JP2004082134A - 錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金及びその混合物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金は、錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛を必須に含有し、更に、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化保護皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを配合して構成する。そして、クリームはんだの保存時に、はんだ粉末表面に生成されたマグネシウムの酸化保護皮膜により内部を保護し、亜鉛と活性剤の反応を抑えて保存性を高める一方、はんだを溶融させる昇温時には、該酸化保護皮膜が破壊されやすい状態になることにより良好な濡れ性を保持する。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば電子回路素子の実装工程などに使用されるはんだ材で、特に、その中でも環境調和型の錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金及びその混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種機器のはんだ付けには、融点が低く、酸化性雰囲気の中でも濡れ性が良好であること等の利点を有することから、錫−鉛系はんだ合金が多く用いられていた。ところが、鉛は毒性を有していることから、近年、電子機器の廃棄処理等に伴う環境汚染を防止する観点から、はんだの鉛フリー化が急速に進んでいる。ただ、鉛フリーはんだ合金は、濡れ性、融点、コスト等の面で、従来の錫−鉛系はんだ合金に比べて劣っているため、完全な代替品として、未だに開発されていないのが現状である。
【0003】
この環境重視の流れの中にあって、電子回路素子の実装工程の一つであるリフローはんだ付けにおいても、同様に鉛フリー化が緊急の課題になっている。そこで、従来では、リフローはんだ付け用に実用化を期待されている鉛フリーはんだ材として、亜鉛を9重量%(共晶点組成)前後含有する錫−亜鉛系はんだ合金が提案されている。更には、亜鉛を8重量%前後含有すると共に、ビスマスを1〜3重量%含有する錫−亜鉛系はんだ合金なるものも提案されている。これら錫−亜鉛系はんだ合金は、錫−亜鉛合金の共晶温度は199℃であり、錫を主成分とした鉛フリーはんだ合金の中では、最も錫−鉛合金の共晶点に近く、また、原料コストの面でも他の鉛フリーはんだ合金より安価であるというメリットがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、上記リフローはんだ付けに用いられるクリームはんだは、はんだ粉末とフラックスを混合したものであり、該フラックスに、はんだ溶融時にはんだ付け対象物の表面を清浄にし、はんだの濡れ性を良くするための活性剤が添加されている。したがって、従来の錫−鉛系はんだ合金よりも、濡れ性の点で劣る錫−亜鉛系はんだ合金においては、特に、はんだの濡れ性を向上させるために活性剤を強化せざるを得ない。しかも、この錫−亜鉛系のはんだ合金では、製造されたはんだ粉末の表面および内部に、亜鉛を主成分とする相が存在している。
【0005】
したがって、従来の錫−亜鉛系の鉛フリーはんだ合金では、はんだ粉末をフラックスと混合してクリームはんだに加工すると、亜鉛は活性な金属元素であるため、クリームはんだを保存している間に、はんだ粉末表面の亜鉛がフラックス中の上記活性剤と容易に反応し、その反応生成物によってクリームはんだの粘度が従来の錫−鉛はんだ合金よりも急速且つ大幅に上昇し、使用時、たとえばプリント基板への印刷が不可能になってしまうという課題があった。
【0006】
一方、この粘度上昇を防止するために、活性剤の強さや添加量を抑えると、他方で、はんだ加熱溶融時に発生する亜鉛酸化物を還元することができず、その結果、はんだの濡れ広がり性が低下してしまうという問題があった。このように従来は、はんだの濡れ性と長期保存性との両立が極めて困難であり、この両立の問題が環境保全に有効な鉛フリーのクリームはんだが普及しない原因になっている。
【0007】
そこで、従来、この問題を解決するための手段として、第三の成分の添加、例えばアルミニウムを添加する方法が開示されている(国際公開番号WO02/34969A1)。しかしながら、アルミニウムを添加する方法は、後述するとおり、未溶解はんだを発生する問題があり、添加量を狭い範囲に限定せざるを得ないのが現状である。
【0008】
また、従来の鉛フリーはんだ合金の中に、上記のようなビスマスを含む錫−亜鉛系はんだ合金があるが、その種の錫−亜鉛系はんだ合金では、凝固後のはんだ表面における金属光沢が鈍くなる傾向があり、そのため、濡れ性と保存性の両立に加えて、その外観上の問題も改善することが望まれている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、はんだの濡れ性を良好にし、併せてクリームはんだの長期の保存性にも優れた錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金を提供し、加えて、ビスマスを含む錫−亜鉛系はんだ合金の場合は、凝固後の表面光沢をも向上させることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した従来の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、錫−亜鉛系はんだに、亜鉛より酸化傾向の高い極微量のマグネシウムを所定組成配分だけ添加することにより、クリームはんだの亜鉛とフラックスとの反応を抑えて保存性が高められる一方、はんだ溶融時には、良好な濡れ性が保持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、請求項1に記載の発明による錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金は、錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛を必須に含有するはんだ合金であって、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化保護皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを配合してなることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明による錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金は、錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛と0.5〜6重量%のビスマスを必須に含有するはんだ合金であって、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化保護皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを含有してなることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明による錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金混合物は、錫を主成分とし、少なくとも0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを含有する、異なる成分組成を有する2種以上のはんだ合金の混合物であって、該混合物の平均組成が請求項1に記載の範囲にあることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明による錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金混合物は、錫を主成分とし、少なくとも0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを含有する、異なる成分組成を有する2種以上のはんだ合金の混合物であって、該混合物の平均組成が請求項2に記載の範囲にあることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
錫−亜鉛系の鉛フリーはんだでは、周知のとおり、例えば、共に予め調製したはんだ粉末とフラックスとを攪拌混合してペースト状のクリームはんだに加工する。しかし、その場合、はんだ粉末は、酸素との親和力の強い亜鉛が粉末表面で酸化物となることが避けられず、はんだ粉末をフラックスと混合してクリームはんだに加工すると、亜鉛とフラックス中の活性剤との反応によりクリームはんだの粘度が上昇し、保存性に問題を生ずる。一方、この粘度上昇を防止するために、活性剤の強さや添加量を抑えても、他方で、はんだ加熱溶融時に発生する亜鉛酸化物を還元することができず、その結果、はんだの濡れ性が低下する問題が発生する。
【0017】
そこで、本発明では、錫−亜鉛系はんだに、亜鉛より酸化傾向の高い元素を極微量だけ添加すると、その添加元素が亜鉛より優先的に酸化することにより、はんだ粉末表面に酸化物の保護皮膜が生成されることから、その酸化保護皮膜によって亜鉛とフラックスとの反応を低減させることを企図する。これによって、はんだの濡れ性と保存性の両面に優れたクリームはんだ用のはんだ粉末を得んとする。しかしながら、アルミニウムなど、添加元素によっては、表面に生成する酸化保護皮膜が強力でフラックスでは還元できず、却って、はんだ溶融時に未溶解はんだが大量に発生することが判った。
【0018】
以上に鑑み、本発明では、亜鉛より酸化傾向の高い元素の中でも、特にマグネシウムを選択し、これを必須添加元素とする。マグネシウム添加の効果は、上述したはんだの良好な濡れ性と保存性の両面に優れた、錫−亜鉛系クリームはんだ用粉末を得ることができる点にあると共に、アルミニウム等の他の添加元素とは異なり、未溶解はんだの発生が少ないという点にある。ここで、本発明において、クリームはんだの保存時に亜鉛とフラックスとの反応性を低く抑え、且つ未溶解はんだの発生が少なくなる現象を解説すると、そのメカニズムは、はんだ粉末表面に生成されるマグネシウム酸化物の保護皮膜が、クリームはんだの冷蔵保存時には内部を保護する一方で、はんだを溶融させる昇温時には、マグネシウムの酸化保護皮膜は、濡れ性を保持すべく破壊されやすい状態になっているからである。
【0019】
したがって、本発明による錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金は、クリームはんだの保存時に亜鉛とフラックス中の活性剤との反応を抑えて保存性が高められる一方、はんだ溶融時には良好な濡れ性が保持されるように、化学組成が、錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛を必須に含有するはんだ合金であって、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを配合して構成してなる。
【0020】
ところで、マグネシウムには、別の効果として以下のような効果を有している。即ち、錫−亜鉛系はんだ合金にビスマスを添加すると、はんだ表面の金属光沢が鈍くなる傾向がある。しかし、ビスマスを含有する錫−亜鉛系はんだ合金に、微量のマグネシウムを添加すると、表面光沢が良くなることが確認された。これは、ビスマスを添加した場合には、凝固に際して表面に細かい凹凸ができるのに対して、マグネシウムを添加することによって凝固の際にはんだ表面の凹凸が少なくなるためである。その結果、従来の錫−鉛系はんだに近い良好な光沢を得ることができる。
【0021】
そこで、本発明による錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金は、錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛と0.5〜6重量%のビスマスを必須に含有するはんだ合金であって、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化保護皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを配合した構成にすることもできる。
【0022】
さて次に、本発明の錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金において、以上の如く、マグネシウムの添加範囲を所定含有量に特定した理由を述べる。まず下限については、マグネシウムの効果が発現するために必要な含有量として実験の結果から、0.0015重量%とした。0.0015重量%未満だと、粉末表面に、亜鉛とフラックスの反応を低減させるに十分な酸化皮膜が形成されないためである。
【0023】
一方、上限については、はんだ付け性の劣化とはんだ粉末の製造性から0.1重量%とした。0.1重量%を越えると、はんだ付け時にマグネシウム酸化物が破壊されず残存するためである。さらには、はんだ粉末の製造時に使用する合金溶湯の粘度が上昇するためである。以上のとおり、マグネシウムの含有量の上限下限を特定して初めて、生成される酸化保護皮膜によって亜鉛とフラックスとの反応を抑えて保存性が高められる一方、はんだ溶融時には、酸化保護皮膜が破壊されて良好な濡れ性が確保されるのである。
【0024】
ところで、本発明では、例えば、異なる成分組成を有する2種以上のはんだ粉末を混合してクリームはんだを製造する場合、その混合前の個々のはんだ粉末は、少なくとも0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを含有することにより、以上の効果を得ることができる。ただ、その他の亜鉛等の成分は、混合前の個々のはんだ粉末においては、必ずしも請求項1若しくは請求項2に記載の発明に係る範囲に入らなくてもよく、混合後のはんだ粉末全体の平均組成が当該範囲に入っていればよい。
【0025】
したがって、本発明の錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金混合物では、錫を主成分とし、少なくとも0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを含有する、異なる成分組成を有する2種以上のはんだ合金の混合物であって、該混合物の平均組成が請求項1に記載の範囲にあるように構成することもできる。また、本発明の錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金混合物では、錫を主成分とし、少なくとも0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを含有する、異なる成分組成を有する2種以上のはんだ合金の混合物であって、該混合物の平均組成が請求項2に記載の範囲にあるように構成することもできる。
【0026】
なお、以上に示した実施の形態において、上記化学組成にて調製したはんだ合金、並びにはんだ合金混合物は、はんだ粉末に加工した例を用いて説明したが、必要に応じて、線はんだに加工して使用することもできるのは、勿論である。
【0027】
【実施例】
次に、以下に示す実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものでない。
【0028】
本発明者らは、本発明の効果を確認するための実験を行った。本実施例の実験では、錫を主成分とし、亜鉛の含有量を6〜9%、ビスマスの含有量を0〜3%、マグネシウムの添加量を0〜0.1090%の範囲のはんだ粉末を用いた。この実験に用いたはんだ粉末は、錫−亜鉛系の粒径32〜45μmの真球粉である。これら粉末の化学組成および特性評価結果は、図1の表に示した。はんだ粉末は、フラックスと混合してペーストにして各種評価試験に供している。図中のはんだ付け性については、JIS−Z−3284に準拠した方法で行ない、濡れ拡がり性を評価した。実験は、より広い範囲での条件を模擬するため、大気雰囲気中で、プリヒートを150℃で0〜3.5分間行った。実験の結果、濡れ拡がり性が不良のものを「×」、良好なものを「○」、非常に良好なものを「◎」で示した。保存性に関しては、はんだ粉末とフラックスを混合した後に、約4℃に保った冷蔵庫中で1週間保存した後の、ペーストの粘度上昇具合および印刷性により判定した。濡れ広がり性と同様に、不良のものを「×」、良好なものを「○」、非常に良好なものを「◎」で示した。図1に示すように、本発明によるはんだ粉末を用いたペーストは、濡れ性と共に保存性にも優れることが確認された。
【0029】
【発明の効果】上述のように構成した本発明によれば、次のような顕著な効果が得られる。
【0030】
本発明によれば、錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛を必須に含有するはんだ合金であって、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化保護皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを配合して錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金及びその混合物を構成するため、一方で、クリームはんだの保存時に、はんだ粉末表面に生成されたマグネシウムの酸化保護皮膜により内部を保護し、亜鉛と活性剤の反応を抑えて保存性を高めることができ、他方で、はんだを溶融させる昇温時には、該酸化保護皮膜が破壊されやすい状態になることにより良好な濡れ性を保持することができる。
【0031】
また、本発明によれば、錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛と0.5〜6重量%のビスマスを必須に含有するはんだ合金であって、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化保護皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを配合して錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金及びその混合物を構成するため、同様に、上記はんだの良好な濡れ性と保存性を共に実現させることができ、加えて、凝固の際にはんだ表面の凹凸を少なくし表面光沢を一段と良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金の実験において、はんだ粉末の化学組成および特性評価結果を示す図表である。
Claims (4)
- 錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛を必須に含有するはんだ合金であって、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化保護皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを配合してなることを特徴とする、錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金。
- 錫を主成分とし、少なくとも6〜10重量%の亜鉛と0.5〜6重量%のビスマスを必須に含有するはんだ合金であって、マグネシウム酸化物の保護皮膜をはんだ表面に生成する一方、はんだ溶融時に該酸化保護皮膜が破壊されるのに有効な割合である0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを配合してなることを特徴とする、錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金。
- 錫を主成分とし、少なくとも0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを含有する、異なる成分組成を有する2種以上のはんだ合金の混合物であって、該混合物の平均組成が請求項1に記載の範囲にあることを特徴とする、錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金混合物。
- 錫を主成分とし、少なくとも0.0015〜0.1重量%のマグネシウムを含有する、異なる成分組成を有する2種以上のはんだ合金の混合物であって、該混合物の平均組成が請求項2に記載の範囲にあることを特徴とする、錫−亜鉛系鉛フリーはんだ合金混合物。
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