JP2021028378A - プライマー - Google Patents

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Abstract

【課題】コロイド結晶の経時での発色性が良好であり、塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーを提供することを提供すること。【解決手段】上記課題は、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーであって、水性樹脂(A)を含有しており、水性樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−60〜100℃、水酸基価が25mgKOH/g未満および重量平均分子量が15,000以上であるプライマーによって解決される。【選択図】なし

Description

本発明は、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーに関する。
フォトニック結晶は、屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の間隔で並べたナノ周期構造を持つ人工結晶であり、ブラッグ反射で知られる特定波長の光の反射やフォトニックバンドギャップによる光閉じ込め効果や光増幅効果等、様々な興味深い光学特性を有することから、近年、活発に検討されている。中でもコロイドサイズの粒子が規則的に配列されたコロイド結晶は、比較的簡便に作製できるフォトニック結晶の一つではあるが、コロイド結晶の配列を乱すことなく保持しつつ、コロイド結晶を含有する層(コロイド結晶層)の基材に固定化することが難しいという技術的な課題により、大量生産されるまでには至っていない。
特許文献1では、バインダーとして水性樹脂を予め添加したコロイド結晶用樹脂組成物を塗布、乾燥して固定化したコロイド結晶の塗膜が開示されている。しかしながら、この固定化方法ではバインダー成分が粒子の規則配列を阻害する他、空隙に入り込んで粒子と空隙の屈折率差を小さくするため、塗膜の発色が著しく悪化するという問題があった。バインダー成分も局在化しやすいため、全体的な結着にムラが出やすく、塗膜耐性も劣る。
特許文献2では、ポリビニルアルコールをプライマー層として塗工した基材上に、コロイド結晶を結着、固定化させたコロイド結晶の塗膜が開示されている。しかしながら、このプライマーでは水や溶剤への耐性が無く、容易に溶出しやすい。したがって、上にコロイド結晶用樹脂組成物を塗布した際、プライマー成分が溶出して組成物に混入し、粒子の規則配列を乱して発色性を悪化させるという問題があった。得られるコロイド結晶の塗膜の耐水性、耐溶剤性も悪い。
特許文献3では、粘着剤成分をプライマー層として塗工した基材上に、コロイド結晶層を結着、固定化させたコロイド結晶の塗膜が開示されている。しかしながら、このプライマーでは塗膜の強度が低いため、傷や圧痕が容易についてしまうという問題があった。また、プライマー成分がコロイド結晶の空隙に徐々に侵入して空隙を埋めてしまうため、塗膜の発色性が経時で悪化する問題もある。プライマー層の水や溶剤への耐性も樹脂設計に考慮されていないため、塗膜全体の耐水性や耐溶剤性も悪く、実用レベルには及ばない。したがって、コロイド結晶の配列を乱さずに発色性を経時で良好に保つことができ、コロイド結晶層を基材に強固に固定して、高い耐擦性や耐水性、耐溶剤性を付与する材料が求められていた。
特開2007−126646号公報 特開2006−116781号公報 特開2008−246846号公報
本発明が解決しようとする課題は、コロイド結晶の経時での発色性が良好であり、塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーを提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーであって、水性樹脂(A)を含有しており、水性樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−60〜100℃、水酸基価が25mgKOH/g未満および重量平均分子量が15,000以上であるプライマーに関する。
また、本発明は、水性樹脂(A)の酸価が、5〜70mgKOH/gである上記プライマーに関する。
また、本発明は、非反応性の低分子乳化剤を含有しない上記プライマーに関する。
また、本発明は、コロイド結晶層と架橋を形成し得る上記プライマーに関する。
また、本発明は、コロイド結晶層が、コアシェル型樹脂微粒子を含有してなる上記プライマーに関する。
また、本発明は、コアシェル型樹脂微粒子中のコア100質量部に対するシェルの質量が、10〜50質量部である上記プライマーに関する。
また、本発明は、コアシェル型樹脂微粒子中のコア部のTgが、60℃以上である上記プライマーに関する。
また、本発明は、コアシェル型樹脂微粒子中のシェル部のTgが、−50以上20℃未満である上記プライマーに関する。
また、本発明は、基材が、非極性フィルムである上記プライマーに関する。
本発明により、経時での発色性が良好であり、塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶塗膜が得られる。
本発明は、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーであって、
プライマー層が水性樹脂(A)を含有しており、
水性樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が−60〜100℃、重量平均分子量が15,000以上であるプライマーである。
<水性樹脂(A)>
まず本発明に用いられる水性樹脂(A)について説明する。本明細書でいう水性樹脂(A)とは、水性媒体中に分散又は溶解し得る樹脂を指す。ここで水性媒体とは、水性の分散媒または水性の溶媒を指す。例えば、水の他に、水と混和し得る分散媒または溶媒が挙げられる。水性樹脂(A)は、水性媒体中に分散又は溶解した形態をとり、基材等に塗布された後、乾燥すると造膜して、水に不溶なプライマー層を形成する。更に、このプライマー層上にコロイド結晶用樹脂組成物が塗布され、乾燥するとコロイド結晶層が形成される。本明細書においては、プライマー層とコロイド結晶層を積層してなる上記の塗膜をコロイド結晶塗膜と定義する。
水性樹脂(A)は、プライマー層上に塗工するコロイド結晶用樹脂組成物の塗工性や配列に悪影響を及ぼさない点から、アニオン性またはノニオン性の水性樹脂である事が好ましい。
水性樹脂(A)の好ましい樹脂系としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂および、これらの樹脂を複数種、複合化させてなる複合樹脂等が挙げられ、これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、基材やコロイド結晶層への優れた結着性、プライマー塗膜の耐溶剤性や透明性等を鑑み、水性樹脂(A)には、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を用いる事がより好ましい。
水性樹脂(A)は、乳化重合のように水性媒体中でエチレン性不飽和単量体を重合する方法や、非水系にて重合をおこなった後、脱溶剤しながら水相に転相する、転相乳化法等、任意の方法で調製することができる。中でも工程数が少なく、低粘度で高固形分化が可能である事、より高分子量の水性樹脂を得られる事から、乳化重合で得ることがより好ましい。
水性樹脂(A)がアクリル樹脂もしくはスチレンアクリル樹脂の場合、エチレン性不飽和単量体(a)をラジカル重合することで、目的の樹脂を得ることができる。
水性樹脂(A)の合成に使用できるエチレン性不飽和単量体(a)としては、例えば、
スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)
アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族系エチレン性不飽和体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸等のスルホ基含有エチレン性不飽和単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコール等の水酸基含有エチレン性不飽和単量体;
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有エチレン性不飽和単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられ、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート等のケトン基含有エチレン性不飽和単量体;
アリル(メタ)アクリレート、1−メチルアリル(メタ)アクリレート、2−メチルアリル(メタ)アクリレート、1−ブテニル(メタ)アクリレート、2−ブテニル(メタ)アクリレート、3−ブテニル(メタ)アクリレート、1,3−メチル−3−ブテニル(メタ)アクリレート、2−クロルアリル(メタ)アクリレート、3−クロルアリル(メタ)アクリレート、o−アリルフェニル(メタ)アクリレート、2−(アリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルラクチル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート、ゲラニル(メタ)アクリレート、ロジニル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、ビニル(メタ)アクリレート、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルエーテル化N−メチロール(メタ)アクリルアミド等;
のメチロール基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる
本実施形態で使用する水性樹脂(A)を得るに際して用いられるラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル等のアゾビス化合物を挙げることができる。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
乳化重合においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等、従来既知のものを好適に使用することができる。
また、乳化重合を行うに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合を行ったりすることが容易になる。
このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート等の金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素等を例示できる。これら還元剤は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.05〜5.0質量部の量を用いるのが好ましい。なお、前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常80℃程度とすればよい。重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。
さらに必要に応じて、緩衝剤として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が、また、連鎖移動剤としてのオクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類が適量使用できる。
水性樹脂(A)の水媒体中での分散安定性もしくは溶解性をより高めるために、中和剤として塩基性化合物を使用することもできる。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。
本実施形態で使用する水性樹脂(A)を乳化重合により得る際、粒子の分散安定性を向上させる目的で、乳化剤を使用することができるが、プライマー層における遊離成分を少なくする観点から、乳化剤には、反応性乳化剤を使用することがより好ましい。ここで言う反応性乳化剤とは、上述のエチレン性不飽和単量体と重合可能な乳化剤を指す。より詳細には、エチレン性不飽和結合と重合反応し得る反応性基を有する乳化剤を意味する。ここで、反応性基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等のアルケニル基や(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。これらは、1種類又は2種類以上を併用して用いることができる。
使用できる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王製ラテムルPD−104等)、
ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンAR−10、AR−20)、
スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等)、
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩系もしくはポリオキシエチレンアルキルフェニルエステル硫酸塩系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンHS−10、HS−20、HS−30、BC−10、BC−20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N、等)、(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30等)、リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL、株式会社ADEKA製アデカリアソープPP−70等)のアニオン性の反応性乳化剤;
オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類(市販品としては、例えば、第一工業製薬製ハイテノールLA−10、LA−12、LA−16等)、等のアニオン性の非反応性乳化剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450等)、
ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンAN−10、AN−20等)、
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、株式会社ADEKA製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等)、(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114)等のノニオン性の反応性乳化剤;
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(市販品としては、第一工業製薬株式会社製ノイゲンTDS−120等)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類といったノニオン性の非反応性乳化剤が挙げられる。
ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、マレイン酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー株式会社製 ポリナスPS−1、ポリナスPS−5等)、スチレンスルホン酸−マレイン酸共重合体、ポリイタコン酸、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエステル、カルボキシビニルポリマー等の水溶性のビニル系共重合体;
ポリイソシアネートとポリオールの重付加反応により得られるウレタン樹脂であり、親水基の導入により樹脂全体が水溶化された水溶性ポリウレタン樹脂;
多価カルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるポリエステル樹脂であり、親水基の導入により樹脂全体が水溶化された水溶性ポリエステル樹脂;
等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる。さらにこれらの樹脂は、ラジカル開始剤により溶液重合もしくは塊状重合で合成しても構わないし、市販品を使用しても構わない。また、必要に応じて前述で述べた塩基性化合物を使用する事ができる。
乳化剤の市販品としては、例えば、BASF社製JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611JONCRYL683、JONCRYL690、JONCRYL57J、JONCRYL60JJONCRYL61J、 JONCRYL62J、JONCRYL63J、JONCRYLHPD−96J、JONCRYL501J、JONCRYLPDX−6102B、ビックケミー社製DISPERBYK180、DISPERBYK187、DISPERBYK190、DISPERBYK191、DISPERBYK194、DISPERBYK2010、DISPERBYK2015、DISPERBYK2090、DISPERBYK2091、DISPERBYK2095、DISPERBYK2155、サートマー社製、SMA1000H、SMA1440H、SMA2000H、SMA3000H、SMA17352H等が挙げられる。
水性樹脂(A)を得る際に非反応性の低分子乳化剤を用いた場合、非反応性の低分子乳化剤は、プライマー中に遊離成分として残留するが、プライマーは、非反応性の低分子乳化剤を含まないことがより好ましい。
水性樹脂(A)がポリウレタン樹脂の場合、非水系にて任意のポリオールとポリイソシアネートを重付加反応させ、得られたウレタン樹脂を前述で例示した乳化剤を用いて水中に分散させる、もしくは樹脂中に親水基を導入して自己乳化させる事により、目的の水性樹脂を調製することができる。更に樹脂末端にイソシアネート基を残し、ジアミンやジヒドラジド化合物を反応させ、末端への官能基導入や、鎖延長による更なる高分子量化をはかることも可能である。反応性基を介してアクリル樹脂骨格やオレフィン樹脂骨格をグラフトする等、異なる樹脂と複合化することも可能である。
ウレタン樹脂の合成時に使用できるポリオールとしては、例えば、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA等の
二官能ジオールや、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三官能ジオールと、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の二塩基酸を反応させてなるポリエステルポリオール;
前述の二官能ジオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートを反応させてなるポリカーボネートポリオール;
水酸基含有ポリブタジエン、酸基含有水添ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有水添ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等のポリオレフィンポリオール;
植物由来の油を原料としたひまし油ポリオール等が挙げられる。
ウレタン樹脂の合成時に使用できるポリイソシアネートといえば、例えば、
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;
テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族系ポリイソシアネートなどが挙げられる。
更にウレタン樹脂のウレタン結合濃度調節や各種官能基導入の目的で低分子ジオールを原料に併用する事もできる。低分子ジオールとしては分子量500以下のジオールが好ましく、例えば、
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
末端変性や鎖延長反応に使用できる化合物としてはヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン等のジアミン類、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;
等が挙げられる。
ウレタン樹脂の水分散体は、合成しても構わないし、市販品を使用しても構わない。市販品としては、例えば、第一工業製薬製スーパーフレックスシリーズ(例えばSF−170、SF−210等)、三洋化成社製ユーコート、パーマリンシリーズ(例えば、UX−310、UX−3945等)、荒川化学製ユリアーノシリーズ(例えばW−600やW−321等)、ADEKA製アデカポンタイターシリーズ(例えばHUX−420A、HUX−386等)、宇部興産製UWシリーズ(例えば、UW−5002、UW−5020等)、大成ファインケミカル社製アクリットシリーズ(例えば、WBR2000U、WBR2101、WEM−200U等)等が挙げられる。
水性樹脂(A)がポリオレフィン樹脂の場合、マレイン酸で酸変性してなるポリオレフィン、例えば変性エチレン−プロピレン共重合体、変性プロピレン−1−ブテン共重合体、及び変性エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、およびこれらにアクリル樹脂骨格をグラフトした複合化樹脂等が使用できる。ポリオレフィン樹脂についても、先述した各種乳化剤により水中に分散させる、もしくは、樹脂中に親水基を導入して自己乳化させるなどして、樹脂微粒子水分散体を得ることができる。
ポリオレフィン樹脂の水分散体は、合成しても構わないし、市販品を使用しても構わない。市販品としては、例えば、日本製紙社製スーパークロンシリーズやアウローレンシリーズ(例えば、E−480T、AE−301等)、ユニチカ製アローベースシリーズ(例えばSB−1230N、SB−1200等)、三菱化学製アプトロックシリーズ(例えば、BW−5550等)が挙げられる。
水性樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合、ポリエステル樹脂は前述のポリエステルポリオールと同様の方法により合成できる。ポリエステル樹脂についても、先述した乳化剤により水中に分散させるもしくは、樹脂中に親水基を導入して自己乳化させる等して、樹脂微粒子水分散体を得ることができる。
ポリエステル樹脂の水分散体は、合成しても構わないし、市販品を使用しても構わない。市販品としては、例えば、互応化学製プラスコートシリーズ(例えば、Z−730、Z−760等)が挙げられる。
水性樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は−60〜100℃の範囲であり、好ましくは−30〜70℃の範囲である。Tgが−60℃以上であると、コロイド結晶の空隙部へのプライマー成分の侵入が抑制できるため、経時でコロイド塗膜の発色が悪化する恐れが無くなる。また、結着部分の強度も確保できるため、塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性も良化する。一方で、Tgが100℃以下であると、水性樹脂(A)の造膜性が十分に確保され、基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶塗膜が得られる。上記のガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量計)を用いて求めた値である。
水性樹脂(A)の重量平均分子量は15,000以上であり、50,000〜100万の範囲である事が好ましい。重量平均分子量が、15,000以上であると、塗膜強度が上がり、水や溶剤に触れた際のプライマー成分の溶出も抑制される。したがって、コロイド結晶塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性が大幅に向上する。ここで言う重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値である。
水性樹脂(A)の水酸基価は25mgKOH/g未満であり、0〜10mgKOH/gの範囲である事がより好ましい。水酸基価が25mgKOH/g未満である事により、水や溶剤に触れた際のプライマーの溶出が抑制され、コロイド結晶の規則配列にも悪影響を及ぼさない。したがって、得られるコロイド結晶塗膜の発色性、耐水性、耐溶剤性が大変優れたものとなる。
更に水性樹脂(A)はカルボキシ基を有していることが好ましく、酸価が5〜70mgKOH/gであることが好ましい。酸価が上記の範囲である事により、プライマー層上に塗工するコロイド結晶層用樹脂組成物の塗工性が阻害されず、プライマー層に対する濡れもク十分に確保されるため、ムラなくより均質なコロイド結晶塗膜が得られる。プライマー層が水に再溶解してコロイド結晶の規則配列に悪影響を及ぼす可能性も殆ど無い。カルボキシ基由来の水素結合も形成され、プライマー層とコロイド結晶層間の結着性向上にもつながる。したがって、コロイド結晶塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性がより向上する。
<プライマー>
本発明のプライマーは、水と水性樹脂(A)を含有しており、基材に塗布、乾燥することで造膜し、プライマー層を形成する。コロイド結晶の規則的な配列等、コロイド結晶塗膜の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、基材に対する塗工性や造膜性や架橋によるプライマー層の各種耐性向上等の目的で、無彩黒色微粒子や親水性溶剤、架橋剤などの添加剤を使用することができる。
本明細書における無彩黒色微粒子はコロイド結晶中の余計な散乱光を吸収してコロイド結晶塗膜の発色をより明瞭にする働きをする。無彩黒色微粒子には、カーボンブラックや黒色染料で着色した樹脂微粒子など任意の黒色微粒子を使用することができるが、着色成分が水や溶剤に対して溶出しにくいこと、耐候性等の耐久性に優れることから、カーボンブラックを使用する事がより好ましい。カーボンブラックは、各種分散剤によって水中に分散されたタイプを使用しても構わないし、自己分散タイプのものでも構わないが、プライマー層から溶出する乳化剤成分が無く、コロイド結晶の規則配列に影響がでない点から自己分散タイプのカーボンブラックを使用する事が更に好ましい。
カーボンブラックの水分散体は、調製しても構わないし、市販されているものを使用しても構わない。市販品としては、例えば、ライオン社製ライオンペーストシリーズ(W−310A等)、オリエント化学製CWシリーズ(CW−1、CW−2、CW−3等)が挙げられる。
本明細書における親水性溶剤としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノールなどの一価のアルコール溶剤;
エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;
N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム系溶剤;
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、出光製エクアミドM−100、エクアミドB−100等のアミド系溶剤
等が挙げられる。これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる。
更に本発明のプライマーはコロイド結晶層と架橋を形成し得る事が好ましい。架橋を形成する事により、プライマー層とコロイド結晶の結着がより強化され、コロイド結晶塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性が更に向上する。プライマー層とコロイド結晶層の架橋は、其々の樹脂成分である水性樹脂(A)と樹脂微粒子(B)に反応性基を導入しておき、直接反応させる、もしくは、多官能の架橋剤を介して、反応させる等して形成することができる。
水性樹脂(A)に導入できる反応性基としては、エポキシ基(多官能カルボン酸を介しての架橋)やカルボキシ基(エポキシ架橋剤を介しての架橋)、水酸基(イソシアネート架橋剤を介しての架橋)、ケトン・ヒドラジド架橋を形成するケトン基、ヒドラジド基等が挙げられるが、コロイド結晶の規則的配列に悪影響を及ぼさず、水の揮発により低温で架橋を形成できる点からケトン基もしくはヒドラジド基であることが好ましい。ケトン・ヒドラジド架橋はフィルム基材など高温乾燥でダメージを受けやすい基材には好適である。またコロナ処理やプラズマ処理により官能基が生成した基材表面とプライマー層間の接着性向上もはかれるため、コロイド結晶塗膜全体の耐性向上にも有効である。ケトン・ヒドラジド架橋系を形成させる方法としては、例えば、水性樹脂(A)とコロイド結晶を形成する樹脂微粒子(B)に予め、反応性基としてケトン基を導入しておき、水媒体中に添加した架橋剤のヒドラジド化合物を介して、乾燥時にケトン・ヒドラジド架橋を形成させる方法、水性樹脂(A)に反応性基としてヒドラジド基を導入し、樹脂微粒子(B)には反応性基としてケトン基を導入して、乾燥時にケトン・ヒドラジド架橋を形成させる方法等が挙げられる。
水性樹脂(A)にケトン基を導入する方法としては、任意の方法が挙げられるが、例えば、水性樹脂(A)がアクリル樹脂またはスチレンアクリル樹脂である場合、前述したエチレン性不飽和単量体(a)のケトン基含有エチレン性不飽和単量体を共重合することで樹脂中にケトン基を導入することができる。ケトン基含有エチレン性不飽和単量体は親水性の高い骨格であるため、ケトン基は粒子のより外側、水性媒体との界面付近に導入される。
水性樹脂(A)にヒドラジド基を導入する方法としては、任意の方法で導入可能であるが、例えば、イソシアネート基末端のウレタン樹脂を合成し、そこにジヒドラジド化合物の片末端だけ反応させることで、末端にヒドラジド基を導入できる。
ケトン基又はヒドラジド基の導入量は、水性樹脂(A)の固形分に対して、0.05〜0.3mmol/gの範囲であることが好ましい。0.05〜0.3mmol/gの範囲で導入することにより、水性樹脂(A)の融着が阻害されない状態で架橋が形成されるため、より塗膜強度に優れるプライマー層が形成される。架橋による樹脂の高分子量化も起こるため、プライマー層が経時でコロイド結晶の空隙に入り込む恐れも無い。更にコロイド結晶との結着も良好であるため、コロイド結晶塗膜の経時での発色性、基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性がより向上する。
ケトン基とケトン・ヒドラジド架橋を形成する目的で使用できる架橋剤としては、アジピン酸ジヒドラジド、多官能のヒドラジド基が変性された水溶性樹脂等が挙げられる。
更に本発明のプライマーは、コロイド結晶層が、コアシェル型樹脂微粒子を含有していることが好ましい。コアシェル型樹脂微粒子を含有する事により、コロイド結晶そのものの耐性が向上し、更にプライマー層とコロイド結晶層の融着が促進され、結着性が向上する。したがって、コロイド結晶塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性がより向上する。コアシェル型微粒子の詳細は、後述の樹脂微粒子(B)で説明する。
更に、本発明のプライマーを用いてコロイド結晶層を基材に固定する上で、非反応性の低分子乳化剤を含有しない事が好ましい。水性樹脂(A)の合成時やプライマーの調製時において、非反応性乳化剤を添加すると、遊離している非反応性乳化剤が、後で塗布するコロイド結晶用組成物と触れた際に、プライマー層から溶出し、コロイド結晶の規則配列に悪影響を及ぼす場合がある。また、非反応性乳化剤はプライマー層と空気の界面付近に偏在化しやすく、プライマー層とコロイド結晶の結着力を低下させる。したがって、非反応性の低分子乳化剤を含有しないプライマーは、発色性、基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性により優れたものとなる。非反応性の低分子乳化剤としては、例えば、先述の水性樹脂(A)の調製で例示した乳化剤等が挙げられる。
<コロイド結晶層用樹脂組成物>
本明細書におけるコロイド結晶層用樹脂組成物は、樹脂微粒子(B)および水を含有しており、プライマー層上に塗布されて、移流集積現象により樹脂微粒子(B)が規則配列してコロイド結晶層を形成する。得られたコロイド結晶層は、ブラッグ反射由来の構造色を発現し、粒子径の制御により、周期間隔も制御でき、様々な色を発色させることができる。コロイド結晶層用樹脂組成物は、乾燥時の粒子配列やコロイド結晶塗膜の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、塗工性やコロイド結晶塗膜の発色性、各種耐性を向上させる目的で、無彩黒色微粒子や親水性溶剤、架橋剤等の添加剤を使用することができる。使用できる無彩黒色微粒子や親水性溶剤、架橋剤は、先述のプライマーで例示したものが挙げられる。
樹脂微粒子(B)はアクリル樹脂またはスチレンアクリル樹脂であり、下記の乳化重合により調製できる。まず、反応槽に水性媒体と乳化剤を仕込み、所定の温度まで昇温する。一方、滴下槽には水と乳化剤とエチレン性不飽和単量体(b)を仕込み、撹拌してエチレン性不飽和単量体(b)の乳化液を調製するその後、窒素雰囲気下、反応槽に調製した乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、ポリマーの粒子核が生成し、粒子は徐々に成長して、目的の樹脂微粒子(B)が得られる。
樹脂微粒子(B)に使用できるエチレン性不飽和単量体(b)としては、前述の水性樹脂(A)で例示したエチレン性不飽和単量体(a)を使用することができる。
樹脂微粒子(B)の平均粒子径は180〜330nmの範囲であることが好ましい。上記の範囲である事により、コロイド結晶層の可視光領域での発色が明瞭となり、コロイド結晶塗膜の発色も優れたものとなる。
樹脂微粒子(B)は水性樹脂(A)と架橋を形成する反応性基を有することが好ましい。樹脂微粒子(B)が反応性基を有する事により、前述したプライマー層とコロイド結晶の間で架橋が可能となる。
樹脂微粒子(B)に導入可能な反応性基としては、水性樹脂(A)で例示した反応性基が挙げられるが、コロイド結晶の規則的配列に悪影響を及さず、比較的低温で架橋を形成する点からケトン・ヒドラジド架橋を形成するケトン基であることが好ましい。樹脂微粒子(B)へのケトン基の導入方法としては、先述した水性樹脂(A)へのケトン基導入と同様の方法で導入する事が可能である。
樹脂微粒子(B)のケトン基導入量は、樹脂微粒子(B)の固形分に対して、0.05〜0.3mmol/gの範囲であることが好ましい。0.05〜0.3mmol/gの範囲で使用することにより、残留した架橋剤が耐水性を悪化させず、樹脂微粒子(B)間、コロイド結晶層−プライマー間層の結着が強化できるため、コロイド結晶塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性がより向上する。
更に樹脂微粒子(B)はコアシェル型構造の微粒子である事が好ましい。本明細書におけるコアシェル型樹脂微粒子はコアならびにシェルが水に不溶なポリマーであり、互いに相溶しないコア部(内層)とシェル部(外層)からなる。コアシェル型樹脂微粒子を含有するコロイド結晶用樹脂組成物は、水性樹脂(A)からなるプライマー層上に塗布され、乾燥が進むにつれて、規則的に配列して積層される。その際、コアシェル粒子間の接触部分でシェル部同士が融着し、空隙が水媒体から空気に置換されたコロイド結晶を形成する。更にシェル部は、プライマー層中の樹脂とも融着し、高分子鎖が絡み合うため、強固にコロイド結晶が固定化された塗膜が形成できる。またコロイド結晶中に後述する無彩黒色微粒子を含有する場合、シェル部が無彩黒色微粒子を結着するので、無彩黒色微粒子の欠落を抑制効果も有する。したがって、コロイド結晶塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性がより向上する。
コアシェル型樹脂微粒子の製造法は、下記の二段滴下の乳化重合により、調製される。まず、反応槽に水性媒体と乳化剤を仕込み、所定の温度まで昇温する。窒素雰囲気下、反応槽にコア部を形成する一段目のエチレン性不飽和単量体(bc)の乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、粒子核が徐々に成長してコア粒子を形成する。一段目の滴下が完了した後、時間を空けてシェル部を形成する二段目のエチレン性不飽和単量体(bs)の乳化液の滴下を開始する。滴下された二段目のエチレン性不飽和単量体(bs)は、一旦コア粒子に分配されるが、重合が進むにつれてコア粒子の外層にポリマーとして析出し、シェル層を形成する。上記の工程により、目的のコアシェル型微粒子を調製することができる。
コアシェル型樹脂微粒子のコア100質量部に対するシェルの質量は10〜50質量部であることが好ましい。上記の範囲である事により、コロイド結晶の空隙部分がシェル部の融着で埋まる恐れが無い一方、シェルの融着が十分に進み、コアシェル樹脂微粒子間、コロイド結晶層とプライマー層間、其々の結着がより強固なものとなる。したがって、基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性により優れるコロイド結晶塗膜が得られる。
コアシェル型樹脂微粒子のコア部のTgは60℃以上であることが好ましく、70℃
〜150℃である事がより好ましい。Tgが60℃以上であることにより、コア部形状が熱や溶剤の影響で変形する恐れが少なくなる。したがって、発色性や耐溶剤性により優れるコロイド結晶塗膜を得ることができる。
コアシェル型樹脂微粒子のシェル部のTgは−50〜20℃未満であることが好ましい。上記の範囲である事により、コロイド結晶の空隙部分がシェル部の融着で埋まる恐れが無い一方、シェルの融着は十分に進み、コアシェル微粒子間、コアシェル微粒子とプライマー層間、其々の結着がより強固なものとなる。したがって、基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性に優れる塗膜が得られる。
更にコアシェル型樹脂微粒子のシェルには水性樹脂(A)と架橋を形成する反応性基を有していることが好ましい。導入できる反応性基としては水性樹脂(A)で例示した反応性基が挙げられる。シェル部の架橋の形成と、先述したシェル部の融着の相乗効果により、コロイド結晶層とプライマー層の結着がより強化され、コロイド結晶塗膜の基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性がより向上する。
<プライマー層の形成方法>
プライマー層を形成させるため、基材上に水性樹脂(A)を含有するプライマーを塗布する。塗布方式としては、インクジェットやスプレー、ディッピングやスピンコート等、版を使用しない印刷方式、オフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターなどの有版の印刷方式、どちらを採用しても構わない。
プライマーを基材上に塗布した後、塗布物を一旦乾燥して造膜させ、プライマー層を形成させる。乾燥方法に特に制限はなく、例えば加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法など、従来既知の方法を挙げることができる。上記の乾燥法は単独で用いても、複数を併用してもよいが、基材へのダメージを軽減し効率よく乾燥させるため、熱風乾燥法を用いることが好ましい。乾燥温度は50〜120℃の範囲であることが好ましい。プライマー層の機能を効果的に発現させ、且つ短時間で効率的に生産する観点から、プライマーは、乾燥後のプライマー層の膜厚が2〜10μmの範囲になるように塗布することが好ましい。
<基材>
本明細書における使用可能な基材としては、従来既知のものを任意に用いることができる。例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルムの様な熱可塑性樹脂基材や、アルミニウム箔の様な金属基材、ガラス基材、コート紙基材などにも使用可能である。中でも従来のコロイド結晶塗膜では容易に剥離して固定化が困難とされてきたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等の非極性フィルム基材に対し、本発明のプライマーは、コロイド結晶の発色性に悪影響を及ぼすことなく、優れた基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性を発現する。基材は印刷媒体の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。コロイド結晶塗膜の発色をより明瞭にするため、黒色等に予め着色された基材を用いる事も可能である。また、上記これらの基材の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。
<コロイド結晶層の形成方法>
基材上に前述したプライマー層を形成させた後、樹脂微粒子(B)と水を含有してなるコロイド結晶層用樹脂組成物を塗布する。塗布方式としては、特に限定は無く、前述したプライマーの塗布方法で例示した方式を採用することができる。
コロイド結晶層用樹脂組成物をプライマー層上に塗布した後、塗布物を乾燥してコロイド結晶層を形成させる。その際、乾燥方法に特に制限はなく、プライマーの塗布物の乾燥で例示した乾燥方法を適宜採用することができる。規則的な配列と乾燥時間の短縮による生産性を鑑み、乾燥温度は25〜80℃の範囲であることが好ましい。更にコロイド結晶層の良好な発色性を担保し、且つ短時間で効率的に生産する事を踏まえ、コロイド結晶層の膜厚が5〜20μmの範囲になるように塗布することが好ましい。
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。例中、「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味する。
<プライマーの調製>
[実施例1]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水68.9部と反応性乳化剤として、第一工業製薬製アクアロンKH−10の20%水溶液を0.25部仕込み、別途、スチレン18.0部、メチルメタクリレート25.0部、2−エチルヘキシルアクリレート16.0部、n−ブチルアクリレート38.0部、アクリル酸2.0部、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1.0部、アクアロンKH−10の20%水溶液4.8部、水40.4部をあらかじめ混合、撹拌して調製したエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの3%を反応容器に添加した。反応容器の内温を80℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に保ちながらエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を3時間かけて滴下し、更に4時間反応させて、水性樹脂(A)として樹脂微粒子の水分散体を得た。反応完了後、25%アンモニア水1.9部添加して中和し、水を加えて樹脂微粒子水分散体の最終固形分を40.0質量%に調整した。樹脂の酸価は15.6mgKOH/g、水酸基価は0mgKOH/g、Tgは−6.9℃であった。更に重量平均分子量を測定するため、テトラヒドロフラン(THF)への溶解を試みたが、樹脂が高分子量化して不溶であったため、重量平均分子量は100万を超えるものとみなした。得られた樹脂微粒水分散体にn−プロピルアルコールを2.0部添加して、プライマーを調製した。
[実施例2〜11、比較例1、2]
表1に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、樹脂微粒子の水分散体をそれぞれ合成した。反応後、樹脂中のカルボキシ基と当モルになるように25%アンモニア水を添加して中和した後、水を添加して最終固形分を40.0質量%に調整した。得られた樹脂微粒子水分散体にn−プロピルアルコールを2.0部添加してプライマーを調製した。尚、実施例6については、乳化剤を反応性の低分子乳化剤KH−10(第一工業製薬製)から非反応性の低分子乳化剤ハイテノールLA−10(第一工業製薬製ポリオキシエチレンラウリル硫酸アンモニウム)に変更した。また、実施例7では、合成後、更にアジピン酸ジヒドラドを3.0部添加した。得られた樹脂について、実施例1と同様に、酸価、水酸基価、Tg、重量平均分子量を測定した。尚、表1中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
[実施例12]
攪拌器、温度計、2つの滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水185.0部、高分子乳化剤としてJONCRYL67(BASF社製スチレンアクリル樹脂 Mw12500、酸価213mgKOH/g)42.9部、25%アンモニア水11.1部を仕込み、攪拌しながら昇温し、高分子乳化剤を溶解させた。更に窒素還流下で温度80℃まで昇温した後、2つの滴下ロートにおいて、一方からは、スチレン14.0部、n−ブチルメタクリレート15.0部、2−エチルヘキシルアクリレート30.0部、シクロヘキシルアクリレート10.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.0部の混合液を2時間かけて滴下した。もう一方からは、過硫酸アンモニウム20%水溶液3.6部を2時間かけて滴下した。滴下完了後、更に5時間反応させ、水性樹脂(A)として、樹脂微粒子の水分散体を得た。反応完了後、水を添加して樹脂微粒子分散体の最終固形分を40.0質量%に調整した。得られた樹脂の酸価は63.9mgKOH/g、水酸基価は3.0mgKOH/g、Tgは−1.3℃、重量平均分子量は320,000であった。調製した上記の樹脂微粒子の水分散体にn−プロピルアルコールを2.0部添加して、プライマーを得た。
[実施例13]
JONCRYL67の添加量を53.8部、25%アンモニア水を13.9部に変更する以外は、実施例12と同様の方法で樹脂微粒子の分散体を得た。反応完了後、水を添加して樹脂微粒子分散体の固形分を40.0質量%に調整した。得られた樹脂の酸価は74.6mgKOH/g、水酸基価は2.8mgKOH/g、Tgは3.5℃、重量平均分子量は280,000であった。更にn−プロピルアルコールを2.0部添加して、プライマーを得た。
[実施例14]
攪拌器、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリオールとして、PTG−2000SN;保土谷化学工業社製ポリテトラメチレングリコール(官能基数2、水酸基価57.0、分子量2000)19.6部、P−2011;クラレ社製3−メチル−1,5ペンタンジオール/アジピン酸/テレフタル酸系ポリエステルポリオール(官能基数2、水酸基価55.0、分子量2000)20.3部、C−2090;クラレ製ポリカーボネートポリオール(官能基数2、水酸基価56.0、分子量2000)91.6部、ジメチロールブタン酸19.7部、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート48.8部、溶媒としてメチルエチルケトン40.0部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル10.0部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら78℃まで昇温させた。そこに、チタンジイソプロポキシビズ(エチルアセトアセテート)を触媒として0.02部添加し、6時間反応させ、両末端がイソシアネート基のウレタンプレポリマーを得た。中和剤としてトリエチルアミン13.5部を添加した後、水を400部、鎖延長剤としてエチレンジアミンを2.4部添加して、減圧条件可下で脱溶剤しながら、水相へ転相をおこなった。水媒体中でイソシアネート基の鎖延長反応を促進させた後、最終固形分30.0質量%のウレタン樹脂の水分散体(水性樹脂(A))を調製した。得られた樹脂について、実施例1と同様に酸価、水酸基価、Tg、重量平均分子量を測定したところ、酸価は37.4mgKOH/g、水酸基価は0mgKOH/g、Tgは94.0℃、重量平均分子量は32100であった。調製した上記の樹脂水分散体にジエチレングリコールモノブチルエーテルを1.0部、n−プロピルアルコールを2.0部添加して、プライマーを得た。
[実施例15〜18、比較例3、4]
表2に示す配合組成に変更した以外は、実施例14と同様の方法により、水性樹脂(A)として、固形分30.0質量%のウレタン樹脂の水分散体をそれぞれ調製した。得られた樹脂について、実施例1と同様に、酸価、水酸基価、Tg、重量平均分子量を測定した。更に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを1.0部、n−プロピルアルコールを2.0部添加してプライマーを得た。尚、表2中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
[実施例19]
攪拌器、温度計、還流器を備えた反応容器に、固形のオレフィン樹脂として、アウローレン350S(日本製紙社製;無水マレイン酸変性ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体)100部、トルエン100部、低分子乳化剤としてノイゲンTDS−120(第一工業製薬製ポリオキシエチレントリドデシルエーテル HLB14.8)30.0部を加え、100℃まで昇温して樹脂を溶解させた。完全に溶解したのを確認後、中和剤として、ジメチルアミノエタノール5.0部、水600.0部を添加した。その後、減圧条件可下で脱溶剤を行いながら、水相への転相をおこない、最終固形分が30.0質量%のオレフィン樹脂の水分散体(水性樹脂(A))を得た。実施例1と同様に、樹脂の酸価、水酸基価、Tg、重量平均分子量を測定したところ、酸価は24.0mgKOH/g、水酸基価は0mgKOH/g、Tgは−20℃、重量平均分子量は48000であった。上記の樹脂水分散体にn−プロピルアルコールを2.0部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを1.0部添加して、プライマーを得た。
[酸価]
JIS K2501に記載の方法に従い、水酸化カリウム・エタノール溶液で電位差滴定をおこない算出した。滴定には平沼産業社製:自動滴定装置COM−1600を使用した。
[水酸基価]
JIS K0070に記載の方法に従い、水酸化カリウム・エタノール溶液で電位差滴定をおこない算出した。滴定には平沼産業社製:自動滴定装置COM−1600を使用した。
[重量平均分子量]
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値。乾燥させた樹脂をテトラヒドロフランに溶解させ、0.2%溶液を調製し、以下の装置ならびに測定条件により重量平均分子量を測定した。高分子量化により、樹脂が不溶で測定が困難なものについては重量平均分子量を100万を超えるものとみなした。
装置:HLC−8320−GPCシステム(東ソー社製)
カラム;TSKgel−SuperMultiporeHZ−M0021488
4.6 mmI.D.×15 cm×3本
溶出溶媒;テトラヒドロフラン
標準物質;ポリスチレン(東ソー社製)
流速;0.6mL/分、試料溶液使用量;10μL、カラム温度;40℃。
[ガラス転移温度(Tg)]
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量計 TAインスツルメント社製)により測定した。乾固した樹脂サンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取り、ガラス転移温度(Tg)を得た。
<樹脂微粒子(B)水分散体の調製>
[製造例1]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水68.9部を仕込み、別途、スチレン85.0部、ベンジルメタクリレート5.0部、2−エチルヘキシルアクリレート7.0部、アクリル酸2.0部、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1.0部、アクアロンKH−10の20%水溶液5.0部、水40.4部をあらかじめ混合、撹拌して調製したエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの3%を更に加えた。内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を保ちながらエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を3時間かけて滴下し、更に4時間反応させて最終固形分45.0質量%の樹脂微粒子の水分散体を得た。得られた樹脂微粒子の平均粒子径とCv値を測定したところ、平均粒子径は201nm、変動係数Cvは25.8%であった。水性樹脂(A)と同様にDSC測定をおこなったところ、Tgは76.9℃であった。
[平均粒子径]
樹脂微粒子(B)の分散体を500倍に水希釈し、該希釈液約5mlを動的光散乱測定法(測定装置はナノトラックUPA(株)マイクロトラックベル社製)により測定をおこなった。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とした。同時に下記式より粒子径の均斉度を表す変動係数Cv値を算出した。
Cv値 %=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
[製造例2、3]
表3に示す配合組成に変更した以外は、製造例1と同様の方法により、最終固形分45.0質量%の樹脂微粒子の水分散体をそれぞれ調製した。得られた樹脂微粒子について、製造例1と同様に平均粒子径とCv値、Tgを測定した。尚、表3中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
[製造例4]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水95.0部と別途、スチレン97.0部、アクリル酸2.0部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0部、第一工業製薬製アクアロンKH−10の20%水溶液を5.0部、水39.1部を混合、撹拌して調製した一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの1.5%を更に加えた。反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として、過硫酸カリウムの2.5%水溶液5.7部を添加して重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を維持しながら一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.0部を2時間かけて滴下しながら反応させ、コア粒子を合成した。生成したコア粒子の平均粒子径は205nmであった。一段目の滴下完了から30分後、別途、メチルメタクリレート15.0部、n−ブチルアクリレート26.1部、アクリル酸0.9部、アクアロンKH−10の20%水溶液2.1部、水16.8部を混合、撹拌して調製した二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の滴下を開始した。内温を80℃に保ちながら二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液と過硫酸カリウムの2.5%水溶液2.1部を2時間かけて滴下しながら反応を更に進め、コアシェル型の樹脂微粒子(B)の水分散体を得た。得られたコアシェル型樹脂微粒子の水分散体の最終固形分は45.0質量%、平均粒子径253nm、Cv値は25.7%であった。水性樹脂(A)と同様にDSC測定を行ったところ、コア部のTgは100.1℃、シェル部のTgは−12.5℃であった。
[製造例5〜18]
表4、5に示す配合組成に変更した以外は、製造例4と同様の方法により、コアシェル型の樹脂微粒子(B)の水分散体をそれぞれ調製した。合成の際、エチレン性不飽和単量体の乳化液は、乳化液中のエチレン性不飽和単量体の濃度が69.0質量%、乳化剤の濃度が0.69質量%になる様、水を添加して調製した。合成後、水の添加や減圧ストリッピングによる脱水等により樹脂微粒子の水分散体の最終固形分は45.0%に調整した。尚、製造例10、11については、反応槽に分割して仕込む一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液量を1.5%から其々、3.0%、1.0%に変更した。得られたコアシェル型樹脂微粒子は製造例4と同様に、平均粒子径、Cv値、Tgの測定を行った。尚、表4、5中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
<コロイド結晶層用樹脂組成物の調製>
[製造例19]
製造例1の樹脂微粒子(B)の水分散体100部に、無彩黒色微粒子としてオリエント化学工業社製BONJET BLACK CW−1(表面変性カーボンブラック 平均粒子径62nm 顔料分20.0%)2.3部を添加して撹拌し、コロイド結晶層用樹脂組成物を調製した。
[製造例20〜36]
表6、7に示す配合組成に変更した以外は、製造例19と同様の方法によりコロイド結晶層用樹脂組成物をそれぞれ調製した。尚、表6、7中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
<コロイド結晶塗膜の作製>
[製造例37]
二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ製FOR、膜厚20.0μm)のコロナ処理面に実施例1のプライマーを乾燥換算で膜厚が3μmになるようにバーコーターで塗工した後、オーブンで80℃・3分の条件で乾燥させてプライマー塗工物を作製した。更にプライマー層上に製造例19のコロイド結晶層用樹脂組成物を乾燥換算で膜厚が7μmになるようにバーコーターで塗工し、50℃・3分の条件で乾燥させて、目的のコロイド結晶塗膜を得た。処理PETフィルム(東洋紡社製E5100 膜厚12.0μm)、Al板(膜厚200μm)、コート紙基材(MS光沢紙 黒色 膜厚160μm)においても、同様の方法でコロイド結晶塗膜を作製した。
[製造例38〜71、比較製造例1〜4]
表8〜10に示すプライマーとコロイド結晶層用樹脂組成物の組み合わせで、製造例37と同様の方法により、各種基材でコロイド結晶塗膜を作製した。
<コロイド結晶塗膜の評価>
作製したコロイド結晶塗膜について、経時での発色性、基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性を評価した。表8〜10にその結果を示す。
[発色性]
各基材上で作製したコロイド結晶塗膜の反射スペクトルを、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製V−770D、積分球ユニットISN−923)を用いて波長250〜850nmの範囲を測定した。各波長における反射率は、反射率が既知の標準白板(ラブスフェア社製SRS−99−010)をリファレンスとして用いて測定した相対反射率である。得られた反射スペクトルについて、構造色に由来する反射率の最大値と構造色によらないベースラインの反射率の差分(△R)を算出した。△Rが大きいなるほど、発色性に優れることを示す。
更に作製したコロイド結晶塗膜を40℃で3日静置し、静置前後における比較から反△Rの変化(低下率)を評価した。△Rが低下するほど、コロイド結晶塗膜が退色していることを示す。
評価基準は以下の通りである。
◎;△Rが15%以上であり、経時後で△Rが変化していない。(極めて良好)
○;△Rが15%以上であり、経時後の低下率が5%未満。(良好)
△;△Rが15%以上であり、経時後の低下率が5%以上、30%未満。(不良)
×;△Rが15%未満である、または、△Rが15%以上であり、経時後の低下率が30%以上。(極めて不良)
[基材追従性]
処理OPPフィルム、処理PETフィルムおよび紙基材上で作製したコロイド結晶塗膜の試験片(5cm×5cm)を20回揉んでコロイド結晶塗膜の外観の変化を観察した。Al板上で作成したコロイド結晶塗膜は、板を15回、180度に繰り返し折り曲げて同様に外観変化を確認した。評価基準は下記の通り。
◎;剥がれや傷が無く、発色に変化無し。(極めて良好)
○;僅かに剥がれが有るが、発色に変化なし。(試験片全体で剥がれた面積が5%未満)(良好)
△;剥がれが有るが、発色に変化なし。(試験片全体で剥がれた面積が5%以上)(不良)
×;剥がれが有り、退色している。(極めて不良)
[基材密着性]
各基材上で作製したコロイド結晶塗膜(5cm×5cm)にセロハンテープ(ニチバン社製18mm幅)を貼り付け、垂直方向にゆっくりと剥離して、テープをつけた部分全体に対して、剥がれた面積の割合から基材密着性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎;剥がれが全くない。(極めて良好)
○;剥がれがややある(剥がれた面積が15%未満)(良好)
△;剥がれがある(剥がれた面積が15%以上、25%未満)(不良)
×;剥がれが著しい(剥がれた面積が25%以上)(極めて不良)
[耐摩擦性]
処理OPPおよび処理PET上で作製したコロイド結晶塗膜の試験片(5cm×5cm)を指の腹で20往復擦り、剥がれや傷のつき易さを観察した。評価基準は以下の通りである。
◎;傷や剥がれが全くない。(極めて良好)
○;わずかに剥がれがある(擦った箇所全体のうち、剥がれた面積が10%未満)(良好)
△;剥がれがある(擦った箇所全体のうち、剥がれた面積が10%以上、20%未満)(不良)
×;剥がれがある(擦った箇所全体のうち、剥がれた面積が20%以上)(極めて不良)
[耐ラビング性]
処理OPPおよび処理PET上で作製したコロイド結晶塗膜の試験片(5cm×5cm)について、水または20%エタノール水溶液を浸漬させた綿棒で20往復コロイド結晶塗膜を擦り、傷や剥がれのつき易さを観察した。評価基準は以下の通りである。
◎;傷や剥がれが全くない
○;わずかに剥がれがある(擦った箇所全体のうち、剥がれた面積が10%未満)
△;剥がれがある(擦った箇所全体のうち、剥がれた面積が10%以上、20%未満)
×;剥がれがある(擦った箇所全体のうち、剥がれた面積が20%以上)
[耐水性および耐溶剤性]
処理OPP上で作製したコロイド結晶塗膜の試験片に上から水またはエタノールを垂らした後、50℃・3分で再乾燥して、前述の発色性評価と同様に反射スペクトルを測定した。試験前後での反射光スペクトの比較から反射率の最大値の変化(低下率)を評価した。反射率の最大値が低下するほど、コロイド結晶塗膜が退色していることを示す。評価基準は以下の通りである。
◎;反射率の最大値が変化していない。(極めて良好)
○;反射率の最大値がやや低下している。(低下率が15%未満)(良好)
△;反射率の最大値が低下している。(低下率が15%以上、30%未満)(不良)
×;反射率の最大値が大幅に低下している。(低下率が30%以上)(極めて不良)
実施例1〜19のプライマーを用いたコロイド結晶塗膜は、40℃・3日の経時後も鮮やかな構造色由来の発色性を維持し、各種基材に対しての追従性や密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性等の各種塗膜耐性も大変優れることがわかった。一方で、比較例1〜4のプライマーを用いたコロイド結晶塗膜は、経時後の発色性、基材追従性、基材密着性、耐摩擦性、耐ラビング性、耐水性、耐溶剤性のいずれかが著しく劣っており、実用レベルに至らない結果となった。以上の事から本実施形態のプライマーの優位性が証明された。

Claims (9)

  1. コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーであって、水性樹脂(A)を含有しており、水性樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−60〜100℃、水酸基価が25mgKOH/g未満および重量平均分子量が15,000以上であるプライマー。
  2. 水性樹脂(A)の酸価が、5〜70mgKOH/gである請求項1記載のプライマー。
  3. 非反応性の低分子乳化剤を含有しない請求項1〜3いずれか記載のプライマー。
  4. コロイド結晶層と架橋を形成し得る請求項1〜4いずれか記載のプライマー。
  5. コロイド結晶層が、コアシェル型樹脂微粒子を含有してなる請求項1〜4いずれか記載のプライマー。
  6. コアシェル型樹脂微粒子中のコア100質量部に対するシェルの質量が、10〜50質量部である請求項5記載のプライマー。
  7. コアシェル型樹脂微粒子中のコア部のTgが、60℃以上である請求項5または6記載のプライマー。
  8. コアシェル型樹脂微粒子中のシェル部のTgが、−50以上20℃未満である請求項5〜7いずれか記載のプライマー。
  9. 基材が、非極性フィルムである請求項1〜8いずれか記載のプライマー。
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