に配線パターンの周辺に析出して、特性を低下させたり、感歪抵抗体の電気特性に影響を与える場合もある。また、SiO2やCuOを0.5〜5wt%添加しておくことで、下地との密着力を向上できる。
また部品実装部(もしくははんだ付け部分)には、銀パラジウムを配線材料とすることが望ましいが、感歪抵抗体との接続には必ずしも銀パラジウムを用いる必要は無く、パラジウム含有率の低い(たとえば1wt%)、安価な銀を主体とした電極材料を用いることができる。こうして、パラジウムの含有率の高い材料をはんだ実装部、安価な配線材料をそれ以外の部分と、部分的に分けて印刷することができる。
本発明で提案するように、特に非晶質ガラスペーストを硬化型としておくことで、この上に印刷する配線パターンのレベリング性を改善できるため、配線の膜厚均一化が改善される。
また特に異なる配線インキを組合わせて印刷する場合にも、優れた効果が得られる。また印刷後(焼成前)の配線の厚みが均一であればあるほど、焼成後の配線の厚みも均一化できるため、この上に印刷する感歪抵抗体の印刷性も改善でき、更には後工程での部品実装性(はんだ付け性)も安定化できる。
(実施の形態11) コンポジットガラスの説明(結晶質+セラミック)
次に実施の形態11として、様々な種類の金属弾性体を用いて荷重センサを製造する方法について説明する。荷重センサの用途が広がるにつれて、市場からは、荷重センサに対して様々な要求があり、こうしたニーズや用途に応じて、様々な形状,材質の金属弾性体を使い分ける必要がある。たとえば、外見寸法の違い,基板厚みの違い、加工方法の違い,厚みや材質の違い,取り付け孔の有無等である。こうした部材を使いながら、配線を多層化した荷重センサを市場に提供する必要がある。
しかし、従来提案されていたガラス材料では、それぞれ熱膨張係数が固定されているため、そうした対応に課題が残っていた。
図11はこうした基板となる金属弾性体の反りを説明するものである。図11(A)は、金属弾性体1の上にガラス層44を形成した例である。また45は金属弾性体1の反りである。図11(B)は金属板の厚みとその反りの関係を示したものである。図11(B)に示すように、金属弾性体1の厚みが増加するにつれて、反り量は小さくなるが、一定の値を超えると、ガラス層44が破壊したり剥がれたりする可能性はある。一般に荷重センサは、指定された金属基板(材質,厚み,形状等)に対して各々ガラス材料を最適化し、作り込むために、図11(B)に示すような問題点が発生することは無い。しかし、同じ金属弾性体を使った場合でも、その厚みを0.2mm,1mm,2mmおよび5mmの場合に変化させた場合、同じガラス材料では対応しきれない。これは、図11(B)に示した理由だけではなくて、基板の厚みが変わることでの加工方法の違い、あるいは加工歪みの残留量等も影響する。同じ金属弾性体を用いた場合でも、厚み1mmで打ち抜くのと、厚み5mmで打ち抜くのでは、加工方法,手順も大きく異なるため、単一の熱膨張係数を有する材料では対応しきれない。そのため、無数のガラス材料を開発する必要が有り、コストアップの原因になっていた。
そこで、実施の形態11では、荷重センサに使うガラス材料をコンポジット化し、その熱膨張係数を微調整することで、こうした用途に応えようとするものである。
図12は、コンポジットガラスの拡大模式断面図である。図12において、結晶化ガラス46の内部にセラミック粉47が分散された状態で同時焼成され、コンポジットガラス48を形成している。
このように、ガラスの中にセラミック粉を分散させた状態で、これを同時焼成させることで形成したコンポジットガラスは、そこに添加するセラミック粉47の種類や添加量を微調整し、そのコンポジットガラスの熱膨張係数を微調整することができる。
従来、金属弾性体に応じて、夫々ガラス材料を開発する必要があった。このようにガラス材料をコンポジット化することで、一種類のガラス材料であっても、多様な金属弾性体に対応でき、荷重センサのコストダウンが可能になる。またこうした手法を使えば、結晶化ガラス以外に、非晶質ガラスでもコンポジット化できる。
まず実施の形態11として、本発明の特徴であるコンポジットガラス層を用いた荷重センサについて説明する。実施の形態11では、図1の結晶質ガラス層14aや、図2の結晶質ガラス層14bの部分に、コンポジットガラスを使うことになる。
図13は、コンポジットガラスの熱膨張係数を変化させる様子を説明する図である。図13(A)は金属弾性体1の上にコンポジットガラス48を形成したものである。このときのコンポジットガラスの熱膨張係数を測定したものが、図13(B)である。図13(B)において、X軸はコンポジットガラス層へのフィラーの添加量であり、Y軸は出来あがったコンポジットガラスの熱膨張係数である。図13(B)より、フィラーAを添加して作成したコンポジットガラスの方が、フィラー添加量の増加に連れて熱膨張係数が低下することが判る。またフィラーBを添加したコンポジットガラスの場合、フィラー添加量の増加に連れて熱膨張係数が増加することが判る。
また図13(B)より、フィラー添加量が5wt%未満の場合、その熱膨張係数の変化が小さく、フィラーの添加効果が少ない場合があることが判る。また図13(B)に示すようにフィラー添加量が40wt%を超える場合、コンポジットガラスが焼結しにくくなり、その機械的強度が低下することがある。このように、フィラーの種類や、添加量を調整することで、熱膨張係数の可変範囲を広げられるため、一つのガラス材料であっても、様々な熱膨張係数を有する金属弾性体に適用できる。
図12の結晶化ガラス46の熱膨張係数を8.5ppm/℃とした場合、これに熱膨張係数7ppm/℃のアルミナからなるセラミック粉47を添加することで、出来あがったコンポジットガラスの熱膨張係数を低下することができる。また熱膨張係数9.5ppm/℃のジルコニアを、図12のセラミック粉47として添加することで、出来あがったコンポジットガラスの熱膨張係数を増加することができる。
また、結晶化ガラス46自体の熱膨張係数が10や13ppm/℃と大きいものを選んだ場合でも、このようにしてコンポジット化することで、熱膨張係数を調整できる。
特に金属弾性体1の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有する結晶化ガラス46を選ぶことで、結晶化ガラス46よりも熱膨張係数の高いフィラー(フィラーBに相当)を添加した状態においても、コンポジットガラス層48には圧縮応力を発生する。
このように結晶化ガラス46自体の熱膨張係数は固有のものであるが、本発明で提案するようにフィラーとしてセラミック粉を添加し、コンポジット化させることで、その熱膨張係数を数%から十数%程度増減できる。
なお、結晶化ガラスに加えるフィラーの添加率は、5wt%以上40wt%未満が望ましい。つまり、コンポジットガラスを構成する結晶化ガラスとセラミック粉の割合は、結晶化ガラス:セラミック粉=95:5〜60:40の間が望ましい。この理由は、図3(B)で説明するように、フィラーの添加量が5wt%部未満の場合、できあがったコンポジットガラス層48の熱膨張係数の変化も少なく、コンポジットガラス48の特徴である結晶化ガラス46の利点(たとえば、結晶化した後は溶解温度が上昇し材料が相互拡散しにくい等)とセラミック粉47の利点(安定しており相互拡散しにくい、熱膨張係数が材料によって異なる等)の相乗効果(コンポジットガラス層48となることで再溶解されにくく、結晶化した後は相互拡散しにくい、熱膨張係数を必要に応じて増減できる)が得られない場合があるためである。
またフィラーの添加量が40wt%を超えると、図13(B)に示すようにコンポジットガラスが焼結しにくくなり、その強度が低下する場合がある。これはセラミック粉47の表面を濡らすのに必要なガラス量が足りなくなったためである。できあがったコンポジットガラス48に微細な孔等が発生したり、絶縁抵抗を下げてしまうことがある。このように、フィラーの添加量は、コンポジットガラスの5wt%以上40wt%以下が望ましく、この範囲内で熱膨張係数を増減できる。またそれ以上の熱膨張係数の調整を行う場合は、異なる熱膨張係数を有する結晶化ガラス14を選び、これに同様に各種フィラーを添加することで対応できる。
本発明のコンポジットガラス48に添加するセラミック粉47としては、アルミナ(Al2O3、熱膨張係数は6.5〜8.0ppm/℃)、MgO(熱膨張係数は13ppm/℃)、フォルステライト(2MgO・SiO2、熱膨張係数は組成割合によって8〜11ppm/℃)、ジルコニア(熱膨張係数は10.4ppm/℃)、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、スピネル(MgO・Al2O3)等が望ましい。またこれらの平均粒径は、0.01〜5μm程度が望ましい。0.01μm未満の場合、コスト高になる。
また平均粒径が5μmより大きな場合、ガラスとの同時焼成がしにくい場合がある。また本実施の形態で提案した結晶化ガラス以外の市販の結晶化ガラスについても、このようにセラミック粉をフィラーとして添加することで、できあがったガラスコンポジット材料の熱膨張係数を微調整できるため、各々の製品に対して最適設計が可能になる。
なおセラミック粉としては、熱膨張係数は6ppm/℃以上、15ppm/℃未満のものが望ましい。6ppm/℃未満や15ppm/℃以上のセラミック粉47は、コンポジットガラス化しても金属弾性体1とのマッチングが難しい場合がある。
特に、コンポジットガラスの中のセラミック粉はガラスと殆ど反応しないため、焼成後にもそのまま図12に示すように残っていることが多い。そのため、コンポジットガラスの熱膨張係数の計算は、結晶化ガラスの熱膨張係数と、それに添加するセラミック粉の熱膨張係数との比例計算で簡単に求められる。
なお図12は簡略化したものであるが、実際のコンポジットガラスの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)やXMA(X線マイクロ分析)で解析すると、結晶化ガラスが形成する粒界と、そこに拡散したセラミック粉が見える。またこれらを元素分析すると、結晶化ガラスからは、結晶化ガラスを構成する複数の元素(たとえば、MgO、SiO2、Al2O3等)が交じり合ってまんべんに検出されるが、セラミック粉から固有の元素(セラミック粉にアルミナを用いた場合、アルミと酸素の元素が特異的に高強度で検出される。
またセラミック粉に酸化ジルコニアを用いた場合、ジルコニアと酸素の元素が特異的に高強度で検出されるが高濃度で検出できるため、これら元素が結晶化ガラスに元々含まれてたものか、あるいはコンポジットガラスを構成するためにフィラーとして添加されたものについては、判別が容易である。
なおコンポジットガラス48のトータルの厚みは少なくとも10μm以上200μm以下が望ましい。厚み10μm未満の場合、ガラスペーストをスクリーン印刷した際に発生するピンホール等の影響を受けやすい。また厚みが200μmを超える場合、ガラスのコストが増加する。
また、コンポジットガラスの製造法は、結晶ガラス粉とセラミック粉よりなるガラスペーストを焼成することであるが、この方法を用いて、非晶質ガラスとセラミック粉よりなるコンポジットガラスも作成できる。この場合、非晶質ガラス粉とセラミック粉の両方を所定比率(望ましくは重量比で非晶質ガラス粉:セラミック粉=95:5〜60:40の間で)でブレンドしてなるガラスペーストを、800〜900℃の間で焼成すればよい。800〜900℃の間で焼成することで、セラミック粉にダメージを残すことなく非晶質ガラス中に分散できる。またこの場合、一部のセラミック粉は非晶質ガラス中に溶解する可能性はあるが、殆どのセラミック粉は非晶質ガラス中に、一種のフィラーとして分散された状態になる。そのため、所定の分析方法(XMA等)を用いれば、それが非晶質ガラスなのか、その中に分散されたセラミック粉なのかが判別できる。
また同様にして、非晶質ガラス粉に結晶質ガラスをブレンドして作成する非晶質コンポジットガラスは、重量比で非晶質ガラス:結晶質ガラス=95:5〜50:50の割合が望ましい。非晶質ガラスの割合が、95wt%を超える場合、特にコンポジット化する必要が無い場合がある。また非晶質ガラスの割合が50wt%未満の場合、非晶質を主体としたコンポジットガラスと呼ぶより、結晶質ガラスを主体としたコンポジットガラスと呼ぶべきであろう。
また結晶質ガラスに非晶質ガラスをブレンドして作成する結晶質コンポジットガラスは、重量比で、結晶質ガラス:非晶質ガラス=95:5〜50:50の割合が望ましい。結晶質ガラスの割合が、95wt%を超える場合、特にコンポジット化する必要が無い場合がある。また結晶質ガラスの割合が50wt%未満の場合、結晶質を主体としたコンポジットガラスと呼ぶより、非晶質ガラスを主体としたコンポジットガラスと呼ぶべきである。またコンポジットガラス中のガラスの結晶性に関しては、XRD(X線回折)等を使って解析できる。たとえば、非晶質SiO2の場合、ハローと呼ばれるブロードな盛り上がりが観察される。また結晶質SiO2(たとえば石英)では、複数のシャープな回折線が観察される。また、こうした回折図形のピーク位置(d値と呼ばれる)やピークの強度比に、市販の物質解析ソフトウエアを組合わせて解析することで、物質の特定も容易である。
なお、オーバーコートにガラス材料を用いる場合、オーバーコートガラスの中の酸化鉛の割合は60wt%以上95wt%未満含むものが望ましい。酸化鉛の量が60wt%未満の場合、焼成温度が高くなるため感歪抵抗体が再熱処理されることになり、抵抗値や温度特性がずれてしまうことがある。
また酸化鉛の割合が95wt%以上の場合、耐水性が低くなる場合がある。またオーバーコートガラスの厚みは、10μm以上200μm未満が望ましい。10μm未満の場合、ゴミや気泡によるピンホールが発生する可能性がある。またオーバーコートガラスの厚みが200μm以上の場合、焼成時にオーバーコートガラスが流れて広がりすぎて、パターン不良を発生させる場合がある。またオーバーコートガラスは2層以上が望ましい。オーバーコートガラスの印刷を2層以上にすることで、たとえ1層にゴミや気泡によるピンホールが発生したとしても、不良原因になりにくい。
なお、オーバーコート層に樹脂を用いる場合、樹脂層にセラミック粉を5wt%以上50wt%未満含ませることが望ましい。樹脂層にセラミック粉を添加させることで、物理的強度を上げられるため耐摩耗性も上がり傷つきにくくなる。セラミック粉の含有量が5wt%未満の場合、添加効果が得られない場合がある。セラミック粉の含有量が50wt%以上の場合、オーバーコート樹脂層の流動性や充填性が下がる場合がある。また樹脂のオーバーコート層の厚みは10μm以上200μm未満が望ましい。10μm未満の場合、ゴミや気泡によるピンホールが発生する可能性がある。またオーバーコート樹脂層の厚みが200μm以上の場合、硬化時にオーバーコート樹脂がダレて流れて広がりすぎてパターン不良を発生させる場合がある。またオーバーコート樹脂は2層以上が望ましい。オーバーコート樹脂を2層以上にすることで、たとえオーバーコートの1層にゴミや気泡によるピンホールが発生したとしても不良原因になりにくい。
また、オーバーコートを複数層にする場合、ガラス同士、または、樹脂同士で複数層を形成してもよいが、これらを組合せても良い。この場合、感歪抵抗体に近い方にガラスやセラミックを主成分とする第1のオーバーコート層を厚み10μm以上200μm未満で、更にその上に樹脂を主成分とする第2のオーバーコート層を厚み10μm以上200μm未満で形成することが望ましく、こうすることで互いの特徴を活かすことができる。
この場合、熱処理温度の関係から、ガラスを主成分とするオーバーコートの上に樹脂を主成分としたオーバーコートを形成することが望ましい。樹脂を主成分とするオーバーコート材は、各種電装品の保護用や、半導体のベアチップ実装に使われている品番から選ぶことができる。なおこうしたオーバーコートの厚みは10μm未満ではピンホール等の心配があり、200μm以上の場合は形成に手間がかかるためコスト高になるため、荷重センサ用としては、それぞれ厚み10μm以上200μm未満が望ましい。
また、配線パターンの厚みは3μm以上50μm未満が望ましい。3μm未満の場合、配線パターンを形成する電極が薄くなりすぎ局所的に導通が得られなくなる部分が発生する場合があり、配線抵抗が高くなったり、基板と第1の電極間に形成される容量成分が設計値より低くなることがある。また厚みが50μmを超えると、コストが上がる場合がある。
また配線パターンの中には、ガラス成分もしくはセラミック部材が3wt%以上20wt%未満含まれることが望ましい。配線パターン中に、コンポジットガラスを形成するガラス成分、あるいはセラミック部材を予め添加しておくことで、熱膨張係数をガラス層に合わせることができ、更にガラス層との接着力を上げられるため、ガラス層との層間剥離等の発生を防止できる。ここで添加量が3wt%未満の場合、こうした効果が少ない場合がある。また添加量が20wt%を超える場合、配線抵抗を上げてしまう。特に、荷重センサのようにアルミナ基板等のセラミック基板に比べ熱膨張係数が2〜3倍と大きなため、ちょっとした熱膨張係数の違いがこうした層間剥離等の不良の発生原因になりやすい。
なおコンポジットガラス層を複数層化する場合、1層当たりの厚みは5μm以上70μm未満が望ましい。5μm未満の場合、必要な絶縁が得られない場合がある。また1層当り70μmを超える場合、印刷時にインキが滲んだり、ダレたりして高精度の印刷が難しくなる。
なお、ガラス層やコンポジットガラス層、電極等は800〜900℃の酸化雰囲気で焼成されることが望ましい。800℃未満では充分な焼結強度がえられない場合がある。また900℃を超える高温で焼成すると、焼成コストが増加すると共に金属弾性体の強度が低下したり、より耐熱性の高い高価な金属基板を使う必要が発生する場合がある。
(実施の形態12)
次に実施の形態12として、コンポジットガラスペーストの製造方法について説明する。図14は、コンポジットガラスにピンホールが発生する可能性があることについて説明するものである。図14において、49はセラミック粉凝集体であり、50はピンホールである。図14に示すように、セラミック粉47が、結晶化ガラス46の内部に均一に分散されている場合、こうしたピンホールは発生しないが、セラミック粉47の分散が不充分で、セラミック粉凝集体49が発生すると、図14に示すように、ピンホール50が発生することがある。これは結晶化ガラスの焼成温度では、セラミック粉が焼結しないためであり、特にセラミック粉が凝集体を形成した状態でコンポジットガラス中に残っていると、非常に小さな確率ではあっても、ピンホール50の発生原因となる。
こうしたピンホール50を防止するためには、コンポジットガラス中のセラミック材料の分散を均一化することで対策できる。
次に、コンポジットガラスペーストの製造方法について、図15,図16を用いて説明する。図15,図16はコンポジットガラスペーストの製造方法を説明する図であり、本実施の形態12では、コンポジットガラスに用いるセラミック粉を、予め溶剤中に分散しておき、ここにガラス粉を添加して混練するものである。このように、ガラス粉とセラミック粉を個別に、各々に最適な条件で分散することで、セラミック粉の凝集体を含まないコンポジットガラスペーストを提供できる。
図15(A)において、符号51a〜51dは所定原料であり、具体的には、セラミック粉,溶剤,分散剤および少量の樹脂等である。次にこれらの所定原料は、図15(B)に示すように、分散装置52の中で、ビーズ53によって分散される。なお、分散装置52として、回転ボールミル,攪拌ボールミル,シンマルエンタープライズ製のダイノミル等のビーズを用いた攪拌式や、振動式,回転式の分散装置を使うことが望ましい。
セラミック粉を、溶剤や少量の分散剤(もしくは少量の樹脂、これは樹脂の種類によっては樹脂を加えることでセラミック粉の濡れ性が改善されるため、当然であるが樹脂を加えすぎると粘度が上がってビーズでの分散が難しくなるので、樹脂を添加する場合、少量に限定される)と共に、こうした分散装置で分散することで、凝集体無く分散できる。
この分散において、セラミック粉,溶剤,分散剤もしくは少量の樹脂からなるスラリーの粘度は、1cP(センチポイズ)以上10P(ポイズ)以下が望ましい。1cP以内の低粘度のスラリーの場合、分散機中ではセラミック粉は解れていても、粘度が低すぎて、これを取出して、濾過する時に沈殿してしまうことがある。またスラリー粘度が10ポイズを超える場合、ビーズを使った分散機では、分散能力が発揮できず、ビーズとスラリーの除去も難しくなる場合がある。なおビーズを使う場合、ビーズの大きさは10cm以下が望ましい。ビーズの大きさは小さいほうが、より細かいセラミック粉に対しても分散効果が高いが、ビーズ同士の衝突のエネルギーが小さくなるので、一定馬力以上の動力を用いた分散装置を使うことが望ましい。こうした分散機の場合、特に回転式の場合、リップシール(分散装置のシール機構の一種)の性能にもよるが、0.3mmnφ以下のビーズでは使いにくいことがあるので、注意が必要となる。またビーズ材料としては、市販のアルミナ製やジルコニア製(イットリア入りが望ましい)が望ましい。またセラミック粉と同じ成分のビーズ材料を選定することで、ビーズが研磨されて、不純物としてスラリー中に混入した場合でも、その影響を防止できる。
こうして作成したスラリーは図15(C)に示すように濾過される。図15(C)において、55aは濾過装置、56aはフィルターである。スラリーは、図15(C)の矢印54に示されるように、濾過装置55aにセットされたフィルター56aに注がれ濾過された後、容器57aに回収される。
なお、フィルタ−56aとしては、開口が10〜20μmの市販の網を用いることができるが、デプス型(体積濾過型)と呼ばれるような、繊維を糸巻状に加工したフィルターを使えば、多量のスラリーを圧力損失を最小限にしながら(つまり、フィルターが詰りにくい状態で)濾過できる。またこうした濾過は、スラリー自体の自重で行ってもよいが、エアー圧力(圧空)やダイヤフラムポンプ等を用いることで、作業効率を上げられる。こうして図15(C)の矢印54のように注がれたスラリーは、濾過され、矢印54のようにして容器57aに回収される。
次に図16を用いて、凝集体無く分散されたセラミック粉を用いて、コンポジットガラスペーストを作成する様子を説明する。図16(A)において、所定材料51e〜51h,セラミック粉が分散されてなるスラリーは図15(C)の容器57aに回収されたもの、結晶化ガラス粉,樹脂,分散剤等である。ここで樹脂に硬化型樹脂を使うこともできる。また樹脂の一部を分散剤として用いることもできる。また必要に応じて、着色剤等を加えておくことで、各層の厚みを色や元素で判別しやすく、製品管理がやりやすくなる。
図16(B)において、58は混練機であり、内部には所定の攪拌治具59が内蔵されている。こうした混練機58としては、プラネタリーミキサー、ニーダー、自動乳鉢等を用いることができる。このように混練機58の内部に、攪拌治具59をセットすることで、高粘度の材料でも安定して混練できる。特に、本発明で提案する荷重センサの場合、コンポジットガラスペーストの印刷には、スクリーン印刷を用いることでコストダウンが可能になる。
しかしコンポジットガラスペーストをスクリーン印刷するには、その粘度が低すぎると、印刷後にパターンが滲んだり、所定厚みが得られない場合があるため、一定以上の高粘度が必要になる。そのため、こうしたコンポジットガラスを混練する場合、非常に高粘度(たとえば、数万ポイズ以上の粘度状態で、自重ではまったく流動しない)の場合が多く、こうした攪拌治具59を備える、混練機58を用いることが望ましい。
図16(B)に示すように、所定材料51e〜51hは、各々所定量が、混練機58に投入され、内蔵された攪拌治具59が、矢印54のように回転することで混練される。なお、ここで材料の添加順番は、互いに反応しあわないように工夫することが望ましい。たとえば、ガラス粉と樹脂,スラリーとガラス粉等を一度に多量で混練すると、かえって凝集体を作成する場合がある。こうした凝集体形成(たとえば、ソルベントショック等と呼ばれることもある)を防止するには、少量ずつを添加する、あるいは凝集しにくいもの同士の組合せを予め確めておくことなどで、防止できる。
そして、図16(C)に示したように、3本ロール60等の混練機を用いて混練することで、スラリー中のセラミック粉とガラス粉を均一に分散し、コンポジットガラスペーストを作成できる。
最後に図16(D)に示したように、濾過装置55b、フィルター56bを用いて濾過することで、コンポジットガラスペースト中のゴミや凝集体を除去できる。
次に更に詳しく説明する。まず、一例として、図15〜図16に示すようにして、コンポジットガラスペーストを作成した。セラミック粉だけを予め分散しスラリー化し、濾過した後、図15に示すようにして結晶化ガラス粉と混ぜてコンポジットガラスペーストを作成した。まず図15(A)において、所定材料51aをセラミック粉とした。具体的には、市販の粒径0.4μmであるが、凝集体を多数含む安価なアルミナ粉(数百円/Kg)を用いた。次に、このアルミナ粉に、吸油量を僅かに超える程度の少量の溶剤(吸油量の詳細はJIS−K5101に記載されている)の溶剤(ブチルカルビトールアセテート等)と分散剤を加え、高濃度であるが、低粘度のアルミナスラリーを作成し、これを市販のビーズミルを用いて、一定時間分散した。なおビーズにはアルミナ製の直径2mmの物を用いた。こうして分散してできたアルミナをグラインドメーター(詳細はJIS−K5600に記載されている)を用いて評価したが、3μm以上の凝集体は検出されなかった。またこのアルミナスラリーを粒度分布計を用いて、粒度分布を測定したが、一次粒子まで解されていることが判った。
またこのアルミナスラリー中には所定量の分散剤が添加されているため、高濃度(アルミナ含有率60wt%以上、望ましくは80wt%以上)であるが、粘度は10ポイズ(ズリ速度1/sから100/sの範囲において)未満であったにも関らず、24時間後にも分散は安定していた。なおこのアルミナスラリーを長時間保存する場合は、回転架台等にセットした状態で適当に回転させておくと沈殿防止やセラミック粉の再凝集を防止できる。こうして作成した、アルミナスラリーは、図15(C)に示すように開口10μmのフィルターで問題無く濾過できた。次に、図16(A)に示すようにして、このアルミナスラリーを、ガラス粉は他のバインダー等と秤量、図16(B)に示すようにしてプレミキシングし、最後に図16(C)に示すようにロール混練した。こうして作成したコンポジットガラスペーストは、20μmフィルターで問題無く濾過できた。その後、粘度調整されて完成される。なお、粘度は10ポイズ以上10000ポイズ以下が望ましい。これ以外の粘度範囲の場合、印刷しにくく難しい場合がある。
こうして作成した、コンポジットガラスペーストを用いて図15に示す荷重センサを作成したが、特に問題無かった。またの断面をSEMやXMAで解析したところ、図12のようであり、結晶化ガラス46の中に均一に分散されたアルミナが検出された。
このように、セラミック粉を凝集体無く分散させる場合、どうしても工数がかかってしまうため、より低コストに効率良く分散することが望まれている。こうした場合、セラミックスラリーを高濃度にしておくことで、分散効率を高められ、製造コストも下げられる。特に、セラミックスラリーを高濃度(たとえば、吸油量の10%増から50%増までの溶剤量で)で分散することが重要である。溶剤添加量が吸油量以下の場合、セラミックスラリーの粘度が高すぎて、ビーズ分散は難しい。また吸油量の100%増し(つまり、JISに従って測定した吸油量が50gだった時、溶剤を100gとすること)にした場合、セラミックスラリーの粘度は充分低いが、溶剤量が多すぎて、コンポジットインキ組成において、溶剤量が増えすぎ、途中で溶剤を減らす必要がある場合がある。
(実施の形態13)
実施の形態13では、本発明に用いる金属弾性体について更に詳しく説明する。
本発明において、結晶化ガラスは金属弾性体上で焼成されるため、耐熱性が優れるのは当然であるが、更に耐力が要求される。こうした用途には、オーステナイト系合金や時効硬化合金(特にNi基合金)や、Co基合金(たとえば、インコネル)等、あるいはフェライト系やオーステナイト系の耐熱性鋼を必要に応じて使い分ければよい。たとえば、フェライト系の耐熱合金を用いることで、歪みセンサの高精度な加工が容易になると共に、その加工後の残留応力、加工歪み等を少なくできる。また必要に応じて金属弾性体内部にアルミを含有させておくことで、熱処理時に添加したアルミが金属弾性体上に酸化アルミ皮膜を形成し、耐熱性や耐酸化性を改善できる。更に、結晶質ガラスにアルミナを添加しておくことで、アルミを含有した金属弾性体との熱処理での接着力(剥離強度)を大幅に改善する効果もある。
こうした部材としては、AISI(米国鋼鉄協会)タイプの300や400シリーズの合金として、SUS304,316,404,430,S17及び444が適当である。
また他の金属弾性体であってもその表面に耐熱処理を行うことで使うこともできる。こうした合金は、その組成によって90×1E−7から140×1E−7/℃の範囲内で一つの決った熱膨張係数を有する。しかし、荷重センサのように、所定形状に加工した場合、その加工時に金属弾性体の内部に歪みが残ってしまい、この上にガラスペーストを印刷、焼成した場合、本来の熱膨張係数以上に変形してしまうことが多い。
たとえば、ガラスと金属基板の熱膨張係数の差から計算される基板の反り量以上に金属基板が大きく反ってしまう。たとえば、同じSUS材料を用いた場合でも、厚みが0.5mmのときと、厚みが2mmの時、厚みが5mmの時でプレス(打抜き)によって、所定の基板形状に加工した場合でも、反り量が変化してしまう。特に同じ金属材料を用いたとしても、その厚みが変化すればおのずと加工方法が変るためであり、そしてこの反り量は、同じ金属組成であるにもかかわらず、加工時の圧力,方法,手順,金型の違い等で変化してしまう。またこうした反り対策として、加工後に反り修正を行うこともできるが、その反り修正をしても、残留応力や熱処理時の変形量をゼロにすることは難しい。
そのため、こうした所定形状に加工され、内部に応力が残る金属基板の表面に荷重センサを形成する場合、こうした反りに応じて、ガラスの熱膨張係数をマッチングさせる必要がある。その場合、本発明で提案したように、結晶化ガラスや非晶質ガラスをコンポジットガラス化することで、使用材料は同じままで熱膨張係数を微調整できるため、こうした加工方法での反りに対しても、ガラス側で容易に対応できる。
なお、本発明に用いる金属弾性体の厚みは1mm以上が望ましい。これは図11に示すように、金属弾性体の厚みが1mm未満の場合、金属弾性体側が弱い力で曲るため、ガラスと金属弾性体との熱膨張係数の差が、少々ずれていても、ガラス層が割れたり、剥がれたりはしにくい。一方、本発明の場合、金属弾性体の厚みが1mm以上(あるいは5mm以上のように、変形しにくい場合も)の場合でも、ガラスと金属弾性体の熱膨張係数の差を調整できる。
このように、本発明に用いる金属弾性体の厚みの上限は特に無い。ただ、実用的には、金属弾性体の厚みが1mmを超えると、ガラス層の形成時の熱処理装置が高価になり、熱処理時の熱ムラも大きくなるため、金属弾性体の厚みは1mm以下が望ましい。しかしこれとて、熱処理の均一性(できれば、設定温度±5から10℃以内)が可能であれば、特に問題はない。
なお、金属弾性体にアルミを添加しておくことで、その耐熱性を改善できる。これは、添加したアルミがガラス等の焼成時に表面に拡散、アルミナの層を形成するためである。この時、結晶化ガラス層、非晶質ガラス層にもすべてアルミナを添加しておくことで、アルミナが互いの層の共通元素となり、層間の接着性やマッチング性を改善でき、荷重センサとしての耐久性を改善できる。なおアルミ(もしくはアルミナ)の添加量は1wt%以上が望ましい。1wt%未満の場合、添加効果が得られない場合がある。同様に、結晶化ガラス層、非晶質ガラス層、感歪抵抗体の3層にも、アルミナを共通元素として添加しておくことで、これら3層間の層間の同時焼成でのマッチングを改善できるのみならず、感歪抵抗体と非晶質ガラス層とのマッチングも改善できるため、荷重センサの電気的特性が安定する。
また配線は、その一部が感歪抵抗体に接続され、所定のブリッジ回路(ホイートストーンブリッジ等)を形成したり、結晶質ガラス層及び非晶質ガラス層に形成された複数の貫通孔を介して、互いに内部電極を介して電気的に接続させられる。このように、内部電極を、多層配線に利用することで、チップ部品や半導体部品の高密度実装に対応できるため、荷重センサの小型化と低コスト化が可能になる。
また感歪抵抗体にその一部が接続される配線は、少なくともAgが60wt%以上90wt%未満、Bi2O3が5wt%以上30wt%未満が望ましい。銀が60wt%未満の場合、配線抵抗が高くなるため、ブリッジ回路に誤差が出る可能性がある。また銀が90wt%以上の場合、はんだ付けしようとしても、銀が喰われやすくなり、はんだ付け後の引張り強度が低下する場合がある。またBi2O3が5wt%未満の場合、下地に対する接着力が低下する場合があり、30wt%を超えると、余分なBi2O3が配線パターンの周辺に滲み出す(あるいは染み出し)場合がある。
(実施の形態14)
実施の形態14では、コンポジットガラスペーストの金属弾性体上への形成方法について説明する。金属弾性体上に、スクリーン印刷を用いて、コンポジットガラスペーストを直接形成することも可能であるが、こうしたペーストを他の支持フィルム(たとえば、PETフィルム)の上に、所定パターンで印刷しておき、これを金属弾性体上に転写し、金属弾性体と共に800〜900℃の酸化雰囲気内で焼成することもできる。
また、こうしたコンポジットペーストを、支持フィルム上に、塗工機(セラミックグリーンシート等の形成装置)を用いて、シート状に連続形成し、これを金型で所定形状に打ち抜いた後、金属弾性体上に転写し、金属弾性体と共に800〜900℃の酸化雰囲気内で焼成することもできる。このように、被印刷体を金属弾性体から、フィルムにすることで、連続印刷が可能になり、印刷コストを下げられる。またシート成形することで、印刷で課題であった塗膜のピンホールを防止できるため、製品歩留を上げられる。なお、こうした効果等には、特開2003−69192号公報等を参照することができる。
なお、感歪抵抗体は、少なくともPbOを10〜30wt%、SiO2を10〜60wt%、ルテニウム化合物を5〜30wt%含んだものが望ましい。こうした感歪抵抗体の場合、PbOが10wt%未満の場合、GF(ゲージファクター、歪みに対する抵抗値変化に相当、GFが高いほど高感度で望ましい)が低い場合がある。またPbOが30wt%を超えると、抵抗値が高くなりすぎて、ブリッジ回路を組んだ場合でも半導体チップで増幅しにくい場合がある。
またSiO2が10wt%以下の場合、GFが低い場合がある。また60wt%を超えると、抵抗値が高くなりすぎて、使用する半導体チップの入力とマッチングさせにくい場合がある。またルテニウム化合物が5wt%以下の場合、抵抗値が高くなりすぎたり、GFが小さくなる場合がある。また30wt%以上の場合、抵抗体ペースト価格が高くなってしまったり、抵抗値が低くなりすぎて、半導体チップの入力スペックのマッチングが難しくなったり、荷重センサ全体の消費電力を増加させてしまう場合がある。また、ここでルテニウム化合物としては、RuO、PbRuO化合物(Pb2Ru2O6.5等)、PbBiRuO(Pb3Bi2Ru4O14,Pb4Bi2Ru3O19、PbBi2Ru3O10等々)が有る。このようなルテニウム化合物は、抵抗体の高GF化の中で最適化したルテニウム化合物の一例であり、実際にXD(X線回折法)に、市販データベース(JCPDS)で解析した例であるが、これ以外のパイロクロア系(RuPbO系)であっても、本発明の用途に用いることができる。
なお、結晶化ガラスの熱膨張係数は8ppm/℃以上14ppm/℃未満もしくは、金属弾性体との熱膨張係数差が3ppm/℃未満が望ましい、これ以外の範囲の場合、荷重センサとしての耐力が得られない場合がある。また結晶化ガラスの結晶化率は20%以上が望ましい。結晶化ガラスの結晶化率が20%未満の場合、結晶化ガラスとしての特性が得られない場合がある。なお結晶化率に関しては、X線回折で評価できる。
なお400℃以上の焼成は、すべて酸化雰囲気内で行うことが望ましい。これは、ガラスや電極のペースト中に残っている有機成分を完全に分解するためである。焼成時の雰囲気が酸化雰囲気になっていない場合、有機成分の分解が不充分で、ガラスの中に残り、信頼性を低下する場合がある。また焼成炉への投入エアー量が不足すると、還元雰囲気になり、特に酸化鉛等が還元されてしまい、特性を低下する場合がある。