JP2004263024A - 水性粘着剤組成物、その製造方法及び粘着製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カルボキシル基と脂環式炭化水素基を含有するビニル重合体[A]と、架橋性反応基と脂環式炭化水素基を含有する重合体[B]とを含有してなり、酸価が5〜50であり、平均粒子径が300nm以下である重合体粒子[X]が水性媒体中に分散されてなる水性粘着剤組成物であって、該水性粘着剤組成物から形成される皮膜が、ガラス転移温度が−25℃以下であり、ゲル分率が25〜80重量%であることを特徴とする水性粘着剤組成物、これと基材との層とから構成された粘着製品、前記水性粘着剤組成物の製造方法。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐水白化性に優れた水性粘着剤組成物に関する。更に詳しくは、優れた粘着物性を有し、且つ耐水白化性に優れた水性粘着剤組成物及びその製造方法及び該水性粘着剤組成物が使用された粘着製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の点で溶剤型樹脂から水性樹脂への移行が進んでいるが、粘着剤分野においても、溶剤型粘着剤を水性粘着剤に置換することが望まれている。そしてこの水性粘着剤の代表的なものとして各種エチレン性不飽和単量体を重合して得られるエマルジョン型水性粘着剤がある。
【0003】
しかし、エマルジョン型水性粘着剤は、水に接触すると白化し易い、すなわち耐水白化性が低いため、溶剤型粘着剤を代替する上で大きな問題となっている。特に、従来から透明フィルムラベル用途に使用されている溶剤型粘着剤をエマルジョン型水性粘着剤に置換する場合は、耐水白化性の改良が最大の課題である。
【0004】
また、エマルジョン型水性粘着剤は、一般的に溶剤型粘着剤より粘着物性、特に接着力の点において劣る場合があり、これらの要請にも必ずしも対応できていない。
【0005】
上記のエマルジョン型水性粘着剤の欠点、特に耐水白化性を改良するためには、エマルジョン粒子の粒子径を小さくする方法や、製造時に反応性乳化剤を使用する方法、乳化剤や親水性成分などを低減する方法等の手法が提案されている。
また、エマルジョン型水性粘着剤の接着力を発現させるために、粘着付与樹脂の乳化物、すなわちロジン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂等の乳化物を併用することが提言されている。
【0006】
前記耐水白化性を改良する特に有効な手段としては、上記の方法のうち、エマルジョン粒子の粒子径を小さくする方法が挙げられる。例えば、重量平均粒径が0.3μm以下で、重量平均粒径と算術平均粒径の比(重量平均粒径/算術平均粒径)が1.0〜1.5であるエマルジョン型粘着剤により耐水白化性を改善する方法(例えば、特許文献1参照。)や、重量平均粒径が0.3μm以下で、重量平均粒径と算術平均粒径の比(重量平均粒径/算術平均粒径)が1.0〜1.5であるエマルジョン型粘着剤において、更にエマルジョン粒子の粒子径を制御しながら、0.1〜10重量%の不飽和カルボン酸を単量体成分として共重合し、前記不飽和カルボン酸の一部を粒子内部に共重合構成体成分として有する分散粒子からなるエマルジョンを用いて、接着力と作業性をも改善する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これらの方法で得られるエマルジョン型水性粘着剤は、溶剤型粘着剤を代替できる程度の耐水白化性を得るには至っていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−109784号公報(第3〜4頁)
【特許文献2】
特開2001−40312号公報(第3〜5頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、特に耐水白化性が要求される分野で使用される場合においても、耐水白化性及び接着力に優れ、粘着製品を得るための塗布工程においても粘着剤の機械的安定性や塗工性に優れる水性粘着剤組成物及びその製造方法及び粘着製品を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の課題を解決すべく、鋭意検討の結果、以下の知見を得た。
▲1▼水性粘着剤組成物が共に脂環式炭化水素基を有する2種の重合体とから構成された重合体粒子を含有していると、脂環式炭化水素基を有する1種類のみの重合体からなる水性分散体に比べさらに耐水白化性、保持力に優れる。▲2▼前記重合体のうち1種はカルボキシル基を含有した重合体であって、それ以外の重合体は架橋性官能基を有している重合体であると、粘着剤に凝集力が付与され、皮膜の耐水性が向上する。▲3▼水性粘着剤組成物から形成される皮膜のガラス転移温度を低くすると、接着力や保持力等の物性のバランスに優れる。▲4▼前記皮膜のゲル分率を制御すると粘着剤の接着力と耐久性のバランスに優れる。▲5▼前記重合体粒子の平均粒子径を小さくすると、耐水白化性は改善する。本発明は、このような知見に基づくものである。
【0010】
即ち、本発明は、 カルボキシル基と脂環式炭化水素基を有する重合体[A]と、架橋性反応基と脂環式炭化水素基を有する重合体[B]とから構成され、酸価が5〜50であり、平均粒子径が300nm以下である重合体粒子[X]が水性媒体中に分散されてなる水性粘着剤組成物であって、該水性粘着剤組成物から形成される皮膜が、ガラス転移温度が−25℃以下であり、ゲル分率が25〜80重量%であることを特徴とする水性粘着剤組成物、前記水性粘着剤組成物の層と基材とから構成されてなる粘着製品を提供する。
【0011】
また、本発明は、カルボキシル基と脂環式炭化水素基を有し、酸価が10〜200であり、重量平均分子量が10,000〜500,000である重合体[A]の存在する水性媒体中で、該重合体[A]のカルボキシル基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体(b−1)と、脂環式炭化水素基を有するエチレン性不飽和単量体(b−2)と、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)とを必須の単量体成分として乳化重合することを特徴とする水性粘着剤組成物の製造方法をも提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
カルボキシル基と脂環式炭化水素基を有する重合体[A](以下重合体[A]という)中のカルボキシル基の量は、特に制限を受けるものではないが、酸価として10〜200の範囲になる量であることが好ましい。酸価がかかる範囲にあれば、重合体粒子[X]の水性媒体中での分散安定性と塗工時の機械的安定性、及び粘着剤皮膜の耐水白化性をバランス良く付与でき、また接着力を向上することができる。
【0013】
また、重合体[A]中のカルボキシル基は、粘着剤の凝集力を付与する目的で、後記する重合体[B]中の架橋性反応基との反応基としても利用することができる。
【0014】
本発明の重合体[A]中の脂環式炭化水素基は、粘着剤に凝集力を付与して接着力を向上させ、且つ皮膜の耐水白化性を向上することを目的に使用される。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、アルキル置換基含有シクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0015】
本発明に使用する重合体[A]は、カルボキシル基の他に、後述する、重合体[B]中の架橋性反応基と反応性を有する基(以下、反応性官能基と略記する。)を含有していることが、好ましい。この場合、重合体[A]中の反応性官能基と重合体[B]の架橋性反応基とが相互に結合し、凝集力が向上して粘着剤皮膜の耐久性が向上する。
【0016】
重合体[A]に導入できる反応性官能基としては、具体的には、例えば、グリシジル基、水酸基、アミノ基、メチロールアミド基、加水分解性シリル基もしくはシラノール基、アジリジニル基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、オキサゾリン基、アミド基、カルボニル基、アセトアセチル基、アリル基等が挙げられる。
【0017】
重合体[A]の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系重合体、ブタジエン系重合体等のエチレン性不飽和単量体のラジカル重合による重合体(以下、エチレン性重合体と略記する。)、尿素結合並びにウレタン結合を有する重合体を含むポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。またこれら種々の重合体の混合物、例えば、アクリル系重合体/ポリウレタン樹脂の混合物や、種々の重合体のグラフト化(ブロック化)物、例えば、不飽和ポリエステル重合体或いはアルキッド樹脂にアクリル系重合体をグラフト化した物等も挙げられる。特に、重合体[A]は、上記の様に、酸価、分子量の調整やカルボキシル基以外の反応性官能基の導入等を考慮して設計する場合、設計が容易で後記する方法により簡単に製造することができるという点から、エチレン性重合体であることが好ましい。前記エチレン性重合体としては、後述する水性粘着剤組成物の製造方法で得られる重合体[A]が挙げられる。
【0018】
また、本発明に使用する重合体[A]の分子量は、特に制限を受けるものではないが、重量平均分子量で10,000〜500,000の範囲であることが、粘着剤の凝集力を保持し、且つ、接着力を大幅に向上できるため好ましい。
ここで、重量平均分子量とは、重合体[A]を溶媒(テトラヒドロフラン)に溶解して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC法)で測定することにより行われるポリスチレン換算での重量平均分子量をいい、上記の数値は後記する実施例にて示される条件で測定される数値に基づくものである。
【0019】
次に、本発明に使用する架橋性反応基を有する重合体[B](以下重合体[B]と略記する。)について説明する。重合体[B]中の架橋性反応基としては、特に制限されないが、重合体[A]中のカルボキシル基と反応性を有する官能基であることが好ましい。この場合架橋性反応基が重合体[A]中のカルボキシル基と反応し、重合体[A]と重合体[B]とが相互に結合し、粘着剤の凝集力と接着力のバランスに優れ、且つ皮膜の耐水性を向上させることができる。
【0020】
重合体[B]中のカルボキシル基と反応性を有する官能基としては、例えば、グリシジル基、メチロールアミド基、アジリジニル基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、オキサゾリン基等が挙げられ、特に、グリシジル基が、粘着剤の接着力や耐久性を向上させ、粘着剤皮膜の耐水性に優れるため好ましい。
【0021】
また重合体[B]の架橋性反応基が重合体[B]中で架橋反応したり、または、重合体[A]中のカルボキシル基又はカルボキシル基以外のその他の反応性官能基と架橋反応したりすることにより、後記する水性粘着剤組成物から形成される皮膜のゲル分率を25〜80重量%に調整することができる。
【0022】
また、重合体[B]には、重合体[A]中のカルボキシル基以外の反応性官能基とは反応性を有し、カルボキシル基とは反応性を有さない官能基(以下、カルボキシル基と非反応性の官能基と略記する。)を導入してもよい。前記カルボキシル基と非反応性の官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、加水分解性シリル基もしくはシラノール基、アセトアセチル基、アリル基等が挙げられる。
【0023】
重合体[A]中に存在するカルボキシル基と必要に応じて用いる反応性官能基、及び、重合体[B]に存在する架橋性反応基と必要に応じて用いるカルボキシル基と非反応性の官能基との組み合わせとしては、例えば、以下に挙げる1)〜10)に示した組み合わせがそれら相互の反応性に優れる点から好ましい。
【0024】
1)重合体[A]中のカルボキシル基と、重合体[B]中のグリシジル基、メチロールアミド基、アジリジニル基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、オキサゾリン基との組み合わせ;
2)重合体[A]中のグリシジル基と、重合体[B]中のアミノ基、メチロールアミド基、アセトアセチル基、加水分解性シリル基もしくはシラノール基との組み合わせ;
3)重合体[A]中の水酸基と、重合体[B]中のメチロールアミド基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、加水分解性シリル基もしくはシラノール基との組み合わせ;
【0025】
4)重合体[A]中のアミノ基と、重合体[B]中のグリシジル基、アセトアセチル基との組み合わせ;
5)重合体[A]中のメチロールアミド基と、重合体[B]中のメチロールアミド基、水酸基、グリシジル基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、アミド基、アセトアセチル基、加水分解性シリル基もしくはシラノール基との組み合わせ;
6)重合体[A]中の加水分解性シリル基もしくはシラノール基と、重合体[B]中の水酸基、メチロールアミド基、グリシジル基、加水分解性シリル基もしくはシラノール基との組み合わせ;
7)重合体[A]中のイソシアナート基と、重合体[B]中の水酸基、メチロールアミド基、グリシジル基、アセトアセチル基との組み合わせ;
8)重合体[A]中のアミド基と、重合体[B]中のメチロールアミド基、アセトアセチル基との組み合わせ;
【0026】
9)重合体[A]中のアセトアセチル基と、重合体[B]中のアミノ基、メチロールアミド基、グリシジル基、イソシアナート基との組み合わせ;
10)重合体[A]中のアリル基と、重合体[B]層中のアリル基との組み合わせ;或いは、更にこれら2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0027】
上記の組み合わせの中でも、前記1)と前記6)の組み合わせが、得られる粘着剤皮膜の接着力や耐久性等が著しく向上するため、特に好ましい。
【0028】
本発明の重合体[B]中の脂環式炭化水素基は、粘着剤に凝集力を付与して接着力と保持力を向上させ、且つ皮膜の耐水白化性を向上することを目的に使用する。脂環式炭化水素基としては、具体的には、例えば、シクロヘキシル基、アルキル置換基含有シクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0029】
また、重合体[B]は、重合体[A]のカルボキシル基を重合体粒子[X]の外部側に配向させて重合体粒子[X]に分散安定性や機械的安定性を付与する点で、重合体粒子[X]の内部側に存在することが好ましい。さらに、重合体[A]が重合体粒子[X]の外部側に配向していると、接着力が向上するので好ましい。
【0030】
従って、機械的安定性や接着力を向上させるためには、本発明に使用する重合体粒子[X]の重合体[B]を、重合体[A]よりも内部に存在させることが好ましく、そのためには、重合体[B]の親水基(カルボキシル基等)の含有量を重合体[A]より少なくし、重合体[B]を重合体[A]より疎水性にすることが好ましい。前記重合体[B]としては、後述する水性粘着剤組成物の製造方法で得られる重合体[B]が挙げられる。
【0031】
次いで、本発明に使用される上記重合体[A]と重合体[B]とから構成される重合体粒子[X]について説明する。
【0032】
本発明に使用する重合体粒子[X]の酸価は、重合体粒子[X]の分散安定性や機械的安定性、粘着剤皮膜の耐水白化性の点から、5〜50であることが必要である。ここで、酸価とは、重合体[A]または重合体粒子[X]に含まれるカルボキシル基の量を意味し、重合体[A]または重合体粒子[X]1g中に含まれる遊離カルボキシル基を中和するために要する水酸化カリウムのmg数をいい、その数値は後述の実施例にて示される条件で測定される数値に基づくものである。
【0033】
また、本発明に使用する重合体粒子[X]の平均粒子径は、耐水性を向上させる目的から、300nm以下であることが必要である。更に、平均粒子径が100〜250nmの範囲であると、耐水白化性がより向上し、且つ固形分濃度を高めても、例えば、固形分濃度を45重量%以上とした場合であっても、粘着剤の粘度が著しく高くならないため好ましい。ここで粒子の平均粒子径とは、エマルジョン粒子の体積基準での50%メジアン径をいい、数値は後述の実施例に記載の動的光散乱法により測定して得られる値に基づくものである。
【0034】
本発明に使用する重合体粒子[X]の構造は、特に限定されるものではないが、例えば、次のような構造が挙げられる。
重合体[A]をマトリックスとして、重合体[B]が重合体[A]内に1つの塊状となって、或いは多数に分散して存在するものである。更に、具体的には、重合体[B]をコア、重合体[A]をシェルとする「コア−シェル構造」、或いは、重合体[B]が重合体[A]中に多数に分散し、重合体[A]が重合体[B]を完全にカプセル化している構造或いは不完全にカプセル化している構造、或いは、重合体[A]と重合体[B]が多数の不連続なドメインを形成する相互貫入網目構造などの不均質な構造、或いは、重合体[A]が水性媒体中に溶解ないしは非粒子状態で分散しており、重合体[B]が重合体[A]をマトリックスとして粒子状に分散している構造等である。
【0035】
前記重合体粒子[X]の構造は、当該技術分野で知られている種々の方法で観察することができるが、染色法を用いた走査透過型電子顕微鏡による観察が、各重合体間の違いを強調するために適している。また、クライオミクロトームを用いて作成した粒子の断面を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察する方法においても、粒子構造を確認することができる。
【0036】
前記の構造のうち、重合体[A]と重合体[B]とがそれぞれ同芯のいわゆる「コア−シェル構造」、或いは、重合体[B]が重合体[A]中に多数に分散し、重合体[A]が重合体[B]をカプセル化している構造が好ましい。また、重合体[A]が重合体粒子[X]の最外殻部に位置する構造であることが好ましい。重合体粒子[X]が、これらの構造を形成することにより、本発明の水性粘着剤組成物が接着力に優れ、且つ、粒子の機械的安定性に優れるようになるため、特に好ましい。
【0037】
前記の構造で、重合体[A]が重合体粒子[X]の最外殻部に存在することにより、乳化剤やその他の親水性成分を低減させた場合や、一切使用しない場合においても、粒子の機械的安定性は良好なものとなる。
【0038】
重合体[A]と重合体[B]との割合は、重合体粒子[X]の安定性や水性粘着剤としての粘着物性のバランスから、固形分重量比で[A]/[B]=1/9〜5/5であることが好ましい。
【0039】
本発明の水性粘着剤組成物は、上記重合体粒子[X]が水性分散体中に分散されてなるものである。ここで用いる水性媒体としては、特に限定されるものではないが、水のみ、或いは、水と水溶性溶剤の混合溶液が挙げられる。前記水溶性溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物が使用できる。
【0040】
上記水溶性溶剤は、重合時の安定性の点から任意に選択することができるが、得られる重合体水性分散液の引火の危険性、及び安全衛生の面からは、その使用量は極力少なくすることが好ましい。このことから、水単独で使用することが好ましい。
【0041】
本発明の水性粘着剤組成物から形成される皮膜は、ガラス転移温度(以下、Tgと略記する。)が−25℃以下であることが必要である。更に好ましくは、−25〜−70℃であることが好ましく、Tgがこの範囲であると、粘着剤としての物性、即ち接着力や保持力等の物性のバランスに優れる。また、前記Tgは後記実施例に記載した測定方法で得られた数値に基づくものである。
【0042】
また、本発明の水性粘着剤組成物から形成される皮膜のゲル分率は、25〜80重量%の範囲であることが、粘着剤の接着力と耐久性のバランスから必要である。前記ゲル分率とは、水性粘着剤組成物の皮膜のトルエンに対する不溶解分の比率を意味する。ゲル分率は、後記実施例に記載した測定方法及び式により求められる数値に基づくものである。
【0043】
また、水性粘着剤の固形分濃度は、特に制限されるものではないが、製造時の作業性や輸送コストという点及び粘着剤皮膜形成時の乾燥性に優れるという点から、固形分濃度が45〜70重量%であることが好ましい。
【0044】
本発明の水性粘着剤組成物は、それ自体で優れた粘着物性を発現するが、必要に応じて、水溶性、或いは水分散性の架橋剤を添加することができる。
【0045】
架橋剤としては、例えば、多官能性メラミン化合物、多官能性エポキシ化合物、多官能性ポリアミン化合物、多官能性ポリエチレンイミン化合物、多官能性(ブロック)イソシアネート化合物、多官能性ヒドラジン化合物、金属塩化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0046】
また、前記架橋剤の他に、水溶性、或いは水分散性の熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等を添加することができる。更に、必要に応じて、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、更に充填剤、顔料、pH調整剤、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等を適宜添加して使用することができる。
【0047】
また、粘着製品(粘着テープ、粘着ラベル等)を製造する場合、テープまたはラベルに使用される基材に直接塗工した後に剥離紙と貼り合わせる方法と、剥離紙に塗工し乾燥した後に該基材へ転写する方法があるが、特に、後者の剥離紙に水性粘着剤を塗工する方法では、剥離紙の表面エネルギーが低いため、従来の溶剤型粘着剤では問題の無かった塗工が、水性粘着剤では塗工時にハジキやチジミが発生し易いという問題がある。これらの現象を抑制するためには、水性粘着剤の剥離紙に対する濡れ性を向上して平滑な塗工面を得る必要があり、従来、濡れ性向上剤(以下レベリング剤と記す。)として界面活性剤を添加して問題を解決している。しかし、レベリング剤を添加すると、粘着剤皮膜の耐水白化性が悪化してしまうという欠点がある。
【0048】
前記レベリング剤として添加し得る界面活性剤の中でも、アセチレンジオール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、或いはシリコーン系界面活性剤が、レベリング剤としての機能に優れ、且つ粘着剤皮膜の耐水白化性を阻害しないため、本発明の水性粘着剤に使用することが好ましい。
【0049】
前記アセチレンジオール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール104PA、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール504、サーフィノール504、サーフィノールPSA204、サーフィノールPSA216、サーフィノールPSA336、ダイノール604(エアープロダクツ・ジャパン(株)製)が挙げられる。また、前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF−142D、メガファックF−1405(大日本インキ化学工業(株)製)、ZONYL FSN(デュポン(株)製)等のパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物が挙げられる。また、前記シリコーン系界面活性剤としては、例えば、SILWET FZ−2166(日本ユニカー(株)製)、BYK(ビックケミー・ジャパン(株)製)等のポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0050】
前記レベリング剤の使用量は、塗工時のハジキやチジミが十分に抑制され、平滑な塗工面を得ることができれば特に限定されないが、水性粘着剤の固形分に対して0.1〜3重量部の範囲で使用すると、粘着剤の接着力等の粘着物性に悪影響を与えないため好ましい。
【0051】
前記レベリング剤の使用方法は、重合体粒子[X]を得た後、重合体粒子[X]の分散する水性分散液に添加する方法や、後述する水性粘着剤組成物の製造方法において、重合体粒子[X]製造時の乳化重合用界面活性剤として使用する方法が挙げられる。
【0052】
次いで、本発明の水性粘着剤組成物の製造方法について説明する。
本発明の水性粘着剤組成物は、カルボキシル基と脂環式炭化水素基を有し、酸価が10〜200であり、重量平均分子量が10,000〜500,000である重合体[A]の存在する水性媒体中で、該重合体[A]のカルボキシル基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体(b−1)と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(b−2)と、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)とを乳化重合することにより得られる。
【0053】
重合体[A]の存在する水性媒体の性状は、特に制限されないが、例えば、重合体[A]が水性媒体に完全に溶解している場合や、水性媒体に半可溶化している場合、或いは水性媒体中に粒子として分散している場合等が挙げられる。この際、耐水白化性や接着力等の諸物性を向上させるためには、重合体[A]の酸価は10〜200、重量平均分子量を10,000〜500,000の範囲とすることが好ましい。かかる重合体[A]を水性媒体中で安定的に存在させるには、重合体[A]が水性媒体中に粒子状に分散していることが好ましい。
【0054】
本発明においては、水性媒体中に粒子状に分散する重合体[A]の平均粒子径は、特に制限を受けるものではないが、後記するエチレン性不飽和単量体の重合時の安定性や、最終的に得られる水性粘着剤の粒子径や固形分濃度及び粘度の点から、10〜300nmの範囲であることが好ましい。
【0055】
本発明に使用する重合体[A]の製造方法は、使用する重合体の種類によって異なり特に限定するものではない。例えば、エチレン性不飽和単量体のフリーラジカル重合により製造する方法や、非フリーラジカル付加重合または重縮合により製造する方法が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、特にエチレン性不飽和単量体を原料とするフリーラジカル重合により製造する方法が、重合体[A]のTg、酸価、分子量の調整が容易であり、また、重合体[A]と重合体[B]との相溶性が良く、水性媒体中で行うエチレン性不飽和単量体の重合時の安定性が向上することから好ましい。
【0057】
重合体[A]をフリーラジカル重合で製造する方法としては、特定されるものではないが、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分とする単量体成分を、その性状に応じて、例えば、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合等の方法で製造することができる。これらの方法のうち、特に、重合体[A]の重量平均分子量を10,000〜500,000にすることが容易である点から、水性媒体中で乳化重合を行う方法が好ましい。
【0058】
また、重合体[A]を水性媒体中で製造した場合、重合体[A]を水性媒体中に分散させる工程が省略でき、重合体[A]の製造工程と単量体成分の重合工程を連続して行えるので製造工程を簡素化できる点からも好ましい。
【0059】
本発明に使用する重合体[A]をフリーラジカル重合で製造する際に用いる単量体成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)と、脂環式炭化水素基を有するエチレン性不飽和単量体(a−2)とを必須成分とする。前記カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)としては、分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)ヒドロキシエチルハイドロゲンフタレート、及びこれらの塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、特に、単量体成分の重合時の安定性及び耐水白化性に優れる点で、メタクリル酸を用いることが好ましい。
【0060】
重合体[A]のカルボキシル基は、中和せずにそのまま、重合体[B]を構成するエチレン性不飽和単量体成分の重合に用いてもよいが、重合時の安定性の面からカルボキシル基の一部を塩基性物質で中和して使用する方法が好ましい。その際のカルボキシル基の中和度は、特に限定されないが、重合時の安定性の点から、塩基性物質の使用量を重合体[A]中の全カルボキシル基に対して10モル%以上とすることが好ましい。
【0061】
上記の中和剤として使用する塩基性物質としては、種々のものが使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性アミン類等が挙げられる。これらのうち、特に得られる粘着剤皮膜の耐水白化性を低下させないため、常温あるいは加熱により飛散するアンモニアを使用することが好ましい。
【0062】
次に、脂環式炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体(a−2)としては、分子内に脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和基を有するものであれば特に限定されず使用することができるが、特に、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(a−2)を使用すると、後述する重合開始剤の使用量を減じて重合した場合においても容易に重合でき、その結果、粘着剤皮膜の耐水白化性を著しく向上させることができるため好ましい。かかる脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(a−2)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、特に、単量体成分の重合時の安定性に優れる点で、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0063】
前記脂環式炭化水素基を有するエチレン性不飽和単量体(a−2)の使用量は、特に制限を受けるものではないが、粘着剤皮膜の耐水性や接着力を向上させるためには、耐水性の向上効果が顕著であることから、重合体[A]の単量体成分中5重量%以上が好ましく、粘着剤皮膜が適度な硬さを有して、接着性が良好であることから50重量%以下が好ましい。
【0064】
重合体[A]の単量体成分としては、上記のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)、脂肪族基を有するエチレン性不飽和単量体(a−2)の他に、前記(a−1)及び前記(a−2)以外のその他のエチレン性不飽和単量体を併用することができる。前記その他のエチレン性不飽和単量体を用いることにより、重量平均分子量及び酸価を上記の好ましい範囲に調整した重合体を得ることができるので好ましい。
【0065】
前記その他のエチレン性不飽和単量体としては、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)、脂環式炭化水素基を有するエチレン性不飽和単量体(a−2)と共重合性のあるものであれば特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有エチレン性不飽和単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0066】
前記その他のエチレン性不飽和単量体の中でも、特に重合が容易であり、重合体の分子量の調整が容易である点から、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。その他のエチレン性不飽和単量体として、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0067】
さらに、粘着剤皮膜のガラス転移温度を前述の範囲にするためには、その他のエチレン性不飽和単量体として、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートを使用することが好ましいが、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを用いることが、接着力に優れる点から好ましい。
【0068】
また、本発明に使用する重合体[A]の単量体成分中に含有するその他のエチレン性不飽和単量体として、カルボキシル基以外の官能基であり、後述する重合体[B]の反応性官能基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることが好ましい。かかる単量体を上述した単量体と併用することにより、粘着剤皮膜の耐久性がさらに向上する。
【0069】
前記重合体[B]の反応性官能基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有重合性単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基またはそのアルコキシ化物含有重合性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等のシリル基含有重合性単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基含有重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性単量体;アリル(メタ)アクリレート等のアリル基含有重合性単量体;アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有重合性単量体等が挙げられる。
【0070】
上記の重合体[B]の反応性官能基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体の中でも、粘着剤皮膜の耐久性及び耐水性がより向上する点から、特にグリシジル基含有重合性単量体、水酸基含有重合性単量体、メチロールアミド基含有重合性単量体、シリル基含有重合性単量体、アセトアセチル基含有重合性単量体が好ましく、これらの中でも、シリル基含有重合性単量体が特に好ましい。このシリル基含有重合性単量体を使用することにより粘着剤皮膜の耐水白化性等の諸物性が著しく向上する。重合体[B]の反応性官能基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、上記単量体の1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0071】
また、乳化重合時の安定性、エマルジョンの貯蔵安定性を向上させることを目的として、更に、前記(a−1)、(a−2)及び(a−3)以外のエチレン性不飽和単量体を用いることができる。
かかるエチレン性不飽和単量体としては、例えばスルホン酸基及び/またはサルフェート基(及び/またはその塩)、リン酸基及び/またはリン酸エステル基(及び/またはその塩)を含有するエチレン性不飽和単量体を挙げることができる。
【0072】
上記のその他のエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のビニルスルホン酸類またはその塩、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸等のアリル基含有スルホン酸類またはその塩、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸2−スルホプロピル等の(メタ)アクリレート基含有スルホン酸類またはその塩、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド基含有スルホン酸類またはその塩が挙げられる。リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体の市販品としては、「アデカリアソープPP−70、PPE−710」[旭電化工業(株)製]等が挙げられる。
【0073】
本発明に使用する重合体[A]のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)とその他のエチレン性不飽和単量体との使用割合は、重量基準で、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)/その他のエチレン性不飽和単量体=0.5/99.5〜40/60が好ましく、1/99〜20/80であることがより好ましい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)とその他のエチレン性不飽和単量体とをかかる範囲で用いることにより、重合体[A]の酸価を所望の範囲に調整することができる。
【0074】
また、重合体[A]の重量平均分子量を10,000から500,000の範囲で調整するため、分子量調整剤として連鎖移動能を有する化合物を用いることが好ましい。かかる化合物としては、例えば、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリセリン等のメルカプタン類、またはα−メチルスチレン・ダイマー等が挙げられる。
【0075】
重合体[A]の重合の際に用いる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩類、有機過酸化物類、過酸化水素等が挙げられる。
【0076】
重合体[A]は、これら過酸化物のみを用いてラジカル重合するか、或いは上記過酸化物に還元剤を併用したレドックス重合開始剤系によっても、得ることができる。
【0077】
また、さらに重合開始剤として、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を使用することもできる。前記重合開始剤の中でも、特に、有機過酸化物類、または有機過酸化物類と還元剤とを併用したレドックス重合開始剤系が、得られる粘着剤皮膜の耐水白化性が向上するため好ましい。
【0078】
有機過酸化物類として、具体的には、例えば過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等が挙げられる。
【0079】
また、上記のレドックス重合開始剤系に使用する還元剤としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、クエン酸及びその塩、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩等が挙げられる。
【0080】
これらの重合開始剤の使用量は、得られる粘着剤皮膜の耐水白化性の点から、その使用量を極力少なくすることが好ましく、その使用量は重合体[A]の固形分に対して、0.3重量%以下(還元剤を併用するレドックス重合開始剤系の場合は酸化剤と還元剤の合計量)とすることが好ましい。
【0081】
また、水性媒体中で重合体[A]を製造する際に、粘着剤皮膜の耐水性等を低下させない範囲で必要に応じて、乳化剤やその他の分散安定剤を使用することができる。前記乳化剤としては、陰イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤等が使用できるが、陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤が好ましい。
【0082】
陰イオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩等が挙げられる。また非イオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0083】
更に、一般的に「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和二重結合を分子内に有する乳化剤を使用することもできる。かかる反応性乳化剤の市販品としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180」[(花王(株)製)、「エレミノールJS−2、RS−30」[三洋化成工業(株)製]等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、KH−05」[第一工業製薬(株)製]、「アデカリアソープSE−10、SE−20」[旭電化工業(株)製]等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」[第一工業製薬(株)製]等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」[第一工業製薬(株)製]等が挙げられる。
【0084】
また、乳化剤以外のその他の分散安定剤を使用することができる。かかる分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、繊維素エーテル、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性ポリウレタン樹脂等の合成或いは天然の水溶性高分子物質が挙げられる。
【0085】
また、重合体[A]を製造する際に、前述した本発明でレベリング剤として使用することが好ましい界面活性剤を乳化重合用界面活性剤として使用すると、粘着剤皮膜の耐水白化性を悪化させないため好ましい。
【0086】
上記乳化剤及び分散安定剤は、得られる粘着剤皮膜の耐水性や接着力等の面からその使用量を極力少なくすることが好ましく、その使用量は重合体[A]の固形分に対して、2重量%以下とすることが好ましい。
【0087】
重合体[A]の具体的な製造方法としては、1)水、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を必須の成分とする重合性単量体、重合開始剤、必要に応じて乳化剤及び分散安定剤を一括混合して重合する方法や、2)水、エチレン性不飽和単量体、乳化剤を予め混合したものを滴下する、いわゆるプレエマルジョン法や、3)モノマー滴下法等の方法が挙げられる。これらの中でも、特に、重合時の安定性の点から2)プレエマルジョン法、または3)モノマー滴下法で製造することが好ましい。
【0088】
また、重合の際、親水性溶剤、疎水性溶剤を加えること、及び公知の添加剤を加えることも可能であるが、使用量は得られる粘着剤皮膜に悪影響を及ぼさない範囲に抑えることが好ましい。
【0089】
重合体[A]を重合する際の温度は、使用する単量体の種類、重合開始剤の種類等によって異なるが、水性媒体中で重合する場合は、通常30〜100℃の温度範囲で行うことが好ましい。
また、前述の様に重合開始剤の使用量を減じて重合する場合、重合温度を80℃以上にすると、重合が円滑に進行するため好ましい。
【0090】
上記の製造方法によりカルボキシル基を含有し、酸価が10〜200であり、重量平均分子量が10,000〜500,000である重合体[A]が分散している水性分散体を得ることができる。
【0091】
本発明の水性粘着剤組成物は、上記重合体[A]の存在する水性媒体中で、架橋性反応基を有するエチレン性不飽和単量体(b−1)と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(b−2)と、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)とを必須の単量体成分として乳化重合することにより得ることができる。
【0092】
また、本発明では、単量体成分(b−1)及び(b−2)及び(b−3)の他に、これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(b−4)を併用することもできる。架橋性反応基を有するエチレン性不飽和単量体(b−1)と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(b−2)と、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)及びその他のエチレン性不飽和単量体(b−4)は、得られる粘着剤皮膜の接着力、保持力、耐久性や耐水白化性のバランスから、重量基準で、重合体[A]の固形分重量/[単量体(b−1)+単量体(b−2)+単量体(b−3)+単量体(b−4)]=1/9〜5/5とすることが好ましい。
【0093】
架橋性反応基を有するエチレン性不飽和単量体(b−1)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有重合性単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基またはそのアルコキシ化物含有重合性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等のシリル基含有重合性単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基含有重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性単量体;アリルメタクリレート等のアリル基含有重合性単量体;アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有重合性単量体等が挙げられ、これら単量体の1種以上の混合物として使用することができる。
【0094】
これらの中でも、特に、架橋性反応基としてカルボキシル基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体を使用すると、得られる重合体[B]が重合体[A]のカルボキシル基と反応して架橋構造を形成することにより、粘着剤の接着力、保持力、耐久性、耐水性等の諸物性が向上するため好ましい。
【0095】
カルボキシル基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、前述した単量体の中で、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基及びそのアルコキシ化物含有重合性単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基含有重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性単量体等を挙げることができる。これらの中でも重合体[A]中のカルボキシル基との反応性に優れ、耐水性等の諸物性を著しく向上させる点から、特にグリシジル基含有重合性単量体、メチロールアミド基及びそのアルコキシ化物含有重合性単量体、オキサゾリン基含有重合性単量体等を使用することが好ましい。これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0096】
次に、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(b−2)は、粘着剤皮膜の耐水白化性を向上させ、粘着剤として接着力と保持力のバランスを優れたものにすることができるため使用される。かかる脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(b−2)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、特に、単量体成分の重合時の安定性に優れる点で、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0097】
これら脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(b−2)の使用量は、特に制限を受けるものではないが、粘着剤皮膜の耐水性や接着力と保持力のバランスを向上させるためには、単量体(b−2)の含有率は、耐水性の向上効果が顕著となることから5重量%以上が好ましく、粘着剤皮膜が適度な硬さを有し、接着力の低下が見られないことから30重量%以下が好ましい。
【0098】
本発明の水性粘着剤組成物では、粘着剤としての物性、即ち接着力や保持力等の物性のバランスを良好なものとするためには、粘着剤のTgを−25℃以下となるように調整する必要があるが、本発明の製造方法において、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)を使用することにより、上記課題を達成することができる。
【0099】
炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらのうち、炭素原子数4〜9のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、重合性が良好であり好ましい。
【0100】
また、さらにその他のエチレン性不飽和単量体(b−4)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有エチレン性不飽和単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、特に、単量体成分の重合時の安定性に優れる点で、(メタ)アクリル酸エステル類を用いることが好ましい。
【0101】
更に、必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体として、重合体[B]の分子量を増大させることを目的に、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上持つ多官能性エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。
【0102】
かかる多官能性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能性エチレン性不飽和単量体を使用すると粘着剤の凝集力を向上させ、保持力が良好なものとなるが、接着力と保持力のバランスを良好なものとするためには、多官能性エチレン性不飽和単量体の使用量は、前述の様に粘着剤皮膜のゲル分率が25〜80重量%の範囲となる量で使用する必要がある。
【0103】
本発明の水性粘着剤組成物の製造方法において、重合体[A]の存在下に、水性媒体中で重合体[B]を構成するエチレン性不飽和単量体成分を重合するには、その際に新たに乳化剤を追加することなく乳化重合する方法が好ましい。この方法で行うと、形成される重合体[B]が、重合体[A]中に取り込まれ易くなり、重合体粒子[X]中に重合体[A]と重合体[B]を含有する粒子構造となり易く、重合体[A]が粒子の最外殻部に存在する望ましい重合体粒子[X]が容易に得られる。
【0104】
重合体[A]の存在下に、水性媒体中で重合体[B]を構成するエチレン性不飽和単量体成分を乳化重合する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、
方法1.重合体[A]の存在する水性媒体中に、単量体成分(b)及び重合開始剤を一括混合して重合する方法、
方法2.水性媒体中に、水、単量体成分(b)、重合体[A]を予め混合したものと、重合開始剤を滴下するいわゆるプレエマルジョン法、
方法3.重合体[A]の存在する水性媒体中に単量体成分(b)と、重合開始剤を滴下するモノマー滴下法、或いは、
方法4.重合体[A]の存在下、単量体成分(b)を添加して重合体[A]を単量体成分(b)で膨潤させた後に重合開始剤を添加して重合する方法、等が挙げられる。
【0105】
上記の重合方法の中でも、乳化剤またはその他の分散安定剤を全く使用せずに実施できる点、更に重合時の安定性の点から、方法3のモノマー滴下法で行うことが好ましい。
【0106】
上記方法3の具体的な方法としては、例えば、滴下装置の付いた攪拌式反応器に、水性媒体、重合体[A]を入れ、次いで、重合温度まで反応器の温度を上げ、滴下漏斗より単量体成分と重合開始剤を滴下する方法が挙げられる。この際、反応器内は、開放系であってもよいが、窒素等の不活性ガスで置換されていることが好ましい。また、重合温度は、使用する単量体の種類、重合開始剤の種類等によって異なるが、通常は30〜100℃の温度範囲が適当であり、後述の様に重合開始剤の使用量を減じて重合する場合には、より好ましくは80℃〜100℃の範囲である。単量体成分の滴下速度は、重合体[A]と単量体成分との比率、及び得られる重合体水性分散液の固形分濃度により適宜調節することが好ましく、特に制限されない。
【0107】
また、上記乳化重合の際、本発明の効果を損なわない範囲で親水性溶剤、疎水性溶剤及び公知の添加剤を加えることも可能である。
【0108】
上記乳化重合の際に用いる重合開始剤としては、前記の重合体[A]製造時の重合開始剤をそのまま使用することができる。これらのうち、粘着剤皮膜の耐水白化性を向上させるためには、有機過酸化物系重合開始剤又はこれと還元剤とを併用したレドックス重合開始剤系が好ましい。このような有機過酸化物系重合開始剤及びレドックス重合開始剤系としては前記した化合物を使用することができる。
【0109】
これらの重合開始剤の使用量は、得られる粘着剤皮膜の耐水白化性の点から、その使用量を極力少なくすることが好ましく、その使用量は単量体成分(b)の合計量に対して、0.3重量%以下(還元剤を併用するレドックス重合開始剤系の場合は酸化剤と還元剤の合計量)とすることが好ましい。
【0110】
また、重合体[B]の分子量を調整する必要がある場合は、重合の際に、分子量調整剤として連鎖移動能を有する化合物を用いることができる。
【0111】
また、本発明の水性粘着剤組成物には、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、充填剤、顔料、pH調整剤、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、粘着付与剤、消泡剤等公知のものを適宜添加して使用することができる。
【0112】
本発明の水性粘着剤組成物は、種々の粘着製品、特に耐水白化性の要求される製品に応用することができる。
【0113】
本発明の粘着製品は、基材と上記の水性粘着剤組成物の層とから構成されている。かかる基材としては、紙、プラスチックフィルム、不織布等が挙げられる。特に、本発明の水性粘着剤組成物は耐水白化性に優れるため、透明基材を用いた粘着製品の製造に好適に用いることができる。透明基材としては具体的には、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセテート、ポリカーボネート、アクリル樹脂等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0114】
本発明の水性粘着剤組成物を用いて粘着剤組成物の層を形成する方法としては、上記基材の上に、該水性粘着剤組成物を直接塗工して乾燥させる直接法、シリコーン等で離型処理された紙、またはプラスチックフィルム等の離型材の上に、該水性粘着材組成物を塗工して乾燥させ、粘着剤層を形成させた後、該粘着剤層の上に基材を重ねて加圧し、該基材上に粘着剤層を転写する転写法が挙げられる。塗工方法としては、塗工機としてロールコーター、コンマコーター、リップコーター、ファウンテンダイコーター、グラビアコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0115】
水性粘着剤組成物は、一般に固形分濃度が45〜70重量%、粘度が10〜10,000mPa・s(BM型粘度計、60回転、25℃)、pHが6〜9程度である。上記の直接法で塗工する場合には、塗工方法の種類にもよるが、一般的により高速に塗工するためには低粘度であることが求められることが多い。また転写法で塗工する場合には、粘度が300〜10,000mPa・s(BM型粘度計、60回転、25℃)のものが好ましい。
【0116】
本発明の粘着製品は、接着力と耐水白化性に優れるので、粘着ラベル、粘着テープ、特殊粘着シート等に好適である。
【0117】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「%」は重量%、「部」は重量部をそれぞれ示すものとする。
【0118】
本発明で用いた評価方法について以下に述べる。
[酸価の測定方法]
ガラス板上に3milアプリケーターで、後述する実施例で得られた水性粘着剤組成物を塗工し、常温で1時間乾燥して半乾きの粘着剤皮膜(試料)を作成後、得られた粘着剤皮膜をガラス板から剥がし、この粘着剤皮膜1gを精秤してテトラヒドロフラン(THF)100gに溶解したものを測定試料とした。測定方法は、水酸化カリウム水溶液による中和滴定法で行った。
なお、テトラヒドロフランに溶解しなかった試料については、本方法での測定が不可能であるので、水性粘着剤組成物製造時に使用したカルボキシル基含有単量体の仕込量から求めた計算値を酸価として求めた。(1mil=1/1000 インチ)
【0119】
[重量平均分子量の測定方法]
測定装置として東洋曹達(株)製の高速液体クロマトグラフHLC−8120GPC型を用い、カラムは東洋曹達(株)製パックドカラムを使用した。標準試料として昭和電工(株)製及び東洋曹達(株)製の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。溶離液、及び後記実施例で得られた水性粘着剤組成物の溶解液としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、RI検出器を用いて重量平均分子量を測定した。
【0120】
[平均粒子径の測定方法]
日機装(株)製マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置にて測定した平均粒子径(体積基準での50%メジアン径)の値を求めた。
【0121】
[機械的安定性の測定方法]
後記実施例で得られた水性粘着剤組成物を試料として、テスター産業(株)製マーロン型機械的安定性試験器にて測定した。試料50gを試験用容器に秤取し、10Kg/cm2の圧力下、回転数1000rpmで10分間回転した後、凝集物の発生量を測定した。予め、上記試料50gに含まれる固形分の重量(M1)を算出しておき、機械的安定性試験を上記条件で実施した後、凝集物を300メッシュ金網で濾過して集め、110℃で1時間乾燥した後の残さの重量(M2)を測定し、以下の式に従って凝集物の発生率を求めた。
凝集物発生率(重量%)=(M2/M1)×100
【0122】
[Tgの測定方法]
後記実施例で得られた水性粘着剤組成物を乾燥後の膜厚が0.3mmとなるようにガラス板に塗工し、25℃で24時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、更に100℃で5分間乾燥したものを試料とし、直径5mm、深さ2mmのアルミニウム製円筒型セルに試料約10mgを秤取し、TAインスツルメント社製のDSC−2920モジュレイテッド型示差走査型熱量計を用い、窒素雰囲気下で−150℃から昇温速度20℃/分で100℃まで昇温した時の吸熱曲線を測定して求めた。
【0123】
[ゲル分率の測定方法]
ガラス板上に乾燥後の膜厚が0.3mmとなるように後記実施例で得られた水性粘着剤組成物を塗工し、25℃で24時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、更に100℃で5分間乾燥したものを50mm角に切り取り、これを試料とした。次に、予め上記試料のトルエン浸漬前の重量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に常温で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残さの重量(G2)を測定し、以下の式に従ってゲル分率を求めた。
ゲル分率(重量%)=G2/G1×100
【0124】
[耐水白化性試験の測定方法]
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後における膜厚が25μmとなるように後記実施例で得られた水性粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥して粘着シートを作成し試料とした。粘着剤塗工面が暴露される様に30℃の水中に試料を24時間浸漬し、水浸漬前と水浸漬後の試料の濁度を濁度計で測定し、その濁度の変化度合いをW値として求め、耐水白化性を評価した。
【0125】
濁度計;日本電飾工業(株)製濁度計NDH−300A
測定光源;ハロゲンランプ
受光素子;JIS K7105に準拠するシリコンフォトセル
濁度及び水浸漬前後の濁度の変化度合いは下記の式に従って求めた。
濁度 H=DF/TL×100
TL;全透過率(%)
DF;拡散透過率(%)
【0126】
濁度の変化度合い W値=H1/H0
H0;水浸漬前の濁度
H1;水浸漬後の濁度
◎;濁度の変化度合いW値が2未満
○;濁度の変化度合いW値が2以上で且つ5未満
△;濁度の変化度合いW値が5以上で且つ10未満
×;濁度の変化度合いW値が10以上
【0127】
[接着力の測定方法]
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後における膜厚が25μmとなるように後記実施例で得られた水性粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥して粘着シートを作成した。粘着シート及び被着体としてステンレス板を用い、JIS Z−0237に準じて23℃、50%RHの雰囲気下で180度剥離強度を測定し、接着力とした。
【0128】
[保持力の測定方法]
接着力測定時と同様にして粘着シートを作成し、ステンレス板に接着面積が25mm×25mmとなるように粘着シートを貼付け、40℃にて1Kgの荷重をかけて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その保持時間を保持力とした。また、300分後にも保持されていた場合には、保持時間を300分以上とし、初期貼付け位置からのずれ幅を測定し、併記した。
【0129】
[タック]
接着力測定時と同様にして粘着シートを作成し、JIS Z−0237の球転法に準じて23℃、50%RHの雰囲気下で測定した。
【0130】
《実施例1》
▲1▼重合体[A]の製造方法
攪拌機、窒素導入管、温度計、滴下装置を備えた密閉式圧力反応容器に、脱イオン水250部、サーフィノール465(エアープロダクツ・ジャパン(株)製:アセチレンジオール系界面活性剤)0.8部、アクアロンKH−10[第一工業製薬(株)製:有効成分100%]0.4部を入れ、90℃まで昇温した。窒素導入管から窒素ガスの導入と脱気を繰り返し、反応容器内を窒素で置換した。攪拌下、2−エチルヘキシルアクリレート74部、シクロヘキシルメタクリレート16部、メタクリル酸10部、ラウリルメルカプタン0.8部からなる単量体混合物に、アクアロンKH−10[第一工業製薬(株)製:有効成分100%]0.4部と脱イオン水15部を加えて乳化させたモノマープレエマルジョン(前記単量体混合物と乳化剤と水でモノマーを乳化状態にしたものを云う)の一部(10%:11.6部)を添加し、続いてt−ブチルハイドロパーオキサイド0.002部、L−アスコルビン酸0.001部を添加し、反応容器内温度を90℃に保ちながら60分間で重合させた。引き続き、反応容器内温度を90℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン(90%:104.6部)と、t−ブチルハイドロパーオキサイドの水溶液(有効成分0.5%)20部、L−アスコルビン酸の水溶液(有効成分0.25%)20部を各々別の滴下装置を使用して、反応容器内温度を90℃に保ちながら120分間かけて滴下して重合せしめた。
【0131】
滴下終了後、同温度にて120分間攪拌し、後述する方法により酸価、重量平均分子量、平均粒子径を測定するために試料を採取した。その後、反応容器内温度を90℃に保ちながら、アンモニア水(有効成分10%)5部を10分間かけて滴下し、重合体中のカルボキシル基を中和した。上記の試料から、この重合体水性分散液に含まれる重合体の酸価、重量平均分子量、ゲル分率、粒子径を測定すると、酸価65、重量平均分子量56,000、平均粒子径(体積基準での50%メジアン径、以下同様)は110nmであった。
【0132】
▲2▼重合体[B]の製造方法
重合体[A]の製造に引き続き、反応容器内温度を90℃に保ちながら、2−エチルヘキシルアクリレート266部、シクロヘキシルメタクリレート32部、グリシジルメタクリレート2部からなる単量体混合物と、t−ブチルハイドロパーオキサイドの水溶液(有効成分0.5%)30部、アスコルビン酸水溶液(有効成分0.25%)30部を、各々別の滴下装置を使用して、反応容器内温度を90℃に保ちながら240分間かけて滴下して重合せしめた。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌し、内容物を冷却し、pHが8.0になるようにアンモニア水(有効成分10%)で調整した。ここで得られた重合体粒子[X]の水性分散液は、平均粒子径190nmであり、カルボキシル基含有単量体の仕込量から求めた酸価が16であった。
【0133】
▲3▼水性粘着剤組成物の製造方法
上記の重合体粒子[X]の水性分散液に、レベリング剤としてサーフィノール420(エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製:有効成分100%)0.8部を添加した後、200メッシュ金網で濾過し、本発明の水性粘着剤組成物を得た。ここで得られた水性粘着剤組成物は、固形分濃度50.5%、粘度830mPa・s、機械的安定性(マーロン試験での凝集物発生率)は0.08%であった。
【0134】
この本発明の水性粘着剤組成物を用いて得た皮膜のガラス転移温度(実測Tg)、ゲル分率(トルエン不溶解分率)及び粘着シートの耐水白化性、接着力、保持力、タックの評価結果を第2表に示した。
【0135】
実施例2〜5
単量体混合物として第1表に示したものを用いた以外は、実施例1と全く同様にして本発明の水性粘着剤組成物を得た。この水性粘着剤組成物に含まれる重合体[A]の酸価、重量平均分子量、平均粒子径(50%メジアン径)、及び重合体水性分散液の重合体粒子[X]の平均粒子径(50%メジアン径)、固形分濃度、粘度、酸価、機械的安定性(マーロン試験での凝集物発生率)は第1表に記載した通りであった。また、この水性粘着剤組成物から得られた皮膜のガラス転移温度(実測Tg)、ゲル分率(トルエン不溶解分率)及び粘着シートの耐水白化性、接着力、保持力、タックの評価結果は第2表に記載した通りであった。
【0136】
比較例1〜比較例3
単量体混合物として第3表に示したものを用いた以外は、実施例1と全く同様にして水性粘着剤組成物を得た。この水性粘着剤組成物中に含まれる重合体[A]の酸価、重量平均分子量、ゲル分率、粒子径、及び重合体水性分散液の粒子径、固形分濃度、粘度、酸価、機械的安定性(マーロン試験での凝集物発生率)は第3表に記載した通りであった。また、この水性粘着剤組成物から得られた皮膜のガラス転移温度(実測Tg)、ゲル分率(トルエン不溶解分率)及び粘着シートの耐水白化性、接着力、保持力、タックの評価結果は第4表に記載した通りであった。
【0137】
比較例4
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水200部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。攪拌下、ネオペレックスG−15[花王(株)製:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:有効成分15%]1.33部、過硫酸カリウム0.02部を添加し、続いて2−エチルヘキシルアクリレート332部、スチレン40部、メタクリル酸8部、グリシジルメタクリレート20部、ラウリルメルカプタン0.4部からなる単量体混合物に、ネオペレックスG−15[花王(株)製:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:有効成分15%]13.33部と脱イオン水80部を加えて乳化させたモノマープレエマルジョンの一部(15部)を添加し、反応容器内温度を80℃に保ちながら60分間で重合させた。引き続き、反応容器内温度を80℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン(478.73部)と、過硫酸アンモニウムの水溶液(有効成分2%)80部を、各々別の滴下漏斗を使用して、反応容器内温度を80℃に保ちながら240分間かけて滴下して重合せしめた。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌し、内容物を冷却し、酸価、重量平均分子量、粒子径を測定するために試料を採取した。その後、pHが8.0になるようにアンモニア水(有効成分10%)で調整し、200メッシュ金網で濾過して水性粘着剤組成物を得た。
【0138】
この水性粘着剤組成物に含まれる重合体粒子[X]の平均粒子径(50%メジアン径)、固形分濃度、粘度、機械的安定性(マーロン試験での凝集物発生率)は第3表に記載した通りであった。また、この水性粘着剤組成物から得られた皮膜のガラス転移温度(実測Tg)、ゲル分率(トルエン不溶解分率)及び粘着シートの耐水白化性、接着力、保持力、タックの評価結果を第4表に記載した通りであった。
【0139】
比較例5
単量体混合物として第3表に示したものを用いた以外は、比較例4と全く同様にして水性粘着剤組成物を得た。この水性粘着剤組成物中に含まれる重合体[A]の酸価、重量平均分子量、ゲル分率、粒子径、及び重合体水性分散液の粒子径、固形分濃度、粘度、酸価、機械的安定性(マーロン試験での凝集物発生率)は第3表に記載した通りであった。また、この水性粘着剤組成物から得られた皮膜のガラス転移温度(実測Tg)、ゲル分率(トルエン不溶解分率)及び粘着シートの耐水白化性、接着力、保持力、タックの評価結果は第4表に記載した通りであった。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
*1:第1表及び第3表中に記載の界面活性剤の量は有効成分を100%とした時の量を示す。
第1表及び第2表中の略号の正式名称を下記に示す。
2−EHA ;2−エチルヘキシルアクリレート
CHMA ;シクロヘキシルメタクリレート
MMA ;メチルメタクリレート
MAA ;メタクリル酸
GMA ;グリシジルメタクリレート
MAPTMS;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
LM ;ラウリルメルカプタン
St ;スチレン
HEMA ;2−ヒドロキシエチルメタクリレート
【0145】
【発明の効果】
本発明の水性粘着剤組成物は、耐水白化性及び接着力に優れる。本発明の水性粘着剤組成物の製造方法は、かかる水性粘着剤組成物を効率よく製造することができる。本発明の粘着製品は、耐水白化性及び接着力に優れ、粘着ラベル、粘着テープ、特殊粘着シート等として好適である。
Claims (9)
- カルボキシル基と脂環式炭化水素基を含有するビニル重合体[A]と、架橋性反応基と脂環式炭化水素基を含有する重合体[B]とを含有してなり、酸価が5〜50であり、平均粒子径が300nm以下である重合体粒子[X]が水性媒体中に分散されてなる水性粘着剤組成物であって、該水性粘着剤組成物から形成される皮膜が、ガラス転移温度が−25℃以下であり、ゲル分率が25〜80重量%であることを特徴とする水性粘着剤組成物。
- 前記重合体[A]が、酸価が10〜200、重量平均分子量が10,000〜500,000の重合体であり、前記重合体[B]が、架橋性反応基としてカルボキシル基に対する反応性を有する官能基を含有した重合体であり、該重合体[A]と該重合体[B]との重量割合が、固形分比で[A]/[B]=1/9〜5/5である請求項1記載の水性粘着剤組成物。
- 前記重合体粒子[X]と、更に、アセチレンジオール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有する請求項1または2に記載の水性粘着剤組成物。
- カルボキシル基と脂環式炭化水素基を有する重合体[A]の存在する水性媒体中で、架橋性反応基を有するエチレン性不飽和単量体(b−1)と、脂環式炭化水素基を有するエチレン性不飽和単量体(b−2)と、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)とを含有する単量体成分とを、有機過酸化物系重合開始剤を使用して乳化重合することを特徴とする水性粘着剤組成物の製造方法。
- 前記重合体[A]が平均粒子径10〜300nmの粒子状である請求項4記載の水性粘着剤組成物の製造方法。
- 前記重合体[A]が、水性媒体中で連鎖移動剤を用いて、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)と、脂環式炭化水素基を有するエチレン性不飽和単量体(a−2)とを含有する単量体成分を重合させて得られるものである請求項4記載の水性粘着剤組成物の製造方法。
- 前記エチレン性不飽和単量体(b−1)、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(b−2)、及び炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)以外のその他のエチレン性不飽和単量体(b−4)を用い、前記重合体[A]に対する前記エチレン性不飽和単量体成分の合計量との割合が、重量基準で[A]/[(b−1)+(b−2)+(b−3)+(b−4)]=1/9〜5/5である請求項6記載の水性粘着剤の製造方法。
- 前記重合体[A]の酸価が10〜200、且つ重量平均分子量が10,000〜500,000である重合体[A]の存在下で、該重合体[A]のカルボキシル基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和単量体(b−1)と、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(b−2)と、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−3)と、該単量体(b−1)及び該単量体(b−2)及び該単量体(b−3)以外のその他の単量体(b−4)を単量体成分として、該重合体[A]に対する該成分(b−1)、該成分(b−2)、(b−3)及び該成分(b−4)の合計とが重量基準で[A]/[(b−1)+(b−2)+(b−3)+(b−4)]=1/9〜5/5の割合で、乳化重合することを特徴とする水性粘着剤組成物の製造方法。
- 基材と、請求項1、2又は3記載の水性粘着剤組成物の層とから構成されてなる粘着製品。
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