JP3905638B2 - ポリオキシアルキレンポリオール及びその誘導体、並びに、該ポリオキシアルキレンポリオールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオキシアルキレンポリオール、その製造方法及びそのポリオキシアルキレンポリオールの誘導体に関する。詳しくは、ホスファゼニウム化合物触媒の存在下、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合することにより得られるポリオキシアルキレンポリオール及びその製造方法、並びに該ポリオキシアルキレンポリオールの誘導体である、ポリマー分散ポリオール、イソシアネート基末端プレポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリオキシアルキレンポリアミン及び該ポリオキシアルキレンポリアミンを原料とするポリウレタンウレア樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、ポリオキシアルキレンポリオールは、水酸化カリウム(以下、KOHと略する)触媒の存在下、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合することにより、工業的規模で製造されている。KOH触媒と重合開始剤である活性水素化合物を仕込んだ反応機にアルキレンオキサイドを連続的に装入しながら、反応温度105〜150℃、最大反応圧力490〜588kPa(5〜6kgf/cm2 )の条件で、所定の分子量が得られるまで反応させ、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得る。次いで、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のカリウムを無機酸等の酸で中和した後、脱水、乾燥して析出したカリウム塩を濾過する等の後処理精製工程を経て製造されている。
【0003】
従来、ポリオキシアルキレンポリオールの生産性を高める検討が種々なされている。例えば、モノマーであるアルキレンオキサイドの反応速度を高めるため、反応時のアルキレンオキサイド濃度を高くする、触媒の量を増やす、反応温度を上げる、等の方法が知られている。
然し、KOH触媒を用い、アルキレンオキサイドとして最も広く使用されているプロピレンオキサイドを付加重合する場合、上記方法を適用すると、ポリオキシアルキレンポリオールの分子量の増加と共に、分子末端に不飽和基を有するモノオールが副生することが知られている。
通常、モノオールの含有量は、ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度(以下、C= Cと表記する)に対応する。このモノオールは、主反応により生成するポリオキシアルキレンポリオールと比較して低分子量であるため、ポリオキシアルキレンポリオールの分子量分布を大幅に広げ、平均官能基数を低下させる。従って、モノオール含有量の高いポリオキシアルキレンポリオールを使用したポリウレタン樹脂は、フォーム、エラストマーを問わず、ヒステリシスの増大、硬度の低下、伸長性の低下、キュア性の低下、永久圧縮歪みの増加等の好ましくない結果を伴う。
【0004】
そこで、副生モノオールの生成を抑制し、且つ、ポリオキシアルキレンポリオールの生産性の向上を図ることが種々検討されている。例えば、USP3,829,505号公報、USP4,472,560号公報には、プロピレンオキサイド付加重合用の触媒として、複金属シアン化物錯体(Double MetalCyanide Complex;以下、DMCと言う)触媒を用いる方法が提案されており、DMCは、プロピレンオキサイドの重合触媒として優れた性能を示すことが記載されている。
然し、DMCを触媒として用い、アルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを付加重合する場合には、一旦、酸素を含んだガス、過酸化物、硫酸などの酸化剤との反応によりDMCを失活させ、ポリオールから触媒残渣を分別し、更に、KOHのようなアルカリ金属水酸化物やアルカリ金属アルコキシド等を触媒として用いてエチレンオキサイドを付加重合する必要がある(USP5,235,114号公報)。
【0005】
又、USP5,093,380号公報(カラム2、58〜68行)には、C=Cの低いポリオキシアルキレンポリオールを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法が開示されている。そして、このようなC=Cの低いポリオキシアルキレンポリオールは、アルカリ触媒以外のもの、例えば、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、DMC等の触媒の存在下に得られ、特に、DMC触媒が好ましいことが記載されている。
又、特開平4−59825号公報には、DMCを用いてポリエーテル類を製造する場合、イニシエーター(重合開始剤)が低分子量であると、モノエポキサイドの反応が起こらない、あるいは、反応速度が極めて遅いという問題があることが記載されている。そして、これらの問題を解決するためは、あらかじめプロピレンオキサイドを付加重合したポリオキシプロピレングリコールをその重合開始剤として使用する必要があると記載されている。然し、その方法は、使用可能な重合開始剤が制約される上、製造工程が煩雑になる。
【0006】
ポリオキシアルキレンポリオールを高分子量化させた場合には、ポリオキシアルキレンポリオールの粘度は上昇する傾向にあるが、特に、DMCを用いた場合にはその傾向が顕著に現れる。
USP5,300,535号公報には、DMCを触媒とした高分子量ポリオキシアルキレンポリオールは粘度が高いため、アクリレート系、ビニルエーテル系の化合物を低粘度化剤として使用することが教示されている(カラム2、5行〜カラム4、12行)。本発明者らが調査した結果、ポリオールの粘度が高い場合には、軟質ポリウレタンフォームを機械発泡成形するとき、その成形安定性や混合性の面で支障が生じたり、又、ポリオールを高分子量化した時の作業性、助剤との混合性が低下するといった問題が生じる。
【0007】
一方、特開平7−278289号公報には、水酸基価(以下、OHVと言う)10〜35mgKOH/g、モノオール最大含有量15モル%であり、更に、プロピレンオキサイド付加重合によるヘッド−トウ−テイル(Head−to−Tail、以下、単にH−Tと言う)結合選択率が96%であることを特徴とするポリオキシアルキレンポリオールが開示されている。更に、その公報には、ポリオールの製造触媒として、アルカリ金属水酸化物が90重量%以上の純度で、水酸化セシウム及び水酸化ルビジウムから選ばれる化合物のうち少なくとも1種類を含む組成であることが記載されている。上記ポリオキシアルキレンポリオールは、モノオール含有量を低下させても粘度が低く、又、得られる軟質ポリウレタンフォームの機械的性質も良好であり、優れた特性を有するポリオキシアルキレンポリオールである。然し、水酸化セシウムを触媒として、OHVが15mgKOH/gであり、且つ、モノオールの含有量が15モル%以下のポリオキシアルキレンポリオールを製造するためにはかなりの反応時間を要するので、ポリオールの生産性を考慮した場合、それは必ずしも満足し得る触媒とはいえない。
【0008】
ポリオキシアルキレンポリオールを分散媒としたポリマー分散ポリオール、及びそれを用いたポリウレタン樹脂の特性は、分散媒であるポリオキシアルキレンポリオールの構造、組成等に大きく影響される。
特開平3−14812号公報には、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、DMCを触媒として得られたポリオキシアルキレンポリオールを分散媒とするポリマー分散ポリオールの製造方法が教示されている。又、ポリオキシアルキレンポリオール中のC=Cを低減することにより、そのポリオールを分散媒とするポリマー分散ポリオールを使用した軟質ポリウレタンフォームの特性が向上すると記載されている。然し、本発明者らの研究によれば、上記DMCを使用したポリオキシアルキレンポリオールを分散媒としたポリマー分散ポリオールは、粘度が高く、これらを用いた軟質ポリウレタンフォームは、湿熱耐久性に劣ると言う欠点がある。
【0009】
又、特開平7−330843号公報には、OHV10〜35mgKOH/g、モノオール最大含有量15モル%であり、更に、プロピレンオキサイド付加重合によるH−T結合選択率が96%であるポリオキシアルキレンポリオールを分散媒としたポリマー分散ポリオールが開示されている。そして、そのポリオールは、90重量%以上の純度の水酸化セシウム、水酸化ルビジウムから選ばれる化合物のうち少なくとも1種類を含むアルカリ金属を触媒として製造されることが記載されている。上記ポリオキシアルキレンポリオールを分散媒とするポリマー分散ポリオールは、ポリマー濃度を高くした場合であっても、優れた分散安定性を有する。然し、前述したように、上記触媒を用いて、モノオールの含有量を低減したポリオキシアルキレンポリオールを生産するには、その製造時間が長くなるため、ポリオール及びポリマー分散ポリオールの生産性を考慮した場合、必ずしも満足し得る方法とはいえない。
【0010】
ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーについても、ポリオキシアルキレンポリオールの構造、組成が、プレポリマー並びにそれを用いたポリウレタン樹脂の物性に大きく影響する。
USP5,096,993号公報、及びUSP5,116,931号公報には、DMCを触媒としたC=Cの低いポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させたイソシアネート基末端プレポリマー、並びにそれらを用いた熱可塑ポリウレタンエラストマー(USP5,096,993号公報)、及び、熱硬化ポリウレタンエラストマー(USP5,116,931号公報)がそれぞれ教示されている。USP5,096,993号公報には、低硬度のポリウレタンエラストマーを得るため、C=Cが0.04meq./g以下である高分子量のポリオール(数平均分子量2,000〜20,000)が有効であることが記載されている。更に、ポリオールの数平均分子量が4,000未満である場合、オキシエチレン基の含有量が35重量%未満であることが好ましいと記載されている。因に、実施例(ポリオールA、C、D)においては、オキシエチレン基の含有量が7〜23重量%であるポリオールが記載されている。
【0011】
然し、オキシエチレン基を含有するポリオールは、DMC触媒を用いてプロピレンオキサイドを付加重合した後、更に、水酸化カリウムの如きアルカリ金属触媒を併用して、エチレンオキサイドを付加重合しなければならない。そのため、製造工程が煩雑である。又、前述したようにポリオキシアルキレンポリオールを高分子量化させた場合には、ポリオキシアルキレンポリオールの粘度が上昇する傾向にある。特に、触媒としてDMCを用いた場合、その傾向が顕著である。そのため、ポリイソシアネート化合物と反応させたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度も上昇するため、作業性が低下する。
特開平6−16764号公報には、水酸基数1.5以上、OHVが5〜80mgKOH/g、C=Cが0.07meq./g以下であるポリオキシアルキレンポリオール中で重合性不飽和基含有モノマーの重合体を含有するポリマー分散ポリオールと有機ポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを硬化成分とするポリウレタン系硬化性組成物が教示されている。実施例には、ポリオキシアルキレンポリオールの製造法は記載されていないが、カラム2、33〜39行には、触媒としてDMCを用いて、上記ポリオールが得られることが記載されている。然し、本発明者らの知見によれば、DMCを触媒としたポリオールを分散媒とするポリマー分散ポリオールは粘度が高く、それらを用いたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度も高くなると言う問題がある。更に、エチレンオキサイドをポリオール末端に共重合させるためには、KOHなどのアルカリ金属触媒を必要とするため、製造工程が煩雑になる。
【0012】
ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを製造する場合、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物が広く使用されている。然し、通常、その芳香族ポリイソシアネート化合物を用いたプレポリマーには、未反応の遊離ポリイソシアネート化合物が残存する。その場合、その毒性が問題となるだけでなく、ポリウレタンエラストマーを製造する際に鎖延長剤との反応の制御が困難となったり、得られるポリウレタンエラストマーのヒステリシスロスが大きくなる等の問題があった。
これらの問題を解決する方法として、例えば、特公平6−13593号公報には、2,6−異性体を1重量%を超えて含有する2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネートの混合物とポリオールとを、NCO基とOH基の当量比2.5〜5.0以下で反応させた後、減圧蒸留法で遊離のトリレンジイソシアネートをその含有量が1重量%以下となるまで留去して得たプレポリマー組成物が開示されている。
【0013】
そのプレポリマー組成物は、ポットライフが長く、施工性が良好であると共に、ヒステリシスロスが改良されたポリウレタンエラストマーを与えることが記載されている。その公報には、平均分子量が200〜6,000であるポリオールを用いることが記載されている。然し、その公報には、モノオールの含有量が少ないポリオールを用いることの利点等については何も言及されていない。
ポリウレタンエラストマーの機械的性質を向上させるため、従来から、モノオール含有量が低く、且つ、高分子量のポリオキシアルキレンポリオールを用いたイソシアネート基末端プレポリマーについて多くの検討がなされてきた。前述の通り、USP5,096,993号及び同5,116,931号公報には、DMCを触媒としたモノオールの含有量が低いポリオールを用いたイソシアネート基末端プレポリマーが記載されている。然し、モノオールの含有量が低いポリオールを用い、更に、遊離イソシアネート化合物の含有量を低減したプレポリマーと、そのプレポリマーから得られるポリウレタンの機械的物性との関係については何らの教示もない。
【0014】
次いで、ポリオキシアルキレンポリアミンの従来の技術について説明する。ポリオキシアルキレンポリアミンは、ポリイソシアネート化合物との反応性に富むため、主としてスプレー法や反応射出成形法(Reaction Injection Mold、以下、RIMと言う)により成形されるポリウレタンウレア樹脂の原料として使用される。通常、スプレー法やRIM法は、極めて速いサイクルタイムをもつプロセスであり、2〜4秒間で成形物が得られるため、短時間にかなりの反応熱が発生する。そのため、成形過程における樹脂の熱特性が重要である。
特開平6−16763号公報では、DMCを触媒とした高分子量ポリオール、及びそのポリオールをアミンキャッピングして得られたポリアミンが記載されている。更に、それらを用いて調製されたエラストマーは、ポリオール中のエチレン性不飽和基含有量(C=Cに相当する)が低いため、低い熱たるみと、高い熱変形温度の特徴をもつ優れた熱特性を有することが記載されている(カラム13、19行〜カラム14、20行)。
【0015】
DMCをアルキレンオキサイド、特にプロピレンオキサイドの重合触媒として用いることにより、ポリオール中のC=Cが低く、高分子量のポリオールが得られる。然し、この方法で得られるポリオキシアルキレンポリオールには、粘度が高いという欠点があることは前述した通りである。
本発明者らの実験によれば、DMCを触媒として得られるポリオールを前駆体としたポリオキシアルキレンポリアミンは粘度が高く、スプレー法、RIM法等の衝突混合により樹脂を成形する分野では、液の混合性が悪化することがわかった。その結果、成形物の表面状態が悪化し、更に、伸び、硬度、引張強度等の機械的性質が低下するものである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合して高分子量化した場合にも、C=Cが低く、H−T結合選択率が高く、かつ、主反応成分のポリオールの分子量分布がシャープであるポリオキシアルキレンポリオール及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記ポリオキシアルキレンポリオールから誘導される低粘度で分散安定性に優れたポリマー分散ポリオールを提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記ポリオキシアルキレンポリオールから誘導される、イソシアネート基末端プレポリマー、及び、遊離イソシアネート化合物の含有量が少ないイソシアネート基末端プレポリマーを提供することにある。
本発明の第4の目的は、上記ポリマー分散ポリオールから誘導される、貯蔵安定性に優れたイソシアネート基末端プレポリマーを提供することにある。
本発明の第5の目的は、上記イソシアネート基末端プレポリマーから誘導される、力学特性、耐水性に優れ、タックが低いポリウレタン樹脂を提供することにある。
本発明の第6の目的は、上記ポリオキシアルキレンポリオールから誘導される、低粘度のポリオキシアルキレンポリアミンを提供することにある。
本発明の第7の目的は、上記ポリオキシアルキレンポリアミンから誘導される、表面状態が良好で、機械的特性に優れたポリウレタンウレア樹脂を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のホスファゼニウム化合物を触媒とし、特定の温度及び圧力において、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合して粗製ポリオキシアルキレンポリオールを製造し、更に、その粗製ポリオキシアルキレンポリオールを特定の方法で精製することにより、上記課題を解決し、優れた特性を有するポリオキシアルキレンポリオールが得られることを見出し、後に詳述する第1発明と第2発明を完成した。
又、本発明者らは,更に、
▲1▼ 上記特性を有するポリオキシアルキレンポリオールから、低粘度で分散安定性に優れたポリマー分散ポリオールが得られること(第3発明)、
▲2▼ 上記特性を有するポリオキシアルキレンポリオール、又は、ポリマー分散ポリオールから貯蔵安定性に優れたイソシアネート基末端プレポリマーが得られること(第4発明及び第5発明)、
▲3▼ 上記特性を有するポリオキシアルキレンポリオールを用いて、遊離イソシアネート化合物の含有量を特定濃度以下に制御したイソシアネート基末端プレポリマーから、力学特性、耐水性に優れ、タックが低いポリウレタン樹脂が得られること(第6発明)、
▲4▼ 上記特性を有するポリオキシアルキレンポリオールから、低粘度のポリオキシアルキレンポリアミンが得られること(第7発明)、
▲5▼ 上記特性を有するポリオキシアルキレンポリアミンから、表面状態が良好で、機械的特性に優れたポリウレタンウレア樹脂が得られること(第8発明)、
を見出し、それぞれの発明を完成した。
【0018】
依って、本発明は上記の第1発明ないし第8発明を包摂するものである。
即ち、第1発明は、ホスファゼニウム化合物を触媒として得られたポリオキシアルキレンポリオールであって、OHVが2〜200mgKOH/g、C=Cが0.0001〜0.07meq./g、H−T結合選択率が95モル%以上であり、且つ、そのGPC溶出曲線において、ピークの最大高さを100%とした際に、そのピーク高さの20%でのピーク幅をW20、ピーク高さの80%でのピーク幅をW80と定義すると、W80に対するW20の比、即ちW20/W80(以下、単にW20/W80とする)が1.5以上、3未満であることを特徴とするポリオキシアルキレンポリオールである。
【0019】
第1発明における上記ホスファゼニウム化合物として、化学式(1)(化5)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩、又は、化学式(2)(化6)で表されるホスファゼニウム化合物を用いることが好ましい。
化学式(1)
【化5】
【0020】
化学式(2)
【化6】
但し、ここで、化学式(1)及び(2)の中で、a、b、c及びdは、全てが同時には0とならない0〜3の整数である。Rは同種又は異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが結合して環構造を形成する場合もある。化学式(1)でrは1〜3の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Tr-は価数rの無機アニオンを示す。化学式(2)のQ- はヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオン又はカルボキシアニオンを示す。
【0021】
第1発明のポリオキシアルキレンポリオールの好ましい特性は、OHVが9〜120mgKOH/g、C=Cが0.0001〜0.05meq./g、H−T結合選択率が96モル%以上であり、且つ、W20/W80が2以上、3未満である上記のポリオキシアルキレンポリオールであり、更に好ましくは、C=Cが0.0001〜0.03meq./g、更には、ホスファゼニウム化合物触媒の残存量が150ppm以下であることである。
【0022】
第2発明は、化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩及び活性水素化合物のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の存在下で、又は、化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物と活性水素化合物の存在下で、活性水素化合物1モルに対して化学式(1)又は化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物を1×10-4〜5×10-1モルの範囲で調製し、反応温度が15〜130℃、最大反応圧力が882kPa(9kgf/cm2 )である条件下で、アルキレンオキサイドを付加重合して粗製ポリオキシアルキレンポリオールを製造し、次いで、下記e〜hのいずれか一つの方法により、粗製ポリオキシアルキレンポリオールに含まれるホスファゼニウム化合物の除去操作を行なうことを特徴とするポリオキシアルキレンポリオールの製造方法である。
e.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸又は有機酸を0.5〜8モル添加し、50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和し、その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜2.5重量部添加し、減圧処理により水を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩及び吸着剤を除去する。f.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤及び水の混合物を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸又は有機酸を0.5〜8モル添加し、50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和し、その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜2.5重量部添加し、減圧処理により水及び有機溶剤を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩及び吸着剤を除去する。g.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水単独、又は、水とポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤との混合物を1〜200重量部添加して分液し、水洗後、減圧処理により水及び有機溶剤を留去する。
h.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水を20〜200重量部加え15〜100℃でイオン交換樹脂と接触させた後、減圧処理により脱水を行う。
【0023】
而して、この精製方法に於いては、上記e法及びf法において、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸又は有機酸を0.5〜2.5モル、及び、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部添加することが推奨される。
他の好ましい方法として、化学式(1)及び(2)中のa、b、c、d及びrを、全て1とし、化学式(1)のT- を塩素イオンとし、化学式(2)のQ- をヒドロキシアニオンとする方法を採用することができる。
更に他の好ましい方法は、活性水素化合物1モルに対して、化学式(1)又は化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物を5×10-4〜1×10-1モルの範囲で調製し、反応温度が40〜120℃、最大反応圧力が686kPa(7kgf/cm2 )である条件下で、アルキレンオキサイドを付加重合して粗製ポリオキシアルキレンポリオールを製造し、これを精製する方法である。
【0024】
第3発明は、ポリオール中にポリマー粒子が分散したポリマー分散ポリオールであって、ポリオールが上記第1発明のポリオキシアルキレンポリオールであり、且つ、ポリマー粒子の濃度が5〜60重量%であることを特徴とするポリマー分散ポリオールである。このポリマー分散ポリオールは、望ましくは、10〜50重量%のポリマー粒子濃度を有する。又、上記ポリマー粒子は、アクリロニトリル、スチレン、アクリルアミド及びメタクリル酸メチルから選ばれた少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体のポリマーであることが好ましい。
【0025】
第4発明は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させたイソシアネート基末端プレポリマーであって、ポリオールが上記第1発明のポリオキシアルキレンポリオールであり、且つ、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量が0.3〜30重量%であることを特徴とするイソシアネート基末端プレポリマーである。このプレポリマーの原料としては、CPRが5以下である第1発明のポリオキシアルキレンポリオールが用いられる。
このプレポリマーは、望ましくはイソシアネート基の含有量が0.4〜20重量%であり、又、その遊離イソシアネート化合物の含有量は、1重量%以下であることが好ましい。
【0026】
第5発明は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させたイソシアネート基末端プレポリマーであって、ポリオールが上記第3発明のポリマー分散ポリオールであり、且つ、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量が0.3〜30重量%であることを特徴とするイソシアネート基末端プレポリマーである。第5発明のイソシアネート基末端プレポリマーは、イソシアネート基の含有量が0.4〜20重量%であることが好ましい。
【0027】
第6発明は、上記第4発明及び第5発明のイソシアネート基末端プレポリマーを少なくとも60重量%含むプレポリマーと鎖延長剤を反応させたポリウレタン樹脂である。而して望ましいプレポリマーとしては、遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下である上記第4発明のイソシアネート基末端プレポリマーがある。又、望ましいポリウレタン樹脂は、遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下である第4発明のイソシアネート基末端プレポリマーと、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンアジペート及びポリカプロラクトンポリオールから選ばれた少なくとも1種のポリオールから得られた、遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下のイソシアネート基末端プレポリマーとの混合物を用いて成るものである。
【0028】
第7発明は、ポリオールの末端水酸基がアミノ化されたポリオキシアルキレンポリアミンであって、ポリオールが上記第1発明のポリオキシアルキレンポリオールであることを特徴とするポリオキシアルキレンポリアミンである。第7発明のポリオキシアルキレンポリアミンは、活性水素価が5〜180mgKOH/g、オキシプロピレン基の含有量が少なくとも50モル%、オキシプロピレン基結合のH−T結合選択率が95モル%以上であることが好ましい。
【0029】
第8発明は、上記第7発明のポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させたポリウレタンウレア樹脂である。
第1発明により提供されるポリオキシアルキレンポリオールは、ホスファゼニウム化合物を触媒として得られたポリオキシアルキレンポリオールであって、高分子量化した場合であっても、プロピレンオキサイドの副反応生成物であるモノオールの含有量が少なく、H−T結合選択率が高い。更に、ポリオキシアルキレンポリオールの主反応成分の分子量分布がシャープである。
【0030】
上記特性を有するポリオキシアルキレンポリオールから、低粘度で分散安定性に優れたポリマー分散ポリオール、貯蔵安定性に優れたイソシアネート基末端プレポリマー、遊離イソシアネート化合物の含有量が少ないイソシアネート基末端プレポリマー、及び、低粘度のポリオキシアルキレンポリアミンが得られる。そのため、上記ポリオキシアルキレンポリオールは、ポリマー分散ポリオール、イソシアネート基末端プレポリマー、及び、ポリオキシアルキレンポリアミン等の原料として好適に用い得る。
又、上記ポリマー分散ポリオールから、貯蔵安定性に優れたイソシアネート基末端プレポリマーが得られる。遊離イソシアネート化合物の含有量が少ないイソシアネート基末端プレポリマーから、力学特性、耐水性に優れ、しかもタックが低いポリウレタン樹脂が得られる。更に、上記ポリオキシアルキレンポリアミンから、表面状態が良好で、力学特性に優れたポリウレタンウレア樹脂が得られる。
【0031】
従って、本発明のポリオキシアルキレンポリオール、ポリマー分散ポリオール、イソシアネート基末端プレポリマー、及び、ポリオキシアルキレンポリアミンは、硬質、半硬質、軟質ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤、床材、防水材、シーリング剤、靴底、エラストマー、潤滑剤、作動液及びサニタリー用品等の原料として、各分野において使用できる、極めて有用な資材である。
更に、ポリオキシアルキレンポリアミンは、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド等の各種プラスチックの原料として有用な化合物である。
【0032】
【発明の実施の態様】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明に係るポリオキシアルキレンポリオールについて説明する。本発明のポリオキシアルキレンポリオールは、下記 1〜 4の特性、即ち、
1.2〜200mgKOH/gの範囲のOHV。
2.0.0001〜0.07meq./gの範囲のC=C。
3.95mol%以上のH−T結合選択率。
4.1.5以上、3未満の範囲のW20/W80。
(以下、本発明の4要件という)を有する。
ポリオキシアルキレンポリオールのOHVは、2〜200mgKOH/g、好ましくは9〜120mgKOH/g、より好ましくは11〜60mgKOH/gである。OHVが2mgKOH/gより小さくなるまでアルキレンオキサイド、特にプロピレンオキサイドの付加重合を行うと、ポリオキシアルキレンポリオールの反応時間が長くなり過ぎる。又、OHVが200mgKOH/gより大きくなると、本発明に係るポリオキシアルキレンポリオールのC=Cと、従来のKOH触媒系で得られるポリオキシアルキレンポリオールのそれとの間に、有意差が認められなくなる。
【0033】
ポリオキシアルキレンポリオール中のC=Cは、主として、プロピレンオキサイドの副反応により生成した分子末端に不飽和基を有するモノオール量の指標となる。C=Cの許容範囲は、通常は0.0001〜0.07meq./g、好ましくは0.0001〜0.05meq./g、更に好ましくは0.001〜0.03meq./gの範囲である。C=Cは0であることが望ましいが、上記OHVの範囲でC=Cを0とするためには反応温度、圧力等の条件を緩和にしなければならないため、反応時間が長くなり過ぎる。この観点からC=Cの許容下限は0.0001〜0.001meq./gとなる。又、C=Cが、0.07meq./gより大きくなると軟質ポリウレタンフォーム、エラストマー、シーリング材等のポリウレタン樹脂の機械的性質、硬化特性等が低下するので好ましくない。
【0034】
この様なC=Cの低いポリオキシアルキレンポリオールにおいて、H−T結合選択率が95モル%より少なくなると、ポリオキシアルキレンポリオールの粘度の上昇、あるいはシリコーン整泡剤等の助剤との相溶性不良による軟質ポリウレタンフォームの成形性悪化等の問題が生じる。又、ポリオキシアルキレンポリオールを高分子量化した際の粘度上昇により、ポリイソシアネート化合物との反応により得られるプレポリマーの粘度も上昇するため作業性が低下する。
更には、W20/W80が1.5以上、3未満である。本発明で定義したその比W20/W80は、ポリオキシアルキレンポリオールの分子量分布の均一度を計る指標であり、その分子量分布において、高分子量側の成分の多寡を示す指標である。従来の、KOH、NaOH等のアルカリ金属水酸化物によるプロピレンオキサイドのアニオン重合において、ポリオキシアルキレンポリオールの分子量分布を広げる要因は、プロピレンオキサイドの副反応によるモノオールの生成にある。モノオールの分子量は、主反応で得られるポリオキシプロピレンポリオールの分子量と比較して小さく、GPC溶出曲線では、ピークの保持時間は主反応成分より遅い。
【0035】
然し、ジエチル亜鉛、塩化鉄、DMC等の有機金属触媒により合成された、C=Cの低いポリオキシプロピレンポリオールは、主反応成分より高分子量のポリオキシプロピレンポリオールが生成し、主反応で得られるポリオールのGPCピーク保持時間より早い位置にブロードなピークのテーリングが観測される。その結果、上記比W20/W80が大きくなることがわかった。ポリマーの分子量が、からみあい点間分子量未満である場合は、ポリマーの粘度は重量平均分子量に比例する。一方、ポリマーの分子量が、からみあい点間分子量以上である場合は、ポリマーの粘度は重量平均分子量の3.4乗に比例する(参考文献:講座・レオロジー、日本レオロジー学会編、1992年、高分子刊行会発行)。
従って、高分子量成分を多く含有しているポリオキシプロピレンポリオールは、高分子量成分の含有量の少ないものと比較して粘度が高くなる。高分子量成分を多く含有しているポリオキシプロピレンポリオールを分散媒とするポリマー分散ポリオール、そのポリオキシプロピレンポリオールから誘導されるイソシアネート基末端プレポリマー、及び、ポリオキシアルキレンポリアミンの粘度も上昇する。そのため、これらから得られるポリウレタンの成形性が低下する。
【0036】
上記のことを考慮すると、上記比W20/W80は1.5以上、3未満であることを要するが、2以上、3未満であることが望ましく、最も好ましくは2.2以上、2.8未満の範囲である。
上記特性を有する、本発明のポリオキシアルキレンポリオールは、特定のホスファゼニウム化合物を触媒とし、特定の温度及び圧力において、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合して粗製ポリオキシアルキレンポリオールを製造し、更に、これを特定の方法で精製することによって得られる。
本発明において、アルキレンオキサイドの付加重合の触媒として用いられるホスファゼニウム化合物は、化学式(1)又は化学式(2)で表されるものが好ましい。上記両式で表されるホスファゼニウム化合物中のホスファゼニウムカチオンは、その正電荷が中心のリン原子上に局在する極限構造式で代表されているが、これ以外に無数の無限構造式が描かれるものであり、実際にはその正電荷は全体に拡散している。
【0037】
化学式(1)及び化学式(2)で表されるホスファゼニウムカチオン中のa、b、c及びdは、それぞれ0〜3、好ましくは0〜2の中から選ばれる正の整数である。但し、それらの全てが同時には0とはならない。更に好ましくはa、b、c及びdは、(2,1,1,1)、(1,1,1,1)、(0,1,1,1)、(0,0,1,1)及び(0,0,0,1)の組み合わせの中、更に好ましくは、(1,1,1,1)、(0,1,1,1)、(0,0,1,1)及び(0,0,0,1)の組み合わせの中から選ばれる正の整数である。尚、()内の数字の順序は任意に変更できるものである。
【0038】
Rは、同種又は異種の炭素数1〜10個の炭化水素基である。このRは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−ブテニル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、イソペンチル、tert−ペンチル、3−メチル−2−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、4−メチル−2−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ヘプチル、3−ヘプチル、1−オクチル、2−オクチル、2−エチル−1−ヘキシル、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル(tert−オクチル)、ノニル、デシル、フェニル、4−トルイル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル等の脂肪族又は芳香族の炭化水素基から選ばれる。これらのうち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、tert−ペンチル、tert−オクチル等の炭素数1〜10個の脂肪族炭化水素基が好ましく、更にメチル基又はエチル基がより好ましい。
【0039】
又、ホスファゼニウムカチオン中の同一窒素原子上の2個のRが結合して環構造を形成する場合のその窒素原子上の2価の炭化水素基は、4〜6個の炭素原子からなる主鎖を有する2価の炭化水素基である(環は窒素原子を含んだ5〜7員環となる)。これは、好ましくは、テトラメチレン、ペンタメチレン又はヘキサメチレン等であり、又、それらの主鎖にメチル又はエチル等のアルキル基が置換したものであり、更により好ましくは、テトラメチレン又はペンタメチレン基である。ホスファゼニウムカチオン中の、可能な全ての窒素原子についてこのような環構造をとっていても構わず、一部であってもよい。
化学式(1)中のTr-は、価数rの無機アニオンを表す。そして、rは、1〜3の整数である。このような無機アニオンとしては、例えば、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、シアン化水素酸、チオシアン酸、フッ化水素酸、塩酸又はシュウ化水素酸などのハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、ヘキサフルオロリン酸、炭酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロタリウム酸および過塩素酸などの無機アニオンが挙げられる。また、無機アニオンとして、HSO4 - 、HCO3 - もある。
【0040】
場合によっては、これらの無機アニオンは、イオン交換反応により互いに置換され得る。これらの無機アニオンのうち、特に、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、ハロゲン化水素酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸及び過塩素酸等の無機酸のアニオンが好ましいが、最も推奨されるのは塩素アニオンである。
化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩の合成については、一般的な例として、下記(a)〜(d)の方法を挙げることができる。
(a)五塩化リン1当量と3〜8当量の二置換アミン(HNR2 )を反応させ、更に1〜6当量のアンモニアを反応させた後、これを塩基で処理して、化学式(3)〔化5〕、
【化5】
で表される2,2,2−トリス(二置換アミノ)−2λ5 −ホスファゼンを合成する。
【0041】
(b)このホスファゼン化合物〔化学式(3)〕とビス(二置換アミノ)ホスフォロクロリデート{(R2 N)2 P(O)Cl}を反応させて得られるビス(二置換アミノ)トリス(二置換アミノ)ホスフォラニリデンアミノホスフィンオキシドをオキシ塩化リンでクロル化し、次いで、これをアンモニアと反応させた後、塩基で処理して、化学式(4)〔化6〕
【化6】
で表される2,2,4,4−ペンタキス(二置換アミノ)−2λ5 、4λ5 −ホスファゼンを得る。
【0042】
(c)このホスファゼン化合物〔化学式(4)〕を(b)で用いたホスファゼン化合物(化学式3))の代わりに用い、(b)と同様の操作で反応させることにより、化学式(5)〔化7〕
【化7】
(但し、式中、qは0〜3の整数を表す。qが0の場合は二置換アミンであり、1の場合は化学式(3)の化合物、2の場合は化学式(4)の化合物、そして3の場合は(c)で得られたオリゴホスファゼンを表す)で表される化合物のうちのqが3であるオリゴホスファゼンを得る。尚、化学式(3)〜(5)におけるRは、化学式(1)及び(2)におけるRと同じである。
【0043】
(d)異なるq及び/又はRの化学式(5)の化合物を順次に、又は、同一のq及びRの化学式(5)の化合物を同時に、五塩化リンと4当量反応させることにより、化学式(1)でr=1、Tr-=Cl- である所望のホスファゼニウムカチオンと塩素アニオンとの塩が得られる。塩素アニオン以外の無機アニオンの塩を得たい場合には、通常の方法、例えば、アルカリ金属カチオンと所望の無機アニオンとの塩等で処理する方法、イオン交換樹脂を利用する方法等によりイオン交換することができる。このようにして化学式(1)で表される一般的なホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩が得られる。
【0044】
化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩と共に共存させる活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩とは、活性水素化合物の活性水素が水素イオンとして解離して、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンと置き換わった形の塩である。
そのような塩を与える活性水素化合物としては、アルコール類、フェノール化合物、ポリアミン、アルカノールアミンなどが挙げられる。例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の2価アルコール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の多価アルコール類、グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトース、蔗糖、メチルグルコシド等の糖類又はその誘導体、エチレンジアミン、ジ(2−アミノエチル)アミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪酸アミン類、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族アミン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック、レゾール、レゾルシン等のフェノール化合物等が挙げられる。これらの活性水素化合物は、2種以上併用して使用することもできる。
【0045】
更にこれらの活性水素化合物に従来公知の方法でアルキレンオキサイドを付加重合して得られる化合物も使用できる。これらの化合物の中で最も好ましくは、2価アルコール類、2価アルコール類にアルキレンオキサイドを付加重合した数平均分子量が最大2,000までの化合物、3価アルコール類、3価アルコール類にアルキレンオキサイドを付加重合した数平均分子量が最大2,000までの化合物である。2価アルコール類あるいは3価アルコール類にアルキレンオキサイドを付加重合した後の数平均分子量が2,000を超えるものは、副生モノオール量が多くなるため好ましくない。
これらの活性水素化合物から、それらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を得るには、その活性水素化合物と、アルカリ金属類及びアルカリ土類金属類から選ばれた金属、あるいは、塩基性アルカリ金属の化合物又は塩基性アルカリ土類金属の化合物とを反応させる通常の方法が用いられる。
【0046】
アルカリ金属類及びアルカリ土類金属類から選ばれた金属としては、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属セシウム、金属ルビジウム、金属マグネシウム、金属カルシウム、金属ストロンチウム、金属バリウム等が挙げられる。
塩基性アルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物としては、ナトリウムアミド、カリウムアミド、マグネシウムアミド、バリウムアミド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアミド類であり、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、ビニルリチウム、シクロペンタジエニルリチウム、エチニルナトリウム、n−ブチルナトリウム、フェニルナトリウム、シクロペンタジエニルナトリウム、エチルカリウム、シクロペンタジエニルカリウム、フェニルカリウム、ベンジルカリウム、ジエチルマグネシウム、エチルイソプロピルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−tert−ブチルマグネシウム、臭化ビニルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム、ジシクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、カリウムアセチリド、臭化エチルストロンチウム、ヨウ化フェニルバリウム等の有機アルカリ金属の化合物、又はアルカリ土類金属の化合物であり、ナトリウムヒドリド、カリウムヒドリド、カルシウムヒドリド等のアルカリ金属のヒドリド化合物、又はアルカリ土類金属のヒドリド化合物であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属の水酸化物、又はアルカリ土類金属の水酸化物であり、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、又はアルカリ土類金属の炭酸塩であり、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩、又はアルカリ土類金属の炭酸塩である。
【0047】
複数の活性水素を有する活性水素化合物は、それらの活性水素の全てが離脱してアルカリ金属類及びアルカリ土類金属類から選ばれた金属、あるいは、塩基性アルカリ金属の化合物又はアルカリ土類金属の化合物によって、アニオンに導かれる場合もある。又、その一部だけが離脱してアニオンとなる場合もある。これらの活性水素化合物のアルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩のうち、活性水素化合物のアルカリ金属塩が好ましい。その活性水素化合物のアルカリ金属塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウ ムから選ばれるカチオンがより好ましい。
化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩、及び、活性水素化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の存在下に、アルキレンオキサイドを付加重合させる。この際、アルカリ金属のカチオン又はアルカリ土類金属のカチオンと、無機アニオンとの塩が副生するが、この副生塩が重合反応を阻害する場合は、重合反応に先立ちこれを濾過等の方法で除去しておくこともできる。又、予め、化学式(1)で表される塩と、活性水素化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から導かれる活性水素化合物のホスファゼニウム塩を単離し、これの存在下にアルキレンオキサイドを重合させることもできる。
【0048】
予め、この活性水素化合物のホスファゼニウム塩を得る方法としては、化学式(1)で表される塩と活性水素化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを反応させる。目的の塩が生成する限り、2種類の塩の使用比は特に制限はなく、何れの塩が過剰にあっても特に問題がない。通常、活性水素化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の使用量は、ホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩の1当量に対して0.2〜5当量であるが、好ましくは0.5〜3当量、より好ましくは0.7〜1.5当量である。
通常、両者の接触を効果的にするために溶媒を用いる。それらの溶媒は、反応を阻害しなければいかなる溶媒でも構わない。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素類又は芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、安息香酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の極性非プロトン溶媒等が挙げられる。
【0049】
これらの溶媒は、反応に用いる原料の塩の化学的安定性に応じて選ばれる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類であり、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類であり、アセトニトリル等のニトリル類であり、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の極性非プロトン溶媒等である。これらの溶媒は、単独で用いても良く、2種以上混合して使用しても良い。
原料の塩は溶解していることが好ましいが、懸濁状態でも構わない。反応温度は、用いる塩の種類、量及び濃度等により一様ではないが、通常、150℃以下であり、好ましくは−78〜80℃、より好ましくは0〜50℃の範囲である。反応圧力は、減圧、常圧及び加圧の何れでも実施できる。好ましくは9.8〜980kPa(0.1〜10kgf/cm2 )である。より好ましくは98〜294kPa(1〜3kgf/cm2 )の範囲である。反応時間は、通常1分間〜24時間、好ましくは1分間〜10時間、より好ましくは5分間〜6時間の範囲である。
【0050】
反応液から、目的の活性水素化合物のホスファゼニウム塩を単離する場合には、常套の手段を組み合わせた方法が用いられる。目的の塩の種類、用いた2種の原料の塩の種類や過剰率、用いた溶媒の種類や量などにより、その方法は一様ではない。通常、副生するアルカリ金属のカチオン又はアルカリ土類金属のカチオンと、無機アニオンとの塩は、固体として析出しているので、必要なら若干の濃縮を行った後、濾過、遠心分離等の方法で固液分離して、析出物を除き、液を濃縮乾固して目的の塩を得ることができる。
濃縮した後、副生した塩がなお溶解している場合には、必要なら更に濃縮した後、貧溶媒を加え副生塩又は目的の塩の何れかを析出させたり、濃縮乾固後、一方を抽出する等の方法で分離することができる。過剰に使用した方の原料の塩が、目的の塩に多量に混入している場合には、必要なら再溶解した後、好適な他の溶媒で抽出し、これらを分離することができる。更に、必要であれば再結晶又はカラムクロマトグラフィー等で精製することもできる。通常、目的の塩は、中粘度又は高粘度の液体、あるいは固体として得られる。
【0051】
化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩、並びに、活性水素化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の存在下に、アルキレンオキサイドを付加重合させる。この時、活性水素化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、あるいは、それらから導かれる活性水素化合物のホスファゼニウム塩を構成する活性水素化合物と同種又は異種の活性水素化合物を反応系に存在させてもよい。塩を存在させる場合、その量は、特に制限がないが、アルキレンオキサイド1モルに対して、1×10-15 〜5×10-1モルであり、好ましくは1×10-7〜1×10-1モルの範囲である。又、これらの塩が溶液で供給される場合に、その溶媒が重合反応を阻害するなら、事前に例えば、減圧下に加熱する等の方法で除くこともできる。
【0052】
重合後のホスファゼニウム化合物の除去操作を容易にするためには、化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩、並びに、活性水素化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に対し、従来公知の開始剤を併用することは構わない。従来公知の開始剤とは、活性水素化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、塩基性アルカリ金属化合物、又は塩基性アルカリ土類金属化合物とを反応させたものである。
但し、従来公知の開始剤の過度の併用は、ポリオキシアルキレンポリオール中のC=Cを上げる要因となるため、その使用量はなるべく少ない方がよい。通常、活性水素化合物1モルに対して1×10-8〜1×10-1モルである。好ましくは1×10-5〜1×10-1モル、更に好ましくは1×10-4〜1×10-1モルの範囲である。
【0053】
本発明のポリオキシアルキレンポリオールの製造方法の他の方法、即ち、化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物と活性水素化合物の存在下、アルキレンオキサイドを付加重合させてポリオキシアルキレンポリオールを製造する方法について述べる。
化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物中のQ- は、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオン及びカルボキシアニオンよりなる群から選ばれるアニオンである。これらのQ- のうち、好ましくは、ヒドロキシアニオンである。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール類から導かれるアルコキシアニオンであり、フェノール、クレゾール等の芳香族ヒドロキシ化合物から導かれるアリールオキシアニオンであり、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等から導かれるカルボキシアニオンである。
【0054】
これらのうち、より好ましくは、ヒドロキシアニオン、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノールなどの低沸点アルキルアルコールから導かれるアルコキシアニオン、ギ酸、酢酸等のカルボン酸から導かれるカルボキシアニオンである。更に好ましくは、ヒドロキシアニオン、メトキシアニオン、エトキシアニオン、酢酸アニオンである。これらのホスファゼニウム化合物は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物の一般的合成法としては、先ず、前述した化学式(1)で表される塩を合成する方法と同様にして、化学式(1)でr=1、Tr-=Cl- であるホスファゼニウムクロライドを合成する。次いで、このホスファゼニウムクロライドを、例えば、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、アリールオキシド又はカルボキシドで処理する方法、イオン交換樹脂を利用する方法等によりその塩素アニオンを所望のアニオンQ- に置き換えることができる。このようにして化学式(2)で表される一般的なホスファゼニウム化合物が得られる。
【0055】
化学式(2)と共存させる活性水素化合物は、活性水素化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を与える活性水素化合物として先に詳細に述べたものと同一である。
通常、化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物と活性水素化合物の存在下、アルキレンオキサイドを付加重合させる方法においては、過剰に用いられる活性水素化合物の過剰分はそのまま残存する。この他に、ホスファゼニウム化合物の種類に応じて水、アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物、カルボン酸等が副生する。必要であれば、これらの副生物をアルキレンオキサイドの付加重合反応に先だって除去しておく。除去方法としては、それらの副生物の物性に応じて、加熱もしくは減圧で留去する方法、不活性気体を通ずる方法、吸着剤を用いる方法などの常用の方法が用いられる。
【0056】
重合後、ホスファゼニウム化合物の除去を容易にするため、化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物及び活性水素化合物に対し、従来公知の開始剤を併用してもよい。従来公知の開始剤とは、先に詳述した化合物である。但し、従来公知の開始剤を過度に併用すると、ポリオキシアルキレンポリオールのC=Cが高くなる要因となるため、その使用量はなるべく少ない方がよい。通常、活性水素化合物1モルに対して1×10-8〜1×10-1モルである。好ましくは1×10-5〜1×10-1モル、更に好ましくは1×10-4〜1×10-2モルの範囲である。
【0057】
ホスファゼニウム化合物の存在下、活性水素化合物へ付加重合させるアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。これらのうち、好ましくはプロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、エチレンオキサイドである。特に好ましくはプロピレンオキサイドを50モル%以上含むアルキレンオキサイドである。最も好ましくはプロピレンオキサイドを70モル%以上含むアルキレンオキサイドである。
【0058】
重合方法としては、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを例にした場合、プロピレンオキサイドを重合した後、エチレンオキサイドをブロックで共重合するエチレンオキサイドキャップ反応、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドをランダムに共重合するランダム反応、更にはプロピレンオキサイドを重合後、エチレンオキサイドを重合し、次いで、プロピレンオキサイドを重合するトリブロック共重合反応が挙げられる。これらの中で好ましい重合方法としては、エチレンオキサイドキャップ反応とトリブロック共重合反応である。
上記の特性を有するポリオキシアルキレンポリオールは、以下の条件下で製造することにより得られる。即ち、活性水素化合物1モルに対し、化学式(1)又は化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物を1×10-4〜5×10-1モル使用する。好ましくは5×10-4〜1×10-1モル、更に好ましくは1×10-3〜1×10-2モルの範囲である。
【0059】
ポリオキシアルキレンポリオールを高分子量化する際には、活性水素化合物に対するホスファゼニウム化合物の濃度を上記範囲内で高めることが好ましい。活性水素化合物1モルに対して化学式(1)又は化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物が1×10-4モルより低い場合には、アルキレンオキサイドの重合速度が低下し、ポリオキシアルキレンポリオールの製造時間が長くなるが、逆に、5×10-1モルより多くなると、製造コストに占めるホスファゼニウム化合物のコストが高くなる。
又、アルキレンオキサイドの付加重合温度は15〜130℃、好ましくは40〜120℃、更に好ましくは50〜110℃の範囲である。アルキレンオキサイドの付加重合温度を上記範囲内で低い温度で行う場合は、活性水素化合物に対するホスファゼニウム化合物の濃度を先に述べた範囲内で高めることが好ましい。重合系へのアルキレンオキサイド供給方法は、必要量のアルキレンオキサイドの一部を一括して供給する方法、連続的または間欠的にアルキレンオキサイドを供給する方法等が用いられる。必要量のアルキレンオキサイドの一部を一括して供給する方法においては、アルキレンオキサイド重合反応初期の反応温度は上記範囲内でより低温側とし、アルキレンオキサイド装入後に次第に反応温度を上昇する方法が好ましい。重合温度が15℃より低い場合には、アルキレンオキサイドの重合速度が低下し、ポリオキシアルキレンポリオールの製造時間が長くなる。重合温度が130℃を超えるとアルキレンオキサイドとしてプロピレンオキサイドを用いた場合、総不飽和度(C=C)が0.07meq./gより高くなる。
【0060】
アルキレンオキサイドの付加重合時の最大圧力は882kPa(9kgf/cm2 )が好適である。通常、耐圧反応機内でアルキレンオキサイドの付加重合が行われる。アルキレンオキサイドの付加重合は、減圧状態から開始しても、大気圧の状態から開始してもよい。大気圧状態から開始する場合には、窒素またはヘリウム等の不活性気体の存在下で行うことが望ましい。アルキレンオキサイドの最大反応圧力が882kPa(9kgf/cm2 )を超えると、副生モノオール量が増加する。最大反応圧力は、好ましくは686kPa(7kgf/cm2 )、より好ましくは490kPa(5kgf/cm2 )である。アルキレンオキサイドとして、プロピレンオキサイドを用いる場合には、最大反応圧力は490kPa(5kgf/cm2 )が好ましい。
【0061】
アルキレンオキサイドの付加重合反応に際して、必要ならば溶媒を使用することもできる。溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ペプタン等の脂肪族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。溶媒を使用する場合には、ポリオキシアルキレンポリオールの製造コストを上げないためにも、溶媒を回収し再利用する方法が望ましい。
【0062】
ホスファゼニウム化合物を触媒として、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合して得られた粗製ポリオキシアルキレンポリオールから、ホスファゼニウム化合物を除去する方法について述べる。
e.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜8モル添加し、50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和し、その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜2.5重量部添加し、減圧処理により水を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩および吸着剤を除去する。(酸中和除去方法)
f.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤および水の混合物を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜8モル添加し、50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和し、その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜2.5重量部添加し、減圧処理により水および有機溶剤を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩および吸着剤を除去する。(酸中和除去方法)
g.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水単独、または、水とポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤との混合物を1〜200重量部添加して分液し、水洗後、減圧処理により水および有機溶剤を留去する。(水洗処理方法)
h.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水を20〜200重量部加え15〜100℃でイオン交換樹脂と接触させた後、ろ過によりイオン交換樹脂を除き、減圧処理により脱水を行う。(イオン交換処理方法)
前記e.法及びf.法において、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜2.5モル、及び、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部添加することが好ましい。
【0063】
先ず、e法、f法(酸中和除去方法)について説明する。本発明のポリオキシアルキレンポリオーの内、OHVが低い(OHV2〜30mgKOH/gの範囲)ポリオキシアルキレンポリオールは、分子量が高く、しかも親水性の水酸基の濃度が低い。アルキレンオキサイドの重合反応において、活性水素化合物に対するホスファゼニウム化合物の使用量が多い場合は、ホスファゼニウム化合物の中和の際に用いる水あるいは有機溶剤の量がポリオキシアルキレンポリオール中からホスファゼニウム化合物濃度を低減するために重要な因子となる。
中和の際には、e法では、水を1〜40重量部用いる。好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1.2〜20重量部である。f法では、ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤と水との混合物を1〜40重量部用いる。好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1.2〜20重量部である。f法では、少なくとも20重量%の水を含む混合溶媒を用いることが好ましい。ポリオキシアルキレンポリオール中に親水基であるオキシエチレン基が10モル%以上あるときは水の使用量は少なくてもよい。オキシエチレン基がないときには水の使用量を増加する。1重量部より少ないときは製品中のホスファゼニウム化合物濃度が多くなる。40重量部より多くなると脱水、脱溶媒に費やすエネルギーが多くなる。
【0064】
ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤とは、炭化水素系溶剤の中でトルエン、ヘキサン類、ペンタン類、ヘプタン類、ブタン類、低級アルコール類、シクロヘキサン、シクロペンタン、キシレン類などが挙げられる。これらの有機溶剤をポリオキシアルキレンポリオールから留去するには加熱減圧操作により実施する。温度は100〜140℃で減圧度を10mmHgabs.(1330Pa)以下にする方法が好ましい。
ホスファゼニウム化合物を中和する際の酸として無機酸または有機酸を使用する。無機酸としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、塩酸、硫酸、亜硫酸およびそれらの水溶液が挙げられる。その他、無機酸としては、リン酸二リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素リチウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、硫酸水素リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム(例えば、ピロリン酸水素ナトリウム)等の無機酸酸性塩が挙げられる。
【0065】
有機酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、コハク酸、酢酸、マレイン酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸およびそれらの水溶液が挙げられる。
特に、好ましくはリン酸、塩酸、硫酸、マレイン酸、シュウ酸であり、水溶液の形態で用いることが良い。これらの酸は粗製ポリオキシアルキレンポリオール中に含まれるホスファゼニウム化合物の1モルに対して0.5〜8モル使用する。好ましくは、0.5〜6モル、より好ましくは0.5〜2.5モルである。中和は50〜130℃の範囲で実施する。特に好ましくは70〜95℃である。中和時間は反応スケールにもよるが、0.5〜3時間である。ホスファゼニウム化合物1モルに対して、酸の量が8モルに近いときは酸吸着剤を併用することが好ましい。0.5モルより少ないときは製品のポリオキシアルキレンポリオールのホスファゼニウム化合物濃度が高くなる傾向にある。8モルより多くなると酸を除去するための吸着剤使用量が多くなる。
【0066】
中和反応終了後、吸着剤を装入する。その際、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤は、単独、または2種以上を併用してもよい。酸化防止剤としては、例えば、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリスリチル−テトラキス 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニール)プロピオネート 、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニール)−プロピオネート、エチルヘキシルホスファイト、4,4’−ビス−α、α’−ジメチルベンジルジフェニルアミン、2−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等が挙げられる。酸化防止剤は、粗製ポリオキシアルキレンポリオールに対して200〜5000ppm用いる。好ましくは300〜4000ppm、より好ましくは350〜2000ppmである。
【0067】
粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、酸およびアルカリ成分を吸着する吸着剤を0.005〜2.5重量部添加する。好ましくは、0.005〜1.5重量部、より好ましくは0.03〜1.1重量部である。吸着剤としては、例えば、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、活性白土、酸性白土、合成ケイ酸アルミニウム・マグネシウム等が用いられる。吸着剤は、ナトリウム溶出分が少ないものが好ましい。
具体的な吸着剤は、トミックスシリーズ、例えば、トミックスAD−100、トミックスAD−200、トミックスAD−300、トミックスAD−400、トミックスAD−500、トミックスAD−600、トミックスAD−700、トミックスAD−800、トミックスAD−900(富田製薬(株)製)、キョーワードシリーズ、例えば、キョーワード200、キョーワード300、キョーワード400、キョーワード500、キョーワード600、キョーワード700、キョーワード1000、キョーワード2000(協和化学工業(株)製)、MAGNESOL(DALLAS社製)等各種の商品名で市販されている。
【0068】
吸着剤装入後、100〜140℃、1330Pa(10mmHgabs.)の条件で水、または、水と有機溶剤とを留去する。その後、ろ過操作により、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行う。その際に、けいそう土、セライトなどのろ過助剤を用いても良い。このような操作により得られるポリオキシアルキレンポリオールの酸価は0.05mgKOH/g以下であることが好ましい。
続いて、g法(水洗処理法)について説明する。粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水単独、または、水とポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶媒との混合物を1〜200重量部加え、15〜130℃において攪拌、分液し、水洗後、減圧処理により該溶媒を留去する。水として、イオン交換水、市水等を用いることが好ましい。水とポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤との混合溶媒を用いる場合は、少なくとも20重量%の水を含む混合溶媒を用いることが好ましい。水単独、または、水と有機溶媒との混合物を加え、ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物を水に抽出する。2〜30時間静置分液を行い、水を交換する。反応スケールにもよるが、3〜5回の水洗を行う。水洗後は、加熱減圧処理により、脱水、脱溶媒を行う。加熱処理前に前述した酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0069】
h法(イオン交換処理法)について説明する。粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水を20〜200重量部加え、15〜100℃でイオン交換樹脂と接触させた後、減圧処理により脱水を行う。イオン交換樹脂と粗製ポリオキシアルキレンポリオールとの接触方法は、イオン交換樹脂充填塔に粗製ポリオキシアルキレンポリオールを通液する方法、粗製ポリオキシアルキレンポリオールにイオン交換樹脂を添加して攪拌する方法、等が挙げられる。
イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂が良く、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスルホン化物が好ましく用いられる。また、ゲル型とマクロポーラス型のどちらの形態のものも本発明に供することができる。さらに、イオン交換樹脂の性質としては、強酸性、弱酸性どちらのものも使用できるが、強酸性イオン交換樹脂が好ましく用いられる。この種の強酸性イオン交換樹脂は、レバチットS100、同S109、同SP112、同SP120、同S100LF(バイエル社製)、ダイヤイオンSK1B、同PK208、同PK212(三菱化学社製)、ダウエックスHCR−S、50WX1、50WX2(ダウケミカル社製)、アンバーライトIR120、同IR122、同200C(ロームアンドハース社製)等の各種の商品名で市販されている。脱水時に前述した酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0070】
以上、詳述した各方法により、ホスファゼニウム化合物の除去操作を行った後、ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物触媒の残存量は150ppm以下である。好ましくは90ppm以下である。さらに好ましくは50ppm以下である。ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物触媒の残存量が150ppmより多くなると、ポリイソシアネート化合物と反応させる際、反応制御が困難になる。ホスファゼニウム化合物触媒の残存量の下限値は、可能な限り少ない方が良い。通常、上記精製方法によれば、1ppm程度まで除去することが可能である。
本発明において定義するホスファゼニウム化合物触媒の残存量とは、前記化学式(1)及び(2)で表されるホスファゼニウムカチオンを意味する。
【0071】
また、上記操作により得られたポリオキシアルキレンポリオールのCPR(Controlled Polymerization Rate、ポリオール中の塩基性物質の量を示す指標)は5以下である。好ましくは、CPRは3以下、最も好ましくはCPRは0である。ポリオキシアルキレンポリオールのCPRが5より大きくなると、ポリイソシアネート化合物と反応させたイソシアネート基末端プレポリマーの貯蔵安定性が低下する。
更に、上記操作により得られるポリオキシアルキレンポリオール中の過酸化物濃度は0.28mmol/kg以下が好ましい。さらに好ましくは、0.20mmol/kg以下、最も好ましくは、0.15mmol/kg以下である。過酸化物濃度が0.28mmol/kgを超えると、ポリイソシアネート化合物との反応に際して、錫系触媒を使用する場合、過酸化物により錫系触媒の活性が低下するため、ポリウレタンの成形性、力学物性が低下する。
【0072】
次に、本発明のポリマー分散ポリオールについて説明する。
ポリマー分散ポリオールは、ポリオールを分散媒として、エチレン性不飽和単量体を重合し、ポリオール中のポリマー粒子を分散させることにより製造される。本発明のポリマー分散ポリオールに使用するポリオキシアルキレンポリオールは、前記▲1▼〜▲4▼の要件を満たし、且つ、ホスファゼニウム化合物触媒の残存量が150ppm以下であるポリオキシアルキレンポリオールである。ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(OHV)は、10〜100mgKOH/gの範囲が好ましい。さらに好ましくは15〜50mgKOH/gの範囲である。このようなポリオキシアルキレンポリオールは前述した方法によって得られる。
ポリマー分散ポリオールの製造に用いられるエチレン性不飽和単量体は、重合しうるエチレン性不飽和基を少なくとも1個有するものが適当である。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート等のメタクリル酸エステル系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン等の炭化水素系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレン等の芳香族炭化水素系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルエチルケトン等のビニルケトン類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類、N,N−ジメチルメタクロイルアミド等のメタクリルアミド類の1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0073】
これらの内、好ましくは、アクリロニトリル、スチレン、アクリルアミド及びメタクリル酸メチルから選ばれた少なくとも1種の化合物である。
本発明では重合開始剤として、ラジカルを発生して重合を開始するラジカル開始剤が用いられる。具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等の過酸化物、パーオキシジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体に対して、0.1〜10.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%が好ましい。
エチレン性不飽和単量体の使用量は、ポリオキシアルキレンポリオールとエチレン性不飽和単量体の総重量に対して5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%である。エチレン性不飽和単量体の使用量が5重量%未満では、ポリウレタンの硬度等、ポリマー分散ポリオールを使用したことによる十分な改質効果が得られない。エチレン性不飽和単量体の使用量が60重量%を超えると、得られるポリマー分散ポリオールの粘度の上昇が著しく、また分散性も悪化する。
【0074】
本発明では、必要に応じて連鎖移動剤を用いることができる。イソプロパノール等のアルコール類、メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等の脂肪族3級アミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のモルホリン類、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。好ましくは、トリエチルアミン単独、トリエチルアミンとイソプロパノールの混合物である。連鎖移動剤の使用量は、ポリオキシアルキレンポリオールとエチレン性不飽和単量体の総重量に対して0.1〜10.0重量%が好ましい。
更に、ポリマー粒子を安定に分散させる目的で、分散安定化剤の存在下に重合を行うこともできる。このような分散安定化剤として特公昭49−46556号公報に記載されているような炭素−炭素不飽和結合含有ポリエステルポリオールや、アクリル基、メタクリル基、アリル基等を分子末端に有する変性ポリオール等が挙げられる。また、実質的に炭素−炭素不飽和結合を含有しない高分子量ポリオキシアルキレンポリオールやポリエステルポリオールも使用できる。
【0075】
ポリマー分散ポリオールの製造は、前記したポリオキシアルキレンポリオール、エチレン性不飽和単量体、重合開始剤、さらには必要に応じて連鎖移動剤、分散安定化剤を用いて重合反応を行う。
重合反応は、バッチ式でも、連続式でも行うことができる。重合温度は重合開始剤の種類に応じて決められるが、重合開始剤の分解温度以上、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは90〜150℃の範囲で行う。また、重合反応は加圧下でも、大気圧下でも行うことができる。
重合反応は、無溶媒でも行うことができるが、水、有機溶媒から選ばれる少なくとも1種の溶媒または水と該有機溶媒との混合物の存在下に行うこともできる。有機溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトニトリル、ヘキサン、ヘプタン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、ブタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
【0076】
重合反応終了後、得られたポリマー分散ポリオールはそのままポリウレタンの原料として使用できるが、未反応エチレン性不飽和単量体、重合開始剤の分解生成物や連鎖移動剤、溶媒等を減圧下に留去した後に使用することが好ましい。
本発明のポリマー分散ポリオールに含まれるポリマーの平均粒子径は、ポリマーの分散安定性とポリウレタンの物性に与える影響の観点から、0.01〜10μmであることが好ましい。このような粒径にするには、前記の連鎖移動剤、分散安定化剤、溶媒の種類と使用量、エチレン性不飽和単量体の重量組成比等を適宜調整することで行うことができる。
本発明のイソシアネート基末端プレポリマーについて説明する。イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させることにより製造される。本発明で使用するポリオールとしては、前記▲1▼〜▲4▼の要件を満たすポリオキシアルキレンポリオール、または、該ポリオキシアルキレンポリオールから誘導される前記ポリマー分散ポリオールである。
【0077】
先ず、ポリオールとして、ポリオキシアルキレンポリオールを用いる方法について説明する。前記▲1▼〜▲4▼の要件を満たすポリオキシアルキレンポリオールの内、ホスファゼニウム化合物触媒の残存量が150ppm以下であるポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。さらに好ましくは50ppm以下である。
【0078】
本発明で用いるポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する芳香族系、脂肪族系、脂環族系等のポリウレタンの製造に用いられる公知のものが使用できる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、これらポリイソシアネート化合物の80/20重量比(以下、TDI−80/20と略する)、65/35重量比(以下、TDI−65/35と略する)の異性体混合物、これらトリレンジイソシアネート化合物中の芳香環に水素添加した水添2,4−トリレンジイソシアネート、水添2,6−トリレンジイソシアネート、これら水添トリレンジイソシアネートの80/20重量比(以下、水添TDI−80/20と略する)、65/35重量比(以下、水添TDI−65/35と略する)の異性体混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物、および4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略する)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート中の芳香環に水素添加したイソシアネート(以下、水添XDIと略する)、リジンジイソシアネートメチルエステル、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートおよびこれらのポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体、ビュレット変性体、または、これらをポリオール、モノヒドロキシ化合物単独で、または併用して変性したプレポリマーなどが挙げられる。上記、ポリイソシアネート化合物は任意の割合で混合して用いることもできる。
【0079】
これらポリイソシアネート化合物の中で好ましくは、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネートの混合物であり、TDI−80/20、TDI−65/35、水添TDI−80/20および水添TDI−65/35が例示され、パラフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート類、水添MDI類、キシリレンジイソシアネート、水添XDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。
イソシアネート基末端プレポリマーを製造する際には、ポリオキシアルキレンポリオール中の活性水素基濃度に対するイソシアネート基濃度の比であるイソシアネートインデックス(NCOインデックス)は1.3〜20.0、好ましくは1.4〜12.0、さらに好ましくは1.5〜9.0である。
【0080】
イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量(以降、NCO%と略する)は、0.3〜30重量%である。好ましくは0.4〜20重量%、さらに好ましくは0.8〜18重量%である。空気中の水分を硬化剤として得られる一液型硬化性組成物に用いられるイソシアネート基末端プレポリマーでは、NCO%が低く設計される。また、1,4−ブタンジオールやポリオキシアルキレンポリオールなどのグリコール類、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジエチルジアミノトルエン等のポリアミン化合物を硬化剤とする二液型硬化性組成物に用いられるイソシアネート基末端プレポリマーでは、一液型と比較して高めにNCO%は設計される。
イソシアネート基末端プレポリマーを製造する時の温度は、50〜120℃が好ましい。特に好ましくは70〜105℃である。反応させる際には空気中の水分との接触を避けるため、不活性ガスの存在下で反応させることが望ましい。不活性ガスとしては窒素、ヘリウムなどが挙げられるが、窒素が好適である。窒素雰囲気下2〜20時間攪拌しながら反応を行う。
【0081】
触媒は使用しなくても良いが、使用する場合は、公知のものが使用できる。例えば、アミン系触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,N' ,N' −テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕エーテル、トリエチレンジアミン及びトリエチレンジアミンの塩等、ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のアミン塩、有機金属系触媒としては、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロリド、2−エチルヘキシル酸錫、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル及びナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0082】
これらの触媒は、任意に混合して使用できる。これらの触媒のなかでは、特に有機金属系触媒が好ましい。その使用量は、ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、0.0001〜1.0重量部、好ましくは0.01〜0.8重量部である。
イソシアネート基末端プレポリマーを製造する際に、反応前あるいは反応後、ポリイソシアネート化合物及びポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤を使用できる。有機溶剤の使用量は、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネート化合物の合計重量に対して40重量%以下、更に好ましくは20重量%以下とする。
このような溶剤としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系、ケトン系、エステル系及びエステルエーテル系のものが使用できる。例えば、トルエン、キシレン類、ヘキサン類、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等である。
【0083】
本発明のイソシアネート基末端プレポリマーは、単独で空気中の水分と反応して硬化する一液型硬化性組成物と活性水素基を有する化合物を硬化剤とする二液型硬化性組成物のいずれにも使用できる。活性水素化合基を有する化合物の硬化剤としてポリオキシアルキレンポリオールを用いる場合には、本発明で得られたポリオキシアルキレンポリオールを用いることが好ましい。
本発明のイソシアネート基末端プレポリマーには、例えば、以下に述べる硬化用触媒、充填剤、可塑剤、顔料、補強剤、難燃剤、安定剤などが配合できる。
充填剤としては、ヒュームシリカ、シリカ、無水珪酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、酸化第2鉄、水添ヒマシ油、ステアリン酸亜鉛などが挙げられ、その添加量は、イソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して2〜60重量部、好ましくは10〜50重量部である。
【0084】
可塑剤としてはジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ブチルベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、ジオクチルセバケート、トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート、塩素化パラフィン、石油エーテル等が挙げられる。その添加量は、イソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して、5〜40重量部、好ましくは5〜15重量部である。
補強剤としては黒色フィラーのカーボンブラックや白色フィラーのホワイトカーボンやシリカ、ケイ酸塩であるカオリン、ベントナイト、無水微粉ケイ酸、バライト、石こう、骨粉、ドロマイトなどが挙げられ、その添加量はイソシアネート基末端プレポリマーの100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部である。
【0085】
難燃剤としてはトリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2,2−クロロエチル)ホスフェート、ヘキサブロモシクロドデカン、大八化学社製のCR−505及びCR−507、モンサント化学社製のPhosagard 2XC−20及びC−22−R、ストファー化学社製Fyroll6等が挙げられ、その使用量はイソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.2〜20重量部である。
安定剤としては酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤が挙げられる。酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキシトルエン、1,3,5−トリメチルー2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0086】
紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。熱安定剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイトなどが挙げられる。これらの添加量はイソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して、各々100〜8,000ppmが好ましい。必要に応じて、顔料、ビス(トリ−n−ブチルチン)オキシド等の防黴剤、消泡剤、前述した有機溶剤、水分除去剤などが使用できる。
【0087】
次いで、ポリオールとして、ポリマー分散ポリオールを使用する方法について説明する。ポリマー分散ポリオールを使用するイソシアネート末端プレポリマーは、基本的には、上記したポリオキシアルキレンポリオールを使用する方法と同様の方法で製造される。ポリイソシアネート化合物、助剤等についても上記と同様のものが用いられる。即ち、ポリオキシアルキレンポリオールの代わりに、ポリマー分散ポリオールを使用する方法である。
ポリマー分散ポリオールとしては、上記本発明のポリマー分散ポリオールが用いられる。プレポリマーの粘度を考慮すると、上記本発明のポリマー分散ポリオールの内、ポリマー濃度が5〜30重量%であるものを使用することが好ましい。イソシアネート末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量は、0.3〜30重量%、好ましくは、0.4〜20重量%である。
【0088】
次に、遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下であるイソシアネート基末端プレポリマーについて説明する。遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下であるイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は、0.3〜30重量%、好ましくは0.4〜20重量%、更に好ましくは0.8〜18重量%である。
又、イソシアネート基末端プレポリマー中の遊離イソシアネート含有量は0.8重量%以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5重量%以下である。遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%を超えると、ポリウレタン樹脂の成形過程において、反応の制御が困難である。又、得られるポリウレタン樹脂のヒステリシスロスが大きくなる。
遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下であるイソシアネート基末端プレポリマーは、以下の3工程を経て製造される。
(第一工程)ポリオキシアルキレンポリオールの製造工程。
(第二工程)粗製イソシアネート基末端プレポリマーの製造工程。
(第三工程)粗製イソシアネート基末端プレポリマーの減圧処理工程。
【0089】
第一工程では、上記したポリオキシアルキレンポリオールの製造方法と同様の方法でポリオキシアルキレンポリオールを製造する。得られたポリオキシアルキレンポリオールの内、OHVが10〜200mgKOH/gであり、上記 2〜 4の特性を満たし、且つ、CPRが5以下であるポリオキシアルキレンポリオールを用いる。又、ホスファゼニウム化合物触媒の残存量は150ppm以下、更に好ましくは90ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。
第二工程について説明する。第二工程は、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基濃度に対するイソシアネート基の濃度の比(NCOインデックス)が2.5〜10.0の範囲で、第一工程で得られたポリオキシアルキレンポリオールを60〜100重量%含むポリオールとポリイソシアネート化合物を不活性気体の存在下、反応温度20〜100℃で反応させることにより得られる粗製イソシアネート基末端プレポリマーの製造工程である。
【0090】
本発明のホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを60〜100重量%含むポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させる際、NCOインデックスは2.5〜10.0の範囲、好ましくは、3.0〜9.0の範囲、最も好ましくは3.5〜8.0の範囲である。NCOインデックスが2.5より小さくなると、イソシアネート基末端プレポリマーと、部分的にイソシアネート化されたポリオールとが反応した2量体(以下、オリゴマーと言う)が生成しやすくなるため、プレポリマーの粘度が上昇するとともに、そのプレポリマーを用いたポリウレタンエラストマーのヒステリシスロスが大きくなる。又、NCOインデックスが10.0より大きくなると本発明の第三工程におけるポリイソシアネート化合物の減圧処理時間が長くなる。
【0091】
プレポリマー化反応時には、本発明のホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを少なくとも60重量%含むポリオールを用いる。好ましくは、本発明のホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールの含有量は少なくとも70重量%である。ホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールが60重量%未満になるとイソシアネート基末端プレポリマーの粘度が上がる。本発明のホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールと併用するポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンから選ばれる少なくとも1種の低分子量ポリオールである。これらの化合物は単独で使用しても、併用しても構わない。
【0092】
これらの化合物の中で、特に推奨されるのは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールであり、より好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールである。
上記した低分子量ポリオールの他に、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンアジペート、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油系ポリオール及びポリブタジエンポリオールから選ばれる少なくとも1種のポリオールが使用できる。これらのポリオールは単独、もしくは併用しても構わない。これらのポリオールの中で好ましいのは、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンアジペート、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールである。これらのポリオールの平均分子量は、300〜6,000、特に800〜4,000であることが望ましい。
【0093】
又、プレポリマー化反応に用いるポリオールとして、本発明のホスファゼニウム化合物を触媒としたOHVが異なるポリオキシアルキレンポリオールを2種類以上併用しても構わない。OHVの他に、ポリオールの平均官能基数の異なるポリオキシアルキレンポリオールを2種類以上併用してもよい。例えば、2官能活性水素化合物、エチレングリコール、プロピレングリコールあるいはジプロピレングリコールなどを開始剤としたポリオキシアルキレンポリオールと3官能活性水素化合物であるグリセリン、トリメチロールプロパンなどを開始剤としたポリオキシアルキレンポリオールが用いられる。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物としては、上記したイソシアネート基末端プレポリマーの項で説明したものと同一である。
本発明のプレポリマー化反応は、窒素、ヘリウムなどの不活性気体存在下で行う。ポリオールとトリレンジイソシアネートの混合物との反応温度は20〜100℃、好ましくは30〜98℃、最も好ましくは35〜95℃である。反応温度が20℃より低くなるとプレポリマー反応時間が長くなり、又逆に100℃を超えて高くなると、前述したオリゴマーが生成しやすくなる。
【0094】
第三工程について説明する。第二工程で得られた粗製イソシアネート基末端プレポリマーを温度70〜180℃、圧力665Pa(5mmHgabs.)以下の条件で減圧処理を行うことにより、遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下のイソシアネート基末端プレポリマーを製造する工程である。
遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下のプレポリマーを製造するために、温度70〜180℃、圧力665Pa(5mmHgabs.)以下の条件で減圧処理を行う。
減圧処理過程で未反応イソシアネート化合物の2量体の生成を抑制するために減圧処理操作は重要な工程である。減圧操作時の温度は70〜180℃、好ましくは80〜150℃、より好ましくは85〜130℃である。温度が70℃より低くなると、未反応イソシアネート化合物を除去する時間が長くなる。温度が180℃を超えると、減圧処理過程でプレポリマーの粘度が上昇する。一方、圧力は665Pa(5mmHgabs.)以下、より好ましくは266Pa(2mmHgabs.)、最も好ましくは133Pa(1mmHgabs.)以下とする。
【0095】
圧力が665Pa(5mmHgabs.)を超えると、未反応イソシアネート化合物を除去する時間が長くなり、減圧処理過程でプレポリマーの粘度が上昇する。又、減圧処理は薄膜蒸発方法が好ましく、強制循環式攪拌膜型の蒸発器、あるいは流下膜式分子蒸留装置などを用いることができる(参考文献;改訂第5版、化学工学便覧:化学工学協会編集丸善株式会社、1988年発行)。そのような装置としては、例えば神鋼パンテック株式会社製のスミス式薄膜蒸発器である商品名ワイプレン、エクセバ、あるいは日立製作所株式会社製のコントロ式薄膜蒸発器、サンベイ式薄膜蒸発器などが挙げられる。減圧処理によりプレポリマー中から回収されたポリイソシアネート化合物は再度、プレポリマー化反応に使用できる。プレポリマー化反応に再使用するポリイソシアネート化合物は、2量体、オリゴマーなどの不純物が少ないポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0096】
前述した第一工程から第三工程を行うことにより遊離イソシアネート含有量が1重量%以下のイソシアネート基末端プレポリマーを製造する。次に、本発明のイソシアネート基末端プレポリマーを用いたポリウレタン樹脂について説明する。
本発明のイソシアネート基末端プレポリマーを含むプレポリマーと鎖延長剤を反応させたポリウレタン樹脂は、主にポリウレタンエラストマー、ポリウレタンウレアエラストマー、シーリング剤、塗料、接着剤分野で使用される。プレポリマーは本発明のイソシアネート基末端プレポリマーを少なくとも60重量%、望ましくは少なくとも70重量%含むものとする。
ホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを用いる、本発明のイソシアネート基末端プレポリマー以外のプレポリマーとは、特公平6−13593号公報に例示されているポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンアジペート及びポリカプロラクトンポリオールをポリオール成分とした遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下のイソシアネート基末端プレポリマーである。本発明のホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを用いるイソシアネート基末端プレポリマーの含有量が60重量%未満になるとプレポリマーの粘度が上昇し、作業性が低下する。
【0097】
ポリウレタン樹脂を製造する際に用いられる鎖延長剤とは、イソシアネート基と反応できる活性水素基を1分子中に2個以上有する化合物であり、ポリオール化合物とポリアミン化合物の少なくとも1種類が用いられる。ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等の2価のアルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価のアルコール類、1,4−シクロヘキサンジオール、スピロヘキサンジオールなどのシクロヘキシレン、スピロ環及びメチレン鎖を含み、それらを結合するものとしてエーテル結合、エステル結合などの各種結合を含み、又それらの誘導体として各種置換基を含むものなどが使用できる。
【0098】
又、ポリアミン化合物としてはトリレンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、ジフェニルメタンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,3' −ジクロロ−4,4' −ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミンなどの芳香族ジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミンなどの脂肪族、脂環族ジアミン、直鎖脂肪族ジアミン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどのアルキルジヒドラジドあるいはそれらの誘導体など従来公知のポリアミン化合物が使用できる。
更に、これらの活性水素化合物に従来公知の方法によりアルキレンオキサイドを付加したポリオールも鎖延長剤として使用できる。又、本発明のホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールも使用できる。前述したポリオールを用いる場合には、ポリウレタン樹脂の外観及び機械的性質を向上させるため、C=Cが0.07meq./g以下のポリオールを使用する。
【0099】
上記化合物の中で好ましいポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、3,3' −ジクロロ−4,4' −ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン及びこれらの化合物にアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールである。更に好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン及びこれらの化合物にアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールである。
【0100】
通常、ポリウレタン樹脂の製造方法は、前述したイソシアネート基末端プレポリマー及び鎖延長剤を予め所定の温度に調整し、減圧脱泡処理を行う。次いで、両成分を混合、急速攪拌を行い、所定温度、例えば40〜140℃に加熱した型に注入して成形物を製造する。この際に、硬化用触媒、無機酸、有機酸、シリコーン系カップリング剤、充填剤、可塑剤、染顔料、補強剤、難燃剤、安定剤、消泡剤などを目的に応じて使用することができる。ポリウレタン硬化用触媒としては、アミン化合物、有機金属化合物等のポリウレタンを製造する従来公知の触媒が使用できる。このようなポリウレタン硬化用触媒は、上記したイソシアネート基末端プレポリマーの項で説明した化合物と同一である。
プレポリマーの経時的な粘度変化を抑制する目的で、プレポリマーに無機酸あるいは有機酸を添加しても構わない。無機酸としては、リン酸が、又、有機酸としては、例えば、アジピン酸、2−エチルヘキサン酸及びオレイン酸などが推奨される。これらの酸は単独で用いることもできるが、2種類以上併用しても良い。その使用量は本発明のイソシアネート基末端プレポリマーを含むプレポリマー100重量部に対して0.001〜10.0重量部、好ましくは0.003〜5.0重量部である。
【0101】
シリコーン系カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。その使用量は本発明のイソシアネート基末端プレポリマーを含むプレポリマー100重量部に対して0.01〜8.0重量部、好ましくは0.03〜5.0重量部である。
充填剤、可塑剤、補強剤、難燃剤及び安定剤は、上記したイソシアネート基末端プレポリマーの項で説明した化合物と同一である。
【0102】
最後に、ポリオキシアルキレンポリアミン、及び、そのポリオキシアルキレンポリアミンから誘導されるポリウレタンウレア樹脂について説明する。
本発明のポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価は、5〜180mgKOH/g、好ましくは9〜170mgKOH/g、更に好ましくは12〜150mgKOH/gである。又、ポリオキシアルキレンポリアミンの主鎖構造には、オキシプロピレン基が少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%含まれる。更に、そのオキシプロピレン基結合のH−T結合選択率は、95モル%以上である。H−T結合選択率が95モル%より少なくなると、ポリオキシアルキレンポリアミンの粘度が上昇し、ポリウレタンウレア樹脂の成形性が悪化する。
【0103】
ポリオキシアルキレンポリアミンの製造法について説明する。本発明のポリオキシアルキレンポリアミンの製造に用いるポリオキシアルキレンポリオールは、本発明の4要件を満たすものであることが好ましい。かかる特性を有するポリオキシアルキレンポリオールは、上記した方法により得られる。
上記したポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基の一部、又は全部をアミノ化してポリオキシアルキレンポリアミンを製造する。アミノ化する方法としては、
(i)水素化−脱水素触媒の存在下に、ポリオキシアルキレンポリオールと、アンモニア、1級アミン、2級アミン、ジアミンから選ばれる少なくとも1種の含窒素活性水素化合物とを反応させる方法、
(j)ポリオキシアルキレンポリオールと、分子内に水酸基と反応可能な官能基、及びシアノ基又はニトロ基を有する化合物とを反応させた後、水素添加反応(以下、水添反応と言う)を行う方法、等が挙げられる。
【0104】
先ず、(i)の方法について説明する。
水素化−脱水素触媒は、従来公知の触媒を使用することができ、例えば、Ni、Co等をケイソウ土、シリカ、アルミナのような担体に担持させた担持型触媒、Ni、Co系ラネー型触媒、Ni/Zn系触 媒、Co/Zn系触媒、Ni/Co/Zn系触媒、Cu/Cr系触媒が代表的な例である。中でも担持型触媒は特に好適な触媒の一つである。
通常、1級アミンは、炭素数1〜20のアミン化合物であり、好ましくは1〜10のアミン化合物である。具体的にはメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン等のアルキルアミン、β−アミノプロピルメチルエーテル、β−アミノプロピルエチルエーテル等の置換基を有するアルキルアミン類、ベンジルアミン、p−メチルベンジルアミン等のアラルキルアミン類、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環族アミン類が例に挙げられる。更に、上記1級アミンの中から選ばれた2種以上の混合物も使用できる。
【0105】
通常、2級アミンは、炭素数2〜40のアミン化合物であり、具体的にはジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、エチルプロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、N−メチルドデシルアミン等のアルキルアミン類、ジベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン等のアラルキルアミン類が例に挙げられる。更に、上記2級アミンの中から選ばれた2種以上の混合物も使用できる。ジアミンは、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノトルエン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノフェニルスルフォン、ジエチルジアミノトルエン、ジアミノインダン誘導体等が例に挙げられる。更に、上記ジアミンの中から選ばれた2種以上の混合物も使用できる。
【0106】
これら含窒素活性水素化合物の使用量は、ポリオキシアルキレンポリアミンの用途に応じて決められるが、通常、水酸基1当量に対して0.2〜50当量、好ましくは1〜10当量である。前述した触媒はポリオキシアルキレンポリオールに対して、通常、0.1〜20重量%、好ましくは0.3〜10重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%が用いられる。
(i)の方法において、2級アミノ化率が高いポリオキシアルキレンポリアミンを得る目的で、含窒素活性水素化合物であるアンモニア、1級アミンと共に、1価のアルコールを共存させて反応を行うこともできる。1価のアルコールとしては、炭素数1〜10の1級又は2級のアルコール類が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール等のアルキルアルコール類、β−ヒドロプロピルメチルアルコール、β−ヒドロプロピルエチルアルコール等の置換基を有するアルキルアルコール類、ベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール等のアラルキルアルコール類、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール等のシクロアルキルアルコール類が例に挙げられる。
【0107】
上記ポリオキシアルキレンポリオール、触媒、含窒素活性水素化合物、並びに目的に応じて1価のアルコールを用いて、アミノ化反応を行う。反応条件は特に限定されるものではないが、一般には、反応温度60〜280℃、好ましくは130〜250℃、反応圧力は490〜14,700kPa(5〜150kgf/cm2 )、とりわけ2940〜9,800kPa(30〜100kgf/cm2 )、反応時間は1〜20時間、望ましくは5〜10時間の条件で実施する。反応系内に水素を共存させても構わない。60℃より低い反応温度は、反応時間を長くし、280℃より高い反応温度は、生成物を熱劣化させる。
反応終了後は、未反応含窒素活性水素化合物、及び、1価アルコールを共存させた場合はアルコールの減圧処理による回収、触媒濾別、水洗、乾燥等の方法を適宜組み合わせることにより、目的物であるポリオキシアルキレンポリアミンを得ることができる。
【0108】
次に(j)の方法について説明する。
水酸基と反応可能な官能基、及びシアノ基又はニトロ基を有する化合物としては、エチレン性不飽和基、エステル基、カルボキシル基、ハロゲン置換基等を有するシアノ化合物又はニトロ化合物が挙げられる。具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα、β−不飽和ニトリル、p−ニトロ安息香酸メチル、p−ニトロ安息香酸エチル等のニトロ安息香酸エステル、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸等のニトロ安息香酸、o−クロロベンゾニトリル、p−クロロベンゾニトリル等のハロゲン置換ベンゾニトリル、o−シアノベンジルクロライド、p−シアノベンジルクロライド等のシアノベンジルハライド、p−ニトロクロロベンゼン、p−ニトロブロモベンゼン等のニトロハロベンゼン、p−ニトロベンジルクロライド、p−ニトロベンジルブロマイド等のニトロベンジルハライド等が挙げられる。
【0109】
通常、α、β−不飽和ニトリルを用いた場合には、アルカリ金属水酸化物と水の存在下にポリオキシアルキレンポリオールをシアノアルキル化し、ポリオキシアルキレンポリオールの末端にシアノ基を導入する。ポリオキシアルキレンポリオール中の残存ホスファゼニウム化合物の濃度が高い場合には、アルカリ金属水酸化物を用いなくてよいが、一般的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物を用いて反応時間の短縮を図る。α、β−不飽和ニトリルの重合反応を抑えてポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基と反応させるためには、水の存在下に反応を行うことが重要である。
目的とするシアノアルキル化反応を進行させるため、ポリオキシアルキレンポリオール、α、β−不飽和ニトリル、目的に応じて用いたアルカリ金属水酸化物、及び水の量を適宜選択する。通常、ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対し、水は2〜15重量部を使用する。アルカリ金属水酸化物を用いた場合には、ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して0.01〜7.0重量部使用する。α、β−不飽和ニトリルはポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1当量に対し、0.2〜5当量が使用される。又、α、β−不飽和ニトリルは、反応の進行状況に応じて適宜加えてもよいし、一括装入してもよい。反応条件は特に限定されるものではないが、通常、反応温度は10〜130℃、反応時間は5〜20時間で行う。反応終了後はアルカリ金属水酸化物触媒を酸で中和し、脱水する方法等によりシアノアルキル化したポリオキシアルキレンポリオールを得る。
【0110】
ニトロ安息香酸エステル、ニトロ安息香酸を用いた場合は、通常、塩基性触媒又は酸触媒の存在下にポリオキシアルキレンポリオールとエステル交換反応、あるいは直接エステル化反応を行うことにより、ポリオキシアルキレンポリオールの末端にニトロ基を導入する。ポリオキシアルキレンポリオール中の残存ホスファゼニウム化合物の濃度が高い場合には、塩基性触媒又は酸触媒を用いなくてもよいが、一般的には、下記に例示した塩基性触媒又は酸触媒を用いる。
塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルパルミチルアミン等の3級アミン化合物等が挙げられる。酸触媒としては、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸等のプロトン酸、三フッ化ホウ素エーテラート等のルイス酸が挙げられる。ニトロ安息香酸エステル、ニトロ安息香酸は通常、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1当量に対し、0.2〜20当量使用される。
【0111】
塩基性触媒又は酸触媒を使用した場合には、その使用量はニトロ安息香酸エステル1当量に対し、0.002〜0.5当量、ニトロ安息香酸1当量に対し、0.0001〜0.5当量が使用される。反応条件は特に限定されるものではないが、通常、反応温度は50〜250℃、反応時間は1〜20時間の条件で行う。反応圧力は減圧下でもよいし加圧下でもよい。又、反応系内に溶媒を存在させても構わない。溶媒としては、上記反応を阻害せず、かつ水と共沸混合物を形成するものであれば良く、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等が 挙げられる。反応終了後は触媒の中和、未反応ニトロ安息香酸エステル又はニトロ安息香酸の回収、水洗、乾燥等の方法を適宜組み合わせることにより、目的物であるニトロベンゾエート化したポリオキシアルキレンポリオールを得る。
【0112】
ハロゲン置換ベンゾニトリル、シアノベンジルハライド、ニトロハロベンゼン、ニトロハロベンジル(以下、芳香族シアノ化合物、又は芳香族ニトロ化合物と総称する)を用いた場合は、ハロゲン化水素捕捉剤としての塩基性触媒の存在下に、ポリオキシアルキレンポリオールと脱ハロゲン化水素反応することにより、ポリオキシアルキレンポリオールの分子末端にシアノ基又はニトロ基を導入する。ポリオキシアルキレンポリオール中の残存ホスファゼニウム化合物の濃度が高い場合には、塩基性触媒を用いなくともよいが、一般的には、下記に例示した塩基性触媒を用いる。
【0113】
塩基性触媒としては、金属ナトリウム、金属カリウム、金属ルビジウム及び金属セシウム等のアルカリ金属類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルパルミチルアミン等の3級アミン化合物等が挙げられる。芳香族シアノ化合物、又は芳香族ニトロ化合物の使用量は、用途に応じて決められるが、通常、水酸基1当量に対して0.2〜20当量が使用される。塩基性触媒を用いる場合は、通常、芳香族シアノ化合物、又は芳香族ニトロ化合物1当量に対し1〜10当量が使用される。
【0114】
反応条件は特に限定されるものではないが、通常、反応温度は50〜250℃、反応時間は1〜20時間の条件で行う。反応圧力は減圧下でもよいし加圧下でもよい。又、反応系内に溶媒を存在させても構わない。溶媒としては、上記反応を阻害することのない極性溶媒が特に好適であり、具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルフォラン等が挙げられる。反応終了後は塩基性触媒の中和、未反応芳香族シアノ化合物、又は芳香族ニトロ化合物の回収、水洗、乾燥等の方法を適宜組み合わせることにより、目的物である分子末端にシアノ基及びニトロ基を少なくとも1種有する化合物を得る。
【0115】
以上述べた方法により、触媒の存在下、分子末端にシアノ基又はニトロ基を少なくとも1種有する化合物に水添反応を行い、ポリオキシアルキレンポリアミンを得る。触媒としては、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、Ni、Co等をケイソウ土、シリカ、アルミナのような担体に担持させた担持型触媒、Ni、Co系ラネー型触媒、Pd、Pt、Ru等の貴金属をカーボン、アルミナ、シリカのような担体に担持させた担持型触媒が挙げられる。中でも担持型触媒は特に好適な触媒の一つである。
【0116】
通常、前述した分子末端にシアノ基又はニトロ基を少なくとも1種有する化合物に対し、触媒は0.1〜20重量%が使用される。反応条件は特に限定されるものではないが、一般には反応温度30〜200℃、好ましくは50〜150℃、反応圧力は98〜8,820kPa(1〜90kgf/cm2 )、好ましくは980〜4,900kPa(10〜50kgf/cm2 )、反応時間は1〜20時間、好ましくは5〜10時間の条件である。
反応系内に溶媒を存在させても構わない。溶媒としては、上記反応を阻害しないもの、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール類や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が例示できる。又、反応系内にアンモニアを存在させても構わない。反応終了後は、触媒濾別、水洗、乾燥等の方法を適宜組み合わせることにより、目的物であるポリオキシアルキレンポリアミンを得ることができる。
【0117】
ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基の一部、又は全部をアミノ化してポリオキシアルキレンポリアミンを製造する方法は、上記(i)、(j)以外の方法も可能である。例えば、ポリオキシアルキレンポリオールとアミノ安息香酸エステルとのエステル交換反応による方法、ポリオキシアルキレンポリオールとp−ニトロ安息香酸クロライドとをハロゲン化水素捕捉剤存在下に反応させ、次いでニトロ基を還元する方法、ポリオキシアルキレンポリオールとイサト酸無水物とを強塩基の存在下に反応させる方法、ポリイソシアネート化合物とプレポリマー化した後に残存イソシアネート基をアミノ基に加水分解する方法等である。
【0118】
次に、ポリウレタンウレア樹脂について説明する。ポリウレタンウレア樹脂は、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール、鎖延長剤、及びポリイソシアネート化合物を急速混合して製造する。
ポリウレタンウレア樹脂の原料として用いられるポリオールは、前述したポリオキシアルキレンポリアミンを少なくとも2重量%含むポリオール、好ましくは、そのポリオキシアルキレンポリアミンを少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%含むポリオールである。ポリオール中のポリオキシアルキレンポリアミンの含有量が2重量%より少ないと、ポリウレタンウレア樹脂の表面状態及び機械的性質の改質効果が見られない。
【0119】
本発明で使用するポリオキシアルキレンポリアミン以外のポリオールとしては、本発明でポリオキシアルキレンポリアミンの出発物質として用いるポリオキシアルキレンポリオール、従来公知の方法で製造されたポリオキシアルキレンポリオール、ポリオキシアルキレンポリアミン、ポリマー分散ポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエン系ポリオール及びポリカーボネート系ポリオール等が挙げられる。然しながら、強く推奨されるものは、本発明でポリオキシアルキレンポリアミンの出発物質として用いるポリオキシアルキレンポリオールである。
【0120】
ポリウレタンウレア樹脂を製造する際のポリイソシアネート化合物は、上記したイソシアネート基末端プレポリマーの項で述べたものと同様である。
鎖延長剤とは、イソシアネート基と反応できる活性水素基を1分子中に2個以上有する化合物であり、分子量800以下のポリオール化合物とポリアミン化合物のうち少なくとも1種類が用いられる。具体的な化合物は、上記したイソシアネート基末端プレポリマーの項で記載したものが良い。
鎖延長剤は、ポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオールに対して、通常、1〜50重量%を使用する。又、ポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール及び鎖延長剤中の活性水素基濃度に対するイソシアネート基濃度の比であるイソシアネートインデックス(NCOインデックス)は0.7〜20である。
【0121】
通常、ポリウレタンウレア樹脂は、上記したポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール及び鎖延長剤を混合した液を調製し、得られた混合液とポリイソシアネート化合物を急速混合した後、例えば40〜130℃に加熱した型に注入して製造される。硬化用触媒、充填剤、可塑剤、補強剤、難燃剤、安定剤、内部離型剤、発泡剤、整泡剤などを目的に応じて使用することができる。硬化用触媒、充填剤、可塑剤、補強剤、難燃剤、及び安定剤は、上記のイソシアネート基末端プレポリマーの項で記載したものが好ましい。
本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール100重量部に対する硬化用触媒の使用量は0.001〜5.0重量部、好ましくは0.01〜1.0重量部であり、充填剤の添加量は0.01〜40重量部、好ましくは0.1〜10重量部、可塑剤の添加量は、0.1〜40重量部、好ましくは5〜15重量部、補強剤の添加量は、1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部、難燃剤の使用量は、0.1〜30重量部、好ましくは0.2〜20重量部である。
【0122】
安定剤としては酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤が挙げられる。これらの添加量は、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール100重量部に対して、各々200〜5,000ppmが好ましい。
内部離型剤としては、ステアリン酸亜鉛、ポリオレフィン系ワックス、あるいは特表昭60−500418号公報に例示されている化合物が好適である。内部離型剤の使用量は、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。
【0123】
発泡剤は、水、低沸点炭化水素系化合物、ハイドロクロロフルオロカーボン(以下、HCFCと言う)類又はハイドロフルオロカーボン(以下、HFCと言う)類の少なくとも1種類の化合物が用いられる。低沸点炭化水素系化合物としては、シクロペンタン、n−ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。HCFC類としては、HCFC−141bが、HFC類ではHFC−134a、HFC−356あるいはHFC−245fa等が挙げられる。発泡剤として、水単独を用いる場合には、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール100重量部に対して、0.1〜9重量部使用する。低沸点炭化水素系化合物、HCFC類又はHFC類から選ばれる少なくとも1種の発泡剤を用いる場合には、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール100重量部に対して、1〜40重量部用いる。これらの発泡剤と水を併用しても構わない。
【0124】
整泡剤は、従来公知の有機珪素系界面活性剤を用いることができる。例えば、日本ユニカー社製の商品名:L−520、L−532、L−540、L−544、L−550、L−3600、L−3601、L−5305、L−5307、L−5309等、東レ・ダウコーニング社製の商品名:SRX−253、SRX−274C、SF−2961、SF−2962等、信越シリコーン社製の商品名:F−114、F−121、F−122、F−220、F−230、F−258、F−260B、F−317、F−341、F−601、F−606等、東芝シリコーン社製の商品名:TFA−420、TFA−4202等が挙げられる。これらの整泡剤は任意に混合して用いることもできる。その使用量は、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを含むポリオール100重量部に対して、0.05〜10重量部である。
【0125】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明の態様を明らかにする。
実施例1〜11及び比較例1〜10に示したポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価、総不飽和度、及び、粘度、H−T結合選択率、ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物触媒の残存量(単位:ppm)は、下記方法により測定した。
(1)ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(以下、OHVと言う。単位:mgKOH/g)、総不飽和度(以下、C=Cと言う。単位:meq./g)、及び、粘度(以下、ηと表す。単位:mPa・s/25℃)
JIS K−1557に記載の方法により求めた。
(2)H−T結合選択率
日本電子製400MHz13C核磁気共鳴(NMR)装置を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として、ポリオキシアルキレンポリオールの13C−NMRスペクトルをとり、ヘッド−トウ−テイル(Head−to−Tail)結合のオキシプロピレンユニットのメチル基のシグナル(16.9〜17.4ppm)とヘッド−トウ−ヘッド(Head−to−Head)結合のオキシプロピレンユニットのメチル基のシグナル(17.7〜18.5ppm)の比から求めた。
【0126】
各シグナルの帰属は、Macromolecules、第19巻、1337−1343頁(1986年)、F.C.Schilling、A.E.Tonelliの報文に記載された値を参考にした。
(3)ポリオキシアルキレンポリオールの分子量分布の指標値W20/W80
ポリオキシアルキレンポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の溶出曲線から求める。
GPCの測定条件は、以下の通りであった。
・測定及び解析装置:島津製作所(株)製、LC−6Aシステム
・検出器 :島津製作所(株)製、RID−6A示差屈折計
・分離カラム:昭和電工(株)製、Shodex GPC KFシリーズ
KF−801、802、802.5、803の4本直列
・溶離液 :液体クロマトグラム用テトラヒドロフラン
・液流量 :0.8ml/min
・カラム温度:40℃
(4)ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物触媒の残存量(単位:ppm)
Waters社製、全自動CIAシステムを用いたキャピラリー電気泳動法により行った。試料に塩酸水溶液を添加し、シェーカー(東京理化機器(株)製、形式:EYELA SHAKER)にて塩酸水溶液中にホスファゼニウム化合物の抽出を行う。その後、静置分液を行い、水相を分離し、キャピラリー電気泳動分析装置を用いて、ホスファゼニウムカチオンの定量を行った。
【0127】
ホスファゼニウム化合物触媒
ポリオキシアルキレンポリオールの合成において、以下のホスファゼニウム化合物をアルキレンオキサイドの触媒として使用した。
(1)ホスファゼニウム化合物a(以下、P5NMe2C1と言う)
Fluka社製のテトラキス〔トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ〕ホスホニウムクロライド{〔(Me2 N)3 P=N〕4 P+ Cl- }。そのホスファゼニウム化合物は、化学式(1)において、a、b、c、dの順に(1,1,1,1)で、Rがメチル基であり、rが1の塩素アニオンである(T- =Cl- )。
(2)ホスファゼニウム化合物b(以下、P5NMe2OHと言う)
Fluka社製のテトラキス〔トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ〕ホスホニウムクロライド{〔(Me2 N)3 P=N〕4 P+ Cl- }を超純水により、2.5重量%水溶液に調製した。次いで、1N水酸化ナトリウム水溶液により、交換基を水酸基型にしたイオン交換樹脂(バイエル社製、商品名:レバチットMP−500)を充填したポリカーボネート製円筒状カラムに、テトラキス〔トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ〕ホスホニウムクロライドの2.5重量%水溶液を23℃、SV(Space Velocity)0.5(1/hr)でカラム底部より上昇流で通液し、テトラキス〔トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ〕ホスホニウムヒドロキシドにイオン交換を行った。
【0128】
更に、そのイオン交換樹脂を充填したカラムに超純水を通液し、カラムに残存しているホスファゼニウム化合物の回収を行った。その後、テトラキス〔トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ〕ホスホニウムヒドロキシドの水溶液を80℃、圧力7,980Pa(60mmHgabs.)の条件下で2時間、更に80℃、133Pa(1mmHgabs.)の条件で7時間、減圧脱水処理を行うことにより、粉末のテトラキス〔トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ〕ホスホニウムヒドロキシド{〔(Me2 N)3 P=N〕4 P+ OH- }を得た。
乾燥後のその化合物の重量測定から求めた収率は98%であった。重水素化ジメチルホルムアミド溶液によるテトラメチルシランを内部標準とした 1H−NMR(日本電子製400MHzNMR)の化学シフトは、2.6ppm(d,J=9.9Hz、72H)であった。元素分析値は、C:38.28、H:9.82、N:29.43、P:19.94(理論値、C:38.09、H:9.72、N:29.61、P:20.46)であった。そのホスファゼニウム化合物は化学式(2)において、a、b、c、dの順に(1,1,1,1)で、Rがメチル基であり、QはOHのヒドロキシアニオンである。
【0129】
更に、活性水素化合物のアルカリ金属塩を導くために、アルカリ金属として、和光純薬製の水酸化カリウム、及びケメタル社の50重量%の水酸化セシウム水溶液を使用した。水酸化カリウムの使用に際しては、イオン交換水を希釈剤として50重量%の水溶液の形態で用いた。以降、水酸化カリウムをKOHと、水酸化セシウムをCsOHと言う。
以下に、ポリオキシアルキレンポリオールの合成結果について詳述する。ポリオキシアルキレンポリオールの合成装置は、攪拌機、温度計、圧力計、窒素装入口及びモノマーであるアルキレンオキサイド装入口を装着した内容積2.5Lの耐圧製オートクレーブ(日東高圧製)を使用した(以下、その合成装置をオートクレーブと言う)。
【0130】
実施例1
ポリオキシアルキレンポリオールA
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコに、グリセリン1モルに対して0.013モルのKOH(50重量%水溶液)を加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら、110℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で、4時間減圧脱水を行い、グリセリンのカリウム塩を調製した(以降、Gly−Kと言う)。
その後、Gly−Kを調製するために仕込んだグリセリン1モルに対して0.012モルのP5NMe2Clを加え、窒素雰囲気下、105℃で2時間攪拌した後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った。ろ過後の化合物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、反応温度70〜85℃で、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件で、OHVが27.8mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。
【0131】
引き続き、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)まで加圧し、反応温度105℃、反応時の最大圧力が5kgf/cm2 (490kPa)の条件でOHVが24.0mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、40分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、10重量部のイオン交換水、及び粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して、4モルのリン酸を75.1重量%の水溶液の形態で装入し、90℃で2時間中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、800ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が400mmHgabs.(53kPa)の状態で吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名:KW−700)を5,000ppm、吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を3,000ppm加えた。更に、減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。
【0132】
その後、ケイソウ土ろ過助剤(昭和化学工業製、商品名:R−#500)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して2重量部加え、105℃、20分間攪拌、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙より減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。
ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは24.1mgKOH/g、C=C0.013meq./g、粘度(η)1220mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.4モル%、W20/W80は2.68であり、触媒残存量は22ppmであった。
【0133】
実施例2
ポリオキシアルキレンポリオールB
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにジプロピレングリコール1モルに対して0.009モルのKOH(50重量%水溶液)を加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら103℃、11mmHgabs.(1,463Pa)、の条件で5時間減圧脱水を行い、ジプロピレングリコールのカリウム塩を調製した(以降、DPG−Kと言う)。その後、DPG−Kを調製するために仕込んだジプロピレングリコール1モルに対して、0.008モルのP5NMe2Clを加え、窒素雰囲気下、100℃、2時間攪拌した後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った。
【0134】
ろ過後の化合物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、反応温度75〜78℃で、20mmHgabs.(2,660Pa)の減圧状態から反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが37.3mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、40分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、10重量部のイオン交換水、及び、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して、2.5モルのリン酸を75.1重量%の水溶液の形態で装入し、80℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して600ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が400mmHgabs.(53kPa)の状態で吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名:KW−700)を15,000ppm、吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を7,000ppm加えた。更に減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間の同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは37.4mgKOH/g、C=C0.009meq./g、粘度(η)510mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.6モル%、W20/W80は2.65であり、触媒残存量は30ppmであった。
【0135】
実施例3
ポリオキシアルキレンポリオールC
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.018モルのKOH(50重量%水溶液)を加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら110℃、8mmHgabs.(1064Pa)以下、4時間の条件で減圧脱水を行い、グリセリンのカリウム塩を調製した(以降、Gly−Kと言う)。その後、Gly−Kを調製するために仕込んだグリセリン1モルに対して0.016モルのP5NMe2Clを加え、窒素雰囲気下、105℃、1時間攪拌した後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った。
【0136】
ろ過後の化合物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度を28℃とし、ポリオキシアルキレンポリオールのOHVを31.5mgKOH/gに調製するのに必要なプロピレンオキサイド量の5重量%を一括で仕込んだ。反応時の最大圧力が8kgf/cm2 (784kPa)を超えないように反応温度を徐々に上げていった。反応温度が78℃の条件でオートクレーブの内圧の変化が無くなった時点に、同温度条件でOHVが31.5mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。引き続き、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)まで加圧し、反応温度115℃、反応時の最大圧力が5kgf/cm2 (490kPa)の条件でOHV27.6mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5m mHgabs.(665Pa)、40分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0137】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、4重量部のイオン交換水を加え、次いで、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して、2.02モルのシュウ酸を8.5重量%の水溶液の形態で装入し、70℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1500ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が400mmHgabs.(53kPa)の状態で吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名:KW−700)を1,000ppm、吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を12,000ppm加えた。更に減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは27.5mgKOH/g、C=C0.011meq./g、粘度(η)1090mPa・s/25℃、H−T結合選択率95.9モル%、W20/W80は2.61であり、触媒残存量は83ppmであった。
【0138】
実施例4
ポリオキシアルキレンポリオールD
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.15モルのCsOH(50重量%水溶液)を加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、8mmHgabs.(1064Pa)以下、5時間の条件で減圧脱水を行い、グリセリンのセシウム塩を調製した(以降、Gly−Csと言う)。その後、Gly−Csを調製するために仕込んだグリセリン1モルに対して0.12モルのP5NMe2Clを加え、窒素雰囲気下、25℃、1時間攪拌した後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った。
【0139】
ろ過後の化合物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、大気圧状態から反応温度を88℃とし、反応時の最大圧力が3.5k gf/cm2 (343kPa)の条件でOHV38.5mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。引き続き、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)に調整し、反応温度120℃、反応時の最大圧力が5kgf/cm2 (490kPa)の条件でOHV33.2mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、30分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0140】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して10重量部のイオン交換水と5重量部のn−ヘキサン(和光純薬(株)製試薬特級;以降、ヘキサンと言う。)を加え、次いで粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して4モルのリン酸を75.1重量%の水溶液の形態で装入し、65℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後にt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1,500ppm添加し、減圧下で脱水、脱ヘキサンを行い、オートクレーブ内の圧力が500mmHgabs.(67kPa)の状態で吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を10,000ppm加えた。更に減圧下で脱水、脱ヘキサンを行いながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは 33.1mgKOH/g、C=C0.018meq./g、粘度(η )850mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.5モル%、W20/W80は2.71であり、触媒残存量は29ppmであった。
【0141】
実施例5
ポリオキシアルキレンポリオールE
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.012モルのP5NMe2OHと0.03モルのトルエン(和光純薬製試薬特級)を加え、窒素をキャピラリー管で導入し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下、4時間の減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、大気圧状態から反応温度を80℃とし、反応時の最大圧力が4.0kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28.0mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。
【0142】
引き続き、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)に調整し、反応温度100℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV24.1mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、30分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0143】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して10重量部のイオン交換水を加え、次いで粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して2.5モルのリン酸を75.1重量%の水溶液の形態で装入し、85℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1,000ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が500mmHgabs.(67kPa)の状態で吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を15,000ppm加えた。更に、減圧下で脱水を行いながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。
【0144】
ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは24.1mgKOH/g、C=C0.015meq./g、粘度(η)1150mPa・s/25℃、H−T結合選択率95.9モル%、W20/W80は2.63であり、触媒残存量は19ppmであった。
【0145】
実施例6
ポリオキシアルキレンポリオールF
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにジプロピレングリコール1モルに対して0.016モルのP5NMe2OHと0.02モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら103℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度75〜78℃で、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが28.2mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、40分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0146】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して150重量部のイオン交換水、及び希塩酸水溶液で水素イオン型に交換したイオン交換樹脂(バイエル社製、商品名:レバチットS−100BG)を30重量部加え、窒素雰囲気下、60℃で4時間攪拌した。次いで、アドバンテック東洋株式会社製の5Bろ紙により減圧ろ過を行い、イオン交換樹脂を除去した後、再度水を含んだポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、イオン交換水90重量部、水素イオン型に交換したバイエル社製レバチットS−100BGを20重量部加え、前述した操作を行った。ろ過により、イオン交換樹脂を除去し、水を含んだポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対してBHTを700ppm添加した。105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間減圧脱水を行い、ポリオキシアルキレンポリオール中の水分を留去した。更に、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った(イオン交換処理法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは28.3mgKOH/g、C=C0.010meq./g、粘度(η)710mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.0モル%、W20/W80は2.62であり、触媒残存量は12ppmであった。
【0147】
実施例7
ポリオキシアルキレンポリオールG
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにジプロピレングリコール1モルに対して0.020モルのP5NMe2OHと0.04モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度70℃で、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが32mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。その後、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)に調整し、反応温度70℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。更に、オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、20分間減圧処理を行った後、大気圧状態から反応温度70℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが18.4mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0148】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して12重量部のイオン交換水を加え、次いで、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して、2.3モルのシュウ酸を8.5重量%の水溶液の形態で装入し、80℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1500ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が100mmHgabs.(13kPa)の状態で吸着剤であるAD−600NS(富田製薬(株)製)を5,000ppm加えた。更に減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙(保持粒径1μ)により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは18.5mgKOH/g、C=C0.022meq./g、粘度(η)1100mPa・s/25℃、H−T結合選択率97.0モル%、W20/W80は2.52であり、触媒残存量は82ppmであった。
【0149】
実施例8
ポリオキシアルキレンポリオールH
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにエチレングリコール1モルに対して0.08モルのP5NMe2OHと0.09モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら95℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度60〜78℃で、反応時の最大圧力が5.5kgf/cm2 (539kPa)の条件でOHVが9.8mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの多段付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、50分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0150】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して150重量部のイオン交換水及び30重量部のn−ヘキサン(和光純薬(株)製試薬特級;以降、ヘキサンと言う)を加え、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業製、モデル;HV−M型)を使用して、70℃で1時間攪拌した。その後、70℃で10時間静置し、分液を行った。その後、水相を取り除き、更に仕込んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して100重量部のイオン交換水を添加し、前述した操作を2回繰り返した。水分、ヘキサンを含んだポリオキシアルキレンポリオールを105℃、40mmHgabs.(5300Pa)の条件で2時間減圧処理を行った後、酸化防止剤であるBHTを粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して700ppm加え、更に105℃、5mmHgabs.(665Pa)、3時間減圧処理を行った。窒素により大気圧状態に戻し、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った(水洗処理法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは9.8mgKOH/g、C=C0.058meq./g、粘度(η)4150mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.1モル%、は2.78であり、触媒残存量は8ppmであった。
【0151】
実施例9
ポリオキシアルキレンポリオールI
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.012モルのP5NMe2OHと0.5モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下、3時間の減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、大気圧状態から反応温度を80℃とし、反応時の最大圧力が4.0kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV168.3mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。更に、P5NMe2OHのプロピレンオキサイドの重合活性を調べる目的で、P5NMe2OHを含んだOHV168.3mgKOH/gの粗製ポリオキシアルキレンポリオールを重合開始剤とし、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28.0mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、30分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0152】
P5NMe2OHによるプロピレンオキサイドの重合活性は以下の手順で求めた。プロピレンオキサイド重合前に重合開始剤中に存在しているP5NMe2OHのモル数を求める(以降、この値をaモルと言う)。次に、目標のOHVになるまで反応させたプロピレンオキサイドの量(以降、この値をbgと言う)、及び反応時間(以降、この値をc分(min.)と言う)を求める。bgをaモル並びにcmin.で割った値をプロピレンオキサイドの重合活性(単位;g/mol・min.)とする。このようにして求めたP5NMe2OHによるプロピレンオキサイド重合活性は、490g/mol・min.であった。但し、この時のプロピレンオキサイド反応条件は上述した反応条件である(反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa))。プロピレンオキサイド重合活性を求めた後、ポリオキシアルキレンポリオール中からホスファゼニウム化合物の除去操作を行った。
【0153】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して100重量部のイオン交換水、及び希塩酸水溶液で水素イオン型に交換したイオン交換樹脂(バイエル社製、商品名:レバチットS−100BG)を30重量部加え、窒素雰囲気下、60℃で4時間攪拌した。次いで、アドバンテック東洋株式会社製の5Bろ紙により減圧ろ過を行い、イオン交換樹脂を除去した後、再度水を含んだポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、イオン交換水90重量部、水素イオン型に交換したバイエル社製レバチットS−100BGを20重量部加え、前述した操作を行った。ろ過により、イオン交換樹脂を除去し、水を含んだポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対してBHTを700ppm添加した。105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間減圧脱水を行い、ポリオキシアルキレンポリオール中の水分を留去した。更に、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った(イオン交換処理法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは28.0mgKOH/g、C=C0.020meq./g、粘度(η)1,000mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.4モル%、W20/W80は2.58であり、触媒残存量は12ppmであった。
【0154】
実施例10
ポリオキシアルキレンポリオールJ
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにジプロピレングリコール1モルに対して0.08モルのP5NMe2OH、0.12モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら100℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度75〜82℃で、反応時の最大圧力が4.8kgf/cm2 (470kPa)の条件でOHVが14.2mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの多段付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、50分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0155】
ホスファゼニウム化合物を含んだ状態の粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して100重量部のイオン交換水を加え、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業製、モデル:HV−M型)にて80℃で1時間攪拌した。その後、80℃で10時間静置し、分液を行った。その後、水相を取り除き、さらに仕込んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して100重量部のイオン交換水を添加し、前述した操作を2回繰り返した。水分を含んだポリオキシアルキレンポリオールを105℃、40mmHgabs.(5300Pa)の条件で2時間減圧脱水を行った後、酸化防止剤であるBHTを粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して700ppm加え、さらに105℃、5mmHgabs.(665Pa)、3時間減圧脱水を行った。窒素により大気圧状態に戻し、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った(水洗処理法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは14.2mgKOH/g、C=C0.043meq./g、粘度(η)2180mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.8モル%、W20/W80は2.72であり、触媒残存量は13ppmであった。
【0156】
実施例11
ポリオキシアルキレンポリオールK
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコに、グリセリン1モルに対して、0.012モルのP5NMe2OH、及び0.4モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下、4時間の減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度を80℃とし、反応時の最大圧力が4.0kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV18.5mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの多段付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、50分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0157】
ホスファゼニウム化合物を含んだ状態の粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して150重量部のイオン交換水を加え、特殊機化工業製のT.K.ホモミキサー(モデルHV−M型)にて室温で1時間攪拌した。その後、60℃で10時間静置し、分液を行った。その後、水相を取り除き、さらに仕込んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して100重量部のイオン交換水を添加し、前述した操作を2回繰り返した。水分を含んだポリオキシアルキレンポリオールを105℃、40mmHgabs.(5,300Pa)の条件で2時間減圧処理を行った後、酸化防止剤であるBHTを粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して700ppm加え、さらに105℃、5mmHgabs.(665Pa)、3時間減圧処理を行った。窒素により大気圧状態に戻し、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った(水洗処理法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは18.7mgKOH/g、C=C0.027meq./g、粘度(η)2450mPa・s/25℃、H−T結合選択率95.9モル%、W20/W80は2.62であり、触媒残存量は16ppmであった。
【0158】
以下、比較例について詳述する。比較例として用いたポリオキシアルキレンポリオール合成用触媒は、先に述べたケメタル社の50重量%の水酸化セシウム(以降、CsOHと言う)水溶液とUSP5,144,093(カラム4、52行〜カラム5、4行目)に記載されているDMC(Zn3 〔Co(CN)6 〕2 ・2.48DME・4.65H2 O・0.94ZnCl2 ;以降、DMCと言う。DMEとはジメトキシエタンの略号である)を使用した。DMCを触媒として得られたポリオキシプロピレンポリオールにエチレンオキサイド付加重合を行う際のアルカリ金属触媒として、和光純薬(株)製の30重量%のカリウムメチラート(以降、KOMeと言う)のメタノール溶液を用いた。
【0159】
比較例1
ポリオキシアルキレンポリオールAA
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.48モルのCsOHの50重量%水溶液を加え、105℃、10mmHgabs.(1, 330Pa)以下、4時間の条件で減圧脱水後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った。大気圧状態から反応温度を80℃とし、反応時の最大圧力が4.0kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV168.3mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。さらに、CsOHのプロピレンオキサイドの重合活性を調べる目的で、CsOHを含んだOHV168.3mgKOH/gの粗製ポリオキシアルキレンポリオールを重合開始剤とし、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28.0mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、30分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0160】
CsOHのプロピレンオキサイドの重合活性は以下の手順で求めた。プロピレンオキサイド重合前に重合開始剤中に存在しているCsOHのモル数を求める(以降、この値をaモルと言う)。次に、目標のOHVになるまで反応させたプロピレンオキサイドの量(以降、この値をbgと言う。)、および反応時間(以降、この値をc分(min.)と略する。)を求める。bgをaモルならびにcmin.で割った値をプロピレンオキサイドの重合活性(単位;g/mol・min.)とする。このようにして求めたCsOHによるプロピレンオキサイド重合活性は、8.7g/mol・min.であった。但し、この時のプロピレンオキサイド反応条件は上述した条件であり、先に述べたP5NMe2OHを用いた場合と同じ反応条件である(反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa))。プロピレンオキサイド重合活性を求めた後、ポリオキシアルキレンポリオール中からセシウムの除去操作を行った。
【0161】
セシウムを含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して希塩酸水溶液で水素イオン型に交換したイオン交換樹脂(バイエル社製、商品名:レバチットS−100BG)を30重量部およびイオン交換水を80重量部加え、窒素雰囲気下、60℃で6時間攪拌した。次いで、アドバンテック東洋株式会社製の5Bろ紙により減圧ろ過を行い、イオン交換樹脂を除去した後、再度、水を含んだポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、イオン交換水を50重量部、水素イオン型に交換したバイエル社製レバチットS−100BGを20重量部加え、上述した操作を行った。ろ過により、イオン交換樹脂を除去し、水を含んだポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対してBHTを500ppm添加し、105℃、10mmHgabs.(1, 330Pa)以下の条件で3時間減圧脱水を行い、ポリオキシアルキレンポリオール中の水分を留去した。さらに、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行った(イオン交換処理法)。セシウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは28.0mgKOH/g、C=Cは0.057meq./g、粘度(η)1150mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.5モル%、W20/W80は2.87であった。
【0162】
比較例2
ポリオキシアルキレンポリオールBB
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.38モルのCsOHの50重量%水溶液を加え、窒素をキャピラリー管で導入し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下、4時間の減圧脱水操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、大気圧状態から反応温度を80℃とし、反応時の最大圧力が4.0kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28.0mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。引き続き、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)に調整し、反応温度100℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV24.1mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、30分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0163】
セシウムを含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して4重量部のイオン交換水を加え、次いで、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のセシウム1モルに対して1.1モルのリン酸を75.1重量%の水溶液の形態で装入し、85℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1000ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が500mmHgabs.(67kPa)の状態で吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を2000ppm加えた。更に減圧下で脱水を行いながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。セシウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは24.1mgKOH/g、C=C0.023meq./g、粘度(η)1560mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.6モル%、W20/W80は2.95であった。
【0164】
比較例3
ポリオキシアルキレンポリオールCC
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.28モルのCsOHの50重量%水溶液を加え、窒素をキャピラリー管で導入し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下、4時間の減圧脱水操作を行った。フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、大気圧状態から反応温度を88℃とし、反応時の最大圧力が3.5kgf/cm2 (343kPa)の条件でOHV38.4mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。引き続き、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)に調整し、反応温度120℃、反応時の最大圧力が5kgf/cm2 (490kPa)の条件でOHV33.2mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、30分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0165】
セシウムを含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して4重量部のイオン交換水と5重量部のn−ヘキサン(和光純薬(株)製試薬特級;以降、ヘキサンと言う)を加え、次いで粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のセシウム1モルに対して1.02モルのリン酸を75.1重量%の水溶液の形態で装入し、65℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1,500ppm添加し、減圧下で脱水、脱ヘキサンを行い、オートクレーブ内の圧力が500mmHgabs.(67kPa)の状態で吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を1,000ppm加えた。更に、減圧下で脱水、脱ヘキサンを行いながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。セシウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは33.2mgKOH/g、C=C0.039meq./g、粘度(η)1000mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.3モル%、W20/W80は2.84であった。
【0166】
比較例4
ポリオキシアルキレンポリオールDD
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにジプロピレングリコール1モルに対して0.28モルのCsOHの50重量%水溶液を加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら103℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度78〜81℃で、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが28.2mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、40分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0167】
セシウムを含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して100重量部のイオン交換水および希塩酸水溶液で水素イオン型に交換したイオン交換樹脂(バイエル社製、商品名:レバチットS−100BG)を30重量部加え、窒素雰囲気下、60℃で4時間攪拌した。次いで、アドバンテック東洋株式会社製の5Bろ紙により減圧ろ過を行い、イオン交換樹脂を除去した後、再度水を含んだポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、イオン交換水90重量部、水素イオン型に交換したバイエル社製レバチットS−100BGを20重量部加え、前述した操作を行った。ろ過により、イオン交換樹脂を除去し、水を含んだポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対してBHTを700ppm添加した。105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間減圧脱水を行い、ポリオキシアルキレンポリオール中の水分を留去した。さらに、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙(保持粒径1μ)により減圧ろ過を行った(イオン交換処理法)。セシウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは28.2mgKOH/g、C=C0.038meq./g、粘度(η)790mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.4モル%、W20/W80は2.85であった。
【0168】
比較例5
ポリオキシアルキレンポリオールEE
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにジプロピレングリコール1モルに対して0.38モルのCsOH(50重量%水溶液)を加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度80℃で、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが32mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。その後、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)に調整し、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。さらに、オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、20分間減圧処理を行った後、大気圧状態から反応温度90℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが18.6mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0169】
セシウムを含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して12重量部のイオン交換水を加え、次いで、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のセシウム1モルに対して1.1モルのシュウ酸を8.5重量%の水溶液の形態で装入し、80℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1,500ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が100mmHgabs.(13kPa)の状態で吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を5,000ppm加えた。更に減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。セシウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは18.6mgKOH/g、C=C0.059meq./g、粘度(η)1580mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.8モル%、W20/W80は2.98であった。
【0170】
比較例6
ポリオキシアルキレンポリオールFF
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレンポリオールMN1000(三井化学(株)製;OHV168mgKOH/g)100重量部に対して0.05重量部のDMC,Zn3 〔Co(CN)6 〕2 ・2.48DME・4.65H2 O・0.94ZnCl2 を添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間の減圧脱水を行った。次いで、オートクレーブに該化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28.1mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。DMCによるプロピレンオキサイドの重合活性は以下の手順により求めた。DMCは錯体構造を形成しているため、詳細なアルキレンオキサイドの重合活性点は不明である。そこで、DMC中の亜鉛原子がその活性サイトであると仮定して、先に述べた方法によりプロピレンオキサイドの重合活性を算出した結果、2100g/mol・min.であった。プロピレンオキサイドの反応条件は先に詳述したP5NMe2OH、CsOHを触媒として重合した場合と全く同じである。
【0171】
次に、粗製ポリオキシアルキレンポリオールからDMCの除去操作を行った。DMCを含有しているポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して3.9重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)で2時間行った。その後、水を5重量部とAD−600NS(富田製薬(株)製)を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、酸化防止剤であるBHTを500ppm添加し、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で2時間減圧脱水を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。DMC除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは28.1mgKOH/g、C=C0.010meq./g、粘度(η)2050mPa・s/25℃、H−T結合選択率89.3モル%、W20/W80は4.56であった。
【0172】
比較例7
ポリオキシアルキレンポリオールGG
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレンポリオールMN1000(三井化学(株)製;OHV168mgKOH/g)100重量部に対して0.05重量部のDMCを添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間の減圧脱水を行った。次いで、オートクレーブに該化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28.0mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。
【0173】
そのポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して2.22重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)で2時間行った。その後、水を3重量部とAD−600NS(富田製薬(株)製)を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、その後、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で2時間減圧脱水を行い、DMCの除去処理を行った。エチレンオキサイドの付加重合を行うため、DMC除去後のポリオキシプロピレンポリオール100重量部に2.5重量部の30重量%のKOMeのメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を100℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間行った。オートクレーブに該化合物を仕込み、窒素置換後、反応温度100℃、反応時の最大圧力が5kgf/cm2 (490kPa)の条件でOHVが24.5mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドを装入し、反応させた。反応後、減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0174】
粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のカリウム1モルに対して1.05モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液)ならびに粗製ポリエーテルポリオール100重量部に対して5重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。その後、酸化防止剤であるBHTを500ppm、及び吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名:KW−700SN)を8,000ppm添加し、減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。カリウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは24.5mgKOH/g、C=C0.019meq./g、粘度(η)2900mPa・s/25℃、H−T結合選択率88.5モル%、W20/W80は4.05であった。
【0175】
比較例8
ポリオキシアルキレンポリオールHH
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレンポリオールMN1000(三井化学(株)製;OHV168mgKOH/g)100重量部に対して0.03重量部のDMCを添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間の減圧脱水を行った。次に、オートクレーブに該化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV38.5mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。該ポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して2.22重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)で2時間行った。その後、水を3重量部と吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で2時間減圧脱水を行い、DMCの除去処理を行った。エチレンオキサイドの付加重合を行うため、DMC除去後のポリオキシプロピレンポリオール100重量部に2.5重量部の30重量%のKOMeのメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を100℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間行った。オートクレーブにその化合物を仕込み、窒素置換後、反応温度100℃、反応時の最大圧力が5kgf/cm2 (490kPa)の条件でOHVが33.2mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドを装入し、反応させた。反応後、減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0176】
粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のカリウム1モルに対して1.05モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液)並びに粗製ポリエーテルポリオール100重量部に対して4重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。その後、酸化防止剤であるBHTを500ppm、及び吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名:KW−700SN)を8,000ppm添加し、減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。カリウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHV)は33.2mgKOH/g、C=C0.012meq./g、粘度(η)1,800mPa・s/25℃、H−T結合選択率87.6モル%、W20/W80は4.31であった。
【0177】
比較例9
ポリオキシアルキレンポリオールII
プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレンポリオールDiol400(三井化学(株)製)100重量部に対して0.03重量部のDMCを添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間の減圧脱水を行った。次に、オートクレーブにその化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28.5mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。
【0178】
そのポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して2.8重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)で2時間行った。その後、水を3重量部とAD−600NS(富田製薬(株)製)を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で2時間減圧脱水を行い、DMCの除去処理を行った。
【0179】
粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のカリウム1モルに対して1.5モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液)並びに粗製ポリエーテルポリオール100重量部に対して25重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。その後、酸化防止剤であるBHTを500ppm加え、減圧脱水を行った。105℃、300mmHgabs.(40kPa)の条件下で、吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名:KW−700SN)を8,000ppm添加し、更に減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。カリウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは28.5mgKOH/g、C=C0.013meq./g、粘度(η)1520mPa・s/25℃、H−T結合選択率85.4モル%、W20/W80は4.60であった。
【0180】
比較例10
ポリオキシアルキレンポリオールJJ
エチレングリコールに水酸化カリウムを触媒としてプロピレンオキサイドを従来の方法により付加重合したポリオキシプロピレンポリオール(以降、EG400と言う。;OHV280mgKOH/g)100重量部に対して0.03重量部のDMCを添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間の減圧脱水を行った。次に、オートクレーブにその化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV32.0mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。
【0181】
そのポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して2.9重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)で2時間行った。その後、水を3重量部と吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS)を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で2時間減圧脱水を行い、DMCの除去処理を行った。エチレンオキサイドの付加重合を行うため、DMC除去後のポリオキシプロピレンポリオール100重量部に2.5重量部の30重量%のKOMeのメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を100℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間行った。オートクレーブにその化合物を仕込み、窒素置換後、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが28.0mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドを装入し、反応させた。反応後、減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0182】
更に、DMCを用いてプロピレンオキサイドの付加重合を行うため、ポリオキシアルキレンポリオール中からのカリウムの除去を行った。粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のカリウム1モルに対して1.2モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液)並びに粗製ポリオキシエルキレンポリオール100重量部に対して4重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名;KW−700SN)を8,000ppm添加し、減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。そのポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して先に用いたDMCを0.01重量部添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間減圧脱水を行った後、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV18.6mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。そのポリオキシアルキレンポリオールからのDMC除去操作は先に詳述したKOMeを用いる方法で実施した。カリウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは18.6mgKOH/g、C=C0.029meq./g、粘度(η)3200mPa・s/25℃、H−T結合選択率86.3モル%、W20/W80は5.20であった。
【0183】
実施例1〜11及び比較例1〜10で得られたポリオキシアルキレンポリオール(以下、ポリオールと言う)のOHV、C=C、粘度(η)、H−T結合選択率、W20/W80、及び、ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物触媒の残存量を、表1ないし表4にまとめて示した。表中の開始剤で、Glyはグリセリンの、DPGはジプロピレングリコールの、EGはエチレングリコールの略号である。アルキレンオキサイド重合触媒としてP5NMe2Clはホスファゼニウム化合物aの、P5NMe2OHはホスファゼニウム化合物bの、CsOHは水酸化セシウムの、DMCは複金属シアン化物錯体の略である。POはプロピレンオキサイドの、EOはエチレンオキサイドの略号である。又、ホスファゼニウム化合物触媒の残存量は、触媒残存量と略記した。表中のポリオキシアルキレンポリオールの分析値は先に詳述した方法により求めた。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
【表3】
【0187】
【表4】
【0188】
実施例9で用いたP5NMe2OH、及び比較例で用いたCsOH(比較例1)、DMC(比較例6)のプロピレンオキサイド重合活性(g/mol・min.)を〔表5〕に示す。
【0189】
【表5】
【0190】
実施例の考察1
実施例1〜11及び比較例1〜10より以下の知見が得られる。
ホスファゼニウム化合物をアルキレンオキサイドの重合触媒として使用して得た本発明に係るポリオキシアルキレンポリオールは、DMCを触媒とした公知のものと比較して、モノオール量の指標であるC=Cがほぼ同じレベルであるにも拘わらず、低粘度である。
プロピレンオキサイドの重合活性は、DMC触媒系が最も高い値を示すが、エチレンオキサイドの共重合反応に際しては、一旦、DMCをアルカリ金属化合物(カリウムメチラート)との反応により失活させ、次いで、その触媒によりエチレンオキサイドを重合しなければならないため、操作が非常に複雑である。一方、本発明の製造方法では、ホスファゼニウム化合物触媒系を用いるので、プロピレンオキサイドの重合活性が、CsOH触媒系より高く、しかも、C=Cの低いポリオキシアルキレンポリオールが得られる。エチレンオキサイドとの共重合反応においても、複雑な操作を必要とせず、低粘度のポリオキシアルキレンポリオールが得られる。
【0191】
実施例12〜15、比較例11〜13
ポリマー分散ポリオール
以下、本発明のポリマー分散ポリオールについて実施例を示して説明する。
実施例12〜15、比較例11〜13に用いた原料、略語及び分析法を以下に説明する。
(ポリオキシアルキレンポリオール)D、E、BB、GG;それぞれ、実施例4(D)、実施例5(E)及び比較例2(BB)、比較例7(GG)により得られたポリオキシアルキレンポリオール(以下、ポリオールと言う)。
(エチレン性不飽和単量体−1);アクリロニトリル(以下、ANと言う)。
(エチレン性不飽和単量体−2);スチレン(以下、Stと言う)。
(連鎖移動剤);トリエチルアミン(以下、TEAと言う)。
(ラジカル開始剤);アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと言う)。
【0192】
(5)ポリマー分散ポリオールの水酸基価(OHV、単位:mgKOH/g)、及び、粘度(ηとする。単位:mPa・s/25℃)
JIS K−1557に記載の方法により求めた。
(6)ポリマー濃度(単位:重量%)
ポリマー分散ポリオールにメタノールを加え、良く分散させた後に、遠心分離してメタノール不溶分の重量を測定して求める。ただし、エチレン性不飽和単量体としてアクリロニトリル(AN)を単独で用いたポリマー分散ポリオールについては、元素分析による窒素分から求める。
(7)凝集粒子
ポリマー分散ポリオールの分散安定性の指標である。ポリマー分散ポリオールを毎分5000回転、半径方向遠心力2000Gにおいて1時間遠心分離し、次いで、遠心分離管を逆さにして24時間自然流下させ、遠心分離管底部での非流動性ケーキの有無を目視で判定する。
【0193】
温度計、攪拌装置、送液装置付き1リットルオートクレーブに〔表6〕及び〔表7〕で示したポリオールを満液状態に仕込み、攪拌しながら120℃まで昇温した。続いて、あらかじめ〔表6〕及び〔表7〕に示す比率で混合したポリオール、AN、St、TEA、AIBNの混合液を連続的に装入し、排出口より連続的にポリマー分散ポリオールを得た。このとき反応圧力はゲージ圧3.5kgf/cm2 (444kPa)、滞留時間は50分であった。定常状態に達した後、得られた反応液を120℃、20mmHgabs.(2,660Pa)で4時間減圧吸引処理し、未反応エチレン性不飽和単量体及びTEAを除去してポリマー分散ポリオールA〜D(実施例12〜15)、ポリマー分散ポリオールE〜G(比較例11〜13)を得た。結果を〔表6〕及び〔表7〕に示す。
【0194】
【表6】
【0195】
【表7】
【0196】
実施例16〜19、比較例14〜16
ポリウレタンフォームの製造方法
本発明により得られたポリマー分散ポリオールの効果を明らかにするため、以下にポリマー分散ポリオールを使用した軟質ポリウレタンフォームの製造例を示す。実施例、比較例に用いた原料、略語及び分析法は以下の通りである。
(ポリマー分散ポリオール)A〜G;それぞれ、実施例12(A)、実施例14(C)、実施例15(D)及び比較例11(E)、比較例12(F)、比較例13(G)により得られたポリマー分散ポリオール。
(ポリオールL);三井化学社製ポリオキシアルキレンポリオールEP−330N。OHV33mgKOH/g
(架橋剤)DEOA;三井化学社製ジエタノールアミン。
(触媒−1);L−1020;活材ケミカル社製3級アミン触媒(トリエチレンジアミンの33重量%ジエチレングリコール溶液)。
(触媒−2);TMDA;活材ケミカル社製3級アミン触媒(ビスジメチルアミノエチルエーテルの70重量%ジエチレングリコール溶液)。
(整泡剤)L−5309;日本ユニカー社製シリコーン整泡剤。
(イソシアネート);コスモネートTM−20;三井化学社製ポリイソシアネート。TDI−80とポリメリックMDIとの80:20重量比の混合物。
(8) 軟質ポリウレタンフォームの諸物性
JIS K−6301、及び、JIS K−6401記載の方法により求めた。
【0197】
ポリマー分散ポリオール、ポリオールL、水、DEOA、L−1020、TMDA、L−5309を表8に示した比率で攪拌混合してレジンプレミックスとし、25℃に調製した。レジンプレミックス中の活性水素基濃度に対するイソシアネート基濃度の比(NCOインデックス)が1.00となる量のコスモネートTM−20を25℃に調整した。
次いで、先に調製したレジンプレミックスと6秒間激しく攪拌混合し、あらかじめ市販の離型剤を塗布した60℃のアルミ製テストモールド(内寸:400×400×100mm)に注入後、蓋を閉めクランプにより密閉し、発泡硬化させた。攪拌開始から6分後にテストモールドのクランプを外し、硬化した軟質ポリウレタンフォームを脱型、フォームを手で押さえた時の力で独立気泡性を評価した。続いて、ローラーを使って厚みを80%圧縮して気泡を完全に連通化させた(クラッシング操作)。発泡して24時間後に得られた軟質ポリウレタンフォームの諸物性を測定した。結果を〔表8〕に示す。比較例16に示した軟質ポリウレタンフォームは発泡状態が不良であったため、フォームの諸物性は測定不可能であった。
【0198】
【表8】
【0199】
実施例の考察2
ホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを分散媒とする本発明のポリマー分散ポリオールの特徴は、低粘度である点にある。特に、ポリマー濃度を高くした場合であっても、従来品よりも低い粘度を示す。そのため、広範なポリウレタン用途において、成形性及び物性向上をもたらす。
本発明のポリマー分散ポリオールを用いた軟質ポリウレタンフォームは、発泡時の連通性が高く、クラッシング後に亀裂を生ずる等の問題もない。更に、硬度、湿熱圧縮永久歪み、反発弾性等の物性に優れた軟質ポリウレタンフォームを提供することが可能である。
【0200】
更に、前述の実施例、比較例で得られたポリオキシアルキレンポリオール並びにポリマー分散ポリオールを用いてイソシアネート基末端プレポリマーの合成を行った。次いで、本発明により得られたイソシアネート基末端プレポリマーの効果を明らかにするため、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネート化合物との反応により得られたイソシアネート基末端プレポリマーの貯蔵安定性試験結果を示すと共に、イソシアネート基末端プレポリマーと1,4−ブタングリコール(以下、1,4−BGと言う)を硬化剤とするポリウレタン樹脂の製造例を示す。
(9)イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基含有量(重量%)、及び粘度(mPa・s/25℃)
JIS K−7301に記載の方法に準拠した。
(10)ポリウレタン樹脂の物性測定
JIS K−6301に記載の方法に準拠した。
【0201】
実施例21
イソシアネート基末端プレポリマーA
実施例6で得られたポリオキシアルキレンポリオールFを772.6重量部、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、三井化学(株)製、以下同様)227.4重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時の活性水素基濃度に対するイソシアネート基の濃度比(NCOインデックス)は4.67である。イソシアネート基含有量は6.0重量%、粘度は5120mPa・s/25℃であった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は5.8重量%、粘度は5240mPa・s/25℃と殆ど変化は見られなかった。
【0202】
次に、イソシアネート基末端プレポリマーA100重量部に、1,4−BG(和光純薬(株)製、以下同様)6.1重量部、ジブチル錫ジラウリエート(三共有機合成(株)製StannBL、以下、DBTDLと略す)0.002重量部を加え、攪拌機により均一に混合し、テフロンコートした2mm厚の金型に均一に流し込み、100℃で24時間硬化させた。更に、23℃の条件下、7日間静置し、完全硬化させた後、物性測定を行った。得られたポリウレタン樹脂の硬度は75A、破断時の引張強度は180kgf/cm2 (17.7MPa)、破断時の伸びは750%であった。
【0203】
実施例22
イソシアネート基末端プレポリマーB
実施例9で得られたポリオキシアルキレンポリオールIを773.1重量部、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH226.9重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは4.70である。イソシアネート基含有量は6.0重量%、粘度は7800mPa・s/25℃であった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500重量部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は5.9重量%、粘度は8000mPa・s/25℃と殆ど変化は見られなかった。
【0204】
次に、イソシアネート基末端プレポリマーB100重量部に、1,4−BG(和光純薬(株)製)6.1重量部、DBTDL0.002重量部を加え、攪拌機により均一に混合し、テフロンコートした2mm厚の金型に均一に流し込み、100℃で24時間硬化させた。更に、23℃の条件下、7日間静置し、完全硬化させた後、物性測定を行った。得られたポリウレタン樹脂の硬度は77A、破断時の引張強度は150kgf/cm2 (14.7MPa)、破断時の伸びは350%であった。
【0205】
実施例23
イソシアネート基末端プレポリマーC
実施例10で得られたポリオキシアルキレンポリオールJを796.2重量部、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH203.8重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは8.09である。イソシアネート基含有量は6.0重量%、粘度は6640mPa・s/25℃であった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500重量部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は5.9重量%、粘度は6690mPa・s/25℃と殆ど変化は見られなかった。
【0206】
次に、イソシアネート基末端プレポリマーC100重量部に、1,4−BG(和光純薬(株)製)6.1重量部、DBTDL0.002重量部を加え、攪拌機により均一に混合し、テフロンコートした2mm厚の金型に均一に流し込み、100℃で24時間硬化させた。更に、23℃の条件下、7日間静置し、完全硬化させた後、物性測定を行った。得られたポリウレタン樹脂の硬度は73A、破断時の引張強度は130kgf/cm2 (12.8MPa)、破断時の伸びは900%であった。
【0207】
比較例17
イソシアネート基末端プレポリマーAA
比較例1で得られたポリオキシアルキレンポリオールAA773.1重量部に、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH226.9重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは4.70である。イソシアネート基含有量は6.0重量%、粘度は8000mPa・s/25℃であった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500重量部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は5.8重量%、粘度は8200mPa・s/25℃と殆ど変化は見られなかった。
【0208】
次に、イソシアネート基末端プレポリマーAA100重量部に、1,4−BG6.1重量部、DBTDL0.002重量部を加え、攪拌機により均一に混合し、テフロンコートした2mm厚の金型に均一に流し込み、100℃で24時間硬化させた。更に、23℃の条件下、7日間静置し、完全硬化させた後、物性測定を行った。得られたポリウレタン樹脂の硬度は73A、破断時の引張強度は120kgf/cm2 (11.8MPa)、破断時の伸びは300%であった。
【0209】
比較例18
イソシアネート基末端プレポリマーBB
比較例4で得られたポリオキシアルキレンポリオールDDを772.8重量部、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH227.2重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは4.68である。イソシアネート基含有量は6.0重量%、粘度は5150mPa・s/25℃であった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500重量部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は5.9重量%、粘度は5260mPa・s/25℃と殆ど変化は見られなかった。
【0210】
次に、イソシアネート基末端プレポリマーBB100重量部に、1,4−BG6.1部、DBTDL0.002部を加え、攪拌機により均一に分散し、テフロンコートした2mm厚の金型に均一に流し込み、100℃で24時間硬化させた。更に、23℃の条件下7日間静置し、完全硬化させた後、物性測定を行った。得られた硬化物の硬度は70A、破断時の引張強度は165kgf/cm2 (16.2MPa)、破断時の伸びは700%であった。
【0211】
比較例19
イソシアネート基末端ポレポリマーCC
比較例6で得られたポリオキシアルキレンポリオールFF772.9重量部に、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH227.1重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは4.69である。イソシアネート基含有量は6.0重量%、粘度は9800mPa・s/25℃であり、粘度が高かった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500重量部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は5.5重量%、粘度は15000mPa・s/25℃とイソシアネート基含有量の低下と、粘度の上昇が見られた。
【0212】
次に、イソシアネート基末端プレポリマーCC100重量部に、1,4−BG6.1重量部、DBTDL0.002重量部を加え、攪拌機により均一に混合し、テフロンコートした2mm厚の金型に均一に流し込み、100℃で24時間硬化させた。更に、23℃の条件下、7日間静置し、完全硬化させた後、物性測定を行った。得られたポリウレタン樹脂の硬度は72A、破断時の引張強度は120kgf/cm2 (11.8MPa)、破断時の伸びは200%であった。
【0213】
比較例20
イソシアネート基末端プレポリマーDD
比較例9で得られたポリオキシアルキレンポリオールIIを772.3重量部に、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH227.7重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは4.64である。イソシアネート基含有量は6.0重量%、粘度は5500mPa・s/25℃であった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500重量部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は5.4重量%、粘度は9800mPa・s/25℃とイソシアネート基含有量の低下と、粘度の上昇が見られた。
【0214】
次に、イソシアネート基末端プレポリマーDDを100重量部に、1,4−BG6.1重量部、DBTDL0.002重量部を加え、攪拌機により均一に混合し、テフロンコートした2mm厚の金型に均一に流し込み、100℃で24時間硬化させた。更に、23℃の条件下、7日間静置し、完全硬化させた後、物性測定を行った。得られたポリウレタン樹脂の硬度は72A、破断時の引張強度は123kgf/cm2 (12.1MPa)、破断時の伸びは550%であった。
実施例21〜23、比較例17〜20の結果を〔表9〕に示す。表中のポリオールとはポリオキシアルキレンポリオールの略号である。NCOインデックスとは活性水素基濃度に対するイソシアネート基濃度の比を表す。
【0215】
【表9】
【0216】
実施例の考察3
実施例21〜23、比較例17〜20より、ホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを用いた、本発明のイソシアネート基末端プレポリマーの特徴は、低粘度であること、及び、貯蔵安定性に優れていることにある。更には、本発明のイソシアネート基末端プレポリマーを用いることにより、機械的性質に優れたポリウレタン樹脂を提供することができる。
次に、実施例13、及び比較例13で得られたポリマー分散ポリオールを用いて、イソシアネート基末端プレポリマーの合成を行った。次いで、本発明により得られたイソシアネート基末端プレポリマーの効果を明らかにするため、ポリマー分散ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応により得られたイソシアネート基末端プレポリマーの貯蔵安定性試験結果を示す。
(11)イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基含有量(重量%)、及び粘度(mPa・s/25℃)
JIS K−7301に記載される方法に準拠して測定した。
【0217】
実施例24
イソシアネート基末端プレポリマーD
実施例13で得られたポリマー分散ポリオールB785.8重量部に、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH214.2重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは6.02である。イソシアネート基含有量は6.0重量%、粘度は10,480mPa・s/25℃であった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500重量部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は5.8重量%、粘度は12,500mPa・s/25℃であった。
【0218】
比較例21
イソシアネート基末端ポレポリマーEE
比較例13で得られたポリマー分散ポリオールG788.2重量部に、ポリイソシアネート化合物としてコスモネートPH211.8重量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃、4時間攪拌し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは6.38である。イソシアネート基含有量は5.8重量%、粘度は98,000mPa・s/25℃であった。
得られたイソシアネート基末端プレポリマー500重量部を金属製容器に窒素雰囲気下で密閉し、60℃のオーブンに14日間保管し、貯蔵安定性試験を行った。貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマーはゲル化しており、遊離イソシアネート基含有量及び粘度の測定は不可能であった。
【0219】
実施例24及び比較例21の結果を〔表10〕にまとめた。表中のNCOインデックスとは活性水素基濃度に対するイソシアネート基濃度の比を表す。比較例1の貯蔵安定性試験後のイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基含有量並びに粘度は測定不可能であった。
【0220】
【表10】
【0221】
実施例の考察4
実施例24及び比較例21より、ホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを分散媒とするポリマー分散ポリオールを用いた、本発明のイソシアネート基末端プレポリマーは、DMC触媒により得られるポリオキシアルキレンポリオールを分散媒とするポリマー分散ポリオールを用いたイソシアネート基末端プレポリマーと比較して低粘度である特徴を有し、貯蔵安定性に優れている。
【0222】
遊離イソシアネート化合物の含有量が少ないイソシアネート基末端プレポリマー
(12)実施例25〜27、比較例22〜25のポリオキシアルキレンポリオール、及びイソシアネート基末端プレポリマーの特性は下記方法により測定した。
(13)ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(OHV、単位:mgKOH/g)、総不飽和度(C=C、単位:meq./g)、粘度(η、単位:mPa・s/25℃)、CPR(単位:無次元)
JIS K−1557記載の方法により求めた。
(14)イソシアネート基末端プレポリマーの粘度(以下、ηpre.と言う、単位:mPa・s/25℃)
JIS K−7301記載の方法により求めた。
(15)遊離イソシアネート化合物の濃度(単位:重量%)
ガスクロマトグラフィー(GC)により求めた。
ポリオキシアルキレンポリオールの合成において、ホスファゼニウム化合物b(P5NMe2OH)を使用した。比較では、DMC及びケメタル社製の水酸化セシウム(50重量%水酸化セシウム水溶液の形態)を用いた。
粗製イソシアネート基末端プレポリマーから遊離イソシアネート化合物を減圧除去する際には、分子蒸留装置(柴田科学社製、形式:MS−800型)を用いた。その装置は小型の回転薄膜式蒸留装置である。以下、その装置を分子蒸留装置と言う。
【0223】
実施例25
イソシアネート基末端プレポリマーA2
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにジプロピレングリコール1モルに対して、0.020モルのP5NMe2OHと0.04モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、20mmHgabs.(2,660Pa)の条件で3時間、減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度80℃で、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが18.8mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)の条件で30分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0224】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して10重量部のイオン交換水を加え、次いで、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して、2.2モルのリン酸(75.1重量%の水溶液の形態)を装入し、80℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、1,500ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が100mmHgabs.(13kPa)の状態で吸着剤〔富田製薬(株)製、商品名:AD−600NS、以下同様〕を20,000ppm加えた。更に、減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。
ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールの(OHV)は18.8mgKOH/g、C=C0.020meq./g、粘度(η)2300mPa・s/25℃であり、CPRは0.5であった。
【0225】
次いで、攪拌装置、窒素導入管、滴下ロート、水冷コンデンサー及び温度計を装備した2リットルの4つ口フラスコに上記ポリオキシアルキレンポリオール 870.9gとジプロピレングリコール〔三井化学(株)製、以下同様〕22.3gを装入し、窒素雰囲気下、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネートの混合物〔重量割合2,4−TDI97.5重量%、2,6−TDI2.5重量%、コスモネートT−100、三井化学(株)製、以下同様〕354.1gを内温40〜45℃の範囲で、20分間かけて滴下した。ポリイソシアネート化合物を滴下後、70℃に昇温し、同温度で4時間反応を行った。
【0226】
次いで、95℃に昇温し、同温度で5時間反応した。更に、内温を60℃に降温し、同温度で12時間反応し、粗製イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは6.20である。次に、分子蒸留装置を用い、攪拌しながら、温度110℃、圧力0.01mmHgabs.(1.33Pa)の条件で3時間、粗製イソシアネート基末端プレポリマー中の未反応イソシアネート化合物の減圧除去処理を行った。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度(ηpre.)は8950mPa・s/25℃で、プレポリマー中の遊離イソシアネート化合物の含有量は0.2重量%であった。
【0227】
実施例26
イソシアネート基末端プレポリマーB2
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して、0.012モルのP5NMe2OHと0.08モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)の条件で4時間、減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度80℃で、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが33.6mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)の条件で30分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0228】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、10重量部のイオン交換水を加え、次いで、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して、2.2モルのリン酸(75.1重量%の水溶液の形態)を装入し、80℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1500ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が200mmHgabs.(26kPa)の状態で吸着剤AD−600NS〔富田製薬(株)製〕を15,000ppm加えた。更に、減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。
ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールの(OHV)は33.6mgKOH/g、C=C0.016meq./g、粘度(η)830mPa・s/25℃であり、CPRは1.0であった。
【0229】
次いで、攪拌装置、窒素導入管、滴下ロート、水冷コンデンサー及び温度計を装備した2リットルの4つ口フラスコに上記ポリオキシアルキレンポリオール1220.2gを装入し、窒素雰囲気下、コスモネートT−100を385.2gを内温40〜45℃の範囲で、20分間かけて滴下した。ポリイソシアネート化合物を滴下後、70℃に昇温し、同温度で4時間反応を行った。次いで、95℃に昇温し、同温度で3時間反応した。更に、内温を60℃に降温し、同温度で12時間反応し、粗製イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは5.80である。分子蒸留装置を用い、攪拌しながら、温度110℃、圧力0.01mmHgabs.(1.33Pa)の条件で3時間、粗製イソシアネート基末端プレポリマー中の未反応イソシアネート化合物の減圧除去処理を行った。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度(ηpre.)は9850mPa・s/25℃で、プレポリマー中の遊離イソシアネート化合物の含有量は0.3重量%であった。
【0230】
実施例27
イソシアネート基末端プレポリマーC2
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにエチレングリコール1モルに対して、0.020モルのP5NMe2OHと0.04モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)の条件で3時間、減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度70℃で、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが32mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。その後、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)に調整し、反応温度70℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。更に、オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)、20分間減圧処理を行った後、大気圧状態から反応温度70℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが18.4mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0231】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、12重量部のイオン交換水を加え、次いで粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して、2.5モルのリン酸(75.1重量%の水溶液の形態)を装入し、80℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、1,500ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が100mmHgabs.(13kPa)の状態で吸着剤AD−600NS〔富田製薬(株)製〕を15,000ppm加えた。更に減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは18.5mgKOH/g、C=C0.022meq./g、粘度(η)1100mPa・s/25℃で、CPRは0.2であった。
【0232】
次いで、攪拌装置、窒素導入管、滴下ロート、水冷コンデンサー及び温度計を装備した2リットルの4つ口フラスコに上記ポリオキシアルキレンポリオール953.5gを装入し、窒素雰囲気下、ノルボルナンジイソシアネート〔三井化学(株)製〕197.7gを内温40〜45℃の範囲で、20分間かけて滴下した。ポリイソシアネート化合物を滴下後、70℃に昇温し、同温度で3時間反応を行った。
次いで、95℃に昇温し、同温度で4時間反応した。更に、内温を60℃に降温し、同温度で15時間反応し、粗製イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは5.50である。分子蒸留装置を用い、攪拌しながら、温度160℃、圧力0.01mmHgabs.(1.33Pa)の条件で3時間、粗製イソシアネート基末端プレポリマー中の未反応イソシアネート化合物の減圧除去処理を行った。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度(ηpre.)は12,350mPa・s/25℃で、プレポリマー中の遊離イソシアネート化合物の含有量は0.8重量%であった。
【0233】
以下に比較例を示す。比較例22は、前述した実施例25で得られたポリオキシアルキレンポリオールを用いて、NCOインデックスを変更したプレポリマーに関する。比較例23及び比較例25ではアルキレンオキサイドの重合触媒として前述したDMCを用いた。水酸化カリウムを触媒として製造されたポリオキシアルキレンポリオールを開始剤とし、次いで、DMC触媒を用いてポリオキシアルキレンポリオールの合成を行った。更に、エチレンオキサイド付加重合時には、30重量%のカリウムメチラートのメタノール溶液〔和光純薬(株)製、以下、KOMeと言う〕を触媒とした。比較例24ではアルキレンオキサイドの重合触媒として、上記した水酸化セシウム(CsOH)を用いた。
【0234】
比較例22
イソシアネート基末端プレポリマーD2
攪拌装置、窒素導入管、滴下ロート、水冷コンデンサー及び温度計を装備した2リットルの4つ口フラスコに実施例25で得られたポリオキシアルキレンポリオールを720.3gと、ジプロピレングリコール〔三井化学(株)製、以下同様〕18.4gを装入し、窒素雰囲気下、コスモネートT−100を99.2gを内温40〜45℃の範囲で、20分間かけて滴下した。ポリイソシアネート化合物を滴下後、70℃に昇温し、同温度で4時間反応を行った。次いで、95℃に昇温し、同温度で5時間反応した。更に、内温を60℃に降温し、同温度で12時間反応し、粗製イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは2.10である。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度(ηpre.)は12,500mPa・s/25℃で、プレポリマー中の遊離イソシアネート化合物の含有量は2.0重量%であった。
【0235】
比較例23
イソシアネート基末端プレポリマーE2
プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレンポリオールDiol400〔三井化学(株)製〕100重量部に対して、0.03重量部のDMC(DMC)を添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間減圧脱水を行った。次に、オートクレーブにその化合物を仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV18.7mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。そのポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して、2.8重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)の条件で2時間行った。その後、水を3重量部と吸着剤AD−600NS〔富田製薬(株)製〕を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で2時間減圧脱水を行い、DMCの除去処理を行った。
【0236】
粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のカリウム1モルに対して、1.5モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液)並びに粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、25重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。その後、酸化防止剤であるBHTを1500ppm加え、減圧脱水を行った。105℃、300mmHgabs.(40kPa)の条件 下で、吸着剤〔協和化学工業(株)製、商品名:KW−700SN、以下同様〕を8000ppm添加し、更に減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)の条件で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。カリウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは18.7mgKOH/g、C=C0.021meq./g、粘度(η)3100mPa・s/25℃で、CPRは5.5であった。
【0237】
次いで、攪拌装置、窒素導入管、滴下ロート、水冷コンデンサー及び温度計を装備した2リットルの4つ口フラスコに上記ポリオキシアルキレンポリオール871.1gとジプロピレングリコール 22.4gを装入し、窒素雰囲気下、コスモネートT−100を354.5gを内温40〜45℃の範囲で、20分間かけて滴下した。ポリイソシアネート化合物を滴下後、70℃に昇温し、同温度で4時間反応を行った。次いで、95℃に昇温し、同温度で5時間反応した。更に、内温を60℃に降温し、同温度で12時間反応し、粗製イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは6.20である。次に、分子蒸留装置を用い、攪拌しながら、温度110℃、圧力0.01mmHgabs.(1.33Pa)の条件で3時間、粗製イソシアネート基末端プレポリマー中の未反応イソシアネート化合物の減圧除去処理を行った。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度(ηpre.)は19,500mPa・s/25℃で、プレポリマー中の遊離イソシアネート化合物の含有量は0.4重量%であった。
【0238】
比較例24
イソシアネート基末端プレポリマーF2
攪拌装置、窒素導入管及び温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して、0.36モルの水酸化セシウム(50重量%の水酸化セシウム水溶液の形態)を加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間、減圧脱水を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが33.4mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)の条件で20分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0239】
セシウムを含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、12重量部のイオン交換水を加え、次いで、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のセシウム1モルに対して、1.1モルのシュウ酸(8.5重量%の水溶液の形態)を装入し、80℃で2時間の中和反応を行った。中和反応終了後に、BHTを粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して1,500ppm添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブ内の圧力が100mmHgabs.(13kPa)の状態で吸着剤AD−600NS〔富田製薬(株)製〕を5,000ppm加えた。更に、減圧下で脱水しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で4時間、同操作を行った。その後、窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った(酸中和除去法)。セシウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは33.5mgKOH/g、C=C0.032meq./g、粘度(η)940mPa・s/25℃で、CPRは0.5であった。
【0240】
次いで、攪拌装置、窒素導入管、滴下ロート、水冷コンデンサー及び温度計を装備した2リットルの4つ口フラスコに上記ポリオキシアルキレンポリオール1235.1gを装入し、窒素雰囲気下、コスモネートT−100を395.1gを内温40〜45℃の範囲で、20分間かけて滴下した。ポリイソシアネート化合物を滴下後、70℃に昇温し、同温度で4時間反応を行った。
次いで、95℃に昇温し、同温度で3時間反応した。更に、内温を60℃に降温し、同温度で12時間反応し、粗製イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは5.80である。分子蒸留装置を用い、攪拌しながら、温度110℃、圧力0.01mmHgabs.(1.33Pa)の条件で3時間、粗製イソシアネート基末端プレポリマー中の未反応イソシアネート化合物の減圧除去処理を行った。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度(ηpre.)は10,800mPa・s/25℃で、プレポリマー中の遊離イソシアネート化合物の含有量は0.3重量%であった。
【0241】
比較例25
イソシアネート基末端プレポリマーG2
エチレングリコールに水酸化カリウムを触媒としてプロピレンオキサイドを従来の方法により付加重合したポリプロピレンポリオール(以下、EG400と言う、OHV280mgKOH/g)100重量部に対して、0.05重量部のDMCを添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間、減圧脱水を行った。次に、オートクレーブにその化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV32.0mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。
【0242】
そのポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して、2.9重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)の条件で2時間行った。その後、水を3重量部と 吸着剤AD−600NS〔富田製薬(株)製〕を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で2時間減圧脱水を行い、DMCの除去処理を行った。
エチレンオキサイドの付加重合を行うため、DMC除去後のポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して、2.5重量部の30重量%のKOMeのメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を100℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間行った。オートクレーブにその化合物を仕込み、窒素置換後、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが28.0mgKOH/gになるまでエチレンオキサ イドを装入し、反応させた。反応後、減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。更に、DMCを用いてプロピレンオキサイドの付加重合を行うため、ポリオキシアルキレンポリオール中からのカリウムの除去を行った。
【0243】
粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のカリウム1モルに対して、1.2モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液の形態)並びに粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、4重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。吸着剤KW−700SN〔協和化学工業(株)製〕を8,000ppm添加し、減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)の条件で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。そのポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対してDMCを0.01重量部添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)の条件で3時間減圧脱水を行った後 、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV18.6mgKOH/gになるまでプロピレンオ キサイドの付加重合を行った。そのポリオキシアルキレンポリオール からのDMC除去操作は前述したKOMeを用いる方法で実施した。カリウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールのOHVは18.6mgKOH/g、C=C0.029meq./g、粘度(η)3200mPa・s/25℃で、CPRは2.0であった。
【0244】
次いで、攪拌装置、窒素導入管、滴下ロート、水冷コンデンサー及び温度計を装備した2リットルの4つ口フラスコに上記ポリオキシアルキレンポリオール926.3gを装入し、窒素雰囲気下、ノルボルナンジイソシアネート〔三井化学(株)製〕192.4gを内温40〜45℃の範囲で、20分間かけて滴下した。ポリイソシアネート化合物を滴下後、70℃に昇温し、同温度で3時間反応を行った。次いで、95℃に昇温し、同温度で4時間反応した。更に、内温を60℃に降温し、同温度で15時間反応し、粗製イソシアネート基末端プレポリマーを得た。この時のNCOインデックスは5.50である。分子蒸留装置を用い、攪拌しながら、温度160℃、圧力0.01mmHgabs.(1.33Pa)の条件で3時間、粗製イソシアネート基末端プレポリマー中の未反応イソシアネート化合物の減圧除去処理を行った。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの粘度(ηpre.)は21,200mPa・s/25℃で、プレポリマー中の遊離イソシアネート化合物の含有量は1.3重量%であった。
【0245】
実施例25〜27、比較例22〜25で得られたポリオキシアルキレンポリオール(以下、ポリオールと言う)のOHV、粘度(ηと言う)、C=C、CPR、及びイソシアネート基末端プレポリマーの粘度(ηpre.と言う)とプレポリマー中の遊離イソシアネート化合物の含有量を〔表11〕にまとめた。表中の開始剤でDPGはジプロピレングリコールを、Glyはグリセリンを、EGはエチレングリコールの略号である。Diol400はプロピレングリコールにアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールを、EG400はエチレングリコールにアルキレンオキサイドを付加重合したOHV280mgKOH/gのポリオールの略号である。また、アルキレンオキサイドをAOと、プロピレンオキサイドをPOと、エチレンオキサイドをEOと言う。触媒として用いたホスファゼニウム化合物をPZと、複金属シアン化物錯体をDMCと、水酸化セシウムをCsOHと、カリウムメチラートはKOMeと言う。イソシアネート基末端プレポリマーはプレポリマーと略する。ポリイソシアネート化合物として用いた2,4−および2,6−トリレンジイソシアネートの混合物はT−100と、ノルボルナンジイソシアネートはNBDIと言う。さらに、ポリオールの水酸基濃度に対するイソシアネート基濃度の比をNCOインデックスと言う。
【0246】
実施例28
実施例27で得られたプレポリマーC2を60重量部、及び、ポリテトラメチレングリコールから誘導された、遊離イソシアネート化合物の含有量が0.3重量%であるプレポリマー(三井化学(株)製、商品名:HL−901)40重量部とを、窒素雰囲気下、80℃で均一混合し、減圧脱泡を行なった。その混合プレポリマーをイソシアネート基末端プレポリマーH2と言う。
【0247】
【表11】
【0248】
実施例の考察5
実施例25〜27、比較例22〜25より、ホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを用い、未反応イソシアネート化合物の減圧除去操作を行った、本発明のイソシアネート基末端プレポリマーは、DMCを用いた系と比較して、プレポリマーの粘度が低く、かつ遊離イソシアネート化合物の含有量が低い。また、水酸化セシウム(CsOH)を用いた系と比較しても、本発明のプレポリマーの粘度が低いため、可塑剤、有機溶剤などの低減が可能である上、作業性に優れている。さらに、DMC触媒系ではプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドとの交互共重合反応時には、複雑な反応操作が必要であるが(比較例25)、本発明のホスファゼニウム化合物系では複雑な反応操作が不要で(実施例27)、且つ、低粘度のイソシアネート基末端プレポリマーの製造が可能である。
【0249】
次に、本発明のイソシアネート基末端プレポリマーの効果を明らかにするため、プレポリマーの貯蔵安定性を調べるとともに、ポリウレタン樹脂を調製し、その機械的性質及び外観の評価を行った。
<ポリウレタン樹脂>
予め、減圧脱泡し、80℃に調整されたイソシアネート基末端プレポリマー、及び、減圧脱泡され、120℃に調整された4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン〔イハラケミカル工業(株)製〕とを1分間、気泡が混入しないように攪拌混合を行った。鎖延長剤として用いた、そのアミン化合物の使用量は、NCOインデックスが1.05に相当する量である。
【0250】
予め、100℃に加熱した縦20cm、横20cm、厚さ2mmのテフロンコートした金型に、上記混合液を均一に流し込み、100℃×24時間で硬化させた。金型から脱型後、23℃、相対湿度40%の恒温恒湿のオーブン中で1週間静置した後、物性測定を行った。
(16)ポリウレタン樹脂の機械的性質(硬度、破断強度、伸び、反発弾性、引裂強度及びヒステリシス)
JIS K−6301、JIS K−7312に準じて測定した。
(17)イソシアネート基末端プレポリマーの貯蔵安定性(単位;%)
貯蔵安定性の評価は、製造直後のプレポリマーの粘度(a)、及び、60℃で14日間保管した後のプレポリマーの粘度(b)を測定し、数式〔(b−a)×100/a〕から粘度変化率を算出した。
【0251】
粘度(b)測定用試料は、窒素雰囲気下でプレポリマーを金属製容器に密閉し、60℃のオーブン中で14日間保管した。粘度の測定方法は、前記したJISK−7301記載の方法である。
(18)ポリウレタン樹脂の外観評価
ポリウレタン樹脂の表面のタック(ベタツキ)を触感で評価した。評価基準は下記の通り。○:タックが少ない。△:ややタックがある。×:タックが大きい。
(19)ポリウレタン樹脂の耐水性(単位:%)
物性測定用サンプルを90℃の熱水中に3日間浸漬し、前記(14)記載の方法により、破断強度を測定する。熱水浸漬前の破断強度(c)と熱水浸漬後の破断強度(d)とを測定し、数式〔(d×100)/c〕から算出した。
これらのポリウレタン樹脂の物性測定結果を〔表12〕に示す。
【0252】
【表12】
【0253】
実施例の考察6
実施例29〜31、比較例26〜28より、ホスファゼニウム化合物を触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを用い、未反応イソシアネート化合物を減圧除去した、本発明のイソシアネート基末端プレポリマーを用いたポリウレタン樹脂は、水酸化セシウム(CsOH)、DMCを触媒としたイソシアネート基末端プレポリマーを用いたポリウレタン樹脂と比較して、硬度、破断強度、伸び、反発弾性、引裂強度、耐水性が向上し、ヒステリシスが少ない等の利点を有する。また、本発明のポリオキシアルキレンポリオールを用いたポリウレタン樹脂は、タックが少なく、表面の汚染が少ない。さらに、ホスファゼニウム化合物の特定の除去操作を行った本発明のポリオキシアルキレンポリオールにより、貯蔵安定性の優れたイソシアネート基末端プレポリマーを製造することができる。
【0254】
<ポリオキシアルキレンポリアミン、及びポリウレタンウレア樹脂>
(20)ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(単位:mgKOH/g)
JIS K−1557記載の測定方法により求めた。
(21)ポリオキシアルキレンポリアミンのアミン価(単位:mgKOH/g)
官能基別有機化合物定量法の実際(Frederick T.Weiss、江島昭訳、廣川書店発行、1974年)記載の方法により求めた。
ポリオキシアルキレンポリアミンをメタノール溶媒中で、サリチルアルデヒドと反応させて、1級アミノ基のみを弱塩基性のアゾメチンとし、次いで、塩酸のイソプロパノール溶液で電位差滴定を行う。最初の変曲点までが、2級および3級アミン価(f)、次の変曲点までが全アミン価(e)であり、その差(e−f)が1級アミン価(c)である(アゾメチン滴定法)。
【0255】
一方、ポリオキシアルキレンポリアミンを無水酢酸と反応させて、1級アミノ基および2級アミノ基をアセチル化し、残った3級アミノ基を過塩素酸酢酸溶液で滴定する(アセチル化−過塩素酸法)。
すなわち、アゾメチン滴定法により、全アミン価(e)、1級アミン価(c)、2級および3級アミン価(f)を分別定量する。さらに、アセチル化−過塩素酸法により、3級アミン価(g)を定量して、下記数式(1)により2級アミン価(d)を算出する。
e=c+d+g=c+f ・・・(数式1)
(22)ポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価(単位:mgKOH/g)
JIS K−0070記載の方法により行った。ポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価(a)は、OHV(b)と1級アミン価(c)および(数式1)から求めた2級アミン価(d)の合計を表す。
【0256】
上記(19)及び(20)の分析方法により、ポリオキシアルキレンポリアミンの分子末端の水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、及び3級アミノ基が全て求められる。
(23)ポリオキシアルキレンポリアミンの粘度(η、単位:mPa・s/25℃)
JIS K−1557に記載される方法に準ずる。
(24)ポリオキシアルキレンポリアミンのH−T結合選択率
上記したポリオキシアルキレンポリオールの項に記載した方法と同じ。
ポリオキシアルキレンポリアミンの製造に用いるポリオキシアルキレンポリオールの合成触媒は、ホスファゼニウム化合物b(P5NMe2OH)を使用した。
【0257】
以下に、ポリオキシアルキレンポリアミンの製造装置について説明する。ポリオキシアルキレンポリアミンの製造に用いるポリオキシアルキレンポリオールの製造装置(以下、オートクレーブAと言う)は、攪拌機、温度計、圧力計、窒素装入口およびモノマーであるアルキレンオキサイド装入口を装着した内容積2.5Lの耐圧製オートクレーブ(日東高圧製)を使用した。
ポリオキシアルキレンポリアミンの製造装置(以下、オートクレーブBと言う)は、攪拌機、温度計、圧力計、窒素装入口、水素および液体アンモニア装入口を装着した内容積1.0Lの耐圧製オートクレーブ(日東高圧製)を使用した。
【0258】
実施例32
ポリオキシアルキレンポリアミンA
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.009モルのP5NMe2OH、及び0.02モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら103℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブAに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが33.6mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。オートクレーブAの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)の条件で40分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0259】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、5重量部のNiケイソウ土触媒(Ni含有率50重量%、以下同様)をオートクレーブBに仕込み、10kgf/cm2 (980kPa)の条件で窒素置換を5回行った。粗製ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1当量に対して、液体アンモニアを10当量になるように装入した後、水素を圧力50kgf/cm2 (4900kPa)になるまで仕込んだ。攪拌しながら220℃まで昇温し、そのまま8時間反応を行った。このとき最大圧力は63kgf/cm2 (6174kPa)であった。反応終了後、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で20分間減圧乾燥を行い、ポリオキシアルキレンポリアミン中の過剰のアンモニアを留去した。その後、ポリオキシアルキレンポリアミン100重量部に対して、吸着剤(吉富製薬(株)製、商品名: AD−600NS、以下同様)を0.3重量部加え、80℃、2時間の条件で処理を行った。次いで、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙を用いた減圧ろ過により触媒、吸着剤を除去した。得られたポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価は33.6mgKOH/g、全アミン価29.8mgKOH/g、1級アミン価29.0mgKOH/g、2級アミン価0.8mgKOH/g、3級アミン価は検出されなかった。粘度(η)700mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.0モル%であった。
【0260】
実施例33
ポリオキシアルキレンポリアミンB
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにジプロピレングリコール1モルに対して、0.020モルのP5NMe2OH、及び0.04モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブAに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度70℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが32mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。その後、窒素によりゲージ圧1.2kgf/cm2 (219kPa)に調整し、反応温度70℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドの付加重合を行った。さらに、オートクレーブAの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)の条件で20分間減圧処理を行った後、大気圧状態から反応温度70℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが18.5mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0261】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、5重量部のNiケイソウ土触媒(Ni含有率50重量%)をオートクレーブBに仕込み、10kgf/cm2 (980kPa)の条件で窒素置換を5回行った。粗製ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1当量に対して、液体アンモニアを10当量になるように装入した後、水素を圧力50kgf/cm2 (4900kPa)になるまで仕込んだ。攪拌しながら220℃まで昇温し、そのまま8時間反応を行った。このとき最大圧力は60kgf/cm2 (5880kPa)であった。反応終了後、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で20分間減圧乾燥を行い、ポリオキシアルキレンポリアミン中の過剰のアンモニアを留去した。その後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙を用いた減圧ろ過によりポリオキシアルキレンポリアミンの精製を行った。得られたポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価は18.5mgKOH/g、全アミン価16.1mgKOH/g、1級アミン価15.6mgKOH/g、2級アミン価0.48mgKOH/g、3級アミン価は検出されなかった。粘度(η)1100mPa・s/25℃、H−T結合選択率97.0モル%であった。
【0262】
実施例34
ポリオキシアルキレンポリアミンC
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して、0.010モルのP5NMe2OH、及び0.04モルのトルエンを加え、窒素をキャピラリー管で導入しながら105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間の条件で減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物をオートクレーブAに仕込み、窒素置換を行った後、10mmHgabs.(1,330Pa)の減圧状態から反応温度75〜82℃で、反応時の最大圧力が4.8kgf/cm2 (470kPa)の条件でOHVが28.5mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの多段付加重合を行った。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で105℃、5mmHgabs.(665Pa)の条件で50分間減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。
【0263】
ホスファゼニウム化合物を含んだ粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、5重量部のNiケイソウ土触媒(Ni含有率50重量%)をオートクレーブBに仕込み、10kgf/cm2 (980kPa)の条件で窒素置換を5回行った。液体アンモニアを粗製ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1当量に対して10当量になるように装入した後、水素を圧力50kgf/cm2 (4900kPa)になるまで仕込んだ。攪拌しながら220℃まで昇温し、そのまま8時間反応を行った。このとき最大圧力は65kgf/cm2 (6370kPa)であった。反応終了後、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で20分間減圧乾燥を行い、ポリオキシアルキレンポリアミン中の過剰のアンモニアを留去した。次いで、ポリオキシアルキレンポリアミン100重量部に対して、0.3重量部の吸着剤AD−600NSを添加し、80℃、3時間の精製処理を行った。アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙を用いた減圧ろ過により吸着剤、触媒の除去を行った。得られたポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価は28.5mgKOH/g、全アミン価25.0mgKOH/g、1級アミン価24.0mgKOH/g、2級アミン価1.00mgKOH/g、3級アミン価は検出されなかった。粘度(η)1050mPa・s/25℃、H−T結合選択率96.4モル%であった。
【0264】
以下、比較例について説明する。比較例で用いたポリオキシアルキレンポリオール合成用触媒は、前記したDMCとKOMeである。
比較例29
ポリオキシアルキレンポリアミンD
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレンポリオールMN1000(三井化学(株)製;OHV168mgKOH/g)100重量部に対して、0.5重量部のDMCを添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間の減圧脱水を行った。次いで、オートクレーブAに該化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV33.6mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。
【0265】
そのポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して、2.22重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)の条件で2時間行った。その後、水を3重量部と吸着剤AD−600NS(富田製薬(株)製)を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、その後、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で2時間減圧脱水を行い、DMCの除去処理を行った。
【0266】
得られたポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、5重量部のNiケイソウ土触媒(Ni含有率50重量%)をオートクレーブBに仕込み、10kgf/cm2 (980kPa)の条件で窒素置換を5回行った。ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1当量に対して、液体アンモニアを10当量になるように装入した後、水素を圧力50kgf/cm2 (4900kPa)になるまで仕込んだ。攪拌しながら220℃まで昇温し、そのまま8時間反応を行った。このとき最大圧力は69kgf/cm2 (6762kPa)であった。反応終了後、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で20分間減圧乾燥を行い、ポリオキシアルキレンポリアミン中の過剰のアンモニアを留去した。その後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙を用いた減圧ろ過により触媒の除去を行った。得られたポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価は33.6mgKOH/g、全アミン価29.9mgKOH/g、1級アミン価29.3mgKOH/g、2級アミン価0.6mgKOH/g、3級アミン価は検出されなかった。粘度(η)2500mPa・s/25℃、H−T結合選択率87.5モル%であった。
【0267】
比較例30
ポリオキシアルキレンポリアミンE
プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加重合したポリオキシプロピレンポリオールDiol400(三井化学(株)製)100重量部に対して、0.03重量部のDMCを添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間の減圧脱水を行った。次に、オートクレーブAにその化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV32.0mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。
【0268】
そのポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して2.9重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)で2時間行った。その後、水を3重量部と吸着剤AD−600NS(富田製薬(株)製)を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で2時間減圧脱水を行い、DMCの除去処理を行った。エチレンオキサイドの付加重合を行うため、DMC除去後のポリオキシプロピレンポリオール100重量部に2.5重量部の30重量%のKOMeのメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を100℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で3時間行った。オートクレーブAにその化合物を仕込み、窒素置換後、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHVが28.0mgKOH/gになるまでエチレンオキサイドを装入し、反応させた。反応後、減圧処理を行い、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。更にDMCを用いてプロピレンオキサイドの付加重合を行うため、ポリオキシアルキレンポリオール中からのカリウムの除去を行った。
【0269】
粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のカリウム1モルに対して、1.2モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液)並びに粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して4重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名:KW−700SN)を8000ppm添加し、減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。そのポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、先に用いたDMCを0.01重量部添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)、3時間減圧脱水を行った後、反応温度80℃、反応時の最大圧力が4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV18.6mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行った。そのポリオキシアルキレンポリオールからのDMC除去操作は先に詳述したKOMeを用いる方法で実施した。
【0270】
得られたポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、5重量部のNiケイソウ土触媒(Ni含有率50重量%)をオートクレーブBに仕込み、10kgf/cm2 (980kPa)の条件で窒素置換を5回行った。液体アンモニアをポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1当量に対して10当量になるように装入した後、水素を圧力50kgf/cm2 (4900kPa)になるまで仕込んだ。攪拌しながら220℃まで昇温し、そのまま8時間反応を行った。このときの最大圧力は62kgf/cm2 (6080kPa)であった。反応終了後、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で20分間減圧乾燥を行い、ポリオキシアルキレンポリアミン中の過剰のアンモニアを留去した。次いで、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙を用いた減圧ろ過により触媒の除去を行った。得られたポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価は18.6mgKOH/g、全アミン価16.0mgKOH/g、1級アミン価15.5mgKOH/g、2級アミン価0.5mgKOH/g、3級アミン価は検出されなかった。粘度(η)3200mPa・s/25℃、H−T結合選択率86.0モル%であった。
【0271】
比較例31
ポリオキシアルキレンポリアミンF
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレンポリオールMN1000(三井化学(株)製;OHV168mgKOH/g)100重量部に対して、0.7重量部のDMCを添加し、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下で3時間の減圧脱水を行った。次いで、オートクレーブAにその化合物を仕込み、反応温度80℃、反応時の最大圧力4kgf/cm2 (392kPa)の条件でOHV28.1mgKOH/gになるまでプロピレンオキサイドの付加重合を行い、DMCを含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。
【0272】
次に、粗製ポリオキシアルキレンポリオールからDMCの除去操作を行った。DMCを含有しているポリオキシプロピレンポリオール100重量部に対して、3.9重量部の30重量%のカリウムメチラート(KOMe)のメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2,660Pa)で2時間行った。その後、水を5重量部と吸着剤AD−600NS(富田製薬(株)製)を5重量部加え、90℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌し、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙を用いて減圧ろ過を行った。ろ過後、120℃、10mmHgabs.(1,330Pa)の条件で2時間減圧脱水を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。
【0273】
得られたポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、5重量部のNiケイソウ土触媒(Ni含有率50重量%)をオートクレーブBに仕込み、10kgf/cm2 (980kPa)の条件で窒素置換を5回行った。ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1当量に対して、液体アンモニアを10当量になるように装入した後、水素を圧力50kgf/cm2 (4900kPa)になるまで仕込んだ。攪拌しながら220℃まで昇温し、そのまま8時間反応を行った。このときの最大圧力は65kgf/cm2 (6370kPa)であった。反応終了後、105℃、10mmHgabs.(1,330Pa)以下の条件で20分間減圧乾燥を行い、ポリオキシアルキレンポリアミン中の過剰のアンモニアを留去した。次いで、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙を用いた減圧ろ過により触媒の除去を行った。得られたポリオキシアルキレンポリアミンの活性水素価は28.1mgKOH/g、全アミン価24.4mgKOH/g、1級アミン価23.7mgKOH/g、2級アミン価0.7mgKOH/g、3級アミン価は検出されなかった。粘度(η)2350mPa・s/25℃、H−T結合選択率86.3モル%であった。
【0274】
実施例32〜34、比較例29〜31で得られたポリオキシアルキレンポリアミン(以下、ポリアミンと言う)の活性水素価、アミン価、粘度(η)、並びにH−T結合選択率(以下、H−Tと言う)を[表13]にまとめて表記した。表中の開始剤で、Glyはグリセリンを、DPGはジプロピレングリコールの略号である。DMCは複金属シアン化物錯体の略である。POはプロピレンオキサイドを、EOはエチレンオキサイドの略号である。表中のポリオキシアルキレンポリアミンの分析値は先に詳述した方法により求めた。
【0275】
【表13】
【0276】
実施例の考察7
実施例32〜34、比較例29〜31より、ホスファゼニウム化合物をアルキレンオキサイドの重合触媒としたポリオキシアルキレンポリオールを前駆体とする、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンは、DMC触媒ポリオールを用いたポリオキシアルキレンポリアミンと比較して粘度が低い。DMC触媒では、エチレンオキサイドの共重合反応に際して、一旦、DMCをアルカリ金属化合物(カリウムメチラート)との反応により失活させ、次いで、アルカリ金属化合物触媒によりエチレンオキサイドを重合しなければならないため、操作が複雑である。一方、本発明のホスファゼニウム化合物触媒では、エチレンオキサイドとの共重合反応においても複雑な操作を必要とせず、低粘度のポリオキシアルキレンポリアミンが得られる。
【0277】
ポリウレタンウレア樹脂
次に、本発明のポリオキシアルキレンポリアミン(以下、ポリアミンと言う)の効果を明らかにする目的で、実施例及び比較例を挙げて説明する。
前述した実施例32(ポリアミンA)、実施例34(ポリアミンC)、比較例29(ポリアミンD)、及び比較例31(ポリアミンF)で得られたポリアミンを用いて、ポリウレタン用の射出成形機により金型内でRIM成形を行った。ポリウレタン用の射出成形機は、東邦機械(株)製のNR−230、及びシンシナチ・ミラクトン社製のLRM−150Mを使用した。
ポリアミンと鎖延長剤であるエチルコーポレーション社製のDETDA(3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエンと3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエンの重量比が80:20の混合物)を予備混合し、次いで、十分に減圧脱泡した(以下、その成分をアミン混合液と言う)。
【0278】
ポリイソシアネート化合物として、三井化学(株)製のコスモネートPH(4,4' −ジフェニルメタンジイソシアネート)と、トリプロピレングリコール(三井化学(株)製)を反応させたイソシアネート基含有量(NCO%)22.5重量%のイソシアネート基末端プレポリマーを用いた(以下、プレポリマーと言う)。そのプレポリマーも成形前には十分に減圧脱泡を行った。
上記したアミン混合液を35℃に、プレポリマーを45℃に温度調整し、射出速度250g/秒、射出時間2秒の条件で成形を行った。金型は、あらかじめ75℃に加熱した500mm×400mm×3.0mmのアルミニウム製のものを使用した。
【0279】
(25)ポリウレタンウレア樹脂の充填性
上記方法により、試料を金型へ注入して成形し、30秒後に脱型した。金型内部を目視観察して、樹脂の充填性を調べた。評価基準は以下の通り。
○:金型へ樹脂が均一に充填されている。
×:金型へ樹脂が不均一に充填されている。
(26)ポリウレタンウレア樹脂の表面状態
前項で得られた成形品を目視観察して、樹脂の表面状態を調べた。評価基準は以下の通り。
○:表面にしわ、ボイドがなく、平滑である。
×:表面にしわ、ボイドがある。
(27)ポリウレタンウレア樹脂の物性
成形品より試験片を切り出し、120℃のオーブンで2時間加熱した後、樹脂の物性を測定した。伸び、硬度、引張強度については、JIS K−7312に記載される方法に準じて測定した。
(28)ポリウレタンウレア樹脂の密度
MIRAGE社製、ELECTRONIC DENSIMETER(型式:SD−120L)を用いて、温度23℃における密度を測定した。
【0280】
[表14]に原料の配合比、成形直後の充填性、表面状態並びに物性測定結果を示す。[表14]中のポリアミンはポリオキシアルキレンポリアミン、DETDAは上記ジエチルジアミノトルエン、プレポリマーは上記イソシアネート基末端プレポリマーをそれぞれ示す。
【0281】
【表14】
【0282】
実施例の考察8
実施例35〜36、及び比較例32〜33より、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを用いたポリウレタンウレア樹脂は、DMCを触媒とするポリオールを前駆体としたポリアミンと比較して、金型への充填性及び成形品の表面状態が良好である。又、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンを用いたポリウレタンウレア樹脂は、伸び、硬度及び引張強度等の機械的性質においても優れている。
【0283】
【発明の効果】
ホスファゼニウム化合物を触媒とした、本発明のポリオキシアルキレンポリオールは、DMCを用いる方法と比較して、H―T結合選択率が高く、主反応成分の分子量分布がシャープである。そのため、低粘度である特徴を有し、且つ、モノオールの含有量が低い。更に、DMC触媒は、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドとの交互共重合反応時には、触媒を切り替えるなどの煩雑な反応操作が必要である。一方、本発明は、ホスファゼニウム化合物触媒を用いるため、上記の如き煩雑な反応操作は不要である。
又、アルカリ金属水酸化物である水酸化セシウムを触媒とした場合、ポリオキシアルキレンポリオールのH−T結合選択率が高く、粘度が低い。然し、モノオール含有量を低減させるためには、ポリオキシアルキレンポリオールの反応時間が長く、生産性が悪い。一方、本発明によれば、モノオール含有量の低い、高分子量のポリオキシアルキレンポリオールを効率良く生産することが可能である。
【0284】
本発明のポリマー分散ポリオールは、モノオール含有量が低く、H−T結合選択率が高いポリオキシアルキレンポリオールを分散媒としているため、低粘度である特徴を有し、広範なポリウレタン用途において物性向上をもたらすことができる。又、ポリマー濃度を高くした場合であっても、従来品に比べ、低粘度で、且つ、粒子凝集がない分散安定性の良いポリマー分散ポリオールである。
本発明のイソシアネート基末端プレポリマーは、モノオール含有量が低く、H−T結合選択率が高いポリオキシアルキレンポリオールを使用しているため、低粘度である特徴を有し、広範なポリウレタン用途において物性向上をもたらすことができる。しかも、イソシアネート基末端プレポリマーの貯蔵安定性にも優れている。
【0285】
本発明の遊離イソシアネート化合物の含有量の低いイソシアネート基末端プレポリマーは、DMC触媒、及びCsOH触媒を用いたプレポリマーと比較して、粘度が低い。そのため、可塑剤、有機溶剤などの使用量が低減できる上、作業性に優れている。
本発明のポリウレタン樹脂は、DMC触媒、及びCsOH触媒を用いた系に比較して、硬度、破断強度、伸び、反発弾性、引裂強度、耐水性が優れ、ヒステリシスが少ない等の利点を有する。又、本発明のポリウレタン樹脂は、タックが少なく、表面の汚染も少ない。
更に、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンは、低粘度であり、しかも表面状態が良好で、力学特性に優れたポリウレタンウレア樹脂を与える。
【0286】
従って、本発明のポリオキシアルキレンポリオール、ポリマー分散ポリオール、イソシアネート基末端プレポリマー、及び、ポリオキシアルキレンポリアミンは、硬質、半硬質、軟質ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤、床材、防水材、シーリング剤、靴底、エラストマー、潤滑剤、作動液及びサニタリー用品等の原料として、各分野において使用できる、極めて有用な資材である。更に、本発明のポリオキシアルキレンポリアミンは、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド等の各種プラスチックの原料として有用な化合物である。
Claims (19)
- 化学式(1)(化1)
で表されるホスファゼニウム化合物を触媒として用いて得られたポリオキシアルキレンポリオールであって、水酸基価(OHV)が2〜200mgKOH/g、総不飽和度(C=C)が0.0001〜0.07meq./g、プロピレンオキサイド付加重合によるポリオキシアルキレンポリオールのヘッド−トウ−テイル(H−T)結合選択率が95モル%以上、GPC溶出曲線における最大ピーク高さの80%でのピーク幅(W 80 )に対する最大ピーク高さの20%でのピーク幅(W 20 )の比(W 20 /W 80 )が1.5以上、3未満であり、ホスファゼニウム化合物触媒の残存量が150ppm以下であることを特徴とするポリオキシアルキレンポリオール。 - OHVが9〜120mgKOH/g、C=Cが0.0001〜0.05meq./g、H−T結合選択率が96モル%以上であり、且つ、GPC溶出曲線における最大ピーク高さの80%でのピーク幅(W 80 )に対する最大ピーク高さの20%での ピーク幅(W 20 )の比(W 20 /W 80 )が2以上、3未満である、請求項1に記載のポリオキシアルキレンポリオール。
- C=Cが0.0001〜0.03meq./gである、請求項1に記載のポリオキシアルキレンポリオール。
- 化学式(1)(化3)
で表されるホスファゼニウム化合物と活性水素化合物の存在下、活性水素化合物1モルに対して化学式(1)又は化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物を1×10-4〜5×10-1モルの範囲で調製し、反応温度が15〜130℃、最大反応圧力が882kPa(9kgf/cm2 )である条件下で、アルキレンオキサイドを付加重合して粗製ポリオキシアルキレンポリオールを製造し、次いで、下記e〜hのいずれか一つの方法:
e.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸又は有機酸を0.5〜8モル添加し、50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和し、その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜2.5重量部添加し、減圧処理により水を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩及び吸着剤を除去する方法、
f.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤及び水の混合物を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸又は有機酸を0.5〜8モル添加し、50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和し、その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜2.5重量部添加し、減圧処理により水及び有機溶剤を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩及び吸着剤を除去する方法、
g.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水単独、又は、水とポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤との混合物を1〜200重量部添加して分液し、水洗後、減圧処理により水及び有機溶剤を留去する方法、
h.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水を20〜200重量部加え15〜100℃でイオン交換樹脂と接触させた後、減圧処理により脱水を行う方法、
により、粗製ポリオキシアルキレンポリオールに含まれるホスファゼニウム化合物の除去操作を行うことを特徴とするポリオキシアルキレンポリオールの製造方法。 - 上記e及びfの方法において、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸又は有機酸を0.5〜2.5モル、及び、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部添加することを含む、請求項4に記載のポリオキシアルキレンポリオールの製造方法。
- 化学式(1)中のa、b、c、d及びrが全て1であり、T−が塩素イオンである、請求項4に記載のポリオキシアルキレンポリオールの製造方法。
- 化学式(2)中のa、b、c、d及びrが全て1であり、Q−がヒドロキシアニオンである、請求項4に記載のポリオキシアルキレンポリオールの製造方法。
- 活性水素化合物1モルに対して化学式(1)又は化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物が5×10-4〜1×10-1モルの範囲で調製され、反応温度が40〜120℃、最大反応圧力が686kPa(7kgf/cm2 )である条件下で、アルキレンオキサイドを付加重合して粗製ポリオキシアルキレンポリオールを製造する、請求項4に記載の製造方法。
- ポリオール中にポリマー粒子が分散したポリマー分散ポリオールであって、ポリオールが請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレンポリオールであり、且つ、ポリマー粒子の濃度が5〜60重量%である、ポリマー分散ポリオール。
- ポリマー粒子の濃度が10〜50重量%である、請求項9に記載のポリマー分散ポリオール。
- ポリマー粒子が、アクリロニトリル、スチレン、アクリルアミド及びメタクリル酸メチルから選ばれた少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体のポリマーである、請求項9に記載のポリマー分散ポリオール。
- ポリオールとポリイソシアネートとを反応させたイソシアネート基末端プレポリマーであって、ポリオールが請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレンポリオールであり、且つ、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量が0.3〜30重量%である、イソシアネート基末端プレポリマー。
- JIS K1557に記載される方法により求めたポリオキシアルキレンポリオールのCPRが5以下である、請求項12に記載のイソシアネート基末端プレポリマー。
- イソシアネート基の含有量が0.4〜20重量%である、請求項12に記載のイソシアネート基末端プレポリマー。
- 遊離イソシアネート化合物の含有量が1重量%以下である、請求項12に記載のイソシアネート基末端プレポリマー。
- ポリオールとポリイソシアネートとを反応させたイソシアネート基末端プレポリマーであって、ポリオールが請求項9ないし11のいずれか1項に記載のポリマー分散ポリオールであり、且つ、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量が0.3〜30重量%である、イソシアネート基末端プレポリマー。
- イソシアネート基の含有量が0.4〜20重量%である請求項16に記載のイソシアネート基末端プレポリマー。
- ポリオールの末端水酸基がアミノ化されたポリオキシアルキレンポリアミンであって、ポリオールが請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレンポリオールである、ポリオキシアルキレンポリアミン。
- 活性水素価が5〜180mgKOH/g、オキシプロピレン基の含有量が少なくとも50モル%、オキシプロピレン基結合のH−T結合選択率が95モル%以上である、請求項18に記載のポリオキシアルキレンポリアミン。
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