JP7204773B2 - 水性分散体、その製造方法およびその利用 - Google Patents

水性分散体、その製造方法およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は水性分散体、その製造方法およびその利用に関する。
車両用バンパー、車両用モール等の部材、家電製品の部材等に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの成形品が使用されている。その表面には上塗り塗料が塗装されるが、その塗装にあたり、上塗り塗膜と成形品との付着性を向上させるために、プライマーがあらかじめ塗装される。かかるプライマーとしては、従来は、塩素化ポリオレフィンを含有する溶剤系プライマーが用いられてきたが、近年環境への配慮から、有機溶剤およびハロゲンを使用しない水性塗料が開発されている(例えば、特許文献1~3)。
日本国公開特許公報「特開2011-46777号公報」 日本国公開特許公報「特開2004-91559号公報」 日本国公開特許公報「特開2015-214600号公報」
しかしながら、上述のような従来の有機溶剤およびハロゲンを使用しない水性塗料は、ポリオレフィン基材との付着性の点で十分ではなかった。
本発明の一態様は、ポリオレフィン基材に対する付着性に優れた水性分散体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなる共重合体を用いることにより、ポリオレフィン基材との付着性に優れた水性分散体を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一実施形態に係る水性分散体は、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体と、水性媒体と、を含み、前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記グラフト共重合体に対して2質量%~10質量%含まれる。
また、本発明の一実施形態に係る水性分散体の製造方法は、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を含み、前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記グラフト共重合体に対して2質量%~10質量%含まれる、水性分散体の製造方法であって、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンと、水性媒体と、を含むポリオレフィン水性分散体と、重合性基を有する界面活性剤との存在下で、アクリル系単量体を乳化重合する工程を含む。
本発明の一態様によれば、ポリオレフィン基材に対する付着性に優れた水性分散体を実現することができる。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
〔1.水性分散体〕
本発明の一実施形態に係る水性分散体は、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体と、水性媒体と、を含む。
〔1.1 カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィン〕
本発明の一実施形態に係る水性分散体は、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに後述するアクリル系重合体をグラフト共重合してなる共重合体を含む。ここで、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンとは、塩素化していないポリオレフィンであって、カルボキシル基が結合しているポリオレフィンであればよい。カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンとしては、例えば、酸変性された非塩素化ポリオレフィンを挙げることができる。酸変性された非塩素化ポリオレフィンとしては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、および、不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選択される少なくとも1種(以下、本明細書において「不飽和カルボン酸等」と称することがある。)により酸変性された非塩素化ポリオレフィンを挙げることができ、例えば、塩素化されていないポリオレフィンに、不飽和カルボン酸等をグラフト共重合してなる共重合体を用いることができる。
前記ポリオレフィンは、オレフィン化合物を重合したものであれば特に限定されるものではない。前記オレフィン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。前記ポリオレフィンは、これらのオレフィン化合物の1種を重合させてなる単独重合体であってもよいし、2種以上を共重合させてなる共重合体であってもよいが、中でも共重合体がより好ましい。また、前記ポリオレフィンが共重合体である場合には、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいし、或いはグラフト共重合体であってもよい。前記オレフィン化合物は、中でも、エチレン、およびプロピレンであることがより好ましい。
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびプロピレン-α-オレフィン共重合体であることがより好ましい。前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の単独重合体、およびα-オレフィンを含む単量体を共重合させることによって得られるポリα-オレフィン共重合体等が挙げられる。ポリα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン-α-オレフィン共重合体であることがより好ましい。ここで、プロピレン-α-オレフィン共重合体とは、プロピレンを主成分としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを1種または2種以上用いることができる。これらの中では、1-ブテンがより好ましい。また、前記ポリオレフィンとしては、形成塗膜の付着性などの観点から、プロピレンを構成単位として含むものが好適であり、その場合、ポリオレフィン中のプロピレン単位の含有率は、形成塗膜の付着性などの観点から、好ましくは、50質量%~100質量%、より好ましくは70質量%~99質量%である。
前記ポリオレフィンのより具体的な一例としては、例えば、ハードレン(登録商標)NZ-1004、NZ-1015等(株式会社東洋紡製);アローベース(登録商標)DA、TD、SB、TC、SE、YA、およびDB等、或いはアローベース(登録商標)SB-1200、SE-1200、SD-1200、DA-1010、およびDB-4010等(ユニチカ株式会社製)を挙げることができる。
前記ポリオレフィンの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、メタロセン系触媒を用いて重合したポリオレフィンは、均一な結晶性を有しており、溶剤に対する溶解性も優れており、好ましい。前記ポリオレフィンの融点Tmは、形成塗膜の付着性が向上する点から、60~125℃であり、好ましくは、60~100℃、より好ましくは、60~90℃である。
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アコニット酸、およびクロトン酸等が挙げられる。前記不飽和カルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、および無水イタコン酸等が挙げられる。また、前記不飽和カルボン酸の酸無水物の誘導体としては、不飽和カルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。前記不飽和カルボン酸等の中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびイタコン酸等を用いることがより好ましい。
前記不飽和カルボン酸等によるグラフト重合量は、形成塗膜に望まれる物性などに応じて適宜変更することができるが、カルボキシル基を有するポリオレフィンの固形分質量に基づいて、好ましくは、0.1質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%である。ポリオレフィンが安定的に水分散できるように、飽和カルボン酸等によるグラフト重合量、言い換えれば不飽和カルボン酸等の含有率が、0.1質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。
前記ポリオレフィンに、前記不飽和カルボン酸等をグラフト共重合する方法としては、溶液法および溶融法などの公知の方法が挙げられる。
溶液法としては、例えば次のように行う。すなわち、前記ポリオレフィンの少なくとも1種を、トルエン等の芳香族系有機溶媒に100~180℃で溶解させた後、前記不飽和カルボン酸等から選ばれる少なくとも1種を添加し、さらにラジカル発生剤を一括または分割で添加して反応させる。
溶融法としては、例えば次のように行う。すなわち、前記ポリオレフィンの少なくとも1種を、融点以上に加熱溶融した後、前記不飽和カルボン酸等から選ばれる少なくとも1種とラジカル発生剤を添加して反応させる。
前記ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられ、反応温度と分解温度によって選定することができる。
前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、好ましくは、5000~200000であり、より好ましくは、30000~120000である。重量平均分子量が5000以上であれば、最終的な水性分散体が密着性に優れるため好ましい。重量平均分子量が200000以下であれば、水への分散を良好に行うことができるため好ましい。ここで、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算の分子量である。
前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
本発明の一実施形態において、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンは、水性媒体に分散されてなるポリオレフィン水性分散体の形で、後述するアクリル系重合体とグラフト共重合されうる。前記ポリオレフィン水性分散体は、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンと水性媒体とを含む。前記ポリオレフィン水性分散体は、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィン以外のポリオレフィンを含んでいてもよい。ここで、本明細書において、水性媒体としては、通常、水が使用されるが、必要に応じて、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール等の親水性有機溶媒を併用することもできる。
前記ポリオレフィン水性分散体における、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンの含有率は、最終的に得られる水性分散体、プライマー組成物に応じて、適宜調整すればよいが、前記ポリオレフィン水性分散体に対して、10質量%~50質量%であり、好ましくは15質量%~45質量%であり、より好ましくは20質量%~40質量%である。
また、前記ポリオレフィン水性分散体としては、前記ポリオレフィンに、前記不飽和カルボン酸等をグラフト共重合する工程において得られた反応液をそのまま用いることもできる。
〔1.2 グラフト共重合体〕
本発明の一実施形態に係る水性分散体は、前述したカルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を含む。
前記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位と、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位とを含むアクリル系重合体を好適に用いることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「メタアクリル」および「アクリル」を意味する。
アクリル系単量体として用いられる前記(メタ)アクリル酸エステルの好ましい一例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数6以上のシクロアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール等のオキソ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、前記(メタ)アクリル酸エステルは、最終的に得られる水性分散体のポリオレフィン基材への付着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。また、同様の観点から、アルキル基の炭素数が1~12であるアルキル(メタ)アクリレートの中でも、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよび、ブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを少なくとも含むことが特に好ましい。
「アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含む重合体を言い、重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対し(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を20質量%~99質量%含有する重合体をいう。中でも、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、アルキル基の炭素数が1~12、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を1種以上含むことがより好ましく、前記アクリル樹脂を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、アルキル基の炭素数が1~12、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位の合計が、20質量%以上含まれることが好ましく、50質量%以上含まれることがより好ましく、70質量%含まれることがさらに好ましく、90質量%含まれることが特に好ましい。さらに、中でも、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位、および/またはシクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む共重合体が好ましく、前記アクリル系共重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、これら単量体由来の構造単位の合計が、20質量%以上含まれることが好ましく、50質量%以上含まれることがより好ましく、70質量%以上含まれることがさらに好ましく、90質量%以上含まれることが特に好ましい。
前記重合性基を有する界面活性剤とは、不飽和二重結合を有する、他の単量体と重合可能な界面活性剤を意味する。より具体的には、例えば、分子中に、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、プロペニル基等のラジカル重合性の二重結合を有し、乳化剤として機能する界面活性剤を好適に用いることができる。かかる界面活性剤を前記アクリル系重合体製造時に乳化剤として用いれば、乳化剤自体がアクリル系重合体の構成単位としてアクリル系重合体に組み込まれる。それゆえ、最終的に得られる水性分散体の塗膜化後の水等との接触による経時溶出が抑制され、重合性基を有しない乳化剤を用いた場合に比べ、塗膜の耐水性が向上する。
前記重合性基を有する界面活性剤としては、例えば、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルフォネート塩(例えば、日本乳化剤社製、アントックス(登録商標)MS-60等)、プロペニル-アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製、エレミノール(登録商標)RS-30等)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルフォネート塩(例えば、第一工業製薬社製、アクアロン(登録商標)HS-10等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネート塩(例えば、第一工業製薬社製、アクアロン(登録商標)KH-10等)やアリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルフォネート塩(例えば、株式会社ADEKA製、アデカリアソープ(登録商標)SE-10等)、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、株式会社ADEKA製、アデカリアソープ(登録商標)SR-10、SR-30等)、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、株式会社ADEKA製、アデカリアソープ(登録商標)ER-20等)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬社製、アクアロン(登録商標)RN-20等)、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、株式会社ADEKA製、アデカリアソープ(登録商標)NE-10等)、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(例えば、第一工業製薬社製、アクアロン(登録商標)AR-10、AR-20、AR-30等)、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬社製、アクアロン(登録商標)AN-10、AN-20、AN-30、AN-5065等)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に環境面を重視する場合には、非ノニルフェニル型の界面活性剤を用いることがより好ましい。
前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体に対して、2.0質量%~10質量%含まれることが好ましく、2.5質量%~8.0質量%含まれることがより好ましく、3.0質量%~7.0質量%含まれることがさらに好ましい。前記面活性剤由来の構成単位が、2.0質量%以上含まれれば、重合安定性が良い。それゆえ、最終的に得られる水性分散体の付着性を向上させることができる。また、前記面活性剤由来の構成単位が、10質量%以下であれば、最終的に得られる水性分散体を用いて形成した塗膜の耐水性を低下させにくいため好ましい。
また、前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、2.0質量%~20質量%含まれることが好ましく、2.0質量%~10質量%含まれることがより好ましい。前記面活性剤由来の構成単位が、2.0質量%以上含まれれば、重合安定性が良い。それゆえ、最終的に得られる水性分散体の付着性を向上させることができる。また、前記面活性剤由来の構成単位が、20質量%以下であれば、最終的に得られる水性分散体を用いて形成した塗膜の耐水性を低下させにくいため好ましい。
また、本発明の一実施形態において、前記アクリル系重合体は、不飽和カルボン酸由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。不飽和カルボン酸由来の構成単位をさらに含めることにより、アクリル系重合体間の相互作用を高めることができる。そえゆえ、最終的に得られる水性分散体から形成された塗膜に凝集力を付与することができ、これにより、付着性および密着性を向上させることができる。単量体として用いられる、前記不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸等が挙げられる。前記不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸であることがより好ましい。
本発明の一実施形態において、前記不飽和カルボン酸由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.4質量%~8.0質量%含まれることがより好ましく、0.6質量%~7.0質量%含まれることがさらに好ましく、1.0質量%~6.0質量%含まれることが特に好ましい。前記不飽和カルボン酸由来の構成単位が、0.4質量%以上含まれれば、接着性、密着性が向上するため好ましい。また、前記不飽和カルボン酸由来の構成単位が、8.0質量%以下であれば、耐水性が向上するため好ましい。
本発明の一実施形態において、前記アクリル系重合体は、窒素原子含有単量体由来の構成単位を含むことが好ましい。窒素原子含有単量体としては、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイル-1-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のピペリジン基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物;N-ビニルピロリドン;(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらの窒素原子含有単量体は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらの窒素原子含有単量体の中でも、凝集力に優れた塗膜を形成する観点から、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリロニトリル、およびピペリジン基含有単量体が好ましく、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(LA-87)、および4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン(LA-82)がより好ましく、アクリルアミド、アクリロニトリル、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(LA-87)、および4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン(LA-82)がさらに好ましい。
前記窒素原子含有単量体由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含まれることがより好ましく、0.1質量%~15質量%含まれることがさらに好ましく、0.1質量%~10質量%含まれることが特に好ましい。前記窒素原子含有単量体由来の構成単位が、0.1質量%~20質量%含まれれば、凝集力に優れた塗膜を形成することができるため好ましい。
本発明の一実施形態において、前記アクリル系重合体は、剥離強度、および付着性向上の観点から、ヒドロキシル基含有単量体由来の構成単位を含むことが好ましい。ヒドロキシル基含有単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。これらのヒドロキシル基含有単量体は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記ヒドロキシル基含有単量体由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含まれることがより好ましく、0.1質量%~15質量%含まれることがさらに好ましく、0.1質量%~10質量%含まれることが特に好ましい。前記ヒドロキシル基含有単量体由来の構成単位が、0.1質量%~20質量%含まれれば、剥離強度、および付着性向上に優れた塗膜を形成することができるため好ましい。
本発明の一実施形態において、前記アクリル系重合体は、剥離強度および付着性向上の観点から、アルコキシアルキル基含有単量体由来の構成単位を含むことが好ましい。アルコキシアルキル基含有単量体としては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。これらのアルコキシアルキル基含有単量体は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記アルコキシアルキル基含有単量体由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含まれることがより好ましく、0.1質量%~15質量%含まれることがさらに好ましく、0.1質量%~10質量%含まれることが特に好ましい。前記アルコキシアルキル基含有単量体由来の構成単位が、0.1質量%~20質量%含まれれば、剥離強度および付着性向上に優れた塗膜を形成することができるため好ましい。
本発明の一実施形態において、前記アクリル系重合体は、後述の反応性官能基βを有する架橋剤および/または多官能化合物と反応し、水性分散体の粒子間に架橋構造を生じ得る、反応性官能基αを含有することが好ましい。反応性官能基αとしては、例えば、アルコキシカルボニル基、シクロカーボネート基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、オキサゾリン基、オキサゾリジン基、アセトアセトキシ基、ヒドラジノ基、カルボニル基、カルボキシル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの反応性官能基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの反応性官能基のなかでは、エポキシ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、ヒドラジノ基、カルボニル基およびカルボキシル基が好ましく、オキサゾリン基、ヒドラジノ基およびカルボニル基がより好ましく、カルボニル基がさらに好ましい。前記反応性官能基αを含有する前記アクリル系重合体は、例えば、単量体として、反応性官能基αを含有する単量体を共重合させることにより得ることができる。
本発明の一実施形態において、反応性官能基αとして前記カルボニル基を含有する単量体は、式:=C=Oで表わされる基を有する単量体であって、当該カルボニル基が有する2つの結合手のうちの一方の結合手に水素原子またはアルキル基が結合し、他方の結合手にビニル基などの重合性不飽和二重結合を末端に有する基が結合している単量体を意味する。
前記カルボニル基を含有する単量体(以下、「カルボニル基含有単量体」と称することがある)としては、例えば、アクリロレイン、メタクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルエチルケトン、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、2-ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレートアセチルアセテート、2-(アセトアセトキシ)エチルアクリレート、2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート等を挙げることができる。これらのカルボニル基含有単量体は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記カルボニル基含有単量体のなかでは、耐水白化性、耐水クラック性、耐水変形性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、(メタ)アクリロレイン、ホルミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリレート、およびダイアセトン(メタ)アクリルアミドが好ましく、(メタ)アクリロレイン、ホルミルスチロール、アセトニル(メタ)アクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリレート、およびダイアセトン(メタ)アクリルアミドがより好ましく、(メタ)アクリロレイン、アセトニル(メタ)アクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリレート、およびダイアセトン(メタ)アクリルアミドがさらに好ましく、ダイアセトン(メタ)アクリレート、およびダイアセトン(メタ)アクリルアミドがさらに一層好ましい。
前記反応性官能基αを含有する単量体由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含まれることがより好ましく、0.1質量%~15質量%含まれることがさらに好ましく、0.1質量%~10質量%含まれることが特に好ましい。例えば、前記カルボニル基含有単量体由来の構成単位が、0.1質量%~20質量%含まれれば、耐水白化性、耐水クラック性、耐水変形性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成することができるため好ましい。
本発明の一実施形態において、前記アクリル系重合体は、シラン基含有単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
前記シラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられる。これらのシラン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのシラン基含有単量体のなかでは、耐水性、耐ブリスター性および基材に対する密着性に優れた塗膜を形成する観点から、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
前記シラン基含有単量体由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.01質量%~10質量%含まれることがより好ましく、0.05質量%~10質量%含まれることがさらに好ましく、0.1質量%~10質量%含まれることが特に好ましい。前記シラン基含有単量体由来の構成単位が、0.01質量%~10質量%含まれれば、耐水性、耐ブリスター性および基材に対する密着性に優れた塗膜を形成することができるため好ましい。
前記アクリル系重合体は、前述の(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位、並びに必要に応じて、不飽和カルボン酸由来の構成単位、窒素原子含有単量体由来の構成単位、ヒドロキシル基含有単量体由来の構成単位、前記反応性官能基αを含有する単量体由来の構成単位、および/または、シラン基含有単量体由来の構成単位に加えて、本発明の効果に好ましくない影響を与えない範囲で、その他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。前記その他の単量体としては、例えば、スチレンを挙げることができる。前記その他の単量体由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0~20質量%の範囲で含まれてもよい。
また、前記アクリル系重合体が前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンにグラフト共重合されず、アクリル系重合体で存在すると仮定した場合のそのアクリル系重合体のガラス転移温度Tg(以下、単に「Tg」と称することがある。)は、0℃~60℃であり、好ましくは10℃~40℃である。ここで、Tgは、以下の方法により計算することができる。
前記アクリル系重合体のガラス転移温度Tgは、下記Foxの式より計算される計算Tg(K)から求めることができる。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
ここで、Wnは単量体nの含有率(質量%)、Tgnは単量体nからなる単独重合体のTg(K:絶対温度)を示す。
前記アクリル系重合体のTgが0℃以上であれば、形成した塗膜の付着性が向上するため好ましい。また、60℃以下であれば、低温造膜性が良好であるため好ましい。ここで、低温造膜性とは、室温(23℃)以下の温度で塗料を塗布しても塗膜に割れおよびひび(クラック)が発生することなくフィルムに成型できることを示す。前記低温造膜性は、後述する熱勾配試験機による最低造膜温度(MFT)測定で判定でき、MFTが0℃でもクラックが発生しない塗膜は、低温造膜性が良好である。本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体の水性分散体は、融点Tmが60℃以上の前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、Tgが0℃以上のアクリル系重合体がグラフトした共重合体であるにもかかわらず、低温造膜性が良好である。さらに、前記アクリル系重合体のTgが10℃以上であれば、形成した塗膜の剥離強度向上の観点からより好ましい。
本発明の一実施形態において、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してグラフト共重合体を製造する方法としては、これに限定されるものではないが、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンと、水性媒体と、を含むポリオレフィン水性分散体と、重合性基を有する界面活性剤との存在下で、アクリル系単量体を乳化重合する方法を挙げることができる。ここで、アクリル系単量体とは、前述した(メタ)アクリル酸エステル、および、必要に応じて前記不飽和カルボン酸、前記窒素原子含有単量体、前記ヒドロキシル基含有単量体、前記反応性官能基αを含有する単量体、シラン基含有単量体、および/または、その他の単量体を含む趣旨である。例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル、並びに、必要に応じて前記不飽和カルボン酸、前記窒素原子含有単量体、前記ヒドロキシル基含有単量体、前記反応性官能基αを含有する単量体、シラン基含有単量体、および/または、その他の単量体を単量体として用いて、前記ポリオレフィン水性分散体と、乳化剤として機能する前記重合性基を有する界面活性剤との存在下で、乳化重合を行う方法を好適に用いることができる。乳化重合することで、前記グラフト共重合体の水性分散体(グラフト共重合体粒子の水性分散体、またはグラフト共重合体エマルションともいう)が生成する。
ここで行われる乳化重合としては特に限定されず、例えば、多段階フィード法、パワーフィード法等の従来公知の方法を用いて行うことができる。具体的には、下記(1)、(2)等の方法を用いることができる。このとき、乳化剤として、前述の重合性基を有する界面活性剤を用いる。
(1)水性媒体中に前記ポリオレフィン水性分散体と乳化剤とを溶解させ、加熱撹拌下、前記(メタ)アクリル酸エステル、並びに、必要に応じて前記不飽和カルボン酸、前記窒素原子含有単量体、前記ヒドロキシル基含有単量体、前記反応性官能基αを含有する単量体、シラン基含有単量体、および/または、その他の単量体と、重合開始剤とを滴下する方法。
(2)乳化剤と水性媒体とを用いて予め乳化した、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィン、前記(メタ)アクリル酸エステル、並びに、必要に応じて前記不飽和カルボン酸、前記窒素原子含有単量体、前記ヒドロキシル基含有単量体、前記反応性官能基αを含有する単量体、シラン基含有単量体、および/または、その他の単量体と、重合開始剤とを、加熱撹拌下、水性媒体に滴下する方法。
前記重合性基を有する界面活性剤の使用量は、最終的に得られる水性分散体の付着性、および耐水性の観点から、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体に対して、2.0質量%~10質量%とするのが好ましく、より好ましくは2.5質量%~8.0質量%であり、さらに好ましくは3.0質量%~7.0質量%である。
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2-アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の過酸化物;等が挙げられる。具体的には、例えば、アゾ系の油性化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、水性化合物(例えば、アニオン系の4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、カチオン系の2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン));レドックス系の油性過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート等)、水性過酸化物(例えば、過硫酸カリおよび過酸化アンモニウム等);等を挙げることができる。なお、重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、全単量体成分に対し、0.05質量%~1質量%とするのがよく、より好ましくは0.1質量%~0.5質量%とするのがよい。重合開始剤の使用量が0.05質量%以上であれば、好適な重合速度が得られるので単量体が残存しにくく、1質量%以下であれば、形成される塗膜の耐水性がよい。
前記重合開始剤の添加方法は、特に制限はなく、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下等のいずれの方法であってもよい。さらに、重合の完了を速めるためには、最終段の重合性単量体成分の滴下終了前後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
前記乳化重合においてはまた、重合開始剤の分解を促進する目的で、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤および/または硫酸第一鉄等の遷移金属塩を添加してもよい。前記乳化重合においては、さらに必要に応じて、pH緩衝剤、キレート剤、連鎖移動剤、成膜助剤等の公知の添加剤を添加してもよい。前記連鎖移動剤としては、t-ドデシルメルカプタン等のチオール基を有する化合物等が挙げられる。前記連鎖移動剤および調節剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、全単量体成分に対し、0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%とするのがよい。
前記グラフト共重合工程における重合温度としては、特に限定はなく、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは40℃~95℃とするのがよい。重合温度は一定であってもよいし、重合途中でもしくは各段階によって変化させてもよい。重合時間についても、特に限定はなく、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合開始から終了まで2時間~8時間の範囲とするのが好ましい。重合時の雰囲気については、重合開始剤の効率を高めるため窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、前記乳化重合において使用する乳化剤として、前述の重合性基を有する界面活性剤に加えて、重合性基を有しない界面活性剤を併用してもよい。かかる重合性基を有しない界面活性剤としては、重合性基を有しない、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等を使用することができる。これら界面活性剤は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記重合性基を有しない、アニオン性界面活性剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルフォネート、ナトリウムドデシルスルフォネート等のアルキルスルフォネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルフォネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルフォネート等のアルキルアリールスルフォネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレート等の脂肪酸塩;等が挙げられる。前記重合性基を有しない、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの縮合物;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリアミド;エチレンオキサイドと脂肪族アミンの縮合生成物;等が挙げられる。前記重合性基を有しない、カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩;等が挙げられる。前記重合性基を有しない、両性界面活性剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤;等が挙げられる。前記重合性基を有しない、高分子界面活性剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレート等のポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;またはこれらの重合体を構成する重合性単量体のうちの1種以上を共重合成分とする共重合体;等が挙げられる。
前記重合性基を有しない界面活性剤の使用量は、特に限定されないが、塗膜の耐水性および重合安定性の双方を低下させない観点から、全単量体成分に対して、0~5質量%とすることが好ましく、より好ましくは、0~3質量%であり、更に好ましくは0~1質量%であり、最も好ましくは実質0質量%である。従って、重合性基を有しない界面活性剤を併用する前記乳化重合により得られた反応液をそのまま、水性分散体に用いる場合は、当該水性分散体は、重合性基を有しない界面活性剤を、前記グラフト共重合しているアクリル系重合体の全量に対して、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~3質量%、更に好ましくは0~1質量%を含みうる。実質0質量%であることもありうる。
前記グラフト共重合体における、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンと、前記アクリル系重合体との含有比率は、質量基準で、好ましくは10:90~70:30であり、より好ましくは20:80~60:40である。前記含有比率が前記範囲内であれば、ポリオレフィン基材に対する付着性に優れた水性分散体を実現することができる。
前記グラフト共重合体の重量平均分子量は、これに限定されるものではないが、形成した塗膜の付着性の観点から好ましくは10万~500万であり、より好ましくは30万~500万である。
前記水性分散体に存在するグラフト共重合体粒子の平均粒子径は、好ましくは40nm~300nmであり、より好ましくは50nm~200nmである。本明細書において、平均粒子径とは、実施例に記載の方法により測定された平均粒子径を意味する。
本発明の一実施形態において、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、前記アクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体は、後述の反応性官能基βを有する架橋剤および/または多官能化合物と反応し、水性分散体の粒子間に架橋構造を生じ得る、反応性官能基αを有する単量体由来の構成単位を含むことが好ましい。反応性官能基αとしては、例えば、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに含まれる前記不飽和カルボン酸等由来のカルボキシル基;アクリル系重合体を構成する前記アクリル系単量体由来のカルボキシル基、水酸基、カルボニル基等の前述の反応性官能基が挙げられる。中でも、反応性官能基αは、より好ましくは、エポキシ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、ヒドラジノ基、カルボニル基およびカルボキシル基等である。
〔1.3 架橋剤〕
本発明の一実施形態に係る水性分散体は、さらにグラフト共重合体に含まれる、反応性官能基αと反応しうる反応性官能基βを有する架橋剤を含み得る。これにより、得られる水性分散体の接着性をさらに向上されることができるため好ましい。
前記反応性官能基αが例えばカルボキシル基である場合、前記架橋剤としては、反応性官能基βとして、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基等を有する架橋剤を挙げることができる。
前記反応性官能基αが例えば水酸基である場合、前記架橋剤としては、反応性官能基βとして、イソシアネート基等を有する架橋剤を挙げることができる。
前記反応性官能基αが例えばカルボニル基である場合、前記架橋剤としては、反応性官能基βとして、ヒドラジド基等を有する架橋剤を挙げることができる。
本発明の一実施形態に係る水性分散体は、より好ましくは、カルボキシル基と反応しうる架橋剤を含み得る。かかる架橋剤としては、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、エポキシ基含有化合物等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、取り扱い易さの観点から、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物を添加することがより好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のオキサゾリン基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、2,2′-ビス(2-オキサゾリン)、2,2′-エチレン-ビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物、および、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロス(登録商標)シリーズが挙げられ、例えば、水溶性タイプの「WS-500」、「WS-700」;エマルションタイプの「K-1010E」、「K-1020E」、「K-1030E」、「K-2010E」、「K-2020E」、「K-2030E」などが挙げられる。
カルボジイミド基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物、および、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱い易さから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられる。具体的な商品としては、例えば、水溶性タイプの「SV-02」、「V-02」、「V-02-L2」、「V-04」;エマルションタイプの「E-01」、「E-02」;有機溶液タイプの「V-01」、「V-03」、「V-07」、「V-09」;無溶剤タイプの「V-05」等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAβ-ジメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;p-オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4-エポキシ-6メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
市販のエポキシ化合物としては、本発明に適した水系のものとして、例えば、長瀬ケムテック社製のデナコール(登録商標)シリーズ(EM-150、EM-101など)、株式会社ADEKA製のアデカレジン(登録商標)シリーズ等が挙げられ、UVインキ密着性や耐スクラッチ性向上の点から多官能エポキシ樹脂エマルションである株式会社ADEKA製のアデカレジン(登録商標)EM-0517、EM-0526、EM-11-50B、EM-051Rなどが好ましい。
本発明の他の一実施形態に係る水性分散体は、水酸基と反応しうる架橋剤を含みうる。当該他の一実施形態における架橋剤としては、イソシアネート基含有化合物が挙げられる。イソシアネート基含有化合物としては、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有しているものであれば特に限定されない。イソシアネート基含有化合物の好ましい一例としては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等のジイソシアネート;アダクトポリイソシアネート化合物;ビュレットポリイソシアネート化合物;イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等が挙げられる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、より具体的には、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
前記アダクトポリイソシアネート化合物としては、例えば、「スミジュールL」(住友バイエルウレタン社製);「コロネートL」、および「コロネートHL」(いずれも日本ポリウレタン社製)等が挙げられる。
前記ビュレットポリイソシアネート化合物としては、例えば、「スミジュールN」(住友バイエルウレタン社製)等が挙げられる。
前記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、「デスモジュールIL」、および「デスモジュールHL」(いずれもバイエルA.G.社製);「コロネートEH」、および「コロネートHX」(いずれも日本ポリウレタン工業社製);「タケネートD110N」、および「タケネートD120N」(いずれも三井化学社製)等が挙げられる。
これらは、単独で使用し得るほか、2種以上を併用することもできる。また、これらの化合物のイソシアネート基は活性水素を有するマスク剤と反応させて不活性化した、いわゆるブロックイソシアネートも使用可能である。
前記架橋剤の含有率は、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、前記アクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体に対して、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは、0.5質量%~2質量%である。前記架橋剤の含有率が0.1質量%~5質量%であれば、形成した塗膜の付着性が向上するため好ましい。
或いは、本発明の一実施形態に係る水性分散体は、反応性官能基αと反応しうる架橋剤として、多官能化合物を含有することが好ましい。多官能化合物としては、カルボキシル基、ヒドラジノ基、オキサゾリン基およびエポキシ基のうちの少なくとも1種を2個以上含むヒドラジノ基含有架橋剤を含むことが好ましく、ヒドラジノ基を2個以上有することが好ましい。
前記ヒドラジノ基含有架橋剤としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどの炭素数2~10のジカルボン酸ジヒドラジド、エチレン-1,2-ジヒドラジン、プロピレン-1,3-ジヒドラジン、ブチレン-1,4-ジヒドラジンなどの炭素数2~4の脂肪族水溶性ジヒドラジンなどが挙げられる。これらのヒドラジノ基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのヒドラジノ基含有架橋剤のなかでは、形成した塗膜の付着性の観点から、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジドなどの炭素数4~6のジカルボン酸ジヒドラジドが好ましく、アジピン酸ジヒドラジドがより好ましい。
前記ヒドラジノ基含有架橋剤等の多官能化合物の含有率は、前記水性分散体の固形分に対して、より好ましくは前記水性分散体に含まれる前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体の固形分に対して、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは、0.5質量%~2質量%である。前記架橋剤の含有率が0.1質量%~5質量%であれば、形成した塗膜の付着性が向上するため好ましい。
中でも、前記ヒドラジノ基含有架橋剤は、カルボニル基と反応しうる架橋剤であり、カルボニル基含有単量体に由来する構成単位を含むアクリル樹脂との組合せで用いることがより好ましい。
また、本発明の一実施形態に係る水性分散体は、必要に応じて、さらに架橋を促進するために酸触媒、例えばパラトルエンスルホン酸、リン酸、塩酸、塩化アンモニウム等を含んでいてもよい。前記架橋促進剤の含有率は前記架橋剤に対して10質量%~50質量%である。
〔1.4 水性分散体〕
本発明の一実施形態に係る水性分散体は、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を特定量含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体と、水性媒体とを含んでいる。
カルボキシル基含有塩素化ポリプロプレン系ランダム共重合体中の塩素含有率は、低いほどオレフィン基材への付着性が良くなるが、低すぎると樹脂の軟化点、融点が上昇するため、低温焼き付け時に付着性が低下する。このように、塩素化ポリオレフィンの水性分散体を非塩素化ポリオレフィンの水性分散体に置き換えることにより、低温焼き付け時に付着性が低下することが従来からの課題であった。本発明の一実施形態に係る、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を特定量含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体と、水性媒体と、を含む水性分散体によればかかる課題を解決することができる。
本発明の一実施形態において、前記水性分散体は、前記カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を特定量含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体と、水性媒体とを含んでいればよいが、必要に応じてさらに前記架橋剤を含んでいてもよい。
また、前記水性分散体は、必要に応じて、例えば、増粘剤、顔料、顔料分散剤、消泡剤、無機充填剤、界面活性剤、中和剤、安定剤、増粘剤、表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、導電性カーボン、導電性フィラー、金属粉等の導電性充填剤、有機改質剤、可塑剤、を含みうる。
前記水性分散体における、前記グラフト共重合体の含有率は、前記水性分散体に対して、好ましくは10質量%~60質量%であり、より好ましくは20質量%~50質量%である。
前記水性分散体の固形分は、好ましくは10質量%~60質量%であり、より好ましくは20質量%~40質量%である。本明細書において、固形分とは、後述する実施例に記載の方法にて測定された固形分を意味する。本発明の一実施形態に係る水性分散体の固形分は、グラフト共重合体、グラフトされずに残存するポリオレフィンおよびアクリル系共重合体を含む。前記固形分に対し、グラフト共重合体の含有率が70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは実質100質量%である。
また、前記水性分散体のpHは、当該分散体の安定性を向上させるための観点から、好ましくは5~10、より好ましくは6~9.5、さらに好ましくは7~9.5である。pHが5未満であると、前記水性分散体の安定性、機械的安定性が低下するおそれがある。pHが10を超えると、耐水性の低下や臭気の発生など、実用性に問題があるおそれがある。
前記水性分散体のpHを前述の範囲に調整するために、任意の適切なpH調整剤を用い得る。かかるpH調整剤の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物類;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物類;アンモニア;ジメチルアミノエタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられる。これらpH調整剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
〔2.水性分散体の利用〕
本発明の一実施形態に係る水性分散体は、ポリオレフィン基材との付着性に優れているため、ポリオレフィン基材用の水性プライマー組成物として用いることができる。それゆえ、本発明には前述した水性分散体を含む水性プライマー組成物も含まれる。
本発明の一実施形態に係る水性プライマー組成物を、ポリエチレン、ポリプロピレン、TPO(サーモプラスチック・オレフィン;熱可塑性オレフィン樹脂)等のポリオレフィン基材に塗布し、乾燥させることにより、ポリオレフィン基材上にフライマー層が形成される。乾燥温度は、特に限定されないが、水性プライマー組成物が架橋剤を含む場合には、加熱乾燥時に架橋反応が進行するので、架橋剤の種類に応じて架橋反応が速やかに進行する温度で乾燥することが好ましい。製膜には、従来公知の方法、例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、および、はけ塗り法等を用いることができる。
本発明の一実施形態に係る成形品は、ポリオレフィン基材またはポリオレフィン成形品に、前記プライマー層と、当該プライマー層の上に1層以上の上塗り層を有する成形品であることが好ましい。
前記上塗り層としては、例えば、一液メラミン焼付塗料、二液ウレタン塗料、一液ラッカー塗料、光輝性塗料、ハイソリッドクリヤー塗料等を塗装することで得られる塗膜等が挙げられる。上塗り塗膜が2層以上の多層構造である場合、例えば、ベース塗膜とクリヤー塗膜とを含む多層構造が挙げられる。
前記ポリオレフィン成形品としては、例えば、車両用のバンパー、モール、フェンダーミラー、およびグリル、家電製品の部材等が挙げられる。
〔3.水性分散体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る水性分散体の製造方法は、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を含み、前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して2質量%~10質量%含まれる、水性分散体の製造方法であって、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンと、水性媒体と、を含むポリオレフィン水性分散体と、重合性基を有する界面活性剤との存在下で、アクリル系単量体を乳化重合する工程を含む。乳化重合する工程については、〔1.2〕で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
本発明の一実施形態において、前記水性分散体としては、前記乳化重合において得られた反応液をそのまま用いることもできる。
或いは、前記乳化重合において得られた反応液にさらに、水性媒体、架橋剤、その他の添加剤から選択される少なくとも1種を混合する工程をさらに含んでいてもよい。
また、他の一実施形態においては、前記乳化重合において得られたグラフト共重合体を分離し、水性媒体を添加する工程を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
〔1〕カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体と、水性媒体と、を含み、前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記グラフト共重合体に対して2質量%~10質量%含まれる、水性分散体。
〔2〕重合性基を有しない界面活性剤を、グラフト共重合している前記アクリル系重合体の全量に対して、0~5質量%含む、〔1〕に記載の水性分散体。
〔3〕前記アクリル系重合体は、炭素数6以上のシクロアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、〔1〕または〔2〕に記載の水性分散体。
〔4〕前記アクリル系重合体は、2-エチルヘキシルアクリレート由来の構成単位を含む、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の水性分散体。
〔5〕前記アクリル系重合体は、不飽和カルボン酸由来の構成単位をさらに含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔6〕前記グラフト共重合体は、反応性官能基αを有する単量体由来の構成単位を含む、〔1〕~〔5〕の何れかに記載の水性分散体。
〔7〕前記反応性官能基αと反応しうる反応性官能基βを有する架橋剤を含む、〔6〕に記載の水性分散体。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の水性分散体を含む、ポリオレフィン基材に用いられる水性プライマー組成物。
〔9〕〔8〕に記載の水性プライマー組成物を含む成形品。
〔10〕カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を含み、前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記グラフト共重合体に対して2質量%~10質量%含まれる、水性分散体の製造方法であって、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンと、水性媒体と、を含むポリオレフィン水性分散体と、重合性基を有する界面活性剤との存在下で、アクリル系単量体を乳化重合する工程を含む、製造方法。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」は「質量部」を意味する。
〔測定方法〕
実施例および比較例で用いられたポリオレフィンの融点、アクリル系重合体のTg、および、実施例および比較例で得られた水性分散体の固形分、pH、および含まれる全粒子の平均粒子径は以下の方法によって測定した。
(1)平均粒子径
動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社製、「FPAR-1000」)を用い、体積平均粒子径を測定した。
(2)Tg
単量体組成から、前述したFoxの式を用いて算出した。
(3)融点
融点は、示差走査熱量計(以下、「DSC」と称することがある。ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製、「Q-2000」)を用いて、20℃/分の速度で昇温融解、冷却樹脂化した後、再度昇温融解したときの融解ピークのトップ温度および面積から測定した値である。
(4)固形分
各水性分散体を、1g秤量し、熱風乾燥機にて110℃1時間乾燥させ、乾燥残量を、固形分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で算出した。
(5)pH
pHメーター(堀場製作所社製「F-23」)により25℃での値を測定した。
〔評価方法〕
実施例および比較例で得られた水性分散体の評価は以下の方法により行った。
(評価用塗料の調製)
各水性分散体100部に、成膜助剤としてジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(Dow Chemical社製、品番:ダワノール(登録商標)DPnB)4部、および濡れ剤(日信化学株式会社製、商品名:オルフィン(登録商標)EXP.4200)1部を添加し、ホモディスパーを使用して回転速度1500回/分にて10分間撹拌することにより、評価用塗料を調製した。
(評価用塗膜の作製)
ポリプロピレン板(日本テストパネル株式会社製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:2mm)上に、前記評価用塗料を、バーコーター(No.14)を使用して塗工した。塗工した前記評価用塗料を、風速3m、80℃のジェットオーブンで15分間乾燥させることにより、前記ポリプロピレン板上に、膜厚10±2μmの評価用塗膜が形成されてなる試験板を作製した。
(1)初期付着性評価(碁盤目試験)
(試験方法)
前記評価用塗膜が形成されてなる試験板を用いて、JIS K5600-5-6に準拠して碁盤目試験を行った。
具体的には、前記評価用塗膜に鋭利な刃物で2mm角の碁盤目状に25マス(縦:5マス、横:5マス)の切込みを入れた。その後、25mm幅のセロハン粘着テープ(ニチバンCT-24)を、指で擦ることによって碁盤目状の切込みを入れた部分に密着させた。次いで、前記評価用塗膜を25℃の大気中にて5分間静置した後、前記セロハン粘着テープを剥がした。作製した25マスのうち、剥離したマス目の数を数え、以下の評価基準に基づいてポリオレフィン基材に対する初期付着性を評価した。
(評価基準)
○:剥離したマス目の数が0~4個である。
△:剥離したマス目の数が5~14個である。
×:剥離したマス目の数が15個以上である。
(2)耐水性評価
(試験方法)
前記評価用塗膜が形成されてなる試験板を40℃に保たれた温水中に10日間浸漬した。10日後、該試験板を引き上げて乾燥してから、前記初期付着性評価の碁盤目試験と同様の手順で碁盤目試験を行ない、剥離したマス目の数を数え、以下の評価基準に基づいて耐水性評価を行った。
(評価基準)
○:剥離したマス目の数が0~4個である。
△:剥離したマス目の数が5~14個である。
×:剥離したマス目の数が15個以上である。
(3)密着性評価(剥離強度試験)
前記評価用塗膜が形成されてなる試験板の前記評価用塗膜にガムテープ(ニチバン社製、商品名:布粘着テープ102N)を貼り付け、23℃、65%RHにて一日静置した。その後、基材から塗膜が剥離するきっかけを作るために、前記評価用塗膜に10mm幅の切れ目をガムテープの上からに入れた。次に、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAGS-100D)を用いて、引っ張り速度50mm/minの条件で、ガムテープと塗膜が一体となった膜を180度方向に引っ張った時の剥離強度を測定し、剥離強度を1mあたりに換算して、剥離強度を算出した。
(4)低温造膜性評価
(試験方法)
熱勾配試験機(テスター産業株式会社製、MFTテスターLT型)の上に置いたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、ギャップを0.2mmに調整したアプリケーターを用いて、各水性分散体を塗工した。その後、塗膜を乾燥させ、得られた塗膜に亀裂が生じるかを観察した。塗工時の温度を30℃から、低温側に1℃ごとに変化させ同様の観察を行い、得られた塗膜に亀裂の生じた温度を最低成膜温度(MFT)とした。
〔実施例1〕
滴下ロート、撹拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内にて脱イオン水100部と、界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープ(登録商標)SR-10)の25%水溶液10部(界面活性剤として2.5部)と、ポリオレフィン水性分散体250部(株式会社東洋紡製、商品名:ハードレンNZ-1004:ポリプロピレン100部を不飽和カルボン酸である無水マレイン酸2部にて変性した変性ポリオレフィンの水性分散体、樹脂分として75部)とを混合し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温した。
滴下ロートに脱イオン水28部と、界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープ(登録商標)SR-10)の25%水溶液20部(界面活性剤として5部)と、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部とからなる滴下用プレエマルションを調製し、滴下ビュレットに過硫酸アンモニウムの3.5%水溶液13部を調製し、それぞれを90分間にわたり均一にフラスコ内に滴下し重合を開始した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持した。その後、フラスコの内容物に25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整することにより、重合反応を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表1および2に示す。
〔実施例2〕
2-エチルヘキシルアクリレートを17.5部に変更し、メチルメタクリレート52.0部をシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)56.0部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で水性分散体を製造した。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表1および2に示す。
〔実施例3〕
実施例1で得られた水性分散体中の固形分100部(前記グラフト共重合体、前記グラフトされずに残存するポリオレフィンおよび前記アクリル共重合体の総質量であり、実質的には略100質量%が前記グラフト共重合体である。)に、架橋剤2部(株式会社日本触媒製、商品名:エポクロスWS-500、オキサゾリン基含有水溶性ポリマーを0.8部含有)を混合し、ホモディスパーで回転速度500回/分にて30分間撹拌した。その結果、カルボキシル基と反応する架橋剤を含む水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表2に示す。
〔実施例4〕
実施例2で得られた水性分散体中の固形分100部(前記グラフト共重合体、前記グラフトされずに残存するポリオレフィンおよび前記アクリル共重合体の総質量であり、実質的には略100質量%が前記グラフト共重合体である。)に、架橋剤2部(株式会社日本触媒製、商品名:エポクロスWS-500、オキサゾリン基含有水溶性ポリマーを0.8部含有)を混合し、ホモディスパーで回転速度500回/分にて30分間撹拌した。その結果、カルボキシル基と反応する架橋剤を含む水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表2に示す。
〔実施例5〕
ポリオレフィン水性分散体250部と混合する脱イオン水100部を96部に、界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10)の25%水溶液10部を6部(界面活性剤として1.5部含有)に変更し、さらに、滴下用プレエマルションの調製において、脱イオン水28部を33部に変更し、界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10)の25%水溶液20部を12部(界面活性剤として3部含有)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で水性分散体を製造した。得られた水性分散体の組成、評価結果を表1および2に示す。
〔比較例1〕
実施例1で用いた前記ポリオレフィン水性分散体を水性分散体とした。この水性分散体の組成、評価結果等を表2に示す。
〔比較例2〕
滴下ロート、撹拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1000部を仕込んだ。
滴下ロートに脱イオン水249部、界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10)の25%水溶液120部(界面活性剤として30部含有)、2-エチルヘキシルアクリレート172部、メチルメタクリレート416部、およびアクリル酸12部からなる滴下用プレエマルションを調製した。そのうちの95部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温した。その後、過硫酸アンモニウムの5%水溶液36部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部を120分間かけて均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加してpHを9に調整することにより、重合反応を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体に含まれるエマルション粒子は、平均粒子径が100nm、エマルション粒子全体のガラス転移温度は30℃であった。この水性分散体の組成、評価結果等を表1および2に示す。
〔比較例3〕
2-エチルヘキシルアクリレート172部を139部に変更し、メチルメタクリレート416部をシクロヘキシルメタクリレート449部に変更した以外は、比較例2と同様の方法で水性分散体を製造した。この水性分散体の組成、評価結果等を表1および2に示す。
〔比較例4〕
ポリオレフィン水性分散体250部と混合する界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10)の25%水溶液10部を、重合性基を有しない界面活性剤(日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール707-SF)の30%水溶液8部(界面活性剤として2.4部含有)に変更し、さらに、滴下用プレエマルションの調製において、脱イオン水28部を31部に変更し、界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10)の25%水溶液20部を、重合性基を有しない界面活性剤(日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール707-SF)の30%水溶液17部(界面活性剤として5.1部含有)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で水性分散体を製造した。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表1および2に示す。
〔比較例5〕
ポリオレフィン水性分散体250部と混合する脱イオン水100部を93部に、界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10)の25%水溶液10部を2部(界面活性剤として0.5部含有)に変更し、さらに、滴下用プレエマルションの調製において、脱イオン水28部を38部に変更し、界面活性剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10)の25%水溶液20部を4部(界面活性剤として1部含有)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で水性分散体を製造した。得られた反応液中に凝集物が多く浮遊していた。この水性分散体の組成、評価結果等を表1および2に示す。
Figure 0007204773000001
Figure 0007204773000002
実施例1~5より、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を含む水性分散体は、初期付着性、耐水性に優れ、低温造膜温度は0℃以下であった。
また、表には示していないが、剥離強度について、実施例2~5で得られた水性分散体は、実施例1で得られた水性分散体に比べて、優れた剥離強度を示した。
比較例1より、オレフィン水性分散体のみを用いて製造した水性分散体は、オレフィン基材との付着性に劣り、低温造膜温度が30℃~50℃であることが分かる。また、比較例4より、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有さない界面活性剤を使用してアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を含む水性分散体は、初期付着性および耐水性に劣ることがわかる。
さらに、重合性界面活性剤の含有量がそれぞれ5.0質量%および3.0質量%である実施例1および5で得られた水性分散体は、重合性界面活性剤の含有量が1.0質量%である比較例5と比較して、初期付着性および耐水性に優れることがわかる。
〔実施例6〕
滴下用プレエマルションの調製において、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部の代わりに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)17.4部と、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)54.6部と、アクリル酸(AA)1.5部と、アクリルアミド(AAm)1.5部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表3および4に示す。
〔実施例7〕
滴下用プレエマルションの調製において、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部の代わりに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)17.4部と、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)54.6部と、アクリル酸(AA)1.5部と、ダイアセトンアクリルアミド(DAAM、三菱ケミカル株式会社製)1.5部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表3および4に示す。
〔実施例8〕
滴下用プレエマルションの調製において、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部の代わりに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)17.4部と、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)54.6部と、アクリル酸(AA)1.5部と、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(LA-87)1.5部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表3および4に示す。
〔実施例9〕
滴下用プレエマルションの調製において、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部の代わりに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)17.4部と、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)54.6部と、アクリル酸(AA)1.5部と、アクリロニトリル(AN)1.5部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表3および4に示す。
〔実施例10〕
滴下用プレエマルションの調製において、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部の代わりに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)17.4部と、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)54.6部と、アクリル酸(AA)1.5部と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.5部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表3および4に示す。
〔実施例11〕
滴下用プレエマルションの調製において、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部の代わりに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)17.4部と、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)55.4部と、アクリル酸(AA)1.5部と、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-503)0.8部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表3および4に示す。
〔実施例12〕
滴下用プレエマルションの調製において、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部の代わりに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)17.4部と、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)53.1部と、アクリル酸(AA)1.5部と、アクリロニトリル(AN)1.5部と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.5部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表3および4に示す。
〔実施例13〕
滴下用プレエマルションの調製において、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)52.0部と、アクリル酸(AA)1.5部の代わりに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)21.5部と、メチルメタクリレート(MMA)49.1部と、アクリル酸(AA)1.5部と、アクリロニトリル(AN)1.5部と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.5部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、固形分が30質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体の組成、評価結果等を表3および4に示す。
Figure 0007204773000003
Figure 0007204773000004
実施例6~13からも、カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を含む水性分散体は、初期付着性、耐水性に優れ、低温造膜温度は0℃以下であることがわかる。
さらに、窒素原子含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体、カルボニル基含有単量体、またはシラン基含有単量体を単量体成分として含むアクリル系重合体をグラフト共重合した実施例6~13では、表には示していないが、剥離強度について、実施例2~5で得られた水性分散体に比べて、優れた剥離強度を示した。
本発明は、ポリオレフィンの成形品、例えば、車両用バンパー、車両用モール等の部材、および家電製品の部材等に使用される水性プライマーに利用することができる。

Claims (16)

  1. カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体と、水性媒体と、を含み、
    前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位およびアクリル酸由来の構成単位を含み、
    前記(メタ)アクリル酸エステルは、メチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを含み、
    前記アクリル系重合体は、アクリル酸由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.4質量%~8.0質量%含み、
    前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記グラフト共重合体に対して2.0質量%~10質量%含まれる、水性分散体。
  2. 重合性基を有しない界面活性剤を、グラフト共重合している前記アクリル系重合体の全量に対して、0~5質量%含む、請求項1に記載の水性分散体。
  3. 前記アクリル系重合体は、炭素数6以上のシクロアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、請求項1または2に記載の水性分散体。
  4. 前記グラフト共重合体は、カルボキシル基以外の反応性官能基αを有する単量体由来の構成単位を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の水性分散体。
  5. 前記反応性官能基αと反応しうる反応性官能基βを有する架橋剤を含む、請求項4に記載の水性分散体。
  6. 前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、20質量%~92.5質量%含む、請求項1~5の何れか1項に記載の水性分散体。
  7. 前記アクリル系重合体は、窒素原子含有単量体由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含む、請求項1~6の何れか1項に記載の水性分散体。
  8. 前記アクリル系重合体は、ヒドロキシル基含有単量体由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含む、請求項1~7の何れか1項に記載の水性分散体。
  9. 前記アクリル系重合体は、アルコキシアルキル基含有単量体由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含む、請求項1~8の何れか1項に記載の水性分散体。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の水性分散体を含む、ポリオレフィン基材に用いられる水性プライマー組成物。
  11. 請求項10に記載の水性プライマー組成物を含む成形品。
  12. カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンに、重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位を含むアクリル系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を含み、前記重合性基を有する界面活性剤由来の構成単位は、前記グラフト共重合体に対して2.0質量%~10質量%含まれる、水性分散体の製造方法であって、
    カルボキシル基を有する非塩素化ポリオレフィンと、水性媒体と、を含むポリオレフィン水性分散体と、重合性基を有する界面活性剤との存在下で、アクリル系単量体を乳化重合する工程を含み、
    前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位およびアクリル酸由来の構成単位を含み、
    前記(メタ)アクリル酸エステルは、メチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを含み、
    前記アクリル系重合体は、アクリル酸由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.4質量%~8.0質量%含む、製造方法。
  13. 前記乳化重合において、過硫酸塩および還元剤を添加し、
    前記過硫酸塩の使用量は、全単量体成分に対し、0.05質量%~1質量%である、
    請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、20質量%~92.5質量%含む、請求項12または13に記載の製造方法。
  15. 前記アクリル系重合体は、窒素原子含有単量体由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含む、請求項12~14の何れか1項に記載の製造方法。
  16. 前記アクリル系重合体は、ヒドロキシル基含有単量体由来の構成単位を、前記アクリル系重合体を構成する単量体由来の構成単位全体に対して、0.1質量%~20質量%含む、請求項12~15の何れか1項に記載の製造方法。
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