JP2021028380A - 樹脂微粒子、樹脂組成物およびコロイド結晶 - Google Patents

樹脂微粒子、樹脂組成物およびコロイド結晶 Download PDF

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Abstract

【課題】塗膜にした際に優れた発色を示し、且つ基材への追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性を示すコロイド結晶を形成する樹脂微粒子および樹脂組成物を提供する。【解決手段】コロイド結晶を形成するためのコアシェル型樹脂微粒子であって、下記(1)〜(5)を満たすコアシェル型樹脂微粒子。(1)樹脂を構成する単量体として反応性界面活性剤を含む。(2)平均粒子径が180〜330nmである。(3)コア100質量部に対するシェルの質量が10〜50質量部である。(4)コアのガラス転移温度(Tg)が50℃以上である。(5)シェルのTgが−60〜40℃である。【選択図】なし

Description

本発明は、コアシェル型樹脂微粒子、樹脂組成物およびコロイド結晶に関する。
フォトニック結晶は、屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の間隔で並べたナノ周期構造体である。フォトニック結晶内では、屈折率が周期的に変化し、ブラッグ反射として知られる特定波長の光の反射やフォトニックバンドギャップを利用した光閉じ込め、高い分波作用等、様々な興味深い光学特性が発現するため、現在、活発に研究が行われている。
フォトニック結晶の一種であるコロイド結晶は、サブミクロンオーダーの高分子ラテックス粒子やシリカ粒子が規則的に配列した構造をもち、比較的簡便に作成できるフォトニック結晶であるが、粒子の配列やその固定化における課題により、大量生産技術が確立されるまでには至っていない。
特許文献1では、造膜性を有するシェルと粒子形状を維持するコアに機能を分離したコアシェル型樹脂微粒子を用いたコロイド結晶塗膜が開示されている。しかしながら、このコアシェル型樹脂微粒子のシェル部では低温での融着が難しく、粒子間の結着や基材への密着性に劣る。したがって、手で押すと簡単に退色し、基材からも剥がれやすい。塗膜の耐水性や耐溶剤も設計に考慮されていないため、容易に退色してしまう。
特許文献2や特許文献3においても、造膜性を有するシェル層と粒子形状を維持するコア層に機能を分離したコアシェル型樹脂微粒子を用いたコロイド結晶塗膜が開示されている。これらは流動したシェルが空隙部を完全に埋めてマトリクスになるように設計されているため、コロイド結晶を安定に固定化するという点では優れた塗膜設計と言える。しかしながら、コアシェル型樹脂微粒子を構成するエチレン性不飽和単量体の性質状、粒子(コア)とマトリクス(シェル)の屈折率差が小さくなってしまうため、薄膜で鮮やかな発色が要求される用途には適していない。
特許文献4では、ガラス転移温度の低いシェルとガラス転移温度の高いコアを有し、コロイド結晶の空隙がシェル部分で完全に埋まらない様、コアシェル比が調整されたコアシェル型樹脂微粒子からなるコロイド結晶が開示されている。しかしながら、このコアシェル型樹脂微粒子は非反応性の界面活性剤で合成されているため、遊離した界面活性剤がコロイド結晶の規則配列に悪影響を及ぼしやすい。さらにコアシェル型粒子のシェル界面に界面活性剤が偏在化するため、コアシェル型樹脂微粒子間の結着力も大幅に低下する。したがって、得られるコロイド結晶塗膜の耐水性や耐溶剤性も著しく低下する。ソープフリー乳化重合によるコアシェル型樹脂微粒子についても記載があるが、二段重合時の安定性やコアシェル型樹脂微粒子の単分散性が著しく悪く、良好な発色のコロイド結晶は得られない。
特開2001−329197号公報 特開2007−126646号広報 特開2000−026551号広報 特開2008−83545号公報
本発明が解決しようとする課題は、塗膜にした際に優れた発色を示し、且つ基材への追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性を示すコロイド結晶を形成する樹脂微粒子および樹脂組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、コロイド結晶を形成するためのコアシェル型樹脂微粒子であって、下記(1)〜(5)を満たすことを特徴とするコアシェル型樹脂微粒子に関する。
(1)樹脂を構成する単量体として反応性界面活性剤を含む。
(2)平均粒子径が180〜330nmである。
(3)コア100質量部に対するシェルの質量が10〜50質量部である。
(4)コアのガラス転移温度(Tg)が50℃以上である。
(5)シェルのTgが−60〜40℃である。
また、本発明は、上記コアシェル型樹脂微粒子と無彩黒色微粒子とを含有してなる樹脂組成物に関する。
また、本発明は、非反応性の界面活性剤を含有しない上記樹脂組成物に関する。
また、本発明は、上記樹脂組成物より形成されたコロイド結晶に関する。
また、本発明は、コアシェル型樹脂微粒子が架橋されてなる上記コロイド結晶に関する。
本発明により、塗膜にした際に優れた発色を示し、且つ基材への追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性を示すコロイド結晶を形成するコアシェル型樹脂微粒子および樹脂組成物を提供できるようになった。
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明するが、実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定されない。
<コアシェル型樹脂微粒子(A)>
コアシェル型樹脂微粒子(A)は、コア(内層)とシェル(外層)の構造からなる。コアシェル型樹脂微粒子(A)を含有する樹脂組成物を基材等に塗布すると、規則的に配列されたコロイド結晶が形成される。
コアシェル型樹脂微粒子(A)の製造方法の一例を以下に示す。コアシェル型樹脂微粒子(A)は、例えば、下記に示す二段滴下の乳化重合により調製できる。まず、反応槽に水性媒体と界面活性剤を仕込み、昇温する。その後、窒素雰囲気下でコアを形成する一段目のエチレン性不飽和単量体(ac)の乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、滴下量にしたがって粒子は徐々に成長してコア粒子を形成する。一段目の滴下が完了し、発熱が落ちついたところで、シェルを形成する二段目のエチレン性不飽和単量体(as)の乳化液の滴下を開始する。その際、追加の開始剤を添加しても良い。滴下された二段目のエチレン性不飽和単量体(as)は、一旦コア粒子に分配されるが、重合が進むにつれてコア粒子の外層に重合体として析出していき、シェル層を形成する。
コアを形成するエチレン性不飽和単量体(ac)100質量%中、芳香族系エチレン性不飽和単量体(ac−1)が70〜100質量%含有されている事が好ましい。芳香族系エチレン性不飽和単量体(ac−1)が70〜100質量%の範囲で含まれている事により、コア分の屈折率が高くなり、コロイド結晶中における粒子部分と空気の空隙部分の屈折率差がより大きくなり、優れた発色のコロイド結晶が得られるため好ましい。さらにコアとシェルのコントラストが明確になると共に、シェルの融着が阻害されず、基材への追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性に優れたコロイド結晶を得ることができる。
コアシェル型樹脂微粒子(A)に使用できるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族系エチレン性不飽和単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸等のスルホン酸基(スルホ基)含有エチレン性不飽和単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコール等の水酸基含有エチレン性不飽和単量体;
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有エチレン性不飽和単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられ、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレー
ト等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート等のケトン基含有エチレン性不飽和単量体;
アリル(メタ)アクリレート、1−メチルアリル(メタ)アクリレート、2−メチルアリル(メタ)アクリレート、1−ブテニル(メタ)アクリレート、2−ブテニル(メタ)アクリレート、3−ブテニル(メタ)アクリレート、1,3−メチル−3−ブテニル(メタ)アクリレート、2−クロルアリル(メタ)アクリレート、3−クロルアリル(メタ)アクリレート、o−アリルフェニル(メタ)アクリレート、2−(アリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルラクチル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート、ゲラニル(メタ)アクリレート、ロジニル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、ビニル(メタ)アクリレート、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルエーテル化N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる。
更にシェルを形成するエチレン性不飽和単量体(as)100質量%中、オクタノール/水分配係数(LogKow)が1以上2.5以下のエチレン性不飽和単量体(as−1)が70.0〜99.5質量%、LogKowが1未満のエチレン性不飽和単量体(as−2)が0.5〜15.0質量%の範囲で含まれていることが好ましい。シェルを形成するエチレン性不飽和単量体(as)が上記の範囲であることにより、二段目の滴下成分から生成される重合体が、芳香族系エチレン性不飽和単量体の重合体を含むコアと相溶せず、更にコア粒子と水相の界面に重合体が析出するため、コアとシェルのコントラストが明確についた粒子が形成される。したがって、シェルの融着による粒子間の結着力向上が図れ、基材追従性や耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性により優れるコロイド結晶を得ることができる。また、無彩黒色微粒子と混合時の安定性にも優れるため、各基材への塗工性が安定し、ムラや凹凸の無い塗膜が得られ、この点もコロイド結晶の基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性の良化に寄与する。またシェル成分の過剰な親水化を防ぎ、コロイド結晶の耐水性が向上する。
オクタノール/水分配係数(LogKow)は、下記の式1により表され、ある化合物Aが水相と油相(オクタノール)、どちらに分配されやすいかを表す指標として用いられる。樹脂微粒子の水分散体と、そこに滴下されるエチレン性不飽和単量体の関係においては、エチレン性不飽和単量体のLogKowの値が高いほど粒子内部にエチレン性不飽和単量体が分配されやすく、値が低いほど水相に分配されやすい。各エチレン性不飽和単量体のLogKowは、フラスコ振盪法やHPLC法などからも算出できるし、ハンセン溶解度パラメータソフトHSPiPのYMB法(物性推算機能)等、化学構造からのシミュレーションで算出することも可能である。
式1
LogKow=Log(オクタノール相における化合物Aの濃度/水相における化合物Aの濃度)
LogKowが1以上2.5以下のエチレン性不飽和単量体(as−1)としては、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリエート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
LogKowが1未満のエチレン性不飽和単量体(as−2)としては、メチルアクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
LogKowが2.5より大きいエチレン性不飽和単量体(as−3)としては、ベンジルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
本実施形態で使用するコアシェル型樹脂微粒子(A)を得るのに際して用いられるラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル等のアゾビス化合物を挙げることができる。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
乳化重合においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等、従来既知のものを好適に使用することができる。
本実施形態で使用するコアシェル型樹脂微粒子(A)を得るに際し、合成時に反応性界面活性剤を使用する。反応性界面活性剤とは、上述のエチレン性不飽和単量体と重合可能な界面活性剤を指す。より詳細には、エチレン性不飽和結合と重合反応し得る反応性基を有する界面活性剤を意味する。ここで、反応性基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等のアルケニル基や(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。これらは、1種類又は2種類以上を併用して用いることが出来る。反応性界面活性剤を使用する事により、コアシェル型樹脂微粒子(A)の安定性や単分散性が向上する。また、粒子配列や塗膜の耐水、耐溶剤に悪影響を及ぼす遊離の界面活性剤成分も殆ど無い。したがって、コロイド結晶の発色が優れ、且つ基材への追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性が良好なものとなる。
使用できる反応性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王製ラテムルPD−104など)、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンAR−10、AR−20など)、スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2など)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩系もしくはポリオキシエチレンアルキルフェニルエステル硫酸塩系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンHS−10、HS−20、HS−30、BC−10、BC−20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N、など)、(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30など)、リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL、株式会社ADEKA製アデカリアソープPP−70など)等のアニオン系反応性界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450等)、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンAN−10、AN−20等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、株式会社ADEKA製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等)、(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114)等のノニオン系反応性界面活性剤等が挙げられる。
更に、本明細書の反応性界面活性剤は、下記一般式(1)で表される構造を有する反応性界面活性剤であることが好ましい。一般式(1)からなる反応性界面活性剤は、他の反応性界面活性剤に比べ、特に240nm以上の大粒子径コアシェル型樹脂微粒子を合成する際において、樹脂粒子の安定化に大変優れており、より単分散なコアシェル型樹脂微粒子を製造することが出来る。また、合成後に未反応の反応性界面活性剤が残留することも無いため、乾燥時の規則的な配列にも好適である。したがって、大粒径のコアシェル型樹脂微粒子から形成される緑や赤のコロイド結晶の発色性も大変良好で、耐溶剤性、耐水性も一層優れたものになる。一般式(1)で表される構造を有する反応性界面活性剤としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンARシリーズ(アクアロンAR−10、AR−20など)が挙げられる。
一般式(1)
Figure 2021028380
(一般式(1)中、Eはエチレン基を表わす。mは1〜3の整数を表し、nは8〜35の整数を表す。)
コアシェル型樹脂微粒子(A)を得るに際し、必要に応じて還元剤、緩衝剤、連鎖移動剤、中和剤を使用することができる。
還元剤としては、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート等の金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素等が挙げられる。還元剤は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を用いるのが好ましい。なお、前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常80℃程度とすればよい。重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。
緩衝剤としては、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類等が挙げられる。
また、中和剤としては、塩基性化合物が挙げられる。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。
コアシェル型樹脂微粒子(A)におけるコアの平均粒子径は150〜300nmの範囲である事が好ましい。コアの平均粒子径が150〜300nmの範囲であることで、可視光領域でより明瞭な発色を示すコロイド結晶を得ることができる。ここで言う平均粒子径とは動的光散乱法により測定した体積平均粒子径の値である。
コアシェル型樹脂微粒子(A)の粒子径のばらつきの指標である変動係数Cv値は30%以下である事が好ましい。30%以下の単分散性の高い同一粒径の微粒子が規則的に配列する事により、より鮮やかで明瞭な構造色を発現することができる。
コアシェル型樹脂微粒子(A)の平均粒子径は180〜330nmの範囲である。平均粒子径が180nm以上であると、コロイド結晶の可視光領域での発色が明瞭になる。また、シェルが過剰に融着して空隙がシェルで埋まる恐れも無くなり、コロイド結晶の発色が優れたものとなる。一方、平均粒子径が330nm以下であると、シェル層の融着が十分に確保され、高分子鎖が十分に絡み合い、コアシェル微粒子間、コアシェル粒子と無彩黒色粒子間、其々の結着力がより強固なものとなる。したがって、基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶が得られる。
コアシェル型樹脂微粒子(A)において、コア100質量部に対するシェルの質量は10〜50質量部である。シェルの質量が10質量部以上であると、シェルの融着が十分に進み、コアシェル微粒子間およびコアシェル粒子と無彩黒色粒子間、其々の結着がより強固なものとなる。したがって、基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶が得られる。一方、50質量部以下であると、シェルが熱や溶剤により過剰に融着され、空隙がシェルで埋まる恐れがなくなる。したがって、空隙部分に空気が残り、優れた発色を示すコロイド結晶を得ることができる。
コアシェル型樹脂微粒子(A)において、コアのTgは50℃以上であり、50℃〜150℃の範囲であることが好ましい。Tgが上記の範囲であることにより、コアの形状が熱や溶剤の影響で変形する恐れが少なくなる。したがって、より発色に優れるコロイド結晶を得ることができる。
コアシェル型樹脂微粒子(A)において、シェルのTgは−60〜40℃であり、−30〜20℃の範囲である事が好ましい。シェルが−60℃以上であると、乾燥時や溶剤に触れた際、シェルが過剰に融着して空隙がシェル成分で埋まる恐れが無くなる。したがって、空隙に空気が十分に存在する状態が維持され発色性に優れるコロイド結晶が得られる。また、コアシェル微粒子間およびコアシェル粒子と無彩黒色粒子間など、シェルが結着している部分の強度も担保されるため、コロイド結晶の基材追従性と圧痕性が良化する。一方、シェルのTgが40℃以下であると、シェルの融着が十分に促進され、コアシェル微粒子間およびコアシェル粒子と無彩黒色粒子間、其々の結着がより強固になる上、柔軟性も担保される。したがって、基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶が得られる。
更にコアシェル型樹脂微粒子(A)のシェルの重量平均分子量は100,000〜1,000,000である事が好ましい。シェルの重量平均分子量を100,000〜1,000,000の範囲にすることにより、樹脂の運動性に優れるため融着しやすく、且つ融着した後に高分子鎖の絡み合いにより優れた結着力を発現するため、より基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶が得られる。
更にコアシェル型樹脂微粒子(A)のシェルは、架橋を形成し得る反応性基を有していることが好ましい。架橋の形成により、コアシェル微粒子間のシェルの結着力がより強化され、コロイド結晶の基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性がより一層向上する。反応性基は、コアシェル型樹脂微粒子(A)の規則配列に悪影響を及ぼさない系であれば任意の官能基を使用できるが、低温かつ短時間で架橋を形成できる点から、ケトン−ヒドラジド架橋を形成可能なケトン基であることがより好ましい。ここで「ケトン−ヒドラジド架橋」とは、ケトン基とジヒドラジド化合物が反応して生成するヒドラゾンを介して形成される架橋を意味する。本実施形態に使用するコアシェル型樹脂微粒子(A)においては、シェルが運動性に優れるため、融着が阻害されない状態で化学架橋も形成できる。したがって融着による高分子鎖の絡み合いと架橋の相乗効果により、優れた結着力がコロイド結晶中の点結着箇所で発現できる。上記の架橋を形成したコロイド結晶は、基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性に大変優れる。
コアシェル型樹脂微粒子(A)にケトン−ヒドラジド架橋を形成可能なケトン基を導入する方法としては、シェルを形成するエチレン性不飽和単量体(as)中にケトン基含有エチレン性不飽和単量体を含有させることにより容易に導入することができる。
コアシェル型樹脂微粒子(A)中のケトン基含有率は、コアシェル型樹脂微粒子(A)の固形分に対して、0.05〜0.3mmol/gの範囲であることが好ましい。0.05〜0.3mmol/gの範囲で使用することにより、融着時にシェルの運動性が保たれた状態で架橋を形成できるため、融着による高分子鎖の絡み合いと架橋の相乗効果が最も現れる塗膜となる。したがって、コロイド結晶の基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性がより向上する。
コアシェル型樹脂微粒子(A)同士をケトン−ヒドラジド架橋させるためには、架橋剤が用いられる。架橋剤としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のヒドラジノ基を2つ以上有するヒドラジド化合物(ポリヒドラジド)が挙げられる。
<樹脂組成物の調製>
本発明の樹脂組成物は、前述したコアシェル型樹脂微粒子(A)と無彩黒色微粒子(B)とを含有しており、基材上に塗布されてコロイド結晶を形成する。得られたコロイド結晶は、ブラッグ反射による構造色を示し、粒子径を制御することにより屈折率の周期間隔を制御し、色調を様々に変化させることが出来るようになる。また、塗工性や塗膜耐性を向上させる目的で、親水性溶剤や架橋剤などの添加剤を使用することが出来る。
使用できる親水性溶剤としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノールなどの一価のアルコール溶剤;
エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;
N-メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム系溶剤;
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、出光製エクアミドM−100、エクアミドB−100等のアミド系溶剤
等が挙げられる。これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる。
架橋剤としては、前述のヒドラジノ基を2つ以上有するヒドラジド化合物(ポリヒドラジド)が挙げられる。
無彩黒色微粒子(B)は前述のコアシェル型樹脂微粒子(A)が規則配列されたコロイド結晶層中に含まれ、コロイド結晶中の余計な散乱光を吸収して構造色の発色をより明瞭にする働きをする。コアシェル型樹脂微粒子(A)を黒色に染色して散乱光を抑制する方法も考えられるが、より明瞭な発色性が得られることやコロイド結晶の耐水性や耐溶剤性に優れる利点から着色されていないコアシェル型樹脂微粒子(A)と無彩黒色微粒子(B)とで機能分離することが好ましい。無彩黒色微粒子(B)には、カーボンブラックや黒色染料で着色した樹脂微粒子など任意の黒色微粒子を使用することができるが、着色成分が水や溶剤に溶出しにくいこと、着色剤の耐久性に優れることから、カーボンブラックを使用する事がより好ましい。カーボンブラックは、各種分散剤によって水中に分散されたタイプを使用しても構わないし、自己分散タイプのものでも構わないが、分散剤成分による微粒子配列への影響がない点から自己分散タイプのカーボンブラックを使用する事が更に好ましい。
カーボンブラックの水分散体は、調製しても構わないし、市販されているものを使用しても構わない。市販品としては、例えば、ライオン社製ライオンペーストシリーズ(W−310A等)、オリエント化学製CWシリーズ(CW−1、CW−2、CW−3等)が挙げられる。
更に無彩黒色微粒子の平均粒子径は、30〜300nmの範囲である事が好ましい。30〜300nmの範囲である事により、コアシェル型樹脂微粒子(A)の規則配列が維持され、且つシェルに無彩黒色微粒子(B)が強固に結着されるため、コロイド結晶の基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性がより一層向上する。
無彩黒色微粒子(B)はコアシェル型樹脂微粒子(A)100質量部に対して0.3〜5質量部の範囲で含有されていることが好ましい。含有量が0.3質量部以上であると、より明瞭な発色を示すコロイド結晶を得ることができる。一方で、5質量部以下であると、発色性、耐水性、耐溶剤性により優れるコロイド結晶が得られる。
本発明の樹脂組成物は、非反応性の界面活性剤を含まないことが好ましい。非反応性界面活性剤を含まない樹脂組成物はコアシェル型樹脂微粒子(A)が容易に規則配列し、親水性の表面に偏在する界面活性剤量を低減することが可能であるため、発色性、耐水性、耐溶剤性に大変優れる。
<コロイド結晶の製造方法>
本実施形態のコロイド結晶を製造する際、基材上にコアシェル型樹脂微粒子(A)および無彩黒色微粒子(B)を含有する樹脂組成物を塗布する。塗布方式としては、インクジェットやスプレー、ディッピングやスピンコート等、版を使用しない印刷方式、オフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターなどの有版の印刷方式、どちらを採用しても構わない。
<樹脂組成物塗布後の乾燥>
樹脂組成物を基材上に付与した後、塗布物を乾燥してコロイド結晶を形成させる。その際、乾燥方法に特に制限はなく、例えば加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法など、従来既知の方法を挙げることができる。上記の乾燥法は単独で用いても、複数を併用してもよいが、基材へのダメージを軽減し効率よく乾燥させるため、熱風乾燥法を用いることが好ましい。しかしながら、水を揮発させ、移流集積により粒子を配列させる際、乾燥温度が高すぎると、水が急速に揮発してしまい粒子の配列が大きく乱れて発色に悪影響を及ぼすため注意が必要である。配列への影響と生産性を鑑み、乾燥温度は25〜80℃の範囲であることが好ましい。コロイド結晶の良好な発色を担保し、且つ短時間で効率的に生産する事を踏まえ、コアシェル型樹脂微粒子(A)の分散液は乾燥後のコロイド結晶の膜厚が5〜20μmの範囲になるように塗布することが好ましい。
<基材>
本実施形態のコロイド結晶作成に用いる基材としては、従来既知のものを任意に用いることができる。例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルムの様な熱可塑性樹脂基材や、アルミニウム箔の様な金属基材、ガラス基材、コート紙基材などにも使用可能である。基材は印刷媒体の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。コロイド結晶の発色をより明瞭にするため、黒色等に予め着色された基材を用いる事も可能である。また、上記これらの基材の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。なお、基材は樹脂組成物の塗工性を改善する目的で、あらかじめコロナ処理やプラズマ処理を行っても構わない。また、これらの基材上にプライマー層が付与されていても構わない。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。例中、「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味する。
<分配係数(LogKow)>
各エチレン性不飽和単量体の分配係数(LogKow)は、化学構造式からハンセン溶解度パラメータソフトHSPiPの物性推算機能(YMB法)を用いて算出した。
<平均粒子径およびCv値>
分散体を500倍に水で希釈し、該希釈液約5mlを動的光散乱測定法(測定装置はナノトラックUPA(株)マイクロトラックベル社製)により測定をおこなった。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とした。同時に下記式より粒子径の均斉度を表す変動係数Cv値を算出した。
Cv値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量計、TAインスツルメント社製)により測定した。樹脂微粒子の分散体を乾固したサンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取り、ガラス転移温度(Tg)を得た。
<重量平均分子量>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値。乾燥させた樹脂をテトラヒドロフランに溶解させ、0.1%溶液を調製し、以下の装置ならびに測定条件により重量平均分子量を測定した。高分子量化により、樹脂が不溶で測定が困難なものについては、重量平均分子量を1,000,000を越えるものと見なした。
装置:HLC−8320−GPCシステム(東ソー社製)
カラム;TSKgel−SuperMultiporeHZ−M0021488
4.6 mmI.D.×15 cm×3本(分子量測定範囲2千約200万)
溶出溶媒;テトラヒドロフラン
標準物質;ポリスチレン(東ソー社製)
流速;0.6mL/分、試料溶液使用量;10μL、カラム温度;40℃
<無彩黒色微粒子の調製>
(製造例1)
黒色顔料の粉体としてPrintex85(エボニックデグサ社製 カーボンブラック)20.0部、高分子分散剤として、JONCRYL63J(BASF社製スチレンアクリル樹脂のアンモニア中和品の水溶液、酸価213mgKOH/g、固形分30.0%)30.0部、イオン交換水40.0部をペイントコンディショナーにて2時間分散し、平均粒子径28.0nmの無彩黒色微粒子2の分散体を得た。更にイオン交換水を加え、無彩黒色微粒子2の固形分を20.0質量%になるように分散体を調製した。
(製造例2〜4)
表1に示す配合組成に変更した以外は、製造例1と同様の方法で無彩黒色微粒子3〜5の分散体を得た。無彩黒色微粒子3〜5の固形分を20.0%に分散体を調製した。
無彩黒色微粒子1として、オリエント化学工業社製のBONJET BLACK CW−1(表面変性カーボンブラック、平均粒子径63nm、顔料分20%)をそのまま用いた。
Figure 2021028380
<コアシェル型樹脂微粒子(A)の製造>
(実施例1)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水96.5部と別途、スチレン97.0部、アクリル酸2.0部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0部、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩系の反応性界面活性剤として、第一工業製薬製アクアロンAR−10を1.0部、イオン交換水39.7部を混合、撹拌して調製した一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの3.0%を加えた。
反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの2.5%水溶液5.7部を添加して重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を維持しながら一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.0部を2時間かけて滴下しながら反応させ、コア粒子を合成した。
生成したコア粒子の平均粒子径は205nmであった。一段目の滴下完了から20分後、別途、メチルメタクリレート15.0部、n−ブチルアクリレート26.1部、アクリル酸0.9部、AR−10 0.4部、イオン交換水17.0部を混合、撹拌して調製した二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の滴下を開始した。
内温を80℃に保ちながら二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液と過硫酸カリウムの2.5%水溶液1.7部を2時間かけて滴下しながら反応を更に進め、最終固形分45.0質量%のコアシェル型樹脂微粒子A−1の分散体を得た。
得られたコアシェル型樹脂微粒子A−1の平均粒子径は243nm、Cv値は23.7%であった。DSC測定を行ったところ、コアのTgは100.1℃、シェルのTgは−12.5℃であった。更にコアシェル型樹脂微粒子をテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、超遠心分離によりTHFに不溶なコア分を沈殿、除去して溶解しているシェル成分を抽出した。抽出した成分について、重量平均分子量を測定したところ、シェルの重量平均分子量は152000であった。
(実施例2〜28、比較例1〜10)
表2に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂微粒子A−2〜A−28および比較用樹脂微粒子HA−1〜HA−10の分散体をそれぞれ得た。エチレン性不飽和単量体の乳化液は、乳化液中のエチレン性不飽和単量体の濃度が69.0質量%、界面活性剤の濃度が0.69質量%になる様、イオン交換水を添加して調製した。乳化液と同時に滴下する過硫酸カリウムの2.5%水溶液は、滴下するエチレン性不飽和単量体の総量に対して固形で0.1質量%に相当する量を添加した。なお、実施例3、4、28、比較例2、3については、反応槽に分割して仕込む一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の量を3.0%から5%、1.5%、1.5%、7.0%、1.0%にそれぞれ変更した。実施例12、13は、二段目の滴下成分にn−ドデシルメルカプタンを0.5部と0.2部をそれぞれ追加で添加した。表2中、数値は特に断りのない限り部を表し、空欄は配合していないことを表す。
(比較例11)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水96.5部と別途、スチレン97.0部、アクリル酸2.0部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0部、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩系の反応性界面活性剤として、第一工業製薬製アクアロンAR−10を1.0部、イオン交換水39.7部を混合、撹拌して調製したエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの3.0%を加えた。
反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの2.5%水溶液5.7部を添加して重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を維持しながらエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.0部を2時間かけて滴下しながら反応させ、最終固形分45.0質量%の比較用樹脂微粒子HA−11の分散体を得た。
Figure 2021028380
Figure 2021028380
Figure 2021028380
Figure 2021028380
<樹脂組成物の調製>
(実施例29)
樹脂微粒子A−1の分散体100質量部に対して、無彩黒色微粒子1(平均粒子径63.0nm、固形分20.0%)の分散体2.3部を添加して攪拌し、樹脂組成物1を調製した。
(実施例30〜60、比較例12〜22)
表3に示す組成に変更した以外は、実施例29と同様にして樹脂組成物2〜32、比較用樹脂組成物H1〜11を調整した。ただし、実施例55〜59については、無彩黒色微粒子の分散体と共に、アジピン酸ジヒドラジドを表3に示す量(部)を併せて添加した。表3中、空欄は配合していないことを表す。
Figure 2021028380
<塗膜の作成>
(実施例61)
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)基材(フタムラ製FOR、膜厚20.0μm)のコロナ処理面にプラズマ処理を施し、実施例29の樹脂組成物1を乾燥膜厚が7μmになるようにバーコーターで塗工し、50℃5分間の条件で乾燥させて、塗膜1を得た。
<プラズマ処理>
真空デバイス社製PIB−20を用いて、OPP基材のコロナ処理面にプラズマ処理を施した。処理条件は下記の通り。
雰囲気ガス:空気
雰囲気ガス圧:20Pa
放電電流:20mA
処理時間:1分間
(実施例62〜92、比較例23〜33)
表4に示す組成で、実施例61と同様にして塗膜2〜32および比較用塗膜H1〜H11を得た。
Figure 2021028380
<塗膜の評価>
前述の塗膜について、発色性、基材追従性、耐水性および耐溶剤性の評価を実施した。表4にその結果を示す。
(発色性)
処理OPP上で作成した塗膜の反射スペクトルを、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製V−770D、積分球ユニットISN−923)を用いて測定した。各波長における反射率は、反射率が既知の標準白板(ラブスフェア社製SRS−99−010)をリファレンスとして用いて波長250〜850nmの範囲を測定した。(相対反射率)得られた反射スペクトルから、構造色に由来する反射率の最大値(最大反射率)とベースラインの反射率の差(△R)を算出した。△Rが大きいほど、発色性に優れることを示す。評価基準は以下の通りである。
◎:△Rが35%以上である。良好。
〇:△Rが20%以上35%未満である。良好。
△:△Rが10%以上20%未満である。不良。
×:△Rが10%未満である。極めて不良。
(基材追従性)
処理OPP上で作製した塗膜の試験片(10cm×10cm)を10回揉んで試験後の塗膜全面積中で塗膜が剥がれている部分の面積比率と、試験前後の塗膜の発色変化を観察して評価した。評価基準は下記の通り。
◎:剥がれや傷が無く、発色に変化無し。極めて良好。
○:僅かに剥がれ(剥がれた面積5%未満)が有るが、発色に変化なし。良好。
△:剥がれが有るが(剥がれた面積5%以上)、発色に変化なし。不良。
×:剥がれが有り、退色している。極めて不良。
(耐圧痕性)
処理OPP上で作成した塗膜の試験片を指の腹で10回押し付けた後、前述の発色性評価と同様に反射スペクトルを測定した。試験前後で塗膜のΔRを比較して評価した。試験前後でのΔRの低下が小さいほど耐圧痕性に優れることを示す。評価基準は下記の通り。
◎:試験前後でΔRの低下が5%未満である。良好
〇:試験前後でΔRの低下が5%以上10%未満である。良好
△:試験前後でΔRの低下が10%以上20%未満である。不良
×:試験前後でΔRの低下が20%以上であるか、またはΔRが算出できなかった。極めて不良
(耐水性および耐溶剤性)
処理OPP上で作製した塗膜の試験片を水またはメタノールの溶液にそれぞれ浸漬し、1分間放置して取り出した後、50℃・3分で再乾燥して、前述の発色性評価と同様に反射スペクトルを測定した。試験前後で塗膜のΔRを比較して評価した。試験前後でΔRの低下が小さいほど耐水性および耐溶剤性に優れることを示す。評価基準は以下の通り。
◎:試験前後でΔRの低下が5%未満である。極めて良好。
〇:試験前後でΔRの低下が5%以上10%未満である。良好。
△:試験前後でΔRの低下が10%以上20%未満である。不良。
×:試験前後でΔRの低下が20%以上であるか、または反射率のコントラストが消失した。極めて不良。
実施例61〜92の塗膜は、いずれも鮮やかな構造色を呈し、塗膜中でコロイド結晶が形成されていることが確認された。また、基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性に優れるため、塗膜耐性においても実用レベルを十分にクリアできる耐久性を有していることが分かった。一方で、比較例23〜33を用いて作成した塗膜は、発色性、基材追従性、耐圧痕性、耐水性、耐溶剤性が劣り、実用レベルの基準には未達であった。以上の事から、本実施形態の樹脂微粒子、樹脂組成物、およびコロイド結晶の優位性が証明された。

Claims (5)

  1. コロイド結晶を形成するためのコアシェル型樹脂微粒子であって、下記(1)〜(5)を満たすことを特徴とするコアシェル型樹脂微粒子。
    (1)樹脂を構成する単量体として反応性界面活性剤を含む。
    (2)平均粒子径が180〜330nmである。
    (3)コア100質量部に対するシェルの質量が10〜50質量部である。
    (4)コアのガラス転移温度(Tg)が50℃以上である。
    (5)シェルのTgが−60〜40℃である。
  2. 請求項1記載のコアシェル型樹脂微粒子と無彩黒色微粒子とを含有してなる樹脂組成物。
  3. 非反応性の界面活性剤を含有しない請求項2記載の樹脂組成物。
  4. 請求項2または3記載の樹脂組成物より形成されたコロイド結晶。
  5. コアシェル型樹脂微粒子が架橋されてなる請求項4記載のコロイド結晶。
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