JPWO2002034969A1 - はんだ合金およびはんだ接合部 - Google Patents

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Abstract

環境に対して悪影響を及ぼすことがなく、従来のPb−Snはんだ合金に匹敵するはんだ付け性を有するはんだ合金およびそれを用いたはんだ接合部を提供する。Zn:3.0〜14.0wt%、Al:0.0020〜0.0080wt%、および残部:Snおよび不可避的不純物から成るはんだ合金。Zn:3.0〜14.0wt%、Bi:3.0〜6.0wt%、Al:0.0020〜0.0100wt%、および残部:Snおよび不可避的不純物から成るはんだ合金。上記のはんだ合金から成る、電気・電子機器のはんだ接合部。

Description

技術分野
本発明は、環境に対する安全性の高いはんだ合金およびそれを用いた電気・電子機器のはんだ接合部に関する。
背景技術
従来、各種の電気・電子機器におけるはんだ接合には、融点が低く、大気中等の酸化性雰囲気中でも濡れ性がよい等の観点から、鉛−錫(Pb−Sn)系のはんだ合金が多用されている。Pbは毒性を有するため、PbやPb含有合金等を扱う業務については従来から規制がなされており、Pb中毒等の発生頻度は極めて低く抑えられてきた。
しかし、最近の環境破壊に対する関心の高まりによって、Pbを含むはんだ合金を用いた各種機器、特に電気・電子機器の廃棄処理についても問題視され始めている。
これまで、使用済の電子機器は、通常の産業廃棄物や一般廃棄物と同様に、主として埋め立て処理することが一般的であった。しかし、Pbを含むはんだ合金を多量に用いた使用済み電子機器をそのまま埋め立て処理等により廃棄し続けていくと、Pbの溶出によって環境や生物に悪影響を及ぼすことが危惧される。
そのため近い将来には、Pb含有はんだ合金を多量に用いた使用済み電子機器は、Pbを回収した後に廃棄することが義務付けられることになるであろう。
しかし、これまでに、使用済み電子機器等から効率的に且つ有効にPbを除去する技術は確立されていない。また、Pbの回収コストが製品コストの上昇を招く恐れがある。
そこで、Pbを含まない無鉛はんだ合金の開発が強く望まれている。
これまで、無鉛はんだ合金として、例えば錫をベースとし、これにZn(亜鉛)、Ag(銀)、Bi(ビスマス)、Cu(銅)、等を複合添加した合金が一部実用化されているが、特殊な用途に限定されている。それは、従来のPb−Snはんだ合金を用いていた一般的な用途で必要とされる諸特性、すなわち低融点で濡れ性が良いこと、リフロー処理が可能であること、母材と反応して脆い化合物層や脆化層を形成しないこと、等の特性(はんだ付け性)が得られないからである。
現在、有望な無鉛はんだ合金としてSn−Znはんだ合金が提案されている。Sn−Znはんだ合金は融点が200℃近傍にあり、従来のSn−Pbはんだ合金を代替できる可能性が極めて高い。
しかし、Znは酸化が激しく、はんだ濡れ性が劣るため、良好なはんだ付け性を確保するためには、窒素ガス等の非酸化性雰囲気を用いる必要がある。
Sn−Zn合金のはんだ濡れ性を改善するために、Cu(銅)やGe(ゲルマニウム)を添加することが提案されているが、期待された濡れ性の向上は得られていない。むしろCuの添加によって、Cu−Zn金属間化合物がはんだ合金中に急速に形成されるため、はんだ合金の特性が悪化するという欠点がある。
更に、Znは活性が非常に高く、Cu母材上にはんだ付けを行った場合に、少量の入熱でもCu−Zn金属間化合物の厚い層が容易に形成してしまい、接合強度が低下する原因になる。この場合の母材/はんだ界面構造は、Cu母材/β′−CuZn層/γ−CuZn層/はんだ層、という構成になると考えられる。Cu−Zn金属間化合物層は、はんだとの界面での接合強度が極めて低く、容易に剥離が発生する。Cu母材の表面を、Ni(ニッケル)/Au(金)めっき、パラジウムめっき、パラジウム/金めっき処理した場合にも、同様な現象が発生してしまう。そのため、電子機器の信頼性の観点から、Sn−Znはんだ合金の実用は困難であった。
発明の開示
本発明は、環境に対して悪影響を及ぼすことがなく、従来のPb−Snはんだ合金に匹敵するはんだ付け性を有するはんだ合金およびそれを用いたはんだ接合部を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本願第1発明によれば、下記(1)および(2)が提供される。
(1)Zn:3.0〜14.0wt%、Al:0.0020〜0.0080wt%、および残部:Snおよび不可避的不純物から成るはんだ合金。
(2)上記(1)記載のはんだ合金から成る、電気・電子機器のはんだ接合部。
また、本願第2発明によれば、下記(3)および(4)が提供される。
(3)Zn:3.0〜14.0wt%、Bi:3.0〜6.0wt%、Al:0.0020〜0.0100wt%、および残部:Snおよび不可避的不純物から成るはんだ合金。
(4)上記(3)のはんだ合金から成る、電気・電子機器のはんだ接合部。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、合金成分の含有量を限定した理由は下記のとおりである。
・Zn:3〜14wt%(第1・第2発明共通)
Znは、はんだ合金の融点を下げ、濡れ性を向上させる基本的な合金成分である。Zn含有量が3〜14wt%の範囲内であれば、安定して良好な濡れ性が確保できる。Zn含有量が3wt%未満であっても14wt%を超えても濡れ性が低下する。
・Al:0.0020〜0.0080wt%(第1発明:Biなし)
・Al:0.0020〜0.0100wt%(第2発明:Bi含有)
Alは、Sn−Zn合金の酸化を抑制し、良好な濡れ性を確保するために添加する。前述のようにZnは酸化が激しく、はんだ表面に生成する酸化皮膜は、母材とはんだとの間に介在して、はんだによる母材の濡れを阻害する。Alによる酸化抑制効果を得るためには、Al含有量を0.0020wt%以上とする必要がある。しかし、Al含有量が多すぎるとAlの酸化皮膜が厚くなり濡れ性が劣化することが実験的に確認されている。そのため、Al含有量の上限は、Biを含有しない第1発明では0.0080wt%とし、Biを含有する第2発明では0.0100wt%とする。
・Bi:3.0〜6.0wt%(第2発明)
Biは、はんだ合金の融点を更に低下させ、濡れ性を更に向上させる。この効果を得るためには、Bi含有量を3.0wt%以上とする必要がある。しかし、Bi含有量が多すぎると、はんだが硬くなり過ぎて脆くなり、はんだ接合部の信頼性を確保できない。そのため、Bi含有量の上限は6.0wt%とする。
はんだ合金、特に電気・電子機器のはんだ接合用のはんだ合金には、下記の特性が要求される。
▲1▼ 従来のSn−Pb共晶はんだ合金にできるだけ近い低温ではんだ付けが可能なこと。すなわち、融点が200℃を大きく超えず、高くても220℃程度以下が確保できること。
▲2▼ 母材との濡れ性が良好であること。
▲3▼ 母材との反応により脆い金属間化合物や脆化層を形成しないこと。
▲4▼ 合金成分の酸化物が、濡れ不良、ボイド、ブリッジ等の欠陥の発生原因とならないこと。
▲5▼ 量産工程でのはんだ接合に適した加工・供給形態(はんだペースト、BGA用はんだボール等の形態)がとれること。
本発明のZn−Al−Snはんだ合金およびZn−Bi−Al−Snはんだ合金は、Pbを含有しないことにより高い環境安全性を備えると同時に、上記の要求特性を備えている。
実施例
表1および表2に示した種々の組成のはんだ合金を溶製し、下記の各方法により、融点(液相線温度)、濡れ時間、接合強度を測定した。
<融点の測定>
DSC融点測定法(示差走査熱量測定)により、融点の代表値として液相線温度を測定した。
<濡れ時間の測定>
レスカ社製メニスカス試験機(Solder Checker Model SAT−5000)を用い、下記メニスカス試験方法により、濡れ性の代表値として濡れ時間を測定した。なお、試験雰囲気は大気中とした。ただし、雰囲気の酸素濃度の影響を確認するために、表2のサンプルNo.45および61については、各々サンプルNo.44および60と同じ組成のはんだ合金について酸素濃度2000ppmの窒素ガス雰囲気中で試験を行った。
〔メニスカス試験方法〕
塩酸水溶液(約1.2モル/リットル)で洗浄した銅板(5mm×40mm×厚さ0.1mm)に、RMAタイプのフラックス(タムラ化研製 ULF−500VS)を塗布した後、240℃、250℃または260℃に加熱したはんだ合金溶湯中へ、浸漬速度20mm/secで浸漬深さ5mmまで浸漬し、濡れ時間を測定した。測定時間は8秒までとした。メニスカス試験では、図1に示すような測定チャートが得られ、このチャートから濡れ時間、濡れ力、ピールバック力等を読み取ることができる。これらのうち本実施例では、合金組成を最も敏感に反映した濡れ時間によって濡れ性を評価した。
<接合強度の測定>
ラップジョイント接合強度試験により、接合強度を測定した。図2に示したように、L形の銅板試験片をはんだ接合した後、インストロン社製引張試験機により、引張速度1mm/minで試験した。
<測定結果の評価>
〔融点および濡れ性の評価〕
(1)Zn−Al−Sn合金(第1発明)
(1−1)Zn含有量の影響
図3および図4に、表1のサンプルNo.1〜12(1.0〜20.0wt%Zn−0.0060wt%Al−Sn)について、Zn含有量と融点(液相線温度)との関係およびZn含有量と濡れ時間との関係をそれぞれ示す。ここで、0.0060wt%Alは本発明の範囲内のAl含有量である。
Al含有量が本発明の範囲内の上記値であって、Zn含有量が本発明の範囲内(3.0〜14.0wt%)であるサンプルNo.3〜11は、融点が低下し(図3)、かつ安定して良好な濡れ性(短時間での濡れ。図4)が得られた。これに対して、Al含有量が本発明の範囲内の上記値であっても、Zn含有量が本発明の範囲より少ないサンプルNo.1,2および本発明の範囲より多いサンプルNo.12は、濡れ性が低下(濡れ時間が増大)した。
(1−2)Al含有量の影響
図5、6、7に、表1のサンプルNo.13〜17(4.0wt%Zn−0.0006〜0.0206wt%Al−Sn)、サンプルNo.18〜29(8.0wt%Zn−0.0006〜0.7912wt%Al−Sn)、およびサンプルNo.30〜34(10.0wt%Zn−0.0006〜0.0206wt%Al−Sn)について、Al含有量と濡れ時間との関係を示す。ここで、4.0wt%Zn、8.0wt%Zn、および10.0wt%Znは、いずれも本発明の範囲内のZn含有量である。
Zn含有量が本発明の範囲内の上記各値であって、Al含有量が本発明(第1発明)の範囲内(0.0020〜0.0080wt%)であるサンプルNo.15、20〜23、および32は、安定して良好な濡れ性(短時間での濡れ)が得られた。これに対して、Zn含有量が本発明の範囲内の上記各値であっても、Al含有量が本発明の範囲より少ないサンプルNo.14、18〜19、30〜31、および本発明の範囲より多いサンプルNo.16〜17、24〜29、33〜34は、濡れ性が低下(濡れ時間が増大)した。
(2)Zn−Bi−Al−Sn合金(第2発明)
(2−1)Zn含有量の影響
図8に、表2のサンプルNo.46〜50(1.0〜20.0wt%Zn−3.0wt%Bi−0.0060wt%Al−Sn)について、Zn含有量と融点との関係を示す。ここで、3.0wt%Biおよび0.0060wt%Alは、本発明の範囲内のBi含有量およびAl含有量である。
Bi含有量およびAl含有量が本発明の範囲内の上記値であって、Zn含有量が本発明の範囲内であるサンプルは融点が低下した。
(2−2)Bi含有量の影響
図9および図10に、表2のサンプルNo.51〜56(8.0wt%Zn−0〜10.0wt%Bi−0.0060wt%Al−Sn)について、Bi含有量と融点との関係およびBi含有量と濡れ時間との関係をそれぞれ示す。ここで、8.0wt%Znおよび0.0060wt%Alは、本発明の範囲内のZn含有量およびAl含有量である。
Zn含有量およびAl含有量が本発明の範囲内の上記値であって、Bi含有量が本発明の範囲内(3.0〜6.0wt%)であるサンプルNo.53〜54は、融点が低下し(図9)、かつ安定して良好な濡れ性(短時間での濡れ。図10)が得られた。これに対して、Zn含有量およびAl含有量が本発明の範囲内の上記値であっても、Bi含有量が本発明の範囲より少ないサンプルNo.52は、濡れ性が低下(濡れ時間が増大)した。また、Bi含有量が本発明の上限6.0wt%より多いサンプルNo.55〜56は、融点が低く、濡れ性も良好であるが、接合部の硬さが高く脆いため実用には適さない。
(2−3)Al含有量の影響
図11に、表2のサンプルNo.35〜45(8.0wt%Zn−3.0wt%Bi−0〜0.6500wt%Al−Sn)について、Al含有量と濡れ時間との関係を示す。ここで、8.0wt%Znおよび3.0wt%Biは本発明の範囲内のZn含有量およびAl含有量である。
Zn含有量およびBi含有量が本発明の範囲内の上記値であって、Al含有量が本発明(第2発明)の範囲内(0.0020〜0.0100wt%)であるサンプルNo.38〜40は、安定して良好な濡れ性(短時間での濡れ)が得られた。これに対して、Zn含有量およびBi含有量が本発明の範囲内の上記値であっても、Al含有量が本発明の範囲より少ないサンプルNo.35〜37、および本発明の範囲より多いサンプルNo.41〜42は、濡れ性が低下(濡れ時間が増大)した。更にAl含有量の多いサンプルNo.43〜44は濡れ性は向上(濡れ時間が減少)するが、Al含有量が多いと、はんだ粉末(φ20〜45μm)形成時に表面にAlが偏析し、はんだペーストとして使用できない。
表2のサンプルNo.57〜65はいずれも比較例であり、そのうちNo.57は従来のPb−Sn共晶はんだ合金である。No.58以降は種々のSnベース無鉛はんだ合金であり、No.58はAg−Cu−Sn、No.59はZn−Sn、No.60、61はZn−Bi−Sn、No.62、63はZn−Bi−Cu−Sn、No.64はZn−Bi−Ge−Sn、No.65はZn−Bi−Cu−Ge−Snである。
これら比較例のSnベース無鉛はんだ合金のうち、No.59,60,62,63,64,65は濡れ性が劣り、No.58は濡れ性が良好であるが融点が221.1℃と高いという点で実用性がない。サンプルNo.61は、サンプルNo.60と同じ組成のはんだ合金について、濡れ試験を大気中ではなく、酸素濃度2000ppmの窒素ガス雰囲気中で行った結果であり、非酸化性の雰囲気中でなくては良好な濡れ性が得られない点で、実用上に劣る。これは、Zn含有量(8.0wt%)およびBi含有量(3.0wt%)は本発明の範囲内であるがAl含有量(0.6500wt%)が本発明の範囲より多いサンプルNo.44、45についても同様である。
〔接合強度の評価〕
図12に、本発明の代表例としてサンプルNo.8(8.0wt%Zn−0.0060wt%Al−Sn)、サンプルNo.39(8.0wt%Zn−3.0wt%Bi−0.0060wt%Al−Sn)、サンプルNo.40(8.0wt%Zn−3.0wt%Bi−0.0100wt%Al−Sn)の接合強度を、従来のPb−Sn共晶はんだ(サンプルNo.57)および本発明の範囲外の無鉛はんだ(サンプルNo.と比較して示す。同図に示したように、本発明のはんだ合金は従来のPb−Sn共晶はんだ合金と同等の接合強度が得られた。
Figure 2002034969
Figure 2002034969
〔はんだ粉末の特性とAlの効果〕
本発明のはんだ合金を実際にはんだ接合に用いるための典型的な一形態であるはんだ粉末としての特性に対するAlの効果を調べた。
〔1〕Alによる酸化防止効果
一般に、はんだの濡れ性は、はんだの酸化により阻害される。特に、Sn−Zn系はんだの場合、Znが酸化され易く、緻密性が低く厚いZn酸化膜が形成され、それによって濡れ性が劣化する。
Alの添加によりSn−Zn系はんだの濡れ性が著しく改善される理由は、大気と接触しているはんだの表面領域において、Znに対してAlが優先的に酸化されるためである。これは、Al原子が、下表に示すように、Zn原子に比べて電子を放出し易く、酸素との反応性が高いことによる。
Figure 2002034969
Al酸化膜は緻密性が極めて高いため、一旦形成されるとそれ以降の酸素の侵入を防ぎ、Al酸化膜自体も薄いまま維持されると共にZnの酸化を防止する。
Sn−Zn合金の表面におけるAl酸化膜の形成には、はんだ表面におけるAlの偏析が大きな影響を及ぼす。実際にはんだペーストとして用いられる形態のはんだ粉末粒子について、Alの表面偏析を調べた。
図13に、Sn−6.7wt%Zn−0.0024wt%Al合金からなるはんだ粉末粒子(粒径40μm)の表面から内部への深さ方向の元素濃度分布を示す。はんだ粉末の製造条件および元素濃度分布の測定方法は下記のとおりである。
はんだ粉末製造条件
目標合金組成に溶解歩留まりを見込んだ配合組成の溶湯を300℃で溶製し、この溶湯を非酸化性雰囲気中で220℃に保持して遠心噴霧法を行い粉末を形成した。
得られた粉末を分級して、φ38〜45μmの粉末粒度とした。
図13は粒径φ40μmの粉末粒子について測定した結果である。
また、ICP法による分析値として上記組成を得た。
元素濃度分布測定方法
下記の装置および条件によりオージェ分析を行い、粉末粒子表面から深さ方向のSn、Zn、Al、Oの各元素について濃度分布を測定した。
オージェ分析装置:
日本電子製 マイクロオージェ電子分光装置 JAMP−7800F
測定条件:
加速電圧 10kV
照射電流 3nA
計測時間 300ms×5sweeps
エッチング速度 30nm/min(SiO換算)
同図に示したように、はんだ粒子表面から深さ数nmの表面領域にAlが高濃度に偏析していることが分かる。酸素(O)は、はんだ粉末製造時に不可避的に生ずる酸化によるものであり、Alと共に表面領域に高濃度に偏析していることから、粒子表面に厚さ数nm程度のAl酸化膜が形成されていると考えられる。
このように、Al添加したSn−Zn合金においては、はんだ粉末粒子の表面にAlが高濃度で偏析しているため、Znの酸化が防止されて、高い濡れ性が確保できる。また、Al酸化膜は前述のように非常に緻密であるため、水分の浸入防止効果も高く、高温高湿環境下でのはんだ接合部の耐食性を向上させる。
〔2〕はんだボールの発生とAl含有量の関係
上記のようにAlの存在はAl酸化膜の形成によりSn−Zn系はんだの濡れ性向上に高い効果を発揮する。
しかし、Al含有量があまり高すぎると、はんだ接合部においてはんだ粉末粒子の未溶融部(はんだボール)が発生して接合不良の原因になる。
図14(1)〜(4)に、はんだ接合部におけるはんだボールの発生状況を模式的に示す。同図は、基板PにリードQをはんだRによって接合した状態を示す。同図(1)はAl含有量が本発明の範囲内にある場合であり、はんだ接合部Rは完全に溶融している。これに対して、同図(2)〜(4)はAl含有量が本発明の範囲を超えて順次多くなった場合であり、(2)Al含有量が若干過多で、はんだ接合部Rの表面に散発的にはんだボールBの発生が認められる状態、(3)更にAl含有量が増加して、はんだ接合部Rの表面全体ではんだボールBが発生した状態、(4)Al含有量が非常に過多で、はんだ接合部Rが全く溶融せず、はんだ接合部R全体が単にはんだボールBの集合体である状態を示している。各図において、図示の便宜上はんだボールは実際より拡大して示してある。
図15(1)および(2)に、それぞれSn−7.0wt%Zn−0.04wt%AlおよびSn−7.0wt%%Zn−3.0wt%Bi−0.04wt%Alの組成のはんだ粉末を配合したはんだペーストを用いたはんだ接合部の外観写真を示す。いずれも、はんだ合金のAl含有量が本発明の上限である0.0080wt%(Biなしの場合)または0.0100wt%(Biありの場合)を大きく超えた組成であり、はんだ接合部の表面全体にはんだボールが発生している。個々のはんだボールBは、はんだペーストに配合したはんだ合金粉末粒子に対応した粒径であり、はんだ粉末粒子が溶融せずに残存した状態であると考えられる。
表3および表4に、Al含有量を種々に変えたはんだ合金について、はんだ接合部におけるはんだボールの発生量を示す。ここで、表3は第1発明に関係するBiなしの合金について、表4は第2発明に関係するBiありの合金について、それぞれはんだボール発生個数、はんだボール発生率、接合部良否判定結果を示す。表3および表4に示した結果に基づいて、Al含有量とはんだボール発生率との関係をそれぞれ図16および図17に示す。
Figure 2002034969
Figure 2002034969
上記の結果から、Al含有量が本発明の上限を超えるとはんだボール発生率が急激に増加することが分かる。すなわち、Biなしのはんだ合金の場合には第1発明に従ってAl含有量を0.0080wt%以下とし、Biありのはんだ合金の場合には第2発明に従ってAl含有量を0.0100wt%以下とすれば、はんだボールの発生を実質的に防止できることが分かる。
Al含有量が多いとはんだボールの発生が顕著になるのは、以下の理由によると考えられる。
Al酸化膜を構成する酸化アルミニウム(Al)は高融点(2015℃)であり、200℃程度のはんだ接合温度では全く溶融しない。
Al含有量が適正範囲内であれば、はんだ粉末粒子表面のAl酸化膜は非常に薄く機械的に弱いシェルであり、はんだ接合温度でそれ自体は溶融しなくても内部のはんだが溶融すると自立できずに崩壊してしまい、はんだ粒子同士の溶融・合体により正常な接合部が形成される。崩壊したAl酸化膜は、はんだ接合部内に微量の不純物として含有されるだけであり、はんだ接合品質に対して実質的な影響は及ぼさない。
これに対して、Al含有量が適正範囲より多すぎると、はんだ粉末粒子表面に形成されたAl酸化膜は厚くなり、機械的に強固なシェルを形成するため、はんだ接合時に崩壊せずに自立構造物として維持され、はんだ粉末粒子同士の溶融・合体を妨げる結果、個々のはんだ粒子がそれぞれはんだボールとして残存する。
このように、本発明のはんだ合金においてAl含有量を上限値以下に限定することは、前述した合金特性としての濡れ性確保と同様に、はんだ粉末特性としてのはんだボール発生防止のためにも、非常に重要である。
以上説明したように、本発明の範囲内の化学組成を有するはんだ合金は、環境に有害なPbを含有することなく、従来のPb−Snはんだ合金に近い低融点と良好な濡れ性を確保できる。
また、本発明のはんだ合金は、主たる合金成分であるZnが安価であり、典型的には電気・電子機器に従来多量に用いられていたPb−Snはんだ合金と同程度に安価に提供される。
本発明のはんだ合金は、例えば酸素、窒素、水素等の不可避的不純物を少量含んでいても特に問題はない。ただし、酸素は多量に存在するとはんだ合金を脆くする恐れがあるので、酸素含有量は極力微量にすべきである。
産業上の利用可能性
本発明によれば、環境に対して悪影響を及ぼすことがなく、従来のPb−Snはんだ合金に匹敵するはんだ付け性を有するはんだ合金およびそれを用いたはんだ接合部が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1は、濡れ性を評価するためのメニスカス試験の方法を示すグラフである。
図2は、ラップジョイント接合強度試験の方法を示す模式図である。
図3は、Xwt%Zn−0.0060wt%Al−Snはんだ合金のZn含有量(X)と融点(液相線温度)との関係を示すグラフである。
図4は、Xwt%Zn−0.0060wt%Al−Snはんだ合金のZn含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフである。
図5は、4wt%Zn−Xwt%Al−Snはんだ合金のAl含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフである。
図6は、8wt%Zn−Xwt%Al−Snはんだ合金のAl含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフである。
図7は、10wt%Zn−Xwt%Al−Snはんだ合金のAl含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフである。
図8は、Xwt%Zn−3Bi−0.0060wt%Al−Snはんだ合金のZn含有量(X)と融点(液相線温度)との関係を示すグラフである。
図9は、8Zn−Xwt%Bi−0.0060wt%Al−Snはんだ合金のBi含有量(X)と融点(液相線温度)との関係を示すグラフである。
図10は、8wt%Zn−Xwt%Bi−0.0060wt%Al−Snはんだ合金のBi含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフである。
図11は、8wt%Zn−3wt%Bi−Xwt%Al−Snはんだ合金のAl含有量(X)と濡れ時間との関係を示すグラフである。
図12は、種々の組成のはんだ合金について、ラップジョイント接合強度を比較して示すグラフである。
図13は、Sn−Zn−Alだ合金粉末粒子の表面領域における深さ方向の元素分布を示すグラフである。
図14は、Sn−Zn−Alはんだ合金粉末によるはんだ接合部におけるはんだボールの発生状況を示す模式図である。
図15は、Sn−Zn−Alはんだ合金粉末およびSn−Zn−Bi−Alはんだ合金粉末によるはんだ接合部に発生したはんだボールの外観写真である。
図16は、Sn−Zn−Alはんだ合金粉末のAl含有量とはんだ接合部におけるはんだボールの発生率との関係を示すグラフである。
図17は、Sn−Zn−Bi−Alはんだ合金粉末のAl含有量とはんだ接合部におけるはんだボールの発生率との関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. Zn:3.0〜14.0wt%、Al:0.0020〜0.0080wt%、および残部:Snおよび不可避的不純物から成るはんだ合金。
  2. 請求項1記載のはんだ合金から成る、電気・電子機器のはんだ接合部。
  3. Zn:3.0〜14.0wt%、Bi:3.0〜6.0wt%、Al:0.0020〜0.0100wt%、および残部:Snおよび不可避的不純物から成るはんだ合金。
  4. 請求項3記載のはんだ合金から成る、電気・電子機器のはんだ接合部。
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