JP2008275989A - 自動車部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動や衝撃に対して表示性能の優れた自動車部材を提供する。
【解決手段】自動車部材は、電界により光学特性が変化しうる少なくとも1層の構造色層を有するコレステリック液晶で、構造色層が、可視域、赤外域又は紫外域の光を反射することを特徴とする。コレステリック液晶は、フッ素系液晶とカイラル剤の混合により得られ、自動車部材用素子としてのコレステリック液晶はオパール構造を有するコロイド結晶の空隙又はコロイド結晶との置換状態においてセル構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車部材に関し、特に電界により光学特性が変化する自動車部材に関する。
自動車部材において、その光学特性を任意に制御できるものは、デザイン性や環境・省エネルギーの観点から重要である。これまで、種々の光学特性を制御する方式として、熱、電界、磁界、光に応答する技術が提案されてきた。
一方、構造色とは、屈折率の差が周期的に変化した媒体に対して特定の波長の光がブラッグ反射することに基づく発色原理であり、自然界におけるモルフォ蝶の色などが相当する。構造色の特殊性から、その研究が盛んに行なわれている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
この構造色を自動車部材に適用した場合、比較的大きな面積で表示させなければならず、部分的に表示性能が変化するという問題があった。
特開2007−11112号公報 特開2000−267123号公報 特表平8−502837号公報
自動車のような乗り物の部材に、光学特性を任意に制御する方法を適用すると、振動や衝撃が加わり、色ムラが発生する等、視認性に劣ることがあった。特に、構造色を表示させるには、ブラッグ反射し得るように秩序的に構成された構成物としなければならず、振動や衝撃による影響が顕著に現れる。
そこで本発明の目的は、振動や衝撃に対して表示性能の優れた自動車部材を提供することである。
本発明者の鋭意研究により、フッ素系液晶を構造色層に用いた表示材料を自動車部材に適用することで、振動や衝撃に対して表示性能の優れた表示部材が提供できるとの知見を得、この知見に基づいて更に検討して本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 電界により光学特性が変化しうる少なくとも1層の構造色層を有し、かつ、該構造色層がフッ素系液晶を含有することを特徴とする自動車部材である。
<2> 前記構造色層が、可視域、赤外域又は紫外域の光を反射することを特徴とする前記<1>に記載の自動車部材である。
<3> 前記構造色層が、コレステリック液晶層であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の自動車部材である。
<4> 前記構造色層が、少なくとも1つ以上の透明電極からなる一対の電極間に挟持され、且つシート状であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の自動車部材である。
<5> 前記構造色層よりも光の入射側に、紫外線吸収層が設けられてなることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の自動車部材である。
<6> 前記構造色層よりも光の入射側に、バリア層が設けられてなることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の自動車部材である。
<7> 前記透明電極が、導電性ポリマー又はカーボンナノチューブで構成されてなることを特徴とする前記<4>〜<6>のいずれか1項に記載の自動車部材である。
<8> 更に、温度センサーとシート状ヒーターとを備えていることを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の自動車部材である。
<9> 前記シート状ヒーターが、透明であることを特徴とする前記<8>に記載の自動車部材である。
本発明によれば、振動や衝撃に対して表示性能の優れた自動車部材を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明の自動車部材は、電界により光学特性が変化しうる少なくとも1層の構造色層を有し、かつ、該構造色層がフッ素系液晶を含有する。
構造色は、特定の波長の光がブラック反射することによって呈される。そこで、本発明における「構造色層」とは、特定の波長の光がブラッグ反射しうるように屈折率の差が周期的に変化している周期構造体を意味し、その周期は光の波長程度の大きさであり、サブマイクロスケールであることが好ましい。
屈折率の差が周期的に変化すると、屈折率の異なる界面で生じるフレネル反射が重なって干渉を起こし、その結果として、反射率の波長依存性や反射率の変化を生じさせる。
したがって、そのような構造色層としては、シリカやポリマーの単分散粒子を用いたコロイド結晶、ブロック共重合体のミクロドメイン構造、界面活性剤のラメラ構造、らせん構造を形成したコレステリック液晶、太刀魚の鱗を模倣した無機層状化合物と液晶の組合せ、フォトニック結晶と液晶の組合せ等を挙げることができる。
本発明では、これら構造色層にフッ素系液晶を適用する。したがって、本発明の構造色層は、コロイド結晶の空隙にフッ素系液晶を充填したもの、ブロック共重合体のミクロドメイン構造の空隙にフッ素系液晶を充填したもの、フッ素系液晶に界面活性剤を適用しラメラ構造としたもの、フッ素液晶を含有するコレステリック液晶、無機層状化合物とフッ素系液晶の組合せ、である。好ましくは、フッ素液晶を用いたコレステリック液晶などである。
ここで、上記構造色層の光学特性が電界によって変化する原理を説明する。
−コロイド結晶−
図1に、コロイド結晶を説明する模式図を示す。
コロイド結晶としては、単分散の粒子が細密充填構造に配列したオパール構造と、オパール構造の空隙に別の物質を充填して元の粒子を取り除くことによって得られる逆オパール構造とが存在する。本発明では、オパール構造の空隙にフッ素系液晶を充填してもよいし、逆オパール構造の元の粒子が存在した部分にフッ素系液晶を充填してもよい。
単分散の粒子、又は元々粒子が存在していた空隙部分が周期的に配列されているため、これに光を当てると特定の波長の光のみが反射し、構造色を呈する。この関係は、下記式(1)で表されるBraggの式により求めることができる。
式(1):λ=2ndsinθ
式(1)において、λは反射光の波長であり、dは粒子又は空隙の格子間隔であり、θは光の入射角度である。
この粒子間の空隙にフッ素系液晶を充填し、或いは、もとに粒子が存在していた空隙部分にフッ素系液晶を充填すると、電界の変化に応じてフッ素系液晶の配向が変化し、光学特性が変化する。
−ブロック共重合体−
ブロック共重合体のミクロドメイン構造は、前記コロイド結晶における逆オパール構造と同様の構造を形成している。このミクロドメイン構造の空隙にフッ素系液晶を充填すると、電界の変化に応じてフッ素系液晶の配向が変化し、光学特性が変化する。
−界面活性剤によるラメラ構造−
フッ素系液晶に界面活性剤を適用し、液晶層と界面活性剤による界面とが繰り返されるようなラメラ構造とする。電界を変化させるとフッ素系液晶の配向が変化し、光学特性が変化する。
−コレステリック液晶−
図2(a)は、コレステリック液晶がらせん周期構造を形成し、構造色を呈するときの基本構造を示す概念図である。図2(a)は、コレステリック液晶が水平に配向しているときの状態を示す。
構造色層10は一対の電極12の間に設けられている。本実施形態では、構造色層に用いる液晶がコレステリック液晶であるため、らせん軸14を中心にらせん周期構造16を形成する。
図2(b)は、上記らせん周期構造16の概念図であり、らせん周期構造16は、液晶の分子配向ベクトルがらせん軸14を中心に少しずつ回転するようにずれて、分子配向ベクトルの異なる層が積層された状態となっている。らせんの周期の最小単位が1ピッチである。
なお、図2(a)では説明の便宜上、らせんピッチを1ピッチのみで示しているが、実際には、このピッチを最小単位として繰り返している構造を有している。つまり、コレステリック液晶では、らせん周期構造が秩序的に繰り返されている。
また、図2(b)は簡略化して図示したため、1/2ピッチの間に分子配向ベクトルの異なる層を4層として示しているが、実際には、1/2ピッチの間に数百層もの配向ベクトルの異なる層が形成されている。
更に、図2(a)及び図2(b)では、らせん軸は、電極に対して直角となるように示しているが、直角に対して角度を有して配向していてもよい。
図2に示した構造色層に光が入射した場合、選択的に反射光が発せられる理由について説明する。
液晶は屈折率異方性(Δn)を有する。ここでいう屈折率異方性(Δn)とは、液晶分子の長軸方向の屈折率(n‖)と液晶分子の短軸方向の屈折率(n⊥)との差として定義される。
Δn = n‖ − n⊥
したがって、液晶分子の長軸方向と短軸方向とでは、屈折率に差があるため、分子配向ベクトルの異なる層毎に、周期的に屈折率が異なっている。
この構造体に角度θで光が入射すると、上記Braggの反射式に基づいて、特定波長λの光を選択的に反射し、他の波長の光を透過することになる。なお、Braggの反射式において、コロイド結晶では粒子の格子間隔dが用いられるが、コレステリック液晶では、ピッチ長Pが適用される。
この状態で、電界を変化させると、図3(a)に示すように、液晶が電極に対して垂直に配向するか、或いは、図3(b)に示すように無秩序な配向状態となる。
図3(a)の場合、液晶が電極に対して垂直に配向しているため、液晶の屈折率が均一である。そのため、周期的に屈折率が変化していないので、構造色を呈さずに光を透過する。
図3(b)の場合、液晶の配向は無秩序であり、周期的に屈折率が変化していないため、この場合も構造色を呈さない。また配向方向が無秩序であるため、光は散乱する。
図2及び図3に示すように、電界を変化させることで液晶の配向状態を切り替えることができる。
−無機層状化合物とフッ素系液晶の組合せ−
無機層状化合物とフッ素系液晶とを組み合わせた構造色層の場合、無機層状化合物は、周期的に積層され、その間隙にフッ素系液晶が充填される。この周期的に秩序的に繰り返される層構成によって、構造色が呈される。
この状態で、電界を変化させると、フッ素系液晶の配向が変化し、光学特性が変化する。
本発明における構造色層は、屈折率の差が周期的に変化している周期構造体である。構造色層は、その周期を変更することで、反射光の波長を調整することができる。用途を考慮すると、可視域、赤外域又は紫外域の光を反射することが好ましい。
例えば、構造色層がコロイド結晶で形成されている場合には、粒子サイズを調整すること等によって、反射光の波長を調整することができる。ブロック共重合体のミクロドメイン構造では、重合条件を調整すること等によって、反射光の波長を調整することができる。
構造色層がコレステリック液晶で構成されている場合、ピッチ長Pを調整することで、反射光の波長を調整することができる。ピッチ長の調整は、液晶の種類を変更したり、カイラル剤の種類を変更したり、カイラル剤の添加量を変えること等で実現できる。
上述の通り、コレステリック液晶以外の構造色層で反射光の波長を調整するには、粒子サイズや間隙のサイズ、あるいは層状化合物の層間隔を変更しなければならない。これに対して、コレステリック液晶ではカイラル剤の添加量を変えるだけでも反射光の波長を調整できる。したがって、コレステリック液晶では、所望の波長を反射するように調整することが簡易である。
以下、本発明の自動車部材について、その構成毎に説明を行い、それに適用し得る材料について説明する。
<構造色層>
本発明の自動車部材は、フッ素液晶を用いた構造色層を有する。自動車のような乗り物の部材として構造色部材を使った場合に、振動や衝撃が加わり、セルギャップが不均一になること、もしくは構造色の周期構造が不均一になることで、色ムラが発生するなど視認性に劣ることがあった。
ここで、フッ素系液晶を用いた構造色層にすると、振動や衝撃に対して、構造色の周期構造が不均一となったとしても、短時間のうちに元の状態に戻ることが可能となり、表示性能の低下が抑制できるという効果が発現されることを見出した。一方、フッ素系液晶を用いない場合には、一旦、生じた表示ムラがそのまま残ることになる。
なお、フッ素化合物を液晶に添加剤として含有させた場合、一般的にフッ素化合物と液晶は相溶性が低く分離してしまい、所望のコレステリック液晶が形成されない。これに対し、本発明のようにフッ素系液晶を適用すると、フッ素原子のもつ低い粘性の特性が活かされたコレステリック液晶を形成することが容易であるという利点を有する。
本発明において、フッ素系液晶とは、水素原子の一部がフッ素原子に置換された液晶をいい、少なくとも1種以上含有していれば、二種以上を併用してもよい。
フッ素系液晶としては、フッ素原子を含むものであれば特に制限はないが、フッ素置換されたネマチック相を示す液晶化合物が利用できる。
ネマチック液晶化合物の具体例としては、アゾメチン骨格、フェニル骨格、ビフェニル骨格、フェニルエステル骨格、フェニルエステル骨格、シクロヘキサン骨格、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル骨格、フェニルシクロヘキサン骨格、シクロヘキサン骨格、ビシクロヘキサン骨格、フェニルピリミジン骨格、フェニルジオキサン骨格、トラン骨格、などが挙げられる。「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁及び第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることができる。
フッ素系液晶としては、例えば、Merck社の液晶(ZLI−4792、ZLI−4801、ZLI−5080、ZLI−5081、ZLI−5091、ZLI−5092、ZLI−5212、MLC−6292、ZLI−6009、TL−205)等が挙げられる。
特に、本発明の効果を奏するには、フェニルシクロヘキサン骨格、シクロヘキサン骨格を有するフッ素系液晶を適用することが好ましい。
−コレステリック液晶−
(コレステリック液晶)
上述のように、構造色層は、コレステリック液晶層であることが好ましい。コレステリック液晶層は、可視域、赤外域もしくは紫外域の波長の光を反射させるようにらせんピッチが調整されることが好適である。
コレステリック液晶は、メモリー性を有してもよいし、有していなくてもよい。
本発明に使用可能なコレステリック液晶は、上記フッ素系液晶を少なくとも1種以上含有し、且つコレステリックを呈すれば、その他は特に制限はない。
本発明に用いるコレステリック液晶の屈折率異方性(Δn)は、Δnの絶対値が大きいものが好ましい。これは、ランダムなフォーカルコニック状態に基づく散乱状態ではホスト液晶のΔnが大きいほど散乱強度が高くなり、表示性能が向上するためである。
コレステリック液晶の物性を所望の範囲に変化させることを目的として(例えば、液晶相の温度範囲を所望の範囲にすることを目的として)、液晶性を示さない化合物を添加してもよい。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を含有させてもよい。
(カイラル剤)
本発明に用いるコレステリック液晶は、ネマチック液晶とカイラル剤との組合せが好ましい。カイラル剤を添加すると、コレステリック液晶相を形成し、液晶がらせん状に配列される。
カイラル剤の添加量は液晶組成物中、1〜50質量%であることが好ましく、1.5〜20質量%であることがより好ましく、2〜30質量%であることが更に好ましい。50質量%よりも多い場合、液晶組成物の粘度が高くなり応答性が低くなる、あるいは、カイラル剤がホスト液晶から析出しやすくなる場合がある。
なお、カイラル剤の添加量は、所望の反射光に合わせて適宜調整することが好ましい。
また、カイラル剤は複数種類使用してもよい。とくに、カイラルピッチの温度依存性が正のものと負のものとを組み合わせ使用することで、カイラルピッチの温度依存性が小さくなる場合が好ましい。
カイラル剤としては、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤が挙げられる。
以下に本発明に適用し得るカイラル剤の具体例を示すが、本発明では、これらのカイラル剤に限定されない。
Figure 2008275989

Figure 2008275989

Figure 2008275989

市販のカイラル剤を適用することもできる。市販のカイラル剤としては、R−1011(メルク社製)、S−1011(メルク社製)、R−811(メルク社製)、S−811(メルク社製)、CNL−611L(旭電化社製)、CNL−617L(旭電化社製)、CNL−659L(旭電化社製)などを挙げることができる。
(コレステリック液晶の物性)
本発明のコレステリック液晶としては、低粘性のものが好適に用いられる。好ましい粘度の範囲は、1〜5000mPa・sであり、とくに好ましくは、5〜1000mPa・sであり、さらに好ましくは、10〜500mPa・sの範囲である。
−コロイド結晶−
コロイド結晶層には、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等のポリマーの単分散粒子を適用することができる。
上記粒子の中でも、フッ素系液晶と組み合わせた場合に、振動や衝撃に対して構造色の周期構造が回復しやすい粒子としては、シリカ、ポリスチレン粒子であることが好ましい。
粒径は、所望の反射光が得られるように適宜調整することが望ましいが、可視域、赤外域又は紫外域の光を反射させるには、100nm〜1000nmの粒径であることが好ましい。
−ブロック共重合体のミクロドメイン構造−
ブロック共重合体としては、ポリスチレンとポリイソプレンから形成されるブロック共重合体 を挙げることができ、得られたブロック共重合体をオゾン処理することでイソプレン部位の二重結合が切断されて、周期構造体を得ることができる
この中に、フッ素系液晶を浸漬されることで、振動や衝撃に対して表示性能の劣化が小さな構造色体を得ることができる。
−界面活性剤によるラメラ構造−
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系、ラウリン酸などの長鎖カルボン酸系、長鎖アルキル基を有するアミノ系などを挙げることができ、ポリオキシエチレン系と水から形成されるラメラ構造を適用することが好ましい。
この中でも、フッ素系液晶に対してラメラ構造を形成しやすいものとしては、フッ素原子が導入されたポリオキシエチレン系などを挙げることができる。
−無機層状化合物−
無機層状化合物としては、スメクタイト系粘土、モンモリロナイト系粘土などを挙げることができる。
この中でも、分散性の観点から、スメクタイト系粘土であることが好ましい。
−構造色層の構成−
本発明の構造色層は、複数のことなる光を反射する構造色層を並置配置もしくは積層してもよい。反射する光についても、いかなるものであってもよい。このような構成にすることにより、表示可能な色の数が増加し、より意匠性を高めることができる。
<透明電極>
透明電極としては、例えば、酸化インジウム、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化スズ、透明導電ポリマー(たとえば、PEDOT・PSS、ナガセケミテックス株式会社、シュタルク製など)、カーボンナノチューブ等から形成することができ、導電性ポリマー又はカーボンナノチューブで構成されていることが、曲面の多い自動車部材に適用した場合には、曲げや歪に対する安定性の観点から好ましい。
透明電極については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第232〜239頁に記載のものが用いられる。
<支持体>
本発明の自動車部材は、すくなくとも1つ以上の支持体を有する。支持体としては、特に制限はないが、金属、ガラス、プラスチック、紙、セラミックスが好適に用いられる。
支持体として用いる金属としては、鉄、ステンレス、アルミニウムが好適に用いられる。
本発明に用いられるプラスチック基板支持体としては、たとえば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレンン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ポリイミド(PI)などが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
プラスチック基板支持体に適用する前記樹脂としては、熱膨張係数が30ppm/℃以下のものが好ましい。ここで言う熱膨張係数は、TMA8310(理学電気株式会社製、Thermo Plusシリーズ)にて測定した値である。例えば、PET(東レ株式会社製:ルミラー,15ppm/℃)、PEN(DuPont−Teijin社製:Q65A,20ppm/℃)、ポリイミド樹脂(宇部興産社製:ユーピレックス,20ppm/℃)、アラミド樹脂(帝人社製,2ppm/℃)などを挙げることができる。
また、以下にあげるような、ガラス転移点(Tg)が150℃以上の樹脂に、ゾルゲル法などによって、ガラスクロス、ガラスファイバー等の無機物を添加して、30ppm以下の熱膨張係数を達成してもよい。
好ましい例としては(括弧内はTgを示す)、ポリカーボネート樹脂(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン樹脂(例えば、日本ゼオン(株)製ゼオノア1600:160℃、JSR(株)製アートン:170℃)、ポリアリレート樹脂(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES:220℃)、ポリスルホン樹脂(PSF:190℃)、ポリエステル樹脂(例えば、鐘紡(株)製O−PET:125℃、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の実施例1の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例−4の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603の実施例−5の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物:300℃以上)等が挙げられる。
本発明に用いられるポリマー基板として、耐溶剤性、耐熱性などの観点から架橋樹脂も好ましく用いることができる。架橋樹脂の種類としては熱硬化性樹脂、放射線硬化樹脂のいずれも種々の公知のものを特に制限なく用いることができる。
熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。その他架橋方法としては共有結合を形成する反応であれば特に制限なく用いることができる。
また、ポリアルコール化合物とポリイソシアネート化合物を用いて、ウレタン結合を形成するような室温で反応が進行する系も特に制限なく使用できる。
但し、室温で反応が進行する系では、製膜前のポットライフが問題になる場合が多く、通常、製膜直前にポリイソシアネート化合物を添加するような2液混合型として用いられる。
一方で1液型として用いる場合、架橋反応に携わる官能基を保護しておくことが有効であり、ブロックタイプ硬化剤として市販もされている。市販されているブロックタイプ硬化剤として、三井武田ケミカル(株)製B−882N、日本ポリウレタン工業(株)製コロネート2513(以上ブロックポリイソシアネート)、三井サイテック(株)製サイメル303(メチル化メラミン樹脂)などが知られている。
<バリア層>
バリア層は、水もしくは酸素の浸入による部材の劣化を抑制するために設けられることが好ましい。
バリア層としては、有機ポリマー系、無機系、その複合系いずれで形成されてもよい。有機ポリマー系としてはエチレンービニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA/PVOH)、ナイロンMXD6(NーMXD)、ナノコンポジット系ナイロンなどが挙げられる。無機系としてはシリカ、アルミナ、ニ元系などが挙げられる。その詳細は、例えば「ハイバリア材料の開発、成膜技術とバリア性の測定・評価方法」(技術情報協会、2004年)に記載されている。
支持体がプラスチックフィルムの場合には、バリア層は、無機層と有機層とを交互に積層する積層体を適用することも好ましい。水分及び酸素の浸入を効果的に防ぎ、且つ、有機層により高温高湿の条件でも剥離しにくい。
積層体のバリア層は、プラスチックフィルム側から無機層と有機層を交互に積層し、少なくともプラスチックフィルム側から第1の無機層、有機層(第1の有機層)、第2の無機層の順に積層された構造を含むことが好ましい。第2の無機層の上には、第2の有機層、第3の無機層、第3の有機層、第4の無機層、第4の有機層、第5の無機層...の要領で、1以上の層が積層されていてもよい。交互積層体の最上層は無機層であっても有機層であってもよい。
プラスチックフィルム側に無機層を設けると、効果的に水および酸素の浸入を防ぐこととなり、またプラスチックフィルム側から無機層と有機層を交互に有する積層体とすると、その効果がより累積されるため効果的である
バリア層は、構造色層を挟持しない面側の前記支持体の表面に設けられる。一対の支持体のうち一方の支持体にバリア層を設けても、両方の支持体に設けてもよいが、好ましくは両方の支持体にバリア層を設ける場合である。
<紫外線吸収層>
紫外線吸収層としては、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤:2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
<保護層>
本発明に用いられる基板は保護層を有していてもよい。保護層に使用するポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロースアシレート、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。
水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースアシレートとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。
ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などが挙げられる。
前記保護層には、支持体の透明性を実質的に損なわない程度に無機又は、有機の微粒子をマット剤として含有させることができる。無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(SiO),二酸化チタン(TiO),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。有機の微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテートプロピオネ−ト、ポリスチレン、米国特許第4,142,894号明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許第4,396,706号明細書に記載されているポリマーなどを用いることができる。
これらの微粒子マット剤の平均粒子サイズは0.01μm〜10μmのものが好ましい。より好ましくは、0.05μm〜5μmである。また、その含有量は0.5mg/m〜600mg/mが好ましく、さらに好ましくは、1mg/m〜400mg/mである。
前記保護層は、一般に知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストルージョンコート法により塗布することができる。
<帯電防止層>
本発明に用いられる基板は、帯電防止層(導電性層)を有してもよい。帯電防止層は、具体的にはイオン導電性物質や導電性微粒子を含有する層を設けることによって行う。
ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであり、例としてはイオン性高分子化合物を挙げることができる。
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、特公昭49−23827号、特公昭47−28937号各公報に見られるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、特公昭57−18175号、特公昭57−18176号、特公昭57−56059号各公報などに見られるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、特公昭57−15376号、特公昭53−45231号、特公昭55−145783号、特公昭55−65950号、特公昭55−67746号、特公昭57−11342号、特公昭57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、特公昭62−9346号各公報に見られるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることができる。
導電性微粒子である金属酸化物の例としては、ZnO、TiO、SnO、Al、In、SiO、MgO、BaO、MoO、V等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO及びSnOが好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiOに対してはNb、Ta等の添加、またSnOに対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
<スペーサー>
本発明の自動車部材は、構造色層がコレステリック液晶層の場合には、一対の電極基板をスペーサーなどを介して、1〜50μm間隔で対向させ、基板間に形成された空間にコレステリック液晶組成物を配置することにより作製することができる。前記スペーサーについては、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第257〜262頁に記載のものを用いることができる。本発明の自動車部材は、基板上に塗布あるいは印刷することにより基板間の空間に配置することができる。
本発明の自動車部材の場合、構造色層の厚さ、すなわちスペーサーにより形成される基板間の間隔は、1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは2〜40μmである。100μmより厚いと透明状態における透過率が低下しやすくなり、1μmより薄いと部分的な欠陥のため表示ムラが生じやすくなり好ましくない。
<温度センサー>
本発明の自動車部材では、温度センサーを設け、後述のヒート状ヒーターによって0℃以上に保つように温度制御することが、一定の表示性能を維持する観点から好ましい。具体的に、温度センサーとしては、ナショナルセミコン社製、富士電機システムズ製の温度センサーなどを適用することができる。
温度センサーの設置位置は、本発明の自動車部材の温度が正確に測定できる箇所であることが好ましい。
<シート状ヒーター>
本発明の自動車部材では、シート状ヒーターを、低温時、とくに氷点下における表示性能維持のために設けることが好ましい。具体的に、シート状ヒーターとしては、ハネウエル社製のシート状ヒーターなどを適用することができる。
シート状ヒーターの設置位置は、本発明の自動車部材の光の入射側、もしくは入射側の反対側であることが好ましい。
また、シート状ヒーターは透明であることが、構造色を呈するのに好適である。
<その他の部材>
本発明にかかる基板は必要に応じて平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層等を設置してもよい。更に、その他の部材としては、例えば、反射防止層、汚れ防止層、有機層間絶縁膜、金属反射板、位相差板、配向膜などを設置してもよい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
反射防止膜は、無機材料又は有機材料を用いて形成され、膜構成としては、単層であってもよく、又は多層であってもよい。さらにまた、無機材料の膜と有機材料の膜との多層構造であってもよい。反射防止膜は、一面側又は両面に設けることができる。両面に設ける場合、両面の反射防止膜は、同じ構成であっても別の構成であっても良い。
反射防止膜に用いる無機材料としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WO等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、レンズがプラスチック製のレンズであるので、低温で真空蒸着が可能なSiO、ZrO、TiO、Taが好ましい。
無機材料で形成される多層膜としては、レンズ側からZrO層とSiO層の合計光学的膜厚がλ/4、ZrO層の光学的膜厚がλ/4、最表層のSiO層の光学的膜厚がλ/4の、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に成膜する積層構造が例示される。ここで、λは設計波長であり、通常520nmが用いられる。最表層は、屈折率が低く、かつ反射防止膜に機械的強度を付与できることからSiOとすることが好ましい。
無機材料で反射防止膜を形成する場合、成膜方法は例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。
反射防止膜に用いる有機材料としては、例えばFFP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等を挙げることができ、レンズ材料やハードコート膜(有する場合)の屈折率を考慮して選定される。成膜方法は、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成膜することができる。
ハードコート層としては、公知の紫外線硬化又は電子線硬化のアクリル系又はエポキシ系の樹脂を用いることができる。
汚れ防止膜としては、含フッ素有機重合体のような撥水撥油性材料を使用することができる。
配向膜としては、ポリイミド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール、ゼラチンなどを用いることが好ましく、ポリイミド、シランカップリング剤を用いることが、配向能力、耐久性、絶縁性、コストの観点から好ましい。配向方法については、ラビング処理していても、していなくてもよい。配向状態に関しても、水平状態及び垂直状態いずれであってもよい。
〔自動車部材〕
本発明の自動車部材は、平面状もしくは曲面状であってもよい。曲面の場合、単曲面ならびに複曲面であってもよい。曲面の度合いとしては、曲率半径が10mm以上が好ましく、特に好ましくは、20mm以上である。
また、本発明の自動車部材はシート状であることが好ましく、ガラスに貼付して使用し、或いはガラスで挟み込んで合わせガラスとして使用することができる。
本発明の自動車部材における表示性能については、その散乱状態と透明状態における光の反射率の比(散乱状態/透明状態)が2〜1000の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜1000の範囲であり、特に好ましくは、8〜1000の範囲である。
〔用途〕
本発明の自動車部材は、振動や衝撃に対して表示性能の劣化が抑制されている。
また、構造色は光を吸収することなく色表示を行う方式であるため、屋外で使用した場合の耐久性に優れた方式であり、自動車部材に好適に用いられる。また、屋外の晴れた場所で本発明にかかる表示技術を用いることで、自動車室内の照度の電気的な調整が容易に行え、快適に過ごすことが可能となる。
本発明の自動車部材をフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、サンルーフ、バックミラーなどのガラスに適用すると、任意の波長の光を反射できるため、運転時における防眩効果、遮熱による燃費の向上と快適性の向上、セキュリテイー、意匠性の向上が図れる。
例えばボデイーに適用すると、インテリア、広告、情報表示方法として好適に利用することができる。
フロントガラスに適用した場合、トンネルの出口での眩しさ、あるいは西日の直射光を遮光可能となり、より安全な運転が可能となる。また、夏場に使用した場合、車内温度の上昇を防止することが可能であり、車内エアコンの負荷が小さくなり、結果的に燃費の向上につながる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
(プラスチック基板の作製)
特開2000−105445号公報の実施例1の試料110の作製と同様にPEN(Dupont−Teijin Q65A)に対し下塗り層及びバック層を作製した。すなわち、ポリエチレン−2,6−ナフタレートポリマー100重量部と紫外線吸収剤としてTinuvin P.326(チバ・ガイギーCiba−Geigy社製)2重量部とを乾燥した後、300℃にて溶融後、T型ダイから押し出し、140℃で3.3倍の縦延伸を行ない、続いて130℃で3.3倍の横延伸を行い、さらに250℃で6秒間熱固定して厚さ90μmの本発明のプラスチック基板(PEN)を得た。
(透明電極層の作製)
上記で得られたプラスチック基板の片面に、導電性のインジウム酸化スズ(ITO)を蒸着によりコーティングして、厚さ200nmの均一な薄膜を積層した。面抵抗約20Ω/cm、光透過率(500nm)85%であった。つぎに、ITO表面上に反射防止膜としてSiO薄膜(100nm)をスパッタにより付設した。光透過率(500nm)90%であった。
(構造色層の調製)
上記支持体の透明電極側にポリイミド垂直配向膜(日産化学製、SE1211)を塗布した。次に、フッ素系ネマチック液晶(ZLI−4792、メルク社製)1.0g中に、カイラル剤(R−1011、メルク社製)を550nmに選択反射ピークを有する量を添加し、液晶組成物を調製した。
得られた液晶組成物に12μmの球状スペーサー(積水化学製)を少量混合し、上記のITO付きプラスチック基板を配向膜側が液晶層に接するように挟んで、光硬化型シール剤(積水化学製)にて封止し配線して、構造色層を有するシート状の自動車部材−1を得た。
得られた自動車部材−1を自動車のフロントガラス、リアガラス、サンルーフに内側からエポキシ系粘着剤を用いて貼り合せた。これらのガラスは、いずれも平面ではなく、複曲面であった。また、得られた自動車部材−1の両面に粘着剤を付設した後、2枚の強化ガラスで挟み込んで合わせガラスを作製した。
(表示性能の評価)
得られた合わせガラスに対して、信号発生器(テクトロニクス株式会社製)を用いて交流電圧±100V(100Hz)を印加した後、瞬時に印加電圧をゼロにすると、本発明のコレステリック液晶はプレーナ状態となり550nmに選択反射ピークを示した。
この状態は室温で1ヶ月以上安定に存在し良好な表示維持性があることが確認された。また、交流電圧±40V(100Hz)を印加し、徐々に印加電圧をゼロにすると本発明のコレステリック液晶はフォーカルコニック状態となり透明となった。この状態は室温で1ヶ月以上安定に存在し良好な表示維持性(メモリー性)があることが確認された。
(耐振動性の評価)
得られた合わせガラスに対して、MIL−STD−883Eに準じた振動試験を次の条件で行なった。
20Hzから1000Hzの振動を加えた後、20Hzに戻す工程を1サイクル(約4分)とし、これを4サイクル行った。この試験後、上記表示性能の評価を行ったが、とくに表示性能の劣化(表示ムラ、表示コントラスト比の低下など)は見られなかった。すなわち、実施例1の合わせガラスは、振動に対する安定性が向上していることが確認された。
(耐衝撃性の評価)
得られた合わせガラスに対して、JIS D5500(1995年度版)の5.5に示される試験方法に基づく耐衝撃性の試験を行なった。その結果、とくに表示性能の劣化(表示ムラ、表示コントラスト比の低下など)は見られなかった。すなわち、実施例1の合わせガラスは、衝撃に対する安定性が向上していることが確認された。
(光耐久性の評価)
上記合わせガラスに、Xeランプ(15万ルクス)を照射(480時間)したが電気的な特性に変化はなかった。すなわち、実施例1の合わせガラスは光耐久性に優れていることが確認された。
[比較例1]
実施例1と同様の操作により、ホスト液晶をシアノ系液晶E−7(メルク社製)に変更した比較用表示素子を作製し、実施例1と同様の耐振動性と耐衝撃性の評価を行った。
その結果、シアノ系液晶を用いた素子では、振動ならびに衝撃により表示ムラが生じることが確認された。
[実施例2]
実施例1と同様の操作により、選択反射のピークを900nmにさせた自動車部材−2を調整した。実施例1と同様の評価を行ったところ、電気的に赤外光の入射を制御することが可能であることが確認された。その結果、炎天下で自動車を放置した際における自動車室内の温度上昇を抑制することが可能となり、結果的に燃費の向上が達成できることになる。
[実施例3]
平面ではなく曲面であるガラス基板の片面に、導電性のインジウム酸化スズ(ITO)を蒸着によりコーティングして、厚さ200nmの均一な薄膜を積層した。面抵抗約10Ω/cm、光透過率(500nm)88%であった。実施例1と同様の操作により、表示素子を作製した。
得られたガラス基板を自動車の窓ガラス(サイド、リア)として付設し、調光ガラスを作製した。
(表示性能の評価)
得られた調光ガラスは、実施例1と同様の評価により、電気的に光の透過状態と反射状態とを切り替えられることが確認された。
(光耐久性の評価)
調光ガラスに、Xeランプ(15万ルクス)を照射(480時間)したが電気的な特性に変化はなかった。すなわち、実施例3の調光ガラスは光耐久性に優れていることが確認された。
[実施例4]
曲面プラスチック基板としてポリカーボネート(帝人製)を使用し、導電性ポリマーとしてPEDOT・PSS水分散液(ナガセケミカル社製)を塗布、乾燥させた。厚みは8μmであり、面抵抗は約500Ω/cm、500nmでの光透過率は88%であった。
該基板上の透明電極側に、実施例1と同様の操作により、選択反射を示すフッ素系液晶を含有するコレステリック液晶層を有する自動車部材−3を作製した。得られた自動車部材−3の両面にPVBを付設して、合わせガラスとし、複曲面を有するサンルーフを作製した。その際、電極部位から通電用の配線をとった。
(表示性能の評価)
得られた合わせガラスは、電界を印加しない状態では、550nmの光を選択的に反射した。この合わせガラスに対して、信号発生器(テクトロニクス株式会社製)を用いて直流電圧12Vを1分間印加したところ、520nmの光を選択的に反射した。すなわち、電圧の印加により光の選択的な反射波長が変化された。
(耐久性の評価)
合わせガラスに、Xeランプ(15万ルクス)を照射(480時間)したが電気的な特性に変化はなかった。すなわち、実施例4の合わせガラスは光耐久性に優れていることが確認された。
また、合わせガラスを85℃、95%湿度の環境下、3週間放置したのち、電気的な特性を評価したが、電気的な特性に変化はなかった。すなわち、実施例4の合わせガラスは高温高湿下における安定性に優れていることが確認された。
また、合わせガラスを−20℃の環境下、1週間放置したのち、電気的な特性を評価したが、電気的な特性に変化はなかった。すなわち、実施例4の合わせガラスは、低温下における安定性に優れていることが確認された。
以上の評価より、実施例4の合わせガラスは、複曲面に適した形状を有しており、構造色を電気的に切り替えることができることが確認された。また、実施例4の合わせガラスは、光、熱、湿度に対する安定性が高いことが確認された。
[実施例5]
実施例4の合わせガラスにおいて、光が入射される側の支持体上に紫外線吸収層(UVガード、富士フイルムビジネスサプライ社製)を付設した以外は実施例4と同様にして、曲面状の合わせガラスを作製した。
(光耐久性の評価)
実施例5の合わせガラスは、紫外線照射による表示性能の劣化が小さいことが確認された。
[実施例6]
実施例4の自動車部材−1において、(1)合わせガラスとはせず、片面のみをガラスに貼付したこと、(2)光が入射する側の支持体上にバリア層を付設したこと、以外は実施例4と同様にして、調光ガラスを作製した。バリア層は、以下のようにして付設した。
バリア層の第1の無機層として、スパッタリング装置を用いて、無機層(酸化アルミニウム)を形成した。次に、第1有機層として、下記に示す組成のモノマー(M−1)20g、紫外線重合開始剤(Cibaイルガキュアー184)0.6g、2−ブタノン200gの混合溶液を液厚5μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。室温にて高圧水銀ランプの紫外線を照射して硬化させ(積算照射量約2J/cm)、第1有機層を形成した。膜厚はいずれの場合も約500nmであった。
Figure 2008275989
同様の操作により、第2の無機層、有機層、第3の無機層、有機層を形成することによりバリア層を形成した。
(耐久性の評価)
実施例6の調光ガラスは、高湿下による表示性能の劣化が小さいことが確認された。
[実施例7]
実施例4と同様の操作により、選択反射を示すフッ素系液晶を用いたコレステリック液晶層を有する合わせガラスを作製した。但し、片側にシート状透明ヒーター(ハネウエル社製、エルムウッド7800シリーズ)と温度センサー(ナショナルセミコン社製、LM35)を設置し、0℃以下になると自動的にヒーターが作動し、合わせガラスが0℃以上に保つように設定した。
(評価)
実施例7の合わせガラスは、氷点下の環境下においても良好な表示性能を示すことが確認された。
[実施例8]
実施例1では、フッ素系液晶として、メルク社製のZLI−4792(ネマチック液晶)を用いたが、これをZLI−5091(フッ素系ネマチック液晶)に変えた以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを作製した。
得られた合わせガラスに対して、実施例1と同様の方法で、表示性能の評価、耐振動性の評価、耐衝撃性の評価、光耐久性の評価を行なった。結果は、いずれも実施例1と同様の結果を得ることができた。
コロイド結晶を説明する模式図である。 図2(a)は、コレステリック液晶がらせん周期構造によって構造色を呈するときの基本構造を示す概念図である。図2(b)は、らせん周期構造を説明する図である。 図3は、コレステリック液晶が構造色を呈さないときの状態を説明する図であり、図3(a)では、液晶が電極に対して垂直に配向し、図3(b)は、液晶が無秩序な配向状態となっている様子を示す図である。
符号の説明
10 構造色層
12 電極
14 らせん軸
16 らせん周期構造

Claims (9)

  1. 電界により光学特性が変化しうる少なくとも1層の構造色層を有し、かつ、該構造色層がフッ素系液晶を含有することを特徴とする自動車部材。
  2. 前記構造色層が、可視域、赤外域又は紫外域の光を反射することを特徴とする請求項1に記載の自動車部材。
  3. 前記構造色層が、コレステリック液晶層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車部材。
  4. 前記構造色層が、少なくとも1つ以上の透明電極からなる一対の電極間に挟持され、且つシート状であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の自動車部材。
  5. 前記構造色層よりも光の入射側に、紫外線吸収層が設けられてなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の自動車部材。
  6. 前記構造色層よりも光の入射側に、バリア層が設けられてなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の自動車部材。
  7. 前記透明電極が、導電性ポリマー又はカーボンナノチューブで構成されてなることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の自動車部材。
  8. 更に、温度センサーとシート状ヒーターとを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の自動車部材。
  9. 前記シート状ヒーターが、透明であることを特徴とする請求項8に記載の自動車部材。
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