JP3357045B2 - はんだ合金およびはんだ接合部 - Google Patents

はんだ合金およびはんだ接合部

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JP3357045B2 JP2002537933A JP2002537933A JP3357045B2 JP 3357045 B2 JP3357045 B2 JP 3357045B2 JP 2002537933 A JP2002537933 A JP 2002537933A JP 2002537933 A JP2002537933 A JP 2002537933A JP 3357045 B2 JP3357045 B2 JP 3357045B2
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、環境に対する安全性の高いはんだ合金およ
びそれを用いた電気・電子機器のはんだ接合部に関す
る。
背景技術 従来、各種の電気・電子機器におけるはんだ接合に
は、融点が低く、大気中等の酸化性雰囲気中でも濡れ性
がよい等の観点から、鉛−錫(Pb−Sn)系のはんだ
合金が多用されている。Pbは毒性を有するため、Pb
やPb含有合金等を扱う業務については従来から規制が
なされており、Pb中毒等の発生頻度は極めて低く抑え
られてきた。
しかし、最近の環境破壊に対する感心の高まりによっ
て、Pbを含むはんだ合金を用いた各種機器、特に電気
・電子機器の廃棄処理についても問題視され始めてい
る。
これまで、使用済の電子機器は、通常の産業廃棄物や
一般廃棄物と同様に、主として埋め立て処理することが
一般的であった。しかし、Pbを含むはんだ合金を多量
に用いた使用済み電子機器をそのまま埋め立て処理等に
より廃棄し続けていくと、Pbの溶出によって環境や生
物に悪影響を及ぼすことが危惧される。
そのため近い将来には、Pb含有はんだ合金を多量に
用いた使用済み電子機器は、Pbを回収した後に廃棄す
ることが義務付けられることになるであろう。
しかし、これまでに、使用済み電子機器等から効率的
に且つ有効にPbを除去する技術は確立されていない。
また、Pbの回収コストが製品コストの上昇を招く恐れ
がある。
そこで、Pbを含まない無鉛はんだ合金の開発が強く
望まれている。
これまで、無鉛はんだ合金として、例えば錫をベース
とし、これにZn(亜鉛)、Ag(銀)、Bi(ビスマ
ス)、Cu(銅)、等を複合添加した合金が一部実用化
されているが、特殊な用途に限定されている。それは、
従来のPb−Snはんだ合金を用いていた一般的な用途
で必要とされる諸特性、すなわち低融点で濡れ性が良い
こと、リフロー処理が可能であること、母材と反応して
脆い化合物層や脆化層を形成しないこと、等の特性(は
んだ付け性)が得られないからである。
現在、有望な無鉛はんだ合金としてSn−Znはんだ
合金が提案されている。Sn−Znはんだ合金は融点が
200℃近傍にあり、従来のSn−Pbはんだ合金を代
替できる可能性が極めて高い。
しかし、Znは酸化が激しく、はんだ濡れ性が劣るた
め、良好なはんだ付け性を確保するためには、窒素ガス
等の非酸化性雰囲気を用いる必要がある。
Sn−Zn合金のはんだ濡れ性を改善するために、C
u(銅)やGe(ゲルマニウム)を添加することが提案
されているが、期待された濡れ性の向上は得られていな
い。むしろCuの添加によって、Cu−Zn金属間化合
物がはんだ合金中に急速に形成されるため、はんだ合金
の特性が悪化するという欠点がある。
更に、Znは活性が非常に高く、Cu母材上にはんだ
付けを行った場合に、少量の入熱でもCu−Zn金属間
化合物の厚い層が容易に形成してしまい、接合強度が低
下する原因になる。この場合の母材/はんだ界面構造
は、Cu母材/β′−CuZn層/γ−CuZn
/はんだ層、という構成になると考えられる。Cu−Z
n金属間化合物層は、はんだとの界面での接合強度が極
めて低く、容易に剥離が発生する。Cu母材の表面を、
Ni(ニッケル)/Au(金)めっき、パラジウムめっ
き、パラジウム/金めっき処理した場合にも、同様な現
象が発生してしまう。そのため、電子機器の信頼性の観
点から、Sn−Znはんだ合金の実用は困難であった。
発明の開示 本発明は、環境に対して悪影響を及ぼすことがなく、
従来のPb−Snはんだ合金に匹敵するはんだ付け性を
有するはんだ合金およびそれを用いたはんだ接合部を提
供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本願第1発明によれ
ば、下記(1)および(2)が提供される。
(1)Zn:3.0〜14.0wt%、Al:0.002
0〜0.0080wt%、および残部:Snおよび不可避
的不純物から成るはんだ合金。
(2)上記(1)記載のはんだ合金から成る、電気・電
子機器のはんだ接合部。
また、本願第2発明によれば、下記(3)および
(4)が提供される。
(3)Zn:3.0〜14.0wt%、Bi:3.0〜
6.0wt%、Al:0.0020〜0.0100wt%、
および残部:Snおよび不可避的不純物から成るはんだ
合金。
(4)上記(3)のはんだ合金から成る、電気・電子機
器のはんだ接合部。
図面の簡単な説明 図1は、濡れ性を評価するためのメニスカス試験の方法
を示すグラフである。
図2は、ラップジョイント接合強度試験の方法を示す模
式図である。
図3は、Xwt%Zn−0.0060wt%Al−Snはん
だ合金のZn含有量(X)と融点(液相線温度)との関
係を示すグラフである。
図4は、Xwt%Zn−0.0060wt%Al−Snはん
だ合金のZn含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグ
ラフである。
図5は、4wt%Zn−Xwt%Al−Snはんだ合金のA
l含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフであ
る。
図6は、8wt%Zn−Xwt%Al−Snはんだ合金のA
l含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフであ
る。
図7は、10wt%Zn−Xwt%Al−Snはんだ合金の
Al含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフであ
る。
図8は、Xwt%Zn−3Bi−0.0060wt%Al−
Snはんだ合金のZn含有量(X)と融点(液相線温
度)との関係を示すグラフである。
図9は、8Zn−Xwt%Bi−0.0060wt%Al−
Snはんだ合金のBi含有量(X)と融点(液相線温
度)との関係を示すグラフである。
図10は、8wt%Zn−Xwt%Bi−0.0060wt%
Al−Snはんだ合金のBi含有量(X)と濡れ時間と
の関係を示すグラフである。
図11は、8wt%Zn−3wt%Bi−Xwt%Al−Sn
はんだ合金のAl含有量(X)と濡れ時間との関係を示
すグラフである。
図12は、種々の組成のはんだ合金について、ラップジ
ョイント接合強度を比較して示すグラフである。
図13は、Sn−Zn−Alはんだ合金粉末粒子の表面
領域における深さ方向の元素分布を示すグラフである。
図14は、Sn−Zn−Alはんだ合金粉末によるはん
だ接合部におけるはんだボールの発生状況を示す模式図
である。
図15は、Sn−Zn−Alはんだ合金粉末およびSn
−Zn−Bi−Alはんだ合金粉末によるはんだ接合部
に発生したはんだボールの外観写真である。
図16は、Sn−Zn−Alはんだ合金粉末のAl含有
量とはんだ接合部におけるはんだボールの発生率との関
係を示すグラフである。
図17は、Sn−Zn−Bi−Alはんだ合金粉末のA
l含有量とはんだ接合部におけるはんだボールの発生率
との関係を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態 本発明において、合金成分の含有量を限定した理由は
下記のとおりである。
・Zn:3〜14wt%(第1・第2発明共通) Znは、はんだ合金の融点を下げ、濡れ性を向上させ
る基本的な合金成分である。Zn含有量が3〜14wt%
の範囲内であれば、安定して良好な濡れ性が確保でき
る。Zn含有量が3wt%未満であっても14wt%を超え
ても濡れ性が低下する。
・Al:0.0020〜0.0080wt%(第1発明:
Biなし) ・Al:0.0020〜0.0100wt%(第2発明:
Bi含有) Alは、Sn−Zn合金の酸化を抑制し、良好な濡れ
性を確保するために添加する。前述のようにZnは酸化
が激しく、はんだ表面に生成する酸化皮膜は、母材とは
んだとの間に介在して、はんだによる母材の濡れを阻害
する。Alによる酸化抑制効果を得るためには、Al含
有量を0.0020wt%以上とする必要がある。しか
し、Al含有量が多すぎるとAlの酸化皮膜が厚くなり
濡れ性が劣化することが実験的に確認されている。その
ため、Al含有量の上限は、Biを含有しない第1発明
では0.0080wt%とし、Biを含有する第2発明で
は0.0100wt%とする。
・Bi:3.0〜6.0wt%(第2発明) Biは、はんだ合金の融点を更に低下させ、濡れ性を
更に向上させる。この効果を得るためには、Bi含有量
を3.0wt%以上とする必要がある。しかし、Bi含有
量が多すぎると、はんだが硬くなり過ぎて脆くなり、は
んだ接合部の信頼性を確保できない。そのため、Bi含
有量の上限は6.0wt%とする。
はんだ合金、特に電気・電子機器のはんだ接合用のは
んだ合金には、下記の特性が要求される。
従来のSn−Pb共晶はんだ合金にできるだけ近い
低温ではんだ付けが可能なこと。すなわち、融点が20
0℃を大きく超えず、高くても220℃程度以下が確保
できること。
母材との濡れ性が良好であること。
母材との反応により脆い金属間化合物や脆化層を形
成しないこと。
合金成分の酸化物が、濡れ不良、ボイド、ブリッジ
等の欠陥の発生原因とならないこと。
量産工程でのはんだ接合に適した加工・供給形態
(はんだペースト、BGA用はんだボール等の形態)が
とれること。
本発明のZn−Al−Snはんだ合金およびZn−B
i−Al−Snはんだ合金は、Pbを含有しないことに
より高い環境安全性を備えると同時に、上記の要求特性
を備えている。
実施例 表1および表2に示した種々の組成のはんだ合金を溶
製し、下記の各方法により、融点(液相線温度)、濡れ
時間、接合強度を測定した。
〈融点の測定〉 DSC融点測定法(示差走査熱量測定)により、融点
の代表値として液相線温度を測定した。
〈濡れ時間の測定〉 レスカ社製メニスカス試験機(Solder Checker Model
SAT-5000)を用い、下記メニスカス試験方法により、
濡れ製の代表値として濡れ時間を測定した。なお、試験
雰囲気は大気中とした。ただし、雰囲気の酸素濃度の影
響を確認するために、表2のサンプルNo.45および6
1については、各々サンプルNo.44および60と同じ
組成のはんだ合金について酸素濃度2000ppmの窒
素ガス雰囲気中で試験を行った。
〔メニスカス試験方法〕
塩酸水溶液(約1.2モル/リットル)で洗浄した銅
板(5mm×40mm×厚さ0.1mm)に、RMAタ
イプのフラックス(タムラ化研製 ULF−500V
S)を塗布した後、240℃、250℃または260℃
に加熱したはんだ合金溶湯中へ、浸漬速度20mm/se
cで浸漬深さ5mmまで浸漬し、濡れ時間を測定した。
測定時間は8秒までとした。メニスカス試験では、図1
に示すような測定チャートが得られ、このチャートから
濡れ時間、濡れ力、ピールバック力等を読み取ることが
できる。これらのうち本実施例では、合金組成を最も敏
感に反映した濡れ時間によって濡れ製を評価した。
〈接合強度の測定〉 ラップジョイント接合強度試験により、接合強度を測
定した。図2に示したように、L形の銅板試験片をはん
だ接合した後、インストロン社製引張試験機により、引
張速度1mm/minで試験した。
〈測定結果の評価〉 〔融点および濡れ性の評価〕 (1)Zn−Al−Sn合金(第1発明) (1−1)Zn含有量の影響 図3および図4に、表1のサンプルNo.1〜12
(1.0〜20.0wt%Zn−0.0060wt%Al−
Sn)について、Zn含有量と融点(液相線温度)との
関係およびZn含有量と濡れ時間との関係をそれぞれ示
す。ここで、0.0060wt%Alは本発明の範囲内の
Al含有量である。
Al含有量が本発明の範囲内の上記値であって、Zn
含有量が本発明の範囲内(3.0〜14.0wt%)であ
るサンプルNo.3〜11は、融点が低下し(図3)、か
つ安定して良好な濡れ性(短時間での濡れ。図4)が得
られた。これに対して、Al含有量が本発明の範囲内の
上記値であっても、Zn含有量が本発明の範囲より少な
いサンプルNo.1,2および本発明の範囲より多いサン
プルNo.12は、濡れ性が低下(濡れ時間が増大)し
た。
(1−2)Al含有量の影響 図5、6、7に、表1のサンプルNo.13〜17
(4.0wt%Zn−0.0006〜0.0206wt%A
l−Sn)、サンプルNo.18〜29(8.0wt%Zn
−0.0006〜0.7912wt%Al−Sn)、およ
びサンプルNo.30〜34(10.0wt%Zn−0.0
006〜0.0206wt%Al−Sn)について、Al
含有量と濡れ時間との関係を示す。ここで、4.0wt%
Zn、8.0wt%Zn、および10.0wt%Znは、い
ずれも本発明の範囲内のZn含有量である。
Zn含有量が本発明の範囲内の上記各値であって、A
l含有量が本発明(第1発明)の範囲内(0.0020
〜0.0080wt%)であるサンプルNo.15、20〜
23、および32は、安定して良好な濡れ性(短時間で
の濡れ)が得られた。これに対して、Zn含有量が本発
明の範囲内の上記各値であっても、Al含有量が本発明
の範囲より少ないサンプルNo.14、18〜19、30
〜31、および本発明の範囲より多いサンプルNo.16
〜17、24〜29、33〜34は、濡れ性が低下(濡
れ時間が増大)した。
(2)Zn−Bi−Al−Sn合金(第2発明) (2−1)Zn含有量の影響 図8に、表2のサンプルNo.46〜50(1.0〜2
0.0wt%Zn−3.0wt%Bi−0.0060wt%A
l−Sn)について、Zn含有量と融点との関係を示
す。ここで、3.0wt%Biおよび0.0060wt%A
lは、本発明の範囲内のBi含有量およびAl含有量で
ある。
Bi含有量およびAl含有量が本発明の範囲内の上記
値であって、Zn含有量が本発明の範囲内であるサンプ
ルは融点が低下した。
(2−2)Bi含有量の影響 図9および図10に、表2のサンプルNo.51〜56
(8.0wt%Zn−0〜10.0wt%Bi−0.00
60wt%Al−Sn)について、Bi含有量と融点との
関係およびBi含有量と濡れ時間との関係をそれぞれ示
す。ここで、8.0wt%Znおよび0.0060wtAl
は、本発明の範囲内のZn含有量およびAl含有量であ
る。
Zn含有量およびAl含有量が本発明の範囲内の上記
値であって、Bi含有量が本発明の範囲内(3.0〜
6.0wt%)であるサンプルNo.53〜54は融点が低
下し(図9)、かつ安定して良好な濡れ性(短時間での
濡れ。図10)が得られた。これに対して、Zn含有量
およびAl含有量が本発明の範囲内の上記値であって
も、Bi含有量が本発明の範囲より少ないサンプルNo.
52は、濡れ性が低下(濡れ時間が増大)した。また、
Bi含有量が本発明の上限6.0wt%より多いサンプル
No.55〜56は、融点が低く、濡れ性も良好である
が、接合部の硬さが高く脆いため実用には適さない。
(2−3)Al含有量の影響 図11に、表2のサンプルNo.35〜45(8.0wt
%Zn−3.0wt%Bi−0〜0.6500wt%Al−
Sn)について、Al含有量と濡れ時間との関係を示
す。ここで、8.0wt%Znおよび3.0wt%Biは本
発明の範囲内のZn含有量およびAl含有量である。
Zn含有量およびBi含有量が本発明の範囲内の上記
値であって、Al含有量が本発明(第2発明)の範囲内
(0.0020〜0.0100wt%)であるサンプルN
o.38〜40は、安定して良好は濡れ性(短時間での濡
れ)が得られた。これに対して、Zn含有量およびBi
含有量が本発明の範囲内の上記値であっても、Al含有
量が本発明の範囲より少ないサンプルNo.35〜37、
および本発明の範囲より多いサンプルNo.41〜42
は、濡れ性が低下(濡れ時間が増大)した。更にAl含
有量の多いサンプルNo.43〜44は濡れ性は向上(濡
れ時間が減少)するが、Al含有量が多いと、はんだ粉
末(φ20〜45μm)形成時に表面にAlが偏析し、
はんだペーストとして使用できない。
表2のサンプルNo.57〜65はいずれも比較例であ
り、そのうちNo.57は従来のPb−Sn共晶はんだ合
金である。No.58は以降は種々のSnベース無鉛はん
だ合金であり、No.58Ag−Cu−Sn、No.59はZ
n−Sn、No.60、61はZn−Bi−Sn、No.6
2、63はZn−Bi−Cu−Sn、No.64はZn−
Bi−Ge−Sn、No.65はZn−Bi−Cu−Ge
−Snである。
これら比較例のSnベース無鉛はんだ合金のうち、N
o.59,60,62,63,64,65は濡れ性が劣
り、No.58は濡れ性が良好であるが融点が221.1
℃と高いという点で実用性がない。サンプルNo.61
は、サンプルNo.60と同じ組成ほはんだ合金につい
て、濡れ試験を大気中ではなく、酸素濃度2000pp
mの窒素ガス雰囲気中で行った結果であり、非酸化性の
雰囲気中でなくては良好は濡れ性が得られない点で、実
用上に劣る。これは、Zn含有量(8.0wt%)および
Bi含有量(3.0wt%)は本発明の範囲内であるがA
l含有量(0.6500wt%)が本発明の範囲より多い
サンプルNo.44、45についても同様である。
〔接合強度の評価〕
図12に、本発明の代表例としてサンプルNo.8
(8.0wt%Zn−0.0060wt%Al−Sn)、サ
ンプルNo.39(8.0wt%Zn−3.0wt%Bi−
0.0060wt%Al−Sn)、サンプルNo.40
(8.0wt%Zn−3.0wt%Bi−0.0100wt%
Al−Sn)の接合強度を、従来のPb−Sn共晶はん
だ(サンプルNo.57)および本発明の範囲外の無鉛は
んだ(サンプルNo.と比較して示す。同図に示したよう
に、本発明のはんだ合金は従来のPb−Sn共晶はんだ
合金と同等の接合強度が得られた。
〔はんだ粉末の特性とAlの効果〕 本発明のはんだ合金を実際にはんだ接合に用いるため
の典型的な一形態であるはんだ粉末としての特性に対す
るAlの効果を調べた。
〔1〕Alによる酸化防止効果 一般に、はんだの濡れ性は、はんだの酸化により阻害
される。特に、Sn−Zn系はんだの場合、Znが酸化
され易く、緻密性が低く厚いZn酸化膜が形成され、そ
れによって濡れ性が劣化する。
Alの添加によりSn−Zn系はんだの濡れ性が著し
く改善される理由は、大気と接触しているはんだの表面
領域において、Znに対してAlが優先的に酸化される
ためである。これは、Al原子が、下表に示すように、
Zn原子に比べて電子を放出し易く、酸素との反応性が
高いことによる。
表:ZnおよびAlの電子放出性 電子放出パラメータ Zn Al イオン化エネルギー(kcal/J) 217 138 電気陰性度(ポーリング値) 1.6 1.5 Al酸化膜は緻密性が極めて高いため、一旦形成され
るとそれ以降の酸素の侵入を防ぎ、Al酸化膜自体も薄
いまま維持されると共にZnの酸化を防止する。
Sn−Zn合金の表面におけるAl酸化膜の形成に
は、はんだ表面におけるAlの偏析が大きな影響を及ぼ
す。実際にはんだペーストとして用いられる形態のはん
だ粉末粒子について、Alの表面編析を調べた。
図13に、Sn−6.7wt%Zn−0.0024wt%Al合金
からなるはんだ粉末粒子(粒径40μm)の表面から内
部への深さ方向の元素濃度分布を示す。はんだ粉末の製
造条件および元素濃度分布の測定方法は下記のとおりで
ある。はんだ粉末製造条件 目標合金組成に溶解歩留まりを見込んだ配合組成の溶
湯を300℃で溶製し、こ溶湯を非酸化製雰囲気中で2
20℃に保持して遠心噴霧法を行い粉末を形成した。
得られた粉末を分級して、φ38〜45μmの粉末粒
度とした。
図13は粒径φ40μmの粉末粒子について測定した
結果である。
また、ICP法による分析値として上記組成を得た。元素濃度分布測定方法 下記の装置および条件によりオージェ分析を行い、粉
末粒子表面から深さ方向のSn、Zn、Al、Oの各元
素について濃度分布を測定した。
オージェ分析装置: 日本電子製 マイクロオージェ電子分光装置 JAMP-7
800F 測定条件: 加速電圧 10kV 照射電流 3nA 計測時間 300ms×5sweeps エッチング速度 30nm/min(SiO換算) 同図に示したように、はんだ粒子表面から深さ数nm
の表面領域にAlが高濃度に偏析していることが分か
る。酸素(O)は、はんだ粉末製造時に不可避的に生ず
る酸化によるものであり、Alと共に表面領域に高濃度
に偏析していることから、粒子表面に厚さ数nm程度の
Al酸化膜が形成されていると考えられる。
このように、Al添加したSn−Zn合金において
は、はんだ粉末粒子の表面にAlが高濃度で偏析してい
るため、Znの酸化が防止されて、高い濡れ性が確保で
きる。また、Al酸化膜は前述のように非常に緻密であ
るため、水分の浸入防止効果も高く、高温高湿環境下で
のはんだ接合部の耐食性を向上させる。
〔2〕はんだボールの発生とAl含有量の関係 上記のようにAlの存在はAl酸化膜の形成によりS
n−Zn系はんだの濡れ性向上に高い効果を発揮する。
しかし、Al含有量があまり高すぎると、はんだ接合
部においてはんだ粉末粒子の未溶融部(はんだボール)
が発生して接合不良の原因になる。
図14(1)〜(4)に、はんだ接合部におけるはんだボー
ルの発生状況を模式的に示す。同図は、基板Pにリード
QをはんだRによって接合した状態を示す。同図(1)は
Al含有量が本発明の範囲内にある場合であり、はんだ
接合部Rは完全に溶融している。これに対して、同図
(2)〜(4)はAl含有量が本発明の範囲を超えて順次多く
なった場合であり、(2)Al含有量が若干過多で、はん
だ接合部Rの表面に散発的にはんだボールBの発生が認
められる状態、(3)更にAl含有量が増加して、はんだ
接合部Rの表面全体ではんだボールBが発生した状態、
(4)Al含有量が非常に過多で、はんだ接合部Rが全く
溶融せず、はんだ接合部R全体が単にはんだボールBの
集合体である状態を示している。各図において、図示の
便宜上はんだボールは実際より拡大して示してある。
図15(1)および(2)に、それぞれSn−7.0wt%Zn
−0.04wt%AlおよびSn−7.0wt%%Zn−3.0wt%B
i−0.04wt%Alの組成のはんだ粉末を配合したはんだペ
ーストを用いたはんだ接合部の外観写真を示す。いずれ
も、はんだ合金のAl含有量が本発明の上限である0.00
80wt%(Biなしの場合)または0.0100wt%(Biあり
の場合)を大きく超えた組成であり、はんだ接合部の表
面全体にはんだボールが発生している。個々のはんだボ
ールBは、はんだペーストに配合したはんだ合金粉末粒
子に対応した粒径であり、はんだ粉末粒子が溶融せずに
残存した状態であると考えられる。
表3および表4に、Al含有量を種々に変えたはんだ
合金について、はんだ接合部におけるはんだボールの発
生量を示す。ここで、表3は第1発明に関係するBiな
しの合金について、表4は第2発明に関係するBiあり
の合金について、それぞれはんだボール発生個数、はん
だボール発生率、接合部良否判定結果を示す。表3およ
び表4に示した結果に基づいて、Al含有量とはんだボ
ール発生率との関係をそれぞれ図16および図17に示
す。
上記の結果から、Al含有量が本判明の上限を超える
とはんだボール発生率が急激に増加することが分かる。
すなわち、Biなしのはんだ合金の場合には第1発明に
従ってAl含有量を0.0080wt%以下とし、Biありのは
んだ合金の場合には第2発明に従ってAl含有量を0.01
00wt%以下とすれば、はんだボールの発生を実質的に防
止できることが分かる。
Al含有量が多いとはんだボールの発生が顕著になる
のは、以下の理由によると考えられる。
Al酸化膜を構成する酸化アルミニウム(Al
)は高融点(2015℃)であり、200℃程度
のはんだ接合温度では全く溶融しない。
Al含有量が適正範囲内であれば、はんだ粉末粒子表
面のAl酸化膜は非常に薄く機械的に弱いシェルであ
り、はんだ接合温度でそれ自体は溶融しなくても内部の
はんだが溶融すると自立できずに崩壊してしまい、はん
だ粒子同士の溶融・合体により正常な接合部が形成され
る。崩壊したAl酸化膜は、はんだ接合部内に微量の不
純物として含有されるだけであり、はんだ接合品質に対
して実質的な影響は及ぼさない。
これに対して、Al含有量が適正範囲より多すぎる
と、はんだ粉末粒子表面に形成されたAl酸化膜は厚く
なり、機械的に強固なシェルを形成するため、はんだ接
合時に崩壊せずに自立構造物として維持され、はんだ粉
末粒子同士の溶融・合体を妨げる結果、個々のはんだ粒
子がそれぞれはんだボールとして残存する。
このように、本発明のはんだ合金においてAl含有量
を上限値以下に限定することは、前述した合金特性とし
ての濡れ性確保と同様に、はんだ粉末特性としてのはん
だボール発生防止のためにも、非常に重要である。
以上説明したように、本発明の範囲内の化学組成を有
するはんだ合金は、環境に有害なPbを含有することな
く、従来のPb−Snはんだ合金に近い低融点と良好な
濡れ性を確保できる。
また、本発明のはんだ合金は、主たる合金成分である
Znが安価であり、典型的には電気・電子機器に従来多
量に用いられていたPb−Snはんだ合金と同程度に安
価に提供される。
本発明のはんだ合金は、例えば酸素、窒素、水素等の
不可避的不純物を少量含んでいても特に問題はない。た
だし、酸素は多量に存在するとはんだ合金を脆くする恐
れがあるので、酸素含有量は極力微量にすべきである。
産業上の利用可能性 本発明によれば、環境に対して悪影響を及ぼすことが
なく、従来のPb−Snはんだ合金に匹敵するはんだ付
け性を有するはんだ合金およびそれを用いたはんだ接合
部が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹居 成和 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (72)発明者 野田 豊 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (56)参考文献 特開2000−15478(JP,A) 特開 平9−206983(JP,A) 特開 昭59−42197(JP,A) 特開2001−150179(JP,A) 特開2000−326088(JP,A) 特公 昭62−35876(JP,B2) 特公 昭55−36032(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 1/00 - 3/08 B23K 35/26

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Zn:3.0〜14.0wt%、Al:0.
    0020〜0.0080wt%、および残部:Snおよび
    不可避的不純物から成るはんだ合金。
  2. 【請求項2】請求項1記載のはんだ合金から成る、電気
    ・電子機器のはんだ接合部。
  3. 【請求項3】Zn:3.0〜14.0wt%、Bi:3.
    0〜6.0wt%、Al:0.0020〜0.0100wt
    %、および残部:Snおよび不可避的不純物から成るは
    んだ合金。
  4. 【請求項4】請求項3記載のはんだ合金から成る、電気
    ・電子機器のはんだ接合部。
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