本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記したように、高ガラス転移温度を有する重合体Aおよび低ガラス転移温度を有する重合体Bを含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物であり、前記高ガラス転移温度を有する重合体Aがアルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート20〜100質量%およびスチレン系単量体0〜80質量%を含有する単量体成分Aを重合させてなる重合体であり、前記低ガラス転移温度を有する重合体Bが単量体成分Bおよび当該単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤を共重合させてなる重合体であることを特徴とする。
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記構成要件を有することから、当該水分散型アクリル系粘着剤組成物を用いることにより、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着剤層を有する粘着シートを得ることができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」または「メタクリロイル」を意味する。
高ガラス転移温度を有する重合体Aの原料として、アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート20〜100質量%およびスチレン系単量体0〜80質量%を含有する単量体成分Aが用いられる。
アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜10であり、脂環構造を有していてもよいアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートおよびn−ブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、メチルメタクリレートおよびn−ブチルアクリレートがさらに一層好ましい。
単量体成分Aにおけるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、当該含有率の上限値は100質量%である。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。これらのスチレン系単量体のなかでは、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、スチレンが好ましい。
単量体成分Aにおけるスチレン系単量体の含有率の下限値は0質量%であり、当該含有率の上限値は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
なお、単量体成分Aには、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の単量体が含まれていてもよい。
他の単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート、窒素原子含有単量体、カルボキシル基含有単量体、スチレン系単量体以外の芳香族系単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、紫外線吸収性単量体、紫外線安定性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシメチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトアミドエチル(メタ)アクリレート、アセト酢酸ビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
スチレン系単量体以外の芳香族系単量体としては、例えば、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系単量体以外の芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキソ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル〕−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ〕プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの紫外線安定性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
高ガラス転移温度を有する重合体Aは、例えば、単量体成分Aを乳化重合させることによって得ることができる。
単量体成分Aを乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下で単量体成分Aおよび重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分Aを水または水性媒体に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
乳化剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン系乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−10、LA−12、LA−16など〕;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン系乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上の単量体を共重合成分とする重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
単量体成分A100質量部あたりの乳化剤の量は、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
単量体成分Aを重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分A100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分Aの残存量を低減させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分Aを反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部をフラスコ内に添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム水溶液などの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、成膜助剤などの添加剤をフラスコ内に適量で添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分A100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
単量体成分Aを乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分Aを乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分Aを乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
以上のようにして高ガラス転移温度を有する重合体Aを得ることができる。
低ガラス転移温度を有する重合体Bの原料として、単量体成分Bおよび単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤が用いられる。
なお、本発明において、単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤は、単量体成分Bに使用される単量体と共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤を意味する。
単量体成分Bに用いられる単量体としては、例えば、前記単量体成分Aに用いられるアルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量体および他の単量体などが挙げられる。
アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレートは、前記単量体成分Aに用いられるアルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレートと同様のものを例示することができ、当該アルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートがさらに好ましい。
単量体成分Bにおけるアルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下である。
スチレン系単量体は、前記単量体成分Aに用いられるスチレン系単量体と同様のものを例示することができ。これらのスチレン系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分Bにおけるスチレン系単量体の含有率の下限値は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、0質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、当該含有率の上限値は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
前記他の単量体としては、前記単量体成分Aに用いられる他の単量体と同様のものを例示することができ、これらの他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの他の単量体のなかでは、カルボキシル基含有単量体および水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシル基含有単量体としては、前記単量体成分Aに用いることができるカルボキシル基含有単量体と同様のものを例示することができ、これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
単量体成分Bにおけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、0質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、前記単量体成分Aに用いることができる水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートのなかでは、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。
単量体成分Bにおける水酸基含有(メタ)アクリレートの含有率は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、0質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10、アクアロンBC−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤のなかでは、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有するアニオン性乳化剤が好ましく、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩がより好ましい。
単量体成分B100質量部あたりの単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤の量は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
低ガラス転移温度を有する重合体Bは、例えば、単量体成分Bおよび単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤を乳化重合させることによって得ることができる。
単量体成分Bを乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下で単量体成分Bおよび重合開始剤を滴下させる方法、単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分Bを水または水性媒体に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
なお、本発明においては、本発明の目的が阻害されない範囲内で、単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤以外の他の乳化剤を用いることができる。前記他の乳化剤としては、例えば、前記単量体成分Aに用いられるアニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分Bを重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、前記単量体成分Aを重合させる際に用いられる重合開始剤と同様のものを例示することができる。単量体成分B100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分Bの残存量を低減させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分Bを反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部をフラスコ内に添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム水溶液などの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、成膜助剤などの添加剤をフラスコ内に適量で添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分B100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
本発明において、低ガラス転移温度を有する重合体Bは、曲面密着性をさらに向上させる観点から、連鎖移動剤の存在下で単量体成分Bを乳化重合させることが好ましい。
連鎖移動剤として前記チオール基を有するメルカプト化合物を用いることができる。メルカプト化合物としては、例えば、メルカプト安息香酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプトオクタン酸、メルカプトステアリン酸、メルカプトニコチン酸、メルカプトチアゾール酢酸、チオリンゴ酸、システイン、N−アセチルシステインなどのカルボキシル基含有メルカプト化合物;メルカプトプロピオネートなどのエステル基含有メルカプト化合物;メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトペンタノール、メルカプト1−オクタノール、メルカプトドデカノール、メルカプトシクロペンタノール、メルカプトシクロヘキサノール、1,3−ジメルカプトプロパノール、チオグリセロール、メルカプトフェノール、アミノチオフェノールなどの水酸基含有メルカプト化合物;ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのメルカプト化合物のなかでは、曲面密着性をさらに向上させる観点から、ドデシルメルカプタンが好ましく、n−ドデシルメルカプタンがより好ましい。
単量体成分B100質量部あたりの連鎖移動剤の量は、所望の分子量を有する重合体Bを得る観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上であり、曲面密着性をさらに向上させる観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
単量体成分Bを乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分Bを乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分Bを乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造する方法としては、例えば、
(1)アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート20〜100質量%およびスチレン系単量体0〜80質量%を含有する単量体成分Aを乳化重合させて高ガラス転移温度を有する重合体Aからなるエマルション粒子を含有する樹脂エマルションAを調製し、単量体成分BおよびBと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤を乳化重合させて低ガラス転移温度を有する重合体Bからなるエマルション粒子を含有する樹脂エマルションBを調製し、樹脂エマルションAおよび樹脂エマルションBを混合する方法(以下、製法Xという)、
(2)アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート20〜100質量%およびスチレン系単量体0〜80質量%を含有する単量体成分Aを乳化重合させて高ガラス転移温度を有する重合体Aからなるエマルション粒子を含有する樹脂エマルションAを調製し、当該高ガラス転移温度を有する重合体Aからなるエマルション粒子の存在下で単量体成分Bおよび単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤を乳化重合させて低ガラス転移温度を有する重合体Bを重合体Aからなるエマルション粒子の表面上に形成させる方法(以下、製法Yという)などが挙げられる。
前記製法Xによれば、単量体成分Aを乳化重合させることにより、重合体Aからなるエマルション粒子を含有する樹脂エマルションAを調製するとともに、単量体成分Bおよび単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤を乳化重合させることにより、重合体Bからなるエマルション粒子を含有する樹脂エマルションBを調製し、得られた樹脂エマルションAと樹脂エマルションBとを混合することにより、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得ることができる。
前記製法Xにおいて、重合体Aと重合体Bとの質量比(重合体A/重合体Bの固形分比)は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは1/99以上、より好ましくは3/97以上、さらに好ましくは5/95以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは35/65以下、より好ましくは30/70以下、さらに好ましくは25/75以下である。
前記製法Yによれば、単量体成分Aを乳化重合させ、得られた重合体Aからなるエマルション粒子を含有する樹脂エマルション中で単量体成分Bおよび単量体成分Bと共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤を乳化重合させ、重合体Aからなるエマルション粒子の表面上に重合体Bからなる層を形成させることにより、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得ることができる。
前記製法Yによって得られるエマルション粒子は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、内層を構成する重合体の原料として用いられる単量体成分は単量体成分Aであり、外層を構成する重合体の原料として用いられる単量体成分は単量体成分Bであることが好ましい。なお、当該エマルション粒子は、各樹脂層の境界は、必ずしも明確である必要がなく、隣接する樹脂層同士が互いに混ざり合っていてもよい。また、内層と外層との間、または外層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる樹脂層が形成されていてもよい。
重合体Aからなる内層および重合体Bからなる外層を有するエマルション粒子において、内層を構成している重合体Aと外層を構成している重合体Bとの質量比(内層を構成している重合体A/外層を構成している重合体B)は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは1/99以上、より好ましくは3/97以上、さらに好ましくは5/95以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは35/65以下、より好ましくは30/70以下、さらに好ましくは25/75以下である。
以上のようにして本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を得ることができる。
高ガラス転移温度を有する重合体Aのガラス転移温度は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは−30℃以上、より好ましくは−25℃以上、さらに好ましくは−20℃以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。また、低ガラス転移温度を有する重合体Bのガラス転移温度は、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは−70℃以上、より好ましくは−65℃以上、さらに好ましくは−60℃以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは−35℃以下、より好ましくは−40℃以下、さらに好ましくは−45℃以下である。
高ガラス転移温度を有する重合体Aのガラス転移温度および低ガラス転移温度を有する重合体Bのガラス転移温度は、いずれも、各重合体の原料として用いられる単量体の種類およびその量を調整することによって容易に調整することができる。
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、当該重合体を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
本明細書においては、エマルション粒子を構成する樹脂層のガラス転移温度は、特に断りがない限り、前記フォックス(Fox)に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。例えば、複数の樹脂層を有するエマルション粒子を構成する樹脂層全体のガラス転移温度は、多段乳化重合の際に用いられたすべての単量体成分における各単量体の質量分率とこれに対応する単量体の単独重合体のガラス転移温度から求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%以下である場合、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%を超える場合には、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−54℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、スチレンの単独重合体では100℃、アクリル酸の単独重合体では106℃、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃である。
なお、エマルション粒子が内層および外層を有する場合、外層を構成している樹脂層の溶解パラメーター(以下、SP値ともいう)は、内層を構成している樹脂層のSP値よりも低いことが、被膜の可撓性および造膜性を向上させる観点から好ましい。また、内層を構成している樹脂層のSP値と外層を構成している樹脂層とのSP値の差(絶対値)は、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から、大きいことが好ましい。
SP値は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義される値であり、2成分系溶液の溶解度の目安にもなっている。一般に、SP値が近い物質同士は互いに混ざりやすい傾向がある。したがって、SP値は、溶質と溶媒との混ざりやすさを判断する目安にもなっている。
本発明に用いられるエマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子自体の機械的安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは150nm以上であり、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れている粘着シートを得る観点から、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物における固形分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物における固形分量は、当該水分散型アクリル系粘着剤組成物1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を固形分量とし、式:
〔水分散型アクリル系粘着剤組成物における固形分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔水分散型アクリル系粘着剤組成物1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物には、必要により、本発明の目的が阻害されない範囲内で、添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては、例えば、顔料などの着色剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、抗酸化剤、重合禁止剤、充填剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌剤、金属不活性化剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防曇剤、防食剤、顔料分散剤、流動調整剤、過酸化物分解剤、鋳型脱色剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤、防藻剤、防カビ剤、難燃剤、スリップ剤、金属キレート剤、アンチブロッキング剤、耐熱安定剤、加工安定剤、分散剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、発泡剤、老化防止剤、防腐剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、成膜助剤、粘着付与剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物のB型粘度計を用いて25℃で測定したときの粘度は、塗工性を向上させる観点から、好ましくは3000mPa・s以上、より好ましくは5000mPa・s以上、さらに好ましくは10000mPa・s以上であり、前記と同様に塗工性を向上させる観点から、好ましくは40000mPa・s以下、より好ましくは30000mPa・s以下、さらに好ましくは20000mPa・s以下である。
以上のようにして得られる本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含有させなくても曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れていることから、例えば、粘着シート、粘着テープ、ラベルなどの粘着剤層に好適に使用することができる。
本発明の粘着シートは、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有するものである。なお、本発明の粘着シートは、その片面のみに粘着剤層が形成されていてもよく、あるいはその両面に粘着剤層が形成されていてもよい。
水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層を形成させる方法としては、例えば、水分散型アクリル系粘着剤組成物を基材の少なくとも一方表面上に塗布し、形成された粘着剤層を硬化させる方法、水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離紙などの剥離ライナー上に塗工し、形成された粘着剤層を基材に転写させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。このように基材上に水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成される粘着剤層を形成させた後、乾燥させることにより、粘着剤層が形成された粘着シートを製造することができる。
水分散型アクリル系粘着剤組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター、ロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーター、ディッピングなどの方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
基材としては、例えば、上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グロス紙、グラシン紙などの紙類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、セロファンなどの熱可塑性樹脂からなるフィルム;パルプ、レーヨン、マニラ麻、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエステルなどの樹脂からなる不織布、織布などの繊維質基材;エーテル系ポリウレタンフォーム、ポリエステル系ポリウレタンフォームなどのポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォームなどのポリオレフィン系フォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、ポリスチレンフォームなどの樹脂フォーム;ネオプレン系ゴム製フォーム、クロロプレン系ゴム製フォーム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム製フォーム、ニトリルゴム製フォームなどのゴム系フォームなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
基材の厚さは、特に限定されないが、通常、10〜80μm程度であることが好ましい。なお、基材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理などの物理的処理、下塗り処理などの化学的処理などが施されていてもよい。
水分散型アクリル系粘着剤組成物を基材の少なくとも一方表面上に塗布した後、形成された粘着剤層を乾燥させる方法としては、例えば、熱風、遠赤外線照射などが挙げられる。が、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
粘着剤層を加熱によって乾燥させる方法においては、加熱温度は、特に限定されないが、通常、好ましくは40〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。乾燥に要する時間は、加熱温度などによって異なるので一概には決定することができないことから、通常、形成された粘着剤層が乾燥するのに要する時間が選ばれる。また、粘着剤層を乾燥させる際の雰囲気としては、例えば、大気、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
水分散型アクリル系粘着剤組成物を基材に塗布することによって形成される粘着剤層の乾燥後の厚さは、特に限定されないが、通常、好ましくは1〜200μm、より好ましくは3〜150μm、さらに好ましくは5〜100μmである。
また、基材上に形成された粘着剤層の表面には、例えば、離型紙を貼着してもよい。粘着剤層の表面に離型紙を貼着した場合には、粘着剤層を好適に保護することができる。離型紙は、粘着テープを使用するときに粘着剤層の表面から引き剥がされる。なお、シート状、テープ状などの形状を有する基材の片面に粘着剤層が形成されている場合には、この基材の粘着剤層が形成されていない面に離型剤を塗布し、離型剤層を形成しておけば、粘着剤層を内側にしてロール状に巻いたとき、粘着剤層が基材の離型剤層と接触するので、粘着剤層を保護することができる。
離型紙としては、例えば、剥離処理層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体などのフッ素樹脂からなる低接着性基材;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの無極性樹脂からなる低接着性基材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの剥離処理剤によって表面処理が施された樹脂フィルムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
以上のようにして得られる本発明の粘着シートは、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層を有することから、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れているので、例えば、クラフトテープなどの包装用テープ、仮止め用テープ、自動車緩衝材用発泡テープ、制振シート、防音シート、カーペット固定用両面テープ、仮止めテープ、スリップ防止用テープ、マスキングテープ、表面保護用テープ、防水気密テープ、電気・電子機器用テープなどの幅広い用途に好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味する。
調製例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水23部を仕込んだ。滴下ロートにn−ブチルアクリレート66部、メチルメタクリレート34部、脱イオン水26部および乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕2.0部を仕込み、滴下用プレエマルションを調製した。
前記で得られた滴下用プレエマルションのうち0.4質量%の量の滴下用プレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら70℃まで昇温し、8%過硫酸アンモニウム水溶液0.2部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、8%過硫酸アンモニウム水溶液5部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液5部を290分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュ(JISメッシュ、以下同様)の金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有するエマルション粒子A1を含有する樹脂エマルションA1を得た。前記で得られたエマルション粒子A1のガラス転移温度は−18℃であった。
調製例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水23部を仕込んだ。滴下ロートにn−ブチルアクリレート51部、メチルメタクリレート49部、脱イオン水26部および乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕2.0部を仕込み、滴下用プレエマルションを調製した。
前記で得られた滴下用プレエマルションのうち0.4質量%の量の滴下用プレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら70℃まで昇温し、8%過硫酸アンモニウム水溶液0.2部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、8%過硫酸アンモニウム水溶液5部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液5部を290分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有するエマルション粒子A2を含有する樹脂エマルションA2を得た。前記で得られたエマルション粒子A2のガラス転移温度は3℃であった。
調製例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水23部を仕込んだ。滴下ロートにn−ブチルアクリレート40部、メチルメタクリレート60部、脱イオン水26部および乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕2.0部を仕込み、滴下用プレエマルションを調製した。
前記で得られた滴下用プレエマルションのうち0.4質量%の量の滴下用プレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら70℃まで昇温し、8%過硫酸アンモニウム水溶液0.2部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、8%過硫酸アンモニウム水溶液5部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液5部を290分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有するエマルション粒子A3を含有する樹脂エマルションA3を得た。前記で得られたエマルション粒子A3のガラス転移温度は20℃であった。
調製例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水23部を仕込んだ。滴下ロートにn−ブチルアクリレート26部、メチルメタクリレート74部、脱イオン水26部および乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕2.0部を仕込み、滴下用プレエマルションを調製した。
前記で得られた滴下用プレエマルションのうち0.4質量%の量の滴下用プレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら70℃まで昇温し、8%過硫酸アンモニウム水溶液0.2部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、8%過硫酸アンモニウム水溶液5部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液5部を290分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有するエマルション粒子A4を含有する樹脂エマルションA4を得た。前記で得られたエマルション粒子A4のガラス転移温度は45℃であった。
調製例5
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水23部を仕込んだ。滴下ロートにn−ブチルアクリレート66部、スチレン34部、脱イオン水26部および乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕2.0部を仕込み、滴下用プレエマルションを調製した。
前記で得られた滴下用プレエマルションのうち0.4質量%の量の滴下用プレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら70℃まで昇温し、8%過硫酸アンモニウム水溶液0.2部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、8%過硫酸アンモニウム水溶液5部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液5部を290分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有するエマルション粒子A5を含有する樹脂エマルションA5を得た。前記で得られたエマルション粒子A5のガラス転移温度は−18℃であった。
調製例6
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水23部を仕込んだ。滴下ロートにn−ブチルアクリレート39部、スチレン61部、脱イオン水26部および乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕2.0部を仕込み、滴下用プレエマルションを調製した。
前記で得られた滴下用プレエマルションのうち0.4質量%の量の滴下用プレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら70℃まで昇温し、8%過硫酸アンモニウム水溶液0.2部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、8%過硫酸アンモニウム水溶液5部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液5部を290分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有するエマルション粒子A6を含有する樹脂エマルションA6を得た。前記で得られたエマルション粒子A6のガラス転移温度は20℃であった。
調製例7
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水19部を仕込んだ。滴下ロートに2−エチルヘキシルアクリレート4.8部、n−ブチルアクリレート91.5部、メチルメタクリレート1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.5部、アクリル酸0.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン〔花王(株)製、商品名:チオカルコール20〕0.1部、脱イオン水33.5部および単量体成分と共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤としてアリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−20〕2.0部を仕込み、滴下用プレエマルションを調製した。
前記で得られた滴下用プレエマルションのうちの0.4%の量の滴下用プレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、8%過硫酸アンモニウム水溶液0.1部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、8%過硫酸アンモニウム水溶液5部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液5部を320分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の低ガラス転移温度を有するエマルション粒子B1を含有する樹脂エマルションB1を得た。前記で得られたエマルション粒子B1のガラス転移温度は−52℃であった。
調製例8
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水19部を仕込んだ。滴下ロートに2−エチルヘキシルアクリレート4.8部、n−ブチルアクリレート91.5部、メチルメタクリレート1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.5部、アクリル酸0.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン〔花王(株)製、商品名:チオカルコール20〕0.1部、脱イオン水33.5部および乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕2.0部を仕込み、滴下用プレエマルションを調製した。
前記で得られた滴下用プレエマルションのうちの0.4%の量の滴下用プレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、8%過硫酸アンモニウム水溶液0.1部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、8%過硫酸アンモニウム水溶液5部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液5部を320分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の低ガラス転移温度を有するエマルション粒子B1を含有する樹脂エマルションB2を得た。前記で得られたエマルション粒子B2のガラス転移温度は−52℃であった。
実施例1
樹脂エマルションA1と樹脂エマルションB1とを両者の固形分の質量比(樹脂エマルションA1/樹脂エマルションB1)が20/80となるように混合し、得られた混合物を十分に撹拌し、25%アンモニア水で中和した。
前記で得られた混合物の固形分100部あたりの粘着付与樹脂〔荒川化学工業(株)製、品番:スーパーエステル(登録商標)E−788、不揮発分量:50質量%〕の固形分の量が4部となるように混合物と粘着付与樹脂とを混合し、さらに増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加することにより、25℃でB型粘度計を用いて測定したときの粘度が13000mPa・sである水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の固形分量は60質量%であり、pHは8.0であった。
前記で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を乾燥後の粘着層の厚さが20μmとなるように離型紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕に塗布し、105℃の雰囲気中で90秒間乾燥させることにより、粘着剤層を形成させた。形成された粘着剤層の表面にグロス紙〔坪量:90g/m2〕を貼り合わせ、温度が23℃、相対湿度が65%の雰囲気中で3日間養生することにより、離型紙付きの粘着シートを得た。
実施例2
実施例1において、樹脂エマルションA1と樹脂エマルションB1との固形分の質量比(樹脂エマルションA1/樹脂エマルションB1)を10/90に変更したこと以外は、実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
実施例3
実施例1において、樹脂エマルションA1の代わりに樹脂エマルションA2を用い、樹脂エマルションA2と樹脂エマルションB1との固形分の質量比(樹脂エマルションA2/樹脂エマルションB1)を10/90に変更したこと以外は、実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
実施例4
実施例1において、樹脂エマルションA1の代わりに樹脂エマルションA3を用い、樹脂エマルションA3と樹脂エマルションB1との固形分の質量比(樹脂エマルションA3/樹脂エマルションB1)を10/90に変更したこと以外は、実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
実施例5
実施例1において、樹脂エマルションA1の代わりに樹脂エマルションA4を用い、樹脂エマルションA4と樹脂エマルションB1との固形分の質量比(樹脂エマルションA4/樹脂エマルションB1)を10/90に変更したこと以外は、実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
実施例6
実施例1において、樹脂エマルションA1の代わりに樹脂エマルションA5を用い、樹脂エマルションA5と樹脂エマルションB1との固形分の質量比(樹脂エマルションA5/樹脂エマルションB1)を10/90に変更したこと以外は、実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
実施例7
実施例1において、樹脂エマルションA1の代わりに樹脂エマルションA6を用い、樹脂エマルションA6と樹脂エマルションB1との固形分の質量比(樹脂エマルションA6/樹脂エマルションB1)を10/90に変更したこと以外は、実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
実施例8
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水18部を仕込んだ。滴下ロートにn−ブチルアクリレート13.3部、メチルメタクリレート6.7部、脱イオン水7.9部、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕0.6部を仕込み、1段目のプレエマルションを調製した。
前記で得られた1段目のプレエマルションのうち10質量%の量の1段目のプレエマルションをフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、10%過硫酸アンモニウム水溶液0.4部をフラスコ内に添加することにより、乳化重合を開始した。
その後、1段目のプレエマルションの残部、10%過硫酸アンモニウム水溶液0.8部および2%二亜硫酸ナトリウム水溶液1部を60分間かけてフラスコ内に滴下させた後、70℃の温度で60分間維持した。
次に、2−エチルヘキシルアクリレート4.5部、n−ブチルアクリレート72.5部、メチルメタクリレート0.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.0部、アクリル酸0.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン〔花王(株)製、商品名:チオカルコール20〕0.1部、脱イオン水26.1部および単量体成分と共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤としてアリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−20〕1.6部からなる2段目のプレエマルションと8%過硫酸アンモニウム水溶液4部と2%二亜硫酸ナトリウム水溶液3.8部とを260分間かけてフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、70℃の温度で90分間維持した後、室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過することにより、固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有する内層と低ガラス転移温度を有する外層とからなるエマルション粒子C1を含有する樹脂エマルションC1を得た。
前記で得られたエマルション粒子C1の内層のガラス転移温度は−18℃であり、外層のガラス転移温度は−52℃であった。
前記で得られた樹脂エマルションC1を25%アンモニア水で中和し、十分に撹拌した。この樹脂エマルションC1の固形分100部あたりの粘着付与樹脂〔荒川化学工業(株)製、品番:スーパーエステル(登録商標)E−788、不揮発分量:50質量%〕の固形分の量が4部となるように樹脂エマルションC1と粘着付与樹脂とを混合し、さらに増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加することにより、25℃でB型粘度計を用いて測定したときの粘度が13000mPa・sである水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の固形分量は60質量%であり、pHは8.0であった。
前記で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を乾燥後の粘着層の厚さが20μmとなるように離型紙〔(株)サンエー化研製、品番:K−80HS〕に塗布し、105℃の雰囲気中で90秒間乾燥させることにより、粘着剤層を形成させた。形成された粘着剤層の表面にグロス紙〔坪量:90g/m2〕を貼り合わせ、温度が23℃、相対湿度が65%の雰囲気中で3日間養生することにより、離型紙付きの粘着シートを得た。
実施例9
実施例8において、1段目のプレエマルションに使用されるn−ブチルアクリレートの量を13.3部から8部に変更し、メチルメタクリレートの量を6.7部から12部に変更したこと以外は、実施例8と同様にして固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有する内層と低ガラス転移温度を有する外層とからなるエマルション粒子C2を含有する樹脂エマルションC2および当該樹脂エマルションC2を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
なお、エマルション粒子C2の内層のガラス転移温度は20℃であり、外層のガラス転移温度は−52℃であった。
比較例1
実施例1において、樹脂エマルションA1の代わりに樹脂エマルションA2を用い、樹脂エマルションB1の代わりに樹脂エマルションB2を用い、樹脂エマルションA2と樹脂エマルションB2との固形分の質量比(樹脂エマルションA2/樹脂エマルションB2)を10/90に変更したこと以外は、実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
比較例2
実施例8において、2段目のプレエマルションに使用される単量体成分と共重合可能な不飽和二重結合を有する乳化剤1.6部の代わりに、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−16〕1.6部を用いたこと以外は、実施例8と同様にして固形分量が60質量%の高ガラス転移温度を有する内層と低ガラス転移温度を有する外層とからなるエマルション粒子C3を含有する樹脂エマルションC3および当該樹脂エマルションC3を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
なお、エマルション粒子C3の内層のガラス転移温度は−18℃であり、外層のガラス転移温度は−52℃であった。
比較例3
実施例1において、樹脂エマルションA1と樹脂エマルションB1との25%アンモニア水で中和した混合物の代わりに、25%アンモニア水で中和した樹脂エマルションA1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製し、離型紙付きの粘着シートを得た。
次に、各実施例および各比較例で得られた粘着シートを用いて、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
(1)タック性
JIS Z−0237に規定されているJ.Dow法に基づいて温度が23℃、相対湿度が65%の雰囲気中でボールタック試験を行ない、斜面で停止したボール番号を調べ、以下の評価基準に基づいてタック性を評価した。
(評価基準)
40点:ボール番号が12以上
30点:ボール番号が11
20点:ボール番号が10
0点:ボール番号が9以下(不合格)
(2)粘着性
被着体として、ポリエチレン製樹脂板〔(株)エンジニアリングテストサービス製、長さ:120mm、幅:30mm、厚さ:3mm〕を用いた。ヘキサンを含ませたガーゼでポリエチレン製樹脂板の表面を拭き取った後、その面をアセトンで洗浄し、オーブンで乾燥させ、温度が23℃、相対湿度が65%の雰囲気中で当該被着体を24時間以上保管した。
粘着シートを25mm幅に裁断し、得られた試験片を温度が23℃、相対湿度が65%の雰囲気中にて前記被着体上に載せ、当該試験片上から質量が2kgであるゴムローラーで1往復させることによって試験片を圧着させた。圧着させてから25分間経過後に、試験片の一端を180°方向に速度300mm/minにて引き剥がすときの抵抗力(N/25mm)を引張試験機〔テスター産業(株)製、QC引張試験機〕で測定し、以下の評価基準に基づいて粘着性を評価した。
(評価基準)
40点:粘着力が22N/25mm以上
30点:粘着力が20N/25mm以上、22N/25mm未満
20点:粘着力が18N/25mm以上、20N/25mm未満
0点:粘着力が18N/25mm未満(不合格)
(3)曲面密着性
被着体として、ポリプロピレン製(表1の曲面密着性の欄にPPと表記)の直径15mmの丸棒およびポリエチレン製(表1の曲面密着性の欄にPEと表記)の直径15mmの丸棒を用いた。
粘着シートを温度が23℃、相対湿度が65%の雰囲気中で、被着体の円周に沿って、半周分の長さに相当する幅20mmの試験片を被着体の曲面に貼り付け、7日間静置した後、試験片の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて曲面密着性を評価した。
(評価基準)
40点:端部の剥がれなし
30点:端部の剥がれが0.5mm未満
20点:端部の剥がれが0.5mm以上、5mm以下
0点:端部の剥がれが5mmを超過(不合格)
(4)保持力
被着体としてステンレス鋼板を用い、当該ステンレス鋼板の表面の汚れを拭き取った後、前記「(2)粘着性」と同様にして粘着シートを25mm幅に裁断し、得られた試験片を温度が23℃、相対湿度が65%の雰囲気中にて前記ステンレス鋼板上に載せ、当該試験片上から質量が2kgであるゴムローラーで1往復させることによって試験片を圧着させた。圧着させた試験片を温度が40℃、相対湿度が65%の雰囲気中に20分間放置した後、1kgの錘を粘着シートの端部に取り付けて吊り下げて当該雰囲気中で1000分間静置し、粘着シートが剥がれ落ちるのに要する時間および試験開始から1000分間経過時の粘着シートの位置ずれ長さを測定し、以下の評価基準に基づいて保持力を評価した。
(評価基準)
40点:1000分間経過時に粘着シートが剥がれ落ちず、粘着シートの位置ずれ長さが1mm以下である。
30点:1000分間経過時に粘着シートは剥がれ落ちず、粘着シートの位置ずれ長さが1mmを超える。
20点:60分間以上、1000分間未満で粘着シートは剥がれ落ちる。
0点:60分間未満で粘着シートが剥がれ落ちる(不合格)。
〔総合評価〕
各物性における評価得点を合計することにより、総合評価を行なった。なお、各物性のいずれかに0点の評価が1つでもある粘着シートは、不合格である。
表1に示された結果から、各実施例で得られた粘着シートは、いずれも、曲面密着性および保持力を同時に具備し、タック性、粘着性、曲面密着性および保持力に総合的に優れていることがわかる。